以下、実施形態に係る電動工具1について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
(1)概要
図1、図2に示すように、電動工具1は、モータ15と、操作部29と、制御部4と、出力軸21と、伝達機構18と、を備える。
操作部29は、ユーザからの操作を受け付ける。制御部4は、ベクトル制御を利用して、操作部29への操作に応じてモータ15の回転動作を制御する。出力軸21は、締付部材30を回転させる先端工具28と連結される。伝達機構18は、モータ15の回転力を出力軸21へと伝達する。締付部材30は、対象物100に対して締め付けられる部材である。締付部材30は、例えばボルト、ナット、ビス(木ねじ等)、トルクス(登録商標)等である。先端工具28は、例えばソケットビット、レンチビット、ドライバビット、トルクスビット等である。対象物100は、例えば木材、壁、ナットに対するボルト等である。
制御部4は、緩み検出機能を有している。緩み検出機能は、対象物100に締め付けられている締付部材30を先端工具28によって対象物100から緩める場合に、トルク電流(q軸電流)に基づいて、締付部材30の緩みを検出する機能である。制御部4は、緩み検出機能により締付部材30の緩みを検出すると、モータ15の速度を低下させる又はモータ15を停止させる。
電動工具1の緩み検出機能では、モータ15に供給されるトルク電流に基づいて、対象物100からの締付部材30の緩みが検出される。そのため、本実施形態の電動工具1によれば、ねじ等の締付部材30の緩みの検出の確実性が向上し、電動工具1の使い勝手を向上できる。
また、トルク電流の値は、モータ15のベクトル制御にも用いられている。そのため、緩み検出用のセンサ等を新たに追加する必要がなく、電動工具1の小型化及び低コスト化等を図ることができる。
(2)詳細
(2.1)電動工具
以下、本実施形態の電動工具1について、図面を参照して更に詳細に説明する。本実施形態の電動工具1は、いわゆるインパクト工具である。インパクト工具は、例えば、インパクトドライバ、ハンマドリル、インパクトドリル、インパクトドリルドライバ又はインパクトレンチとして用いられる。本実施形態では、代表例として、電動工具1がインパクトドライバとして用いられる場合について説明する。
図1、図2に示すように、電動工具1は、モータ15と、出力軸21と、伝達機構18と、ソケット23と、先端工具28と、電源部32と、操作部29と、制御部4と、インバータ回路部51と、正逆切換スイッチ9と、を備えている。
モータ15は、ブラシレスモータである。特に、本実施形態のモータ15は、同期電動機であり、より詳細には、永久磁石同期電動機(PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor))である。モータ15は、永久磁石131を有する回転子13と、コイル141を有する固定子14と、を含んでいる。回転子13は、回転動力を出力する回転軸16を有している。コイル141と永久磁石131との電磁的相互作用により、回転子13は、固定子14に対して回転する。
出力軸21は、モータ15から伝達機構18を介して伝達された駆動力により回転する部分である。ソケット23は、出力軸21に固定されている。ソケット23には、先端工具28が着脱自在に取り付けられる。先端工具28は、出力軸21と一緒に回転する。電動工具1は、モータ15の駆動力で出力軸21を回転させることで、先端工具28を回転させる。すなわち、電動工具1は、先端工具28をモータ15の駆動力で駆動する工具である。各種の先端工具28のうち用途に応じた先端工具28が、ソケット23に取り付けられて用いられる。なお、出力軸21に直接に先端工具28が装着されてもよい。先端工具28が締付部材30(ボルト、ねじ等)に当てられた状態で、先端工具28が正転方向に回転することにより、締付部材30を対象物100に締め付けることができる。また、先端工具28が締付部材30(ボルト、ねじ等)に当てられた状態で、先端工具28が逆転方向(正転方向とは反対方向)に回転することにより、締付部材30を対象物100から緩めることができる。
なお、本実施形態の電動工具1はソケット23を備えることで、先端工具28を用途に応じて交換可能であるが、先端工具28が交換可能であることは必須ではない。例えば、電動工具1は、特定の先端工具28のみ用いることができる工具であってもよい。
本実施形態の先端工具28は、締付部材30(ねじ)を締める又は緩めるためのドライバビットである。より詳細には、先端工具28は、先端部280が+(プラス)形に形成されたプラスドライバビットである。すなわち、出力軸21は、ねじを締める又は緩めるためのドライバビットを保持し、モータ15から動力を得て回転する。
伝達機構18は、インパクト機構17と、遊星歯車機構25と、駆動軸22と、を有している。伝達機構18は、モータ15の回転軸16の回転動力を出力軸21に伝達する。より詳細には、伝達機構18は、モータ15の回転軸16の回転動力を調整して、出力軸21の回転として出力する。
モータ15の回転軸16は、遊星歯車機構25に接続されている。駆動軸22は、遊星歯車機構25と、インパクト機構17と、に接続されている。遊星歯車機構25は、モータ15の回転軸16の回転動力を所定の減速比で減速して、駆動軸22の回転として出力する。
インパクト機構17は、出力軸21と連結されている。インパクト機構17は、遊星歯車機構25及び駆動軸22を介して受け取ったモータ15(回転軸16)の回転動力を、出力軸21に伝達する。
インパクト機構17は、出力軸21に加えられるトルクの大きさに応じて打撃動作を行う。インパクト機構17は、打撃動作において、出力軸21に打撃力を加える。
図2に示すように、インパクト機構17は、ハンマ19と、アンビル20と、ばね24と、を備えている。ハンマ19は、駆動軸22にカム機構を介して取り付けられている。アンビル20はハンマ19に接触しており、ハンマ19と一体に回転する。ばね24は、ハンマ19をアンビル20側に押している。アンビル20は、出力軸21と一体に形成されている。なお、アンビル20は、出力軸21とは別体に形成されて出力軸21に固定されていてもよい。
出力軸21にかかる負荷(トルク)が所定の大きさより小さい場合には、インパクト機構17は、モータ15の回転動力により出力軸21を連続的に回転させる。すなわち、この場合には、カム機構により連結された駆動軸22とハンマ19とが一体に回転し、更にハンマ19とアンビル20とが一体に回転するので、アンビル20と一体に形成された出力軸21が駆動軸22と一緒に回転する。
一方で、出力軸21に所定の大きさ以上の負荷がかかった場合には、インパクト機構17は、打撃動作を行う。インパクト機構17は、打撃動作において、モータ15の回転動力をパルス状のトルクに変換して打撃力を発生する。すなわち、打撃動作では、ハンマ19は、駆動軸22との間のカム機構による規制を受けながら、ばね24に抗して後退する(アンビル20から離れる)。ハンマ19の後退によりハンマ19とアンビル20との結合が外れた時点で、ハンマ19は回転しながら前進して(出力軸21側へ移動して)アンビル20に回転方向の打撃力を加え、出力軸21を回転させる。つまり、インパクト機構17は、アンビル20を介して出力軸21に軸(出力軸21)周りの回転打撃を加える。インパクト機構17の打撃動作では、ハンマ19がアンビル20に回転方向の打撃力を加える動作が繰り返される。ハンマ19が後退して前進する度に、打撃力が1回発生する。
電源部32は、モータ15を駆動する電流を供給する。電源部32は、例えば、電池パックである。電源部32は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。
操作部29は、トリガスイッチを備えている。トリガスイッチを引く操作により、モータ15のオンオフを切換可能である。また、トリガスイッチを引く操作の引込み量で、モータの回転速度を調整可能である。その結果として、トリガスイッチを引く操作の引込み量で、出力軸21の回転速度を調整可能である。上記引込み量が大きいほど、モータ15及び出力軸21の回転速度が速くなる。制御部4は、トリガスイッチを引く操作の引込み量に応じて、モータ15及び出力軸21を回転又は停止させ、また、モータ15及び出力軸21の回転速度を制御する。この電動工具1では、先端工具28がソケット23を介して出力軸21に連結される。そして、トリガスイッチへの操作によってモータ15及び出力軸21の回転速度が制御されることで、先端工具28の回転速度が制御される。
より詳細には、トリガスイッチは、操作信号を出力する多段階スイッチ又は無段階スイッチ(可変抵抗器)を備える。操作信号は、トリガスイッチへの操作量(引込み量)に応じて変化する。トリガスイッチは、操作信号に応じてモータ15の速度(回転数)の目標値ω1 *を決定し、制御部4に与える。制御部4は、トリガスイッチから受け取った目標値ω1 *に基づいて、モータ15の回転を制御する。
正逆切換スイッチ9は、出力軸21の回転方向を、正転方向と、正転方向とは反対の逆転方向とに切り替える。正転方向は、締付部材30を対象物100に締め付ける方向(締付部材30の頭部側から見て締付部材30が時計回りに回転する方向)である。逆転方向は、締付部材30を対象物100から緩める方向(締付部材30の頭部側から見て締付部材30が反時計回りに回転する方向)である。
正逆切換スイッチ9は、ここでは、モータ15の回転軸16の回転方向を切り換える。正逆切換スイッチ9は、例えば、電源部32からモータ15に供給される電流の向きを切り換えることにより、モータ15の回転軸16の回転方向を正転と逆転とに切り換える。
インバータ回路部51は、モータ15を駆動するための回路である。インバータ回路部51は、電源部32からの電圧Vdcを、モータ15用の駆動電圧Vaに変換する。本実施形態では、駆動電圧Vaは、U相電圧、V相電圧及びW相電圧を含む三相交流電圧である。以下では、必要に応じて、U相電圧をvu、V相電圧をvv、W相電圧をvwで表す。各電圧vu,vv,vwは、正弦波電圧である。
インバータ回路部51は、PWMインバータとPWM変換器とを利用して実現できる。PWM変換器は、駆動電圧Va(U相電圧vu、V相電圧vv、W相電圧vw)の目標値(電圧指令値)vu *,vv *,vw *に従って、パルス幅変調されたPWM信号を生成する。PWMインバータは、このPWM信号に応じた駆動電圧Va(vu,vv,vw)をモータ15に与えてモータ15を駆動する。より具体的には、PWMインバータは、3相分のハーフブリッジ回路とドライバとを備える。PWMインバータでは、ドライバがPWM信号に従って各ハーフブリッジ回路におけるスイッチング素子をオン/オフすることにより、電圧指令値vu *,vv *,vw *に従った駆動電圧Va(vu,vv,vw)がモータ15に与えられる。これによって、モータ15には、駆動電圧Va(vu,vv,vw)に応じた駆動電流が供給される。駆動電流は、U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwを含む。より詳細には、U相電流iu、V相電流iv、及びW相電流iwは、モータ15の固定子14における、U相の電機子巻線の電流、V相の電機子巻線の電流及びW相の電機子巻線の電流である。
制御部4は、モータ15の速度の指令値ω2 *を求める。特に、制御部4は、操作部29から与えられるモータ15の速度の目標値ω1 *に基づいて、モータ15の速度の指令値ω2 *を求める。また、制御部4は、モータ15の速度が指令値ω2 *に一致するように駆動電圧Vaの目標値(電圧指令値)vu *,vv *,vw *を決定してインバータ回路部51に与える。
(2.2)制御部
以下、制御部4について更に詳細に説明する。制御部4は、本実施形態では、ベクトル制御を利用して、モータ15の制御を行う。ベクトル制御は、モータ電流を、トルク(回転力)を発生する電流成分(トルク電流)と磁束を発生する電流成分(励磁電流)とに分解し、それぞれの電流成分を独立に制御するモータ制御方式の一種である。
図3は、ベクトル制御におけるモータ15の解析モデル図である。図3には、U相、V相、W相の電機子巻線固定軸が示されている。ベクトル制御では、モータ15の回転子13に設けられた永久磁石131が作る磁束の回転速度と同じ速度で回転する回転座標系が考慮される。回転座標系において、永久磁石131が作る磁束の方向をd軸にとり、d軸に対応する制御上の回転軸をγ軸とする。また、d軸から電気角で90度進んだ位相にq軸をとり、γ軸から電気角で90度進んだ位相にδ軸をとる。実軸に対応する回転座標系はd軸とq軸を座標軸に選んだ座標系であり、その座標軸をdq軸と呼ぶ。制御上の回転座標系はγ軸とδ軸を座標軸に選んだ座標系であり、その座標軸をγδ軸と呼ぶ。
dq軸は回転しており、その回転速度をωで表す。γδ軸も回転しており、その回転速度をωeで表す。また、dq軸において、U相の電機子巻線固定軸から見たd軸の角度(位相)をθで表す。同様に、γδ軸において、U相の電機子巻線固定軸から見たγ軸の角度(位相)をθeで表す。θ及びθeにて表される角度は、電気角における角度であり、それらは一般的に回転子位置又は磁極位置とも呼ばれる。ω及びωeにて表される回転速度は、電気角における角速度である。以下、必要に応じて、θ又はθeを、回転子位置と呼び、ω又はωeを単に速度と呼ぶことがある。
制御部4は、基本的に、θとθeとが一致するようにベクトル制御を行う。θとθeとが一致しているとき、d軸及びq軸は夫々γ軸及びδ軸と一致することになる。なお、以下の説明では、必要に応じて、駆動電圧Vaのγ軸成分及びδ軸成分を、それぞれγ軸電圧vγ及びδ軸電圧vδで表し、駆動電流のγ軸成分及びδ軸成分を、それぞれγ軸電流iγ及びδ軸電流iδで表す。
また、γ軸電圧vγ及びδ軸電圧vδの目標値を表す電圧指令値を、それぞれγ軸電圧指令値vγ *及びδ軸電圧指令値vδ *により表す。γ軸電流iγ及びδ軸電流iδの目標値を表す電流指令値を、それぞれγ軸電流指令値iγ *及びδ軸電流指令値iδ *により表す。
制御部4は、γ軸電圧vγ及びδ軸電圧vδの値がそれぞれγ軸電圧指令値vγ *及びδ軸電圧指令値vδ *に追従しかつγ軸電流iγ及びδ軸電流iδの値がそれぞれγ軸電流指令値iγ *及びδ軸電流指令値iδ *に追従するように、ベクトル制御を行う。
制御部4は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御部4の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
図1に示すように、制御部4は、座標変換器411,412と、減算器421,422,423と、電流制御部43と、磁束制御部44と、速度制御部45と、位置・速度推定部46と、脱調検出部47と、指令値生成部48と、を備える。なお、座標変換器411、減算器421,422,423、電流制御部43、磁束制御部44、速度制御部45、位置・速度推定部46、脱調検出部47、及び指令値生成部48は、必ずしも実体のある構成を示しているわけではない。これらは、制御部4によって実現される機能を示している。よって、制御部4の各要素は、制御部4内で生成された各値を自由に利用可能となっている。また、電動工具1は、複数(図1では2つ)の電流センサ61,62を備えている。
複数の電流センサ61,62の各々は、例えば、ホール素子電流センサ又はシャント抵抗素子を含んでいる。複数の電流センサ61,62は、電源部32からインバータ回路部51を介してモータ15に供給される電流を測定する。複数の電流センサ61,62は、少なくとも2相の電流を測定する。図1では、電流センサ61がU相電流iuを測定し、電流センサ62がV相電流ivを測定する。なお、W相電流iwは、U相電流iu及びV相電流ivから求めることができる。
座標変換器(第1の座標変換器)411は、回転子位置θeに基づいてU相電流iu及びV相電流ivをγδ軸上に座標変換することにより、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδを算出して出力する。ここで、γ軸電流iγは、d軸電流に対応し、励磁的な電流であり、トルクには殆ど寄与しない電流である。δ軸電流iδは、q軸電流に対応し、トルクに大きく寄与する電流である。回転子位置θeは、位置・速度推定部46にて算出される。
減算器423は、速度ωeと指令値ω2 *とを参照し、両者間の速度偏差(ω2 *−ωe)を算出する。速度ωeは、位置・速度推定部46にて算出される。
速度制御部45は、比例積分制御などを用いることによって、速度偏差(ω2 *−ωe)がゼロに収束するようにδ軸電流指令値iδ *を算出して出力する。
磁束制御部44は、γ軸電流指令値iγ *を決定して減算器421に出力する。γ軸電流指令値iγ *は、制御部4にて実行されるベクトル制御の種類やモータ15の速度ωに応じて、様々な値をとりうる。例えば、d軸電流をゼロとして最大トルク制御を行う場合は、γ軸電流指令値iγ *が0とされる。また、d軸電流を流して弱め磁束制御を行う場合は、γ軸電流指令値iγ *が速度ωeに応じた負の値とされる。以下の説明では、γ軸電流指令値iγ *が0である場合を取り扱う。
減算器421は、磁束制御部44から出力されるγ軸電流指令値iγ *より座標変換器411から出力されるγ軸電流iγを減算し、電流誤差(iγ *−iγ)を算出する。減算器422は、速度制御部45から出力される値iδ *より座標変換器411から出力されるδ軸電流iδを減算し、電流誤差(iδ *−iδ)を算出する。
電流制御部43は、電流誤差(iγ *−iγ)及び(iδ *−iδ)が共にゼロに収束するように、比例積分制御などを用いた電流フィードバック制御を行う。この際、γ軸とδ軸との間の干渉を排除するための非干渉制御を利用し、(iγ *−iγ)及び(iδ *−iδ)が共にゼロに収束するようにγ軸電圧指令値vγ *及びδ軸電圧指令値vδ *を算出する。
座標変換器(第2の座標変換器)412は、位置・速度推定部46から出力される回転子位置θeに基づいて電流制御部43から与えられたγ軸電圧指令値vγ *及びδ軸電圧指令値vδ *を三相の固定座標軸上に座標変換することにより、電圧指令値(vu *、vv *及びvw *)を算出して出力する。
位置・速度推定部46は、回転子位置θe及び速度ωeを推定する。より詳細には、位置・速度推定部46は、座標変換器411からのiγ及びiδ並びに電流制御部43からのvγ *及びvδ *の内の全部又は一部を用いて、比例積分制御等を行う。位置・速度推定部46は、d軸とγ軸との間の軸誤差(θe−θ)がゼロに収束するように回転子位置θe及び速度ωeを推定する。なお、回転子位置θe及び速度ωeの推定手法として従来から様々な手法が提案されており、位置・速度推定部46は公知の何れの手法をも採用可能である。
脱調検出部47は、モータ15が脱調しているか否かを判定する。より詳細には、脱調検出部47は、モータ15の磁束に基づいて、モータ15が脱調しているか否かを判定する。モータ15の磁束は、d軸電流及びq軸電流及びγ軸電圧指令値vγ *及びδ軸電圧指令値vδ *から求められる。脱調検出部47は、モータ15の磁束の振幅が閾値未満であれば、モータ15が脱調していると判断してよい。なお、閾値は、モータ15の永久磁石が作る磁束の振幅に基づいて適宜定められる。なお、脱調検出手法として従来から様々な手法が提案されており、脱調検出部47は公知の何れの手法をも採用可能である。
指令値生成部48は、制御部4において、モータ15の速度の指令値ω2 *を求める部分である。指令値生成部48は、操作部29から受け取った目標値ω1 *に基づいて、指令値ω2 *を求める。
指令値生成部48は、動作モードとして、通常モードと低速モードとを有する。
通常モードにおいて、指令値生成部48は、指令値ω2 *として、操作部29から受け取った目標値ω1 *を設定する。通常モードにおいて、指令値ω2 *は目標値ω1 *と一致する。
低速モードにおいて、指令値生成部48は、目標値ω1 *と予め定められた上限値とに基づいて、指令値ω2 *を定める。低速モードにおいて、指令値生成部48は、受け取った目標値ω1 *が上限値よりも小さい場合には、指令値ω2 *として、目標値ω1 *を用いる。一方、目標値ω1 *が上限値以上の場合には、指令値生成部48は、指令値ω2 *として上限値を用いる。要するに、指令値生成部48は、低速モードにおいては、指令値ω2 *を上限値以下に制限する。そのため、低速モードにおいては、モータ15の速度(角速度)が、上限値以下に制限される。
指令値生成部48は、正逆切換スイッチ9で設定される出力軸21の回転方向に基づいて、動作モードを設定する。
すなわち、指令値生成部48は、正逆切換スイッチ9により出力軸21の回転方向が正転方向に設定されている場合には、通常モードで動作する。
一方、指令値生成部48は、正逆切換スイッチ9により出力軸21の回転方向が逆転方向に設定されている場合には、以下で説明する緩み検出機能による検出結果に基づいて、動作モードを切り換える。具体的には、指令値生成部48は、緩み検出機能により締付部材30の緩みを検出する前は通常モードで動作し、締付部材30の緩みを検出すると低速モードへ移行する。言い換えれば、制御部4は、締付部材30の緩みを検出する前は、操作部29(トリガスイッチ)への操作量に応じてモータ15の動作を制御し、締付部材30の緩みを検出すると、モータ15の速度を所定の上限値以下に制限する。本実施形態の制御部4は、正逆切換スイッチ9により先端工具28の回転方向が逆転方向に設定されている場合にのみ、緩み検出機能を有効とする。
緩み検出機能は、出力軸21の回転方向が逆転方向に設定されている場合に、作業対象の締付部材30が対象物100から緩められたことを検出する機能である。
制御部4は、座標変換器411で求められるδ軸電流iδ(すなわち、トルク電流)とγ軸電流iγ(すなわち、励磁電流)との少なくとも一方に基づいて、締付部材30の対象物100からの緩みを検出することが可能である。本実施形態の制御部4は、特に、δ軸電流iδ(トルク電流)に基づいて、締付部材30の対象物100からの緩みを検出する。
図4に、電動工具1によって締付部材30を対象物100から緩める際の、δ軸電流iδ(トルク電流)の変化及びγ軸電流iγ(励磁電流)の変化の概略を示す。図4では、時点t0にモータ15が動作を開始し、時点t1でインパクト機構17が打撃動作を開始する。また、時点t2で、締付部材30が緩んで出力軸21にかかる負荷が減少することで、インパクト機構17が打撃動作を終了する。
図4に示すように、時点t0〜t1において、出力軸21に負荷がかかることで、モータ15の回転軸16にかかるトルクが増加し、δ軸電流iδが増加する。そして、時点t2において締付部材30が対象物100から緩まると、出力軸21にかかる負荷(トルク)が減少することで、δ軸電流iδ(トルク電流)が減少する。
そして、本実施形態の制御部4は、時点t3において、δ軸電流iδが閾値Th1を下回ったことを検出することで、締付部材30が緩んだことを検出する。
このように、本実施形態の制御部4は、δ軸電流iδ(トルク電流)が減少したことに基づいて、締付部材30の緩みを検出する。ここでは、制御部4は、δ軸電流iδ(トルク電流)の絶対値と閾値Th1とを比較している。そして、制御部4は、δ軸電流iδの絶対値が一旦閾値Th1を上回った後、閾値Th1以上の値から閾値Th1よりも小さくなったときに、締付部材30の緩みを検出している。ただし、これに限らず、制御部4は、例えば、δ軸電流iδの減少率(第1期間におけるδ軸電流iδの平均値と、第1期間よりも後の第2期間におけるδ軸電流iδの平均値との、変化率)に基づいて、締付部材30の緩みを検出してもよい。
ここで、締付部材30が緩まる前の期間(時点t1〜t2)において、インパクト機構17による打撃動作は、δ軸電流iδ(トルク電流)で見ると、図4に示すように電流値の振動(所定値周りの振動)として現れる。具体的には、インパクト機構17の打撃動作において、ハンマ19が後退する間は、モータ15の回転軸16にかかる負荷は徐々に増加する。そして、ハンマ19とアンビル20との結合が外れると、モータ15の回転軸16にかかる負荷が減少する。上述のように、制御部4は、dq軸における回転子位置θとγδ軸における回転子位置θeとが一致するように制御を行う。そのため、制御部4は、モータ15の回転軸16にかかる負荷が増加又は減少すると、これにより生じるθとθeとの差分を補償するように制御を行うので、δ軸電流iδの測定値が増加又は減少する。具体的には、モータ15にかかる負荷が小さくなった直後は、δ軸電流iδの測定値が減少し、モータ15にかかる負荷が大きくなった瞬間は、δ軸電流iδの測定値が増加する。
このように、制御部4は、δ軸電流iδ(トルク電流)の振動の開始及び終了を検出することで、インパクト機構17の打撃動作の開始及び終了を検出することができる。そのため、制御部4は、インパクト機構17が打撃動作を終了したことをもって、間接的に、締付部材30の緩みを検出することも可能である。
また、締付部材30が緩まる前の期間(時点t1〜t2)において、インパクト機構17による打撃動作は、γ軸電流iγ(励磁電流)で見ると、図4に示すように電流値の振動として現れる。具体的には、モータ15にかかる負荷が小さくなった直後は、γ軸電流iγの測定値は増加して正の値となり、モータ15にかかる負荷が大きくなった瞬間は、γ軸電流iγの測定値は減少して負の値となる。
このように、制御部4は、γ軸電流iγ(励磁電流)の振動の開始及び終了を検出することで、インパクト機構17の打撃動作の開始及び終了を検出することができる。そのため、制御部4は、インパクト機構17が打撃動作を終了したことをもって、間接的に、締付部材30の緩みを検出することも可能である。
指令値生成部48は、上述のように、緩み検出機能により締付部材30の緩みを検出すると、通常モードから低速モードへ移行する。これにより、締付部材30の緩みが検出されると、モータ15の速度が上限値以下に制限される。そのため、締付部材30が緩んだ際に、締付部材30が対象物100から完全に外れる前に、モータ15の速度が低下する。そのため、締付部材30が対象物100から脱落して例えば締付部材30が紛失する等の事態を、防ぐことができる。なお、制御部4は、締付部材30の緩みを検出すると、モータ15を停止させてもよい。この場合、締付部材30の紛失等の事態の発生を、更に抑制できる。
(3)変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
電動工具1の制御部4と同様の機能は、電動工具1の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
一態様に係る電動工具1の制御方法は、ベクトル制御を利用して、操作部29への操作に応じてモータ15の回転動作を制御することを含む。また、制御方法は、対象物100に締め付けられている締付部材30を先端工具28によって対象物100から緩める場合に、モータ15に供給されるトルク電流に基づいて、締付部材30の緩みを検出することを含む。また、制御方法は、締付部材30の緩みを検出すると、モータ15の速度を低下させる又はモータ15を停止させることを含む。
具体的には、図5に示すように、制御部4はまず、モータ15の回転方向が正転方向に設定されているか否かを判定する(ST1)。
モータ15の回転方向が正転方向の場合(ST1:Yes)、制御部4は、操作部29への操作量に応じて設定した指令値ω2 *を用いて、モータ15をベクトル制御する(ST6)。
モータ15の回転方向が逆転方向の場合(ST1:No)、制御部4は、操作部29への操作量に応じてモータ15をベクトル制御し(ST2)、ベクトル制御で用いられるトルク電流の判定(トルク電流の絶対値又は振幅と、閾値との比較)を行う(ST3)。制御部4は、ステップST3での判定結果に基づいて、締付部材30の緩みを検出したか否かを判定する(ST4)。緩みを検出すると(ST4:Yes)、制御部4は、上限値に基づいて指令値ω2 *を設定することでモータ15を減速させる、或いは、モータ15を停止させる(ST5)。
一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、上記の電動工具1の制御方法を実行させるためのプログラムである。
以上述べた制御部4の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部4としての機能の一部が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(UltraLarge Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
また、制御部4における複数の機能が、1つのハウジング内に集約されていることは必須の構成ではない。制御部4の構成要素は、複数のハウジングに分散して設けられていてもよい。反対に、制御部4における複数の機能が、基本例のように、1つのハウジング内に集約されてもよい。さらに、制御部4の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
(3−1)変形例1
以下、変形例1に係る電動工具1について説明する。本変形例の電動工具1において、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本変形例の電動工具1では、伝達機構18がインパクト機構17を備えておらず、例えば駆動軸22と出力軸21とが一体に結合されている点で、実施形態の電動工具1と相違する。本変形例の電動工具1は、例えばドリルドライバである。
図6に、本変形例の電動工具1によって締付部材30を対象物100から緩める際の、δ軸電流iδ(トルク電流)の変化及びγ軸電流iγ(励磁電流)の変化を示す。
図6では、時点t0にモータ15が動作を開始する。そして、時点t1で、dq軸における回転子位置θとγδ軸における回転子位置θeとの間に差分が生じ、この差分を補償するように制御部4が制御を行うことで、δ軸電流iδ及びγ軸電流iγにピーク(電流波形における極値点)が生じる。
また、時点t2で締付部材30が緩むと、dq軸における回転子位置θとγδ軸における回転子位置θeとの間に差分が生じ、この差分を補償するように制御部4が制御を行うことで、γ軸電流iγにピークが生じる。
また、制御部4は、時点t3において、δ軸電流iδが閾値Th1よりも小さくなったことを検出することで、締付部材30の緩みを検出する。
本変形例の電動工具1のように、インパクト工具以外の電動工具1においても、制御部4は、モータ15に供給されるトルク電流に基づいて、締付部材30の緩みを検出することができる。
(3−2)変形例2
以下、変形例2に係る電動工具1について説明する。本変形例の電動工具1において、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
制御部4は、締付部材30の緩みを検出すると、モータ15の速度の指令値ω2 *に上限値を設定することに加えて、モータ15の速度の指令値ω2 *を、緩みを検出する前の指令値ω2 *よりも減少させる。つまり、制御部4は、締付部材30の緩みを検出すると、モータ15の速度を、緩みを検出する前の速度に基づいて低下させる。
制御部4は、例えば、締付部材30の緩みを検出すると、緩みを検出した時点における指令値ω2 *に、1よりも小さい所定の正の値(例えば、0.8)を乗じた値を、新たな指令値ω2 *としてもよい。或いは、制御部4は、締付部材30の緩みを検出すると、緩みを検出した時点における指令値ω2 *に所定の値(例えば、2000[rpm])を減じた値を、新たな指令値ω2 *としてもよい。ただし、制御部4は、指令値ω2 *がゼロ以上となるように、適宜上記の所定の値を調整する。
また、制御部4は、締付部材30の緩みを検出すると、モータ15の速度を予め決められた所定値としてもよい。つまり、制御部4は、締付部材30の緩みを検出すると、指令値ω2 *を予め決められた所定値にし、これにより、モータ15の速度を予め決められた速度にしてもよい。
本変形例により、トリガスイッチの引込み量が比較的小さい場合(指令値ω2 *が上限値より小さい場合)であっても、指令値ω2 *及びモータ15の速度を低下させることができる。
(3−3)変形例3
以下、変形例3に係る電動工具1について説明する。本変形例の電動工具1において、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
制御部4は、トリガスイッチの引込み量に関わらず、モータ15の速度を予め決められた速度となるように制御する。制御部4は、例えば、トリガスイッチが引き込まれてモータ15が始動してから締付部材30の緩みが検出されるまでの間、モータ15の速度の指令値ω2 *を第1値に設定する。また、制御部4は、例えば、締付部材30の緩みが検出されると、指令値ω2 *を第2値(<第1値)に設定する。そして、ユーザがトリガスイッチを引き込む操作をやめると、制御部4は、指令値ω2 *を0[rpm]にする。
本変形例の電動工具1によれば、ユーザの習熟度に依らずにモータ15の速度を制御できる。
(3−4)その他の変形例
一変形例において、電動工具1は、正逆切換スイッチ9を備えていなくてもよい。この場合、電動工具1は、出力軸21の回転方向が、逆転方向(締付部材30を緩める方向)に固定されていてもよい。
一変形例において、正逆切換スイッチ9は、伝達機構18内の機構を用いて、出力軸21の回転方向を切り替える構成であってもよい。つまり、正逆切換スイッチ9が操作されることで、モータ15の回転方向と出力軸21の回転方向との関係が、同一方向と反対方向とに切り換えられてもよい。
一変形例において、制御部4は、正逆切換スイッチ9によって出力軸21の回転方向が正転方向に設定されている場合であっても、緩み検出機能を有効としてもよい。例えば、逆ねじ(左ねじ)を緩める場合、或いは、先端工具28と締付部材30との間に回転方向を逆転させるアダプタが設けられる場合等に、利用され得る。
一変形例において、電動工具1は、緩み検出機能の有効と無効とを切り換える切換部を備えていてもよい。切換部は、例えば、ユーザの操作を受け付けるスイッチ等を備え得る。
(4)態様
以上説明した実施形態及び変形例等から以下の態様が開示されている。
第1の態様の電動工具(1)は、モータ(15)と、操作部(29)と、制御部(4)と、出力軸(21)と、伝達機構(18)と、を備える。操作部(29)は、ユーザからの操作を受け付ける。制御部(4)は、ベクトル制御を利用して、操作部(29)への操作に応じてモータ(15)の回転動作を制御する。出力軸(21)は、先端工具(28)と連結される。先端工具(28)は、締付部材(30)を回転させる。伝達機構(18)は、モータ(15)の回転力を出力軸(21)へと伝達する。制御部(4)は、緩み検出機能を有する。緩み検出機能において、制御部(4)は、対象物(100)に締め付けられている締付部材(30)を先端工具(28)によって対象物(100)から緩める場合に、モータ(15)に供給されるトルク電流に基づいて、締付部材(30)の緩みを検出する。制御部(4)は、締付部材(30)の緩みを検出すると、モータ(15)の速度を低下させる又はモータ(15)を停止させる。
この態様によれば、締付部材(30)の緩みの検出の確実性が向上し、電動工具(1)の使い勝手を向上できる。
第2の態様の電動工具(1)は、第1の態様において、出力軸(21)の回転方向を、締付部材(30)を対象物(100)に締め付ける正転方向と締付部材(30)を対象物(100)から緩める逆転方向とに切り替える正逆切換スイッチ(9)を更に備える。制御部(4)は、正逆切換スイッチ(9)により先端工具(28)の回転方向が逆転方向に設定されている場合にのみ、緩み検出機能を有効とする。
この態様によれば、締付部材(30)を締めている場合に、意図せずモータ(15)が減速したり停止したりする事態が抑制される。
第3の態様の電動工具(1)では、第1又は第2の態様において、伝達機構(18)は、出力軸(21)に加えられるトルクの大きさに応じて出力軸(21)に打撃力を加える打撃動作を行うインパクト機構(17)を有する。
この態様によれば、インパクト機構(17)を備えたいわゆるインパクト工具の使い勝手を向上できる。
第4の態様の電動工具(1)では、第1〜第3のいずれか1つの態様において、制御部(4)は、緩み検出機能において、トルク電流が減少したことに基づいて締付部材(30)の緩みを検出する。
この態様によれば、例えば、インパクト工具においてトルク電流の振動の停止に基づいて締付部材(30)の緩みを検出する場合に比べて、緩みの検出の確実性が向上し得る。
第5の態様の電動工具(1)では、第1〜第4のいずれか1つの態様において、操作部(29)はトリガスイッチを備える。制御部(4)は、締付部材(30)の緩みを検出する前は、トリガスイッチへの操作量に応じてモータ(15)の動作を制御する。制御部(4)は、締付部材(30)の緩みを検出すると、モータ(15)の速度を、所定の上限値以下に制限する。
この態様によれば、締付部材(30)の緩みを検出した時に、モータ(15)を確実に減速させることができる。
第6の態様の電動工具(1)では、第1〜第5のいずれか1つの態様において、制御部(4)は、締付部材(30)の緩みを検出すると、モータ(15)の速度を、緩みを検出する前の速度に基づいて低下させる。
この態様によれば、締付部材(30)の緩みを検出した時に、モータ(15)を確実に減速させることができる。
第7の態様の電動工具(1)では、第6の態様において、制御部(4)は、締付部材(30)の緩みを検出すると、モータ(15)の速度を予め決められた所定値にする。
この態様によれば、電動工具(1)の操作に関するユーザの習熟度に依らずに、モータ(15)の速度を適正な値にすることができる。
第8の態様の電動工具(1)は、第1〜第7のいずれか1つの態様において、緩み検出機能の有効と無効とを切り換える切換部を備える。
この態様によれば、緩み検出機能が不要な場合に、機能を無効にすることができ、電動工具1の使い勝手を向上できる。
第9の態様の制御方法は、電動工具(1)の制御方法である。電動工具(1)は、モータ(15)と、操作部(29)と、出力軸(21)と、伝達機構(18)と、を備える。操作部(29)は、ユーザからの操作を受け付ける。出力軸(21)は、先端工具(28)と連結される。先端工具(28)は、締付部材(30)を回転させる。伝達機構(18)は、モータ(15)の回転力を出力軸(21)へと伝達する。制御方法は、ベクトル制御を利用して、操作部(29)への操作に応じてモータ(15)の回転動作を制御することを含む。制御方法は、対象物(100)に締め付けられている締付部材(30)を先端工具(28)によって対象物(100)から緩める場合に、モータ(15)に供給されるトルク電流に基づいて、締付部材(30)の緩みを検出することを含む。制御方法は、締付部材(30)の緩みを検出すると、モータ(15)の速度を低下させる又はモータ(15)を停止させることを含む。
この態様によれば、締付部材(30)の緩みの検出の確実性が向上し、電動工具(1)の使い勝手を向上できる。
第10の態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、第9の態様の制御方法を実行させるためのプログラムである。
この態様によれば、締付部材(30)の緩みの検出の確実性が向上し、電動工具(1)の使い勝手を向上できる。