JP2021085760A - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】極小さな異物の存在するフィルム領域を精度よく識別および/または除去し得ることにより、外観的特性および光学的特性に優れる光学フィルムであって、該フィルム上にさらなる層が形成される場合に該層に外観的欠陥や光学/発光特性の低下等を生じ難い光学フィルムを製造する方法を提供すること。【解決手段】a)光学特性を有する原料フィルムの表面上に、異物検出用の塗膜を形成する工程、b)前記塗膜を形成したフィルム表面に光を照射することにより、フィルム上および/または内部に存在する異物を検出し、異物の存在するフィルム領域を特定する工程、および、c)前記フィルム領域を除去して、または、前記フィルム領域にマーキングを行い、光学フィルムを得る工程を含む、光学フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
有機ELディスプレイ等の電子デバイスや有機EL素子を用いた照明デバイスなどは、光学特性を有する種々の光学フィルムが積層された光学積層体を含んで構成される。近年、特に有機ELを用いる各種デバイスにおいて、デバイス内への水蒸気等の侵入を防ぐためのガスバリア性を有する光学フィルムの有用性が高まっており、そのような光学フィルムとして、例えば、有機ELディスプレイ等の電子デバイスのフレキシブル基板に用いるのに適した、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる可撓性基材上に有機層を介して薄膜層を積層させた積層フィルムが開発されている(例えば、特許文献1)。
特開2016−68383号公報
各種デバイスを構成する光学フィルムや光学積層体には、通常、高い視認性や透明性が求められる。このため、視認性や透明性の低下を生じ、外観的欠陥の原因となり得るゴミや埃等の外部からの付着物やフィルム形成用の液状組成物に起因するゲル化物等の異物が存在するフィルム領域は、光学積層体に組み込まれる前に、好ましくは光学フィルムの製造過程において除去されることが望ましい。従来の光学フィルムの製造方法においては、一般に、カメラレンズを介して異物を検出し、該異物の存在するフィルム領域を除去している。しかしながら、従来一般的に行われているカメラレンズを介した異物の検出方法においては数十μmの大きさを有する異物は検出し得ても、10μmに満たないような、例えば1μm程度の異物を検出することは困難であった。
一方、近年、電子デバイスや照明デバイス等は薄型化の傾向にあり、これを構成する各部材についても薄型化が望まれている。例えば、有機ELディスプレイ等を構成する位相差層や偏光層などの各光学機能層の厚みが薄くなると、これらの層を形成する際に基材となる光学フィルム上に存在するより小さな異物に起因して塗布ムラや配向欠陥が生じやすくなり、視認性や透明性などの外観的欠陥のみでなく、光学特性の低下を生じる可能性がある。特に、有機EL層(有機EL素子)は、通常50〜500nm程度の膜厚で形成される非常に薄い層であり、有機EL素子を形成する際に基材として機能し得る光学フィルム(例えば、電子デバイスのフレキシブル基板として使用し得るバリアフィルム等)では、数μm程度のサイズの異物であってもそこに形成される有機EL素子に大きな影響を及ぼしやすく、これによる塗布ムラ等の問題が顕著になりやすい。
したがって、そのような微小の異物が存在するフィルム領域を精度よく識別および/または除去することにより、異物自体に起因する光学フィルムの外観的欠陥の発生を抑えるとともに、フィルム表面上に存在する異物に起因して該フィルム上に形成される種々の光学機能層や有機EL素子に生じ得る塗布ムラなどの外観的欠陥や光学/発光特性等の低下を抑制し得る光学フィルムを製造する技術が必要とされている。
本発明は、極小さな異物の存在するフィルム領域を精度よく識別および/または除去し得ることにより、外観的特性および光学的特性に優れる光学フィルムであって、該フィルム上にさらなる層が形成される場合にも該層に外観的欠陥や光学/発光特性の低下等を生じ難い光学フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]a)光学特性を有する原料フィルムの表面上に、異物検出用の塗膜を形成する工程、
b)前記塗膜を形成したフィルム表面に光を照射することにより、フィルム上および/またはフィルム内部に存在する異物を検出し、異物の存在するフィルム領域を特定する工程、および、
c)前記フィルム領域を除去して、または、前記フィルム領域にマーキングを行い、光学フィルムを得る工程
を含む、光学フィルムの製造方法。
[2]異物検出用の塗膜は、蛍光物質、着色剤、高屈折率材料および低屈折率材料からなる群から選択される少なくとも1種を含む、前記[1]に記載の製造方法。
[3]異物検出用の塗膜は、該塗膜を形成する原料フィルムの屈折率に対して、絶対値で3%以上50%以下の屈折率を有する、前記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]異物検出用の塗膜を洗浄により除去する工程を含む、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]光学特性を有する原料フィルムを製造する工程を含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]原料フィルムは長尺状である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]長尺状の原料フィルムまたは光学フィルムを枚葉体に加工することを含む、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]光学フィルムは、基材と、前記基材上に積層された無機薄膜層とを含む、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記基材が有機層を含む、前記[8]に記載の製造方法。
[10]無機薄膜層はプラズマ化学気相成長法により形成された層である、前記[8]または[9]に記載の製造方法。
[11]無機薄膜層は珪素原子、酸素原子および炭素原子を含有する、前記[8]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化する、前記[11]に記載の製造方法。
[13]光学フィルムはガスバリア性を有する、前記[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、極小さな異物の存在するフィルム領域を精度よく識別および/または除去し得ることにより、外観的特性および光学的特性に優れる光学フィルムであって、該フィルム上にさらなる層が形成される場合にも該層に外観的欠陥や光学/発光特性の低下等を生じ難い光学フィルムを製造する方法を提供することができる。
実施例で使用した光学フィルムの製造装置を示す模式図である。 本発明の製造方法で製造した光学フィルムに積層する有機EL素子の断面模式図である。 本発明の製造方法で製造した光学フィルムに積層する有機EL素子を封止基板側からみた模式図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法は、
a)光学特性を有する原料フィルムの表面上に、異物検出用の塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう、
b)前記塗膜を形成したフィルム表面に光を照射することにより、フィルム上および/またはフィルム内部に存在する異物を検出し、異物の存在するフィルム領域を特定する工程(以下、「異物検出工程」ともいう)、および、
c)前記フィルム領域を除去して、または、前記フィルム領域にマーキングを行い、光学フィルムを得る工程(以下、「異物除去工程」ともいう)
を含む。
本発明の塗膜形成工程において異物検出用の塗膜は、例えば、異物を検出すべき対象とする原料フィルムの表面上に、異物を検出するために機能し得る少なくとも1種の成分を含む組成物(以下、「塗膜形成用組成物」ともいう)を塗布し、必要に応じてこれを乾燥、硬化させることにより形成することができる。異物検出用塗膜の形成は、異物を検出すべき原料フィルムの表面に形成すればよく、原料フィルムの片面のみに形成しても、両面に形成してもよい。例えば、本発明の製造方法により得られる光学フィルムが、後に有機EL素子など他の層が形成される光学フィルムとして利用される場合には、少なくとも前記層が形成される側の表面に異物検出用塗膜を形成することが好ましい。
本発明において、塗膜形成用組成物は、原料光学フィルム上に存在する微小の異物を検出し得る塗膜を形成できる組成物である限り、その組成は特に限定されるものではない。異物検出用塗膜、および該塗膜を形成する組成物は、通常、異物を検出するために機能し得る少なくとも1種の成分を含む。そのような成分としては、例えば、光を照射した際に異物に起因して異物が存在するフィルム領域に蛍光ムラや色ムラ、塗布膜厚ムラに起因する光学干渉により生じる虹ムラ、屈折率差により光を散乱させ実際の異物サイズより大きく見せる効果、内部ヘイズ変化、微小表面凹凸による外部ヘイズ変化等を生じさせる物質を用いることができる。具体的には、例えば、蛍光物質、着色剤、高屈折率材料、低屈折率材料等が挙げられる。加えて、高平坦材料、耐擦傷性材料、防汚性材料、耐指紋材料、帯電防止材料、導電性物質等の、異物検出用塗膜として機能するだけではなく、光学フィルムにおいて機能層としても機能し得る膜を構成し得る材料を用いることもできる。中でも、異物検出用の塗膜および/または塗膜形成用組成物が、蛍光物質、着色剤、高屈折率材料および低屈折率材料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。原料光学フィルムの組成に関わらず広範な種類の光学フィルムに対して適用しやすく、異物検出が容易な塗膜を得やすい点から、本発明の一態様において、異物検出用塗膜および/または塗膜形成用組成物が蛍光物質または着色剤を含むことが好ましい。これらの成分は、1種のみを用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
異物検出用塗膜が蛍光物質を含む場合、異物が存在する箇所において蛍光物質を含む塗膜形成用組成物が偏在しやすくなり、光を照射した際に異物検出用塗膜に蛍光ムラや色ムラが生じるため、微小の異物を目視によっても認識しやすくなる。異物検出用塗膜に用い得る蛍光物質としては、従来から蛍光インク等に使用されているものが特に制限なく利用可能であり、例えば、塩基性染料、酸性染料、分散染料、油溶性染料、蛍光増白染料などを用いて製造された染料インクや、上記染料を用いて製造された有機蛍光顔料インク等を使用し得る。
異物検出用塗膜が着色剤を含む場合、異物が存在する箇所において着色剤を含む塗膜形成用組成物が偏在しやすくなり、光を照射した際に異物検出用塗膜に色ムラが生じるため、微小の異物を目視によっても認識しやすくなる。異物検出用塗膜に用い得る着色剤としては、従来から着色インク等に使用されているものが特に制限なく利用可能であり、例えば、無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子着色剤、樹脂マトリックス中に蛍光染料等を固溶体化した着色エマルジョン着色剤、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした着色剤等を分散したインク等を使用することができる。具体的には、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、球状黒鉛粒子、黒酸化鉄、黒色の球状樹脂粒子などの黒色着色剤や有彩色の有機顔料、着色エマルジョン顔料、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明において、高屈折率材料とは、異物を検出すべき対象となる原料フィルムの表面の屈折率よりも相対的に高い材料を意味する。異物検出用塗膜が高屈折率材料を含む場合、光を照射した際に、異物が存在する箇所において、光学フィルムの屈折率と高屈折率材料を含む塗膜の屈折率差があることで、光が散乱し実際のサイズよりも異物が大きく見えることにより、微小の異物であっても認識しやすくなる。異物検出用塗膜に用い得る高屈折率材料としては、例えば、ポリマーの骨格中に原子屈折率の高い硫黄含有置換基や、ハロゲン含有置換基、芳香環等を導入したり、金属の酸化物微粒子やそのアルコキシド、錯体をポリマー中に分散したりすることにより得ることができる。金属の例として、具体的には、Si、Zn、Ti、Zr、Ce、Hf、Nb、Al、Sn等が挙げられ、その複合酸化物であるBaTiO等も用いることができる。前記置換基等を導入したり、金属酸化物微粒子等を分散したりするために利用し得るポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、スチレンコポリマー、アクリロニトリル、ブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオキシメチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、メラミン、ビニルエステル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、フェノール、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレイト、ポリアリーレンスルフィド、ポリケトン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ロジンエステル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、炭化水素樹脂、コポリマー、グラフト、ブレンドおよびそれらの混合物や、重合性官能基を有する光硬化性化合物を含む組成物、重合性官能基を有する熱硬化性化合物を含む組成物、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤およびポリエーテル系粘着剤等の粘着剤等が挙げられる。
本発明において、低屈折率材料とは、異物を検出すべき対象となる原料フィルムの表面の屈折率よりも相対的に低い材料を意味する。異物検出用塗膜が低屈折率材料を含む場合、光を照射した際に、異物が存在する箇所において、光学フィルムの屈折率と低屈折率材料を含む塗膜の屈折率差があることで、光が散乱し実際のサイズよりも異物が大きく見えることにより、微小の異物であっても認識しやすくなる。異物検出用塗膜に用い得る低屈折率材料としては、例えば、ポリマー分子にフッ素を導入したり、ポリマー鎖中に包摂構造からなる空隙を導入する、屈折率の低い微粒子をポリマー中に分散したりすることにより得ることができる。屈折率の低い微粒子として、具体的には、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化セリウム(セリア)、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化錫、チタン酸バリウム等の多孔質構造や中空粒子等が挙げられる。フッ素を導入したり、屈折率の低い微粒子等を分散したりするために利用し得るポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、スチレンコポリマー、アクリロニトリル、ブタジエンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオキシメチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、メラミン、ビニルエステル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、フェノール、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリーレイト、ポリアリーレンスルフィド、ポリケトン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ロジンエステル、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、炭化水素樹脂、コポリマー、グラフト、ブレンドおよびそれらの混合物や、重合性官能基を有する光硬化性化合物を含む組成物、重合性官能基を有する熱硬化性化合物を含む組成物、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤およびポリエーテル系粘着剤等の粘着剤等が挙げられる。
本発明において、高平坦性材料、耐擦傷性材料、防汚性材料、耐指紋材料、帯電防止材料、導電性物質等の異物検出用塗膜として機能するだけではなく、光学フィルムにおいて機能層としても機能し得る膜を構成し得る材料としては、それぞれの機能に応じて一般的に用いられる材料が特に制限なく用いることができるが、光学フィルムに求められる密着性や光学特性、耐熱性、耐候性などを満たすものであることが好ましい。これらの材料を、必要に応じて、光学フィルムの構成材料として一般的に用いられる成分(例えば、透明樹脂、透明接着剤、透明粘接着剤など)に配合し、光学フィルムを構成する各層を形成するために一般的な方法等を用いて塗膜を形成することができる。
塗膜形成用組成物における、上記のような異物を検出するために機能し得る成分(以下、「異物検出機能性成分」ともいう)の含有量は、用いる異物検出機能性成分、塗膜の厚み、製膜方法等に応じて適宜決定すればよい。異物検出機能性成分の含有量は、塗膜形成用組成物の固形分100質量部の状態で用いられる場合もあるし、溶媒で希釈し、溶液や分散液として用いられる場合もある。溶液や分散液として用いられる場合の、塗膜形成用組成物の固形分濃度は、塗膜の厚みや製膜方法により適した粘度となるように調整すればよい。適切な厚みの塗膜を得ることで、異物が存在する領域で生じる蛍光ムラや色ムラ、塗布膜厚ムラに起因する光学干渉により生じる虹ムラ、屈折率差により光を散乱させ実際の異物サイズより大きく見せる効果、内部ヘイズ変化、微小表面凹凸による外部ヘイズ変化等の変化が顕著になりやすく、異物を検出しやすくなる。なお、本明細書において、塗膜形成用組成物の固形分とは、塗膜形成用組成物から有機溶媒等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
塗膜形成用組成物は、取扱性、塗膜形成の容易性および光学フィルムの生産性等の観点から、液状組成物であることが好ましい。通常、上記のような異物検出機能性成分は溶媒に溶解または分散した状態で原料光学フィルム上に塗布されるため、塗膜形成用組成物は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としては、上記のような異物検出機能性成分を溶解または分散し得るものであり、かつ、塗膜形成用組成物を塗布する原料光学フィルムに対して悪影響を及ぼさない溶媒を適宜選択して用いることができる。そのような溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤、水等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または二種以上組み合わせて使用できる。
塗膜形成用組成物中の溶媒の含有量は、用いる異物検出機能性成分、検出対象とする異物のサイズ、塗膜形成用組成物の塗布方法、塗膜の厚み等に応じて適宜決定すればよい。
異物検出用塗膜が、異物上では該異物を被覆するように盛り上がって形成され、異物が存在しない領域では薄く均一な膜であると、光を照射した際に異物の存在する箇所で異物検出機能性成分に起因して生じる蛍光ムラや色ムラ、塗布膜厚ムラに起因する光学干渉により生じる虹ムラ、屈折率差により光を散乱させ実際の異物サイズより大きく見せる効果、内部ヘイズ変化、微小表面凹凸による外部ヘイズ変化等の塗膜性状の変化が顕著になりやすいため異物を検出しやすくなる。このような塗膜は、カメラの分解能を超えたサイズの異物欠陥の検出を可能とし、通常は検出することのできない1〜20μm程度の微小の異物を検出することを可能にする。
塗膜形成用組成物は、異物検出機能性成分や溶媒に加えて、分散剤や分散安定剤、ラジカル発生剤、酸発生剤、pH調整剤、キレート試薬、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、乳化安定剤、表面張力調整剤、消泡剤等、公知の添加剤を含んでいてよい。これらは、単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
塗膜形成用組成物を原料光学フィルム上に塗布する方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができ、例えば、スプレー塗布、スピンコーティング法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法、浸漬法、エアーナイフ法、スライド塗布、ホッパー塗布、リバースロール塗布、グラビア塗布、エクストリュージョン塗布、インクジェット塗布等の方法が挙げられる。中でも、液状の塗膜形成用組成物を異物検出対象とする光学フィルムの中心から外側に遠心力により塗り広げるスピンコーティング法では、異物が存在する場合に、該異物を起点に塗膜の膜厚が変化して塗膜上に異物を起点に尾を引いたような痕跡が残るため、光を照射することにより目視にて容易に微小の異物を識別することができ、塗膜形成用組成物の塗布方法として好ましく、特に、枚葉の原料光学フィルムにおける塗布方法として好ましい。塗膜形成用組成物を原料光学フィルム上に塗布する際の条件(塗布速度等)は、塗膜形成用組成物の組成、塗布方法、検出対象とする異物のサイズ等に応じて適宜決定すればよい。
塗膜形成用組成物を塗布した後、必要に応じて溶媒を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。乾燥条件は、用いる塗膜形成用組成物の組成や濃度、溶媒種や添加剤、得たい塗膜の厚み等に応じて適宜決定すればよい。例えば、乾燥温度は、通常25〜200℃であり、好ましくは50〜150℃である。また、乾燥時間は、通常1〜30分であり、好ましくは1〜15分である。
異物検出用塗膜の厚み(乾燥後の厚み)は、異物検出用塗膜の材料により適宜選択することができる。例えば、蛍光物質を用いて異物を検出する場合、検出対象とする異物の高さ(平均高さ)に対して、異物の存在しない領域における異物検出用塗膜の面内平均厚みが300%以下となることが好ましく、より好ましくは200%以下、さらに好ましくは150%以下である。異物の高さ(平均高さ)に対して乾燥塗膜の厚みが前記上限値以下であると、異物の存在する箇所における塗膜性状の変化が顕著になりやすく、異物を検出しやすくなる。前記乾燥塗膜の厚みの下限は、異物の検出しやすさ、生産性等の観点から、検出対象とする異物の高さに対して、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。本明細書において、「異物検出用塗膜の面内平均厚み」は、異物の存在しない領域における異物検出用塗膜を光学フィルムの短尺方向に測定した面内平均値を意味する。また、「異物の高さ(平均高さ)」は、検出対象とする異物の高さの最小値と最大値とから算出した想定値であってよい。上記塗膜の面内平均厚みや検出した異物の高さは、例えば触針式形状測定機などを用いて測定できる。
異物検出用塗膜の透明性が高いと、異物検出工程において光を照射した際に異物の検出がしやすくなるため、異物検出用塗膜の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上である。異物検出用塗膜の全光線透過率の上限値は特に限定されず、100%以下であればよい。
異物検出用塗膜の全光線透過率は、例えば、JIS K 7361−1に従い測定できる。
また、異物検出用塗膜のヘイズ(曇価)は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%以下である。異物検出用塗膜のヘイズが上記の上限値以下であると、異物検出工程において光を照射した際に異物の検出がよりしやすくなる傾向にある。異物検出用塗膜のヘイズの下限値は特に限定されず、通常0%以上となる。
異物検出用塗膜のヘイズは、例えば、JIS K 7136に従い測定できる。
異物検出用の塗膜は、異物検出工程後に容易に除去し得る塗膜であるか、または、最終的に得られる光学フィルムの一構成層としてそのまま存在しても光学フィルムの物性や特性に影響を及ぼさない塗膜であることが好ましく、前記いずれかの特性を有し得るよう異物検出用塗膜を構成する成分を選択することが好ましい。
例えば、異物検出用塗膜が、異物が存在する箇所において大きな屈折率差を生じるような塗膜である場合、異物検出工程後に該塗膜を除去することなく光学フィルムの一構成層としてそのまま存在させやすく、後述する異物検出用塗膜の洗浄工程を必要としないので、生産性の面や、塗膜洗浄に伴う光学フィルムの損傷の可能性を低減させ得る面から有利となり得る。
本発明の一態様において、異物検出用塗膜の屈折率は、該塗膜を形成する原料光学フィルムの有する屈折率に対して、絶対値で、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。また、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。異物検出用塗膜の屈折率は、例えば、原料光学フィルムの屈折率を考慮して、塗膜形成用組成物を構成する成分として先に例示した高屈折率材料や低屈折率材料を適宜選択することにより制御することができる。
異物検出用塗膜および原料光学フィルムの屈折率は、例えばエリプソメーターにより測定および算出できる。
異物検出用塗膜が、最終的に得られる光学フィルムの一構成層としてそのまま存在し得る場合、光学フィルムの用途や機能にもよるが、該異物検出用塗膜は、通常、無色であり、高い透明性を有することが好ましい。本発明の一態様において、そのような異物検出用塗膜の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上である。異物検出用塗膜の全光線透過率が上記下限値以上であると、該塗膜を光学フィルムの一構成層として残存させる場合であっても、得られる光学フィルムを画像表示装置等の電子デバイスに組み込んだ際に十分な視認性を確保しやすい。異物検出用塗膜の全光線透過率の上限値は特に限定されず、100%以下であればよい。
また、ヘイズは、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらにより好ましくは2.0%以下であり、その下限値は特に限定されず、通常0%以上となる。
異物検出工程においては、異物検出用塗膜を形成したフィルム表面に光を照射して、フィルム上および/またはフィルム内部に存在する異物を検出し、異物の存在するフィルム領域を特定する。
フィルム表面に照射する光は、異物検出用塗膜の組成、吸収波長、蛍光波長、視感度等に応じて適宜選択すればよく、例えば、白色光、青色光、緑色光、赤色光、紫外光、赤外光等が挙げられる。前記照射光の光源としては、例えば、LED光源、高輝度ライト、高演色ライト、スリット光源、拡散光源、クロスニコル光源等が挙げられる。
異物検出工程における光照射は、異物検出用塗膜を形成した光学フィルムのいずれの面側から行ってもよいが、異物検出のし易さの観点からは、異物検出用塗膜側から照射することが好ましい。光照射の条件は、異物検出用塗膜の組成(種類)、吸収波長、蛍光波長、検出対象とする異物の大きさや種類等に応じて適宜決定すればよい。
本発明において、異物の検出は、例えば、目視検査、カメラ検査、顕微鏡検査、白色干渉検査等で行い得るが、異物検出用塗膜を形成することにより異物の存在する箇所が可視化されるため、目視検査やカメラ検査で微小の異物を識別しやすい。したがって、本発明の好ましい一態様において、異物の検出は目視検査やカメラ検査により行われる。異物検出を目視検査やカメラ検査で行うことにより、特別な装置や設備等を必要とせず、容易に、かつ、効率的に異物、特に微小の異物が存在するフィルム領域を特定することができる。
本発明の光学フィルムの製造方法は、異物検出用塗膜を形成することにより目視では識別し難いような異物を可視化し得るため、従来カメラレンズを介しても検出することが困難であったような微小の異物を含まない光学フィルムを提供できる。異物検出工程においては、原料光学フィルムの一般的な製造工程で付着および/または混入し得るような異物を検出対象とするが、例えば20μm未満、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下(例えば、1μm程度)の大きさの異物であっても、目視検査による検出対象とし得る。なお、ここでいう異物の大きさとは、フィルム表面または内部に存在する異物を真上から見た場合の最大幅を意味する。
また、異物検出用塗膜による効率的な異物の検出を確保し得る観点から、異物が原料光学フィルム表面上に存在する場合にその高さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上である。この場合に、異物の高さの上限値は特に限定されず、原料光学フィルムの一般的な製造工程で付着および/または混入し得るような異物の高さであればよく、例えば20μm以下、好ましくは10μm以下である。
上記異物の大きさおよび高さは、例えば、反射電子顕微鏡やレーザー顕微鏡、白色干渉顕微鏡、リニク干渉計、触針式プロファイラー等により測定できる。
異物検出工程では、異物検出用塗膜を形成したフィルム表面に光を照射し、異物に起因する蛍光ムラや色ムラ、塗布膜厚ムラに起因する光学干渉により生じる虹ムラ、屈折率差により光を散乱させ実際の異物サイズより大きく見せる効果、内部ヘイズ変化、微小表面凹凸による外部ヘイズ変化などが確認されるフィルム領域を、異物が存在するフィルム領域として特定する。これにより、後述する異物除去工程において除去される、またはマーキングされるフィルム領域が特定される。異物の存在するフィルム領域の特定においては、得られる光学フィルムの種類や用途等に応じて選別基準を設けることにより、所定の品質を有する光学フィルムを製造することができる。
異物除去工程は、前記異物検出工程で特定された異物の存在するフィルム領域を除去する、または、前記フィルム領域をマーキングすることにより、異物を除去した、または、異物の存在するフィルム領域が特定された光学フィルムを得る工程である。通常、異物除去工程に供される(原料)光学フィルムが、例えば枚葉体などの短尺な形態である場合には、異物の存在するフィルム領域を切除する、または、該領域が存在する短尺の光学フィルムごと除去することができる。一方、異物除去工程に供される(原料)光学フィルムが、例えばロール状に巻回される長尺のフィルムロールである場合には、光学フィルムの使用時等に異物の存在するフィルム領域を特定、除去し得るよう、例えば、長尺フィルムの短尺方向のフィルム端部等にマーキングすることが好ましい。
本発明の光学フィルムの製造方法は、異物検出用塗膜の組成や光学特性等に応じて、異物検出用塗膜を洗浄により除去する工程を含んでいてもよい。異物検出用塗膜の洗浄方法としては、例えば、高圧洗浄、超音波洗浄、2流体洗浄、ブラッシング洗浄、異物検出用塗膜を含む光学フィルムを溶媒に浸漬した状態で溶媒を撹拌して洗浄する撹拌洗浄、溶媒で湿潤させた異物検出用塗膜をウエス等で拭き取る方法、および、UV−O3処理や大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理、エキシマ照射処理、プラズマ処理、イオンビーム処理等のドライエッチング等を採用し得る。これらの方法を、光学フィルムの形状、異物検出用塗膜の組成(種類)、厚み等に応じて適宜選択すればよい。
洗浄に用いる溶媒は、得られる光学フィルムに悪影響を及ぼさないものである限り、異物検出用塗膜の組成、原料光学フィルムの種類、組成および構成等に応じて適宜決定することができる。洗浄用溶媒としては、例えば、水やメタノール、エタノール、IPAなどの有機溶剤、酸、アルカリ等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記洗浄工程の後に、乾燥により洗浄に用いた溶媒を除去する工程を含んでいてもよい。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。乾燥条件は、光学フィルムの組成等に応じて、光学フィルムの物性および/または特性等に影響を及ぼさないよう適宜選択することが好ましい。例えば、乾燥温度は、通常50〜200℃であり、好ましくは70〜150℃である。また、乾燥時間は、通常1〜30分であり、好ましくは3〜15分である。
本発明の光学フィルムの製造方法は、光学特性を有する原料フィルム(原料光学フィルム)を製造する工程を含んでいてもよい。本発明において原料光学フィルムとは、前記塗膜形成工程、異物検出工程および異物除去工程を施される、光学特性を有するフィルムを意味する。本発明において、光学フィルムとは、画像表示装置等の電子デバイスや照明デバイス等に組み込まれ、該デバイスの機能を発現するために機能し得る各種の光学特性を有するフィルムである。これらの原料光学フィルムは、単層構造であっても、多層構造であってもよい。具体的には、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム、拡散フィルム、集光フィルム、偏光板、位相差板などの光学機能性フィルムや、ガスバリア性を有するバリアフィルム等が挙げられる。
原料光学フィルムの製造工程は、所望の光学特性等を有するフィルムが得られる限り特に限定されず、当該分野において従来公知の方法によって製造することができる。また、原料フィルムとして、市販の光学フィルムを用いてもよい。
原料光学フィルムの形状は特に限定されず、枚葉体であっても、長尺状であってもよい。原料光学フィルムが長尺状である場合、本発明の光学フィルムの製造方法は、長尺状の原料光学フィルム、または、塗膜形成工程、異物検出工程および/または異物除去工程を経た光学フィルムを枚葉体に加工することを含んでいてもよい。長尺フィルムから枚葉体への加工は、当該分野で従来公知の装置および/または方法を用いて行い得る。具体的には、例えば、トムソン型打ち抜き機、スーパーカッター、クロスカッター、ギロチン切断、シアーカッター、ロータリーダイカッター、プレスカッターなどでの切断加工や各種レーザーを用いたアブレーションによる加工などが挙げられる。これらの加工方法は、1種のみを採用しても、2種以上を組み合わせてもよい。
さらに、加工したフィルムの端面を切削加工することもできる。加工端面を切削加工するための方法としては、例えば、特開2001−54845号公報に開示されるような、光学フィルムの外周端部を回転刃で切削する方法や、特開2003−220512号公報に開示されるような、フライカット法にて連続的に光学フィルムの外周端部を切削する方法などが採用される。
本発明の光学フィルムの製造方法においては、目視では認識し難いような微小の異物を可視化することができるため、極小さな異物に起因して塗布ムラなどの外観的欠陥や光学特性の低下が顕著に生じやすい光学機能層等を形成する際に基材として機能し得る光学フィルムの製造に適している。特に、一般的な光学的機能層と比較して非常に薄い膜厚で形成される有機EL素子を形成する際に基材として機能し得る光学フィルムの製造方法として好適である。そのような光学フィルムとしては、例えば、有機EL画像表示装置等の電子デバイスのフレキシブル基板として使用し得るガスバリア性フィルム等が挙げられる。
したがって、本発明の一態様において、(原料)光学フィルムは、基材と、前記基材上に積層された無機薄膜層とを含む光学フィルムであることが好ましい。かかる構成を有する光学フィルムは、ガスバリア性を有し得る。
以下、前記構成からなる光学フィルム(以下、「ガスバリア性フィルム」ともいう)について説明する。
〔基材〕
前記ガスバリア性フィルムを構成する基材は可撓性フィルムを含むことが好ましい。可撓性フィルムは、無機薄膜層を保持することができる可撓性のフィルム基材を意味し、例えば、樹脂成分として少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムを用いることができる。可撓性フィルムは透明な樹脂フィルムであることが好ましい。
可撓性フィルムにおいて用い得る樹脂としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル樹脂;アセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルサルファイド(PES)、二軸延伸および熱アニール処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。可撓性フィルムとして、上記樹脂の1種を使用してもよいし、2種以上の樹脂を組み合せて使用してもよい。これらの中でも、耐熱性、透明性および寸法安定性等の観点から、ポリエステル樹脂およびポリオレフィン樹脂からなる群から選択される樹脂を用いることが好ましく、PENおよび環状ポリオレフィンからなる群から選択される樹脂を用いることがより好ましく、PENを用いることがさらに好ましい。
可撓性フィルムは、未延伸の樹脂フィルムであってもよいし、未延伸の樹脂フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、樹脂フィルムの流れ方向(MD方向)、および/または、樹脂フィルムの流れ方向と直角方向(TD方向)に延伸した延伸樹脂フィルムであってもよい。可撓性フィルムは、上述した樹脂の層を2層以上積層した積層体であってもよい。
可撓性フィルムの厚みは、ガスバリア性フィルムを製造する際の安定性等を考慮して適宜設定してよいが、ガスバリア性フィルムの製造工程で真空中における可撓性フィルムの搬送を容易にしやすい観点から、5〜500μmであることが好ましい。さらに、後述するようなプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)により無機薄膜層を形成する場合、可撓性フィルムの厚みは10〜200μmであることがより好ましく、15〜150μmであることがさらに好ましい。なお、可撓性フィルムの厚みは、膜厚計により測定できる。
可撓性フィルムの表面には、これに隣接し得る有機層等との密着性の観点から、その表面を清浄するための表面活性処理を施してもよい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
基材は、プライマー層を含んでいてもよい。密着性および耐熱性等を高めやすい観点から、プライマー層は可撓性フィルムの少なくとも一方の面に形成することが好ましい。例えば、基材が後述の有機層を含み、可撓性フィルム、プライマー層および有機層の順に積層されている場合、プライマー層により、可撓性フィルムと有機層との密着性を向上し得る。また、無機薄膜層を形成した側と反対側の可撓性フィルムの面にプライマー層を形成し、かつプライマー層が最外層である場合、該プライマー層は、ガスバリア性フィルムの保護層として機能するとともに、製造時の滑り性を向上させ、かつブロッキングを防止する機能も果たす。
プライマー層は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂およびアミノ樹脂から選択される少なくとも1種を含んでなることが好ましい。これらの中でも、ガスバリア性フィルムの耐熱性の観点から、プライマー層は、主成分としてポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
プライマー層は、上記樹脂以外に添加剤を含むことができる。添加剤としては、プライマー層を形成するために公知の添加剤を用いることができ、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、炭酸カルシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、硫酸バリウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、クレイ、タルク等の無機粒子が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性フィルムの耐熱性の観点から、シリカ粒子が好ましい。
プライマー層に含み得るシリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下、特に好ましくは40nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、ガスバリア性フィルムの透明性および耐熱性を向上し得る。また、プライマー層が最外層である場合、シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲であると、製造時におけるガスバリア性フィルムの滑り性をより向上させ、かつブロッキングを有効に防止し得る。なお、シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET法や粒子断面のTEM観察により測定できる。
シリカ粒子の含有量は、ガスバリア性フィルムの耐熱性および透明性の観点から、プライマー層の質量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは1.5〜40質量%、さらに好ましくは2〜30質量%である。
プライマー層の厚みは、ガスバリア性フィルムの耐熱性、およびプライマー層と有機層との密着性を向上しやすい観点から、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下であり、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上である。なお、プライマー層の厚みは膜厚計によって測定できる。ガスバリア性フィルムがプライマー層を2層以上含む場合、各プライマー層の厚みは同一であっても異なっていてもよい。
プライマー層は、樹脂および溶剤、並びに必要に応じて添加剤を含む樹脂組成物を可撓性フィルム等に塗布し、塗膜を乾燥することで成膜して得ることができる。プライマー層を形成する順は特に限定されない。
溶剤としては、前記樹脂を溶解可能なものであれば特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶剤;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤等が挙げられる。溶剤は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
プライマー層を可撓性フィルム等に塗布する方法としては、従来用いられる種々の塗布方法、例えば、スプレー塗布、スピン塗布、バーコート、カーテンコート、浸漬法、エアーナイフ法、スライド塗布、ホッパー塗布、リバースロール塗布、グラビア塗布、エクストリュージョン塗布等の方法が挙げられる。
塗膜を乾燥する方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法が挙げられるが、加熱乾燥を好適に使用できる。乾燥温度は、樹脂や溶剤の種類にもよるが、通常50〜350℃程度であり、乾燥時間は、通常30〜300秒程度である。
上記のように、例えば可撓性フィルムの少なくとも一方の面にプライマー層を形成してもよいが、可撓性フィルムの両面にプライマー層を有する市販のフィルム、例えば帝人フィルムソリューション社製の「テオネックス(登録商標)」等を使用してもよい。
プライマー層は、単層であっても、2層以上の多層であってもよい。また、プライマー層を2層以上含む場合、各プライマー層は、同じ組成からなる層であっても、異なる組成からなる層であってもよい。
基材は、有機層を含んでいてもよい。無機薄膜層の均質化によるガスバリア性の安定化、および/またはフィルム搬送時の滑り性確保の観点等から、基材は、可撓性フィルムと、該可撓性フィルムの少なくとも一方の側に形成された有機層とを含むことが好ましい。また、基材の少なくとも一方の面に上記プライマー層を含む場合には、該プライマー層上に有機層が形成されていることが好ましい。
有機層は、平坦化層としての機能を有する層であってもよいし、アンチブロッキング層としての機能を有する層であってもよいし、これらの両方の機能を有する層であってもよい。また、フィルム搬送時の滑り性確保の観点からは、有機層がアンチブロッキング層であることが好ましく、また、無機薄膜層の均質化によるガスバリア性の安定化とフィルム搬送時の滑り性確保の両立の観点からは、有機層は平坦化層であることが好ましい。可撓性フィルムの両側に有機層を形成する場合、両方の有機層のいずれもがアンチブロッキング層または平坦化層であってもよく、一方の有機層がアンチブロッキング層で、他方の有機層が平坦化層であってもよい。また、有機層は単層でもよいし、2層以上の多層であってもよく、有機層を2つ以上形成する場合、複数の有機層は同じ組成からなる層であっても、異なる組成からなる層であってもよい。
有機層の厚みは、用途に応じて適宜調整してよいが、ガスバリア性フィルムの表面硬度や耐屈曲性を向上しやすい観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。ガスバリア性フィルムが2つ以上の有機層を有する場合、各有機層が上記範囲の厚みを有することが好ましく、各有機層における厚みは同一または異なっていてもよい。有機層の厚みは、膜厚計によって測定することができ、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
有機層は、例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物を含む組成物を、可撓性フィルムまたはプライマー層等の表面に塗布し、硬化することにより形成することができる。有機層を形成するための組成物に含まれる光硬化性化合物としては、紫外線または電子線硬化性の化合物が挙げられ、このような化合物としては、重合性官能基を分子内に1個以上有する化合物、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられる。有機層を形成するための組成物(以下、「有機層形成用組成物」ともいう)は、1種類の光硬化性化合物を含有してもよいし、2種以上の光硬化性化合物を含有してもよい。有機層形成用組成物に含まれる重合性官能基を有する光硬化性化合物を硬化させることにより、光硬化性化合物が重合して、光硬化性化合物の重合物を含む有機層が形成される。
有機層における該重合性官能基を有する光硬化性化合物の重合性官能基の反応率は、外観品質を高めやすい観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。前記反応率の上限は特に限定されないが、外観品質を高めやすい観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。反応率が上記の下限以上である場合、無色透明化しやすい。また、反応率が上記の上限以下である場合、耐屈曲性を向上させやすい。反応率は、重合性官能基を有する光硬化性化合物の重合反応が進むにつれて高くなるため、例えば光硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、照射する紫外線の強度を高くしたり、照射時間を長くしたりすることにより、高めることができる。上記のような硬化条件を調整することにより、反応率を上記の範囲内にすることができる。
反応率は、有機層形成用組成物を可撓性フィルムまたはプライマー層等の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させて得た硬化前の塗膜、および、該塗膜を硬化後の塗膜について、塗膜表面から全反射型FT−IRを用いて赤外吸収スペクトルを測定し、重合性官能基に由来するピークの強度の変化量から測定することができる。例えば、重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である場合、(メタ)アクリロイル基中のC=C二重結合部分が重合に関与する基であり、重合の反応率が高くなるにつれてC=C二重結合に由来するピークの強度が低下する。一方、(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合部分は重合に関与せず、C=O二重結合に由来するピークの強度は重合前後で変化しない。そのため、硬化前の塗膜について測定した赤外吸収スペクトルにおける(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合に由来するピークの強度(ICO1)に対するC=C二重結合に由来するピークの強度(ICC1)の割合(ICC1/ICO1)と、硬化後の塗膜について測定した赤外吸収スペクトルにおける(メタ)アクリロイル基中のC=O二重結合に由来するピークの強度(ICO2)に対するC=C二重結合に由来するピークの強度(ICC2)の割合(ICC2/ICO2)とを比較することで、反応率を算出することができる。この場合、反応率は、式(1):
反応率[%]=[1−(ICC2/ICO2)/(ICC1/ICO1)]×100 (1)
により算出される。なお、C=C二重結合に由来する赤外吸収ピークは通常1350〜1450cm−1の範囲、例えば1400cm−1付近に観察され、C=O二重結合に由来する赤外吸収ピークは通常1700〜1800cm−1の範囲、例えば1700cm−1付近に観察される。
有機層の赤外吸収スペクトルにおける1000〜1100cm−1の範囲の赤外吸収ピークの強度をIとし、1700〜1800cm−1の範囲の赤外吸収ピークの強度をIとすると、IおよびIは式(2):
0.05≦I/I≦1.0 (2)
を満たすことが好ましい。ここで、1000〜1100cm−1の範囲の赤外吸収ピークは、有機層に含まれる化合物および重合物(例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物および/またはその重合物)中に存在するシロキサン由来のSi−O−Si結合に由来する赤外吸収ピークであり、1700〜1800cm−1の範囲の赤外吸収ピークは、有機層に含まれる化合物および重合物(例えば、重合性官能基を有する光硬化性化合物および/またはその重合物)中に存在するC=O二重結合に由来する赤外吸収ピークであると考えられる。そして、これらのピークの強度の比(I/I)は、有機層中のシロキサン由来のSi−O−Si結合に対するC=O二重結合の相対的な割合を表すと考えられる。ピークの強度の比(I/I)が上記所定の範囲である場合、有機層の均一性を高めやすいと共に、層間の密着性、特に高湿環境下での密着性を高めやすくなる。ピークの強度の比(I/I)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上である。ピーク強度の比(I/I)が上記の下限以上である場合、有機層の均一性を高めやすい。これは、本発明は後述するメカニズムに何ら限定されないが、有機層に含まれる化合物および重合物中に存在するシロキサン由来のSi−O−Si結合が多くなりすぎると有機層中に凝集物が生じ、層が脆化する場合があり、このような凝集物の生成を低減しやすくなるためであると考えられる。ピークの強度の比(I/I)は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。ピーク強度の比(I/I)が上記の上限以下である場合、有機層の密着性を高めやすい。これは、本発明は後述するメカニズムに何ら限定されないが、有機層に含まれる化合物および重合物中にシロキサン由来のSi−O−Si結合が一定量以上存在することにより、有機層の硬さが適度に低減されるためであると考えられる。有機層の赤外吸収スペクトルは、ATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光製、FT/IR−460Plus)により測定できる。
有機層形成用組成物に含まれる光硬化性化合物は、紫外線等により重合が開始し、硬化が進行して重合物である樹脂となる化合物である。光硬化性化合物は、硬化効率の観点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単官能のモノマーまたはオリゴマーであってもよいし、多官能のモノマーまたはオリゴマーであってもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを表し、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを表す。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル系化合物が挙げられ、具体的には、アルキル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ならびに、その重合体および共重合体等が挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、並びにその重合体および共重合体等が挙げられる。
有機層形成用組成物に含まれる光硬化性化合物は、上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物に代えて、または、上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物に加えて、例えば、メテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、およびトリフェニルエトキシシラン等を含有することが好ましい。これら以外のアルコキシシランを用いてもよい。
上記に述べた重合性官能基を有する光硬化性化合物以外の光硬化性化合物としては、重合によりポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、スチレン樹脂、およびアルキルチタネート等の樹脂となる、モノマーまたはオリゴマーが挙げられる。
有機層形成用組成物は、プライマー層に配合し得るものとして記載した無機粒子、好ましくはシリカ粒子を含むことができる。有機層形成用組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜75nmである。無機粒子を含有すると、ガスバリア性フィルムの耐熱性を向上しやすい。
無機粒子、好ましくはシリカ粒子の含有量は、有機層形成用組成物の固形分の質量に対して、好ましくは20〜90%であり、より好ましくは40〜85%である。無機粒子の含有量が上記範囲であると、ガスバリア性フィルムの耐熱性を向上しやすい。なお、有機層形成用組成物の固形分とは、有機層形成用組成物に含まれる溶剤等の揮発性成分を除いた成分を意味する。
有機層形成用組成物は、有機層の硬化性の観点から、光重合開始剤を含んでいてよい。光重合開始剤の含有量は、有機層の硬化性を高める観点から、有機層形成用組成物の固形分の質量に対して、好ましくは2〜15%であり、より好ましくは3〜11%である。
有機層形成用組成物は、塗布性の観点から、溶剤を含んでいてよい。溶剤としては、重合性官能基を有する光硬化性化合物の種類に応じて、該化合物を溶解可能なものを適宜選択でき、例えば、プライマー層に使用し得るものとして記載の溶剤等が挙げられる。溶剤は単独または二種以上組み合わせて使用してよい。
前記重合性官能基を有する光硬化性化合物、前記無機粒子、前記光重合開始剤および前記溶剤の他に、必要に応じて、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、カール抑制剤等の添加剤を含んでもよい。
有機層は、上記の通り、例えば、光硬化性化合物を含む有機層形成用組成物(光硬化性組成物)を可撓性フィルムまたはプライマー層等の表面に塗布し、必要に応じて乾燥後、紫外線もしくは電子線を照射することにより、光硬化性化合物を硬化させて形成することができる。
塗布方法としては、上記プライマー層を塗布する方法と同様の方法が挙げられる。
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、有機層は、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、スチレン樹脂、およびアルキルチタネート等を含有してよい。有機層はこれらの樹脂を1種類または2種以上を組み合わせて含有してもよい。
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、平坦化層は、剛体振り子型物性試験機(例えばエー・アンド・デイ株式会社製RPT−3000W等)により前記平坦化層表面の弾性率の温度変化を評価した場合、前記平坦化層表面の弾性率が50%以上低下する温度が150℃以上であることが好ましい。
有機層が平坦化層としての機能を有する場合、平坦化層を白色干渉顕微鏡で観察して測定される面粗さは、好ましくは3nm以下、より好ましくは2nm以下、さらに好ましくは1nm以下である。平坦化層の面粗さが上記の上限以下である場合、無機薄膜層の欠陥が少なくなり、ガスバリア性がより高められる効果がある。面粗さは、平坦化層を白色干渉顕微鏡で観察し、サンプル表面の凹凸に応じて、干渉縞が形成されることにより測定される。
有機層がアンチブロッキング層としての機能を有する場合、有機層は、特に上記に述べた無機粒子を含有することが好ましい。
基材の厚みは、ガスバリア性フィルムを製造する際の安定性等を考慮して適宜設定してよいが、真空中における基材の搬送を容易にし易い観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは550μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。なお、基材の厚みは、膜厚計により測定できる。
〔無機薄膜層〕
ガスバリア性フィルムは、基材上に積層された無機薄膜層を含むことが好ましい。無機薄膜層を有することで、フィルムにガスバリア性を付与することができる。本発明においては、ガスバリア性フィルムを構成する基材の少なくとも一方の側または両側に無機薄膜層が設けられていてよい。基材の両側に2つの、またはそれ以上の無機薄膜層を有する場合、これらの無機薄膜層は同じ構成であっても、異なる構成であってもよい。
無機薄膜層は、高い緻密性を有し、ガスバリア層としての機能を有する層であることが好ましい。そのようなガスバリア性を有する無機薄膜層は、ガスバリア性を有する無機材料の層であれば特に限定されず、公知のガスバリア性を有する無機材料の層を適宜利用することができる。無機材料の例としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物およびこれらのうちの少なくとも2種を含む混合物が挙げられる。無機薄膜層は単層膜であってもよいし、上記薄膜層を少なくとも含む2層以上が積層された多層膜であってもよい。
無機薄膜層は、より高度なガスバリア性(特に水蒸気透過防止性)を発揮しやすい観点、ならびに、耐屈曲性、製造の容易性および低製造コストといった観点から、珪素原子(Si)、酸素原子(O)、および炭素原子(C)を少なくとも含有することが好ましい。
この場合、無機薄膜層は、一般式がSiOαβで表される化合物が主成分であることができる。式中、αおよびβは、それぞれ独立に、2未満の正の数を表す。ここで、「主成分である」とは、材質の全成分の質量に対してその成分の含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることをいう。無機薄膜層は一般式SiOαβで表される1種類の化合物を含有してもよいし、一般式SiOαβで表される2種以上の化合物を含有してもよい。前記一般式におけるαおよび/またはβは、無機薄膜層の膜厚方向において一定の値でもよいし、変化していてもよい。
さらに無機薄膜層は珪素原子、酸素原子および炭素原子以外の元素、例えば、水素原子、窒素原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、リン原子、イオウ原子、フッ素原子および塩素原子のうちの一以上の原子を含有していてもよい。
無機薄膜層は、無機薄膜層中の珪素原子(Si)に対する炭素原子(C)の平均原子数比をC/Siで表した場合に、緻密性を高くし、微細な空隙やクラック等の欠陥を少なくする観点から、C/Siの範囲は式(3):
0.02<C/Si<0.50 (3)
を満たすことが好ましい。
C/Siは、同様の観点から、0.03<C/Si<0.45の範囲にあるとより好ましく、0.04<C/Si<0.40の範囲にあるとさらに好ましく、0.05<C/Si<0.35の範囲にあると特に好ましい。
また、無機薄膜層は、薄膜層中の珪素原子(Si)に対する酸素原子(O)の平均原子数比をO/Siで表した場合に、緻密性を高くし、微細な空隙やクラック等の欠陥を少なくする観点から、1.50<O/Si<1.98の範囲にあると好ましく、1.55<O/Si<1.97の範囲にあるとより好ましく、1.60<O/Si<1.96の範囲にあるとさらに好ましく、1.65<O/Si<1.95の範囲にあると特に好ましい。
なお、平均原子数比C/SiおよびO/Siは、例えば、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、得られた珪素原子、酸素原子および炭素原子の分布曲線から、それぞれの原子の厚み方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子数比C/SiおよびO/Siとして算出できる。詳細は後述する実施例の項に記載する。
<XPSデプスプロファイル測定>
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.027nm/秒
スパッタ時間:0.5分
X線光電子分光装置:アルバック・ファイ(株)製、機種名「Quantera SXM」
照射X線:単結晶分光AlKα(1486.6eV)
X線のスポットおよびそのサイズ:100μm
検出器:Pass Energy 69eV,Step size 0.125eV
帯電補正:中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)
無機薄膜層の表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、1240〜1290cm−1に存在するピーク強度(I2)との強度比(I/I)が式(4):
0.01≦I/I<0.05 (4)
を満たすことが好ましい。
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−O−Siに対するSi−CHの相対的な割合を表すと考えられる。式(4)で表される関係を満たす無機薄膜層は、緻密性が高く、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすいため、ガスバリア性および耐衝撃性を高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iは、無機薄膜層の緻密性を高く保持しやすい観点から、0.02≦I/I<0.04の範囲がより好ましい。
無機薄膜層が上記ピーク強度比I/Iの範囲を満たす場合、本発明のガスバリア性フィルムが適度に滑りやすくなり、ブロッキングを低減しやすい。上記ピーク強度比I/Iが大きすぎると、Si−Cが多すぎることを意味し、この場合、屈曲性が悪く、かつ滑りにくくなる傾向がある。また、上記ピーク強度比I/Iが小さすぎると、Si−Cが少なすぎることにより屈曲性が低下する傾向がある。
無機薄膜層の表面の赤外分光測定は、例えば、プリズムにゲルマニウム結晶を用いたATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光製、FT/IR−460Plus)によって測定できる。
無機薄膜層の表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)との強度比(I/I)が式(5):
0.25≦I/I≦0.50 (5)
を満たすことが好ましい。
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−O−Siに対するSi−CやSi−O等の相対的な割合を表すと考えられる。式(5)で表される関係を満たす無機薄膜層は、高い緻密性を保持しつつ、炭素が導入されることから耐屈曲性を高めやすく、かつ耐衝撃性も高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iは、無機薄膜層の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、0.25≦I/I≦0.50の範囲が好ましく、0.30≦I/I≦0.45の範囲がより好ましい。
前記無機薄膜層は、無機薄膜層表面に対して赤外分光測定(ATR法)を行った場合、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)と、870〜910cm−1に存在するピーク強度(I)との強度比が式(6):
0.70≦I/I<1.00 (6)
を満たすことが好ましい。
赤外分光測定(ATR法)から算出したピーク強度比I/Iは、無機薄膜層中のSi−Cに関連するピーク同士の比率を表すと考えられる。式(6)で表される関係を満たす無機薄膜層は、高い緻密性を保持しつつ、炭素が導入されることから耐屈曲性を高めやすく、かつ耐衝撃性も高めやすいと考えられる。ピーク強度比I/Iの範囲について、無機薄膜層の緻密性と耐屈曲性のバランスを保つ観点から、0.70≦I/I<1.00の範囲が好ましく、0.80≦I/I<0.95の範囲がより好ましい。
無機薄膜層の厚みは、用途に応じて適宜調整してよいが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは50nm以上であり、また、好ましくは3000nm以下、より好ましくは2000nm以下、さらに好ましくは1000nm以下である。無機薄膜層の厚みは、膜厚計によって測定することができる。厚みが上記の下限値以上であると、ガスバリア性が向上しやすい。また、厚みが上記の上限値以下であると、屈曲性が向上しやすい。特に、後述するように、グロー放電プラズマを用いて、プラズマCVD法により薄膜層を形成する場合には、基材を通して放電しつつ前記無機薄膜層を形成することから、10〜2000nmであることがより好ましく、50〜1000nmであることがさらに好ましい。
無機薄膜層は、好ましくは1.8g/cm以上の高い平均密度を有し得る。ここで、無機薄膜層の「平均密度」は、ラザフォード後方散乱法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS)で求めた珪素の原子数、炭素の原子数、酸素の原子数と、水素前方散乱法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS)で求めた水素の原子数とから測定範囲の無機薄膜層の重さを計算し、測定範囲の無機薄膜層の体積(イオンビームの照射面積と膜厚との積)で除することで求められる。無機薄膜層の平均密度が上記下限値以上であると、緻密性が高く、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすい構造となるため好ましい。無機薄膜層が珪素原子、酸素原子、炭素原子および水素原子からなる本発明の好ましい一態様において、無機薄膜層の平均密度が2.22g/cm未満であることが好ましい。
無機薄膜層が少なくとも珪素原子(Si)、酸素原子(O)、および炭素原子(C)を含有する本発明の好ましい一態様において、該無機薄膜層の膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における珪素原子の原子比との関係を示す曲線を珪素分布曲線という。ここで、無機薄膜層表面とは、本発明のガスバリア性フィルムの表面となる面を指す。同様に、膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における酸素原子の原子比との関係を示す曲線を酸素分布曲線という。また、膜厚方向における該無機薄膜層表面からの距離と、各距離における炭素原子の原子比との関係を示す曲線を炭素分布曲線という。珪素原子の原子比、酸素原子の原子比および炭素原子の原子比とは、無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対するそれぞれの原子数の比率を意味する。
屈曲によるガスバリア性の低下を抑制しやすい観点からは、前記無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化することが好ましい。ここで、上記炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向において連続的に変化するとは、例えば上記の炭素分布曲線において、炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを表す。
前記無機薄膜層の炭素分布曲線が8つ以上の極値を有することが、ガスバリア性フィルムの屈曲性およびガスバリア性の観点から好ましい。
前記無機薄膜層の珪素分布曲線、酸素分布曲線および炭素分布曲線が、下記の条件(i)および(ii)を満たすことが、ガスバリア性フィルムの屈曲性およびガスバリア性の観点から好ましい。
(i)珪素の原子数比、酸素の原子数比および炭素の原子数比が、前記無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、下記式(7)で表される条件を満たす、および、
(酸素の原子数比)>(珪素の原子数比)>(炭素の原子数比) (7)
(ii)前記炭素分布曲線が好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは8つ以上の極値を有する。
無機薄膜層の炭素分布曲線は、実質的に連続であることが好ましい。炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことである。具体的には、膜厚方向における前記薄膜層表面からの距離をx[nm]、炭素の原子比をCとしたときに、式(8):
|dC/dx|≦0.01 (8)
を満たすことが好ましい。
また、無機薄膜層の炭素分布曲線は少なくとも1つの極値を有することが好ましく、8つ以上の極値を有することがより好ましい。ここでいう極値は、膜厚方向における無機薄膜層表面からの距離に対する各元素の原子比の極大値または極小値である。極値は、膜厚方向における無機薄膜層表面からの距離を変化させたときに、元素の原子比が増加から減少に転じる点、または元素の原子比が減少から増加に転じる点での原子比の値である。極値は、例えば、膜厚方向において複数の測定位置において、測定された原子比に基づいて求めることができる。原子比の測定位置は、膜厚方向の間隔が、例えば20nm以下に設定される。膜厚方向において極値を示す位置は、各測定位置での測定結果を含んだ離散的なデータ群について、例えば互いに異なる3以上の測定位置での測定結果を比較し、測定結果が増加から減少に転じる位置または減少から増加に転じる位置を求めることによって得ることができる。極値を示す位置は、例えば、前記の離散的なデータ群から求めた近似曲線を微分することによって、得ることもできる。極値を示す位置から、原子比が単調増加または単調減少する区間が例えば20nm以上である場合に、極値を示す位置から膜厚方向に20nmだけ移動した位置での原子比と、極値との差の絶対値は例えば0.03以上である。
前記のように炭素分布曲線が好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは8つ以上の極値を有する条件を満たすように形成された無機薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、前記条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、前記条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素分布曲線の極値の数が2つ以上になるように前記薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が1つである場合と比較して、前記の増加量が少なくなる。また、炭素分布曲線の極値の数が3つ以上になるように前記薄膜層を形成すると、炭素分布曲線の極値の数が2つである場合と比較して、前記の増加量が少なくなる。炭素分布曲線が2つ以上の極値を有する場合に、第1の極値を示す位置の膜厚方向における前記薄膜層表面からの距離と、第1の極値と隣接する第2の極値を示す位置の膜厚方向における前記薄膜層表面からの距離との差の絶対値が、1nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましく、1nm以上100nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。
また、前記無機薄膜層の炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が0.01より大きいことが好ましい。前記条件を満たすように形成された無機薄膜層は、屈曲前のガス透過率に対する屈曲後のガス透過率の増加量が、前記条件を満たさない場合と比較して少なくなる。すなわち、前記条件を満たすことにより、屈曲によるガスバリア性の低下を抑制する効果が得られる。炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が0.02以上であると前記の効果が高くなり、0.03以上であると前記の効果がさらに高くなる。
珪素分布曲線における珪素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が低くなるほど、無機薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、前記の絶対値は、0.05未満(5at%未満)であることが好ましく、0.04未満(4at%未満)であることがより好ましく、0.03未満(3at%未満)であることが特に好ましい。
また、酸素炭素分布曲線において、各距離における酸素原子の原子比および炭素原子の原子比の合計を「合計原子比」としたときに、合計原子比の最大値および最小値の差の絶対値が低くなるほど、前記薄膜層のガスバリア性が向上する傾向がある。このような観点で、前記の合計原子比は、0.05未満であることが好ましく、0.04未満であることがより好ましく、0.03未満であることが特に好ましい。
前記無機薄膜層面内方向において、無機薄膜層を実質的に一様な組成にすると、無機薄膜層のガスバリア性を均一にするとともに向上させることができる。実質的に一様な組成であるとは、酸素分布曲線、炭素分布曲線および酸素炭素分布曲線において、前記無機薄膜層表面の任意の2点で、それぞれの膜厚方向に存在する極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは0.05以内の差であることをいう。
前記条件を満たすように形成された無機薄膜層は、例えば有機EL素子を用いたフレキシブル電子デバイスなどに要求されるガスバリア性を発現することができる。
無機薄膜層が少なくとも珪素原子、酸素原子、および炭素原子を含有する本発明の好ましい一態様において、このような原子を含む無機材料の層は、緻密性を高めやすく、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすい観点から、化学気相成長法(CVD法)で形成されることが好ましく、中でも、グロー放電プラズマなどを用いたプラズマ化学気相成長法(PECVD法)で形成されることがより好ましい。
化学気相成長法において使用する原料ガスの例は、珪素原子および炭素原子を含有する有機ケイ素化合物である。このような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンである。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られる無機薄膜層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。原料ガスとして、これらの有機ケイ素化合物の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
また、上記原料ガスに対して、上記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物を形成可能とする反応ガスを適宜選択して混合することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組合せて使用することができる。原料ガスと反応ガスの流量比は、成膜する無機材料の原子比に応じて適宜調節できる。
上記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
また、真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
ガスバリア性フィルムの製造方法は、各層を任意の順に形成できれば、特に限定されないが、その例としては、可撓性フィルムの一方の面に有機層を形成した後、該有機層上に無機薄膜層を形成する方法が挙げられる。可撓性フィルムと有機層との間にプライマー層を有する場合、可撓性フィルムの一方の面にプライマー層を形成した後、該プライマー層上に有機層を形成することができる。また、ガスバリア性フィルムが、前記可撓性フィルムの両側に有機層を含む場合、上記方法と同様にして可撓性フィルムの両側に有機層を形成することができる。また、各層を別々に作製した後、これらを貼り合わせて製造してもよい。
無機薄膜層の緻密性を高めやすく、微細な空隙やクラック等の欠陥を低減しやすい観点からは、無機薄膜層は、上述したように、基材上にグロー放電プラズマを用いて、CVD法等の公知の真空成膜手法で形成することが好ましい。無機薄膜層は、連続的な成膜プロセスで形成させることが好ましく、例えば、長尺の積層体を連続的に搬送しながら、その上に連続的に無機薄膜層を形成させることがより好ましい。具体的には、該積層体を送り出しロールから巻き取りロールへ搬送しながら無機薄膜層を形成させてよい。その後、送り出しロールおよび巻き取りロールを反転させて、逆向きに該積層体を搬送させることで、さらに無機薄膜層を形成させてもよい。
上記のようなガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性を有するため、例えば、高いガスバリア性が要求される電子デバイス用途に好適である。電子デバイスとしては、例えば、高いガスバリア性が要求される液晶表示素子、太陽電池、有機ELディスプレイ、有機ELマイクロディスプレイ、有機EL照明および電子ペーパー等のフレキシブル電子デバイス(フレキシブルディスプレイ)が挙げられる。上記ガスバリア性フィルムは、該フレキシブル電子デバイスのフレキシブル基板として好適に使用できる。このようなガスバリア性フィルムをフレキシブル基板として用いる場合、別の基板上に素子を形成させた後で、該ガスバリア性フィルムを接着層や粘着層を介して上から重ね合せてもよいが、微小の異物を精度よく除去し得る本発明の光学フィルムの製造方法に従い作製されるガスバリア性フィルムは、フィルム上に直接素子を形成するのに好適である。
本発明の光学フィルムの製造方法により得られる光学フィルムは、それらの光学特性に応じて位相差フィルムなどの各種光学機能を有するフィルムとして用いることができる。また、フィルム上および/またはフィルム内の極小さな異物までが低減または除去されているため、上述した通り、極小さな異物に起因して塗布ムラなどの外観的欠陥や光学特性の低下が顕著に生じやすい光学機能層を形成する際の基材としても好適である。本発明の製造方法により得られる光学フィルム上に、有機EL素子や各種光学機能層を設ける場合、異物検出用塗膜を洗浄等により除去した後のフィルム表面に、または、異物検出用塗膜を除去することなく該塗膜上に、従来公知の方法を用いて所望の層を形成することができる。
例えば、本発明の製造方法において、上述したようなガスバリア性フィルムを原料光学フィルムとして用いる場合、後に有機EL素子などの他の層が形成される無機薄膜層上に異物検出用塗膜を形成し、異物の検出および除去を行うことにより、後に形成される有機EL素子や他の光学機能層等に外観的欠陥や光学/発光特性の低下等を生じ難いガスバリア性フィルムを得ることができる。本発明の製造方法により得られたガスバリア性フィルム(光学フィルム)の無機薄膜層上に有機EL素子を直接形成することにより、有機ELディスプレイや有機EL照明などの各種電子デバイスを製造できる。この際、有機EL素子の構成およびその作製方法等は特に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記しない限り、質量%および質量部である。
1.光学フィルムの製造
(1)原料光学フィルムの製造
(i)有機層付き基材の作製
基材として、可撓性フィルムの両面にプライマー層を有する二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション(株)製、Q65HWA、厚み100μm、幅350mm、両面易接着処理)の片面に、有機層を形成するための有機層形成用組成物として、コーティング組成物(日本化工塗料(株)、TOMAX FA−3292)をグラビアコーティング法にて塗布した。該塗膜を100℃で1分間乾燥させた後、高圧水銀ランプを用いて、積算光量500mJ/cmの条件で紫外線照射し、厚み2.5μmの有機層を積層させて、有機層付き基材を得た。
得られた有機層付き基材の有機層側の表面に、以下に記載する無機薄膜層の製造方法に従い、無機薄膜層(厚み700nm)を積層させて、基材(プライマー層/可撓性フィルム/プライマー層/有機層)上に無機薄膜層が形成された積層フィルム1を得た。
なお、積層フィルム1の有機層および無機薄膜層の各膜厚は、膜厚計〔(株)小坂研究所製:サーフコーダET200)を用いて、無成膜部と成膜部の段差測定を行い、各層の膜厚(T)を求めた。
(ii)無機薄膜層の作製
図1に示すような製造装置を用いて、基材上に無機薄膜層を積層させた。具体的には、真空チャンバー内に設置した図1に示すような製造装置において、上記有機層付き基材18を送り出しロ−ル10に装着し、真空チャンバー内を1×10−3Pa以下にした後、搬送ロール11により前記基材18を搬送しながら、基材を構成する有機層上に無機薄膜層の成膜を行った。無機薄膜層を形成させるために用いるプラズマCVD装置においては、成膜ロール12と成膜ロール13とからなる一対のロール状電極表面にそれぞれ前記有機層付き基材18を密接させながら搬送させ、一対の電極間でプラズマを発生させて、プラズマ中で原料を分解させて前記有機層上に無機薄膜層を形成させた。前記の一対のロール状電極は、磁束密度が電極および搬送される有機層付き基材表面で高くなるように電極内部に磁石が配置されており、プラズマ発生時に電極および前記有機層付き基材上でプラズマが高密度に拘束される。無機薄膜層の成膜にあたっては、成膜領域となる電極(成膜ロール12および成膜ロール13)間の空間に向けてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス、酸素ガスを導入し、電極ロール間に交流電力を供給し、放電してプラズマを発生させた。次いで、真空チャンバー内の排気口周辺における圧力が1Paになるように排気量を調節した後、プラズマCVD法により有機層付き基材上に緻密な無機薄膜層を形成し、巻取りロール17によりロール状に巻き取った。
〈成膜条件1〉
原料ガスの供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
酸素ガスの供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:1Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.4kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;3.0m/分
パス回数:28回
(iii)積層フィルムの分析
得られた積層フィルム1について、以下の分析および評価を行った。
〔無機薄膜層の膜厚方向のX線光電子分光測定〕
積層フィルム1の無機薄膜層の膜厚方向の原子数比を、走査型X線光電子分光分析装置(ULVAC PHI(株)製、QuanteraSXM)を用いて、X線光電子分光法により、下記測定条件に従って測定した。X線源としてはAlKα線(1486.6eV、X線スポット100μm)を用い、また、測定時の帯電補正のために、中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)を使用した。測定後の解析は、MultiPak V6.1A(ULVAC PHI(株))を用いてスペクトル解析を行い、測定したワイドスキャンスペクトルから得られるSiの2p、Oの1s、Nの1s、およびCの1sそれぞれのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて、Siに対するCの表面原子数比(C/Si)およびSiに対するOの表面原子数比(O/Si)を算出した。表面原子数比としては、5回測定した値の平均値を採用した。この結果から、炭素分布曲線を作成した。
<XPSデプスプロファイル測定>
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.027nm/秒
スパッタ時間:0.5分
X線光電子分光装置:ULVAC PHI社製、機種名「Quantera SXM」
照射X線:単結晶分光AlKα(1486.6eV)
X線のスポットおよびそのサイズ:100μm
検出器:Pass Energy 69eV,Step size 0.125eV
帯電補正:中和電子銃(1eV)、低速Arイオン銃(10V)
上記XPSデプスプロファイル測定の結果から、得られた積層フィルム1の無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において、原子数比が大きい方から酸素、珪素および炭素の順であることが確認された。また、得られた珪素原子、酸素原子および炭素原子の分布曲線から、それぞれの原子の厚み方向における平均原子濃度を求めた後、平均原子数比C/SiおよびO/Siを算出した結果、平均原子数比C/Si=0.30、O/Si=1.73であることが確認された。さらに、無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比は、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化していた。
〔無機薄膜層表面の赤外分光測定(ATR法)〕
積層フィルム1の無機薄膜層表面の赤外分光測定は、プリズムにゲルマニウム結晶を用いたATRアタッチメント(PIKE MIRacle)を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(日本分光(株)製、FT/IR−460Plus)を用いて行った。
得られた赤外吸収スペクトルから、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、1240〜1290cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.03であった。また、950〜1050cm−1に存在するピーク強度(I)と、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.36であった。また、770〜830cm−1に存在するピーク強度(I)と、870〜910cm−1に存在するピーク強度(I)との吸収強度比(I/I)を求めると、I/I=0.84であった。
〔積層フィルムの水蒸気透過度〕
水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件において、ISO/WD 15106−7(Annex C)に準拠してCa腐食試験法で測定した。
得られた積層フィルム1の、温度40℃、湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は5.0×10−5g/(m・day)であった。
(iv)異物検出用塗膜の形成
上記で作製した積層フィルム1を原料フィルムとして用いた。積層フィルム1から切り出した50mm四方のサンプルを複数枚準備し、各サンプルの無機薄膜層側表面の中央部に、塗膜形成用組成物として蛍光インク(トンボ鉛筆製蛍光マーカー補充インク)を500mg垂らし、スピンコート法により3,000rpm、20秒の条件で蛍光インクをサンプル表面全域に塗り広げた。得られた塗膜を室温(25℃)で乾燥させることにより、無機薄膜層上に厚さ300nmの異物検出用塗膜を形成した。
異物検出用塗膜の膜厚の測定は、レーザー顕微鏡〔オリンパス(株)製:OLS4100)を用いて、塗膜形成部と塗膜をふき取り露出させた積層フィルム1の無機薄膜層表面の段差測定により行った。
(v)異物の検出検査および除去
異物検出用塗膜を形成した積層フィルム1の異物検出用塗膜側の表面に、光(365nm、15W)を照射し、目視観察にて、蛍光インクを含む異物検出用塗膜の塗布膜厚ムラが生じている部分を、異物の存在するフィルム領域として特定した。各サンプルについて前記目視観察を行い、異物の存在するフィルム領域を含まないサンプルと、異物の存在するフィルム領域を含むサンプルとを1枚ずつ取り出した。かかる工程において、主に5μm〜30μm程度の大きさ、および主に0.05μm〜1.0μm程度の高さの異物が除去された。なお、異物の大きさおよび高さは、レーザー顕微鏡〔オリンパス(株)製:OLS4100)を用いて欠陥部を直接観察することにより測定した。
(vi)異物検出用塗膜の洗浄
目視観察により取り出した、異物の存在するフィルム領域を含まないサンプルと、異物の存在するフィルム領域を含むサンプルの無機薄膜層側の表面に形成された異物検出用塗膜を、それぞれ、高圧水(25℃、0.6MPa)で洗浄することにより除去した。
異物の存在するフィルム領域を含まないサンプルを本発明に従う光学フィルム1として、異物の存在するフィルム領域を含むサンプルを比較のための光学フィルム2として用い、以下の方法に従い有機EL素子を形成し、光学フィルムの評価を行った。
(vii)有機EL素子の作製
異物検出用塗膜を除去した光学フィルム1および2について、それぞれ、無機薄膜層上に、メタルシャドウマスクを用いて、スパッタリング法にて膜厚150nmのITO膜をパターン成膜した。なお、かかるパターン成膜において、ITO膜は、図2および図3に示すように、光学フィルムの表面上において2つの領域が形成されるようにパターン成膜され、一方の領域を陰極用取り出し電極(第二電極の取り出し電極203(a))として利用し、他方の領域を陽極(ITO電極)(第一電極201)として利用した。次に、光学フィルムのITO膜が形成されている面に対して、UVオゾン洗浄装置((株)テクノビジョン製、商品名:UV−312)を用いて10分間のクリーニングおよび表面改質処理を実施した。次いで、光学フィルムのITO膜が形成されている面上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(ヘレウス(株)製、商品名:AI4083)の懸濁液を0.2μm径のフィルターでろ過して得られたろ液を、スピンコートにより製膜し、大気圧下、ホットプレート上において、160℃の温度条件で60分間乾燥して、ITO膜上に65nmの厚みの正孔注入層を形成した。
有機溶媒のキシレンに発光材料(高分子化合物)を溶解させたキシレン溶液を準備した。なお、前記発光材料(高分子化合物)は特開2012−144722号公報の実施例1に記載の組成物1の調製方法と同様の手法により調製した。次いで、ITO膜および正孔注入層が形成された光学フィルムの正孔注入層が形成されている表面上に、大気圧下において、上記キシレン溶液をスピンコート法により塗布し、厚さが80nmの発光層用の塗布膜を製膜した。その後、酸素濃度および水分濃度がそれぞれ10体積ppm以下に制御された窒素ガス雰囲気下において、130℃の温度条件で10分間保持して乾燥させて、正孔注入層上に発光層を積層した。その後、外部電極との接触部(陽極用および陰極用の取り出し電極の部分)の上に成膜された正孔注入層および発光層を除去して、外部電極との接触が可能となるように一部を露出させた。次いで、蒸着チャンバーにITO膜、正孔注入層および発光層が形成された光学フィルムを移し、陰極用マスクとの位置を調整(アライメント)して、発光層の表面上に陰極を積層しつつ陰極用の取り出し電極の部分に陰極が電気的に接続されるように陰極を成膜するために、マスクと基板を回転させながら陰極を蒸着した。このようにして形成した陰極は、まず、フッ化ナトリウム(NaF)を加熱して蒸着速度約0.5Å/secで厚さ約4nmとなるまで蒸着した後に、アルミニウム(Al)を蒸着速度約4Å/secで厚さ約100nmとなるまで蒸着して積層した構成とした。
次に、厚みが35μmの電解銅ホイルを、陰極上に積層して陰極側から見た場合に、発光層の全体を覆うことが可能で、且つ、外部電極との接触部(陽極用および陰極用の取り出し電極の部分)の一部が外部にはみ出すような大きさを有する形状(図3参照:図3のように、電解銅ホイル(封止基板4)を上部から見た場合に、陰極よりも大きな面積を有して陰極が見えなくなるような大きさで、且つガスバリア性フィルム上に形成されている外部との接触部(陽極用および陰極用取出し電極の部分)(第一電極201および第二電極の取り出し電極203(a))の一部がその電解銅ホイルの外側にはみ出して見えるような大きさを有する形状)にローラーカッターを用いて切り出して、封止基板を準備した。このようにして準備した電解銅ホイルからなる封止基板は、縦40mm、横40mm、厚み35μmのものであった。
上記封止基板(電解銅ホイル)を、窒素雰囲気中、130℃の温度条件で15分間加熱して、表面に吸着している水分を除去した(乾燥処理を施した)。次いで、封止材としてビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる主剤と変性ポリアミドからなる硬化剤との混合により室温(25℃)で硬化する2液型エポキシ接着剤を用いて、ITO膜/正孔注入層/発光層/陰極からなる積層構造部分からなる発光素子部を覆うように封止材を塗布し、その封止材の層上に、封止基板と陰極とが向かい合うように封止基板を貼り合せて、封止を行った。すなわち、ITO膜/正孔注入層/発光層/陰極からなる積層構造部分を覆うように、上記封止材(接着剤)を塗布して(ただし、各電極と外部とを電気的に接続することを可能とするための接続部(取り出し電極の部分)の一部は除く)、窒素中で気泡が入らないようにして、上記陰極形成後の上記ガスバリア性フィルムの表面上の封止材の層上に、封止基板を貼り合せることで、発光素子部(ITO膜/正孔注入層/発光層/陰極の積層構造部分:取り出し電極の一部は除く)を封止して、有機EL素子を製造した。なお、このような有機EL素子はフレキシブルなものであった。この有機EL素子は、図2に示す有機EL素子の発光素子部2に対して、更に、正孔注入層を積層したような構造のもの(図2に示す発光素子部2とは正孔注入層を更に有する点で発光素子部の構成が異なるものの、それ以外は基本的に同様の構成の有機EL素子)である。ここで、封止材層の厚みは10μmであった。
このような有機EL素子を封止基板側から見た場合の模式図を図3に示す。また、図3に示すように、得られた有機EL素子を封止基板4側から見ると、ガスバリア性フィルムと、陽極(第一電極201)の外部に引き出している部分(外部との接続部分:取り出し電極)と、陰極と外部との接続部(第二電極の取り出し電極203(a))と、封止基板4とが確認できる。このように、封止材および封止基板を用いた封止に際しては、各電極の取り出し電極の一部を外部と接続可能な状態にしながら、発光素子部(ITO膜/正孔注入層/発光層/陰極からなる積層構造部分)の周囲を封止した。なお、発光素子部において、発光エリア(発光する部分の面積)の大きさは縦10mm、横10mmであった。
光学フィルム1上に形成された有機EL素子を発光させたところ、縦10mm、横10mmの均一な全面発光が確認された。次に、この有機EL素子を60℃、90%RHの加速試験条件下で保管し、100時間保管後に、再度発光させたときに見られる非発光部(ダークスポット)の面積率を求めたところ、0.5%であった。
同様に、有機EL素子を形成した光学フィルム2において有機EL素子を発光させたところ、異物に伴う非発光点が5点見られた。また、60℃、90%RHの加速試験条件下で保管し、100時間保管後に、再度発光させたときに見られる非発光部(ダークスポット)の面積率は、10%であった。
1:光学フィルム
2:発光素子部
3:接着剤
4:封止基板
10:送り出しロール
11:搬送ロール
12:成膜ロール
13:成膜ロール
14:ガス供給管
15:プラズマ発生用電源
16:磁場発生装置
17:巻取りロール
18:基材
20:有機EL素子
101:可撓性フィルム
102:有機層
103:無機薄膜層
201:第一電極
202:有機EL層
203:陰極
203(a):第二電極の取出し電極

Claims (13)

  1. a)光学特性を有する原料フィルムの表面上に、異物検出用の塗膜を形成する工程、
    b)前記塗膜を形成したフィルム表面に光を照射することにより、フィルム上および/またはフィルム内部に存在する異物を検出し、異物の存在するフィルム領域を特定する工程、および、
    c)前記フィルム領域を除去して、または、前記フィルム領域にマーキングを行い、光学フィルムを得る工程
    を含む、光学フィルムの製造方法。
  2. 異物検出用の塗膜は、蛍光物質、着色剤、高屈折率材料および低屈折率材料からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 異物検出用の塗膜は、該塗膜を形成する原料フィルムの屈折率に対して、絶対値で3%以上50%以下の屈折率を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 異物検出用の塗膜を洗浄により除去する工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 光学特性を有する原料フィルムを製造する工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 原料フィルムは長尺状である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 長尺状の原料フィルムまたは光学フィルムを枚葉体に加工することを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 光学フィルムは、基材と、前記基材上に積層された無機薄膜層とを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記基材が有機層を含む、請求項8に記載の製造方法。
  10. 無機薄膜層はプラズマ化学気相成長法により形成された層である、請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 無機薄膜層は珪素原子、酸素原子および炭素原子を含有する、請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 無機薄膜層に含まれる珪素原子、酸素原子および炭素原子の合計数に対する炭素原子の原子数比が、無機薄膜層の膜厚方向における90%以上の領域において連続的に変化する、請求項11に記載の製造方法。
  13. 光学フィルムはガスバリア性を有する、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
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