JP2021053987A - 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法 - Google Patents

平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】現像カスの堆積を抑制しうる平版印刷版原版を提供すること。【解決手段】アルミニウム支持体と、上記アルミニウム支持体上に形成された画像記録層と、を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合性化合物、及びポリマー粒子を含み、上記ポリマー粒子が、25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物を内包する、平版印刷版原版、並びにその応用。【選択図】なし

Description

本開示は、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像或いは製版の簡易化及び無処理化が指向されている。簡易な製版方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
機上現像型の平版印刷版原版としては、例えば、特許文献1に、アルミニウム支持体上に下塗り層と感熱画像形成層を有する平版印刷版材料において、感熱画像形成層が熱溶融性微粒子又は熱融着性微粒子を含むことが開示されている。
特許文献2には、基材上に、(A1)カルボキシル基を有する重合性モノマーとアマイド基を有する重合性モノマーとを用いて乳化重合により形成された、ガラス転移点(Tg)が70℃以上であるポリマー粒子、又は、(A2)乳化重合により形成されたコアシェル構造を有するポリマー粒子であって、ポリマー粒子のシェルが、カルボキシル基を有する重合性モノマーとアマイド基を有する重合性モノマーとを用いて重合され、かつガラス転移点(Tg)が70℃以上であるポリマーからなるポリマー粒子を含む画像形成層を有する印刷版材料が開示されている。
特開2008−185829号公報 国際公開第2008/084645号
平版印刷版は、平版印刷版原版から非画像部を除去(即ち現像)することで得られるが、現像の際に生じる現像カスが堆積することが問題となることがある。
例えば、機上現像の場合、湿し水を平版印刷版原版に供給する水着けローラに現像カスが付着し、堆積してしまったり、湿し水タンク中で現像カスが堆積してしまうためである。
そこで、本発明の実施形態が解決しようとする課題は、現像カスの堆積を抑制しうる平版印刷版原版を提供することである。
本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、現像カスの堆積を抑制しうる、平版印刷版の製版方法又は平版印刷方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> アルミニウム支持体と、上記アルミニウム支持体上に形成された画像記録層と、を有し、
上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合性化合物、及びポリマー粒子を含み、
上記ポリマー粒子が、25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物を内包する、
平版印刷版原版。
<2> 上記25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物の分子量が5,000以下である、<1>に記載の平版印刷版原版。
<3> 上記25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物が非イオン性化合物である、<1>又は<2>に記載の平版印刷版原版。
<4> 上記疎水性基が、パーフルオロアルキル基又は炭素数1〜50のアルキル基である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<5> 上記親水性基が、アミノ基、ヒドロキシ基、又はポリアルキレンオキシド構造を有する基である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<6> 上記ポリマー粒子を構成するポリマーが付加重合型樹脂である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<7> 上記ポリマー粒子を構成するポリマーが熱可塑性樹脂である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<8> 上記ポリマー粒子を構成するポリマーが、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位とアクリロニトリル化合物により形成される構成単位とを少なくとも有する樹脂である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<9> 上記ポリマー粒子を構成するポリマーが重付加型樹脂である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<10> 上記重付加型樹脂が三次元架橋構造を有する、<9>に記載の平版印刷版原版。
<11> 上記ポリマー粒子を構成するポリマーがポリアルキレンオキシド構造を有する、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<12> 上記画像記録層が、重合開始剤及び重合性化合物を更に含む、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<13> 上記画像記録層が発色剤を更に含む<1>〜<12>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<14> 上記発色剤が、酸発色剤である<13>に記載の平版印刷版原版。
<15> 上記酸発色剤が、ロイコ色素である<14>に記載の平版印刷版原版。
<16> 上記ロイコ色素が、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素である<15>に記載の平版印刷版原版。
<17> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le−1)〜式(Le−3)のいずれかで表される化合物である<16>に記載の平版印刷版原版。
Figure 2021053987
式(Le−1)〜式(Le−3)中、ERGはそれぞれ独立に電子供与性基を表し、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、X〜X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の有機基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
<18> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le−4)〜式(Le−6)のいずれかで表される化合物である<16>又は<17>に記載の平版印刷版原版。
Figure 2021053987
式(Le−4)〜式(Le−6)中、ERGはそれぞれ独立に電子供与性基を表し、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
<19> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le−7)〜式(Le−9)のいずれかで表される化合物である<16>〜<18>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
Figure 2021053987
式(Le−7)〜式(Le−9)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又、はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rc及びRcは、それぞれ独立に、アリール基を表す。
<20> Ra〜Raがそれぞれ独立にアルコキシ基である<19>に記載の平版印刷版原版。
<21> 上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、上記式(Le−8)で表される化合物である<19>に記載の平版印刷版原版。
<22> X〜Xが水素原子であり、Y及びYがCである<21>に記載の平版印刷版原版。
<23> Rb及びRbが、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である<21>又は<22>に記載の平版印刷版原版。
<24> 上記画像記録層の未露光部が、湿し水及び印刷インキの少なくとも一方により除去可能である、<1>〜<23>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版。
<25> <1>〜<24>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
露光後の平版印刷版原版に、印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方を供給して、印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程と、
を含む、平版印刷版の作製方法。
<26> <1>〜<24>のいずれか1つに記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
露光後の平版印刷版原版に、印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方を供給して、印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し、平版印刷版を作製する工程と、
作製された平版印刷版にて印刷を行う工程と、
を含む、平版印刷方法。
本発明の実施形態によれば、現像カスの堆積を抑制しうる平版印刷版原版を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、現像カスの堆積を抑制しうる、平版印刷版の製版方法又は平版印刷方法を提供することができる。
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
また、本開示におけるポリマー粒子におけるメジアン径は、特に断りのない限り、光散乱法によって測定された値を指し、メジアン径は粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が同数となる径のことを指す。光散乱法によるポリマー粒子のメジアン径の測定は、LA−920(株式会社堀場製作所製)を用い、上記機器のマニュアルに沿って行われる。
本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
また、本開示において、化学構造式における「*」は、他の構造との結合位置を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
<平版印刷版原版>
本開示に係る平版印刷版原版は、アルミニウム支持体と、上記アルミニウム支持体上に形成された画像記録層と、を有し、上記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合性化合物、及びポリマー粒子を含み、上記ポリマー粒子が、25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物を内包する。
以下、ポリマー粒子が内包する、25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物を、特定水難溶性化合物ともいう。
本発明者が鋭意検討した結果、本開示に係る平版印刷版原版によれば、現像カスの堆積が抑制されることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
本開示に係る平版印刷版原版の画像記録層は、特定水難溶性化合物を内包するポリマー粒子を含む。
ポリマー粒子に内包された特定水難溶性化合物の少なくとも一部は、画像記録層内でポリマー粒子の表面に染み出すものと考えられる。染み出した特定水難溶性化合物は、分子内に親水性基と疎水性基とを有することから、これらの基の存在により、非画像部を現像する際には、発生した現像カスの、現像液又は湿し水中での分散性を高めることができる。特に、ポリマー粒子自身も、その形状ゆえに分散性を有することから、ポリマー粒子の形状と染み出す特定水難溶性化合物とが相まって、現像時に発生する現像カスの分散性をより高めることができ、印刷機又は現像装置への現像カスの堆積を抑制しうるものと考えられる。
なお、特定水難溶性化合物は水に難溶性の化合物であるため、非画像部の画像記録層の水溶性を高めにくく、耐刷性も低下しにくいと考えられる。
上記効果を有することから、本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキの少なくともいずれかにより除去可能である、機上現像型の平版印刷版原版であることが好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版が、機上現像型の平版印刷版原版であることで、印刷機(特に、印刷機における水着けローラ)への現像カスの堆積を抑制しうる。
〔画像記録層〕
本開示における画像記録層は、赤外線吸収剤、重合性化合物、及び特定水難溶性化合物を内包するポリマー粒子を含む。
本開示に係る画像記録層は、重合開始剤及び重合性化合物を更に含むことが好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、ネガ型画像記録層であることが好ましく、水溶性又は水分散性のネガ型画像記録層であることがより好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
[ポリマー粒子]
本開示における画像記録層は、特定水難溶性化合物を内包するポリマー粒子(以下、単に「内包型ポリマー粒子」ともいう)を含む。
内包型ポリマー粒子は、少なくとも特定水難溶性化合物を内包する。内包型ポリマー粒子は、特定水難溶性化合物の他、後述する画像記録層に含まれうる各成分(例えば、重合性化合物、赤外線吸収剤、重合開始剤、着色剤、発色剤等)等を内包してもよい。
本開示において、ある化合物がポリマー粒子に内包されるとは、カプセル状のポリマーの内部に化合物が含有された状態であってもよいし、例えば、ゲル状等の三次元架橋構造を有するポリマー粒子の内部に化合物が取り込まれた状態であってもよいし、更にポリマーによる連続相中にある化合物が分散している海島構造であってもよい。内包物の染み出し易さの観点からは、三次元架橋構造を有するポリマー粒子の内部に化合物が取り込まれた状態のポリマー粒子が好ましい。
(特定水難溶性化合物)
本開示における内包型ポリマー粒子は、特定水難溶性化合物を内包する。
特定水難溶性化合物における25℃における水への溶解度は、5質量%未満であり、耐刷性の低下を抑制する観点からは、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
特定水難溶性化合物における25℃における水への溶解度の下限値は、例えば、0.01質量%が挙げられ、0.01質量%が好ましい。
ここで、水への溶解度は、以下のようにして測定する。
即ち、水への溶解度は、試験物質(即ち、特定疎水性化合物であり得る試験物質)の融点が25℃超である場合には、以下のようにして測定する。
まず、三角フラスコに試験物質20gと水80gとを入れ、25℃で24時間振盪させる。得られた溶液を、5μmのメンブレンフィルターにより濾過し、濾液を得る。得られた濾液5gを100℃、3時間で蒸発乾固させ、残存質量から、濾液中に溶解されていた試験物質の濾液全量に対する含有量(質量%)を算出する。算出された含有量(質量%)を、試験物質の水への溶解度とする。
また、水への溶解度は、試験物質(即ち、特定疎水性化合物であり得る試験物質)の融点が25℃以下である場合には、以下のようにして測定する。
まず、三角フラスコに水100gを入れ、内温を25℃に保ち、試験物質を徐々に滴下していく。目視観察により、三角フラスコ内の液体に濁りが生じた段階で滴下を終了する。滴下終了時点での三角フラスコ内の液体の全質量に対する、滴下に要した試験物質の質量(質量%)を、試験物質の水への溶解度とする。
特定水難溶性化合物の分子量は、ポリマー粒子の表面への染み出し易さの観点から、5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,000以下であることが更に好ましい。
また、特定水難溶性化合物の分子量は、1,000以下であってもよく、500以下であってもよい。
なお、特定水難溶性化合物の分子量の下限は、例えば、70が挙げられる。
特定水難溶性化合物は、耐刷性及び現像性の観点から、非イオン性化合物であることが好ましい。
ここで、非イオン性化合物とは、水との接触でイオン化しない化合物を指す。
特定水難溶性化合物は、水との接触でイオン化しない親水性基を有する化合物であることが好ましい。
特定水難溶性化合物は、分子内に親水性基及び疎水性基を有する。
特定水難溶性化合物が有する疎水性基としては、疎水性を示す基であれば特に制限はないが、例えば、パーフルオロアルキル基、炭素数1〜50のアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。中でも、現像カスの堆積を抑制する観点から、特定水難溶性化合物が有する疎水性基としては、パーフルオロアルキル基又は炭素数1〜50のアルキル基であることが好ましい。
疎水性基としてのパーフルオロアルキル基は、炭素数5〜40のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数7〜30のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数8〜25のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。
また、パーフルオロアルキル基としては、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
疎水性基としての炭素数1〜50のアルキル基は、炭素数6〜30のアルキル基であることが好ましく、炭素数12〜24のアルキル基であることがより好ましい。
また、疎水性基としてのアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
特定水難溶性化合物が有する親水性基としては、親水性を示す基であれば特に制限はないが、上記の水への溶解度を達成する観点から選択されることが好ましい。特定水難溶性化合物が有する親水性基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、カルボキシ基等が挙げられる。中でも、現像カスの堆積を抑制する観点から、特定水難溶性化合物が有する親水性基としては、アミノ基、ヒドロキシ基、又はポリアルキレンオキシド構造を有する基であることが好ましく、特に、ヒドロキシ基が好ましい。
親水性基としてのアミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基が挙げられ、中でも、3級アミノ基が好ましい。
親水性基としてのポリアルキレンオキシド構造を有する基としては、ポリエチレンオキシド構造を有する基、ポリプロピレンオキシド構造を有する基、又は、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造を有する基であることが好ましい。
ポリアルキレンオキシド構造におけるアルキレンオキシド構造の数は、2以上であることが好ましく、2〜20であることが更に好ましく、3〜15であることが特に好ましい。
特定水難溶性化合物としては、親水性基として、アミノ基、ヒドロキシ基、又はポリアルキレンオキシド構造を有する基を有し、且つ、疎水性基として、パーフルオロアルキル基又は炭素数1〜50のアルキル基を有することが好ましい。
より具体的には、特定水難溶性化合物は、親水性基としてヒドロキシ基を有し且つ疎水性基として炭素数1〜50のアルキル基を有する化合物(以下、アルキルアルコール化合物ともいう);親水性基としてアミノ基を有し且つ疎水性基として炭素数1〜50のアルキル基を有する化合物(以下、アルキルアミン化合物ともいう);親水性基としてポリアルキレンオキシド構造を有する基(好ましくはポリエチレンオキシド構造を有する基)を有し且つ疎水性基として炭素数1〜50のアルキル基を有する化合物(以下、アルキルPEO化合物ともいう)、親水性基としてポリアルキレンオキシド構造を有する基(好ましくはポリエチレンオキシド構造を有する基)を有し且つ疎水性基としてパーフルオロアルキル基を有する化合物(以下、パーフルオロアルキルPEO化合物ともいう)等が挙げられる。
現像カスの堆積を抑制する観点からは、アルキルアルコール化合物が最も好ましく、次いで、アルキルアミン化合物が好ましく、次いで、アルキルPEO化合物が好ましく、次いで、パーフルオロアルキルPEO化合物が好ましい。
耐刷性の観点からは、アルキルアルコール化合物、アルキルアミン化合物、及びパーフルオロアルキルPEO化合物が好ましく、次いで、アルキルPEO化合物が好ましい。
現像性(特に機上現像性)の観点からは、アルキルアルコール化合物、アルキルアミン化合物、アルキルPEO化合物、及びパーフルオロアルキルPEO化合物が好ましい。
以下、特定水難溶性化合物の具体例を、水への溶解度と共に示す。
アルキルアルコール化合物として具体的には、1−エイコサノール(<1質量%)、1−ドコサノール(<1質量%)、ステアリルアルコール(<1質量%)、2−オクチルドデカノール(<1質量%)、1−オクタノール(<1質量%)、1−ヘキサノール(<1質量%)、1−ペンタノール(2.7質量%)、1−ヘプタノール(1.0質量%)等が挙げられる。
アルキルアミン化合物として具体的には、N,N−ジメチル−N−ドデシルアミン(<1質量%)、N,N−ジメチル−N−シクロヘキシルアミン(<1質量%)等が挙げられる。
アルキルPEO化合物として具体的には、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(アルキレンオキシド構造の数12〜13(1.0質量%)、例えば、花王(株)製のエマルゲン 320P)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(アルキレンオキシド構造の数3〜4(<1質量%)、例えば、花王(株)製のエマルゲン 104P)等が挙げられる。
パーフルオロアルキルPEO化合物として具体的には、ポリエチレンオキシド構造を有する基とパーフルオロアルキル基とを有する化合物が挙げられ、DIC(株)製の、メガファック(登録商標) F-430(<1質量%)、F−555(<1質量%)、F−557(<1質量%)、F−558(<1質量%)等が挙げられる。
特定水難溶性化合物としては、その他、トリベンジルアミン(<1質量%)、ステアリン酸メチル(<1質量%、花王(株)製のエキセパール MS)等が挙げられる。
特定水難溶性化合物の含有量は、現像カスの堆積を抑制する観点から、内包型ポリマー粒子の全質量に対し、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜7質量%であることがより好ましく、1質量%〜3質量%であることが更に好ましい。
(内包型ポリマー粒子を構成するポリマー)
内包型ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、特定水難溶性化合物を内包する構造を形成しうるものであれば特に限定はされない。
内包型ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、例えば、付加重合型樹脂、重付加型樹脂、重縮合型樹脂等が挙げられるが、中でも、付加重合型樹脂、又は重付加型樹脂が好ましい。
また、内包型ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、熱融着が可能なポリマー粒子となりうる観点から、熱可塑性樹脂であってもよい。
(1)付加重合型樹脂
内包型ポリマー粒子を構成するポリマーの1つである付加重合型樹脂は、ポリマー粒子の製造容易性の観点から、エチレン性不飽和化合物を重合してなる樹脂であることが好ましい。
付加重合型樹脂としては、特に制限はないが、耐刷性を高める観点からは、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位と、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位とを少なくとも有する樹脂であることが好ましい。
なお、付加重合型樹脂としては、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位と、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位と、の他に、N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位、エチレン性不飽和基を有する構成単位、酸基を有する構成単位、疎水性基を有する構成単位、又はその他の構成単位を含んでいてもよい。
−芳香族ビニル化合物により形成される構成単位−
芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、下記式A1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
Figure 2021053987
式A1中、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは芳香環基を表し、RA3は置換基を表し、nはArの最大置換基数以下の整数を表す。
式A1中、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、いずれも水素原子であることが更に好ましい。
式A1中、Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式A1中、RA3はアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であることがより好ましく、メチル基又はメトキシ基であることが更に好ましい。
式A1中、RA3が複数存在する場合、複数のRA3は同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
式A1中、nは0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
上記構成単位を得るための芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、及びp−メトキシ−β−メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1−ビニルナフタレン、メチル−1−ビニルナフタレン、β−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メチル−1−ビニルナフタレン、4−メトキシ−1−ビニルナフタレン等が挙げられ、1−ビニルナフタレンが好ましく挙げられる。
付加重合型樹脂に含まれる芳香族ビニル化合物により形成される構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、付加重合型樹脂の全質量に対し、10質量%〜90質量%であることが好ましく、20質量%〜80質量%であることがより好ましく、35質量%〜75質量%であることが更に好ましく、30質量%〜60質量%であることが特に好ましい。
−アクリロニトリル化合物により形成される構成単位−
また、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位としては、下記式B1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
Figure 2021053987
式B1中、RB1は水素原子又はアルキル基を表す。
式B1中、RB1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
上記構成単位を得るためのアクリロニトリル化合物としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ、アクリロニトリルが好ましく挙げられる。
付加重合型樹脂に含まれるアクリロニトリル化合物により形成される構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
アクリロニトリル化合物により形成される構成単位の含有量は、付加重合型樹脂の全質量に対し、10質量%〜90質量%であることが好ましく、20質量%〜80質量%であることがより好ましく、20質量%〜70質量%であることが更に好ましく、30質量%〜60質量%であることが特に好ましい。
−N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位−
N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位としては、下記式C1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
Figure 2021053987
式C1中、Arは窒素原子を含む複素環構造を表し、Ar中の窒素原子が*で示した炭素原子と結合する。
式C1中、Arにより表される複素環構造は、ピロリドン環、カルバゾール環、ピロール環、フェノチアジン環、スクシンイミド環、フタルイミド環、カプロラクタム環、及びイミダゾール環であることが好ましく、ピロリドン環であることがより好ましい。
また、Arにより表される複素環構造は公知の置換基を有していてもよい。
上記構成単位を得るためのN−ビニル複素環化合物としては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルフェノチアジン、N−ビニルコハク酸イミド、N−ビニルフタルイミド、N−ビニルカプロラクタム、及びN−ビニルイミダゾールが挙げられ、N−ビニルピロリドンが好ましい。
付加重合型樹脂に含まれるN−ビニル複素環化合物により形成される構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
N−ビニル複素環化合物により形成される構成単位の含有量は、付加重合型樹脂の全質量に対し、5質量%〜40質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
−エチレン性不飽和基を有する構成単位−
エチレン性不飽和基を有する構成単位としては、特に制限はないが、例えば、下記式D1により表される構成単位が挙げられる。
Figure 2021053987
式D1中、LD1は単結合又は二価の連結基を表し、LD2はm+1価の連結基を表し、XD1は−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、RD1は水素原子又はメチル基を表し、Rはエチレン性不飽和基を表し、mは1以上の整数を表す。
式D1中、LD1が二価の連結基を表す場合、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらの2以上が結合した二価の基が好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基、又はフェニレン基がより好ましい。
D1としては、単結合であることが好ましい。
式D1中、LD2で表されるm+1価の連結基は、下記式D2〜下記式D6のいずれかの基を含む連結基であることが好ましく、下記式D2〜下記式D6のいずれかの基、又は、下記式D2〜下記式D6のいずれかの基と、エステル結合、アルキレン基、及びアルキレンオキシ基からなる群より選ばれる基の1つ以上と、を結合した連結基がより好ましい。
Figure 2021053987
式D2〜式D6中、LD3〜LD7は二価の連結基を表し、LD5とLD6は異なっていてもよく、XD5は−O−又は−NR−であり、Rは水素原子又はアルキル基を表し、*は式D1中のR(好ましくは、後述の式D7中のXD1)との結合部位を表し、波線部は式D1中のXD2との結合部位を表す。
式D3中、LD3は、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基、又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D4中、LD4は、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基、又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D5中、LD5は、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基、又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D5中、XD5は、−O−又は−NH−であることが好ましい。
式D5中、LD6は、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基、又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D6中、LD7は、アルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基、又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D1中、XD1が−NR−を表す場合、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
また、XD1は、−O−であることが好ましい。
式D1中、RD1はメチル基であることが好ましい。
式D1中、m個のRD2のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましい。
式D1中、mは1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
式D1中、Rで表されるエチレン性不飽和基は、(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基(即ちビニルフェニル基)、ビニルエーテル基、ビニルエステル基等が挙げられる。中でも、エチレン性不飽和基としては、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましく、より具体的には、(メタ)アクリロキシ基及び(メタ)アクリルアミド基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基が最も好ましい。
つまり、 式D1中、Rで表されるエチレン性不飽和基は、下記式D7で表される基であることが好ましい。
Figure 2021053987
式D7中、XD2は−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。
式D7中、RD2は水素原子又はメチル基を表す。
式D7中、mは、式D1におけるmと同義であり、好ましい態様も同様である。なお、m個のRD2のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましい。
式D7中のXD2は、XD1と共に−O−であることが好ましい。
エチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロキシ基)と、付加重合型樹脂の主鎖との間の原子数は、反応性の観点からは、50〜300であることが好ましく、69〜278であることが好ましく、135〜278であることがより好ましい。
エチレン性不飽和基を有する構成単位の具体例を下記に示すが、これに限定されるものではない。
Figure 2021053987
Figure 2021053987
エチレン性不飽和基を有する構成単位(好ましくは、式D1で表される構成単位)は、既述の通り、樹脂合成後に高分子反応でエチレン性不飽和基を導入する方法にて付加重合型樹脂に導入されることが好ましい。
以下、樹脂合成後に高分子反応でエチレン性不飽和基を導入する方法について、説明する。
エチレン性不飽和基を有する構成単位は、例えば、メタクリル酸等のカルボキシ基を有する構成単位を含む重合体に対し、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、グリシジルメタクリレートなど)を反応させる方法、ヒドロキシ基、アミノ基等の活性水素を有する基を有する構成単位を含む重合体に対し、イソシアネート基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど)を反応させる方法等により付加重合型樹脂に導入することができる。
なお、上記カルボキシ基を有する構成単位、又は、上記活性水素を有する基を有する構成単位に対する、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物、又は、イソシアネート基及びエチレン性不飽和基を有する化合物の反応率を調整することにより、カルボキシ基を有する構成単位、又は、活性水素を有する基を有する構成単位を付加重合型樹脂に残存させてもよい。
ここで、上記カルボキシ基を有する構成単位、及び、上記活性水素を有する基を有する構成単位は、以下、総じて「反応前の構成単位」ともいい、エチレン性不飽和基が導入された後のこれらの構成単位を「反応後の構成単位」ともいう。
上記反応前の構成単位は、後述する親水性構造を有する構成単位に該当するため、上記反応率を調整することにより、エチレン性不飽和基を有する構成単位と親水性構造(ここでは、カルボキシ基、アミノ基等)を有する構成単位とを共に有する付加重合型樹脂を得てもよい。
上記反応率は、例えば、10%以上100%以下であることが好ましく、30%以上70%以下であることがより好ましい。
反応率は、下記式Rにより定義される値である。
式R 反応率=(得られた付加重合型樹脂における反応後の構成単位のモル数/得られた付加重合型樹脂における反応前の構成単位の総モル数)×100
また、エチレン性不飽和基を有する構成単位は、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する構成単位を含む重合体に対し、カルボキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させる方法により付加重合型樹脂に導入されてもよい。
更に、エチレン性不飽和基を有する構成単位は、例えば、下記式d1又は下記式d2により表される部分構造を有する構成単位を含む重合体に対し、塩基化合物を反応させる方法により付加重合型樹脂に導入されてもよい。この方法では、下記式d1又は下記式d2により表される部分構造の脱離反応によって、エチレン性不飽和基が形成されることにより、エチレン性不飽和基を有する構成単位が付加重合型樹脂に導入される。
Figure 2021053987
式d1及び式d2中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Aはハロゲン原子を表し、Xは−O−又は−NR−を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
式d1及び式d2中、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
式d1及び式d2中、Aは塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子であることが好ましい。
式d1及び式d2中、Xは−O−であることが好ましい。Xが−NR−を表す場合、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
付加重合型樹脂に含まれるエチレン性不飽和基を有する構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
エチレン性不飽和基を有する構成単位の含有量は、付加重合型樹脂の全質量に対し、10質量%〜70質量%であることが好ましく、20質量%〜50質量%であることがより好ましい。
−親水性構造を有する構成単位−
付加重合型樹脂は、現像性及び内包型ポリマー粒子の分散性の観点から、分子内に親水性構造を有することが好ましく、親水性構造の導入量を制御しやすい観点から、親水性構造を有する構成単位を含むことが好ましい。
付加重合型樹脂が有する親水性構造としては、イオン性基又は酸基、或いは、ポリアルキレンオキシド構造又はポリエステル構造が挙げられる。
酸基として具体的には、機上現像性、機上現像カス抑制性、及び内包型ポリマー粒子の分散安定性(特に水への分散安定性)の観点から、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、又は、硫酸モノエステル基が好ましく、スルホン酸基、又は、カルボン酸基がより好ましく、カルボン酸基が特に好ましい。
イオン性基として具体的には、機上現像性、機上現像カス抑制性、及び内包型ポリマー粒子の分散安定性(特に水への分散安定性)の観点から、対イオンを解離してアニオンを生じる基(即ちアニオン性基)が好ましく、酸基の塩がより好ましく、具体的には、スルホン酸塩基、カルボン酸塩基、又は硫酸モノエステル塩基が更に好ましく、カルボン酸塩基が特に好ましい。
ここで、酸基の塩における対カチオンとしては、無機カチオンであっても、有機カチオンであってもよいが、無機カチオンであることが好ましい。また、対カチオンは、一価のカチオンだけでなく、多価カチオンであってもよいが、一価のカチオンであることが好ましい。
無機カチオンとしては、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンがより好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましく、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが特に好ましい。
有機カチオンとしては、第四級アンモニウムカチオン、芳香族含窒素ヘテロ環の窒素原子をアルキル化したカチオンなどが挙げられる。
第四級アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、ジメチルベンジルアンモニウムカチオンが挙げられ、芳香族含窒素ヘテロ環の窒素原子をアルキル化したカチオンとしては、ピリジニウムカチオンが挙げられる。
中でも、酸基の塩における対カチオンは、アルカリ金属イオン又は第四級アンモニウムカチオンが好ましく、アルカリ金属イオンが特に好ましい。
ポリアルキレンオキシド構造として具体的には、内包型ポリマー粒子の分散安定性、特に、有機溶剤への分散安定性の観点から、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造であることが好ましい。
また、機上現像性、及び、機上現像時の現像カス抑制性の観点からは、上記ポリアルキレンオキシド構造として、ポリプロピレンオキシド構造を含むことが好ましく、ポリエチレンオキシド構造とポリプロピレンオキシド構造とを含むことがより好ましい。
ポリアルキレンオキシド構造におけるアルキレンオキシド構造の数は、内包型ポリマー粒子の分散安定性、特に、有機溶剤への分散安定性の観点から、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、5〜200であることが更に好ましく、8〜150であることが特に好ましい。
ポリエステル構造として具体的には、特に制限はないが、ラクトンの開環重合鎖、及び、ヒドロキシカルボン酸の重縮合鎖が好ましく挙げられる。
ポリエステル構造におけるヒドロキシカルボン酸構造(又はラクトンの開環構造)の数は、内包型ポリマー粒子の分散安定性、特に有機溶剤への分散安定性の観点から、2以上であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることが更に好ましく、4〜10であることが特に好ましい。
付加重合型樹脂は、親水性構造であるイオン性基又は酸基を有する構成単位として、下記式A−1で表される構成単位を有することが好ましい。
Figure 2021053987
式A−1中、Xは−O−又は−NR−を表し、Lは炭素数1〜20の二価の連結基を表し、Rはイオン性基又は酸基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
式A−1中、Rで表されるイオン性基又は酸基は既述の親水性構造におけるイオン性基又は酸基と同様であり、好ましい例も同様である。
式A−1中、Xは−O−であることが好ましい。
式A−1中、Lは炭素数2〜10の二価の連結基であることが好ましく、炭素数2〜8の二価の連結基であることがより好ましく、炭素数2〜8のアルキレン基であることが更に好ましく、炭素数2〜5のアルキレン基であることが特に好ましい。
二価の連結基は、具体的には、アルキレン基、又は、アルキレン基を1つ以上とエーテル結合及びエステル結合からなる群より選ばれた少なくとも1種の構造を1つ以上とを結合した基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
式A−1中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
付加重合型樹脂は、親水性構造であるポリアルキレンオキシド構造又はポリエステル構造を有する構成単位として、下記式A−3又は式A−4で表される構成単位を有することが好ましく、下記式A−3で表される構成単位を有することがより好ましい。
Figure 2021053987
式A−3及び式A−4中、Lはエチレン基又はプロピレン基を表し、Lは炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lは炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R及びRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R及びRは各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、m1は2〜200の整数を表し、m2は2〜20の整数を表す。
式A−3中、Lは、エチレン基又は1,2−プロピレン基であることが好ましい。
式A−4中、Lは、炭素数2〜8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましく、エチレン基であることが更に好ましい。
式A−4中、Lは、炭素数2〜8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数3〜8のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4〜6のアルキレン基であることが更に好ましい。
式A−3及び式A−4中、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることが更に好ましい。
式A−3中、m1は、5〜200の整数であることが好ましく、8〜150の整数であることがより好ましい。
式A−4中、m2は、2〜10の整数であることが好ましく、4〜10の整数であることがより好ましい。
付加重合型樹脂は、親水性構造として、機上現像性、機上現像カス抑制性、及び内包型ポリマー粒子の分散安定性の観点から、下記式Zで表される基を有することが好ましい。
*−Q−W−Y 式Z
式Z中、Qは二価の連結基を表し、Wは親水性構造を有する二価の基又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは親水性構造を有する一価の基又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれかは親水性構造を有し、*は他の構造との結合部位を表す。
式Z中、Qは、炭素数1〜20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数1〜10の二価の連結基であることがより好ましい。
Qで表される二価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又はこれらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又はアミド結合であることがより好ましい。
式Z中、Wで表される親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に−CHCHNR−が結合した基であることが好ましい。なお、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
式Z中、Wで表される疎水性構造を有する二価の基は、−RWA−、−O−RWA−O−、−RN−RWA−NR−、−OC(=O)−RWA−O−、又は、−OC(=O)−RWA−O−であることが好ましい。なお、RWAは、各々独立に、炭素数6〜120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数6〜120のハロアルキレン基、炭素数6〜120のアリーレン基、又は、炭素数6〜120のアラルキレン基を表す。
式Z中、Yで表される親水性構造を有する一価の基は、−OH、−C(=O)OH、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に−CHCHN(R)−が結合した基であることが好ましい。
Yにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数6〜120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数6〜120のハロアルキル基、炭素数6〜120のアリール基、炭素数6〜120のアルキルアリール基、炭素数6〜120のアラルキル基、−ORWB、−C(=O)ORWB、又は−OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数6〜20を有するアルキル基を表す。
付加重合型樹脂に含まれる親水性構造を有する構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
親水性構造を有する構成単位の含有量は、付加重合型樹脂の全質量に対し、1質量%〜30質量%であることが好ましく、3質量%〜20質量%であることがより好ましく、5質量%〜15質量%であることが更に好ましく、5質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
−疎水性基を有する構成単位−
付加重合型樹脂は、インキ着肉性の観点から、疎水性基を含む構成単位を含有してもよい。
上記疎水性基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
疎水性基を含む構成単位としては、アルキル(メタ)アクリレート化合物、アリール(メタ)アクリレート化合物、又は、アラルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位がより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アリール(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。また、上記アリール基は公知の置換基を有していてもよい。アリール(メタ)アクリレート化合物としては、フェニル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アラルキル(メタ)アクリレート化合物としては、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
付加重合型樹脂に含まれる疎水性基を有する構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
疎水性基を有する構成単位の含有量としては、付加重合型樹脂の全質量に対して、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
−その他の構成単位−
付加重合型樹脂は、その他の構成単位を更に含有してもよい。その他の構成単位としては、上述の各構成単位以外の構成単位を特に限定なく含有することができ、例えば、アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等により形成される構成単位が挙げられる。
付加重合型樹脂に含まれるその他の構成単位は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
その他の構成単位の含有量としては、付加重合型樹脂の全質量に対して、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
(2)重付加型樹脂
内包型ポリマー粒子を構成するポリマーの1つである重付加型樹脂とは、重付加反応により得られる樹脂をいう。重付加型樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、ポリカーボネート等が挙げられる。
また、特定水難溶性化合物の染み出し易さの観点から、内包型ポリマー粒子を構成するポリマーとしての重付加型樹脂は、三次元架橋構造を有することが好ましい。
特に、特定水難溶性化合物の染み出し易さの観点から、重付加型樹脂は、ウレタン結合及びウレア結合から選ばれる少なくとも1種の結合を含み、且つ、三次元架橋構造を有する樹脂(以下、特定重付加型樹脂ともいう)であることが好ましい。
本開示において、三次元架橋構造とは、架橋によって形成された立体的な網目構造を指す。
特定重付加型樹脂における三次元架橋構造は、下記構造(1)を複数含んでいてもよく、複数の構造(1)は、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
構造(1)中、Xは、環構造を有していてもよい炭化水素基、−NH−、>N−、−C(=O)−、−O−、及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも2つを連結して形成される(p+m+n)価の有機基を表す。
Figure 2021053987
構造(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、環構造を有していてもよい炭素数5〜15の炭化水素基を表す。
構造(1)中、*は、結合位置を表し、p、m、及びnは、それぞれ0以上であり、p+m+nは3以上である。
X、R、R、及びRの分子量の合計としては、2000未満が好ましく、1500未満が好ましく、1000未満がより好ましい。X、R、R、及びRの分子量の合計が2000未満であると、コアに内包される化合物の内包率を高くすることができる。
Xで表される有機基における炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜15の炭化水素基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜10の炭化水素基がより好ましい。
Xで表される有機基における炭化水素基、並びに、R、R、及びRで表される炭化水素基が有していてもよい環構造としては、脂環構造、芳香環構造等が挙げられる。
脂環構造としては、シクロヘキサン環構造、ビシクロヘキサン環構造、ビシクロデカン環構造、イソボルネン環構造、ジシクロペンタン環構造、アダマンタン環構造、トリシクロデカン環構造等が挙げられる。
芳香環構造としては、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、ビフェニル環構造等が挙げられる。
構造(1)中、pは、0以上であり、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜3が特に好ましい。
構造(1)中、mは、0以上であり、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜3が特に好ましい。
構造(1)中、nは、0以上であり、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜3が特に好ましい。
構造(1)中、p+m+nは、3〜10の整数が好ましく、3〜8の整数がより好ましく、3〜6の整数が更に好ましい。
Xで表される(p+m+n)価の有機基は、下記(X−1)〜(X−12)のいずれか1つで表される基であることが好ましい。
Figure 2021053987
式(X−1)〜式(X−12)中、nは、1〜200の整数を示し、好ましくは1〜50の整数、より好ましくは1〜15の整数、特に好ましくは1〜8の整数を表す。式(X−11)〜式(X−12)中、*は、結合位置を表す。
式(X−1)〜式(X−10)中、Yは、下記の(Y−1)を示す。
Figure 2021053987
(Y−1)中、*は、(X−1)〜(X−10)におけるS又はOとの結合位置を表し、*は、構造(1)におけるR、R、又はRとの結合位置を表す。
構造(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、環構造を有していてもよい炭素数5〜15の炭化水素基を表す。
、R、及びRにおける炭化水素基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、後述する、シェルに含まれ得る親水性基が挙げられる。
、R、及びRは、それぞれ独立に、下記(R−1)〜(R−20)のいずれか1つで表される基であることが好ましい。
Figure 2021053987
(R−1)〜(R−20)中、*は、結合位置を示す。
特定重付加型樹脂中の構造(1)の含有率は、特定重付加型樹脂の全質量に対し、8質量%〜100質量%であることが好ましく、25質量%〜100質量%がより好ましく、50質量%〜100質量%が更に好ましい。
特定重付加型樹脂は、構造(1)として、下記構造(2)、構造(3)、及び構造(4)の少なくとも1つの構造を含むことが好ましい。
Figure 2021053987
構造(2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、環構造を有していてもよい炭素数5〜15の炭化水素基を表す。構造(2)中、*は、結合位置を表す。
構造(2)の、R、R及びRで表される炭化水素基は、それぞれ、構造(1)の、R、R、及びRで表される炭化水素基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
Figure 2021053987
構造(3)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、環構造を有していてもよい炭素数5〜15の炭化水素基を表す。構造(3)中、*は、結合位置を表す。
構造(3)の、R、R及びRで表される炭化水素基は、それぞれ、構造(1)の、R、R、及びRで表される炭化水素基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
Figure 2021053987
構造(4)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、環構造を有していてもよい炭素数5〜15の炭化水素基を表す。構造(4)中、*は、結合位置を表す。
構造(4)の、R、R及びRで表される炭化水素基は、それぞれ、構造(1)の、R、R、及びRで表される炭化水素基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
構造(1)〜構造(4)の具体例としては、下記表1に示す構造が挙げられる。
Figure 2021053987
特定重付加型樹脂における三次元架橋構造は、例えば、3官能以上のイソシアネート化合物又は2官能のイソシアネート化合物と、水又は2つ以上の活性水素基を有する化合物と、の反応により形成できる。
特に、上記反応の原料が、3つ以上の反応性基(イソシアネート基又は活性水素基)を有する化合物を少なくとも1種を含む場合には、架橋反応が三次元でより効果的に進行し、立体的な網目構造がより効果的に形成される。
特定重付加型樹脂における三次元架橋構造は、3官能以上のイソシアネート化合物と水との反応により形成された生成物であることが好ましい。
特定重付加型樹脂における三次元架橋構造を得るために用いられる、3官能以上のイソシアネート化合物について説明する。
3官能以上のイソシアネート化合物は、分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、3官能以上の芳香族イソシアネート化合物、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物としては、2官能のイソシアネート化合物(分子中に2つのイソシアネート基を有する化合物)と3官能以上のポリオール、ポリアミン、ポリチオール等の分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたイソシアネート化合物(アダクト型)、2官能のイソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)、及びベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物等の、分子内に3つ以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましい。
本開示では、3官能以上のイソシアネート化合物として、公知の化合物、及び国際公開2017/135084号の段落0090〜0118に記載の化合物のいずれも使用することができる。
公知の化合物としては、例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている化合物が挙げられる。
特定重付加型樹脂における三次元架橋構造を得るために用いられる、水又は2つ以上の活性水素基を有する化合物について説明する。
三次元架橋構造を得るために3官能以上のイソシアネート化合物と反応させる化合物としては、一般に水が使用される。3官能以上のイソシアネート化合物と水とが反応することで、ウレア結合を有する三次元架橋構造が形成される。また、3官能以上のイソシアネート化合物と反応させる化合物として、水以外にも、2つ以上の活性水素基を有する化合物も挙げられる。
活性水素基としては、ヒドロキシ基、アミノ基(1級アミノ基及び2級アミノ基)、メルカプト基(即ち、チオール基)等が挙げられる。
2つ以上の活性水素基を有する化合物としては、多官能アルコール、多官能フェノール、窒素原子上に水素原子を有する多官能アミン、多官能チオール等が挙げられる。
3官能以上のイソシアネート化合物と、多官能アルコール又は多官能フェノールと、が反応することで、ウレタン結合を有する三次元架橋構造が形成される。
3官能以上のイソシアネート化合物と、窒素原子上に水素原子を有する多官能アミンと、が反応することで、ウレア結合を有する三次元架橋構造が形成される。
多官能アルコールの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン等が挙げられる。
多官能フェノールの具体例としては、ビスフェノールA等が挙げられる。
多官能アミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
多官能チオールの具体例としては、1,3−プロパンジチオール、1,2−エタンジチオール等が挙げられる。
2つ以上の活性水素基を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特定重付加型樹脂は、更に、親水性基としてのノニオン性基を有することが好ましい。ノニオン性基としては、内包型ポリマー粒子の分散安定性をより向上させる観点から、末端が封止されたポリエーテル構造を有する1価の基が好ましく、末端が封止されたポリオキシアルキレン鎖を有する1価の基がより好ましい。末端を封止する基としては、アルキル基が挙げられる。
特定重付加型樹脂におけるノニオン性基の構造としては、国際公開2017/135084号の段落0148〜0151に記載の構造が好ましいものとして挙げられる。
特定重付加型樹脂のノニオン性基の導入は、既述の3官能以上のイソシアネート化合物と、ノニオン性基と活性水素基とを有する化合物又はノニオン性基を導入したイソシアネート化合物の少なくとも一方と、水又は2つ以上の活性水素基を有する化合物と、を反応させることによって行うことができる。
ノニオン性基と活性水素基とを有する化合物及びノニオン性基を導入したイソシアネート化合物としては、国際公開2017/135084号の段落0153〜0160に記載の化合物が用いられる。
特定重付加型樹脂は、更に、親水性基としてのアニオン性基を有することが好ましい。
アニオン性基としては、内包型ポリマー粒子の分散安定性をより向上させる観点から、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホ基、スルホ基の塩、リン酸基、リン酸基の塩、ホスホン酸基、ホスホン酸基の塩、硫酸基、及び硫酸基の塩からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。「塩」としては、アルカリ金属塩又は有機アミン塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩が特に好ましい。
これらの中でも、アニオン性基としては、内包型ポリマー粒子の分散安定性の観点から、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホ基、スルホ基の塩、リン酸基、及びリン酸基の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、カルボキシ基及びカルボキシ基の塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
特定重付加型樹脂におけるアニオン性基の構造は、国際公開2017/135084号の段落0162〜0172に記載の構造が好ましいものとして挙げられる。
特定重付加型樹脂へのアニオン性基の導入は、既述の3官能以上のイソシアネート化合物と、アニオン性基と活性水素基とを有する化合物又はアニオン性基を導入したイソシアネート化合物の少なくとも一方と、水又は2つ以上の活性水素基を有する化合物と、を反応させることによって行うことができる。
アニオン性基と活性水素基とを有する化合物又はアニオン性基を導入したイソシアネート化合物としては、国際公開2017/135084号の段落0174〜0179に記載の化合物が用いられる。
特定重付加型樹脂は、更に、光重合開始基を有することが好ましい。
光重合開始基としては、特定重付加型樹脂への光重合開始基の導入し易さの観点から、活性水素基を有する光重合開始剤における少なくとも1つの活性水素基から水素原子を少なくとも1つ除いた残基であることがより好ましい。
活性水素基を有する光重合開始剤としては、活性水素基を有するカルボニル化合物(例えば、活性水素基を有する芳香族ケトン類等)、活性水素基を有するアシルホスフィンオキシド化合物、活性水素基を有する芳香族オニウム塩化合物、活性水素基を有する有機過酸化物、活性水素基を有するチオ化合物、活性水素基を有するヘキサアリールビイミダゾール化合物、活性水素基を有するケトオキシムエステル化合物、活性水素基を有するボレート化合物、活性水素基を有するアジニウム化合物、活性水素基を有するメタロセン化合物、活性水素基を有する活性エステル化合物、活性水素基を有し且つ炭素ハロゲン結合を有する化合物、活性水素基を有するアルキルアミン化合物等が挙げられる。
中でも、活性水素基を有するカルボニル化合物、又は、活性水素基を有するアシルホスフィンオキシド化合物が好ましい。
活性水素基を有する光重合開始剤としては、国際公開2017/135084号の段落0182〜0191に記載の化合物が用いられる。
特定重付加型樹脂への光重合開始基の導入は、既述の3官能以上のイソシアネート化合物と、光重合開始基と活性水素基とを有する化合物又は光重合開始基を導入したイソシアネート化合物の少なくとも一方と、水又は2つ以上の活性水素基を有する化合物と、を反応させることによって行うことができる。
光重合開始基と活性水素基とを有する化合物又は光重合開始基を導入したイソシアネート化合物としては、国際公開2017/135084号の段落0193〜0202に記載の化合物が用いられる。
特定重付加型樹脂は、エチレン性不飽和基を有していてもよい。
エチレン性不飽和基の導入方法としては、既述の3官能以上のイソシアネート化合物と、水又は既述の2つ以上の活性水素基を有する化合物と、エチレン性不飽和基の導入用モノマーと、を反応させる方法;既述の3官能以上のイソシアネート化合物を製造する際に、まず、既述の2官能以上のイソシアネート化合物とエチレン性不飽和基の導入用モノマーとを反応させてエチレン性不飽和基を導入したイソシアネート化合物を製造し、次いで、このエチレン性不飽和基を導入したイソシアネート化合物と、水又は既述の2つ以上の活性水素基を有する化合物と、を反応させる方法;内包型ポリマー粒子を製造する際に、内包型ポリマー粒子を構成する成分と共に、エチレン性不飽和基の導入用モノマーを油相成分に溶解させ、油相成分に水相成分を添加、混合し、乳化する方法;等が挙げられる。
エチレン性不飽和基の導入用モノマーとしては、活性水素基とエチレン性不飽和基とを有する化合物が挙げられる。活性水素基とエチレン性不飽和基とを有する化合物としては、国際公開2017/135084号の段落0207〜0212に記載の化合物が用いられる。
また、エチレン性不飽和基を導入したイソシアネート化合物は、国際公開2017/135084号の段落0213〜0219に記載の化合物が用いられる。
内包型ポリマー粒子を構成するポリマーの1つである重付加型樹脂としては、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を含む、ウレア結合を含む樹脂であってもよい。
特に、上記重付加型樹脂としては、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を含み、且つ、ポリオキシアルキレン構造として、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有する樹脂であることが特に好ましい。
また、上記ウレア結合を含む樹脂を含む粒子は、ミクロゲル(即ち架橋ポリマー粒子)であることが好ましい。
Figure 2021053987
式(Iso)中、nは0〜10の整数を表す。
上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水との反応の一例としては、下記に示す反応が挙げられる。なお、下記の例は、n=0、4,4−異性体を使用した例である。
下記に示すように、上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを反応させると、水によりイソシアネート基の一部が加水分解し、アミノ基が生じ、生じたアミノ基とイソシアネート基とが反応し、ウレア結合が生成し、二量体が形成される。また、下記反応が繰り返され、ウレア結合を有する樹脂が形成される。
Figure 2021053987
また、上記ウレア結合を含む樹脂は、エチレン性不飽和基を有していてもよい。上記ウレア結合を含む樹脂は、エチレン性不飽和基として、下記式(PETA)で表される基を有することがより好ましい。
Figure 2021053987
式(PETA)中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
また、上記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水との反応において、アルコール化合物、アミン化合物等のイソシアネート基と反応性を有する化合物(例えば、活性水素を有する化合物)を添加することにより、アルコール化合物、アミン化合物等の構造を、上記ウレア結合を含む樹脂に導入することもできる。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
(3)熱可塑性樹脂
本開示における内包型ポリマー粒子を構成するポリマーは、熱可塑性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂を用いることで、既述のように、内包型ポリマー粒子が、熱融着が可能なポリマー粒子となる。内包型ポリマー粒子として、熱可塑性樹脂を用いた粒子を用いることで、耐刷性を高めることができる。
熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、それらの共重合体等が挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂としては、インキ着肉性及び耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位と、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位と、を有する樹脂であることが好ましい。
ここで、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位と、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位と、を有する樹脂は、既述の付加重合型樹脂で記載した、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位と、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位と、を有する樹脂と同様のものであればよく、好ましい例も同様である。
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐刷性及びインキ着肉性の観点から、60℃〜150℃であることが好ましく、80℃〜140℃であることがより好ましく、90℃〜130℃であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合には、後述するFOX式により求められた値を、熱可塑性樹脂のガラス転移温度という。
本開示において、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行なう。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想される樹脂のTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
熱可塑性樹脂が2種以上の混合物である場合、熱可塑性樹脂のTgは下記のように求められる。
1つ目の熱可塑性樹脂のTgをTg1(K)、全熱可塑性樹脂の合計質量に対する1つ目の熱可塑性樹脂の質量分率をW1とし、2つ目の熱可塑性樹脂のTgをTg2(K)とし、全熱可塑性樹脂の合計質量に対する2つ目の熱可塑性樹脂の質量分率をW2としたときに、熱可塑性樹脂のTg0(K)は、以下のFOX式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
また、熱可塑性樹脂が3種の樹脂の混合物である場合、熱可塑性樹脂のTgは、n個目の樹脂のTgをTgn(K)、全熱可塑性樹脂の合計質量に対するn個目の熱可塑性樹脂の質量分率をWnとしたときに、上記と同様、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+(W3/Tg3)・・・+(Wn/Tgn)
本明細書において、Tgは、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)により測定される値である。示差走査熱量計(DSC)としては、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社のEXSTAR6220を用いることができる。
(ポリマー粒子の合成)
ポリマー粒子の合成法としては、特に制限はなく、既述した各種の樹脂にてポリマー粒子を合成しうる方法であればよい。内包型ポリマー粒子の合成法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、マイクロエマルション重合法等の、公知のポリマー粒子の合成法が挙げられる。
その他、ポリマー粒子の合成には、公知のマイクロカプセルの合成法、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)の合成法等を用いてもよい。
(特定水難溶性化合物の導入)
重合性化合物の導入方法としては、作製されたポリマー粒子に、特定水難溶性化合物を含浸させてもよいし、ポリマー粒子を合成する際に特定水難溶性化合物を用い、特定水難溶性化合物を内包したポリマー粒子を合成してもよい。
(内包型ポリマー粒子の粒径)
本開示における内包型ポリマー粒子の体積平均粒径は、現像カスの堆積を抑制する観点から、50nm〜500nmであることが好ましく、100nm〜300nmであることがより好ましい。
内包型ポリマー粒子の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)により測定する。
(内包型ポリマー粒子の含有量)
本開示における平版印刷版原版は、内包型ポリマー粒子を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
内包型ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全質量に対し、20質量%〜80質量%であることが好ましく、30質量%〜60質量%であることがより好ましい。
[重合性化合物]
本開示における画像記録層は、重合性化合物を含む。
重合性化合物としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
画像記録層に用いられるラジカル重合性化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(即ち、エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物がより好ましい。ラジカル重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体、若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態を持つことができる。
(オリゴマー)
重合性化合物としては、耐刷性を高める観点から、重量平均分子量が1,000〜15,000のオリゴマーを含むことが好ましい。
中でも、現像性の観点からは、オリゴマーの重量平均分子量は、10,000以下であることが好ましく、5,000以下であることがより好ましい。
即ち、重合性化合物としてのオリゴマーは、重量平均分子量が1,000〜5,000であることが特に好ましい。
また、耐薬品性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおけるエチレン性不飽和基の数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
また、オリゴマーにおけるエチレン性不飽和基の数の上限値は、特に制限はないが、20以下であることが好ましい。
耐薬品性及び機上現像カスの抑制性により優れる観点から、オリゴマーとしては、エチレン性不飽和基の数が7以上であり、且つ、分子量が1,000〜10,000以下であることが好ましく、エチレン性不飽和基の数が7〜20であり、且つ、分子量が1,000〜5,000であることがより好ましい。
重量平均分子量1,000〜15,000のオリゴマーは、耐刷性及び現像性を高める観点から、イソシアヌル環又はトリメチロールプロパン骨格を有するオリゴマーであることが好ましく、中でも、イソシアヌル環を有するオリゴマーであることがより好ましい。
オリゴマー中のイソシアヌル環又はメチロールプロパン骨格は、以下の構造(ISO)又は(TMP)を有する。
Figure 2021053987
上記構造(ISO)又は(TMP)中、3つ「*」にて、それぞれ、エチレン性不飽和基を有する部分構造が結合することが好ましい。
エチレン性不飽和基を有する部分構造としては、構造内に更にウレタン結合を含むことが好ましい。
イソシアヌル環を有するオリゴマーとしては、例えば、下記式(Ac−1)で表される基を有する化合物であることが好ましい。
Figure 2021053987
式(Ac−1)中、L〜Lは、それぞれ独立に、炭素数2〜20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
式(Ac−1)中、L〜Lとしては、それぞれ独立に、炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4〜8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐又は環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
式(Ac−1)における波線部は、それぞれ独立に、下記式(Ae−1)又は式(Ae−2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
Figure 2021053987
式(Ae−1)及び式(Ae−2)中、Rは、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac−1)における波線部との結合位置を表す。
(モノマー)
重合性化合物としては、現像性(特に機上現像性)を高める観点から、分子量1,000未満のモノマーを含むことが好ましい。
モノマーとしては、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が50以上600以下であることが好ましく、耐薬品性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600以下であることが好ましく、300以上600以下であることがより好ましく、400以上600以下であることが更に好ましい。
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)及び、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類、又は、アミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報等に記載されている。
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
式(M) CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH
式(M)中、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
本開示における画像記録層は、既述のように、現像性(特に機上現像性)と耐刷性とを高める観点から、重合性化合物としてオリゴマー(具体的には、重量平均分子量1,000〜15,000のオリゴマー)とモノマー(分子量1,000未満のモノマー)とを併用することが好ましい。現像性(特に機上現像性)と耐刷性とを共に高める観点から、オリゴマーとモノマーとの比(オリゴマー/モノマー)は、質量基準で、10/1〜1/10であることが好ましく、3/1〜1/3であることがより好ましく、2/1〜1/2であることが更に好ましい。
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、好ましくは5質量%〜75質量%、より好ましくは10質量%〜70質量%、特に好ましくは15質量%〜60質量%である。
[赤外線吸収剤]
本開示における画像記録層は、赤外線吸収剤を含む。
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本開示において使用される赤外線吸収剤は、波長700nm〜1,400nmに吸収極大を有する染料又は顔料が好ましく、染料がより好ましい。
染料としては、特開2014−104631号公報の段落0082〜0088に記載のものを使用できる。
顔料の平均粒径は、0.01μm〜1μmが好ましく、0.01μm〜0.5μmがより好ましい。顔料を分散するには、インク製造、トナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)などに記載されている。
更に、赤外線吸収剤として、酸により分解して発色する赤外線吸収剤も好ましく用いられる。
有機ホウ素化合物又は有機ホウ素構造からは、ルイス酸として働く化合物も発生するため、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層が、酸により分解して発色する赤外線吸収剤を含むことにより、画像記録層の発色性に優れた平版印刷版が得られやすい。
以下に、赤外線吸収剤の具体例として、母核構造A−1〜A−54、対アニオンB−1〜B−10及び対カチオンC−1〜C−3を挙げるが、本開示ではこれに限定されるものではない。なお、式1で表される化合物の具体例は、母核構造A−1〜A−9、A−11〜A−20及びA−22〜A−54と、対アニオンB−1〜B−10とをそれぞれ1つずつ組み合わせた化合物、並びに、母核構造A−10及びA−21と対カチオンC−1〜C−3とをそれぞれ1つずつ組み合わせた化合物である。
Figure 2021053987
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式1で表される化合物の作製方法は、特に制限はなく、公知のシアニン色素の作製方法を参照し、作製することができる。また、国際公開第2016/027886号に記載の方法も好適に用いることができる。
また、酸により分解して発色する赤外線吸収剤として、国際公開第2016/027886号に記載の式1で表される化合物も好ましく用いられる。
赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.05質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.2質量%〜10質量%が特に好ましい。
[重合開始剤]
本開示において用いられる画像記録層は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
画像記録層に用いられるラジカル重合開始剤は、光、熱或いはその両方のエネルギーによりラジカル種を発生する化合物であり、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などから適宜選択して用いることができる。
ラジカル重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム化合物が挙げられる。
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0022〜0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等が挙げられ。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物が挙げられる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(h)有機ホウ酸化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61−166544号、特開2002−328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008−195018号公報の段落0028〜0030に記載の化合物が好ましい。
ラジカル重合開始剤の中でも、硬化性の観点から、より好ましいものとして、オキシムエステル及びオニウムが挙げられ、ヨードニウム、スルホニウム及びアジニウム等のオニウムが更に好ましく、ヨードニウム、及び、スルホニウムの少なくとも一方を含むことが特に好ましい。平版印刷版原版に用いる場合は、ヨードニウム、スルホニウムが特に好ましい。ヨードニウム及びスルホニウムの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
ヨードニウムの例としては、ジフェニルヨードニウムが好ましく、特に、電子供与性基を置換基として有する、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウムが好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウムが好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−メトキシフェニル−4−(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−(2−メチルプロピル)フェニル−p−トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4−ヘキシルオキシフェニル−2,4−ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=1−ペルフルオロブタンスルホナート、4−オクチルオキシフェニル−2,4,6−トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
スルホニウムの例としては、トリアリールスルホニウムが好ましく、特に電子求引性基を置換基として有する、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウムが好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウムが更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4−クロロフェニル)−4−メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=3,5−ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4−クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4−ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に好ましくは0.8質量%〜20質量%である。
[発色剤]
本開示における画像記録層は、発色剤を含有することが好ましく、発色剤としては酸発色剤がより好ましい。
本開示で用いられる「発色剤」とは、光、酸等の刺激により発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味し、また、「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば、酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色又は消色し画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。
酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
このような酸発色剤の例としては、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトンともいう)、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3,3−ビス〔1−(4−ピロリジノフェニル)−1−(4−メトキシフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔1,1−ジ(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)エチレン−2−イル〕−3−(4−N−エチル−N−フェニルアミノフェニル)フタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド、3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−フタリド等のフタリド類、
4,4−ビス−ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニル−ロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン−(4−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(4−クロロアニリノ)ラクタム、3,7−ビス(ジエチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
3,6−ジメトキシフルオラン、3−ジメチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ジメチルフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ジ−n−ヘキシルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2’,3’−ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3’−トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、
3−N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ−7−(2’−クロロフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−エトキシ−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−モルホリノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−Nn−プロピル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−プロピル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソブチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−イソペンチル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−n−ヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−プロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−ヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−シクロヘキシル−N−n−オクチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、
3−N−(2’−メトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−メトキシエチル)−N−イソブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−エトキシエチル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−メトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(3’−エトキシプロピル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(2’−テトラヒドロフルフリル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−(4’−メチルフェニル)−N−エチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−エチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3’−メチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジ−n−ブチルアミノ−7−(2’,6’−ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2−ビス〔4’−(3−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ−6−メチルフルオラン)−7−イルアミノフェニル〕プロパン、3−〔4’−(4−フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−〔4’−(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ−5,7−ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−n−プロポキシカルボニルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチルアミノ−4−ジ−n−プロピルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−メチル−4−ジn−ヘキシルアミノフェニル)−3−(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,7−ジアザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(1−n−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド、3−(2−ブトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)−4又は7−アザフタリド3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−フェニル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジル−スピロ−ジナフトピラン、3−メチル−ナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピル−スピロ−ジベンゾピラン−3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
その他、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−イソペンチル)アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン−3−オン、2’−アニリノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノ−3’−メチルスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、3’−N,N−ジベンジルアミノ−6’−N,N−ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オン、2’−(N−メチル−N−フェニル)アミノ−6’−(N−エチル−N−(4−メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−(9H)キサンテン]−3−オンなどが挙げられる。
上記の中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
また、上記酸発色剤は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、ロイコ色素であることが好ましい。
上記ロイコ色素としては、ロイコ構造を有する色素であれば、特に制限はないが、スピロ構造を有することが好ましく、スピロラクトン環構造を有することがより好ましい。
また、上記ロイコ色素としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素であることが好ましい。
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、下記式(Le−1)〜式(Le−3)のいずれかで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le−2)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 2021053987
式(Le−1)〜式(Le−3)中、ERGは、それぞれ独立に、電子供与性基を表し、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、X〜X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の有機基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
式(Le−1)〜式(Le−3)のERGにおける電子供与性基としては、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又はアルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基であることがより好ましく、アリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、又はジアリールアミノ基であることが更に好ましく、アリールアミノ基、又はモノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
式(Le−1)〜式(Le−3)におけるX〜Xは、それぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、又は、塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(Le−2)又は式(Le−3)におけるX〜X10は、それぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、又はシアノ基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
式(Le−1)〜式(Le−3)におけるY及びYは、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、少なくとも1方がCであることが好ましく、Y及びYの両方がCであることがより好ましい。
式(Le−1)〜式(Le−3)におけるRaは、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le−1)〜式(Le−3)におけるRb〜Rbは、それぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
また、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、下記式(Le−4)〜式(Le−6)のいずれかで表される化合物であることがより好ましく、下記式(Le−5)で表される化合物であることが更に好ましい。
Figure 2021053987
式(Le−4)〜式(Le−6)中、ERGは、それぞれ独立に、電子供与性基を表し、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
式(Le−4)〜式(Le−6)におけるERG、X〜X、Y、Y、Ra、及び、Rb〜Rbはそれぞれ、式(Le−1)〜式(Le−3)におけるERG、X〜X、Y、Y、Ra、及び、Rb〜Rbと同義であり、好ましい態様も同様である。
更に、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、下記式(Le−7)〜式(Le−9)のいずれかで表される化合物であることが更に好ましく、下記式(Le−8)で表される化合物であることが特に好ましい。
Figure 2021053987
式(Le−7)〜式(Le−9)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rc及びRcは、それぞれ独立に、アリール基を表す。
式(Le−7)〜式(Le−9)におけるX〜X、Y及びYは、式(Le−1)〜式(Le−3)におけるX〜X、Y及びYと同義であり、好ましい態様も同様である。
式(Le−7)〜式(Le−9)におけるRa〜Raは、それぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、アルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
式(Le−7)〜式(Le−9)におけるRb〜Rbは、それぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式(Le−7)〜式(Le−9)におけるRc及びRcは、それぞれ独立に、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、フェニル基、又は、アルキルフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
また、式(Le−8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、X〜Xが水素原子であり、Y及びYがCであることが好ましい。
更に、式(Le−8)において、発色性、及び、露光部の視認性の観点から、Rb及びRbが、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基アルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
式(Le−1)〜式(Le−9)におけるアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、式(Le−1)〜式(Le−9)におけるアルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
式(Le−1)〜式(Le−9)におけるアリール基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜10であることがより好ましく、6〜8であることが特に好ましい。
また、式(Le−1)〜式(Le−9)における一価の有機基、アルキル基、アリール基、ジアルキルアニリノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基等の各基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基等が挙げられる。また、これら置換基は、更にこれら置換基により置換されていてもよい。
好適に用いられる上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素の具体例としては、以下の化合物(S−1〜S−15)が挙げられる。
Figure 2021053987
Figure 2021053987
Figure 2021053987
Figure 2021053987
Figure 2021053987
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H−3035、BLUE203、ATP、H−1046、H−2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE−DCF、Vermilion−DCF、PINK−DCF、RED−DCF、BLMB、CVL、GREEN−DCF、TH−107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB−2、ODB−4、ODB−250、ODB−BlackXV、Blue−63、Blue−502、GN−169、GN−2、Green−118、Red−40、Red−8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S−205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H−7001、GREEN300、NIRBLACK78、H−3035、ATP、H−1046、H−2114、GREEN−DCF、Blue−63、GN−169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
酸発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、好ましくは0.1質量%〜30質量%、より好ましくは1質量%〜20質量%、特に好ましくは1質量%〜10質量%である。
[他のポリマー粒子]
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層は、上述した内包型ポリマー粒子以外の他のポリマー粒子を含有してもよい。他のポリマー粒子は、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できるポリマー粒子であることが好ましい。他のポリマー粒子は、疎水性熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子及びミクロゲルが好ましい。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の疎水性熱可塑性ポリマー粒子が好適に挙げられる。
疎水性熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。疎水性熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01μm〜2.0μmが好ましい。
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性基を有するポリマー粒子は、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよく、重合性基が好ましい。その例としては、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好適に挙げられる。
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報及び特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものが挙げられる。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層としては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その内部及び表面の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が画像形成感度、耐刷性の観点から好ましい。
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するためには、公知の方法を用いることができる。
マイクロカプセル及びミクロゲルの平均粒径は、0.01μm〜3.0μmが好ましく、0.05μm〜2.0μmがより好ましく、0.10μm〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
他のポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全質量に対して、5質量%〜90質量%が好ましい。
[バインダーポリマー]
本開示において用いられる画像記録層は、バインダーポリマーを含有してもよい。
バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
中でも、バインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキサイド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキサイド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキサイド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキサイド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
アルキレンオキサイドとしては炭素数が2〜6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが特に好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2〜120が好ましく、2〜70がより好ましく、2〜50が更に好ましい。
アルキレンオキサイドの繰返し数が120以下であれば、摩耗による耐刷性、インキ受容性による耐刷性の両方の低下が抑制されるため好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位は、バインダーポリマーの側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂の側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることがより好ましい。
Figure 2021053987
式(AO)中、yは2〜120を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
式(AO)において、yは2〜70が好ましく、2〜50がより好ましい。Rは水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。Rは水素原子又はメチル基が特に好ましい。
本開示において用いられる画像記録層においては、バインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーは、画像記録層中に任意の量で含有させることができる。バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の用途などにより適宜選択できるが、画像記録層の全質量に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、5質量%〜80質量%がより好ましい。
〔ラジカル生成助剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、ラジカル生成助剤を含有してもよい。
ラジカル生成助剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。ラジカル生成助剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N−フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N−フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等が挙げられる。
これらラジカル生成助剤の中でも、画像記録層は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、電子求引性基を有するアリール基を1つ以上有するテトラアリールボレート化合物が特に好ましい。
電子求引性基としては、ハメット則のσ値が正である基が好ましく、ハメット則のσ値が0〜1.2である基がより好ましい。ハメットのσ値(σp値及びσm値)については、Hansch,C.;Leo,A.;Taft,R.W.,Chem.Rev.,1991,91,165−195に詳しく記載されている。
電子求引性基としては、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基が好ましく、フッ素原子、原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基がより好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。
ボレート化合物として具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。ここで、X は一価のカチオンを表し、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。また、Buはn−ブチル基を表す。
Figure 2021053987
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ラジカル生成助剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
ラジカル生成助剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.05質量%〜25質量%がより好ましく、0.1質量%〜20質量%が更に好ましい。
[連鎖移動剤]
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
Figure 2021053987
Figure 2021053987
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連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜40質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
[低分子親水性化合物]
画像記録層は、耐刷性の低下を抑制させつつ機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその、ベタイン類等が挙げられる。
低分子親水性化合物としては、ポリオール類、有機硫酸、有機スルホン酸及びベタイン類からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有させることが好ましい。
有機スルホン酸の具体例としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸、特開2007−276454号公報の段落0026〜0031及び特開2009−154525号公報の段落0020〜0047に記載の化合物等が挙げられる。は、カリウム、リチウムでもよい。
有機硫酸としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1〜4が好ましく、はナトリウム、カリウム又はリチウムが好ましい。具体例としては、特開2007−276454号公報の段落0034〜0038に記載の化合物が挙げられる。
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナート等が挙げられる。
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性及び皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性、耐刷性等を良好に維持することができる。
低分子親水性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.5質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましく、2質量%〜10質量%が更に好ましい。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
低分子親水性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
〔感脂化剤〕
画像記録層は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、保護層に無機層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウムと、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
ホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報及び特開2007−50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4−ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7−ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9−ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン−2,7−ジスルホナート等が挙げられる。
含窒素低分子化合物としては、アミン、第四級アンモニウムが挙げられる。また、イミダゾリニウム、ベンゾイミダゾリニウム、ピリジニウム、キノリニウムも挙げられる。中でも、第四級アンモニウム及びピリジニウムが好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p−トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008−284858号公報の段落0021〜0037、特開2009−90645号公報の段落0030〜0057に記載の化合物等が挙げられる。
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5モル%〜80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009−208458号公報の段落0089〜0105に記載のポリマーが挙げられる。
アンモニウム含有ポリマーは、特開2009−208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5〜120の範囲のものが好ましく、10〜110の範囲のものがより好ましく、15〜100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000〜150,0000が好ましく、17,000〜140,000がより好ましく、20,000〜130,000が特に好ましい。
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2−(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p−トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2−(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13−エチル−5,8,11−トリオキサ−1−ヘプタデカンスルホナート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2−(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6−ジオキサヘプチルメタクリレート/2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.01質量%〜30.0質量%が好ましく、0.1質量%〜15.0質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008−284817号公報の段落0114〜0159の記載を参照することができる。
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008−195018号公報の段落0142〜0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般に0.3g/m〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
本開示において、固形分とは、組成物における溶剤等の揮発性成分を除いた成分の総量である。
〔下塗り層〕
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO−、−COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその、カルボキシ基のが好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物とので導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005−238816号、特開2005−125749号、特開2006−239867号、特開2006−215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005−125749号及び特開2006−188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol〜10.0mmol、より好ましくは0.2mmol〜5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
−親水性化合物−
下塗り層は、現像性の観点から、上記ポリマーとは別に、親水性化合物を含むことが好ましい。
親水性化合物としては、特に制限はなく、下塗り層に用いられる公知の親水性化合物を用いることができる。
親水性化合物としては、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。
また、親水性化合物としては、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6−テトラヒドロキシ−p−キノン、クロラニル、スルホフタル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸又はその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はその塩など)が好ましく挙げられる。
親水性化合物としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を用いることが好ましい。
また、親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)は、傷汚れ抑制性の観点から、下塗り層に限らず、アルミニウム支持体上の層に含まれることが好ましい。また、アルミニウム支持体上の層は、画像記録層が形成されている側の層であることが好ましく、また、上記アルミニウム支持体と接する層であることが好ましい。
アルミニウム支持体上の層としては、アルミニウム支持体と接する層として、下塗り層又は画像記録層が好ましく挙げられる。また、アルミニウム支持体と接する層以外の層、例えば、保護層又は画像記録層に、親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)が含まれていてもよい。本開示に係る平版印刷版原版において、画像記録層が、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む態様も好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版において、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面が、少なくともヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む組成物(例えば、水溶液等)により表面処理される態様も好ましく挙げられる。こお態様である場合、処理されたヒドロキシカルボン酸又はその塩は、アルミニウム支持体と接する画像記録層側の層(例えば、画像記録層又は下塗り層)に含まれた状態で、少なくとも一部を検出することができる。
下塗り層等のアルミニウム支持体と接する層に、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことにより、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面を親水化することができ、また、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面における空中水滴法による水との接触角を110°以下へと容易にすることができ、結果として、傷汚れ抑制性に優れる平版印刷版原版が得られる。
ここで、ヒドロキシカルボン酸とは、1分子中に1個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基とを有する有機化合物の総称のことであり、ヒドロキシ酸、オキシ酸、オキシカルボン酸、アルコール酸とも呼ばれる(岩波理化学辞典第5版、(株)岩波書店発行(1998)参照)。
上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、下記式(HC)で表されるものが好ましい。
HC(OH)mhc(COOMHCnhc 式(HC)
式(HC)中、RHCはmhc+nhc価の有機基を表し、MHCは、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はオニウムを表し、mhc及びnhcは、それぞれ独立に、1以上の整数を表し、nが2以上の場合、Mは同じでも異なってもよい。
式(HC)において、Rで表されるmhc+nhc価の有機基としては、mhc+nhc価の炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基は置換基及び/又は連結基を有してもよい。
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基、アルケニレン基、アルケントリイル基、アルケンテトライル基、アルケンペンタイル基、アルキニレン基、アルキントリイル基、アルキンテトライル基、アルキンペンタイル基等の、芳香族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基、例えば、アリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基、アレーンペンタイル基等が挙げられる。
炭化水素基に導入しうる置換基としては、ヒドロキシル基及びカルボキシル基以外の置換基であって、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基等が挙げられる。
また、上記連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子により構成されるもので、その原子数は好ましくは1〜50である。具体的には、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基などが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びエステル結合のいずれかで複数連結された構造を有していてもよい。
HCで表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。
HCで表されるオニウムとしてはアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等が挙げられ、アンモニウムが特に好ましい。
また、MHCは、傷汚れ抑制性の観点から、アルカリ金属又はオニウムであることが好ましく、アルカリ金属であることがより好ましい。
mhcとnhcとの総数は、3以上が好ましく、3〜8がより好ましく、4〜6が更に好ましい。
上記ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、分子量が600以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。また、上記分子量は、76以上であることが好ましい。
上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸は、具体的には、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸(2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸等)、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、モノヒドロキシ安息香酸誘導体(サリチル酸、クレオソート酸(ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、バニリン酸、シリング酸等)、ジヒドロキシ安息香酸誘導体(ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸等)、トリヒドロキシ安息香酸誘導体(没食子酸等)、フェニル酢酸誘導体(マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸等)、ヒドロケイヒ酸誘導体(メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸、セレブロン酸、カルミン酸等)等が挙げられる。
これらの中でも、上記ヒドロキシカルボン酸、又は、上記ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸としては、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシ基を2個以上有している化合物が好ましく、ヒドロキシ基を3個以上有している化合物がより好ましく、ヒドロキシ基を5個以上有している化合物が更に好ましく、ヒドロキシ基を5個〜8個有している化合物が特に好ましい。
また、カルボキシ基を1個、ヒドロキシ基を2個以上有しているものとしては、グルコン酸、又は、シキミ酸が好ましい。
カルボキシ基を2個以上、ヒドロキシ基を1個有しているものとしては、クエン酸、又は、リンゴ酸が好ましい。
カルボキシ基及びヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有しているものとしては、酒石酸が好ましい。
中でも、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸が特に好ましい。
親水性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
下塗り層に親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)を含む場合、親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸及びその塩)の含有量は、下塗り層の全質量に対し、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜40質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜30質量%であることが特に好ましい。
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤等を含有してもよい。
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m〜100mg/mが好ましく、1mg/m〜30mg/mがより好ましい。
〔保護層〕
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005−250216号公報及び特開2006−259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2−510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、膨潤性合成雲母は、10Å〜15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性、活性光線の透過性等を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm〜20μm、より好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは1μm〜5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm〜50nm程度、面サイズ(長径)が1μm〜20μm程度である。
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、0質量%〜60質量%が好ましく、3質量%〜50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤を保護層に含有させてもよい。
保護層は公知の方法で塗布される。保護層の塗布量(固形分)は、0.01g/m〜10g/mが好ましく、0.02g/m〜3g/mがより好ましく、0.02g/m〜1g/mが特に好ましい。
〔アルミニウム支持体〕
本開示に係る平版印刷版原版のアルミニウム支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。アルミニウム支持体としては、親水性表面を有する支持体が好ましい。また、支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は更に必要に応じて、特開2001−253181号公報及び特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理及び封孔処理、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートによる表面親水化処理、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行ってもよい。
アルミニウム支持体は、中心線平均粗さが0.10μm〜1.2μmであることが好ましい。
アルミニウム支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6−35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
<平版印刷版の作製方法及び平版印刷方法>
本開示に係る平版印刷版の製版方法は、本開示に係る平版印刷版原版を用いて平版印刷版を製版する方法であれば、特に制限はない。
例えば、本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程(以下、「画像露光工程」ともいう)と、露光後の平版印刷版原版に、印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像処理工程」ともいう)と、を含むことが好ましい。上記製版方法を、以下「機上現像方式」ともいう。
本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る平版印刷版原版を用いて平版印刷版を製版し、印刷する方法であり、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程(以下、「画像露光工程」ともいう)と、露光後の平版印刷版原版に、印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像処理工程」ともいう)と、得られた平版印刷版にて印刷を行う工程(「印刷工程」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
なお、本開示に係る平版印刷版原版のうち、捨て版原版は、画像露光工程を経ずに現像処理工程が行われる。
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
〔画像露光工程〕
平版印刷版原版を画像様に露光する工程は、通常の平版印刷版原版の画像露光操作に準じて行うことができる。
画像様の露光は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で行われる。光源の波長は700nm〜1,400nmが好ましく用いられる。700nm〜1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20μ秒以内であるのが好ましく、照射エネルギー量は10mJ/cm〜300mJ/cmであることが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。画像様の露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。
〔機上現像処理工程〕
露光後の平版印刷版原版に対する現像処理は、通常の方法により行うことができる。
機上現像の場合、露光後の平版印刷版原版に、印刷機上で、印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方を供給すると、画像記録層の露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部(即ち画像部)を形成する。一方、未露光部においては、供給された印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。その結果、湿し水は露出した親水性の表面に付着し、印刷インキは露光領域の画像記録層に着肉して印刷が開始される。
ここで、最初に平版印刷版原版の表面に供給されるのは、湿し水でもよく印刷インキでもよいが、湿し水を浸透させ機上現像性を促進するために、最初に湿し水を供給することが好ましい。
<印刷工程>
得られた平版印刷版による印刷は、通常の方法により行うことができる。
平版印刷版に所望の印刷インキ、及び、必要に応じて、湿し水を供給し、印刷を行うことができる。
印刷インキ及び湿し水の供給量は、特に制限はなく、所望の印刷に応じ、適宜設定すればよい。
印刷インキ及び湿し水の平版印刷版への供給方法は、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。
印刷対象の記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
〔現像液現像処理工程〕
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、現像液により非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(「現像液現像工程」ともいう。)と、を含む方法であってもよい。
また、本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、現像液により非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む方法であってもよい。
現像液としては、公知の現像液を用いることができる。
現像液のpHは、特に制限はなく、強アルカリ現像液であってもよいが、pH2〜11の現像液が好ましく挙げられる。pH2〜11の現像液としては、例えば、界面活性剤及び水溶性高分子化合物のうち少なくとも1種を含有する現像液が好ましく挙げられる。
強アルカリ現像液を用いた現像処理においては、前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを水洗除去し、ガム液処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が挙げられる。
また、界面活性剤又は水溶性高分子化合物を含有する上記現像液を用いる場合は、現像−ガム液処理を同時に行うことができる。よって、後水洗工程は特に必要とせず、1液で現像とガム液処理を行った後、乾燥工程を行うことができる。更に、保護層の除去も現像、ガム液処理と同時に行うことができるので、前水洗工程も特に必要としない。現像処理後、スクイズローラー等を用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
〔他の工程〕
本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、上記工程以外に、公知の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、露光前、露光中、露光から現像までの間の少なくともいずれかに平版印刷版原版の全面を加熱する工程、各工程の前に平版印刷版原版の位置、向き等を確認する検版工程、現像処理工程の後に、印刷画像を確認する確認工程等が挙げられる。
平版印刷版原版の全面を加熱する工程を行うことで、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度及び耐刷性の向上、感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱であれば、非画像部の効果を抑制する観点から、150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。現像後の加熱であれば、非常に強い条件を利用することが好ましく、十分な画像強化作用が得られ、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制する観点から、例えば、100℃〜500℃の加熱範囲であることが好ましい。
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
<ポリマー粒子の合成>
(ポリマー粒子CP−1の合成)
下記構造の多官能イソシアネート化合物(A)の50質量%酢酸エチル溶液:15.00gと、三井化学(株)製の「タケネート(登録商標)D−116N(トリメチロールプロパン(TMP)とm−キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO90)との付加物の混合物(下記構造)」の50質量%酢酸エチル溶液:3.78gと、下記構造の重合性化合物M−2の65質量%酢酸エチル溶液:11.53gと、酢酸エチル:12.00gと、竹本油脂製のパイオニン(登録商標)A−41−C:0.45gを混合し、室温(25℃)で15分攪拌して油相成分を得た。
Figure 2021053987
得られた油相成分に、水相成分として純水46.89gを添加して混合し、得られた混合物を、ホモジナイザーを用いて12000rpm(revolutions per minute)で12分間乳化させて乳化物を得た。
得られた乳化物を蒸留水16.66gに添加し、次いで、撹拌後の液体を45℃に加熱し、液温を45℃に保持した状態で4時間攪拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。次いで、酢酸エチルを留去した液体を45℃に加熱し、液温を45℃に保持した状態で48時間撹拌することにより、液体中に、特定重付加型樹脂によるマイクロカプセル型のポリマー粒子CP−1を得た。次いで、ポリマー粒子CP−1を含む液体を、固形分濃度が20質量%となるように蒸留水で希釈することにより、ポリマー粒子CP−1の水分散物を得た。
以上の方法で、ポリマー粒子CP−1を得た。
ポリマー粒子CP−1は、特定水難溶性化合物を含まない。
ポリマー粒子CP−1の体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
(ポリマー粒子CP−2の合成)
多官能イソシアネート化合物(A)と、「タケネート(登録商標)D−116N」と、重合性化合物M−2と、の総量に対して、2質量%のポリエチレングリコールジメチルエーテル2000(アルドリッチ社製、水への溶解度:>5質量%)を添加して得られた油相成分を用いた以外は、ポリマー粒子CP−1の合成と同様にして、ポリマー粒子CP−2を得た。
ここで、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000は、特定水難溶性化合物には該当しない。
得られたポリマー粒子CP−2は、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000を内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、ポリマー粒子CP−2の全質量に占めるポリエチレングリコールジメチルエーテル2000の含有量は、0.1質量%未満であり検出できなかった。
(内包型ポリマー粒子P−1の合成)
多官能イソシアネート化合物(A)と、「タケネート(登録商標)D−116N」と、重合性化合物M−2と、の総量に対して、2質量%のN,N−ジメチル−N−ドデシルアミン(ファーミンDM2098、花王(株)製、水への溶解度:<1質量%)を添加して得られた油相成分を用いた以外は、ポリマー粒子CP−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−1を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−1は、N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−1の全質量に占めるN,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの含有量は、2質量%であった。
(内包型ポリマー粒子P−2の合成)
N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの代わりに、トリベンジルアミン(東京化成工業(株)製、水への溶解度:<1質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−2を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−2は、トリベンジルアミンを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−2の全質量に占めるトリベンジルアミンの含有量は、2質量%であった。
(内包型ポリマー粒子P−3の合成)
N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの代わりに、1−ドコサノール(カルコール220−80、花王(株)製、水への溶解度:<1質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−3を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−3は、1−ドコサノールを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−3の全質量に占める1−ドコサノールの含有量は、2質量%であった。
(内包型ポリマー粒子P−4の合成)
N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの代わりに、1−ヘプタノール(東京化成工業(株)製、水への溶解度:1.0質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−4を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−4は、1−ヘプタノールを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−4の全質量に占める1−ヘプタノールの含有量は、1.2質量%であった。
(内包型ポリマー粒子P−5の合成)
N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの代わりに、1−ペンタノール(東京化成工業(株)製、水への溶解度:2.7質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−5を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−5は、1−ペンタノールを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−5の全質量に占める1−ペンタノールの含有量は、1.1質量%であった。
(内包型ポリマー粒子P−6の合成)
N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの代わりに、エマルゲン320P(花王(株)製、水への溶解度:1.0質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−6を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−6は、エマルゲン320Pを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−6の全質量に占めるエマルゲン320Pの含有量は、1.5質量%であった。
(内包型ポリマー粒子P−7の合成)
N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの代わりに、エマルゲン104P(花王(株)製、水への溶解度:<1質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−7を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−7は、エマルゲン104Pを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−7の全質量に占めるエマルゲン104Pの含有量は、2質量%であった。
(内包型ポリマー粒子P−8の合成)
N,N−ジメチル−N−ドデシルアミンの代わりに、メガファックF−430(DIC(株)製、水への溶解度:<1質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−8を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−8は、メガファックF−430を内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−8の全質量に占めるメガファックF−430の含有量は、2質量%であった。
(ポリマー粒子CP−3の合成)
モノマーとしてスチレン及びアクリロニトリルを使用してシード乳化重合によりポリマーエマルジョン(熱可塑性樹脂粒子)を調製した。
まず、下記の表面活性剤が、モノマーを加える前に反応槽中に存在することを確認した。
2リットルの二重ジャケット反応槽に、10.35gのChemfac PB−133(Chemax社製、Chemfac PB−133、リン酸アルキルエーテル表面活性剤)、1.65gのNaHCO、及び1482.1gの脱塩水を加えた。そして、上記反応槽に窒素を流し、75℃まで加熱した。反応槽の内容物の温度が75℃に達した際に、1.5%のモノマー混合物(即ち、2.29gのスチレン及び1.16gのアクリロニトリルのモノマー混合物)を加えた。
モノマー混合物を、15分間、75℃で乳化し、続いて、37.95gの2質量%過硫酸ナトリウム水溶液を加えた。続いて、反応槽を80℃の温度に30分間加熱した。
次いで、残るモノマー混合物(150.1gのスチレン及び76.5gのアクリロニトリルのモノマー混合物)を、180分間にわたり反応混合物に投入した。モノマー混合物の添加と同時に、追加量の過硫酸ナトリウム水溶液(37.95gの2質量%Na水溶液)を加えた。モノマー混合物の添加が完了した後、反応槽を60分間、80℃で加熱した。残存モノマーの量を減らすために、減圧蒸留を80℃で1時間行った。続いて反応槽を室温に冷却し、100ppmのProxel Ultra 5(Arch Biocides UK社製、1,2−ベンズイソチアゾール3(2H)−オンの5質量%水溶液)を殺菌剤として加え、熱可塑性樹脂粒子CP−3の水分散物を調製した。
熱可塑性樹脂粒子は、スチレンにより形成される構成単位と、アクリロニトリルにより形成される構成単位との組成比は2:1(質量比)であり、体積平均粒径は25nmであり、ガラス転移温度は120℃であった。
(内包型ポリマー粒子P−9の合成)
上記ポリマー粒子CP−3(熱可塑性樹脂粒子CP−3)の水分散物に対し、1−ドコサノール(カルコール220−80、花王(株)製、水への溶解度:<1質量%)の10%酢酸エチル溶液を、1−ドコサノールが熱可塑性樹脂粒子の質量に対して2質量%となる量加えた。その後、45℃で5時間、酢酸エチルを揮発させながら撹拌し、熱可塑性樹脂粒子に1−ドコサノールを含浸させた。
以上の方法で、1−ドコサノールを内包する内包型ポリマー粒子P−9を得た。
内包型ポリマー粒子P−9の体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、150nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−9の全質量に占める1−ドコサノールの含有量は、2質量%であった。
(ポリマー粒子CP−4の合成)
1−ドコサノールの代わりに、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000(アルドリッチ社製、水への溶解度:>5質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−9の合成と同様にして、ポリマー粒子CP−4を得た。
ここで、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000は、特定水難溶性化合物には該当しない。
得られたポリマー粒子CP−4は、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000を内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、150nmであった。
また、ポリマー粒子CP−4の全質量に占める、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000の含有量は0.1質量%未満であり検出できなかった。
(ポリマー粒子CP−5の合成)
1000mlの4つ口フラスコに、下記構造の分散ユニット(n=45):10.0g、蒸留水85.0g、及びn−プロパノール240.0gを加えて、窒素雰囲気下70℃で加熱撹拌した。
次に、予め混合されたスチレン:20.0g、アクリロニトリル:70.0g、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.7gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5gを添加し、80℃に昇温した。6時間おきに2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.4gずつ添加し、合計19時間反応させた。
反応液を室温(25℃)に放冷し、付加重合型樹脂粒子の分散液(固形分:23質量%)を得た。
得られた付加重合型樹脂粒子をポリマー粒子CP−5とした。
(内包型ポリマー粒子P−10の合成)
上記のポリマー粒子CP−5(付加重合型樹脂粒子)の分散物に対し、1−ドコサノール(カルコール220−80、花王(株)製、水への溶解度:<1質量%)の10%酢酸エチル溶液を、1−ドコサノールが熱可塑性樹脂粒子の質量に対して2質量%となる量加えた。その後、45℃で5時間、酢酸エチルを揮発させながら撹拌し、熱可塑性樹脂粒子に1−ドコサノールを含浸させた。
以上の方法で、1−ドコサノールを内包する内包型ポリマー粒子P−10を得た。
内包型ポリマー粒子P−10の体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、150nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−10の全質量に占める1−ドコサノールの含有量は、2質量%であった。
(ポリマー粒子CP−6の合成)
1−ドコサノールの代わりに、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000(アルドリッチ社製、水への溶解度:>5質量%)を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−10の合成と同様にして、ポリマー粒子CP−6を得た。
ここで、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000は、特定水難溶性化合物には該当しない。
得られたポリマー粒子CP−6は、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000を内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、150nmであった。
また、ポリマー粒子CP−6の全質量に占める、ポリエチレングリコールジメチルエーテル2000の含有量は0.1質量%未満であり検出できなかった。
(内包型ポリマー粒子P−11〜P−14)
多官能イソシアネート化合物(A)と、「タケネート(登録商標)D−116N」と、重合性化合物M−2と、の総量に対して、0.3質量%、0.8質量%、5質量%、又は8質量%の1−ドコサノール(カルコール220−80、花王(株)製、水への溶解度:<1質量%)を添加して得られた油相成分を用いた以外は、内包型ポリマー粒子P−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−11〜P−14を得た。
得られた内包型ポリマー粒子P−11〜P−14は、いずれも、1−ドコサノールを内包しており、体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−11〜P−14の全質量に占める1−ドコサノールの含有量は、それぞれ、0.3質量%(P−11)、0.8質量%(P−12)、5質量%(P−13)、8質量%(P−14)であった。
(内包型ポリマー粒子P−15の合成)
多官能イソシアネート化合物(ポリメリックMDI WANNATE(登録商標)PM−200:万華化学社製):6.66gと、三井化学(株)製の「タケネート(登録商標)D−116N(トリメチロールプロパン(TMP)とm−キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO90)との付加物(上記構造)」の50質量%酢酸エチル溶液:5.46gと、下記構造の重合性化合物M−1の65質量%酢酸エチル溶液:11.53gと、酢酸エチル:18.66gと、1−ドコサノール(カルコール220−80、花王(株)製、水への溶解度:<1質量%)0.36gと、竹本油脂製のパイオニン(登録商標)A−41−C:0.45gと、を混合し、室温(25℃)で15分攪拌して油相成分を得た。
上記油性成分を用いた以外は、ポリマー粒子CP−1の合成と同様にして、内包型ポリマー粒子P−15の水分散物(固形分濃度:20質量%)を得た。
内包型ポリマー粒子P−15の体積平均粒径を既述の方法で測定したところ、200nmであった。
また、内包型ポリマー粒子P−15の全質量に占める1−ドコサノールの含有量は、2質量%であった。
[実施例1〜21、比較例1〜6]
<支持体の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム板表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
続いて、0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、アルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を形成した後、水洗、乾燥して支持体Aを作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は10nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM(日立S−900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準誤差は±10%以下であった。
以下、上記支持体Aを支持体として使用した。
(下塗り層の形成)
上記支持体上に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して下塗り層を形成した。
<下塗り層塗布液(1)>
・ポリマー(P−1)〔下記構造〕:0.18部
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸:0.10部
・水:61.4部
Figure 2021053987
(画像記録層の形成)
<画像記録層塗布液>
表2及び表3に記載の使用量に従って、各成分を固形分濃度が7.0質量%になるように混合した。表中の各素材の添加量(部)は、固形分量である。
表中の各成分の詳細を下記に記載する。
〔重合性化合物〕
M−1(下記構造):トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、NKエステル A−9300、新中村化学工業(株)製
M−2(上記構造):ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、SR−399、サートマー社製
M−3(下記構造):ジペンタエリスリトールペンタアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー、UA−510H 共栄社化学(株)製
M−4(下記構造を含有する混合物):ウレタンアクリレートオリゴマー、U−15HA 新中村化学工業(株)製
Figure 2021053987
〔重合開始剤〕
I−1:下記構造の化合物
Figure 2021053987
〔赤外線吸収剤〕
K−1:下記構造の化合物
Figure 2021053987
上記構造中、Phはフェニル基を表す。
〔ラジカル生成助剤〕
R−1:下記構造の化合物
Figure 2021053987
〔酸発色剤〕
H−1:S−205 (福井山田化学工業(株)製)
H−2、H−3:下記構造の化合物(ロイコ色素)
Figure 2021053987
〔親水性化合物〕
T−1:トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
〔感脂化剤〕
C−1:下記構造の化合物
Figure 2021053987
〔界面活性剤〕
W−1:下記構造の化合物
Figure 2021053987
上記構造中、主鎖の添え字は各構成単位の含有比(質量比)を表す。
〔溶剤〕
S−1:2−ブタノン(MEK)
S−2:1−メトキシ−2−プロパノール(MFG)
S−3:蒸留水
<保護層塗布液>
・無機層状化合物分散液(1)〔下記〕:1.5部
・ポリビニルアルコール(CKS50、日本合成化学工業(株)製、スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液 : 0.55部
・ポリビニルアルコール(PVA−405、(株)クラレ製、けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液 : 0.03部
・界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エマレックス(登録商標)710、日本エマルジョン(株)製)1質量%水溶液 : 0.86部
・イオン交換水 : 6.0部
上記保護層塗布液に用いた無機層状化合物分散液(1)の調製法を以下に示す。
〔無機層状化合物分散液(1)の調製〕
イオン交換水193.6gに合成雲母(ソマシフME−100、コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
<平版印刷版原版の作製>
上記支持体上に、上記組成の下塗り層塗布液を乾燥塗布量が20mg/mになるように塗布して下塗り層を形成した。下塗り層上に、表2及び表3に記載の各画像記録層塗布液をバー塗布し、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液は、ポリマー粒子を塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
必要に応じ、画像記録層上に、上記組成の保護層塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成した。
保護層を形成した例については、表2及び表3の保護層の欄に「有り」と記載した。
<平版印刷版原版の評価>
(1)現像カスの堆積の評価
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及びAMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)3%網点のチャートを含み、非画像部率は80%とした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズ(636mm×939mm)のハイデルベルグ社製印刷機SX−74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S−Z1(富士フイルム(株)製)2.0質量%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K−HS墨GE−M(T&K(株)製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に印刷を行い、機上現像を行った。非画像部にインキが転写しない状態になるまで機上現像を行い、これを同じ露光済み原版にて15版分繰り返した。
15版分の機上現像が完了した後、印刷機内の水着けローラの表面を観察し、現像カスの堆積について評価した。評価結果は表2及び表3に記載した。
評価指標は以下の通りである。
1:水着けローラ上に全く汚れが付着しない
2:水着けローラの一部に汚れが付着するが、洗浄1回にて汚れが完全に除去される
3:水着けローラの全面に汚れが付着するが、洗浄1回にて汚れが完全に除去される
4:水着けローラの全面に汚れが付着するが、洗浄2回にて汚れが完全に除去される
5:水着けローラの全面に汚れが付着するが、洗浄3回にて汚れが完全に除去される
6:水着けローラの全面に汚れが付着し、洗浄3回後も汚れが残る
(2)機上現像性の評価
上記のようにして作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載のKodak社製Magnus800 Quantumにて、出力27W、外面ドラム回転数450rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inchは2.54cm)の条件で露光(照射エネルギー110mJ/cm相当)した。露光画像にはベタ画像、及びAMスクリーン(Amplitude Modulated Screening)3%網点のチャートを含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、菊判サイズ(636mm×939mm)のハイデルベルグ社製印刷機SX−74のシリンダーに取り付けた。本印刷機には、不織布フィルターと温度制御装置を内蔵する容量100Lの湿し水循環タンクを接続した。湿し水S−Z1(富士フイルム(株)製)2.0質量%の湿し水80Lを循環装置内に仕込み、印刷インキとしてT&K UV OFS K−HS墨GE−M(T&K(株)製)を用い、標準の自動印刷スタート方法で湿し水とインキを供給した後、毎時10,000枚の印刷速度で特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に500枚印刷を行った。
上記機上現像において、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。計測結果は表2及び表3に記載した。
(3)耐刷性の評価
上述した機上現像性の評価を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像部が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるAMスクリーン3%網点の網点面積率をグレタグ濃度計(GretagMacbeth社製)で計測した値が、印刷500枚目の計測値よりも1%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きいほど、耐刷性が良好である。評価結果は表2及び表3に記載した。
相対耐刷性=(対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000×100
Figure 2021053987
Figure 2021053987
表2及び表3に記載した結果から、本開示に係る平版印刷版原版によれば、現像カスの堆積が抑制されることがわかる。

Claims (26)

  1. アルミニウム支持体と、前記アルミニウム支持体上に形成された画像記録層と、を有し、
    前記画像記録層が、赤外線吸収剤、重合性化合物、及びポリマー粒子を含み、
    前記ポリマー粒子が、25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物を内包する、
    平版印刷版原版。
  2. 前記25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物の分子量が5,000以下である、請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 前記25℃における水への溶解度が5質量%未満であり、且つ、親水性基と疎水性基とを有する化合物が非イオン性化合物である、請求項1又は請求項2に記載の平版印刷版原版。
  4. 前記疎水性基が、パーフルオロアルキル基又は炭素数1〜50のアルキル基である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  5. 前記親水性基が、アミノ基、ヒドロキシ基、又はポリアルキレンオキシド構造を有する基である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  6. 前記ポリマー粒子を構成するポリマーが付加重合型樹脂である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  7. 前記ポリマー粒子を構成するポリマーが熱可塑性樹脂である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  8. 前記ポリマー粒子を構成するポリマーが、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位とアクリロニトリル化合物により形成される構成単位とを少なくとも有する樹脂である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  9. 前記ポリマー粒子を構成するポリマーが重付加型樹脂である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  10. 前記重付加型樹脂が三次元架橋構造を有する、請求項9に記載の平版印刷版原版。
  11. 前記ポリマー粒子を構成するポリマーがポリアルキレンオキシド構造を有する、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  12. 前記画像記録層が、重合開始剤及び重合性化合物を更に含む、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  13. 前記画像記録層が発色剤を更に含む請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  14. 前記発色剤が、酸発色剤である請求項13に記載の平版印刷版原版。
  15. 前記酸発色剤が、ロイコ色素である請求項14に記載の平版印刷版原版。
  16. 前記ロイコ色素が、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素である請求項15に記載の平版印刷版原版。
  17. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le−1)〜式(Le−3)のいずれかで表される化合物である請求項16に記載の平版印刷版原版。
    Figure 2021053987

    式(Le−1)〜式(Le−3)中、ERGはそれぞれ独立に電子供与性基を表し、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、X〜X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の有機基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
  18. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le−4)〜式(Le−6)のいずれかで表される化合物である請求項16又は請求項17に記載の平版印刷版原版。
    Figure 2021053987

    式(Le−4)〜式(Le−6)中、ERGはそれぞれ独立に電子供与性基を表し、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
  19. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、下記式(Le−7)〜式(Le−9)のいずれかで表される化合物である請求項16〜請求項18のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
    Figure 2021053987

    式(Le−7)〜式(Le−9)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又、はアルコキシ基を表し、Rb〜Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rc及びRcは、それぞれ独立に、アリール基を表す。
  20. Ra〜Raがそれぞれ独立にアルコキシ基である請求項19に記載の平版印刷版原版。
  21. 前記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素が、前記式(Le−8)で表される化合物である請求項19に記載の平版印刷版原版。
  22. 〜Xが水素原子であり、Y及びYがCである請求項21に記載の平版印刷版原版。
  23. Rb及びRbが、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である請求項21又は請求項22に記載の平版印刷版原版。
  24. 前記画像記録層の未露光部が、湿し水及び印刷インキの少なくとも一方により除去可能である、請求項1〜請求項23のいずれか1項に記載の平版印刷版原版。
  25. 請求項1〜請求項24のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
    露光後の平版印刷版原版に、印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方を供給して、印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程と、
    を含む、平版印刷版の作製方法。
  26. 請求項1〜請求項24のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
    露光後の平版印刷版原版に、印刷インキ及び湿し水からなる群より選ばれた少なくとも一方を供給して、印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し、平版印刷版を作製する工程と、
    作製された平版印刷版にて印刷を行う工程と、
    を含む、平版印刷方法。
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