JP2021116327A - インクジェット用インク - Google Patents

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Abstract

【課題】吐出安定性、ならびに画像形成した場合の耐ブロッキング性に優れるインクジェット用インクを提供すること。【解決手段】本発明のインクジェット用インクは、アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物と、樹脂エマルション粒子と、水とを含む。上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物はポリビニルピロリドンであることが好ましい。また上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物の重量平均分子量は5000〜50万であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インクに関する。
インクをプリンタヘッドのノズルから吐出して被印刷媒体に対し直接吹き付けて印刷する記録方法において使用されるインクには、安定に吐出した上で、画像均一性ならびに被印刷媒体に対する密着性等の機能が要求される。さらに、印刷後の媒体はロールに巻かれるため、ブロッキングが抑制されていることも必要である。近年は、環境への配慮から、上記機能を有する水性インク用インク組成物が求められている。また、非印刷媒体として、コート紙や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルムなどの非吸液性樹脂のフィルムを用いた、商業印刷向けの記録媒体への印刷が求められている。
特許文献1には、酸価が1〜100mgKOH/gのアクリル系樹脂粒子を含有してなる水性インクジェットインク用アクリル系樹脂エマルジョンであり、Hスピン拡散時間が5msで測定されるアクリル系樹脂粒子の表面領域における酸性基含有モノマーの含有モル比率(As)と、アクリル系樹脂粒子全体における酸性基含有モノマーの含有モル比率(At)との比(As/At)が9以上であることを特徴とする水性インクジェットインク用アクリル系樹脂エマルジョンならびに該エマルジョンを含む水性インクジェットインク組成物が記載されている。
上記インクの吐出安定性ならびに画像形成した場合の耐ブロッキング性についてはさらに優れたものが求められていた。
特開2014−141672号公報
従って、本発明の課題は、吐出安定性(画像均一性)ならびに画像形成した場合の耐ブロッキング性に優れたインクジェット用インクを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の水溶性高分子化合物と、樹脂エマルション粒子と、水とを含むインクジェット用インクが、水性インクに適しており、上記課題が解決できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明のインクジェット用インクは、アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物と、樹脂エマルション粒子と、水とを含む。
上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物はポリビニルピロリドンであることが好ましい。
上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物の重量平均分子量は5000〜50万であることが好ましい。
また、上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物の含有量は0.05〜10質量%であることが好ましい。
上記樹脂エマルション粒子は(メタ)アクリル系ポリマーを含有することが好ましい。
上記樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価は0〜6mgKOH/gであることが好ましい。
本発明のインクジェット用インクによれば、吐出安定性ならびに画像形成した場合の耐ブロッキング性に優れたインクジェット用インクを提供できる。
1.インクジェット用インク
本発明のインクジェット用インクは、アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物と、樹脂エマルション粒子(樹脂粒子)と、水とを含む。
1−1 アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物
本発明のインクジェット用インクは、アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物を含む。上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等が挙げられ、中でもポリビニルピロリドンが好ましい。
上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、5000〜50万が好ましく、1万〜20万がより好ましい。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8320GPC、カラム:Shodex KD−806Mを使用、キャリア溶液:DMF〕を用いて、測定された重量平均分子量(PEO換算)を意味する。
上記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物の含有量は、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
本発明のインクジェット用インクは、アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物を含むことにより、吐出安定性が優れたものとなり、且つ画像形成した場合の耐ブロッキング性も優れたものとなる。
1−2 樹脂エマルション粒子
本発明のインクジェット用インクに含まれる上記樹脂エマルション粒子は、好ましくは単官能単量体および/または多官能単量体由来の構成単位を含んでいても良い。単官能単量体および多官能単量体由来の構成単位は、単官能単量体および多官能単量体を含む単量体を重合することによって得られる。上記単官能単量体および多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
単官能単量体としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合含有単量体などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
エチレン性不飽和二重結合含有単量体としては、例えば、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、ピペリジン基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シラン基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体、スチレン系単量体、アラルキル(メタ)アクリレート、付加重合性オキサゾリンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
これらのエチレン性不飽和二重結合含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
酸基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの酸基含有単量体のなかでは、樹脂エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ピペリジン基含有単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのピペリジン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アジリジニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチルなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアジリジニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、耐水性を高める観点から、スチレンが好ましい。
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアラルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
付加重合性オキサゾリンとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの付加重合性オキサゾリンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの付加重合性オキサゾリンのなかでは、入手が容易であることから、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
好適な単官能単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、ピペリジン基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、スチレン系単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。単官能単量体のなかでは、コロナ処理されたPETやOPP等への密着性(耐スクラッチ性)をより向上させる観点から、ピペリジン基含有単量体と窒素原子含有単量体、付加重合性オキサゾリンが好ましく、中でも、ピペリジン基含有単量体、付加重合性オキサゾリンがより好ましく、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンがさらに好ましい。また、水酸基含有(メタ)アクリレートを単官能単量体として含むと、粗大粒子のないエマルション粒子が得られやすく、該エマルション粒子を含むインクの吐出安定性が優れるものとなる観点から、水酸基含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
単量体成分におけるピペリジン基含有単量体、付加重合性オキサゾリン、および水酸基含有(メタ)アクリレートの含有率は、耐候性および密着性をより向上させる観点から、それぞれ好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、耐水性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。単量体成分におけるピペリジン基含有単量体、付加重合性オキサゾリン、および水酸基含有(メタ)アクリレートの含有率は、それぞれ0.1〜30質量%であることがより好ましく、0.2〜20質量%であることがより一層好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。
なお、樹脂エマルション粒子が複数層で形成されている場合には、ピペリジン基含有単量体、および/または付加重合性オキサゾリン、および/または水酸基含有(メタ)アクリレートは、いずれの層を構成する単量体成分に含まれていてもよいが、密着性をより向上させる観点から、少なくとも最外層を構成する単量体成分に含まれていることが好ましい。したがって、単量体成分にピペリジン基含有単量体、および/または付加重合性オキサゾリン、および/または水酸基含有(メタ)アクリレートが含まれていることが好ましく、樹脂エマルション粒子が複数層で形成されている場合には、少なくとも最外層を構成する単量体成分にピペリジン基含有単量体、および/または付加重合性オキサゾリン、および/または水酸基含有(メタ)アクリレートが含まれていることが好ましく、単量体成分におけるピペリジン基含有単量体、付加重合性オキサゾリン、および水酸基含有(メタ)アクリレートの含有率がそれぞれ0.1〜30質量%であることがより好ましく、0.2〜20質量%であることがより一層好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。
多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;エチレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数2〜4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2〜50であるアルキルジ(メタ)アクリレート;エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2−(2’−ビニルオキシエトキシエチル)(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
多官能単量体のなかでは、耐ブロッキング性と密着性とを両立させる観点から、水酸基を2個有するアルキル基の炭素数が4〜8のアルキルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート、多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレートおよび多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記樹脂エマルション粒子は(メタ)アクリル系ポリマーを含有することが好ましく、またスチレン由来の構成単位を含有することがより好ましい。
(紫外線吸収性単量体由来の構成単位)
また、樹脂エマルション粒子に紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線吸収性単量体を単量体成分に含有させてもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
(架橋剤)
上記樹脂エマルション粒子には、さらに架橋剤を含有させることにより、架橋性を付与することができる。架橋剤としては、常温で架橋反応を開始するものであってもよく、熱により架橋反応を開始するものであってもよい。本発明のインクジェット用インクでは、上記樹脂エマルション粒子に架橋剤を含有させることにより、耐ブロッキング性および密着性をより向上させることができる。
好適な架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、アミノプラスト樹脂などが挙げられる。これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの架橋剤のなかでは、本発明のインクジェット用インクの保存安定性を向上させる観点から、オキサゾリン基含有化合物が好ましい。
オキサゾリン基含有化合物は、オキサゾリン基を分子中に2個以上有する化合物である。オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド、オキサゾリン環含有重合体などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。オキサゾリン基含有化合物のなかでは、反応性を向上させる観点から、水溶性のオキサゾリン基含有化合物が好ましく、水溶性のオキサゾリン環含有重合体がより好ましい。
オキサゾリン環含有重合体は、付加重合性オキサゾリンを必須成分として含み、必要に応じて付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体を含む単量体成分を重合させることにより、容易に調製することができる。
付加重合性オキサゾリンとしては、エチレン性不飽和二重結合含有単量体のところで例示のものと同様のものを好ましく採用し得る。
オキサゾリン基含有化合物は、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−500、エポクロスWS−700、エポクロスK−2010、エポクロスK−2020、エポクロスK−2030などとして商業的に容易に入手することができる。これらのなかでは、反応性を向上させる観点から、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS−500、エポクロスWS−700などの水溶性を有するオキサゾリン基含有化合物が好ましい。
イソシアネート基含有化合物は、単量体成分として用いられる水酸基含有単量体が官能基として有する水酸基と反応し得るイソシアネート基を含有する化合物である。
イソシアネート基含有化合物としては、例えば、水分散型(ブロック)ポリイソシアネートなどが挙げられる。なお、(ブロック)ポリイソシアネートとは、ポリイソシアネートおよび/またはブロックポリイソシアネートを意味する。
水分散型ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性が付与されたポリイソシアネートをアニオン性分散剤またはノニオン性分散剤で水に分散させたものなどが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート;これらのジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのポリイソシアネートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水分散型ポリイソシアネートは、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210など;住化バイエルウレタン(株)製、商品名:バイヒジュールTPLS−2032、SUB−イソシアネートL801など;三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−220など;大日精化工業(株)製、商品名:レザミンD−56などとして商業的に容易に入手することができる。
水分散型ブロックポリイソシアネートは、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾールなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのブロック化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのブロック化剤のなかでは、160℃以下の温度、好ましくは150℃以下の温度で開裂するものが望ましい。好適なブロック化剤としては、例えば、ブタノンオキシム、シクロへキサノンオキシム、3,5−ジメチルピラゾールなどが挙げられる。これらのなかでは、ブタノンオキシムがより好ましい。
水分散型ブロックポリイソシアネートは、例えば、三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートWB−720、タケネートWB−730、タケネートWB−920など;住化バイエルウレタン(株)製、商品名:バイヒジュールBL116、バイヒジュールBL5140、バイヒジュールBL5235、バイヒジュールTPLS2186、デスモジュールVPLS2310などとして商業的に容易に入手することができる。
アミノプラスト樹脂は、メラミン、グアナミンなどのアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの付加縮合物であり、アミノ樹脂とも呼ばれている。
アミノプラスト樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エーテル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミンなどのメラミン樹脂;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリルなどのグアナミン樹脂などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアミノプラスト樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アミノプラスト樹脂は、例えば、三井サイテック(株)製、商品名:マイコート506、マイコート1128、サイメル232、サイメル235、サイメル254、サイメル303、サイメル325、サイメル370、サイメル771、サイメル1170などとして商業的に容易に入手することができる。
アミノプラスト樹脂の量は、通常、樹脂エマルション粒子に含まれているポリマー成分の固形分とアミノプラスト樹脂の固形分との質量比〔ポリマー成分の固形分/アミノプラスト樹脂の固形分〕が60/40〜99/1となるように調整することが好ましい。
上記架橋剤のなかでは、コロナ処理されたPETやOPP等への密着性をより向上させる観点から、付加重合性オキサゾリンが好ましい。
なお、本発明においては、上記した架橋剤以外にも、例えば、カルボジイミド化合物;ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、チタニウム化合物、アルミニウム化合物などに代表される多価金属化合物などの架橋剤を本発明の目的が阻害されない範囲内で用いることができる。
1−2−1 樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価
本発明のインクジェット用インクに含まれる樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価は0〜6が好ましく、樹脂エマルション粒子の重合に使用される単量体の組成を調整することにより調節することができる。
樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価は、樹脂エマルション粒子1g中に存在するカルボキシル基を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂エマルション粒子に含まれる重合成分がエチレン性不飽和二重結合含有単量体であり、且つ、樹脂エマルション粒子が他のカルボキシル基を含有しない場合は、エチレン性不飽和二重結合含有単量体成分1g中に存在するカルボキシル基を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を酸価として近似することが可能である。なお、本明細書において、上記樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価は、乳化剤、開始剤におけるカルボキシル基以外の酸基由来の酸価を含まない値である。上記酸価は、0〜5であることが好ましく、0〜4であることがより好ましく、0〜1であることがさらに好ましく、0であることが特に好ましい。樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価を低くすることにより、インクとした場合の画像均一性をより優れたものとできる。
1−2−2 ガラス転移温度
上記樹脂エマルション粒子は、ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分と、ガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分とを含むことが好ましい。
ポリマー成分のガラス転移温度は、単量体成分に使用される単量体の組成を調整することにより調節することができる。
本明細書において、ポリマー成分のガラス転移温度(Tg)は、当該ポリマー成分を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmはポリマー成分を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
ポリマー成分のガラス転移温度は、例えば、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、スチレンの単独重合体では100℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、n−ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、アクリルアミドの単独重合体では165℃、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの単量体では130℃、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの単独重合体では130℃、2−[2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの単独重合体では100℃、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンの単独重合体では100℃である。
ポリマー成分のガラス転移温度は、上記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値であるが、ポリマー成分のガラス転移温度の実測値は、上記フォックス(Fox)の式に基づいて求められた値と同じであることが好ましい。ポリマー成分のガラス転移温度の実測値は、例えば、その示差走査熱量の測定によって求めることができる。
本明細書においては、ポリマー成分のガラス転移温度は、特に断りがない限り、上記式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%以下である場合には、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が10質量%を超える場合には、(メタ)アクリル系粘着性樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
示差走査熱量の測定装置としては、例えば、セイコーインスツル(株)製、品番:DSC220Cなどが挙げられる。また、示差走査熱量を測定する際、示差走査熱量(DSC)曲線を描画する方法、示差走査熱量(DSC)曲線から一次微分曲線を得る方法、スムージング処理を行なう方法、目的のピーク温度を求める方法などには特に限定がない。例えば、上記測定装置を用いた場合には、当該測定装置を用いることによって得られたデータから作図すればよい。その際、数学的処理を行なうことができる解析ソフトウェアを用いることができる。当該解析ソフトウェアとしては、例えば、解析ソフトウェア[セイコーインスツル(株)製、品番:EXSTAR6000]などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、このようにして求められたピーク温度には、上下5℃程度の作図による誤差が含まれることがある。
上記樹脂エマルション粒子は、ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分とガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分が積層されたコアシェル樹脂エマルション粒子であってもよいし、ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分と、ガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分とが均一に混合したエマルション粒子であってもよいし、ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分からなる樹脂エマルション粒子と、ガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分からなる樹脂エマルション粒子の混合物であってもよい。コアシェル樹脂エマルション粒子としては、コア部分がガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分からなり、シェル部分がガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分からなっていても良く、その逆であってもよい。樹脂エマルション粒子が、ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分とガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分とを含むことにより、基材への密着性と耐ブロッキング性を両立できる。
エマルション粒子の構造として、ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分とガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分を含む限り、たとえば実質的に均一な混合組成物であってもよいが、複層構造であることが好ましい。複層構造とは、具体的には最外層のシェル部分とその内側のコア部分とからなるコアシェル構造のことを示す。コア部分は実質的に均一な組成からなるものであっても、複層構造(さらなるコアシェル)であってもよい。コア部分は実質的に均一な組成からなるものが好ましい。
ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分とガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分との含有比は、質量比として、ガラス転移温度が55℃以上のポリマー成分:ガラス転移温度が55℃未満のポリマー成分=1:99〜70:30であることが好ましく、1:99〜40:60であることがより好ましく、1:99〜30:70であることが特に好ましい。樹脂エマルション粒子が2種類以上のポリマー成分を含む場合、平均ガラス転移温度は、0〜30℃であることが好ましい。
本発明のインクジェット用インクに含まれる樹脂エマルション粒子としては、なかでも、コア部分がガラス転移温度55℃以上のポリマー成分を含み、シェル部分がガラス転移温度55℃未満のポリマー成分を含むコアシェル樹脂エマルション粒子であることが好ましい。ここで、上記エマルション粒子が最外層のシェル部分と実質的に均一な組成のコア部分とからなる場合は、「シェル部分のガラス転移温度」および「コア部分のガラス転移温度」は文字どおりの意味であり、「コア部分」が複層からなる場合は、「シェル部分のガラス転移温度」は最外層のガラス転移温度を意味し、「コア部分のガラス転移温度」は複層からなるコア部分の平均ガラス転移温度を意味する。
コア部分のポリマー成分のガラス転移温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、90℃以上であることが特に好ましく、95℃以上であることが最も好ましい。また、上記コア部分のポリマー成分のガラス転移温度の上限としては、耐ブロッキング性の観点から、高いほど好ましいが、高すぎると成膜不良を起こす場合があり、300℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。
シェル部分のポリマー成分のガラス転移温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下であることがより好ましく、25℃以下であることがさらに好ましく、20℃以下であることがよりさらに好ましく、15℃以下であることが特に好ましく、10℃以下であることが最も好ましい。また、上記シェル部分のポリマー成分のガラス転移温度の下限としては、−70℃以上が好ましく、−50℃以上がより好ましく、−30℃以上がさらに好ましく、−20℃以上が特に好ましい。
上記コア部分のポリマー成分と上記シェル部分のポリマー成分のガラス転移温度の組み合わせとしては:
好ましくは、コア部分のポリマー成分のガラス転移温度が55℃以上(より好適にはコア部分のポリマー成分のガラス転移温度が200℃以下)、シェル部分のポリマー成分のガラス転移温度が25℃以下(より好適にはシェル部分のポリマー成分のガラス転移温度が−20℃以上)であり;
より好ましくは、コア部分のポリマー成分のガラス転移温度が90℃以上(より好適にはコア部分のポリマー成分のガラス転移温度が200℃以下)、シェル部分のポリマー成分のガラス転移温度が55℃未満(より好適にはシェル部分のポリマー成分のガラス転移温度が−20℃以上)であり;
さらに好ましくは、コア部分のポリマー成分のガラス転移温度が90℃以上(より好適にはコア部分のポリマー成分のガラス転移温度が200℃以下)、シェル部分のポリマー成分のガラス転移温度が25℃以下(より好適にはシェル部分のポリマー成分のガラス転移温度が−20℃以上)である。
上記シェル部分は、ピペリジン基含有単量体、および/または付加重合性オキサゾリン、および/または水酸基含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。シェル部分におけるピペリジン基含有単量体、付加重合性オキサゾリン、および水酸基含有(メタ)アクリレートの含有量はそれぞれ、シェル部分を構成する単量体全量100質量%に対して、0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜20質量%がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましい。
上記コア部分は、スチレン系単量体を含むことが好ましい。上記コア部分におけるスチレン系単量体の含有量は、上記コア部分を構成する単量体全量100質量%に対して、1〜70質量%が好ましい。
1−2−3 他の特性
(重量平均分子量)
本発明のインクジェット用インクでは、樹脂エマルション粒子を構成するポリマー成分の重量平均分子量は、耐水性および密着性をより向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。ポリマー成分の重量平均分子量の上限値は、成膜性および耐水性を向上させる観点から、好ましくは500万以下である。
なお、本明細書において、樹脂エマルション粒子を構成するポリマー成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて、測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
(体積平均粒子径)
本発明のインクジェット用インクに含まれる樹脂エマルション粒子の体積平均粒子径は、樹脂エマルション粒子の画像均一性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上であり、貯蔵安定性および耐水性をより向上させる観点から、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。
なお、本明細書において、樹脂エマルション粒子の体積平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380〕を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
1−2−4 樹脂エマルション粒子の製造方法
本発明のインクジェット用インクは、上述した単量体成分を乳化重合させてなるポリマー成分である樹脂エマルション粒子を含むエマルションを含有することが好ましい。
本発明のインクジェット用インクに含まれる樹脂エマルション粒子の製造方法としては、上記した単量体成分を、乳化剤の存在下で乳化重合させることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られるエマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。媒体は、あらかじめ反応容器に仕込んでおいてもよく、あるいはプレエマルションとして使用してもよい。また、媒体は、必要により、単量体成分を乳化重合させ、エマルションを製造しているときに用いてもよい。
単量体成分を乳化重合させる際には、単量体成分、乳化剤および媒体を混合した後に乳化重合を行なってもよく、単量体成分、乳化剤および媒体を撹拌することによって乳化させ、プレエマルションを調製した後に乳化重合を行なってもよく、あるいは単量体成分、乳化剤および媒体のうちの少なくとも1種類とその残部のプレエマルションとを混合して乳化重合を行なってもよい。単量体成分、乳化剤および媒体は、それぞれ一括添加してもよく、分割添加してもよく、あるいは連続滴下してもよい。
上記で得られたエマルションに含まれている樹脂エマルション粒子上に外層(シェル)用ポリマー成分からなる外層を形成させる場合には、上記エマルション中で上記と同様にして単量体成分を乳化重合させることにより、上記樹脂エマルション粒子上に外層を形成させることができる。また、上記外層(中間層)が形成された樹脂エマルション粒子上にさらに外層を形成させる場合には、上記と同様にしてエマルション中で単量体成分を乳化重合させることにより、上記樹脂エマルション粒子上にさらに他の外層用ポリマー成分からなる外層を形成させることができる。このように多段乳化重合法により、多層構造を有する樹脂エマルション粒子(コアシェル樹脂エマルション粒子)を調製することができる。
なお、コアシェル樹脂エマルション粒子を調製する際、先に内層(コア)用ポリマー成分からなる内層を形成する乳化重合を行なう前に1段または複数段の乳化重合を行なってもよく、上記内層を形成する乳化重合と上記中間層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。また、上記中間層を形成する乳化重合と上記外層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。さらに、上記外層を形成する乳化重合の後に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。
(乳化剤)
乳化重合で使用する乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩などのアリル基を有する硫酸エステルまたはその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、上記乳化剤として、耐水性と画像均一性をより向上させる観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
単量体成分100質量部あたりの乳化剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、耐水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。
(重合開始剤)
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、耐水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
(連鎖移動剤)
また、樹脂エマルション粒子の重量平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。単量体成分100質量部あたりの連鎖移動剤の量は、樹脂エマルション粒子の重量平均分子量を適切に調整する観点から、0.01〜10質量部であることが好ましい。
(他の条件)
また、反応系内には、必要により、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができない。通常、単量体成分100質量部あたりの添加剤の量は、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜3質量部程度である。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
なお、単量体成分を乳化重合させるとき、得られるポリマー成分が有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段で単量体成分を添加した後に使用してもよく、例えば、1段目の重合反応と2段目の重合反応との間に使用してもよく、初期の乳化重合反応の終了時に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミノエタノールなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、耐水性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましく、樹脂エマルション粒子の貯蔵安定性を向上させる観点から、炭酸水素ナトリウムが好ましい。中和剤は、例えば、水溶液として用いることができる。
また、単量体成分を乳化重合させるとき、耐水性を向上させる観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタアクリロイル」を意味する。
以上のようにして単量体成分を乳化重合させることにより、樹脂エマルション粒子を含むエマルションが得られる。
上記で得られた樹脂エマルション粒子上に外層を形成させる場合には、上記樹脂エマルション粒子を製造する際の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後に外層を構成する単量体成分を乳化重合させることが、樹脂エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
なお、樹脂エマルション粒子の内層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他のポリマー成分からなる層が形成されていてもよい。したがって、本発明のインクジェット用インクに含まれる樹脂エマルション粒子を製造する際には、樹脂エマルション粒子の内層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他のポリマー成分からなる層を形成させてもよい。
外層を構成するために用いられる単量体成分は、上記樹脂エマルション粒子の内層の原料として用いられる単量体成分と同様とすることができる。また、外層を形成させる際の乳化重合の方法および重合条件は、上記樹脂エマルション粒子の内層を製造する際の方法および重合条件と同様とすることができる。
以上のようにして内層および外層を有する樹脂エマルション粒子を得ることができる。なお、外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他のポリマー成分からなる表面層がさらに形成されていてもよい。
以上のようにして樹脂エマルション粒子の内層を調製した後、当該内層上に外層を形成させることにより、内層および外層を有する樹脂エマルション粒子が得られる。
1−3 水
本発明のインクジェット用インクは、水を含む水性インクである。水の含有量は、本発明のインクジェット用インク100質量部に対し、20質量%以上80質量%以下が好ましく、25質量%以上70質量%以下がより好ましい。
1−4 溶剤
本発明のインクジェット用インクは、有機溶剤を含んでいても良い。
上記有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、1,3プロパンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール;モノエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールモノプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノエチレングリコールモノブチルエーテル、モノエチレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノエチレングリコールのエーテル;モノプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノプロピレングリコールモノプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノプロピレングリコールモノブチルエーテル、モノプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のモノプロピレングリコールのエーテル;トリプロピレングリコールモノメチルエーテル;ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノイソプロピルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノイソブチルエーテル等のポリエチレングリコールのエーテル;ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノイソプロピルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノブチルエーテル、ポリプロピレングリコール(EO付加モル数=2〜10、好ましくは2〜4)のモノイソブチルエーテル等のポリプロピレングリコールのエーテルが挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルが好ましい。これらの有機溶剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記有機溶剤の含有量は、本発明のインクジェット用インク100質量部に対し、1質量%以上60質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
1−5 顔料
本発明のインクジェット用インクは、さらに顔料を含むことが好ましい。顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエローなどのアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノンなどのイソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができ、具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛などをはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウムなどの扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの体質顔料などが挙げられる。さらに、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
インクジェット用インクの不揮発分100質量部あたりの顔料の量は、本発明のインクジェット用インクから形成された印字物の隠蔽性を向上させる観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60質量部以上であり、密着性をより向上させる観点から、好ましくは90質量部以下である。
1−6 他の成分
本発明のインクジェット用インクには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、上記インクジェット用インクに含まれる樹脂エマルション粒子以外の他の樹脂エマルション粒子が含まれていてもよい。
また、本発明のインクジェット用インクには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、界面活性剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、消泡剤、染料、酸化防止剤、防腐剤、レベリング剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。例えば、アセチレングリコール系、ポリエーテル変性シリコーン系、フッ素系の界面活性剤等を添加することができる。
上記分散剤としては、イオン性の分散剤が好ましい。上記分散剤の含有量は、本発明のインクジェット用インク100質量部に対し、0.1質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
1−7 インク特性
(最低造膜温度)
本発明のインクジェット用インクの最低造膜温度は、密着性をより向上させる観点から、好ましくは40℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。
なお、本明細書において、インクジェット用インクの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上にインクジェット用インクを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工して乾燥させ、クラックが生じたときの温度を意味する。
(不揮発分量)
本発明の本発明のインクジェット用インクにおける不揮発分量は、隠蔽性または色濃度を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
なお、本明細書において、インクジェット用インクにおける不揮発分量は、インクジェット用インク1gを秤量し、熱風乾燥機で150℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔インクジェット用インクにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔インクジェット用インク1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明のインクジェット用インクは、インクジェット用の水性インクとして好適に用いることができる。また、後述の非吸液性フィルム用の水性インクとして好適に用いることができる。
特に、非吸液性フィルム用のインクジェット用の水性インクとして好適に用いることができる。
本発明の水性インクジェット用インクでは、インクジェット用の水性インクとしての使用が好ましい。また、本発明のインクジェット用インクでは、後述の非吸液性フィルム用の水性インクとしての使用が好ましい。非吸液性フィルム用のインクジェット用の水性インクとしての使用が特に好ましい。
本発明のインクジェット用インクは、特に、コート紙や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルムなどの非吸液性樹脂のフィルムを用いた、商業印刷向けの記録媒体への印刷に好適に使用できる。
[印刷物]
本発明のインクジェット用インクは、従来公知のコート紙や樹脂フィルム等の被印刷物の印刷に使用でき、印刷物とすることができる。
<被印刷物>
被印刷物としては、好ましくは、非吸液性フィルム、たとえば、非吸液性のコート紙や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルムなどの非吸液性の樹脂フィルムが挙げられる。中でも、より好ましくは、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
また、非吸液性フィルムの中でも、本発明のインクジェット用インクを印刷する表面が、コロナ処理、アンカーコート処理等により、表面を化学的または物理的に改質したものが好ましい。本発明の水性インク用インクや、本発明のインクジェット用インクにより形成された被膜との密着性がより優れたものとなる。特に好ましくは、コロナ処理した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、コロナ処理したポリエチレンテレフタレート(PET)である。
本発明のインクジェット用インクを被印刷物へ印刷した印刷物によれば、画像の均一性ならびに密着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた印刷物を提供できる。
[印刷物の製造方法]
本発明のインクジェット用インクは、インクジェット印刷に採用できる。インクジェット印刷としては、例えば、サーマル方式、ピエゾ方式、荷電偏向制御方式(連続吐出方式)等が好ましい。
本発明のインクジェット用インクを用いた印刷物の製造方法によれば、画像の均一性ならびに密着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた印刷物を製造できる印刷物の製造方法を提供できる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
<ポリマー成分のガラス転移温度>
ポリマー成分のガラス転移温度(Tg)は、当該ポリマー成分を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmはポリマー成分を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて計算から求めた。
<樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価>
樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価は、用いた単量体成分1g中に存在するカルボキシル基を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数を酸価として近似して得た。
実施例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水209部、乳化剤[(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10]の25%水溶液60部、シクロヘキシルメタクリレート100部、メチルメタクリレート250部、スチレン100部、n−ブチルアクリレート40部およびヒドロキシエチルメタクリレート10部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたりフラスコ内に均一に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水209部、乳化剤[(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10]の25%水溶液60部、アクリル酸6部、メチルメタクリレート134部、スチレン50部、2−エチルヘキシルアクリレート300部およびヒドロキシエチルメタクリレート10部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、エマルションを調製した。このエマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価は5.0mgKOH/g、エマルションに含まれている樹脂エマルション粒子を構成している内層の樹脂のガラス転移温度は78℃であり、外層樹脂のガラス転移温度は−25℃であった。最低造膜温度は0℃以下であり、平均粒子径は145nmであった。
得られたエマルション16部をホモディスパーで回転速度1000min−1にて撹拌しながら、白色ペースト25部、プロピレングリコール30部、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル10部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部、界面活性剤[信越化学工業株式会社製、KF−6011]0.2部、ポリビニルピロリドンK−30(株式会社日本触媒製、重量平均分子量7万)1部(固形分として0.5部)、および全体で100部となるようにイオン交換水を加え、更に30分間撹拌した後、3μmのフィルター[アドバンテック社製、MCP−3−C10S]で濾過することでインクジェット用インク1を調製した。
なお、白色ペーストは、脱イオン水411部、分散剤[株式会社日本触媒製、アクアリックHL−415]67部、25%アンモニア水30部、プロピレングリコール60部、酸化チタン[石原産業株式会社製、CR−95]1000部およびガラスビーズ(直径1mm)200部をディスパーで回転速度3000min−1にて120分間分散させた後、300メッシュの金網で濾過することにより調製した。
比較例1
実施例1において、ポリビニルピロリドンK−30を、アニオン性ポリアクリル酸ナトリウム(株式会社日本触媒製、アクアリックDL−522、重量平均分子量20万)2.5部(固形分として0.5部)に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット用インクC1を調製した。
比較例2
実施例1において、ポリビニルピロリドンK−30を、ノニオン性ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JC−25、重量平均分子量11万)0.5部(固形分として0.5部)に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット用インクC2を調製した。
比較例3
実施例1において、ポリビニルピロリドンK−30を、ノニオン性ポリエチレングリコール(住友精化株式会社製、PEO−1、重量平均分子量15万)0.5部(固形分として0.5部)に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット用インクC3を調製した。
比較例4
実施例1において、ポリビニルピロリドンK−30を、ポリビニルピロリドンK−85(株式会社日本触媒製、重量平均分子量110万)0.5部(固形分として0.5部)に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット用インクC4を調製した。
インクジェット印刷物の調製
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェット記録ヘッド「KJ4B−YH06WST−STDV」(京セラ株式会社製)を装備した印字評価装置(株式会社ジェネシス製)に実施例、比較例で得られたインクジェット用インクを充填した。
ヘッド電圧26V、周波数4kHz、吐出液適量12pl、ヘッド温度32℃、解像度600dpi、負圧−4.0kPaを設定した。
記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、記録媒体であるコロナ処理PET(フタムラ化学株式会社製、太閤ポリエステルフィルムFE2001)を搬送台に固定した。
印字命令を上記印字評価装置に転送し、インクジェット用インクをインクジェット記録方式で記録媒体上に、打ち込み量100%(12pl、600×600dpi)のベタ画像を印刷した。
直後に70℃の乾燥機で10秒間乾燥させた。
得られた画像を用いて以下の物性を調べた。その結果を表1に示す。なお、物性において×の評価が1つでもあるものは、不合格であると判定される。
(1)吐出安定性(画像均一性)
ベタ画像を目視観察し、以下の基準で画像の均一性を評価した。
◎:ベタ画像に白スジや色むらが生じていない。
○:ベタ画像に若干の白スジが見られる。
×:ベタ画像に白スジや色むらが顕著に生じている。
(2)耐ブロッキング性
ベタ画像を印刷した印刷物の印刷面に、コロナ未処理面のPETを重ね合わせ、25℃で2N/cmの荷重を1時間加えた後に素早く引き剥がし、以下の基準で耐ブロッキング性を評価した。
◎:全く抵抗がない
○:ほとんど抵抗がない
×:顕著に抵抗がある
(3)耐スクラッチ性(密着性)
ベタ画像を印刷した印刷物を爪でこすり、以下の基準で耐スクラッチ性(密着性)を確認した。
◎:印字面はがれが全く生じない。
○:印字面はがれがほとんど生じない。
×:印字面はがれが生じる。
Figure 2021116327
表1の結果から、実施例のインクジェット用インクは、比較例のインクジェット用インクに比べ、吐出安定性ならびに形成された画像の耐ブロッキング性に優れることが分かった。
本発明のインクジェット用インクによれば、吐出安定性ならびに形成された画像の耐ブロッキング性に優れたインクジェット用インクを提供できる。本発明のインクジェット用インクは、特に、コート紙や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルムなどの非吸液性樹脂のフィルムを用いた、商業印刷向けの記録媒体への印刷に好適に使用できる。

Claims (6)

  1. アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物と、
    樹脂エマルション粒子と、
    水と
    を含むインクジェット用インク。
  2. 前記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物がポリビニルピロリドンである
    請求項1に記載のインクジェット用インク。
  3. 前記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物の重量平均分子量が5000〜50万である
    請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
  4. 前記アミド結合を含むノニオン性の水溶性高分子化合物の含有量が0.05〜10質量%である
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  5. 前記樹脂エマルション粒子が(メタ)アクリル系ポリマーを含有する
    請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
  6. 前記樹脂エマルション粒子のカルボキシル基由来の酸価が0〜6mgKOH/gである
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
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