JP2021055192A - ガラス合紙用パルプ、ガラス合紙およびその製造方法 - Google Patents

ガラス合紙用パルプ、ガラス合紙およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】タルクの含有量を低減させたガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプを提供する。また、ピッチ等の樹脂分を含有する凝集物がガラス基板へ付着することを低減させることができ、かつ、ガラス基板とガラス合紙とを取り扱う工程におけるハンドリング性に優れたガラス合紙を提供する。
【解決手段】タルクの含有量が0.3質量%以下であるガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプである。また、セルロースパルプを主成分とし、広葉樹晒クラフトパルプを含有するガラス合紙であって、前記広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの配合割合(質量比)が50:50〜100:0であり、タルクの含有量が0.2質量%以下であり、坪量が10〜100g/mであることを特徴とするガラス合紙である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス合紙用パルプおよびそれを使用したガラス合紙とその製造方法に関する。
ガラス基板の多用途化に伴い、ガラス合紙に対する品質要求が厳しくなっている。例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、タッチパネル、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるガラス基板では、ガラス基板の表面に微細な電子部品等が形成されるため、表面の傷や汚染が僅かであっても、断線等の不良の原因となり、製品欠陥となる。そのため、ガラス基板表面には高度の清澄性が求められる。特に、TFTやカラーフィルター用の液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに用いるガラス基板表面には、極めて高い清澄性が求められる。
ガラス基板の搬送効率を高める目的で、ガラス基板を重ねて搬送する場合が多い。ガラス基板を重ねると、ガラス合紙とガラス基板との接触圧力が高まるので、ガラス合紙中の微量成分や異物等がガラス基板に不具合を与える確率が高まる。その一方で、ガラス基板への高精細な加工に伴い、ガラス基板表面にはより高度な清澄性が要求されている。このような事情により、ガラス合紙に対する品質要求水準は益々高度化しつつある。
原料パルプの製造工程や原料パルプから合紙を抄造する工程では、原料中の異物が合紙に混入することがある。また、種々の化学物質が添加されるため、それらの添加剤が影響して汚染を引き起こすことがある。このような異物や汚染物質は、保管中または搬送の過程において、ガラス基板表面に極力付着しないことが望ましい。
こうした異物や汚染物質には、木材、パルプおよび紙から遊離した天然樹脂およびガム物質、添加剤などに由来する有機系の非水溶性の物質などが含まれる。これらの物質は、具体的には、木材由来の粘着性天然樹脂(ピッチ)、添加剤中の合成樹脂、ポリジメチルシロキサンに代表される有機ポリシロキサン化合物等の樹脂状物質であり、以降、「樹脂分」と記載することとする。樹脂分とは、アセトン溶媒に可溶な成分(アセトン可溶分)であり、アセトン可溶分として定量することができる。
ガラス基板、特にフラットパネルディスプレイ用として用いられるガラス基板については、出荷前や電子部品等の実装工程前に、水を主体とする媒体を用いてガラス表面を洗浄する工程を経る。この工程により、ガラス基板表面に付着した紙粉等の異物はほとんど洗い流されるが、粘着性天然樹脂(ピッチ)や異物、ガラスとの親和性の高い物質は、洗浄後もガラス表面に付着している可能性がある。
パルプの製造工程と抄紙工程においてはそれぞれ、樹脂分による弊害を低減させるために、一般にピッチコントロール剤が使用されている。ピッチコントロール剤とは、樹脂分が製造工程や抄紙工程で機器等に付着しないようにするために用いる添加剤である。具体的には、パルプの製造工程では、ピッチコントロール剤として、樹脂分の不粘着効果の高いタルクが広く使用されている(参考資料:村野正幸、「最近のパルプ化工程の障害と対策」、紙パ技協誌、2014年8月、第68巻、第8号、P.886−891)。また、抄紙工程では、ピッチコントロール剤として、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、界面活性剤、カチオン系ポリマー等が必要に応じて、適宜使用される。しかし、使用の態様によっては、ピッチコントロール剤として添加したタルクが逆に、汚染の原因物質となり得ることが分かってきた。
そこで、例えば、特許文献1では、表面に存在するタルクの割合を低減させたガラス合紙が開示されている。特許文献1では、タルクの代わりに、非タルク系のピッチコントロール剤として、界面活性剤、カチオン系ポリマー、硫酸バンド等を使用することが開示されている。
特開2016−125146号公報
特許文献1に記載のピッチコントロール剤を使用する方法でも、樹脂分とピッチコントロール剤とからなる凝集物が生じることがあるので、極めて高い清澄性が要求されるガラス基板向けの合紙用途には必ずしも十分なものではなかった。
ところで、木材を原料とする化学パルプ(木材パルプ)には、針葉樹パルプと広葉樹パルプとがある。ガラス合紙用には従来から、ピッチの含有量が少ない針葉樹パルプが好適に用いられてきた。しかしながら、針葉樹パルプは広葉樹パルプと比べて繊維が長いため、針葉樹パルプからなるガラス合紙は地合が悪く、吸湿によってシワが発生し易い傾向がある。そのため、ガラス基板とガラス合紙とを積層する工程やガラス基板とガラス合紙の積層品からガラス基板をピックアップする工程等において、ハンドリング性(取り扱い性)に劣ることがあった。
一方、広葉樹パルプからなるガラス合紙は、木材由来のピッチの含有量が比較的多いため、ガラス基板との接触によって、ピッチ等の樹脂分を含有する凝集物がガラス基板に付着、転移し、ガラス基板を汚染する不具合が発生し易い。
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、タルクの含有量を低減させたガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプを得ることである。また、ピッチ等の樹脂分を含有する凝集物がガラス基板へ付着することを低減させることができ、かつ、ガラス基板とガラス合紙とを取り扱う工程におけるハンドリング性に優れたガラス合紙を提供することである。
本発明者は、上記課題を解消するために、表面に電子部品が形成されるガラス基板を対象に、ガラス基板に付着した異物の分析を進めた。その結果、製品欠陥をもたらす異物は、数十μm以上の大きさを有しており、特に、パルプ製造工程におけるピッチコントロール剤として広く使用されているタルクが樹脂分を吸着し、粗大化することで不具合を大きく助長していることが判明した。
さらに分析を進めたところ、ピッチコントロール剤として添加された硫酸アルミニウムからアルミニウムイオンが解離し、アルミニウムイオンが有する強い凝集作用によって、樹脂分あるいは樹脂分とタルクからなるアニオン性の物質等が凝集することが判明した。そして、樹脂分とタルクとアルミニウムとからなる凝集物が粗大化した凝集物となり、紙に抄き込まれて付着異物となることが判明した。
本発明者はさらに、広葉樹パルプの製造工程において、ピッチの含有量が少ない広葉樹の樹種を選定し、パルプ製造における洗浄工程を強化することを検討した。その結果、タルクを添加しないパルプの製造方法を確立し、タルクフリーの広葉樹パルプを得るに至った。また、当該パルプを用いたガラス合紙を得るに至った。
本発明は、このような知見を基に生まれたものである。すなわち、本発明は以下のような構成を有している。
(1)タルクの含有量が0.3質量%以下であるガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプ。
(2)樹脂分の含有量が0.3質量%以下である前記(1)に記載のガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプ。
(3)セルロースパルプを主成分とし、広葉樹晒クラフトパルプを含有するガラス合紙であって、前記広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの配合割合(質量比)が50:50〜100:0であり、タルクの含有量が0.2質量%以下であり、坪量が10〜100g/mであることを特徴とするガラス合紙。
(4)樹脂分の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする前記(3)に記載のガラス合紙。
(5)アルミニウムの含有量が0.2質量%未満であることを特徴とする前記(3)または前記(4)に記載のガラス合紙。
(6)前記(1)または前記(2)に記載のガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプを用いるガラス合紙の製造方法であって、前記広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの配合割合(質量比)が50:50〜100:0であり、タルクの含有量が0.2質量%以下であり、坪量が10〜100g/mであることを特徴とするガラス合紙の製造方法。
本発明のガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプは、タルクの含有量を低減させたものである。本発明のガラス合紙によれば、ピッチ等の樹脂分を含有する凝集物がガラス基板へ付着することを低減させることができ、かつ、ガラス基板とガラス合紙とを取り扱う工程におけるハンドリング性を高めることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。以下に示す実施形態は一例であり、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。
(パルプ)
ガラス合紙は、セルロースパルプを主成分とする。ここで、セルロースパルプを主成分とするとは、ガラス合紙の質量に対して、セルロースパルプの含有量が50質量%を超えることを意味する。セルロースパルプは、ガラス合紙の質量に対して、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。セルロースパルプの中でも、化学的なプロセスを経て製造された化学パルプが好ましい。化学パルプとしては、例えば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等が挙げられる。
セルロースパルプとしては、木材由来の粘着性天然樹脂(ピッチ)の含有量が低いクラフトパルプ(KP)が好ましく、晒クラフトパルプがより好ましい。また、木材を原料としない化学パルプとしては、例えば、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材繊維パルプが挙げられる。
化学パルプ以外のパルプとしては、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプが挙げられる。ガラス合紙は、化学パルプ以外のパルプを1種または2種以上混合したものであってもよい。古紙パルプは一般に、粘着異物、夾雑物、ピッチが多いため、古紙パルプよりは、バージンパルプが好ましい。
化学パルプの叩解度は、200〜700mlcsfであることが好ましい。ここで、叩解度とは、JIS P8121によるカナダ標準ろ水度(Canadian standard freeness)のことである。化学パルプの叩解度を200〜700mlcsfの範囲とすることによって、ガラス合紙として必要な機械的強度と加工性を有したものとすることができる。化学パルプの叩解度が200mlcsf未満の場合は、ガラス合紙の密度が高くなって、クッション性が低くなる傾向にあるため、ガラス表面に傷が付きやすくなるおそれがある。一方、化学パルプの叩解度が700mlcsfより高い場合は、紙力が弱くなるため、流通過程や製造工程において破断するおそれがある。化学パルプの叩解度は350〜600mlcsfであることがより好ましい。パルプを叩解する方法については、公知の方法を使用することができる。
ガラス合紙の抄紙時に用いる抄紙用薬品については、ガラス表面を汚染しない範囲内で、公知の各種薬品を使用することができる。抄紙用薬品としては、例えば、ポリアクリルアミド等の紙力増強剤、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、填料、染料等が挙げられる。これらの抄紙用薬品はいずれもガラス基板を汚染する恐れを有するものであるので、添加する場合であっても、合計で0.1質量%以下とすることが好ましい。
木材を原料とする化学パルプには、針葉樹パルプと広葉樹パルプとがある。ガラス合紙用には従来から、ピッチの含有量が少ない針葉樹パルプが好適に用いられてきた。しかしながら、針葉樹パルプは広葉樹パルプと比べて繊維が長いため、針葉樹パルプからなるガラス合紙は地合が悪く、フロック地合となる。その結果、ガラス合紙としたときに、広葉樹パルプを用いたときよりも、紙面の平滑性に劣ったものとなる。また、針葉樹パルプからなるガラス合紙は、抄紙から使用時間までの時間が長期になった場合に、広葉樹パルプを用いたときよりも吸湿によってシワや凹凸が発生し易い傾向がある。
そのため、針葉樹パルプからなるガラス合紙は、広葉樹パルプからなるガラス合紙に比べて、ガラス合紙としてのハンドリング性にやや劣る傾向にあった。具体的には、ガラス基板の実装工程において、ガラス合紙を1枚1枚ローラーで搬送するときに、ガラス合紙同士が引っ掛かってガラス合紙が複数枚同時に搬送される不具合(重送)が発生する。また、ガラス基板とガラス合紙とを積層した場合に、シワが存在するため、ガラス合紙とガラス基板の厚みが増大したり、厚みにムラやバラツキが発生する場合もある。
そこで、本発明者は、広葉樹パルプ、特に広葉樹晒クラフトパルプを用いてガラス合紙を製造することを目標として、その製造条件について検討を進めた。
(付着異物)
一方、本発明者は、ガラス基板表面に形成される電子部品等に欠陥をもたらす付着異物についての分析を進めた。その結果、当該付着異物は、ピッチ等の樹脂分を含有する凝集物であり、数十μm以上の大きさを有していることが判明した。そして、タルクが存在している場合には、樹脂分を吸着したタルクが凝集し、その凝集物が抄き込み異物となっていることが判明した。
広葉樹パルプは、一般に、針葉樹パルプよりも木材由来のピッチの含有量が多い。また、タルクは、パルプの製造工程で、樹脂分の粘着性を抑制するピッチコントロール剤として、従来から広く使用されている。そこで、パルプ中のピッチ等の樹脂分の含有量を減少させ、かつタルクの含有量を低減させることを検討した。
広葉樹の中には、ピッチの含有量が少ない樹種も存在している。例えば、オセアニア地方のユーカリ、南米地方のユーカリやアカシアは、溶媒抽出法によるチップ中の抽出物の量が比較的少ない。一方、東南アジア地方のアカシアはチップ中の抽出物の量が比較的多い。このように広葉樹のチップ中の溶媒抽出率は産地によって異なっている(参考資料:村野正幸、「最近のパルプ化工程の障害と対策」、紙パ技協誌、2014年8月、第68巻、第8号、P.886−891)。
そこで、ピッチの含有量が少ない広葉樹の樹種と産地を選択することによって、パルプ中の樹脂分の含有量を減少させることとした。また、パルプの製造工程において、パルプ中の樹脂分を低減させるための製造方法として、以下のような方法が知られている。
(1)(洗浄強化法)パルプ製造の蒸解工程で可溶化されたリグニン、樹脂分、有機酸及び残留蒸解液をパルプから除去する洗浄工程において、洗浄装置を多段化したり、洗浄水量を増大させる方法。
(2)(シーズニング法)原木やチップを屋外に積み上げて長期にわたって放置・枯化させる方法。
(3)(薬品添加法)例えば特公昭50?22606号公報に記載されているように、パルプ化及び抄紙工程で種々の付加モル数を有するポリオキシエチレンのアルキルエーテルあるいはアルキルフェニル誘導体やそれらを主成分とする界面活性剤を添加する方法。
パルプ中の樹脂分の含有量を減少させることができれば、それに伴って、パルプの製造工程で添加するタルクの使用量を低減させることが可能となる。
(タルク)
ガラス基板の表面における汚染の程度と樹脂分およびタルクの含有量との関係から、許容されるタルクの含有量について検討を加えた。その結果、ガラス合紙中のタルクの含有量は、0.2質量%以下とし、0.1質量%が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。
ガラス合紙中のタルクの含有量を0.2質量%以下とするためには、ガラス合紙の原料である広葉樹晒クラフトパルプ中のタルクの含有量を低減させる必要がある。そのため、広葉樹晒クラフトパルプ中のタルクの含有量は、0.3質量%以下とし、0.2質量%が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。パルプ中のタルクは、その後の紙の製造工程で一部系外へ排出される。したがって、ガラス合紙中のタルクの含有量は、パルプ中のタルクの含有量よりも少なくなる。一般的には、ガラス合紙に残留するタルクは、パルプ中のタルクの60質量%以下となる。
(樹脂分)
また、ガラス基板表面の汚染の程度と樹脂分およびタルクの含有量との関係から、許容されるガラス合紙中の樹脂分の含有量について検討を加えた。その結果、ガラス合紙中の樹脂分の含有量は、0.1質量%が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。
ガラス合紙中の樹脂分の含有量を0.1質量%以下とするためには、ガラス合紙の原料である広葉樹晒クラフトパルプ中の樹脂分の含有量を低減させる必要がある。そのため、広葉樹晒クラフトパルプ中の樹脂分の含有量は、0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。パルプ中の樹脂分は、その後の紙の製造工程で一部系外へ排出される。したがって、ガラス合紙中の樹脂分の含有量は、パルプ中の樹脂分の含有量よりも少なくなる。一般的には、ガラス合紙に残留する樹脂分は、パルプ中の樹脂分の60質量%以下となる。
(アルミニウム)
本発明者の分析により、ガラス基板の表面に形成される付着異物は、アルミニウムを含有する場合があることが判明した。アルミニウムは、抄紙薬品として使用される硫酸アルミニウムに由来するものである。硫酸アルミニウムは、ピッチコントロール剤として機能するだけでなく、サイズ剤を定着させる機能、濾水性を向上させる機能、抄紙機材へパルプ粕が付着することを抑制する機能を有している。硫酸アルミニウムは、ガラス合紙製造の操業性を安定化させるために、添加されることが多い。
硫酸アルミニウムがピッチコントロール剤として機能するメカニズムは次のとおりである。硫酸アルミニウムから解離したアルミニウムイオンは、カチオン性を有しているため、アニオン性のピッチ(コロイダルピッチ)をある程度凝集させた後に、その凝集体をパルプ繊維に電荷の力で結合させ、紙の中に抄き込ませる。その結果、抄紙工程での樹脂等による弊害の発生が抑制される。
ところが、硫酸アルミニウムを一定量以上添加すると、樹脂分の凝集物または樹脂分とタルクとからなる凝集物が更に凝集して粗大化した凝集物が発生し、いわゆる抄き込み異物となる。このような粗大化した凝集物が電子部品等の製品欠陥をもたらすおそれがある。
以上の結果を踏まえて、本発明者は、樹脂分を含有する凝集物がガラス合紙に付着することを抑制するためには、ガラス合紙中のアルミニウムの含有量を0.2質量%未満とすることが好ましいことを見出した。ガラス合紙中のアルミニウムの含有量は、0.1質量%未満とすることがより好ましく、0.01質量%未満とすることがさらに好ましい。
なお、硫酸アルミニウムを抄紙用薬品として一定量以上使用した紙は、例えば、JIS P8133−2に準拠して測定した熱水抽出pHは4〜5.5程度となり、いわゆる酸性紙となる。硫酸アルミニウムなどの酸性薬品を使用しない紙は、熱水抽出pHは6.0〜7.5程度となる。
(ガラス合紙)
上記したように、ガラス基板とガラス合紙とを取り扱う工程におけるハンドリング性を改善するためには、ガラス合紙のパルプとして、広葉樹晒クラフトパルプを含有することが必要となる。ガラス合紙中の広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの配合割合(質量比)は、50:50〜100:0であり、75:25〜100:0が好ましい。但し、ガラス合紙に機械的強度をさらに付与したいときには、針葉樹晒クラフトパルプを少量配合することが好ましく、ガラス合紙中の広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの配合割合(質量比)は、80:20〜95:5が好ましい。
ガラス合紙の坪量は、小さい方が運搬時の質量が少なくなるため好ましいが、小さ過ぎると、ガラス基板に対して十分な緩衝機能を付与することができない。一方、ガラス合紙の坪量は、ある程度大きい方が緩衝機能の点で好ましいが、大き過ぎると運搬時の質量が大きくなり好ましくない。緩衝機能と質量とのバランス、用途を考慮すると、ガラス合紙の坪量は10〜100g/mとする。ガラス合紙のより好ましい坪量は30〜80g/mである。
ガラス合紙の厚さは、緩衝性、作業性の観点から、25〜250μmであることが好ましい。また、ガラス合紙の密度は、0.4〜1.2g/cmであることが好ましい。
(パルプの製造方法)
パルプの製造方法としては、上記したパルプ中の樹脂分を低減させるための製造方法を用いることができる。
(ガラス合紙の製造方法)
ガラス合紙の製造方法には特に制限はなく、種々の抄紙機を用いて、適切な抄造条件を選択することによって、抄造することができる。抄紙機としては、具体的に、長網フォーマ、ツインワイヤーフォーマ、円網フォーマ、傾斜フォーマなどを挙げることができる。合紙の層構成は、単層であってもよいし、多層であってもよい。
本実施形態のガラス合紙は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、タッチパネル、プラズマディスプレイといったフラットパネルディスプレイ用のガラス基板を複数枚積層して保管、運搬する際に、ガラス基板を保護するために好適に使用される。中でも、極めて高度の清澄性が求められる液晶ディスプレイ(TFT用、カラーフィルター用)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイに好適に使用される。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、配合を示す数値は、固形分または有効成分の質量基準の数値(質量%)である。また、特に記載のない場合については、抄造した紙はJIS P8111に準じて処理を行なった後、測定および評価試験に供した。
<タルク含有量>
ガラス合紙をJIS P8251に準じて灰化処理した。次に、得られた灰中のタルク含有量(質量%)を蛍光X線回折装置(リガク社製、RINT−UltimaIII)を用い、予め所定量のタルクを含有するガラス合紙を用いて作成した検量線によって求めた。ガラス合紙中のタルク含有量mは次式(1)によって求めた。
m=(b/a)×c×100 ・・・(1)
ここで、m:タルク含有量(質量%)
a:ガラス合紙の質量(g)
b:灰分の質量(g)
c:灰中のタルクの含有量(質量%)
<樹脂分の含有量>
JIS P 8224に準拠して、アセトン可溶分を求めた。
<ガラス板汚染性>
(ガラス板表面の汚染試験)
300mm×300mmのフラットパネルディスプレイ用ガラス板に、310mm×310mmガラス合紙を当て、0.7MPaで10秒間圧力を掛けるプレス操作を繰り返し行った。すなわち、300mm×300mmのフラットパネルディスプレイ用ガラス板は同一として、310mm×310mmガラス合紙を1回プレスする毎に新規なものに変えて、100回プレス操作を繰返し、試験後のフラットパネルディスプレイ用ガラス板を得た。
(ガラス板表面の汚染性の評価)
上記試験後のフラットパネルディスプレイ用ガラス板の表面を水で洗い流し、次に、スポットライトをガラス板表面に当てて、ガラス板表面の汚れを目視および顕微鏡にてカウントした。ガラス板汚染性を以下の基準で評価した。
◎:汚れ0個
○:汚れ1個
×:2個以上の汚れあり
<ガラス合紙の吸湿シワ>
210mm×297mmのガラス合紙を23℃、相対湿度80%r.h.で12時間以上調湿し、次に、23℃、相対湿度50%r.h.で12時間以上調湿して、ガラス合紙のシワを目視し、以下の基準で評価した。
○:シワがある
×:シワがほとんどない
<ガラス合紙中のアルミニウム含有量>
ガラス合紙中のアルミニウム含有量(質量%)は、蛍光X線分析装置(スペクトリス社製、PW2404)を用い、予め所定量のアルミニウムを含有するガラス合紙を用いて作成した検量線によって求めた。
<ガラス合紙の熱水抽出pH>
JIS P 8133−2に準じて求めた。
(パルプの製造方法)
(1)広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)Aの製造方法
広葉樹晒クラフトパルプとして、オセアニア地方産のユーカリを用いて、晒クラフト法にて製造した。得られたLBKPのタルク含有量は0.20質量%、樹脂分の含有量は0.15質量%であった。
(2)広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)Bの製造方法
広葉樹晒クラフトパルプとして、南米地方産のユーカリを用いて、晒クラフト法にて製造した。得られたLBKPのタルク含有量は0質量%、樹脂分の含有量は0.05質量%であった。
(3)広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)Cの製造方法
広葉樹晒クラフトパルプとして、東南アジア地方産のアカシアを用いて、晒クラフト法にて製造した。得られたLBKPのタルク含有量は0.71質量%、樹脂分の含有量は0.44質量%であった。
(4)針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)Aの製造方法
針葉樹晒クラフトパルプとして、米国産ラジアータマツを用いて、晒クラフト法にて製造した。得られたNBKPのタルク含有量は0質量%、樹脂分の含有量は0.02質量%であった。
[実施例1]
原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプA:60%、針葉樹晒クラフトパルプA:40%からなるバージンパルプ(叩解度450mlcsf)のパルプスラリーを使用し、抄紙薬品を添加せずに、長網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙後、乾燥させて、坪量40g/mのガラス合紙を得た。
[実施例2]
原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプB:80%、針葉樹晒クラフトパルプA:20%からなるバージンパルプ(叩解度430mlcsf)のパルプスラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス合紙を得た。
[実施例3]
原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプB:100%のバージンパルプ(叩解度480mlcsf)のパルプスラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス合紙を得た。
[比較例1]
原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプC:60%、針葉樹晒クラフトパルプA:40%からなるバージンパルプ(叩解度450mlcsf)のパルプスラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス合紙を得た。
[比較例2]
原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプB:10%、針葉樹晒クラフトパルプA:90%からなるバージンパルプ(叩解度430mlcsf)のパルプスラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス合紙を得た。
[比較例3]
原料パルプとして、広葉樹晒クラフトパルプB:10%、針葉樹晒クラフトパルプA:90%からなるバージンパルプ(叩解度430mlcsf)を用い、絶乾パルプ質量に対して硫酸アルミニウム16水和物を4質量%添加したパルプスラリーを用いた以外は実施例1と同様にして、ガラス合紙を得た。
得られたガラス合紙について、タルク含有量、樹脂含有量、アルミニウム含有量、熱水抽出pH、ガラス板汚染性及び吸湿シワを測定した。
Figure 2021055192
表1に、実施例1〜3および比較例1〜3の評価結果を示した。実施例1〜3のガラス合紙は、ガラス板汚染性と吸湿シワに優れていた。また、タルクを含有する実施例1に比べて、タルクを含有しない実施例2はガラス板汚染性においてさらに優れたものであった。一方、比較例1のガラス合紙は、タルクの含有量が高く、ガラス板汚染性に劣っていた。比較例2のガラス合紙は、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が低く、吸湿シワに劣っていた。比較例3のガラス合紙は、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が低く、アルミニウムの含有量が高いため、ガラス板汚染性と吸湿シワに劣っていた。

Claims (6)

  1. タルクの含有量が0.3質量%以下であるガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプ。
  2. 樹脂分の含有量が0.3質量%以下である請求項1に記載のガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプ。
  3. セルロースパルプを主成分とし、広葉樹晒クラフトパルプを含有するガラス合紙であって、
    前記広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの配合割合(質量比)が50:50〜100:0であり、
    タルクの含有量が0.2質量%以下であり、
    坪量が10〜100g/mであることを特徴とするガラス合紙。
  4. 樹脂分の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載のガラス合紙。
  5. アルミニウムの含有量が0.2質量%未満であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のガラス合紙。
  6. 請求項1または請求項2に記載のガラス合紙用広葉樹晒クラフトパルプを用いるガラス合紙の製造方法であって、
    前記広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの配合割合(質量比)が50:50〜100:0であり、
    タルクの含有量が0.2質量%以下であり、
    坪量が10〜100g/mであることを特徴とするガラス合紙の製造方法。
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