JP2021102915A - 直下型地震対応露出型柱脚の定着構造及び施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】震度7クラスの水平地震動と上下地震動の両方の地震力に対応する露出型柱脚の定着構造及び施工方法を提供する。【解決手段】鉄骨柱1の下端に固着されたベースプレート2の下面と基礎コンクリート3の上面との間に、平板状に固化した充填モルタル5を設け、ベースプレート2の周辺部に形成された挿通孔2aを貫通する複数のアンカーボルト6の上端部に定着用座金7と平座金8を挿通し、これらを2個のナット9で締め付け、さらに被覆鉄筋コンクリート4を基礎コンクリート3の上面に、アンカーボルト6の上端位置を超えた高さまで積層する。充填モルタル5の周面が被覆コンクリート4で完全に包囲されるので、充填モルタル5に拘束効果が働き、その圧縮耐力、曲げ耐力、変形性能が従来のものに比べて増大する。このため、震度7クラスの直下型地震のような上下地震動による衝撃的圧縮力を伴う大地震に対する耐震性能が向上する。【選択図】図1
Description
本発明は、ラーメン構造、ブレース併用ラーメン構造などの鉄骨建築物に設置される露出型柱脚に係り、特に、震度7クラスの水平動地震と直下型地震と呼ばれる上下地震動の両方に有効で耐震性能の向上した露出型柱脚の定着構造と、その施工方法に関するものである。
鉄骨建築物の柱脚は、複数本のアンカーボルトによって基礎構造物(基礎コンクリート)と緊結接合されている。地震時において、アンカーボルトに破断が生じると柱脚の破壊になり、さらには建物の倒壊に繋がる。このようなことから、柱脚は建造物にとって重要な接合部となっている。
アンカーボルトを用いた柱脚と基礎コンクリートとの接合形式は、露出型柱脚と非露出型柱脚(埋込み柱脚、根巻き柱脚など)に大別される。地震等で柱脚に負荷される応力の種類としては、軸力、曲げモーメント及びせん断力があり、これらの応力に対して柱脚接合部材及び建築構造躯体が安全であるように設計される。露出型柱脚では、軸力と曲げモーメントとせん断力をアンカーボルトで負担させる。これに対して、非露出型柱脚は、アンカーボルトにせん断力等を負担させずに鉄筋やコンクリートなどの他の構造部材に負担させる設計になっている。このことから、露出型柱脚で使用されるアンカーボルトは、非露出型柱脚のものと比較して、地震力等での応力負担の役割は大きく、より安全で慎重な設計が要求される。特に、せん断力への対応に関しては十分な配慮が必要である。近年では、非露出型柱脚に比べて施工性等に優れる露出型柱脚の採用が拡大している。
露出型柱脚の施工では、鉄骨柱の下端部に固着したベースプレートの下面とアンカーボルトの下部側が埋設されている基礎コンクリート上面との隙間に充填材として無収縮モルタルを注入し、その固化(凝固)によって形成される平板状のモルタル層(以下、充填モルタルという。)を介して柱脚と基礎との一体化が図られている。この露出型柱脚は、充填モルタルを挟んでベースプレート下面と基礎コンクリート上面とを密着させ、その摩擦抵抗等によりせん断力の伝達を行うもので、モルタルの注入、充填という比較的簡単な作業によりアンカーボルトとベースプレートとの一体化を確実に実現することができることから、強固な柱脚構造が得られる点で他の接合形式に比べて優れている。
1995年に発生した阪神・淡路大震災において、震源に近い神戸市市街地では震度7クラスの水平動地震と直下型地震が観測され、衝撃的な上下方向の地震動を伴うものであった。その当時、本発明者らが神戸市内の地震被害状況を調査した範囲内では、多くの埋込み柱脚がほとんど無被害であった一方で、在来の半固定式の露出型柱脚にはアンカーボルトの破断や基礎コンクリートに甚大な被害が生じていることが確認され、倒壊にまで至った建物も多く見られた。
上記露出型柱脚の具体的な被害状況は、上下動地震の影響が多大であったと考えられ、全てのアンカーボルトが曲げ変形を生じることなく鉛直方向に抜け出すか、あるいは引張力により破断している事例が多く確認された。アンカーボルトのサイズに着目すると、M22もしくはM24を4本から6本を使用する露出型柱脚の大半において、明らかにアンカーボルトの引張断面強度不足と判断される。また、下方向の地震動は、建物の重量を背負った柱脚の衝撃的落下エネルギーになり、ベースプレート下面の充填モルタルや基礎コンクリートの全面破壊をもたらした。これらの要因は、これまで全く想定されていなかった上下動地震力の大きさと、上下地震動に対する柱脚部材の弱さが顕在化したものと推測される。特に、アンカーボルトの破断による柱脚の落下現象は、建物の重量も付加されるため、基礎コンクリート等に対して落下エネルギーによる衝撃的圧縮応力を与え、これが柱脚被害を大きくさせた要因であると推定できる。
直下型地震のように大きな上下動を伴う地震力が露出型柱脚に負荷された場合、柱脚各部には、振動方向に応じて図7に示した4形態の応力状況が不規則に生じる。ところが、これまでの柱脚設計では基本的に水平動地震のみを対象とし、上下動地震への対応に関してほとんど考慮されていなかった。本発明者は、首都直下型地震の発生が懸念される近年の状況に鑑み、露出型柱脚のさらなる耐震性向上を目指し、上記知見を踏まえながら鋭意検討を重ねた。その結果、ベースプレート下面と基礎コンクリート上面との間隙に設置される平板状の充填モルタルが、上記衝撃的圧縮応力によって破壊され、その破壊が原因で直下の基礎コンクリートが損傷することや、構造フレームの応力バランスを崩し、構造フレームそのものの破断等に繋がるからであり、充填モルタルの補強が柱脚の耐震性に大きく影響していることを見出した。すなわち、アンカーボルトの破断を確実に回避することに加え、充填モルタルを圧縮応力に対して破壊させないことが、特に上下地震動に対してのみでなく、水平動地震によるアンカーボルトの引張力の反力となる充填モルタルの圧縮応力にも有効な手段であるとの結論に至ったのである。
ところで、露出型柱脚における充填モルタルの補強構造に関連する従来技術として、鉄骨柱がベースプレートを介して固定された基礎コンクリート上面に、さらに鉄骨柱下端のベースプレートを覆うように被覆鉄筋コンクリートを積層したものが知られている(特許文献1〜3)。特許文献1,2は同じ出願人によるものであるが、これらに記載された柱脚構造では、いずれも基礎コンクリート28上面に設けたモルタル部材100(レベルモルタル)上に鉄骨柱下端の柱脚金物24(ベースプレート)を載置し、柱脚金物24を貫通したアンカーボルト26のオネジ部にナット部材40を螺合することにより、鉄骨柱22と柱脚金物24をモルタル部材100上に固定した後、基礎コンクリート28の外周面に沿って上方に伸びる型枠部材内に生コンクリートを打設し、時間をかけて固化させることにより、被覆鉄筋コンクリート32を形成する技術である。特許文献3は、本発明者によるものであって、予め基礎コンクリート3に対して、アンカーボルト4とフープ筋9を結合した立ち上がり筋7をそれぞれの上部を残して埋設し、鉄骨柱1を基礎コンクリート3上に接合した後、立ち上がり筋7を取り囲む型枠内に被覆鉄筋コンクリート8を打設し、硬化させる技術である。この柱脚構造では、立ち上がり筋7をアンカーボルトとして機能させることにより、アンカーボルトの本数を減らす点に技術的な特徴がある。
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の技術は充填モルタルを使用せずに被覆鉄筋コンクリートとなる生コンクリートを基礎コンクリート上面に打設する際に、その生コンクリートで柱脚金物(ベースプレート)の下面と基礎コンクリート上面の隙間を埋めることになる。しかるに、モルタル材に比べて流動性が低い生コンクリートでは、柱脚金物(ベースプレート)下面側において、モルタル部材(レベルモルタル)の周囲全体を確実に密実充填することは困難である。また特許文献3に記載の技術において、立ち上がり筋は、基礎コンクリート内に埋設する梁主筋及びスターラップ筋と同時に配筋作業を行うので、その位置精度がそもそも悪く、アンカーボルトから離れすぎた場合には、アンカーボルトを補完する機能が十分に発揮されない虞がある。しかも、立ち上がり筋(異形鉄筋)は、周面の付着力で引抜耐力を確保する関係から、十分な付着長さ、すなわち基礎コンクリート上面からの突出量が必然的に長くなり、被覆鉄筋コンクリート厚も大きくならざるを得ない。また、立ち上がり筋がベースプレートの側面に沿うか、もしくは僅かに間隔をあけた位置に設置されるため、ベースプレート下面へのモルタルの注入作業がやり難く、密実充填するには不都合な状況になっている。なお、特許文献1〜3に記載の従来技術は、いずれも上下地震動を伴う直下型地震への対応に関して特に考慮されていない。
上記のとおり、露出型柱脚における充填モルタルに関しては、上記特許文献1〜3に記載の従来技術も含め、直下型地震に伴う上下地震動による衝撃的圧縮力に対して、これまでまったく検討されてこなかったのが実情である。近年、首都直下型地震の発生確率が上昇するに伴い、防災対策に大きな関心が高まっている。首都圏では、震度7クラスの水平動地震と直下型地震である上下動地震が想定されている。このような水平動地震と上下動地震はまったく異質な地震動であり、過去の阪神・淡路大地震においても水平動地震と上下地震動による建物の被害は甚大なものがあった。前述のとおり、鉄骨建築物の柱脚において、埋込み柱脚の被害はほとんど見られず、露出型柱脚には多大な被害が発生した。本発明者は、これら柱脚の被害状況の原因をさまざまな観点から追究した結果、水平動地震と上下動地震の両方の地震に対して耐震性能を高める設計と施工に関する新たな知見を得た。すなわち、本発明は充填モルタルの強度とその補強構造に着目してなされたもので、震度7クラスの水平地震動と上下地震動の両方の地震力に対応可能な露出型柱脚の定着構造及び施工方法の提供をその目的とする。
上記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明では、基礎コンクリート中に下部が埋設された降伏比が70%以下の複数のアンカーボルトに対して、アンカーボルトの挿通孔を周辺部に備え、降伏比が80%以下の鉄骨柱の下端に固着されたベースプレートを、基礎コンクリートの上面にレベルモルタルを介して載置し、アンカーボルトの上部に螺合するナットの締付けにより固定した状態で、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間に生じる隙間にモルタル材を注入し、固化した充填モルタルを介して鉄骨柱を基礎コンクリートに定着する直下型地震対応露出型柱脚の定着構造であって、アンカーボルトの曲げ降伏耐力が鉄骨柱の全塑性モーメントよりも大きく、充填モルタルの周面が基礎コンクリートの上面に積層状態で一体化した被覆鉄筋コンクリートで覆われる、という構成を採用した点に特徴がある。この場合、柱脚の降伏曲げ耐力は、ベースプレートの大きさを断面とし、引張側のアンカーボルトを鉄筋とみなした鉄筋コンクリート断面柱の降伏曲げ耐力とする。なお、請求項1に係る定着構造において、被覆鉄筋コンクリートがアンカーボルトの上端位置を超える厚さで積層された構成、すなわちアンカーボルトの上端部が被覆鉄筋コンクリート内に埋没するように積層されることが好ましい(請求項2)。
また、本願の請求項3に係る直下型地震対応露出型柱脚の施工方法では、基礎コンクリート中に下部が埋設された降伏比が70%以下の複数のアンカーボルトに対して、アンカーボルトの挿通孔を周辺部に備え、アンカーボルトの曲げ降伏耐力よりも全塑性モーメントが小さい降伏比が80%以下の鉄骨柱の下端に固着されたベースプレートを、基礎コンクリートの上面にレベルモルタルを介して載置し、アンカーボルトの上部に螺合するナットの締付けにより固定した状態でベースプレートの各側面に沿って型枠材を設置し、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間に生じる隙間にモルタル材を自重圧で注入し、固化した充填モルタルを介して鉄骨柱を基礎コンクリートに定着した後、基礎コンクリートの上面に鉄筋を配設し、充填モルタルの周面を覆うようにコンクリートを打設して被覆鉄筋コンクリートを積層する点に特徴がある。さらに、請求項3に係る施工方法において、基礎コンクリートの上面に差し筋を配置した状態でコンクリートを打設して被覆鉄筋コンクリートを積層することが好ましい(請求項4)。
これまでの一般的な露出型柱脚の定着構造では、ベースプレート下面と基礎コンクリート上面との間隙で平板状に固化した充填モルタルが、施工後でもその周面(各側面)が露出した状態に置かれる。これに対して、本発明に係る定着構造では充填モルタルの周面が被覆鉄筋コンクリートで完全に包囲されることから、充填モルタルにコンファインド効果(以下、拘束効果という。)が働く。ベースプレート直下に位置する平板状の充填モルタルに上下地震動(軸圧縮力)が作用したとき、充填モルタルは内部の微細ひび割れの進展により周面方向に拡散しようとするが、被覆鉄筋コンクリートで外側から拘束されているので、その圧縮耐力、曲げ耐力、変形性能が従来の側面が露出した状態の充填モルタルに比べて格段に高まる。
さらに、本発明における充填モルタルは、ベースプレートの周囲に沿って型枠材を設置した状態で流動性のあるモルタル材を自重圧により注入して形成される(請求項3)ものであるから、開放状態で加圧されることなく注入・充填する場合に比べて、モルタル凝固(硬化)時に拘束されることで充填モルタル自体が緻密な固化状態になり、その圧縮強度が一段と向上する。
このような充填モルタル自体の圧縮強度向上と被覆鉄筋コンクリートによる拘束効果に加え、引抜力に抵抗するアンカーボルトの曲げ降伏耐力が、鉄骨柱の全塑性モーメントより大きいため、鉄骨柱が先行して降伏するまでは、水平地震動でも上下地震動でもアンカーボルトの破断が回避される。これにより、震度7クラスの上下地震動による衝撃的圧縮力を伴う大地震に対する耐震性能が向上する。
さらに、本発明における充填モルタルは、ベースプレートの周囲に沿って型枠材を設置した状態で流動性のあるモルタル材を自重圧により注入して形成される(請求項3)ものであるから、開放状態で加圧されることなく注入・充填する場合に比べて、モルタル凝固(硬化)時に拘束されることで充填モルタル自体が緻密な固化状態になり、その圧縮強度が一段と向上する。
このような充填モルタル自体の圧縮強度向上と被覆鉄筋コンクリートによる拘束効果に加え、引抜力に抵抗するアンカーボルトの曲げ降伏耐力が、鉄骨柱の全塑性モーメントより大きいため、鉄骨柱が先行して降伏するまでは、水平地震動でも上下地震動でもアンカーボルトの破断が回避される。これにより、震度7クラスの上下地震動による衝撃的圧縮力を伴う大地震に対する耐震性能が向上する。
さらに、被覆鉄筋コンクリートをアンカーボルトの上端位置を超える厚さで基礎コンクリート上に積層した場合(請求項2)には、上記した充填モルタルに対する拘束効果のさらなる増大とともに、アンカーボルトの上端部が被覆鉄筋コンクリート内に埋没するので、鉄骨柱の下端部付近に突起物がなくなり、美観の向上にもつながる。また、本発明に係る施工方法において、基礎コンクリートの上面に差し筋を配置した状態でコンクリートを打設した場合(請求項4)には、被覆鉄筋コンクリートと基礎コンクリートが差し筋によって連結されるので両コンクリート層の一体化がより高まる。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、直下型地震対応露出型柱脚の定着構造に係る第1実施例であって、その要部を示す断面図である。本発明に係る直下型地震対応露出型柱脚の定着構造とは、従来の露出型柱脚の定着構造において、鉄骨柱1がベースプレート2を介して固定された状態の基礎コンクリート3の上面に、鉄骨柱1の下端部を包囲するように被覆鉄筋コンクリート4を適宜厚さで積層した構成である。この定着構造では、鉄骨柱1の下端に固着されたベースプレート2の下面と基礎コンクリート3の上面との間に、平板状に固化した充填モルタル5が設けられるとともに、ベースプレート2の周辺部に形成された挿通孔(過大孔)2aを貫通する複数のアンカーボルト6の上端部に後述する定着用座金7と平座金8が挿通され、これらを2個のナット9,9(シングルナットでもよい。)で締め付ける構成は、基本的に従来のものと大差はない。本発明の重要な特徴点は、さらに被覆鉄筋コンクリート4を基礎コンクリート3の上面側に積層したことにあり、この実施形態ではアンカーボルト6の上端位置をやや超えた高さ(厚さ)で設けられている。
本発明における上記アンカーボルト6とは、例えば断面積の増加や高強度素材の選択などにより引張断面の高強度化を図り、その曲げ降伏耐力が鉄骨柱1の全塑性モーメントより大きいものを使用すること、換言すれば、柱材が降伏するまではアンカーボルト6等の柱脚部材が弾性範囲内に維持されていることが重要な要件である。具体例としては、例えば降伏比が70%以下の熱間成形棒鋼が好適である。このような物性を備えたアンカーボルトであれば、大きな水平地震動及び上下動地震動に対してアンカーボルト破断を回避することができる。また、鉄骨柱1の具体例としては、例えば冷間成形角形鋼管(BCR295)や熱間成形角形鋼管(400N/mm2級鋼)などが挙げられ、地震エネルギーの吸収能力の点から降伏比が80%以下のものが好ましい。
上記鉄骨柱1(鋼管柱)の全塑性モーメント(cMy)は、柱素材の降伏点または耐力(cFy)と柱の塑性断面係数(cZp)で決定される。すなわち、cMy=cFy・cZyとなる。また、上記アンカーボルト6の曲げ降伏耐力(aMy)とは、柱脚の降伏モーメントであり、aMy=A・aFy・Lとなる。ここで、Aは引張側アンカーボルトの断面積、aFyはアンカーボルト素材の降伏点または耐力、Lはアンカーボルトから基礎コンクリート断面の反極点までの距離である。
そして、全塑性モーメントから終局モーメントまで、いわゆる塑性化領域が大きいほど地震エネルギーの吸収量が増え、耐震性に有利に働く。したがって、これら部材を適切に組み合わせることにより、柱材(鉄骨柱1)の塑性ヒンジが先行し、地震エネルギーの吸収能力が高い直下型地震対応露出型柱脚とすることができる。
しかるに、降伏比が80%を超える柱材では明確な全塑性モーメントに至らず、変形能力は極端に悪くなり、地震エネルギーの吸収能力が低下する。これは、アンカーボルトの早期降伏と地震エネルギーの集中を招き、さらにはアンカーボルトの破断に至りやすくなる。それゆえ、柱材(鉄骨柱1)の降伏比80%以下、かつアンカーボルト6の降伏比70%以下の条件で、アンカーボルト6の曲げ降伏耐力(柱脚の降伏モーメント)>柱材(鉄骨柱1)の全塑性モーメントの関係は、柱脚の終局耐力が柱材自身の保有する終局モーメントを上回り、震度7クラスの地震に堪えられるのである。
上記鉄骨柱1(鋼管柱)の全塑性モーメント(cMy)は、柱素材の降伏点または耐力(cFy)と柱の塑性断面係数(cZp)で決定される。すなわち、cMy=cFy・cZyとなる。また、上記アンカーボルト6の曲げ降伏耐力(aMy)とは、柱脚の降伏モーメントであり、aMy=A・aFy・Lとなる。ここで、Aは引張側アンカーボルトの断面積、aFyはアンカーボルト素材の降伏点または耐力、Lはアンカーボルトから基礎コンクリート断面の反極点までの距離である。
そして、全塑性モーメントから終局モーメントまで、いわゆる塑性化領域が大きいほど地震エネルギーの吸収量が増え、耐震性に有利に働く。したがって、これら部材を適切に組み合わせることにより、柱材(鉄骨柱1)の塑性ヒンジが先行し、地震エネルギーの吸収能力が高い直下型地震対応露出型柱脚とすることができる。
しかるに、降伏比が80%を超える柱材では明確な全塑性モーメントに至らず、変形能力は極端に悪くなり、地震エネルギーの吸収能力が低下する。これは、アンカーボルトの早期降伏と地震エネルギーの集中を招き、さらにはアンカーボルトの破断に至りやすくなる。それゆえ、柱材(鉄骨柱1)の降伏比80%以下、かつアンカーボルト6の降伏比70%以下の条件で、アンカーボルト6の曲げ降伏耐力(柱脚の降伏モーメント)>柱材(鉄骨柱1)の全塑性モーメントの関係は、柱脚の終局耐力が柱材自身の保有する終局モーメントを上回り、震度7クラスの地震に堪えられるのである。
さらに、従来の露出型柱脚の定着構造で外部に露出していた充填モルタル5の周面が、鉄筋で補強された被覆鉄筋コンクリート4で完全に覆われた状態になることから、上記のような充填モルタル5に対する拘束効果が働く。この拘束効果と、後述する充填モルタル5自体の高い圧縮強度とが相俟って、特にベースプレート2の直下に位置する平板状の充填モルタル5に上下地震動による軸圧縮力が作用したときでも圧壊する現象が効果的に阻止され、震度7クラスの直下型地震のような上下地震動による衝撃的圧縮力を伴う大地震に対する耐震性能が向上する。なお、本発明に係る直下型地震対応露出型柱脚の定着構造は、直下型の有無に関係なく震度7クラスの水平動地震にも適用できる。
図2は、直下型地震対応露出型柱脚の定着構造に係る第2実施例であり、第1実施例と共通する部分については同一符号で表示し、重複した説明は省略する。この場合、被覆鉄筋コンクリート4の厚さが、ベースプレート2の上面位置の高さであることが前記実施例と異なる。このような積層状態であっても充填モルタル5の周面が被覆鉄筋コンクリート4で包囲されるため、第1実施例と同様な耐震効果が期待できる。なお、被覆鉄筋コンクリート4の厚さは、少なくとも充填モルタル5の周面が露出しない状態であればよい。
次に、本発明による直下型地震対応露出型柱脚の定着構造について、図3〜6を参照しながらその施工方法を説明する。図3に示すように、アンカーフレームなどの公知の手段により、複数本のアンカーボルト6を基礎コンクリート3の所定位置に突出状態で設置し、基礎コンクリート3が硬化した後、テンプレート10を取り外し、レベルモルタル11を適宜の場所に敷設する。レベルモルタル11の高さは20〜50mm程度、好ましくは30mm程度とし、その大きさはベースプレート2を取り付ける鉄骨柱1の寸法の2/3程度とし、モルタルが充填されるアンカーボルト6の周囲に10mm以上の間隙が確保されていることを確認する。
これに続く鉄骨建て方作業として、図4に示すように、鉄骨柱1の下端部に固着されているベースプレート2のアンカーボルト挿通用の過大孔2aにアンカーボルト6を挿入しながら、レベルモルタル11上にベースプレート2を載置し、水平方向の位置調整を行う。さらに、定着用座金7の上面に平座金8を重ねた後、2個のナット9で締め付けてベースプレート2を所定の位置に固定する。
図5(a)、(b)は、次工程であるモルタルGの充填方法を示す平面図と断面図である。定着用座金7は、本発明者が開発したもので、図に示すように、表面と裏面が同じ略台形状からなる座金本体7aのほぼ中央にアンカーボルト6の挿通孔7bが形成されるとともに、座金本体7aの肉厚方向に貫通する3個の切り溝状の空気排出溝7cが、挿通孔7bを中心にして放射状(120°間隔)に設けられた形状をなしている(特許第6497422号公報参照)。これらの空気排出溝7cは、露出型柱脚の定着構造において、モルタルGをその開口部分から外部に漏出させることなく、座金本体7aの内部に留めるものであって、アンカーボルト6に挿通されナット9が螺合した状態で、ナット9の外周縁を越えてその先端側部分が露出する長さに設定されている。なお、アンカーボルト6の挿通孔7bの内径は、使用するアンカーボルト6の外径より5〜10mm程度大きく形成されている。
鉄骨柱1の建て入れが完了した後、ベースプレート2の外周面に木製、鋼製等の型枠材12を密着させて取り付ける。なお、充填する無収縮モルタル等のモルタルGが型枠材12の上部や下部から流出しないようにシールを行う。これは、モルタルGの注入圧を保持するためでもある。ベースプレート2には、あらかじめモルタルGの注入孔2bが形成されている。そして、グラウト充填用ロート13を注入孔2bに差し込み、モルタルGをゆっくりと流し入れる。モルタルGは、ベースプレート2の下面と基礎コンクリート3との隙間を満たし、この場所で固化(凝結)したモルタルGは、平板状の充填モルタル5として形成される。さらに、モルタルGはベースプレート2の挿通孔(過大孔)2aを上昇して定着用座金7の挿通孔7bにまで到達し、アンカーボルト6の周囲の隙間を確実に埋めることができる。
グラウト充填用ロート13は、モルタルGの注入時にモルタルの自重による高い注入圧(自重圧)を発生させる方法として合理的な注入方法である。ベースプレート2の下面側に注入されたモルタルGの凝結開始時点まで注入圧を維持することが重要であり、ベースプレート2の周囲などに開放部が存在する状況、あるいは何らかの原因でモルタルGの流失があると注入圧を維持できず、硬化後に所要の圧縮強度が得られない。注入時において、モルタルGは、ベースプレート2と基礎コンクリート3によって上下方向で拘束される。側面を拘束する型枠材12は、モルタルGの注入圧で破壊され、あるいは隙間が拡大してモルタルGが流失しないように堅牢に設置する必要がある。
上記モルタルG(無収縮モルタル)の配合例としては、無収縮セメントと骨材(珪砂)の重量比が50%、水セメント比は30%以下、骨材(珪砂)のサイズは2〜3mm以下である。このような配合の無収縮モルタルを狭小空間(3mm以上)に充填させることは、適度な注入圧と空気排出孔があれば可能である。ところが、2〜3mm以下の間隙では、無収縮モルタルの骨材サイズよりも狭くなることから、その入り口で骨材が止まり、セメントミルクだけが流れ出る状態になる。しばらくすると、その場所に骨材が集積して堰の状態になり、セメントミルクの流出も完全に止まる。このような無収縮モルタルの特性により、定着用座金7の空気排出溝7cの内部にもセメントミルクを注入できることから、定着用座金7の挿通孔7bとアンカーボルト6の間隙にモルタルG(無収縮モルタル)が充填されたことを確認できる。なお、無収縮モルタルの圧縮強度仕様としては60N/mm2以上が好ましく、プレミックスタイプが作業性及び品質の面から好都合である。
ところで、上記プレミックスモルタルの圧縮強度は、モルタル凝結時の配慮がないと得られない。すなわち、カタログなどに表示された数値は、標準圧縮試験法によるものであって、鋼製容器内にモルタルを注入し、容器の天端側に鋼製の重しを置いて完全な拘束(密閉)状態で凝結させた試験体の圧縮試験データである。したがって、在来の露出型柱脚で広く行われている開放状態でのモルタル注入方法では、凝結したモルタル(充填モルタル)の圧縮強度がこの数値には届かず、カタログ値よりも低い圧縮強度に止まざるを得ないのである。一般的には、高くても30N/mm2程度である。なお、プレミックスモルタルには、モルタル凝結時に膨張を促進させる薬剤が添加されているので、所定の圧縮強度(カタログ記載値)を得るためには、実質的に密閉された空間に対してモルタルを加圧状態で注入すること、すなわち拘束状態でのモルタル凝結が必須の条件となる。このように拘束状態で凝結させた充填モルタルの圧縮強度は60N/mm2以上と十分に高く、大きな水平地震動と上下地震動のいずれに対しても破壊されることがなく、有効に機能する。
無収縮モルタル等のモルタルGは、流動性の優れたもの使用することが重要である。ベースプレート2の下面全域と平座金8の直下まで完全に充填させるには、適度なモルタルGの流動速度と適度な注入圧力が必要である。これを満足する方法として、図5(b)に示すように、ある程度の高さと20mm程度の注入孔を有するグラウト充填用ロート13を使用する。モルタルGの注入作業は,グラウト充填用ロート13の頂部近くまでモルタルGで満たす。モルタルGを満たす高さは、アンカーボルト6の上端位置の高さまでを目安とする。このような条件により、グラウト充填用ロート13中のモルタルGの質量が適度な注入圧力(自重圧)となって継続的な充填が可能になり、モルタルGですべての隙間を埋めることができる。なお、モルタルGの充填に際して、グラウト充填用ロート13を用いる理由は充填圧を発生させ、その圧力をベースプレート2の外周を囲った型枠材12で確実に維持することで、モルタルGの凝固時の拘束効果を高め、モルタルの圧縮強度を高めることにつながる。
上下地震動を伴う場合は、図7に示す4つの場面が不規則に生じるため、露出型柱脚の設計に際しては、水平動地震と上下動地震の地震力がほぼ同等であると仮定し、それぞれの場面での最大耐力時を想定して柱脚部材の破断や圧縮破壊を防ぐ対策が必要である。水平地震動及び上下地震動に対するそれぞれの好ましい設計条件は、以下の通りである。
I.水平地震動
震度7クラスの水平動地震に対する適切なガイドラインは、現時点で存在しないので、本発明に係る露出型柱脚では、柱材(鉄骨柱1)が保有する終局曲げモーメントを超える柱脚の終局曲げ耐力(設計用)とすることで、震度7クラスの地震に耐えうると仮定している。さらに、本発明に係る露出型柱脚は、門型ラーメン構造での使用を前提とする。門型ラーメン構造で耐震性を確保するには、保有水平耐力とする設計が有効になる。保有水平耐力は、門型ラーメン構造において、2次水平荷重時に柱端部、梁端部を順次降伏させ、地震時のエネルギーをフレーム全体に吸収されることで耐震性を高める設計法である。この場合、柱下部を先行降伏させる柱脚部にすることで保有水平耐力とする設計が可能になる。
また、露出型柱脚の水平動地震対策(柱脚の終局耐力)として、柱材(鉄骨柱1)の降伏比(降伏強度/引張強度)が80%以下、且つアンカーボルト6の降伏比が70%以下の条件で、アンカーボルト6の曲げ降伏モーメント(aMy)が柱材(鉄骨柱1)の全塑性モーメント(cMy)を上回るものとする。このことは、震度7クラスの水平動地震を本発明に係る露出型柱脚が曲げモーメントとして受けたとき、アンカーボルト6の降伏後は、アンカーボル6と柱材(鉄骨柱1)は、それぞれの曲げモーメントの合力の効果により柱材自身が保有する最大曲げモーメントを上回る柱脚の最大曲げモーメントになり、耐震性をより高める効果になる。
なお、柱下部を含む柱脚部をアンカーボルトの曲げ降伏を先行とする構造では、アンカーボルト軸部だけで地震エネルギーを吸収せざるを得ないので、保有水平耐力となる設計が不可能である。この場合の柱脚は、ブレースに地震エネルギーの吸収を期待するブレース併用ラーメン構造が適する。
さらに、柱材(鉄骨柱1)に対するアンカーボルト6の断面比(全アンカーボルト引張強度/柱材断面の引張強度)は0.6以上とするのが好適である。水平動地震力(設計用)は、建物重量、地盤条件等で決まるが、設計する建物の詳細が確定しないと設計用地震力は明確にならない。それ故、建築の構造設計では、あらかじめ推定した構造形式や、柱や梁材、さらに柱脚を想定して暫定的な設計をするのが一般であり、その作業の繰り返しで、最適構造を決めることになる。0.6は設計用の暫定値として目安とする数値ではあるが、阪神・淡路大地震において無被害であった建物のアンカーボルトと柱材の断面比から求めたものある。
震度7クラスの水平動地震に対する適切なガイドラインは、現時点で存在しないので、本発明に係る露出型柱脚では、柱材(鉄骨柱1)が保有する終局曲げモーメントを超える柱脚の終局曲げ耐力(設計用)とすることで、震度7クラスの地震に耐えうると仮定している。さらに、本発明に係る露出型柱脚は、門型ラーメン構造での使用を前提とする。門型ラーメン構造で耐震性を確保するには、保有水平耐力とする設計が有効になる。保有水平耐力は、門型ラーメン構造において、2次水平荷重時に柱端部、梁端部を順次降伏させ、地震時のエネルギーをフレーム全体に吸収されることで耐震性を高める設計法である。この場合、柱下部を先行降伏させる柱脚部にすることで保有水平耐力とする設計が可能になる。
また、露出型柱脚の水平動地震対策(柱脚の終局耐力)として、柱材(鉄骨柱1)の降伏比(降伏強度/引張強度)が80%以下、且つアンカーボルト6の降伏比が70%以下の条件で、アンカーボルト6の曲げ降伏モーメント(aMy)が柱材(鉄骨柱1)の全塑性モーメント(cMy)を上回るものとする。このことは、震度7クラスの水平動地震を本発明に係る露出型柱脚が曲げモーメントとして受けたとき、アンカーボルト6の降伏後は、アンカーボル6と柱材(鉄骨柱1)は、それぞれの曲げモーメントの合力の効果により柱材自身が保有する最大曲げモーメントを上回る柱脚の最大曲げモーメントになり、耐震性をより高める効果になる。
なお、柱下部を含む柱脚部をアンカーボルトの曲げ降伏を先行とする構造では、アンカーボルト軸部だけで地震エネルギーを吸収せざるを得ないので、保有水平耐力となる設計が不可能である。この場合の柱脚は、ブレースに地震エネルギーの吸収を期待するブレース併用ラーメン構造が適する。
さらに、柱材(鉄骨柱1)に対するアンカーボルト6の断面比(全アンカーボルト引張強度/柱材断面の引張強度)は0.6以上とするのが好適である。水平動地震力(設計用)は、建物重量、地盤条件等で決まるが、設計する建物の詳細が確定しないと設計用地震力は明確にならない。それ故、建築の構造設計では、あらかじめ推定した構造形式や、柱や梁材、さらに柱脚を想定して暫定的な設計をするのが一般であり、その作業の繰り返しで、最適構造を決めることになる。0.6は設計用の暫定値として目安とする数値ではあるが、阪神・淡路大地震において無被害であった建物のアンカーボルトと柱材の断面比から求めたものある。
II.上下地震動
上下動地震力は、上記の設計用地震力として求めた水平動地震力に対する鉛直度地震係数として対処される。鉛直度地震係数は、0.3〜0.5の範囲で用いられ、特殊な構造(超高層建築物、ロングスパン構造)において適用されるが、阪神・淡路大地震での鉛直度係数は1.0であったと考えられ、神戸市内での露出型柱脚の甚大な被害は、上下動地震力であったとされている。
上方向地震動では、全アンカーボルトで引張力を負担する。この場合、(1)アンカーボルトが破断もしくは伸び降伏(塑性変形)することによってベースプレートと充填モルタルが離間した状態、(2)アンカーボルトが引張弾性範囲内でベースプレートと充填モルタルに離間が生じない状態に分けられる。
下方向地震力では、ベースプレートは落下挙動になる。上記(1)の状態では、落下による衝撃的圧縮荷重が負荷され充填モルタルが破壊するので許容できない。(2)の状態では、衝撃荷重であるが充填モルタルとベースプレートが離間していないため、静荷重の2倍の衝撃荷重となることが知られている(材料工学によるひずみエネルギー法)。静荷重時でのベースプレート下面の静的圧縮荷重が30N/mm2として、その2倍の60N/mm2以上を確保することで、ベースプレートから受ける衝撃的圧縮荷重による充填モルタルの破壊を防ぐことが可能になる。この場合の条件として、上方向地震力に対し、全アンカーボルトの引張応力は完全に弾性範囲内とする。
上下動地震力は、上記の設計用地震力として求めた水平動地震力に対する鉛直度地震係数として対処される。鉛直度地震係数は、0.3〜0.5の範囲で用いられ、特殊な構造(超高層建築物、ロングスパン構造)において適用されるが、阪神・淡路大地震での鉛直度係数は1.0であったと考えられ、神戸市内での露出型柱脚の甚大な被害は、上下動地震力であったとされている。
上方向地震動では、全アンカーボルトで引張力を負担する。この場合、(1)アンカーボルトが破断もしくは伸び降伏(塑性変形)することによってベースプレートと充填モルタルが離間した状態、(2)アンカーボルトが引張弾性範囲内でベースプレートと充填モルタルに離間が生じない状態に分けられる。
下方向地震力では、ベースプレートは落下挙動になる。上記(1)の状態では、落下による衝撃的圧縮荷重が負荷され充填モルタルが破壊するので許容できない。(2)の状態では、衝撃荷重であるが充填モルタルとベースプレートが離間していないため、静荷重の2倍の衝撃荷重となることが知られている(材料工学によるひずみエネルギー法)。静荷重時でのベースプレート下面の静的圧縮荷重が30N/mm2として、その2倍の60N/mm2以上を確保することで、ベースプレートから受ける衝撃的圧縮荷重による充填モルタルの破壊を防ぐことが可能になる。この場合の条件として、上方向地震力に対し、全アンカーボルトの引張応力は完全に弾性範囲内とする。
本発明による露出型柱脚の定着構造では、ベースプレート2の下面と基礎コンクリート3で挟まれた平板状の充填モルタル5の周面を被覆鉄筋コンクリート4で隙間なく包囲しているので、充填モルタル5に拘束効果が生じ、特に上下地震動を伴う直下型地震で充填モルタル5が圧壊するのが効果的に阻止され、耐震性能を高めることができる。さらに、ベースプレート2の挿通孔2aの内部においてもアンカーボルト6の周囲が拘束された空間になっているので、無収縮モルタルが密実充填状態で凝結することにより同様な拘束効果が発揮される。
図6は、モルタルの充填が完了した後、被覆鉄筋コンクリート4を積層する際の配筋状態の一例を示す断面図である。基礎コンクリート3の内部には、基礎梁下端筋31、基礎梁上端筋32、あばら筋33が埋設され、鉄骨柱1が設置される柱型部50には、複数のアンカーボルト6を囲むようにフープ筋結束用のU字形の建方筋51とフープ筋52が配筋されている。さらに、基礎梁上端筋32には、予め複数の差し筋34が直立状に結合され、基礎コンクリート3の施工に際しては、差し筋34の上部側が突出するようにコンクリートが打設される。そして、基礎コンクリート3の上面に突出する複数の差し筋34とメッシュ筋35を埋設するように被覆鉄筋コンクリート4が打設され、両コンクリート層3,4が一体化される。なお、差し筋34に代えて、あと施工タイプである差し筋アンカーを使用することも可能である。この場合には、被覆鉄筋コンクリート4を打設する前の基礎コンクリート3の上面を平坦状にすることができる。また、被覆鉄筋コンクリート4は、地震力でアンカーボルト6に引張力が生じたときに、被覆鉄筋コンクリート4でアンカーボルト6の引張力を低減させる効果も期待できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば配筋構造、柱脚構造の変更など、本発明の技術思想内でさまざまな変更実施が可能である。
本発明に係る直下型地震対応露出型柱脚の定着構造は、鉄骨造の柱脚部に使用された場合にその優位性が発揮され、震度7クラスの直下型地震に対応するものとしてさらなる展開が期待される。
1…鉄骨柱、2…ベースプレート、2a…挿通孔、2b…注入孔、3…基礎コンクリート、4…被覆鉄筋コンクリート、5…充填モルタル、6…アンカーボルト、7…定着用座金、7a…座金本体、7b…挿通孔、7c…空気排出溝、8…平座金、9…ナット、10…テンプレート、11…レベルモルタル、12…型枠材、13…グラウト充填用ロート、34…差し筋
Claims (4)
- 基礎コンクリート中に下部が埋設された降伏比が70%以下の複数のアンカーボルトに対して、該アンカーボルトの挿通孔を周辺部に備え、降伏比が80%以下の鉄骨柱の下端に固着されたベースプレートを、前記基礎コンクリートの上面にレベルモルタルを介して載置し、前記アンカーボルトの上部に螺合するナットの締付けにより固定した状態で、前記基礎コンクリートの上面と前記ベースプレートの下面との間に生じる隙間にモルタル材を注入し、固化した充填モルタルを介して前記鉄骨柱を前記基礎コンクリートに定着する直下型地震対応露出型柱脚の定着構造であって、前記アンカーボルトの曲げ降伏耐力が前記鉄骨柱の全塑性モーメントよりも大きく、前記充填モルタルの周面が、前記基礎コンクリートの上面に積層状態で一体化した被覆鉄筋コンクリートで覆われていることを特徴とする直下型地震対応露出型柱脚の定着構造。
- 前記被覆鉄筋コンクリートが、前記アンカーボルトの上端位置を超える厚さで積層されていることを特徴とする請求項1に記載の直下型地震対応露出型柱脚の定着構造。
- 基礎コンクリート中に下部が埋設された降伏比が70%以下の複数のアンカーボルトに対して、該アンカーボルトの挿通孔を周辺部に備え、前記アンカーボルトの曲げ降伏耐力よりも全塑性モーメントが小さい降伏比が80%以下の鉄骨柱の下端に固着されたベースプレートを、前記基礎コンクリートの上面にレベルモルタルを介して載置し、前記アンカーボルトの上部に螺合するナットの締付けにより固定した状態で前記ベースプレートの各側面に沿って型枠材を設置し、前記基礎コンクリートの上面と前記ベースプレートの下面との間に生じる隙間にモルタル材を自重圧で注入し、固化した充填モルタルを介して前記鉄骨柱を前記基礎コンクリートに定着した後、前記基礎コンクリートの上面に鉄筋を配設し、前記充填モルタルの周面を覆うようにコンクリートを打設して被覆鉄筋コンクリートを積層することを特徴とする直下型地震対応露出型柱脚の施工方法。
- 前記基礎コンクリートの上面に差し筋を配置した状態でコンクリートを打設して前記被覆鉄筋コンクリートを積層することを特徴とする請求項3に記載の直下型地震対応露出型柱脚の施工方法。
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CN113789782A (zh) * | 2021-10-12 | 2021-12-14 | 青岛理工大学 | 一种基础底板、抗浮锚杆及施工方法 |
CN116607770A (zh) * | 2023-04-20 | 2023-08-18 | 中国建筑第二工程局有限公司 | 一种大体积混凝土中埋入式型钢柱脚的施工方法 |
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2021
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CN113789782B (zh) * | 2021-10-12 | 2023-02-28 | 青岛理工大学 | 一种基础底板、抗浮锚杆及施工方法 |
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