JP2021030358A - 電動工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】課題は、必要に応じて電動機の動作トルクの上限値を増加させることができる電動工具を提供することである。【解決手段】電動工具1は、永久磁石131及びコイル141を有する電動機15と、電動機15の動作を制御する制御部4とを備える。制御部4は、永久磁石131の磁束を強める強め磁束をコイル141に発生させる強め磁束電流をコイル141に流す強め磁束制御モードを有する。【選択図】図1
Description
本開示は一般に電動工具に関し、より詳細には、電動機を備える電動工具に関する。
従来、電動機の回転数を制御可能な電動工具が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の電動工具は、ブラシレスDCモータ(電動機)と、バッテリ電圧検出部と、回転位置検出部と、制御部と、を備える。バッテリ電圧検出部は、ブラシレスDCモータの駆動に用いるバッテリの電圧を検出する。回転位置検出部は、ブラシレスDCモータの回転位置を検出する。制御部は、回転位置検出部からの信号により、ブラシレスDCモータへの駆動出力を制御する。制御部は、ブラシレスDCモータへの駆動出力制御時に、ブラシレスDCモータの回転数若しくは通電電流が、バッテリ電圧検出部にて検出されたバッテリ電圧に対応した目標値になるよう、ブラシレスDCモータへの通電角若しくは進角を制御する。
本開示は、必要に応じて電動機の動作トルクの上限値を増加させることができる電動工具を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る電動工具は、永久磁石及びコイルを有する電動機と、前記電動機の動作を制御する制御部とを備える。前記制御部は、前記永久磁石の磁束を強める強め磁束を前記コイルに発生させる強め磁束電流を前記コイルに流す強め磁束制御モードを有する。
本開示の態様によれば、必要に応じて電動機の動作トルクの上限値を増加させることができる、という利点がある。
(1)実施形態
(1−1)概要
図1は、本実施形態の電動工具1を示す。電動工具1は、永久磁石131及びコイル141を有する電動機15と、電動機15の動作を制御する制御部4とを備える。制御部4は、永久磁石131の磁束を強める強め磁束をコイル141に発生させる強め磁束電流をコイル141に流す強め磁束制御モードを有する。
(1−1)概要
図1は、本実施形態の電動工具1を示す。電動工具1は、永久磁石131及びコイル141を有する電動機15と、電動機15の動作を制御する制御部4とを備える。制御部4は、永久磁石131の磁束を強める強め磁束をコイル141に発生させる強め磁束電流をコイル141に流す強め磁束制御モードを有する。
このように、制御部4は強め磁束制御モードを有している。強め磁束制御モードでは、永久磁石131の磁束を強める強め磁束がコイル141に発生するため、結果として、電動機15の動作トルクの上限値が増加することになる。よって、制御部4が、必要に応じて強め磁束制御モードを実行することで、電動機15の動作トルクの上限値を増加させることが可能となる。したがって、電動工具1によれば、必要に応じて電動機15の動作トルクの上限値を増加させることができる。
(1−2)詳細
以下、本実施形態の電動工具1について図1〜図4を参照して更に詳細に説明する。本実施形態の電動工具1は、ドリルドライバである。
以下、本実施形態の電動工具1について図1〜図4を参照して更に詳細に説明する。本実施形態の電動工具1は、ドリルドライバである。
電動工具1は、図1に示すように、電動機15と、制御部4とを備える。更に、電動工具1は、インバータ回路部51と、複数(図1では2つ)の電流センサ61、62とを備える。また、電動工具1は、図2に示すように、クラッチ機構17と、ソケット21と、ビット回転測定部22と、トルク測定部23と、モータ回転測定部24と、操作部25と、電源32とを備える。なお、図2は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
電動機15は、先端工具を駆動する駆動源である。電動機15は、回転動力を出力する出力軸16を有している。電動機15は、交流電動機である。電動機15は、例えばブラシレスモータである。特に、本実施形態では、電動機15は、同期電動機であり、より詳細には、永久磁石同期電動機(PMSM(Permanent Magnet Synchronous Motor))である。図1に示すように、電動機15は、永久磁石131を有する回転子13と、コイル141を有する固定子14と、を含んでいる。回転子13は、図2に示すように、出力軸16を含む。コイル141と永久磁石131との電磁的相互作用により、回転子13は、固定子14に対して回転する。電動機15は、インバータ回路部51から供給された電力(3相電圧)により駆動され、回転動力を発生させる。
クラッチ機構17は、第1駆動伝達部18と、第2駆動伝達部19と、出力軸20とを備える。第1駆動伝達部18は、電動機15の出力軸16に連結される。第2駆動伝達部19は、クラッチ機構17の出力軸20に連結される。また、第1駆動伝達部18と第2駆動伝達部19とは、着脱自在に連結される。クラッチ機構17は、出力軸20に所定の大きさ以上の負荷(負荷トルク)がかかっていないときには、第1駆動伝達部18と第2駆動伝達部19とが一体となって回転するので、電動機15の出力軸16の回転とともにクラッチ機構17の出力軸20が回転する。一方で、出力軸20に所定の大きさ以上の負荷がかかった時には、第1駆動伝達部18と第2駆動伝達部19との接続が解除され、電動機15の出力軸16が、クラッチ機構17の出力軸20から分離される。これによって、電動工具1で締め付けるねじ等の対象物に過度な力がかかることが防止される。なお、クラッチ機構17は、従来周知の構成であってよいから、クラッチ機構17の詳細な説明は省略する。
ソケット21は、先端工具が着脱自在に取り付けられる部分である。ソケット21は、出力軸20の先端に固定される。つまり、電動工具1は、先端工具を電動機15の駆動力で駆動する工具である。先端工具(ビットとも言う)は、例えば、ドライバ又はドリル等である。各種の先端工具のうち用途に応じた先端工具が、ソケット21に取り付けられて用いられる。電動工具1では、先端工具を用途に応じて交換可能である。なお、先端工具は、直接的に出力軸20に装着されてもよい。また、先端工具が交換可能であることは必須ではない。例えば、電動工具1では、特定の先端工具のみが利用可能であってよい。
ビット回転測定部22は、出力軸20の回転角を測定する。ここでは、出力軸20の回転角は、先端工具(ビット)の回転角に等しい。ビット回転測定部22としては、例えば、光電式エンコーダ又は磁気式エンコーダを採用することができる。
トルク測定部23は、電動機15のトルク(負荷トルク)を測定する。トルク測定部23は、例えば、ねじり歪みの検出が可能な磁歪式歪センサである。磁歪式歪センサは、電動機15の出力軸16に負荷トルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を、電動機15の非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を出力する。
モータ回転測定部24は、電動機15の回転角を測定する。モータ回転測定部24としては、例えば、光電式エンコーダ又は磁気式エンコーダを採用することができる。
操作部25は、電動機15の回転を制御するための操作(つまり、ユーザからの操作)を受け付ける操作部である。
電源32は、電動工具1の電動機15及び制御部4を駆動するための電源である。電源32は、直流電源である。電源32は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。なお、電源32は、1又は複数の1次電池を含んでよい。また、電源32は、交換可能であってよい。
制御部4は、電動工具1の全体的な制御を実行するように構成される。より詳細には、制御部4は、電動機15の動作を制御するように構成される。制御部4は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラム(アプリケーション)を実行することで、制御部4として機能する。プログラムは、ここでは制御部4のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
図1に示すように、制御部4は、指令値生成部41と、速度制御部42と、電流制御部43と、第1の座標変換器44と、第2の座標変換器45と、磁束制御部46と、推定部47と、脱調検出部48とを有する。
制御部4は、インバータ回路部51と共に用いられ、フィードバック制御により電動機15の動作を制御する。
複数の電流センサ61,62はそれぞれ、例えば、ホール素子電流センサ又はシャント抵抗素子を含んでいる。複数の電流センサ61,62は、インバータ回路部51から電動機15に供給される電流を測定する。ここで、電動機15には、3相電流(U相電流、V相電流及びW相電流)が供給されており、複数の電流センサ61,62は、少なくとも2相の電流を測定する。図1では、電流センサ61がU相電流を測定して電流測定値iu1を出力し、電流センサ62がV相電流を測定して電流測定値iv1を出力する。
推定部47は、モータ回転測定部24で測定された電動機15の回転角θ1を時間微分して、電動機15の角速度ω1(出力軸16の角速度)を算出する。
第2の座標変換器45は、複数の電流センサ61,62で測定された電流測定値iu1,iv1を、モータ回転測定部24で測定された電動機15の回転角θ1に基づいて座標変換し、電流測定値id1,iq1を算出する。すなわち、第2の座標変換器45は、3相電流に対応する電流測定値iu1,iv1を、磁界成分(d軸電流)に対応する電流測定値id1と、トルク成分(q軸電流)に対応する電流測定値iq1とに変換する。
指令値生成部41は、電動機15の角速度の指令値cω1を生成する。指令値生成部41は、例えば、操作部25(図2参照)を引く操作の引込み量に応じた指令値cω1を生成する。すなわち、指令値生成部41は、上記引込み量が大きいほど、角速度の指令値cω1を大きくする。よって、操作部25を引く操作により、電動機15のオンオフを切替可能である。また、操作部25を引く操作の引込み量で、出力軸20の回転速度、つまり電動機15の回転速度を調整可能である。上記引込み量が大きいほど、電動機15の回転速度が速くなる。制御部4は、指令値生成部41により、操作部25を引く操作の引込み量に応じて、電動機15を回転又は停止させ、また、電動機15の回転速度を制御する。この電動工具1では、先端工具がソケット21に取り付けられる。そして、操作部25への操作によって電動機15の回転速度が制御されることで、先端工具の回転速度が制御される。
速度制御部42は、指令値生成部41で生成された指令値cω1と推定部47で算出された角速度ω1との差分に基づいて、指令値ciq1を生成する。指令値ciq1は、電動機15のトルク電流(q軸電流)の大きさを指定する指令値である。速度制御部42は、指令値cω1と角速度ω1との差分を小さくするように指令値ciq1を決定する。
磁束制御部46は、推定部47で算出された角速度ω1と、電流制御部43で生成される指令値cvq1と、電流測定値iq1(q軸電流)と、に基づいて、指令値cid1を生成する。指令値cid1は、電動機15の磁束(d軸方向の磁束)の大きさを指定する指令値である。
電流制御部43は、磁束制御部46で生成された指令値cid1と第2の座標変換器45で算出された電流測定値id1との差分に基づいて、指令値cvd1を生成する。指令値cvd1は、電動機15のd軸電圧の大きさを指定する指令値である。電流制御部43は、指令値cid1と電流測定値id1との差分を小さくするように指令値cvd1を決定する。
また、電流制御部43は、速度制御部42で生成された指令値ciq1と第2の座標変換器45で算出された電流測定値iq1との差分に基づいて、指令値cvq1を生成する。指令値cvq1は、電動機15のq軸電圧の大きさを指定する指令値である。電流制御部43は、指令値ciq1と電流測定値iq1との差分を小さくするように指令値cvq1を生成する。
第1の座標変換器44は、指令値cvd1,cvq1を、モータ回転測定部24で測定された電動機15の回転角θ1に基づいて座標変換し、指令値cvu1,cvv1,cvw1を算出する。すなわち、第1の座標変換器44は、磁界成分(d軸電圧)に対応する指令値cvd1と、トルク成分(q軸電圧)に対応する指令値cvq1とを、3相電圧に対応する指令値cvu1,cvv1,cvw1に変換する。指令値cvu1はU相電圧に、指令値cvv1はV相電圧に、指令値cvw1はW相電圧に対応する。
インバータ回路部51は、指令値cvu1、cvv1、cvw1に応じた3相電圧を電動機15に供給する。制御部4は、インバータ回路部51をPWM(Pulse Width Modulation)制御することにより、電動機15に供給される電力を制御する。
脱調検出部48は、第2の座標変換器45から取得した電流測定値id1,iq1と、電流制御部43から取得した指令値cvd1,cvq1と、に基づいて、電動機15の脱調を検出する。脱調が検出された場合は、脱調検出部48は、インバータ回路部51に停止信号cs1を送信して、インバータ回路部51から電動機15への電力供給を停止させる。
本実施形態では、制御部4は、電動機15の動作を制御する複数の制御モードを有する。特に、複数の制御モードは、強め磁束制御モードと、通常制御モードとを含む。
強め磁束制御モードは、永久磁石131の磁束を強める強め磁束をコイル141に発生させる強め磁束電流をコイル141に流す制御モードである。「永久磁石131の磁束を強める強め磁束」は、永久磁石131の磁束と向きが同じ磁束であるといえる。本実施形態では、制御部4は、ベクトル制御を利用して、電動機15の動作を制御する。ベクトル制御では、制御部4は、電動機15に供給される磁束電流(d軸電流)とトルク電流(q軸電流)とを独立に制御する。磁束電流は、電動機15のコイル141に発生する磁束に影響する電流であり、トルク電流は、電動機15の動作トルクに影響する電流である。動作トルクは、負荷トルクとは異なり、電動機15が回転の際に発生させるトルクをいう。本実施形態では、d軸電流が、強め磁束電流として用いられる。d軸電流が正であれば、コイル141に、永久磁石131の磁束を強める強め磁束が発生する。d軸電流が正の値であって、d軸電流の絶対値が大きいほど、強め磁束が大きい。逆に、d軸電流が負であれば、コイル141に永久磁石131の磁束を弱める磁束(この磁束を、強め磁束に対して弱め磁束ということがある)が発生する。d軸電流が負の値であって、d軸電流の絶対値が大きいほど、弱め磁束が大きい。本実施形態では、強め磁束制御モードでは、制御部4は、d軸電流の目標値を正の規定値に設定する。具体的には、磁束制御部46が、指令値cid1を、d軸電流の目標値(正の規定値)に対応する値に設定する。一方で、制御部4は、操作部25への操作に基づき、q軸電流を調整する。具体的には、速度制御部42は、指令値生成部41で生成された指令値cω1と推定部47で算出された角速度ω1との差分に基づいて、指令値ciq1を生成する。
通常制御モードは、強め磁束制御モードよりも永久磁石131の磁束を強める度合いが小さい制御モードである。換言すれば、通常制御モードは、強め磁束制御モードよりも小さい強め磁束電流(d軸電流)を流す制御モード、又は、強め磁束電流(d軸電流)自体を流さない制御モードであってよい。本実施形態では、通常制御モードは、強め磁束電流を流さない制御モードである。この場合、通常制御モードでは、制御部4は、d軸電流の目標値を0に設定する。本実施形態では、磁束制御部46が、指令値cid1を、d軸電流の目標値に対応する値に設定する。一方で、制御部4は、操作部25への操作に基づき、q軸電流を調整する。具体的には、速度制御部42は、指令値生成部41で生成された指令値cω1と推定部47で算出された角速度ω1との差分に基づいて、指令値ciq1を生成する。
本実施形態では、制御部4は、電動機15を第1回転方向に回転させる第1動作では、強め磁束制御モードを実行しないが、電動機15を第1回転方向と反対の第2回転方向に回転させる第2動作では、強め磁束制御モードを実行する。第1回転方向は、締結具を締める方向であり、第2回転方向は、締結具を緩める方向である。締結具は、電動工具1の先端工具にて締め付け又は緩められる機械要素である。締結具の例としては、ネジ、ボルト、ナットが挙げられる。よって、第1動作は、締め付け動作であるといえ、第2動作は、緩め動作であるといえる。
より詳細には、制御部4は、第1動作では、通常制御モードのみを実行する。一方で、制御部4は、第2動作では、通常制御モードと強め磁束制御モードとを択一的に実行する。特に、第2動作では、制御部4は、最初は通常制御モードを実行する。そして、制御部4は、通常制御モードにおいて切替条件が満たされると強め磁束制御モードを開始する。本実施形態では、切替条件は、電動機15の負荷トルクが閾値以上になったことである。制御部4は、トルク測定部23で測定された電動機15のトルク(負荷トルク)が閾値以上になると、通常制御モードを終了して強め磁束制御モードを開始する。
(1−3)動作
以下、図3及び図4を参照して電動工具1の動作について簡単に説明する。
以下、図3及び図4を参照して電動工具1の動作について簡単に説明する。
図3は、作業者が電動工具1でネジ(締結具)の締め付けを行う際の、電動機15のトルク(動作トルク)の変化を示す。ネジの締め付けを行う場合、電動工具1の電動機15を第1回転方向に回転させればよい。つまり、電動工具1に第1動作を行わせる。この場合、制御部4は、通常制御モードを実行する。よって、制御部4は、d軸電流の目標値を0に設定し、操作部25への操作に基づき、q軸電流を調整する。図3では、作業者は、時刻t11において、電動工具1の操作部25を引く操作をし、これにより電動機15にq軸電流が流れ始め、電動機15が回転を開始する。これによって、ネジが第1回転方向に回転していき(ネジが締め付けられていき)、負荷トルクが大きくなる。これに伴い、電動機15の動作トルクが上昇し、T1になった時点で、ネジの締め付けが終了している。T1は、通常制御モードでの、電動機15の動作トルクの上限値である。
図4は、作業者が電動工具1でネジ(締結具)の緩めを行う際の、電動機15のトルク(動作トルク)の変化を示す。ネジの緩めを行う場合、電動工具1の電動機15を第2回転方向に回転させればよい。つまり、電動工具1に第2動作を行わせる。この場合、制御部4は、最初は通常制御モードを実行する。よって、制御部4は、d軸電流の目標値を0に設定し、操作部25への操作に基づき、q軸電流を調整する。図4では、作業者は、電動工具1の操作部25を引く操作をし、これにより電動機15にq軸電流が流れ始め、電動機15が回転を開始する。そして、時刻t21では、電動機15の動作トルクがT1に達している。ここで、ネジの締め付けの際には、負荷トルクがT1であったため、特に問題がなければ、ネジは第2回転方向に回転していく(ネジは緩まっていく)。しかし、ネジにさび等が発生していると、ネジを緩めるための負荷トルクがT1より大きくなっている場合がある。例えば、負荷トルクがT1より大きいT2になる。ここで、通常制御モードでは、電動機15の動作トルクの上限値がT1であり、ネジを緩めることができない。そこで、制御部4は、通常制御モードにおいて電動機15の負荷トルクが閾値以上になった場合に、強め磁束制御モードを開始する。ここで、閾値は、T1より大きくT2以下の値である。図4では、時刻t22において、制御部4は、強め磁束制御モードを開始している。強め磁束制御モードでは、制御部4は、d軸電流の目標値を正の規定値に設定し、操作部25への操作に基づき、q軸電流を調整する。これによって、制御部4は、電動機15の動作トルクの上限値を通常制御モードよりも増加させる。そして、図4では、電動機15の動作トルクがT2に達し、これによって、ネジは第2回転方向に回転していく(ネジは緩まっていく)。これによって、負荷トルクの減少とともに、電動機15の動作トルクも減少していく。
このように、電動工具1では、負荷トルクが大きく現在の電動機15のトルクでは締結具を緩めることができない場合に、強め磁束制御モードを開始し、これによって、電動機15の動作トルクの上限値を通常制御モードよりも増加させる。したがって、本実施形態の電動工具1によれば、必要に応じて電動機15の動作トルクの上限値を増加させることができる。
(2)変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
一変形例では、制御部4は、第1動作でも、強め磁束制御モードを実行してよい。この場合に、制御部4は、まず、通常制御モードを実行してよい。そして、切替条件が満たされると、制御部4は、強め磁束制御モードを開始してよい。切替条件は、上記実施形態の、電動機15の負荷トルクが閾値以上になったことに限定されない。例えば、切替条件は、電動機15のトルク(動作トルク)と目標値との差が閾値以上になったことであってよい。また、切替条件は、電動機15の回転数と目標値との差が閾値以上になったことであってよい。いずれの場合においても、閾値は、通常制御モードと強め磁束制御モードとでの電動機15のトルクの上限値の差等を考慮して適宜設定されればよい。また、制御部4は、1以上の複数の切替条件を判定してよい。1以上の複数の切替条件は、電動機15の負荷トルクに関する切替条件、電動機15の動作トルクに関する切替条件、及び、電動機15の回転数に関する切替条件から選択されてよい。
一変形例では、制御部4は、第2動作では、必ずしも通常制御モードを実行しなくてよい。つまり、第2動作では、制御部4は、強め磁束制御モードだけを実行してよい。あるいは、第2動作では、制御部4は、まず、強め磁束制御モードを実行してよい。そして、第2切替条件が満たされると、制御部4は、通常制御モードを開始してよい。第2切替条件は、電動機15の負荷トルクが閾値未満になったことであってよい。あるいは、第2切替条件は、電動機15の動作トルクと目標値との差が閾値未満になったことであってよい。また、切替条件は、電動機15の回転数と目標値との差が閾値未満になったことであってよい。いずれの場合においても、閾値は、通常制御モードと強め磁束制御モードとでの電動機15のトルクの上限値の差等を考慮して適宜設定されればよい。また、制御部4は、1以上の複数の第2切替条件を判定してよい。1以上の複数の第2切替条件は、電動機15の負荷トルクに関する第2切替条件、電動機15の動作トルクに関する第2切替条件、及び、電動機15の回転数に関する第2切替条件から選択されてよい。
一変形例では、制御部4は、強め磁束制御モードでは、強め磁束電流を変化させてもよい。これによって、電動機15の動作トルクの上限値の調整が可能になる。特に、制御部4は、強め磁束制御モードにおいて、増加条件が満たされると、強め磁束電流を時間経過に伴って大きくする漸増制御を行ってもよい。あるいは、制御部4は、強め磁束制御モードにおいて、減少条件が満たされると、強め磁束電流を時間経過に伴って小さくする漸減制御を行ってもよい。このようにすれば、強め磁束電流が例えば2値的に切り替わる場合と比較して、電動機15の動作トルクの最大値の変化が緩やかになるので、電動工具1を用いた作業を行いやすくなる。
一変形例では、制御部4の強め磁束制御モード及び通常制御モードは、操作部25とは別の操作部への操作により手動で切り替え可能であってもよい。例えば、上記のタッチパネルディスプレイへの操作により制御部4の制御モードが切り替え可能であってもよい。
一変形例では、電動機15において、回転子13がコイル141を有しており、かつ、永久磁石131が固定子14を有していてもよい。
一変形例では、電動工具1は、ドリルドライバに限定されず、インパクトドライバ、又はインパクトレンチであってもよい。例えば、電動工具1は、クラッチ機構17の代わりに、インパクト機構を備えてもよい。インパクト機構は、回転方向に打撃を加えることで、強固な締め付け等を実現するための機構である。インパクト機構は、スピンドル、ハンマ、及び、アンビルを有する従来周知の構成であってよいから、詳細な説明は省略する。また、電動工具1は、インパクトドライバ、ドリルドライバ又はインパクトレンチに限らない。また、電動工具1は、ドライバ又はレンチであってもよい。また、電動工具1は、フライス、グラインダ、クリーナ又はこれら以外の種類の電動工具であってもよい。
一変形例では、電動工具1は、電動工具1の動作に係るパラメータを設定する操作等を受け付ける操作部を備えていてもよい。操作部は、例えば、操作入力の受付けと操作に関わる表示とを行うタッチパネルディスプレイを含んでいてもよい。
一変形例では、電動機15において、回転子13がコイル141を有しており、かつ、永久磁石131が固定子14を有していてもよい。
(3)態様
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
第1の態様は、電動工具(1)であって、永久磁石(131)及びコイル(141)を有する電動機(15)と、前記電動機(15)の動作を制御する制御部(4)とを備える。前記制御部(4)は、前記永久磁石(131)の磁束を強める強め磁束を前記コイル(141)に発生させる強め磁束電流を前記コイル(141)に流す強め磁束制御モードを有する。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第2の態様は、第1の態様に基づく電動工具(1)である。第2の態様では、前記制御部(4)は、前記強め磁束制御モードよりも前記永久磁石(131)の磁束を強める度合いが小さい通常制御モードを有する。前記制御部(4)は、前記通常制御モードにおいて切替条件が満たされると前記強め磁束制御モードを開始する。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第3の態様は、第2の態様に基づく電動工具(1)である。第3の態様では、前記制御部(4)は、前記通常制御モードでは、前記強め磁束電流を流さない。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第4の態様は、第2又は第3の態様に基づく電動工具(1)である。第4の態様では、前記制御部(4)は、ベクトル制御を利用して、前記電動機の動作を制御する。前記強め磁束電流は、d軸電流である。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第5の態様は、第4の態様に基づく電動工具(1)である。第5の態様では、前記電動工具(1)は、操作を受け付ける操作部(25)を更に備える。前記制御部(4)は、前記通常制御モード及び前記強め磁束制御モードでは、前記操作部(25)への前記操作に基づき、q軸電流を調整する。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクを調整できる。
第6の態様は、第2〜第5の態様のいずれか一つに基づく電動工具(1)である。第6の態様では、前記切替条件は、前記電動機(15)の負荷トルクが閾値以上になったことである。この態様によれば、電動機(15)で大きな動作トルクが必要になった際に電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第7の態様は、第2〜第5の態様のいずれか一つに基づく電動工具(1)である。第7の態様では、前記切替条件は、前記電動機(15)の動作トルクと目標値との差が閾値以上になったことである。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第8の態様は、第2〜第5の態様のいずれか一つに基づく電動工具(1)である。第8の態様では、前記切替条件は、前記電動機(15)の回転数と目標値との差が閾値以上になったことである。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第9の態様は、第1〜第8の態様のいずれか一つに基づく電動工具(1)である。第9の態様では、前記制御部(4)は、前記強め磁束制御モードでは、前記強め磁束電流を変化させる。この態様によれば、電動機(15)の動作トルクの上限値の調整が可能になる。
第10の態様は、第9の態様に基づく電動工具(1)である。第10の態様では、前記制御部(4)は、前記強め磁束制御モードにおいて、増加条件が満たされると、前記強め磁束電流を時間経過に伴って大きくする漸増制御を行う。この態様によれば、強め磁束電流が例えば2値的に切り替わる場合と比較して、電動機(15)の動作トルクの最大値の変化が緩やかになるので、電動工具(1)を用いた作業を行いやすくなる。
第11の態様は、第9の態様に基づく電動工具(1)である。第11の態様では、前記制御部(4)は、前記強め磁束制御モードにおいて、減少条件が満たされると、前記強め磁束電流を時間経過に伴って小さくする漸減制御を行う。この態様によれば、強め磁束電流が例えば2値的に切り替わる場合と比較して、電動機(15)の動作トルクの最大値の変化が緩やかになるので、電動工具(1)を用いた作業を行いやすくなる。
第12の態様は、第1〜第11の態様のいずれか一つに基づく電動工具(1)である。第12の態様では、前記制御部(4)は、前記電動機(15)を第1回転方向に回転させる第1動作では、前記強め磁束制御モードを実行しない。前記制御部(4)は、前記電動機(15)を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に回転させる第2動作では、前記強め磁束制御モードを実行する。この態様によれば、必要に応じて電動機(15)の動作トルクの上限値を増加させることができる。
第13の態様は、第12の態様に基づく電動工具(1)である。第13の態様では、前記第1回転方向は、締結具を締める方向である。前記第2回転方向は、締結具を緩める方向である。この態様によれば、電動機(15)の動作トルクの上限値を締結具を締める場合よりも締結具を緩める場合で大きくしているから、電動工具(1)で締めた締結具を電動工具(1)で緩めることができない可能性を低減できる。
1 電動工具
15 電動機
131 永久磁石
141 コイル
25 操作部
4 制御部
15 電動機
131 永久磁石
141 コイル
25 操作部
4 制御部
Claims (13)
- 永久磁石及びコイルを有する電動機と、
前記電動機の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記永久磁石の磁束を強める強め磁束を前記コイルに発生させる強め磁束電流を前記コイルに流す強め磁束制御モードを有する、
電動工具。 - 前記制御部は、
前記強め磁束制御モードよりも前記永久磁石の磁束を強める度合いが小さい通常制御モードを有し、
前記通常制御モードにおいて切替条件が満たされると前記強め磁束制御モードを開始する、
請求項1の電動工具。 - 前記制御部は、前記通常制御モードでは、前記強め磁束電流を流さない、
請求項2の電動工具。 - 前記制御部は、ベクトル制御を利用して、前記電動機の動作を制御し、
前記強め磁束電流は、d軸電流である、
請求項2又は3の電動工具。 - 操作を受け付ける操作部を更に備え、
前記制御部は、前記通常制御モード及び前記強め磁束制御モードでは、前記操作部への前記操作に基づき、q軸電流を調整する、
請求項4の電動工具。 - 前記切替条件は、前記電動機の負荷トルクが閾値以上になったことである、
請求項2〜5のいずれか一つの電動工具。 - 前記切替条件は、前記電動機の動作トルクと目標値との差が閾値以上になったことである、
請求項2〜5のいずれか一つの電動工具。 - 前記切替条件は、前記電動機の回転数と目標値との差が閾値以上になったことである、
請求項2〜5のいずれか一つの電動工具。 - 前記制御部は、前記強め磁束制御モードでは、前記強め磁束電流を変化させる、
請求項1〜8のいずれか一つの電動工具。 - 前記制御部は、前記強め磁束制御モードにおいて、増加条件が満たされると、前記強め磁束電流を時間経過に伴って大きくする漸増制御を行う、
請求項9の電動工具。 - 前記制御部は、前記強め磁束制御モードにおいて、減少条件が満たされると、前記強め磁束電流を時間経過に伴って小さくする漸減制御を行う、
請求項9の電動工具。 - 前記制御部は、前記電動機を第1回転方向に回転させる第1動作では、前記強め磁束制御モードを実行せず、前記電動機を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に回転させる第2動作では、前記強め磁束制御モードを実行する、
請求項1〜11のいずれか一つの電動工具。 - 前記第1回転方向は、締結具を締める方向であり、
前記第2回転方向は、締結具を緩める方向である、
請求項12の電動工具。
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JP2019152366A JP2021030358A (ja) | 2019-08-22 | 2019-08-22 | 電動工具 |
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JP2019152366A Pending JP2021030358A (ja) | 2019-08-22 | 2019-08-22 | 電動工具 |
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JP3062655B2 (ja) * | 1997-06-02 | 2000-07-12 | 株式会社ワコー技研 | ねじ締め装置 |
JP3637897B2 (ja) * | 2002-02-28 | 2005-04-13 | 三菱電機株式会社 | 同期電動機駆動装置、インバータ装置、同期電動機の制御方法 |
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2019
- 2019-08-22 JP JP2019152366A patent/JP2021030358A/ja active Pending
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2020
- 2020-06-30 WO PCT/JP2020/025697 patent/WO2021033432A1/ja active Application Filing
Also Published As
Publication number | Publication date |
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WO2021033432A1 (ja) | 2021-02-25 |
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