以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
《シートリクライニング装置4(乗物用シートリクライニング装置)の概略構成について》
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートリクライニング装置4の構成について、図1〜図21を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、後述するシート1の左右方向を指すものとする。
本実施形態に係るシートリクライニング装置4は、図1に示すように、自動車の右側座席を成すシート1に適用されている。上記シートリクライニング装置4は、シート1の背凭れ部を成すシートバック2を着座部を成すシートクッション3に対して背凭れ角度の調節を行える状態に連結するリクライニング調節機構として構成されている。具体的には、シートリクライニング装置4は、シートバック2とシートクッション3との間に左右一対で設けられている。各シートリクライニング装置4は、各々が一斉にロック・アンロックの各状態に切り換えられることで、シートバック2の背凭れ角度を固定したり解除したりする構成とされる。
詳しくは、図2〜図3に示すように、シートリクライニング装置4は、シートバック2の左右の側部骨格を成す各サイドフレーム2Fの下端部と、これらのシート幅方向の外側に位置するシートクッション3の左右の側部骨格の後端部に連結された各リクライニングプレート3Fと、の間にそれぞれ介設され、これらを互いに同軸まわりに相対回転させたり回転止めしたりすることのできる状態に連結している。
図1に示すように、シートリクライニング装置4は、常時は、シートバック2の背凭れ角度を固定したロック状態に保持されている。上記シートリクライニング装置4は、使用者によりシートクッション3の車両外側(右側)の側部に設けられたリクライニングレバー5が引き上げられる操作(図1の丸付き数字1)により、それらのロック状態が一斉に解除される。それにより、シートリクライニング装置4は、シートバック2の背凭れ角度をシート前後方向に調節することの可能なアンロック状態へと切り換えられる。上記シートリクライニング装置4は、上述したリクライニングレバー5の操作が戻されることにより、付勢により再びロック状態へと戻される。
上記シートバック2の左右のサイドフレーム2Fとそれらの外側に位置する各リクライニングプレート3Fとの間には、それぞれ、シートバック2に前倒れ回転させる方向のバネ付勢力を掛けるリターンスプリング6が掛着されている。これらリターンスプリング6の回転付勢力により、シートバック2は、シートリクライニング装置4による背凭れ角度の固定状態が解かれることで、着座乗員の背部に当たる位置まで起こし上げられる。
そして、シートバック2は、着座乗員の背部が前後に傾動される動きに合わせて、その背凭れ角度が前後に自由に調節される(図1の丸付き数字2)。このように、シートバック2に前回転方向の付勢力を作用させるリターンスプリング6の設定により、シートバック2の背凭れ角度の調節を簡便に行うことができる。具体的には、シートバック2は、図20に示すように、シートクッション3の上面に畳み込まれる前倒れ位置Paと、後側に略水平状に傾倒される後倒れ位置Pcと、の間の約180度の回転領域をシート前後方向に回動できるようになっている。
上記シートバック2を前倒れ位置Paに係止させる構造は、シートバック2の各サイドフレーム2Fの外側面部に結合された各係止板2Fcが、各リクライニングプレート3Fの前側の縁部に突出形成された各前側ストッパ3Fcに当たって係止される構造から成る。また、シートバック2を後倒れ位置Pcに係止させる構造は、シートバック2の各サイドフレーム2Fの外側面部に結合された各係止板2Fcが、各リクライニングプレート3Fの後側の縁部に突出形成された各後側ストッパ3Fdに当たって係止される構造から成る。
ここで、上述したシートバック2の回転領域のうち、シートバック2の背凭れ角度が略垂直状に起立した初段のロック位置Pbから後倒れ位置Pcまでの約90度の回転領域は、リクライニングレバー5の引き上げ操作が解かれることでシートバック2の背凭れ角度が固定された状態に戻される「ロック領域A1」とされている。また、シートバック2の背凭れ角度が上記初段のロック位置Pbから前倒れ位置Paまでの約90度の回転領域は、リクライニングレバー5の引き上げ操作が解かれてもシートバック2の角度が固定されることなく解除状態(ロックが無効となる状態)のまま保持される「フリー領域A2」とされている。
上記フリー領域A2の設定により、シートバック2は、シート1に人が座っていない状態でリクライニングレバー5が操作されてフリー領域A2に入る位置まで前に倒されたら、そこからは、リクライニングレバー5の操作をやめても、自重或いはリターンスプリング6の付勢により前倒れ位置Paまで倒されるようになっている。
上述したシートリクライニング装置4は、具体的には、図2〜図3に示すように、シートバック2の対応する側のサイドフレーム2Fの外側面部に一体的に結合されるラチェット10(図2参照)と、対応するリクライニングプレート3Fの内側面部に一体的に結合されるガイド20(図3参照)と、を有する。上記シートリクライニング装置4は、ラチェット10とガイド20とが互いの相対回転をロックされたり解除されたりするように切り換えられることにより、シートバック2の背凭れ角度を固定したり解除したりする構成とされる。
《シートリクライニング装置4の各部の構成について》
以下、上記左右一対のシートリクライニング装置4の各部の構成について、詳しく説明していく。なお、各シートリクライニング装置4は、互いに左右対称となる同一の構成となっている。したがって、以下では、これらを代表して、図2〜図3に示される車両外側(右側)に配置されたシートリクライニング装置4の構成について詳しく説明することとする。
図4〜図5に示すように、シートリクライニング装置4は、互いに軸方向に組み付けられる略円板形状のラチェット10及びガイド20と、これらの間に組み付けられる3つのポール30及びこれらを半径方向の内外に移動操作する回転カム40と、を有する。更に、シートリクライニング装置4は、回転カム40をガイド20に対してロックの回転方向に付勢するロックスプリング50(スパイラルスプリング)と、ラチェット10とガイド20との外周部間に跨って装着される略円筒形状の外周リング60と、を有する。
外周リング60は、ラチェット10とガイド20とを互いに軸方向に組み付けた状態に保持する保持部材として機能するものである。ここで、回転カム40が、本発明の「カム」に相当する。上記ラチェット10、ガイド20、3つのポール30、及び回転カム40は、それぞれ、プレス成形後に焼き入れ処理されることで硬化されて構造強度が高められた構成とされる。
《ラチェット10について》
図4に示すように、ラチェット10は、1枚の金属製の板状部材が略円板状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。具体的には、ラチェット10は、その円板本体11の外周縁部に、ガイド20への組み付け方向となる軸方向に段付き円筒状に2段階に突出する段付き円筒部が半抜き状に押し出されて形成された構成とされる。
上記段付き円筒部の外周側の円筒部分は、その内周面全域に内歯12Aが形成された円筒部12として形成されている。また、内周側の円筒部分は、上記円筒部12よりも軸方向の突出長さが短い中間円筒部13として形成されている。上記円筒部12の内歯12Aは、後述する各ポール30の外周面部に形成された各外歯31をそれぞれ半径方向の内側から噛合させることのできる歯面形状とされる。詳しくは、上記内歯12Aは、各歯面が回転方向に2度ピッチで等間隔に並ぶ形状とされる。
また、中間円筒部13の内周面部には、ラチェット10の回転中心Cからの内径寸法や回転方向の長さが個々に設定された3つの領域(第1領域13A、第2領域13B及び第3領域13C)と、各領域間の境界部から半径方向の内側に突出する第1凸部13D及び第2凸部13Eと、が形成されている。
上記第1領域13A、第2領域13B及び第3領域13Cは、それぞれ、ラチェット10の回転中心Cまわりに描かれる円弧形状に湾曲した内周面形状に形成されている。詳しくは、図10に示すように、第1領域13Aと第3領域13Cは、それぞれ、第2領域13Bよりもひとまわり大きな内径寸法を有する同一径の内周面形状とされている。
上記第1領域13Aは、図10、図17(a)及び図18(a)に示すように、ラチェット10の回転角度が後述する3つのポール30のうちの1つであるメインポールP1と回転方向に重なる配置となる時に、同メインポールP1の内歯12Aへの噛合を許容するロック領域A1を構成するものである。第2領域13Bと第3領域13Cは、それぞれ、上記の回転角度となる時に、残る2つのサブポールP2と回転方向に重なる配置とされて、これらサブポールP2の内歯12Aへの噛合を許容する逃がし領域A3とされる。
一方、第2領域13Bは、図12に示すように、ラチェット10の回転角度がメインポールP1と回転方向に重なる配置となる時に、図13、図17(b)及び図18(b)に示すように、メインポールP1の内歯12Aへの噛合を内周面上に乗り上がらせて食い止めるフリー領域A2を構成するものである。第3領域13Cと第1領域13Aは、それぞれ、上記の回転角度となる時に、残る2つのサブポールP2と回転方向に重なる配置とされて、これらサブポールP2の移動を逃がす逃がし領域A3とされる。
すなわち、上記ラチェット10の中間円筒部13は、図10に示すように、その第1領域13AにおいてメインポールP1のロック動作を許容し、図12〜図13に示すように、その第2領域13BにおいてメインポールP1のロック動作を食い止める構成とされる。各ポール30は、図10に示すように、メインポールP1のロック動作が許容される時には、残る2つのサブポールP2のロック動作も許容される。また、各ポール30は、図12〜図13に示すように、メインポールP1のロック動作が食い止められることで、残る2つのサブポールP2のロック動作も食い止められる。
このように、ラチェット10の中間円筒部13は、上記第1領域13Aと第2領域13Bとによって、メインポールP1のロック許容/阻止の制御を行う。そして、第1領域13Aがロック領域A1として機能する時(図10参照)には、その他の2つ領域(第2領域13Bと第3領域13C)は、それぞれ、残る2つのサブポールP2のロック動作を許容する逃がし領域A3として機能する。また、第2領域13Bがフリー領域A2として機能する時(図13参照)には、その他の2つの領域(第1領域13Aと第3領域13C)は、それぞれ、残る2つのサブポールP2の移動を逃がす逃がし領域A3として機能する。
第1凸部13Dと第2凸部13Eは、図17(c)及び図18(c)に示すように、メインポールP1がラチェット10の回転によりロック領域A1(第1領域13A)からフリー領域A2(第2領域13B)へと移行する際に、半径方向の外側への押し出しが中途半端な状態で第1領域13Aと第2領域13Bとの間の段差に回転方向に突き当たることがあった場合に、他の2つのサブポールP2をそれぞれ回転方向に同時に突き当てさせるものとなっている。上記突き当てにより、メインポールP1が段差に突き当たって回転方向に受ける負荷を、他の2つのサブポールP2にも同時に分散させることができる。
具体的には、第1凸部13Dと第2凸部13Eは、ラチェット10の回転によりメインポールP1の乗り上がり突起34が第1領域13Aと第2領域13Bとの間の段差に回転方向に突き当てられる時に、残る2つのサブポールP2の乗り上がり突起34をそれぞれ同じ回転方向に同時に突き当てさせることができる位置に形成されている。各乗り上がり突起34の構成については、後に詳述する。
上記第2凸部13Eは、図14、図17(d)及び図18(d)に示すように、ロック領域A1(第1領域13A)上の回転方向の始端側、すなわちロック領域A1のフリー領域A2(第2領域13B)と隣る側とは反対側の端部に突出して形成されている。上記第2凸部13Eは、図20に示すように、シートバック2がロック領域A1の始端、すなわち後倒れ位置Pcへと倒された時に、図14、図17(d)及び図18(d)に示すように、メインポールP1の乗り上がり突起34と回転方向の配置が重なり得る位置に形成されている。
その理由は、次の通りである。すなわち、シートバック2は、図20に示すように、後倒れ位置Pcへと倒された時には、前述した係止板2Fcがリクライニングプレート3Fの後側ストッパ3Fdと当たって係止される。その際、シートリクライニング装置4及びその周辺部品の建て付けにより、上記係止板2Fcがリクライニングプレート3Fの後側ストッパ3Fdと当たるよりも先に、図14で示したメインポールP1の乗り上がり突起34が第2凸部13Eと回転方向に突き当たることがあると、シートリクライニング装置4に大きな負荷が掛かる。そこで、このようなことが起こらないよう、第2凸部13Eには、メインポールP1の乗り上がり突起34との回転方向の突き当たりを逃がす逃がし凹部13E1が形成されている。
上記逃がし凹部13E1は、図19に示すように、第2凸部13Eの図示時計回り方向側の角部が略矩形状に肉抜きされた形に形成されている。上記逃がし凹部13E1は、上記建て付けによる寸法ばらつきにより、図20に示すようにシートバック2が後倒れ位置Pcへと倒されて係止板2Fcがリクライニングプレート3Fの後側ストッパ3Fdに当たって係止される時に、図19に示すようにメインポールP1の乗り上がり突起34が第2凸部13Eと回転方向に重なる配置となったとしても、同乗り上がり突起34を第2凸部13Eと回転方向に突き当てさせないように受け入れる。詳しくは、上記逃がし凹部13E1は、上記乗り上がり突起34を、その図示反時計回り方向側の側面との間に回転方向の隙間Yを持たせた状態として受け入れるようになっている。
上記逃がし凹部13E1は、その内部に入り込んだメインポールP1の乗り上がり突起34が半径方向の外側に押し出された際には、乗り上がり突起34をその内周面上に乗り上がらせて、メインポールP1のラチェット10の内歯12Aへの噛合を阻止する。それにより、メインポールP1の乗り上がり突起34が逃がし凹部13E1内に入り込んだ位置(ロック領域A1を越えた回転位置)では、メインポールP1がラチェット10の内歯12Aにロックされないようになっている。
図4〜図5に示すように、ラチェット10の円板本体11の中心部(回転中心C上の位置)には、軸方向に丸孔形状に貫通する貫通孔11Aが形成されている。この貫通孔11Aには、後述する回転カム40の中心部(回転中心C上の位置)に差し込まれて装着される操作ピン5Aが、軸方向の外側から回転フリーな状態に挿通されるようになっている。
上記ラチェット10は、図3に示すように、その円板本体11の外側面がシートバック2のサイドフレーム2Fの外側面に面当接される形にセットされて、互いの当接箇所が溶接されることによりシートバック2のサイドフレーム2Fに一体的に結合されている。具体的には、上記ラチェット10は、その円板本体11の外側面上に突出して形成された3つのダボ14が、シートバック2のサイドフレーム2Fに形成された対応する3つの嵌合孔2Fa内にそれぞれ嵌合されて、円板本体11の外側面がサイドフレーム2Fの外側面上に面当接した状態にセットされている。
そして、上記ラチェット10は、上記各嵌合箇所の周囲領域が、それぞれ、サイドフレーム2Fにレーザ溶接されて結合されている。各ダボ14は、図5に示すように、中間円筒部13の第1領域13Aと第2領域13Bと第3領域13Cとが位置する回転方向の各領域上にそれぞれ1つずつ形成されている。各ダボ14は、それぞれ、ラチェット10の回転中心Cまわりに湾曲する円弧形状に湾曲した形に形成されている。
上記ラチェット10のサイドフレーム2Fに対する溶接は、各ダボ14を半径方向の外側から回転方向の両サイド領域に跨ってC字状に囲い込むように溶接ビードが入れられる形で行われる。図3に示すように、上記サイドフレーム2Fには、ラチェット10の中心部(回転中心C上の位置)に形成された貫通孔11Aと軸方向に対向する位置に、軸方向に丸孔形状に貫通する通し孔2Fbが形成されている。上記通し孔2Fbには、ラチェット10の貫通孔11Aに通される操作ピン5Aが軸方向に貫通して通されるようになっている。
《ガイド20について》
図5に示すように、ガイド20は、1枚の金属製の板状部材が上記ラチェット10よりもひとまわり大きな外径をもつ略円板状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。具体的には、ガイド20は、その円板本体21の外周縁部に、ラチェット10への組み付け方向となる軸方向に円筒状に突出する円筒部22が半抜き状に押し出されて形成された構成とされる。
上記円筒部22は、その内径寸法がラチェット10の円筒部12の外径寸法よりも僅かに大きな形となるように形成されている。詳しくは、上記円筒部22は、その半径方向の肉厚が、後述する外周リング60の板厚よりも薄い形に形成された構成とされる(図15参照)。より詳しくは、上記円筒部22は、その外周面が後述する外周リング60の段差部63の外周面よりも半径方向の内側に位置する程度に半径方向の肉厚が薄くされた構成とされる。上記ガイド20は、図9に示すように、その円筒部22内にラチェット10の円筒部12が軸方向に緩やかに嵌合する形にセットされる。
それにより、ガイド20は、ラチェット10との間で互いの円筒部22,12同士が半径方向の内外に緩やかに嵌まり合った状態として、互いに相対回転可能なように内外に支え合った状態に組み付けられる。そして、ガイド20は、その円筒部22とラチェット10の円筒部12との間に後述する外周リング60が外周側から跨る形に装着されることで、外周リング60を介してラチェット10に対して軸方向に外れ止めされた状態に組み付けられる(図2〜図3及び図6〜図9参照)。
図5に示すように、ガイド20の円板本体21の内側面上には、その回転方向の3箇所の位置に、ラチェット10への組み付け方向となる軸方向に略扇形状に突出するガイド壁23が半抜き状に押し出されて形成されている。これらガイド壁23は、それらの半径方向の外側の外周面が、ガイド20の回転中心Cまわりに描かれる同一円周上の円弧を描く形に湾曲した形状とされる。各ガイド壁23は、上記ガイド20の円筒部22内に組み付けられるラチェット10の円筒部12内に緩やかに嵌まり込んだ状態にセットされる。
上記各ガイド壁23の形成により、ガイド20の円板本体21の内側面上には、その各ガイド壁23の回転方向の配置間領域に、後述する3つのポール30をそれぞれ1つずつ半径方向の内外方にのみ摺動させられる形にセットすることの可能な凹状のポール収容溝24Aが形成されている。また、各ガイド壁23によって囲まれた円板本体21の内側面上の中央領域には、後述する回転カム40を軸回転可能な形にセットすることの可能なカム収容溝24Bが形成されている。
各ガイド壁23は、図10〜図11に示すように、各ポール収容溝24A内にセットされた対応する各ポール30を、対応する各ポール収容溝24A内に臨む回転方向の両サイド面である各規制面23Aによって回転方向の両側から支持する。それにより、各ガイド壁23は、対応する各ポール30を半径方向の内外方にのみ摺動させられるよう回転方向の両側からガイドした状態となる。
また、各ガイド壁23は、上記カム収容溝24B内にセットされた回転カム40を、カム収容溝24B内に臨む半径方向の内周面である支持面23Bによって半径方向の外側から支持する。それにより、各ガイド壁23は、回転カム40をガイド20の円板本体21上の略中心(回転中心C)位置にて回転可能とするよう半径方向の外側からガイドした状態となる。
また、ガイド20の円板本体21の中心部(回転中心C上の位置)には、後述するロックスプリング50が内部にセットされる略丸孔形状の貫通孔21Aが軸方向に貫通して形成されている。上記貫通孔21Aには、その孔形状を半径方向の外側に向けて細長く延出させる掛入れ孔21Aaが形成されている。上記掛入れ孔21Aaには、上記貫通孔21A内にセットされるロックスプリング50の外側の端部52が軸方向に嵌め込まれて回転方向に一体的な状態にセットされる。
上記ガイド20は、図2に示すように、その円板本体21の外側面がリクライニングプレート3Fの内側面に面当接される形にセットされて、互いの当接箇所が溶接されることによりリクライニングプレート3Fに一体的に結合されている。具体的には、上記ガイド20は、その円板本体21の外側面上に突出して形成された3つのダボ21Bが、リクライニングプレート3Fに形成された対応する3つの嵌合孔3Fa内にそれぞれ嵌合されて、円板本体21の外側面がリクライニングプレート3Fの内側面上に面当接した状態にセットされている。
そして、上記ガイド20は、上記各嵌合箇所の周囲領域がそれぞれリクライニングプレート3Fにレーザ溶接されて結合されている。各ダボ21Bは、図4に示すように、円板本体21の外側面上における各ポール収容溝24A(図5参照)の裏側の領域上にそれぞれ1つずつ軸方向に浮島状に押し出された形となって形成されている。図2に示すように、上記リクライニングプレート3Fには、ガイド20の中心部(回転中心C上の位置)に形成された貫通孔21Aと軸方向に対向する位置に、軸方向に丸孔形状に貫通する通し孔3Fbが形成されている。上記通し孔3Fbには、ガイド20の貫通孔21Aに通される操作ピン5Aが軸方向に貫通して通されるようになっている。
《ポール30について》
図4〜図5に示すように、3つのポール30は、それぞれ、1枚の金属製の板状部材が略矩形状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。具体的には、各ポール30は、それらの半径方向の略内側半分の領域を成すオフセット面部30Bが、半径方向の略外側半分の領域を成す本体面部30Aに対して、ラチェット10への組み付け方向となる軸方向に略板厚相当分だけ半抜き状に押し出された形状とされる。
上記3つのポール30は、概ね同じような形状とされているが、そのうちの1つがメインポールP1として、他の2つのサブポールP2とは異なる機能を備えた構成とされる。その具体的な構成については、後に詳述することとする。以下、各ポール30に共通する各部の具体的な構成について先に説明する。
各ポール30は、それぞれ、図10〜図11に示すように、ガイド20の円板本体21の内側面上に形成された各ポール収容溝24A内にそれぞれ1つずつ収められた状態にセットされる。上記セットにより、各ポール30は、各ポール収容溝24A内に回転方向の両側から臨む各ガイド壁23の規制面23Aによって回転方向の両側から面状に支持された状態となる。それにより、各ポール30は、これらの規制面23Aに沿って半径方向の内外方にのみ移動可能となるように支持された状態とされる。
詳しくは、各ポール30は、図9に示すように、各ポール収容溝24A(図5参照)内にセットされた状態では、それらの本体面部30Aがガイド20の円板本体21の内側面上に軸方向に当接した状態にセットされる。それにより、各ポール30は、それらの本体面部30Aの半径方向の外側の位置に、ガイド20の円筒部22内にセットされたラチェット10の円筒部12の内歯12Aが半径方向に対面する状態にセットされる。また、各ポール30のオフセット面部30Bは、ガイド20の円板本体21の内側面上から軸方向に離間した状態にセットされて、ラチェット10の中間円筒部13と軸方向の配置が重なる状態にセットされる。
図4に示すように、各ポール30の本体面部30Aの半径方向の外側の外周面には、半径方向の外側に歯面を向ける外歯31が回転方向の全域に亘って連続的に並ぶ形に形成されている。これら外歯31が形成された各ポール30の外周面は、前述したラチェット10の内歯12Aが形成された円筒部12の内周面形状に沿って湾曲する凸湾曲面形状とされている。
各ポール30の外歯31は、これらの噛合するラチェット10の内歯12Aと同様に、各歯面が回転方向に2度ピッチで等間隔に並ぶ形状とされている。上記構成により、各ポール30の外歯31は、図10に示すように、ラチェット10の内歯12Aに半径方向の内側から押し込まれることで、略全体が内歯12Aに噛合されるようになっている。しかし、より厳密には、各ポール30の外歯31は、それらの回転方向の中央の歯面がラチェット10の内歯12Aに最も深く入り込む形に噛合し(噛合点K)、そこから回転方向の両端側に向かって、内歯12Aに対する入り込みが漸次浅くなっていくよう歯丈が小さくなっていく構成とされている。
それにより、各ポール30は、それらの外歯31をラチェット10の内歯12Aに噛合させる際、半径方向の外側に真っ直ぐ押し出されても、各外歯31の全ての歯面が内歯12Aの歯面につかえることなく、各外歯31を内歯12Aに適切に噛合させられるようになっている。すなわち、各ポール30の外歯31は、それらの中央の歯面は噛合移動の進行方向に向かって真っ直ぐ歯面を向けた構成とされる。
しかし、上記外歯31の中央の歯面から回転方向の両端側に向かって並ぶその他の歯面は、上記中央の歯面に対して回転方向に斜めに歯面を向ける構成とされる。そのため、各ポール30が半径方向の外側に押し出された際には、中央の歯面はラチェット10の内歯12Aの対応する歯面に向けて真っ直ぐ進むが、その他の歯は、内歯12Aの対応する歯面に向かって斜めの角度で入り込むこととなる。
しかしながら、上述したように、外歯31の歯面が、中央の歯面から回転方向の両端側の歯面に向かって歯丈が漸次小さくなっていく形状とされることで、中央の歯面以外の歯面が内歯12Aの歯面に対して斜めの角度で入り込んでも、内歯12Aの歯面に突き当てられることなく、内歯12Aの歯面に入り込んだ状態(噛合状態)をとることができる。なお、上記外歯31の歯面形状は、特開2015−29635号公報等の文献に開示されたものと同一のものとなっているため、詳細な説明を省略することとする。
図9に示すように、各ポール30の本体面部30Aの内周側の領域には、ガイド20の中心部にセットされた後述する回転カム40が半径方向に対向する形にセットされる。上記セットにより、各ポール30は、各々の本体面部30Aが回転カム40と半径方向に対向し、かつ、各々のオフセット面部30Bが回転カム40と軸方向に対向した状態として設けられる。
図4に示すように、各ポール30の本体面部30Aの内周面部には、上述した回転カム40と半径方向に対面して、回転カム40の回転に伴って半径方向の内側から外側へと押圧される被押圧面部32が形成されている。また、図5に示すように、各ポール30のオフセット面部30Bの中間部には、回転カム40の対応する3箇所の位置に形成された各引込みピン42が軸方向に差し込まれて、回転カム40の回転に伴って半径方向の内側へと引き込まれるように操作される引込み孔33が軸方向に貫通して形成されている。また、各ポール30の本体面部30Aの中間部には、オフセット面部30Bの押し出し方向と同一の軸方向に突出する乗り上がり突起34が形成されている。
上述した各ポール30の被押圧面部32は、図10に示すように、回転カム40がガイド20との間に掛着されたロックスプリング50のバネ附勢力によって図示反時計回り方向に回されることにより、回転カム40の外周面部に形成された対応する各押圧部44によって半径方向の内側から外側へと押圧される。それにより、各ポール30は、それらの外歯31がラチェット10の内歯12Aに押し付けられて噛合され、その状態(ロック状態)に保持される。
それにより、各ポール30がラチェット10に対して回転方向に一体的に結合された状態となり、各ポール30を介してラチェット10とガイド20との間の相対回転がロックされた状態となる。また、各ポール30が半径方向に押し付けられる噛合を介して、ラチェット10とガイド20とが互いに半径方向にもガタ詰めされた状態にロックされる。上記のガタ詰め構造については、後に詳しく説明する。
図11に示すように、各ポール30の引込み孔33は、回転カム40がリクライニングレバー5の操作によりロックスプリング50のバネ附勢力に抗した図示時計回り方向へと回されることにより、回転カム40の対応する各引込みピン42によって半径方向の内側へと引き込まれる。それにより、各ポール30は、それらの外歯31がラチェット10の内歯12Aとの噛合状態から外され、その状態(アンロック状態)に保持される。それにより、ラチェット10とガイド20との間の回転ロック状態が解除される。
図9に示すように、各ポール30の乗り上がり突起34は、各ポール30のオフセット面部30Bと略同一の位置まで軸方向(図示右方向)に半抜き状に押し出されている。各ポール30の乗り上がり突起34は、図15に示すように、それらの外周面部34Aがラチェット10の中間円筒部13の内周面と半径方向に対面した状態にセットされる。各ポール30の乗り上がり突起34は、図10、図17(a)及び図18(a)に示すように、ラチェット10のガイド20に対する回転位置が前述したロック領域A1を成す状態の時には、各ポール30が回転カム40によって半径方向の外側に押し出されても、ラチェット10の中間円筒部13の内周面上には押し当てられない。したがって、各ポール30のラチェット10の内歯12Aに噛合する動きが阻害されない。
しかし、各ポール30の乗り上がり突起34は、図13、図17(b)及び図18(b)に示すように、ラチェット10のガイド20に対する回転位置が前述したフリー領域A2を成す状態へと移行することにより、各ポール30が回転カム40によって半径方向の外側へと押し出されることで、ラチェット10の中間円筒部13の内周面上に押し当てられる。それにより、各ポール30のラチェット10の内歯12Aに噛合する動きが途中で食い止められる。以下、上記構成について詳しく説明する。
各ポール30の乗り上がり突起34は、メインポールP1と他の2つのサブポールP2とでは、ガイド20の中心部(回転中心C上の位置)からそれらの外周面部34Aまでの半径方向の寸法、すなわち半径方向の形成位置が互いに異なる構成とされる。具体的には、メインポールP1の乗り上がり突起34が、他の2つのサブポールP2の乗り上がり突起34よりも半径方向の外側に張り出した位置に形成されている。
上記メインポールP1の乗り上がり突起34は、図10、図17(a)及び図18(a)に示すように、前述したラチェット10の中間円筒部13の第1領域13A(ロック領域A1)と回転方向に重なる配置となる時には、メインポールP1が回転カム40によってラチェット10の内歯12Aと噛合する位置まで半径方向の外側に押し出されても、第1領域13A上に乗り上がる位置までは押し出されない。したがって、メインポールP1のラチェット10の内歯12Aと噛合する動きは阻害されない。
その際、他の2つのサブポールP2の乗り上がり突起34も、2つのサブポールP2が回転カム40によってラチェット10の内歯12Aと噛合する位置まで半径方向の外側に押し出されても、これらの位置する第2領域13B及び第3領域13C上に乗り上がる位置までは押し出されない。したがって、各サブポールP2のラチェット10の内歯12Aと噛合する動きも阻害されない。
すなわち、2つのサブポールP2は、メインポールP1の乗り上がり突起34よりも半径方向の内側の位置に形成されている。そのため、2つのサブポールP2は、これらが第1領域13Aよりも半径方向の内側に張り出す第2領域13B(逃がし領域A3)及び第3領域13C(逃がし領域A3)と回転方向に重なる配置となったとしても、回転カム40によって半径方向の外側に押し出された際に第2領域13B及び第3領域13C上にそれぞれ乗り上がる位置までは押し出されない。
一方、図13、図17(b)及び図18(b)に示すように、メインポールP1の乗り上がり突起34は、前述したラチェット10の中間円筒部13の第2領域13B(フリー領域A2)と回転方向に重なる配置となる時には、回転カム40によって半径方向の外側に押し出されることで、第2領域13B上に乗り上がる。それにより、メインポールP1のラチェット10の内歯12Aと噛合する動きが途中で食い止める。
その際、他の2つのサブポールP2の乗り上がり突起34は、対応する第3領域13C(逃がし領域A3)及び第1領域13A(逃がし領域A3)とそれぞれ回転方向に重なる配置となっても、回転カム40によって半径方向の外側に押し出された際にこれら第3領域13C(逃がし領域A3)及び第1領域13A(逃がし領域A3)上に乗り上がる位置までは押し出されない。したがって、各サブポールP2の半径方向の外側への移動は食い止めない。
しかし、そのような構成であっても、各サブポールP2は、メインポールP1の移動が途中で食い止められることでもって、回転カム40の回転が途中で食い止められるため、それ以上、半径方向の外側へ押し出されなくなる。したがって、各サブポールP2は、メインポールP1と共に、ラチェット10の内歯12Aへの噛合移動が途中で阻止されたアンロック状態として保持される。
《回転カム40について》
回転カム40は、図5に示すように、1枚の金属製の板状部材が略円板状の形にカットされると共に、所々が板厚方向(軸方向)に半抜き状に押し出される形に加工された構成とされる。上記回転カム40は、ガイド20の円板本体21の内側面上に形成されたカム収容溝24B内に収容された状態にセットされる。上記回転カム40は、図9に示すように、上述した各ポール30と略同一の板厚を有した形状とされる。
上記回転カム40は、ガイド20の円板本体21の内側面と各ポール30の軸方向に半抜き状に押し出されたオフセット面部30Bとの間に軸方向に挟まれる形にセットされる。それにより、回転カム40は、各ポール30の本体面部30Aの内周面部である被押圧面部32によって、半径方向の外側から覆われた状態にセットされる。
図5に示すように、回転カム40の中心部(回転中心C上の位置)には、前述した操作ピン5Aが軸方向の内側から差し込まれて回転方向に一体的に連結される貫通孔41が形成されている。上記操作ピン5Aは、回転カム40の貫通孔41内に軸方向の内側から外側へと貫通するように通されて、その通された先で、図1で前述したリクライニングレバー5と一体的に接続されている。上記組み付けにより、操作ピン5Aは、リクライニングレバー5の引き上げ操作に伴って回転カム40を一体的に回転させるようになっている。
上記操作ピン5Aは、図1で前述したもう一方側のシートリクライニング装置4に差し込まれる操作ピン5Aとコネクティングロッド5Bを介して互いに一体的に連結されている。それにより、リクライニングレバー5が引き上げられる操作によって、双方の操作ピン5Aが一斉に回転操作されて、双方のシートリクライニング装置4の回転カム40が一斉に回転操作されるようになっている。
図5に示すように、回転カム40は、ガイド20の中心部(回転中心C上の位置)に形成された貫通孔21Aよりもひとまわり大きな略円板形状に形成されている。上記回転カム40には、そのガイド20の貫通孔21A内に臨む外側面上に、貫通孔21A内に向かって軸方向に突出する2本の引掛ピン43が形成されている。これら引掛ピン43には、図2及び図6に示すように、ロックスプリング50の内側の端部51がこれらの間に引掛けられて固定される。また、図10に示すように、回転カム40の各ポール30のオフセット面部30Bに面する内側面上には、それぞれ、各ポール30の引込み孔33内に入り込む引込みピン42が軸方向に突出して形成されている。
上記回転カム40は、ガイド20に対して、ロックスプリング50を介して弾性支持された状態に組み付けられている。具体的には、次のような手順で組み付けられている。先ず、回転カム40を、ガイド20のカム収容溝24B内にセットする。次に、ロックスプリング50をガイド20の貫通孔21A内にセットし、その内側の端部51を回転カム40の各引掛ピン43の間に引掛けると共に、外側の端部52をガイド20の貫通孔21Aから延びる掛入れ孔21Aa内に引掛ける。以上により、回転カム40が、ガイド20に対して、ロックスプリング50を介して弾性支持された状態に組み付けられる。
上記回転カム40は、上記ロックスプリング50のバネ付勢力により、常時、ガイド20に対して、図10に示す反時計回り方向に回転付勢された状態とされる。上記付勢による回転により、回転カム40は、常時は、その外周面部上の複数箇所から膨出する各押圧部44によって、各ポール30の被押圧面部32(図9参照)を半径方向の内側から押圧して、各ポール30をラチェット10の内歯12Aに噛合させるようになっている。
上記回転カム40は、図1で前述したリクライニングレバー5が引き上げ操作されることにより、図11に示すように、操作ピン5Aを介して図示時計回り方向に回転操作される。それにより、回転カム40は、その各ポール30の引込み孔33内に差し込まれている各引込みピン42によって、各ポール30を半径方向の内側へと引き込んでラチェット10の内歯12Aとの噛合状態から外す。具体的には、回転カム40は、その図示時計回り方向の回転により、各引込みピン42が各引込み孔33の内周縁側の立ち上がり状の傾斜面に押し当てられて、各ポール30を半径方向の内側へ引き込むようになっている。
上記回転カム40は、図10に示すように、各ポール30を半径方向の内側から押し出してラチェット10の内歯12Aに噛合させた状態(ロック状態)では、各引掛ピン43に引掛けられたロックスプリング50の内側の端部51が、ガイド20に形成された3つのガイド壁23のうちの図示左上側と図示右上側の2つのガイド壁M1の間の回転方向の領域に位置するようになっている。
その状態では、回転カム40は、ロックスプリング50の内側の端部51から受けるバネ付勢力によって、ガイド20に対する図示反時計回り方向の回転付勢力の他、半径方向の外側へも押し出される偏心方向の付勢力も受ける状態とされる。それでも、回転カム40は、3つのポール30がラチェット10の内歯12Aと噛合していることにより、各ポール30からの支持を受けてガイド20の中心部(回転中心C上の位置)にセンタリングされた状態として保持されるようになっている。
上記回転カム40は、図11に示すように、図示時計回り方向に回転操作されて、各ポール30がラチェット10の内歯12Aとの噛合状態から外されることにより、上記ロックスプリング50の内側の端部51から受ける偏心方向の付勢力により、図16に示すように、上述した2つのガイド壁M1(図示左上側と図示右上側のガイド壁M1)の内周側の支持面23Bに押し当てられながら、これら2つのガイド壁M1の支持面23B上を摺動するように図示時計回り方向に回転操作される。その時、残るもう1つのガイド壁M2(図示下側のガイド壁M2)は、他の2つのガイド壁M1とは異なり、上記回転カム40の外周面とは接触せず、回転カム40の外周面との間に半径方向の僅かな隙間Tを形成するようになっている。
そのような構成となっていることにより、回転カム40がロックスプリング50のバネ付勢力により押し当てられる2つのガイド壁M1において、回転カム40を軸ズレ方向(偏心方向)に移動させないように適切に支持することができる。なおかつ、回転カム40が上記2つのガイド壁M1を支点に残るもう1つのガイド壁M2のある方向に軸ズレ(偏心)する移動を適切に逃がすことができる。したがって、回転カム40を偏心させることなく、スムーズに解除方向に摺動回転させることができる。
《外周リング60について》
図4〜図5に示すように、外周リング60は、1枚の金属製の薄板材がリング板状の形に打ち抜かれると共に、外周縁部が軸方向に円筒状に突出する形に絞り加工されることで、中空円板状の座(フランジ部62)を有する略円筒形状に形成されている。具体的には、外周リング60は、軸方向に真っ直ぐ面を向ける中空円板状のフランジ部62と、同フランジ部62の外周縁部から軸方向に略円筒状に突出する結合部61と、を有する構成とされる。
具体的には、上記外周リング60の外周縁部は、軸方向に段付き円筒状に2段階に突出する形に押し出された形状とされる。それにより、上記段付き円筒の外周側の円筒部分が、略円筒形状の結合部61として形成され、内周側の円筒部分が、上記結合部61よりも軸方向の突出長さの短い段差部63として形成されている。
上記外周リング60は、次のようにラチェット10とガイド20との外周部間に跨る形に装着されて、これらを軸方向に外れ止めした状態に組み付けられる。先ず、ガイド20に3つのポール30と回転カム40とロックスプリング50とをそれぞれセットする。次に、ガイド20にラチェット10を組み付け、これらを外周リング60の円筒内(結合部61内)にセットする。
そして、図15に示すように、結合部61の突出した先の部分をガイド20の円筒部22の外側面上にかしめる(かしめ部位61A)。以上により、外周リング60の結合部61が、ガイド20の円筒部22に一体的に結合され、フランジ部62が、ラチェット10を軸方向の外側からあてがえた状態にセットされる。それにより、外周リング60が、ラチェット10とガイド20との外周部間に跨る形に装着されて、これらを軸方向に外れ止めした状態に組み付けた状態となる。
より詳しく説明すると、外周リング60は、その円筒内(結合部61内)にラチェット10からガイド20が順に組み付けられることにより、その段差部63にガイド20の円筒部22が軸方向に突き当てられた状態にセットされる。そして、フランジ部62にラチェット10の円筒部12が軸方向の内側から当てられた状態にセットされる。そして、上記セットにより、外周リング60の円筒状の結合部61内に、ガイド20の円筒部22が軸方向にすっぽりと嵌まり込んだ状態にセットされる。
そして、上記セットの後、外周リング60の結合部61、詳しくはガイド20の円筒部22から軸方向の外側に延出する先端部分(かしめ部位61A)を、半径方向の内側に折り曲げて、上記段差部63との間にガイド20の円筒部22を軸方向に挟み込むように円筒部22の外側面上にかしめる。それにより、外周リング60が、ガイド20と一体的に結合された状態となり、フランジ部62によってラチェット10を軸方向の外側からあてがえて軸方向に外れないように保持した状態となる。
上記外周リング60のフランジ部62は、その半径方向の内側に張り出した先端部分が、ラチェット10の中間円筒部13と円筒部12とを繋ぐ部分の軸方向の外側面部に形成された傾斜面13G上に添えられる形にセットされる。上記傾斜面13Gは、半径方向の外側に斜めに面を向ける形状とされている。したがって、上記傾斜面13G上に外周リング60のフランジ部62の先端部分が添えられることで、ラチェット10の軸方向の外側かつ半径方向の外側へのガタが抑えられた状態となる。
《ポール30のガタ詰め構造について》
ところで、図21に示すように、上述した2つのサブポールP2は、回転カム40により押圧されてラチェット10の内歯12Aと噛合する際、回転方向の一方或いは他方に自転して、対応する各ガイド壁23の双方に当てられて回転方向のガタが詰められた状態とされるようになっている。ここで、2つのサブポールP2が、本発明の「2つのポール」に相当する。また、メインポールP1が、本発明の「他の1つのポール」に相当する。以下、上記各サブポールP2のガタ詰め構造について詳しく説明する。
すなわち、各サブポールP2は、回転カム40により半径方向の内側から押圧される際、それらの被押圧面部32が回転カム40の各押圧部44により回転方向の一方或いは他方に偏った位置で押圧される。具体的には、図示上側のサブポールP2は、その被押圧面部32が、回転カム40の対応する押圧部44により、回転方向の中心位置よりも図示時計回り方向側に偏った部位(押圧点R2)が半径方向の内側から押圧される。
それにより、図示上側のサブポールP2は、上記押圧点R2を支点に図示反時計回り方向に自転するように傾けられて、対応する各ガイド壁23の双方に当てられる。詳しくは、図示上側のサブポールP2は、その図示反時計回り方向側の側部に形成された第1突起P2aと、図示時計回り方向側の側部に形成された第2突起P2bとが、それぞれ、対応する各ガイド壁23に当てられる。第1突起P2aは、図示上側のサブポールP2の外周縁に近い側部箇所に形成されている。第2突起P2bは、図示上側のサブポールP2の内周縁に近い側部箇所に形成されている。
一方、図示右下側のサブポールP2は、その被押圧面部32が、回転カム40の対応する押圧部44により、回転方向の中心位置よりも図示反時計回り方向側に偏った部位(押圧点R3)が半径方向の内側から押圧される。それにより、図示右下側のサブポールP2は、上記押圧点R3を支点に図示時計回り方向に自転するように傾けられて、対応する各ガイド壁23の双方に当てられる。
詳しくは、図示右下側のサブポールP2は、その図示時計回り方向側の側部に形成された第1突起P2aと、図示反時計回り方向側の側部に形成された第2突起P2bとが、それぞれ、対応する各ガイド壁23に当てられる。第1突起P2aは、図示右下側のサブポールP2の外周縁に近い側部箇所に形成されている。第2突起P2bは、図示右下側のサブポールP2の内周縁に近い側部箇所に形成されている。
上記のように、2つのサブポールP2は、互いに相反する回転方向に自転して、対応する各ガイド壁23の双方に当てられる構成とされる。詳しくは、2つのサブポールP2は、互いに対称な角度に自転して、対応する各ガイド壁23の双方に当てられる構成とされる。
メインポールP1は、その被押圧面部32が、回転カム40の対応する押圧部44により、回転方向の中心位置よりも図示反時計回り方向側に偏った部位(押圧点R1)が半径方向の内側から押圧される。上記3つのポール30(メインポールP1及び2つのサブポールP2)の押圧点R1〜R3は、これらを頂点とする三角形Lの内側に回転中心Cが位置する配置とされる。
詳しくは、2つのサブポールP2の対応する各押圧点R2,R3は、回転中心Cを通るメインポールP1の回転方向の中心と回転中心Cとを結ぶ線分の垂直線Vを境界線とする、メインポールP1の配置された領域とは反対側の領域に位置する配置とされる。上記構成により、回転カム40による3つのポール30(メインポールP1及び2つのサブポールP2)の押圧力の均衡がとられやすくなり、ロック時におけるラチェット10とガイド20との間の回転方向の双方のガタをより適切に抑制することができる。
上記のように2つのサブポールP2を対応する各ガイド壁23の間で回転方向にガタ詰めした状態としてラチェット10に噛合させることにより、ラチェット10のガイド20に対する回転方向のガタの他、半径方向のガタも詰めた状態とすることができる。詳しくは、2つのサブポールP2を互いに相反する回転方向に対称な角度に自転させて対応する各ガイド壁23の双方に当てることにより、2つのサブポールP2が、互いの自転が戻される方向の移動を規制し合うように、対応する各ガイド壁23の双方に当てられる構成となる。したがって、ロック時におけるラチェット10とガイド20との間の回転方向の双方のガタをより適切に抑制することができる。
《まとめ》
以上をまとめると、本実施形態に係るシートリクライニング装置4は次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
すなわち、乗物用シートリクライニング装置(4)は、互いに相対回転可能なように軸方向に組み付けられるラチェット(10)及びガイド(20)と、ガイド(20)に設けられた対応する一対のガイド壁(23)により回転方向の両側から支持され、半径方向の外側へ押される移動によりラチェット(10)と噛合しラチェット(10)とガイド(20)との相対回転をロックする複数のポール(30)と、複数のポール(30)を半径方向の内側から外側へと押し動かすカム(40)と、を有する。
複数のポール(30)のうちの2つのポール(P2)が、カム(40)から受ける押圧力により回転方向の一方或いは他方に自転して、対応する一対のガイド壁(23)の双方に当てられて回転方向のガタが詰められた姿勢でラチェット(10)と噛合する。
上記構成によれば、2つのポール(P2)を対応する一対のガイド壁(23)の間で回転方向にガタ詰めした状態としてラチェット(10)に噛合させることができる。それにより、上記回転方向にガタ詰めされた2つのポール(P2)を介して、ラチェット(10)のガイド(20)に対する半径方向のガタも詰められた状態となる。したがって、各ポール(30)と対応する一対のガイド壁(23)との間に回転方向の隙間を設定して各ポール(30)の摺動性を確保しつつも、各ポール(30)を対応する一対のガイド壁(23)の間でガタ詰めしてラチェット(10)と噛合させることができる。
また、2つのポール(P2)が、互いに相反する回転方向に自転する構成とされる。上記構成によれば、2つのポール(P2)が、互いの自転が戻される方向の移動を規制し合うように、対応する一対のガイド壁(23)の双方に当てられる構成となる。したがって、ロック時におけるラチェット(10)とガイド(20)との間の回転方向の双方のガタをより適切に抑制することができる。
また、2つのポール(P2)が、互いに対称な角度に自転して、対応する一対のガイド壁(23)の双方に当てられる構成とされる。上記構成によれば、2つのポール(P2)を、対応する一対のガイド壁(23)の間で、回転方向の力が対称状に作用するように当てることができる。したがって、ロック時におけるラチェット(10)とガイド(20)との間の回転方向の双方のガタをより適切に抑制することができる。
また、複数のポール(30)が3つのポール(30)から成る。3つのポール(30)のカム(40)により半径方向の内側から押圧される各押圧点(R1〜R3)を頂点とする三角形(L)の内側に乗物用シートリクライニング装置(4)の回転中心(C)が位置する。上記構成によれば、カム(40)による3つのポール(30)の押圧力の均衡がとられやすくなり、ロック時におけるラチェット(10)とガイド(20)との間の回転方向の双方のガタをより適切に抑制することができる。
また、2つのポール(P2)の対応する各押圧点(R1〜R3)が、回転中心(C)を通る他の1つのポール(P1)の回転方向の中心と回転中心(C)とを結ぶ線分の垂直線(V)を境界線とする、他の1つのポール(P1)の配置された領域とは反対側の領域に位置する。上記構成によれば、カム(40)による3つのポール(30)の押圧力の均衡がより適切にとられやすくなり、ロック時におけるラチェット(10)とガイド(20)との間の回転方向の双方のガタをより適切に抑制することができる。
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
1.本発明の乗物用シートリクライニング装置は、自動車の右側座席以外のシートにも適用することができる他、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の他の乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、乗物用シートリクライニング装置は、シートバックをシートクッションに対して背凭れ角度の調節を行える状態に連結するものの他、シートバックを乗物本体に固定されたブラケット等のベースに対して背凭れ角度の調節を行える状態に連結するものであってもよい。
2.乗物用シートリクライニング装置は、ラチェットがシートクッション等の乗物本体側に固定されるベースに結合され、ガイドがシートバックに結合される構成であってもよい。
3.ラチェットとガイドとの相対回転をロックするポールは、回転方向に2つ又は4つ以上並んで設けられるものであってもよい。各ポールの回転方向の配置は、均等配置されるものに限らず、片寄って配置されるものであってもよい。
4.各ポールを半径方向の内側から外側へと押し動かすカムは、回転タイプの他、特開2014−217662号公報等の文献に示されるようなスライドタイプ(半径方向のスライドにより各ポールを半径方向の内側から外側へと押し動かすタイプ)であっても良い。また、各ポールを半径方向の内側へと引き戻す操作は、特開2015−227071号公報等の文献に示されるようなレリーズプレート等のカムとは別体の部材を用いて行われるものであっても良い。
5.2つのポールは、カムから受ける押圧力により互いに同一の回転方向に自転する構成であっても良い。また、2つのポールは、互いに非対称な角度に自転して、対応する一対のガイド壁の双方に当てられる構成であっても良い。上記自転する2つのポールは、どちらもサブポール(乗り上がり突起が、フリー領域を形成するラチェットの第1領域には乗り上がらないポール)から成るものであっても良いが、サブポールとメインポール(フリー領域を形成するラチェットの第1領域に乗り上がる乗り上がり突起を備えるポール)の組み合わせから成るものであっても良い。
6.複数のポールが3つのポールから構成される場合、3つのポールの押圧点は、これらを頂点とする三角形の外側に乗物用シートリクライニング装置の回転中心が位置する配置とされていても良い。また、上記3つのポールうち、自転する2つのポールの各押圧点は、それらのうちの少なくとも1つが、回転中心を通る他の1つのポールの回転方向の中心と回転中心とを結ぶ線分の垂直線を境界線とする、他の1つのポールの配置された領域と同じ側の領域に位置する配置とされていても良い。
7.上記自転する2つのポールは、カムにより回転方向の中心から偏心した箇所が押圧されることで自転するものの他、カムにより回転方向に斜めに押圧されることで自転するものであっても良い。
8.上記実施形態では、自転する2つのポールの両側部に、自転した時に対応する各ガイド壁と当たる突起(第1突起と第2突起)を設けた構成を示したが、突起は対応する各ガイド壁から突出するように形成されていても良い。また、自転する2つのポールと対応する各ガイド壁との双方に突起がない構成であっても構わない。