[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置の概略の構成について説明する。本実施の形態に係る位置検出装置1は、磁気スケール2と、磁気センサ3とを備えている。磁気スケール2は、強度および方向が空間的な分布を有する外部磁界MFを発生する。磁気センサ3は、外部磁界MFの一部である検出対象磁界と、検出対象磁界以外のノイズ磁界Mexとを検出する。
磁気スケール2は、直線的な方向または回転方向である移動方向に沿った所定の範囲内において、磁気センサ3に対する相対位置が変化可能である。また、磁気スケール2は、移動方向に沿って配置された複数の磁石を含んでいる。複数の磁石は、互いに間隔を開けて配置されていてもよい。本実施の形態では特に、磁気スケール2は、複数の磁石として、互いに間隔を開けて配置された3つの磁石4,5,6を含んでいる。外部磁界MFは、3つの磁石4,5,6の各々が発生する磁界が合成されたものである。
本実施の形態では特に、磁気スケール2は、リニアスケールである。磁石4,5,6は、一方向にこの順に配置されている。磁石4と磁石5の間隔と、磁石5と磁石6の間隔は、互いに等しい。磁気スケール2は、更に、NiFe等の磁性材料よりなるヨーク7を含んでいる。ヨーク7は、磁石4,5,6を磁気的に接続すると共に、磁石4,5,6を支持する基板として用いられる。ヨーク7は、一方向に長い板状である。また、ヨーク7は、上面7aと下面7bを有している。磁石4,5,6は、ヨーク7の上面7aの上に配置されている。磁気センサ3は、ヨーク7の上面7aに対向するように配置されている。
磁気スケール2は、更に、樹脂等の非磁性材料よりなり、磁石4,5,6とヨーク7の一部を覆う保護部8を含んでいる。なお、図2では、保護部8を省略している。
ここで、図1および図2に示したように、X方向、Y方向およびZ方向を定義する。本実施の形態では、ヨーク7の上面7aに垂直で下面7bから上面7aに向かう方向をZ方向とする。また、Z方向に垂直な2方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向とする。図2では、Y方向を図2における手前から奥に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。
3つの磁石4,5,6は、X方向にこの順に配置されている。また、3つの磁石4,5,6の各々は、N極とS極を有している。磁石4,6では、N極とS極は、−Z方向にこの順に配置されている。磁石5では、N極とS極は、Z方向にこの順に配置されている。ヨーク7は、磁石4のS極側の端面と、磁石5のN極側の端面と、磁石6のS極側の端面を磁気的に接続している。ヨーク7は、磁石5のN極側の端面より発生された磁束が、磁石4のS極側の端面および磁石6のS極側の端面に効率的に流入するように、磁束の流れを制御する機能を有している。
前記の移動方向は、直線的な方向であって、X方向に平行な方向である。以下、移動方向を記号X1で表す。磁気スケール2は、移動方向X1に沿った所定の範囲内において、磁気センサ3に対する相対位置が変化可能である。以下、磁気センサ3に対する磁気スケール2の相対位置を、単に、相対位置と言う。本実施の形態では、磁気スケール2と磁気センサ3の一方は、図示しない可動物体に連動して、X方向または−X方向に直線的に移動する。これにより、相対位置がX方向または−X方向に変化する。任意の位置における検出対象磁界の方向は、相対位置の変化に伴って任意の位置を中心として回転する。
位置検出装置1は、相対位置を検出するための装置である。磁気センサ3は、相対位置と対応関係を有する検出値を生成する。本実施の形態では特に、磁気センサ3は、検出値として、基準平面内において基準位置における検出対象磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度を表す値θsを生成する。以下、検出値を、検出値θsとも記す。検出値θsは、相対位置と対応関係を有する。
本実施の形態では、検出値θsの範囲を、相対位置を一意に特定可能な範囲としてもよい。このような検出値θsの範囲は、複数の相対位置において検出値θsが同じ値になることがない範囲である。これは、例えば、0°〜360°よりも狭い範囲である。検出値θsの範囲を0°〜360°よりも狭い範囲にするには、相対位置が変化可能な所定の範囲(以下、可動範囲と言う。)を、検出値θsの0°〜360°に対応する範囲とするが、実際に磁気センサ3が生成する検出値θsの範囲を0°〜360°よりも狭い範囲に制限して、その制限された検出値θsの範囲に対応する相対位置の範囲のみを、検出可能な相対位置の範囲としてもよい。あるいは、可動範囲を、検出値θsが0°〜360°となる範囲よりも狭い範囲としてもよい。これらのことにより、検出値θsによって、相対位置を一意に特定することができる。
磁気センサ3は、2つの電子部品10,20を含んでいる。また、磁気センサ3は、第1の検出部11と、第2の検出部12と、第3の検出部21と、第4の検出部22とを含んでいる。第1の検出部11と第2の検出部12は、電子部品10に含まれている。第3の検出部21と第4の検出部22は、電子部品20に含まれている。電子部品10,20は、磁気スケール2に対して、Z方向について離れた位置にある。
ここで、図2に示したように、磁気スケール2と交差し且つ移動方向X1に直交する仮想の直線Lを想定する。電子部品10,20は、仮想の直線L上の互いに異なる位置に配置されている。電子部品20は、電子部品10よりも磁気スケール2からより遠い位置に配置されている。
検出対象磁界の強度は、磁気スケール2からの距離に応じて変化する。第1および第2の検出部11,12は、第1の強度の検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界である第1の合成磁界MF1を検出するように配置されている。第3および第4の検出部21,22は、第1の強度とは異なる第2の強度の検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界である第2の合成磁界MF2を検出するように配置されている。
本実施の形態では特に、第1の合成磁界MF1は、仮想の直線L上の第1の検出位置P1における検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界である。電子部品10は、第1の検出位置P1に配置されている。これにより、第1および第2の検出部11,12は、第1の合成磁界MF1を検出することができる。同様に、第2の合成磁界MF2は、仮想の直線L上の第1の検出位置P1とは異なる第2の検出位置P2における検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界である。電子部品20は、第2の検出位置P2に配置されている。これにより、第3および第4の検出部21,22は、第2の合成磁界MF2を検出することができる。
図2に示したように、本実施の形態では、第2の検出位置P2を、第1の検出位置P1よりも磁気スケール2からより遠い位置とする。
第2の検出位置P2におけるノイズ磁界Mexの方向および強度は、それぞれ第1の検出位置P1におけるノイズ磁界Mexの方向および強度と等しい。ノイズ磁界Mexは、その方向と強度が時間的に一定の磁界であってもよいし、その方向と強度が時間的に周期的に変化する磁界であってもよいし、その方向と強度が時間的にランダムに変化する磁界であってもよい。
以下、第1の検出位置P1における検出対象磁界を第1の部分磁界MFaと言い、第2の検出位置P2における検出対象磁界を第2の部分磁界MFbと言う。第1の部分磁界MFaの強度は第1の強度であり、第2の部分磁界MFbの強度は第2の強度である。第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向は、相対位置の変化に応じて変化する。
ここで、検出対象磁界の方向が理想的に変化する場合を想定する。検出対象磁界の方向が理想的に変化する場合とは、相対位置の変化と、任意の位置における検出対象磁界の方向が所定の方向に対してなす角度の変化との関係が、線形性を満たす関係にある場合である。以下、検出対象磁界の方向が理想的に変化する場合を、理想状態と言う。理想状態において想定される、第1の部分磁界MFaの方向と第2の部分磁界MFbの方向は、互いに一致している。
第1の合成磁界MF1は、第1の部分磁界MFaとノイズ磁界Mexとの合成磁界である。第1の検出部11は、第1の合成磁界MF1を検出して、第1の合成磁界MF1の第1の方向D1の成分の強度に対応する第1の検出信号S1を生成する。第2の検出部12は、第1の合成磁界MF1を検出して、第1の合成磁界MF1の第1の方向D1とは異なる第2の方向D2の成分の強度に対応する第2の検出信号S2を生成する。第1の方向D1は、第1の検出部11が第1の検出信号S1を生成する基準となる方向である。第2の方向D2は、第2の検出部12が第2の検出信号S2を生成する基準となる方向である。
第2の合成磁界MF2は、第2の部分磁界MFbとノイズ磁界Mexとの合成磁界である。第3の検出部21は、第2の合成磁界MF2を検出して、第2の合成磁界MF2の第3の方向D3の成分の強度に対応する第3の検出信号S3を生成する。第4の検出部22は、第2の合成磁界MF2を検出して、第2の合成磁界MF2の第3の方向D3とは異なる第4の方向D4の成分の強度に対応する第4の検出信号S4を生成する。第3の方向D3は、第3の検出部21が第3の検出信号S3を生成する基準となる方向である。第4の方向D4は、第4の検出部22が第4の検出信号S4を生成する基準となる方向である。
ここで、理想状態において想定される、第1の検出部11が検出する第1の部分磁界MFaの方向が第1の方向D1に対してなす角度を第1の角度と言い、記号θ1で表す。また、理想状態において想定される、第2の検出部12が検出する第1の部分磁界MFaの方向が第2の方向D2に対してなす角度を第2の角度と言い、記号θ2で表す。また、理想状態において想定される、第3の検出部21が検出する第2の部分磁界MFbの方向が第3の方向D3に対してなす角度を第3の角度と言い、記号θ3で表す。また、理想状態において想定される、第4の検出部22が検出する第2の部分磁界MFbの方向が第4の方向D4に対してなす角度を第4の角度と言い、記号θ4で表す。第1の検出部11と第3の検出部21は、第1の角度θ1と第3の角度θ3が互いに等しくなるように配置される。第2の検出部12と第4の検出部22は、第2の角度θ2と第4の角度θ4が互いに等しくなるように配置される。
図3は、本実施の形態における基準方向DRと第1ないし第4の方向D1〜D4を示す説明図である。基準方向DRは、基準平面P内に位置する。本実施の形態では特に、Z方向を基準方向DRとする。基準平面Pは、磁気スケール2と交差するXZ平面である。この基準平面P内において、第1の部分磁界MFaは第1の検出位置P1を中心として回転し、第2の部分磁界MFbは第2の検出位置P2を中心として回転する。以下の説明において、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向とは、基準平面P内に位置する方向を指す。
図3には、理想状態において想定される第1および第2の部分磁界MFa,MFbと、第1ないし第4の角度θ1〜θ4を示している。図3において、MFaを付した矢印の長さは、第1の部分磁界MFaの強度すなわち第1の強度を模式的に表している。また、MFbを付した矢印の長さは、第2の部分磁界MFbの強度すなわち第2の強度を模式的に表している。図3に示したように、第2の強度は、第1の強度よりも小さい。
理想状態において想定される、第1の部分磁界MFaの方向が基準方向DRに対してなす角度と、第2の部分磁界MFbの方向が基準方向DRに対してなす角度は、互いに等しくなる。以下、これらの角度を、記号θで表す。角度θは、基準方向DRから時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに負の値で表す。
基準位置は、基準平面P内に位置する。以下の説明では、理想状態において想定される第1および第2の部分磁界MFa,MFbの方向は、理想状態において想定される基準位置における検出対象磁界の方向に一致するものとする。この要件を満たす限り、基準位置は、第1の検出位置P1と一致していてもよいし、第2の検出位置P2と一致していてもよいし、これらの位置とは異なる任意の位置であってもよい。理想状態において想定される基準位置における検出対象磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度は、角度θと等しい。
本実施の形態では、第1の方向D1と第3の方向D3をX方向とし、第2の方向D2と第4の方向D4をZ方向とする。すなわち、本実施の形態では、第3の方向D3は、第1の方向D1と同じ方向であり、第4の方向D4は、第2の方向D2と同じ方向である。
前述のように、第1の角度θ1と第3の角度θ3は互いに等しく、第2の角度θ2と第4の角度θ4は互いに等しい。また、第1の角度θ1と第2の角度θ2との差は90°であり、第3の角度θ3と第4の角度θ4との差は90°である。第1ないし第4の角度θ1〜θ4の正負の定義は、角度θと同様である。図3に示したように、第2および第4の角度θ2,θ4は、角度θと等しい。
次に、図4を参照して、磁気センサ3の構成について詳しく説明する。図4は、磁気センサ3の構成を示すブロック図である。前述の通り、磁気センサ3は、第1ないし第4の検出部11,12,21,22を含んでいる。磁気センサ3は、更に、アナログ−デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す。)31,32,33,34を含んでいる。A/D変換器31は、第1の検出信号S1をデジタル信号に変換する。A/D変換器32は、第2の検出信号S2をデジタル信号に変換する。A/D変換器33は、第3の検出信号S3をデジタル信号に変換する。A/D変換器34は、第4の検出信号S4をデジタル信号に変換する。
磁気センサ3は、更に、第1の演算回路35と、第2の演算回路36と、第3の演算回路37とを含んでいる。第1ないし第3の演算回路35〜37は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。第1ないし第3の演算回路35〜37は、機能ブロックであってもよいし、物理的に別個の回路であってもよい。
第1の演算回路35は、A/D変換器31によってデジタル信号に変換された第1の検出信号S1と、A/D変換器33によってデジタル信号に変換された第3の検出信号S3との差S1−S3に対応する第1の演算後信号Saを生成する。第1の演算後信号Saは、差S1−S3そのものであってもよいし、差S1−S3にゲイン調整およびオフセット調整等の所定の補正を加えたものであってもよい。
第2の演算回路36は、A/D変換器32によってデジタル信号に変換された第2の検出信号S2と、A/D変換器34によってデジタル信号に変換された第4の検出信号S4との差S2−S4に対応する第2の演算後信号Sbを生成する。第2の演算後信号Sbは、差S2−S4そのものであってもよいし、差S2−S4にゲイン調整およびオフセット調整等の所定の補正を加えたものであってもよい。
第3の演算回路37は、第1および第2の演算後信号Sa,Sbに基づいて、検出値θsを生成する。具体的には、第3の演算回路37は、例えば下記の式(1)によって、θsを算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θs=atan(Sa/Sb) …(1)
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(1)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Sa,Sbの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(1)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。第3の演算回路37は、式(1)と、上記のSa,Sbの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
次に、磁気センサ3の第1および第2の例について説明する。始めに、磁気センサ3の第1の例について説明する。第1の例では、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の各々は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいる。以下、磁気抵抗効果素子をMR素子と記す。
図5は、第1の例における第1の検出部11の具体的な構成の一例を示している。この例では、第1の検出部11は、2つのMR素子R11,R12と、電源ポートV11と、グランドポートG11と、出力ポートE11とを含んでいる。MR素子R11の一端は、電源ポートV11に接続されている。MR素子R11の他端は、MR素子R12の一端と出力ポートE11に接続されている。MR素子R12の他端は、グランドポートG11に接続されている。電源ポートV11には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG11はグランドに接続される。出力ポートE11は、MR素子R11,R12の接続点の電位に対応する信号を出力する。
第1の例では、第3の検出部21の構成は、第1の検出部11の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第3の検出部21の構成要素について、第1の検出部11の構成要素と同じ符号を用いる。
図6は、第1の例における第2の検出部12の具体的な構成の一例を示している。この例では、第2の検出部12は、2つのMR素子R21,R22と、電源ポートV12と、グランドポートG12と、出力ポートE12とを含んでいる。MR素子R21の一端は、電源ポートV12に接続されている。MR素子R21の他端は、MR素子R22の一端と出力ポートE12に接続されている。MR素子R22の他端は、グランドポートG12に接続されている。電源ポートV12には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG12はグランドに接続される。出力ポートE12は、MR素子R21,R22の接続点の電位に対応する信号を出力する。
第1の例では、第4の検出部22の構成は、第2の検出部12の構成と同じである。そのため、以下の説明では、第4の検出部22の構成要素について、第2の検出部12の構成要素と同じ符号を用いる。
MR素子は、例えばスピンバルブ型のMR素子である。スピンバルブ型のMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、検出対象磁界の方向に応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。図5および図6においてMR素子R11,R12,R21,R22に描いた矢印は、それぞれ、それらに含まれる磁化固定層の磁化の方向を表している。
第1の検出部11では、MR素子R11の磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D1(X方向)であり、MR素子R12の磁化固定層の磁化の方向は第1の方向D1とは反対の方向である。この場合、第1の合成磁界MF1の第1の方向D1の成分の強度に応じて、MR素子R11,R12の接続点の電位が変化する。従って、第1の検出部11は、第1の合成磁界MF1の第1の方向D1の成分を検出して、その強度に対応する信号を第1の検出信号S1として出力する。
第2の検出部12では、MR素子R21の磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D2(Z方向)であり、MR素子R22の磁化固定層の磁化の方向は第2の方向D2とは反対の方向である。この場合、第1の合成磁界MF1の第2の方向D2の成分の強度に応じて、MR素子R21,R22の接続点の電位が変化する。従って、第2の検出部12は、第1の合成磁界MF1の第2の方向D2の成分を検出して、その強度に対応する信号を第2の検出信号S2として出力する。
第3の検出部21では、MR素子R11の磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D3(X方向)であり、MR素子R12の磁化固定層の磁化の方向は第3の方向D3とは反対の方向である。この場合、第2の合成磁界MF2の第3の方向D3の成分の強度に応じて、MR素子R11,R12の接続点の電位が変化する。従って、第3の検出部21は、第2の合成磁界MF2の第3の方向D3の成分を検出して、その強度に対応する信号を第3の検出信号S3として出力する。
第4の検出部22では、MR素子R21の磁化固定層の磁化の方向は第4の方向D4(Z方向)であり、MR素子R22の磁化固定層の磁化の方向は第4の方向D4とは反対の方向である。この場合、第2の合成磁界MF2の第4の方向D4の成分の強度に応じて、MR素子R21,R22の接続点の電位が変化する。従って、第4の検出部22は、第2の合成磁界MF2の第4の方向D4の成分を検出して、その強度に対応する信号を第4の検出信号S4として出力する。
検出部11,12,21,22内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
なお、上述のように、第1ないし第4の検出信号S1〜S4が検出対象磁界の一方向の成分の強度を表すようにするためには、MR素子の抵抗値が、第1および第2の合成磁界MF1,MF2の強度の範囲内では飽和しないことと、検出対象磁界の一方向の成分の強度の変化とMR素子の抵抗値の変化との関係が、線形性の関係を満足することが必要である。上記の要件を満たすために、MR素子R11,R12,R21,R22として、磁界の一方向の成分の強度を検出するタイプのMR素子を用いてもよい。このタイプのMR素子は、例えばMR素子の平面形状をほぼ矩形にすることによって、磁界の一方向の成分の強度の変化に対して、MR素子の自由層の磁化の方向が実質的に一定の速度で変化するように構成されている。
ここで、図7を参照して、MR素子の構成の一例について説明する。図7は、図5および図6に示した検出部11,12における1つのMR素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つの磁気検出素子は、複数の下部電極62と、複数のMR膜50と、複数の上部電極63とを有している。複数の下部電極62は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極62は細長い形状を有している。下部電極62の長手方向に隣接する2つの下部電極62の間には、間隙が形成されている。図7に示したように、下部電極62の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜50が配置されている。MR膜50は、下部電極62側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。自由層51は、下部電極62に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極63は、複数のMR膜50の上に配置されている。個々の上部電極63は細長い形状を有し、下部電極62の長手方向に隣接する2つの下部電極62上に配置されて隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。このような構成により、図7に示したMR素子は、複数の下部電極62と複数の上部電極63とによって直列に接続された複数のMR膜50を有している。なお、MR膜50における層51〜54の配置は、図7に示した配置とは上下が反対でもよい。
次に、磁気センサ3の第2の例について説明する。第2の例では、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の各々は、少なくとも1つのホール素子を含んでいる。
図8は、第2の例における電子部品10の要部を示す斜視図である。第2の例では、第1の検出部11は、第1のホール素子H1と第3のホール素子H3とを含み、第2の検出部は、第2のホール素子H2と第4のホール素子H4とを含んでいる。電子部品10は、更に、非磁性材料よりなり上面41aを有する基板41と、磁性材料よりなるヨーク42とを含んでいる。上面41aは、XZ平面に平行である。
第1ないし第4のホール素子H1〜H4は、上面41aの近傍において、感磁面が上面41aに平行になるような姿勢で基板41に埋め込まれている。第1および第3のホール素子H1,H3は、X方向に並ぶように配置されている。第2および第4のホール素子H2,H4は、Z方向に並ぶように配置されている。
ヨーク42は、円板状である。ヨーク42は、第1ないし第4のホール素子H1〜H4のそれぞれの一部にまたがるように、基板41の上面41aの上に配置されている。第1のホール素子H1は、ヨーク42の−X方向の端の近傍に位置する。第2のホール素子H2は、ヨーク42の−Z方向の端の近傍に位置する。第3のホール素子H3は、ヨーク42のX方向の端の近傍に位置する。第4のホール素子H4は、ヨーク42のZ方向の端の近傍に位置する。
図9は、第2の例における第1の検出部11の具体的な構成の一例を示している。図10は、第2の例における第2の検出部12の具体的な構成の一例を示している。図9に示したように、第1の検出部11は、更に、電源ポートV21と、グランドポートG21と、2つの出力ポートE21,E22と、差分検出器13とを含んでいる。図10に示したように、第2の検出部12は、更に、電源ポートV22と、グランドポートG22と、2つの出力ポートE23,E24と、差分検出器23とを含んでいる。図9および図10に示したように、第1ないし第4のホール素子H1〜H4の各々は、電源端子Haと、グランド端子Hcと、2つの出力端子Hb,Hdとを有している。
第1の検出部11では、第1および第3のホール素子H1,H3の電源端子Haは、電源ポートV21に接続されている。第1および第3のホール素子H1,H3のグランド端子Hcと、第1および第3のホール素子H1,H3の出力端子Hdは、グランドポートG21に接続されている。第1のホール素子H1の出力端子Hbは、出力ポートE21に接続されている。第3のホール素子H3の出力端子Hbは、出力ポートE22に接続されている。電源ポートV21には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG21は、グランドに接続される。
第2の検出部12では、第2および第4のホール素子H2,H4の電源端子Haは、電源ポートV22に接続されている。第2および第4のホール素子H2,H4のグランド端子Hcと、第2および第4のホール素子H2,H4の出力端子Hdは、グランドポートG22に接続されている。第2のホール素子H2の出力端子Hbは、出力ポートE23に接続されている。第4のホール素子H4の出力端子Hbは、出力ポートE24に接続されている。電源ポートV22には、所定の大きさの電源電圧が印加される。グランドポートG22は、グランドに接続される。
電子部品10では、ヨーク42は、第1の合成磁界MF1を受けて、出力磁界を発生する。出力磁界は、Y方向に平行な方向の出力磁界成分であって、第1の合成磁界MF1に応じて変化する出力磁界成分を含んでいる。具体的には、ヨーク42は、第1の合成磁界MF1のX方向の成分を受けた場合には、第1のホール素子H1の近傍において−Y方向の出力磁界成分を発生し、第3のホール素子H3の近傍においてY方向の出力磁界成分を発生する。ヨーク42が第1の合成磁界MF1の−X方向の成分を受けた場合には、出力磁界成分の方向は、ヨーク42が第1の合成磁界MF1のX方向の成分を受けた場合とは逆になる。
第1の検出部11では、第1および第3のホール素子H1,H3は、第1および第3のホール素子H1,H3の近傍において発生したY方向または−Y方向の出力磁界成分を検出することによって、第1の合成磁界MF1のX方向または−X方向の成分を検出する。出力ポートE21,E22の電位差は、第1の合成磁界MF1のX方向すなわち第1の方向D1の成分の強度に応じて変化する。差分検出器13は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号、すなわち第1の合成磁界MF1の第1の方向D1(X方向)の成分の強度に対応する信号を、第1の検出信号S1として出力する。
また、電子部品10では、ヨーク42は、印加磁界のZ方向の成分を受けた場合には、第2のホール素子H2の近傍において−Y方向の出力磁界成分を発生し、第4のホール素子H4の近傍においてY方向の出力磁界成分を発生する。ヨーク42が印加磁界の−Z方向の成分を受けた場合には、出力磁界成分の方向は、ヨーク42が印加磁界のZ方向の成分を受けた場合とは逆になる。
第2の検出部12では、第2および第4のホール素子H2,H4は、第2および第4のホール素子H2,H4の近傍において発生したY方向または−Y方向の出力磁界成分を検出することによって、第1の合成磁界MF1のZ方向または−Z方向の成分を検出する。出力ポートE23,E24の電位差は、第1の合成磁界MF1のZ方向すなわち第2の方向D2の成分の強度に応じて変化する。差分検出器23は、出力ポートE23,E24の電位差に対応する信号、すなわち第1の合成磁界MF1の第2の方向D2(Z方向)の成分の強度に対応する信号を、第2の検出信号S2として出力する。
第2の例における電子部品20ならびに第3および第4の検出部21,22の構成は、図8ないし図10に示した電子部品10ならびに第1および第2の検出部11,12の構成と同じである。そのため、以下の説明では、電子部品20ならびに第3および第4の検出部21,22の構成要素について、電子部品10ならびに第1および第2の検出部11,12の構成要素と同じ符号を用いる。
電子部品20では、ヨーク42は、第2の合成磁界MF2を受けて、出力磁界を発生する。出力磁界は、Y方向に平行な方向の出力磁界成分であって、第2の合成磁界MF2に応じて変化する出力磁界成分を含んでいる。具体的には、ヨーク42は、第2の合成磁界MF2のX方向の成分を受けた場合には、第1のホール素子H1の近傍において−Y方向の出力磁界成分を発生し、第3のホール素子H3の近傍においてY方向の出力磁界成分を発生する。ヨーク42が第2の合成磁界MF2の−X方向の成分を受けた場合には、出力磁界成分の方向は、ヨーク42が第2の合成磁界MF2のX方向の成分を受けた場合とは逆になる。
第3の検出部21では、第1および第3のホール素子H1,H3は、第1および第3のホール素子H1,H3の近傍において発生したY方向または−Y方向の出力磁界成分を検出することによって、第2の合成磁界MF2のX方向または−X方向の成分を検出する。出力ポートE21,E22の電位差は、第2の合成磁界MF2のX方向すなわち第3の方向D3の成分の強度に応じて変化する。差分検出器13は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号、すなわち第2の合成磁界MF2の第3の方向D3(X方向)の成分の強度に対応する信号を、第3の検出信号S3として出力する。
また、電子部品20では、ヨーク42は、印加磁界のZ方向の成分を受けた場合には、第2のホール素子H2の近傍において−Y方向の出力磁界成分を発生し、第4のホール素子H4の近傍においてY方向の出力磁界成分を発生する。ヨーク42が印加磁界の−Z方向の成分を受けた場合には、出力磁界成分の方向は、ヨーク42が印加磁界のZ方向の成分を受けた場合とは逆になる。
第4の検出部22では、第2および第4のホール素子H2,H4は、第2および第4のホール素子H2,H4の近傍において発生したY方向または−Y方向の出力磁界成分を検出することによって、第2の合成磁界MF2のZ方向または−Z方向の成分を検出する。出力ポートE23,E24の電位差は、第2の合成磁界MF2のZ方向すなわち第4の方向D4の成分の強度に応じて変化する。差分検出器23は、出力ポートE23,E24の電位差に対応する信号、すなわち第2の合成磁界MF2の第4の方向D4(Z方向)の成分の強度に対応する信号を、第2の検出信号S2として出力する。
次に、本実施の形態に係る位置検出装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、第1の検出部11は、第1の合成磁界MF1の第1の方向D1すなわちX方向の成分の強度に対応する第1の検出信号S1を生成し、第2の検出部12は、第1の合成磁界MF1の第2の方向D2すなわちZ方向の成分の強度に対応する第2の検出信号S2を生成し、第3の検出部21は、第2の合成磁界MF2の第3の方向D3すなわちX方向の成分の強度に対応する第3の検出信号S3を生成し、第4の検出部22は、第2の合成磁界MF2の第4の方向D4すなわちZ方向の成分の強度に対応する第4の検出信号S4を生成する。そして、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3との差に対応する第1の演算後信号Saを生成し、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4との差に対応する第2の演算後信号Sbを生成し、第1および第2の演算後信号Sa,Sbに基づいて、検出値θsを生成する。
本実施の形態によれば、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3との差に対応する第1の演算後信号Saを生成し、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4との差に対応する第2の演算後信号Sbを生成することによって、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を低減することができる。以下、その理由について詳しく説明する。
第1の合成磁界MF1の強度をB1とし、第2の合成磁界MF2の強度をB2とし、第1の部分磁界MFaの強度をBaとし、第2の部分磁界MFbの強度をBbとし、ノイズ磁界Mexの強度をBexとし、第1の検出位置P1におけるノイズ磁界Mexの方向が基準方向DRに対してなす角度(第2の検出位置P2におけるノイズ磁界Mexの方向が基準方向DRに対してなす角度と同じ)を記号θexとする。理想状態において想定される、第1の合成磁界MF1の第1の方向D1の成分の強度B1と、第1の合成磁界MF1の第2の方向D2の成分の強度B2は、角度θを用いて、それぞれ下記の式(2)、(3)によって表すことができる。
B1=Ba・sinθ+Bex・sinθex …(2)
B2=Ba・cosθ+Bex・cosθex …(3)
式(2)において、Bex・sinθexは、ノイズ磁界MexのX方向の成分の強度を表している。また、式(3)において、Bex・cosθexは、ノイズ磁界MexのZ方向の成分の強度を表している。
同様に、理想状態において想定される、第2の合成磁界MF2の第3の方向D3の成分の強度B3と、第2の合成磁界MF2の第4の方向D4の成分の強度B4は、角度θを用いて、それぞれ下記の式(4)、(5)によって表すことができる。
B3=Bb・sinθ+Bex・sinθex …(4)
B4=Bb・cosθ+Bex・cosθex …(5)
以下、第1の検出信号S1を強度B1と任意の定数Aとの積A・B1とし、第2の検出信号S2を強度B2と定数Aとの積A・B2とし、第3の検出信号S3を強度B3と定数Aとの積A・B3とし、第4の検出信号S4を強度B4と定数Aとの積A・B4とする。第1の演算後信号Saを、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3との差S1−S3そのものとすると、第1の演算後信号Saは、下記の式(6)によって表される。
Sa=A・B1−A・B3
=A(Ba・sinθ+Bex・sinθex)
−A(Bb・sinθ+Bex・sinθex)
=A(Ba−Bb)sinθ …(6)
また、第2の演算後信号Sbを、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4との差S2−S4そのものとすると、第2の演算後信号Sbは、下記の式(7)によって表される。
Sb=A・B2−A・B4
=A(Ba・cosθ+Bex・cosθex)
−A(Bb・cosθ+Bex・cosθex)
=A(Ba−Bb)cosθ …(7)
式(6)に示したように、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3との差を求めると、Bex・sinθexが相殺されて、ノイズ磁界Mexに依存しない信号が得られる。また、式(7)に示したように、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4との差を求めると、Bex・cosθexが相殺されて、ノイズ磁界Mexに依存しない信号が得られる。式(6)、(7)を式(1)に代入すると、下記の式(8)が得られる。
θs=atan(Sa/Sb)
=atan((A(Ba−Bb)sinθ)/(A(Ba−Bb)cosθ))
=atan(sinθ/cosθ)
=θ …(8)
式(8)に示したように、検出値θsは、理論上、角度θ、すなわち理想状態において想定される、基準位置における検出対象磁界の方向が基準方向DRに対してなす角度と等しくなる。式(6)〜(8)から理解されるように、本実施の形態によれば、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3との差に対応する第1の演算後信号Saを生成し、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4との差に対応する第2の演算後信号Sbを生成することによって、検出値θsのノイズ磁界Mexに起因した誤差を低減することができる。
なお、上述のようにノイズ磁界Mexに起因した誤差を低減するためには、その強度が第1の強度となる位置における検出対象磁界すなわち第1の部分磁界MFaを検出することができる位置に、第1および第2の検出部11,12を配置するという第1の要件と、その強度が第2の強度となる位置における検出対象磁界すなわち第2の部分磁界MFbを検出することができる位置に、第3および第4の検出部21,22を配置するという第2の要件を満たす必要がある。言い換えると、第1および第2の要件を満たす限り、第1ないし第4の検出部11,12,21,22を任意の位置に配置することができる。例えば、本実施の形態では、第3および第4の検出部21,22が含まれる電子部品20を、第1および第2の検出部11,12が含まれる電子部品10よりも磁気スケール2からより遠い位置に配置している。第1および第2の要件を満たす限り、電子部品10と電子部品20は、Y方向について同じ位置に配置されていてもよいし、Y方向について異なる位置に配置されていてもよい。
また、第1および第2の要件を満たす限り、電子部品10と電子部品20は、X方向について同じ位置に配置されていてもよいし、X方向について異なる位置に配置されていてもよい。後者の場合、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3の位相差が0になるように、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3の少なくとも一方を補正してもよく、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4の位相差が0になるように、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4の少なくとも一方を補正してもよい。また、後者の場合であって、特に、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の各々が少なくとも1つのMR素子を含んでいる場合、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3の位相差が0になるように、第1の検出部11に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と第3の検出部21に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向の少なくとも一方を、図5に示した方向からずらしてもよく、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4の位相差が0になるように、第2の検出部12に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と第4の検出部22に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向の少なくとも一方を、図6に示した方向からずらしてもよい。
また、第1の検出部11と第2の検出部12は、電子部品10の代わりに、物理的に分離された2つの異なる電子部品に含まれていてもよい。この場合、第1の検出部11が含まれる電子部品と第2の検出部12が含まれる電子部品は、X方向について同じ位置に配置されていてもよいし、X方向について異なる位置に配置されていてもよい。後者の場合、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2の位相差が90°になるように、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2の少なくとも一方を補正してもよい。また、後者の場合であって、特に、第1および第2の検出部11,12の各々が少なくとも1つのMR素子を含んでいる場合、第1の検出信号S1と第2の検出信号S2の位相差が90°になるように、第1の検出部11に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と第2の検出部12に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向の少なくとも一方を、図5および図6に示した方向からずらしてもよい。
同様に、第3の検出部21と第4の検出部22は、電子部品20の代わりに、物理的に分離された2つの異なる電子部品に含まれていてもよい。この場合、第3の検出部21が含まれる電子部品と第4の検出部22が含まれる電子部品は、X方向について同じ位置に配置されていてもよいし、X方向について異なる位置に配置されていてもよい。後者の場合、第3の検出信号S3と第4の検出信号S4の位相差が90°になるように、第3の検出信号S3と第4の検出信号S4の少なくとも一方を補正してもよい。また、後者の場合であって、特に、第3および第4の検出部21,22の各々が少なくとも1つのMR素子を含んでいる場合、第3の検出信号S3と第4の検出信号S4の位相差が90°になるように、第3の検出部21に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と第4の検出部22に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向の少なくとも一方を、図5および図6に示した方向からずらしてもよい。
以上説明したように、本実施の形態では、第1および第2の要件を満たす限り、第1ないし第4の検出部11,12,21,22を任意の位置に配置することができる。従って、本実施の形態によれば、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の設置に大きな制約を生じさせることなく、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を低減することができる。
なお、ここまでは、理想状態を想定して、本実施の形態に効果について説明してきた。実際には、角度θが0°、90°、180°および270°となる相対位置以外の相対位置では、磁気スケール2からの距離が変化すると、任意の位置における検出対象磁界の方向は、理想状態における方向からずれてしまう。その結果、検出値θsに、磁気スケール2に起因した誤差が生じ得る。そのため、従来は、検出対象磁界の方向にずれが生じないように、磁気センサの検出部を配置する必要があった。これに対し、本実施の形態では、検出対象磁界の方向のずれを許容している。その代わり、本実施の形態では、第1および第2の要件を満たすように、第1ないし第4の検出部11,12,21,22を配置して、ノイズ磁界Mexに起因した誤差を低減している。なお、磁気スケール2に起因した誤差は、例えば、相対位置の変化に伴う第1および第2の演算後信号Sa,Sbの変化の波形が正弦波に近づくように、例えばゲイン調整およびオフセット調整等によって、第1および第2の演算後信号Sa,Sbを補正することによって低減することができる。
以下、第1のシミュレーションの結果を参照して、本実施の形態の効果について説明する。第1のシミュレーションでは、方向と強度が一定のノイズ磁界Mexが存在する状況の下で、検出値θsを生成したときの、検出値θsの誤差を求めた。第1のシミュレーションでは、ノイズ磁界Mexの強度Bexの大きさを、第1および第2の検出部11,12が検出する第1の部分磁界MFaの強度Baすなわち第1の強度の大きさの30%とし、第1の検出位置P1におけるノイズ磁界Mexの方向が基準方向DRに対してなす角度θexを、60°とした。
第1のシミュレーションでは、位置検出装置1に対応するモデルを用いた。ここで、磁石4,5,6の各々のX方向における位置を、以下のように定義する。まず、ヨーク7の上面7aに位置してX方向に延びる直線であって、磁石4,5,6と接する直線を、位置基準線とする。そして、位置基準線のうち、磁石4,5,6の各々と重なる線分の中点の位置を、磁石4,5,6の各々のX方向における位置とする。第1のシミュレーションで用いたモデルでは、磁石4のX方向における位置と磁石5のX方向における位置との間隔と、磁石5のX方向における位置と磁石6のX方向における位置との間隔を、いずれも12mmとした。
また、第1のシミュレーションで用いたモデルでは、磁石5と電子部品10,20がX方向について同じ位置にある状態を原点として相対位置を定義した。すなわち、実施例のモデルでは、磁石5と電子部品10,20がX方向について同じ位置にある状態の相対位置を0mmとし、磁石4と電子部品10,20がX方向について同じ位置にある状態の相対位置を−12mmとし、磁石6と電子部品10,20がX方向について同じ位置にある状態の相対位置を12mmとした。
また、第1のシミュレーションで用いたモデルでは、第3および第4の検出部21,22が検出する第2の部分磁界MFbの強度Bbすなわち第2の強度の大きさが、第1および第2の検出部11,12が検出する第1の部分磁界MFaの強度Baすなわち第1の強度の大きさの20%となるように、第1ないし第4の検出部11,12,21,22を配置した。
第1のシミュレーションでは、第1の検出信号S1と第3の検出信号S3との差S1−S3を第1の演算後信号Saとし、第2の検出信号S2と第4の検出信号S4との差S2−S4を第2の演算後信号Sbとした。そして、第1および第2の演算後信号Sa,Sbの各々の値を式(1)に代入することによって、検出値θsを求めた。以下、この検出値θsを、実施例の検出値θsと言う。
また、第1のシミュレーションでは、式(1)におけるSaに第1の検出信号S1の値を代入し、式(1)におけるSbに第2の検出信号S2の値を代入することによって、比較例の検出値θsを求めた。
また、第1のシミュレーションでは、実施例の検出値θsの誤差(以下、実施例の誤差E1と言う。)と、比較例の検出値θsの誤差(以下、比較例の誤差E2と言う)を求めた。なお、第1のシミュレーションでは、実施例の検出値θsと角度θとの差を実施例の誤差E1とし、比較例の検出値θsと角度θとの差を比較例の誤差E2とした。
図11は、第1のシミュレーションにおける第1および第2の検出信号S1,S2の波形を示す波形図である。図12は、第1のシミュレーションにおける第3および第4の検出信号S3,S4の波形を示す波形図である。図13は、第1のシミュレーションにおける第1および第2の演算後信号Sa,Sbの波形を示す波形図である。図11ないし図13における横軸は、相対位置を示している。図11における縦軸は、第1および第2の検出信号S1,S2の大きさを示している。図12における縦軸は、第3および第4の検出信号S3,S4の大きさを示している。図13における縦軸は、第1および第2の演算後信号Sa,Sbの大きさを示している。図11において、符号71を付した曲線は、第1の検出信号S1の波形を示し、符号72を付した曲線は、第2の検出信号S2の波形を示している。図12において、符号73を付した曲線は、第3の検出信号S3の波形を示し、符号74を付した曲線は、第4の検出信号S4の波形を示している。図13において、符号75を付した曲線は、第1の演算後信号Saの波形を示し、符号76を付した曲線は、第2の演算後信号Sbの波形を示している。なお、第1のシミュレーションでは、ノイズ磁界Mexが存在しない状態における第1および第2の検出信号S1,S2の振幅が1になるように、第1ないし第4の検出信号S1〜S4を規格化している。
図14は、比較例の検出値θsを示す特性図である。図15は、比較例の誤差E2を示す特性図である。図16は、実施例の検出値θsを示す特性図である。図17は、実施例の誤差E1を示す特性図である。図14ないし図17における横軸は、相対位置を示している。図14における縦軸は、比較例の検出値θsの大きさを示している。図15における縦軸は、比較例の誤差E2の大きさを示している。図16における縦軸は、実施例の検出値θsの大きさを示している。図17における縦軸は、実施例の誤差E1の大きさを示している。図15および図17に示したように、実施例の誤差E1は、比較例の誤差E2よりも小さくなり、理論上、0になる。実施例の誤差E1は、第1および第2の検出信号S1,S2のみに基づいて検出値θsを生成した場合の誤差である。従って、本実施の形態によれば、第1および第2の検出信号S1,S2のみに基づいて検出値θsを生成する場合に比べて、検出値θsの誤差を小さくすることができる。
[変形例]
次に、図18を参照して、磁気スケール2の変形例について説明する。図18は、磁気スケール2の変形例を示す斜視図である。磁気スケール2の変形例の構成は、以下の点で図1および図2に示した磁気スケール2の構成と異なっている。変形例では、磁石6が設けられていない。すなわち、変形例では、磁気スケール2は、複数の磁石として、2つの磁石4,5を含んでいる。なお、変形例では、検出値θsの範囲は、0°〜180°よりもある程度広い範囲までに限定される。
[第2の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図19は、本実施の形態に係る位置検出装置の概略の構成を示す平面図である。本実施の形態に係る位置検出装置1は、第1の実施の形態における磁気スケール2の代わりに、強度および方向が空間的な分布を有する外部磁界を発生する磁気スケール102を備えている。磁気スケール102は、複数の磁石104を含んでいる。複数の磁石104は、互いに間隔を開けて配置されている。磁気スケール102が発生する外部磁界は、複数の磁石104の各々が発生する磁界が合成されたものである。
磁気スケール102は、更に、樹脂またはアルミニウム等の非磁性材料よりなり、複数の磁石104を支持する基板105を含んでいる。基板105は、その中心が所定の中心軸C上に位置する円板状である。また、基板105は、上面105aと下面を有している。複数の磁石104は、基板105の上面105aの上に配置されている。
磁気スケール102は、回転動作をする図示しない可動物体に連動し、中心軸Cを中心として回転方向Rに回転する。これにより、磁気スケール102は、回転方向Rに沿った所定の範囲内において、磁気センサ3に対する相対位置が変化する。以下、磁気センサ3に対する磁気スケール102の相対位置を、単に、相対位置と言う。なお、回転方向Rは、図19における時計回り方向と、図19における反時計回り方向とを含んでいる。回転方向Rは、本発明における移動方向に対応する。
複数の磁石104は、回転方向R(移動方向)に沿って配置されている。複数の磁石104の各々は、中心軸Cに最も近い第1の端面と、回転中心から最も遠い第2の端面を有している。中心軸Cから複数の磁石104の各々の第1の端面までの距離は互いに等しく、中心軸Cから複数の主磁石の各々の第2の端面までの距離は互いに等しい。
また、複数の磁石104の各々は、N極とS極を有している。ここで、複数の磁石104のうち、回転方向Rに隣接する任意の2つの磁石104に着目する。2つの磁石104の一方では、N極とS極は、中心軸Cから遠ざかる方向に、この順に配置されている。2つの磁石104の他方では、N極とS極は、中心軸Cに近づく方向に、この順に配置されている。
図示しないが、本実施の形態では、磁気センサ3は、磁気スケール102が発生する外部磁界の一部である検出対象磁界と、検出対象磁界以外のノイズ磁界Mexとを検出する。磁気センサ3の第1ないし第4の検出部11,12,21,22は、基板105の半径方向の外側において、基板105の外周部に対向するように配置されている。任意の位置における検出対象磁界の方向は、相対位置の変化に伴って任意の位置を中心として回転する。図19に示した例では特に、磁気スケール102が1回転すると、任意の位置における検出対象磁界の方向は4回転する。
ここで、図19に示したように、中心軸Cと交差する第1の仮想の直線L1と、中心軸Cと交差し、第1の仮想の直線L1とは異なる第2の仮想の直線L2を想定する。本実施の形態では特に、第1および第2の仮想の直線L1,L2は、いずれも中心軸Cと直交する。また、第1および第2の仮想の直線L1,L2は、いずれも、磁気スケール102と交差し中心軸Cに垂直な仮想の平面上にある。以下、この仮想の平面を、基準平面と言う。また、基準平面において検出対象磁界が第1の強度となる任意の1つの位置を、第1の検出位置P11とする。第1の仮想の直線L1は、第1の検出位置P11を通る。また、基準平面において検出対象磁界が第1の強度となる位置であって、第1の検出位置P11から電気角の90°に相当する角度だけ、回転方向Rにずれた位置を、第2の検出位置P12とする。第2の仮想の直線L2は、第2の検出位置P12を通る。図19に示した例では特に、第2の検出位置P12は、第1の検出位置P11から回転方向Rに22.5°ずれた位置にある。
第1の実施の形態で説明したように、第1および第2の検出部11,12は、第1の強度の検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界である第1の合成磁界を検出するように配置されている。本実施の形態では、第1の検出部11は、第1の検出位置P11に配置され、第1の合成磁界として、第1の検出位置P11における検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界を検出する。第2の検出部12は、第2の検出位置P12に配置され、第1の合成磁界として、第2の検出位置P12における検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界を検出する。
また、第1の仮想の直線L1上の第1の検出位置P11とは異なる位置であって、検出対象磁界が第2の強度となる第1の仮想の直線L1上の位置を第3の検出位置P21とする。また、第2の仮想の直線L2上の第2の検出位置P12とは異なる位置であって、検出対象磁界が第2の強度となる第2の仮想の直線L2上の位置を第4の検出位置P22とする。図19に示した例では、第3の検出位置P21は、第1の検出位置P11から中心軸Cから遠ざかる方向に所定の距離だけ離れた位置であり、第4の検出位置P22は、第2の検出位置P12から中心軸Cから遠ざかる方向に所定の距離だけ離れた位置である。
第1の実施の形態で説明したように、第3および第4の検出部21,22は、第2の強度の検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界である第2の合成磁界を検出するように配置されている。本実施の形態では、第3の検出部21は、第3の検出位置P21に配置され、第2の合成磁界として、第3の検出位置P21における検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界を検出する。第4の検出部22は、第4の検出位置P22に配置され、第2の合成磁界として、第4の検出位置P22における検出対象磁界とノイズ磁界Mexとの合成磁界を検出する。
本実施の形態では、第1の検出部11が第1の検出信号S1を生成する基準となる第1の方向D1は、第1の仮想の直線L1に直交する一方向(図19では右側に向かう方向)である。また、第2の検出部12が第2の検出信号S2を生成する基準となる第2の方向D2は、第2の仮想の直線L2に直交する一方向(図19では右上側に向かう方向)である。第3の検出部21が第3の検出信号S3を生成する基準となる第3の方向D3は、第1の方向D1と同じ方向である。第4の検出部22が第4の検出信号S4を生成する基準となる第4の方向D4は、第2の方向D2と同じ方向である。
理想状態において想定される、第1の検出部11が検出する検出対象磁界の方向が第1の方向D1に対してなす第1の角度θ1と、第3の検出部21が検出する検出対象磁界の方向が第3の方向D3に対してなす第3の角度θ3は、互いに等しい。また、理想状態において想定される、第2の検出部12が検出する検出対象磁界の方向が第2の方向D2に対してなす第2の角度θ2と、第4の検出部22が検出する検出対象磁界の方向が第4の方向D4に対してなす第4の角度θ4は、互いに等しい。また、第1の角度θ1と第2の角度θ2との差は90°であり、第3の角度θ3と第4の角度θ4との差は90°である。
図示しないが、基準方向DRは、前述の基準平面内に位置する。基準位置は、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22のいずれかと同じ位置であってもよいし、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22とは異なる位置であってもよい。一例では、基準位置は第1の検出位置P11と同じ位置であり、基準方向DRは、第1の検出位置P11から中心軸Cに向かう方向である。
第1の実施の形態における磁気センサ3の第1の例と同様に、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の各々は、少なくとも1つのMR素子を含んでいてもよい。第1の検出部11に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と、第1の方向D1との関係は、第1の実施の形態と同じである。同様に、第2の検出部12に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と、第2の方向D2との関係は、第1の実施の形態と同じである。同様に、第3の検出部21に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と、第3の方向D3との関係は、第1の実施の形態と同じである。同様に、第4の検出部22に含まれるMR素子の磁化固定層の磁化の方向と、第4の方向D4との関係は、第1の実施の形態と同じである。
あるいは、第1の実施の形態における磁気センサ3の第2の例と同様に、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の各々は、少なくとも1つのホール素子を含んでいてもよい。本実施の形態では特に、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の各々は、別個の電子部品に含まれていてもよい。この電子部品は、第1の実施の形態における磁気センサ3の第2の例の電子部品10,20と同様に、非磁性材料よりなる基板と、磁性材料よりなるヨークとを含んでいる。基板は、前述の基準平面に平行な上面を有している。少なくとも1つのホール素子は、基板に埋め込まれている。
第1の検出部11を含む電子部品は、第1の検出部11に含まれるホール素子が第1の合成磁界の第1の方向D1の成分を検出することができるように、ホール素子とヨークが構成される。第2の検出部12を含む電子部品は、第2の検出部12に含まれるホール素子が第1の合成磁界の第2の方向D2の成分を検出することができるように、ホール素子とヨークが構成される。第3の検出部21を含む電子部品は、第3の検出部21に含まれるホール素子が第2の合成磁界の第3の方向D3の成分を検出することができるように、ホール素子とヨークが構成される。第4の検出部22を含む電子部品は、第4の検出部22に含まれるホール素子が第2の合成磁界の第4の方向D4の成分を検出することができるように、ホール素子とヨークが構成される。
なお、ここまでは、第1の仮想の直線L1上に、第1の検出位置P11と第3の検出位置P21があり、第2の仮想の直線L2上に、第2の検出位置P12と第4の検出位置P22がある例について説明してきた。しかし、本実施の形態における第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22の位置は、図19に示した例に限られない。例えば、第3の検出位置P21は、図19に示した第3の検出位置P21から、電気角の360°に相当する角度すなわち90°だけ、回転方向Rにずれた位置であってもよい。同様に、第4の検出位置P22は、図19に示した第4の検出位置P22から、電気角の360°に相当する角度すなわち90°だけ、回転方向Rにずれた位置であってもよい。
次に、磁気スケール102の複数の磁石104の形状および配置について調べた第2および第3のシミュレーションの結果について説明する。理想的には、任意の検出位置における検出対象磁界の強度は、磁気センサ3に対する磁気スケール102の相対位置の変化に関わらずに一定である。しかし、実際には、任意の検出位置における検出対象磁界の強度は、磁気センサ3に対する磁気スケール102の相対位置の変化、具体的には、任意の検出位置に対する複数の磁石104の相対位置の変化に伴って変動し得る。
ところで、ノイズ磁界Mexの影響を小さくするために、検出位置を磁気スケール102に近づけて、検出対象磁界の強度に対するノイズ磁界Mexの強度を相対的に小さくすることが考えられる。これにより、ノイズ磁界Mexの影響を受けにくくすると共に、検出対象磁界の強度そのものを大きくして、第1ないし第4の検出信号S1〜S4の質を高めることができる。しかし、検出位置を複数の磁石104に近づけすぎると、相対位置の変化に伴う検出対象磁界の強度の変動が顕著に表れる。本実施の形態では特に、第2の検出位置P12は、第1の検出位置P11から回転方向Rにずれた位置にあり、第4の検出位置P22は、第3の検出位置P21から回転方向Rにずれた位置にある。そのため、検出対象磁界の強度が変動すると、第1の検出部11と第2の検出部12が同じタイミングで同じ強度の検出対象磁界を検出することができなくなると共に、第3の検出部21と第4の検出部22が同じタイミングで同じ強度の検出対象磁界を検出することができなくなる。その結果、検出値θsを精度よく生成することができなくなる。従って、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22は、相対位置の変化に伴う検出対象磁界の強度の変動が小さくなるような位置にあることが好ましい。
第2のシミュレーションでは、相対位置の変化に伴う検出対象磁界の強度の変動が小さくなるような位置を調べた。具体的には、磁気スケール102からの距離が異なる複数の点を想定した。そして、この複数の点における検出対象磁界の強度を求めた。
第2のシミュレーションでは、図19に示した磁気スケール102のモデルを用いた。ただし、第2のシミュレーションでは、回転方向Rに隣接する2つの磁石104の間隔を0とした。また、中心軸Cに平行な一方向から見たときの回転方向Rにおける磁石104の最大の寸法を6mmとし、中心軸Cに平行な一方向から見たときの基板105の半径方向における磁石104の寸法を3mmとした。
ここで、複数の磁石104のうち、回転方向Rに並んだ3つの磁石104を、第1の磁石、第2の磁石、第3の磁石と言う。また、基準平面内において第1の磁石と第2の磁石の境界と中心軸Cを通る仮想の直線上の点であって、磁気スケール102から所定の間隔だけ離れた位置にあり且つ第1の磁石に最も近い点を第1点とする。また、基準平面内において第3の磁石の回転方向Rにおける中央と中心軸Cを通る仮想の直線上の点であって、磁気スケール102から上記所定の間隔だけ離れた位置にあり且つ第3の磁石に最も近い点を第10点とする。
また、基準平面内において第1点と第10点を通り、磁気スケール102から上記所定の間隔だけ離れた位置にある仮想の曲線と、この仮想の曲線上において第1点と第10点との間にある8つの点を想定する。この8つの点を、第1点に近い順に、第2点ないし第9点とする。第1点ないし第10点は、等間隔に配置されている。第1点ないし第10点は、第1ないし第3の磁石との位置関係が互いに異なっている。なお、第4点は、基準平面内において第2の磁石の回転方向Rにおける中央と中心軸Cを通る仮想の直線上の点であって、磁気スケール102から上記所定の間隔だけ離れた位置にあり且つ第2の磁石に最も近い点である。また、第7点は、基準平面内において第2の磁石と第3の磁石の境界と中心軸Cを通る仮想の直線上の点であって、磁気スケール102から上記所定の間隔だけ離れた位置にあり且つ第2の磁石に最も近い点である。
以下、仮想の曲線と磁気スケール102との間隔を、記号WDで表す。第2のシミュレーションでは、間隔WDを1mmから3.5mmの範囲内で0.5mmずつ変化させて、間隔WDが互いに異なる複数の仮想の曲線毎に、その仮想の曲線上にある第1点ないし第10点の各々における検出対象磁界の強度と、その仮想の曲線上にある全ての点の検出対象磁界の強度の平均値を求めた。そして、各点毎に、その点の検出対象磁界の強度とその点を通る仮想の曲線上にある全ての点の検出対象磁界の強度の平均値との差を求め、この差の、平均値に対する割合を求めた。以下、この割合を変動率と言う。
任意の1つの仮想の曲線上にある第1点ないし第10点の各々における検出対象磁界の強度の変動は、磁気センサ3に対する磁気スケール102の相対位置の変化に伴う、仮想の曲線上にある任意の検出位置における検出対象磁界の強度の変動を表している。任意の1つの仮想の曲線上にある全ての点の変動率の最大値と最小値の差は、仮想の曲線上にある任意の検出位置における検出対象磁界の強度の変動幅を表している。第2のシミュレーションでは、複数の仮想の曲線毎に、変動率の最大値と最小値の差を求めた。以下、この差を変動幅と言う。
図20は、第2のシミュレーションによって求めた変動率を示す特性図である。図20において、横軸は、仮想の曲線上の位置を示している。図20では、仮想の曲線上の位置として、第1点ないし第10点を示している。なお、図20では、第1点ないし第10点を、それぞれ1から10までの数字で表している。また、図20において、縦軸は変動率を示している。また、図20において、符号81を付した曲線は、間隔WDが1mmの仮想の曲線上の各点の変動率を示している。符号82を付した曲線は、間隔WDが1.5mmの仮想の曲線上の各点の変動率を示している。符号83を付した曲線は、間隔WDが2.0mmの仮想の曲線上の各点の変動率を示している。符号84を付した曲線は、間隔WDが2.5mmの仮想の曲線上の各点の変動率を示している。符号85を付した曲線は、間隔WDが3.0mmの仮想の曲線上の各点の変動率を示している。符号86を付した曲線は、間隔WDが3.5mmの仮想の曲線上の各点の変動率を示している。図20から、仮想の曲線上の任意の点の変動率は、第1ないし第3の磁石との位置関係によって変化することが分かる。この結果から、任意の検出位置における検出対象磁界の強度は、相対位置の変化に伴って変動することが分かる。
図21は、第2のシミュレーションによって求めた変動幅を示す特性図である。図21において、横軸は間隔WDを示し、縦軸は変動幅を示している。図21から、間隔WDが2.5mmとなる仮想の曲線の変動率が最小になることが分かる。この結果から、検出位置と磁気スケール102の間隔が2.5mmの場合に、相対位置の変化に伴う検出対象磁界の強度の変動幅が最小になることが分かる。
前述のように、第1ないし第4の検出信号S1〜S4の質を高めるためには、検出位置を磁気スケール102に近づける、すなわち間隔WDを小さくすることが好ましい。図21から、間隔WDが2.5mmよりも小さい場合、間隔WDが小さくなるに従って変動幅が大きくなることが分かる。この結果から、検出位置と磁気スケール102の間隔が2.5mmよりも小さい場合、検出位置と磁気スケール102の間隔が小さくなるに従って、相対位置の変化に伴う検出対象磁界の強度の変動幅が大きくなることが分かる。
ところで、変動率は、回転方向Rに隣接する2つの磁石104の間隔によっても変化し得る。2つの磁石104の間隔を変化させて、1つの仮想の曲線上にある第1点ないし第10点の各々における検出対象磁界の強度を求めた。そして、第2のシミュレーションと同様に、各点毎に、変動率を求めた。
第3のシミュレーションでは、第2のシミュレーションと同様に、図19に示した磁気スケール102のモデルを用いた。ただし、第3のシミュレーションでは、中心軸Cに平行な一方向から見たときの回転方向Rにおける磁石104の最大の寸法を6mm、5mm、4.35mm、4mmと変化させることによって、回転方向Rに隣接する2つの磁石104の間隔を、0mm、1mm、1.65mm、2mmと変化させた。また、第3のシミュレーションでは、第1ないし第4の検出信号S1〜S4の質を高めるために検出位置を磁気スケール102に近づけることを想定し、仮想の曲線と磁気スケール102との間隔WDを、変動幅が最小となる2.5mmよりも小さい1.5mmとした。
図22は、第3のシミュレーションによって求めた変動率を示す特性図である。図22において、横軸は仮想の曲線上の位置を示し、縦軸は変動率を示している。図22における仮想の曲線上の位置の表し方は、図20と同じである。また、図22において、符号91を付した曲線は、2つの磁石104の間隔が0mmのときの各点の変動率を示している。符号92を付した曲線は、2つの磁石104の間隔が1mmのときの各点の変動率を示している。符号93を付した曲線は、2つの磁石104の間隔が1.65mmのときの各点の変動率を示している。符号94を付した曲線は、2つの磁石104の間隔が2mmのときの各点の変動率を示している。図22から、2つの磁石104の間隔が0mmのとき(符号91)に、変動率の最大値と最小値の差すなわち変動幅が最大になることと、2つの磁石104の間隔が0mm以外のときに、変動幅は、2つの磁石104の間隔が0mmのときよりも小さくなることと、2つの磁石104の間隔が1.65mmのとき(符号93)に、変動幅が最小になることが分かる。第3のシミュレーションの結果から、2つの磁石104の間に磁化されていない部分を設けることによって、相対位置の変化に伴う検出対象磁界の強度の変動幅を小さくすることができることが分かる。
仮想の曲線と磁気スケール102との間隔WDは、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22の位置を決定するための基準である。第3のシミュレーションの結果から、間隔WDが1.5mmの場合、中心軸Cに平行な一方向から見たときの、回転方向Rにおける磁石104の最大の寸法を4.35mmとし、回転方向Rに隣接する2つの磁石104の間隔を1.65mmとし、第1および第2の検出位置P11,P12と磁気スケール102との間隔を1.5mmよりもわずかに小さくし、第3および第4の検出位置P21,P22と磁気スケール102との間隔を1.5mmよりもわずかに大きくすることによって、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22の全てにおいて検出対象磁界の強度の変動幅を小さくすることができる。
第2および第3のシミュレーションの結果から理解されるように、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22と磁気スケール102との間隔を調整すると共に、2つの磁石104の間隔を調整することによって、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22の各々における検出対象磁界の強度の変動幅を小さくすることができる。従って、検出対象磁界の強度の変動幅を小さくするための検討として、これらの間隔を調整する検討を行った後に、第1ないし第4の検出位置P11,P12,P21,P22を決定することが好ましい。
第2および第3のシミュレーションの結果は、第1の実施の形態に係る位置検出装置1にも当てはまる。すなわち、第1および第2の検出位置P1,P2と磁気スケール2との間隔を調整すると共に、磁石4,5の間隔と磁石5,6の間隔を調整することによって、第1および第2の部分磁界MFa,MFbの各々の強度の変動幅を小さくすることができる。従って、検出対象磁界の強度の変動幅を小さくするための検討として、これらの間隔を調整する検討を行った後に、第1および第2の検出位置P1,P2を決定することが好ましい。
[変形例]
次に、図23を参照して、磁気スケール102の変形例について説明する。図23は、磁気スケール102の変形例を示す平面図である。変形例では、磁気スケール102は、複数の磁石104および基板105に加えて、樹脂またはアルミニウム等の非磁性材料よりなる複数の非磁性体106と、NiFe等の磁性材料よりなるヨーク107とを含んでいる。複数の非磁性体106とヨーク107は、基板105の上面105aの上に配置されている。複数の非磁性体106の各々は、隣接する2つの磁石104の間に配置されている。
ヨーク107は、複数の磁石104を磁気的に接続している。図23に示した例では、ヨーク107は、その中心が中心軸C上に位置する環状の形状を有している。ヨーク107は、複数の磁石104の各々の、中心軸Cに最も近い第1の端面を磁気的に接続している。ここで、複数の磁石104のうち、回転方向Rに隣接する任意の2つの磁石104に着目する。この2つの磁石104のうち、第1の端面がN極側の端面である磁石104を第1の磁石104と言い、第1の端面がS極側の端面である磁石104を第2の磁石104と言う。ヨーク107は、第1の磁石104の第1の端面より発生された磁束が、第2の磁石104の第1の端面に効率的に流入するように、磁束の流れを制御する機能を有している。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、第1ないし第4の検出部11,12,21,22の配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
また、磁気スケール2または102の複数の磁石の数、形状、およびN極とS極の位置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。また、第1の実施の形態では、磁気スケール2は、磁石4,5,6の代わりに、直線状の多極着磁磁石を含んでいてもよい。また、第2の実施の形態では、磁気スケール102は、複数の磁石104の代わりに、環状の多極着磁磁石を含んでいてもよい。