JP2022018223A - 弾性波デバイス及び通信装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022018223000001
【課題】非線形歪を低減できる弾性波デバイスを提供する。
【解決手段】弾性波デバイス(分波器1)は、弾性波素子部(送信フィルタ13)と、キャンセル部17とを有している。送信フィルタ13は、圧電体31b、及び該圧電体31bに電圧を印加する励振電極33を有している。キャンセル部17は、送信フィルタ13と、所定の端子又は基準電位部11とを仲介している1以上の非線形素子21を含んでいる。キャンセル部17は、送信フィルタ13において生じる奇数次の非線形歪のうちのいずれかである第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍の非線形歪を生じる。
【選択図】図1

Description

本開示は、弾性波を利用する弾性波デバイス、及び当該弾性波デバイスを含む通信装置に関する。
弾性波を利用する弾性波デバイスが知られている(例えば下記特許文献1~3)。弾性波は、例えば、SAW(Surface Acoustic Wave)又はBAW(Bulk Acoustic Wave)である。弾性波デバイスにおいては、相互変調歪(IMD:Inter Modulation Distortion)等の非線形歪が生じることが知られている。なお、本開示において、相互変調歪は、特に断りが無い限り、パッシブ相互変調歪(PIM:Passive Inter Modulation)を含む広義の意味であるものとする。特許文献1~3では、偶数次の非線形歪を低減するための技術が開示されている。
国際公開第2013/161881号 国際公開第2014/133084号 国際公開第2016/159053号
非線形歪を低減できる弾性波デバイス及び通信装置が待たれる。
本開示の一態様に係る弾性波デバイスは、圧電体、及び該圧電体に電圧を印加する励振電極を有している弾性波素子部と、前記弾性波素子部と、所定の端子又は基準電位部とを仲介している1以上の非線形素子を含んでおり、前記弾性波素子部において生じる奇数次の非線形歪のうちのいずれかである第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍の非線形歪を生じるキャンセル部と、を有している。
一例において、前記弾性波デバイスは、分波器である。当該分波器は、アンテナ端子と、前記アンテナ端子に出力される信号をフィルタリングする送信フィルタと、前記アンテナ端子から入力される信号をフィルタリングする受信フィルタと、を有しており、前記弾性波素子部が前記送信フィルタ又は前記受信フィルタである。
本開示の一態様に係る通信装置は、上記分波器と、前記アンテナ端子に接続されているアンテナと、前記送信フィルタ及び前記受信フィルタに接続されている集積回路素子と、を有している。
上記の構成によれば、非線形歪を低減できる。
図1(a)及び図1(b)は実施形態に係る分波器の構成例及び他の構成例を示す模式図であり、図1(c)、図1(d)及び図1(e)は、実施形態に係る分波器が含む非線形素子の例を示す図である。 実施形態に係る分波器に含まれる弾性波共振子の構成を示す平面図である。 実施形態に係る分波器が含む分波器本体の構成を示す回路図である。 実施形態に係る弾性波素子の非線形性を説明する図である。 図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)は、実施形態に係る非線形素子としてのキャパシターの非線形性を説明する図である 図6(a)及び図6(b)は、非線形性の極性が非線形歪の低減に及ぼす影響についての計算結果を示す図である。 図7(a)及び図7(b)は、非線形性の極性が非線形歪の低減に及ぼす影響についての他の計算結果を示す図である。 図8(a)及び図8(b)は、強誘電体及び反強誘電体における電場の強さと分極との関係を示す図である。 図9(a)及び図9(b)は、強誘電体及び反強誘電体を有するキャパシターにおける電圧と容量との関係の一例を示す図である。 図10(a)は2つのキャパシターの接続例を示す図であり、図10(b)及び図10(c)は当該接続例における特性を説明する図である。 図11(a)は1つのダイオードの特性を示す図であり、図11(b)は2ダイオードの接続例を示す図であり、図11(c)は当該接続例における特性を説明する図であり、図11(d)及び図11(e)は他の接続例を示す図である。 種々の素子が生じる非線形歪の強度の一例を示す図である。 図13(a)、図13(b)、図13(c)及び図13(d)は非線形素子と調整素子との接続例を示す模式図である。 図14(a)及び図14(b)は実施形態に係る分波器の構造例を示す平面図である。 実施形態に係る分波器を含む通信装置の構成を示すブロック図である。 実施形態に係る分波器の他の構造例を示す平面図である。
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものである。従って、例えば、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
(分波器の概要)
図1(a)は、第1例に係る分波器1Aの構成を示す模式図である。図1(b)は、第2例に係る分波器1Bの構成を示す模式図である。以下では、分波器1A及び1Bを区別せずに、分波器1ということがある。各分波器1は、弾性波デバイスの一例である。
図示の分波器1は、より詳細には、デュプレクサとして構成されている。分波器1は、例えば、送信端子7からの送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子5へ出力する送信フィルタ13(弾性波素子部の一例)と、アンテナ端子5からの受信信号をフィルタリングして受信端子9に出力する受信フィルタ15とを有している。なお、送信端子7は、送信フィルタ13にとっての入力端子であるということができる。アンテナ端子5は、送信フィルタ13にとっての出力端子であるということができる。
送信フィルタ13は、例えば、弾性波素子19を含んで構成されている。その結果、送信フィルタ13は、弾性波素子19の非線形性に起因する非線形歪(歪信号)を生じる。そこで、分波器1は、非線形性歪を低減するためのキャンセル部17を有している。キャンセル部17は、送信フィルタ13(弾性波素子部)で生じる第1非線形歪に対して、位相が逆の第2非線形歪を生じる。これにより、第1非線形歪の少なくとも一部が第2非線形歪によって打ち消される。
キャンセル部17が生じる第2非線形歪の強度は、例えば、送信フィルタ13(弾性波素子部)が生じる第1非線形歪の強度の2倍未満、例えば1.7~0.3倍であり、理想的には1倍である。2倍未満であれば、キャンセル部17が設けられていない態様に比較して、多少なりとも分波器1において生じる非線形歪が低減される。1倍であれば、送信フィルタ13から出力される第1非線形歪の全部が打ち消される。
なお、強度は、例えば、電圧、電流及び/又は電力であり、特に断りが無い限り、絶対値を指すものとする。位相が逆であるということは、別の観点では、位相が180°ずれているということである。位相は、180±40°の範囲で適宜変更されてもよい。また、位相が逆であるというとき、周波数は同じであることを前提としている。位相及び強度の比較は、特に断りない限り、送信フィルタ13に交流信号が入力されている状況において、同一時点における第1非線形歪と第2非線形歪との間でなされてよい。受信フィルタ15は、送信フィルタ13と同様に、弾性波素子19を含んで構成されてよい。
分波器1Aにおいては、キャンセル部17は、送信端子7とアンテナ端子5との間で送信フィルタ13に対して直列に接続されている。換言すれば、キャンセル部17は、送信フィルタ13とアンテナ端子5とを仲介している。特に図示しないが、送信フィルタ13とアンテナ端子5とを仲介するキャンセル部17に代えて、又は加えて、送信フィルタ13と送信端子7とを仲介するキャンセル部17が設けられてもよい。すなわち、直列に接続されるキャンセル部17は、送信フィルタ13に対して、入力側及び出力側のいずれに接続されてもよい。また、受信フィルタ15とアンテナ端子5とを仲介する位置にキャンセル部17が設けられてもよい。
分波器1Bにおいては、キャンセル部17は、送信フィルタ13とアンテナ端子5との間でシャントに接続されている。シャントは、信号経路(ここでは送信フィルタ13からアンテナ端子5への経路)から分岐して基準電位部11に接続される態様を指すものとする。別の観点では、キャンセル部17は、送信フィルタ13のアンテナ端子5側と基準電位部11とを仲介している。特に図示しないが、送信フィルタ13のアンテナ端子5側と基準電位部11とを仲介するキャンセル部17に代えて、又は加えて、送信フィルタ13の送信端子7側と基準電位部11とを仲介するキャンセル部17が設けられてもよい。すなわち、シャントに接続されるキャンセル部17は、送信フィルタ13に対して、入力側及び出力側のいずれに接続されてもよい。また、受信フィルタ15とアンテナ端子5とを仲介する位置にキャンセル部17が設けられてもよい。
特に図示しないが、分波器1A及び1Bは、組み合わされてもよい。すなわち、分波器1は、送信フィルタ13に直列に接続されているキャンセル部17と、送信フィルタ13にシャントに接続されているキャンセル部17とを有していてもよい。また、ここでは、送信フィルタ13に接続されているキャンセル部17を例示しているが、当該キャンセル部17に代えて、又は加えて、受信フィルタ15に接続され、受信フィルタ15の非線形歪を低減するキャンセル部17が設けられてもよい。
分波器1のうち、キャンセル部17以外の部分を分波器本体3ということがある。アンテナ端子5、送信端子7、受信端子9及び基準電位部11は、分波器1又は分波器本体3の一部であってよい。基準電位部11は、基準電位が付与される部位(導体)であり、より詳細には、例えば、基準電位が付与される端子であってもよいし、端子以外の構成(例えばシールド)であってもよい。
キャンセル部17は、1以上の非線形素子21を含んで構成されている。非線形素子21は、入力電圧に対する応答が非線形性を有している電子素子である。より詳細には、例えば、交流電圧が印加されたときに流れる交流電流の実効値が交流電圧の実効値の変化に対して非線形に変化する(比例しない)素子である。この非線形性は、分波器1において非線形素子21に入力されると想定されている電圧の範囲内で現れればよく、あらゆる電圧の範囲において生じる必要は無い。実施されている分波器1において、非線形素子21に入力されると想定されている電圧は、例えば、分波器1の仕様書及び/又は実施状況から特定されてよい。
図1(c)~図1(e)は、キャンセル部17が含む非線形素子21の例を示す図である。
図1(c)に示すように、非線形素子21は、例えば、非線形性を有するキャパシター23とされてよい。図1(d)に示すように、非線形素子21は、例えば、非線形性を有するインダクター25とされてよい。図1(e)に示すように、非線形素子21は、例えば、非線形性を有するダイオード27とされてよい。このように、非線形素子21は、種々の態様とされてよい。キャンセル部17は、1つのみ非線形素子21を有していてもよいし、同一の種類の2以上の非線形素子を有していてもよいし、互いに異なる種類の2以上の非線形素子を有していてもよい。
なお、図1(d)では、便宜上、インダクターの代表的な記号ではなく、コイル25aとコア25bとを有するインダクターの記号が示されている。ただし、インダクター25は、コア25bを有さないものであってよい。
(弾性波素子)
図2は、送信フィルタ13(及び/又は受信フィルタ15)が含む弾性波素子19の一例としての表面弾性波共振子29(以下、単に「共振子29」ということがある。)の構成を模式的に示す平面図である。なお、以下の説明において、共振子29の語は、矛盾等が生じない限り、弾性波素子19の語に置換されてよい。
共振子29は、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、D1軸、D2軸及びD3軸からなる直交座標系を図面に付すとともに、D3軸の正側を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。なお、D1軸は、後述する圧電体の上面に沿って伝搬する弾性波の伝搬方向に平行になるように定義され、D2軸は、圧電体の上面に平行かつD1軸に直交するように定義され、D3軸は、圧電体の上面に直交するように定義されている。
共振子29は、いわゆる1ポート弾性波共振子によって構成されている。共振子29は、例えば、紙面両側に模式的に示された2つの端子28の一方から入力された信号を2つの端子28の他方から出力する。この際、共振子29は、電気信号から弾性波への変換及び弾性波から電気信号への変換を行う。後述する図3の説明から理解されるように、端子28は、例えば、アンテナ端子5、送信端子7、受信端子9及び基準電位部11のいずれかに対応する。
共振子29は、例えば、基板31(その少なくとも上面31a側の一部)と、上面31a上に位置する励振電極33と、励振電極33の両側に位置する1対の反射器35とを含んでいる。1つの基板31上には、複数の共振子29が構成されてよい。すなわち、基板31は、複数の共振子29に共用されてよい。以下の説明では、同一の基板31を共用する複数の共振子29を区別するために、便宜上、励振電極33及び1対の反射器35の組み合わせ(共振子29の電極部)が共振子29であるかのように(共振子29が基板31を含まないかのように)表現することがある。
基板31は、少なくとも、上面31aのうち共振子29が設けられる領域に圧電性を有している。このような基板31としては、例えば、基板全体が圧電体によって構成されているもの(すなわち圧電基板)を挙げることができる。また、例えば、いわゆる貼り合わせ基板を挙げることができる。貼り合わせ基板は、上面31aを有する圧電体からなる基板(圧電基板)と、この圧電基板の上面31aとは反対側の面に、接着剤を介して、又は接着剤を介さずに直接に貼り合わされた支持基板とを有している。支持基板は、圧電基板の下方において空洞を有していてもよいし、有していなくてもよい。また、共振子29が設けられる領域に圧電性を有している基板31としては、例えば、支持基板と、支持基板の+D3側の主面の一部領域又は主面の全面に、圧電体からなる膜(圧電膜)又は圧電膜を含む多層膜が形成されたものを挙げることができる。
基板31のうちの少なくとも共振子29が設けられる領域を構成している圧電体31bは、例えば、圧電性を有する単結晶によって構成されている。このような単結晶を構成する材料としては、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)及び水晶(SiO)を挙げることができる。カット角、平面形状および各種の寸法は適宜に設定されてよい。
励振電極33及び反射器35は、基板31上に設けられた層状導体によって構成されている。励振電極33および反射器35は、例えば、互いに同一の材料および厚さで構成されている。これらを構成する層状導体は、例えば、金属である。金属は、例えば、AlまたはAlを主成分とする合金(Al合金)である。Al合金は、例えば、Al-Cu合金である。層状導体は、複数の金属層から構成されていてもよい。層状導体の厚さは、共振子29に要求される電気特性等に応じて適宜に設定される。一例として、層状導体の厚さは50nm以上600nm以下である。
励振電極33は、いわゆるIDT(Interdigital Transducer)電極によって構成されており、1対の櫛歯電極37(一方には視認性をよくする便宜上ハッチングを付す)を有している。各櫛歯電極37は、例えば、バスバー39と、バスバー39から互いに並列に延びる複数の電極指41と、複数の電極指41の間においてバスバー39から突出する複数のダミー電極43とを有している。そして、1対の櫛歯電極37は、複数の電極指41が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。
バスバー39は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向(D1方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。そして、一対のバスバー39は、弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)において互いに対向している。なお、バスバー39は、幅が変化したり、弾性波の伝搬方向に対して傾斜したりしていてもよい。
各電極指41は、例えば、概略、一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向(D2方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。なお、電極指41は、幅が変化していてもよい。各櫛歯電極37において、複数の電極指41は、弾性波の伝搬方向に配列されている。また、一方の櫛歯電極37の複数の電極指41と他方の櫛歯電極37の複数の電極指41とは、基本的には交互に配列されている。
複数の電極指41のピッチp(例えば互いに隣り合う2本の電極指41の中心間距離)は、励振電極33内において基本的に一定である。なお、励振電極33は、一部にピッチpに関して特異な部分を有していてもよい。特異な部分としては、例えば、大部分(例えば8割以上)よりもピッチpが狭くなる狭ピッチ部、大部分よりもピッチpが広くなる広ピッチ部、少数の電極指41が実質的に間引かれた間引き部が挙げられる。
以下において、ピッチpという場合、特に断りがない限りは、上記のような特異な部分を除いた部分(複数の電極指41の大部分)のピッチをいうものとする。また、特異な部分を除いた大部分の複数の電極指41においても、ピッチが変化しているような場合においては、大部分の複数の電極指41のピッチの平均値をピッチpの値として用いてよい。
電極指41の本数は、共振子29に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。図2は模式図であることから、電極指41の本数は少なく示されている。実際には、図示よりも多くの電極指41が配列されてよい。後述する反射器35のストリップ電極47についても同様である。
複数の電極指41の長さは、例えば、互いに同等である。なお、励振電極33は、複数の電極指41の長さ(別の観点では交差幅W)が伝搬方向の位置に応じて変化する、いわゆるアポダイズが施されていてもよい。電極指41の長さ及び幅は、要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。
ダミー電極43は、例えば、概ね一定の幅で弾性波の伝搬方向に直交する方向に突出している。その幅は、例えば電極指41の幅と同等である。また、複数のダミー電極43は、複数の電極指41と同等のピッチで配列されており、一方の櫛歯電極37のダミー電極43の先端は、他方の櫛歯電極37の電極指41の先端とギャップを介して対向している。なお、励振電極33は、ダミー電極43を含まないものであってもよい。
1対の反射器35は、弾性波の伝搬方向において励振電極33の両側に位置している。各反射器35は、例えば、電気的に浮遊状態とされてもよいし、基準電位が付与されてもよい。各反射器35は、例えば、格子状に形成されている。すなわち、反射器35は、互いに対向する1対のバスバー45と、1対のバスバー45間において延びる複数のストリップ電極47とを含んでいる。複数のストリップ電極47のピッチ、及び互いに隣接する電極指41とストリップ電極47とのピッチは、基本的には複数の電極指41のピッチと同等である。
1対の櫛歯電極37に電圧が印加されると、複数の電極指41によって圧電性を有する上面31aに電圧が印加され、上面31aが振動する。これにより、D1方向に伝搬する弾性波(例えばSAW)が励振される。弾性波は、複数の電極指41によって反射される。そして、複数の電極指41のピッチpを概ね半波長(λ/2)とする定在波が立つ。定在波によって基板31に生じる電気信号は、複数の電極指41によって取り出される。このような原理により、共振子29は、ピッチpを半波長とする弾性波の周波数を共振周波数とする共振子として機能する。
特に図示しないが、共振子29は、励振電極33及び反射器35の上から基板31の上面31aを覆う不図示の保護膜を有していてもよい。このような保護膜は、例えば、SiO等の絶縁材料からなり、励振電極33等が腐食する蓋然性を低減したり、及び/又は共振子29の温度変化に起因する特性変化を補償したりすることに寄与する。また、共振子29は、励振電極33及び反射器35の上面又は下面に重なり、基本的に平面透視において励振電極33及び反射器35に収まる形状を有している付加膜を有していてもよい。このような付加膜は、例えば、励振電極33等の材料とは音響的な特性が異なる絶縁材料又は金属材料からなり、SAWの反射係数を向上させることに寄与する。
1つの共振子29の代表的な構成例は、上記のように、1つの励振電極33を有している。ただし、1つの共振子29は、互いに直列に接続された複数の励振電極33を有していてもよい。換言すれば、1つの共振子29は、複数に分割されていてもよい。この場合、例えば、共振子29に印加される電圧が複数の励振電極33に分散されるから、共振子29の耐電性が向上する。また、弾性波の振動が小さくされるから、非線形歪が低減される。
(分波器本体の構成例)
図3は、分波器本体3(分波器1のうちキャンセル部17を除いた部分)の構成を模式的に示す回路図である。この図の紙面左上に示された符号から理解されるように、この図では、櫛歯電極37が二叉のフォーク形状によって模式的に示され、反射器35は両端が屈曲した1本の線で表わされている。なお、以下の説明において、分波器本体3の語は、矛盾等が生じない限り、分波器1の語に置換されてよい。
分波器本体3は、既述のように、アンテナ端子5、送信端子7、受信端子9、基準電位部11、送信フィルタ13及び受信フィルタ15を有している。なお、図3では、図1とは異なり、受信端子9が2つ描かれている。これは、図3に例示する構成では、受信フィルタ15が、位相が互いに逆の2つの信号を含む平衡信号を出力することに対応している。ただし、受信フィルタ15は、基準電位に対して信号レベルが変化する1つの信号からなる不平衡信号を出力するものであっても構わない(受信端子9は1つであっても構わない。)。
送信フィルタ13は、例えば、複数の共振子29(29S及び29P)がラダー型に接続されて構成された、ラダー型フィルタによって構成されている。すなわち、送信フィルタ13は、送信端子7とアンテナ端子5との間で直列に接続された複数(1つでも可)の直列共振子29Sと、その直列のライン(直列腕)と基準電位部11とを接続する複数(1つでも可)の並列共振子29P(並列腕)とを有している。
受信フィルタ15は、例えば、共振子29と、多重モード型フィルタ49(ダブルモード型フィルタを含むものとする。以下、MMフィルタ49ということがある。)とを含んで構成されている。MMフィルタ49は、弾性波の伝搬方向に配列された複数(図示の例では3つ)の励振電極33と、その両側に配置された1対の反射器35とを有している。
なお、上記の送信フィルタ13及び受信フィルタ15の構成は、あくまで一例であり、適宜に変形されてよい。例えば、受信フィルタ15が送信フィルタ13と同様にラダー型フィルタによって構成されたり、逆に、送信フィルタ13がMMフィルタ49を有していたりしてもよい。
上記の構成において、複数の共振子29(29S、29P及び受信フィルタ15の共振子29)及びMMフィルタ49のそれぞれは、弾性波素子19の一例である。これらの複数の弾性波素子19は、1つの基板31に設けられてもよいし、2以上の基板31に分散して設けられてもよい。例えば、送信フィルタ13を構成する複数の共振子29は、同一の基板31に設けられてよい。同様に、受信フィルタ15を構成する共振子29及びMMフィルタ49は、同一の基板31に設けられてよい。送信フィルタ13及び受信フィルタ15は、同一の基板31に設けられてもよいし、互いに異なる基板31に設けられてもよい。上記の他、例えば、複数の直列共振子29Sを同一の基板31に設けるとともに、複数の並列共振子29Pを他の同一の基板31に設けてもよい。
(弾性波素子の非線形性及び非線形歪の種類)
図4は、弾性波素子19の非線形性を説明する図である。
この図において、横軸は、弾性波素子19を構成する圧電体31bに生じる応力T(Pa)を示している。横軸の右側ほど応力Tの値が大きい。横軸の中央の位置は応力Tが0の位置である。縦軸は、圧電体31bの歪S(無次元量。ここでは歪信号のことではなく、圧電体31bの変形量の比である。)を示している。縦軸は、上方ほど値が大きい。縦軸の中央の位置は、歪Sが0の位置である。
線L0は、圧電体31bが線形な特性を有していると仮定したときの応力Tと歪Sとの関係を示している。すなわち、線L0は、応力Tと歪Sとが比例関係にある仮想的な特性を示している。
一方、線L1は、実際の圧電体31bの特性を示している。実際の圧電体31bにおいては、応力Tの絶対値がある程度の大きさに達すると、歪は生じ難くなり、さらには飽和する。すなわち、圧電体31bの特性は、入力と応答とが比例しない非線形なものである。なお、この場合は、応力Tと歪Sの関係を定義する弾性定数cが非線形性を持つと換言してもよい。また、圧電材料では、他の材料物性である誘電率ε及び圧電定数eも非線形性を持っている。誘電率εが非線形性を持つ場合は、弾性波素子19に印加される電圧と、流れる電流の関係が線形ではなくなる。また、圧電定数eが非線形性を持つ場合は、応力と発生する電荷が線形ではなくなる。いずれの場合も、最終的には弾性波素子19に印加される電圧と、流れる電流の関係が非線形になる。
以上のことから、弾性波素子19は、入力電圧に対して非線形な応答を生じる非線形性を有している。従って、例えば、弾性波素子19に比較的大きな電力で1つ又は2以上の信号が入力されると非線形歪(歪信号)が生じる。
例えば、弾性波素子19に入力される2つの信号(入力電圧)の周波数をf1及びf2とし、m及びnを整数(…-3、-2、-1、0、1、2、3…)とする。このとき、非線形素子21においては、m×f1+n×f2の周波数を有する信号(別の観点では出力電圧及び出力電流)が生成される。|m|+|n|は次数と呼ばれる。|m|+|n|が2以上の信号が非線形歪である。m及びnの双方が0でない信号は、相互変調歪(広義)である。m及びnの一方が0である信号は高調波である。
非線形歪を生じる2つの信号としては、種々の信号を挙げることができる。例えば、基地局などにおいて2以上の周波数帯に共用されている分波器1において、送信端子7に同時に入力される2つの送信信号が挙げられる。また、例えば、アンテナ端子5からの妨害波(ノイズ)と、送信端子7に入力される送信信号とが挙げられる。なお、本明細書では、送信フィルタ13に2つの送信信号を入力した際に、弾性波素子19の3次の非線形性のため発生した相互変調歪が受信周波数帯になり、その歪信号が受信フィルタ15の出力側に現れたものをPIM3(3rd Order Passive Inter-Modulation)と定義して、本発明の動作原理の説明を行う。
なお、本実施形態の説明において、例えば、弾性波素子19又は送信フィルタ13が生じる非線形歪と、非線形素子21又はキャンセル部17が生じる非線形歪とが比較される場合、特に断りが無い限りは、両者は、m及びnそれぞれの値が互いに同じであり、かつ非線形歪の要因となった信号が互いに同じであるものとする。換言すれば、比較される2つの非線形歪は、周波数(m×f1+n×f2)が同じであるものとする。
(キャパシターの非線形性の例)
図5(a)~図5(d)は、非線形素子21に利用されるキャパシター23の非線形性を説明する図である。
図5(a)及び図5(b)において、横軸は、キャパシター23の電極間(誘電体)に印加される電場Eの強さ(V/m)を示している。横軸の右側ほど電場Eが強い。横軸の中央の位置は電場Eの強さが0の位置である。縦軸は、キャパシター23の電極間の誘電体の分極P(C/m)を示している。縦軸は、上方ほど値が大きい。縦軸の中央の位置は、分極Pが0の位置である。
図5(a)及び図5(b)において、線L10は、線形な特性を有している誘電体における電場Eの強さと分極Pとの関係を示している。すなわち、線L10は、電場Eの強さと分極Pとが比例関係にある特性を示している。
図5(a)の線L11及び図5(b)の線L12は、それぞれ非線形な特性を有している誘電体における電場Eの強さと分極Pとの関係の例を示している。図5(a)の線L11は、電場Eの強さの絶対値が大きくなると、線形の特性(線L10)に比較して、分極Pの絶対値が小さくなる非線形性の例を示している。このような非線形性を負の非線形性というものとする。逆に、図5(b)の線L12は、電場Eの強さ絶対値が大きくなると、線形の特性(線L10)に比較して、分極Pの絶対値が大きくなる非線形性の例を示している。このような非線形性を正の非線形性というものとする。
図5(c)及び図5(d)において、横軸は、キャパシター23に印加される電圧V(単位:V)を示している。横軸の右側ほど電圧Vの値が大きい。横軸の中央の位置は電圧Vが0の位置である。縦軸は、キャパシター23の静電容量C(F)を示している。縦軸は、上方ほど値が大きい。縦軸の中央の位置は、静電容量Cが0の位置である。
図5(c)及び図5(d)において、線L15は、電極間の誘電体が線形性を有しているキャパシターにおける電圧Vと容量Cとの関係を示している。すなわち、線L15は、図5(a)及び図5(b)の線L10に対応している。この場合の容量Cは、電圧Vによらずに一定である。
図5(c)において、線L16は、電極間の誘電体が負の非線形性を有しているキャパシター23における電圧Vと容量Cとの関係を示している。すなわち、線L16は、図5(a)の線L11に対応している。この場合の容量Cは、電圧Vの絶対値が大きくなるほど小さくなる。この特性について、負の非線形性ということがある。
図5(d)において、線L17は、電極間の誘電体が正の非線形性を有しているキャパシター23における電圧Vと容量Cとの関係を示している。すなわち、線L17は、図5(b)の線L12に対応している。この場合の容量Cは、電圧Vの絶対値が大きくなるほど大きくなる。この特性について、正の非線形性ということがある。
このような非線形性を有するキャパシター23は、弾性波素子19と同様に、非線形歪を生じ得る。従って、このようなキャパシター23を含むキャンセル部17を弾性波素子19(送信フィルタ13)に接続することによって、弾性波素子19が生じる非線形歪の少なくとも一部を打ち消すことができる。
(非線形性の正負)
上記のように、非線形性には、極性が正のものと、極性が負のものとが存在する。そして、本願発明者の検討によれば、正及び負の一方の非線形性によって生じる非線形歪は、弾性波素子19が生じる非線形歪を打ち消すことができる一方で、正及び負の他方の非線形性によって生じる非線形歪は、弾性波素子19が生じる非線形歪に足し合わされ、非線形歪を増大させる。
図6(a)、図6(b)、図7(a)及び図7(b)は、キャパシター23の非線形性の極性が、送信フィルタ13が生じる非線形歪を打ち消す効果に及ぼす影響について、シミュレーション計算結果を示す図である。
これらの図において、横軸は周波数f(MHz)を示している。縦軸は、3次のパッシブ相互変調(dBm)を示し、図ではPIM3(dBm)と略している。図中の複数の線は、キャパシター23の静電容量の非線形性の大きさを互いに異ならせた複数のケースについて、周波数fとPIM3との関係を示している。図面の下方の凡例の数値は、各線が対応するケースの非線形静電容量C(F/V)を示している。非線形静電容量は下記式によってあらわされる
C=C+CV+C+・・・
図6(a)及び図6(b)は、図1(a)のように、キャパシター23を送信フィルタ13に対して直列に接続した場合の結果を示している。図7(a)及び図7(b)は、図1(b)のように、キャパシター23を送信フィルタ13に対してシャントに接続した場合の結果を示している。図6(a)及び図7(a)は、キャパシター23が正の非線形性を有している場合の結果を示している。図6(b)及び図7(b)は、キャパシター23が負の非線形性を有している場合の結果を示している。なお、ここでは、キャパシター23が生じる非線形歪の強度及び/又は位相を調整する他の素子(後述)は接続されていない。また、計算を簡単にするために、1次と2次の静電容量C、Cは0と置いている。すなわち、キャパシター23は3次の非線形性Cのみを持つと仮定している。
これらの図において、非線形静電容量Cが0とされている線は、キャパシター23が接続されていない態様(比較例)の結果を示している。そして、キャパシター23の非線形性の極性が正の場合においては(図6(a)及び図7(a))、直列接続であっても、シャント接続であっても、キャパシター23の非線形静電容量Cが大きくなるほど、PIM3が低減されている。ただし、キャパシター23の非線形静電容量Cを大きくし過ぎた場合には、この限りではない。一方、キャパシター23の非線形性の極性が負の場合においては(図6(b)及び図7(b))、直列接続であっても、シャント接続であっても、キャパシター23の非線形静電容量Cが大きくなるほど、PIM3が増加している。
上記の計算結果によって確認できるように、非線形素子21における非線形性の正負を適宜に設定することによって、弾性波素子19によって生じる非線形歪を低減することができる。換言すれば、単に弾性波素子19と非線形素子21とを開示した公知文献が存在しても、その非線形性の正負が考慮されていなければ、本実施形態に係る技術を開示していることにはならない。
なお、上記のシミュレーション計算の条件とされた構成においては、正の非線形性が非線形性歪を低減する効果を奏した。ただし、弾性波素子19及び/又は弾性波素子19によって構成される弾性波素子部(本実施形態では送信フィルタ13)の構成によっては、上記とは逆に、負の非線形性が非線形性歪を低減する効果を奏し得る。また、後述するように、非線形歪等の位相及び/又は強度は、非線形素子21に他の素子を直列又は並列に接続することなどによって調整可能であるから、その調整次第では、上記のシミュレーション計算において非線形性歪を増加させたキャパシター23も利用可能である。
(キャパシターの構成例)
キャパシター23の構成は適宜なものとされてよい。例えば、キャパシター23は、誘電体(誘電体層)を厚さ方向に挟んで互いに対向する層状の2つの電極を有するものであってよい。この場合、誘電体及び電極は、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。また、キャパシター23は、誘電体の表面に設けられ、又は誘電体に埋設され、平面方向(厚さ方向に直交する方向)において互いに対向する層状の2つの電極を有するものであってもよい。この場合、電極は、例えば、互いに平行に延びる長尺状であってもよいし、互いに噛み合う櫛歯電極であってもよい。また、キャパシター23は、回路基板に実装される電子部品として構成されたものであってもよいし、回路基板内に作り込まれたものであってもよい。
キャパシター23の誘電体として、非線形性を有するものを用いることによって、非線形性を有するキャパシター23を実現できる。そのような誘電体としては、種々のものを利用可能である。例えば、常誘電体は、一般には、線形性を有するが、一部の材料においては、図5(a)又は図5(b)に示した非線形性を発揮し得る。また、大きな非線形性を有する誘電体として、強誘電体及び反強誘電体を挙げることができる。
強誘電体及び反強誘電体の具体的な成分及び/又は組成は適宜なものとされてよい。例えば、強誘電体は、チタン酸バリウム(BaTiO)系のものとされてよい。また、例えば、反強誘電体は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:lead zirconate titanate)系もしくはチタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT:lead lanthanum zirconate titanate)系のものとされてよい。なお、BaTiO系は、BaTiOだけでなく、BaTiOのうち比較的少ない物質量(モル比)で一部が他の元素に置換されているものを含んでよいし、及び/又は組成式に組み込まれない不純物を含んでいてもよい。PZT、PLZTについても同様である。この場合に、置換されるモル比は、例えば、各サイト内において0.2以下、0.1以下又は0.01以下とされてよい。及び/又は不純物の質量%は、例えば、20質量%以下、10質量%又は1質量%以下とされてよい。
(強誘電体キャパシター及び反強誘電体キャパシターの非線形性の例)
図8(a)は、強誘電体における電場Eの強さと分極Pとの関係を示す図である。図8(b)は、反強誘電体における電場Eの強さと分極Pとの関係を示す図である。これらの図の横軸及び縦軸は、図5(a)及び図5(b)のものと同様である。
これらの図に示されているように、強誘電体及び反強誘電体においては、電場Eの強さと分極Pとは比例関係にない。すなわち、強誘電体及び反強誘電体は非線形性を有している。その結果、電極間の誘電体(便宜上、誘電体の表面に電極が配置されている態様の誘電体も含むものとする。矛盾等が生じない限り、他の記載においても同様。)として、強誘電体及び反強誘電体を有するキャパシター23は、正及び/又は負の非線形性を有する。
強誘電体又は反強誘電体を有するキャパシター23に交流電圧を印加したときの電圧V(例えば実効値)と容量Cとの関係は、図8(a)及び図8(b)に示した曲線の具体的な形状等に応じて規定され、多様である。以下では、2つの例を示す。
図9(a)は、強誘電体を有するキャパシター23における電圧Vと容量Cとの関係の一例を示す図である。この図の横軸及び縦軸は、図5(c)及び図5(d)のものと同様である。この図は、所定の周波数の交流電圧を印加することによって得られている。従って、横軸の電圧Vは、例えば、交流電圧の代表値(例えば実効値又は最大値)である。
線L21は、強誘電体を有するキャパシター23における電圧Vと容量Cとの関係を示している。この例では、電圧Vが0付近から大きくなると、容量Cが大きくなる。ただし、電圧Vが大きくなるほど変化率は小さくなっている。そして、容量Cの増加は頭打ちとなり、さらには、容量Cは減少する。
このような特性を有するキャパシター23は、線形の特性を示す線L22との比較から理解されるように、電圧Vが所定の電圧範囲R1内にある場合において、正の非線形性を有している。従って、キャパシター23に入力される電圧が電圧範囲R1内となるように、キャパシター23の構成(例えば誘電体の厚さ)を調整したり、他の素子を接続して分圧したりすることによって、キャパシター23を正の非線形性を有する非線形素子21として利用することができる。
また、キャパシター23は、線形の特性を示す線L23との比較から理解されるように、電圧Vが所定の電圧範囲R2内にある場合において、負の非線形性を有している。従って、キャパシター23に入力される電圧が電圧範囲R2内となるように、キャパシター23の構成を調整したり、他の素子を接続して分圧したりすることによって、キャパシター23を負の非線形性を有する非線形素子21として利用することができる。
図9(b)は、反強誘電体を有するキャパシター23における電圧Vと容量Cとの関係の一例を示す図である。この図の横軸及び縦軸は、図9(a)のものと同様である。この図は、図9(a)と同様に、周波数の交流電圧を印加することによって得られている。
線L25は、反強誘電体を有するキャパシター23における電圧Vと容量Cとの関係を示している。この例では、電圧Vが0付近から大きくなると、容量Cが大きくなる。また、電圧Vが大きくなるほど変化率は大きくなっている。さらに電圧Vが大きくなると、変化率は小さくなり始める。そして、容量Cの増加は頭打ちとなり、さらには、容量Cは減少する。
このような特性を有するキャパシター23は、線形の特性を示す線L26との比較から理解されるように、電圧Vが所定の電圧範囲R3内にある場合において、正の非線形性を有している。従って、キャパシター23に入力される電圧が電圧範囲R1内となるように、キャパシター23の構成を調整したり、他の素子を接続して分圧したりすることによって、キャパシター23を正の非線形性を有する非線形素子21として利用することができる。
また、キャパシター23は、線形の特性を示す線L27との比較から理解されるように、電圧Vが所定の電圧範囲R4内にある場合において、負の非線形性を有している。従って、キャパシター23に入力される電圧が電圧範囲R4内となるように、キャパシター23の構成を調整したり、他の素子を接続して分圧したりすることによって、キャパシター23を負の非線形性を有する非線形素子21として利用することができる。
(キャパシター同士の接続例)
キャンセル部17は、互いに接続されている2以上のキャパシター23を有していてもよい。以下に一例を示す。
図10(a)は、キャパシター23同士の接続例を示す模式図である。
キャンセル部17は2つのキャパシター23(23A及び23B)を有している。各キャパシター23は、1対の電極23aと、その間に介在する誘電体23bとを有している。誘電体23bは、例えば、強誘電体によって構成されており、予め分極されている。分極の方向は、誘電体23b内の矢印によって示されているように、1対の電極23aの対向方向である。そして、2つのキャパシター23は、電圧の印加方向に対する分極の方向が互いに逆になるように並列接続されている。2つのキャパシター23は、例えば、互いに同一の構成である(互いに同一の特性を有している。)。ただし、2つのキャパシター23は、互いに異なる構成であっても構わない(互いに異なる特性を有していても構わない。)。
図10(b)は、2つのキャパシター23それぞれの特性の例を示す図である。これらの図において、縦軸及び横軸は、図5(d)と同様である。線L31は、2つのキャパシター23の一方の特性を示している。線L32は、2つのキャパシター23の他方の特性を示している。
2つのキャパシター23は、電圧が印加される方向が互いに逆であることから、その特性は、電圧Vが0の位置を通る縦軸に対して対称的なものとなる。例えば、線L31で示される特性は、電圧Vが負である場合においては線形性を示し、電圧Vが正である場合においては正の非線形性を示している。一方、線L32で示される特性は、上記とは逆に、電圧Vが正である場合においては線形性を示し、電圧Vが負である場合においては正の非線形性を示している。
図10(c)は、2つのキャパシター23全体の特性の例を示す図である。これらの図において、縦軸及び横軸は、図5(d)と同様である。線L33は、2つのキャパシター23全体の特性を示している。
2つのキャパシター23全体の特性は、図10(b)に示した各キャパシター23の特性を足し合わせたものとなる。その結果、2つのキャパシター23全体では、電圧Vが負の場合と、電圧Vが正の場合との双方において、正の非線形性が現れる。なお、キャパシター23は非線形素子21の一例であるが、並列接続された2以上のキャパシター23全体を非線形素子21として捉えてもよい。このように2つのキャパシターを接続することにより、キャパシターで発生する偶数次の非線形性を無くすことができる。このため、PIM3を打ち消す際に副作用として生じるPIM2及び2次高調波の発生を抑制することができる。
(インダクター)
インダクター25は、キャパシター23と同様に、非線形性を有し得る。例えば、図5(a)及び図5(b)は、横軸の電場の強さ(V/m)を磁界の強さ(A/m)に置換し、縦軸の分極(C/m)を磁束密度(T)に置換して、インダクター25のコア25b(磁性体)における磁界の強さと磁束密度との関係を示す図として捉えてよい。また、図5(c)及び図5(d)は、縦軸の容量(F)をインダクタンス(H)に置換して、インダクター25における電圧(V)とインダクタンスとの関係を示す図として捉えてよい。そして、非線形性を有するインダクター25は、非線形性を有するキャパシター23と同様に、弾性波素子19が生じる非線形歪の少なくとも一部を打ち消す非線形歪を生じ得る。
図5(a)~図5(d)をインダクター25の特性を示す図に変換してよいことから理解されるように、インダクター25についても、正の非線形性及び負の非線形性が存在する。そして、例えば、インダクター25における非線形性の正負を適宜に設定することによって、弾性波素子19において生じた非線形歪を低減することができる。
インダクター25の構成は適宜なものとされてよい。例えば、インダクター25のコイル25a(磁性体)は、線材が立体的に巻かれたものであってもよいし、線材又は層状導体が平面上において渦巻き状又はミアンダ状に延びているものであってもよい。また、インダクター25のコア25bは、設けられてもよいし、設けられなくてもよい。コア25bは、例えば、立体的なコイル25aの内部に位置したり、平面状かつ渦巻き状のコイル25aの内側に位置したりしてよい。磁性体の表面上に平面状のコイルが設けられている場合、この磁性体もコア25bの一種として捉えられてよい。
インダクター25は、例えば、コア25bとして、非線形性を有する磁性体を有することによって、非線形性を実現できる。そのような磁性体としては、種々のものを利用可能である。例えば、常磁性体は、一般には、線形性を有するが、一部の材料においては、非線形性を発揮し得る。また、大きな非線形性を有する磁性体として、強磁性体及び反強磁性体を挙げることができる。強磁性体としては、例えば、フェライトを挙げることができる。反強磁性体としては、例えば、酸化マンガン(MnO)系又は酸化ニッケル系(NiO)のものを挙げることができる。
強磁性体及び反強磁性体は、強誘電体及び反強誘電体に類似した特性を有している。例えば、図8(a)及び図8(b)は、横軸の電場の強さ(V/m)を磁界の強さ(A/m)に置換し、縦軸の分極(C/m)を磁束密度(T)に置換して、強磁性体及び反強磁性体の特性を示す図として捉えられてよい。そして、図9(a)及び図9(b)は、縦軸の容量(F)をインダクタンス(H)に置換して、インダクター25における電圧(V)とインダクタンスとの関係を示す図として捉えてよい。従って、強誘電体又は反強誘電体を有するキャパシター23と同様に、強磁性体又は反強磁性体を有するインダクター25に入力される電圧が所定の電圧の範囲となるように、インダクター25の構成(例えばコイル25aの巻き数)を調整したり、他の素子を接続して分圧したりすることによって、インダクター25を正又は負の非線形性を有する非線形素子21として利用することができる。
キャンセル部17は、互いに接続された複数のインダクター25を有していてもよい。特に図示しないが、キャンセル部17は、図10(a)のキャパシター23と同様に、コイル25aの右ねじの方向に対する磁性体の分極方向が互いに逆向きになるように並列接続された2つのインダクター25を有していてもよい。
(ダイオード)
図11(a)は、非線形素子21としてのダイオード27の特性を示す図である。
この図において、横軸は電圧V(V)を示している。縦軸は、電流I(A)を示している。線L41は、ダイオード27に印加される電圧と、ダイオード27を流れる電流との関係を示している。
公知のように、ダイオード27は、順方向に電圧が印加されたときは(図において電圧Vが正の範囲においては)、電流を流れさせる。一方、ダイオード27は、逆方向に電圧が印加されたときは(図において電圧Vが負の範囲においては)、理想的には、電流を流れさせない。また、ダイオード27に順方向に電圧が印加される場合において、電圧が所定の大きさ(順方向電圧又は順方向電圧降下)未満のときには電流が流れにくく、電圧が順方向電圧を超えると電流が流れやすくなる。従って、線L40によって示される線形な特性との比較から理解されるように、ダイオード27は、順方向電圧付近において、著しい正の非線形性を示す。このような非線形性を有するダイオード27は、弾性波素子19が生じる非線形歪の少なくとも一部を打ち消す非線形歪を生じ得る。
ダイオード27の構成は、適宜なものとされてよい。例えば、ダイオード27は、半導体ダイオードであってもよいし、半導体ダイオードでなくてもよい。また、例えば、ダイオード27は、PNダイオード、PINダイオード又はショットキーバリアダイオード(SBD)とされてよい。
キャンセル部17は、互いに接続された複数のダイオード27を有していてもよい。以下に一例を示す。
図11(b)は、ダイオード27同士の接続例を示す模式図である。
図11(a)から分かるように、一般的にダイオードは大きな偶数次の非線形性を持つ。このため、本発明によりPIM3など奇数次の歪を抑制する場合、この偶数次の非線形性によりダイオードからは大きな偶数次の歪(2次の相互変調歪、2次高調波など)が発生してしまう。しかし、ダイオードを2個接続することにより、この偶数次の非線形性を無くすことができる。キャンセル部17が有する2つのダイオード27(27A及び27B)は、互いに逆向きに並列接続されている。すなわち、ダイオード27Aのカソードとダイオード27Bのアノードとが接続され、ダイオード27Aのアノードとダイオード27Bのカソードとが接続されている。別の観点では、一方のダイオード27は、カソードが弾性波素子19に接続され、他方のダイオード27は、アノードが弾性波素子19に接続されている。これは、並列接続された2つのダイオード27が送信フィルタ13に対して直列に接続されている態様(図1(a))、及び並列接続された2つのダイオード27が送信フィルタ13に対してシャントに接続されている態様(図1(b))のいずれの態様においても言える。
図11(c)は、2つのダイオード27全体の特性の例を示す図である。これらの図において、縦軸及び横軸は、図11(a)と同様である。線L45は、2つのダイオード27全体の特性を示している。
2つのダイオード27全体の特性は、図11(a)に示した各ダイオード27の特性を足し合わせたものとなる。その結果、2つのダイオード27全体では、電圧Vが負の場合と、電圧Vが正の場合との双方において、正の非線形性が現れる。なお、ダイオード27は非線形素子21の一例であるが、並列接続された2以上のダイオード27全体を非線形素子21として捉えてもよい。このように2つのダイオードを接続することにより、1つのダイオードの場合に発生してしまう偶数次の非線形性を無くすことができる。このため、PIM3を打ち消す際に副作用として生じるPIM2及び2次高調波の発生を抑制することができる。
図11(d)及び図11(e)は、ダイオード27の利用態様の他の例を示す模式図である。
これらの例では、2つのダイオード27が直列に接続されている。より詳細には、図11(d)ではカソード同士が接続されている。図11(e)ではアノード同士が接続されている。なお、図11(d)及び図11(e)のいずれの態様においても、また、図1(a)及び図1(b)のいずれの態様においても、図11(b)の態様と同様に、一方のダイオード27は、カソードが弾性波素子19に接続され、他方のダイオード27は、アノードが弾性波素子19に接続されていると言える。図11(d)及び図11(e)の態様の場合、ダイオードには直流電流は流れなくなるが、非線形容量の様に動作させることができる。この場合においても、電圧が正の場合と負の場合とに亘って非線形性を発現させることができる。
(非線形素子が生じる非線形歪の調整)
図12は、種々の素子が生じる非線形歪の強度の一例を示す図である。
この図において、横軸は素子に入力される信号の強度Pin(dBm)を示している。縦軸は、3次の高調波H3の強度(dBm)を示している。図中の線は、各種の非線形素子における信号の強度Pinと高調波H3の強度との関係を示している。具体的には、線L50は弾性波素子19に対応している。線L51はインダクター25に対応している。線L52はダイオード27の一例であるPINダイオードに対応している。線L53はダイオード27の他の例であるSBDに対応している。なお、この非線形歪の強度は一例であり、各種非線形素子の素子値、製品形態、設計などにより変化する。もちろん、共振子29から発生する歪の大きさも、共振子29の動作原理、サイズ、設計などにより変化する。
この例では、ダイオードで発生する歪(L52、L53)は、弾性波素子19で発生する歪(L50)に比して大きいため、適切に打消しを起こすためには、ダイオードで発生する歪を小さく調整する必要がある。また、インダクター25で発生する歪(L51)は弾性波素子19で発生する歪(L50)に比して小さいため、適切に打消しを起こすためには、インダクター25で発生する歪を大きく調整する必要がある。
この図に示されているように、弾性波素子19及び非線形素子21は、互いに同一の強度の信号が入力されたときに互いに異なる強度の非線形歪を生じる。従って、非線形素子21が生じる非線形歪の強度及び/又は位相を適宜に調整することによって、弾性波素子19が生じる非線形歪を打ち消すことができる。換言すれば、単に弾性波素子19と非線形素子21とを開示した公知文献が存在しても、その非線形性の正負も考慮して適宜に非線形性の強度及び/又は位相が調整されていなければ、本実施形態に係る技術を開示していることにはならない。
図1(a)又は図1(b)に示す分波器1においては、非線形素子21は、例えば、少なくとも、送信フィルタ13(弾性波素子部)において生じる種々の非線形歪のうちのいずれかである第1非線形歪に対してm及びnの値が同じ(別の観点では周波数m×f1+n×f2が同じ)非線形歪(第2非線形歪)を生じる。そして、第2非線形歪は、第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍となるように、位相及び/又は強度が調整される。または、位相が180±28°で、かつ強度が1.5~0.5倍となるように位相及び/又は強度が調整されてもよいし、位相が180±16°で、かつ強度が1.3~0.7倍となるように位相及び/又は強度が調整されてもよい。なお、位相については、調整不要な場合もある。
第1非線形歪に対して、第2非線形歪の位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍の場合、第1非線形歪を3dB程度、第2非線形歪との打消しによって低減することができると見込まれる。第1非線形歪に対して、第2非線形歪の位相が180±28°で、かつ強度が1.5~0.5倍の場合、第1非線形歪を6dB程度、第2非線形歪との打消しによって低減することができると見込まれる。第1非線形歪に対して、第2非線形歪の位相が180±16°で、かつ強度が1.3~0.7倍の場合、第1非線形歪を10dB程度、第2非線形歪との打消しによって低減することができると見込まれる。第1非線形歪に対して、第2非線形歪の位相が180°で、かつ強度が1倍の場合は歪をほぼ完全に打ち消すことができると見込まれる。
キャンセル部17における非線形歪の強度及び/又は位相の調整は、種々の方法によって実現されてよい。
例えば、非線形素子21自体の特性が調整されてよい。例えば、キャパシター23における誘電体の厚さ、電極面積及び/又は誘電率が調整され、これにより、キャパシター23が生じる非線形歪の強度が調整され、ひいては、キャンセル部17における非線形歪の強度が調整されてよい。また、例えば、インダクター25における巻き数、各種の寸法及び/又は透磁率が調整され、これにより、インダクター25が生じる非線形歪の強度が調整され、ひいては、キャンセル部17における非線形歪の強度が調整されてよい。また、例えば、ダイオード27における各種の寸法が調整され、これにより、ダイオード27が生じる非線形歪の強度が調整され、ひいては、キャンセル部17における非線形歪の強度が調整されてよい。また、複数の非線形素子21を直列または並列に接続してもよい。
上記の非線形素子21自体の特性の調整は、キャンセル部17が1つの非線形素子21のみからなる態様においてなされてもよいし、下記に述べるように、キャンセル部17が1つの非線形素子21以外の素子を有する態様においてなされてもよい。なお、前者の態様では、1つの非線形素子21は、例えば、送信フィルタ13(弾性波素子部)が生じる第1非線形歪と同じ周波数(m×f1+n×f2)の第2非線形歪を生じ、この第2非線形歪は、第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍(又は位相が180±28°で、かつ強度が1.5~0.5倍、位相が180±16°で、かつ強度が1.3~0.7倍。理想的には180°で、かつ強度が1倍)である。
また、非線形素子21とは別の1以上の素子(調整素子51というものとする。)が設けられることによって、キャンセル部17における非線形歪の強度及び/又は位相が調整されてもよい。これは、別の観点から言えば、送信フィルタ13(弾性波素子部)において生じた第1非線形歪とキャンセル部17において生じた第2非線形歪との強度の差、及び第1非線形歪の位相と第2非線形歪の位相の逆相との差の少なくとも一方の差が、1以上の調整素子51が設けられていないと仮定したときの前記一方の差よりも小さいということである。
調整素子51は、非線形素子21に入力される信号を調整することによって第2非線形歪を調整するものであってもよいし、非線形素子21から出力された非線形歪を直接に調整するものであってもよい。また、調整素子51は、線形素子であってもよいし、非線形素子であってもよい。調整素子51としては、種々の素子が利用されてよく、例えば、抵抗体、キャパシター及びインダクターを挙げることができる。
調整素子51が非線形素子である場合、この非線形素子は、弾性波素子19が生じる非線形歪を打ち消す非線形歪を生じる他の非線形素子21であってもよいし、そうでなくてもよい。前者の場合、別の観点では、キャンセル部17は、送信フィルタ13(弾性波素子部)が生じる第1非線形歪と同じ周波数(m×f1及びn×f2)の第2非線形歪を生じる複数の非線形素子21を含んでいる。そして、該複数の非線形素子21が生じる第2非線形歪の合計が、第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍、位相が180±28°で、かつ強度が1.5~0.5倍、位相が180±16°で、かつ強度が1.3~0.7倍である。
既述のように、弾性波素子19は、m×f1及びn×f2の周波数を有し、m及びnの値が互いに異なる種々の非線形歪を生じ得る。これは、非線形素子21についても同様である。キャンセル部17は、上述した調整の結果、送信フィルタ13(弾性波素子部)において生じる種々の非線形歪のうち、1つのみを低減してもよいし、2以上の非線形歪を低減してもよい。例えば、キャンセル部17は、m=2かつn=-1の3次の相互変調歪のみを低減してもよいし、これに加えて、m=2かつn=1の3次の相互変調歪を低減してもよいし、さらに他の奇数次の非線形歪及び/又は偶数次の非線形歪を低減してもよい。
図13(a)~図13(d)は、調整素子51の接続例を示す模式図である。
図13(a)及び図13(b)は、キャンセル部17が送信フィルタ13に直列に接続されている態様における調整素子51の接続例を示している。図13(a)では、非線形素子21と調整素子51とが直列に接続されている。図13(b)では、非線形素子21と調整素子51とが並列に接続されている。
図13(c)及び図13(d)は、キャンセル部17が送信フィルタ13にシャントに接続されている態様における調整素子51の接続例を示している。図13(c)では、非線形素子21と調整素子51とが直列に接続されている。図13(d)では、非線形素子21と調整素子51とが並列に接続されている。
なお、図示の例とは異なり、非線形素子21及び/又は調整素子51の数は、1つに限定されず、2以上であってもよい。また、1以上の非線形素子21及び1以上の調整素子51においては、直列接続と並列接続とが組み合わされてもよい。
調整素子51が非線形素子21と直列に接続されている態様においては、例えば、分圧によって非線形素子21に印加される電圧を低減することができる。また、調整素子51が非線形素子21と並列に接続されている態様においては、例えば、分流によって非線形素子21に流れる電流を低減することができる。そして、非線形素子21における電圧及び/又は電流の低減によって、非線形素子21において生じる非線形歪の強度を低下させ、送信フィルタ13において生じる非線形歪と釣り合せることができる。
調整素子51が非線形素子21に直列に接続されている態様においては、調整素子51として、入力された信号の位相をずらして出力する位相器(位相シフタ)が用いられてよい。この場合、非線形素子21に入力される信号の位相を調整することにより、及び/又は非線形素子21から出力される非線形歪の位相を直接に調整することにより、送信フィルタ13が生じる非線形歪の位相と、キャンセル部17から出力される非線形歪の位相とを逆相にすることができる。位相器は、入力された信号の位相を進ませるものであってもよいし、遅らせるものであってもよい。位相器における入力に対する出力のずれは、90°又は180°等の一般的な値とされてよい。位相器の構成は、公知の種々の構成と同様とされて構わない。
(調整素子の他の用途)
調整素子51は、非線形素子21が生じる非線形歪の強度及び/又は位相の調整に加えて、又は代えて、本来伝送されるべき信号(ここでは送信端子7からアンテナ端子5へ伝送される送信信号)に非線形素子21が及ぼす影響を低減することに寄与してもよい。
例えば、送信フィルタ13にシャントに接続されている1以上の非線形素子21に直列に接続されている1以上の調整素子51(図13(c))は、抵抗値が比較的大きい抵抗体、インダクタンスが比較的大きいインダクター、及び/又は容量が比較的小さいキャパシターとされてよい。この場合、送信信号を基準電位部11へ流れにくくすることができる。
また、例えば、送信フィルタ13に直列に接続されている1以上の非線形素子21に並列に接続されている1以上の調整素子51(図13(b))は、抵抗値が比較的小さい抵抗体、容量が比較的大きいキャパシター、及び/又はインダクタンスが比較的小さいインダクターとされてよい。この場合、送信信号をアンテナ端子5へ流れやすくできる。
上記において、調整素子51の抵抗値、インダクタンス及び容量は適宜に設定されてよい。例えば、伝送すべき信号に関して意図されている周波数(例えば通過帯域の中心周波数)及び電圧(例えば最大値又は実効値)を想定したときに、大きな抵抗値、大きなインダクタンス及び/又は小さな容量をインピーダンスに変換した値は、キャンセル部17全体のインピーダンスの2/3以上又は4/5以上とされてよい。また、大きな容量及び/又は小さなインダクタンスをインピーダンスに変換した値は、キャンセル部17全体のインピーダンスの1/3以下又は1/5以下とされてよい。
(構造例)
分波器1の構造は適宜なものとされてよい。以下に、2つの例を示す。
図14(a)は、分波器1の構造の例を示す平面図である。
この例では、分波器本体3及び1以上(図示の例では3つ)の非線形素子21は、それぞれパッケージングされた電子部品とされている。これらの電子部品は、回路基板53に実装され、回路基板53の配線55によって互いに接続されている。特に図示しないが、回路基板53には、分波器1に対して接続される他の電子部品、及び/又は分波器1に対して非接続とされる電子部品が実装されてよい。換言すれば、分波器1は、プリント回路板(プリント配線板、及び当該プリント配線板に実装された電子部品)の一部とされてよい。このように、非線形素子21は、分波器本体3と共にパッケージングされるのではなく、分波器本体3に対する外付けの電子部品とされてよい。
図14(b)は、分波器1の構造の他の例を示す平面図である。
この例では、分波器本体3及び1以上(図示の例では3つ)の非線形素子21は、共にパッケージングがなされて1つの電子部品とされている。例えば、分波器1は、回路基板57を有しており、送信フィルタ13、受信フィルタ15及び1以上の非線形素子21が実装されている。送信フィルタ13及び受信フィルタ15は、例えば、ベアチップの状態、又はウェハレベルパッケージの状態とされてよい。非線形素子21は、パッケージングがなされた状態であってもよいし、なされていない状態であってもよい。送信フィルタ13、受信フィルタ15及び1以上の非線形素子21は、回路基板57の上面を覆う不図示の樹脂等によって共に封止される。回路基板57には、適宜な位置にアンテナ端子5、送信端子7及び受信端子9が設けられる。
回路基板53及び57は、公知の種々の態様とされてよい。例えば、これらの基板は、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板、HTCC(High Temperature Co-Fired Ceramic)基板又は有機基板とされてよい。
特に図示しないが、調整素子51も、非線形素子21と同様に、分波器本体3に対する外付けの電子部品とされてもよいし、分波器本体3と共にパッケージングされるものとされてもよい。外付けか否か等の態様は、2以上の非線形素子21同士で異なっていたり、2以上の調整素子51同士で異なっていたり、非線形素子21と調整素子51とで異なっていたりしてもよい。
図14(a)の構造例と図14(b)構造例とは組み合わされてもよい。すなわち、複数の素子のうち、一部の素子が分波器本体3と共にパッケージングされるとともに他の素子が外付けとされてもよい。また、非線形素子21及び/又は調整素子51は、回路基板53及び/又は57に実装されるのではなく、回路基板の表面及び/又は内部に作り込まれてもよい。
また、図16に示すように、非線形素子21及び/又は調整素子51をまとめて1つのパッケージに入れた素子56を、分波器本体3と共に回路基板53(又は57)に実装してもよい。
(通信装置)
図15は、分波器1の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものであり、例えば、分波器1を含んでいる。ここでは、キャンセル部17の図示は省略されている。
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調及び周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器1(送信端子7)に入力される。そして、分波器1(送信フィルタ13)は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ端子5からアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器1(アンテナ端子5)に入力される。分波器1(受信フィルタ15)は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して受信端子9から増幅器161へ出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF-IC153によって周波数の引き下げ及び復調がなされて受信情報信号RISとされる。
なお、送信情報信号TIS及び受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された信号である。無線信号の通過帯は、適宜に設定されてよく、比較的高周波の通過帯(例えば5GHz以上)とされても構わない。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、図15では、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、図15は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、弾性波デバイス(分波器1)は、弾性波素子部(送信フィルタ13)と、キャンセル部17とを有している。送信フィルタ13は、圧電体31b、及び該圧電体31bに電圧を印加する励振電極33を有している。キャンセル部17は、送信フィルタ13と、所定の端子(図1(a)ではアンテナ端子5)又は基準電位部11とを仲介している1以上の非線形素子21を含んでいる。キャンセル部17は、送信フィルタ13において生じる奇数次の非線形歪のうちのいずれかである第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍の非線形歪を生じる。
従って、既述のように、キャンセル部17が生じる第2非線形歪によって弾性波素子部において生じる第1非線形歪の一部又は全部が打ち消され、分波器1において生じる非線形歪が低減される。その結果、例えば、送信フィルタ13において受信フィルタ15の通過帯域内に周波数を有する第1非線形歪が生じたときに、第1非線形歪の強度を低減して、第1非線形歪が受信フィルタ15を通過する蓋然性を低減できる。ひいては、分波器1の受信感度を向上させることができる。
1以上の非線形素子21は、キャパシター23、インダクター25及びダイオード27のいずれか1つを少なくとも含んでよい。
この場合、例えば、公知の電子素子又はそれを応用した電子素子を用いて送信フィルタ13の非線形歪を低減することができる。その結果、例えば、コスト削減が図られる。
1以上の非線形素子21は、印加される交流電圧の実効値が所定の電圧範囲内において大きいほど静電容量が大きくなるキャパシター23を含んでよい。また、1以上の非線形素子21は、印加される交流電圧の実効値が所定の電圧範囲内において大きいほどインダクタンスが大きくなるインダクター25を含んでよい。
これらの場合、キャパシター23の非線形性は正である。一方、圧電体31bは、図4に示したように、負の非線形性を示す。その結果、図6(a)~図7(b)を参照して説明したように、位相の調整を行わずに、キャパシター23の非線形性歪によって弾性波素子19の非線形歪を打ち消すことができる蓋然性が高い。ひいては、キャンセル部17の構成を簡素化できる。
キャパシター23は、静電容量増加用の反強誘電体(誘電体23b)を有してよい。反強誘電体は、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛系材料によって構成されてよい。また、キャパシター23は、静電容量増加用の強誘電体(誘電体23b)を有してよい。強誘電体は、チタン酸バリウム系材料によって構成されてよい。インダクター25は、インダクタンス増加用の強磁性体(コア25b)を有してよい。
これらの場合においては、例えば、キャパシター23及び/又はインダクター25が非線形性を発現しやすく、かつ非線形性が強くなりやすい。非線形性が強い方が非線形歪の強度が大きくなりやすいから、非線形素子21の構成を小型化しつつ、送信フィルタ13の非線形歪を低減する効果を得ることができる。
1以上の非線形素子21は、アノード及びカソードのうちアノードが弾性波素子19に接続されているダイオード27Aと、アノード及びカソードのうちカソードが弾性波素子19に接続されているダイオード27Bと、を含んでよい。
この場合、ダイオード27の強い非線形性を利用できる。非線形性が強いことにより、非線形素子21の構成を小型化しつつ、弾性波素子19の非線形歪を打ち消すための非線形歪を生じさせることができる。そして、図11(c)を参照して説明したように、入力電圧が正の場合と負の場合との双方に関して、弾性波素子19の非線形歪を打ち消すための非線形歪を生じさせることができる。
キャンセル部17は、非線形素子21に接続されている1以上の調整素子51を有してよい。弾性波素子19が生じる第1非線形歪の強度と非線形素子21が生じる第2非線形歪の強度との差、及び第1非線形歪の位相と第2非線形歪の位相の逆相との差の少なくとも一方の差は、1以上の調整素子51が設けられていないと仮定したときの前記一方の差よりも小さくされてよい。
すなわち、非線形素子21が生じる第2非線形歪によって弾性波素子19が生じる第1非線形歪の一部又は全部を打ち消すことができるように調整素子51が設けられてよい。この場合、例えば、非線形素子21の設計の自由度が向上する。例えば、非線形素子21として汎用品を用いることが可能になる。
1以上の調整素子51は、非線形素子21とは別の非線形素子を含んでよい。
この場合、例えば、非線形素子21が生じる非線形歪の強度を分圧によって調整したり、非線形歪の位相を調整したりするだけでなく、調整素子51が生じる非線形歪を非線形素子21の非線形歪に重畳して、非線形歪の強度を調整することができる。その結果、例えば、非線形素子21の設計の自由度が向上する。
1以上の調整素子51は、線形素子を含んでよい。
この場合、調整素子51は、基本的に非線形歪を生じない。従って、例えば、調整素子51が、非線形素子21が生じる非線形歪の強度に及ぼす影響を予測しやすい。すなわち、調整された非線形歪の強度の予測が容易である。
1以上の非線形素子21は、弾性波素子19が生じる第1非線形歪と同じ周波数の第2非線形歪をそれぞれ生じる複数の非線形素子21とされてよい。該複数の非線形素子21が生じる第2非線形歪の合計は、第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍とされてよい。
この場合、例えば、複数の非線形素子21によって、第1非線形歪の一部又は全部を打ち消すのに必要な強度を有する第2非線形歪を生成すればよいから、個々の非線形素子21の設計の自由度が向上する。例えば、非線形素子21として汎用品を用いることが可能になる。
1以上の非線形素子21が、弾性波素子19が生じる第1非線形歪と同じ周波数の第2非線形歪を生じる1つの非線形素子21(便宜上、第1非線形素子21という。)を含んでよい。第1非線形素子21が生じる第2非線形歪は、第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍とされてよい。
すなわち、1つの第1非線形素子21によって、第1非線形歪の一部又は全部を打ち消すのに必要な強度を有する第2非線形歪が生成されてよい。別の観点では、そのように第1非線形素子21の構成が調整されてよい。この場合、例えば、複数の非線形素子21を設けたり、1以上の調整素子51を設けたりする必要性が低減され、キャンセル部17を小型化できる。
なお、以上の実施形態において、分波器1は弾性波デバイスの一例である。送信フィルタ13は弾性波素子部の一例である。アンテナ端子5は所定の端子の一例である。RF-ICは集積回路素子の一例である。
また、一般に、弾性波素子19および、非線形素子21で発生する歪の強度、位相は周波数依存性を持っている。このため、第1非線形歪と第2非線形歪の打ち消しは、一般的にはある特定の周波数で最大になり、その他の周波数では打ち消しの効果は小さくなる。しかし、その場合でも、所望の周波数範囲にわたって、ある程度の歪の低減は可能である。これは、図6や図7に示したシミュレーション結果から明白である。また、調整素子51を使って回路を最適化することにより、弾性波素子19および、非線形素子21で発生する歪の周波数依存性を近づけ、打ち消しの効果が発揮される周波数範囲を広げることができる。
本開示に係る技術は、上記の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、弾性波は、SAWに限定されない。弾性波は、BAW、弾性境界波または板波(ただし、これらの波とSAWとは必ずしも区別できるわけではない。)であってもよい。別の観点では、別の観点では、励振電極は、IDTに限定されない。例えば、励振電極は、圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)のように、圧電薄膜を厚さ方向に挟む1対の電極であってもよい。
弾性波素子部は、送信フィルタに限定されない。例えば、弾性波素子部は、受信フィルタであってもよいし、共振子であってもよい。
弾性波デバイスは、分波器に限定されない。例えば、弾性波デバイスは、共振子又はフィルタであっても構わない。別の観点では、弾性波デバイスは、弾性波素子部(実施形態では送信フィルタ13)とは別の機能部(実施形態では受信フィルタ15)を有していなくてもよい。また、分波器は、デュプレクサに限定されない。例えば、分波器は、3つのフィルタを有するトリプレクサであってもよいし、4つのフィルタを有するクアッドプレクサであってもよい。
非線形素子は、キャパシター、インダクター及びダイオードに限定されない。例えば、弾性波素子であってもよい。
本開示に係る技術は、奇数次の非線形歪だけでなく、偶数次の非線形歪の低減に利用されてもよい。本開示に係る技術からは、例えば、以下の概念の発明を抽出可能である。
(概念1)
圧電体、及び該圧電体に電圧を印加する励振電極を有している弾性波素子部と、
前記弾性波素子部と、所定の端子又は基準電位部とを仲介している1以上の非線形素子を含んでおり、前記弾性波素子部において生じる複数の非線形歪のうちのいずれかである第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍の非線形歪を生じるキャンセル部と、
を有しており、
前記1以上の非線形素子が、キャパシター、インダクター及びダイオードのいずれか1つを少なくとも含んでいる
弾性波デバイス。
1…分波器(弾性波デバイス)、5…アンテナ端子、11…基準電位部、13…送信フィルタ(弾性波素子部)、17…キャンセル部、21…非線形素子、31b…圧電体、33…励振電極。

Claims (21)

  1. 圧電体、及び該圧電体に電圧を印加する励振電極を有している弾性波素子部と、
    前記弾性波素子部と、所定の端子又は基準電位部とを仲介している1以上の非線形素子を含んでおり、前記弾性波素子部において生じる奇数次非線形歪のうちのいずれかである第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍の非線形歪を生じるキャンセル部と、
    を有している弾性波デバイス。
  2. 前記1以上の非線形素子が、キャパシター、インダクター及びダイオードのいずれか1つを少なくとも含んでいる
    請求項1に記載の弾性波デバイス。
  3. 前記1以上の非線形素子が、印加される交流電圧の実効値が所定の電圧範囲内において大きいほど静電容量が大きくなるキャパシターを含んでいる
    請求項2に記載の弾性波デバイス。
  4. 前記キャパシターが反強誘電体を有している
    請求項3に記載の弾性波デバイス。
  5. 前記反強誘電体がチタン酸ジルコン酸鉛系またはチタン酸ジルコン酸ランタン鉛系材料によって構成されている
    請求項4に記載の弾性波デバイス。
  6. 前記キャパシターが強誘電体を有している
    請求項3に記載の弾性波デバイス。
  7. 前記強誘電体がチタン酸バリウム系材料によって構成されている
    請求項6に記載の弾性波デバイス。
  8. 前記1以上の非線形素子が、印加される交流電圧の実効値が所定の電圧範囲内において大きいほどインダクタンスが大きくなるインダクターを含んでいる
    請求項2に記載の弾性波デバイス。
  9. 前記インダクターが強磁性体を有している
    請求項8記載の弾性波デバイス。
  10. 前記1以上の非線形素子が、
    アノード及びカソードのうちアノードが前記弾性波素子に接続されている第1ダイオードと、
    アノード及びカソードのうちカソードが前記弾性波素子に接続されている第2ダイオードと、を含んでいる
    請求項2に記載の弾性波デバイス。
  11. 前記1以上の非線形素子が、
    逆極性に直列に接続した2つのダイオードを含んでいる請求項2に記載の弾性波デバイス。
  12. 前記1以上の非線形素子が、前記第1非線形歪と同じ周波数の第2非線形歪を生じる第1非線形素子を含んでおり、
    前記キャンセル部が、前記第1非線形素子に接続されている1以上の調整素子を有しており、
    前記第1非線形歪の強度と前記第2非線形歪の強度との差、及び前記第1非線形歪の位相と前記第2非線形歪の位相の逆相との差の少なくとも一方の差が、前記1以上の調整素子が設けられていないと仮定したときの前記一方の差よりも小さい
    請求項1~11のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
  13. 前記1以上の調整素子が、前記第1非線形素子とは別の非線形素子を含んでいる
    請求項12に記載の弾性波デバイス。
  14. 前記1以上の調整素子が線形素子を含んでいる
    請求項12又は13に記載の弾性波デバイス。
  15. 前記1以上の非線形素子が、前記第1非線形歪と同じ周波数の第2非線形歪をそれぞれ生じる複数の非線形素子であり、該複数の非線形素子が生じる前記第2非線形歪の合計が、前記第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍である
    請求項1~14のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
  16. 前記1以上の非線形素子が、前記第1非線形歪と同じ周波数の第2非線形歪を生じる第1非線形素子を含んでおり、該第1非線形素子が生じる前記第2非線形歪が、前記第1非線形歪に対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍である
    請求項1~15のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
  17. 前記キャンセル部が、前記弾性波素子部において生じる互いに周波数が異なる2以上の非線形歪のそれぞれに対して、位相が180±40°で、かつ強度が1.7~0.3倍の非線形歪を生じる
    請求項1~16のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
  18. 前記キャンセル部と、前記弾性波素子部は、単一のパッケージに内蔵されている請求項1~17のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
  19. 前記キャンセル部と、前記弾性波素子部が、単一の回路基板に実装される請求項1~17のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
  20. アンテナ端子と、
    前記アンテナ端子に出力される信号をフィルタリングする送信フィルタと、
    前記アンテナ端子から入力される信号をフィルタリングする受信フィルタと、
    を有しており、
    前記弾性波素子部が前記送信フィルタ又は前記受信フィルタである
    請求項1~19のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
  21. 請求項20に記載の弾性波デバイスと、
    前記アンテナ端子に接続されているアンテナと、
    前記送信フィルタ及び前記受信フィルタに接続されている集積回路素子と、
    を有している通信装置。
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