JP2021014643A - 多孔質繊維からなる不織布の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、液体供給口が無い単軸押出機を使用した場合においても超高分子量ポリオレフィン樹脂を含有する多孔質繊維からなる不織布を製造することができる方法を提供せんとするものである。【解決手段】ポリエチレン樹脂と溶媒とを含むペレット状原料を押出機に供給し、前記ペレット状原料を溶融および混練し溶融組成物を得る工程I、前記溶融組成物を紡糸ノズルより押し出すとともに前記溶融組成物に気体を吹きつけて前記溶融組成物を延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得る工程II、ならびに前記多孔質繊維前駆体から溶媒を除去し多孔質繊維からなる不織布を得る洗浄工程IIIとをこの順に有し、前記ポリエチレン樹脂が重量平均分子量(Mw)1×106以上の超高分子量ポリエチレンを含有し、前記ペレット状原料が、ペレット状原料の全成分を100質量%とした場合に前記溶媒を85〜95質量%含有し、前記溶媒が前記ポリエチレン樹脂と相溶性を有する、多孔質繊維からなる不織布の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、多孔質繊維からなる不織布の製造方法に関する。
従来から、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ナイロンなどの合成樹脂をメルトブロー法により紡糸した不織布がフィルタ用濾過材、吸水シート、油吸着材などの用途に使用されている。これらのメルトブロー不織布は細繊度(繊維径:0.5〜数十μm程度)の繊維が互いに交絡した構造を有することから表面積が大きく、かつ繊維間の空隙も小さいため、濾過性能、吸着性能に優れるとの特徴を有し上述した用途に適している。一方、繊維の繊度が細く機械特性(引張強度、耐水圧など)に劣るため、防護服、ハウスラップなどの用途には不向きである。
ここで、特許文献1には、濾過性能、吸着性能により優れ、さらに機械特性にも優れたメルトブロー不織布を得るため、超高分子量ポリオレフィン樹脂と超高分子量ポリオレフィン樹脂と相溶性のある溶媒および/または可塑剤をメルトブロー法で紡糸した後、溶媒および/または可塑剤を洗浄し除去した微多孔繊維からなる不織布の製造方法が提案されている。本方法で製造された不織布は、上述したメルトブロー法の特徴を有することに加え、不織布を構成する繊維が多孔質構造であることから、通常のメルトブロー不織布と比べ、濾過性能、吸着性能に更に優れたものとなる。また、本方法で製造された不織布を構成する繊維は、超高分子量ポリオレフィン樹脂を含むため、本方法で製造された不織布は機械特性にも優れるとの特徴を有する。
上述した特許文献1に開示された多孔質繊維からなる不織布の製造方法においては、原料を供給するホッパーから超高分子量ポリオレフィン樹脂を供給し、押出機の液体供給口から溶媒および/または可塑剤を供給した後、押出機で超高分子量ポリオレフィン樹脂と溶媒および/または可塑剤を混練しながら押し出し、紡糸ノズルから吐出すると同時に高温の高速気流で延伸し不織布を得ている。さらに、得られた不織布から溶媒および/または可塑剤を除去することにより多孔質繊維からなる不織布を得ている。
本方法で多孔質繊維からなる不織布を製造する場合には、押出機に液体供給口が必要であり、また、超高分子量ポリオレフィン樹脂と溶媒および/または可塑剤を充分に混練し、超高分子量ポリオレフィンと溶媒および/または可塑剤とが均一に混ざり合ってなるゲル状物(以下、均一なゲル状物と称することがある)を得るため2軸の押出機を用いる必要がある。
よって、液体供給口が無い単軸押出機から構成される一般的なメルトブロー紡糸装置を用いた場合、超高分子量ポリオレフィンと溶媒および/または可塑剤とを混錬し、均一なゲル状物を得ることが困難であり、不織布を製造することができないとの課題がある。
そこで、本発明は、かかる課題に鑑み、液体供給口が無い単軸押出機を使用した場合においても超高分子量ポリオレフィン樹脂を含有する多孔質繊維からなる不織布を製造することができる方法を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような方法を採用する多孔質繊維からなる不織布の製造方法である。すなわち、
(1)ポリエチレン樹脂と溶媒とを含むペレット状原料を押出機に供給し、前記ペレット状原料を溶融および混練し溶融組成物を得る工程I、前記溶融組成物を紡糸ノズルより押し出すとともに前記溶融組成物に気体を吹きつけて前記溶融組成物を延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得る工程II、ならびに前記多孔質繊維前駆体から溶媒を除去し多孔質繊維からなる不織布を得る洗浄工程IIIとをこの順に有し、前記ポリエチレン樹脂が重量平均分子量(Mw)1×106以上の超高分子量ポリエチレンを含有し、前記ペレット状原料が、ペレット状原料の全成分を100質量%とした場合に前記溶媒を85〜95質量%含有し、前記溶媒が前記ポリエチレン樹脂と相溶性を有する、多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(2)前記超高分子量ポリエチレンの含有量が、ペレット状原料に含まれる前記ポリエチレン樹脂を100質量%とした場合に5〜50質量%である、(1)の多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(3)前記ペレット状原料のMFR(190℃)が100g/10分以上である、(1)または(2)の多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(4)前記ペレット状原料の粒径が3〜15mmである、(1)〜(3)何れかの多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(5)前記ペレット状原料の表面にスリップ防止材が付着している、(1)〜(4)何れかの多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(6)前記スリップ防止材がポリエチレン樹脂である、(5)の多孔質繊維からなる不織布の製造方法である。
(1)ポリエチレン樹脂と溶媒とを含むペレット状原料を押出機に供給し、前記ペレット状原料を溶融および混練し溶融組成物を得る工程I、前記溶融組成物を紡糸ノズルより押し出すとともに前記溶融組成物に気体を吹きつけて前記溶融組成物を延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得る工程II、ならびに前記多孔質繊維前駆体から溶媒を除去し多孔質繊維からなる不織布を得る洗浄工程IIIとをこの順に有し、前記ポリエチレン樹脂が重量平均分子量(Mw)1×106以上の超高分子量ポリエチレンを含有し、前記ペレット状原料が、ペレット状原料の全成分を100質量%とした場合に前記溶媒を85〜95質量%含有し、前記溶媒が前記ポリエチレン樹脂と相溶性を有する、多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(2)前記超高分子量ポリエチレンの含有量が、ペレット状原料に含まれる前記ポリエチレン樹脂を100質量%とした場合に5〜50質量%である、(1)の多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(3)前記ペレット状原料のMFR(190℃)が100g/10分以上である、(1)または(2)の多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(4)前記ペレット状原料の粒径が3〜15mmである、(1)〜(3)何れかの多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(5)前記ペレット状原料の表面にスリップ防止材が付着している、(1)〜(4)何れかの多孔質繊維からなる不織布の製造方法、
(6)前記スリップ防止材がポリエチレン樹脂である、(5)の多孔質繊維からなる不織布の製造方法である。
本発明によれば、液体供給口が無い単軸押出機を使用して、超高分子量ポリエチレンを含有する多孔質繊維からなる不織布の製造方法を提供することができる。
本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造方法は、ポリエチレン樹脂と溶媒とを含むペレット状原料を押出機に供給し、前記ペレット状原料を溶融および混錬し溶融組成物を得る工程I、前記溶融組成物を紡糸ノズルより押し出すとともに気体を吹きつけて前記溶融組成物を延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得る工程II、ならびに前記多孔質繊維前駆体から溶媒を除去し多孔質繊維からなる不織布を得る洗浄工程IIIとをこの順に有し、前記ポリエチレン樹脂が重量平均分子量(Mw)1×106以上の超高分子量ポリエチレンを含有し、前記ペレット状原料が、ペレット状原料の全成分を100質量%とした場合に前記溶媒を85〜95質量%含有し、前記溶媒が前記ポリエチレン樹脂と相溶性を有する多孔質繊維からなる不織布の製造方法である。
本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造方法は、上記のとおり超高分子ポリエチレンを含有するポリエチレン樹脂とポリエチレン樹脂と相溶性ある溶媒を含むペレット状原料を押出機に供給し、溶融および混錬し溶融組成物を得る工程Iを備えることにより、液体供給口の無い単軸押出機を用いた場合においても超高分子量ポリエチレンを含有するポリエチレン樹脂を紡糸することが可能となるものである。さらに、紡糸と同時に気体を吹き付け延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得た後、溶媒を除去することにより多孔質繊維からなる不織布を得ることができるものである。よって、液体供給口の無い単軸押出機を用いたメルトブロー法による紡糸が可能となるためには、ペレット状原料の組成が重要となる。
なお、本発明の多孔質繊維からなる不織布は、多孔質繊維のみからなる不織布であってもよい。また、本発明の多孔質繊維からなる不織布は、本発明の効果を阻害しない範囲において、多孔質繊維以外に多孔質の粒状物などを含んでいてもよい。多孔質の粒状物としては、特に限定されるものではないが、多孔質シリカや活性炭などを例示できる。
以下、本発明の詳細について順に説明する。
<ポリエチレン樹脂>
本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造に使用するポリエチレン樹脂について説明する。
本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造に使用するポリエチレン樹脂について説明する。
本発明のポリエチレン樹脂は、機械特性に優れた多孔質繊維からなる不織布を得るとの観点から、超高分子量ポリエチレンを含む。なお、本発明では、重量平均分子量(Mw)1×106以上を超高分子量であると定義し、本発明で使用する超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は、1×106〜5×106であることが好ましく、1×106〜3×106であることがより好ましい。
また、ペレット状原料に含まれるポリエチレン樹脂が、ポリエチレン樹脂を100質量%とした場合に超高分子量ポリエチレンを5〜50質量%含有していることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。ポリエチレン樹脂中に含まれる超高分子量ポリエチレンが5質量%以上であることで、分子鎖の絡み合いの程度が十分なものとなり、多孔質繊維の強度が向上し、この多孔質繊維からなる不織布の機械特性がより優れたものとなる。一方で、超高分子量ポリエチレンが50質量%以下であることで、ポリエチレン樹脂全体の溶融粘度が低下し、ペレット状原料を作製する際、ポリエチレン樹脂が溶媒中に分散し易くなるため、高温条件下で混練する時間をより短縮することができる。さらに、ペレット状原料の溶融粘度も低下するため、メルトブロー法で紡糸する際に、紡糸温度を低温に設定することができ、多孔質繊維からなる不織布の生産性が向上する。
一般的に樹脂の溶融粘度は、樹脂の分子量に依存し、溶融粘度が大きく異なる樹脂同士は均一に混ざり難い傾向にあるとの観点から、超高分子量ポリエチレンを除く、他のポリエチレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5×105〜9×105であることが、多孔質繊維からなる不織布とした際の各種特性のバラツキを抑制する上で好ましい。
<溶媒>
次に本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造に使用する溶媒について説明する。
次に本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造に使用する溶媒について説明する。
本発明の溶媒は、ペレット状原料を構成する成分の一つであり、ポリエチレン樹脂と共に押出機に供給され、紡糸ノズルより押し出された後、洗浄工程で除去される。つまり、溶媒の役割は、溶融粘度が高くメルトブロー紡糸が困難な超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂と混練することにより、超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂の溶融粘度を低下させることである。さらに、溶媒はメルトブロー紡糸した際に延伸された樹脂成分の間に入り込み、洗浄工程で除去されることにより、除去された部分が空孔となり多孔質繊維からなる不織布が製造される。
よって、本発明で用いる溶媒は、ポリエチレン樹脂と相溶性があり、ポリエチレン樹脂の融点より高い沸点を有し、紡糸時に気化しない液体、または固体であることが好ましい。更に、洗浄工程で容易に除去され、多孔質繊維の製造し易さ向上に貢献するものであることが好ましい。本発明において、「ポリエチレン樹脂と相溶性がある溶媒」とは、ポリエチレン樹脂と分子レベルで均一に相溶する溶媒を指すのではなく、ポリエチレン樹脂と溶媒をペレット状原料とした際にペレット状原料内の組成を均一な状態で維持できる溶媒を相溶性のある溶媒と定義する。
このような溶媒として、常温で液体のノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィンなどの脂肪族の炭化水素、環式脂肪族の炭化水素、若しくは芳香族の炭化水素、鉱物油成分、並びにフタル酸エステルなどが挙げられ、常温で固体の溶媒としては、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス類などが挙げられる。これら溶媒のうち、上述した条件、および多孔質繊維からなる不織布の生産性向上の観点から、溶媒としては流動パラフィンを用いることが好ましい。
<ペレット状原料>
次に本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造に使用するペレット状原料について説明する。
次に本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造に使用するペレット状原料について説明する。
本発明のペレット状原料は、前述したポリエチレン樹脂とポリエチレン樹脂と相溶性のある溶媒を含み、固形の形態を有するものであり、ペレット状原料の全成分を100質量%とした場合に前記溶媒を85〜95質量%含有するものである。前述したとおり溶媒の役割が、超高分子量ポリエチレンを含む樹脂の溶融粘度を低下させることにあるため、溶媒の含有量が85質量%を下回るとペレット状原料の溶融粘度が高すぎるため、メルトブロー紡糸することが困難となる。溶媒の含有量を85質量%以上とすることにより、メルトブロー紡糸が可能な溶融粘度となり、90質量%以上とすることで、溶融時の流動性がより向上し、メルトブロー紡糸に適した溶融粘度を有するペレット状原料となる。
一方、溶媒の含有量が95質量%を上回るとポリエチレン樹脂に含浸し切れなかった余剰な溶媒がペレット状原料の表面に過度に存在することとなり、押出機に供給した際、ペレット状原料/スクリュー間の摩擦力が低下し、押出機へのペレット状原料の供給が不安定になる。
さらに、本発明で用いるペレット状原料は、溶媒除去時、使用時における耐薬品性、ならびに製造コストなどの観点から、ポリエチレン樹脂が主成分であることが好ましい。また、本発明で用いるペレット状原料はポリエチレン樹脂以外のポリオレフィン樹脂を含んでいても良い。ここで、主成分とはペレット状原料に含まれるポリオレフィン樹脂成分を100質量%とした場合に80質量%以上であることをいい、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であることをいう。
ポリエチレン樹脂と併用して用いるポリオレフィン樹脂として、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、5−エチル−1−ヘキセンなどを成分とする単独重合体や上記成分から選ばれる少なくとも2種以上の共重合体を挙げることができる。
また、本発明のペレット状原料は、溶融粘度の指標であるメルトフローレート(以下、MFRとする)(190℃:測定方法は後述する)が100g/10分以上であることが好ましく、300g/10分以上であることがより好ましく、500g/10分以上であることがさらに好ましい。一般的に、メルトブロー紡糸は紡糸温度(押出機、ダイ、ノズルなどの温度)におけるMFRが500g/10分以上必要であり、MFRが高いほど細繊度で、かつ繊維径バラツキの少ない繊維を得ることができる。MFR(190℃)が100g/10分以上であれば、紡糸温度を適宜設定することにより、メルトブロー紡糸に適した溶融粘度とすることができる。つまり、MFR(190℃)が500g/10分以上であれば190℃の温度で紡糸が可能となり、製造コストを低減することが可能となる。
次に、本発明で用いるペレット状原料の粒径は3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。一方、本発明で用いるペレット状原料の粒径の上限は15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。ペレット状原料の粒径が3mm以上であることで、ペレット状原料を原料ホッパーに供給する際、ペレット状原料同士の自重によるブロッキングの発生を抑制することができ安定したペレット状原料の供給が可能となる。また、粒径を5mm以上とすることでより供給が安定する。また、粒径が15mm以下であることで、押出機の内部でのペレット状原料の溶融および混練が十分なものとなる。
さらに、本発明で用いられるペレット状原料は、ポリエチレン樹脂と溶媒を混練してなるものであり、一般的なペレット状原料と比較すると押出機スクリューとの摩擦力が低くなる傾向にある。よって、ペレット状原料/押出機スクリュー間の摩擦力を向上させる観点から、ペレット状原料の表面にスリップ防止剤を付着させても良い。スリップ防止剤としては、ペレット状原料がポリエチレン樹脂を含むことから、粉末状のポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
<製造方法>
本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造方法は、ポリエチレン樹脂とポリエチレン樹脂と相溶性のある溶媒を含むペレット状原料を押出機に供給し、前記ペレット状原料を溶融および混練し溶融組成物を得る工程I、前記溶融組成物を紡糸ノズルより押し出すとともに前記溶融組成物に気体を吹きつけて前記溶融組成物を延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得る工程II、ならびに前記多孔質繊維前駆体から溶媒を除去し、多孔質繊維を得る洗浄工程IIIをこの順に含むものである。
本発明の多孔質繊維からなる不織布の製造方法は、ポリエチレン樹脂とポリエチレン樹脂と相溶性のある溶媒を含むペレット状原料を押出機に供給し、前記ペレット状原料を溶融および混練し溶融組成物を得る工程I、前記溶融組成物を紡糸ノズルより押し出すとともに前記溶融組成物に気体を吹きつけて前記溶融組成物を延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得る工程II、ならびに前記多孔質繊維前駆体から溶媒を除去し、多孔質繊維を得る洗浄工程IIIをこの順に含むものである。
本発明の課題である液体供給口が無い単軸押出機からなるメルトブロー紡糸装置を使用し、超高分子量ポリエチレンを含む多孔質繊維からなる不織布を製造するとの観点から、本発明ではポリエチレン樹脂とポリエチレン樹脂と相溶性のある溶媒を混練し、ペレット状に粉砕したペレット状原料を用いる。よって、本発明では、上記の工程Iの前に、ポリエチレン樹脂と溶媒を混練し、ペレット状原料を得る工程IVを備えることが好ましい。
ペレット状原料を原料ホッパーから押出機に供給し、押出機で溶融し、混練して溶融組成物を得る。なお、紡糸に必要となる押出機の温度は、溶媒、および超高分子量ポリエチレン樹脂の含有量により変動する溶融粘度によって異なるが、前述したとおり、ペレット状原料のMFRが500g/10分以上となるように190〜240℃の間で適宜設定すれば良い。
なお、本発明では上述したペレット状原料を使用することにより、液体供給口が無い単軸押出機を用いてメルトブロー法により紡糸した場合においても本発明の不織布を製造することが可能となるものであるが、2軸押出機を用いた場合においても、単軸押出機と同様に本発明の不織布を製造することが可能である。
次に、ペレット状原料を押出機で溶融し、混練して得られた溶融組成物を、通常のメルトブロー法と同様にギアポンプで計量しダイに供給した後、ノズルより押し出すととともに、この溶融組成物に気体を吹きつけて溶融組成物を延伸し、コレクターロールで捕集することにより多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体が得られる。吹きつける気体については、ノズルより押し出された樹脂が冷却され、固化することを抑制するため、通常のメルトブロー法と同様に高温に加熱した空気を用いれば良い。高温空気の温度については、前述した押出機の温度設定と同様にペレット状原料の溶融粘度により異なることは言うまでもないが、樹脂の固化によるノズル詰まりを防止する観点から、190〜240℃の範囲で適宜設定すれば良い。
次に、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体から、溶媒を除去する洗浄工程において、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を溶媒が可溶な洗浄溶剤に浸漬したり、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体に溶媒が可溶な洗浄溶剤を吹きつけるなどの方法で、多孔質繊維前駆体から溶媒を除去した後、乾燥し、多孔質繊維からなる不織布を得る。上記の洗浄溶剤については、使用した溶媒の種類にあわせて、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素、フッ化炭化水素、エーテル類、ケトン類などの易揮発性の溶剤から適宜選定すれば良い。なお、上述したとおり、多孔質繊維前駆体はポリエチレン樹脂と溶媒とを含んでおり、この多孔質繊維前駆体から溶媒を除去することで、多孔質繊維前駆体の溶媒が存在した部位が空洞となり、結果として多孔質繊維が得られる。
本発明の多孔質繊維からなる不織布は、本発明の目的である濾過性能、吸着性能、機械特性に優れた不織布を得るとの観点から、上述した多孔質繊維のみからなる不織布であることが好ましい。一方、他の性能(例えば、柔らかさ、弾力性、屈曲性など)をより優れたものとする観点から、上述した方法で製造した多孔質繊維に加え、中実繊維、中空繊維、海島繊維などの他の形態の繊維を含んでいても良い。これら繊維は上述した多孔質繊維同様にポリエチレンを主成分とするものであっても良く、他の成分から構成されるものでもあっても良い。必要とする性能に合わせて適宜選定すれば良い。
以下に本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、実施例中に示すペレット状原料の作製方法、メルトブロー不織布の製造方法、ならびに特性値の測定方法は次のとおりである。
A.ペレット状原料の作製
(1)加圧ニーダー「TD1−5M型」(株式会社トーシン社製)を用い、ポリエチレン樹脂と溶媒とを30分間混練した後、加圧ニーダーから取り出し、室温で冷却し、ポリエチレン樹脂と溶媒とからなる組成物を得た。
A.ペレット状原料の作製
(1)加圧ニーダー「TD1−5M型」(株式会社トーシン社製)を用い、ポリエチレン樹脂と溶媒とを30分間混練した後、加圧ニーダーから取り出し、室温で冷却し、ポリエチレン樹脂と溶媒とからなる組成物を得た。
(2)(1)項で作製したポリエチレン樹脂と溶媒とからなる組成物をプラスチック粉砕機UG−280KGS(株式会社ホーライ製)を用い所定の粒径に粉砕し、ペレット状原料を得た。
B.メルトブロー不織布の作製
(1)A項で作製したペレット状原料を原料ホッパーに投入し、押出機で溶融し、混練した後、ギアポンプで計量し、ダイへ供給、ノズルより押し出すとともに気体を吹きつけ延伸し、コレクターロールで捕集し、ポリオレフィン樹脂と溶媒からなる不織布を得た。なお、メルトブロー不織布の作製には、液体供給口が無い単軸押出機からなる小型メルトブロー不織布製造装置SK−K111660(新和工業株式会社製)を用いた。
(1)A項で作製したペレット状原料を原料ホッパーに投入し、押出機で溶融し、混練した後、ギアポンプで計量し、ダイへ供給、ノズルより押し出すとともに気体を吹きつけ延伸し、コレクターロールで捕集し、ポリオレフィン樹脂と溶媒からなる不織布を得た。なお、メルトブロー不織布の作製には、液体供給口が無い単軸押出機からなる小型メルトブロー不織布製造装置SK−K111660(新和工業株式会社製)を用いた。
(2)(1)項で得られたポリエチレン樹脂と溶媒からなる不織布を洗浄溶剤(MEK)に12時間浸漬した後、80℃×3時間乾燥し多孔質繊維からなる不織布を得た。
C.溶融粘度(MFR)
(1)規格:JIS K7210−2014に準拠
(2)測定方法:
i)Melt IndexerF−B01(株式会社東洋精機製作所製)を用い、測定温度190℃における溶融粘度を測定した。なお、荷重(シリンダ込み)は2.16kgとした。
ii)なお、紡糸温度における溶融粘度を測定する場合、測定温度を紡糸温度に設定し測定を実施した。
(1)規格:JIS K7210−2014に準拠
(2)測定方法:
i)Melt IndexerF−B01(株式会社東洋精機製作所製)を用い、測定温度190℃における溶融粘度を測定した。なお、荷重(シリンダ込み)は2.16kgとした。
ii)なお、紡糸温度における溶融粘度を測定する場合、測定温度を紡糸温度に設定し測定を実施した。
D.繊維断面の観察(多孔質の有無確認)
(1)B項で作製した不織布の繊維断面を走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用い、測定倍率:5000、10000、20000倍で断面を観察した。なお、観察前の前処理として繊維断面を白金(Pt)にて蒸着した。
(1)B項で作製した不織布の繊維断面を走査型電子顕微鏡S−4800(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用い、測定倍率:5000、10000、20000倍で断面を観察した。なお、観察前の前処理として繊維断面を白金(Pt)にて蒸着した。
[実施例1]
重量平均分子量2×106の超高分子量ポリエチレン35質量%、重量平均分子量5×105のポリエチレン65質量%からなるポリエチレン樹脂10質量%に、流動パラフィン(溶媒)90質量%を加えた樹脂組成物をペレット状原料(粒径:5mm、MFR:720g/10分)として用い、上述した方法で多孔質繊維からなる不織布を作製した。
重量平均分子量2×106の超高分子量ポリエチレン35質量%、重量平均分子量5×105のポリエチレン65質量%からなるポリエチレン樹脂10質量%に、流動パラフィン(溶媒)90質量%を加えた樹脂組成物をペレット状原料(粒径:5mm、MFR:720g/10分)として用い、上述した方法で多孔質繊維からなる不織布を作製した。
[実施例2]
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が12質量%であり、流動パラフィンの含有量が88質量%であるペレット状原料(粒径:5mm、MFR:290g/10分)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が12質量%であり、流動パラフィンの含有量が88質量%であるペレット状原料(粒径:5mm、MFR:290g/10分)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
[実施例3]
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が15質量%であり、流動パラフィンの含有量が85質量%であるペレット状原料(粒径:5mm、MFR:125g/10分)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が15質量%であり、流動パラフィンの含有量が85質量%であるペレット状原料(粒径:5mm、MFR:125g/10分)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
[比較例1]
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が20質量%であり、流動パラフィンの含有量が80質量%であるペレット状原料(粒径:5mm、MFR:63g/10分)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が20質量%であり、流動パラフィンの含有量が80質量%であるペレット状原料(粒径:5mm、MFR:63g/10分)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
[比較例2]
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が4質量%であり、流動パラフィンの含有量が96質量%であるペレット状原料を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
実施例1で用いたポリエチレン樹脂と同様の組成のポリエチレン樹脂の含有量が4質量%であり、流動パラフィンの含有量が96質量%であるペレット状原料を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で不織布を作製した。
実施例1〜3に記載の製造方法を採用することにより、液体供給口の無い単軸押出機からなるメルトブロー紡糸装置を使用した場合においても超高分子量のポリエチレン樹脂を含む多孔質繊維前駆体を紡糸することが可能であった。一方で、流動パラフィンの含有量を80質量%とした比較例1や、流動パラフィンの含有量を96質量%とした比較例2では、不織布を作製することができなかった(比較例2ではペレット状原料の作製が困難であった)。また、得られた不織布を構成する繊維に多孔質が形成されていることが確認できた。
Claims (6)
- ポリエチレン樹脂と溶媒とを含むペレット状原料を押出機に供給し、前記ペレット状原料を溶融および混練し溶融組成物を得る工程I、前記溶融組成物を紡糸ノズルより押し出すとともに前記溶融組成物に気体を吹きつけて前記溶融組成物を延伸し、多孔質繊維前駆体からなる不織布前駆体を得る工程II、ならびに前記多孔質繊維前駆体から溶媒を除去し多孔質繊維からなる不織布を得る洗浄工程IIIとをこの順に有し、
前記ポリエチレン樹脂が重量平均分子量(Mw)1×106以上の超高分子量ポリエチレンを含有し、
前記ペレット状原料が、ペレット状原料の全成分を100質量%とした場合に前記溶媒を85〜95質量%含有し、
前記溶媒が前記ポリエチレン樹脂と相溶性を有する、多孔質繊維からなる不織布の製造方法。 - 前記超高分子量ポリエチレンの含有量が、ペレット状原料に含まれる前記ポリエチレン樹脂を100質量%とした場合に5〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質繊維からなる不織布の製造方法。
- 前記ペレット状原料のMFR(190℃)が100g/10分以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質繊維からなる不織布の製造方法。
- 前記ペレット状原料の粒径が3〜15mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質繊維からなる不織布の製造方法。
- 前記ペレット状原料の表面にスリップ防止材が付着していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質繊維からなる不織布の製造方法。
- 前記スリップ防止材がポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質繊維からなる不織布の製造方法。
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Cited By (2)
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WO2022210961A1 (ja) * | 2021-03-30 | 2022-10-06 | 旭化成株式会社 | 樹脂ペレット組成物及びその製造方法、並びに微多孔膜の製造方法 |
CN116623369A (zh) * | 2023-05-16 | 2023-08-22 | 扬州广泰化纤有限公司 | 一种基于聚酯瓶片再生纤维的高吸油材料及其制备方法 |
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2019
- 2019-07-10 JP JP2019128113A patent/JP2021014643A/ja active Pending
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WO2022210961A1 (ja) * | 2021-03-30 | 2022-10-06 | 旭化成株式会社 | 樹脂ペレット組成物及びその製造方法、並びに微多孔膜の製造方法 |
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CN116623369B (zh) * | 2023-05-16 | 2023-10-31 | 扬州广泰化纤有限公司 | 一种基于聚酯瓶片再生纤维的高吸油材料及其制备方法 |
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