JP2021011441A - 有機化合物、およびそれを有するエレクトロクロミック素子、光学フィルム、レンズユニット、撮像装置、窓材 - Google Patents

有機化合物、およびそれを有するエレクトロクロミック素子、光学フィルム、レンズユニット、撮像装置、窓材 Download PDF

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Abstract

【課題】酸化状態において、従来よりも長波長な波長域に光吸収ピークを有するフェナジン誘導体の提供。【解決手段】下記一般式(1)で表される有機化合物。式中、A1およびA2は、H、または置換基である。ただし、A1およびA2の少なくともいずれかは、アルキル基またはアルコキシ基である。R3は、Hまたは置換基である。A3はハロゲン原子、アルキル基、アルコシキ基、アリール基、アリールオキシ基からそれぞれ独立に選ばれる。R1およびR2は、アルキル基およびアラルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック性の有機化合物、およびそれを有するエレクトロクロミック素子、光学フィルム、レンズユニット、撮像装置、窓材に関する。
電気化学的な酸化還元反応により、物質の光学吸収の性質(呈色状態や光透過度)が変化するエレクトロクロミック(以下「EC」と省略する場合がある)性を有する材料として、種々の材料が知られている。
EC性を有する有機低分子化合物(有機低分子のEC化合物)としては、還元により着色するカソード性EC化合物であるビオロゲン誘導体や、酸化により着色するアノード性EC化合物であるフェナジン誘導体等が挙げられる。
これら低分子のEC化合物は、導電性高分子に比べてπ共役長が短いので、紫外領域にのみ光吸収を有し、可視光領域に吸収を有さない。一方、アノード性EC化合物の場合は酸化状態、カソード性EC化合物の場合は還元状態において可視光を吸収する。酸化状態または還元状態の共役長は、中性状態の共役長よりも長いため、光を吸収する波長領域が可視光の領域となるためである。つまり、有機低分子のEC化合物は、中性状態において消色し、酸化状態または還元状態において着色する。
従来、自動車の調光ミラー、電子ペーパー、調光ガラス等にEC素子が応用されている。これらのEC素子は、材料の選択によって多様な色調の表示が可能であることを利用している。EC素子を利用する上で、多様な色調の材料を創出することが、EC素子の用途を広げるため、盛んに材料開発が行われてきた。例えばフルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合にはシアン、マゼンタ、イエローに着色する材料の利用が好ましい。さらに広汎な用途への応用を考えた場合、着色時に多様な吸収波長を有するEC材料が求められる。
特許文献1には、2位にアルコキシ基を有するフェニル基が置換されているため、酸化状態において580nm程度の波長の光吸収を有し、中性状態において可視光の光吸収を有さないフェナジン誘導体が開示されている。
特開2017―200905号公報
特許文献1に記載のフェナジン誘導体は、2位にアルコキシ基を有するフェニル基が置換されており、酸化状態において580nm程度の波長の光を吸収し、中性状態において可視光領域に光吸収を有さない。しかし、EC素子が多様な色調を表現するためには、さらなる改善の余地があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化状態において従来よりも長波長は波長域に光吸収ピークを有し、中性状態において可視光領域の光吸収が低減された有機化合物を提供することを目的とする。
本発明の一実施形態は、下記一般式(1)で示される有機化合物を提供する。
Figure 2021011441
一般式(1)において、AおよびAは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。ただし、AおよびAの少なくともいずれかは、前記アルキル基または前記アルコキシ基である。Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基からそれぞれ独立に選ばれる。Aはハロゲン原子、アルキル基、アルコシキ基、アリール基、アリールオキシ基からそれぞれ独立に選ばれる。RおよびRは、アルキル基またはアラルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
本発明の一側面としての有機化合物によれば、酸化状態において、従来よりも長波長な波長域に光吸収ピークを有するフェナジン誘導体を提供することができる。
実施形態に係るエレクトロクロミック素子の一例の断面模式図である。 実施形態に係るエレクトロクロミック素子を含む駆動装置の一例を示す模式図である。 (a)光学フィルタがレンズユニットに配置されている撮像装置の一例の模式図である。(b)光学フィルタが撮像装置に配置されている撮像装置の一例の模式図である。 (a)本発明の一実施形態に係るEC素子を用いた窓を示す概観図である。(b)図4(a)のX−X’断面模式図である。 (a)実施例2及び比較例1における例示化合物A−16と比較化合物1のそれぞれの、ラジカル状態における紫外可視吸収スペクトルを示す図である。(b)実施例2及び比較例1における例示化合物A−16と比較化合物1のそれぞれの、中性状態における紫外可視吸収スペクトルを示す図である。
本発明の一実施形態に係る有機化合物は、エレクトロクロミック性(EC性)を有する有機化合物であり、一般式(1)で示される有機化合物である。本明細書においては、エレクトロクロミックをECと略記することがある。また、本明細書においては、透過率が低い状態へ変化することを着色ということがある。逆に透過率が高い状態へ変化することを消色ということがある。
Figure 2021011441
一般式(1)において、AおよびAは、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。ただし、AおよびAの少なくともいずれかは、上記いずれかの置換基であり、好ましくは、前記アルキル基または前記アルコキシ基である。すなわち、AおよびAのいずれもが水素原子であることはない。また、AおよびAの少なくともいずれか一方が、酸素原子を有する置換基であることが好ましい。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基からそれぞれ独立に選ばれる。Rは、A、A以外の位置であれば、いずれの位置にも設けることができる。また、複数のRを設けてもよく、Rが複数ある場合には、それぞれ同じ置換基であっても、異なる置換基であってもよい。
はハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコシキ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基からそれぞれ独立に選ばれる。RおよびRは、置換あるいは無置換のアルキル基または置換あるいは無置換のアラルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
一般式(1)における置換基の具体例を以下に示す。ただし、これらは有機化合物の代表例を例示しただけであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(1)におけるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。また、アルキル基の水素原子がフッ素原子またはエステル基に置き換わっていてもよい。アルキル基は、炭素原子数が1以上20位かであってよい。具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、イソプロピル基、イソブチル基があげられる。
一般式(1)におけるアルコキシ基は、炭素原子数1以上20以下であってよい。例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、エチルヘキシルオキシ基、2−メトキシエトキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
一般式(1)におけるアリール基は、例えば、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、ピレニル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。アリール基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アシル基を置換基として有してよい。アルキル基、アルコキシ基は、好ましくは炭素原子数が1以上4以下である。
一般式(1)におけるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アシル基を置換基として有してよい。アルキル基、アルコキシ基は、好ましくは炭素原子数が1以上4以下である。
一般式(1)におけるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
一般式(1)におけるアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。アラルキル基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アシル基を置換基として有してよい。アルキル基、アルコキシ基は、好ましくは炭素原子数が1以上4以下である。
本発明の一実施形態に係るフェナジン誘導体が置換基を有する2位と7位とは、フェナジン骨格の共鳴の位置ではないため、いずれかに置換基を設けた場合でも、フェナジン誘導体の電子状態に与える影響が小さい。このため、本発明の一実施形態に係るフェナジン誘導体は、置換基からフェナジンのHOMOへの与える影響を低減でき、中性吸収をより短波長化できる。一方、共鳴位置にある2か所に置換基を導入すると、2つの置換基の影響によりHOMOのエネルギーが大きく変わり、中性波長が長波長化することが考えられる。本発明の一実施形態に係るフェナジン誘導体は、フェナジン骨格に対して与える影響が小さい2位、7位に置換基を有するので、中性状態におけるフェナジン誘導体を溶解した状態の吸収をより透明化することができる。
また、本発明者らは、鋭意検討の結果、ラジカルカチオン状態における吸収波長が、より長波長になるフェナジン誘導体の置換基位置を見出した。
以上の通り、本発明の一実施形態に係る有機化合物は、一般式(1)で表される構造であるため、溶媒に溶解させた場合、高い透明性を有する化合物である。また、本発明の一実施形態に係る有機化合物は酸化状態において従来よりも長波長の光を吸収する化合物である。なお、本明細書において、光を窮することを着色すると表現することがある。酸化状態で着色する化合物とは、酸化状態における可視光の透過率が、中性状態における可視光の透過率よりも低い化合物である。フェナジンの骨格に対して、溶媒に対しての溶解度を調整する置換基を設けてよい。
本発明の一実施形態に係る有機化合物のように、フェナジン誘導体の任意の位置に置換基を導入する場合、まず、置換基の付いたフェナジン骨格を合成する手段をとることができる。フェナジン骨格の合成は、アニリン誘導体とニトロベンゼン誘導体から合成する方法が知られているが、このルートで2,7−位に置換基を有するフェナジン誘導体を合成するときは、1,6−位に置換基を有するフェナジン誘導体が同時に生成する。2,7−位に置換基を有するフェナジン誘導体と、1,6−位に置換基を有するフェナジン誘導体とは、分離しにくい場合があるので、設ける置換基を工夫することにより、容易に分離できるよう合成することが好ましい。本明細書では、一例として、2位の置換基に立体障害基を導入することにより2,7−位に置換基を有するフェナジン誘導体を選択的に合成した。
本発明の一実施形態に係る有機化合物を製造する方法については特に制限はないが、例えば、以下に示す方法によって製造することができる。
Figure 2021011441
3−ハロゲノアニリンと所望の置換基A、A及びRを有するフェニルボロン酸誘導体とのカップリング反応を行い、中間体1を合成することができる。中間体1とパラ位に所望の置換基Aを有するニトロベンゼン誘導体との反応を行うことで中間体2を合成することができる。
Figure 2021011441
中間体2の環化反応を行うと、中間体3と中間体4が得られる。ここで得られる中間体3と中間体4は極性が近いため分離しにくいと考えられる。ここで、置換基A1と置換基A2の立体障害を導入することで、中間体4が生成しにくくなり、中間体3の選択率が向上する。また、中間体3と中間体4の混合物が得られた場合、窒素原子のアルキル化反応の際に置換基Aと置換基Aの立体障害により、化合物(2)の生成を抑え化合物(1)の選択率を向上することができる。ここでも化合物(1)と化合物(2)の極性は類似しているため分離はしにくいと考えられるが、立体障害により化合物(2)の生成を低減することで化合物(1)の単離が容易になる。
すなわち、合成の観点からも、AとAとの少なくともいずれか一方、好ましくは双方が、水素原子ではない、置換基であることが好ましい。より好ましくは、AとAとの少なくともいずれか一方が、炭素原子数1以上20以下のアルキル基または炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基であることが好ましい。
以下に本発明の一実施形態に係る有機化合物の具体的な構造式を例示する。ただし、本発明に係る化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2021011441
Figure 2021011441
本発明の一実施形態に係る有機化合物は、安定な着色を示すエレクトロクロミック材料であり、EC素子、それを用いた光学フィルタ、レンズユニットおよび撮像装置等に利用することができる。
[EC素子]
本発明の一実施形態に係るEC化合物は、エレクトロクロミック素子のエレクトロクロミック層として用いることができる。以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係るエレクトロクロミック素子について説明する。
図1のEC素子1は、一対の透明基板10と、一対の電極11、一対の電極の間に配置されているEC層12を有する。一対の電極は、スペーサー13によって、電極間距離が一定となっている。
EC層は、本発明に係る有機化合物を有している。このEC層は、EC化合物からなる層と、電解質からなる層とを有してもよい。また、EC化合物と電解質とを有する溶液としてEC層を設けてもよい。このような形態をEC層が溶液層であるということができる。本発明の一実施形態に係るEC素子は、EC層が溶液層であることが好ましい。EC層が溶液層である場合、EC性の有機化合物、溶液、その他の溶解物をまとめて、EC媒体と呼ぶことがある。
次に、本発明の一実施形態に係るEC素子を構成する部材について説明する。
電解質としては、イオン解離性の塩であり、かつ溶媒に対して良好な溶解性、固体電解質においては高い相溶性を示すものであれば限定されない。中でも電子供与性を有する電解質が好ましい。これら電解質は、支持電解質と呼ぶこともできる。電解質としては、例えば、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機イオン塩や4級アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩などがあげられる。具体的にはLiClO、LiSCN、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiPF、LiI、NaI、NaSCN、NaClO、NaBF、NaAsF、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(n−CNPF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO等の4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩等が挙げられる。
EC化合物および電解質を溶かす溶媒としては、EC化合物や電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性を有するものが好ましい。具体的には水や、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン等の有機極性溶媒が挙げられる。
さらに、上記EC媒体に、ポリマーやゲル化剤を含有させて粘稠性が高いもの若しくはゲル状としたもの等を用いることもできる。これらポリマーやゲル化剤は、増粘剤と呼ぶこともできる。増粘剤を有し、EC溶液の粘度を増すことで、有機化合物が会合体を形成しにくくなり、吸収スペクトルの温度依存性を低減することができる。したがって、EC溶液は、増粘剤を有することが好ましい。
EC溶液の粘度は、10cP以上5000cP以下であってよく、50cP以上1000cP以下であってよい。EC溶液の粘度は、150cP以下であってよく、好ましくは100cP以下、さらに好ましくは65cP以下である。また、EC溶液の粘度は、20cP以上であってよく、好ましくは50cP以上である。
増粘剤は、EC溶液全体の重量を100wt%とした場合、20wt%以下の重量比であってよい。好ましくは、1wt%以上15wt%以下であり、より好ましくは、5wt%以上10wt%以下である。
上記ポリマーとしては、特に限定されず、例えばポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアルキレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ナフィオン(登録商標)などが挙げられる。ポリメチルメタクリレートやポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。
EC溶液の粘度が高い場合、EC溶液内の分子の動きを抑制できるので、会合を抑制できる場合がある。一方で、EC溶液内の電子の動きを抑制するので、EC素子の応答速度が小さくなるので、粘度が大きすぎるのは好ましくない。
次に、透明基板および透明電極について説明する。透明基板としては、例えば、無色あるいは有色ガラス、強化ガラス等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性樹脂が用いられる。なお、本発明の一実施形態において透明とは、可視光の透過率が90%以上の透過率であることを示す。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリノルボルネン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
透明電極の材料としては、例えば、酸化インジウムスズ合金(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化銀、酸化バナジウム、酸化モリブデン、金、銀、白金、銅、インジウム、クロムなどの金属や金属酸化物、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系材料、カーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン等の炭素材料などを挙げることができる。また、ドーピング処理などで導電率を向上させた導電性ポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。
さらに、電極上に多孔質電極を有していてもよい。多孔質電極は表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、ロット形状、ワイヤ形状等表面積が大きい材料が好ましい。多孔質電極の材料は、例えば、金属、金属酸化物、カーボン等が適用できる。より好ましくは酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、酸化ストロンチウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化インジウム、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化コバルト等の金属酸化物である。
スペーサーは、一対の透明電極の間に配置されており、本発明のEC化合物を有するEC層を収容するための空間を与えるものである。具体的には、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等を用いることができる。このスペーサーにより、EC素子の電極間距離を保持することが可能である。
本発明の一実施形態に係るEC素子は、一対の電極とスペーサーとによって、形成される液体注入口を有してもよい。液体注入口からEC化合物を有する組成物を封入したのちに、封止部材により注入口を覆い、さらに接着剤等で密閉することで素子とすることができる。封止部材は、接着剤とEC化合物が接触しないように隔離する役割も担っている。封止部材の形状は、特に限定されないが、楔形等の先細り形状が好ましい。
本発明の一実施形態に係るEC素子の形成方法は特に限定されず、一対の電極基板の間に設けた間隙に、真空注入法、大気注入法、メニスカス法等によって予め調製したEC化合物を含有する液体を注入する方法を用いることができる。
本発明の一実施形態に係るEC素子は、本発明の一実施形態に係る有機化合物と、この有機化合物とは別種の有機化合物(第2の有機化合物)とを有してもよい。第2の有機化合物は、一種類でも複数種種類でもよく、酸化状態で着色する化合物でも、還元状態で着色する化合物でも、その双方の性質を有する化合物であってもよい。一般式(1)で表される有機化合物は還元状態において着色する化合物なので、第2の有機化合物は、酸化状態で着色する化合物であることが好ましい。酸化状態で着色する化合物とは、酸化状態における可視光の透過率が、還元状態における可視光の透過率よりも低い化合物である。可視光領域のいずれかで透過率が変化すればよく、可視光の全域で透過率が変化しなくてもよい。具体的には、4,4‘−ビピリジン化合物をはじめ、4,4’−ビピリジン化合物に、アルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基を有する化合物があげられる。また、第2の有機化合物は、フェナジンと同じアノード性であってもよく、例えば、フェナジン化合物、メタロセン化合物、フェニレンジアミン化合物、ピラゾリン化合物があげられる。
本発明の一実施形態に係る有機化合物は、他の色の着色材料と組み合わせることによって、EC素子として所望の色を吸収することができる。着色時における別種の有機化合物は、400nm以上800nm以下の範囲に吸収波長を有することが好ましく、より好ましくは、420nm以上700nm以下に吸収波長を有することである。吸収波長を特定の範囲に有するとは、吸収スペクトルのピークが特定の範囲にあればよい。本発明の有機化合物と他の材料を複数組み合わせることによって、可視領域を全て吸収し、黒色着色するEC素子を作製することもできる。
本発明の一実施形態に係るEC素子は、本発明に係る有機化合物と合わせて、5種類以上のEC化合物を有することが好ましい。EC素子を有するフィルタが、各波長の光を均一に吸収しやすいためである。
本発明の一実施形態に係る他のEC化合物として、例えば、下記構造式の化合物があげられる。
酸化状態で着色する他のEC化合物としては、オリゴチオフェン系化合物、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン、5,10−ジヒドロ−5,10−ジイソプロピルフェナジンなどのフェナジン系化合物、フェロセン、テトラ−t−ブチルフェロセン、チタノセンなどのメタロセン系化合物、N,N’,N,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン系化合物、1−フェニル−2−ピラゾリンなどのピラリゾン系化合物などが挙げられる。
還元状態で着色する化合物としては、N,N’−ジヘプチルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジヘプチルビピリジニウムジテトラフフオロボレート、N,N’−ジヘプチルビピリジニウムジヘキサフルオロホスフェート、N,N’−ジエチルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジエチルビピリジニウムジテトラフルオロボレート、N,N’−ジエチルビピリジニウムジヘキサフルオロホスフェート、N,N’−ジベンジルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジベンジルビピリジニウムジテトラフルオロボレート、N,N’−ジベンジルビピリジニウムジヘキサフルオロホスフェート、N,N’−ジフェニルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジフェニルビピリジニウムジテトラフロロボレート、N,N’−ジフェニルビピリジニウムジヘキサフロロホスフェートなどのビオロゲン系化合物、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノンなどのアントラキノン系化合物、フェロセニウムテトラフルオロボレート、フェロセニウムヘキサフルオロホスフェートなどのフェロセニウム塩系化合物、スチリル化系化合物などが挙げられる。
本発明の一実施形態において、フェナジン系化合物とは、化学構造中に5,10−ジヒドロフェナジン骨格を含む化合物である。フェナジン系化合物は、5,10−ジヒドロフェナジンに置換基を有する化合物を含む。例えば、5,10−ジヒドロフェナジンの5、10位の水素原子が、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基等のアリール基に置換されてもよい。また、フェナジン系化合物は、5,10−ジヒドロフェナジンに炭素原子数1以上20以下のアルキル基を有する化合物であってよい。また、5,10−ジヒドロフェナジンに炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基を有する化合物であってよい。また、5,10−ジヒドロフェナジンに炭素原子数4以上60以下のアリール基を有する化合物であってよい。他の化合物、例えばビオロゲン系化合物、についても同様である。
第2の有機化合物としては、上記の中でもフェナジン系化合物、メタロセン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ピラゾリン系化合物のいずれかであることが好ましい。
本発明の一実施形態に係るEC素子が有するEC層に含まれる化合物は、公知の方法により抽出し、分析することで、EC素子に含まれていることを確認することができる。例えば、クロマトグラフィーにより抽出し、NMRで分析することが挙げられる。また、エレクトロクロミック層が固体である場合は、TOF−SIMSなどにより、分析することができる。
[EC素子の用途]
本発明の一実施形態に係るEC素子は、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材等に用いることができる。
<光学フィルタ>
本発明の一実施形態に係る光学フィルタは、EC素子とEC素子に接続されている能動素子を有する。能動素子は、EC素子を駆動し、EC素子を通過する光の光量を調整する能動素子である。能動素子は、例えば、トランジスタ等が挙げられる。トランジスタは活性領域に、InGaZnOなどの酸化物半導体を有してもよい。
光学フィルタは、本発明の一実施形態に係るEC素子と、EC素子に接続されている駆動装置とを有している。図2は、EC素子の駆動装置20と、駆動装置20が駆動するEC素子の一例を示す模式図である。本発明の一実施形態のEC素子1の駆動装置20は、駆動電源8、抵抗切替器9、および制御器7を有する。
駆動電源8は、EC層に含まれるEC材料が電気化学反応を生じるのに必要な電圧をEC素子に印加する。駆動電圧は一定電圧であることがより好ましい。これは、EC材料が複数種類の材料で構成される場合は、材料の酸化還元電位差やモル吸光係数の差に起因して吸収スペクトルが変化する場合があるため、一定電圧であることが好ましいからである。駆動電源8の電圧印加開始あるいは印加状態の保持は制御器7の信号で行われ、EC素子の光透過率を制御する期間においては、一定電圧の印加状態が保持されている。
制御器7によるEC素子の透過率の制御方法は、用いられる素子に適した方法が採用される。具体的には、所望の透過率の設定値に対して、予め規定されている条件をEC素子1に入力する方法や、透過率の設定値とEC素子1の透過率を比較して、設定値に合うように条件を選択して入力する方法が挙げられる。変化させるパラメータとしては、電圧、電流、デューティー比を挙げることができる。制御器7は、電圧、電流またはデューティー比を変化させることで、EC素子の着色濃度を変化させることができる。
本発明の一実施形態において、電圧の変更、電流の変更、パルス幅の変調は、公知の手段を用いることができる。またパルス幅の変調は、以下のように行うこともできる。
抵抗切替器9は、駆動電源8とEC素子を含む閉回路中に、不示図の抵抗R1と抵抗R1よりも大きな抵抗R2とを切り替えて直列に接続するものである。抵抗R1の抵抗値としては、少なくとも素子閉回路の最も大きなインピーダンスよりも小さいことが好ましく、好ましくは10Ω以下である。抵抗R2の抵抗値としては、素子閉回路の最も大きなインピーダンスよりも大きいことが好ましく、好ましくは1MΩ以上である。なお、抵抗R2は空気であっても良い。この場合、厳密には閉回路は開回路となるが、空気を抵抗R2と見なすことで閉回路と考えることができる。
制御器7は、抵抗切替器9に切替信号を送り、抵抗R1と抵抗R2のスイッチングを制御する。
<レンズユニット>
本発明の一実施形態に係るレンズユニットは、複数のレンズを有する撮像光学系と、EC素子1を有する光学フィルタとを有している。光学フィルタは、複数のレンズの間またはレンズの外側のいずれに設けられていてもよい。光学フィルタは、レンズの光軸上に設けられることが好ましい。
<撮像装置>
本発明の一実施形態の撮像装置は、光学フィルタと、この光学フィルタを通過した光を受光する受光素子と、を有する。撮像装置とは、具体的には、カメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話等が挙げられる。撮像装置は、受光素子を有する本体と、レンズを有するレンズユニットとが分離できる形態であってもよい。ここで撮像装置が、本体と、レンズユニットとで分離できる場合は、撮像時に撮像装置とは別体の光学フィルタを用いる形態も本発明に含まれる。なお、係る場合、光学フィルタの配置位置としては、レンズユニットの外側、レンズユニットと受光素子との間、複数あるレンズの間(レンズユニットが複数のレンズを有する場合)等が挙げられる。
図3(a)光学フィルタがレンズユニットに配置されている撮像装置の一例の模式図であり、図3(b)光学フィルタが撮像装置に配置されている撮像装置の一例の模式図である。
撮像装置100は、レンズユニット102と、撮像ユニット103と、を有する撮像装置である。レンズユニット102は、光学フィルタ101と、複数のレンズまたはレンズ群を有する撮像光学系と、を有する。光学フィルタ101は、上述の本発明の一実施形態の光学フィルタである。
レンズユニット102は、例えば、図3(a)において、絞りより後でフォーカシングを行うリアフォーカス式のズームレンズを表している。物体側より順に正の屈折力の第1のレンズ群104、負の屈折力の第2のレンズ群105、正の屈折力の第3のレンズ群106、正の屈折力の第4のレンズ群107の4つのレンズ群を有する。第2のレンズ群105と第3のレンズ群106の間隔を変化させて変倍を行い、第4のレンズ群107の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う。
レンズユニット102は、例えば、第2のレンズ群105と第3のレンズ群106との間に開口絞り108を有し、また、第3のレンズ群106と第4のレンズ群107との間に光学フィルタ101を有する。レンズユニットを通過する光は、各レンズ群104〜107、絞り108および光学フィルタ101を通過するよう配置されており、開口絞り108および光学フィルタ101を用いた光量の調整を行うことができる。
レンズユニット102は、マウント部材(不図示)を介して撮像ユニット103に着脱可能に接続されている。
なお、本発明の一実施形態では、レンズユニット102内の第3のレンズ群106と第4のレンズ群107との間に光学フィルタ101が配置されているが、撮像装置100はこの構成に限定されない。例えば、光学フィルタ101は、開口絞り108の前(被写体側)あるいは後(撮像ユニット103側)のいずれにあってもよく、また、第1〜第4のレンズ群104〜107のいずれの前、後、レンズ群の間にあってもよい。なお、光学フィルタ101を光の収束する位置に配置すれば、光学フィルタ101の面積を小さくできるなどの利点がある。
また、レンズユニット102の構成も上述の構成に限定されず、適宜選択可能である。例えば、リアフォーカス式の他、絞りより前でフォーカシングを行うインナーフォーカス式であっても良く、その他方式であっても構わない。また、ズームレンズ以外にも魚眼レンズやマクロレンズなどの特殊レンズも適宜選択可能である。
撮像ユニット103は、ガラスブロック109と、受光素子110と、を有する。ガラスブロック109は、ローパスフィルタやフェースプレートや色フィルタ等のガラスブロックである。また、受光素子110は、レンズユニットを通過した光を受光するセンサ部であって、CCDやCMOS等の撮像素子が使用できる。また、フォトダイオードのような光センサであっても良く、光の強度あるいは波長の情報を取得し出力するものを適宜利用可能である。
図3(a)のように、光学フィルタ101がレンズユニット102に組み込まれている場合、駆動装置はレンズユニット102内に配置されてもよく、レンズユニット102外に配置されてもよい。レンズユニット102外に配置される場合は、配線を通してレンズユニット102の内のEC素子1と駆動装置を接続し、駆動制御する。
また、上述の撮像装置100の構成では、光学フィルタ101がレンズユニット102の内部に配置されている。しかし、本発明はこの形態に限らず、光学フィルタ101は、撮像装置100内部の適当な箇所に配置され、受光素子110は光学フィルタ101を通過した光を受光するよう配置されていればよい。
例えば、図3(b)に示したように、撮像ユニット103が光学フィルタ101を有していてもよい。図3(b)は、本発明の一実施形態の撮像装置の別の一例の構成を説明する図であり、光学フィルタを撮像ユニット103に有する撮像装置の構成の模式図である。図3(b)においては、例えば光学フィルタ101は受光素子110の直前に配置されている。撮像装置自体が光学フィルタ101を内蔵する場合、接続されるレンズユニット102自体が光学フィルタ101を持たなくてもよいため、既存のレンズユニット102を用いた調光可能な撮像装置を構成することが可能となる。
本発明の一実施形態の撮像装置100は、光量調整と受光素子の組合せを有する製品に適用可能である。例えばカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラに使用可能であり、また、携帯電話やスマートフォン、PC、タブレットなど撮像装置を内蔵する製品にも適用できる。
本発明の一実施形態の撮像装置100によれば、光学フィルタ101を調光部材として用いることにより、調光量を一つのフィルタで適宜可変させることが可能となり、部材点数の削減や省スペース化といった利点がある。
<窓>
本発明の一実施形態に係る窓は、EC素子とEC素子に接続されている能動素子を有する。能動素子は、EC素子を駆動し、EC素子を通過する光の光量を調整する能動素子である。能動素子は、例えば、トランジスタ等が挙げられる。トランジスタは活性領域に、InGaZnOなどの酸化物半導体を有していてもよい。本発明の一実施形態に係る窓は、透過率可変窓と呼ぶこともできる。
図4(a)は本発明の一実施形態に係るEC素子を用いた窓材としての調光窓を示す概観図であり、図4(b)は図4(a)のX−X’断面図を示す模式である。本発明の一実施形態の調光窓111は、EC素子1(光学フィルタ)と、それを挟持する透明板113と、全体を囲繞して一体化するフレーム112とから成る。EC素子1は不示図の駆動装置を有しており、駆動装置はフレーム112内に一体化されていても良く、フレーム112外に配置され配線を通してEC素子1と接続されても良い。
透明板113は光透過率が高い材料であれば特に限定されず、窓としての利用を考慮すればガラス素材であることが好ましい。フレーム112の材質は問わないが、EC素子1の少なくとも一部を被覆し、一体化された形態を有するもの全般をフレームとして見なして構わない。図4においてEC素子1は透明板113とは独立した構成部材であるが、例えば、EC素子1の透明基板10を透明板113と見なしても構わない。
係る調光窓は、例えば日中の太陽光の室内への入射量を調整する用途に適用できる。太陽の光量の他、熱量の調整にも適用できるため、室内の明るさや温度の制御に使用することが可能である。また、シャッターとして、室外から室内への眺望を遮断する用途にも適用可能である。このような調光窓は、建造物用のガラス窓の他に、自動車や電車、飛行機、船など乗り物の窓にも適用可能である。
このように、一般式(1)で表わされる有機化合物をEC層12に含むEC素子1を、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材等に用いることができる。本発明の一実施形態の光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材のそれぞれは、一般式(1)で表わされる有機化合物単独、あるいは他の波長帯域の着色吸収を有するEC化合物と組み合わせることにより、様々な吸収色を提供することが可能となる。また、本発明の一実施形態の光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材のそれぞれは、一般式(1)で表わされる有機化合物を含むため、消色状態における透明性を向上することができる。
また、エレクトロクロミック素子の一方の光の経路に反射部材を設けることで、エレクトロクロミックミラーとすることもできる。エレクトロクロミックミラーは、防眩ミラーとして、自動車に設けられてよい。
以下、実施例について説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
<例示化合物A−16の合成>
Figure 2021011441
反応容器に0.86gの3−ブロモアニリン(5.0mmol)、1.47mgの2−イソプロポキシ−6−メトキシフェニルボロン酸(7.0mmol)を、トルエン/1,4−ジオキサン(12ml/12ml)混合溶媒中で混合し、窒素で溶存酸素を除去した。次に45mgのPd(OAc)を(0.20mmol)、205mgの2−ジシクロヘキシルフォスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−Phos)(0.5mmol)、5.8gのリン酸三カリウム(25mmol)を、窒素雰囲気下で反応溶液に添加し、100℃にて加熱還流し8時間反応を行った。反応溶液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:トルエン)により分離精製し、中間体11を得た(0.99mg、収率77%)
Figure 2021011441
反応容器に1.29gのカリウムtert−ブトキシド(11.6mmol)、20mlのテトラヒドロフランを仕込み、−78℃に冷却した。この溶液に0.83gの4―ニトロジフェニルエーテル(3.86mmol)を5mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液をゆっくりと滴下し、さらに0.99gの中間体11(3.86mmol)を5mlのテトラヒドロフランに溶解した溶液をゆっくりと滴下した。さらに約1時間撹拌した後、6mlの酢酸を滴下した。この溶液を室温まで昇温した後、塩化アンモニウム水溶液を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後に減圧乾固を行った。シリカゲルカラムクロマト(溶離液:ヘキサン/トルエン=2/1)で精製し、0.98gの中間体12(収率:59%)を得た。
Figure 2021011441
反応容器に0.99gの中間体12(2.26mmol)、2.81gのアセトニトリル15、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを加え、室温にて約24時間撹拌した。反応溶液をロータリーエバポレーターで減圧乾固を行った。シリカゲルカラムクロマト(溶離液:ヘキサン/トルエン=1/1)で精製し、0.80gの中間体13(収率:81%)を得た。この時、中間体13の異性体は観察されなかった。
NMR測定により、中間体13の構造を確認した。
H NMR(CDCl,500MHz) σ(ppm):8.24(d,1H),8.18(d,1H),8.15(s,1H),7.83(m,1H),7.77(m,1H),7.47(m,2H),7.43(m,1H),7.33(m,2H),7.25(m,2H),6.71(m,2H),4.47(m,1H),3.78(s,1H),1.18(d,6H).
Figure 2021011441
反応容器に、0.44gの中間体13(1.0mmol)と、3.4gの2−ヨードプロパン(20mmol)と、をアセトニトリル/水(10ml/1ml)混合溶媒中で混合し、窒素で溶存酸素を除去した。次に、1.0gのハイドロサルファイトナトリウム(5.0mmol)と、0.83gの炭酸カリウム(6.0mmol)と、を窒素雰囲気下で添加し、90℃にて加熱還流し9時間反応を行った。反応溶液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/トルエン=1/1)により分離精製し、470mgの例示化合物A−16(収率90%)を得た。
NMR測定により、例示化合物A−16の構造を確認した。
H NMR(acetone−d6,500MHz) σ(ppm):7.35(m,2H),7.18(m,1H),7.06(m,1H),6.99(m,2H),6.80(m,4H),6.71(m,2H),6.47(d,1H),6.44(m,1H),4.46(m,1H),4.09(m,1H),3.73(s,1H),1.49(m,12H),1.18(d,6H).
[実施例2]
<エレクトロクロミック素子の作製および特性評価>
電解質として過塩素酸テトラブチルアンモニウムを0.1Mの濃度で炭酸プロピレンに溶解させ、次いで実施例1の例示化合物A−16を40.0mMの濃度で溶解させ、EC媒体を得た。
次いで一対の透明電極(ITO)付きのガラス基板の四方の端部に絶縁層(SiO)を形成した。基板間隔を規定するPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製メリネックスS(登録商標)、125μm)を一対の透明電極付きガラス基板の間に配置した。その後、EC媒体注入用の注入口を残してエポキシ系接着剤により基板と、PETフィルムを接着し、封止した。以上のように、注入口付き空セルを作製した。
次に前述の注入口より、上で得られたEC媒体を真空注入法により注入後、注入口をエポキシ系接着剤により封止し、EC素子とした。
作製直後の本EC素子は可視光領域全域にわたり、80%前後の透過率を示し、高い透明性を有していた。
この素子に電圧を2.0V印加すると、例示化合物A−16の酸化種に由来する吸収(λmax=570nm)を示し、素子は着色した。その後−0.5V印加すると消色した。この素子は着色状態と、消色状態と、を可逆的に変化できる。
[比較例1]
Figure 2021011441
例示化合物A−16と置換器の位置が異なる比較化合物1を実施例2と同様の方法で、エレクトロクロミック素子の作製および特性評価を行った。この素子に電圧を2.0V印加すると、比較化合物1の酸化種に由来する吸収(λmax=543nm)を示し、素子は着色した。
図5(a)は、実施例2と比較例1で作製した素子のラジカル状態の紫外可視吸収スペクトルである。光源には、オーシャンオプティクス社のDH−2000S重水素、ハロゲン光源を用いた。例示化合物A−16がより長波長のラジカル吸収であることがわかる。なお、650nm付近に表れているスペクトルの乱れは、光源の影響によるものであり、化合物の吸収スペクトルとは無関係のものである。化合物のスペクトルは、乱れの前後をつないだものになる。
図5(b)は、実施例2と比較例1で作製した素子の中性状態の紫外可視吸収スペクトルである。実施例2のEC素子と比較例1の素子のいずれも、紫外領域のピークを有し、可視光領域に吸収を有していない。すなわち、透明であることがわかる。
[実施例3]
置換基の相関を比較するための例として、本発明に係る化合物A−16と比較化合物1、2及び3について、分子軌道計算によりラジカル状態の吸収波長および中性状態の吸収波長の検証を行った。有機化合物は分子軌道計算により、化合物の特性を推測することができる。計算値が実測値と一致するとは限らないが、その順序は実測と一致するので、設計の指針を得ることができるので、広く用いられている。
Figure 2021011441
Figure 2021011441
上記の様に、同じ置換基を有する化合物のうち、本発明の一実施形態に係る2,7−位に置換基を有するフェナジン誘導体がより長波長な光を吸収することがわかる。また、フェナジンの2位と7位は共鳴の位置関係にないため、同じ置換基を有する化合物のうち、中性吸収が他の置換位置に比して短波であり、溶液の透明性を向上することができる。
なお、分子軌道計算は、電子状態計算ソフトウェアであるGaussian03*Revision D.01を用いて基底状態の構造最適化計算を行なったものである。その際、量子化学計算法として、密度汎関数法(Density Functional Theory)を採用し、汎関数にはB3LYPを用いた。基底関数はGaussian 03, Revision D.01では6−31G*を用いた。
本計算を行うに当たり使用したプログラムは、 Gaussian 09, Revision D.01( M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria, M. A. Robb, J. R. Cheeseman, G. SCALMANI, V. Barone, B. Mennucci, G. A. Petersson, H. Nakatsuji, M. Caricato, X. Li, H. P. Hratchian, A. F. Izmaylov, J. Bloino, G. Zheng, J. L. Sonnenberg, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota, R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao, H. Nakai, T. Vreven, J. A. Montgomery, Jr., J. E. Peralta, F. Ogliaro, M. Bearpark, J. J. Heyd, E. Brothers, K. N. Kudin, V. N. Staroverov, T. Keith, R. Kobayashi, J. Normand, K. Raghavachari, A. Rendell, J. C. Burant, S. S. Iyengar, J. Tomasi, M. Cossi, N. Rega, J. M. Millam, M. Klene, J. E. Knox, J. B. Cross, V. Bakken, C. Adamo, J. Jaramillo, R. Gomperts, R. E. Stratmann, O. Yazyev, A. J. Austin, R. Cammi, C. Pomelli, J. W. Ochterski, R. L. Martin, K. Morokuma, V. G. Zakrzewski, G. A. Voth, P. Salvador, J. J. Dannenberg, S. Dapprich, A. D. Daniels, O. Farkas, J. B. Foresman, J. V. Ortiz, J. Cioslowski, and D. J. Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2013.)である。

Claims (14)

  1. 下記一般式(1)で示されることを特徴とする有機化合物。
    Figure 2021011441

    一般式(1)において、AおよびAは、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基からそれぞれ独立に選ばれる。ただし、AおよびAの少なくともいずれかは、前記アルキル基または前記アルコキシ基である。
    は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基からそれぞれ独立に選ばれる。
    はハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコシキ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアリールオキシ基からそれぞれ独立に選ばれる。RおよびRは、置換あるいは無置換のアルキル基および置換あるいは無置換のアラルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
  2. 前記Aおよび前記Aの少なくともいずれか一方が、酸素原子を有する置換基であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
  3. 前記Aおよび前記Aが、いずれも前記アルコキシ基から選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の有機化合物。
  4. 前記Aが、前記アリールオキシ基であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機化合物。
  5. 前記Rおよび前記Rが、いずれも前記アルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機化合物。
  6. 第一電極と第二電極と前記第一電極と前記第二電極との間に配置されている有機化合物を有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記有機化合物は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機化合物であることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  7. 前記エレクトロクロミック素子は、前記第一電極と前記第二電極との間にエレクトロクロミック層を有し、前記エレクトロクロミック層に前記有機化合物が含まれていることを特徴とする請求項6に記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 前記エレクトロクロミック層は、前記有機化合物とは別種の有機化合物を有することを特徴とする請求項7に記載のエレクトロクロミック素子。
  9. 前記別種の有機化合物は、フェナジン化合物、メタロセン化合物、フェニレンジアミン化合物、ピラゾリン化合物のいずれかであることを特徴とする請求項8に記載のエレクトロクロミック素子。
  10. 前記エレクトロクロミック層は、電解質と前記有機化合物とを有する液体であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  11. 請求項6乃至10のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする光学フィルタ。
  12. 複数のレンズを有する撮像光学系と、前記撮像光学系を透過した光を、透過または吸収する光学フィルタとを有し、前記光学フィルタが請求項11に記載の光学フィルタであることを特徴とするレンズユニット。
  13. 複数のレンズを有する撮像光学系と、前記撮像光学系を透過した光を受光する撮像素子と、前記撮像光学系と、前記撮像素子との間に配置されている光学フィルタを有し、前記光学フィルタが請求項11に記載の光学フィルタであることを特徴とする撮像装置。
  14. 第一の透明基板と、第二の透明基板とを有し、前記第一の透明基板と前記第二の透明基板との間に配置されている、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする窓材。
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