JP2021014476A - 遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用方法 - Google Patents

遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高濃度の遊離脂肪酸を含有する、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油などの非利用の油脂を、有効利用し得る遊離脂肪酸と油分とに分離し、分離された油脂由来の有効成分およびそれを含む有用物を有効利用する方法を提供することを課題とする。【解決手段】(A)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、前記遊離脂肪酸の塩形成化合物を加えて遊離脂肪酸塩を生成させ、生成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを形成させる工程、および(B)形成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを分離する工程を含み、分離された遊離脂肪酸塩と油分とを有効利用することを特徴とする遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用方法により、上記の課題を解決する。【選択図】図1

Description

本発明は、遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、高濃度の遊離脂肪酸を含有する、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油などの非利用の油脂を、有効利用し得る遊離脂肪酸と油分とに分離し、分離された油脂由来の有効成分およびそれを含む有用物を有効利用する方法に関する。
世界各地において、軽油代替のバイオディーゼル燃料(BDF(登録商標))が製造されてきた。
具体的には、ヨーロッパでは菜種油とひまわり油を原料として、アメリカでは大豆油を原料として、それぞれ800〜1000万トン/年の規模で、アジアではパーム油を原料として、タイ、マレーシアおよびインドネシアの全体で500万トン/年の規模でBDFが製造されてきた。しかし、これらの植物油を原料としたBDFの製造は、食物や飼料の価格高騰を招き、またこれらをBDFとして使用してもカーボンニュートラル(排出された炭酸ガスが光合成により植物に取り込まれるために、大気中の炭酸ガスの増加とは見做されない)によるCO2削減にはならず、かえって石油系軽油より炭酸ガスの排出が増加するために、気候変動緩和策にならないことが指摘され、適切なBDFの原料探索が始まった。
日本では業務用廃食用油を原料としたBDFの製造が少量ではあるが実施されている。しかし、業務用廃食用油は、質の悪い遊離脂肪酸を高濃度で含む安価な業務用廃食用油が大半を占め、これらを用いたBDFの製造は行われておらず、業務用廃食用油のほとんどがそのまま燃焼廃棄されてきた。
一方、グリーストラップ廃油や業務用廃食用油など未利用の高濃度遊離脂肪酸含有廃油を原料として、従来から行われているアルカリ触媒法でBDFを製造すると、大量の石鹸が副生し、これと生成したBDFの分離が不可能で高品質のBDFの製造ができなかった。
また、アジアでは1000万ヘクタールに及ぶ広大な面積でパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)が植林され、その種子(実)のほとんどが利用されずに廃棄されている。本発明者らはこの点に着目し、パラゴムノキの種子を原料としたBDFの製造について研究してきた。しかし、ゴムの種子に含まれる主な油分には、30〜50質量%と極めて高濃度の遊離脂肪酸が含まれ、従来から行われているアルカリ触媒法で直接ゴムの実油を原料としてBDFを製造すると、大量の石鹸が副生し、これと生成したBDFの分離が不可能で高品質のBDFの製造ができなかった。
高濃度の遊離脂肪酸を含有する油分を原料としたBDF製造法として、酵素を用いる方法、イオン交換樹脂を触媒とする方法などが既に開発されているが、これらの製造方法では反応速度が極めて遅く、50〜100時間の反応時間を要する。また反応時間100時間での収率は70〜80%であり、BDF燃料基準の純度96.5%を達成できないため、BDF燃料として使用するためには、最終生成物を蒸留しなければならない。
他方、BDF燃料に関連する様々な研究がなされている。
例えば、特開2010−116535号公報(特許文献1)には、(a)不均一エステル化触媒を、反応器内でエステル化に好適な条件下で(i)メタノールおよび(ii)70〜99.8重量%のトリグリセリドと0.2〜30重量%の遊離脂肪酸とを含むトリグリセリド混合物を含む反応混合物と接触させて、生成物流れを生じさせる工程;(b)生成物流れから水およびメタノールを分離して、乾燥生成物流れを生じさせる工程;(c)乾燥生成物流れをメタノールと接触させて、メタノール富化層およびトリグリセリド富化層を生じさせる工程;並びに(d)メタノール富化層を分離して、それを反応器に再循環させる工程を含む、メタノールを用いたトリグリセリド中の遊離脂肪酸のエステル化方法が開示されている。
特開2010−116535号公報
従来技術から明らかなように、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油など高濃度の遊離脂肪酸および油分を含有する油脂から、脂肪酸、金属石鹸、BDFなどの有用物を効率的に製造する方法はなく、このような技術の開発が望まれていた。
特許文献1のメタノールで遊離脂肪酸を溶かして油分と分離する方法では、遊離脂肪酸が効率よくメタノールに溶けず、分離が不十分であった。
そこで、本発明は、高濃度の遊離脂肪酸を含有する、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油などの非利用の油脂を、有効利用し得る遊離脂肪酸と油分とに分離し、分離された油脂由来の有効成分およびそれを含む有用物を有効利用する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に希薄な水酸化ナトリウム水溶液を加えて遊離脂肪酸からナトリウム石鹸を生成させ、ナトリウム石鹸を含有する水層と油分を含有する油層とを油水分離することにより、さらには得られた水層に理論量の金属の塩化物水溶液を加えて金属石鹸を生成させ、かつ金属石鹸を含有する固層と水層とを固液分離することにより、または遊離脂肪酸を含有する油脂にアンモニアを加えて、メタノールに可溶な遊離脂肪酸のアンモニウム塩を生成させ、アンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と油分を含有する下層とを液液分離することにより、脂肪酸、金属石鹸、BDFなどの有用物を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、(A)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、前記遊離脂肪酸の塩形成化合物を加えて遊離脂肪酸塩を生成させ、生成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを形成させる工程、および
(B)形成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを分離する工程
を含み、分離された遊離脂肪酸塩と油分とを有効利用することを特徴とする遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用方法が提供される。
本発明によれば、高濃度の遊離脂肪酸を含有する、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油などの非利用の油脂を、有効利用し得る遊離脂肪酸と油分とに分離し、分離された油脂由来の有効成分およびそれを含む有用物を有効利用する方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、現状では廃棄対象になっているグリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油を有効利用することができ、有用物として、BDFの原料として利用可能な油分および合成樹脂添加剤、滑剤、離型剤、潤滑剤などとして利用可能な金属石鹸、またはBDFの原料として利用可能な油分、高級化粧品油および脂肪酸を得ることができる。
本発明により回収された油分は、公知の技術、例えば、特開2014−40527号公報に記載の共溶媒法を用いて、純度98質量%以上のBDFを製造することができる。
また、本発明の遊離脂肪酸を含有する油脂の有効利用方法は、少なくとも次のいずれか1つの要件を満足する場合に、上記の効果をさらに発揮する。
(1)工程(A)が、遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、遊離脂肪酸の塩形成化合物として濃度0.05〜0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、ナトリウム石鹸を生成させ、生成されたナトリウム石鹸を含有する下層の水層と油分を含有する上層の油層とを形成させる工程(A−1)であり、かつ
工程(B)が、ナトリウム石鹸を含有する下層の水層と油分を含有する上層の油層とを油水分離する工程(B−1)である。
(2)工程(A)が、遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、遊離脂肪酸の塩形成化合物としてアンモニアまたはアンモニウム発生化合物のメタノール溶液を加えて、メタノールに可溶な遊離脂肪酸のアンモニウム塩を生成させ、生成されたアンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と油分を含有する下層とを形成させる工程(A−2)であり、かつ
工程(B)が、アンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と油分を含有する下層とを液液分離する工程(B−2)である。
(3)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂が、30〜50質量%の遊離脂肪酸を含有する。
(4)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂が、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油である。
(5)(C)工程(B−1)で分離された水層に、ナトリウム石鹸に対応する理論量のカルシウム、バリウム、亜鉛、リチウム、カドミウムおよびマグネシウムから選択される金属の塩化物水溶液を加えて、金属石鹸を生成させ、生成された金属石鹸を含有する固層と水層とを形成させる工程、および(D)金属石鹸を含有する固層と水層とを固液分離する工程をさらに含む。
(6)上記工程(C)が、撹拌下でかつ超音波照射下で行われる。
方法(2)による分離前後の油分中の脂肪酸濃度(滴定による測定値)を示す図である。 方法(2)によるメタノールの添加量に対する分離前後の油分中の脂肪酸濃度(滴定による測定値)を示す図である。
本発明の遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用方法は、
(A)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、前記遊離脂肪酸の塩形成化合物を加えて遊離脂肪酸塩を生成させ、生成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを形成させる工程、および
(B)形成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを分離する工程
を含み、分離された遊離脂肪酸塩と油分とを有効利用することを特徴とする。
本発明において、「遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用」とは、従来技術においては、効率的な分離が困難であった油脂中の遊離脂肪酸および油分を分離し、それら自体を、さらにはそれらの反応生成物を有効利用することを意味する。
[遊離脂肪酸および油分を含有する油脂]
本発明の方法において出発原料となる遊離脂肪酸および油分を含有する油脂は、例えば、遊離脂肪酸を5質量%以上含む油脂類であり、具体的には、菜種油、大豆油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、ゴムの実油などの植物油、動物油、魚油、それらの劣化油や廃油(業務用廃食用油を含む)、グリーストラップ廃油などが挙げられる。
遊離脂肪酸を含有する油脂は、上記の例示に限定されず、本発明では、これらの油脂の1種を単独で、または2種以上の油脂を組み合せて用いることができる。
遊離脂肪酸を含有する油脂は、30〜50質量%の遊離脂肪酸を含有するのが好ましい。
上記の濃度範囲で遊離脂肪酸および油分を含有する油脂は、従来技術においては有用物の効率的な抽出や分離技術がなく、廃棄処理されていたものが多く、本発明の方法により、これらの油脂を有効に利用することができる。
このような点から、遊離脂肪酸および油分を含有する油脂は、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油であるのが好ましい。
脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸、ヒドロキシル脂肪酸などのいずれであってもよく、炭素数12〜28の長鎖脂肪酸(高級脂肪酸)であるのが好ましい。
具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)などが挙げられる。
油脂は、その原料油が本来有するものであり、脂肪および/または脂肪油を意味し、これらは、上記脂肪酸のトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドなどのいずれであってもよい。
[遊離脂肪酸の塩形成化合物]
遊離脂肪酸の塩形成化合物は、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニアまたはアンモニウム発生化合物が挙げられ、詳細については、以下の実施形態において説明する。
以下、好ましい実施形態およびそれらの各工程について説明する。
[実施形態1]
本発明の方法の好ましい実施形態は、工程(A)が、遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、遊離脂肪酸の塩形成化合物として濃度0.05〜0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、ナトリウム石鹸を生成させ、生成されたナトリウム石鹸を含有する下層の水層と油分を含有する上層の油層とを形成させる工程(A−1)であり、かつ工程(B)が、ナトリウム石鹸を含有する下層の水層と油分を含有する上層の油層とを油水分離する工程(B−1)である。
この実施形態は、(C)工程(B−1)で分離された水層に、ナトリウム石鹸に対応する理論量のカルシウム、バリウム、亜鉛、リチウム、カドミウムおよびマグネシウムから選択される金属の塩化物水溶液を加えて、金属石鹸を生成させ、生成された金属石鹸を含有する固層と水層とを形成させる工程、および(D)金属石鹸を含有する固層と水層とを固液分離する工程をさらに含むのが好ましい。
上記の実施形態を以下「方法(1)」という。
(A−1)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、遊離脂肪酸の塩形成化合物として濃度0.05〜0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、ナトリウム石鹸を生成させ、生成されたナトリウム石鹸を含有する下層の水層と油分を含有する上層の油層とを形成させる。
水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、原料油脂の種類、すなわち含有成分の種類や含有量などにより適宜設定すればよいが、通常、上記の範囲であるのが好ましい。
濃度が0.05mol/L未満では、ナトリウム石鹸の生成反応が不十分になること、水酸化ナトリウム水溶液が多量に必要になり、装置の容量が大きくなるなど、操作性が悪くなることがある。一方、濃度が0.5mol/Lを超えると、油分の残量に影響を与えることがある。すなわち、反応溶液中に共存する油分が加水分解して油分の大半からも金属石鹸が生成することになる。
より好ましい水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、0.05〜0.2mol/Lである。
水酸化ナトリウム水溶液の使用量は、予め公知の方法により工程(a)の原料油脂中の遊離脂肪酸の含有量を測定しておき、このすべての遊離脂肪酸からナトリウム石鹸を生成するために必要な水酸化ナトリウムを基準として設定すればよい。
水酸化ナトリウムは、特に限定されず、例えば、工業製品として流通する固体(フレーク)および液体(水溶液)の苛性ソーダを工業用水などで所望の濃度に溶解または希釈して用いればよい。
反応条件は、原料油脂の種類、処理規模などにより適宜設定すればよく、通常、常温・常圧下で反応促進のために撹拌に付すのが好ましい。
また、層形成条件は、処理規模などにより適宜設定すればよく、反応混合物を一定時間静置するか、公知の装置を用いて層形成を促進してもよい。
(B−1)工程(A−1)で得られたナトリウム石鹸を含有する下層の水層と油分を含有する上層の油層とを油水分離する。
この操作は、公知の装置を用いて実施することができ、その条件は、処理規模などにより適宜設定すればよい。
(C)工程(B−1)で分離された水層に、ナトリウム石鹸に対応する理論量のカルシウム、バリウム、亜鉛、リチウム、カドミウムおよびマグネシウムから選択される金属の塩化物水溶液を加えて、金属石鹸を生成させ、生成された金属石鹸を含有する固層と水層とを形成させる。
金属の塩化物水溶液は、原料油脂の種類、得ようとする金属石鹸の種類などにより適宜選択すればよい。
塩化物の理論量は、予め公知の方法により工程(A−1)の原料油脂中の遊離脂肪酸の含有量を測定しておき、このすべての遊離脂肪酸からナトリウム石鹸が生成されたと仮定して、そのナトリウム石鹸から所望の金属石鹸を生成するために必要な量とするか、予め公知の方法により工程(B−1)のナトリウム石鹸の含有量を測定し、そのナトリウム石鹸から所望の金属石鹸を生成するために必要な量として算出すればよい。
金属の塩化物としては、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化リチウム、塩化カドミウムおよび塩化マグネシウムが挙げられ、通常、これらの塩化物の1種を単独で、場合によっては、2種以上の塩化物を組み合せて用いることができる。
反応条件は、ナトリウム石鹸の種類、処理規模などにより適宜設定すればよく、通常、常温・常圧下で反応促進のために撹拌に付すのが好ましい。
また、層形成条件は、処理規模などにより適宜設定すればよく、反応混合物を一定時間静置するか、公知の装置を用いて層形成を促進してもよい。
工程(C)は、反応混合液の本発明では、超音波照射下で行われるのが好ましい。
この超音波処理を併用することにより、反応混合液中でキャビテーションが生じ、物質移動が促進されて反応が促進され、反応時間を短縮させることができる。
超音波処理の条件は、特に限定されないが、本発明では、周波数10〜100kHz、好ましくは20〜40kHzの超音波を、照射強度0.5〜500W/cm2、好ましくは5〜200W/cm2、照射時間30分〜1時間で照射するのが好ましい。
周波数が10kHz未満では、超音波照射の効果が得られないことがある。一方、周波数が100kHzを超えると、反応溶液中に共存する水から生成するOHラジカルにより油分が分解して失われてしまうことがある。周波数が20〜40kHzである超音波を30分〜1時間照射することにより、生成される金属石鹸の粒径が小さく、均一に制御することができる。
(D)生成した金属石鹸を含有する固層と水層とを固液分離する。
この操作は、公知の装置を用いて実施することができ、その条件は、処理規模などにより適宜設定すればよい。
(得られる有用物とその用途)
上記の方法(1)によれば、有用物として、工程(B−1)で分離回収された、遊離脂肪酸が除去された油分と、工程(D)で分離回収された金属石鹸が得られる。
遊離脂肪酸が除去された油分は、公知の技術、例えば、特開2014−40527号公報に記載の共溶媒法を用いて、純度98質量%以上のBDFを製造することができる。
金属石鹸は、合成樹脂添加剤(例えば、塩化ビニル樹脂の加熱成型加工時の添加物)、滑剤、離型剤、潤滑剤などとして利用することができる。回収された金属石鹸は、そのまままたは必要に応じて精製処理に付し、また必要に応じて造粒または微粉化処理に付し、上記の用途に用いることができる。また、上記のように、工程(C)を超音波照射下で行うことにより、金属石鹸の均一な微細粒子を得ることができる。
金属石鹸は、従来から飽和脂肪酸と金属酸化物または金属水酸化物とを原料として製造されているが、本発明によれば、非利用の油脂原料から製造することができるので、金属石鹸を安価に提供することができる。
[実施形態2]
本発明の方法の好ましい他の実施形態は、工程(A)が、遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、遊離脂肪酸の塩形成化合物としてアンモニアまたはアンモニウム発生化合物のメタノール溶液を加えて、メタノールに可溶な遊離脂肪酸のアンモニウム塩を生成させ、生成されたアンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と油分を含有する下層とを形成させる工程(A−2)であり、かつ工程(B)が、アンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と油分を含有する下層とを液液分離する工程(B−2)である。
上記の実施形態を以下「方法(2)」という。
(A−2)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、遊離脂肪酸の塩形成化合物としてアンモニアまたはアンモニウム発生化合物のメタノール溶液を加えて、メタノールに可溶な遊離脂肪酸のアンモニウム塩を生成させ、生成されたアンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と油分を含有する下層とを形成させる。
アンモニウム発生化合物は、その水溶液中でアンモニウムを発生し得る化合物であり、具体的には、アンモニア水、ヒドロキシルアミン、尿素およびアルキルアミンなどの水溶液が挙げられる。
メタノール溶液は、メタノールにアンモニア水またはアンモニウム発生化合物の水溶液を加えて溶解させることにより得ることができる。
アンモニア水またはアンモニウム発生化合物の使用量は、アンモニア換算で、予め公知の方法により工程(A−2)の原料油脂中の遊離脂肪酸の含有量を測定しておき、このすべての遊離脂肪酸からアンモニウム塩を生成するために必要なアンモニアを基準として設定すればよい。すなわち、遊離脂肪酸とアンモニアがモル比で1:1になるように設定すればよい。
脂肪酸単独の原料からの脂肪酸アンモニウム塩の生成では、アンモニア濃度は殆ど関係ないが、本発明の方法では油分と共存する脂肪酸を原料とするため、脂肪酸とは反応し、油分とは反応しない濃度域のアンモニアを用いなければならない。
アンモニアまたはアンモニウム発生化合物のメタノール溶液の濃度は、原料油脂の種類、すなわち含有成分の種類や含有量などにより適宜設定すればよく、通常、1〜2mol/Lであるのが好ましい。
濃度が1mol/L未満では、アンモニウム塩の生成反応が不十分になること、メタノール溶液が多量に必要になり、装置の容量が大きくなるなど、操作性が悪くなることがある。一方、濃度が2mol/Lを超えると、ゆっくりではあるが、油分の加水分解が起こることがある。
より好ましいメタノール溶液の濃度は、1.0〜1.5mol/Lである。
反応条件は、原料油脂の種類、処理規模などにより適宜設定すればよく、通常、常温・常圧下で反応促進のために撹拌に付すのが好ましい。
また、層形成条件は、処理規模などにより適宜設定すればよく、反応混合物を一定時間静置するか、公知の装置を用いて層形成を促進してもよい。
(B−2)工程(A−2)で得られたアンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と油分を含有する下層とを液液分離する。
この操作は、公知の装置を用いて実施することができ、その条件は、処理規模などにより適宜設定すればよい。
(得られる有用物とその用途)
上記の方法(2)によれば、有用物として、工程(B−2)で分離回収された遊離脂肪酸のアンモニウム塩と遊離脂肪酸が除去された油分が得られる。
回収された遊離脂肪酸のアンモニウム塩は、リン酸水溶液を加えて、脂肪酸とした後、ナトリウム石鹸や金属石鹸の原料として、脂肪酸として、食品添加物、工業用薬品として用いることができる。
遊離脂肪酸が除去された油分は、通常、そのままでBDF基準を達成する高純度のBDF原料として用いることができ、必要に応じて公知の方法により、後処理に付してもよい。
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
[実施例1−1]
方法(1):金属石鹸生成を利用した脂肪酸と油分の分離
高濃度で遊離脂肪酸を含有する油脂原料として、堺市内で回収した業務用廃食用油(遊離脂肪酸濃度35%)から金属石鹸を生成させ、脂肪酸と油分とを分離した。
まず、業務用廃食用油100g(遊離脂肪酸濃度35%)に、その油分に含有する脂肪酸のカルボン酸のほぼすべてがナトリウム塩(ナトリウム石鹸)になるように、濃度0.2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液620mLを機械撹拌下に加え、一旦、脂肪酸からナトリウム石鹸を生成させた。油分に含有する脂肪酸のカルボン酸の量は、予め水酸化カリウム水溶液を用いた滴定によって測定し、水酸化ナトリウムの量を求めておいた。
次いで、反応混合液の下層のナトリウム石鹸を含む水層と上層の油層を油水分離した。
分離した水層に、濃度1.0mol/Lの塩化カルシウム水溶液124mLを機械撹拌下、周波数25kHz、照射強度5W/cm2の超音波の照射下に加え、金属石鹸を生成させた。塩化カルシウムの量は、先の反応で脂肪酸のカルボン酸のすべてがナトリウム塩になったものと仮定して決定した。
30分後に、生成した金属石鹸を含有する固層と水層とをろ過により固液分離した。
次いで、分離した固形の金属石鹸を水30mLで3回洗浄し、温度80℃で60分間乾燥後、秤量した。金属石鹸の生成量は、カルシウム石鹸として38.2gで、純度は約98%で、オレイン酸カルシウムを基準とする生成効率(収率)は94%であった。
一方、分離した油層を水30mLで2回、メタノール20mLで1回洗浄し(このメタノールは回収し、油分のトランスエステル化によるメチルエステル生成に用いた、温度60℃で30分間乾燥後、秤量した。得られた油分は62g(理論量65g)で、アセトン/アセトニトリル(70/30)を溶離液とした高速液体クロマトグラフィーによりその含有成分を定量した。
また、油脂原料として、菜種油(和光純薬工業株式会社製、製品名:ナタネ油)および大豆油(和光純薬工業株式会社製、製品名:大豆油)を用い、同様にして処理および分析を行った。
得られた油分の分析結果を表1に示す。
表1の結果から次のことがわかる。
・業務用廃食用油は、遊離脂肪酸の濃度が極めて高い。従来、再利用の障害となるため、焼却廃棄しか処理の方法がなかった高濃度遊離脂肪酸含有廃油が、本発明の方法によって、高価な金属石鹸の原料になること
・菜種油から得られた油分は、遊離脂肪酸濃度がほぼ0で、トリグリセリドの内飽和脂肪酸濃度が極めて低く、オレイン酸が64%と主成分で、リノール酸が22%であること
・大豆油から得られた油分は、逆に飽和脂肪酸のパルミチン酸が11%程度含まれ、リノール酸が56%と主成分で、オレイン酸が23%であること
金属石鹸の金属の種類を変えるために、塩化カルシウムを塩化バリウム、塩化亜鉛、塩化リチウム、塩化カドミウムおよび塩化マグネシウムから選択される金属塩化物に代え、同様にして処理および分析を行ったところ、金属石鹸の生成量はそれぞれ34.2(リチウム石鹸)〜50.3(バリウム石鹸)gで、純度は98%以上で、収率は93〜96%であった。
[実施例1−2]
方法(1):金属石鹸生成を利用した脂肪酸と油分の分離、超音波照射の効果
超音波照射を表2に記載の条件にすること以外は、業務用廃食用油を用いた実施例1−1と同様にして処理および分析を行った。
得られた結果を、参考値として市販の金属石鹸の融点mp(℃)と共に表2に示す。
表2の結果から次のことがわかる。
・比較的長波長の周波数20kHzの超音波を照射した場合には、金属石鹸の粒径が小さく、しかも均一に制御できること
・周波数20kHzの超音波でも、照射時間が長くなると、金属石鹸の粒径がより小さくなること
・比較的短波長の周波数100kHzの超音波を比較的長時間照射した場合には、共存する油分が分解すること
・周波数20kHzの超音波を照射時間30分〜60分(1時間)照射するのが好適であること
[実施例1−3]
方法(1):金属石鹸生成を利用した脂肪酸と油分の分離、水酸化ナトリウムの濃度の影響
水酸化ナトリウム水溶液の濃度を表3に記載の条件にすること以外は、業務用廃食用油および塩化カルシウムを用いた実施例1−1と同様にして処理し、初期(原料油脂)の脂肪酸に対する金属石鹸の生成量および油分の残存量を分析した。
得られた結果を、表3に示す。
表3の結果から次のことがわかる。
・脂肪酸と油分とが共存する油脂原料に、比較的高濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いると、アルカリと脂肪酸との反応時に、共存する油分が加水分解し、最終的には油分由来の金属石鹸が生成されること
・水酸化ナトリウム水溶液の濃度が1mol/Lを超えると、油分の残量に影響を与えること
・水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.5mol/L以下にするのが好適であること
[実施例2−1]
方法(2):高濃度遊離脂肪酸を含む油脂から脂肪酸と油分の分離
遊離脂肪酸だけをメタノールに可溶なアンモニウム塩にして、メタノール溶液として、メタノールに溶けない油分と分離した。
具体的には、遊離脂肪酸と油分とをモル比1:1で含む試料30gに、アンモニア水のメタノール溶液を加えて5分間撹拌した。アンモニア水のメタノール溶液は、予め遊離脂肪酸とアンモニアとがモル比で1:1になるようにメタノール100mLにアンモニアを加えて調製しておいた(アンモニア濃度2.0mol/L、メタノール濃度20.0mol/L)。撹拌後、混合溶液を約1時間静置して、遊離脂肪酸のアンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と、主としてトリグリセリドの油分を含有する下層とを分液ロートを用いて液液分離した。
上層および下層に分離したそれぞれの溶液に濃度1.8mol/Lのリン酸水溶液30mLを加えて5分間撹拌した。上層の溶液は、上部の脂肪酸層と下部のメタノールを含む水層とに分離し、脂肪酸層をイオン交換水で3回洗浄した。下層の油分も同様にイオン交換水で2回とメタノールで1回洗浄した。2回洗浄後の洗浄水のpHは、それぞれほぼ6.0〜7.0の間であった。
得られた脂肪酸および油分をそれぞれ温度80〜90℃の減圧下で乾燥させた。
それぞれ下記の測定および分析により、脂肪酸の回収率、酸価および遊離脂肪酸含有量を求めた。
脂肪酸の回収率RE(%)を次式により求めた。
式中、W分子ノ上層中ノ脂肪酸量は、最終的に得られた乾燥脂肪酸量(g)であり、W油分中ノ脂肪酸量は、試料中の最初に含まれていた脂肪酸の全量(g)である
酸価AV(mgKOH/g)を、フェノールフタレインを指示薬として得られた酸―塩基滴定の結果に基づいて次式により求めた。
式中、V試料は、試料に対して滴定で消費した水酸化カリウム水溶液の滴定量(mL)であり、Vブランクは、ブランク溶液に対する水酸化カリウム水溶液の滴定量(mL)であり、CKOHは、滴定に用いたKOH水溶液の濃度(N)であり、MKOHは、KOHのモル重量(g/mol)であり、W試料は、試料の重量(g)である。
遊離脂肪酸含有量FFA(%)を、式1の酸価AVに基づいて次式により求めた。
式中、M試料は、試料中の脂肪酸の平均分子量(g/mol)であり、MKOHは、KOHの分子量56.11である。
最終的に得られた乾燥脂肪酸量33.8g、試料中の最初に含まれていた脂肪酸の全量35.0gから、脂肪酸の回収率REは、96.6%であった。
試料に対して滴定で消費した0.05N水酸化カリウム水溶液の滴定量248.8mL、ブランク溶液に対する水酸化カリウム水溶液の滴定量0.2mL、滴定に用いたKOH水溶液の濃度0.05N、KOHのモル重量56.1g/molおよび試料の重量は元の試料100gをイソプロパノールで百倍希釈したので1.0gから、酸価AVは、698mgKOH/gであった。
上記の酸価AV、試料中の脂肪酸の平均分子量282g/molおよびKOHの分子量56.11から、遊離脂肪酸含有量FFAは、35.0%であった。
以上の結果から次のことがわかる。
・通常、食用油は長期間使用すると遊離脂肪酸量が増加し、業務用廃食用油には遊離脂肪酸が15%から25%も含まれている。一方、ゴムの実油は未使用のものでも、30%から多い時には50%もの遊離脂肪酸が含まれている。したがって、従来からこれらをBDF原料としては利用できないとされ、廃棄されていた。しかし、本発明の技術によって、遊離脂肪酸が脂肪酸または金属石鹸として油分と液液または固液分離されて、高純度の油分を回収することができるので、高濃度で遊離脂肪酸を含む油分の利用が大幅に広がること
[参考例1]
ひまわり油とひまわり油+オレイン酸の混合物中の脂肪酸濃度
ひまわり油(和光純薬工業株式会社製、製品名:ヒマワリ油)および混合比1:1のひまわり油とオレイン酸(和光純薬工業株式会社製、製品名:オレイン酸)との混合物中における脂肪酸濃度(量)を、滴定およびHPLC−RID(示差屈折率検出器を用いた液体クロマトグラフ)を用いて測定した。
得られた結果を表4に示す。
[参考例2]
ひまわり油とオレイン酸のそれぞれの各種溶媒への溶解性
表5に示す各種溶媒10mLに、参考例1と同じ、油分(ひまわり油)または脂肪酸(オレイン酸)5gを加えて、5分間振とうし、1時間静置後の溶液を目視観察し、その状態を次の基準で評価した。
○:溶液が完全に均一になって互いに溶解する場合
△:不均一であるがほとんど溶解している場合
×:溶液が不均一で全く溶解しない場合
表5の結果から、メタノールとエタノールは、脂肪酸が溶解する一方で、油分はほとんど溶解しないことから、脂肪酸を回収するために最適の溶媒であることがわかる。
[参考例3]
ひまわり油+オレイン酸の混合物のメタノールの影響
メタノールまたはエタノールと、参考例1と同じ、混合比1:1のひまわり油とオレイン酸の混合物とを、合計量が30.0gになるように各種混合比で、それぞれ容量50mLのエーレンマイヤーフラスコに入れ、混合した後、静置してその状態を目視観察した。
メタノールと混合物との混合比が1:3〜2:3では溶液は均一で、分離は起こらないが、メタノールの量を増やすにつれて、徐々に分離が進行し、混合比が1:1のときに完全に分離した。一方、エタノールでは、混合比が1:1のときでも、均一溶液が維持され、分離が起こらなかった。この結果から、油分と脂肪酸の分離にはメタノールを用いることとした。
[実施例2−2]
方法(2):高濃度遊離脂肪酸を含む油脂から脂肪酸と油分の分離、油分と脂肪酸の分離へのアンモニアの添加効果
アンモニア水を添加しないこと以外は、実施例2−1と同様に処理し、液液分離した油分を含有する下層中の脂肪酸の含有量を、滴定およびHPLC−RIDにより測定した。
また、アンモニア水を添加する実施例2−1を追試し、同様に脂肪酸の含有量を測定した。
得られた結果を表6および図1に示す。
図1には、アンモニアの添加および無添加について、分離前後の脂肪酸の含有量(滴定値:%)を示す。
アンモニアの添加および無添加について、分離後の油層および脂肪酸層の、重量(g)、脂肪酸成分濃度(%)ならびにTG(トリグリセリド)、DG(ジグリセリド)およびFFA(遊離脂肪酸)の重量(g)を定量した。
また、上記の結果から初期(原料油脂)の脂肪酸および油分に対する、脂肪酸中の脂肪酸および油層中の油分の回収率(%)を求めた。
得られた結果を表7および8に示す。
表7および8の結果から次のことがわかる。
・メタノールを用いれば80%程度の回収率で脂肪酸を回収できるが、脂肪酸をアンモニウム塩とした場合にはその回収率が95%を超え、メタノールでアンモニウム塩を溶解し、メタノールに溶解しない油分と液液分離すれば、油分中の脂肪酸濃度は3.0%以下になり、その後のBDF製造に酸触媒―アルカリ触媒の2段で反応をする必要がなく、アルカリ触媒法だけで高品質のBDFを製造することが可能になること
・ゴムの実油や、広東アブラギリ油のように、不飽和の脂肪酸を多く含む油は、共存する脂肪酸の濃度によって、化粧品油としての販売価格が大きく異なり、例えば、エキストラバージンオリーブオイルは遊離脂肪酸含有量が0.8%以下でその価格が100mLで1000円以上で、バージンオリーブオイルは遊離脂肪酸含有量が3.0%以下でその価格が100mLで300円程度である。本発明の方法によれば、様々な油脂をその性状に応じて処理できる可能性があること
[実施例2−3]
方法(2):高濃度遊離脂肪酸を含む油脂から脂肪酸と油分の分離、添加メタノール量の分離への影響
遊離脂肪酸とアンモニアとのモル比1:1を固定し、メタノールの添加量をそれぞれ10mL、20mL、30mLおよび40mLにすること以外は、実施例2−1と同様に処理し、液液分離した油分を含有する下層中の脂肪酸の含有量を、滴定およびHPLC−RIDにより測定した。
アンモニアの添加および無添加について、分離後の油層および脂肪酸層の、重量(g)、脂肪酸成分濃度(%)ならびにTG(トリグリセリド)、DG(ジグリセリド)およびFFA(遊離脂肪酸)の重量(g)を定量した。
また、上記の結果から初期(原料油脂)の脂肪酸および油分に対する、脂肪酸中の脂肪酸および油層中の油分の回収率(%)を求めた。
得られた結果を表9〜11および図2に示す。
図2には、各メタノールの添加量について、分離前後の脂肪酸の含有量(滴定値:%)および残留脂肪酸の含有量(%)を示す。
表9〜11の結果から次のことがわかる。
・メタノールの添加量を多くすれば脂肪酸回収率が増加し、従って高純度の油分が多く回収されることになること
・一方、多量のメタノールを消費することは経済的に不利であり、メタノールの最適な添加量は30mLであること
・ここで用いたメタノールを、脂肪酸アンモニウム塩を乾燥するときに回収して、後段の油からBDFを製造する場合にメタノール反応物として用いることができること
なお、回収したメタノールは少量の水分を含んでいるが、共溶媒法によるBDFの製造法では、2〜5%の水分の含有量ではBDFの生成速度にほとんど影響しない。
[実施例2−4]
方法(2):高濃度遊離脂肪酸を含む油脂から脂肪酸と油分の分離、アンモニアの濃度の影響
アンモニアの濃度を表12に記載の条件にすること以外は、業務用廃食用油を用いた実施例2−1と同様にして処理し、初期(原料油脂)の脂肪酸に対する脂肪酸アンモニウム塩の収率(%)および油分の加水分解量(常温、1時間撹拌後:%)を分析した。
得られた結果を、表12に示す。
表12の結果から次のことがわかる。
・濃アンモニア水溶液は勿論のこと、5mol/L以上の濃度のアンモニア水溶液を用いると、ゆっくりではあるが油分の加水分解が起こること
・アンモニアの濃度を2mol/L以下にするのが好適であること

Claims (7)

  1. (A)遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、前記遊離脂肪酸の塩形成化合物を加えて遊離脂肪酸塩を生成させ、生成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを形成させる工程、および
    (B)形成された遊離脂肪酸塩を含む層と前記油分を含む層とを分離する工程
    を含み、分離された遊離脂肪酸塩と油分とを有効利用することを特徴とする遊離脂肪酸および油分を含有する油脂の有効利用方法。
  2. 前記工程(A)が、前記遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、前記遊離脂肪酸の塩形成化合物として濃度0.05〜0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、ナトリウム石鹸を生成させ、生成されたナトリウム石鹸を含有する下層の水層と前記油分を含有する上層の油層とを形成させる工程(A−1)であり、かつ
    前記工程(B)が、前記ナトリウム石鹸を含有する下層の水層と前記油分を含有する上層の油層とを油水分離する工程(B−1)である請求項1に記載の油脂の有効利用方法。
  3. 前記工程(A)が、前記遊離脂肪酸および油分を含有する油脂に、前記遊離脂肪酸の塩形成化合物としてアンモニアまたはアンモニウム発生化合物のメタノール溶液を加えて、メタノールに可溶な遊離脂肪酸のアンモニウム塩を生成させ、生成されたアンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と前記油分を含有する下層とを形成させる工程(A−2)であり、かつ
    前記工程(B)が、前記アンモニウム塩のメタノール溶液を含有する上層と前記油分を含有する下層とを液液分離する工程(B−2)である請求項1に記載の油脂の有効利用方法。
  4. 前記遊離脂肪酸および油分を含有する油脂が、30〜50質量%の遊離脂肪酸を含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の油脂の有効利用方法。
  5. 前記遊離脂肪酸および油分を含有する油脂が、グリーストラップ廃油、ゴムの実油および業務用廃食用油である請求項1〜4のいずれか1つに記載の油脂の有効利用方法。
  6. (C)前記工程(B−1)で分離された水層に、前記ナトリウム石鹸に対応する理論量のカルシウム、バリウム、亜鉛、リチウム、カドミウムおよびマグネシウムから選択される金属の塩化物水溶液を加えて、金属石鹸を生成させ、生成された金属石鹸を含有する固層と水層とを形成させる工程、および
    (D)前記金属石鹸を含有する固層と水層とを固液分離する工程
    をさらに含む請求項2、4および5のいずれか1つに記載の油脂の有効利用方法。
  7. 前記工程(C)が、撹拌下でかつ超音波照射下で行われる請求項6に記載の油脂の有効利用方法。
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