JP2018024624A - 有機化合物及びそれを有するエレクトロクロミック素子、光学フィルム、レンズユニット、撮像装置 - Google Patents

有機化合物及びそれを有するエレクトロクロミック素子、光学フィルム、レンズユニット、撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】着色状態でイエローを示し、消色時の透明性と酸化還元反応の可逆性が高く、且つ消費電力の低減可能な、エレクトロクロミック機能を有する有機化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表わされる有機化合物。
Figure 2018024624

[R〜R11は夫々独立にH、ハロゲン、アルキル、アルコキシ等。X及びYは、アルキル、アルコキシ、アリール、アラルキル又はヘテロアリール;A 及びA はアニオン]
【選択図】図4

Description

本発明は、有機化合物、及びそれを有するエレクトロクロミック素子、光学フィルム、レンズユニット、撮像装置に関する。
エレクトロクロミック素子は、一対の電極とその間に配置されているエレクトロクロミック層を有する素子であり、電極における酸化還元反応により、素子を透過する光の透過率を変化させることができる。
電気化学的な酸化還元反応により、物質の光学吸収の性質(呈色状態や光透過度)が変化するエレクトロクロミック(以下「EC」と省略する場合がある)材料としては種々の材料が知られている。有機EC材料として、ポリチオフェンやポリアニリンなどの導電性高分子やオリゴチオフェンなどの有機低分子化合物などが知られている。
有機低分子のEC化合物としては、還元により着色する(カソード性化合物)ビオロゲン誘導体や、酸化により着色する(アノード性化合物)フェナジン誘導体等が挙げられる。
特許文献1乃至3には、2つのピリジンの間にフェニレン基を有する下記構造式Aの有機化合物、2つのピリジンの間にピラジレン基を有する下記構造式Bの有機化合物、2つのピリジンの間にピリミジレン基を有する下記構造式Cの有機化合物が記載されている。これらは、ビオロゲンの還元時の吸収波長を長波長化させた有機化合物である。
Figure 2018024624
Figure 2018024624
Figure 2018024624
特開2015−124228号公報 特開2013−193991号公報 米国特許出願公開2012−0069418号 明細書
特許文献1乃至3に記載の有機化合物は、還元電位の大きさ、酸化還元の繰り返しに対する安定性、消色時の透明性の少なくともいずれかに改善の余地があった。
特許文献1に記載の構造式Aで表わされる有機化合物は、還元電位の絶対値が大きい有機化合物である。EC化合物の還元電位の絶対値が大きい場合、それを有する有機EC素子の消費電力が大きい。
特許文献2、3に記載の構造式Bで表わされる有機化合物は、酸化還元の繰り返しに対する安定性が低い有機化合物である。これら有機化合物は着色状態における安定性が低いためである。2つのピリジンの間にピリダジレン基を有する有機化合物においても同様である。
特許文献3に記載の構造式Cで表わされる有機化合物は、消色時の透明性が低い有機化合物である。
ピリミジレン基と、ピリジン環との間で平面構造をとりやすいためである。
本発明は、還元電位の絶対値が小さく、酸化還元の繰り返しに対する安定性が高く、消色時の透過率が高い有機化合物を提供することを目的とする。
そこで、本発明は、下記一般式(1)で表わされることを特徴とする有機化合物を提供する。
Figure 2018024624
一般式(1)において、R乃至R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアラルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。R乃至R11は、隣り合う置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
前記アリール基、前記アラルキル基が置換基を有する場合、前記置換基はハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選ばれる。
一般式(1)において、XおよびYは、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のヘテロアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記アリール基、前記アラルキル基および前記ヘタリール基が置換基を有する場合、前記置換基はハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選ばれる。A 、A はアニオンを表す。
本発明によれば、還元電位の絶対値が小さく、酸化還元の繰り返しに対する安定性が高く、消色時の透過率が高い有機化合物を提供できる。
例示化合物B−1の着色状態の紫外可視吸収スペクトルおよび消色状態の紫外可視吸収スペクトルである。 本実施形態に係るエレクトロクロミック素子の一例の断面模式図である。 本実施形態に係るレンズユニットの断面模式図である。 本実施形態に係る撮像装置の断面模式図である。
本発明に係る有機化合物は、エレクトロクロミック性(EC性)を有する有機化合物である。下記一般式(1)で表わされる構造を有するため、還元電位の絶対値が小さく、酸化還元の繰り返しに対する安定性が高く、消色時の透過率が高いという性質を有する。一般式(1)で表わされる有機化合物は、還元状態(着色状態)において、500nm付近に吸収帯を有しイエローを示す。
ここで、EC性とは、電気化学的な酸化還元反応により、物質の光学吸収の性質(呈色状態や光透過度)が変化する性質である。透過率が変化する光の波長の種類によって、変化させる色調を制御することができる。なお、本実施形態において、着色するとは、特定の波長の透過率が低くなることを指す。本実施形態においては、EC性を有する有機化合物を、エレクトロクロミック化合物(EC化合物)とも呼ぶ。
本発明に係る有機化合物は、下記一般式(1)で表わされることを特徴とするエレクトロクロミック化合物である。
Figure 2018024624
一般式(1)において、R乃至R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアラルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。R乃至R11は、隣り合う置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
前記アリール基、前記アラルキル基が置換基を有する場合、前記置換基はハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選ばれる。
一般式(1)において、XおよびYは、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のヘテロアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記アリール基、前記アラルキル基および前記ヘタリール基が置換基を有する場合、前記置換基はハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選ばれる。A 、A はアニオンを表す。
乃至R11で表されるハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
乃至R11で表されるアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。また、水素原子がフッ素原子またはエステル基に置き換わってもよく、メチル基がシアノ基に置き換わってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
また、アルキル基の末端が多孔質電極等の電極へ吸着するための吸着基を有していてもよい。吸着基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、トリアルコキシシリル基等が挙げられる。
乃至R11で表されるアルコキシ基は、直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。また、水素原子がフッ素原子に置き換わってもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、オクチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、トリフルオロメチルオキシ基等が挙げられる。
乃至R11で表されるアリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
乃至R11で表される置換基を有していてもよいアラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
また、R乃至R11で表される置換基は互いに結合して環を形成してもよい。形成される環は、単環であっても多環であってもよい。好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。一般式(1)で示される有機化合物は、上記のようにベンゼン環またはピリジン環を形成することで、キノリンやナフチリジンを有する有機化合物となる。
一般式(1)におけるXおよびYで表わされるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基は、R乃至R11で示した具体例と同じである。
XおよびYで表わされるヘテロアリール基は、ピリジル基、ピリミジル基等が挙げられる。
上記のR乃至R11、XまたはYで表されるアリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基は、置換基を有してもよい。これら置換基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等のヘタリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等の置換アミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、メチルエステル基、エチルエステル基等のエステル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
、A はPF 、ClO 、BF 、AsF 、SbF 、CFSO 、(CFSOなどの陰イオンや、Br、Cl、Iなどのハロゲン陰イオンから選ばれる。好ましくはBF 、CFSO 、(CFSOから選ばれ、同じであっても異なってもよい。A 、A は、同一のアニオンであることが好ましい。
本発明に係る有機化合物を製造する方法については特に制限はないが、例えば、以下に示す方法によって製造することができる。ここでは、一般式(1)における3つのピリジンを指して三環構造と呼ぶことがある。
一般式(1)で表わされる有機化合物は、X、Yがアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基の場合、まず、下記一般式(2)で表わされる有機化合物(中間体1)とハロゲン化物とを所定の溶媒中で反応させる。ここで、溶媒について特に制限はないが、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒が好ましい。
その後、所望のアニオンを含む塩と所定の溶媒中でアニオン交換反応させることにより得ることができる。ここで溶媒についてはハロゲン体及び所望のアニオンを含む塩の両方を溶解させることのできる溶媒を使用することが好ましい。
X、Yがアリール基の場合、2,4−ジニトロフェニルハライドと反応した後、アリールアミンと反応させ、アニオンを含む塩と所定の溶媒中でアニオン交換反応させることにより得ることができる。
X、Yがヘテロアリール基の場合、アルコール溶媒中でヘテロアリール基を持つハロゲン化物と反応させる。その後、所望のアニオンを含む塩と所定の溶媒中でアニオン交換反応させることにより得ることができる。また、これらの反応は溶媒及び反応温度を選択することによって、三環構造の外側のイミンのうち片方のイミンだけ反応させることもできる。反応を繰り返すことによって、三環構造の残り二つのイミンに同様の置換基、または互いに異なる置換基を設けることも可能である。
Figure 2018024624
中間体1の製造方法は特に制限はないが、例えば、以下に示す方法によって製造するこができる。以下に、中間体1の合成ルートの一例を示す。
中間体1の合成ルート内のR乃至Rは一般式(1)と同様の置換基を表わす。中間体1は、R、R、Rの置換基を持つピリジンのハロゲン体とR、R、R、Rの置換基を持つ4−ピリジルボロン酸とのカップリング反応の後、R、R、R10、R11の置換基を持つ4−ピリジルボロン酸とのカップリング反応で合成することができる。
Figure 2018024624
以下に一般式(1)で表わされる有機化合物の具体的な構造式を例示する。ただし、本発明に係る一般式(1)で表わされる有機化合物は、これらに限定されるものではない。
下記に例示する有機化合物は、A乃至C群に分類する。
A群の例示化合物は、一般式におけるXおよびYがいずれもアルキル基である。
B群の例示化合物は、一般式におけるXおよびYがいずれもアラルキル基である。
C群の例示化合物は、XおよびYが互いに異なる置換基である。中でも、XまたはYが、アリール基、ヘテロアリール基である化合物は、着色時の吸収波長を調整できる。
Figure 2018024624
Figure 2018024624
Figure 2018024624
本発明に係る有機化合物は、一般式(1)で表わされる構造であるため、溶媒に溶解させた場合、高い透明性を有する化合物である。
また、一般式(1)で表わされる有機化合物は、還元状態で着色するカソード性のEC化合物である。すなわち、一般式(1)で表わされる有機化合物は、電気化学的な酸化還元反応が可逆的に進行し、還元状態と中性状態とで光学吸収の性質(呈色状態や光透過度)が変化する化合物である。
一般式(1)で表わされる有機化合物は、消色時の透明性と酸化還元反応の可逆性が高く、且つ消費電力の低減が可能であるため、エレクトロクロミック素子(EC素子)に好ましく用いることができる。本発明に係る有機化合物を有するEC素子は、耐久安定性および消色時の透明性が高く、消費電力が小さい。
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るEC素子について説明する。本実施形形態に係るEC素子は、一対の電極と、この一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層と、を有する素子である。
図1は、本実施形態に係るEC素子の一例の断面模式図である。一対の透明電極11と、この一対の電極の間に配置されている電解質と本発明に係るEC性有機化合物とを有するEC層12と、を有するEC素子である。一対の電極は、スペーサー13によって、電極間距離が一定となっている。このEC素子は、一対の電極が一対の透明基板10の間に配置されている。
EC層12は、本発明に係る有機化合物と、電解質とを有している。このEC層は、固体層であっても、溶液層であってもよい。
固体層である場合は、EC層は単層であっても。複数層であってもよい。EC層が複数層で構成される場合は、EC化合物からなる層と、電解質からなる層と、を有していてもよい。また、複数のEC層を有してもよい。
EC層が溶液層である場合は、電解質溶液などにEC化合物を溶解させて形成することができる。電解質溶液中には複数種類のEC化合物を有していてもよい。本実施形態に係るEC素子は、EC層が溶液であるEC素子であることが好ましい。
次に、本実施形態に係るEC素子を構成する部材について説明する。
電解質としては、イオン解離性の塩であり、かつ溶媒に対して良好な溶解性、固体電解質においては高い相溶性を示すものであれば限定されない。中でも電子供与性を有する電解質が好ましい。これら電解質は、支持電解質と呼ぶこともできる。
電解質としては、例えば、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機イオン塩や4級アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩などがあげられる。
具体的にはLiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiPF、LiI、NaI、NaClO、NaBF、NaAsF、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CHNBF、(CNBF、(n−CNBF、(n−CNPF、(CNBr、(CNClO、(n−CNClO等の4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩等が挙げられる。
EC性有機化合物および電解質を溶かす溶媒としては、EC性有機化合物や電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性を有するものが好ましい。
具体的には水や、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン等の有機極性溶媒が挙げられる。
さらに、上記EC媒体に、さらにポリマーやゲル化剤を含有させて粘稠性が高いもの若しくはゲル状としたもの等を用いることもできる。
上記ポリマーとしては、特に限定されず、例えばポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ナフィオン(登録商標)などが挙げられる。
次に、透明基板および透明電極について説明する。透明基板10としては、例えば、無色あるいは有色ガラス、強化ガラス等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性樹脂が用いられる。なお、本実施形態において透明とは、可視光の透過率が80%以上の透過率であることを示す。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリノルボルネン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
電極材料11としては、例えば、酸化インジウムスズ合金(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化銀、酸化バナジウム、酸化モリブデン、金、銀、白金、銅、インジウム、クロムなどの金属や金属酸化物、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系材料、カーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン等の炭素材料などを挙げることができる。
また、ドーピング処理などで導電率を向上させた導電性ポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。
さらに、電極上に多孔質電極を有していてもよい。多孔質電極は表面及び内部に微細孔を有した多孔質形状、ロット形状、ワイヤ形状等表面積が大きい材料が好ましい。
多孔質電極の材料は、例えば、金属、金属酸化物、カーボン等が適用できる。より好ましくは、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、酸化ストロンチウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化インジウム、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化コバルト等の金属酸化物である。
スペーサー13は、一対の電極11の間に配置されており、本発明のEC性有機化合物を有する溶液12を収容するための空間を与えるものである。具体的には、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等を用いることができる。このスペーサーにより、EC素子の電極間距離を保持することが可能である。
本実施形態に係るEC素子は、一対の電極とスペーサーとによって、形成される液体注入口を有していてもよい。液体注入口からEC性有機化合物を有する組成物を封入したのちに、封止部材により注入口を覆い、さらに接着剤等で密閉することで素子とすることができる。
封止部材は、接着剤とEC性有機化合物が接触しないように隔離する役割も担っている。封止部材の形状は、楔形等の先細り形状が好ましい。
本実施形態に係るEC素子の形成方法は、例えば、一対の電極基板の間に設けた間隙に、真空注入法、大気注入法、メニスカス法等によって、EC性有機化合物を含有する液体12を注入する方法が挙げられる。
本実施形態に係るEC素子は、本発明に係る有機化合物と、この有機化合物とは別種の第2の有機化合物とを有してもよい。第2の有機化合物は、一種類でも複数種類でもよく、酸化状態で着色する化合物でも、還元状態で着色する化合物でも、その双方であってもよい。特に、酸化状態で着色する化合物が含まれていることが好ましい。
酸化状態で着色する化合物とは、酸化状態における可視光の透過率が、還元状態における可視光の透過率よりも低い化合物である。酸化状態で着色する化合物は、アノード性の化合物と呼ぶこともできる。
アノード性の化合物は、例えば、フェナジン化合物、フェロセン化合物、メタロセン化合物、フェニレンジアミン化合物、ピラゾリン化合物が挙げられる。
本発明に関わる有機化合物は、他の色の着色材料と組み合わせることによって、EC素子として所望の色を吸収することができる。着色時における他のEC化合物の吸収波長領域は、400nm以上800nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは、420nm以上700nm以下である。本発明の材料と他の材料を複数組み合わせることによって、可視領域を全て吸収し、黒色着色するEC素子を作製することもできる。
本実施形態に係る他のEC化合物として、例えば、下記の化合物があげられる。
酸化状態で着色する他のEC化合物としては、5,10−ジヒドロ−5,10−ジメチルフェナジン、5,10−ジヒドロ−5,10−ジエチルフェナジンなどのフェナジン系化合物、フェロセン、テトラ−t−ブチルフェロセン、チタノセンなどのメタロセン系化合物、N,N’,N,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン系化合物、1−フェニル−2−ピラゾリンなどのピラリゾン系化合物などが挙げられる。
還元状態で着色する化合物としては、N,N’−ジヘプチルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジヘプチルビピリジニウムジテトラフフオロボレート、N,N’−ジヘプチルビピリジニウムジヘキサフルオロホスフェート、N,N’−ジエチルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジエチルビピリジニウムジテトラフルオロボレート、N,N’−ジエチルビピリジニウムジヘキサフルオロホスフェート、N,N’−ジベンジルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジベンジルビピリジニウムジテトラフルオロボレート、N,N’−ジベンジルビピリジニウムジヘキサフルオロホスフェート、N,N’−ジフェニルビピリジニウムジパークロレート、N,N’−ジフェニルビピリジニウムジテトラフロロボレート、N,N’−ジフェニルビピリジニウムジヘキサフロロホスフェートなどのビオロゲン系化合物、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノンなどのアントラキノン系化合物、フェロセニウムテトラフルオロボレート、フェロセニウムヘキサフルオロホスフェートなどのフェロセニウム塩系化合物、スチリル化系化合物などが挙げられる。
本実施形態に係るEC素子は、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置に用いることができる。光学フィルタは、本実施形態に係るEC素子と、それに接続されている能動素子とを有する。
レンズユニットは、複数のレンズを有する光学部と、EC素子と、を有する。EC素子は、レンズユニットの外側に配置されても、レンズとレンズとの間に配置されてもよい。レンズユニットを通過する光の光量がEC素子によって、制御される構成であれば、配置位置に制限はない。
撮像装置は、複数のレンズを有する光学部と、光学部を通過した光を受光する撮像素子と、EC素子と、を有する。撮像素子が受光する光の光量がEC素子によって制御される構成あれば、配置位置に制限はない。撮像装置は、光学フィルタと、前記光学フィルタを通過した光を受光する撮像素子と、前記光学フィルタおよび前記撮像素子を収容する筐体と、を有する撮像装置であってもよい。筐体は、複数のレンズを有する光学部を取り付ける接合部を有する。
図2は本実施形態の撮像装置を示す模式図である。本実施形態の撮像装置は、レンズユニット102と、撮像ユニット103と、を有し、レンズユニット102はマウント部材(不図示)を介して撮像ユニット103に着脱可能に接続されている。
レンズユニット102は、複数のレンズあるいはレンズ群を有するユニットであり、絞りより後でフォーカシングを行うリアフォーカス式のズームレンズである。
レンズユニット102は、4つのレンズ群と、開口絞り108と、光学フィルタ101と、を有する。4つのレンズ群は、物体側より順に正の屈折力の第1のレンズ群104、負の屈折力の第2のレンズ群105、正の屈折力の第3のレンズ群106、正の屈折力の第4のレンズ群107が配置されている。開口絞りは、第2のレンズ群105と第3のレンズ群106との間に配置されている。光学フィルタは、第3のレンズ群106と第4のレンズ群107との間に配置されている。
第2のレンズ群105と第3群のレンズ群106との間隔を変化させて変倍を行うことで、第4のレンズ群107の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う。レンズユニットを通過する光は、第1〜第4のレンズ群、開口絞り、光学フィルタを通過するよう配置されており、開口絞りおよび光学フィルタを用いて光量の調整を行うことができる。
撮像ユニット103は、ガラスブロック109と受光素子110を有する。
ガラスブロック109はローパスフィルタやフェースプレートや色フィルタ等のガラスブロックである。ガラスブロックは、光学的に上記の目的を果たすものであれば、材質はガラスでなくてもよい。
撮像素子110は、レンズユニット102を通過した光を受光するセンサ部である。センサ部は、フォトダイオードのような光センサを有してよい。他にも光の強度あるいは波長の情報を取得し出力するものを適宜利用可能である。センサ部は、CCDやCMOS等の信号処理部に接続されていてよい。
本実施形態の撮像装置では、光学フィルタ101が光学レンズユニット内の第3のレンズ群と第4のレンズ群の間に配置されている。
本実施形態に係る撮像装置における光学フィルタ101の位置は、図の位置に限定されない。例えば、開口絞り108の前あるいは後のいずれに配置してもよく、第1〜第4のレンズ群のいずれの前、後、レンズ群の間であってもよい。なお、光の収束する位置に配置することで、光学フィルタの面積を小さくできるなどの利点がある。
また、本実施形態に係る撮像装置では、レンズユニットの形態も適宜選択可能であり、リアフォーカス式の他、絞りより前でフォーカシングを行うインナーフォーカス式であってもよく、その他方式であってもよい。また、ズームレンズ以外にも魚眼レンズやマクロレンズなどの特殊レンズも適宜選択可能である。
図2においては、光学フィルタ101がレンズユニット102の内部に配置されている。本実施形態に係る撮像装置は、EC素子がレンズユニット内に有し、そのEC素子の駆動装置はレンズユニット外、例えば撮像ユニットに配置されていてもよい。このような場合には、配線を通してレンズユニット内のEC素子とEC素子の駆動装置が接続され、駆動制御する。
図3は、光学フィルタ101が撮像ユニット103の内部に配置されている構成の撮像装置の模式図である。
光学フィルタ101は撮像ユニット103の内部のガラスブロック109と受光素子110の間に配置されている。撮像ユニット103自体が光学フィルタ101を内蔵する場合、接続されるレンズユニット102は光学フィルタを持たなくてもよいため、既存のレンズユニットを用いた調光可能な撮像装置を構成できる。
なお、図3においては、光学フィルタ101は、受光素子110とガラスブロック109の間に配置されている。撮像素子110は光学フィルタ101を通過した光を受光する素子である。光学フィルタ101は、撮像素子が受光する光の光量を制御することができる構成であれば、受光素子110とガラスブロック109の間以外の位置に配置されていてもよい。
このような撮像装置103は、光量調整と受光素子の組合せを有する製品などがあげられ、例えば、カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話やスマートフォン、PC、タブレットなどの撮像部位であってもよい。
(実施例1)
<例示化合物A−1の合成>
Figure 2018024624
例示化合物A−1の合成は、まず、中間体2を合成した。反応容器に、2,5−ジブロモピリジン(1.02g、4.3mmol)、4−ピリジルボロン酸(1.58g、12.9mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.25g、0.22mmol)、炭酸カリウム(1.78g、12.9mmol)、ジオキサン(100ml)、及び水(33ml)を仕込み、窒素気流下、8時間加熱還流で撹拌を行った。反応終了後、反応液を濃縮した。その後、クロロホルムで抽出を行った。有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後に減圧乾固を行った。シリカゲルカラムクロマト(溶離液:クロロホルム/メタノール=19/1)で精製後、エタノール/ヘキサンで再結晶を行い、中間体2を0.80g(収率:79.6%)得た。
NMR測定により、中間体2の構造を確認した。
H NMR(CDCl,500MHz)σ(ppm):9.10(s,1H),8.75(m,4H),8.08(m,1H),7.95(m,3H),7.55(m,2H).
次に、中間体2を用いて中間体3の合成をおこなった。反応容器に、中間体2(0.70g、3.00mmol)、1−ヨードヘプタン(3.39g、15.0mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド15mlを仕込み、窒素気流下、10時間加熱還流で撹拌を行った。反応終了後、反応液を酢酸エチルに滴下し生じた沈殿物を酢酸エチルで洗浄し中間体3を1.50g(収率:73%)得た。
NMR測定により、中間体3の構造を確認した。
H NMR(DMSO−d6,500MHz)σ(ppm):9.51(d,1H),9.21(m,4H),8.88(d,2H),8.79(m,1H),8.70(m,3H),4.62(m,4H),1.95(m,4H),1.25(m,16H),0.85(t,6H).
次に、中間体3を用いて例示化合物A−1の合成をおこなった。まず、中間体3(500mg、0.73mmol)を水に溶解した。ヘキサフルオロリン酸アンモニウム水溶液を滴下し、室温で3時間撹拌を行った。析出した結晶をろ過、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテルで順次洗浄し、例示化合物A−1を500mg(収率:95%)得た。
NMR測定により、例示化合物A−1の構造を確認した。
H NMR(DMSO−d6,500MHz)σ(ppm):9.53(d,1H),9.24(m,4H),8.85(d,2H),8.81(m,1H),8.73(m,3H),4.65(m,4H),1.95(m,4H),1.30(m,16H),0.85(t,6H).
以下の条件において、例示化合物A−1の酸化還元電位を測定した。また、酸化還元の繰り返しに対する安定性を評価した。
測定装置に備える電極及び使用した溶媒を以下に示す。
作用電極:グラッシーカーボン
対向電極:白金
参照電極:銀
電解質:テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート炭酸プロピレン溶液(0.1M)
まず、電解質としてテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを0.1Mの濃度で炭酸プロピレンに溶解させた。次いで、例示化合物A−1を0.5mMの濃度で溶解させEC媒体を得た。
次いで、作用電極、対向電極及び参照電極を備えた測定装置を用い、EC化合物の酸化還元電位をサイクリックボルタンメトリー(CV)により測定した。なお、還元電位の評価はフェロセンを基準物質として測定した。
CV測定の結果、例示化合物A−1の還元電位は−1.26Vであった。
酸化還元の繰り返しに対する安定性は、CV測定を継続し、そのサイクリックボルタモグラムの形状により評価した。
酸化還元の繰り返しに対する安定性の評価を「可逆」または「不可逆」とする。「可逆」は安定性が高いことを示し、「不可逆」は安定性が低いことを示す。
繰り返しの酸化還元反応に対して良好なCV特性を示した化合物に関しては「可逆」と定義した。具体的には、IV特性が酸化還元の繰り返しを経ても実質的に変化しないものを指す。
一方、ベースラインに対する酸化側と還元側の面積が異なるものや、サイクル毎に電流値が変化した化合物は「不可逆」と定義する。
例示化合物A−1は可逆なCV特性を示した。
(実施例2)
<例示化合物B−1の合成>
Figure 2018024624
例示化合物B−1は、中間体2を用いて合成した。まず、中間体2を用いて中間体4の合成をおこなった。反応容器に、中間体2(0.60g、2.57mmol)、4−(ブロモメチル)安息香酸メチル(2.96g、12.9mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド10mlを仕込み、窒素気流下、10時間加熱還流で撹拌を行った。反応終了後、反応液を酢酸エチルに滴下し生じた沈殿物を酢酸エチルで洗浄し中間体3を1.30g(収率:73%)得た。
NMR測定により、例示化合物中間体4の構造を確認した。
H NMR(CDOD,500MHz)σ(ppm):9.44(d,1H),9.21(d,4H),8.92(d,2H),8.69(m,1H),8.61(m,3H),8.12(d,4H),7.63(d,4H),5.98(s,4H),3.91(s,6H).
次に、中間体4を用いて例示化合物B−1の合成をおこなった。まず、中間体4(500mg、0.72mmol)を水に溶解した。ヘキサフルオロリン酸アンモニウム水溶液を滴下し、室温で3時間撹拌を行った。析出した結晶をろ過、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテルで順次洗浄し、例示化合物B−1を500mg(収率:84%)得た。
NMR測定により、例示化合物B−1の構造を確認した。
H NMR(CD3CN,500MHz)σ(ppm):9.27(d,1H),8.85(d,4H),8.71(d,2H),8.49(m,1H),8.39(m,3H),8.08(d,4H),7.56(d,4H),5.82(s,4H),3.86(s,6H).
例示化合物A−1と同じ条件で、例示化合物B−1の還元電位の測定、酸化還元の繰り返しに対する安定性を評価した。
例示化合物A−1を例示化合物B−1に代えることで、EC媒体を得た。
CV測定の結果、例示化合物B−1の還元電位は−1.09Vであった。例示化合物B−1は可逆なCV特性を示した。
(実施例3)
本実施例では、一般式(1)で表わされる有機化合物を有するEC素子を作製し、その特性評価を行った。本実施例では、EC化合物として、例示化合物A−1を有する素子および例示化合物B−1を有する素子の2種類を作製した。電解質としての過塩素酸テトラブチルアンモニウムを0.1Mの濃度でプロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)に溶解させ、次いで例示化合物A−1を40.0mMの濃度で溶解させることにより、EC媒体を得た。また、例示化合物A−1をB−1に代えることで、別種のEC媒体を調整した。
EC素子は、基板10として、電極11としての透明導電膜(透明電極膜)付きのガラス基板を用いた。一対の透明導電膜(ITO)付きのガラス基板の四方の端部に絶縁層(SiO)を形成した。基板間隔を規定するスペーサーとしてのPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製メリネックス(登録商標)S、125μm厚)を、一対の透明電極膜付きガラス基板の間に配置する。その後、EC媒体注入用の注入口を残して、エポキシ系接着剤によりガラス基板とPETフィルムとを接着し、封止した。以上のように、注入口付き空セルを作製した。
次に前述の注入口より、上述の方法で得られたEC媒体を真空注入法により注入後、注入口をエポキシ系接着剤により封止し、EC素子とした。
本実施例のEC素子に、1.5Vの電圧を印加すると、EC素子に含まれる有機化合物の還元種に由来する吸収を示した。さらに、−0.5Vの電圧を印加すると、消色し、可逆的に着色および消色した。すなわち、本実施例のEC素子は、着色状態と消色状態とを可逆的に変化でき、EC性を有する。
図4に、本実施例の例示化合物B−1を用いて作製したEC素子の着色状態及び消色状態における紫外可視吸収スペクトルを示した。例示化合物B−1は還元状態において、506nmに吸収を示し、イエローを示した。同様に、例示化合物A−1においても、還元状態において500nmに吸収を有し、イエローを示した。
次に、例示化合物A−1、例示化合物B−1を用いて作製したEC素子の中性状態(消色状態)における吸収端を調査した。なお、吸収端とは、消色状態のスペクトルにおいて、吸収ピークが表れた後に化合物の吸光度が0になる点のうち、最も長波長側に現れる点と定義する。例示化合物A−1、例示化合物B−1の吸収端はそれぞれ387nm、385nmであった。吸収端が400nm未満の化合物は、消色時の透明性が高い。
(比較例1)
下記の構造で表わされる比較化合物1を用いたこと以外は実施例3と同様にEC素子を作製した。実施例3と同じ条件で還元状態における吸収と消色状態における吸収端を測定した。比較化合物1は三環構造にピリミジレン基を導入した化合物である。
Figure 2018024624
還元状態における比較化合物1は、510nmに吸収を示し、例示化合物A−1とB−1と同様にイエローに発色した。しかし、比較化合物1の吸収端は428nmとであり、例示化合物A−1、B−1と比較して吸収端が長波長化した。吸収端が428nmの化合物は、消色時の透明性が低い。
例示化合物A−1、例示化合物B−1のようにピリジレン基を有する場合、ピリジレン基の水素原子と外側のピリジン環の水素原子が立体的に反発することで、ピリジレン基と双方のピリジン環の間でねじれが発生する。これに対して比較化合物1のようにピリミジレン基を有する場合、ピリミジレン基とピリミジレン基のヘテロ原子に挟まれた炭素原子に結合したピリジン環との間では水素原子間の反発が無く、ねじれが発生しない。
例示化合物A−1、例示化合物B−1は、ピリジレン基が外側の双方のピリジン環とねじれて平面性を崩すことで吸収端が短波長化し、透明性が高いと考えられる。
以上のように、本発明に係る有機化合物は、比較化合物1に比して、消色時の透明性が高い化合物である。
(比較例2)
例示化合物A−1の代わりに下記の比較化合物2を用いた以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。比較化合物2は、三環構造の中央にピラジレン基を導入した化合物である。
Figure 2018024624
比較化合物2の還元電位はピラジレン基のヘテロ原子の影響で、例示化合物B−1よりも正にシフトし、−0.93Vであった。比較化合物2は、CV特性が不可逆であり、酸化還元の繰り返しに対する安定性は低かった。
(比較例3)
例示化合物A−1の代わりに下記の比較化合物3を用いた以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。比較化合物3は、三環構造の中央にピリダジレン基を導入した化合物である。
Figure 2018024624
比較化合物3の還元電位はピリダジレン基のヘテロ原子の影響で、例示化合物B−1よりも正にシフトし、−0.98Vであった。比較化合物3は、CV特性が不可逆であり、酸化還元の繰り返しに対する安定性は低かった。
(比較例4)
例示化合物A−1の代わりに下記の比較化合物4を用いた以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。比較化合物4は、三環構造の中央にフェニレン基を導入した化合物である。
Figure 2018024624
比較化合物4は、良好なCV特性を示し、酸化還元の繰り返しに対する安定性は高かった。比較化合物4の還元電位は−1.22Vとなり、例示化合物B−1(−1.09V)よりも負にシフトした。
これは、ヘテロアリーレン基よりも電子密度の大きなアリーレン基であるフェニレン基を導入したことに起因していると考えられる。
比較化合物4は、還元電位が本発明に係る有機化合物よりも負であるので、化合物を還元させるための、すなわち着色させるための、消費電力が大きい化合物である。
以上説明した通り、本発明に係る有機化合物は、還元電位の絶対値が小さく、酸化還元の繰り返しに対する安定性が高く、消色時の透過率が高い有機化合物である。そして本発明の有機化合物を有するEC素子は、素子寿命が長く、消費電力が小さい素子である。
10 透明基板
11 透明電極
12 EC化合物を含んだ液体
13 スペーサー

Claims (14)

  1. 下記一般式(1)で表わされることを特徴とする有機化合物。
    Figure 2018024624

    一般式(1)において、R乃至R11は水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアラルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。R乃至R11は、隣り合う置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
    前記アリール基、前記アラルキル基が置換基を有する場合、前記置換基はハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選ばれる。
    一般式(1)において、XおよびYは、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のヘテロアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
    前記アリール基、前記アラルキル基および前記ヘタリール基が置換基を有する場合、前記置換基はハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基から選ばれる。A 、A はアニオンを表す。
  2. 還元状態において、400nm以上800nm以下の範囲に吸収ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。
  3. 一般式(1)において、RからR11の前記アルキル基、R乃至R11の前記アルコキシ基、R乃至R11の前記アリール基、R乃至R11の前記アラルキル基が置換基を有する場合、該置換基は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基からそれぞれ独立に選ばれることを特徴とする請求項1または2に記載の有機化合物。
  4. 一般式(1)において、XおよびYで表わされる前記アルキル基、XおよびYで表わされる前記アリール基が置換基を有する場合、該置換基は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、アリール基、アラルキル基からそれぞれ独立に選ばれることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の有機化合物。
  5. 前記A および前記A は、同一のアニオンであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の有機化合物。
  6. 一対の電極と、前記一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層と、を有し、
    前記エレクトロクロミック層は、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機化合物を含むことを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  7. 前記エレクトロクロミック層は、前記有機化合物とは別種の有機化合物を有することを特徴とする請求項6に記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 前記別種の有機化合物は、フェナジン化合物、フェロセン化合物、メタロセン化合物、フェニレンジアミン化合物、ピラゾリン化合物のいずれかであることを特徴とする請求項6または7に記載のエレクトロクロミック素子。
  9. 前記エレクトロクロミック層は、電解質と前記有機化合物とを有する液体であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  10. 請求項6から9のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、
    前記エレクトロクロミック素子に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする光学フィルタ。
  11. 前記能動素子が、前記エレクトロクロミック素子を駆動することにより、前記エレクトロクロミック素子を通過する光の光量を調整することを特徴とする請求項10に記載の光学フィルタ。
  12. 請求項10または11に記載の光学フィルタと、
    複数のレンズを有する光学部と、を有することを特徴とするレンズユニット。
  13. 複数のレンズを有する光学部と、
    請求項10または11に記載の光学フィルタと、
    前記光学フィルタを通過した光を受光する撮像素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
  14. 請求項10または11に記載の光学フィルタと、前記光学フィルタを通過した光を受光する撮像素子と、前記光学フィルタおよび前記撮像素子を収容する筐体とを有する撮像装置であって、
    前記筐体は、複数のレンズを有する光学部を取り付ける接合部を有することを特徴とする撮像装置。
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