JP2022031163A - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れたオーステナイト系鋼材及びその製造方法を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.10%以上2.50%以下、Mn:8.0%以上45.0%以下、P:0.300%以下、S:0.1000%以下、V:0.05%以上2.50%以下、Al:0.001%以上0.500%以下、N:0.5000%以下、O(酸素):0.1000%以下を含み、かつ、C、VおよびMnを、25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧ 25を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成と、面積率で、オーステナイト相を90%以上かつV炭化物を0.1%以上含む組織と、を有するものとする。【選択図】なし

Description

本発明は、耐摩耗性に優れた鋼材およびその製造方法に係り、特にオーステナイト系鋼材の耐摩耗性を向上する技術に関する。
建設、土木、鉱業などの分野で使用される、例えば、パワーショベル、ブルドーザー、ホッパー、バケットコンベヤー、岩石破砕装置などの産業機械、運搬機器は、岩石、砂、鉱石などによるすべり摩耗、衝撃摩耗などの摩耗に晒される。そのため、産業機械、運搬機器等の部材には、機械、機器等の寿命向上という観点から、耐摩耗性に優れることが求められる。
鋼材の耐摩耗性は、鋼材硬さの増加に伴い、向上することが知られている。鋼組織のなかで、オーステナイト相は、歪が加わった際の硬化量、即ち、加工硬化量が大きい。従って、オーステナイト系鋼材は、例えば岩石が衝突するような衝撃力が加わる衝撃摩耗環境下において、使用中に摩耗面近傍で硬化が進行し、非常に優れた耐摩耗性を示す。さらにオーステナイト相は、フェライト相やマルテンサイト相等の組織に比べて延性や靱性が良好である。そこで、例えば、ハッドフィールド(Hadfield)鋼のように、マンガン含有率を高めることによりオーステナイト組織としたオーステナイト系鋼材が、安価な耐摩耗鋼材として、幅広く用いられてきた。
例えば、特許文献1には、「耐摩耗オーステナイト系鋼材及びその製造方法」が記載されている。特許文献1には、質量%で、マンガン(Mn):15~25%、炭素(C):0.8~1.8%、0.7C-0.56(%)≦Cu≦5%を満たす銅(Cu)、残部Feおよびその他の不可避的不純物からなり、-40℃でのシャルピー衝撃値が100J以上である溶接熱影響部の靭性に優れた耐摩耗オーステナイト系鋼材について記載されている。特許文献1に記載された技術によれば、高マンガン含有により安定してオーステナイト組織が得られ、さらに溶接後の熱影響部の炭化物の生成を抑制でき、溶接熱影響部の靭性低下を防止することができる、としている。
また、特許文献2には、「耐摩耗オーステナイト系鋼材及びその製造方法」が記載されている。すなわち、特許文献2には、質量%で、8~15%のマンガン(Mn)、23%<33.5C-Mn≦37%の関係を満たす炭素(C)、1.6C-1.4(%)≦Cu≦5%を満たす銅(Cu)を含み残部Feおよびその他の不可避的不純物からなり、炭化物の面積分率が10%以下である、延性に優れた耐摩耗オーステナイト系鋼材について記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、高マンガン含有により安定してオーステナイト組織が得られ、しかも鋼材内部の炭化物の形成も抑制でき、鋼材の靭性低下を防止することができる、としている。
特許第5879448号公報 特許第6014682号公報
しかしながら、特許文献1,2に記載されたオーステナイト系鋼材では、鋼材に衝撃力が加わらない状況、例えば、砂が鋼材表面を擦るような摩耗形態、すなわちすべり摩耗のような摩耗形態では、鋼材表面に大きな硬化層が形成されないため、耐摩耗性の顕著な向上は得られない。
また、上記した産業機械や運搬機器は、種々の機械要素を組み合わせて構成されていることから、これら機器等の製作には機械要素を組み立てる工程が必須である。この各種機械要素の組立工程において、各機械要素を形作る鋼板には冷間での曲げ加工が施される。従って、上記の機器等を精度良く製作するには、鋼板の冷間曲げ加工性は非常に重要な特性である。すなわち、冷間曲げ加工性が劣位であると、設計図面通りの成型が不可能となる、という問題が生じる。その場合、溶接によって鋼板を接合する等の代替手段が必要となり、機器等の製造効率上やはり問題となる。
かように、上記した産業機械や運搬機器に供する鋼材としては、冷間曲げ加工性に優れていることも、上記機器等の主に製造コストの観点から要求されることがある。しかしながら、特許文献1、2には、冷間曲げ加工性については検討されていない。
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、耐摩耗性に優れたオーステナイト系鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。ここでいう「耐摩耗性に優れた」とは、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性とを兼備することをいい、「鋼材」とは、板状の鋼板(板材)、棒状の棒鋼(棒材)、線状の線材、種々の断面形状の形鋼を含むものとする。
さらに、本発明は、耐摩耗性に優れることに加えて、冷間曲げ加工性にも優れたオーステナイト系鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、まず、オーステナイト系鋼材の耐すべり摩耗性に影響する各種要因について、鋭意検討を行った。その結果、オーステナイト系鋼材の耐すべり摩耗性を向上させるには、基地相(オーステナイト相)中に硬質粒子を分散させることが有効であることを見出した。すべり摩耗では、鋼材の最表層部分が連続的に削られることで摩耗が進行していくため、基地相(オーステナイト相)中に硬質粒子を分散させておくことにより、摩耗が進行し鋼材最表層に硬質粒子が現れたときに、摩耗の進行に対して抵抗となり、耐摩耗性が向上し、摩耗寿命が長期化する。
かような、鋼中に分散可能な硬質粒子としては、Ti炭化物やNb炭化物等がある。これらの粒子は高温で生成する析出物である。そのため、TiやNbが多量に添加され、Ti炭化物やNb炭化物が多量に存在する場合、スラブの連続鋳造時や熱間圧延時にひずみが加えられた際に、既に生成していた粒子が起点となり大きな割れを生じさせる可能性がある。
ところで、マンガン含有率の高いオーステナイト系鋼材は、連続鋳造や熱間圧延において鋼材表面に微細な割れが生じ易いが、もし、硬質粒子の分散によりそうした割れが大きくなってしまうと、割れを除去するための鋼材表面の手入れ負荷が増加してしまう。また、高マンガンのオ-ステナイト鋼は難切削性材料であるため、製造負荷、製造コストが著しく増加してしまう。
そこで、熱間割れ対策についても鋭意検討を行った結果、粒子の硬度が高くかつ粒子の生成温度が低いV炭化物は、連続鋳造や熱間圧延における割れの発生には悪影響を与えにくく、従って、すべり摩耗性の向上と良好な熱間延性の両立に有効であることを見出した。
一方、オーステナイト系鋼材の耐衝撃摩耗性を向上させるためには、安定なオーステナイト組織を保持することが肝要であり、しかも、常温においても安定なオーステナイト組織を安価に得ることが求められる。そのためには、オーステナイト安定化元素であるCおよびMnの固溶量を多くする必要がある。しかし、上記したように、耐すべり摩耗性向上のために、基地相中に多量のV炭化物を分散させると、安定なオーステナイト組織の保持に有効なCの固溶量の減少を伴うことになる。そこで、本発明者らは、オーステナイト安定化元素であるCおよびMnの固溶量と、CおよびMnのオーステナイト安定化能の違いとを考慮し、次式(1)
25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
の関係式を満足するように、CおよびMn量を調整することが、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性とを兼備させるために、有効であることを新規に見出した。
さらに、優れた耐熱間割れ特性および耐摩耗性に加えて、優れた冷間曲げ加工性をも具備させるには、V含有量の上限を新たに設定することが有効であるとの、新規知見を得た。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものであり、その要旨とするところは、次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.10%以上2.50%以下、
Mn:8.0%以上45.0%以下、
P:0.300%以下、
S:0.1000%以下、
V:0.05%以上2.50%以下、
Al:0.001%以上0.500%以下、
N:0.5000%以下、
O(酸素):0.1000%以下
を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成と、
面積率で、オーステナイト相を90%以上かつV炭化物を0.1%以上含む組織と、
を有する鋼材。

25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
2.質量%で、
C:0.10%以上2.50%以下、
Mn:8.0%以上45.0%以下、
P:0.300%以下、
S:0.1000%以下、
V:0.05%以上0.50%以下、
Al:0.001%以上0.500%以下、
N:0.5000%以下、
O(酸素):0.1000%以下
を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成と、
面積率で、オーステナイト相を90%以上かつV炭化物を0.1%以上含む組織と、
を有する鋼材。

25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
3.前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Si:0.01%以上3.00%以下、
Cu:0.1%以上1.0%以下、
Ni:0.1%以上3.0%以下、
Cr:0.1%以上5.0%以下、
Mo:0.1%以上3.0%以下、
Nb:0.001%以上0.100%以下、
Ti:0.001%以上0.100%以下、
W:0.01%以上0.50%以下、
B:0.0003%以上0.1000%以下、
Ca:0.0003%以上0.1000%以下、
Mg:0.0001%以上0.1000%以下および
REM:0.0005%以上0.1000%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、前記1または2に記載の鋼材。
4.溶鋼を溶製して鋳片とする鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、前記加熱した鋳片を熱間圧延して鋼材とする熱延工程と、前記鋼材に冷却を施す冷却工程と、を順次施す鋼材の製造方法であって、
前記鋳片は、質量%で、
C:0.10%以上2.50%以下、
Mn:8.0%以上45.0%以下、
P:0.300%以下、
S:0.1000%以下、
V:0.05%以上2.50%以下、
Al:0.001%以上0.500%以下、
N:0.5000%以下、
O(酸素):0.1000%以下
を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成に調整し、
前記熱延工程は、スラブ加熱温度を1000℃以上とし、圧延終了温度を800℃以上とし、
前記冷却工程は、800~400℃の温度範囲における滞留時間を300s以上とする、鋼材の製造方法。

25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧ 25 ……(1)
ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
5.溶鋼を溶製して鋳片とする鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、前記加熱した鋳片を熱間圧延して鋼材とする熱延工程と、前記鋼材に冷却を施す冷却工程と、を順次施す鋼材の製造方法であって、
前記鋳片は、質量%で、
C:0.10%以上2.50%以下、
Mn:8.0%以上45.0%以下、
P:0.300%以下、
S:0.1000%以下、
V:0.05%以上0.50%以下、
Al:0.001%以上0.500%以下、
N:0.5000%以下、
O(酸素):0.1000%以下
を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成に調整し、
前記熱延工程は、スラブ加熱温度を1000℃以上とし、圧延終了温度を800℃以上とし、
前記冷却工程は、800~400℃の温度範囲における滞留時間を300s以上とする、鋼材の製造方法。

25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧ 25 ……(1)
ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
6.前記鋳片は、前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
Si:0.01%以上3.00%以下、
Cu:0.1%以上1.0%以下、
Ni:0.1%以上3.0%以下、
Cr:0.1%以上5.0%以下、
Mo:0.1%以上3.0%以下、
Nb:0.001%以上0.100%以下、
Ti:0.001%以上0.100%以下、
W:0.01%以上0.50%以下、
B:0.0003%以上0.1000%以下、
Ca:0.0003%以上0.1000%以下、
Mg:0.0001%以上0.1000%以下および
REM:0.0005%以上0.1000%以下
のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、前記4または5に記載の鋼材の製造方法。
本発明によれば、良好な耐熱間割れ特性を有しつつ、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性とを兼備する、耐摩耗性に優れたオーステナイト系鋼材を、提供でき、産業上格段の効果を奏する。例えば、種々の摩耗環境下において稼動する産業機械、運搬機械等の寿命を向上できる、という効果を奏する。
また、本発明に従ってV含有量を規制して優れた冷間曲げ加工性を付与した場合は、産業機械や運搬機器を設計図通りに精度良く作製することができる、という効果も奏する。
実施例で使用した摩耗試験装置の概略を模式的に示す説明図である。 実施例で使用した摩耗試験装置の概略を模式的に示す説明図である。
本発明のオーステナイト系鋼材は、 C:0.10%以上2.50%以下、Mn:8.0%以上45.0%以下、P:0.300%以下、S:0.1000%以下、V:0.05%以上2.50%以下、Al:0.001%以上0.500%以下、N:0.5000%以下、O(酸素):0.1000%以下を含み、かつ、C、VおよびMnを、次式(1)
25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧ 25 ……(1)
ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
の関係式を満足する範囲にて含有し、残部Fe及び不可避不純物である成分組成を有する。
まず、鋼材の成分組成の限定理由について説明する。なお、以下、成分組成に関する「質量%」は、特に断らない限り、単に「%」で記す。
C:0.10%以上2.50%以下
Cは、オーステナイト相を安定化する元素であり、常温においてオーステナイト組織を得るために重要な元素である。このような効果を得るためには、0.10%以上のC含有を必要とする。すなわち、Cが0.10%未満では、オーステナイト相の安定度が不足し、常温において、十分なオーステナイト組織を得ることができない。一方、C含有量が2.50%を超えると、硬度が高くなり、母材の靱性が低下する。そのため、本発明では、Cは0.10%以上2.50%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.12%以上2.00%以下である。
Mn:8.0%以上45.0%以下
Mnは、オーステナイト相を安定化する元素であり、常温においてオーステナイト組織を得るために重要な元素である。このような効果を得るためには、8.0%以上のMn含有を必要とする。すなわち、Mnが8.0%未満では、オーステナイト相の安定度が不足し、十分なオーステナイト組織が得られない。一方、Mn含有量が45.0%を超えると、オーステナイト相安定化の効果は飽和し、経済的に不利となる。そのため、本発明では、Mnは8.0%以上45.0%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは10.0%以上40.0%以下である。
P:0.300%以下
Pは、結晶粒界に偏析して粒界を脆化させ、鋼材の靭性を低下させる作用を有する元素である。本発明では、Pはできる限り低減することが望ましいが、0.300%以下であれば許容できる。好ましくは0.250%以下である。なお、Pは、不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、少ないほど好ましいが、過度の低P化は、精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招くため、Pは0.001%以上とすることが好ましい。
S:0.1000%以下
Sは、主として硫化物系介在物として鋼中に分散し、鋼の延性、靭性を低下させる元素である。そのため、本発明ではできるだけ低減することが望ましいが、0.1000%以下であれば許容できる。なお、好ましくは0.0800%以下である。Sは少ないほど好ましいが、過度の低S化は、精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招くため、Sは0.0001%以上とすることが好ましい。
V:0.05%以上2.50%以下
Vは、本発明において重要な元素であり、硬質な炭化物を形成して、オーステナイト組織の耐すべり摩耗性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るために、0.05%以上の含有を必要とする。一方、2.50%を超える含有は、熱間延性を低下させる。そのため、Vは0.05%以上2.50%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.30%以上2.00%以下である。
ここで、優れた耐熱間割れ特性および耐摩耗性に加えて、優れた冷間曲げ加工性をも具備させる場合には、V含有量の上限を低くする必要がある。すなわち、V含有量が0.50%を超えると、V炭化物が過剰に生成し延性が低下する結果、冷間曲げ加工性が低下することが明らかとなった。そこで、優れた冷間曲げ加工性が求められる場合は、Vを0.50%以下に制限することとした。好ましくは、0.49%以下であり、より好ましくは0.45%以下である。
Al:0.001%以上0.500%以下
Alは、脱酸剤として有効に作用する元素であり、その効果を得るためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.500%を超えて含有すると、熱間延性が低下する。そのため、Alは0.001%以上0.500%以下とする。なお、好ましくは0.003%以上0.300%以下である。
N:0.5000%以下
Nは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、母材の延性、靱性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.5000%以下であれば許容できる。好ましくは0.3000%以下である。Nは、少ないほど好ましいが、過度の低N化は精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招く。このため、Nは0.0005%以上とすることが好ましい。
O(酸素):0.1000%以下
Oは、不純物として鋼中に不可避的に含有され、酸化物等の介在物として鋼中に存在し、延性、靱性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、0.1000%以下であれば許容できる。好ましくは0.0500%以下である。Oは、少ないほど好ましいが、過度の低酸素化は、精錬時間の増加や精錬コストの上昇を招くため、Oは0.0005%以上とすることが好ましい。
さらに本発明では、C、VおよびMnを、上記した各範囲内で、かつ、次式(1)
25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
の関係式を満足する範囲にて含有する必要がある。
上記した(1)式の左辺は、オーステナイト相の安定化度を表わし、左辺値が大きいほど、オーステナイト相の安定化度が高いことを意味する。すなわち、(1)式の左辺は、オーステナイト相の安定化に寄与する元素であるCの含有量とMnの含有量の和であり、各元素のオーステナイト安定化能を考慮して、オーステナイト安定化能に応じた係数を乗じている。なお、Cは、V炭化物として析出し、オーステナイト相の安定化に寄与しなくなった量を差し引いた有効含有量としている。
従って、C、VおよびMn含有量が、(1)式を満足しない場合、オーステナイト安定化度が不足し、常温で所望のオーステナイト組織が得られない。オーステナイト相の安定化度の観点から、(1)式の右辺値は30以上であることが好ましい。
本発明では、上記した成分が、基本の成分であるが、これら基本成分に加えてさらに、必要に応じて、選択元素として、Si:0.01%以上3.00%以下、Cu:0.1%以上1.0%以下、Ni:0.1%以上3.0%以下、Cr:0.1%以上5.0%以下、Mo:0.1%以上3.0%以下、Nb:0.001%以上0.100%以下、Ti:0.001%以上0.100%以下、W:0.01%以上0.50%以下、B:0.0003%以上0.1000%以下、Ca:0.0003%以上0.1000%以下、Mg:0.0001%以上0.1000%以下およびREM:0.0005%以上0.1000%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することができる。
Si、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、Ti、W、B、さらにCa、Mg、REMはいずれも、鋼材の強度(母材や溶接部の強度)を向上させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上を選択して含有できる。
Si:0.01%以上3.00%以下
Siは、脱酸剤として有効に作用するとともに、固溶して鋼材の高硬度化にも寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。Siが0.01%未満では、上記した効果を充分に得ることができない。一方、3.00%を超える含有は、延性および靭性を低下させる。このようなことから、含有する場合には、Siは0.01%以上3.00%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.05%以上2.50%以下である。
Cu:0.1%以上1.0%以下
Cuは、固溶してあるいは析出して鋼材の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超えて含有しても、その効果は飽和し、経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Cuは0.1%以上1.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.2%以上0.8%以下である。
Ni:0.1%以上3.0%以下
Niは、鋼材の強度向上に寄与するとともに、靭性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて含有しても、その効果が飽和し経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Niは0.1%以上3.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.2%以上2.5%以下である。
Cr:0.1%以上5.0%以下
Crは、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、5.0%を超えて含有すると、その効果が飽和し経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Crは0.1%以上5.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは、0.2%以上4.5%以下である。
Mo:0.1%以上3.0%以下
Moは、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、3.0%を超えて含有すると、その効果が飽和し経済的に不利となる。そのため、含有する場合には、Moは0.1%以上3.0%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.2%以上2.5%以下である。
Nb:0.001%以上0.100%以下
Nbは、炭窒化物として析出することで、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.100%を超える含有は、熱間延性を低下させる。そのため、含有する場合には、Nbは0.001%以上0.100%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以上0.080%以下である。
Ti:0.001%以上0.100%以下
Tiは、炭窒化物として析出し、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.100%を超える含有は、熱間延性を低下させる。そのため、含有する場合には、Tiは0.001%以上0.100%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.005%以上0.080%以下である。
W:0.01%以上0.50%以下
Wは、鋼の強度向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、靱性を低下させる。そのため、含有する場合には、Wは0.01%以上0.50%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.02%以上0.45%以下である。
B:0.0003%以上0.1000%以下
Bは、結晶粒界に偏析し、粒界強度の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、炭窒化物の粒界析出により靱性が低下する。そのため、含有する場合には、Bは0.0003%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0005%以上0.0800%以下である。
Ca:0.0003%以上0.1000%以下
Caは、高温における安定性が高い酸硫化物を形成して、結晶粒界をピンニングし、とくに溶接部の結晶粒の粗大化を抑制し結晶粒を細かく維持して、溶接継手部の強度および靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、清浄度が低下して鋼の靭性が低下する。そのため、含有する場合には、Caは0.0003%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0005%以上0.0800%以下である。
Mg:0.0001%以上0.1000%以下
Mgは、高温における安定性が高い酸硫化物を形成して、結晶粒界をピンニングし、とくに溶接部の結晶粒の粗大化を抑制し結晶粒を細かく維持して、とくに、溶接継手部の強度および靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0001%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、清浄度が低下して鋼材の靭性が低下する。そのため、含有する場合には、Mgは0.0001%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0005%以上0.0800%以下である。
REM:0.0005%以上0.1000%以下
REM(希土類金属)は、高温における安定性が高い酸硫化物を形成して、結晶粒界をピンニングし、とくに溶接部の結晶粒の粗大化を抑制し結晶粒を細かく維持して、溶接継手部の強度および靱性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.1000%を超えて含有すると、清浄度が低下して鋼材の靭性が低下する。そのため、含有する場合には、REMは0.0005%以上0.1000%以下の範囲とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.0010%以上0.0800%以下の範囲である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明のオーステナイト系鋼材は、上記した成分組成を有し、さらに面積率で、90%以上のオーステナイト相と、0.1%以上のV炭化物と、を含む組織を有する。
組織中のオーステナイト相:90%以上
本発明鋼材の組織は、耐衝撃摩耗性向上の観点からオーステナイト相を主とする。この耐衝撃摩耗性向上を実現するには、オーステナイト相を面積率で90%以上とする。オーステナイト相が、面積率で90%未満では、耐衝撃摩耗性が低下し、さらには、延性や靱性、加工性、溶接部(溶接熱影部)の靱性も低下する。そのため、組織中のオーステナイト相は、面積率で、90%以上とする。100%であってもよい。ここでいう「組織中のオーステナイト相」の割合は、介在物や析出物を除いた組織全体に対するオーステナイト相の割合(面積率)を示す。なお、オーステナイト相以外の組織は、面積率で合計10%未満の、フェライト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織のうちの1種以上であってよい。
なお、組織中のオーステナイト相の面積率は、後方散乱電子回折(EBSP)解析を行い、得られたInverse Pole Figure(逆極点図)マップから、介在物、析出物を除いた組織(フェライト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織、オーステナイト相)全量に対するオーステナイト相の割合を算出することにより、求めるものとする。また、ここでいう「オーステナイト相の割合」は、鋼材の表面下1mm深さの位置で測定した値を用いるものとする。
V炭化物:0.1%以上
本発明では、基地中に硬質粒子であるV炭化物を分散させる。基地中に分散したV炭化物は砂や岩石成分によるすべり摩耗に対して抵抗となり、耐すべり摩耗性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、V炭化物を、基地中に面積率で0.1%以上分散させる必要がある。このため、V炭化物の含有量は面積率で0.1%以上に限定した。好ましくは0.5%以上である。一方、V炭化物の含有量が5.0%を超えると熱間延性が低下するため、面積率で5.0%以下とするのが好ましい。
なお、本発明では、走査型電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散型X線分光法(EDS)を利用して、V炭化物を同定し、画像解析ソフトを用いて該V炭化物の総面積を測定し、V炭化物の面積率を算出した。なお、EDSの測定に際しては、原子分率でVを10at%以上、Cを30at%以上含む析出物をV炭化物としてカウントした。また、ここでいう「V炭化物の含有量」は、鋼材の表面下1mm深さの位置で測定した値を用いるものとする。
つぎに、上記した成分組成および組織を有する鋼材の好ましい製造方法について説明する。
本発明鋼材の好ましい製造方法は、まず、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製炉により溶製したのち、鋳造して鋳片とする鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、前記加熱した鋳片を熱間圧延(熱間加工)して鋼材とする熱延工程と、得られた鋼材に冷却を施す冷却工程と、を実施する。このような工程により得られる鋼材としては、板状の鋼板、棒状の棒鋼、線状の線材、H形等の種々の断面形状の形鋼等がある。
[鋳造工程]
本発明の好ましい製造方法として、まず、電気炉、真空溶解炉等の常用の溶製炉により溶製した溶鋼を鋳造して、上記した所定の成分組成を有する鋳片とする鋳造工程を行う。
[熱延工程]
ついで、得られた鋳片を加熱し、この加熱された鋳片に、熱間圧延(熱間加工)を施して所定形状の鋼材とする熱延工程を行う。この熱延工程において、スラブ加熱温度を1000℃以上とする。すなわち、スラブ加熱温度が1000℃未満では、スラブの鋳造後の冷却過程で析出していたV炭化物の再固溶が十分でないため、V炭化物が熱間圧延時の割れの原因となる。なお、スラブ加熱温度が1300℃を超えると、スケール生成量増加による歩留まり低下、製造コストの上昇が問題となるため、1300℃以下とすることが好ましい。より好ましくは、1030℃以上1250℃以下である。
さらに、熱延工程において、圧延終了温度を800℃以上とする。800℃未満で圧延を行うと、生成したV炭化物を起点とした割れが問題となる。なお、好ましくは820℃以上である。
[冷却工程]
加熱された鋳片に熱間圧延を施す工程に引続き、冷却工程において、V炭化物を析出させるために、800℃以下400℃以上の温度範囲の滞留時間が300s以上となる冷却を行う。
なお、冷却方法は前記滞留時間の条件を満足できるなら、自然放冷、ガス冷却、水冷却、炉等を用いた徐冷等、いずれの方法も適用できる。
なお、上記した温度は、いずれも鋼材の表面下1mm位置での温度である。
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに説明する。
まず、真空溶解炉により、溶鋼を溶製し、鋳造して、表1に示す成分組成の鋳片(肉厚:200~350mm)を製造した。ついで、得られた鋳片を、表2に示す加熱温度に加熱する加熱工程と、加熱された鋳片に、表2に示す条件で熱間圧延を施し表2に示す板厚の鋼板(鋼材)とする熱延工程と、引続き、得られた鋼板に、表2に示す、800℃から400℃間の滞留時間となる冷却を施す冷却工程と、を順次行い、鋼材(鋼板)を得た。
また、熱延工程後の冷却工程は、冷却を、水冷又は空冷、あるいはそれらの組合せにより行った。なお、平均冷却速度は、鋼板の表面下1mmの位置に取り付けた熱電対で測定した温度に基づき算出した。
得られた鋼板について、組織観察、および摩耗試験を実施し、表面下1mm部での基地中のオーステナイト相の面積率およびV炭化物の面積率を求め、さらに、耐すべり摩耗性および耐衝撃摩耗性を評価した。観察並びに試験方法はつぎのとおりとした。
(1)組織観察
得られた各鋼板の所定の位置から、観察面が、表面下1mmの位置となるように、組織観察用試験片を採取し、観察面を研削、研磨(鏡面)した。
(1-1)オーステナイト相面積率
採取した組織観察用試験片を用い、鏡面研磨された観察面について、後方散乱電子回折(EBSP)解析を行った。EBSP解析は、1mm×1mmの範囲を、測定電圧:20kV、ステップサイズ:1μmの条件で行い、得られたInverse Pole Figure(逆極点図)マップから、介在物、析出物を除いた組織(フェライト相、ベイナイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織、オーステナイト相)全体に対するオーステナイト相の割合(面積率)を算出した。
(1-2)V炭化物面積率
採取した組織観察用試験片を用いて、鏡面研磨された観察面について、走査型電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて、1mm×1mmの範囲を、加速電圧:15kV、ステップサイズ:1μmの条件で解析し、V炭化物を同定し、画像解析ソフトを用いて該V炭化物の総面積を測定し、V炭化物の面積率を算出した。なお、EDSの測定に際しては、原子分率でVを10at%以上、Cを30at%以上含む析出物をV炭化物としてカウントした。
(2)摩耗試験
鋼材の耐摩耗性は、主に表面の特性によって決まる。そこで、得られた鋼板の表面下1mmの位置が試験位置(試験面)となるように、摩耗試験片(厚さ10mm×幅25mm×長さ75mm)を採取した。なお、試験片の厚さは、鋼板厚さが10mmを超える場合には、減厚して厚さ10mmに調整した。鋼板厚さが10mm以下である場合には、試験位置(表面下1mm)の調整以上の減厚は行わなかった。
(2-1)衝撃摩耗試験
各鋼板から採取した上記摩耗試験片1を各3本ずつ同時に、図1に示す摩耗試験装置のドラム2内に装着して、衝撃摩耗試験を実施した。なお、試験片1は、試験面が摩耗材3と衝突する向きに装着した。また、摩耗試験の条件は、
ドラム回転速度:45rpm
試験片回転速度:600rpm
とした。なお、試験片回転数が10000回ごとに、摩耗材を入れ替えて試験し、試験片回転数が合計で50000回に達した時点で、試験を終了した。なお、摩耗材3としては、SiO2を90%以上含む石(円相当直径5~35mm)を使用した。なお、比較として、軟鋼板(SS400)から採取した摩耗試験片について、同様の摩耗試験を実施した。
以上の試験後に、各試験片の摩耗量(試験前と試験後の重量変化(減少)量)を測定した。得られた各試験片の摩耗量の平均値を各鋼板の摩耗量の代表値とした。そして、得られた摩耗量から、軟鋼板の摩耗量と各鋼板(試験鋼板)の摩耗量との比、(軟鋼板の摩耗量)/(各鋼板(試験鋼板)の摩耗量)を、耐衝撃摩耗比として算出した。この耐衝撃摩耗比が大きいほど、各鋼板の耐衝撃摩耗性が優れていることを意味する。ここで、耐衝撃摩耗比が1.7以上である鋼材を優れた耐衝撃摩耗性を有するとして合格と評価し、それ以外を不合格と評価した。
(2-2)すべり摩耗試験
各鋼板から採取した摩耗試験片1を、図2に示す摩耗試験装置に装着して、ASTMG-65の規定に準拠して、すべり摩耗試験を実施した。ここで、図2に示す摩耗試験装置は、ホッパー4内の摩耗材5を摩耗試験片6と回転するラバーホイール7との間に供給し、滑り摩耗を計測するものである。なお、符号8は摩耗試験片6をラバーホイール7側に押し付けるための錘である。
摩耗試験は、各鋼板で各3本の摩耗試験片を用意した。摩耗材5は、SiO2を90%以上含む砂(円相当直径210~300μm)を使用した。なお、比較として、軟鋼板(SS400)から採取した摩耗試験片について、同様の摩耗試験を実施した。試験条件は、下記のとおり、
摩耗材(砂)5の流量:300g/min、
ラバーホイール7の回転数:200±10rpm、
荷重(錘8による):130±3.9N
とした。ラバーホイール7の回転数が2000回に達した時点で、試験を終了した。
以上の試験後に、、各試験片の摩耗量(試験前と試験後の重量変化(減少)量)を測定した。得られた各試験片の摩耗量の平均値を各鋼板の摩耗量の代表値とした。
そして、得られた摩耗量から、軟鋼板の摩耗量と各鋼板(試験鋼板)の摩耗量との比、(軟鋼板の摩耗量)/(各鋼板(試験鋼板)の摩耗量)を、耐すべり摩耗比として算出した。この耐すべり摩耗比が大きいほど、各鋼板の耐すべり摩耗性が優れていることを意味する。ここで、耐すべり摩耗比が、3.0以上である鋼材を優れた耐すべり摩耗性を有するとして合格と評価し、それ以外を不合格と評価した。
(3)割れ評価
得られた各鋼板の長手端部から500mmの位置から全幅分の組織観察用試験片を採取し、板幅方向×板厚方向面を研削、研磨(鏡面)した。そして、鋼板表層からの板厚方向の最大割れ深さを光学顕微鏡観察にて評価した。ここで、V炭化物を分散させていない通常の高マンガンオーステナイト鋼の最大割れ深さが5mm以下程度であることから、割れ深さが5mm以下であるものを、熱間割れに対して悪影響を与えていないものとみなして合格と評価し、それ以外を不合格と評価した。
上記した各評価結果を表2に示す。
Figure 2022031163000001
Figure 2022031163000002
本発明例(鋼材No.1-1~No. 1-30)はいずれも、優れた耐すべり摩耗性と優れた耐衝撃摩耗性と耐熱間割れ性を兼備した鋼材(鋼板)となっている。これに対して、本発明の範囲を外れる比較例(鋼材No.1-31~No.1-46)では、耐すべり摩耗性、耐衝撃摩耗性、耐熱間割れ性のうち、少なくとも1つが低下している。
例えば、C含有量が低い鋼材No. 1-31では、オーステナイト安定度が低下し、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。Mn含有量が低い鋼材No. 1-32では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。上記の(1)式を満足しない鋼材No. 1-33、No. 1-34、No. 1-35では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。また、V含有量が低い鋼材No. 1-36、No. 1-37では、V炭化物の含有量が低いため、耐すべり摩耗性が低下している。V添加量が多すぎる鋼材No. 1-38では、熱間割れが大きくなっている。Ti添加量が多すぎる鋼材No. 1-39では、熱間割れが大きくなっている。Nb添加量が多すぎる鋼材No. 1-40では、熱間割れが大きくなっている。また、加熱温度が低い鋼材No. 1-41では、熱間圧延中に既に析出していたV炭化物が多かったため、熱間割れが大きくなっている。圧延終了温度が低い鋼材No. 1-42、No. 1-44、No. 1-46では、熱間圧延中に既に析出していたV炭化物が多かったため、熱間割れが大きくなっている。冷却工程における800℃以下400℃以上での滞留時間の短い鋼材No. 1-43、No. 1-45ではV炭化物の量が少ないため、耐すべり摩耗性が低下している。
次に、真空溶解炉により、溶鋼を溶製し、鋳造して、表3に示す成分組成の鋳片(肉厚:200~350mm)を製造した。ついで、得られた鋳片を、表4に示す加熱温度に加熱する加熱工程と、加熱された鋳片に、表4に示す条件で熱間圧延を施し表4に示す板厚の鋼板(鋼材)とする熱延工程と、引続き、得られた鋼板に、表4に示す、800℃から400℃間の滞留時間となる冷却を施す冷却工程と、を順次行い、鋼材(鋼板)を得た。
また、熱延工程後の冷却工程は、冷却を、水冷又は空冷、あるいはそれらの組合せにより行った。なお、平均冷却速度は、鋼板の表面下1mmの位置に取り付けた熱電対で測定した温度に基づき算出した。
得られた鋼板について、組織観察、および摩耗試験を実施し、表面下1mm部での基地中のオーステナイト相の面積率およびV炭化物の面積率を求め、さらに、耐すべり摩耗性および耐衝撃摩耗性を評価した。観察並びに各試験方法は、実施例1における上記(1)~(3)に示した手法と同様である。
さらに、冷間曲げ加工性についての評価を行った。
(4)冷間曲げ加工性評価
得られた各鋼板から、全厚分の750×150mmサンプルを採取し、JIS Z2448(1996)に準拠して3点曲げ試験を実施した。なお、曲げ半径は1.5t(t:鋼板の板厚[mm])とし、3点曲げの外面側に鋼板の裏面側が来る向きで室温にて180°曲げを行った後、試験片表面の割れ発生の有無を目視で評価し、冷間曲げ加工性を評価した。
上記した各評価結果を表4に示す。
Figure 2022031163000003
Figure 2022031163000004
本発明例はいずれも、優れた耐すべり摩耗性および耐衝撃摩耗性と優れた耐熱間割れ性とを有することは勿論、さらには、優れた冷間曲げ加工性を備える鋼材(鋼板)となっている。これに対して、本発明の範囲を外れる比較例では、耐すべり摩耗性、耐衝撃摩耗性、耐熱間割れ性、冷間曲げ加工性のうち、少なくとも1つが低下している。
例えば、C含有量が低い鋼材No.2-31では、オーステナイト安定度が低下し、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。Mn含有量が低い鋼材No. 2-32では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。上記の(1)式を満足しない鋼材No. 2-33、No. 2-34、No. 2-35では、オーステナイト安定度が低く、オーステナイト相の割合が低いため、耐衝撃摩耗性が低下している。また、V含有量が低い鋼材No. 2-36、No. 2-37では、V炭化物の含有量が低いため、耐すべり摩耗性が低下している。V添加量が多すぎる鋼材No. 2-38では、熱間割れが大きくなっている。Ti添加量が多すぎる鋼材No. 2-39では、熱間割れが大きくなっている。Nb添加量が多すぎる鋼材No. 2-40では、熱間割れが大きくなっている。また、加熱温度が低い鋼材No. 2-41では、熱間圧延中に既に析出していたV炭化物が多かったため、熱間割れが大きくなっている。圧延終了温度が低い鋼材No. 2-42、No. 2-44、No. 2-46では、熱間圧延中に既に析出していたV炭化物が多かったため、熱間割れが大きくなっている。冷却工程における800℃以下400℃以上での滞留時間の短い鋼材No. 2-43、No. 2-45ではV炭化物の量が少ないため、耐すべり摩耗性が低下している。
V添加量が上限値を超える、No. 2-2、No. 2-3、No. 2-4、No. 2-8、No. 2-9、No. 2-10、No. 2-11、No. 2-12、No. 2-13、No. 2-15、No. 2-16、No. 2-17、No. 2-20、No. 2-21、No. 2-22、No. 2-23、No. 2-24、No. 2-25、No. 2-26、No. 2-27、No. 2-28およびNo. 2-29は、冷間曲げ加工性が低下している。
1 摩耗試験片
2 ドラム
3 摩耗材(石)
4 ホッパー
5 摩耗材(砂)
6 摩耗試験片
7 ラバーホイール
8 錘

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.10%以上2.50%以下、
    Mn:8.0%以上45.0%以下、
    P:0.300%以下、
    S:0.1000%以下、
    V:0.05%以上2.50%以下、
    Al:0.001%以上0.500%以下、
    N:0.5000%以下および
    O(酸素):0.1000%以下
    を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成と、
    面積率で、オーステナイト相を90%以上かつV炭化物を0.1%以上含む組織と、
    を有する鋼材。

    25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
    ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
  2. 質量%で、
    C:0.10%以上2.50%以下、
    Mn:8.0%以上45.0%以下、
    P:0.300%以下、
    S:0.1000%以下、
    V:0.05%以上0.50%以下、
    Al:0.001%以上0.500%以下、
    N:0.5000%以下および
    O(酸素):0.1000%以下
    を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成と、
    面積率で、オーステナイト相を90%以上かつV炭化物を0.1%以上含む組織と、
    を有する鋼材。

    25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
    ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
  3. 前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
    Si:0.01%以上3.00%以下、
    Cu:0.1%以上1.0%以下、
    Ni:0.1%以上3.0%以下、
    Cr:0.1%以上5.0%以下、
    Mo:0.1%以上3.0%以下、
    Nb:0.001%以上0.100%以下、
    Ti:0.001%以上0.100%以下、
    W:0.01%以上0.50%以下、
    B:0.0003%以上0.1000%以下、
    Ca:0.0003%以上0.1000%以下、
    Mg:0.0001%以上0.1000%以下および
    REM:0.0005%以上0.1000%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 溶鋼を溶製して鋳片とする鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、前記加熱した鋳片を熱間圧延して鋼材とする熱延工程と、前記鋼材に冷却を施す冷却工程と、を順次施す鋼材の製造方法であって、
    前記鋳片は、質量%で、
    C:0.10%以上2.50%以下、
    Mn:8.0%以上45.0%以下、
    P:0.300%以下、
    S:0.1000%以下、
    V:0.05%以上2.50%以下、
    Al:0.001%以上0.500%以下、
    N:0.5000%以下および
    O(酸素):0.1000%以下
    を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成に調整し、
    前記熱延工程は、スラブ加熱温度を1000℃以上とし、圧延終了温度を800℃以上とし、
    前記冷却工程は、800~400℃の温度範囲における滞留時間を300s以上とする、鋼材の製造方法。

    25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
    ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
  5. 溶鋼を溶製して鋳片とする鋳造工程と、該鋳片を加熱する加熱工程と、前記加熱した鋳片を熱間圧延して鋼材とする熱延工程と、前記鋼材に冷却を施す冷却工程と、を順次施す鋼材の製造方法であって、
    前記鋳片は、質量%で、
    C:0.10%以上2.50%以下、
    Mn:8.0%以上45.0%以下、
    P:0.300%以下、
    S:0.1000%以下、
    V:0.05%以上0.50%以下、
    Al:0.001%以上0.500%以下、
    N:0.5000%以下および
    O(酸素):0.1000%以下
    を含み、かつ、C、VおよびMnを、下記(1)式を満足する範囲にて含有し、残部がFe及び不可避不純物である成分組成に調整し、
    前記熱延工程は、スラブ加熱温度を1000℃以上とし、圧延終了温度を800℃以上とし、
    前記冷却工程は、800~400℃の温度範囲における滞留時間を300s以上とする、鋼材の製造方法。

    25([C]-12.01[V]/50.94)+[Mn]≧25 ……(1)
    ここで、[C]、[V]、[Mn]:各元素の含有量(質量%)
  6. 前記鋳片は、前記成分組成に加えてさらに、質量%で、
    Si:0.01%以上3.00%以下、
    Cu:0.1%以上1.0%以下、
    Ni:0.1%以上3.0%以下、
    Cr:0.1%以上5.0%以下、
    Mo:0.1%以上3.0%以下、
    Nb:0.001%以上0.100%以下、
    Ti:0.001%以上0.100%以下、
    W:0.01%以上0.50%以下、
    B:0.0003%以上0.1000%以下、
    Ca:0.0003%以上0.1000%以下、
    Mg:0.0001%以上0.1000%以下および
    REM:0.0005%以上0.1000%以下
    のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する、請求項4または5に記載の鋼材の製造方法。
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