JP2022022483A - 方向性電磁鋼板の製造方法および方向性電磁鋼板 - Google Patents

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宣郷 森重
Norisato Morishige
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雄樹 国田
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Abstract

【課題】還流磁区の発生量を抑えて、得られる方向性電磁鋼板の鉄損を低減し、併せて低騒音化が実現された方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】磁区細分化処理の前の仕上焼鈍板に特殊な軽酸洗溶液を用いて軽酸洗処理をすることで、還流磁区の発生量を抑えて、ヒステリシス損の増加を抑制し、方向性電磁鋼板の鉄損を低減し、低騒音化を実現する。得られた方向性電磁鋼板は、磁区細分化処理を施す前よりも渦電流損が0.07W/kg以上低減し、ヒステリシス損の増加が0.02W/kg以下であり、1.7Tに励磁したときの磁歪λp-pの変化が0.2μm/m以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法および方向性電磁鋼板に関する。
方向性電磁鋼板は、鋼板成分として、一般的に、Siを2質量%~5質量%程度含有し、鋼板の結晶粒の方位をGoss方位と呼ばれる{110}<001>方位に高度に集積させた鋼板である。方向性電磁鋼板は、磁気特性に優れ、例えば、変圧器等の静止誘導器の鉄心材料などとして利用される。
このような方向性電磁鋼板では、磁気特性を向上させるために、種々の技術開発がなされている。特に、近年の省エネルギー化の要請に伴って、方向性電磁鋼板では、さらなる低鉄損化が求められている。方向性電磁鋼板の低鉄損化には、鋼板の結晶粒の方位について、Goss方位への集積度を高めて磁束密度を向上させて、ヒステリシス損失を低減することが有効である。
巻トランスの母材として用いられる方向性電磁鋼板には、低鉄損化と同時に、更なる低騒音化が求められている。電磁鋼板では、低鉄損化の為に磁区細分化処理が行われている。鉄損を低減させるための磁区細分化処理は、一般的には、レーザー照射等により、電磁鋼板の表面付近に歪みを導入することによって行われている。
レーザー照射等により、電磁鋼板の表面付近に歪みを導入する磁区制細分化手法としては、例えば、特許文献1には、最終仕上焼鈍後形に成されるフォルステライト被膜中のN含有量を3.0質量%以下に抑制して、レーザー照射による磁区細分化処理を行うことで、得られた方向性電磁鋼板の鉄損が低減することが開示されている。また、フォルステライト被膜中のAl量、Ti量を制御して各フォルステライトの組成変動を抑制し、フォルステライト粒子径の標準偏差を平均粒子径の1.0倍以下とすることで、鉄損改善効果がさらに向上することが開示されている。
特許文献2には、鋼板の表面に設けられたグラス被膜の結晶質のフォルステライトの量、鋼板面内での特定の平均結晶粒径を有するフォルステライト粒の分布をコントロールすることで、低いレーザパワーでも磁区制御効果を高いレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板を提供して、方向性電磁鋼板において、高いレベルで低鉄損と低磁歪が実現されることが開示されている。
特許文献1、2には、鉄損低減効果を得るための磁区細分化技術に関して、種々提案されているが、低騒音化、低鉄損化の両方の効果を実現することに関してはなんら提案されていない。
特開2012-31512号公報 特開2019-002039号公報
磁区細分化処理によって、電磁鋼板表面に導入される還流磁区は、騒音に悪影響を与える。トランスでは、低騒音化、低鉄損化の両方が求められているが、特に、騒音に与える影響が少ない磁区細分化手法が求められている。
本発明では、磁区細分化処理の前の仕上焼鈍板に特殊な軽酸洗溶液を用いて軽酸洗処理をすることで、鋼板表層に存在するMnS等の析出物の伝熱係数を上げ、磁区細分化処理の効果を、鋼板表層部のみに集中させ、歪みの総量を減らすこと、すなわち還流磁区の発生量を抑えて、ヒステリシス損の増加も抑制し、得られる方向性電磁鋼板の鉄損を低減し、併せて更なる低騒音化を実現することを目的とする。
本発明の要旨は、
(1)順に、
質量%で、少なくともSi:2.5%~4.5%、Mn:0.01%~0.15%を含有し、残部がFe及び不純物であるスラブに、熱間圧延を施して、熱延鋼板を得る工程、
前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施して。熱延焼鈍板を得る工程、
前記熱延焼鈍板に冷間圧延を施して、冷延鋼板を得る工程、
前記冷延鋼板に脱炭焼鈍を施す工程、
脱炭焼鈍後の前記冷延鋼板の表面にMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施して、仕上焼鈍板を得る工程、
前記仕上焼鈍板に軽酸洗を施して、前記焼鈍分離剤を除去する工程、
焼鈍分離剤が除去した鋼板に絶縁コーティング液を塗布して、平坦化焼鈍を施す工程、
得られた平坦化焼鈍板に熱歪付与手段によって磁区細分化処理を施す工程、
を含む方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記軽酸洗溶液が、Cu、Hg、Ag、Pb、Cd、Co、ZnおよびNiのうちから1種または2種以上を含有し、各元素の濃度の合計が0.0001~0.1000質量%以下であり、
pHが-1以上5以下であり、
液温が15℃以上100℃以下であり、
前記仕上焼鈍板が前記軽酸洗溶液に浸漬される時間が、5秒以上200秒以下である
ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)前記熱歪付与手段が、レーザーまたは電子ビームから選ばれる前記(1)に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)質量%で、少なくともSi:2.50~4.50%、Mn:0.01~0.15%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、熱歪付与手段によって磁区細分化を施された電磁鋼板であって、された
磁区細分化処理を施す前よりも
渦電流損が0.07W/kg以上低減し、
ヒステリシス損の増加が0.02W/kg以下であり、
1.7Tに励磁したときの磁歪λp-pの変化が0.2μm/m以下である
ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
(4)前記熱歪付与手段が、レーザーまたは電子ビームから選ばれる前記(3)に記載の方向性電磁鋼板。
本発明によれば、製造時の磁区細分化処理の効果を、鋼板表層部のみに集中させ、歪みの総量を減らして、還流磁区の発生量を抑えることで、ヒステリシス損の増加が抑制され、方向性電磁鋼板の鉄損が低減され、騒音が低減される。
以下に本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、特に断らない限り、数値AおよびBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
本発明の一実施形態は、以下の構成を備える方向性電磁鋼板の製造方法である。
順に、質量%で、少なくともSi:2.5%~4.5%、Mn:0.01%~0.15%を含有し、残部がFe及び不純物であるスラブに、熱間圧延を施して、熱延鋼板を得る工程、
前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施して。熱延焼鈍板を得る工程、
前記熱延焼鈍板に冷間圧延を施して、冷延鋼板を得る工程、
前記冷延鋼板に脱炭焼鈍を施す工程、
脱炭焼鈍後の前記冷延鋼板の表面にMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施して、仕上焼鈍板を得る工程、
前記仕上焼鈍板に軽酸洗を施して、前記焼鈍分離剤を除去する工程、
焼鈍分離剤が除去した鋼板に絶縁コーティング液を塗布して、平坦化焼鈍を施す工程、
得られた平坦化焼鈍板に熱歪付与手段によって磁区細分化処理を施す工程、
を含む方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記軽酸洗溶液が、Cu、Hg、Ag、Pb、Cd、Co、ZnおよびNiのうちから1種または2種以上を含有し、各元素の濃度の合計が0.0001~0.1000質量%以下であり、
pHが-1以上5以下であり、
液温が15℃以上100℃以下であり、
前記仕上焼鈍板が前記軽酸洗溶液に浸漬される時間が、5秒以上200秒以下である
ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
以下、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法について具体的に説明する。
[スラブの成分組成]
まず、本実施形態に係る方向性電磁鋼板に用いられるスラブの成分組成について説明する。なお、以下では特に断りのない限り、「%」との表記は「質量%」を表わすものとする。また、以下で説明する元素以外のスラブの残部は、Feおよび不純物である。ここで、不純物とは、原材料に含まれる成分、または製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。また、方向性電磁鋼板の素材であるスラブの化学組成は基本的には方向性電磁鋼板の組成に準じたものになる。しかし、一般的な方向性電磁鋼板の製造においては製造過程で脱炭焼鈍および純化焼鈍により含有元素の一部が系外に排出されるため、素材であるスラブと最終製品である方向性電磁鋼板の化学組成は異なるものとなる。方向性電磁鋼板の特性を所望のものになるように、製造過程での脱炭焼鈍および純化焼鈍の影響等を考慮して、スラブ組成を適宜調整可能である。
発明に係る方向性電磁鋼板の製造用いられるスラブの成分は、少なくとも、Si:2.50~4.50%、Mn:0.01~0.15%を含有する。
Si(ケイ素)の含有量は、2.5~4.5%である。Siは、鋼板の電気抵抗を高めることで、鉄損の原因の一つである渦電流損失を低減する。Siの含有量が2.5%未満である場合、最終的な方向性電磁鋼板の渦電流損失を十分に抑制することが困難になるため好ましくない。Siの含有量が4.5%超である場合、方向性電磁鋼板の加工性が低下するため好ましくない。したがって、Siの含有量は、2.5%~4.5%であり、好ましくは、2.7~4.0%である。
Mn(マンガン)の含有量は、0.01~0.15%である。Mnは、二次再結晶を左右するインヒビターであるMnSおよびMnSeなどを形成する。Mnの含有量が0.01%未満である場合、二次再結晶を生じさせるMnSおよびMnSeの絶対量が不足するため好ましくない。Mnの含有量が0.15%超である場合、スラブ加熱時にMnの固溶が困難になるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.15%超である場合、インヒビターであるMnSおよびMnSeの析出サイズが粗大化し易く、インヒビターとしての最適サイズ分布が損なわれるため好ましくない。したがって、Mnの含有量は、0.01~0.15%であり、好ましくは、0.03~0.13%である。
SiおよびMn以外の成分は、以下の成分となることができる。
例えば、Si,Mn以外の成分として、質量%で、C:0.020~0.100%、SおよびSeのうち1種または2種の合計:0.001~0.050%、酸可溶性Al:0.010~0.050%、N:0.002~0.015%、Cr:~0.300%以下、Cu:~0.400%以下、P:~0.500%以下、Sn:~0.300%以下、Sb:~0.300%以下、Ni:~1.000%以下、Bi:~0.020%以下を含有することができる。
C(炭素)の含有量は、0.02~0.10%である。Cには、種々の役割があるが、Cの含有量が0.02%未満である場合、スラブの加熱時に結晶粒径が過度に大きくなることで、最終的な方向性電磁鋼板の鉄損値を増大させるため好ましくない。Cの含有量が0.10%超である場合、冷間圧延後の脱炭時に、脱炭時間が長時間になり、製造コストが増加するため好ましくない。また、Cの含有量が0.10%超である場合、脱炭が不完全になり易く、最終的な方向性電磁鋼板において磁気時効を起こす可能性があるため好ましくない。したがって、Cの含有量は、0.02~0.10%であり、好ましくは、0.05~0.09%である。
S(硫黄)およびSe(セレン)の含有量は、合計で0.001~0.050%である。SおよびSeは、上述したMnと共にインヒビターを形成する。SおよびSeは、2種ともスラブに含有されていてもよいが、少なくともいずれか1種がスラブに含有されていればよい。SおよびSeの含有量の合計が上記範囲を外れる場合、十分なインヒビター効果が得られないため好ましくない。したがって、SおよびSeの含有量は、合計で0.001~0.050%であり、好ましくは、0.001~0.040%である。
酸可溶性Al(酸可溶性アルミニウム)の含有量は、0.01~0.05%である。酸可溶性Alは、高磁束密度の方向性電磁鋼板を製造するために必要なインヒビターを構成する。酸可溶性Alの含有量が0.01%未満である場合、酸可溶性Alが量的に不足し、インヒビター強度が不足するため好ましくない。酸可溶性Alの含有量が0.05%超である場合、インヒビターとして析出するAlNが粗大化し、インヒビター強度を低下させるため好ましくない。したがって、酸可溶性Alの含有量は、0.01~0.05%であり、好ましくは、0.01~0.04%である。
N(窒素)の含有量は、0.002~0.015%である。Nは、上述した酸可溶性Alと共にインヒビターであるAlNを形成する。Nの含有量が上記範囲を外れる場合、十分なインヒビター効果が得られないため好ましくない。したがって、Nの含有量は、0.002~0.015%であり、好ましくは、0.002~0.012%である。
また、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造に用いられるスラブは、上述した元素の他に、磁気特性向上のために、残部Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.4%以下、P:0.5%以下、Sn:0.3%以下、Sb:0.3%以下、Ni:1.0%以下、Bi:0.02%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。一態様に係るスラブにおいては、質量%で、Crの含有量が0.02%以上であってよく、Biの含有量が0.0005%以上であってよく、Sbの含有量が0.005%以上であってよく、Moの含有量が0.005%以上であってよい。
上記で説明した成分組成に調整された溶鋼を鋳造することで、スラブが形成される。なお、スラブの鋳造方法は、特に限定されない。また、研究開発において、真空溶解炉などで鋼塊が形成されても、上記成分について、スラブが形成された場合と同様の効果が確認できる。
[熱延鋼板とする工程]
鋳造されたスラブを所定の温度で加熱し、加熱されたスラブは、熱間圧延されて熱延鋼板に加工される。加工後の熱延鋼板の板厚は、例えば、1.8mm~3.5mmであってもよい。熱延鋼板の板厚が1.8mm未満である場合、熱間圧延後の鋼板温度が低温化し、鋼板中のAlNの析出量が増加することで二次再結晶が不安定となって、最終的な板厚が0.23mm以下の方向性電磁鋼板において磁気特性が低下するため好ましくない。熱延鋼板の板厚が3.5mm超である場合、冷間圧延の工程での圧延負荷が大きくなるため好ましくない。
[焼鈍工程]
熱延鋼板に通常の熱延板焼鈍を行って、熱延焼鈍板を得てもよい。熱延板焼鈍を施すと、熱延鋼板の結晶粒組織が調整され、より安定した二次再結晶を得ることができる。
[冷延鋼板とする工程]
熱延鋼板に、酸洗を施した後、1回の冷間圧延、または中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延にて圧延することで、冷延鋼板に加工する。
また、冷間圧延のパス間、圧延ロールスタンド間、または圧延中に、鋼板を、300℃程度以下で加熱処理してもよい。このような場合、最終的な方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させることができる。なお、熱延鋼板を、3回以上の冷間圧延によって圧延してもよいが、多数回の冷間圧延は、製造コストを増大させるため、熱延鋼板を、1回または2回の冷間圧延によって圧延することが好ましい。冷間圧延をゼンジミアミルなどのリバース圧延で行う場合、それぞれの冷間圧延におけるパス回数は、特に限定されないが、製造コストの観点から、9回以下が好ましい。
[脱炭焼鈍工程]
続いて、脱炭焼鈍を行う。冷延鋼板に対して、所定の温度条件(例えば700~900℃で1~3分間加熱する条件)の下で熱処理(すなわち、脱炭焼鈍処理)を実施する。脱炭焼鈍処理を実施すると、冷延鋼板において、炭素が所定量以下に低減され、一次再結晶組織が形成される。また、脱炭焼鈍では、冷延鋼板の表面に、シリカ(SiO2)を主成分として含有する酸化物層が形成される。
続いて、焼鈍分離剤塗布行う。この工程では、マグネシア(MgO)を主成分として含有する焼鈍分離剤を、冷延鋼板の表面(酸化物層の表面)に塗布する。
[仕上焼鈍工程]
続いて、仕上焼鈍を行う、焼鈍分離剤が塗布された冷延鋼板に対して、所定の温度条件(例えば1100~1300℃で20~24時間加熱する条件)の下で熱処理(すなわち、仕上焼鈍処理)を実施する。仕上焼鈍処理を実施すると、二次再結晶が冷延鋼板に生じるとともに、冷延鋼板が純化される。その結果、上述の鋼板の化学組成を有し、結晶粒の磁化容易軸と圧延方向Xとが一致するように結晶方位が制御された冷延鋼板が得られる。
また、上記のような仕上焼鈍処理が実施されると、シリカを主成分として含有する酸化物層が、マグネシアを主成分として含有する焼鈍分離剤と反応して、鋼板の表面にフォルステライト(Mg2SiO4)等の複合酸化物を含むグラス皮膜が形成される。仕上焼鈍工程では、鋼板がコイル状に巻かれた状態で仕上焼鈍処理が実施される。鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布することにより、コイル状に巻かれた鋼板に焼き付きが発生することを防止することができる。
[軽酸洗工程]
続いて、仕上焼鈍板表面に残った焼鈍分離剤を除去するために軽酸洗を施す。
軽酸洗溶液は、Cu、Hg、Ag、Pb、Cd、Co、ZnおよびNiのうちから1種または2種以上を含有し、各元素の濃度の合計が0.0001~0.1000%であり、pHが-1以上5以下である。酸洗溶液の液温は15℃以上100℃以下であり、鋼板が軽酸洗溶液に浸漬される時間は5秒以上200秒以下である。
軽酸洗溶液のCu、Hg、Ag、Pb、Cd、Co、ZnおよびNiのうち1種または2種以上の濃度の合計が0.0001%未満である場合、板厚方向の残留MnS/Se表面の改質効果が不十分となり好ましくない。軽酸洗溶液のCu、Hg、Ag、Pb、Cd、Co、ZnおよびNiのうち1種または2種以上の濃度の合計が0.1000%超である場合、磁性向上の効果が飽和することに加えて、軽酸洗溶液のコストが増大するので好ましくない。したがって、軽酸洗溶液のCu、Hg、Ag、Pb、Cd、Co、ZnおよびNiのうち1種または2種以上の濃度の合計は、0.0001~0.1000%である。
軽酸洗溶液のpHが-1未満である場合、酸性が強くなり過ぎて鋼板表面のグラス被膜が除去されてしまうので、好ましくない。軽酸洗溶液のpHが5超である場合、軽酸洗処理による残留MnS/Se表面の改質効果が不十分となり好ましくない。したがって、軽酸洗溶液のpHは、-1以上5以下である。
軽酸洗溶液の液温が15℃未満である場合、軽酸洗処理による残留MnS/Se表面の改質効果が不十分となり好ましくない。軽酸洗溶液の液温が100℃超である場合、酸洗溶液の取扱いが困難となるので好ましくない。したがって、軽酸洗溶液の液温は15℃以上100℃以下である。
軽酸洗処理において鋼板が軽酸洗溶液に浸漬される時間が5秒未満である場合、軽酸洗処理による残留MnS/Se表面の改質効果が不十分となり好ましくない。軽酸洗処理において鋼板が軽酸洗溶液に浸漬される時間が200秒超である場合、設備が長大となるので好ましくない。したがって、軽酸洗処理において鋼板が軽酸洗溶液に浸漬される時間は5秒以上200秒以下である。
上述した条件で軽酸洗を行った場合、鋼中の析出物であるMnSが、鋼板表層でCu等の硫化物に置換されるか、もしくはCu等によってコーティングされることで、これらの析出物自体の伝熱係数は上り、これらの析出物を含む鋼板表層の伝熱係数も上がる。ここで、「鋼板表層」とは鋼板表面から約10μmまでの深さをいう。また、「置換」とは、もともと形成されていたMnSのMn部分が、軽酸洗液由来のCu等で置換され、MnSがCu等の硫化物と置き換わることをいい、「コーティングされる」とは、もともと形成されていたMnSの周囲に、酸洗液由来のCu等が新たに析出することをいう。本発明におけるこのような現象は、Cu等の析出方法に影響を受けない為、Cu等の硫化物への置換、Cu等のコーティングのどちらの現象が、酸洗処理時に起こっていても良い。これにより、熱歪を付与するレーザー照射等の熱の伝播効果を鋼板表層で高めることができる。
[絶縁コーティング液の塗布~平坦化焼鈍工程]
上記の軽酸洗処理された鋼板表面に対して、例えば、リン酸アルミニウムまたはコロイダルシリカなどを主成分とした絶縁被膜が鋼板の表面に塗布される。鋼板に対して絶縁性および張力が付与されるのであれば、絶縁被膜の成分は特に限定されない。その後、所定の温度条件(例えば840~920℃)の下で平坦化焼鈍が実施されることにより、最終的に、方向性電磁鋼板が得られる。
[磁区細分化処理]
平坦化焼鈍板に対して、熱歪付与手段によって磁区細分化処理を施す。磁区細分化処理は、熱歪付与手段として、レーザーまたは電子ビームを用いて、鋼板表面に圧延方向にほぼ直角に照射して、局部的に塑性歪を付与する。
熱付与手段としてレーザーを用いる場合は、レーザー光源としては、例えばファイバレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、またはCO2レーザー等の一般的に工業用に用いられる高出力レーザーを使用することができる。また、パルスレーザー、または連続波レーザーをレーザー光源として使用してもよい。レーザー光としては、集光性が高いシングルモードレーザーを用いることが好ましい。
レーザー光の照射条件として、例えば、レーザー出力を200W~3000Wに、レーザー光の圧延方向における集光スポット径(すなわちレーザー出力の86%を含む直径、以下86%径と省略記載)を10μm~200μmに設定し、レーザー光の板幅方向における集光スポット径(86%径)を10μm~1000μmに、レーザー走査速度を5m/s~50m/sに設定することが好ましい。低鉄損と低磁歪を両立できるように、これらのレーザー照射条件を適宜調整する。
熱付与手段として電子ビームを用いる場合は、電子ビーム照射装置としては、例えば、フィラメント、グリッド、電子銃、電磁レンズ、偏向コイルを用いた通常の電子ビーム照射装置を用いることができる。
電子ビーム照射の照射条件としては、例えば、加速電圧:50kV以上350kV以下、ビーム電流:0.3mA以上50mA以下、ビーム照射径:10μm以上500μm以下、照射間隔:3mm以上20mm以下、スキャン速度:5m/秒以上80m/秒以下であることが好ましい。低鉄損と低磁歪が両立できるよう、これらの電子ビーム照射条件を適宜調整する。
本発明のもう一つの一実施形態は、上述した本発明の方向性電磁鋼板の製造方法によってえられた方向性電磁鋼板である。即ち、本発明は、質量%で、少なくともSi:2.50~4.50%、Mn:0.01~0.15%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、熱歪付与手段によって磁区細分化処理が施された方向性電磁鋼板であって、磁区細分化処理を施す前よりも渦電流損が0.07W/kg以上低減し、ヒステリシス損の増加が0.02W/kg以下であり、1.7Tに励磁したときの磁歪λp-pの変化が0.2μm/m以下であることを特徴とする方向性電磁鋼板である。
[鋼板の成分組成]
まず、発明に係る方向性電磁鋼板に用いられる鋼板の成分組成について説明する。
なお、以下では特に断りのない限り、「%」との表記は「質量%」を表わすものとする。また、以下で説明する元素以外の鋼板の残部は、Feおよび不純物である。
発明に係る方向性電磁鋼板に用いられる鋼板の成分は、結晶方位を{110}<001>方位に集積させたGoss集合組織に制御するために好ましい成分構成を有し、少なくとも、Si:2.50~4.50%、Mn:0.01~0.15%を含有する。
(Si:2.50~4.50%)
Si(ケイ素)の含有量は、2.50~4.50%である。Siは、鋼板の電気抵抗を高めることで、鉄損の原因の一つである渦電流損失を低減する。Siの含有量が2.50%未満である場合、最終的な方向性電磁鋼板の渦電流損失を十分に抑制することが困難になるため好ましくない。Siの含有量が4.50%超である場合、方向性電磁鋼板の加工性が低下するため好ましくない。したがって、Siの含有量は、2.50~4.50%であり、好ましくは、2.70~4.00%である。
(Mn:0.01~0.15%)
Mn(マンガン)の含有量は、0.01~0.15%である。Mnは、二次再結晶を左右するインヒビターであるMnSおよびMnSeなどを形成する。Mnの含有量が0.01%未満である場合、二次再結晶を生じさせるMnSおよびMnSeの絶対量が不足するため好ましくない。Mnの含有量が0.15%超である場合、スラブ加熱時にMnの固溶が困難になるため好ましくない。また、Mnの含有量が0.15%超である場合、インヒビターであるMnSおよびMnSeの析出サイズが粗大化し易く、インヒビターとしての最適サイズ分布が損なわれるため好ましくない。したがって、Mnの含有量は、0.01~0.15%であり、好ましくは、0.03~0.13%である。
SiおよびMn以外の成分は、通常の方向性電磁鋼板に含まれている成分となることができる。
例えば、Si,Mn以外の成分として、質量%で、C:~0.085%以下、酸可溶性Al:~0.065%以下、N:~0.012%以下、Cr:~0.3%以下、Cu:~0.4%以下、P:~0.5%以下、Sn:~0.3%以下、Sb:~0.3%以下、Ni:~1%以下、SおよびSeは、合計で0.001~0.050%、Bi:~0.02%以下を含有することができる。
鋼板の上記成分以外の残部は、Feおよび不純物である。ここで、不純物元素とは、原材料に含まれる成分、または製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。
[全鉄損]
方向性電磁鋼板を交流で励磁したときに鋼板中で発生するエネルギー損失全体を鉄損と呼ぶ(ここでは後述する、渦電流損、ヒステリシス損の総和であることから「全鉄損」と呼ぶことにする)。通常、全鉄損は、JIS C 2550-1にあるエプスタイン試験器を用いた方法や、JIS C 2556:2015にある単板試験器を用いた方法によって測定される。どちらの測定器も、その測定原理は同じで、試験片を周回する励磁巻線(一次巻線)に交流の励磁電流を流すことによって試験片に励磁力を付与し、それによって生じた試験片の磁化(磁気分極)を同じく試験片に周回したサーチコイル(二次巻線)に生じる誘導起電力を測定することにより、試験片中の磁気分極(磁束密度)を測定する。この磁気分極の信号と励磁力の信号とを電力計に入力することによって、全鉄損を測定する。
[渦電流損]
本発明にいう「渦電流損」とは、交流励磁時に誘導起電力によって鋼板中に発生する渦電流に起因する鉄損のことをいい、全鉄損からヒステリシス損を減じることによって求める。あるいは全鉄損を励磁周波数で割った値の励磁周波数に対する変化の傾きから求める方法(周波数分離)もある。
本発明に係る方向性電磁鋼板は、磁区細分化処理を施す前の電磁鋼板よりも、渦電流損が0.07W/kg以上低減している。
渦電流損が0.07W/kg以上低減する理由は、磁区細分化処理によって導入された残留歪によって形成される還流磁区の量が十分であり、大きな磁区細分化効果が得られるためであると考えられる。
このため本発明に係る方向性電磁鋼板では、還流磁区の発生量は、コントロールされている。
渦電流損の測定方法は、以下のとおりである。
JIS C 2550-1に規定されたエプスタイン試験法やJIS C 2556に規定された単板磁気測定法により交流磁気測定により鉄損を測定し、下記に記述するヒステリシス損を減ずることによって求める。
[ヒステリシス損]
本発明にいう「ヒステリシス損」とは、励磁周波数に依存しない鉄損成分のことをいい、直流磁気測定によって求めた損失に励磁周波数を積算することによって求める。
本発明に係る方向性電磁鋼板は、磁区細分化処理を施す前の電磁鋼板よりも、ヒステリシス損の増加が0.02W/kg以下である。
ヒステリシス損の増加が0.02W/kg以下となる理由は、磁区細分化処理によって導入される残留歪が表面付近に局在し、形成される還流磁区も表面付近に局在するため、磁化過程に必要な磁壁移動を阻害しないためであると考えられる。
このため本発明に係る方向性電磁鋼板では、還流磁区の発生量は、コントロールされている。
ヒステリシス損の測定方法は、以下のとおりである。
JIS C 2550-1に規定されたエプスタイン試験法やJIS C 2556に規定された単板磁気測定法により、直流磁気測定によって求めた鉄損に励磁周波数を積算することによって求める
[磁歪λp-p]
本発明にいう「磁歪λp-p」とは、交流で励磁した時の磁歪変形の最小値と最大値の差の絶対値のことをいう。すなわち|λmax-λmin|である。ただし基準の試料長さを1mとしたときの磁歪変形の値に換算した値を用いる。
本発明に係る方向性電磁鋼板は、1.7Tに励磁したときの磁歪λp-pの変化が0.2μm/m以下である。
磁歪λp-pの変化が0.2μm/m以下である理由は、磁区細分化処理によって導入される残留歪が表面付近に局在し、還流磁区の総体積率としては大きくないため、励磁時に還流磁区が消滅する際の磁歪変形量が小さいためであると考えられる。
このため本発明に係る方向性電磁鋼板をトランスに用いた場合、騒音の発生が低減されている。
磁歪λp-pの測定方法は、以下のとおりである。
長手方向が圧延方向に平行になるように剪断した短冊状の試料を励磁フレームに挿入して、交流で励磁した時の磁歪変形を、レーザドップラー法のような非接触の光学的測定装置によって計測することにより測定する。磁歪変形の測定波形をトランジェントメモリーに記憶し、別途、サーチコイルで測定した試料の励磁波形の1周期内での磁歪変形量の最大値、最小値から磁歪λp-pを算出できる。
[板厚]
本発明の方向性電磁鋼板の厚みは、0.1~0.5mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.15~0.35mmである。
本発明に係る電磁鋼板は、鉄損(渦電流損、ヒシテリシス損)が低減されており、また。トランスに用いた場合、騒音の発生が低減される。この効果は、方向性電磁鋼板の製造時に、仕上焼鈍板に対して軽酸洗を施したことに起因すると考えられる。
上述した軽酸洗条件で仕上焼鈍板に対して軽酸洗を行った場合、鋼中の析出物であるMnSが、鋼板表層でCu等の硫化物で置換されるか、もしくはCu等によってコーティングされることで、これらの析出物自体の伝熱係数は上り、これらの析出物を含む鋼板表層の伝熱係数も上がる。これにより、熱歪を付与するレーザー照射等の熱の伝播効果を鋼板表層で高めることができる。本発明ではレーザー等の照射によって導入される歪みを、鋼板表面のみの伝熱係数を上げることによって、表層部のみに集中させ、歪みの総量を減らしている。すなわち還流磁区の発生量を抑えながら磁区細分化効果を得ている。また、歪みの総量が減ることで、レーザー等の照射によるヒステリシス損の増加も抑制される。
以下に、実施例を示しながら、本発明製造方法を用いて得られた方向性電磁鋼板について、より具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板のあくまでも一例に過ぎず、本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
質量分率で、Si:3.0%、C:0.08%、酸可溶性Al:0.05%、N:0.01%、Mn:0.12%、Cr:0.05%、Cu:0.04%、P:0.01%、Sn:0.02%、Sb:0.01%、Ni:0.005%、S:0.007%、Se:0.001%、を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学成分を有するスラブに対して熱間圧延が実施され、厚さ2.3mmの熱延鋼板が得た。
続いて、上記の熱延鋼板に対して、1000℃で1分間加熱するという温度条件の下で焼鈍処理を実施した。
焼鈍処理の後、冷間圧延を実施して、厚さ0.23mmの冷延鋼板を得た。続いて、この冷延鋼板に対して、800℃で2分間加熱するという温度条件の下で脱炭焼鈍処理を実施した後、マグネシア(MgO)を主成分として含有する焼鈍分離剤を、冷延鋼板の表面に塗布した。
続いて、焼鈍分離剤が塗布された冷延鋼板に対して、1200℃で20時間加熱するという温度条件の下で仕上焼鈍処理を実施した。その結果、上述の化学組成を有し、結晶粒の磁化容易軸と圧延方向とが一致するように結晶方位が制御された、グラス皮膜が表面に形成された鋼板が得られた。
仕上焼鈍板の表面に表1に示す軽酸洗液および軽酸洗条件で、軽酸洗処理を実施した。その後、コロイダルシリカおよびリン酸塩を含有する絶縁コーティング液をグラス皮膜の上から塗布した後、850℃で1分間加熱するという温度条件の下で平坦化焼鈍を実施し、最終的に、グラス皮膜および絶縁皮膜を備える方向性電磁鋼板が得られた。
実施例(発明例)として、本発明の範囲内の軽酸洗液を用い、比較例として、本発明の範囲外の軽酸洗液を用いて軽酸洗を行った。実施例、比較例に使用した軽酸洗液の成分、濃度、pH値、浸漬時間を表1に示す。
Figure 2022022483000001
軽酸洗後の、上記実施例、比較例の電磁鋼板の渦電流損、ヒステリシス損の値を上述した測定方法で測定した。
続いて、鋼板の表面に対してレーザー、電子ビームをそれぞれ照射して、鋼板の表面に、熱歪を付与した。
レーザー光照射装置はIPG社製のファイバレーザーを用いた。レーザー光の照射条件は、レーザー出力が300Wで、レーザー光の圧延方向における集光スポット径(86%径)を50μmで、レーザー光の板幅方向における集光スポット径(86%径)を100μmで、レーザー走査速度を50m/sで、レーザー走査ピッチ(間隔PL)を3mmに調整した。
電子ビーム照射装置は三菱電機製の電子ビーム照射装置を用いた。電子ビームの照射条件は、加速電圧を150kV、ビーム電流を3.0mA、ビーム照射径をΦ200μm、走査速度を20m/s、照射間隔を4mmとした。
得られた、実施例、比較例の電磁鋼板の、全鉄損、渦電流損、ヒステリシス損を上述した測定方法で測定し、磁区細分化処理後の渦電流損、ヒステリシス損の値と比較した。なお渦電流損、ヒステリシス損の値は励磁周波数50Hzで最大磁束密度1.7Tの正弦波励磁の時の値を示す。また、励磁周波数50Hzで1.7Tに励磁したときの磁歪λp-pも測定した。レーザー光照射による磁区細分化処理の前、後および処理の前後差の結果を表2に示す。電子ビーム照射による磁区細分化処理の前、後および処理の前後差の結果を表3に示す。
Figure 2022022483000002
Figure 2022022483000003
Figure 2022022483000004
Figure 2022022483000005
表2および表3に示すように、仕上焼鈍後の軽酸洗液および酸洗条件が本発明の範囲でないと、磁区細分化処理を施した方向性電磁鋼板が、磁区細分化処理を施す前よりも、渦電流損の改善代(しろ)が0.07W/kg未満であったり、ヒステリシス損の増加代(しろ)が0.02W/kgを超えたり、1.7Tに励磁したときの磁歪λp-pの変化が0.2μm/mを超えてしまったり、あるいはこれらすべてが生じることにより好ましい磁気特性を持つ方向性電磁鋼板が得られない事が解る。渦電流損は磁区細分化処理の効果の程度を示し、低鉄損材を得るためには、より大きいことが好ましい。しかるに磁区細分化処理によるヒステリシス損の増加は、磁区細分化処理による副作用ともいえる背反事象であり、低鉄損材を得るためにはより小さいことが好ましい。また磁区細分化処理による磁歪ピーク値の変化量は、磁歪波形の変調の大きさを示す量であり、低騒音変圧器を得るためにはより小さいことが好ましい。
この結果から、本発明の範囲内の軽酸洗条件酸洗処理を行ったことにより、騒音が比較例よりも更に低減されていることが分かる。

Claims (4)

  1. 順に、
    質量%で、少なくともSi:2.5%~4.5%、Mn:0.01%~0.15%を含有し、残部がFe及び不純物であるスラブに、熱間圧延を施して、熱延鋼板を得る工程、
    前記熱延鋼板に熱延板焼鈍を施して。熱延焼鈍板を得る工程、
    前記熱延焼鈍板に冷間圧延を施して、冷延鋼板を得る工程、
    前記冷延鋼板に脱炭焼鈍を施す工程、
    脱炭焼鈍後の前記冷延鋼板の表面にMgOを含む焼鈍分離剤を塗布した後、仕上焼鈍を施して、仕上焼鈍板を得る工程、
    前記仕上焼鈍板に軽酸洗を施して、前記焼鈍分離剤を除去する工程、
    焼鈍分離剤が除去した鋼板に絶縁コーティング液を塗布して、平坦化焼鈍を施す工程、
    得られた平坦化焼鈍板に熱歪付与手段によって磁区細分化処理を施す工程、
    を含む方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記軽酸洗溶液が、Cu、Hg、Ag、Pb、Cd、Co、ZnおよびNiのうちから1種または2種以上を含有し、各元素の濃度の合計が0.0001~0.1000質量%以下であり、
    pHが-1以上5以下であり、
    液温が15℃以上100℃以下であり、
    前記仕上焼鈍板が前記軽酸洗溶液に浸漬される時間が、5秒以上200秒以下である
    ことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記熱歪付与手段が、レーザーまたは電子ビームから選ばれる請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 質量%で、少なくともSi:2.50~4.50%、Mn:0.01~0.15%を含有し、残部がFeおよび不純物であり、熱歪付与手段によって磁区細分化処理が施された方向性電磁鋼板であって、
    磁区細分化処理を施す前よりも
    渦電流損が0.07W/kg以上低減し、
    ヒステリシス損の増加が0.02W/kg以下であり、
    1.7Tに励磁したときの磁歪λp-pの変化が0.2μm/m以下である
    ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
  4. 前記熱歪付与手段が、レーザーまたは電子ビームから選ばれる請求項3に記載の方向性電磁鋼板。
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