JP2022062372A - 遠心振り子式ダンパ - Google Patents
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Abstract
【課題】制振効果を低下させることなく、潤滑用のオイルを用いて耐摩耗性を担保することが可能な湿式の遠心振り子式ダンパを提供する。【解決手段】回転体のトルクを転動体を介して慣性体に伝達し、回転体の捩り振動を抑制するように構成された遠心振り子式ダンパにおいて、転動体および転動面を潤滑するオイルと、慣性体の回転軸線の方向で、転動面を覆い、かつ回転体および慣性体が回転する際の遠心力により前記転動面に流入したオイルを所定量保持する保持部材とを有し、前記遠心力を受けて凹部および転動面に流入し、かつ滞留するオイルを、転動面外に誘導する孔が保持部材に形成されている。【選択図】図2
Description
この発明は、動力源のトルク変動に起因する捩り振動を抑制するための遠心振り子式ダンパであって、特に、摺動部分や可動部分をオイルで潤滑する湿式の遠心振り子式ダンパに関するものである。
例えば、車両に搭載されるエンジンのクランクシャフトや変速機のインプットシャフトなどの回転部材に取り付けられて、回転部材のトルク変動、あるいは、そのトルク変動に起因する捩り振動を抑制する装置として、ダイナミックダンパが知られている。ダイナミックダンパは、振動系にばねや振り子を取り付け、それらばねの弾性力あるいは振り子の慣性力等を利用して、振動系の捩り振動を減衰させる。また、振動系の共振点を複数に分散させて共振の発生を抑制する。
そのようなダイナミックダンパの一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された捩り振動低減装置は、いわゆる遠心振り子式のダイナミックダンパであって、円盤状に形成された回転体と、環状に形成され、遠心振り子の重錘として機能する慣性体と、円形のころ状に形成され、遠心振り子の連結部材として機能する転動体とを備えている。回転体は、所定の回転軸に連結し、回転軸からトルクが伝達されて回転する。慣性体の回転中心から同一の半径位置の円周上に一定の間隔でガイド孔が形成されている。このガイド孔には、転動体が配置されており、そのガイド孔の内壁面は、転動体が遠心力によって押し付けられかつトルク変動によって転動体が往復動させられる転動面とされている。したがって、そのガイド孔の所定の範囲で転動体が往復動する。また、回転体の外周面における上述したガイド孔に対応する位置に、その回転体の外周面から半径方向で外側に延びたガイド溝部が設けられている。そのガイド溝部は、半径方向で外側に延びた一対の溝壁部を有しており、それらの溝壁部同士の間隔は転動体の外径とほぼ同じとされている。そして、転動体は、回転体に対して、径方向には移動可能であるが、回転方向(円周方向)においては、ガイド溝によって拘束された状態で保持されている。
上記の特許文献1に記載された捩り振動低減装置では、ガイド孔の内壁面に形成された転動面上を転動体の外周面が接触して転動する。また、転動体は、回転体に形成されたガイド溝に接触して摺動する。それら慣性体と転動体との接触部分、および、回転体と転動体との摺動部分では摩耗が生じる。そのような摩耗に対しては、転動体(および転動面)周辺にオイルを供給して潤滑することにより、摩耗の進行を抑制し、転動体およびその転動体と接触する相手部材(すなわち、回転体や慣性体との接触部分)の耐摩耗性を向上させることができる。一方、転動体と転動面との間にオイルが過剰に介在すると、オイルの粘性抵抗を受けて転動体の遠心振り子の連結部分としての動きが抑制あるいは阻害され、ひいては捩り振動低減装置による制振効果が低下してしまう。
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、制振効果を低下させることなく、潤滑用のオイルを用いて耐摩耗性を担保することが可能な遠心振り子式ダンパを提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、トルクが伝達されて回転する回転体と、前記回転体と同軸上で前記回転体に対して相対回転可能に配置される慣性体と、前記回転体と前記慣性体とを相対回転可能に、かつトルク伝達可能に連結する転動体と、前記慣性体の内周部に形成され、前記転動体の外径よりも大きい曲率半径で円弧状にくぼんで前記慣性体の回転中心側に開口し、前記転動体を揺動可能に保持する凹部と、前記凹部の内周面に形成され、前記転動体の外周面を構成する接触面と接触して前記転動体を転動させる転動面とを備え、前記回転体のトルクを前記転動体を介して前記慣性体に伝達し、前記回転体の捩り振動を抑制するように構成された遠心振り子式ダンパにおいて、前記転動体および前記転動面を潤滑するオイルと、前記慣性体および前記転動体の回転軸線の方向で、前記転動面を覆い、かつ前記回転体および前記慣性体が回転する際の遠心力により前記転動面に流入した前記オイルを所定量保持する保持部材とを有し、前記遠心力を受けて前記凹部および前記転動面に流入し、かつ滞留する前記オイルを、前記転動面外に誘導する孔が前記保持部材に形成されていることを特徴とするものである。
この発明の遠心振り子式ダンパは、いわゆる湿式の遠心振り子式ダンパであり、摺動部分や可動部分、具体的には、転動体およびその相手部材(例えば慣性体の転動面)がオイルで潤滑される。したがって、転動体や転動面などの摺動部分あるいは可動部分の摩耗を抑制できる。転動体および転動面の潤滑にオイルを用いることにより、回転体および慣性体が回転する際に、遠心力を受けてオイルが慣性体の凹部および転動面に滞留しやすくなる。転動体と転動面との間にオイルが過剰に滞留すると、オイルの粘性抵抗を受けて転動体の遠心振り子の連結部分としての動きが抑制されてしまう。それに対して、この発明の遠心振り子式ダンパでは、所定量のオイルを保持する保持部材を有し、その保持部材には、遠心力の影響で凹部における転動体と転動面との間に滞留しようとするオイルを、その同じ遠心力の作用によって転動面外に誘導する貫通孔(油路)が設けられている。つまり、遠心力の影響で、凹部における転動体と転動面との間に滞留しようとするオイルを、転動面からの逃げ場となって転動面外に誘導する孔が設けられている。そのため、転動面にオイルが過剰に滞留してしまうことを回避しつつ、可動部分や摺動部分の摩耗を抑制でき、ひいては転動体を遠心振り子の連結部分として適正に動作させることができる。その結果、慣性体を遠心振り子の重錘として適正に動作させることができる。したがって、この発明の遠心振り子式ダンパによれば、制振効果を低下させることなく、潤滑用のオイルを用いて耐摩耗性を担保あるいは向上させることができる。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
この発明を適用した遠心振り子式ダンパの基本的な構成を図1、図2、図3に示してある。この発明の実施形態における遠心振り子式ダンパ(以下、単にダンパと記す)1は、主要な構成要素として、回転体2、慣性体3、転動体(遠心マス)4、支持部5、凹部6、転動面7、接触面8、および、カバー部材13を備えている。
回転体2は、トルクが伝達されて回転する。具体的には、回転体2は、円形の板状部材によって形成されている。回転体2は、中央(回転中心)部分に、例えば、エンジンの出力軸や変速機の入力軸などの所定の回転軸(図示せず)が取り付けられる。したがって、回転体2は、所定の回転軸からトルクが伝達され、その回転軸と一体に回転する。回転体2の外周部2aには、後述する支持部5が形成されており、転動体4を係合する。
慣性体3は、いわゆる遠心振り子の連結部分として機能する質量体であり、所定の質量を有する環状の部材によって形成されている。慣性体3は、回転体2と同軸上で、回転体2に対して相対回転可能に配置されている。慣性体3の内周部3aには、後述する凹部6および転動面7が形成されている。慣性体3は、その凹部6に保持される転動体4を介して、回転体2の外周側に、相対回転可能に支持されている。
転動体4は、慣性体3を遠心振り子の重錘として機能させるために、回転体2と慣性体3とを実質的に連結する遠心マスであり、所定の質量を有する円形のころ状の部材によって形成されている。転動体4は、後述する慣性体3の転動面7上を転動する。それに加えて、転動体4は、後述する回転体2の支持部5に自転(転動)可能に係合する。それにより、転動体4は、回転体2と慣性体3とを、相対回転可能に、かつトルク伝達可能に連結する。転動体4の外周面は、慣性体3の転動面7に接触する接触面8を構成している。なお、転動体4は、回転体2および慣性体3に対する組み付け性の観点から、複数に分割した部材から構成される分割構造になっている。図2、図3に示す例では、転動体4は、第1マス4a、および、第2マス4bから構成されている。
第1マス4aは、プーリ状の部材によって形成されている。具体的には、第1マス4aは、ボス4c、および、軸穴4dを有している。また、第1マス4aの外周面は、接触面8を構成している。ボス4cは、第1マス4aの中央(回転中心)部分に形成されている。そのボス4cの中央部分に軸穴4dが形成されている。軸穴4dには、後述する第2マス4bの軸部4eがはめ合わされる。なお、図2、図3に示す例では、ボス4cの外周部分に、軸受9が取り付けられている。軸受9は、例えば、転がり軸受、あるいは、滑り軸受(ブッシュ)が用いられる。軸受9は、後述する回転体2の支持部5に係合される転動体4を滑らかに自転させる。それとともに、後述する慣性体3の凹部6に保持される転動体4を、凹部6の転動面7上で滑らかに転動させる。なお、転動体4は、ボス4cの外周面自体が滑り軸受として機能するように第1マス4aを形成して、軸受9を省いた構成であってもよい。
第2マス4bは、プーリ状の部材によって形成されている。具体的には、第2マス4bは、軸部4eを有している。また、第2マス4bの外周面は、接触面8を構成している。軸部4eは、第2マス4bの中央(回転中心)部分に形成されている。軸部4eは、第1マス4aの軸穴4dにはめ込まれる。例えば、軸穴4dと軸部4eとのはめ合いをしまりばめにして、軸穴4dと軸部4eとを接合することにより、第1マス4aと第2マス4bとが一体になり、転動体4が構成される。
転動体4は、後述するように、回転体2の支持部5に軸受9および第1マス4aを係合させ、かつ慣性体3の凹部6に第1マス4aを配置した状態で、第1マス4aの軸穴4dに第2マス4bの軸部4eがはめ合わされる。すなわち、第1マス4aに第2マス4bが組み付けられる。第1マス4aと第2マス4bとが一体になることにより、転動体4は、回転体2の支持部5に係合された状態になる。それとともに、転動体4は、慣性体3の凹部6を慣性体3の内周側から支持する状態になる。その結果、回転体2および慣性体3が、互いに相対回転可能に、かつ転動体4を介してトルク伝達可能に連結される。転動体4は、後述する支持部5および凹部6の数に対応して、複数設けられる。図1に示す例では、三個の転動体4が設けられている。
支持部5は、回転体2の外周部2aに形成され、回転体2の回転方向における転動体4の移動を規制し、かつ回転体2の径方向における転動体4の移動を許容して、回転体2に転動体4を係合させる。具体的には、図3に示すように、支持部5は、突出部5a、および、突出部5bを有している。
突出部5aは、回転体2の外周部2aから、回転体2の径方向と平行に、回転体2の外側に、角材状に延びている。突出部5bは、回転体2の外周部2aから、回転体2の径方向と平行に、すなわち、突出部5aと平行に、回転体2の外側に、角材状に延びている。突出部5aと突出部5bとが互いに対向する部分の空間に、転動体4がはめ込まれる。図2、図3に示す例では、転動体4のボス4cの外周部分に軸受9を取り付けた状態で、転動体4が支持部5の突出部5aと突出部5bとの間に組み付けられる。突出部5aと突出部5bとの対向部分の間隔は、軸受9の外径よりもわずかに長い長さに設定されている。したがって、支持部5に組み付けられた転動体4は、回転体2の径方向における摺動が可能になっている。それとともに、転動体4は、支持部5に係合されることにより、回転体2の回転方向における移動が規制される。したがって、転動体4は、回転体2が回転する際には、回転体2の径方向における移動は許容される状態で、回転体2と共に回転する。支持部5は、転動体4および後述する凹部6の数に対応して、複数設けられる。図1に示す例では、回転体2の円周方向に等間隔で離れた三箇所に、支持部5が形成されている。
凹部6は、慣性体3の内周部3aに形成されている。凹部6は、転動体4の外径に対応する曲率の円弧状にくぼんで、慣性体3の回転中心側に開口している。具体的には、凹部6の内周面6aに、転動体4の外周面4fを構成する接触面8と接触し、転動体4を転動させる転動面7が形成されている。図3に示す例では、凹部6は、慣性体3の基体部3bよりも厚肉に形成されている。すなわち、基体部3bの厚さ(慣性体3の回転軸線方向における基体部3bの幅)よりも、凹部6の厚さ(慣性体3の回転軸線方向における凹部6の幅)が厚く形成されている。後述するように、転動面7は、慣性体3の回転軸線方向で二つに分かれて形成されており、それら二つの転動面7が形成される部分が、慣性体3の回転軸線方向におけるそれぞれの転動面7の幅の分だけ厚肉に形成されている。凹部6は、上記のように転動体4の接触面8を転動面7に接触させた状態で、転動体4を揺動可能に保持する。凹部6は、転動体4および支持部5の数に対応して、複数設けられる。図1に示す例では、慣性体3の円周方向に等間隔で離れた三箇所に、凹部6が形成されている。
転動面7は、転動体4の半径(すなわち、転動体4の回転中心軸線から接触面8までの距離)よりも大きい曲率半径で湾曲する曲面になっている。また、転動面7の曲率半径は、最大でも、慣性体3の内径(すなわち、慣性体3の回転中心軸線から内周部3aの内周面までの距離)、および、回転体2の外径(すなわち、回転体2の回転中心軸線から外周部2aの外周面までの距離)よりも短い長さに設定されている。転動面7は、転動体4の接触面8と接触して転動体4を転動させる。
上記のように、図2、図3に示す例では、転動体4は、第1マス4aと第2マス4bとに分かれた分割構造になっており、それに伴い、転動体4の接触面8は、第1マス4aの外周部分と、第2マス4bの外周部分との二つに分かれて形成されている。したがって、それら転動体4の二つの接触面8に対応して、転動面7は、慣性体3の回転軸線方向(図2の左右方向)で二つに分かれて形成されている。二つの転動面7の間、すなわち、慣性体3の回転軸線方向(凹部6の幅方向)における凹部6の中央部分には、調心リブ6bが形成されている。
調心リブ6bは、凹部6の幅方向における中央部分に形成され、凹部6に転動体4を配置した状態で転動体4の第1マス4aと第2マス4bとに挟まれる部分であり、凹部6に対する転動体4の相対位置を決める調心機能を有している。具体的には、図2に示すように、調心リブ6bは、凹部6の内周面6aから慣性体3の回転中心側に、板材状あるいはリブ状に延びている。調心リブ6bは、凹部6の幅方向における両側面6c,6dが、それぞれ、慣性体3および回転体2の回転中心に向かうほど両側面6c,6dの間の距離が近づくように傾斜した傾斜面に形成されている。両側面6c,6dの間の距離は、調心リブ6bの付け根部分、すなわち、転動面7と調心リブ6bとが交わる部分で最大になる。その両側面6c,6dの間の最大距離が、転動体4の回転軸線方向(図2の左右方向)における第1マス4aと第2マス4bとの間の距離と等しいもしくはほぼ等しくなるように、調心リブ6bが形成されている。したがって、回転体2が回転して転動体4が慣性体3に近づく方向に移動すると、転動体4が慣性体3すなわち転動面7に近づくにつれて、第1マス4aと第2マス4bとの間の距離と、調心リブ6bの両側面6c,6dの間の距離との差が小さくなる。最終的に、転動体4の接触面8が転動面7に接触した状態では、両者の距離の差が0もしくはほぼ0になり、転動体4は、調心リブ6bを回転軸線方向の中心とする所定の位置に位置決めされる。すなわち、回転体2、慣性体3、および、転動体4の回転軸線方向(図2の左右方向)において、転動体4が慣性体3の凹部6に対して調心される。
上記のように構成されたダンパ1では、回転体2にトルクが伝達され、回転体2が回転すると、支持部5によって転動体4が回転体2に係合されているため、転動体4は、回転体2の周りを公転するように、回転体2と共に回転する。したがって、転動体4には、回転体2の回転数、および、回転体2の回転中心からの距離に応じた遠心力が作用する。回転体2の回転数が上昇し、転動体4に作用する遠心力が大きくなると、転動体4は、支持部5の突出部5a,5bに沿って、回転体2の径方向で外側に移動する。回転体2の回転数が、転動体4に作用する重力よりも大きな遠心力が発生する所定の回転数以上になると、転動体4は、回転体2の回転中心から最も離れた位置に移動し、慣性体3の凹部6に形成された転動面7に押し付けられる。したがって、回転体2と慣性体3とが、転動体4を介して連結される。この状態で、回転体2に伝達されるトルクに変動がない場合、あるいは、トルク変動が極わずかである場合、あるいは、回転体2が更に高速で回転する場合は、転動体4は、慣性体3の凹部6でほぼ転動することなく、回転体2のトルクを慣性体3に伝達する。その結果、回転体2、転動体4、および、慣性体3が一体となって回転する。すなわち、ダンパ1全体が一体となって回転する。
一方、回転体2に伝達されるトルクに振動的な変動が生じると、回転体2の回転数が変動し、回転体2の角加速度が変化する。その際、慣性体3は慣性力によって従前の運動状態を維持しようとするので、回転体2に対して慣性体3が相対回転する。このような相対回転は、転動体4が転動面7上を転動することにより生じる。また、転動面7の曲率半径は慣性体3の外径の曲率半径よりも小さいため、転動面7の両端部側に転動体4が移動するほど、転動体4は、支持部5の内部で回転体2の回転中心側に押し戻される。このように支持部5に対する転動体4の位置および転動面7に対する転動体4の接触位置が変化すると、遠心力によって転動体4が転動面7に向けて押されていること、および、転動面7の曲率半径が慣性体3の外径の曲率半径よりも小さいことにより、慣性体3には円周方向に向けた力が作用する。この円周方向に向けた力は、回転体2に対して相対回転した慣性体3を元の相対位置に戻す方向に作用する。この力は、回転体2のトルク変動の方向に応じて回転体2に対する慣性体3の回転方向のいずれの方向にも生じる。そのため、上記のような慣性体3の相対回転が、回転体2のトルク変動に対応し、振動的に繰り返して発生する。すなわち、慣性体3が振り子運動する。慣性体3と回転体2とを実質的に連結している転動体4は、回転体2に対して、回転体2の径方向には移動可能であるが、回転体2の円周方向には拘束された状態で保持されている。そのため、慣性体3の振り子運動による回転体2の円周方向の反力が、回転体2に対してその捩り振動を抑制する制振力として作用する。要するに、回転体2のトルク変動は、転動体4を介して慣性体3に伝達され、慣性体3を回転体2に対して逆位相で相対回転させる。その結果、回転体2のトルク変動は、慣性体3の慣性モーメントによって相殺あるいは減殺される。したがって、この発明の実施形態におけるダンパ1によれば、回転体2に伝達されるトルク変動に起因する捩り振動を効果的に抑制することができる。
前述したように、ダンパ1では、転動体4は、慣性体3の凹部6に形成された転動面7に接触し、転動面7上を転動する。また、転動体4は、回転体2に形成された支持部5に接触し、支持部5に沿って摺動する。それら慣性体3の転動面7と転動体4との接触部分、および、回転体2の支持部5と転動体4との摺動部分では摩耗が生じる。そのような摩耗に対しては、転動体4周辺にオイル10を供給して潤滑することにより、摩耗の進行を抑制し、転動体4およびその転動体4と接触する相手部材(すなわち、回転体2の支持部5、慣性体3の転動面7など)の耐摩耗性を向上させることができる。ひいては、ダンパ1の耐久性を向上させることができる。
例えば、車両の変速機(図示せず)のハウジング内にダンパ1を組み付け、その変速機用のオイルを兼用してダンパ1を潤滑することにより、湿式のダンパ1を構成できる。あるいは、ダンパ1の可動部分を覆うケース(図示せず)を設け、そのケースの内部にオイル10を供給することにより、湿式のダンパ1を構成できる。
上記のようにして、湿式のダンパ1を構成することにより、ダンパ1の耐摩耗性が向上する。その反面、転動体4と転動面7との間にオイル10が過剰に介在すると、オイル10の粘性抵抗を受けて転動体4の遠心振り子の連結部分としての動きが抑制されることがある。例えば、ダンパ1が回転する際には、オイル10は遠心力を受けてダンパ1の外周側に流動する。その場合、流動したオイル10は転動面7の最外周部周辺に流動して滞留する。転動面7の最外周部は、遠心力を受けた転動体4が転動面7上を転動する部分でもある。そのため、この転動面7の最外周部にオイル10が滞留すると、転動体4と転動面7との間にオイル10が過剰に(潤滑に必要な適量以上に)介在してしまう。転動体4は、その過剰なオイル10の粘性抵抗の影響によって、転動面7上での動きが阻害されてしまう。その結果、慣性体3の遠心振り子の重錘としての動きが抑制されてしまい、ひいては、ダンパ1の遠心振り子式ダンパとしての制振効果が低下してしまう。一例として、図4に示すように、オイル10を用いない場合(潤滑なし)の制振性能(トルク変動減衰率)に対して、オイル10を用いた場合(潤滑あり)の制振性能(トルク変動減衰率)が、低下してしまう実験データが得られている。
そこで、この発明の実施形態におけるダンパ1では、例えば、図2、図3に示すように、回転体2および慣性体3が回転する際の遠心力を受けて慣性体3の凹部6に滞留するオイル10を転動面7の外に誘導する油路11を設けている。油路11によって転動面7に過剰に介在するオイル10を転動面7の外に流動させることにより、遠心振り子式ダンパ1としての制振性能の向上と、オイル10による耐摩耗性の向上とを両立させている。
図2、図3に示すように、油路11として、貫通孔12を備えている。貫通孔12は、凹部6、あるいは、転動面7周辺に滞留するオイル10を転動面7の外へ流動させるための穴であって、カバー部材13(13a,13b)の中央部分に回転軸線の方向に延びて貫通して形成されている。そのカバー部材13は、転動体4および慣性体3の回転軸線の方向で、その転動体4および慣性体3を両側から蓋するように設けられている。このカバー部材13は、回転体2および慣性体3が回転する際の遠心力で流入したオイル10を保持するためのものであって、この発明の実施形態における「保持部材」に相当する。転動面7の最外周部にオイル10が滞留すると、転動体4と転動面7との間にオイル10が過剰に介在してしまう反面、転動面7と転動体4との接触部分、および、支持部5と転動体4との摺動部分では摩耗が生じるから、必要最低限のオイル10を転動面7との接触部分や支持部5との摺動部分に供給する必要がある。そこで、この発明の実施形態では、オイル10を保持するカバー部材13を設けている。なお、このカバー部材13は、図3に示すように、慣性体3の凹部6の形状とほぼ同様の形状とされ、円周方向における慣性体3の凹部6と幅が同じであって、慣性体3の外周部3cに沿うように構成されている。カバー部材13の中央部分の径方向の厚みは、慣性体3の凹部6の厚みよりやや厚く形成されている。言い換えれば、回転中心側に開口してくぼんだ部分の曲率がカバー部材13の方が慣性体3の凹部6よりやや大きくなるように構成されている。したがって、図3の各部材を組み付けた際には、カバー部材13が転動面7を覆うことになる。なお、このカバー部材13のくぼんだ部分が転動体4を調心する機能を兼ねている。また、図1には、そのカバー部材13を組み付けた際の正面図が示されている。
貫通孔12は、転動体4の第1マス4a側で慣性体3に接触するカバー部材13aと、転動体4の第2マス4b側で慣性体3に接触するカバー部材13bとの両方に形成されている。図2、図3に示す例では、貫通孔12は、カバー部材13の径方向でくぼんだ部分の厚みが最も薄くなる部分(すなわち、最も大きな遠心力が作用する部分)に形成されている。なお、上述のカバー部材13は、慣性体3の凹部6の形状に沿った形状とされているから、この貫通孔12が形成される位置は、図2に示すように、同一軸線上であって、かつ径方向で転動面7とほぼ同じ位置となる。言い換えれば、滞留したオイル10が排出されやすい位置に貫通孔12が形成されている。また、この貫通孔12は、上述のように、転動体4と転動面7との間にオイル10が過剰に介在してしまうことを抑制するための孔であるから、オイル10が滞留する転動面7周辺からの逃げ場となる孔として機能する。つまり、この貫通孔12により転動面7の外にオイル10を誘導し、言い換えれば、この貫通孔12が、過剰に滞留する余分なオイル10を外に排出し、かつオイル10の量を調整する油量調整機構として機能する。
なお、この発明の実施形態におけるダンパ1では、それぞれ両側のカバー部材13a,13bに複数の貫通孔12を形成してもよい。また、貫通孔12の径の大きさは、オイル10が滞留する量に応じて適宜の大きさに形成されてよい。また、貫通孔12は、カバー部材13の径方向でくぼんだ部分の厚みが最も薄くなる部分(すなわち、カバー部材13内で最も大きな遠心力が作用する部分)を避けた部分に形成してもよい。そのような部分に複数の貫通孔12を形成してもよい。また、貫通孔12は、カバー部材13の回転軸線の方向に対して所定の方向に傾斜した方向に延びて、カバー部材13を貫通するように形成してもよい。
このように、この発明の実施形態におけるダンパ1では、慣性体3および転動体4の回転軸線の方向で両側からカバー部材13を設けている。また、そのカバー部材13には、転動面7とほぼ同じ位置(径方向での位置)にオイル10を排出する貫通孔が形成されている。そのため、遠心力の影響で転動体4と凹部6の転動面7との間に滞留しようとするオイル10が、その同じ遠心力の作用により、貫通孔12を通って、転動面7の外に誘導される。したがって、転動体4と転動面7との間にオイル10が過剰に滞留してしまうことを回避し、転動体4を遠心振り子の連結部分として適正に動作させることができる。また、例えば、形成する貫通孔12の数、あるいは、貫通孔12の径を適宜に設定することにより、転動面7から外部に流動させるオイル10の量を調整できる。そのため、転動体4と転動面7との間に滞留するオイル10の過剰分を排出しつつ、転動体4の潤滑に必要な適量のオイル10を転動面7に残しておくことができる。また、上記のような貫通孔12は、例えば、ドリルを用いた一般的な機械加工によって容易に形成することができる。したがって、この発明の実施形態におけるダンパ1によれば、遠心振り子式ダンパとしての制振効果を低下させることなく、また、構造を複雑にすることなく、潤滑用のオイル10を用いて、容易に、耐摩耗性を担保ならびに向上させることができる。
1 ダンパ(遠心振り子式ダンパ)
2 回転体
3 慣性体
4 転動体
6 凹部
7 転動面
10 オイル
11 油路
12 貫通孔
13,13a,13b カバー部材(保持部材)
2 回転体
3 慣性体
4 転動体
6 凹部
7 転動面
10 オイル
11 油路
12 貫通孔
13,13a,13b カバー部材(保持部材)
Claims (1)
- トルクが伝達されて回転する回転体と、前記回転体と同軸上で前記回転体に対して相対回転可能に配置される慣性体と、前記回転体と前記慣性体とを相対回転可能に、かつトルク伝達可能に連結する転動体と、前記慣性体の内周部に形成され、前記転動体の外径よりも大きい曲率半径で円弧状にくぼんで前記慣性体の回転中心側に開口し、前記転動体を揺動可能に保持する凹部と、前記凹部の内周面に形成され、前記転動体の外周面を構成する接触面と接触して前記転動体を転動させる転動面とを備え、
前記回転体のトルクを前記転動体を介して前記慣性体に伝達し、前記回転体の捩り振動を抑制するように構成された遠心振り子式ダンパにおいて、
前記転動体および前記転動面を潤滑するオイルと、前記慣性体および前記転動体の回転軸線の方向で、前記転動面を覆い、かつ前記回転体および前記慣性体が回転する際の遠心力により前記転動面に流入した前記オイルを所定量保持する保持部材とを有し、
前記遠心力を受けて前記凹部および前記転動面に流入し、かつ滞留する前記オイルを、前記転動面外に誘導する孔が前記保持部材に形成されている
ことを特徴とする遠心振り子式ダンパ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020170337A JP2022062372A (ja) | 2020-10-08 | 2020-10-08 | 遠心振り子式ダンパ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020170337A JP2022062372A (ja) | 2020-10-08 | 2020-10-08 | 遠心振り子式ダンパ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022062372A true JP2022062372A (ja) | 2022-04-20 |
Family
ID=81210881
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020170337A Pending JP2022062372A (ja) | 2020-10-08 | 2020-10-08 | 遠心振り子式ダンパ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022062372A (ja) |
-
2020
- 2020-10-08 JP JP2020170337A patent/JP2022062372A/ja active Pending
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