JP2021161446A - 水素発生用陰極 - Google Patents

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【課題】本発明は、通電が停止された場合に、導電性基材から触媒層が剥がれ、過電圧が上昇することが抑制された水素発生用陰極を提供することを目的とする。【解決手段】導電性基材と該導電性基材の表面上に触媒層とを有し、触媒層は、少なくとも白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物とを含有し、導電性基材は、ニッケルを含む金属を含有し、ニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク強度をINi、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク強度をIZrO2としたときに、[IZrO2/INi]×100の値が0.1〜40であることを特徴とする、水素発生用陰極。【選択図】図1

Description

本発明は、水素発生用陰極体に関する。
近年、二酸化炭素等の温室効果ガスによる地球温暖化、化石燃料の埋蔵量の減少等の問題を解決するため、再生可能エネルギーを利用した風力発電や太陽光発電等の技術が注目されている。
再生可能エネルギーは、出力が気候条件に依存するため、その変動が非常に大きいという性質がある。そのため、再生可能エネルギーによる発電で得られた電力を一般電力系統に輸送することが常に可能とはならず、電力需給のアンバランスや電力系統の不安定化等の社会的な影響が懸念されている。
そこで、再生可能エネルギーから発電された電力を、貯蔵及び輸送が可能な形に代えて、これを利用しようとする研究が行われている。具体的には、再生可能エネルギーから発電された電力を利用した水の電気分解(電解)により、貯蔵及び輸送が可能な水素を発生させ、水素をエネルギー源や原料として利用することが検討されている。
水素は、石油精製、化学合成、金属精製等の場面において、工業的に広く利用されており、近年では、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションやスマートコミュニティ、水素発電所等における利用の可能性も広がっている。このため、再生可能エネルギーから特に水素を得る技術の開発に対する期待は高い。
水の電気分解の方法としては、固体高分子型水電解法、高温水蒸気電解法、アルカリ水電解法等があるが、数十年以上前から工業化されていること、大規模に実施することができること、他の水電解装置に比べると安価であること等から、アルカリ水電解は特に有力なものの一つとされている。
しかしながら、今後アルカリ水電解をエネルギーの貯蔵及び輸送のための手段として適応させるためには、前述のとおり出力の変動が大きい電力を効率的且つ安定的に利用して水電解を行うことを可能にする必要があり、アルカリ水電解用の電解セルや装置の諸課題を解決することが求められている。
アルカリ水電解において電解電圧を低く抑えて、水素製造の電力原単位を改善するという課題を解決するためには、電解セルの構造として、特に、隔膜と電極との隙間を実質的に無くした構造である、ゼロギャップ構造と呼ばれる構造を採用することが有効なことはよく知られている(特許文献1、2参照)。ゼロギャップ構造では、発生するガスを電極の細孔を通して電極の隔膜側とは反対側に素早く逃がすことによって、電極間の距離を低減しつつ、電極近傍におけるガス溜まりの発生を極力抑えて、電解電圧を低く抑制している。ゼロギャップ構造は、電解電圧の抑制にきわめて有効であり、種々の電解装置に採用されている。
また、通電・通電停止の繰り返しに対する電極の耐久性向上に関する技術が多数公開されている(特許文献3、4参照)。
特許文献3には、ニッケル(Ni)を含む導電性基材の表面上に少なくとも白金(Pt)を含有する触媒層を有する陰極が開示されており、逆電耐性の高いとされる実施例の陰極では、20g/m2以上の大量の白金を含む貴金属が使用されている。白金を含む貴金属の大量使用は高価であること、及び資源保護の観点から、白金の含有率は低い方が好ましい。
特許文献4には、ニッケルを含む導電性金属基体上に白金と酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む触媒層を形成する低水素過電圧陰極の製法において、導電性金属基体上に、白金の亜硝酸塩又は硝酸塩及びジルコニウムのオキシ硝酸塩を溶解した硝酸酸性水溶液(水溶液中の白金とジルコニウムの合計モル数100%に対して、白金モル%が30%以上)を、触媒層中の白金触媒量が2〜10g/m2となるように塗布し、乾燥後、300〜550℃の温度で熱分解することが開示されている。
特許第5553605号公報 国際公開第2015/098058号公報 特開第2019−73806号公報 特許第5317012号公報
しかしながら、特許文献3、4に記載の従来のアルカリ水電解用陰極では、意図する電解反応を進行させる正通電と、正通電を停止した後に発生する逆電流(逆電)の通電とを繰り返すことで、基材表面からニッケル成分が溶出してしまい、基材表面にある触媒層が脱落して、過電圧が上昇してしまうという課題があった。そのため、再生可能エネルギーのような変動電源では、長期にわたって高いエネルギー変換効率を維持することが困難であった。
そこで、本発明は、通電が停止された場合に、導電性基材から触媒層が剥がれ、過電圧が上昇することが抑制された水素発生用陰極を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
導電性基材と該導電性基材の表面上に触媒層とを有し、
前記触媒層は、少なくとも白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物とを含有し、
前記導電性基材は、ニッケルを含む金属を含有し、
前記ニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク強度をINi、前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク強度をIZrO2としたときに、[IZrO2/INi]×100の値が0.1〜40%である
ことを特徴とする、水素発生用陰極。
[2]
前記触媒層が、前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層と、該ジルコニウム層の表面上に前記白金を含む白金層とを含む、[1]に記載の水素発生用陰極。
[3]
前記ジルコニウム層の平均厚みが0.007μm以上である、[2]に記載の水素発生用陰極。
[4]
前記触媒層が、前記白金と、前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を含む、[1]に記載の水素発生用陰極。
[5]
前記混合層の平均厚みが0.05μm以上である、[4]に記載の水素発生用陰極。
[6]
前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物は、ZrとX元素(Xは、Ce、Y、Ca、及びMgからなる群から選択される少なくとも1種)との複合酸化物とを含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の水素発生用陰極。
[7]
前記白金の目付量が2〜10g/m2である、[1]〜[6]のいずれかに記載の水素発生用陰極。
[8]
二重層容量が0.001〜0.2F/cm2である、[1]〜[7]のいずれかに記載の水素発生用陰極。
[9]
導電性基材の表面に、少なくともジルコニウムを含む塗布液を塗布し、酸素含有雰囲気において100〜700℃で熱分解することにより、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層を形成し、
前記ジルコニウム層の表面に、少なくとも白金化合物を含む塗布液を塗布し、酸素含有雰囲気において100〜700℃で熱分解することにより、前記ジルコニウム層の表面上に白金を含む白金層を形成することを特徴とする、水素発生用陰極の製造方法。
[10]
導電性基材の表面に、少なくとも白金化合物とジルコニウムとを含む塗布液を塗布し、酸素含有雰囲気において100〜800℃で熱分解することにより、白金と結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を形成することを特徴とする、水素発生用陰極の製造方法。
本発明によれば、通電停止時の逆電流による導電性基材表面の溶解が抑制され、導電性基材と触媒層との界面の剥離が抑制されることで、逆電耐久性が向上した水素発生用陰極を提供することができる。
実施例、比較例で用いた電解装置の概要を示す図である。 電解試験で用いた複極式電解槽の概要を示す図である。 実施例4のニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク(Niピーク)及び結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク(ZrO2ピーク)を示す図である。 比較例5のニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク(Niピーク)を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(水素発生用陰極)
複極式電解槽のアルカリ水電解による水素製造において、エネルギー消費量の削減、具体的には電解電圧の低減は、大きな課題である。この電解電圧は陰極に大きく依存するため、陰極の性能は重要である。
アルカリ水電解の電解電圧は、理論的に求められる水の電気分解に必要な電圧の他に、陽極反応(酸素発生)の過電圧、陰極反応(水素発生)の過電圧、陽極と陰極との電極間距離による電圧とに分けられる。ここで、過電圧とは、ある電流を流す際に、理論分解電位を越えて過剰に印加する必要のある電圧のことを言い、その値は電流値に依存する。すなわち、同じ電流を流すとき、過電圧が低い電極を使用することで、同じ水素発生量を得るための消費電力をより少なくすることができる。
低い過電圧を実現するために、陰極に求められる要件としては、導電性が高いこと、水素発生能が高いこと、電極表面で電解液の濡れ性が高いこと等が挙げられる。陰極が白金を含有することで、変動電源下で電解槽を運転する場合でも、こうした要件を長期にわたって満たすことが可能となる。
しかしながら、上述のとおり、従来のアルカリ水電解用陰極では、意図する電解反応を進行させる正通電と、正通電を停止した後に発生する逆電流(逆電)の通電とを繰り返すことで、基材表面からニッケル成分が溶出してしまい、基材表面にある白金を含む触媒層が脱落し、過電圧が上昇してしまう。
本実施形態の水素発生用陰極は、導電性基材と該導電性基材の表面上に触媒層とを有し、前記触媒層は、少なくとも白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物とを含有し、前記導電性基材は、ニッケルを含む金属を含有し、前記ニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク強度をINi、前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク強度をIZrO2としたときに、[IZrO2/INi]×100の値が0.1〜40%であることを特徴とする。
本実施形態の水素発生用陰極は、上記特徴を有することにより、導電性基材からのニッケルの溶出を防止するとともに、意図する電解反応を進行させる正通電と、正通電を停止した後に発生する逆電流(逆電)の通電とを繰り返すことで、触媒層が脱落し、過電圧が上昇してしまうことを防止することが可能であり、触媒層に結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むことで、少ない貴金属量でも耐久性の高い電極を提供することができる。
本実施形態の水素発生用陰極において、ジルコニウムを含む絶縁体酸化物の結晶化度を表す上記[IZrO2/INi]×100の値は、導電性基材中のNiの溶解を抑制する観点から、0.1〜40%であり、1〜30%が好ましく、2〜20%がより好ましい。
結晶化度[IZrO2/INi]×100の値が40%超であると陰極の抵抗が高くなり、所望の過電圧を得ることが困難となる。
また、結晶化度[IZrO2/INi]×100の値が0.1%未満では、ジルコニウムが結晶化されていないため、電解中、もしくは電解液に浸漬した段階でジルコニウムを含む絶縁体酸化物が経時的に徐々に溶解していく。その結果、意図する電解反応を進行させる正通電と、正通電を停止した後に発生する逆電流(逆電)の通電とを繰り返すことで基材表面からニッケルが溶出してしまい、基材表面にある触媒層が脱落し、過電圧が上昇してしまう傾向にある。
本実施形態の水素発生用陰極では、結晶化度[IZrO2/INi]×100の値が0.1〜40%であるため、ジルコニウムを含む絶縁体酸化物は、結晶性である。ジルコニウムを含む絶縁体酸化物は、ジルコニウムを含んでいればよく、酸化ジルコニウムであってもよく、ZrとX元素(Xは、Ce、Y、Ca、及びMgからなる群から選択される少なくとも1種)との複合酸化物であってもよい。
酸化ジルコニウムの結晶としては、正方晶、単斜晶、及び立方晶が存在するが、上記結晶化度を満たしていれば、どの結晶でもかまわない。
なお、ニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク強度(INi)、及び結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク強度(IZrO2)は、X線回折装置を用いて測定される値であり、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の水素発生用陰極の表面で電解に使用される面積は、陰極と電解液との界面で形成される電気二重層の静電容量(以下、「二重層容量」ともいう)を測定することで、疑似的に求めることができる。
なお、二重層容量は、例えば、電気化学インピーダンス法により測定することができる。交流インピーダンス測定により得られた実部と虚部をプロットしたCole−Coleプロットに対して、等価回路フィッティングにより解析することで、二重層容量を算出する。
二重層容量が小さいと、反応活性点が少なくなるため、十分に低い過電圧が得られない場合がある。一方、二重層容量を増加させるために、触媒の付着量を増加し過ぎると触媒層の機械的強度が低下し、耐久性が低下する場合がある。そのため、本実施形態の水素発生用陰極の二重層容量は、0.001〜0.2F/cm2であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.15F/cm2、さらに好ましくは0.03〜0.08F/cm2である。
[触媒層]
本実施形態の水素発生用陰極を構成する触媒層は、導電性基材の表面上に形成されており、少なくとも白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物とを含有する。
触媒層の目付量は、2〜40g/m2であることが好ましく、4〜20g/m2であることがより好ましく、6〜10g/m2であることがさらに好ましい。触媒層の目付量が上記範囲であると、導電性基材表面のニッケル成分の溶出を抑制することができる。
触媒層の平均厚みは、0.05〜3.0μmであることが好ましく、0.1〜2.0μmであることがより好ましく、0.2〜1.0μmであることがさらに好ましい。触媒層の平均厚みが上記範囲であると、基材からの触媒層の脱落を抑制することができる。
上記触媒層の目付量及び平均厚みの範囲は、本発明の効果を好適に得るうえで、それぞれ個別に選択されてもよい。
触媒層に含まれる白金の目付量は、適切な機械的強度及び資源保護の観点から、2.0〜10.0g/m2であることが好ましく、3.0〜9.0g/m2であることがより好ましく、4.0〜8.0g/m2であることがさらに好ましい。
触媒層に含まれる結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の目付量は、0.1〜20.0g/m2であることが好ましく、0.3〜10.0g/m2であることがより好ましく、0.5〜3.0g/m2であることがさらに好ましい。結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の目付量が上記範囲であると、触媒層が逆電により導電性基材からのニッケルの溶出を抑制且つ、低過電圧を維持[することができる/傾向にある]。
触媒層は、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層と、ジルコニウム層の表面上に白金を含む白金層とを含む態様であってもよい。
また、触媒層は、白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を含む態様であってもよい。
[[ジルコニウム層及び白金層を含む場合]]
一態様として、触媒層が、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層と、ジルコニウム層の表面上に白金を含む白金層とを含む場合、触媒層は、ジルコニウム層及び白金層以外の層を含んでいてもよいが、ジルコニウム層と白金層とからなることが好ましい。
このようにジルコニウム層と白金層とを含む陰極にすることによって優れた逆電耐久性が得られる理由は定かではないが、ジルコニウム層が導電性基材のニッケル表面をコーティングしていることで、耐久性が大幅に向上し、基材表面のニッケルの溶出が抑制され、意図する電解反応を進行させる正通電と、正通電を停止した後に発生する逆電流(逆電)の通電とが繰り返された場合にも、耐食性を有するとともに、導電性基材の表面の腐食反応が抑制されているものと推察される。
上記態様において、ジルコニウム層の目付量が0.1g/m2以上であり、且つ、白金層の目付量が2.0g/m2以上であることが好ましい。ジルコニウム層及び白金層の目付量が、それぞれ上記範囲であると、導電性基材のニッケル表面がジルコニウム層及び白金層により良好にコーティングされるため、導電性基材表面からのニッケルの溶出が抑制され、基材表面にある触媒層の脱落、剥離を抑制することができる。
白金層の目付量が2.0g/m2以上であると、導電性基材全体を白金でコーティングすることができ、触媒層が逆電により減耗しても、低過電圧を維持するために十分な白金量が担保されるという効果が得られる。2.0g/m2未満であると、導電性基材が露出する部分が生じ、所望の過電圧を得ることができない可能性がある。
一方で、白金層の重量を増やしすぎると、機械的強度が低下し、物理的に触媒層が剥離しやすくなってしまう。このため、白金層の目付量は10.0g/m2以下であることが好ましい。
上記白金層の目付量は、3.0〜9.0g/m2であることがより好ましく、4.0〜8.0g/m2であることがさらに好ましい。
また、ジルコニウム層の目付量が0.1g/m2以上であると、触媒層が逆電により減耗しても、導電性基材からのニッケルの溶出が抑制され、低過電圧を維持することができる。
一方で、ジルコニウム層の重量を増やしすぎると、抵抗成分となって所望の過電圧を得られなくなってしまう。このため、ジルコニウム層の目付量は20.0g/m2以下であることが好ましい。
上記ジルコニウム層の目付量は、0.3〜10.0g/m2であることがより好ましく、0.5〜3.0g/m2であることがさらに好ましい。
上記態様において、ジルコニウム層の平均厚みは、0.007〜1.5μmであることが好ましく、0.02〜0.7μmであることがより好ましく、0.03〜0.3μmであることがさらに好ましい。ジルコニウム層の平均厚みが上記範囲であると、亀裂の少ないジルコニウム層を形成することができる。
白金層の平均厚みは、ジルコニウム層全体を被覆する観点から、0.06μm以上であることが好ましい。0.06μmより薄いと、ジルコニウム層が露出し、過電圧が高くなる傾向にある。
また、白金層が2.0μm超であると抵抗成分となって所望の過電圧を出せなくなってしまうため、2.0μm以下であることが好ましい。
上記白金層の平均厚みは、0.1〜1.0μmであることがより好ましく、0.15〜0.5μmであることがさらに好ましく、0.17〜0.4μmであることがよりさらに好ましい。
上記ジルコニウム層の目付量及び平均厚みの範囲、上記白金層の目付量及び平均厚みは、本発明の効果を好適に得るうえで、それぞれ個別に選択されてもよい。
上記ジルコニウム層のジルコニウムの原料塩としては、例えば、オキシ硝酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム微粒子分散液、塩化ジルコニウム等が挙げられる。
[[混合層を含む場合]]
別態様として、触媒層が、白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を含む場合、触媒層は、混合層以外の層を含んでいてもよいが、混合層のみからなることが好ましい。
このようにジルコニウム層と白金層とを含む陰極にすることによって優れた逆電耐久性が得られる理由は定かではないが、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の隙間に白金が入り込むことで、白金と結晶性のジルコニウムとが複雑に絡み合った緻密な構造となっている混合層で導電性基材が覆われるために、意図する電解反応を進行させる正通電と、正通電を停止した後に発生する逆電流(逆電)の通電とが繰り返された場合にも、耐食性を有するとともに、導電性基材の表面の腐食反応が抑制されているものと推察される。
上記態様において、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の目付量が0.1g/m2以上であり、且つ、白金の目付量が2.0g/m2以上であることが好ましい。結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物及び白金の目付量が、それぞれ上記範囲であると、導電性基材のニッケル表面が結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物及び白金により良好にコーティングされるため、導電性基材表面からのニッケルの溶出が抑制され、基材表面にある触媒層の脱落、剥離を抑制することができる。
白金の目付量が2.0g/m2以上であると、触媒層が逆電により減耗しても、低過電圧を維持するために十分な白金量が担保されるという効果が得られる。
一方で、白金の重量を増やしすぎると、機械的強度が低下し、物理的に混合層が剥離しやすくなってしまう。このため、白金の目付量は40.0g/m2以下であることが好ましい。
上記白金の目付量は、4.0〜20.0g/m2であることがより好ましく、6.0〜10.0g/m2であることがさらに好ましい。
また、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の目付量が0.1g/m2以上であると、触媒層が逆電により減耗しても、導電性基材からのニッケルの溶出が抑制され、低過電圧を維持することができる。
一方で、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の重量を増やしすぎると、抵抗成分となって所望の過電圧を得られなくなってしまう。このため、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の目付量は20g/m2以下であることが好ましい。
上記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の目付量は、0.5〜10g/m2であることがより好ましく、0.8〜5g/m2であることがさらに好ましい。
上記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物及び白金の目付量の範囲は、本発明の効果を好適に得るうえで、それぞれ個別に選択されてもよい。
また、混合層の平均厚みは、0.05μm以上であることが好ましい。混合層の平均厚みが0.05μm以上であると、導電性基材表面からのニッケル成分の溶出が抑制され、触媒層の剥離を抑制できる。
一方で、混合層の厚みを増やしすぎると、機械的強度が低下し、物理的に触媒層が剥離しやすくなってしまう。このため、混合層の平均厚みは3.0μm以下であることが好ましい。
上記混合層の平均厚みは、0.1〜2.0μmであることがより好ましく、0.2〜1.0μmであることがさらに好ましい。
上記混合層に含有される金属原子に対するジルコニウム原子の割合は、低過電圧及び逆電耐性の観点から、1〜90モル%であることがより好ましく、10〜80モル%であることがより好ましく、20〜60モル%であることがさらに好ましい。
上記混合層に含有される金属原子に対する白金原子の割合は、低過電圧及び逆電耐性の観点から、10〜99モル%であることがより好ましく、40〜90モル%であることがより好ましく、60〜80モル%であることがさらに好ましい。
上記混合層の平均厚みの範囲、上記混合層に含有される金属原子に対するジルコニウム原子及び白金原子の割合は、本発明の効果を好適に得るうえで、それぞれ個別に選択されてもよい。
[導電性基材]
本実施形態の水素発生用陰極を構成する導電性基材は、使用環境への耐性から、ニッケルを含む金属を含有する。
導電性基材の形状には、特に限定はなく、目的によって適切な形状を選択することができる。形状としては、例えば、パンチングメタル、不織布、発泡金属、金属多孔箔、エキスパンドメタル、金属線を編んで作製したいわゆるメッシュ等が挙げられ、いずれのものも使用することができる。中でも、上記した逆電耐性向上の効果発現の観点から、角部や凸部を持たないメッシュ、発泡金属、パンチングメタル等が好ましい。導電性基材が、例えばエキスパンドメタルのような角部や凸部を有する場合には、角部や凸部が触媒層の界面剥離の起点となってしまうため、上記の効果は得られにくい。
導電性基材にメッシュを用いる場合、寸法は特に制限されないが、電解表面積増加によるガス発生量の増加と、電解により発生するガスの電極表面からの効率的な除去を両立させるために、線径は0.05〜1.0mm、ピッチは20〜60メッシュが好ましい。より好ましくは、線径は0.1〜0.3mm、ピッチは30〜50メッシュである。
導電性基材に発泡金属を用いる場合、寸法は特に制限されないが、電解表面積増加によるガス発生量の増加と、電解により発生するガスの電極表面からの効率的な除去を両立させるために、比表面積は200〜6000m2/m3が好ましく、1000〜6000m2/m3がさらに好ましい。
導電性基材にパンチングメタルを用いる場合、寸法は特に制限されないが、電解表面積増加によるガス発生量の増加と、電解により発生するガスの電極表面からの効率的な除去を両立させるため、また、機械的強度の観点から、孔径は2〜8mm、ピッチは2〜10mm、開口率は20〜80%、厚みは0.5〜2mmが好ましい。
パンチングメタルに加工する前の板材としては、圧延成形した板材、電解箔などが好ましい。電解箔は、さらに後処理として母材と同じ元素でメッキ処理を施して、片面あるいは両面に凹凸をつけることが好ましい。
導電性基材の厚み(ゲージ厚み)は、特に限定されないが、良好なハンドリング性が得られ、イオン交換膜や微多孔膜等の隔膜、給電体と良好な接着力を有し、取り扱いが容易になるとの観点から、300μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、ハンドリング性と経済性の観点から、50μm以下がさらに好ましい。
導電性基材においては、導電性基材を酸化雰囲気中で焼鈍することによって加工時の残留応力を緩和することが好ましい。
また、導電性基材は、触媒層との密着性を向上させるために、表面積を増大させる処理を行うことが好ましい。表面積を増大させる処理としては、カットワイヤ、スチールグリッド、アルミナグリッド等を用いたブラスト処理、硫酸又は塩酸を用いた酸処理、基材と同元素でのメッキ処理等が挙げられる。
基材表面の算術平均表面粗さ(Ra)は、特に限定されないが、0.05〜50μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.1〜8μmがさらに好ましい。
なお、基材表面の算術平均表面粗さ(Ra)は、触針式表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
水素発生用陰極に求められる要件として、過電圧が低いこと以外に、再生可能エネルギーのような不安定な電流を用いても、陰極の基材及び触媒層の腐食、触媒層の脱落、電解液への溶解、隔膜への含有物の付着等が起きにくいことが挙げられる。
本実施形態の水素発生用陰極としては、電解に用いられる表面積を増加させるため、また、電解により発生するガスを効率的に電極表面から除去するために、多孔体であることが好ましい。特に、ゼロギャップ電解槽の場合、隔膜との接触面の裏側から発生するガスを脱泡する必要があるため、陰極の膜に接する面と反対に位置する面が、貫通していることが好ましい。
上記陰極の表面は、Pt及びZrに加え、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも1つの白金族元素を含む層で被覆されていてもよい。これにより、陰極の過電圧を一層低くすることができる。上記陰極の表面の層に含まれる上記白金族元素としては、Pd、Irがより好ましい。
[水素発生用陰極の製造方法]
本実施形態の水素発生用陰極の製造方法、即ち、導電性基材上に触媒層を形成させる方法としては、めっき法、プラズマ溶射法等の溶射法、基材上に前駆体層溶液を塗布した後に熱を加える熱分解法、触媒物質をバインダー成分と混合して基材に固定化する方法、及び、スパッタリング法等の真空成膜法といった手法が挙げられる。
熱分解法を用いると、多孔基材上に均一な厚みの薄膜を形成することができる。そのため、少量の原料で基材表面を効率的に被覆することができる。
熱分解法では、触媒を含む塗布液を基材表面に塗布する塗布工程と、塗布液を乾燥させて前駆体層を形成する前駆体層形成工程と、表面に前駆体層を形成した基材を加熱することで、前駆体層を熱分解し、触媒層を形成させる焼成工程とを備えることが好ましい。
塗布工程は、例えば、金属元素を含む塗布液を基材表面に塗布する手法が挙げられる。
金属元素としては、Pt及びZrに加え、Ru、Rh、Pd、Os、Irからなる群から選択される少なくとも1つの白金族元素が挙げられる。塗布液中での金属の形態は特に制限はなく、金属や金属化合物の微粒子でもよく、溶解してイオン化されていてもよい。微粒子状態の場合、均質な前駆体層を形成するために、液中で分散されている状態が好ましい。そのため、粒径は100nm以下であることが好ましい。イオン化されている場合、金属塩としては、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機化合物塩、酢酸塩に代表される有機化合物塩等が例示できる。これらの中で、塩化物、硝酸塩は原料を工業的に入手できるために好ましく用いられる。さらに、硝酸塩は分解後に残留するアニオン成分による基材の劣化が小さく、保存安定性の良好な電極を得ることができるため、より好ましい。
溶液の溶媒としては、溶質である金属塩等を溶解するものであればよい。高濃度の溶液を調製することができれば、塗布量が増加し、生産性を高めることができるため、水もしくは炭素数が2〜5のアルコールの少なくとも1種以上を含むことが好ましい。溶液の金属塩の濃度が薄いと、溶媒の揮発に多くのエネルギーを要する。一方、金属塩の濃度が濃いと、ムラが生じる恐れがあり、触媒層の厚みが不均一なる場合がある。そのため、前駆体形成工程において用いる塗布液の金属塩の濃度は0.001〜1mol/Lが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5mol/Lである。
塗布工程において、基材表面に金属元素を含む塗布液を塗布する方法としては、公知の様々な手法を用いることが可能である。例えば、基材を液に浸漬するディップ法、基材に液を刷毛で塗る方法、スポンジ状ロールに含浸させた液を基材に塗布するロール法、塗布液と基材とを反対の電荷に帯電させてスプレー等を用いて噴霧を行う静電塗布法等が挙げられる。特に、生産性の点と触媒層が均一に塗布できる点とから、ロール法及び静電塗布法が好適に用いられる。
基材には、塗布液を塗布するのに先立ち、表面に凹凸を設けるための表面処理を行ってもよい。基材表面に凹凸を設けると、基材と触媒層との密着性が向上する。表面処理の方法は特に限定されず、ブラスト処理や薬液を用いたエッチング等が例示できる。
前駆体層形成工程において、基材表面に塗布された塗布液を乾燥させて前駆体層を形成する際の乾燥温度は、40〜200℃であることが好ましく、より好ましくは60〜150℃である。また、乾燥時間は、1〜60分間であることが好ましく、より好ましくは
5〜30分間である。
焼成工程において触媒層を形成する焼成温度は、用いる金属塩の熱分解温度以上であればよいが、300℃以上が好ましい。多くの金属塩の熱分解は300℃以上で進行するためである。熱分解を良好に進行させ、未反応の物質を除去するため、400℃以上が好ましく、より好ましくは500℃以上である。1000℃より高い温度で焼成すると、基材が軟化して変形する場合があるので、1000℃以下が好ましく、より好ましくは800℃以下であり、さらに好ましくは600℃以下である。焼成時間は1分〜60分であることが好ましく、より好ましくは5分〜60分、さらに好ましくは5分〜30分である。
前駆体層形成工程と焼成工程は複数回繰り返すことが好ましい。所望の厚みの触媒層を形成するためには、1回当たりの液塗布量や、あるいは塗布液中の金属塩の濃度だけでも調整できるが、1回当たりの液塗布量や塗布液中の金属濃度を高くし過ぎると、ムラになる恐れがあり、各層が均一に形成されない場合がある。そのため、前駆体層形成工程と焼成工程を複数回繰り返すことによって、より均一な触媒層を所望の厚みで形成することができる。繰り返し回数は、所望の厚みが得られる条件であれば、特に限定されないが、5〜30回が好ましい。
前駆体層形成工程と焼成工程とを複数回繰り返した後、さらに、結晶性を高める観点で、焼成工程の温度以上の高温で焼成する本焼成工程を含んでもよい。本焼成温度は1000℃以下が好ましく、より好ましくは800℃以下である。本焼成時間は5分〜24時間が好ましく、より好ましくは30分〜10時間、さらに好ましくは60分〜5時間である。
上記本焼成の温度と時間の範囲は、本発明の効果を好適に得るうえで、それぞれ個別に選択されてもよい。
導電性基材上に、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層と、ジルコニウム層の表面上に白金を含む白金層とを含む触媒層を有する水素発生用陰極を製造する場合は、例えば、導電性基材の表面に、少なくともジルコニウムを含む塗布液を塗布し(塗布工程1)、塗布液を乾燥させ(前駆体層形成工程1)、大気中等の酸素含有雰囲気において焼成(熱分解及び結晶化)する(焼成工程1)ことにより、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層を形成することができる。こうして形成されたジルコニウム層は、原料として溶液(塗布液)を用いて形成するため、後述するZrO2ゾルを用いて形成する場合と異なり、緻密な酸化物層(ZrO2層)となる。
続いて、ジルコニウム層の表面に、少なくとも白金化合物を含む塗布液を塗布し(塗布工程2)、塗布液を乾燥させ(前駆体層形成工程2)、大気中等の酸素含有雰囲気において焼成(熱分解及び結晶化)する(焼成工程2)ことにより、緻密なZrO2層の上に白金層を形成することができる。
焼成は、ZrO2及び白金をそれぞれ熱分解するための仮焼成と結晶化させるための本焼成の2段階で行うことが好ましい。
ジルコニウム層を形成するための仮焼成(熱分解)温度は、ジルコニウム硝酸塩等の原料の有機物、無機物を除去する観点で100〜700℃であり、好ましくは200〜650℃、より好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは400〜550℃である。仮焼成(熱分解)時間は、1〜60分であることが好ましく、より好ましくは5〜30分である。
酸化ジルコニウムを結晶化させるための焼成(本焼成)温度は、ZrO2を結晶化させるため、200〜800℃であることが好ましく、より好ましくは300〜750℃、さらに好ましくは400〜700℃、よりさらに好ましくは450〜650℃である。本焼成時間は、0.5〜24時間とすることが好ましく、1〜10時間とすることがより好ましい。0.5時間未満であるとZrO2層の結晶化が進行しにくい。
また、白金層を形成するための仮焼成(熱分解)温度は、100〜700℃であり、好ましくは200〜650℃、より好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは400〜550℃である。仮焼成(熱分解)時間は、1〜60分であることが好ましく、より好ましくは5〜30分である。
白金を結晶化させるための焼成(本焼成)温度は、白金を結晶化させるため、200〜800℃であることが好ましく、より好ましくは300〜750℃、さらに好ましくは400〜700℃、よりさらに好ましくは450〜650℃である。
ジルコニウムを含む塗布液に用いるジルコニウムの原料塩としては、オキシ硝酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム微粒子分散液、塩化ジルコニウム等を用いることができる。
白金化合物を含む塗布液としては、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液、ヘキサアンミン白金溶液や塩化白金溶液等を用いることができる。
導電性基材上に、白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を含む触媒層を有する水素発生用陰極を製造する場合は、例えば、導電性基材の表面に、少なくとも白金化合物とジルコニウムとを含む塗布液を塗布し(塗布工程)、塗布液を乾燥させ(前駆体層形成工程)、大気中等の酸素含有雰囲気において焼成(熱分解及び結晶化)する(焼成工程)ことにより、混合層を形成することができる。
焼成は、ZrO2及び白金を熱分解するための仮焼成と結晶化させるための本焼成の2段階で行うことが好ましい。
混合層を形成するための仮焼成(熱分解)温度は、100〜800℃であり、好ましくは250〜800℃、より好ましくは350〜700℃、さらに好ましくは450〜600℃である。仮焼成(熱分解)時間は、5〜60分間とすることが好ましく、5〜30分間とすることがより好ましい。
混合層を結晶化させるための焼成(本焼成)温度は、白金及びZrO2を結晶化させるため、200〜800℃であることが好ましく、より好ましくは300〜750℃、さらに好ましくは400〜700℃、よりさらに好ましくは450〜650℃である。本焼成時間は、0.5〜24時間とすることが好ましく、1〜10時間とすることがより好ましい。0.5時間未満であるとZrO2の結晶化が進行しにくい。
白金化合物とジルコニウムとを含む塗布液に用いるジルコニウムの原料塩としては、例えば、ZrO2ゾルを用いることができ、白金化合物としては、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液、ヘキサアンミン白金溶液や塩化白金溶液等を用いることができる。
なお、ZrO2ゾルとは、数ナノメートルから数十ナノメートルのZrO2微粒子が溶液中に分散したものである。ZrO2微粒子の粒径は、好ましくは1〜100nm、より好ましくは10〜50nmである。
また、導電性基材上に、白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を含む触媒層を有する水素発生用陰極を製造する場合の別の方法としては、例えば、導電性基材の表面に、所望の濃度に蒸留水で希釈したZrO2ゾルを塗布し(塗布工程1)、ZrO2ゾルを乾燥させ(前駆体層形成工程1)、大気中等の酸素含有雰囲気において焼成(熱分解及び結晶化)する(焼成工程1)ことにより、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層を形成する。
続いて、ジルコニウム層の表面に、少なくとも白金化合物を含む塗布液を塗布し(塗布工程2)、塗布液を乾燥させ(前駆体層形成工程2)、大気中等の酸素含有雰囲気において焼成(熱分解及び結晶化)する(焼成工程2)ことによりZrO2粒子の隙間に白金が入りこみ、白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を形成することができる。
焼成は、ZrO2及び白金を熱分解するための仮焼成と結晶化させるための本焼成の2段階で行うことが好ましい。
混合層を形成するための仮焼成(熱分解)温度は、100〜700℃であることが好ましく、より好ましくは200〜650℃、さらに好ましくは300〜600℃である。仮焼成(熱分解)時間は、1〜60分間が好ましく、5〜30分間がより好ましい。
混合層を結晶化させるための焼成(本焼成)温度は、白金及びZrO2を結晶化させるため、200〜800℃であることが好ましく、より好ましくは300〜750℃、さらに好ましくは400〜700℃、よりさらに好ましくは450〜650℃である。本焼成時間は、0.5〜24時間とすることが好ましく、1〜10時間とすることがより好ましい。0.5時間未満であるとZrO2の結晶化が進行しにくい。
ZrO2ゾル中のZrO2微粒子について、粒径の好適範囲は、上述の範囲と同様である。
白金化合物を含む塗布液としては、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液、ヘキサアンミン白金溶液や塩化白金溶液等を用いることができる。
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができることはいうまでもない。
実施例及び比較例で用いた原材料について、以下に説明する。
(塗布液)
下記のように塗布液を調製した。
塗布液1:オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(関東化学製)を蒸留水に1質量%となるよう溶解した溶液。
塗布液2:ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属製)を、白金濃度25g/Lとなるように蒸留水に溶解した溶液。
塗布液3:酸化ジルコニウムゾル(多木化学製)を蒸留水に1質量%となるよう調整した液。
塗布液4:オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(関東化学製)と硝酸セリウム・6水和物(関東化学製)をジルコニウムとセリウムのモル比が75:25になるように混合し、蒸留水に1質量%となるよう溶解した溶液。
塗布液5:酸化ジルコニウムゾル(多木化学製)と硝酸イットリウム(関東化学製)をジルコニウムとイットリウムのモル比が92:8になるように混合し、蒸留水に1質量%となるよう溶解した溶液。
塗布液6:オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(関東化学製)を蒸留水に0.1質量%となるよう溶解した溶液。
塗布液7:酸化ジルコニウムゾル(多木化学製)を蒸留水に0.1質量%となるよう調整した液。
塗布液8:ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属製)とオキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(関東化学製)を、白金とジルコニウムのモル比が80:20になるように混合し、蒸留水に5質量%となるよう溶解した溶液。
塗布液9:ジニトロジアンミン白金(II)3.04mgと硝酸ジルコニウム・2水和物1.69mgを、白金とジルコニウムのモル比が60:40になるように8%硝酸酸性水溶液に溶解した溶液。
塗布液10:硝酸パラジウム溶液(田中貴金属製)とジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属製)とを、パラジウムと白金のモル比が50:50となるように混合し、蒸留水に2.5質量%となるよう溶解した溶液。
(実施例1)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液1を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液1をしみこませ、その上部にロールと塗布液1とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液1を塗布した(ロール法)。塗布液1が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを5回繰り返した。さらに、空気雰囲気中550℃で3時間の本焼成を行い、陰極(1−1)を作製した。
陰極(1−1)の重量を電子天秤により計測し、ジルコニウム層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりのジルコニウム層の重量(目付量)を算出した。
−塗布工程2−
塗布ロールの最下部に上記塗布液2を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液2をしみこませ、その上部にロールと塗布液2とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(1−1)に塗布液2を塗布した(ロール法)。塗布液2が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程2−
塗布工程2を施した陰極(1−1)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程2−
前駆体層を形成させた陰極(1−1)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを8回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(1−2)を作製した。
陰極(1−2)の重量を電子天秤により計測し、白金層形成前の該陰極(1−1)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの白金層の重量(目付量)を算出した。
(実施例2)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液1を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液1をしみこませ、その上部にロールと塗布液1とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液1を塗布した(ロール法)。塗布液1が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを22回繰り返した。さらに、空気雰囲気中600℃で4時間の本焼成を行い、陰極(2−1)を作製した。
陰極(2−1)の重量を電子天秤により計測し、ジルコニウム層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりのジルコニウム層の重量(目付量)を算出した。
−塗布工程2−
塗布ロールの最下部に上記塗布液2を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液2をしみこませ、その上部にロールと塗布液2とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(2−1)に塗布液2を塗布した(ロール法)。塗布液2が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程2−
塗布工程2を施した陰極(2−1)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程2−
前駆体層を形成させた陰極(2−1)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを9回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(2−2)を作製した。
陰極(2−2)の重量を電子天秤により計測し、白金層形成前の該陰極(2−1)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの白金層の重量(目付量)を算出した。
(実施例3)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液1を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液1をしみこませ、その上部にロールと塗布液1とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液1を塗布した(ロール法)。塗布液1が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを2回繰り返した。さらに、空気雰囲気中560℃で3時間の本焼成を行い、陰極(3−1)を作製した。
陰極(3−1)の重量を電子天秤により計測し、ジルコニウム層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりのジルコニウム層の重量(目付量)を算出した。
−塗布工程2−
塗布ロールの最下部に上記塗布液2を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液2をしみこませ、その上部にロールと塗布液2とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(3−1)に塗布液2を塗布した(ロール法)。塗布液2が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程2−
塗布工程2を施した陰極(3−1)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程2−
前駆体層を形成させた陰極(3−1)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを5回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(3−2)を作製した。
陰極(3−2)の重量を電子天秤により計測し、白金層形成前の該陰極(3−1)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの白金層の重量(目付量)を算出した。
(実施例4)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液3を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液3をしみこませ、その上部にロールと塗布液3とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液3を塗布した(ロール法)。塗布液3が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを4回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(4−1)を作製した。
陰極(4−1)の重量を電子天秤により計測し、触媒層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の重量(目付量)を算出した。
−塗布工程2−
塗布ロールの最下部に上記塗布液2を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液2をしみこませ、その上部にロールと塗布液2とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(4−1)に塗布液2を塗布した(ロール法)。塗布液2が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程2−
塗布工程2を施した陰極(4−1)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程2−
前駆体層を形成させた陰極(4−1)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを7回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(4−2)を作製した。
陰極(4−2)の重量を電子天秤により計測し、陰極(4−1)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの白金の重量(目付量)を算出した。
図3Aは、実施例4のニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク(Niピーク)及び結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク(ZrO2ピーク)を示す図である。ZrO2ピークが見られるため、実施例4では、ジルコニウムを含む絶縁体酸化物が結晶性であることが確認された。
実施例4の触媒層について、酸素、白金、ジルコニウムの存在比を測定したところ、原子比でO:Pt:Zr=39.5:46.0:14.5であり、白金と酸化ジルコニウムとの混合層であると判断された。
(実施例5)
塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを3回繰り返したことと、塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを6回繰り返したこと以外は、実施例4と同様に陰極を作成した。
(実施例6)
塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを2回繰り返したことと、塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを3回繰り返したこと以外は、実施例4と同様に陰極を作成した。
(実施例7)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液4を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液4をしみこませ、その上部にロールと塗布液4とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液4を塗布した(ロール法)。塗布液4が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを4回繰り返した。さらに、空気雰囲気中600℃で3時間の本焼成を行い、陰極(7−1)を作製した。
陰極(7−1)の重量を電子天秤により計測し、ジルコニウム層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりのジルコニウム層の重量(目付量)を算出した。ジルコニウムとセリウムとのモル比から、単位面積当たりのジルコニウム酸化物の重量(目付量)及び単位面積当たりのセリウムの重量(目付量)を求めた。
−塗布工程2−
塗布ロールの最下部に上記塗布液2を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液2をしみこませ、その上部にロールと塗布液2とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(7−1)に塗布液2を塗布した(ロール法)。塗布液2が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程2−
塗布工程を施した陰極(7−1)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程2−
前駆体層を形成させた陰極(7−1)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを6回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(7−2)を作製した。
陰極(7−2)の重量を電子天秤により計測し、白金層形成前の該陰極(7−1)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの白金層の重量(目付量)を算出した。
(実施例8)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液5を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液5をしみこませ、その上部にロールと塗布液5とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液5を塗布した(ロール法)。塗布液5が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを10回繰り返した。さらに、空気雰囲気中550℃で3時間の本焼成を行い、陰極(8−1)を作製した。
陰極(8−1)の重量を電子天秤により計測し、触媒層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の重量(目付量)を算出した。ジルコニウムとイットリウムとのモル比から、単位面積当たりのジルコニウム酸化物の重量(目付量)及び単位面積当たりのイットリウムの重量(目付量)を求めた。
−塗布工程2−
塗布ロールの最下部に上記塗布液2を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液2をしみこませ、その上部にロールと塗布液2とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(8−1)に塗布液2を塗布した(ロール法)。塗布液2が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程2−
塗布工程1を施した陰極(8−1)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程2−
前駆体層を形成させた陰極(8−1)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを20回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(8−2)を作製した。
陰極(8−2)の重量を電子天秤により計測し、陰極(8−1)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの白金の重量(目付量)を算出した。
(実施例9)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液1を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液1をしみこませ、その上部にロールと塗布液1とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液1を塗布した(ロール法)。塗布液1が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを4回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(9−1)を作製した。
陰極(9−1)の重量を電子天秤により計測し、ジルコニウム層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりのジルコニウム層の重量(目付量)を算出した。
−塗布工程2−
塗布ロールの最下部に上記塗布液3を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液3をしみこませ、その上部にロールと塗布液3とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(9−1)に塗布液3を塗布した(ロール法)。塗布液3が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程2−
塗布工程1を施した陰極(9−1)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程2−
前駆体層を形成させた陰極(9−1)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを4回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(9−2)を作製した。
陰極(9−2)の重量を電子天秤により計測し、陰極(9−1)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、陰極(9−1)上に形成されたジルコニウム酸化物による層の単位面積当たりのジルコニウム酸化物の重量(目付量)を算出した。
−塗布工程3−
塗布ロールの最下部に上記塗布液2を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液2をしみこませ、その上部にロールと塗布液2とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、陰極(9−2)に塗布液2を塗布した(ロール法)。塗布液2が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程3−
塗布工程3を施した陰極(9−2)を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程3−
前駆体層を形成させた陰極(9−2)を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程3、前駆体層形成工程3及び焼成工程3のサイクルを7回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(9−3)を作製した。
陰極(9−3)の重量を電子天秤により計測し、陰極(9−2)の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの白金の重量(目付量)を算出した。
(実施例10)
導電性基材として、発泡ニッケル(住友電工製、セルメット#4)を使用した以外は、実施例1と同様に陰極を作成した。
(実施例11)
導電性基材として、ゲージ厚みが16μmの電解ニッケル箔を準備した。このニッケル箔の片面に電解ニッケルメッキによる粗面化処理を施した。このニッケル箔にパンチング加工により円形の孔をあけ多孔箔とした。このニッケル箔を使用した以外は、実施例1と同様に陰極を作成した。
(比較例1)
塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1を実施しなかった以外は、実施例1と同様に陰極を作成した。
(比較例2)
塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを32回繰り返したこと以外は、実施例1と同様に陰極を作成した。
(比較例3)
塗布工程1で塗布液6を使用したこと、塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを1回繰り返したこと以外は、実施例1と同様に陰極を作成した。
(比較例4)
塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1を実施しなかったこと、塗布工程2、前駆体層形成工程2及び焼成工程2のサイクルを6回繰り返したこと以外は、実施例4と同様に陰極を作成した。
(比較例5)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で30分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液8を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液8をしみこませ、その上部にロールと塗布液8とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液8を塗布した(ロール法)。塗布液8が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を60℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱処理を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを8回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、陰極(5−1)を作製した。
陰極(5−1)の重量を電子天秤により計測し、触媒層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの触媒層の重量(目付量)を算出した。白金とジルコニウムとのモル比から、単位面積当たりの白金の重量(目付量)及び単位面積当たりのジルコニウムの重量(目付量)を求めた。
図3Bは、比較例5のニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク(Niピーク)を示す図である。ZrO2ピークが見られず、比較例5では、ジルコニウムを含む絶縁体酸化物が結晶性ではないことが確認された。
比較例5の触媒層のうち触媒層表面から厚み方向0.16μmまでについて、酸素、白金、ジルコニウムの存在比を測定したところ、原子比でO:Pt:Zr=8.0:92.0:0であり、白金と酸化ジルコニウムの混合層ではなく、白金の単独層であると判断された。
(比較例6)
塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを23回繰り返したこと以外は、実施例4と同様に陰極を作成した。
(比較例7)
塗布工程1で塗布液7を使用したこと、塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを1回繰り返したこと以外は、実施例4と同様に陰極を作成した。
(比較例8)
導電性基材としてニッケルエキスパンドメタル(SW3.8×LW8.0×t1.0×st1.2)を用い、その表面を#180のアルミナでブラスト処理し、その後20%の塩酸中、室温で60分間エッチングした。
−塗布工程1−
塗布液9(70mL)を刷毛にて導電性基材の両面に塗布した。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を100℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で20分間の加熱焼成を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを数回繰り返して、陰極(8−1)を作製した。
陰極(8−1)の重量を電子天秤により計測し、触媒層形成前の該導電性基材の重量との差分を3.8cm×8.0cmの面積で割り、単位面積当たりの触媒層の重量(目付量)を算出した。白金とジルコニウムとのモル比から、単位面積当たりの白金の重量(目付量)及び単位面積当たりのジルコニウムの重量(目付量)を求めた。
(比較例9)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で10分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液10を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液10をしみこませ、その上部にロールと塗布液10とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液10を塗布した(ロール法)。塗布液10が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を50℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱焼成を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを5回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、厚さ0.16mmの陰極(9−1)を作製した。
陰極(9−1)の重量を電子天秤により計測し、触媒層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの触媒層の重量(目付量)を算出した。パラジウムと白金とのモル比から、単位面積当たりの白金の重量(目付量)を求めた。
(比較例10)
導電性基材として、断面円形で直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を用いた。重量平均粒径100μm以下のアルミナ粉を用いてブラストした該導電性基材を8.5cm×17.0cmに切り出し、次に、6Nの塩酸中にて室温で10分間酸処理した後、水洗、乾燥した。
乾燥後の該導電性基材に、マッフル炉を用いて500℃で10分間の加熱焼成を行い、該導電性基材の表面上にニッケル酸化物層を形成した。メトラー・トレド株式会社製電子天秤PG503−Sを用いて、加熱焼成後の該導電性基材の重さを計測した。
次に、硝酸パラジウム溶液(田中貴金属製)とジニトロジアンミン白金硝酸溶液(田中貴金属製)とを、パラジウムと白金のモル比が50:50となるように混合し、塗布液を調製した。
−塗布工程1−
塗布ロールの最下部に上記塗布液1を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液1をしみこませ、その上部にロールと塗布液1とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、該導電性基材に塗布液1を塗布した(ロール法)。塗布液1が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの導電性基材を通過させて、導電性基材のメッシュの交点に溜まる塗布液を吸い取って除いた。
−前駆体層形成工程1−
塗布工程1を施した導電性基材を50℃で10分間乾燥させて前駆体層を形成した。
−焼成工程1−
前駆体層を形成させた導電性基材を、マッフル炉を用いて空気雰囲気中500℃で10分間の加熱焼成を行って前駆体層を熱分解させた。
この塗布工程1、前駆体層形成工程1及び焼成工程1のサイクルを18回繰り返した。さらに、空気雰囲気中500℃で1時間の本焼成を行い、厚さ0.16mmの陰極(10−1)を作製した。
陰極(10−1)の重量を電子天秤により計測し、触媒層形成前の該導電性基材の重量との差分を8.5cm×17.0cmの面積で割り、単位面積当たりの触媒層の重量(目付量)を算出し、パラジウムと白金とのモル比から、単位面積当たりの白金の重量(目付量)を求めた。
実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法について、以下に説明する。
(結晶化度)
X線回折装置(株式会社リガク製RINT2000型)を用い、励起電圧を40kV、励起電流を200mA、操作軸を2θ/θの測定条件にて、陰極のX線回折チャートを得た。X線回折解析ソフトウェア「JADE」を用いて、X線回折チャートのKα線由来のピークを除去した後に、ベースライン補正を行い、ニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク強度INi、及び結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク強度IZrO2をそれぞれ算出した。得られたINi及びIZrO2から、結晶化度IZrO2/INi×100を求めた。
(触媒層の平均厚み)
陰極をエポキシ樹脂で包埋後、Arイオンビームによる加工(BIB加工)により断面を作製した。BIB加工断面をSEM(日立ハイテクノロジーズ社製S−4800)で観察し、反射電子像(観察倍率:3000)を得た。
この反射電子像を元に、画像解析ソフトImageJを用いて以下の方法で触媒層の平均厚みを算出した。MedianフィルタでRadius:3.0pixcelsの条件でフィルタ処理を行った後、MaxEntropy法による二値化像を作成し、画像解析により触媒層の積層方向に垂直な断面における触媒層面積を求めた。別途、Otus法による二値化を行い、触媒層内部の穴埋め処理をし、エッジ抽出を行い、包埋樹脂と触媒層との上記断面における界面線分長さを算出する。そして、下記の定義式から触媒層厚みを算出した。
触媒層厚み(μm)=触媒層面積(μm2)/界面線分長さ(μm)
各陰極について、上記の方法で触媒層厚みを3点算出し、その平均値を触媒層の平均厚みとした。
(混合層の生成確認)
陰極を断面加工し、走査型透過電子顕微鏡装置(株式会社日立製作所製HD−2300A)を用いて加速電圧200kVで測定し、触媒層の元素分析を行った。元素分析は10点で行い、その平均値を算出した。
触媒層の原子比(酸素:白金:ジルコニウム)を求めることにより、混合層が形成されているか否かを判断し、形成されている場合は「有」、形成されていない場合は「無」とした。
(陰極の過電圧)
陰極を2cm×2cmに切り出し、PTFEで被覆したニッケル製の棒にニッケル製のネジで固定した。対極には白金メッシュを使用し、80℃、32wt%水酸化ナトリウム水溶液中で、電流密度0.6A/cm2で電解し、水素過電圧を測定した。水素過電圧は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端と陰極との間隔は、常に1mmに固定した。水素過電圧の測定装置としては、ソーラートロン社製のポテンショガルバノスタット「1470Eシステム」を用いた。三電極法用の参照極としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。三電極法を使用しても排除しきれないオーム損を交流インピーダンス法で測定し、オーム損の測定値に基づき前記水素過電圧を補正した。オーム損の測定には、ソーラートロン社製の周波数特性分析器「1255B」を使用した。
(二重層容量)
インピーダンス測定装置(ソーラートロン社製の周波数特性分析器「1255B」)を用いて交流インピーダンス測定により得られた実部と虚部をプロットしたCole−Coleプロットに対して、等価回路フィッティングにより解析することで、陰極の二重層容量を算出した。
電位の掃引速度を50、100、200、400mV/secの4点とし、掃引電位範囲は−0.72〜−0.58Vとし、電位−0.5Vの電流密度の値を読み、4点の傾きから最小二乗法を用いて二重層容量(F/cm2)を算出した。
(逆電試験1)
上記三電極法を用いて、−1.25V vs.Ag/AgClから+0.2V vs.Ag/AgClの掃引幅でサイクリックボルタンメトリー測定を行った。電位の掃引速度は500mV/secとした。−1.25Vからスタートし、+0.2Vを経由し、再び−1.25Vに到達するまでを逆電相当のサイクル1回とした。まずは逆電試験の前に過電圧を測定し、続いて10回のサイクル後に再び過電圧を測定した。さらに90回のサイクルを施したのち、過電圧を測定し、通算100回後の過電圧とした。同様の操作をおこない、通算100回、500回、1000回、1500回、2000回、2500回5000回、10000回のサイクル後の過電圧を測定した。
これらの結果を、横軸に通算サイクル回数、縦軸に過電圧としてプロットし、過電圧が上昇し始めてから上昇が止まるまでのプロット数点の近似線をとり、近似線上で過電圧が150mVとなる通算サイクル回数を算出し、逆電耐性の指標とした。
加えて、通算サイクル回数10000回後の過電圧もまた、逆電耐性の指標とした。
実施例及び比較例における評価結果を表1に示す。
Figure 2021161446
Figure 2021161446
(実施例2−1)
アルカリ水電解用電解セル、複極式電解槽を下記の通りに作製した。
−陰極−
直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材を導電性基材として、実施例4と同様にして作製した陰極を、セル面積に合わせて切り出し、実施例2−1のゼロギャップ型複極式エレメントに供した。
−隔壁、外枠−
複極式エレメントとして、陽極と陰極とを区画する隔壁と、隔壁を取り囲む外枠と、を備えたものを用いた。隔壁及び複極式エレメントのフレーム等の電解液に接液する部材の材料は、全てニッケルとした。
−陽極−
陽極としては、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用い、酸化ニッケルの造粒物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けて製作した。
−導電性弾性体−
導電性弾性体は、線径0.15mmのニッケル製ワイヤーを織ったものを、波高さ5mmになるように波付け加工したものを使用した。厚みは5mmであり、50%圧縮変形時の反発力は150g/cm2、目開きは5メッシュ程度であった。
−隔膜−
酸化ジルコニウム(商品名「EP酸化ジルコニウム」、第一稀元素化学工業社製)とN−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業社製)とを、粒径0.5mmのSUSボールが入ったボールミルポットに投入した。これらを回転数70rpmで3時間攪拌して、分散させて混合物を得た。得られた混合物を、ステンレス製のざる(網目30メッシュ)により濾過し、混合物からボールを分離した。ボールを分離した混合物にポリスルホン(「ユーデル」(登録商標)、ソルベイアドバンストポリマーズ社製)及びポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)900000、和光純薬工業社製)を加え、スリーワンモータを用いて12時間攪拌して溶解させ、以下の成分組成の塗工液を得た。
ポリスルホン:15質量部
ポリビニルピロリドン:6質量部
N−メチル−2−ピロリドン:70質量部
酸化ジルコニウム:45質量部
上記塗工液を、基材であるポリフェニレンサルファイドメッシュ(くればぁ社製、膜厚280μm、目開き358μm、繊維径150μm)の両表面に対して、コンマコータを用いて塗工厚みが各面150μmとなるよう塗工した。塗工後直ちに、塗工液を塗工した基材を、30℃の純水/イソプロパノール混合液(和光純薬工業社製、純水/イソプロパノール=50/50(v/v))を溜めた凝固浴の蒸気下へ晒した。その後直ちに、塗工液を塗工した基材を、凝固浴中へ浸漬した。そして、ポリスルホンを凝固させることで基材表面に塗膜を形成させた。その後、純水で塗膜を十分洗浄して多孔膜を得た。
この多孔膜の平均孔径は90℃の透水平均孔径で0.3μmであった。厚みは580μmであった。気孔率は43%であった。ZrO2のモード径は5.0μmであった。多孔膜の平均孔径に対する無機粒子のモード径の比(モード径/平均孔径)は2.6であった。
−ガスケット−
ガスケットは、厚み4.0mm、幅18mmの内寸504mm角の四角形状のもので、内側に平面視で電極室と同じ寸法の開口部を有し、隔膜を挿入することで保持するためのスリット構造を有するものを使用した。スリット構造は、開口部の内壁の厚み方向の中央部分に、隔壁を挿入することでこれを保持するための、0.4mmの隙間を設けた構造とした。このガスケットは、EPDMゴムを材質とし、100%変形時の引張応力が4.0MPaであった。
−ゼロギャップ型複極式エレメント−
外部ヘッダー型のゼロギャップ型セルユニット60(図示せず)は、540mm×620mmの長方形とし、陽極2aおよび陰極2cの通電面の面積は500mm×500mmとした。ゼロギャップ型複極式エレメント60の陰極側は、陰極2c、導電性弾性体2e、陰極集電体2rが積層され、陰極リブ6を介して隔壁1と接続され、電解液が流れる陰極室5cがある。また、陽極側は、陽極2aが陽極リブ6を介して隔壁1と接続され、電解液が流れる陽極室5aがある。
陽極室5aの深さ(陽極室深さ、隔壁と陽極との距離)は25mm、陰極室5cの深さ(陰極室深さ、隔壁と陰極集電体との距離)25mmとし、材質はニッケルとした。高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陽極リブ6と、高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陰極リブ6を溶接により取り付けたニッケル製の隔壁1の厚みは2mmとした。
陰極集電体2rとして、集電体として、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmで、開口率は54%であった。導電性弾性体2eを、陰極集電体2r上にスポット溶接して固定した。このゼロギャップ型複極式エレメント60を、隔膜4を保持したガスケットを介してスタックさせることで、陽極2aと陰極2cとが隔膜4に押し付けられたゼロギャップ構造Zを形成することができる。
(比較例2−1)
比較例8と同様にして作製した陰極を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にしてゼロギャップ型複極式エレメントを製造した。
(比較例2−2)
比較例10と同様にして作製した陰極を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にしてゼロギャップ型複極式エレメントを製造した。
(逆電試験2)
図2に示す順にスタックした複極式電解槽50を作製した。
実施例2−1の陽極2aを用いた陽極ターミナルセルエレメント51a、上述の隔膜4、実施例2−1のゼロギャップ型複極式エレメント2組が上述の隔膜4を挟んで重ね合わされた部分、上述の隔膜4、実施例2−1の陰極と比較例2−1の陽極とを備える複極式エレメント、上述の隔膜4、比較例2−1のゼロギャップ型複極式エレメント2組が上述の隔膜4を挟んで重ね合わされた部分、上述の隔膜4、比較例2−1の陰極と比較例2−2の陽極とを備える複極式エレメント、上述の隔膜4、比較例2−2のゼロギャップ型複極式エレメント2組が上述の隔膜4を挟んで重ね合わされた部分、上述の隔膜4、比較例2−2の陰極を用いた陰極ターミナルセルエレメント51cの順にスタックした。
上述の隔膜4が上述の陽極及び実施例2−1の陰極に接触した電解セル(ゼロギャップ構造)4個、上述の隔膜4が上述の陽極及び比較例2−1の陰極に接触した電解セル(ゼロギャップ構造)4個、上述の隔膜4が上述の陽極及び比較例2−2の陰極に接触した電解セル(ゼロギャップ構造)4個を含む、図2に示す複極式電解槽50を用いて、電解装置70を作製した。
電解装置70は、図1に示すように、複極式電解槽50と、電解液を循環させるための送液ポンプ71と、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンク72とを備え、気液分離タンク72及び複極式電解槽50には30%KOH水溶液である電解液が封入されており、送液ポンプ71により、複極式電解槽50の陽極室5a、陽極用の気液分離タンク72、陽極室5aを循環し、また、複極式電解槽50の陰極室5c、陰極用の気液分離タンク72、陰極室5cを循環している。温度は90℃に調整した。
なお、上記電解装置70は、気液分離タンク72で分離した気体が圧力計78、圧力制御弁80、酸素濃度計75又は水素濃度計76、を通して回収される。また、整流器74により電力は制御可能である。また、循環する電解液の流路には、流量計77、熱交換器79が備えられている。また、図1中の矢印は、循環液(電解液)及び気体が流れる方向を示している。
循環流路は電解液接液部には、SGP炭素鋼配管にテフロン(登録商標)ライニング内面処理を施し、20Aの配管を用いた。気液分離タンク72は、高さ1400mm、容積1m3のものを用いた。
気液分離タンク72は、高さ1400mm、容積1m3のものを使用した。
各気液分離タンク72の液量は、設計容積の50%程度とした。
外部ヘッダー式電解槽(図示せず)では、複極式エレメントの筐体となる電解枠に、電解液が流通するための外部配管(陽極入口ヘッダー10ai、陰極入口ヘッダー10ci、陽極出口ヘッダー10ao、陰極出口ヘッダー10co)が4か所設けられている。これらの各外部配管は、外部ホースで電解槽の各電極室と接続されている。
これらの配管構造を外部ヘッダー構造と呼ぶ。外部ヘッダー配管は、陰極側外部ヘッダー配管と陽極側外部ヘッダー配管とに分かれている。
そのため、各エレメント内では、陰極入口ヘッダー10ciから外部ホースを介して陰極室5cに電解液が入り、陰極室5cから外部ホースを介して陰極出口ヘッダー10coへと電解液が流れる。陽極側も同様に、陽極入口ヘッダー10aiから外部ホースを介して陽極室5aに電解液が入り、陽極室5aから外部ホースを介して陽極出口ヘッダー10aoへと電解液が流れる。外部ヘッダーの入ヘッダーは電解枠下側に、出ヘッダーは電解枠上側にあるため、電解液は、下から上へ流れる。また、電極面に対して、略垂直方向に上昇していく。各セルの外部ホースにはそれぞれ熱電対が設置されており、エレメントを通過する前後での温度差を測定できる。
本例においては、陽極室5a、陰極室5cが各9室あるため、9室それぞれに入口ヘッダーから出口ヘッダーに向かって電解液が流れる構造となっている。
陰極室5cでは、電解により水素ガスが発生し、陽極室5aでは酸素ガスが発生するため、陰極出口ヘッダー10coでは、電解液と水素ガスの混相流となり、陽極出口ヘッダー10aoでは、電解液と酸素ガスの混相流となる。
整流器74から、複極式電解槽50に対して、陰極及び陽極の面積に対して、下記電解試験1の条件で通電した。通電開始後の槽内圧力を圧力計78で測定し、陰極側圧力が50kPa、酸素側圧力が49kPaとなるとように調整した。圧力調整は、圧力計78の下流に制御弁80を設置し、これにより行った。
なお、上記電解装置70は、気液分離タンク72で分離した気体が圧力計78、圧力制御弁80、酸素濃度計75又は水素濃度計76、を通して回収される。また、整流器74により電力は制御可能である。また、循環する電解液の流路には、流量計77、熱交換器79が備えられている。
なお、整流器、酸素濃度計、水素濃度計、圧力計、送液ポンプ、気液分離タンク、水補給器等は、いずれも当該技術分野において通常使用されるものを用いて、アルカリ水電解用電解装置を作製した。
−電解試験1−
上記電解装置70を用いて、電流密度が6kA/m2となるように連続で11時間正通電し、水電解を行ったのち電解を停止した。そのままの状態で1時間保持した後、再度6kA/m2の正通電を11時間行った。正通電・停止をそれぞれ一回ずつ行うことを1サイクルの通電として、1500サイクルの通電を行った。
実施例2−1、比較例2−1、及び比較例2−2の各セルの対電圧をモニターし、対電圧の推移を記録した。このうち、陽極ターミナルエレメント51aを含むセル、陰極ターミナルセルエレメント51cを含むセルには逆電流が発生しづらいため、それらを除いた9セルについて、1500サイクル後のセル電圧を、実施例2−1、比較例2−1及び比較例2−2それぞれ3セルの平均値(V)をとって表2に比較した。
Figure 2021161446
表2に示すように、実施例2−1では1500サイクル後の3セル平均対電圧が1.80Vと初期対電圧から30mV大きくなったのに対し、比較例2−1では初期値に対して240mV対電圧が大きくなった。比較例2−2では初期値に対して260mV対電圧が大きくなった。このことは、逆電が印加されても比較例2−1及び比較例2−2より実施例2−1の方がより長期にわたって低過電圧を維持したことを意味している。
本試験では、三電極式セルの試験(実施例1〜11、比較例1〜10)に対し、1サイクル当たりの連続通電時間(電解電位の経過時間)が長いことにより、陽極に蓄積された電荷量が多く、逆電流量が多く流れる。その結果、陰極の逆電サイクルによる劣化がより顕著に発生し、過電圧の上昇が早まる傾向にある。上記セル電圧の上昇は、各陰極の逆電劣化の程度の差であり、すなわち、実施例2−1の陰極が比較例2−1や比較例2−2よりも高い逆電耐性を持つことで、長期にわたる低セル電圧に寄与したと結論付けられる。
本発明の水素発生用陰極によれば、ゼロギャップ構造を有するアルカリ水電解用複極式電解セルにおいて、通電停止時の逆電流による導電性基材表面の溶解が抑制され、導電性基材と触媒層との界面の剥離が抑制されることで、過電圧が上昇してしまうことなく、長期にわたって高いエネルギー変換効率を維持することが可能である。
2a 陽極
2c 陰極
4 隔膜
50 複極式電解槽
51a 陽極ターミナルエレメント
51c 陰極ターミナルエレメント
70 電解装置
71 送液ポンプ
72 気液分離タンク
74 整流器
75 酸素濃度計
76 水素濃度計
77 流量計
78 圧力計
79 熱交換器
80 圧力制御弁

Claims (10)

  1. 導電性基材と該導電性基材の表面上に触媒層とを有し、
    前記触媒層は、少なくとも白金と、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物とを含有し、
    前記導電性基材は、ニッケルを含む金属を含有し、
    前記ニッケルの(111)面によって回折されるX線のピーク強度をINi、前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物の(012)面によって回折されるX線のピーク強度をIZrO2としたときに、[IZrO2/INi]×100の値が0.1〜40%である
    ことを特徴とする、水素発生用陰極。
  2. 前記触媒層が、前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層と、該ジルコニウム層の表面上に前記白金を含む白金層とを含む、請求項1に記載の水素発生用陰極。
  3. 前記ジルコニウム層の平均厚みが0.007μm以上である、請求項2に記載の水素発生用陰極。
  4. 前記触媒層が、前記白金と、前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を含む、請求項1に記載の水素発生用陰極。
  5. 前記混合層の平均厚みが0.05μm以上である、請求項4に記載の水素発生用陰極。
  6. 前記結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物は、ZrとX元素(Xは、Ce、Y、Ca、及びMgからなる群から選択される少なくとも1種)との複合酸化物とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
  7. 前記白金の目付量が2〜10g/m2である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
  8. 二重層容量が0.001〜0.2F/cm2である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水素発生用陰極。
  9. 導電性基材の表面に、少なくともジルコニウムを含む塗布液を塗布し、酸素含有雰囲気において100〜700℃で熱分解することにより、結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物を含むジルコニウム層を形成し、
    前記ジルコニウム層の表面に、少なくとも白金化合物を含む塗布液を塗布し、酸素含有雰囲気において100〜700℃で熱分解することにより、前記ジルコニウム層の表面上に白金を含む白金層を形成することを特徴とする、水素発生用陰極の製造方法。
  10. 導電性基材の表面に、少なくとも白金化合物とジルコニウムとを含む塗布液を塗布し、酸素含有雰囲気において100〜800℃で熱分解することにより、白金と結晶性のジルコニウムを含む絶縁体酸化物との混合物を含む混合層を形成することを特徴とする、水素発生用陰極の製造方法。
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