JP2021013373A - 微生物膜透過剤、複合体、これを用いた微生物細胞に化合物を送達する方法、殺菌剤、抗菌剤及びラベル化剤 - Google Patents

微生物膜透過剤、複合体、これを用いた微生物細胞に化合物を送達する方法、殺菌剤、抗菌剤及びラベル化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】大腸菌などの微生物の細胞膜を、高い効率及び低い毒性で膜透過し、目的の化合物を微生物の細胞内に導入することのできる微生物膜透過剤を提供する。【解決手段】4〜26個のそれぞれ独立して選択される第一の膜透過性ペプチド、及び、第二の膜透過性ペプチドの少なくとも一方を含む微生物膜透過剤。かかる微生物膜透過剤が大腸菌などの細菌の細胞膜を効率的に透過し、細胞毒性が低い。透過剤を利用した殺菌剤は、例えば、防腐用、殺菌用、滅菌用、農園芸用、医療用、消毒用殺菌用等として用いることができる。【選択図】図1

Description

本開示は、微生物膜透過剤、複合体、これを用いた微生物細胞に化合物を送達する方法、殺菌剤、抗菌剤及びラベル化剤に関する。
膜透過性物質は、細胞内への機能性分子や薬剤の導入を可能にする有効な分子ツールであり、生化学や薬学に関する様々な研究分野で用いられ、その重要性及び必要性は高まっている。動物細胞に対して高い効率で膜透過する物質の探索は活発に行われており、例えば動物細胞膜を透過するペプチド(cell-penetrating peptides, CPP)の報告が多い。CPPの例として、膜透過性ペプチドとしてアルギニンオリゴマー及びリジンオリゴマーを分子と結合させることにより細胞に分子を取り込ませる方法が報告されている(特許文献1)。
一方、微生物などの原核細胞に対する膜透過性物質については、研究例が少ない。動物細胞と微生物細胞は、その膜構造が大きく異なる。具体的に、動物細胞は細胞膜しか有しないが、微生物細胞は細胞膜の外側にペプチドグリカン層を有する。さらにグラム陰性菌は、ペプチドグリカン層の外側に外膜を有している。これらの構造の違いと、微生物が有する多重膜構造、つまり物質の透過を阻む構造を考慮すると、動物細胞膜透過性物質と微生物膜透過性物質の間に単純な共通性があるとは考えられず、微生物膜透過性物質は、動物細胞膜透過性物質とは独立して開発される必要がある。
例えば、動物細胞の細胞透過性ペプチドとして知られる(RFF)(アルギニン、フェニルアラニン及びフェニルアラニンの3回繰り返しを含む9アミノ酸ペプチド)、K9(9個のリジンからなるペプチド)及びR9(9個のアルギニンからなるペプチド)は、微生物細胞への機能性物質の導入効率が低く、大腸菌に対する導入効率(実測値)はそれぞれ4.0%、40.3%及び68.2%に過ぎない。また、今まで原核細胞に対して導入率が良いとされていた(KFF)K(リジン、フェニルアラニン及びフェニルアラニンの3回繰り返しを含む9アミノ酸ペプチド)も、大腸菌への導入効率(実測値)は12.8%程度であった。
大腸菌に対する細胞透過性ペプチド(CPP)についての報告(非特許文献1)もあるが、これは導入対象の大腸菌細胞を前処理して物質を取り込みやすい状態(コンピテントセル)とした後に細胞透過性ペプチドと結合した物質を導入している。
特表昭55−500053号公報
K. Oikawa、他4名、ACS Omega、アメリカ化学会(米国)、2018年12月、第3巻、第12号、p.16489-16499
そこで本開示は、大腸菌などの微生物の細胞膜を、高い効率及び低い毒性で膜透過し、目的の化合物を微生物の細胞内に導入することのできる微生物膜透過剤、複合体、これを用いた微生物細胞に化合物を送達する方法、殺菌剤、抗菌剤及びラベル化剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明者は、かかる微生物膜透過剤が大腸菌などの細菌の細胞膜を効率的に透過すること、細胞毒性が低いことを見出し、本開示を完成するに至った。
本開示は、例えば以下の態様を包含する:
[1] 4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含む第一の膜透過性ペプチド、及び、式(II)のアミノ酸残基を含む第二の膜透過性ペプチドの少なくとも一方を含む微生物膜透過剤。

〔式(I)及び式(II)中、nは独立して1〜3の整数であり、アミノ酸残基は(R)体又は(S)体のいずれであってもよい。式(II)中、mは1〜5の整数、R及びRはそれぞれ独立に疎水性置換基を表す。式(I)及び式(II)中、*で表される部位は、隣接する部位との結合部位を表す。〕
[2] 第一の膜透過性ペプチドが、(S)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(R)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(S)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(R)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(S)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)及び(R)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)からなる群より独立して選択される4〜26個の連続したアミノ酸残基からなる膜透過性ペプチドを含む、[1]に記載の微生物膜透過剤。
[3] 前記第一の膜透過性ペプチドが、少なくとも4個の連続したOrn又はDabを含む、[1]又は[2]に記載の微生物膜透過剤。
[4] 前記第一の膜透過性ペプチドが、5〜26個の連続したOrn又はDabからなるものである、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤。
[5] 前記第一の膜透過性ペプチドが、5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Orn又は5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Dabからなるものである、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤。
[6] 前記第一の膜透過性ペプチドが、6〜26個の連続した同じアミノ酸残基からなるものである、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤。
[7] 前記第一の膜透過性ペプチド又は前記第二の膜透過性ペプチドが、前記式(I)のアミノ酸残基に加えて、1若しくは数個のリジン(Lys)残基若しくはアルギニン(Arg)残基を含む、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤。
[8] 前記第一の膜透過性ペプチドが、前記4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基からなるブロックを複数有し、前記複数のブロックの間の少なくとも1カ所に、前記式(I)のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を1個又は2個以上連続して含む、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤。
[9] 前記式(I)のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基が、置換基として標識分子を有するリジン(Lys)残基、又は、置換基として標識分子を有するアルギニン(Arg)残基を含む、[8]に記載の微生物膜透過剤。
[10] 前記微生物が、真正細菌及び古細菌を含む原核生物、並びに微細藻類、原生生物、菌類及び粘菌を含む真核生物からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]〜[9]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤。
[11] 前記微生物が、エンテロバクター科、シネコシスティス属、シュードモナス属、アシネトバクター属又はバチラス属の細菌である、[1]〜[10]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤。
[12] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤と化合物とを含む複合体。
[13] 前記化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチド核酸、無機物、有機金属化合物、有機化合物、高分子、ナノ粒子、ミセル及びリポソームを含む分子集合体、糖並びに標識物質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[12]に記載の複合体。
[14] 前記微生物膜透過剤と化合物とが直接的に又はリンカーを介して連結している、[12]又は[13]に記載の複合体。
[15] 前記リンカーが、1〜10個の連続したアミノ酸残基からなるものである、[14]に記載の複合体。
[16] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤と化合物とを含む複合体を微生物細胞と接触させることを含む、微生物細胞に化合物を送達する方法。
[17] 前記化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチド核酸、無機物、有機金属化合物、有機化合物、高分子、ナノ粒子、糖及び標識物質、並びに、ミセル及びリポソームを含む分子集合体、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、[16]に記載の方法。
[18] 前記微生物が、真正細菌及び古細菌を含む原核生物、並びに微細藻類、原生生物、菌類及び粘菌を含む真核生物からなる群より選択される少なくとも1種である、[16]又は[17]に記載の方法。
[19] 前記微生物が、エンテロバクター科、シネコシスティス属、シュードモナス属、アシネトバクター属又はバチラス属の細菌である、[16]〜[18]のいずれか1つに記載の方法。
[20] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤を含む、殺菌剤。
[21] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤を含む、抗菌剤。
[22] [1]〜[11]のいずれか1つに記載の微生物膜透過剤を含む、ラベル化剤。
本開示によれば、大腸菌などの微生物の細胞膜を、高い効率及び低い毒性で膜透過し、目的の化合物を微生物の細胞内に導入することのできる微生物膜透過剤、複合体、これを用いた微生物細胞に化合物を送達する方法、殺菌剤、抗菌剤及びラベル化剤が提供される。
本開示の複合体Dab9-K-FAM及びOrn9-K-FAMの構造を示す図である。 グラム陰性細菌である大腸菌における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 本開示の複合体(Dab9-K-FAM)が導入された生菌対数を表すフローサイトメトリーの結果である。 本開示の複合体(Dab9-K-FAM)が導入された生菌対数を表すフローサイトメトリーの結果である。 グラム陰性細菌であるエルシニア・ベルコビエリ(Yersinia bercovieri)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陽性細菌であるバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)を示す。 種々の膜透過性ペプチドの膜透過率(黒塗り記号)及び死細胞の割合(白抜き記号)を示すグラフである。 グラム陰性細菌であるエルシニア・ベルコビエリ(Yersinia bercovieri)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるセラチア・グリメシー(Serratia grimesii)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるトラブルシエラ・グアメンシス(Trabulsiella guamensis)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるエンテロバクター・ホルマエチェイ(Enterobacter hormaechei)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるプロテウス・ハウセリ(Proteus hauseri)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるアシネトバクター・ラジオレジステンス(Acinetobacter radioresistens)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるシネコシスティス(Synechocystis PCC6803)における本開示の複合体(Dab9-K-FAM)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌である大腸菌における本開示の複合体(Dab9-K-FAM及びDab4-K(-FAM)-Dab5)の膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 本開示の複合体(Dab4-K(-FAM)-Dab5)の構造を示す図である。 グラム陰性細菌であるアシネトバクター・ラジオレジステンス(Acinetobacter radioresistens)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるエンテロバクター・ホルマエチェイ(Enterobacter hormaechei)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌である大腸菌(Escherichia coil)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるプロテウス・ハウセリ(Proteus hauseri)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるセラチア・グリメシー(Serratia grimesii)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 グラム陰性細菌であるトラブルシエラ・グアメンシス(Trabulsiella guamensis)における本開示の複合体(DabFF)3K-FAMの膜透過性を示す蛍光顕微鏡像(上)と菌体写真(下)である。 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞に対する本開示の複合体Dab9-K-FAMの経時的及び濃度依存的な細胞毒性を示す顕微鏡写真である。 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞に対する本開示の複合体Orn9-K-FAMの経時的及び濃度依存的な細胞毒性を示す顕微鏡写真である。 本開示の複合体((DabFF)3-K-FAM)の構造を示す図である。
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示において、膜透過性ペプチドとは、微生物の細胞膜を透過して菌体内に侵入する能力を有するペプチドを意味する。
本開示において、「Dap」は「Dpr」と表わされることもあり、「Dab」は「Dbu」と表わされることもある。
本開示において、「Dab9-K-FAM」と「(Dab)9K-FAM」は同一の分子である。
本開示において、「Orn9-K-FAM」と「(Orn)9K-FAM」は同一の分子である。
本開示における殺菌剤の概念には、一般的に殺菌剤と呼ばれているものだけでなく、いわゆる滅菌剤、除菌剤、消毒剤の概念も含まれる。
本開示において抗菌剤の概念には、一般的に抗菌剤と呼ばれているものだけでなく、いわゆる制菌剤、静菌剤、防カビ剤等の概念も含まれる。
本開示において、「微生物膜透過剤」は、「微生物の細胞膜、及び、前記微生物の細胞膜上に存在するペプチドグリカン層、を透過する透過剤」のことを表す。前記微生物の細胞膜には、芽胞殻及び芽胞細胞膜も含まれる。
≪微生物膜透過剤≫
本開示は、膜透過性ペプチドからなる新規の微生物膜透過剤及びその用途に関する。
本開示の微生物透過剤は、4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含む第一の膜透過性ペプチド、及び、式(II)のアミノ酸残基を含む第二の膜透過性ペプチドの少なくとも一方を含む。
式(I)及び式(II)中、nは独立して1〜3の整数であり、アミノ酸残基は(R)体又は(S)体のいずれであってもよい。式(II)中、mは1〜5の整数、R及びRはそれぞれ独立に疎水性置換基を表す。式(I)及び式(II)中、*で表される部位は、隣接する部位との結合部位を表す。
本開示の微生物膜透過剤は、上記構成を有することにより、大腸菌などの微生物の細胞膜を、高い効率及び低い毒性で膜透過し、目的の化合物を微生物の細胞内に導入することができる。
本開示の微生物膜透過剤は、本開示の効果が阻害されない範囲内で、膜透過性ペプチド以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、安定剤、防腐剤、着色剤、保存剤、増粘剤、栄養剤、防カビ剤、緩衝剤、乳化剤、有機溶剤等が挙げられる。
〔膜透過性ペプチド〕
本開示の膜透過性ペプチドは、4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含む第一の膜透過性ペプチド、及び、式(II)のアミノ酸残基を含む第二の膜透過性ペプチドの少なくとも一方である。
(第一の膜透過性ペプチド)
第一の膜透過性ペプチドは、4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含む。
式(I)中、nは独立して1〜3の整数であり、アミノ酸残基は(R)体又は(S)体のいずれであってもよい。
式(I)中、*で表される部位は、隣接する部位との結合部位を表す。なお、隣接する部位とは、隣接するアミノ酸残基、末端保護基、N末端の水素原子、C末端のヒドロキシ基、又は、後述するリンカー等の式(I)のアミノ酸残基に隣接する構造を表す。
以下、「4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含む微生物膜透過性ペプチド」及び「式(II)のアミノ酸残基を含む膜透過性ペプチド」の両方を、まとめて「本開示の微生物膜透過性ペプチド」と称す。
以下、「4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含む微生物膜透過性ペプチド」を「第一の微生物膜透過性ペプチド」とも称す。
以下、「式(II)のアミノ酸残基を含む膜透過性ペプチド」を「第二の微生物膜透過性ペプチド」とも称す。
例えば、n=1である場合、式(I)のアミノ酸残基は、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)の(R)体又は(S)体となる。
例えば、n=2である場合、式(I)のアミノ酸残基は、2,4−ジアミノブタン酸(Dab)の(R)体又は(S)体となる。
例えば、n=3である場合、式(I)のアミノ酸残基は、2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)の(R)体又は(S)体となる。
第一の膜透過性ペプチドは、大腸菌などの微生物の細胞膜をより高い効率及び低い毒性で膜透過する観点からは、(S)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(R)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(S)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(R)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(S)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)及び(R)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)からなる群より独立して選択される4〜26個の連続したアミノ酸残基からなることが好ましい。
本開示において、複数の選択肢から選択されるアミノ酸残基が、所定の個数連続することが記載されている場合、連続するアミノ酸残基に含まれる各アミノ酸残基は、当該複数の選択肢から選択される限りは、互いに同じであっても異なっていてもよく、その一例として、同じアミノ酸残基が所定の個数連続している場合も含まれる。
第一の膜透過性ペプチドのアミノ酸配列は、例えば、下記配列番号1であってもよい。
X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25−X26(配列番号1)
配列番号1中、
X1〜X3は、それぞれ独立して、(S)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(R)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(S)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(R)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(S)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)又は(R)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)であり、
X4〜X26は、それぞれ独立して、存在しないか、あるいは、(S)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(R)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(S)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(R)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(S)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)又は(R)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)である。
第一の膜透過性ペプチドは、4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含むペプチドであれば、特に制限されるものではないが、
5〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含むペプチドであることが好ましく、
6〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含むペプチドであることがより好ましく、
6〜20個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含むペプチドであることがさらに好ましい。
第一の膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸残基の立体異性体は、特に制限されるものではなく、膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸残基の全てが(R)体若しくは(S)体であってもよいし、又は(R)体と(S)体とが混在していてもよい。
第一の膜透過性ペプチドは、膜透過性をより向上させる観点からは、4〜26個の連続したアミノ酸残基からなるものであることが好ましく、5〜26個の連続した同じアミノ酸残基からなるものであることがより好ましく、6〜26個の連続した同じアミノ酸残基からなるものであることがさらに好ましく、20個の連続した同じアミノ酸残基からなるものであることが特に好ましい。
第一の膜透過性ペプチドは、上記式(I)のアミノ酸残基を含み、且つ、微生物膜透過性を保持するものであれば、任意のアミノ酸配列を有するペプチドであってよい。
第一の膜透過性ペプチドは、膜透過性をより向上させる観点からは、
少なくとも4個の連続したOrn、Dab又はDapを含むことが好ましく、
少なくとも4個の連続したOrn又はDabを含むことがより好ましく、
5〜26個の連続したOrn又はDabを含むことがさらに好ましく、
6〜26個の連続したOrn又はDabを含むことが特に好ましい。
第一の膜透過性ペプチドは、膜透過性をより向上させる観点からは、
5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Ornからなるもの、
5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Dabからなるもの、
又は、9個の連続した(S)−Dapからなるものであることが好ましい。
第一の膜透過性ペプチドは、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Ornからなるもの、又は、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Dabからなるものであることがより好ましい。
第一の膜透過性ペプチドは、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Ornからなるもの、又は、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Dabからなるものであることがさらに好ましい。
例として、Dab9量体(Dab9又は(Dab)9ともいう)及びOrn9量体(Orn9又は(Orn)9ともいう)のアミノ酸配列を以下に示す。
Dab9 :Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号2)
Orn9 :Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn(配列番号3)
また、他の第一の膜透過性ペプチド;Orn6〜12量体、Dab6〜12、15、19量体及びDap9量体のアミノ酸配列を以下に示す。
Orn6 :Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn(配列番号7)
Orn7 :Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn(配列番号8)
Orn8 :Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn(配列番号9)
Orn10:Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn(配列番号10)
Orn11:Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn(配列番号11)
Orn12:Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn-Orn(配列番号12)
Dab4 :Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号20)
Dab5 :Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号21)
Dab6 :Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号13)
Dab7 :Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号14)
Dab8 :Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号15)
Dab10:Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号16)
Dab11:Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号17)
Dab12:Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号18)
Dap9 :Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap(配列番号19)
Dab15:Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号24)
Dab19:Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号25)
上記の第一の膜透過性ペプチドの具体例における立体異性体は、Orn、Dab及びDapの全てが(R)体若しくは(S)体であってもよいし、又は(R)体と(S)体とが混在していてもよいが、Orn、Dab及びDapの全てが(S)体であることが好ましい。
一態様として、第一の膜透過性ペプチドは、前記4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基からなるブロックを複数有し、前記複数のブロックの間の少なくとも1カ所に、前記式(I)のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を1個又は2個以上連続して含む態様であってもよい。この場合、前記式(I)のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基は、リジン(Lys)残基又はアルギニン(Arg)残基を含むことが好ましく、置換基として標識分子を有するリジン(Lys)残基又はアルギニン(Arg)残基を含むことがより好ましい。なお、標識分子としては、後述する本開示の複合体にて例示する標識分子と同様のものが挙げられる。
一態様として、第一の膜透過性ペプチドは、例えば、下記に示す、Dab9量体の末端に、置換基として標識分子である5(6)−カルボキシフルオレセイン(FAM)が置換したリジン(Lys)1残基を有するアミノ酸配列であってもよい。
Dap9(FAM):Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-Dap-K(-FAM)(配列番号22)
一態様として、第一の膜透過性ペプチドは、例えば、下記に示す、Dab4量体とDab5量体との間に、置換基として標識分子である5(6)−カルボキシフルオレセイン(FAM)が置換したリジン(Lys)1残基が介在するアミノ酸配列であってもよい。
Dab4-K(-FAM)-Dab5:Dab-Dab-Dab-Dab-K(-FAM)-Dab-Dab-Dab-Dab-Dab(配列番号23)
(第二の膜透過性ペプチド)
第二の膜透過性ペプチドは、式(II)のアミノ酸残基を含む。
式(II)中、nは独立して1〜3の整数であり、アミノ酸残基は(R)体又は(S)体のいずれであってもよい。
式(II)中、mは1〜5の整数、R及びRはそれぞれ独立に疎水性置換基を表す。
式(II)中、*で表される部位は、隣接する部位との結合部位を表す。なお、隣接する部位とは、隣接するアミノ酸残基、末端保護基、N末端の水素原子、C末端のヒドロキシ基、又は、後述するリンカー等の式(II)のアミノ酸残基に隣接する構造を表す。
式(II)中、nは独立して1〜3の整数であり、膜透過性をより向上させる観点からは、2〜3の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(II)中、mは1〜5の整数であり、膜透過性をより向上させる観点からは、2〜4の整数であることが好ましく、2〜3の整数であることがより好ましい。
式(II)中、R及びRは、それぞれ独立に疎水性置換基を表す。
で表される疎水性置換基とは、Rが置換する炭素原子の両端に位置するNH及びC=Oを含むアミノ酸残基(NH−C(R)−C(=O))が、疎水性アミノ酸に由来するアミノ酸残基であることを意味する。
で表される疎水性置換基とは、Rが置換する炭素原子の両端に位置するNH及びC=Oを含むアミノ酸残基(NH−C(R)−C(=O))が、疎水性アミノ酸に由来するアミノ酸残基であることを意味する。
疎水性アミノ酸とは、疎水性インデックス(hi)が−2以上のアミノ酸を意味する。具体的に疎水性アミノ酸としては、グリシン(hi=−0.4)、トリプトファン(hi=0.9)、メチオニン(hi=1.9)、プロリン(hi=−1.6)、フェニルアラニン(hi=2.8)、アラニン(hi=1.8)、バリン(hi=4.2)、ロイシン(hi=3.8)、イソロイシン(hi=4.5)等が挙げられる。上記の中でも、疎水性アミノ酸としては、フェニルアラニンを含むことが好ましい。
第二の膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸残基の立体異性体は、特に制限されるものではなく、膜透過性ペプチドを構成するアミノ酸残基の全てが(R)体若しくは(S)体であってもよいし、又は(R)体と(S)体とが混在していてもよい。
上記の第二の膜透過性ペプチドにおける立体異性体は、Orn、Dab及びDapの全てが(R)体若しくは(S)体であってもよいし、又は(R)体と(S)体とが混在していてもよいが、Orn、Dab及びDapの全てが(S)体であることが好ましい。
第二の膜透過性ペプチドは、上記式(II)のアミノ酸残基を含み、且つ、微生物膜透過性を保持するものであれば、任意のアミノ酸配列を有するペプチドであってよい。
第二の膜透過性ペプチドは、膜透過性をより向上させる観点からは、
少なくとも1個のOrn、Dab又はDapを含むことが好ましく、
少なくとも2個のOrn又はDabを含むことがより好ましく、
3個のDabを含むことがより好ましい。
一態様として、第二の膜透過性ペプチドは、例えば、下記に示す、Dab1量体とフェニルアラニン2量体とからなる繰り返し単位が3回連続してなる配列と、置換基として標識分子である5(6)−カルボキシフルオレセイン(FAM)が置換したリジン(Lys)1残基とを有するアミノ酸配列であってもよい。
(DabFF)3-K-FAM:Dab-F-F-Dab-F-F-Dab-F-F-K(-FAM)(配列番号26)
本開示の微生物膜透過剤は、第一の膜透過性ペプチド及び第二の膜透過性ペプチドの少なくとも一方のみを含んでいてもよく、第一の膜透過性ペプチド及び第二の膜透過性ペプチドの両方を含んでいてもよい。微生物膜透過剤が第一の膜透過性ペプチド及び第二の膜透過性ペプチドの両方を含む場合、両者は、後述するその他のアミノ酸残基を介していてもよい。
本開示の膜透過性ペプチドは、微生物膜透過性に影響がない限り、式(I)のアミノ酸残基及び式(II)のアミノ酸残基以外のその他のアミノ酸残基が含まれていてもよい。
前記その他のアミノ酸残基を含む場合、前記その他のアミノ酸残基は、特に制限されるものではないが、1〜5個の任意のアミノ酸残基であることが好ましい。
前記その他のアミノ酸残基は、例えば、リジン(Lys)残基又はアルギニン(Arg)残基であることが好ましい。
前記その他のアミノ酸残基の存在位置は、膜透過性ペプチドの末端、複数の式(I)のアミノ酸残基の間、複数の式(II)のアミノ酸残基の間、及び、式(I)のアミノ酸残基と式(II)のアミノ酸残基との間のいずれであってもよい。その他のアミノ酸残基は、置換基として標識分子等を有していてもよい。
本開示の膜透過性ペプチドは、当技術分野で公知の方法により調製することができる。例えば、固相ペプチド合成法や、非天然アミノ酸をポリペプチドに導入するための遺伝子組換え法(例えば、Taira, H. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2008, 374, 304-308、Noren, C.J. et al., Science 244:182-188, 1989、特許第4917044号など)を利用できる。Dab、Orn及びDapは、市販品として入手可能である。
本開示の膜透過性ペプチドは、通常の固相合成法により高い収率で容易に合成でき、大量生産も可能である。
本開示に係る微生物膜透過剤は、導入対象の化合物と連結して微生物と接触させることにより、その化合物を微生物の菌体内に導入することができる。すなわち、微生物膜透過剤は、微生物細胞内へ様々な物質を運ぶベクター又はキャリアとして機能する。なお、前記導入対象の化合物とは、該微生物膜透過剤以外の化合物である。前記導入対象の化合物は、該微生物膜透過剤により送達可能な化合物であれば特に制限されない。
対象となる「微生物」とは、原核生物(例えば、真正細菌、古細菌等)、真核生物(例えば、微細藻類、原生生物、菌類、粘菌等)などを含む様々な種類の微生物をいう。
細菌(真正細菌)は、細胞膜の外側に外膜を有するか否かで、グラム陰性細菌とグラム陽性細菌とに分類されるが、本開示に係る微生物膜透過剤は、グラム陰性細菌とグラム陽性細菌の両方の細菌に対して適用できる。
細菌としては、例えば、エンテロバクター科、シネコシスティス属、シュードモナス属、アシネトバクター属又はバチラス属の細菌が挙げられる。エンテロバクター科の細菌としては、例えば、エルシニア属、セラチア属、トラブルシエラ属、エンテロバクター属又はプロテウス属等に属する細菌が挙げられる。シネコシスティス属に属する細菌としては、シネコシスティスPCC6803等が挙げられる。シュードモナス属に属する細菌としては、シュードモナス・フルオレッセンス等が挙げられる。アシネトバクター属に属する細菌としては、アシネトバクター・ラジオレジステンス等が挙げられる。バチルス属に属する細菌としては、バチルス・メガテリウム等が挙げられる。
本開示に係る微生物膜透過剤は、大腸菌などの微生物の細胞膜を、高い効率及び低い毒性で膜透過することができる。そのため、本開示の微生物膜透過剤は、微生物の動態などに関する基礎研究用、抗菌物質の探索用、薬効評価用、抗菌用、殺菌用(滅菌用)、安全性評価用、医療用、環境計測用等の用途に展開可能である。
≪複合体≫
別の態様において、本開示は、本開示の微生物膜透過剤と化合物とを含む複合体を提供する。化合物は、微生物の細胞膜を透過させて菌体内に導入する化合物であれば特に制限されるものではない。
菌体内に導入する化合物としては、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチド核酸、無機物、有機金属化合物、有機化合物、高分子、ナノ粒子、糖及び標識物質、並びに、ミセル及びリポソームの一方を含む分子集合体、からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの化合物は、当技術分野において公知の方法により調製するか、あるいは市販品として入手することができる。
タンパク質としては、例えば、酵素、受容体、抗体、蛍光性タンパク質、細胞骨格形成タンパク質、アミロイド形成タンパク質等が挙げられる。
ペプチドとしては、例えば、抗原、ホルモン、抗菌ペプチド、シグナルペプチド、インヒビターペプチド、グルタチオン等の酸化還元活性ペプチド;オルガネラ標的ペプチド;などが挙げられる。
核酸としては、例えば、DNA、RNA、ハイブリッド核酸、アプタマー等が挙げられる。
ペプチド核酸としては、例えば、ペプチドDNA、ペプチドRNA等が挙げられる。
無機化合物、有機化合物、有機金属化合物及びナノ粒子としては、細胞内に導入可能な公知の化合物が挙げられる。
高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、デンドリマー等が挙げられる。
糖としては、例えば、多糖類、二糖類、単糖類、シクロデキストリン等が挙げられる。
標識物質としては、例えば、5(6)−カルボキシフルオレセイン(FAM)等が挙げられる。
分子集合体としては、ミセル、リポソーム等が挙げられる。なお、本開示において「分子集合体」とは、脂質等の分子が集合した集合体を意味する。
微生物膜透過剤と化合物とを連結する方法は、特に制限されないが、例えば、(1)直接的な連結(つまり、共有結合);(2)リンカーを介した連結;(3)水素結合、疎水性相互作用、静電相互作用、配位結合等の分子間相互作用による連結;(4)前記分子間相互作用が複合的に作用する、抗原抗体結合、タンパク質リガンド相互作用(例えば、アビジンとビオチンの相互作用等)、DNAの多重らせん形成などによる連結;などが挙げられる。
一態様として、微生物膜透過剤と化合物とを連結する方法は、膜透過性ペプチドのアミノ酸残基又はリンカーのアミノ酸残基のアミノ基と、反応性官能基(NHSエステル等の活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基など)を有する化合物と、を作用させることで、両者を連結する方法であってもよい。
一態様として、微生物膜透過剤と化合物との連結位置は、微生物膜透過剤における膜透過性ペプチドのC末端側であってもよい。
一態様として、微生物膜透過剤と化合物とを連結する方法は、カルボン酸基を活性化剤等により活性エステルに変換した膜透過性ペプチドを含む微生物膜透過剤と、反応性官能基を有する化合物と、を作用させることで、両者を連結する方法であってもよい。
なお、微生物膜透過剤と化合物とをリンカーを介して連結する場合、リンカーの配列は、公知のリンカー配列を適用できる。例えば、リンカー配列としては、1〜20個の連続したアミノ酸残基、好ましくは1〜10個の連続したアミノ酸残基、より好ましくは1〜6個の連続したアミノ酸残基が適用できる。リンカーを形成するアミノ酸の種類としては、公知のアミノ酸が適用できるが、例えば、微生物膜透過剤の膜透過性をより維持する観点から、リジン残基、アルギニン残基等が挙げられる。
化合物がタンパク質又はペプチドである場合、複合体は、微生物膜透過剤と化合物(及び場合によりリンカー)との融合タンパク質となる。融合タンパク質の調製方法は、化学合成法、遺伝子組換え法等の公知の手法が適用できる。化学合成法の場合、公知のペプチド合成手法に従って、市販のペプチド合成機、ペプチド合成用キット等を用いて融合タンパク質を調製する。遺伝子組換え法の場合、微生物膜透過剤における膜透過性ペプチドをコードするDNAと、化合物をコードするDNAとを、直接連結又はリンカー配列を介して連結し、プラスミド等の公知のベクターに挿入した後、前記ベクターを宿主細胞に導入することで、前記宿主細胞内に融合タンパク質として複合体を発現させることができる。
本開示の複合体は、微生物膜透過剤を含むため、微生物の細胞膜を透過する性質を有し、かつ、化合物を細胞膜内に送達することができる。本開示の複合体は、ドラッグデリバリーシステム等の化合物を細胞膜内に送達することを必要とする様々な用途に適用できる。
≪微生物細胞に化合物を送達する方法≫
別の態様において、本開示は、本開示の微生物膜透過剤と化合物とを含む複合体を微生物細胞と接触させることを含む、微生物細胞に化合物を送達する方法を提供する。微生物膜透過剤、化合物及び微生物については上述した通りである。
本開示において「接触」は、微生物の細胞と複合体とが接触する条件に置くことを指し、当業者であれば明確に理解することができる。
複合体と微生物細胞とを接触させる手段は、特に制限されず、使用する微生物の種類、複合体に含まれる化合物の種類などに応じて、当業者であれば適当な条件で実施することができる。例えば、複合体と微生物細胞とを接触させる手段としては、下記(1)〜(3)等の手法が挙げられる。
(1)微生物細胞を、複合体を添加した培地中で培養する手法。
(2)微生物細胞を、複合体を含む溶液中に添加若しくは浸漬する手法。
(3)微生物細胞上に、複合体を積層させる手法。
複合体と微生物細胞とを接触させる際の具体的な条件、つまり、微生物細胞と複合体との接触時間、量、回数、温度、pH、光、塩濃度、添加物濃度等は、公知の条件に基づいて適宜設計してよい。
接触させる複合体は、1種類でもよいし、又は複数種類を組み合わせてもよい。例えば、複数の化合物による微生物に対する相加作用、相乗作用などを検討する場合には、複合体を組み合わせて用いてもよい。
上述したような接触によって、微生物細胞の菌体内に複合体に含まれる化合物が送達される。本開示で使用する膜透過性ペプチドは、微生物に対する高い導入効率と低い毒性を有することから、本開示に従う微生物への化合物送達は、非常に多様な用途を有する。
≪殺菌剤≫
別の態様において、本開示は、本開示の微生物膜透過剤を含む殺菌剤を提供する。
本開示の殺菌剤は、本開示の微生物膜透過剤を含む。
本開示の殺菌剤は、微生物膜透過剤と、殺菌作用を有する物質とを含む複合体とすることにより、殺菌対象となる微生物(特に、薬剤耐性を有する微生物)の細胞内に高い効率で前記殺菌作用を有する物質を導入することができる。
本開示の殺菌剤を用いて殺菌する対象の微生物は、特に制限されるものではないが、例えば、本開示の微生物膜透過剤で例示された微生物と同様の種類が挙げられる。
本開示の殺菌剤の用途は、特に制限されるものではないが、例えば、防腐用、殺菌用、滅菌用、農園芸用、医療用、消毒用殺菌用等として用いることができる。
本開示において、殺菌剤とは、微生物を殺すために用いられる任意の薬剤を指すが、殺菌の割合は制限されず、部分的な阻害であっても、完全な阻害であってもよい。
≪抗菌剤≫
別の態様において、本開示は、本開示の微生物膜透過剤を含む抗菌剤を提供する。
本開示の抗菌剤は、本開示の微生物膜透過剤を含む。
本開示の抗菌剤は、微生物膜透過剤と、抗菌作用を有する物質とを含む複合体とすることにより、抗菌対象となる微生物(特に、薬剤耐性を有する微生物)の細胞内に高い効率で前記抗菌作用を有する物質を導入することができる。
本開示の抗菌剤を用いて抗菌する対象の微生物は、特に制限されるものではないが、例えば、本開示の微生物膜透過剤で例示された微生物と同様の種類が挙げられる。
本開示の抗菌剤の用途は、特に制限されるものではないが、例えば、防腐用、抗菌用、農園芸用、医療用、消毒用殺菌用等として用いることができる。
本開示において、抗菌剤とは、微生物の増殖を阻害するために用いられる任意の薬剤を指すが、微生物の増殖を阻害する割合は制限されず、部分的な阻害であっても、完全な阻害であってもよい。
≪ラベル化剤≫
別の態様において、本開示は、本開示の微生物膜透過剤を含むラベル化剤を提供する。
本開示のラベル化剤は、本開示の微生物膜透過剤を含む。
本開示のラベル化剤は、微生物膜透過剤と、対象となる微生物における特定部位に対し化学的相互作用し検出が可能な物質(以下、「標識物質」とも称す。)と、を含む複合体であることが好ましい。上記構成とすることにより、対象となる微生物の細胞内に高い効率で侵入し、前記対象となる微生物内における特定部位を発光観察、磁気、光学等により標識化(ラベル化)することができる。
前記複合体の形成方法は、公知の手法が適用できる。
微生物膜透過剤及び標識物質は、共有結合により直接連結されていても、水素結合等の相互作用により連結されていてもよい。標識物質は、例えば、微生物膜透過剤における膜透過性ペプチドの末端と連結するその他のアミノ酸残基(例えば、リジン等)のアミノ基と反応させ、微生物膜透過剤と連結されていてもよい。
本開示のラベル化剤を用いてラベル化する対象の微生物は、特に制限されるものではないが、例えば、本開示の微生物膜透過剤で例示された微生物と同様の種類が挙げられる。
標識物質の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、ジアジリン等の前記特定部位と反応可能な反応性部位を有する蛍光分子、DNA等の二重らせんの塩基対間に特異的に平行挿入(インターカレート)するインターカレーター化合物(アクリジン等)などが挙げられる。
本開示のラベル化剤の用途は、特に制限されるものではないが、例えば、バイオセンシング用、バイオラベリング用、バイオイメージング用、環境検査用等として用いることができる。
以下に実施例を例示し、本開示を具体的に説明するが、この実施例は単に本開示の説明のために提供するものであり、本出願において開示する発明の範囲を制限したり制限したりするものではない。
[実施例1]膜透過性ペプチドの合成及び化合物の導入
本実施例では、複合体として蛍光色素を有するDab9-K-FAM、Orn9-K-FAM、Dab4-K(-FAM)-Dab5及び(DabFF)3-K-FAMを合成した。
(1)微生物膜透過剤の合成
固相合成用チューブ(ポリプロピレン製LibraTube本体チューブ5mL、株式会社ハイペップ研究所)中で、Fmoc-NH-SALレジン(渡辺化学株式会社)(64.1mg, 0.025mmol)をN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)(キシダ化学株式会社)中で一晩浸漬し、膨張させた。固相合成用チューブには固相合成用キャップポリプロピレン製LibraTube上部キャップ(株式会社ハイペップ研究所)を使用した。ピペリジン(キシダ化学株式会社)(DMF中20質量%、2mL)を加え、1分間ボルテックスで攪拌し溶媒を除去した。ピペリジン(DMF中20質量%、2mL)を加え、室温で10分間振とうし溶媒を除去した。DMF(2mL)で5回洗浄した。レジンを少量取り出し、TNBS Test Kit(東京化成工業株式会社)を用いてレジンが呈色することを確認した。塩化メチレン(2mL)、DMF(2mL)でそれぞれ3回ずつ洗浄した。HBTU(渡辺化学株式会社)3.05 g、HOBt・HO(渡辺化学株式会社)1.25 g及びDMF 16mLを予め混合し調製した縮合剤カクテル(175μL)、そしてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(ナカライテスク株式会社)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(キシダ化学株式会社)の混合液(DIEA/NMP=2.75/14.25(v/v),175μL)を、N末端のアミノ酸(0.075mmol)に加えて溶解させ、レジンに添加した。室温で15分間振とうし、溶媒を除去した。DMF(2mL)で5回洗浄した。レジンを少量取り出し、TNBS Test Kitを用いてレジンが呈色しないことを確認した。塩化メチレン(株式会社ゴードー)(2mL)、DMF(2mL)でそれぞれ3回ずつ洗浄した。以降、アミノ酸配列に従って上記の操作を繰り返し、ペプチド鎖を伸長した。伸長操作には、Fmoc-Lys(Dde)-OH(渡辺化学株式会社)、Fmoc-Dab(Boc)-OH(渡辺化学株式会社)、Fmoc-Orn(Boc)-OH(渡辺化学株式会社)、又はFmoc-Phe-OH(渡辺化学株式会社)を使用した。また、攪拌には振とう攪拌専用システムPetiSyzer PSP-5100(株式会社ハイペップ研究所)を使用した。
伸長が終了したレジンにヒドラジン一水和物(キシダ化学株式会社)(DMF中2質量%、2mL)を加え、室温で10分間振とうし溶媒を除去した。DMF(2mL)で5回洗浄した。レジンを少量取り出し、TNBS Test Kitを用いて、レジンが呈色することを確認した。塩化メチレン(2mL)、DMF(2mL)でそれぞれ3回ずつ洗浄した。
(2)複合体の形成
5(6)−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)(Sigma−Aldrich)(28.2mg,0.075mmol)にDMF(2mL)に溶かしたHOBt・HO(19.1mg,0.125mmol)を加えて溶解させた。そこに、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(富士フイルム和光純薬株式会社)(23.4μL, 0.15mmol)、DIEA(25.8μL,0.15mmol)を加えて、レジンに添加した。室温で遮光し、終夜振とうさせた。溶媒を除去し、DMF(2mL)で5回洗浄した。その後、塩化メチレン(2mL)、DMF(2mL)でそれぞれ3回ずつ洗浄した。ピペリジン(DMF中20質量%,2mL)を加え、室温で10分間振とうし溶媒を除去した。DMF(2mL)、塩化メチレン(2mL)、MeOH(2mL)でそれぞれ5回ずつ洗浄した。デシケーター内で20分間乾燥させた。
(3)レジンからの切り出し
デシケーター内で乾燥させたレジンに脱保護カクテル(トリフルオロ酢酸(TFA)(キシダ化学株式会社)600μL、トリイソプロピルシラン(TIS)(東京化成工業株式会社)15.8μL、水15.8μLを予め混合し調製したもの)を加え、室温で30分ごとに軽く振とうし、90分間静置させた。濾液を15mL遠沈管に回収した。合成チューブにTFA(500μL)を加え、濾液を先ほどの遠沈管に回収した。この操作を3回繰り返した。
濾液を回収した遠沈管にジエチルエーテル(キシダ化学株式会社)(10mL)を加え、十分に攪拌した。遠心分離(4℃,3500×g,5min)し、上澄みを除去した。この操作を3回繰り返した。10分間ドラフト内で静置し、乾燥させた後、デシケーターで2時間以上乾燥させた。乾燥後のサンプルをイオン交換水に溶かし、凍結乾燥した。
(4)精製
上述の通り合成したペプチドを、HPLCを用いて精製した。その操作条件は以下の通りである。
[分析HPLC]
カラム:YMC−Triart C18(250×4.6mmφ)
流速:1.0mL/min
測定波長:220nm
溶媒:A:HO(0.1質量%TFA含有)
B:アセトニトリル(0.1質量%TFA含有)
グラジエント条件:0 min A:B=90:10
20min A:B=40:60
25min A:B=90:10
30min A:B=90:10
[分取HPLC]
カラム:YMC−Actus Triart C18(250×20.0mmφ)
流速:18.9mL/min
測定波長:220 nm
溶媒:A:HO(0.1質量%TFA含有)
B:アセトニトリル(0.1質量%TFA含有)
グラジエント条件:0min A:B=90:10
20min A:B=40:60
25min A:B=90:10
30min A:B=90:10
上述の合成により、図1、図17及び図28に示す分子構造を有する微生物膜透過剤(Dab9-K-FAM、Orn9-K-FAM、Dab4-K(-FAM)-Dab5及び(DabFF)3-K-FAM)がそれぞれ得られた。図1中、左側部分が、それぞれDab9及びOrn9の構造である。図1中、枠で囲った部分が、C末端のリジン側鎖(リンカー)に導入した蛍光性のFAM基である。
[実施例2]複合体の大腸菌への導入−1
本実施例では、実施例1で調製した膜透過性ペプチドを含む複合体の大腸菌への導入について調べた。微生物実験で用いる試薬は特に記述がない限り全て市販の特級品又はそれに準ずるものを使用した。
(1)大腸菌への膜透過性ペプチドの導入
導入には、大腸菌Escherichia coli K-12株(ATCC10798)を使用した。一晩培養した菌体を100μLエッペンに分注し、遠心分離(7,500×g,10min)を行い回収した。次に回収した菌体をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Thermo Fisher Scientific社, pH7.4)に懸濁させ、遠心分離(7,500×g,5min)を3回繰り返しPBSで洗浄した。洗浄後に得られた菌体ペレットに対し50μLの2μMのDab9-K-FAM溶液又はOrn9-K-FAM溶液を加え、懸濁させた後、室温(23℃)で1時間インキュベートを行った。インキュベーション後、遠心分離(7,500×g,5min)により菌体を回収し、上記と同様にPBS洗浄を3回繰り返した。最後に得られた菌体ペレットに対し、0.1質量%に希釈したTrypan blue(Sigma-Aldrich社、Trypan Blue solution、0.4質量%)を適量加え、懸濁させた後、解析及び観察を行った。
ただし、グラム陽性菌においてはTrypan Blueは膜に非特異的吸着することが確認されているため、Dab9-K-FAM又はOrn9-K-FAMの染色のみで導入実験を行った。
(2)蛍光顕微鏡観察
上記で染色したサンプルを2μL用いて蛍光顕微鏡で観察を行った。蛍光顕微鏡は、OLYMPUS社のBX53正立顕微鏡を使用し、蛍光顕微鏡の光源装置は、OLYMPUS社のU−HGLGPSを使用した。顕微鏡観察で用いた励起/吸収フィルターは、OLYMPUS社の蛍光ミラーユニットで、U−FBW(緑蛍光専用)とU−FGW(赤蛍光専用)の2種類を使用した。画像の撮影は、PC上で行い比較対象となるサンプルの露出時間は揃えて撮影した。
蛍光顕微鏡により、FAM由来の蛍光を発する大腸菌を観察し、菌体内へのDab9-K-FAMの導入を直接観察した。図2に、トリパンブルー染色した菌体を示す写真(下)と共に蛍光顕微鏡像(上)を示す。図中、Negative controlはペプチドを加えていない系を表し、菌からのバックグラウンド蛍光を見ている。すべて同じ露光時間で観察しているため、蛍光強度の大きさが、蛍光団FAMを有するペプチドの量に対応する。図2の結果から、既知の膜透過性ペプチドであるKFFKFFKFFK((KFF)K:配列番号4)と比べて、Dab9が顕著に大腸菌の菌体内へ導入されたことが示されている。
Dap、Dab及びOrnは、それぞれ天然アミノ酸リジンよりも側鎖の長さが3炭素、2炭素及び1炭素短いものである。しかしDab及びOrnの9量体は、リジン9量体に比べて2倍以上の大腸菌への導入効率を示す。このDap、Dab及びOrnとリジンのわずかな分子構造の違いが、大きな膜透過性の違いを生じることは予想外であった。
(3)大腸菌への導入についての定量評価(フローサイトメトリー)
フローサイトメーターの解析とソーティングは、BD社のFACSAriaTMIIを使用した。Dab9-K-FAM又はOrn9-K-FAM及びTrypan Blueで染色した菌体を1000〜2000events/sになるように調整し、BD社の解析ソフトFACSDIVAを用いて解析した。1つのサンプルにおいて解析したサンプル数は30,000events/sに設定した。Dab9-K-FAM又はOrn9-K-FAMの導入が認められた菌体に対してソーティングを行い、LB寒天培地プレートに240菌体(単一細胞)をソートした。ソートした菌体は適切な温度で培養し、形成されたコロニー数で生死割合を算出した。
フローサイトメトリーの結果を図3及び図4に示す。図中、Dab9-K-FAM及びOrn9-K-FAMに導入されていない大腸菌をコントロールとし、その導入率を評価した。この結果、膜透過性ペプチドを含む複合体が高い効率(導入率100%)で導入されたことがわかった。
[実施例3]複合体の大腸菌への導入−2
本実施例では、実施例1と同様に膜透過性ペプチドを含む複合体を調製し、実施例2と同様に大腸菌への導入について調べた。具体的には、膜透過性ペプチドとして、Orn6(配列番号7)、Orn7(配列番号8)、Orn8(配列番号9)、Orn9(配列番号3)、Orn10(配列番号10)、Orn11(配列番号11)及びOrn12(配列番号12)、Dab3(Dab−Dab−Dab)、Dab4(配列番号20)、Dab5(配列番号21)、Dab6(配列番号13)、Dab7(配列番号14)、Dab8(配列番号15)、Dab9(配列番号2)、Dab10(配列番号16)、Dab11(配列番号17)及びDab12(配列番号18)、Dab15(配列番号24)、Dab19(配列番号25)、並びにDap9(配列番号19)をそれぞれ調製した後、リンカーとしてのC末端に連結したリジン側鎖を介して蛍光性FAM基をそれぞれ導入した。これらと同様に、膜透過性ペプチドとして、K(―FAM)―Dab9(配列番号22)及びDab4―K(―FAM)―Dab5(配列番号23)を用いて、大腸菌への導入率を調べた。
大腸菌への導入率は以下の通りであった。
Orn6-K-FAM:4.00±0.29%
Orn7-K-FAM:16.90±4.9%
Orn8-K-FAM:97.20±0.73%
Orn9-K-FAM:99.88±0.01%
Orn10-K-FAM:99.93±0.02%
Orn11-K-FAM:99.94±0.01%
Orn12-K-FAM:99.89±0.03%
Dab3-K-FAM:0.41%
Dab4-K-FAM:2.55±0.20%
Dab5-K-FAM:53.32±0.06%
Dab6-K-FAM:99.07±0.68%
Dab7-K-FAM:99.94±0.02%
Dab8-K-FAM:99.97±0.01%
Dab9-K-FAM:99.98±0.01%
Dab10-K-FAM:99.97±0.01%
Dab11-K-FAM:99.97±0.01%
Dab12-K-FAM:99.96±0.02%
Dab15-K-FAM:99.97±0.02%
Dab19-K-FAM:58.08±0.47%
Dap9-K-FAM:99.98±0.01%
K(-FAM)-Dab9:99.99%
Dab4-K(-FAM)-Dab5:99.99%
この結果、膜透過性ペプチドを含む複合体が高い効率で導入されたことがわかった。
[実施例4]大腸菌に対する複合体の毒性評価
本実施例では、大腸菌に対する膜透過性ペプチドの毒性について定量評価(蛍光顕微鏡観察)を行った。
FAM由来の蛍光を示している大腸菌、すなわちDab9-K-FAM又はOrn9-K-FAMが導入された大腸菌240菌体を培地にソートし、1日培養後、形成されたコロニーについて、生菌数と死菌数を数えた。
対象は、各測定で用いた大腸菌は、30000菌体からランダムに240菌体を選出し、Dab9-K-FAM又はOrn9-K-FAMを加えない条件で1日培養後、生きているコロニー及び死んでいるコロニーを数えた結果である。結果を以下の表1に示す。
以上の直接観察の結果から、Dab9-K-FAM又はOrn9-K-FAMの添加による大腸菌死細胞の顕著な増加は見られなかった。そのため、膜透過性ペプチドDab9-K-FAM及びOrn9-K-FAMの毒性は低いことが確認された。
[実施例5]複合体の細菌への導入
本実施例では、大腸菌以外の菌種として、エルシニア・ベルコビエリ(Yersinia bercovieri:グラム陰性)、及びバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium:グラム陽性)への導入について、蛍光顕微鏡観察によって調べた。
具体的には、エルシニア・ベルコビエリ(NBRC105717)及びバチルス・メガテリウム(発明者単離株;未登録)を使用した以外は、実施例2と同様の手順に従って、細菌株に膜透過性ペプチドを含む複合体(Dab)9K-FAMを導入した。結果を図5及び図6に示す。
図5及び図6は、菌体を示す写真(下)と共に蛍光顕微鏡像(上)を示す。図中、Negative controlはペプチドを加えていない系を表し、菌からのバックグラウンド蛍光を見ている。すべて同じ露光時間で観察しているため、蛍光強度の大きさが、蛍光団FAMを有するペプチドの量に対応する。図5及び図6の結果から、既知の膜透過性ペプチドである(KFF)Kと比べて、Dab9が、顕著にグラム陽性及びグラム陰性細菌の菌体内へ導入されたことが示されている。
[実施例6]種々の複合体の導入と毒性の評価
本実施例では、蛍光色素FAMと本開示の微生物膜透過剤とを含む複合体(Dab9-K-FAM及びOrn9-K-FAM)、並びに、蛍光色素FAMと公知の微生物膜透過剤とを含む複合体(KFF)K(配列番号4)、K9(配列番号5)及びR9(配列番号6)を使用した。1、2、5、10、及び20μMの濃度でインキュベートし、各複合体の導入率と細胞毒性について調べた。導入率は、各複合体における蛍光色素FAMに由来する蛍光で評価した。細胞の毒性は、トリパンブルーで染色された菌の蛍光でフローサイトメーターを用いて評価した。結果を図7に示す。
図7に示される通り、蛍光色素FAMと本開示の微生物膜透過剤とを含む複合体(Dab9-K-FAM及びOrn9-K-FAM)は、蛍光色素FAMと公知の微生物膜透過剤とを含む複合体(KFF)K、K9及びR9に比べて、低い濃度でもほぼ100%の導入率を示した。
また、図7中、「−D」を付した白抜き記号のグラフに示される通り、全ての複合体は、2%以下の死細胞の割合を示した。このように、蛍光色素FAMと本開示の微生物膜透過剤とを含む複合体(Dab9-K-FAM及びOrn9-K-FAM)は、優れた細胞導入性質をもち、且つ、導入細胞に対する毒性が非常に低いという効果が示されている。
[実施例7]複合体の細菌への導入
本実施例では、大腸菌以外の菌種として、グラム陰性細菌である、エルシニア・ベルコビエリ(Yersinia bercovieri)、セラチア・グリメシー(Serratia grimesii)、トラブルシエラ・グアメンシス(Trabulsiella guamensis)、エンテロバクター・ホルマエチェイ(Enterobacter hormaechei)、プロテウス・ハウセリ(Proteus hauseri)、アシネトバクター・ラジオレジステンス(Acinetobacter radioresistens)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)及びシネコシスティス(Synechocystis PCC6803)を用いて、複合体Dab9-K-FAMの導入について、蛍光顕微鏡観察によってそれぞれ調べた。なお、菌種を変更した以外は、実施例2と同様の手順に従って、細菌株に複合体Dab9-K-FAMを導入した。また、実施例2と同様にして、ペプチドを加えていない系(Negative control)、細菌株に(KFF)3K-FAMを導入した系も行った。それぞれの細菌を用いた結果を図8〜図15に示す。
上記細菌のNBRC番号は、下記の通りである。
・エルシニア・ベルコビエリ(NBRC105717)
・セラチア・グリメシー(NBRC13537)
・トラブルシエラ・グアメンシス(NBRC103172)
・エンテロバクター・ホルマエチェイ(NBRC105718)
・プロテウス・ハウセリ(NBRC3851)
・アシネトバクター・ラジオレジステンス(NBRC102413)
・シュードモナス・フルオレッセンス(NBRC14160)
・シネコシスティス(Synechocystis PCC6803)
図8〜図15は、菌体を示す写真(下)と共に蛍光顕微鏡像(上)を示している。
図8〜図15中、Negative controlはペプチドを加えていない系を表し、菌からのバックグラウンド蛍光を見ている。すべて同じ露光時間で観察しているため、蛍光強度の大きさが、蛍光団FAMを有するペプチドの量に対応する。
図8〜図15に示されるように、本開示の微生物膜透過剤を含む複合体は、既知の微生物膜透過剤を含む複合体に比べて又はNegative controlと比べて、グラム陽性及びグラム陰性細菌の菌体内へ、効果的に導入されることがわかった。
[実施例8]複合体Dab4-K(-FAM)-Dab5の細菌への導入
本実施例では、複合体Dab4-K(-FAM)-Dab5のグラム陰性細菌である大腸菌への導入について、蛍光顕微鏡観察によってそれぞれ調べた。なお、複合体をDab4-K(-FAM)-Dab5へ変更した以外は、実施例2と同様の手順に従って、細菌株に複合体を導入した。また、実施例2と同様の手順に従って、細菌株にK(-FAM)-Dab9を導入した系も行った。結果を図16に示す。
図16は、菌体を示す写真(下)と共に蛍光顕微鏡像(上)を示している。
図16は、菌からのバックグラウンド蛍光を見ており、すべて同じ露光時間で観察しているため、蛍光強度の大きさが、蛍光団FAMを有するペプチドの量に対応する。
図16に示されるように、本開示の微生物膜透過剤を含む複合体(Dab4-K(-FAM)-Dab5及びK(-FAM)-Dab9)は、大腸菌の菌体内へ導入されることがわかった。
[実施例9]複合体(DabFF)3K-FAMの細菌への導入
本実施例では、グラム陰性細菌である、アシネトバクター・ラジオレジステンス(Acinetobacter radioresistens)、エンテロバクター・ホルマエチェイ(Enterobacter hormaechei)、大腸菌(Escherichia coil)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、プロテウス・ハウセリ(Proteus hauseri)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、セラチア・グリメシー(Serratia grimesii)及びトラブルシエラ・グアメンシス(Trabulsiella guamensis)それぞれへの導入について、蛍光顕微鏡観察によってそれぞれ調べた。菌種と複合体を変更した以外は、実施例2と同様の手順に従って、細菌株に複合体(DabFF)3K-FAMを導入した。また、実施例2と同様にして、ペプチドを加えていない系(Negative control)、細菌株に(KFF)3K-FAMを導入した系も行った。それぞれの細菌を用いた結果を図18〜図25に示す。
上記細菌のNBRC番号は、下記の通りである。
・アシネトバクター・ラジオレジステンス(NBRC102413)
・エンテロバクター・ホルマエチェイ(NBRC105718)
・大腸菌(実施例2と同一種)
・パントエア・アグロメランス(NBRC102470)
・プロテウス・ハウセリ(NBRC3851)
・シュードモナス・フルオレッセンス(NBRC14160)
・セラチア・グリメシー(NBRC13537)
・トラブルシエラ・グアメンシス(NBRC103172)
図18〜図25は、菌体を示す写真(下)と共に蛍光顕微鏡像(上)を示している。
図18〜図25は、菌からのバックグラウンド蛍光を見ており、すべて同じ露光時間で観察しているため、蛍光強度の大きさが、蛍光団FAMを有するペプチドの量に対応する。
図18〜図25に示されるように、本開示の微生物膜透過剤を含む複合体(DabFF)3K-FAMは、各菌体内へ導入されることがわかった。
[実施例10]複合体(Dab)9K-FAMの経時的及び濃度依存的な細胞毒性の評価
本実施例では、蛍光色素FAMと本開示の微生物膜透過剤とを含む複合体((Dab)9K-FAM)を使用した。具体的には、複合体を、細胞と、0μM、2μM及び20μMの濃度で、0時間、1時間及び24時間それぞれインキュベートし、顕微鏡観察により、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞に対する微生物膜透過剤を含む複合体の細胞毒性を評価した。結果を図26に示す。
[実施例11]複合体(Orn)9K-FAMの経時的及び濃度依存的な細胞毒性の評価
本実施例では、蛍光色素FAMと本開示の微生物膜透過剤とを含む複合体((Orn)9K-FAM)を使用した。具体的には、複合体を、細胞と、0μM、2μM及び20μMの濃度で、0時間、1時間及び24時間それぞれインキュベートし、顕微鏡観察により、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞に対する微生物膜透過剤を含む複合体の細胞毒性を評価した。結果を図27に示す。
図26は、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞に対する本開示の複合体Dab9-K-FAMの経時的及び濃度依存的な細胞毒性を示す顕微鏡写真を示している。
図27は、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞に対する本開示の複合体Orn9-K-FAMの経時的及び濃度依存的な細胞毒性を示す顕微鏡写真を示している。
図26及び図27に示されるように、本開示の微生物膜透過剤を含む複合体は、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞に対する細胞毒性が、経時的及び濃度依存的に低く、制限的であることがわかった。

Claims (22)

  1. 4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基を連続して含む第一の膜透過性ペプチド、及び、式(II)のアミノ酸残基を含む第二の膜透過性ペプチドの少なくとも一方を含む微生物膜透過剤。

    〔式(I)及び式(II)中、nは独立して1〜3の整数であり、アミノ酸残基は(R)体又は(S)体のいずれであってもよい。式(II)中、mは1〜5の整数、R及びRはそれぞれ独立に疎水性置換基を表す。式(I)及び式(II)中、*で表される部位は、隣接する部位との結合部位を表す。〕
  2. 第一の膜透過性ペプチドが、(S)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(R)−2,5−ジアミノペンタン酸(Orn)、(S)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(R)−2,4−ジアミノブタン酸(Dab)、(S)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)及び(R)−2,3−ジアミノプロピオン酸(Dap)からなる群より独立して選択される4〜26個の連続したアミノ酸残基からなる膜透過性ペプチドを含む、請求項1に記載の微生物膜透過剤。
  3. 前記第一の膜透過性ペプチドが、少なくとも4個の連続したOrn又はDabを含む、請求項1又は請求項2に記載の微生物膜透過剤。
  4. 前記第一の膜透過性ペプチドが、5〜26個の連続したOrn又はDabからなるものである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤。
  5. 前記第一の膜透過性ペプチドが、5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Orn又は5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の連続した(S)−Dabからなるものである、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤。
  6. 前記第一の膜透過性ペプチドが、6〜26個の連続した同じアミノ酸残基からなるものである、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤。
  7. 前記第一の膜透過性ペプチド又は前記第二の膜透過性ペプチドが、前記式(I)のアミノ酸残基に加えて、1若しくは数個のリジン(Lys)残基若しくはアルギニン(Arg)残基を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤。
  8. 前記第一の膜透過性ペプチドが、前記4〜26個のそれぞれ独立して選択される式(I)のアミノ酸残基からなるブロックを複数有し、前記複数のブロックの間の少なくとも1カ所に、前記式(I)のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基を1個又は2個以上連続して含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤。
  9. 前記式(I)のアミノ酸残基以外のアミノ酸残基が、置換基として標識分子を有するリジン(Lys)残基、又は、置換基として標識分子を有するアルギニン(Arg)残基を含む、請求項8に記載の微生物膜透過剤。
  10. 前記微生物が、真正細菌及び古細菌を含む原核生物、並びに微細藻類、原生生物、菌類及び粘菌を含む真核生物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤。
  11. 前記微生物が、エンテロバクター科、シネコシスティス属、シュードモナス属、アシネトバクター属又はバチラス属の細菌である、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤。
  12. 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤と化合物とを含む複合体。
  13. 前記化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチド核酸、無機物、有機金属化合物、有機化合物、高分子、ナノ粒子、ミセル及びリポソームを含む分子集合体、糖並びに標識物質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項12に記載の複合体。
  14. 前記微生物膜透過剤と化合物とが直接的に又はリンカーを介して連結している、請求項12又は請求項13に記載の複合体。
  15. 前記リンカーが、1〜10個の連続したアミノ酸残基からなるものである、請求項14に記載の複合体。
  16. 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤と化合物とを含む複合体を微生物細胞と接触させることを含む、微生物細胞に化合物を送達する方法。
  17. 前記化合物が、タンパク質、ペプチド、核酸、ペプチド核酸、無機物、有機金属化合物、有機化合物、高分子、ナノ粒子、糖及び標識物質、並びに、ミセル及びリポソームを含む分子集合体、からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記微生物が、真正細菌及び古細菌を含む原核生物、並びに微細藻類、原生生物、菌類及び粘菌を含む真核生物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項16又は請求項17に記載の方法。
  19. 前記微生物が、エンテロバクター科、シネコシスティス属、シュードモナス属、アシネトバクター属又はバチラス属の細菌である、請求項16〜請求項18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤を含む、殺菌剤。
  21. 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤を含む、抗菌剤。
  22. 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の微生物膜透過剤を含む、ラベル化剤。
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