JP2021158961A - アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法 - Google Patents

アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2021158961A
JP2021158961A JP2020063052A JP2020063052A JP2021158961A JP 2021158961 A JP2021158961 A JP 2021158961A JP 2020063052 A JP2020063052 A JP 2020063052A JP 2020063052 A JP2020063052 A JP 2020063052A JP 2021158961 A JP2021158961 A JP 2021158961A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ice cream
mass
frozen dessert
fatty acid
fat
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020063052A
Other languages
English (en)
Inventor
典子 村山
Noriko Murayama
友也 伊藤
Tomoya Ito
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nisshin Oillio Group Ltd
Original Assignee
Nisshin Oillio Group Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Oillio Group Ltd filed Critical Nisshin Oillio Group Ltd
Priority to JP2020063052A priority Critical patent/JP2021158961A/ja
Publication of JP2021158961A publication Critical patent/JP2021158961A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Confectionery (AREA)
  • Edible Oils And Fats (AREA)

Abstract

【課題】 食べるのに時間がかかっても垂れないアイスクリーム様冷菓、均質化やフリージングといった通常のアイスクリーム製造に必要とされる工程を実施しないアイスクリーム様冷菓の製造方法、並びに、100gあたりのエネルギーが500Kcal以上であるアイスクリーム様冷菓を提供する。【解決手段】 クリーム類、甘味料、水、及び特定の粉末油脂組成物が配合された、冷凍されたアイスクリーム様冷菓で、該アイスクリーム様冷菓100g当たりのエネルギーが500Kcal以上であることを特徴とするアイスクリーム様冷菓。【選択図】 図10

Description

本発明は、アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法に関する。
アイスクリームは、冷凍庫から取り出してすぐに食べなければ溶けて保形性がなくなるだけでなく、アイスクリーム特有のなめらかな口当たりのもととなる空気の泡がこわれてしまって、食感も悪くなってしまう食品である。
このようなアイスクリーム独特の性質により、食べるのが遅い小さい子供や高齢者がアイスクリームを食べる場合、アイスクリームが溶けて垂れる状態になってしまうので、手や洋服を汚してしまったりするという問題があった。また、老人ホーム、学校、病院等の食事を提供する施設でアイスクリームを食事と一緒に提供した場合、通常、アイスクリームは食後のデザートとして食することが多いので、食事が終わるまでアイスクリームが室温に置かれてしまい、アイスクリームを食べようとする時には溶けて保形性を保っていないという問題もあった。
また、アイスクリームは、通常、原料を均質化した後冷却し、4〜24時間エージングした後フリージングし、フリーザーから出てきた半流動性のアイスクリームを急速凍結により硬化して製造されるものである(非特許文献1)。
したがって、急速凍結機を持っていない一般家庭や食品を提供する店では、アイスクリームを手軽に製造することができなかった。
さらに、病院や介護施設では、病人や高齢者にはできるだけ高エネルギーの食品を摂取させたいという要望があった(特許文献1)。
高エネルギーな嗜好食品の例としては、高脂肪アイスクリームが挙げられる。アイスクリームには、普通脂肪アイスクリーム(約180kcal/100g)、アイスミルク(約170kcal/100g)、アクトアイス(約170kcal/100g)があるが、高脂肪アイスクリームは、これらに比べ脂肪分が多く、カロリーが約210kcal/100gと、高いのが特徴である。
しかし、高齢者や病人が、エネルギー摂取のために高脂肪アイスクリームを多量に摂取するのは難しいため、高脂肪アイスクリームよりも少ない量でエネルギーを摂取することができる、さらに脂肪分の多いアイスクリームが求められていたが、脂肪分を多くすると、口溶けの良いアイスクリームを製造できないという問題があった。
再公表WO2014/157717号公報
太田静行著、「食品加工の知識」、第2版第4刷発行、株式会社幸書房、2001年10月31日、p.289―292
本発明の目的は、食べるのに時間がかかっても垂れないアイスクリーム様冷菓を提供することである。
また、本発明の目的は、均質化やフリージングといった通常のアイスクリーム製造に必要な工程を実施しないアイスクリーム様冷菓の製造方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、100gあたりのエネルギーが500Kcal以上であるアイスクリーム様冷菓を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、原料に特定の粉末油脂組成物を使用することで、均質化やフリージングといった冷菓製造に必要な工程を実施しなくても、アイスクリームのような外観及び食感を有し、かつ、100gあたりのエネルギーが500Kcal以上であるアイスクリーム様冷菓が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
〔1〕クリーム類、甘味料、水、及び次の粉末油脂組成物が配合された、冷凍されたアイスクリーム様冷菓で、該アイスクリーム様冷菓100g当たりのエネルギーが500Kcal以上であることを特徴とするアイスクリーム様冷菓。
粉末油脂組成物:全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、
1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、
該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有し、
該炭素数xは、10〜12から選択される整数で、
該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、粉末油脂組成物
〔2〕前記クリーム類の配合量が、40〜53質量%であることを特徴とする〔1〕に記載のアイスクリーム様冷菓。
〔3〕前記粉末油脂組成物の配合量が、23〜35質量%であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のアイスクリーム様冷菓。
〔4〕エネルギー補給用であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のアイスクリーム様冷菓。
〔5〕クリーム類、甘味料、及び水と、次の粉末油脂組成物とを5〜25℃の温度下で混合後、冷凍するアイスクリーム様冷菓の製造方法であって、該クリーム類の配合量を40〜53質量%、及び該粉末油脂組成物の配合量を23〜35質量%とすることで、該アイスクリーム様冷菓100g当たりのエネルギーを500Kcal以上に調整し、かつ、均質化及びフリージングを行わずに製造することを特徴とする、アイスクリーム様冷菓の製造方法。
粉末油脂組成物:全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、
1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、
該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有し、
該炭素数xは、10〜12から選択される整数で、
該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、粉末油脂組成物
本発明によると、食べるのに時間がかかっても垂れないアイスクリーム様冷菓を提供することができる。
また、本発明によると、均質化やフリージングといった通常のアイスクリーム製造に必要な工程を実施しないアイスクリーム様冷菓の製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によると、100gあたりのエネルギーが500Kcal以上であるアイスクリーム様冷菓を提供することができる。
比較例1のアイスクリーム様冷菓原料を8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に盛り付けたときの写真である。 比較例2のアイスクリーム様冷菓原料を8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に盛り付けたときの写真である。 比較例3のアイスクリーム様冷菓原料を8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に盛り付けたときの写真である。 実施例1のアイスクリーム様冷菓原料を8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に盛り付けたときの写真である。 実施例2のアイスクリーム様冷菓原料を8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に盛り付けたときの写真である。 実施例3のアイスクリーム様冷菓原料を8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に盛り付けたときの写真である。 比較例1のアイスクリーム様冷菓原料を絞り袋に入れ、カップに絞り出したときの写真である。 比較例2のアイスクリーム様冷菓原料を絞り袋に入れ、カップに絞り出したときの写真である。 比較例3のアイスクリーム様冷菓原料を絞り袋に入れ、カップに絞り出したときの写真である。 実施例1のアイスクリーム様冷菓原料を絞り袋に入れ、カップに絞り出したときの写真である。 実施例2のアイスクリーム様冷菓原料を絞り袋に入れ、カップに絞り出したときの写真である。 実施例3のアイスクリーム様冷菓原料を絞り袋に入れ、カップに絞り出したときの写真である。 カップに入った参考例1の市販のアイスクリームを冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真である。 カップに入った比較例1のアイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真である。 カップに入った比較例2のアイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真である。 カップに入った比較例3のアイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真である。 カップに入った実施例1のアイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真である。 カップに入った実施例2のアイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真である。 カップに入った実施例3のアイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真である。 実施例1のアイスクリーム様冷菓原料が充填されたカップを、カップの底を水平にした状態で、5cmの高さから5回落下させた後の写真である。 実施例2のアイスクリーム様冷菓原料が充填されたカップを、カップの底を水平にした状態で、5cmの高さから5回落下させた後の写真である。 実施例3のアイスクリーム様冷菓原料が充填されたカップを、カップの底を水平にした状態で、5cmの高さから5回落下させた後の写真である。 比較例7のアイスクリーム様冷菓原料を混合した後の写真である。 比較例8のアイスクリーム様冷菓原料を混合した後の写真である。 比較例9のアイスクリーム様冷菓原料を混合した後の写真である。
本発明のアイスクリーム様冷菓は、クリーム類、甘味料、水、及び後述する特定の粉末油脂組成物を含有する、冷凍されたアイスクリーム様冷菓で、該アイスクリーム様冷菓100g当たりのエネルギーが、500Kcal以上である。
本発明のアイスクリーム様冷菓は、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等のように、冷凍で保管・流通を行うのが好ましい。
本発明のアイスクリーム様冷菓は、アイスクリームとは違って、冷凍庫から出しても、25℃以下の室温下であれば、保形性を保つことができるという特徴を有するものである。したがって、アイスクリームを食べるのに時間がかかってしまう子供や高齢者が時間をかけて食べても、25℃以下の室温下であれば通常のアイスクリームと違って保形性を保っているので、手や洋服を汚しにくくなる。
また、病院、介護施設、学校等の食事が提供されている施設で、本発明のアイスクリーム様冷菓を食事と一緒に提供した場合であっても、アイスクリーム様冷菓は、食事が終わるまで保形性を保っているので、おいしく食することができる。
次に、本発明に使用する粉末油脂組成物について説明をする。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、国際公開第2016/013582号に記載された粉末油脂組成物を使用することができる。
粉末油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種又はそれ以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する粉末油脂組成物であって、該炭素数xは、10〜12から選択される整数で、該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数であることを特徴とする粉末油脂組成物である。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。
本発明に使用する粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、好ましくは0.1〜0.6g/cmであり、より好ましくは0.1〜0.5g/cmであり、さらにより好ましくは0.1〜0.4g/cmである。
ここで「ゆるめ嵩密度」とは、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。
ゆるめ嵩密度(g/cm)は、ホソカワミクロン(株)のパウダテスタ(model PT−X)で測定することができる。
具体的には、パウダテスタに試料を仕込み、試料を仕込んだ上部シュートを振動させ、試料を自然落下により下部の測定用カップに落とす。測定用カップから盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100cm)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求める。
ゆるめ嵩密度(g/cm)=A(g)/100(cm
本発明に使用する粉末油脂組成物は、通常、板状結晶または球状結晶の形態を有し、好ましくは板状結晶の形態を有する。ここで、球状とは、アスペクト比が1.0以上1.1未満であることを指し、板状とは、アスペクト比が1.1以上であることを指す。なお、アスペクト比とは、粒子図形に対して、面積が最小となるように外接する長方形で囲み、その長方形の長辺の長さと短辺の長さの比と定義される。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、例えば、0.5〜200μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜50μm、殊更好ましくは、1〜30μm、殊更より好ましくは、1〜20μm、殊更さらにより好ましくは、1〜15μmの平均粒径(有効径)を有する。
本発明における平均粒径(有効径)は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276−1)に基づいて、湿式測定により測定した値(d50:粒度分布における積算値50%の粒径の測定値)である。
有効径とは、測定対象となる結晶の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザー回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状形状であっても球状形状であっても同じ原理で測定することができる。
〔粉末油脂組成物中のトリグリセリドについて〕
<XXX型トリグリセリド>
XXX型トリグリセリドは、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。そして、該炭素数xは10〜12の整数であり、10であることがより好ましい。
脂肪酸残基Xは、飽和脂肪酸残基であっても、不飽和の脂肪酸残基であってもよい。脂肪酸残基Xとして、例えば、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)の残基が挙げられる。その中でも、脂肪酸残基Xは、カプリン酸であることが好ましい。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、1種又は2種以上の種類のXXX型トリグリセリドを含むもので、1種類のXXX型トリグリセリドを含むものがより好ましい。
脂組成物中のXXX型トリグリセリドの含量は、粉末油脂組成物中の全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、65〜99質量%であり、75〜99質量%であることが好ましく、80〜99質量%であることがより好ましく、83〜98質量%であることがさらに好ましく、85〜98質量%であることがさらにより好ましく、90〜98質量%であることが最も好ましい。
<X2Y型トリグリセリド>
X2Y型トリグリセリドは、先に説明をしたXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したトリグリセリドであり、当該脂肪酸残基Yは、X2Y型トリグリセリドの1位〜3位の何れに配置していてもよい。また、1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる各脂肪酸残基Xは互いに同一であり、かつXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xとも同一である。
X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数、好ましくはy=x+2〜x+10から選択される整数、より好ましくはy=x+4〜x+8から選択される整数で、かつ22以下の整数、好ましくは20以下の整数、より好ましくは18以下の整数である。
炭素数yの脂肪酸残基Yは、1種類の脂肪酸残基でも良いが、数種類異なる脂肪酸残基であっても良い。
脂肪酸残基Yは、飽和脂肪酸残基であっても不飽和脂肪酸残基であってもよい。脂肪酸残基Yとして、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸の残基が挙げられる。その中でも脂肪酸残基Yは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸であることが好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸であることがより好ましく、ステアリン酸であることがさらに好ましい。
本発明で用いる粉末油脂組成物は、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを1種又は2種以上含み、好ましくは2種類〜5種類含み、より好ましくは3〜4種類含む。
各X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、上述の範囲内から、各X2Y型トリグリセリドごとにそれぞれ独立して選択される。例えば、本発明で用いる粉末油脂組成物を、トリカプリンとパーム核ステアリン極度硬化油とをエステル交換してX2Y型トリグリセリド製造した場合は、X2Y型トリグリセリドのxはすべて10であるが、yは12、14、16及び18の4種類あり、4種類のX2Y型トリグリセリド含む。
脂組成物中のX2Y型トリグリセリドの含量は、粉末油脂組成物中の全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、35〜1質量%であり、25〜1質量%であることが好ましく、20〜1質量%であることがより好ましく、17〜1質量%であることがさらに好ましく、15〜2質量%であることがさらにより好ましく、10〜2質量%であることが最も好ましい。なお、本発明で用いる粉末油脂組成物に複数のX2Y型トリグリセリドが含まれる場合、上記X2Y型トリグリセリドの含有量は、含まれるX2Y型トリグリセリドの合計量である。
<その他のトリグリセリド>
粉末油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。
粉末油脂組成物中のその他のトリグリセリドの含量は、粉末油脂組成物中の全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1質量%以上含有させることができて、5〜30質量%程度含まれていても問題はなく、好ましくは0〜30質量%であり、より好ましくは0〜18質量%であり、さらに好ましくは0〜15質量%であり、さらにより好ましくは0〜8質量%である。
<その他の成分>
本発明に使用する粉末油脂組成物は、上記トリグリセリドの他、任意に乳化剤、香料、脱脂粉乳、全脂粉乳、ココアパウダー、砂糖、デキストリン等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0〜70質量%、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは0〜30質量%である。
但し、本発明に使用する粉末油脂組成物は、実質的に油脂のみからなることが好ましい。ここで油脂とは、実質的にトリグリセリドのみからなるものである。また、「実質的に」とは、粉末油脂組成物中に含まれる油脂以外の成分または油脂中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、粉末油脂組成物または油脂を100質量%とした場合、例えば、0〜15質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%であることを意味する。
次に、本発明に使用する粉末油脂組成物の製造方法について説明をする。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、国際公開第2016/013582号に記載された粉末油脂組成物の製造方法により製造することができる。
本発明で用いる粉末油脂組成物は、以下の工程(a)及び工程(d)を含む製造方法によって製造することができる。また、任意の工程(c)を含んだ方法でも製造することができる。
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有し、該炭素数xは、10〜12から選択される整数で、該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、油脂組成物を調製する工程、
(c)油脂組成物の結晶化を促進させる任意の工程、
(d)前記油脂組成物を、油脂組成物の融点より低い温度で冷却して油脂組成物を結晶化する工程。
さらに、上記工程(d)では、冷却後に得られる空隙を有する固形物に衝撃(粉砕する、ほぐす、振動させる、篩にかける等)を加えることにより、粉末状の油脂組成物を得ることもできる。
また、後に詳しく説明するが、工程(a)により得られた油脂組成物が溶融状態になかった場合には、工程(a)と工程(d)の間で、油脂組成物を加熱してトリグリセリドを融解し、溶融状態の油脂組成物を得るという工程(b)を行う必要がある。
以下、工程(a)(b)(c)及び(d)について説明をする。
〔工程(a)について〕
特定のトリグリセリドを特定量含有する油脂組成物を調製する工程(a)は、以下に説明をする調製方法(1)(2)、又は(3)により行うことができる。
<工程(a):調製方法(1)>
調製方法(1)は、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換する方法である。
具体的には、原料として1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリド(1種又は2種以上)と、1位〜3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するYYY型トリグリセリド(1種又は2種以上)を入手する。それらを、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比が、90/10〜99/1となるように混合し反応原料とする。得られた反応原料をエステル交換反応することにより、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドとを含有する油脂組成物を製造する。
ここで、YYY型トリグリセリドは、1位〜3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するトリグリセリドで、当該炭素数y及び脂肪酸残基Yは、上述した通りである。
また、XXX型トリグリセリド、及びX2Y型トリグリセリドの詳細は、上述した通りである。
以下、調製方法(1)による工程(a)について詳細に説明をする。
XXX型トリグリセリド、上記YYY型トリグリセリドは、市販品を用いたり、天然油脂やその分別油脂、及びそれらの水素添加油脂中に含まれるトリグリセリドを利用することもできるが、脂肪酸又は脂肪酸誘導体とグリセリンを用いた直接合成によって得ることができる。
XXX型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Xの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)等が挙げられる。
YYY型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Yの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)等が挙げられる。
XXX型トリグリセリド及びYYY型トリグリセリドの製造は、前述の(i)〜(iii)のいずれの方法によっても製造することができるが、製造の容易さの観点から、(i)直接エステル合成又は(ii)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成による方法が好ましく、(i)直接エステル合成による方法がより好ましい。
ここで、(i)の直接エステル合成によるXXX型トリグリセリド、又はYYY型トリグリセリドの製造についてさらに詳細に説明する。
反応原料であるグリセリンと脂肪酸の仕込み割合は、製造効率の観点から、グリセリン1モルに対して脂肪酸X、又は脂肪酸Yが3〜5モルであることが好ましく、3〜4モルであることがより好ましい。
直接エステル合成の反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、例えば、120℃〜300℃が好ましく、150℃〜270℃がより好ましく、180℃〜250℃がさらに好ましい。反応を180〜250℃で行うことで、XXX型トリグリセリド、又はYYY型トリグリセリドを特に効率的に製造することができる。
直接エステル合成では、エステル化反応を促進する触媒を用いることができる。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001〜1質量%程度であることが好ましい。
また、エステル化反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物(XXX型トリグリセリド又はYYY型トリグリセリド)をさらに精製することができる。
次に、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとのエステル交換反応について説明をする。
原料であるXXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドを、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比が、90/10〜99/1、好ましくは93/7〜99/1、より好ましくは95/5〜99/1になるように混合し、反応原料を調製する。
特に、脂肪酸残基Xが炭素数10かつ脂肪酸残基Yが炭素数14〜18の場合、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比は、95/5〜99/1であることが好ましく、また、脂肪酸残基Xが炭素数12かつ脂肪酸残基Yが炭素数16〜18の場合、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比は、95/5〜99/1であることが好ましい。
反応原料には、上記XXX型トリグリセリドやYYY型トリグリセリドの他、本発明の効果を損なわない限り、その他のトリグリセリド含有させることができる。
その他のトリグリセリドとしては、例えば、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つが脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリド、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの2つが脂肪酸残基Yに置換したXY2型トリグリセリド等を挙げることができる。
その他のトリグリセリドの量は、例えば、XXX型トリグリセリド及びYYY型トリグリセリドの合計質量を100質量%とした場合、0〜15質量%であり、好ましくは0〜7質量%であり、より好ましくは0〜4質量%である。
また、上記XXX型トリグリセリドやYYY型トリグリセリドの代わりに、天然由来のトリグリセリド組成物を使用してもよい。天然由来のトリグリセリド組成物としては、例えば、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ナタネ油、ヤシ油、大豆油、ヒマワリ油、サフラワー油、パームステアリン等を挙げることができる。これらの天然由来のトリグリセリド組成物は、さらに水素添加等により改質した硬化油、部分硬化油、極度硬化油であってもよい。
上記天然由来のトリグリセリド組成物の量は、これら天然由来のトリグリセリド組成物に含まれる必要なXXX型トリグリセリド又はYYY型トリグリセリドの量に依存するが、例えば、XXX型トリグリセリドのXがカプリン酸で、YYY型トリグリセリドの由来としてパーム核ステアリン極度硬化油を使用する場合、当該パーム核ステアリン極度硬化油に含まれる1位〜3位にY残基を有するトリグリセリドが上述したYYY型トリグリセリドとして必要な量、即ちXXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10〜99/1、好ましくは93/7〜99/1、より好ましくは95/5〜98/2を満たす量で含まれることが適当である。
エステル交換反応の反応原料には、上記トリグリセリドの他、任意に部分グリセリド、抗酸化剤、乳化剤、水などの溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、得られる反応原料の質量を100質量%とした場合、その他の成分の含有量は0〜5質量%であることが好ましく、0〜2質量%でありことがより好ましく、0〜1質量%であることがさらに好ましい。
反応原料の混合は、原料を混合できるのであれば、公知のいかなる混合方法を用いてもよく、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー等で行うことができる。
混合は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱温度は、例えば、50〜120℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましく、70〜90℃であることがさらに好ましく、75〜85℃であることがさらにより好ましい。
混合は、例えば、5〜60分間行うことができ、10〜50分間行うのが好ましく、20〜40分間行うのがより好ましい。
なお、反応の触媒として酵素を使用する場合、酵素添加前に水は極力存在させないことが好ましい。酵素添加前の反応原料中の水の量は、原料全体中10質量%以下であることが好ましく、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜3質量%であることがより好ましく、0.01〜2質量%であることがさらに好ましい。
XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドとを含有する油脂組成物は、上記反応原料を、触媒の存在下でエステル交換反応することにより製造することができる。
エステル交換反応の条件には特に限定はなく、通常行われているエステル交換反応の条件を用いることができる。
エステル交換反応時の温度は、50〜120℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましく、70〜90℃であることがさらに好ましく、75〜85℃であることがさらにより好ましい。
触媒には、酵素、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド等を使用することができる。酵素としては、固定化酵素及び粉末酵素を使用できるが、酵素活性及び取扱い容易性の面から、粉末酵素であることが好ましい。
粉末酵素は、酵素含有水性液体をスプレードライ、フリーズドライ、溶剤沈澱後の乾燥などの方法で乾燥、粉末化したもので、特に限定する条件はないが、例えば、アルカリゲネス エスピー(Alcaligenes sp.)由来のリパーゼ(名糖産業株式会社、商品名リパーゼQLM)を使用することができる。
固定化酵素としては、酵素をシリカ、セライト、珪藻土、パーライト、ポリビニールアルコール、陰イオン交換樹脂、フェノール吸着樹脂、疎水性担体、陽イオン交換樹脂、キレート樹脂等の担体に固定化したものを用いることができる。
アルカリ金属アルコキシドのアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムを使用するのが好ましい。また、アルカリ土類金属アルコキシドのアルカリ土類金属としては、マグネシウム及びカルシウムを使用するのが好ましい。
アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、n−ブトキシド、t−ブトキシド等を挙げることができ、メトキシド又はエトキシドが好ましい。
具体的なアルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドとして、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等を挙げることができ、ナトリウムメトキシドを使用するのが好ましい。
これらの触媒は、1種又は2種以上を混合して使用してもよいが、酵素系の触媒とアルコキシド系の触媒は同時に使用しない方が好ましい。
触媒の添加量は、エステル交換反応が十分に進行する量であればよいが、原料であるトリグリセリドの合計質量を100質量%とした場合、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましく、0.2〜1質量%であることがさらにより好ましい。上記触媒の他、任意の助触媒を使用することができる。
触媒は、反応原料に上記所定量を1度に投入してもよいが、上記所定量の触媒を、例えば、2〜30回、好ましくは3〜20回、より好ましくは5〜15回に分けて反応原料に投入することができる。触媒を投入する時期は、上記工程(a)直後の他、1回目の触媒投入時から1〜2時間おきに投入してもよい。
エステル交換反応は、常圧下、又は減圧下の条件で、上述した加熱温度により、0.5〜50時間行うのが好ましく、1〜40時間行うのがより好ましく、5〜30時間行うのがさらに好ましく、10〜20時間行うのがさらにより好ましい。また、反応時には攪拌するのが好ましい。
<工程(a):調製方法(2)>
調製方法(2)は、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換するという調製方法(1)とは違って、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法である。
具体的には、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドの両方を製造するための原料(脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリン)を、同じ反応容器に投入し、同時かつ直接合成することで、XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を製造する。
以下、調製方法(2)による工程(a)について詳細に説明をする。
XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法としては、(iv)炭素数xである脂肪酸X及び炭素数yの脂肪酸Yとグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(v)炭素数xである脂肪酸X及び炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(vi)炭素数xである脂肪酸X及び炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドの製造は、前述の(iv)〜(vi)のいずれの方法によっても製造することができるが、製造の容易さの観点から、(iv)直接エステル合成、又は(v)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(iv)直接エステル合成がより好ましい。
ここで、(iv)の直接エステル合成による、XXX型トリグリセリド、及びX2Y型トリグリセリドXXX型トリグリセリドを含有する油脂組成物の製造についてさらに詳細に説明する。
直接エステル合成の条件は、得られる油脂組成物中のXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドの含量が、先に説明した含量することができるのであれば、特に限定されない。ただ、反応後の油脂組成物中のXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドの含量を、確実に先に説明した所望の含量にするために、次に説明をする2段階の反応を行うことが好ましい。
具体的には、1段階目の反応では、グリセリンと、炭素数yである脂肪酸Y及び炭素数xである脂肪酸Xを反応させた後、2段階目の反応では、1段階目の反応で得られた反応物に、炭素鎖xである脂肪酸Xを加えて反応をする。この2段階反応をすることにより、脂肪酸Yを余すことなくグリセリンと確実にエステル化することができ、反応系内でより確実にX2Y型グリセリドを生成させることができる。
1段階目の反応では、全グリセリド中におけるX2Y型トリグリセリドが所望の含量になるように調整するために、反応原料中の脂肪酸Yと脂肪酸Xの総モル量が、グリセリン1モルに対して、0.5〜2.8モル量であることが好ましく、0.8〜2.57モル量であることがより好ましく、1.1〜2.2モルであることが最も好ましい。
直接エステル合成の反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、120℃〜300℃であることが好ましく、150℃〜270℃であることがより好ましく、180℃〜250℃であることがさらに好ましい。特に、反応温度を180〜250℃にすることで、効率的にX2Y型トリグリセリドを製造することができる。
直接エステル合成では、エステル化反応を促進する触媒を用いても良い。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001〜1質量%程度であることが好ましい。
(iv)の直接エステル合成では、反応終了後、水洗、アルカリ脱酸、減圧脱酸、吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、反応物から触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、反応物をさらに精製することができる。
<工程(a):調製方法(3)>
調製方法(3)は、油脂組成物に、XXX型トリグリセリド及び/又はX2Y型トリグリセリドを添加することで、XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドの含有量を、所望の範囲に調製する方法である。
例えば、XXX型トリグリセリド、及びX2Y型トリグリセリドを含む油脂組成物であって、XXX型トリグリセリドの含有量が65〜99質量%を満たさない油脂組成物、X2Y型トリグリセリドの含有量が35〜1質量%を満たさない油脂組成物、又は、それら両方の含有量を満たさない油脂組成物を調製した後、それらにXXX型トリグリセリド、及び/又はX2Y型トリグリセリドを添加することで、最終的にトリグリセリド含有量を調製する方法である。
また、50〜70質量%のXXX型トリグリセリドと50〜30質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリドを添加することで、最終的に65〜99質量%のXXX型トリグリセリドと35〜1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を調製してもよい(XXX型トリグリセリドの添加による油脂組成物中のトリグリセリド含量の調製)。
さらに、この調製方法(3)には、まず、上記調製方法(1)又は(2)により、XXX型トリグリセリドを65〜99質量%とX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有する油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリド及び/又はX2Y型トリグリセリドを更に添加することによって、油脂組成物中のXXX型トリグリセリド及び/又はX2Y型トリグリセリドの含有量を、より好ましい範囲内へ調節する方法も含まれる(XXX型トリグリセリド又はX2Y型トリグリセリド添加による油脂組成物中の一層好適なトリグリセリド含量の調製)。
〔工程(b)について〕
工程(a)で得られた油脂組成物が、溶融状態であった場合には、工程(b)を行う必要はないが、工程(a)により得られた油脂組成物が、溶融状態でなかった場合には、工程(a)の後に工程(b)を行い、その後工程(d)を行う必要がある。
工程(b)は、工程(a)で得られた油脂組成物が溶融状態になかった場合に、油脂組成物を加熱して、トリグリセリドを融解し、溶融状態の油脂組成物を得る工程である。
加熱温度は、油脂組成物中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特に、XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドの両方を融解できる温度、例えば、70〜200℃であることが好ましく、75〜150℃であることがより好ましく、80〜100℃であることがさらに好ましい。
また、加熱時間は、例えば、0.5〜3時間であることが好ましく、0.5〜2時間であることがより好ましく、0.5〜1時間であることがさらに好ましい。
〔工程(d)について〕
工程(d)は、工程(a)又は工程(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、油脂組成物の融点より低い温度で冷却して油脂組成物を結晶化する工程である。
冷却は、より細かい粉末状の油脂組成物を得るために、油脂組成物を静置した状態で行うのが好ましい。
「油脂組成物の融点より低い温度」とは、例えば、油脂組成物の融点より1〜30℃低い温度であることが好ましく、1〜20℃より低い温度であることがより好ましく、1〜15℃低い温度であることがさらに好ましい。
「油脂組成物の融点より低い温度」、すなわち、工程(d)での冷却温度について、以下に炭素数xの数値ごとに具体的温度を例示する。
炭素数xが10の場合、冷却温度は、10〜30℃であることが好ましく、15〜25℃であることがより好ましく、18〜22℃であることがさらに好ましい。
炭素数xが11又は12の場合、冷却温度は、30〜40℃であることが好ましく、32〜38℃であることがより好ましく、33〜37℃であることがさらに好ましい。
冷却時間は、2時間(120分)以上であることが好ましく、4時間(240分)〜6日間であることがより好ましく、6時間〜6日間であることがさらに好ましく、6時間〜2日間であることがさらにより好ましい。特に、炭素数xが10〜12の場合には、2〜6日間冷却する場合もある。
〔工程(c)について〕
次に、工程(c)について説明をする。工程(c)は、工程(a)から工程(d)を実施する間に任意に行うことができる工程で、油脂組成物の結晶化を促進させる工程である。
なお、工程(a)から工程(d)を実施する間とは、工程(a)の実施中、工程(a)の後で工程(d)の前、又は工程(d)の実施中のことをいう。なお、工程(b)を行う場合には、工程(b)の実施中に行うこともできる。
工程(c)は、シーディング法による方法(c1)、テンパリング法による方法(c2)、予備冷却法による方法(c3)、及びこれらの方法を複数組み合わせた方法により行うことができる。
以下、これらの方法について説明をする。
まず、シーディング法による方法(c1)について説明をする。
シーディング法は、溶融状態にある油脂組成物に対して行う結晶化促進方法で、詳しくは、溶融状態にある油脂組成物に核(種)を少量添加することで油脂組成物の結晶化を促進する方法である。
具体的なシーディング法について、次に例示する。
まず、冷却する油脂組成物に含まれるXXX型トリグリセリドと同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を、結晶化の核(種)として準備する。この油脂粉末を、油脂組成物の冷却段階で、当該油脂組成物の品温が、好ましくは工程(d)の冷却温度の±0〜+10℃、好ましくは+5〜+10℃の温度に到達した時点で、まだ溶融状態にある油脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜1質量部、より好ましくは0.2〜0.8質量部添加することで、油脂組成物の結晶化を促進する。
次に、テンパリング法による方法(c2)について説明をする。
テンパリング法も、溶融状態にある油脂組成物に対して行う結晶化促進方法で、詳しくは、溶融状態にある油脂組成物を、工程(d)の冷却温度よりも低い温度で一定時間冷却した後に、工程(d)の冷却温度で冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
具体的なテンパリング法について、次に例示する。
まず、溶融状態にある油脂組成物を、工程(d)の冷却温度で静置する前に、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば、工程(d)の冷却温度よりも5〜20℃低い温度、好ましくは7〜15℃低い温度、より好ましくは8〜12℃低い温度で、好ましくは10〜120分間、より好ましくは30〜90分間冷却することにより、油脂組成物の結晶化を促進する。この場合の冷却も、油脂組成物を静置して行うのが好ましい。
次に、予備冷却法による方法(c3)について説明をする。
予備冷却法は、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、工程(d)にて冷却する前に、工程(a)又は(b)で油脂組成物を溶融状態にする温度よりも低くく、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で予備冷却する方法である。
工程(a)又は(b)で油脂組成物を溶融状態にする温度よりも低くく、工程(d)の冷却温度よりも高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2〜40℃高い温度、好ましくは3〜30℃高い温度、より好ましくは4〜30℃高い温度、さらに好ましくは5〜10℃高い温度である。この予備冷却の温度は、冷却温度に近い温度に設定するほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間をより短くすることができる。
この予備冷却法は、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げることで油脂組成物の結晶化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
工程(d)で得られた結晶化した油脂組成物は、溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固体物であるが、この空隙を有した固体物は容易に崩壊して粉末状の物質になるので、特に粉末化工程を設けなくても、結晶化した油脂組成物を容器に充填する充填工程や運搬工程で、固体物の空隙が崩壊して粉末状の物質にすることができる。
また、(d)工程で得られた空隙を有する固体物に、衝撃を与えて粉末化することもできる。衝撃を与える方法は特に限定されないが、例えば、通常の粉砕機(ハンマーミル、カッターミル等)を用いて空隙を有する固体物を粉砕する方法、空隙を有する固体物をスパチュラ、ゴムベラ、スコップ等でほぐす方法、容器に入れた空隙を有する固体物を振動させる方法、空隙を有する固体物を篩に掛けて衝撃を加える方法等が挙げられる。
このようにして、本発明に使用する粉末油脂組成物を製造することができる。
本発明のアイスクリーム様冷菓に配合する粉末油脂組成物の量は、アイスクリーム様冷菓中23〜35質量%であることが好ましく、23〜30質量%であることがより好ましく、23〜27質量%であることがさらにより好ましい。
粉末油脂組成物の配合量、及び後述するクリーム類の配合量を調整することで、アイスクリーム様冷菓の100g当たりのエネルギーを、500Kcal以上、好ましくは500〜560Kcal、より好ましくは500〜540Kcal、さらにより好ましくは500〜520Kcalにすることができる。
アイスクリーム様冷菓の100g当たりのエネルギーが、かかる範囲であると、例えば100g当たりのエネルギーが約210Kcalの高脂肪アイスクリームを同量食べた場合と比較して、約2倍量以上のエネルギーの摂取が可能となる。
したがって、本発明のアイスクリーム様冷菓は、エネルギー補給用の食品として使用することができ、例えば、高齢者や病人(腎疾患患者等)がエネルギーを摂取するのに使用することができる。
次に、本発明に使用するクリーム類について説明をする。
本発明のクリーム類には、一般社団法人日本乳業協会が公表しているクリーム類を使用することができる。かかるクリーム類としては、脂肪の種類、含有率の違い、添加物の有無などによって、種類別「クリーム」と、名称「乳又は乳製品を主要原料とする食品」の2つの分類がある。
種類別の「クリーム」は、生乳を遠心分離機にかけ軽い乳脂肪部分を分離し、加熱殺菌して作られたクリームで、乳脂肪分が18.0%以上で、植物性脂肪や乳化剤、安定剤などの添加物は一切加えられていないものである。
また、名称として「乳又は乳製品を主要原料とする食品」と表示するクリームは、乳化剤や安定剤などを加えたもので、次の3つの種類がある。
(1)脂肪が乳脂肪からなるもので、乳脂肪に、乳化剤、安定剤などを加え、分離しにくくしたり、保形性をよくしたもの。
(2)脂肪が乳脂肪と植物性脂肪の混合脂肪からなるもので、乳脂肪の一部をヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、なたね油などの植物性脂肪におきかえたもの。通常、「コンパウンドクリーム」と言われている。
(3)脂肪が植物性脂肪だけからなるもので、乳脂肪をすべて植物性脂肪におきかえ、乳成分を加えたもの。
本発明のアイスクリーム様冷菓に使用するクリーム類の配合量は、アイスクリーム様冷菓中40〜53質量%であることが好ましく、45〜53質量%であることがより好ましく、48〜52質量%であることがさらに好ましい。
このクリーム類の配合量、及び上述した粉末油脂組成物の配合量を調整することで、アイスクリーム様冷菓の100g当たりのエネルギーを、上述した範囲にすることができる。
次に、本発明に使用する甘味料について説明をする。
本発明に使用する甘味料には、砂糖、粉糖、メープルシュガー、黒糖、はちみつ、メープルシロップ、糖アルコール等の糖類や、ステビア、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム等の高甘味度甘味料を使用することができる。
本発明のアイスクリーム様冷菓に使用する甘味料の配合量は、アイスクリーム様冷菓中0.05〜20質量%であることが好ましく、0.05〜18質量%であることがより好ましく、0.1〜18質量%であることがさらにより好ましい。
次に、本発明に使用する水について説明をする。
本発明に使用する水は、飲食可能な水であれば、特に制限はなく、例えば、イオン交換水、蒸留水、水道水、滅菌水等が挙げられる。なお、本発明のアイスクリーム様冷菓の原料であるクリーム類、甘味料に含まれる水は、ここでいう水には算入しない。
本発明に使用する水の配合量は、100質量%から水以外の原料を引いた量とすることができる。すなわち、水を配合することで原料の合計量を100質量%とすれば良い。
例えば、クリーム類、甘味料、及び粉末油脂組成物を配合したアイスクリーム様冷菓の場合、水の配合量は、100質量%からクリーム類、甘味料、及び粉末油脂組成物の配合量を引いた量とする。
また、以下に説明する各種添加物を配合する場合には、100質量%からクリーム類、甘味料、粉末油脂組成物、及び各種添加物の配合量を引いた量とする。
具体的には、本発明のアイスクリーム様冷菓に使用する水の配合量は、アイスクリーム様冷菓中1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらにより好ましい。
本発明のアイスクリーム様冷菓には、通常食品に使用されている各種添加物を配合することができる。添加物は、通常アイスクリームに使用されているものを使用することができる。
添加物としては、乳化剤、増粘剤、澱粉、加工澱粉、デキストリン、抗酸化剤、着色料、香料等が挙げられる。
各種添加物について具体的に例を挙げると、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、増粘剤としては、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ジェランガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、プルラン、アルギン酸及びその塩類、ゼラチン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、香料として、バニラ、バニラペースト、バニラエッセンス、油溶性フレーバー、水溶性フレーバー等を使用することができる。
これらの添加物の配合量は、通常アイスクリームへ配合されている量であれば問題なく配合することができ、アイスクリーム様冷菓中0.1〜5質量%であることが好ましく、0.1〜4質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらにより好ましい。
次に、本発明のアイスクリーム様冷菓の製造方法について説明をする。
本発明のアイスクリーム様冷菓は、まず、先に説明をしたクリーム類、甘味料、水、及び粉末油脂組成物、必要に応じて各種添加物を混合することにより、アイスクリーム様冷菓原料を製造する。
混合は、スパチュラやホイッパー、縦型ミキサー、横型ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。また、混合は、粉末油脂組成物の融点の関係から、25℃以下の温度条件下で行うのが好ましく、5〜25℃の温度条件下で行うのがより好ましく、10〜20℃の温度条件下で行うのがさらにより好ましい。
また、混合時間は、10秒〜5分間であることが好ましく、10秒〜3分間であることがより好ましく、10秒〜2分間であることがさらに好ましい。
次に、得られたアイスクリーム様冷菓原料を、冷凍することにより製造することができる。冷凍は、アイスクリーム様冷菓原料を容器に充填後冷凍しても良いが、アイスクリーム様冷菓原料を、例えばソフトクリーム等の形状にしたものを作り、それをそのまま又はコーンと組み合わせたものを冷凍することにより製造することができる。
冷凍は、例えば、家庭用冷凍庫、業務用冷凍庫、−30℃〜−60℃の急速冷凍機を使用して行うことができる。
冷凍は、アイスクリーム様冷菓原料の水成分が冷凍する条件で行えば良く、例えば、−18℃の家庭用冷凍庫、又は業務用冷凍庫に入れて冷凍する場合には、1時間以上冷凍することが好ましく、12時間以上冷凍することがより好ましく、24時間以上冷凍することがさらにより好ましい。家庭用冷凍庫、又は業務用冷凍庫で冷凍したものを長期保管する場合には、そのまま冷凍庫で保管すれば良い。
また、例えば、−30℃〜−60℃の急速冷凍機を使用する場合には、急速冷凍機で1時間急速冷凍することが好ましく、12時間急速冷凍することがより好ましく、24時間急速冷凍することがさらにより好ましい。急速冷凍機で急速冷凍後、例えば、−18℃の家庭用冷凍庫、又は業務用冷凍庫で長期保管することができる。
このように、本発明のアイスクリーム様冷菓は、均質化やフリージングといった通常アイスクリーム製造に必要である工程を実施しなくても、冷凍するだけで作ることができるため、病院、介護施設、学校等の食事を提供する施設であっても簡単に作ることができる。
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造例1〔XXX型トリグリセリド(トリカプリン)の合成〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3000mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)288.9g(3.14mol)とカプリン酸{Palmac99−10(アシッドケム社製)}1911.2g(11.1mol;グリセリン1モルに対して3.5モル)とを仕込んだ。窒素気流下、180℃で2時間反応をさせた後、250℃に昇温し10時間反応させた。過剰のカプリン酸を170℃、400Pa(3Torr)の減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物(トリカプリン)を1505g得た。
製造例2〔粉末油脂組成物の製造〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.4g(0.482mol)と、ミリスチン酸(Palmac98−14(アシッドケム社製))25.6g(0.112mol)とカプリン酸(Palmac99−10(アシッドケム社製))265.6g(1.541mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を186g得た(x=10、y=14、XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.0質量%)。得られた反応物80gと、製造例1のトリカプリン120gを混合し原料油脂とした。得られた原料油脂を80℃で0.5時間維持して完全に融解した。
また、製造例1のトリカプリンを用いて、油脂粉末(核(種))を調製した。具体的には、製造例1のトリカプリン約100gを液体窒素で冷却固化させ、冷却固化したものを凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕することにより油脂粉末(核(種))を調製した。
次に、原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、調製した油脂粉末(核(種))を原料油脂に対して0.1質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置することで油脂組成物を結晶化し、体積が増加した空隙を有する固形物を得た(シーディング法)。得られた固体物を、スパチュラでほぐすことで粉末油脂組成物を得た。
得られた粉末油脂組成物の融点は約28℃であった。
また、以下に示す条件で、得られた粉末油脂組成物のトリグリ組成分析した結果、粉末油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位〜3位に炭素数10の脂肪酸残基X(カプリン酸残基)を有する、XXX型トリグリセリドを91.9質量%、XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基X(カプリン酸残基)の1つを炭素数14の脂肪酸残基Y(ミリスチン酸残基)に置換したX2Y型トリグリセリドを6.8質量%含有するものであった。
また、得られた粉末油脂組成物の平均粒径を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)で、レーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276−1)基づいて、湿式測定により測定した。
具体的には、粒度分布測定装置に極小容量循環器(日機装株式会社製、装置名:USVR)を取り付け、分散溶媒として水を循環させた。また、100mlビーカーに試料を0.06g、中性洗剤を0.6g入れ、スパチュラで混合し、混合後に水を30ml加え、超音波洗浄器(アイワ医科工業株式会社製、装置名:AU−16C)に1分間供したものを滴下、循環させて測定した。得られた粒度分布における積算値50%の粒径の測定値(d50)を平均粒径とした。
その結果、製造例2の粉末油脂組成物の平均粒径(d50)は、10.3μmであった。
・ゆるめ嵩密度
実施例で使用した粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度(g/cm)は、ホソカワミクロン(株)のパウダテスタ(model PT−X)で測定した。
具体的には、パウダテスタに試料を仕込み、試料を仕込んだ上部シュートを振動させ、試料を自然落下により下部の測定用カップに落とす。測定用カップから盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100cm)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めた。
ゆるめ嵩密度(g/cm)=A(g)/100(cm
その結果、製造例2の粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、0.19g/cmであった。
[分析方法]
・トリグリセリド組成
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1−ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123−1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)〜(15℃/min)〜370℃(4min hold)
比較例1〜3、実施例1〜3〔粉末油脂組成物含有アイスクリーム様冷菓の製造〕
表1及び表2に示す配合で、製造例2の粉末油脂組成物を含有するアイスクリーム様冷菓を製造した。なお、アイスクリーム様冷菓の冷凍前の製造は、20℃の恒温室で行った。
具体的には、ボールに、表1又は表2の原料をすべて入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりアイスクリーム様冷菓原料を200g製造した。
得られたアイスクリーム様冷菓原料をカップ(直径6.5cm、高さ3.5cm)に30gずつを充填した後、−18℃の冷凍庫に入れて12時間冷凍することで、アイスクリーム様冷菓を製造した。
なお、アイスクリーム様冷菓の製造では、通常のアイスクリームの製造では必要な工程である、均質化、及びフリージングを行わなかった。
また、使用したホイップ用クリームは、いわゆるコンパウンドクリームと呼ばれるもので、 森永乳業(株)社販売の商品「フレイナ10」(乳固形分4.0質量%、乳脂肪分10.0質量%、植物性脂肪分35.0質量%、総脂肪分45.0質量%)を使用した。
Figure 2021158961
Figure 2021158961
〔20℃でのアイスクリーム様冷菓原料の外観〕
比較例1〜3、実施例1〜3で得られたアイスクリーム様冷菓原料の20℃での保形性を調べるために、20℃の恒温室内で、製造したアイスクリーム様冷菓原料を容量8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バットの上に盛り付けて、その外観を目視で確認した。その時の写真を図1〜図6に示す。アイスクリーム様冷菓原料の外観について表3に示す。
Figure 2021158961
表3の結果から、実施例1〜3のアイスクリーム様冷菓原料は、冷凍保存前でも既に保形性を有しているため、通常アイスクリームの保形性を付与するために行われているフリージングを実施しなくても製造できることがわかった。
〔アイスクリーム様冷菓の経時的なさじ通りの確認試験、及び風味評価〕
(1)さじ通り試験
比較例1〜3、実施例1〜3のアイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出して、表4に示す基準に基づいて、経時的にさじ通りを調べた。結果を表5に示す。
また、比較として、市販の高脂肪アイスクリーム(ハーゲンダッツジャパン(株)社販売、商品名「ハーゲンダッツ バニラ」、乳固形分10.0質量%、乳脂肪分15.0質量%、総脂肪分23.0質量%、エネルギー244Kcal/110ml)を参考例1とし、同様にさじ通りを調べた。
具体的には、冷凍庫から出した高脂肪アイスクリームをカップ(直径6.5cm、高さ3.5cm)に30gを充填した後、−18℃の冷凍庫に入れて12時間冷凍して参考例1を製造した。
(2)風味評価
比較例1〜3、実施例1〜3のアイスクリーム様冷菓、及び参考例1の高脂肪アイスクリームを冷凍庫から取り出して、表4に示す基準に基づいて、経時的に風味評価(冷たさ、食感)を行った。結果を表6に示す。
Figure 2021158961
Figure 2021158961
Figure 2021158961
〔アイスクリーム様冷菓の経時的な垂れの確認試験〕
カップに入った比較例1〜3、実施例1〜3のアイスクリーム様冷菓、及び参考例1のアイスクリームを冷凍庫から取り出して、経時的にカップを90度傾けたときの垂れの状況を調べた。容器を傾けた時に垂れなかったものは○、垂れたものは×と評価した。垂れの確認結果を表7に示す。
また、アイスクリーム様冷菓を冷凍庫から取り出し、25℃で15分後にカップを約90度に傾けたときの写真を図13〜図19に示す。
Figure 2021158961
表7の結果から、参考例1の市販の高脂肪アイスクリームは、冷凍庫から出して10分後及び15分後には、冷凍により凍っていた水成分が溶けて保形性を失ったため、垂れが生じたと考えられる。
一方、実施例1〜3のアイスクリーム様冷菓も、同じように冷凍庫から出して10分後及び15分後には、冷凍により凍っていた水成分が溶けていたと考えられるが、保形性を保っており、垂れが生じなかった。保形性を保って垂れが生じなかったのは、粉末油脂組成物を配合したことによるものと考えられる。
また、比較例1〜3のアイスクリーム様冷菓が、参考例1と同じように垂れてしまったのは、これらの配合では、粉末油脂組成物の配合量が少なかったためと考えられる。
〔アイスクリーム様冷菓原料の充填機によるカップへの充填適性〕
100g当たりのエネルギーが500Kcal以上である実施例1〜3で得られたアイスクリーム様冷菓原料の充填機によるカップへの充填適性について、次の簡易的な方法で調べた。
具体的には、まず、アイスクリーム様冷菓原料を絞り袋に入れた後、カップ(直径6.5cm、高さ3.5cm)に30gを充填し、カップの底を水平にした状態で、5cmの高さから5回落下させた。落下させた後、カップ中のアイスクリーム様冷菓の表面が平らになるものについては、充填機を用いて充填した場合に、アイスクリーム様冷菓の表面が平らになると考えられるため、充填機によるカップへの充填適性が高いと判断した。
結果を表8に示す。
また、カップに入れたアイスクリーム様冷菓原料を落下させた後の写真を図20〜図22に示す。なお、実施例1〜3のアイスクリーム様冷菓原料のカップへの充填後(落下試験前)の写真は、図10〜図12である。
Figure 2021158961
表8の結果から、アイスクリーム様冷菓原料のカップへの充填を充填機で行う場合には、実施例1の配合のアイスクリーム様冷菓原料が適しているということがわかった。すなわち、カップへの充填を機械により大量生産する場合には、実施例1の配合のアイスクリーム様冷菓原料が適しているということがわかった。
なお、充填機を使わず、手作業でカップに充填する場合(アイスクリーム様冷菓の表面を平らにする必要がない場合)や、コーンの上に渦巻状に載せる場合には、実施例2、3のアイスクリーム様冷菓原料も好適に使用することができる。
比較例4〜6〔アイスクリーム様冷菓の製造〕
粉末油脂組成物の替わりに、市販のアイスクリーム用油脂(日清オイリオグループ(株)販売の商品「マルス10」、ヤシ油とパーム中融点画分の混合油脂)を用いて、表9に示す配合で、実施例1と同様の方法でアイスクリーム様冷菓を製造した。アイスクリーム用油脂以外の原料は、実施例1と同じ原料を使用した。
Figure 2021158961
製造した比較例4〜6のアイスクリーム様冷菓は、滑らかさがなくてザラツキがあり、油っぽく、アイスクリームとはまったく異なる食感のものであった。
比較例7〜9〔アイスクリーム様冷菓の製造〕
粉末油脂組成物の替わりに、20℃で液状の中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ(株)販売の商品「O.D.O」、トリグリセリドを構成する脂肪酸の割合(質量比)が、n−オクタン酸:n−デカン酸=75:25)を用いて、表10に示す配合で、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有するアイスクリーム様冷菓の製造を試みた。中鎖脂肪酸トリグリセリド以外の原料は、実施例1と同じ原料を使用した。
具体的には、ボールに、表10の原料をすべて入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりアイスクリーム様冷菓原料を200g製造した。得られた比較例7〜9のアイスクリーム様冷菓原料は、混合をしても中鎖脂肪酸トリグリセリドが上層に分離してしまったので、アイスクリーム様冷菓を作ることができなかった。
混合した後のアイスクリーム様冷菓原料の写真を図23〜図25に示す。
Figure 2021158961
本発明のアイスクリーム様冷菓は、食品、特に冷菓の分野で利用することができる。

Claims (5)

  1. クリーム類、甘味料、水、及び次の粉末油脂組成物が配合された、冷凍されたアイスクリーム様冷菓で、該アイスクリーム様冷菓100g当たりのエネルギーが500Kcal以上であることを特徴とするアイスクリーム様冷菓。
    粉末油脂組成物:全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、
    1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、
    該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有し、
    該炭素数xは、10〜12から選択される整数で、
    該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、粉末油脂組成物
  2. 前記クリーム類の配合量が、40〜53質量%であることを特徴とする請求項1に記載のアイスクリーム様冷菓。
  3. 前記粉末油脂組成物の配合量が、23〜35質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアイスクリーム様冷菓。
  4. エネルギー補給用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアイスクリーム様冷菓。
  5. クリーム類、甘味料、及び水と、次の粉末油脂組成物とを5〜25℃の温度下で混合後、冷凍するアイスクリーム様冷菓の製造方法であって、該クリーム類の配合量を40〜53質量%、及び該粉末油脂組成物の配合量を23〜35質量%とすることで、該アイスクリーム様冷菓100g当たりのエネルギーを500Kcal以上に調整し、かつ、均質化及びフリージングを行わずに製造することを特徴とする、アイスクリーム様冷菓の製造方法。
    粉末油脂組成物:全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、
    1位〜3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65〜99質量%と、
    該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35〜1質量%とを含有し、
    該炭素数xは、10〜12から選択される整数で、
    該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2〜x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、粉末油脂組成物
JP2020063052A 2020-03-31 2020-03-31 アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法 Pending JP2021158961A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020063052A JP2021158961A (ja) 2020-03-31 2020-03-31 アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020063052A JP2021158961A (ja) 2020-03-31 2020-03-31 アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021158961A true JP2021158961A (ja) 2021-10-11

Family

ID=78001492

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020063052A Pending JP2021158961A (ja) 2020-03-31 2020-03-31 アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021158961A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11553722B2 (en) Aerated confectionery material
JP5937771B1 (ja) 粉末油脂組成物、粉末油脂組成物を含む食品及びこれらの製造方法
US11766049B2 (en) Lipid based foam
JP3504260B2 (ja) 低カロリートリグリセリド混合物
JP6571754B2 (ja) クリーム類用粉末油脂組成物
JP6773848B2 (ja) バタークリーム用油脂組成物とそれを用いたバタークリーム
TWI548347B (zh) An oil-in-oil composition for a foamed oil-in-water emulsion, and a foamed oil-in-water type emulsion containing the fat and oil composition
NZ572526A (en) Structured glycerol esters useful as edible moisture barriers
JP6959037B2 (ja) ホイップクリーム用油脂組成物
JP2011055752A (ja) ホイップクリーム用油脂組成物
JP2018504131A (ja) 高安定性含気水中油型エマルジョン
CN100553466C (zh) 油脂组合物
TWI414245B (zh) Edible fat and oil composition
TW201218958A (en) Oil or fat composition for foamable oil-in-water type emulsion, and foamable oil-in-water type emulsion containing oil or fat composition
JP5471592B2 (ja) 常温用起泡性水中油型乳化油脂組成物
JP7114324B2 (ja) ペースト状組成物
JP2017148068A (ja) 冷感が付与された食品
JP3628638B2 (ja) チョコレート冷菓及びこれに用いるチョコレート冷菓ミックス
JP2021158961A (ja) アイスクリーム様冷菓、及びその製造方法
CN104378999A (zh) 一种香草醛和乙基香草醛的配混物在食品产品中的新用途
JPS62239949A (ja) 冷水易分散性含脂粉乳
JP5510621B1 (ja) 起泡性水中油型乳化油脂組成物
JP2019195294A (ja) 起泡性水中油型乳化物とそれを用いたホイップドクリーム
JP6639948B2 (ja) ケーキ類用粉末油脂組成物
JP2020099312A (ja) フィリング用粉末油脂組成物、及びそれを含有するフィリング

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221220

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231128

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231130

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20240521