JP2021020841A - 炭素材料、炭素材料の製造方法、炭素材料組成物、および潤滑性向上剤 - Google Patents

炭素材料、炭素材料の製造方法、炭素材料組成物、および潤滑性向上剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2021020841A
JP2021020841A JP2019210718A JP2019210718A JP2021020841A JP 2021020841 A JP2021020841 A JP 2021020841A JP 2019210718 A JP2019210718 A JP 2019210718A JP 2019210718 A JP2019210718 A JP 2019210718A JP 2021020841 A JP2021020841 A JP 2021020841A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon material
phenolic hydroxyl
present
molecule
hydroxyl groups
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019210718A
Other languages
English (en)
Inventor
隼 郷田
Hayato Goda
隼 郷田
山田 泰弘
Yasuhiro Yamada
泰弘 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Publication of JP2021020841A publication Critical patent/JP2021020841A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Lubricants (AREA)

Abstract

【課題】結晶構造的にはグラフェンと同一または類似した構造を有し、黒鉛とは異なり、層方向の結合が弱い酸素含有炭素材料であるという点では還元型酸化グラフェンと類似の構造を有し、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない点で還元型酸化グラフェンとは異なり、結晶構造的に黒鉛とも異なり、アルミ基板などの上で製造した場合などに起こる不純物金属の混入が回避でき、ニッケル基板などの上で触媒反応を利用して製造した場合などに起こる触媒由来の不純物金属の混入が回避できるような炭素材料を提供する。また、そのような炭素材料を製造する方法を提供する。さらに、そのような炭素材料を含む炭素材料組成物を提供する。【解決手段】本発明の実施形態による炭素材料は、実質的に、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物のみからなる。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素材料、炭素材料の製造方法、炭素材料組成物、および潤滑性向上剤に関する。
近年、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、人造黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料は、それぞれ、その特徴的な物性に起因して、各種分野における新規な機能性材料として期待されている(例えば、非特許文献1−3)。
グラフェンは2次元シート状の炭素材料であり、sp2炭素による六員環で敷き詰められた構造をしている。グラファイトは、通常、2次元シート状のグラフェン同士がファンデルワールス力で結合した2層以上の積層構造をしているものを指すが、1層のグラファイトをグラフェンと称することもある。
グラフェンの存在は古くから知られていたが、グラファイトから1枚のグラフェンを取り出す方法は最近まで確立されていなかった。2004年になって、高配向性の無水グラファイトの表面を粘着テープで剥離し、剥離したものを基板の上に貼り付ける方法によってグラフェンの薄片を取り出せることが見出され、その後、大量生産や低コスト生産を目指して、CVD(化学気相蒸着製膜法)などの気相製膜法によるグラフェンの製造方法や、酸化グラフェン(GO)の還元法によるグラフェン(還元型酸化グラフェン:RGO)の製造方法が検討されている。
しかし、CVD(化学気相蒸着製膜法)などの気相製膜法によるグラフェンの製造方法は、膜以外の形状(代表的には、バルク状)として得ることができないという問題、可燃性ガスを使用しなければならないという問題、Cu等の触媒性能を有する金属基板上に製膜させるため、金属が不純物として含有してしまうという問題がある。
一方、酸化グラフェン(GO)の還元法によるグラフェン(還元型酸化グラフェン:RGO)の製造方法は、上記問題を解決し得る可能性がある製造方法として、近年、検討がなされている。
還元型酸化グラフェン(RGO)は、代表的には、黒鉛の酸化によって酸化グラフェンを製造し、得られる酸化グラフェンを還元することによって製造し得る。しかし、この製造方法では、酸化剤や還元剤や触媒に由来する窒素や硫黄やリンやおよびアルカリ金属以外の金属などが不純物として混入し、全元素中の炭素および酸素の合計の含有割合が低下して、高純度の還元型酸化グラフェンが得られ難いという問題がある。
なお、可燃性ガスを使用することなくグラファイト膜を簡便に製造する方法が最近報告されている(特許文献1)。しかし、このグラファイト膜も、膜以外の形状(代表的には、バルク状)として得ることができないという問題がある。
特開2017−132648号公報 特開2018−177933号公報
Nature,354,p.56−58(1991) Science,306,p.666−669(2004) 齋藤理一郎著,「グラフェンの最先端技術と広がる応用」,第2章.グラフェンの基礎物性,3.グラフェンの光電子物性
本出願人は、上記従来の問題を解決し得る新規な炭素材料を開発するべく鋭意検討を行った。具体的には、結晶構造的にはグラフェンと同一または類似した構造を有し、黒鉛とは異なり、層方向の結合(一般的にπ−πスタッキングと呼ぶ)が弱い酸素含有炭素材料であるという点では還元型酸化グラフェンと類似の構造を有し、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない点で還元型酸化グラフェンとは異なり、結晶構造的に黒鉛とも異なり、アルミ基板などの上で製造した場合などに起こる不純物金属の混入が回避でき、ニッケル基板などの上で触媒反応を利用して製造した場合などに起こる触媒由来の不純物金属の混入が回避できるような炭素材料およびそのような炭素材料の製造方法について研究を行った。
すなわち、本発明の課題は、結晶構造的にはグラフェンと同一または類似した構造を有し、黒鉛とは異なり、層方向の結合が弱い酸素含有炭素材料であるという点では還元型酸化グラフェンと類似の構造を有し、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない点で還元型酸化グラフェンとは異なり、結晶構造的に黒鉛とも異なり、アルミ基板などの上で製造した場合などに起こる不純物金属の混入が回避でき、ニッケル基板などの上で触媒反応を利用して製造した場合などに起こる触媒由来の不純物金属の混入が回避できるような炭素材料を提供することにある。また、そのような炭素材料を製造する方法を提供することにある。さらに、そのような炭素材料を含む炭素材料組成物を提供することにある。さらに、実質的にそのような炭素材料のみからなる潤滑性向上剤を提供することにある。
本発明の実施形態による炭素材料は、実質的に、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物のみからなる。
一つの実施形態においては、上記焼成物を形成させるための焼成温度が200℃〜2000℃である。
一つの実施形態においては、上記焼成温度が400℃〜1000℃である。
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による炭素材料は、バルク状態で存在し得る。
本発明の実施形態による炭素材料組成物は、本発明の実施形態による炭素材料を含む。
本発明の実施形態による潤滑性向上剤は、実質的に、本発明の実施形態による炭素材料のみからなる。
一つの実施形態においては、本発明の実施形態による潤滑性向上剤は、潤滑剤および潤滑剤用添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法は、
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、200℃〜2000℃の焼成温度で焼成する。
一つの実施形態においては、上記焼成温度が400℃〜1000℃である。
一つの実施形態においては、上記分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、金属と接触させない状態で焼成する。
一つの実施形態においては、上記分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、触媒反応を用いずに焼成する。
一つの実施形態においては、上記分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で焼成する。
一つの実施形態においては、上記炭素材料が、潤滑性向上剤に用いる炭素材料である。
一つの実施形態においては、上記潤滑性向上剤が、潤滑剤および潤滑剤用添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明によれば、結晶構造的にはグラフェンと同一または類似した構造を有し、黒鉛とは異なり、層方向の結合が弱い酸素含有炭素材料であるという点では還元型酸化グラフェンと類似の構造を有し、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない点で還元型酸化グラフェンとは異なり、結晶構造的に黒鉛とも異なり、アルミ基板などの上で製造した場合などに起こる不純物金属の混入が回避でき、ニッケル基板などの上で触媒反応を利用して製造した場合などに起こる触媒由来の不純物金属の混入が回避できるような炭素材料を提供することができる。また、そのような炭素材料を製造する方法を提供することができる。さらに、そのような炭素材料を含む炭素材料組成物を提供することができる。さらに、実質的にそのような炭素材料のみからなる、優れた潤滑性を有する潤滑性向上剤を提供することができる。
≪1.炭素材料≫
本発明の実施形態による炭素材料は、実質的に、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物(以下、単に「炭素材料A」と称することがある)のみからなる。
ここにいう「実質的に、」とは、炭素材料Aに起因する効果以外の効果を発現させるための別の成分が、炭素材料Aに積極的に備えられたり、炭素材料Aと積極的に併用されたりする形態を除くことを意味し、例えば、本発明の効果を損なわない範囲で、製造過程などによって不可避に混入する不純物等の含有は許容される。
このような、実質的に、炭素材料Aのみからなる炭素材料中の、該炭素材料Aの含有割合は、好ましくは95質量%〜100質量%であり、より好ましくは99質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは99.9質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは99.99質量%〜100質量%であり、特に好ましくは99.999質量%〜100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
本発明の実施形態による炭素材料は、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を焼成して形成される。
なお、本発明における「焼成物」は、焼成によって原料の一部が分解等したものであるため、「焼成物」そのものの構造は複雑であり、一般式(構造)で表すことが到底できないのが現状であり、このような「焼成物」を扱う当業者の技術常識といえる。したがって、本発明における「焼成物」は、その構造によって直接に特定することが不可能であり、「焼成物」を形成するための方法によって初めて特定できるものである。よって、本発明の実施形態による炭素材料に関し、出願時において、該炭素材料である「焼成物」を構造によって直接特定することが不可能又は非現実的である事情が存在する。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を採用し得る。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物において、該フェノール性ヒドロキシル基が結合する芳香環は炭化水素芳香環であることが好ましい。フェノール性ヒドロキシル基が結合する芳香環がヘテロ芳香環であっても本発明の効果を発揮し得るが、環構造がより安定な炭化水素芳香環であるほうが、得られる炭素材料がより安定となり得る。なお、ヘテロ芳香環とは、炭素によって環構造が構成されている炭化水素芳香環とは異なり、炭素と炭素以外の元素によって環構造が構成されている芳香環を意味する。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、フェノール性ヒドロキシル基以外の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な置換基を採用し得る。このような置換基としては、本発明の効果をより高める点では、ヒドロキシル基のみであることが好ましい。ヒドロキシル基以外の置換基が存在しても本発明の効果は発揮され得るが、ヒドロキシル基以外の置換基が存在しないほうが、副反応を防ぎやすく、より炭素材料化しやすい。なお、ここにいうフェノール性ヒドロキシル基以外の置換基としての「ヒドロキシル基」は、フェノール性ではないヒドロキシル基を意味する。なお、当然のことであるが、置換基とは、水素基(−H)に代わって置き換えられた基である。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を構成する元素としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な元素を採用し得る。このような元素としては、本発明の効果を高める点では、炭素、酸素、水素のみであることが好ましい。炭素、酸素、水素以外の元素が存在しても本発明の効果は発揮され得るが、炭素、酸素、水素以外の元素が存在しないほうが、副反応を防ぎやすく、より炭素材料化しやすい。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、本発明の効果をより発揮させ得るため、該化合物の縮合開始温度が、好ましくは200℃〜450℃の範囲であり、より好ましくは200℃〜400℃の範囲である。これにより、効果的に炭素材料化することができる。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の縮合開始温度は、TG−DTA(熱重量示差熱分析)によって測定される。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が1種類である場合は、その1種類の分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物のTG−DTA分析を、窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その1種類の分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の縮合反応温度(T℃)と決定する。2種類以上の分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の混合物である場合は、その混合物を窒素ガス雰囲気下、40℃から、昇温速度10℃/分で昇温し、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その2種類以上の分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の混合物の縮合開始温度と決定する。ただし、1種類の分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物や2種類以上の分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の混合物に、例えば、溶媒や水分や水和水等の不純物が含まれている場合は、該不純物の脱離に伴うDTAピーク(不純物ピークと称することもある)が縮合開始温度よりも低温で観測されることがある。このような場合には、上記の不純物ピークは無視して、その化合物や混合物の縮合開始温度を決定する。通常は、上記の不純物ピークは無視した上で、DTAの最も低温側のピークトップ温度を、その化合物や混合物の縮合開始温度と決定する。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の分子量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な分子量を採用し得る。このような分子量としては、分子が動きやすく、分子間同士の縮合が活発になり得る点で、好ましくは500以下であり、より好ましくは100〜400である。
焼成に用いる、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合でも、分子間での縮合開始温度は上述の範囲内であることが好ましい。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、一般式(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。
Figure 2021020841
一般式(1)〜(11)のそれぞれにおいて、Xは水素原子または水酸基を表し、Xの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基である。
ここで、フェノール性ヒドロキシル基とは、芳香環に結合した水酸基を意味する。すなわち、一般式(1)においては、芳香環に結合した6つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(2)においては、芳香環に結合した6つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(3)においては、芳香環に結合した10個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(4)においては、芳香環に結合した11個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(5)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(6)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(7)においては、芳香環に結合した10個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(8)においては、芳香環に結合した11個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(9)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(10)においては、芳香環に結合した9つのXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基であり、一般式(11)においては、芳香環に結合した12個のXの中の3つ以上がフェノール性ヒドロキシル基である。
焼成物を形成させるための焼成温度は、目的および焼成物(炭素材料)に所望される特性に応じて適切に設定され得る。焼成温度は、好ましくは200℃〜2000℃であり、より好ましくは300℃〜1500℃であり、さらに好ましくは400℃〜1000℃であり、さらに好ましくは400℃を超えて1000℃未満であり、特に好ましくは500℃〜900℃であり、最も好ましくは500℃〜700℃である。焼成物(炭素材料)の潤滑性の観点からは、焼成温度は、好ましくは400℃以上であり、より好ましくは400℃を超える温度であり、さらに好ましくは410℃以上であり、特に好ましくは450℃以上である。焼成温度の上限は、焼成装置の性能(設定可能温度)に依存し得、例えば2000℃であり得る。焼成温度を上記温度範囲に設定して焼成物を形成させることにより、結晶構造的にはグラフェンと同一または類似した構造を有し、黒鉛とは異なり、層方向の結合が弱い酸素含有炭素材料であるという点では還元型酸化グラフェンと類似の構造を有し、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない点で還元型酸化グラフェンとは異なり、結晶構造的に黒鉛とも異なり、アルミ基板などの上で製造した場合などに起こる不純物金属の混入が回避でき、ニッケル基板などの上で触媒反応を利用して製造した場合などに起こる触媒由来の不純物金属の混入が回避できるような炭素材料を、効率的に形成させ得る。また、焼成温度を上記温度範囲に設定して焼成物を形成させることにより、形成する炭素材料は、特に、それを添加した対象物の潤滑性を顕著に向上させるという性能を発現し得る。さらに、焼成温度を上記温度範囲に設定して焼成物を形成させることにより、後述するように、より優れた潤滑性を有する潤滑性向上剤を提供することができる。また、上記焼成温度範囲で適宜温度調整することで、焼成物中の酸素含有量を調整でき、潤滑性向上剤として使用した場合の分散安定性も調整できる。すなわち、分散しにくい基質に対して本発明の潤滑性向上剤を添加したい場合には、温度を調整し、酸素含有量を上げることで、分散性を向上させることができる。これにより、本発明の潤滑性向上剤は、分散性と潤滑性を両立することを達成し得る。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、このように、「特定の焼成温度」において、「分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物」を、「製膜ではなく焼成すること」によって形成することができる。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、バルク状態で存在し得る。一般には、バルク状態の物質が備える性質が、その物質の固有の性質である。すなわち、バルク状態の物質は、その物質のもつ基本的な性質、例えば、沸点、融点、粘度、密度などの値を決定できる。ある物質の物性といえば、バルク部分が持つ性質を指す。バルク状態の例としては、粒子、ペレット、フィルム等である。粒子の存在状態としては、例えば、粉体が挙げられる。フィルムとしては、自立したフィルムであることが好ましい。
本発明の実施形態による炭素材料は、代表的には、縮合反応によって、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離して得られる炭素材料である。この実施形態においては、1つの化合物が2種以上の基を有している場合であってもよいし、2つ以上の化合物のそれぞれの有する基を組み合わせて2種以上の基となる場合であってもよい。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、本発明の実施形態による炭素材料となり得る。
縮合反応としては、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離することによる縮合反応であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な縮合反応を採用し得る。このような縮合反応とすることにより、比較的低温で反応を行うことが可能となり得る。このような縮合反応としては、−H基と−OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応が挙げられる。特に、脱離した中性成分が該脱離温度(焼成温度)で気体成分であると、形成される炭素材料に取り込まれることなく、気相部にあるため、不純物となりにくい。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を焼成することによって炭素材料を形成することにより、反応触媒を必要とすることなく、自身の脱水反応による反応が起こるため、化学反応の副生成物や反応触媒が炭素材料中に存在してしまって致命的な不純物となることを抑制でき、より高品質な炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いることにより、可燃性ガスを使用することなく、炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、触媒作用を必要としない高反応性を有し得る。
特に、本発明の実施形態による炭素材料は、上記の理由等により、アルミ基板などの上で製造した場合などに起こる不純物金属の混入が回避でき、ニッケル基板などの上で触媒反応を利用して製造した場合などに起こる触媒由来の不純物金属の混入が回避できるという効果を発現し得る。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の中でも、−H基と−OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応が起こりやすいと推察され、反応が進行しやすいと推察される点で、好ましくは、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシトリフェニレンであり、より好ましくは、フロログルシノールである。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、ラマン分析によって、Gバンド、Dバンド、G′バンドを示し、XRD分析によって、黒鉛に由来するピークを示さず、XPS分析によって、全元素中の炭素および酸素の合計の含有割合が99.9%以上を示し、XRF分析によって、窒素、硫黄、リン、およびアルカリ金属以外の金属の含有量の割合が、それぞれ100ppm以下である。
ラマン分析は、任意の適切なラマン分析方法によって測定でき、例えば、測定装置:顕微ラマン(日本分光NRS−3100)、測定条件:532nmレーザー使用、対物レンズ20倍、CCD取り込み時間1秒、積算64回(分解能=4cm−1)の条件によって測定することができる。
XRD分析は、任意の適切なXRD分析方法によって測定でき、例えば、全自動水平型X線回折装置(リガク社製、SMART LAB)を用いて、試料をグローブボックス中にて気密試料台に装填することにより、不活性雰囲気を保った状態とし、CuKα1線:0.15406nm、走査範囲:10°−90°、X線出力設定:45kV−200mA、ステップサイズ:0.020°、スキャン速度:0.5°min−1−4°min−1の条件によって測定することができる。
XPS分析は、任意の適切なXPS分析方法によって測定でき、例えば、光電子分光装置(JPS−9000MX,日本電子株式会社製)を用いて行うことができる。なお、XPS分析においては、水素は検出されないため、水素以外の元素の総量を100%として算出すればよい。
XRF分析は、任意の適切なXRF分析方法によって測定でき、例えば、蛍光X線分析装置(Philips社製、PW2404)を用いて、検量線法にて測定を行い、元素濃度0.01%以上のものを各成分として読み取ればよい。なお、水XRF分析においては、水素は検出されないため、水素以外の元素の総量を100%として算出すればよい。
本発明の実施形態による炭素材料は、従来公知の炭素材料とは異なる新規な炭素材料である。従来公知の炭素材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、人造黒鉛、カーボンブラックなどが挙げられる。
本発明の実施形態による炭素材料は、代表的には、その構造内にベンゼン環由来のハニカム構造(グラフェン構造)を有する。グラフェン構造は、後述するラマン分光分析によってその有無の確認ができる(例えば、非特許文献3参照)。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、ラマン分析によって、Gバンド、Dバンド、G′バンドを示す。すなわち、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物である炭素材料は、好ましくは、ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいて、Gバンド(一般的に1550cm−1〜1650cm−1の範囲内)、Dバンド(一般的に1300cm−1〜1400cm−1の範囲内)、G′バンド(一般的に2650cm−1〜2750cm−1の範囲内)にピークを示す。ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてこのようなピークを示すことは、本発明の実施形態による炭素材料が、グラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していること、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していること、官能基を含むこと、を意味している。
Gバンドは、一般に、強度が高く、シャープであれば、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。
Dバンドは、一般に、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。また、Dバンドが確認できるということは、官能基を有すること、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していること、を意味している。これにより、通常のグラフェンとは異なる性質を発揮し得る。
G′バンドは、一般に、その強度は、グラフェン構造が1層のときに最も強く、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に小さくなる。しかしながら、G′バンドは、グラフェン構造の積層数が増えるにつれて徐々に強度が小さくなっても、ピークは観察することができる。したがって、G′バンドにピークを有することは、グラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。G′バンドは、2Dバンドとも呼ばれることがある。
本発明の実施形態による炭素材料は、ラマン分析によって、好ましくは、D+D′バンド(一般的に2800cm−1〜3000cm−1の範囲内)および/または2D′バンド(一般的に3100cm−1〜3300cm−1の範囲内)を示す。ラマン分光分析によって得られるラマンスペクトルにおいてこのようなピークを示すことは、本発明の実施形態による炭素材料が、グラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有していること、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していること、官能基を含むこと、をより意味している。
D+D′バンドおよび2D′バンドは、一般に、強度が低ければ、よりきれいなグラフェン構造またはグラフェン構造に類似の構造を有しているといえる。D+D′バンドは、D+Gバンドとも呼ばれることがある。また、D+D′バンドおよび/または2D′バンドが確認できるということは、官能基を有すること、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有していること、を意味している。これにより、通常のグラフェンとは異なる性質を発揮し得る。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、XRD分析によって、黒鉛に由来するピークを示さない。本発明でいう黒鉛に由来するピークとは、XRDにおける(002)面に由来するピークが26.3度以上であることを意味する。黒鉛ピークを有さない炭素材料では26.3度以下にブロードなピークを有することが多い。これは、炭素材料層間距離が黒鉛よりも広く、黒鉛とは異なった材料であることを示す。例えば、グラファイトナノプレート(GNP)はグラフェンと類似した薄いグラファイトであり、XRD分析によって、黒鉛に由来のピークを示す。本発明の実施形態による炭素材料が、XRD分析によって、黒鉛に由来するピークを示さないことは、グラファイトナノプレート(GNP)とは異なる炭素材料であることを意味している。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない。具体的には、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物である炭素材料は、XPS分析によって、全元素中の炭素および酸素の合計の含有割合が、好ましくは99.9%以上であり、より好ましくは99.95%以上であり、さらに好ましくは99.99%以上であり、さらに好ましくは99.995%以上であり、特に好ましくは99.999%以上であり、最も好ましくは実質的に100%である。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物である炭素材料が、XPS分析により測定される全元素中の炭素および酸素の合計の含有割合が上記範囲内にあることは、本発明の実施形態による炭素材料の純度が非常に高く、物性の妨げとなる不純物を含まないことを意味する。また実質的に100%とは、XPSによる分析で、炭素および酸素以外のピークが検出されないこと(ベースラインと判別できないこと)を意味する。
本発明の実施形態による炭素材料は、XRF分析によって、窒素、硫黄、リン、およびアルカリ金属以外の金属の含有量の割合が、それぞれ、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下であり、さらに好ましくは5ppm以下であり、特に好ましくは1ppm以下であり、最も好ましくは実質的に0ppmである。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物である炭素材料において、XRF分析により測定される、窒素、硫黄、リン、およびアルカリ金属以外の金属の含有量の割合が上記範囲内にあることは、本発明の実施形態による炭素材料が、窒素や硫黄やリンやおよびアルカリ金属以外の金属という不純物の含有量の割合が非常に低い(極めて高純度の)炭素材料であることを意味している。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、上記のような特徴を有する新規な炭素材料である。すなわち、本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、結晶構造的にはグラフェンと同一または類似した構造を有し、黒鉛とは異なり、層方向の結合が弱い酸素含有炭素材料であるという点では還元型酸化グラフェンと類似の構造を有し、しかしながら、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない点で還元型酸化グラフェンとは異なり、また、結晶構造的に黒鉛とも異なり、窒素、硫黄、リン、およびアルカリ金属以外の金属の含有量の割合が非常に低く(すなわち、極めて高純度であり)、バルク状態で存在し得る、新規な炭素材料である。
本発明の実施形態による炭素材料は、好ましくは、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有している。このような欠陥が存在することにより、本発明の実施形態による炭素材料は、優れた潤滑性の発現に寄与し得る。
≪2.潤滑性向上剤≫
本発明の実施形態による潤滑性向上剤は、実質的に、本発明の実施形態による炭素材料のみからなる。
ここにいう「実質的に、」とは、本発明の実施形態による炭素材料に起因する効果以外の効果を発現させるための別の成分が、本発明の実施形態による炭素材料に積極的に備えられたり、本発明の実施形態による炭素材料と積極的に併用されたりする形態を除くことを意味し、例えば、本発明の効果を損なわない範囲で、製造過程などによって不可避に混入する不純物等の含有は許容される。
本発明にいう「潤滑性向上剤」は、代表的には、潤滑性を向上させる「潤滑剤」、あるいは、潤滑剤に添加して潤滑性をさらに向上させる「潤滑剤用添加剤」である。すなわち、本発明の実施形態における潤滑性向上剤は、潤滑剤および潤滑剤用添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
≪3.炭素材料の製造方法≫
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法は、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、200℃〜2000℃の焼成温度で焼成する。
炭素材料は、潤滑性向上剤に用いる炭素材料であってもよい。潤滑性向上剤は、好ましくは、潤滑剤および潤滑剤用添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物については、≪1.炭素材料≫の項における分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の説明をそのまま援用し得る。
焼成温度は、目的および焼成物(炭素材料)に所望される特性に応じて適切に設定され得る。焼成温度は、好ましくは300℃〜1500℃であり、より好ましくは400℃〜1000℃であり、さらに好ましくは400℃を超えて1000℃未満であり、特に好ましくは500℃〜900℃であり、最も好ましくは500℃〜700℃である。焼成物(炭素材料)の潤滑性の観点からは、焼成温度は、好ましくは400℃以上であり、より好ましくは400℃を超える温度であり、さらに好ましくは410℃以上であり、特に好ましくは450℃以上である。焼成温度の上限は、焼成装置の性能(設定可能温度)に依存し得、例えば2000℃であり得る。焼成温度を上記温度範囲に設定して焼成物を形成させることにより、結晶構造的にはグラフェンと同一または類似した構造を有し、黒鉛とは異なり、層方向の結合が弱い酸素含有炭素材料であるという点では還元型酸化グラフェンと類似の構造を有し、炭素および酸素以外の元素を実質的に含有しない点で還元型酸化グラフェンとは異なり、結晶構造的に黒鉛とも異なり、アルミ基板などの上で製造した場合などに起こる不純物金属の混入が回避でき、ニッケル基板などの上で触媒反応を利用して製造した場合などに起こる触媒由来の不純物金属の混入が回避できるような炭素材料を、効率的に形成させ得る。また、焼成温度を上記温度範囲に設定して焼成物を形成させることにより、形成する炭素材料は、特に、それを添加した対象物の潤滑性を顕著に向上させるという性能を発現し得る。
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、好ましくは、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、金属と接触させない状態で焼成する。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、金属と接触させない状態で焼成することにより、得られる炭素材料中に金属が不純物として含有してしまうことを抑制し得る。ただし、上記のように金属と接触させないというのは積極的に金属に接触させないという意味であり、製造の工程上、例えば焼成炉の底面、壁面に接触してしまう場合は含まない。積極的に接触させるとういのは、後述のような、本発明の分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を薄膜状にすることで、金属との接触面積を積極的に増やす等の操作を意味する。
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、好ましくは、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、触媒反応を用いずに焼成する。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、触媒反応を用いずに焼成することにより、反応触媒が炭素材料中に存在してしまって致命的な不純物となることを抑制し得る。
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、好ましくは、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で焼成する。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で焼成するとは、例えば、(i)分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物からなる粒子(粉体)を焼成する、(ii)分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物からなる粒子(例えば、粉体)を圧縮成形等でペレット状やフィルム状に成形を行った後、その成形体を焼成する、等の行為を包含する。粒子(例えば、粉体)や成形体を焼成する際、例えば、容器に入れて加熱してもよい。容器としては、任意の適切な容器を採用し得る。このような容器としては、例えば、加熱温度で実質的に変質しない材質からなるものが好ましい。また、粒子(例えば、粉体)や成形体が接触する表面が、焼成する際に、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物と化学反応しないような材質であることが好ましい。粒子(例えば、粉体)や成形体を好ましい条件で焼成することにより、炭素材料を得ることが可能となり、その加熱する工程において、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の融点付近で該化合物が融解して液体状になることがある。このような経過を経る場合も「分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で焼成する」ことに含まれる。一方、本発明の意味する「バルク状態で焼成する」ものではない例としては、例えば、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を溶剤に溶解して任意の基材状に塗布して膜状にして該基材とともに加熱することにより薄膜を形成する方法、化学気相成長法(CVD)法、物理気相成長法(PVD)、薄膜蒸着加熱法、などが挙げられる。薄膜としてはおおむね膜厚が1μm以下の範囲を意味する。
本発明の実施形態による炭素材料の製造方法においては、焼成により、代表的には、縮合反応によって、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離し、炭素材料が得られる。この実施形態においては、1つの化合物が2種以上の基を有している場合であってもよいし、2つ以上の化合物のそれぞれの有する基を組み合わせて2種以上の基となる場合であってもよい。分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物が、同一分子間および/または異種分子間で縮合反応を起こし、炭素材料が得られ得る。
縮合反応としては、2種以上の基から1つの中性分子が形成されて脱離することによる縮合反応であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な縮合反応を採用し得る。このような縮合反応とすることにより、比較的低温で反応を行うことが可能となり得る。このような縮合反応としては、−H基と−OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応が挙げられる。特に、脱離した中性成分が該脱離温度(焼成温度)で気体成分であると、形成される炭素材料に取り込まれることなく、気相部にあるため、不純物となりにくい。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を焼成することによって炭素材料を形成することにより、反応触媒を必要とすることなく、自身の脱水反応による反応が起こるため、化学反応の副生成物や反応触媒が炭素材料中に存在してしまって致命的な不純物となることを抑制でき、より高品質な炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いることにより、可燃性ガスを使用することなく、炭素材料を得ることができる。また、このような分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物は、触媒作用を必要としない高反応性を有し得る。
分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の中でも、−H基と−OH基とからHOが形成されて脱離することによる縮合反応が起こりやすいと推察され、反応が進行しやすいと推察される点で、好ましくは、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシトリフェニレンであり、より好ましくは、フロログルシノールである。
焼成の方法としては、管状炉、ボックス炉のような焼成炉、熱媒を利用した加熱反応装置、マイクロ波を利用した加熱反応装置などが使用できる。焼成の条件としては、真空下、常圧下、加圧下などで行うことができる。焼成雰囲気の条件としては、大気下、不活性ガス雰囲気下などで行うことができる。焼成雰囲気の条件としては、好ましくは、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下である。
焼成の時間としては、製造する炭素材料に求める分子量または溶解性や分散性等により、任意の適切な加熱時間を採用し得る。このような加熱時間としては、例えば、好ましくは1分〜48時間であり、より好ましくは15分〜24時間であり、さらに好ましくは30分〜12時間であり、特に好ましくは1時間〜10時間である。
≪4.炭素材料組成物≫
本発明の実施形態による炭素材料組成物は、本発明の実施形態による炭素材料を含む。本発明の実施形態による炭素材料は、グラフェン構造の欠陥に由来する構造またはグラフェン構造の欠陥に由来する構造に類似の構造を有しているので、溶剤や樹脂への溶解性や分散性等を発現し得る。したがって、本発明の実施形態による炭素材料と溶剤を配合すると、溶剤への分散体や溶液を得ることができ、本発明の実施形態による炭素材料と樹脂を配合すると、樹脂への分散体や樹脂に均一に溶解した組成物を得ることができ、各種分野への応用展開が可能となる。
本発明の実施形態による炭素材料組成物中の本発明の実施形態による炭素材料の含有割合は、目的に応じて適宜設定し得る。このような含有割合は、代表的には、好ましくは0.01重量%〜99.9重量%である。
本発明の炭素材料組成物の一つの実施形態は、溶剤を含む。このような本発明の炭素材料組成物の好ましい実施形態の一つとしては、上記溶剤に上記炭素材料が分散している。
本発明の炭素材料組成物の一つの実施形態は、樹脂を含む。このような本発明の炭素材料組成物の好ましい実施形態の一つとしては、上記樹脂に上記炭素材料が分散している。
本発明の実施形態による炭素材料組成物に含まれ得る溶剤としては、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)等のアミド系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、2−プロパノール等のアルコール溶媒が挙げられる。このような溶剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の実施形態による炭素材料組成物に含まれ得る樹脂としては、例えば、SBR等のゴム系の樹脂、汎用的なエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリアミド樹脂が挙げられる。このような樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。また、本明細書において、「重量」は「質量」と読み替えても良い。
<潤滑性の評価>
静動摩擦試験機を用いて、摩擦係数を測定し、潤滑性の評価基準とした。具体的には、静動摩擦試験機(トリニティーラボ株式会社製)を用い、接触子:10mm×10mmのSUS製面接触子、基板:SUS304、荷重:100g、摺動速度:10mm/sec、摺動距離:10mm、摺動回数:10回の条件で、10回摺動後の摩擦係数を測定した。
〔実施例1〕
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合開始温度:230℃)1gを石英ボート(容積:5ml)に乗せ、環状炉(東洋サーモシステム株式会社製、KTF045N1、炉心管:石英φ50mm×1m)を用いて、窒素流通下、700℃で2時間焼成した。焼成後、黒色固体の炭素材料(1)を420mg得た。
得られた炭素材料(1)を、テトラグライムに5質量%の濃度で分散させ、潤滑性の評価を行ったところ、摩擦係数は0.138であった。
〔実施例2〕
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合開始温度:230℃)を2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン(東京化成工業株式会社製、融点:なし、縮合開始温度:410℃)に変えた以外は、実施例1に記載の方法と同様に行い、黒色固体の炭素材料(2)を650mg得た。
得られた炭素材料(2)を、テトラグライムに5質量%の濃度で分散させ、潤滑性の評価を行ったところ、摩擦係数は0.140であった。
〔実施例3〕
フロログルシノール(東京化成工業株式会社製、融点:220℃、縮合開始温度:230℃)を(+)−カテキン水和物(東京化成工業株式会社製、融点:なし、縮合開始温度:210℃)に変えた以外は、実施例1に記載の方法と同様に行い、黒色固体の炭素材料(3)を490mg得た。
得られた炭素材料(3)を、テトラグライムに5質量%の濃度で分散させ、潤滑性の評価を行ったところ、摩擦係数は0.145であった。
〔実施例4〜12〕
焼成温度をそれぞれ200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、600℃および800℃に変えた以外は実施例1に記載の方法で炭素材料(4)〜(12)を得た。焼成温度と得られた炭素材料の摩擦係数との関係を、実施例1および後述の実施例13の結果と併せて表1に示す。
〔実施例13〕
フロログルシノールを磁製ボートに乗せ、炉床昇降式電気炉(丸祥電器株式会社製、SUPERBOY)を用いて、窒素流通下、1300℃で2時間焼成し、黒色固体の炭素材料(13)を得た。焼成温度と得られた炭素材料の摩擦係数との関係を表1に示す。
Figure 2021020841
表1から明らかなとおり、同一材料(実施例ではフロログルシノール)であれば、焼成温度が高いほど炭素化が進行し、潤滑性向上効果が得られることがわかる。より詳細には、焼成温度が250℃と300℃との間に摩擦係数が顕著に小さくなる臨界的な温度が存在し、焼成温度が350℃と400℃との間にも摩擦係数が有意に小さくなる境界温度が存在し得ることがわかる。すなわち、焼成温度が400℃以上であれば、良好な潤滑性が得られることがわかる。さらに、焼成温度が400℃を超えると(特に、450℃以上であれば)、摩擦係数は一定範囲内に収まっており、当該温度範囲においては温度によらず良好な潤滑性を実現できることがわかる。
〔参考例1〕
黒鉛を、テトラグライムに5質量%の濃度で分散させ、潤滑性の評価を行ったところ、摩擦係数は0.156であった。
本発明の炭素材料は、潤滑剤や潤滑剤用添加剤として有効に利用可能である。

Claims (14)

  1. 実質的に、分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物の焼成物のみからなる、炭素材料。
  2. 前記焼成物を形成させるための焼成温度が200℃〜2000℃である、請求項1に記載の炭素材料。
  3. 前記焼成温度が400℃〜1000℃である、請求項2に記載の炭素材料。
  4. バルク状態で存在し得る、請求項1から3までのいずれかに記載の炭素材料。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の炭素材料を含む、炭素材料組成物。
  6. 実質的に、請求項1から4までのいずれかに記載の炭素材料のみからなる、潤滑性向上剤。
  7. 潤滑剤および潤滑剤用添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の潤滑性向上剤。
  8. 炭素材料の製造方法であって、
    分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、200℃〜2000℃の焼成温度で焼成する、
    炭素材料の製造方法。
  9. 前記焼成温度が400℃〜1000℃である、請求項8に記載の炭素材料の製造方法。
  10. 前記分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、金属と接触させない状態で焼成する、請求項8または9に記載の炭素材料の製造方法。
  11. 前記分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、触媒反応を用いずに焼成する、請求項8から10までのいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
  12. 前記分子内に3つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物をバルク状態で焼成する、請求項8から11までのいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
  13. 前記炭素材料が、潤滑性向上剤に用いる炭素材料である、請求項8から12までのいずれかに記載の炭素材料の製造方法。
  14. 前記潤滑性向上剤が、潤滑剤および潤滑剤用添加剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項13に記載の炭素材料の製造方法。



JP2019210718A 2019-06-05 2019-11-21 炭素材料、炭素材料の製造方法、炭素材料組成物、および潤滑性向上剤 Pending JP2021020841A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019104931 2019-06-05
JP2019104931 2019-06-05
JP2019145097 2019-08-07
JP2019145097 2019-08-07

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021020841A true JP2021020841A (ja) 2021-02-18

Family

ID=74574062

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019210718A Pending JP2021020841A (ja) 2019-06-05 2019-11-21 炭素材料、炭素材料の製造方法、炭素材料組成物、および潤滑性向上剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021020841A (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4850989A (ja) * 1971-10-29 1973-07-18
JP2001102053A (ja) * 1999-09-30 2001-04-13 Sumitomo Durez Co Ltd 非水電解質二次電池用炭素材
JP2010207693A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute 揮発性有機化合物吸着材とその製造方法
JP2014511322A (ja) * 2010-12-28 2014-05-15 エナジー2 テクノロジーズ,インコーポレイテッド 電気化学特性が向上した炭素材料
JP2016098279A (ja) * 2014-11-19 2016-05-30 国立大学法人 岡山大学 水系潤滑液組成物
JP2017171517A (ja) * 2016-03-22 2017-09-28 株式会社日本触媒 グラファイト膜の製造方法
JP2018177933A (ja) * 2017-04-11 2018-11-15 日立化成株式会社 潤滑剤
JP6453985B1 (ja) * 2017-12-04 2019-01-16 農業生産法人結・ハートプラザ株式会社 カーボン微粒子の製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4850989A (ja) * 1971-10-29 1973-07-18
JP2001102053A (ja) * 1999-09-30 2001-04-13 Sumitomo Durez Co Ltd 非水電解質二次電池用炭素材
JP2010207693A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute 揮発性有機化合物吸着材とその製造方法
JP2014511322A (ja) * 2010-12-28 2014-05-15 エナジー2 テクノロジーズ,インコーポレイテッド 電気化学特性が向上した炭素材料
JP2016098279A (ja) * 2014-11-19 2016-05-30 国立大学法人 岡山大学 水系潤滑液組成物
JP2017171517A (ja) * 2016-03-22 2017-09-28 株式会社日本触媒 グラファイト膜の製造方法
JP2018177933A (ja) * 2017-04-11 2018-11-15 日立化成株式会社 潤滑剤
JP6453985B1 (ja) * 2017-12-04 2019-01-16 農業生産法人結・ハートプラザ株式会社 カーボン微粒子の製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Feng et al. In situ synthesis of a MoS 2/CoOOH hybrid by a facile wet chemical method and the catalytic oxidation of CO in epoxy resin during decomposition
Musić et al. Formation of nanosize ZnO particles by thermal decomposition of zinc acetylacetonate monohydrate
Yu et al. Synthesis of monophase Al4O4C and the effect of Al4O4C addition to MgO–C refractory
JP2009506974A5 (ja)
AU2019356795B2 (en) Dispersible edge functionalised graphene platelets
JPH02289497A (ja) 炭化珪素ホイスカーの製造プロセス及び種晶剤
JP2021020841A (ja) 炭素材料、炭素材料の製造方法、炭素材料組成物、および潤滑性向上剤
Zhang et al. Preparation of graphite intercalation compounds containing oligo and polyethers
JP7127980B2 (ja) 炭素材料、および、炭素材料含有液
CN107073453B (zh) 氧化钼复合材料及其制备方法
JP7112192B2 (ja) 炭素材料の製造方法
Uflyand et al. Metal Chelate Monomers Based on Nickel Maleate and Chelating N‐Heterocycles as Precursors of Core‐shell Nanomaterials with Advanced Tribological Properties
US20120244062A1 (en) Method for preparing nitride nanomaterials
JP7157679B2 (ja) 炭素材料の製造方法、炭素材料、および炭素材料組成物
KR101971487B1 (ko) 함불소 붕산 pvb 컴퍼지트
JP2020200435A (ja) 抗酸化剤および抗酸化剤用炭素材料の製造方法
JP7437924B2 (ja) 炭素材料の製造方法、炭素材料、炭素材料含有材料の製造方法、炭素材料含有材料、および有機無機複合体
JP7426216B2 (ja) 炭素材料の製造方法および炭素材料
JP2021161009A (ja) フラン環を選択的に導入した含酸素炭素材料の製造方法
JP2021165221A (ja) ピリジニック窒素を選択的に導入した含窒素炭素材料の製造方法
JP7442133B2 (ja) ベーサル窒素を選択的に導入した含窒素炭素材料およびその製造方法
JP2020122132A (ja) 可溶性有機無機複合体
Shende et al. Formation of pyrophoric iron particles by H 2 reduction of oxalate and oxides
TWI683322B (zh) 導電性糊劑之製造方法
JP2024036003A (ja) 焼結蛍光体およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220805

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20221111

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230308

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230404

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230531

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231024

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20240109