JP2022013478A - 戸建て建屋向けの防消火設備 - Google Patents

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【課題】戸建て建屋向けに窒素を使う新たな防消火法を提供する。【解決手段】低層の戸建て建屋3の火災に備え、現状の水による消火法に代えて窒素を使う乾式消火法を提供する。具体的には建屋の発災に際し、当該建屋の周囲に組み立て式のフレーム8と耐火布7を用いて一時的に立体型の空間部を設け、この空間部に液化窒素ローリ車1を経由して得られた窒素ガスを放出して空間部内の酸素濃度を下げることにより、火炎を消火させる乾式防消火法。【選択図】図1

Description

発明の詳細な説明
有史以来、人は火事と言えば、即水を使う消火を思い浮かべる。本発明は低層の戸建て建屋において火災が発生した場合、人的及び物的被害を最小限に抑えるため従来の水を使う湿式防消火法に代わり、窒素を使う乾式防消火法を提供する。
本発明の発想の発端は近年、従来までの湿式消火法では対処できない事例が幾つか散見されたことにある。この背景には最新の建築業界では消火の対象となる建屋が桁違いに大型化かつ高層化し、今までの消火技術では追い付けない実状が挙げられる。例えば2017年に埼玉県三芳町で起きたアスクル社の超大型物流倉庫の火災では火炎が全倉庫内に燃え広がり、発災から鎮火まで12日間を要する大火災となった。
更に世界的な文化財産が火災により失われた災害も幾つか発生している。一件は2019年のパリ・ノートルダムダム寺院の火災である。この事例では パリ全市の消防隊による必死の消火活動にも拘わらず、寺院の象徴であった尖塔が焼け落ちてしまった。他の一件は同じ年に起きた沖縄・首里城の火災である。この事例では火災は城の主要な建物に次々に燃え広がり、正殿を始め主要な建物は殆ど全てを消失した。両ケースとも大量の水を使った懸命の消火にも拘わらず、火炎を鎮火できなかった。
現在、これ等の災害の再発防止策として検討されている改善策はその殆どが「煙検知による発災情報」と「水を使うスプリンクラー」の組み合わせである。首里城の再建計画に際しても上記方式の採用がほぼ決定的である。国内で他の木造城に関しては首里城の火災を契機に急遽、見直しが行われているが、現状では上記の防消火法に優さる代案は提言されていない。
一方で消火法については上記の湿式防消火法(=以降、湿式法と略称する)と並んで、窒素や不活性ガスを使う乾式防消火法(=以降、乾式法と略称する)が存在する。乾式法については既に一部の小規模な建屋を対象として実施されている。例えば箱根のポーラ美術館では館内の最も貴重な陳列室に、消火剤としてハロゲン系の不活性ガスを使う方式が採用されている。やや大型の施設では東京・国会図書館の書庫室に窒素ボンベを活用した乾式法が設置されている。。
済みである。
上記のように乾式法は既に実績ある消火法であるが、我が国に限らず世界でもその実施例は極めて少ない。しかし最近の最新の超大型コンピュータの集中管理室や高圧電気室の消火設備としてこの方式は必須の消火法である。更に昨今は地球の温暖化防止の観点から炭化水素に代わり水素の活用が注目されている。中でも水素インフラの構築は最も重要な課題である。窒素は水素インフラの構築に際し、安全対策で不可欠な物質で、その構築には窒素の助けがどうしても必要である。窒素を使う乾式法については以上のような環境変化に併い、徐々にではあるがその見直しが行われている。
その一例として、下記の特許が既に公開されている。
特開2018-84042 「窒素インフラ システム」
この特許には導管を使用して広域な範囲に水素インフラを構築すると共に同時並行して「導管を使用する窒素インフラの構築」が提言されている。同特許には窒素を水素ステーションの安全対策に使用すると共に、容積が数万m3クラスの超大型の物流倉庫での発災時に窒素を消火用として活用する事例が紹介されている。
しかし同特許が対象とする建屋は容積が数万m3クラスで、一般の戸建て建屋のように、容積が数百m3程度の建屋は対象外としている。以上のように現状では窒素を用いる乾式法に関しては一部特殊な用途への提案は散見されるが、対象数は極めて限定的であり、本発明のように小規模の一般建屋を対象とする発明は国内は無論のこと世界でも公開されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みて為されたものである。目標は低層の戸建て建屋を対象に新たな防消火法を導入することである。即ち、防消火設備として従来の水を使う湿式防消火設備に代えて、窒素を用いる乾式消火法を導入する。
初めに窒素を使用して支燃性ガスを窒素で置換する際の基本的な原理について記す。窒素による防消火法は燃焼の3要素である「可燃物」「着火源」「支燃性ガス」の中で、支燃性ガスを無くする方法である。燃焼に関与するこれ等の三要素は論理上「AND回路」で結ばれている。窒素を使って火災周囲の支燃性ガス中の酸素濃度を限界値まで下げれば、火災は完璧に消火できる。乾式法は建屋が密閉型であるという条件さえ満たせば、着火源が幾らあろうとも火炎は完璧に消火できるので、湿式法に比べ原理が単純でかつ消火効率が極めて高い。
美術館や博物館等で貴重な美術品が水を使う消火で損傷されることを避けるため窒息性ガスを吹込んで消火する方法は 既に記述した。窒息性ガスとして実績あるガスはハロゲン系ガスと窒素である。乾式法は現在でも根強い需要があり、最新の事例では2014年に竣工した日本最高の高さを誇る「あべのハルカス」でも、高圧電気室やコンピュー機器の管理室には乾式法が導入されている。
建屋内に消火用として窒素を使用する場合は、主に次の二つの観点から検討しなければならない。第一は消火の主目的である如何に素早く鎮火させるかという消火効率の向上である。第二は副次的なマイナス影響である酸素欠乏による人的被害の防止である。この第二番目の対応ついては特に重要なので、後で詳述する。
建屋内に窒素を吹き込むと、内部の空気は窒素とほぼ均一に混合し、最終的には排気口を経由して大気へ放出される。学術的にはこの混合を「完全混合」と呼ぶ。窒素の吹込みにより建屋内の酸素濃度は徐々に低下し、可燃性ガスが燃焼できない濃度に達する。この時の酸素濃度を「限界酸素濃度」という。この値は可燃性ガスにより固有の値を持ち、水素や一酸化炭素の場合は各々5.0%と5.6%、メタンでは12.1%である。
可燃物が固体の場合も高温により固体が分解され水素や一酸化炭素等の可燃性ガスを発生するので、燃焼を止めるには気体の場合と同様に建屋内の酸素濃度が可燃性ガスの限界酸素濃度以下になるまで窒素を吹き込めば良い。吹き込まれた窒素は建屋内の空気と混合し、建屋内の酸素濃度を徐々に低下させる。
通常ボンベに貯蔵可能な窒素量は数m3/本であるから、消火対象とする建屋の容量は概ね数10m~100m程度に限定される。このため従来の乾式法の対象は建屋全体ではなく、建屋の中で最も貴重な部屋に限定せざるを得なかった。従って、建屋容量で数万m3クラスの大型倉庫向けに、この方式を採用するには、第一に窒素の供給量の不足がネックとなり、今までは検討される機会殆ど無かった。しかし今回の対象とする建屋はその容積が一棟で数百m3程度である。この容積であれば液化窒素ローリ車を活用すれば、量的には十分に対応可能な範囲である。
液化窒素は液密度0.809kg/L、沸点77°Kの液体で、液化窒素ローリ車とはこれを断熱された容器に充填して運搬する特殊車両を言う。この種の車両は現在国内では数百台が運行され、主に冷媒として使われている。大型の7トン車の場合、その最大搭載量は容量換算で約6,000m/台である。消火対象を個別の戸建て建屋とすれば、その建屋の容積は凡そ数百m程度、建屋を含む周辺の容積では高さを10mと仮定すれば全容積で2,000m3程度である。消火の対象を上記の範囲に留めることができれば、液化窒素ローリ車 台で 数棟程度の戸建て建屋の防消火に対応が可能である。
次に窒素を使って建屋内の酸素ガス濃度を低減させる方法について基本的な技術について記す。可燃物を水素、又は一酸化炭素と仮定すれば、その燃焼には、酸素濃度を5%以上に保たなければならない。逆の見方では建屋内の空気を窒素で置換して空気中の酸素濃度を5%以下すれば、水素、一酸化炭素は完璧に消炎する。本発明では建屋周辺の支燃ガス中の酸素濃度を窒素を吹き込んでこのレベル(=5.0%)まで低減させる。
容積(Am)を有する建屋に容量(Vm)の窒素を吹き込み、建屋内の同量のガスを放出させて建屋内の酸素濃度を通常濃度(a=21%)から 目標の酸素濃度(a=5%)まで低減させる場合、その低減曲線は「完全混合式」に従い、次の関数で示される。ここでeはネピアの数と呼ばれる定数である。
Figure 2022013478000002
上式より空気中の酸素aを限界酸素濃度aまで低下させる窒素量Vは
Figure 2022013478000003
例えば建屋容積A=1,000m、a=21.0、a=5.0を代入すれば、窒素量V=1,430mとなる。即ち容積Amの建屋内の空気を窒素で置換して燃焼を継続できない酸素濃度まで低減させるには、容量で建屋容量Aの約1.43倍の窒素が必要である。
次に乾式法の具体的な実施手順について記す。本発明の消火法は建屋を含む周囲全体の空間をそのままそっくり全体を窒素の雰囲気にして、酸素を絶って消火させるという提案である。手順の第一は建屋の外周に建屋を囲う空間を設けることから始める。 この作業は消防士の手で実施される。空間を設けるために用意するものは現場で容易に組み立てが可能なフレームと耐火布である。フレームは予め適当な長さに分割し、現地で連結して耐火布を張るための支柱とする。
耐火布とは高熱に耐える繊維で出来た布の略称で、既に数種類の耐火布が実用化されおり、更にアルミ混紡のアラミド繊維など、1,000°C以上の高熱に耐える新素材が開発中である。耐火布はこの材質で出来た布を適当なサイズに裁断し、消防車に搭載して発災現場まで運び、現地で繋げて耐火用の天膜とする。耐火布は現地で簡単に繋ぎ合わせができるよう、予め必要な留め具を装着して置く。
消火対象となる建屋を囲う空間の形状は通常は長方形の立方体である。縦横の長さは建屋の大きさによるが、都市部の多くは一辺が10m~20mの矩形である。建屋を囲む空間部は2階建てと仮定すれば、高さは10m前後で空間容積は約1,500m3程度となる。この空間を組み立てるイメージは、建屋の外装塗装を行う際に見かけるように建屋の周囲に防護ネットを張る感覚であるが、防護ネットの場合とは異なり、組み立てに際し若干の工夫を施す。
それは立方体の形状を「下部面積に比べて上部面積を狭くする」ことである。上部に向かって緩やかな形状にすることは空間部への空気の逆流を防いで、窒素による置換効果を高める。上部の面積を狭める程度は緩やかで良い。この際、1段で狭めても良いし、途中で折り曲げて2段で折り曲げても良い。この工夫により、空間内に吹き込んだ窒素は空間内をショート・パスすることなしに内部の空気と十分に混合し、大気へ放出される。建屋の周囲に窒素を吹き込む概略を[図2]に示す。
消火に必要な窒素は建屋近郊の窒素供給所から液化窒素ローリ車を使用して受け入れる。この液化窒素は別途現地に設置した気化器により、中低圧の窒素ガスとなる。液化窒素は超低温なので、外気温度により容易に気化する。気化に際し気化器に過剰に液化窒素を供給することは急速な圧力上昇を招くので危険である。場合によっては、急激な圧力上昇を回避するため安全弁を設置することが望ましい。
気化器を出た窒素ガスは二方向に分配されて、空間内に吹き込まれる。一つは空間部の下部に設置した窒素ガス吹込み用のヘッダーを経由し、ヘッダーに取り付けた複数の吹き出しノズルから建屋周囲の空間に吹き込まれる。この窒素は建屋外部の空気中の酸素濃度を低減させるため使われる。
他の一つはホース等を使って、建屋本体の内部の酸素濃度を低下させるために使われる。この窒素の吹込み口は建屋の玄関、換気口、小窓等を利用して行う。この際、建屋内に吹き込まれた窒素により建屋本体が過圧されないよう、排気口を確保して置く。以上の二個所からの窒素吹込み操作により建屋は内外共に徐々に窒素で置換されて、最終的には前記の限界酸素濃度(=5.0%)に達する。限界酸素濃度の環境下では全ての可燃物は完璧に消火する。この消火設備の概略を[図1]に示す。
本発明の消火操作に要する時間は窒素の吹込み開始から1時間以内と推定される。この根拠は次の通りである。液化窒素ローリ車には液化窒素(=ガス量換算6,000m3)の荷下ろしを1時間程度で終えるポンプが搭載されている。このポンプを使い既に記載した空間容積2,000m3を窒素で置換する時間は計算上では20分である。今回は通常の荷下ろしとは違い、気化器を経由した荷下ろしであるが、設備的には上記の時間は達成可能な数値である。この時間は湿式法と比べ驚異的な短時間である。以上の推定から乾式法は消火効率が極めて高いこと及び消火時間を律速するのは消火作業自体に費やす時間ではなく、準備作業であることが解かる。
乾式法の長所を最大限に活かすためには準備作業に要する時間を如何に短縮できるかに懸かっている。この準備作業に類似した作業は日常生活でも度々見かける。例えばビルの新築現場では周囲に落下物による被害をなくすため防護壁が設置される。小規模なケースでは住宅の外層塗装に際し周囲にネットを廻らす。現状ではこれ等の作業に費やす時間は決して短くない。しかし組み立てに係る技能は用具と施工方法の改善により確実に向上する。
日本の消防士の技能はこの分野では折り紙付きで、今後現地での組み立て作業を短時間で完了させることは十分に期待できる。立地により建屋周辺に障害物があるケースでも、組み立て構造が簡単であり、対応は可能である。また都市部を中心に現在、進行中の電柱を地下に埋める無電柱化は本作業の時間短縮に有効である。目標は劇場の舞台でカーテンを引くように、建屋の周囲に耐火布を一気に廻らすこと。この時間を短縮できれば、本発明はその長所を最大限に発揮することが出来る。
乾式法の導入により消防士の役割は今迄とは一変する。従来までの消防士の業務は「消火ホースを使って火炎を鎮火させる」という消火活動そのものであった。今後この消火業務は大幅に軽減される。消火に必要な作業は気化器からの窒素の供給元弁を開くだけである。乾式法の導入に伴う消防士の役目は消火活動に先立ち、建屋の周りにフレームと耐火布を使って臨時の空間部を設けること、液化窒素を気化器を経由して窒素ガスを空間部に吹き込むことの二つの作業に移行する。
一方、新たに重要な業務が加わる。それは居住者を火災エリアから退避させて、万一の酸欠事故から住民を守ることである。この結果、発災時に多数の消防車や消火のための消防士が出動することは一切不要となり、通常の規模の火災であれば、戸建て建屋1棟の火災に際し、1台の液化窒素ローリ車と数人の消防士で十分に対応することが可能となる。
代わりに建屋の周囲に空間を設けるため、専用の資材を運搬する工作車と現地でこれを組み立てる工作員が新たに必要となる。消火のスピードはこの工作部隊の活動の如何に懸かっている。更に窒素の供給源は地域の窒素供給所から消防署に移管され、近い将来地域の消防署には水を使う消防車と並んで、気化器付きの液化窒素ローリ車が配備される日がやって来る。
本発明を実施するための最良の形態
最後に本発明に付随するマイナス効果ともいえる酸素欠乏症について記す。この症状は窒素を取り扱う全ての人が絶対に忘れてはいけない危険症状である。大気中の酸素濃度は21%であるが、この濃度が18%位であれば、人の行動には全く問題は生じない。しかしこの濃度以下に低下すると人間は体調に異変を来たす。
症状の程度には個人差はあるが、一般的には酸素濃度が12%程度までは、人は不自由ではあるが何とか行動することは可能である。しかし酸素濃度が10%を切ると危険状態に陥る。酸素濃度8%では意識を失い、本発明が目標としている濃度(=5.0%)では全ての人が数回の呼吸で死に至る。
低層の戸建て建屋の火災の場合は被災する住民の人数が限られており、避難には最初に居住者自身による確認が行われるので、退避を見落とすような事態が発生する確率は小さい。一方で消火に窒素を使う経験は一般の人々にとって全く新しい経験である。「窒素ガスを吸い込めば 窒息死する」という朧げな感覚はあっても、その意識の定着には今後かなりの年月を要することを覚悟しなければならない。
酸欠事故の防止には当たっては「消火対象内に滞留者がいない」と判定する消防士の再確認は極めて重要な仕事である。消防士による確認はフレームと耐火布を使って空間部の設定が終了した時点で行われる。この段階で建屋に残留者がいる確率は低いが、特異の例として一度退避した人が再び忘れ物を取りに入居する等のケースに対応するためである。この再確認が完了した時点で初めて建屋の内外に向けて窒素の吹込みが開始される。
このように確認を幾重にも実施する理由は、空間内に人間がいることを絶対に見落さないよう配慮したためである。消防士は一度組み立てた空間内には消防士以外の人は絶対に立ち入らせてはいけない。消防隊による、この一連の作業は消防隊長の指揮の元で規律正しく行う。この際、消防隊は万一逃げ遅れた人の救助に備えて、酸素ボンベ付きの呼吸用保護具と酸素救命具を常備して置く。
以上の戸建て建屋の酸欠防止対策は必ず実行されなければならない。この実践は本発明を実施するための最良かつ必須の形態である。この対策なしで本発明を実行することは非常に危険である。安全を確保するために導入した窒素が人命を奪う凶器となってはならない。
発明の効果
窒素を使う乾式法が低層の戸建て建屋の防消火に適用できれば、その対象数は極めて多い。乾式法の最大の長所は水を使う従来の湿式法に比べて、消火に必要な時間を劇的に短縮できることである。更に乾式法は建屋内の内装や家具が水濡れする心配は全くない。前項で紹介したアスクル社の火災では倉庫内に在庫していた約100億円の商品は放水による水濡れで全滅した。
一方、戸建て建物への窒素の拙速な導入は酸欠事故という人間の生命に関わる深刻な問題に直結する。「建屋に窒素を吹き込めばに人間は窒息死する」この根強い懸念が長い間、窒素を使う乾式防消火法の導入を妨げて来た最大の理由であった。この懸念は現時点でも間違っていない。窒素は無味無臭で、使い方を誤れば「サイレント・キラー・ガス」となる。
21世紀、新たな水素時代を迎えてるに当たり、窒素によるバックアップがその発展の成否を握ると言われている。窒素が「災害を防止する安全ガス」となるか又は「窒息死を招く殺人ガス」となるのか、今世紀はその決断が求められている。特に戸建て建屋のような一般住宅への導入に当たっては、地道な啓蒙活動が求められる。
繰り返しとなるが、本発明に付随する「酸欠事故の対する安全確認」は絶対に避けることが出来ない必須の対策である。本発明を推進する際のキイワードは窒素。20世紀、エネルギーの主役は炭化水素、全ての産業がその恩恵を享受した。反面、副生する炭酸ガスに起因する地球の温暖化現象を招きつつある。この代替えエネルギーとして環境にクリーンな水素が注目されている。
しかし水素は着火し易く、単独ガスとして一般市場で普及するには危険度が高か過ぎる。水素社会の到来にはどうしても窒素の助けが必要である。現在、水素社会の到来に備え、その危険防止策の一つとして、水素を単独ではなく水素・窒素の混合ガスとして供給する水素インフラの構築が検討されている。この新たなインフラが完成すれば、水素と共に多量の窒素の供給が可能となり、同時に窒素の新たな需要が喚起される。
21世紀は水素時代の到来と共に今まで脇役であった窒素がその主役となる変革の時代を迎える。特に有効な敷地が狭く、木造の戸建て建屋が密集している我が国において窒素を活用する乾式法は大きな発展性を秘めている。一方で窒素の持つ潜在的な危険を性を広く一般の人々に周知して頂くには今暫く時間が懸かるかも知れない。本発明がその一端を担うことを静かに見守りたい。
窒素を用いた乾式防消火設備の全体の構成を示す概略図である。 戸建て建屋の内部とその周囲に窒素を吹き込む概略図である。
1 液化窒素ローリ車
2 液化窒素気化器
3 戸建て建屋
4 窒素ガスの吹込みホース
5 排気口
6 窒素ガスの吹き出しノズル
7 耐火布
8 フレーム
液化窒素は液密度0.809kg/L、沸点77°Kの液体で、液化窒素ローリ車とはこれを断熱された容器に充填して運搬する特殊車両を言う。この種の車両は現在国内では数百台が運行され、主に冷媒として使われている。大型の7トン車の場合、その最大搭載量は容量換算で約6,000m/台である。消火対象を戸建て建屋とすれば、その建屋の容積は凡そ数百m程度、建屋を含む周辺の容積では高さを10mと仮定すれば、全容積で2,000m程度である。消火の対象を上記の範囲に留めることができれば、液化窒素ローリ車台で数棟程度の戸建て建屋の防消火に対応が可能である。
21世紀は水素時代の到来と共に今まで脇役であった窒素がその主役になる変革の時代を迎える。特に有効な敷地が狭く、木造の戸建て建屋が密集している我が国において窒素を活用する乾式法は大きな発展性を秘めている。 一方で窒素の持つ潜在的な危険性を広く一般の人々に周知して頂くには今暫く時間が懸るかも知れない。 本発明がその一端を担うことを静かに見守りたい。

Claims (4)

  1. 戸建て建屋が火災に遭遇した際に使用する防消火設備であって、建屋の発災に備え予め消火対象となる建屋の周囲を容易に囲うことが可能な組み立て式のフレームと高熱に耐える耐火布を準備し、上記の建屋で火災が発生した際にこれ等を現地まで運搬し、建屋の周囲に開放部を持つ一時的な空間部を設け、別途用意した窒素ガスを同空間部及び建屋内に放出して、建屋の周囲及び建屋内部の酸素濃度を可燃性ガスの燃焼に必要な酸素濃度以下に低下させることにより、火災を消火または防火する機能を有する乾式防消火設備。
  2. 前記乾式消火設備が消防車により容易に運搬することが可能な移動式であって、現地で任意の形に組み立てた後、窒素ガスを建屋周囲の空間部に放出するための複数の噴射ノズルを有する放出口と建屋内に窒素を吹き込むためのホースによる放出口を装備することを特徴とする請求項1に記載の乾式防消火設備。
  3. 前記 戸建て建屋の外周に臨時の空間部を設ける際に使用するフレームと耐火布については、敷設する空間部の形状に従って上部に空間ができるよう立体型に敷設できる構造とし、かつその立体型の上部面積が下部面積に比べて小さくなるように製作されたフレームと耐火布を使用することを特徴とする請求1に記載の乾式防消火設備。
  4. 前記戸建ての建屋の乾式防消火設備向けの窒素の供給方法については当該建屋が存在する地域の窒素供給所から液化窒素ローリ車を使用して液化窒素を当該建屋まで運搬し、これを気化器を使用して窒素ガスとして上記の空間部及び建屋内に向けて放出することを特徴とする請求項1に記載の乾式防消火設備。
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