JP2020511959A - ヒト化抗cd40抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、親キメラ抗CD40抗体と同様の抗原結合特性およびFcγ受容体結合親和性の増大を有するヒト化抗CD40抗体に関する。特に本発明は、がん、感染および免疫不全の処置において有用であるヒト化抗CD40抗体を対象とする。本発明者らは、それらが由来する親キメラ抗体と同じ抗原結合親和性を有するヒト化抗CD40抗体を見出した。さらに、これらのヒト化抗体は、Fcγ受容体結合親和性の増強を、特にFcγRIIに関して示す。したがって、第1の態様においては、本発明は、CD40に結合することができ、重鎖可変領域を含むヒト化抗体であって、重鎖可変領域が配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ヒト化抗体を対象とする。
Description
本発明は、抗体の分野に関する。特に、強い抗原結合性および/またはFc受容体結合性を示すヒト化抗CD40抗体が提供される。特定の実施形態において、本発明は、治療的および診断的使用のためのヒト化抗CD40抗体を対象とする。
今日、抗体は、医療および研究の分野において広く使用される作用物質である。医療においては、それらは多数の異なる分野で適用を見出している。例えば抗体は、がん、心血管疾患、炎症性疾患、黄斑変性症、移植片拒絶、多発性硬化症およびウイルス感染などの多種多様な疾患の処置および予防における治療剤として使用されている。これらの治療では、抗体は、例えば受容体もしくはメッセンジャー分子を遮断し、それによりそれらの疾患関連機能を阻害することによって、または患者の免疫系の成分を動員および活性化することによってそれ自体に治療活性を有する場合がある。
特定の抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジまたはウマなどの哺乳動物に抗原を注射することによって生成される。これらの動物から単離された血液は、血清中に前記抗原に対するポリクローナル抗体を含有する。抗原の単一のエピトープについて特異的である抗体を得るために、抗体分泌リンパ球は、動物から単離され、それらをがん細胞株と融合させることによって不死化され、ハイブリドーマ細胞を生じる。次に単一のハイブリドーマ細胞は、すべてが同じモノクローナル抗体を生成する細胞クローンを産生するように希釈クローニングによって単離される。
しかし、治療適用ではこれらのモノクローナル抗体は、それらが動物生物体由来であり、ヒト抗体とはそれらのアミノ酸配列において異なっているという課題を有する。したがってヒト免疫系は、これらの動物抗体を外来性として認識し、それらを循環から迅速に除去する。さらに全身性の炎症効果が生じる場合がある。この課題への解決法は、モノクローナル抗体のある特定の定常部分のヒト抗体の対応する部分を用いた置換である。重鎖および軽鎖の定常領域のみを置き換える場合、キメラ抗体が得られ、一方、重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク領域の追加的置換は、いわゆるヒト化抗体を生じる。
研究では精製抗体は、多数の適用において使用される。それらは、生物学的分子、特にタンパク質などを同定および位置付けるために最も一般的に使用される。生物学的分子は、例えばそれらの存在、濃度、完全性またはサイズを決定するためにそれらが単離された後に検出されてよい。一方それらは、例えばそれらの存在または位置を決定するために、細胞または組織試料において検出されてよい。さらに抗体は、特定の生物学的物質、特にタンパク質の単離手順において使用され、抗体は、それを含有している試料から目的の生物学的物質を特異的に分離する。
これらすべての適用において、抗原の緊密な結合および特異的認識は、使用される抗体について極めて重要である。それによりさらに高い活性および低い交差反応性、特に治療適用においてより低い有害副作用が得られる。しかし、モノクローナル抗体のヒト化の際に、操作された抗体の親和性および特異性はしばしば減少する。
興味深く、重要な抗体の群は、CD40、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーに対するものである。CD40は、免疫細胞、特に抗原提示細胞で見出される共起刺激タンパク質である。それは、Bリンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球および多くの腫瘍細胞、特にB細胞リンパ腫および固形腫瘍が挙げられる多くの細胞型において発現される。CD40は、膜貫通受容体であり、免疫細胞の活性化のために重要である。CD40の主なリガンドは、活性化T細胞、特に活性化ヘルパーT細胞で発現される膜貫通タンパク質であるCD40L(CD154)である。B細胞上に提示される抗原のヘルパーT細胞による認識は、B細胞のCD40がT細胞のCD40Lによって結合された場合のみB細胞の活性化を引き起こす。二次CD40−CD40Lシグナルの欠如は、提示された抗原の免疫寛容を引き起こし得る。CD40活性化は、B細胞増殖、成熟化、サイトカイン生成およびクラススイッチをもたらす。同様に、単球および樹状細胞上のCD40の活性化は、樹状細胞の生存およびサイトカイン分泌および成熟化を増強する。
CD40活性化は、抗腫瘍応答のためにも有効である。腫瘍抗原の寛容は、CD40活性化によって防止されるまたは逆転され、腫瘍細胞に対するT細胞応答をもたらす。CD40の活性化は、アゴニスト性抗CD40抗体によっても達成され得る。したがって、アゴニスト性抗CD40抗体は、腫瘍クリアランスを、特に樹状細胞の活性化およびT細胞応答を介して誘導するためにも使用され得る。
アゴニスト性抗CD40抗体の免疫調節活性が、Fcγ受容体、特にFcγRIIとの相互作用によって増強されることは、さらに実証された。Fcγ受容体シグナル伝達だけでなく、特に受容体結合の架橋効果もアゴニスト性抗体の活性にとって重大である。
CD40に対する公知のアゴニスト性抗体は、モノクローナル抗体ChiLob 7/4である。しかしこれは、上で考察された非ヒト抗体の問題を生じる可能性があるマウス可変領域を有するキメラ抗体である。この抗体のヒト化は、したがって有益である。不運なことに、ヒト化抗体は、対応する非ヒトまたはキメラ抗体よりも低い親和性および特異性をその標的抗原に対してしばしば有する。これは、可変領域の全体的な三次元構造、特に相補性決定領域(CDR)のコンフォメーションおよび配向が、フレームワーク領域の置き換えによって変更される可能性があるためである。
したがって当技術分野には、対応するマウスまたはキメラ抗体と同様の抗原結合親和性および抗原特異性を有するヒト化抗体、特にヒト化抗CD40抗体、特にChiLob 7/4のヒト化バージョンを提供する必要性がある。
本発明者らは、それらが由来する親キメラ抗体と同じ抗原結合親和性を有するヒト化抗CD40抗体を見出した。さらに、これらのヒト化抗体は、Fcγ受容体結合親和性の増強を、特にFcγRIIに関して示す。
したがって、第1の態様においては、本発明は、CD40に結合することができ、重鎖可変領域を含むヒト化抗体であって、重鎖可変領域が配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ヒト化抗体を対象とする。
第2の態様においては、本発明は、本発明による抗体をコードする核酸を提供する。さらに第3の態様においては、本発明による核酸を含む発現カセットまたはベクターおよび前記核酸に作動可能に繋がれたプロモーター、第4の態様においては、本発明による核酸または発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞が提供される。
第5の態様において本発明は、さらなる作用物質にコンジュゲートした本発明による抗体を含むコンジュゲートを提供する。
第6の態様においては、本発明は、本発明による抗体、本発明による核酸、本発明による発現カセットもしくはベクター、本発明による宿主細胞または本発明によるコンジュゲートを含む組成物を対象とする。
第7の態様によれば、本発明は、医療における、特にがんの処置における使用のための、本発明による抗体、核酸、発現カセットもしくはベクター、宿主細胞、組成物またはコンジュゲートを提供する。
上記態様を組み合わせることができる。本発明の他の目的、フィーチャ、利点、および態様は、以下の記載および添付の特許請求の範囲から当業者に明らかとなる。しかし、本願の好適な実施形態を示す以下の記載、添付の特許請求の範囲、および具体例は、実例としてのみ示されていることが理解されるべきである。開示した発明の趣旨および範囲内の様々な変更および改変は、以下を読むことから当業者に容易に明らかとなる。
定義
本明細書において使用する場合、以下の表現は一般に、これらが使用されている脈絡が別段に示す程度を除き、以下に示す意味を好ましくは有するように意図されている。
本明細書において使用する場合、以下の表現は一般に、これらが使用されている脈絡が別段に示す程度を除き、以下に示す意味を好ましくは有するように意図されている。
表現「含む」は、本明細書において使用する場合、その文字通りの意味に加えて、表現「から本質的になる」および「からなる」も含み、具体的に指す。したがって、表現「含む」は、具体的に列挙されたエレメントを「含む」主題がさらなるエレメントを含まない実施形態、ならびに具体的に列挙されたエレメントを「含む」主題がさらなるエレメントを包含する場合があり、かつ/または実際に包含する実施形態を指す。同様に、表現「有する」は、表現「含む」として理解されるべきであり、表現「から本質的になる」および「からなる」も含み、具体的に指す。用語「から本質的になる」は、可能であれば、特に主題がそれから本質的になる明確に列挙されたエレメントに加えて、主題が20%もしくはそれ未満、特に15%もしくはそれ未満、10%もしくはそれ未満または特に5%もしくはそれ未満のさらなるエレメントを含む実施形態を指す。
用語「抗体」は、特に、ジスルフィド結合によって接続された少なくとも2本の重鎖および2本の軽鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。重鎖定常領域は、3つ、またはIgMもしくはIgEタイプの抗体の場合では、4つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)を含み、第1の定常ドメインCH1は、可変領域に隣接しており、ヒンジ領域によって第2の定常ドメインCH2に接続されている場合がある。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインのみからなる。可変領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域とともに散在した相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、各可変領域は、3つのCDRおよび4つのFRを含む。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。重鎖定常領域は、γ−、δ−、α−、μ−またはε−型重鎖などの任意の型のものであってもよい。好ましくは、抗体の重鎖は、γ−鎖である。さらに、軽鎖定常領域はまた、κ−またはλ−型軽鎖などの任意の型のものであってもよい。好ましくは、抗体の軽鎖は、κ−鎖である。用語「γ(δ、α、μまたはε)型重鎖」および「κ(λ)型軽鎖」は、天然に存在する重鎖または軽鎖定常領域アミノ酸配列、特にヒト重鎖または軽鎖定常領域アミノ酸配列由来の定常領域アミノ酸配列を有する抗体重鎖または抗体軽鎖をそれぞれ指す。特にγ型(特にγ1型)重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列は、ヒトγ(特にヒトγ1のアロタイプの1つ)抗体重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列と少なくとも95%、特に少なくとも98%同一である。さらにκ型軽鎖の定常ドメインのアミノ酸配列は、ヒトκ抗体軽鎖のアロタイプの1つの定常ドメインのアミノ酸配列と、特に少なくとも95%、特に少なくとも98%同一である。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含めた宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。抗体は、例えば、ヒト化、ヒト、またはキメラ抗体であり得る。
抗体の抗原結合性部分は、通常、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の全長または1つもしくは複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の結合性断片の例としては、Fab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価の断片;F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された、それぞれが同じ抗原に結合する2つのFab断片を含む二価の断片;VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;およびVHドメインからなるdAb断片が含まれる。
抗体の「Fab部分」は特に、重鎖および軽鎖可変領域(VHおよびVL)、ならびに重鎖および軽鎖定常領域の第1のドメイン(CH1およびCL)を含む抗体の部分を指す。抗体がこれらの領域のすべてを含まない場合では、用語「Fab部分」は、抗体中に存在する領域VH、VL、CH1、およびCLのもののみを指す。好ましくは、「Fab部分」は、抗体の抗原結合性活性を含有する、パパインで天然抗体を消化することによって得られる断片に対応する抗体の部分を指す。特に、抗体のFab部分は、抗原結合部位またはその抗原結合能を包含する。好ましくは、Fab部分は、抗体の少なくともVH領域を含む。
抗体の「Fc部分」は特に、重鎖定常領域2、3、および適用可能な場合、4(CH2、CH3、およびCH4)を含む抗体の部分を指す。特に、Fc部分は、これらの領域のそれぞれのうちの2つを含む。抗体がこれらの領域のすべてを含まない場合では、用語「Fc部分」は、抗体中に存在する領域CH2、CH3、およびCH4のもののみを指す。好ましくは、Fc部分は、抗体の少なくともCH2領域を含む。好ましくは、「Fc部分」は、抗体の抗原結合性活性を含有しない、パパインで天然抗体を消化することによって得られる断片に対応する抗体の部分を指す。特に、抗体のFc部分は、Fc受容体に結合することができ、したがって例えば、Fc受容体結合部位またはFc受容体結合能を含む。
本発明によれば、用語「キメラ抗体」は特に、定常領域がヒト抗体またはヒト抗体コンセンサス配列に由来し、少なくとも一方、好ましくは両方の可変領域が非ヒト抗体、例えば、マウス抗体などのげっ歯類抗体に由来する抗体を指す。
本発明によれば、用語「ヒト化抗体」は特に、ヒト定常領域と、ヒトの身体に投与された場合に抗体の免疫原性を低減させるようにアミノ酸配列が改変された可変領域とを含む非ヒト抗体を指す。ヒト化抗体を構築するための例示的方法は、非ヒト抗体のCDRまたは特異性決定残基(SDR)をヒト由来フレームワーク領域と組み合わせるCDR移植である。必要に応じて、ヒトフレームワーク領域のいくつかの残基を、例えば、抗原結合親和性を増加させるか、または回復させるために、親非ヒト抗体の残基に復帰変異させてもよい。他のヒト化方法としては、例えば、リサーフェシング(resurfacing)、超ヒト化(superhumanization)、およびヒトストリング内容最適化(human string content optimization)が挙げられる。リサーフェシング法においては、抗体の表面に位置する非ヒトフレームワーク領域の残基のみを、前記位置で対応するヒト抗体配列中に存在する残基により置き換える。超ヒト化は、本質的にはCDR移植に対応する。しかしながら、CDR移植中に、ヒトフレームワーク領域は通常、非ヒトフレームワーク領域に対するその相同性に基づいて選択されるが、超ヒト化においては、それは選択されるヒトフレームワーク領域に基づくCDRの類似性である。ヒトストリング内容最適化においては、非ヒト抗体配列のヒト生殖系列配列との差異をスコア化した後、抗体を変異させて前記スコアを最小化する。さらに、ヒト化抗体を、ヒトフレームワーク領域またはヒト抗体の大きいライブラリーを使用して複数の抗体ヒト化候補を作製した後、最も有望な候補をスクリーニング方法により決定する経験的方法により取得することもできる。また、上記の合理的アプローチを用いて、いくつかのヒト化抗体候補を作製した後、例えば、その抗原結合についてスクリーニングすることができる。
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。
本明細書で使用される用語「抗体」は、ある特定の実施形態においては、同じ種類の抗体の集団を指す。特に、抗体集団の全ての抗体が、抗体を定義するために使用されるフィーチャを示す。ある特定の実施形態においては、抗体の集団中の全ての抗体が、同じアミノ酸配列を有する。抗CD40抗体などの、特定の種類の抗体に対する参照は、特に、この種類の抗体の集団を指す。
本明細書で使用される用語「抗体」はまた、前記抗体の断片および誘導体を含む。抗体の「断片または誘導体」は、特に、前記抗体に由来し、その抗体と同じ抗原に、特に、同じエピトープに結合することができるタンパク質または糖タンパク質である。かくして、本明細書で抗体の断片または誘導体は一般に、機能的断片または誘導体を指す。特に好ましい実施形態においては、抗体の断片または誘導体は、重鎖可変領域を含む。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の断片または誘導体の例としては、(i)Fab断片、重鎖および軽鎖各々の可変領域および第1の定常ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)重鎖の可変領域および第1の定常ドメインCH1からなるFd断片;(iv)抗体の単一アームの重鎖および軽鎖可変領域からなるFv断片;(v)scFv断片、単一のポリペプチド鎖からなるFv断片;(vi)共に共有結合された2つのFv断片からなる(Fv)2断片;(vii)重鎖可変ドメイン;ならびに(viii)重鎖および軽鎖可変領域の会合が分子間でのみ生じることができ、分子内では生じ得ないような様式で共に共有結合された重鎖可変領域および軽鎖可変領域からなるマルチボディ(multibody)がある。抗体の誘導体は、特に親抗体と同じ抗原に結合するが、それが由来する親抗体とは異なるアミノ酸配列を有する抗体を含む。これらの抗体断片および誘導体は、当業者に公知の従来技術を使用して得られる。
標的アミノ酸配列が、その全長にわたって、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の参照アミノ酸配列の対応する部分と相同性または同一性を共有する場合、標的アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列に「由来する」または「対応する」。「対応する部分」は、例えば、標的抗体の重鎖可変領域のフレームワーク領域1(FRH1)が参照抗体の重鎖可変領域のフレームワーク領域1に対応することを意味する。特定の実施形態では、参照アミノ酸配列に「由来する」または「対応する」標的アミノ酸配列は、その全長にわたって、参照アミノ酸配列の対応する部分と100%相同、または特に、100%同一である。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の「相同性」または「同一性」は、参照配列の全長にわたって、または相同性もしくは同一性が定義される配列に対応する参照配列の対応する部分の全長にわたって、本発明によって好ましくは決定される。特定のCDR配列または特定の可変領域配列などの1つまたは複数のアミノ酸配列によって定義される親抗体に由来する抗体は、特に親抗体のそれぞれのアミノ酸配列と少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%相同または同一、特に同一であるCDR配列または可変領域配列などのアミノ酸配列を有する抗体である。ある特定の実施形態においては、親抗体に由来する抗体(すなわちその誘導体)は、親抗体と同じCDR配列を有するが、可変領域の残りの配列において異なる。
本明細書で使用される用語「抗体」はまた、多価および多特異的抗体、すなわち、各々同じエピトープに結合する2つよりも多い結合部位を有する抗体構築物と、第1のエピトープに結合する1つまたは複数の結合部位および第2のエピトープに結合する1つまたは複数の結合部位ならびに必要に応じて、さらなるエピトープに結合するまたさらなる結合部位を有する抗体構築物とを指す。
「特異的結合」は、好ましくは、抗体などの作用物質が、別の標的への結合性と比較して特異的であるエピトープなどの標的により強く結合することを意味する。作用物質は、これが第2の標的の解離定数(Kd)より低い解離定数で第1の標的に結合する場合、第2の標的と比較して第1の標的により強く結合する。好ましくは、作用物質が特異的に結合する標的の解離定数は、作用物質が特異的に結合しない標的の解離定数より100倍超、200倍、500倍、または1000倍超低い。さらに、用語「特異的結合」は特に、少なくとも106M−1、好ましくは少なくとも107M−1、より好ましくは少なくとも108M−1のKaを有する結合パートナー間の結合親和性を示す。ある特定の抗原に特異的な抗体とは、特に、少なくとも106M−1、好ましくは少なくとも107M−1、より好ましくは少なくとも108M−1の親和性定数Kaを有する親和性で前記抗原に結合することができる抗体を指す。例えば、用語「抗CD40抗体」とは、CD40に特異的に結合する抗体を指し、好ましくは、少なくとも106M−1、好ましくは少なくとも107M−1、より好ましくは少なくとも108M−1のKaを有する親和性でCD40に結合することができる。
本明細書において使用される用語「ChiLob 7/4」は、特にそれぞれ配列番号22および23の重鎖および軽鎖可変領域アミノ酸配列を有するヒト/マウスキメラ抗体を指す。
用語「アゴニスト性抗体」は、その抗原への結合の際に、その抗原を活性化できる抗体を指す。抗原が受容体である場合、アゴニスト性抗体は、例えば受容体のリガンド結合ドメインへの結合を介して、または2個の受容体分子への結合、それによる二量体形成の開始を介してリガンド結合を模倣できる。
本発明による用語「CD40」は、特にTNF受容体スーパーファミリーメンバー5(TNFRSF5)としても公知のヒトCD40を指す。CD40は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである。それは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む膜貫通タンパク質である。リガンド、特にCD40Lの結合の際に、CD40は活性化され、細胞内下流シグナル伝達が生じる。
用語「シアル酸」は、特に、ノイラミン酸の任意のN−またはO−置換誘導体を指す。それは、5−N−アセチルノイラミン酸および5−N−グリコリルノイラミン酸の両方を指す場合があるが、好ましくは5−N−アセチルノイラミン酸のみを指す。シアル酸、特に、5−N−アセチルノイラミン酸は、好ましくは2,3−または2,6−結合により炭水化物鎖に結合する。好ましくは、本明細書に記載の抗体調製物において、2,3−および2,6−結合シアル酸の両方が存在する。
本発明による「グリカンの相対量」は、抗体調製物の、または抗体を含む組成物中の、それぞれ、抗体に結合したグリカンの特定のパーセンテージまたはパーセンテージ範囲を指す。特に、グリカンの相対量は、抗体中に含まれ、かくして、抗体調製物中の、または抗体を含む組成物中の、抗体のポリペプチド鎖に結合したすべてのグリカンの特定のパーセンテージまたはパーセンテージ範囲を指す。グリカンの100%は、抗体集団の、または抗体を含む組成物中の、それぞれ、抗体に結合したすべてのグリカンを指す。例えば、10%の二分岐GlcNAcを担持するグリカンの相対量は、抗体に含まれ、かくして前記組成物中の抗体ポリペプチド鎖に結合したすべてのグリカンの10%が、二分岐GlcNAc残基を含むが、抗体に含まれ、かくして前記組成物中の抗体ポリペプチド鎖に結合したすべてのグリカンの90%が、二分岐GlcNAc残基を含まない、抗体を含む組成物を指す。100%を表すグリカンの対応する基準量は、組成物中の抗体に結合したすべてのグリカン構造またはすべてのN−グリカン、すなわち組成物中の抗体のアスパラギン残基に結合したすべてのグリカン構造またはすべての複合体型グリカンのいずれかであってよい。グリカン構造の参照群は、一般に明確に示されるまたは当業者によって状況から直ちに導き出せる。
用語「N−グリコシル化」は、タンパク質のポリペプチド鎖のアスパラギン残基に結合したすべてのグリカンを指す。これらのアスパラギン残基は、一般に、アミノ酸配列Asn−Xaa−Ser/Thrを有するN−グリコシル化部位の一部であり、式中Xaaは、プロリンを除く任意のアミノ酸であってよい。同様に「N−グリカン」は、ポリペプチド鎖のアスパラギン残基に結合したグリカンである。用語「グリカン」、「グリカン構造」、「炭水化物」、「炭水化物鎖」および「炭水化物構造」は、一般に本明細書において同意語として使用される。一般にN−グリカンは、2個のN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基および3個のマンノース残基からなる一般的コア構造を有し、Asnがポリペプチド鎖のアスパラギン残基である構造Manα1,6−(Manα1,3−)Manβ1,4−GlcNAcβ1,4−GlcNAcβ1−Asnを有する。N−グリカンは、3つの異なる種類、すなわち複合体型グリカン、ハイブリッド型グリカンおよび高マンノース型グリカンにさらに細分される。
本明細書で与えられる数値、特に、特異的グリコシル化特性の相対量は、好ましくは概数として理解されるべきである。特に、数値は、好ましくは最大で10%高い、および/または低い、特に、最大で9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%高い、および/または低い場合がある。
「コンジュゲート」において、2種またはそれより多くの化合物が一緒に連結されている。ある特定の実施形態では、各化合物由来の性質の少なくともいくつかがコンジュゲート内で保持されている。連結は、共有結合または非共有結合によって実現され得る。好ましくは、コンジュゲートの化合物は、共有結合によって連結されている。コンジュゲートの異なる化合物は、化合物の原子同士間の1つまたは複数の共有結合を介して互いに直接結合され得る。代わりに、化合物は、リンカー分子などの化学部分を介して互いに結合されている場合があり、リンカーは、化合物の原子に共有結合性に結合している。コンジュゲートが2つを超える化合物から構成される場合、これらの化合物は、例えば、1つの化合物が次の化合物に結合した鎖コンホメーションで連結されてもよく、またはいくつかの化合物はそれぞれ、1つの中心の化合物に結合されてもよい。
用語「核酸」は、1本鎖および2本鎖核酸およびリボ核酸およびデオキシリボ核酸を含む。天然に存在するおよび合成のヌクレオチドを含んでよく、例えばメチル化、5’および/または3’キャッピングによって天然でまたは合成的に改変されてよい。
用語「発現カセット」は、特にそれに導入されたコード核酸配列の発現を可能にでき、制御できる核酸構築物を指す。発現カセットは、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサーおよび遺伝子の転写またはmRNAの翻訳を制御する他の調節エレメントを含んでよい。発現カセットの正確な構造は、種または細胞型の機能によって変動する場合があるが、一般にTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写ならびに5’および3’非翻訳配列を含む。さらに詳細には、5’非転写発現調節配列は、作動可能に繋がれた核酸の転写調節のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。発現カセットは、エンハンサー配列または上流活性化配列も含む場合がある。
本発明によれば、用語「プロモーター」は、発現される核酸配列の上流(5’)に位置付けられ、RNAポリメラーゼのための認識および結合部位を提供することによって配列の発現を調節する核酸配列を指す。「プロモーター」は、遺伝子の転写の制御に関与するさらなる因子のためのさらなる認識および結合部位も含んでよい。プロモーターは、原核生物または真核生物遺伝子の転写を調節できる。さらにプロモーターは、「誘導性」である場合がある、すなわち誘導剤への応答で転写を開始する、または転写が誘導剤によって調節されない場合は「構成的」である場合がある。誘導性プロモーターの調節下にある遺伝子は、誘導剤が存在しない場合は、発現されないまたは少量発現されるのみである。誘導剤の存在下で遺伝子は、スイッチがオンになるまたは転写のレベルが増大される。これは、一般に、特異的転写因子の結合によって媒介される。
用語「ベクター」は、その最も一般的な意味で本明細書において使用され、核酸が、例えば原核生物および/または真核生物細胞に導入され、適切な場合はゲノムに組み込まれるようにする、核酸に関する任意の中間ビヒクルを含む。この種類のベクターは、細胞において好ましくは複製されるおよび/または発現される。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを含む。本明細書において使用される用語「プラスミド」は一般に、染色体DNAとは無関係に複製できる染色体外遺伝子材料の構築物、通常環状DNA二重鎖に関する。
本発明によれば、用語「宿主細胞」は、外来性核酸を用いて形質転換またはトランスフェクトされ得る任意の細胞に関する。用語「宿主細胞」は、本発明によれば、原核生物細胞(例えばE.coli)または真核生物細胞(例えば哺乳動物細胞、特にヒト細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。特に好ましいのは、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギまたは霊長類からの細胞などの哺乳動物細胞である。細胞は、多様な組織型に由来してよく、初代細胞および細胞株を含む。核酸は、単一のコピーまたは2つもしくはそれより多いコピーの形態で宿主細胞中に存在してよく、一実施形態においては、宿主細胞において発現される。
本発明による用語「患者」は、ヒト、非ヒト霊長類または別の動物、特にウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはマウスおよびラットなどのげっ歯類などの哺乳動物を意味する。特に好ましい実施形態においては、患者はヒトである。
本発明による用語「がん」は、特に、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸がん、子宮内膜がん、腎がん、副腎がん、甲状腺がん、血液のがん、皮膚がん、脳のがん、子宮頸がん、腸がん(intestinal cancer)、肝がん、結腸がん、胃がん、腸がん(intestine cancer)、頭頸部がん、胃腸がん、リンパ節がん、食道がん、結腸直腸がん、膵がん、耳鼻咽喉(ENT)がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん、卵巣がんおよび肺がんならびにそれらの転移を含む。本発明による用語がんはまた、がん転移を含む。
「腫瘍」とは、誤調節された細胞増殖により形成される細胞群または組織を意味する。腫瘍は、構造的組織化および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常、明確な組織塊を形成する場合があり、それは、良性である場合も、悪性である場合もある。
「転移」とは、身体のその元の部位から別の部分へのがん細胞の拡散を意味する。転移の形成は非常に複雑なプロセスであり、通常、原発性腫瘍からのがん細胞の剥離、体内循環への進入および身体の他の場所の正常組織内で定着して増殖することを含む。腫瘍細胞が転移する場合、新しい腫瘍は、続発性または転移性腫瘍と呼ばれ、その細胞は通常、元の腫瘍内の細胞に似ている。このことは、例えば、乳がんが肺へと転移した場合、続発性腫瘍は、異常な***細胞から構成されており、異常な肺細胞から構成されているわけではないことを意味する。そこで、肺における腫瘍は、転移性乳がんと呼ばれ、肺がんとは呼ばれない。
用語「医薬組成物」は特に、ヒトまたは動物に投与するのに適した組成物、すなわち、薬学的に許容される成分を含有する組成物を指す。好ましくは、医薬組成物は、担体、希釈剤、または薬学的賦形剤、例えば、緩衝剤、保存剤および張度修飾物質などと一緒に、活性化合物、またはその塩またはプロドラッグを含む。
本発明の詳細な説明
本発明は、対応するキメラ抗体と同様の抗原結合特性を有するヒト化抗CD40抗体の開発に基づいている。さらに、ヒト化配列は、より高いFcγ受容体結合親和性を有する抗体を提供する。特にFcγRIIへの結合は、親キメラバリアントと比較して増大していた。Fcγ受容体、特にFcγRIIへの強い結合が、アゴニスト性抗CD40抗体およびそれらのT細胞応答の活性化にとって重大であることが当技術分野において示された。
本発明は、対応するキメラ抗体と同様の抗原結合特性を有するヒト化抗CD40抗体の開発に基づいている。さらに、ヒト化配列は、より高いFcγ受容体結合親和性を有する抗体を提供する。特にFcγRIIへの結合は、親キメラバリアントと比較して増大していた。Fcγ受容体、特にFcγRIIへの強い結合が、アゴニスト性抗CD40抗体およびそれらのT細胞応答の活性化にとって重大であることが当技術分野において示された。
これらの知見を考慮して本発明は、CD40に結合することができ、重鎖可変領域を含むヒト化抗体であって、重鎖可変領域が配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ヒト化抗体を提供する。
ヒト化抗体は、特にヒトCD40、特にヒトCD40の細胞外領域に結合できる。好ましい実施形態においては、ヒト化抗体は、CD40へのヒト化抗体の結合がCD40シグナル伝達を活性化するようなアゴニスト性抗体である。特にヒト化抗体は、CD40に特異的に結合する。
さらに、ヒト化抗体は、配列番号22のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号23のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む参照抗体と同様の抗原結合特性を示し得る。好ましくは、参照抗体は、ヒト/マウスキメラ抗体ChiLob7/4である。特に本発明によるヒト化抗体は、参照抗体と同じ抗原、好ましくは同じエピトープに特異的に結合でき、前記抗原またはエピトープそれぞれに好ましくは同等の親和性で結合できる。すなわちヒト化抗体は、参照抗体の最大で1000倍、より好ましくは最大で200倍高い、最大で100倍高い、最大で20倍高いまたは最大で10倍高い解離定数を有する親和性で抗原またはエピトープに結合する。最も好ましくは、解離定数は、参照抗体とおよそ同じであり、特に2倍以下である。さらに、ヒト化抗体は、好ましくは配列番号22のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号23のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む参照抗体と交差特異性を示す。特にヒト化抗体は、十分高い濃度で存在する場合にCD40への参照抗体の結合を遮断できる。本発明によるヒト化抗体が抗原CD40に既に結合している場合に、CD40への参照抗体の結合が妨げられる可能性がある。
ある特定の実施形態においては、重鎖可変領域は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む。特に重鎖可変領域は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも95%、特に少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態においては、ヒト化抗体の重鎖可変領域は、配列番号12のアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR−H2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR−H3を含む。特に重鎖可変領域は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列ならびにさらに配列番号12、13および14のアミノ酸配列を有する3個の特異的CDRを含む。したがって配列番号11への任意の配列偏差(sequence deviation)は、フレームワーク領域に位置付けられ、CDRには位置付けられない。
詳細にはヒト化抗体は、配列番号1から10のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含んでよい。特に重鎖可変領域は、配列番号6から10のいずれか1つ、特に配列番号6または10、好ましくは配列番号10によるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態においては、重鎖可変領域は、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、特に配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも93%、少なくとも95%または特に少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。
ある特定の実施形態においては、ヒト化抗体は、軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域は配列番号18のアミノ酸配列または配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。
ある特定の実施形態においては、軽鎖可変領域は、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも93%同一であるアミノ酸配列を含む。特に軽鎖可変領域は、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも95%、特に少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態においては、ヒト化抗体の軽鎖可変領域は、配列番号19のアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L1、配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR−L2および配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR−L3を含む。特に軽鎖可変領域は、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号19、20および21のアミノ酸配列を有する3個の特異的CDRをさらに有する。したがって、配列番号18への任意の配列偏差は、フレームワーク領域に位置付けられ、CDRには位置付けられない。
詳細にはヒト化抗体は、配列番号15から17のいずれか1つによるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み得る。特に軽鎖可変領域は、配列番号15または16、特に配列番号16によるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態においては、軽鎖可変領域は、配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも90%同一である、特に配列番号16のアミノ酸配列と少なくとも93%、少なくとも95%または特に少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態においては、ヒト化抗体は、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号12、13および14のアミノ酸配列を有する3個の特異的CDRをさらに有する重鎖可変領域ならびに配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、配列番号19、20および21のアミノ酸配列を有する3個の特異的CDRをさらに有する軽鎖可変領域を有する。ある特定の好ましい実施形態においては、ヒト化抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
好ましい実施形態においては、ヒト化抗体は、Fc領域を含む。ヒト化抗体は、特に全抗体であってよい。ヒト化抗体は、任意のアイソタイプであってよく、特にIgG型抗体、特にIgG1、IgG2またはIgG4である。特定の実施形態においては、ヒト化抗体は、IgG1型またはIgG2型抗体である。
ある特定の実施形態においては、ヒト化抗CD40抗体は、高いpI値を有する。pI値は、分子、例えば抗CD40抗体が中性に荷電している、すなわち、それが同数の正電荷および負電荷を有する際のpH値を指す。特に、ヒト化抗体は、8.0もしくはそれより高い、特に8.1もしくはそれより高いまたは8.2もしくはそれより高いpI値を有し得る。特定の実施形態においては、ヒト化抗体のpI値は、同じ定常領域を有し、重鎖可変領域は配列番号22のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域は配列番号23のアミノ酸配列を有する抗体よりも高い。特にpI値は、少なくとも0.4単位高く、特に少なくとも0.5単位高くまたは0.6単位高い。
ヒト化抗体は、特に1つまたは複数のヒトFcγ受容体、特にヒトFcγ受容体IIAおよび/またはヒトFcγ受容体IIBに結合することができる。ある特定の実施形態においては、ヒト化抗体は、同じ定常領域を有し、重鎖可変領域が配列番号22のアミノ酸配列を有し、軽鎖可変領域が配列番号23のアミノ酸配列を有する抗体より強い、ヒトFcγ受容体IIAおよび/またはヒトFcγ受容体IIBに対する結合親和性を有する。
ある特定の実施形態においては、抗CD40抗体は、グリコシル化、特に、N−グリコシル化されている。特に、ヒト化抗体は、重鎖の第2の定常ドメイン(CH2)中にグリコシル化部位を有する。抗体は通常、同一のアミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する。したがって、ヒト化抗体は、好ましくは、その2つのCH2ドメインの各々に1つの、少なくとも2つのグリコシル化部位を有する。このグリコシル化部位は、特に、Kabatの番号付けによる重鎖のアミノ酸297位に対応するアミノ酸位置にあり、アミノ酸配列モチーフAsn Xaa Ser/Thr(式中、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸であってもよい)を有する。Asn297のN結合グリコシル化は、哺乳動物IgGならびに他の抗体アイソタイプの相同領域において保存されている。可変領域または他の配列改変の中に存在してもよい必要に応じたさらなるアミノ酸のため、この保存されたグリコシル化部位の実際の位置は、抗体のアミノ酸配列中で変化してもよい。好ましくは、ヒト化抗体に結合したグリカンは、好ましくは、少なくとも以下の構造:
Asn−GlcNAc−GlcNAc−Man−(Man−GlcNAc)2
(式中、Asnは抗体のポリペプチド部分のアスパラギン残基であり;GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり、Manはマンノースである)
を含む、二分岐型複合型N−結合炭水化物構造である。末端のGlcNAc残基は、必要に応じてシアル酸残基を担持してもよい、ガラクトース残基をさらに担持してもよい。さらなるGlcNAc残基(バイセクト型GlcNAcと命名される)を、ポリペプチドに最も近いManに結合させることができる。フコースを、Asnに結合したGlcNAcに結合することができる。
Asn−GlcNAc−GlcNAc−Man−(Man−GlcNAc)2
(式中、Asnは抗体のポリペプチド部分のアスパラギン残基であり;GlcNAcはN−アセチルグルコサミンであり、Manはマンノースである)
を含む、二分岐型複合型N−結合炭水化物構造である。末端のGlcNAc残基は、必要に応じてシアル酸残基を担持してもよい、ガラクトース残基をさらに担持してもよい。さらなるGlcNAc残基(バイセクト型GlcNAcと命名される)を、ポリペプチドに最も近いManに結合させることができる。フコースを、Asnに結合したGlcNAcに結合することができる。
好ましい実施形態においては、ヒト化抗CD40抗体は、N−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)または検出可能な量のNeuGcを含まない。さらに、ヒト化抗体はまた、好ましくはGaliliエピトープ(Galα1,3−Gal構造)または検出可能な量のGaliliエピトープを含まない。特に、NeuGcおよび/またはGalα1,3−Gal構造を担持するグリカンの相対量は、抗体集団中のヒト化抗体のFc部分に結合したグリカンの総量の0.1%未満またはさらには0.02%未満である。
特に、ヒト化抗CD40抗体は、ヒトグリコシル化パターンを有する。これらのグリコシル化特性のために、副作用を誘導する外来性免疫原性非ヒト構造は存在せず、このことは、ある特定の外来糖構造、例えば両方ともげっ歯類生成系について公知の免疫原性非ヒトシアル酸(NeuGc)もしくはGaliliエピトープ(Gal−Gal構造)、または例えば酵母系から公知の免疫原性高マンノース構造のような他の構造により引き起こされることが公知の、望ましくない副作用または不利益が避けられることを意味する。
特定の実施形態においては、ヒト化抗体は、二分岐GlcNAc残基を担持する検出可能な量のグリカンを有するFc領域でのグリコシル化パターンを含む。特に二分岐GlcNAc残基を担持するグリカンの相対量は、組成物中の抗体のFcグリコシル化部位に結合したグリカンの総量の少なくとも0.1%、特に少なくとも0.2%または少なくとも0.5%である。さらにある特定の実施形態においては、Fc領域でのグリコシル化パターンは、組成物中の抗体のFcグリコシル化部位に結合したグリカンの総量の少なくとも2%の少なくとも1個のシアル酸残基を担持するグリカンの相対量を含む。特に少なくとも1個のシアル酸残基を担持するグリカンの相対量は、組成物中の抗体のFcグリコシル化部位に結合したグリカンの総量の少なくとも3%、特に少なくとも4%または少なくとも5%である。
ヒト化抗CD40抗体は、高い量のコアフコースまたは低い量のコアフコースを有するFc領域でのグリコシル化パターンを有する場合がある。Fc領域でのフコシル化の量の低減は、ADCCを誘導する抗体の能力を増大させる。特にFcγRIIIaへの結合親和性は、Fc領域でのフコシル化の量を減少させることによって増大される。ある特定の実施形態においては、コアフコース残基を担持するグリカンの相対量は、組成物中の抗体のFcグリコシル化部位に結合したグリカンの総量の20%もしくはそれ未満、特に15%もしくはそれ未満または10%もしくはそれ未満である。代替の実施形態においては、コアフコース残基を担持するグリカンの相対量は、組成物中の抗体のFcグリコシル化部位に結合したグリカンの総量の少なくとも60%、特に少なくとも65%または少なくとも70%である。
ヒト化抗CD40抗体は、好ましくは宿主細胞において組換え生成される。したがって、ヒト化抗体は、特に、モノクローナル抗体である。抗CD40抗体の生成に使用される宿主細胞は、抗体生成に使用され得る任意の宿主細胞であり得る。好適な宿主細胞は、特に、真核生物宿主細胞、特に、哺乳動物宿主細胞である。宿主細胞の例としては、Pichia pastoris細胞株などの酵母細胞、SF9およびSF21細胞株などの昆虫細胞、植物細胞、EB66アヒル細胞株などの鳥類細胞、CHO、NS0、SP2/0およびYB2/0細胞株などのげっ歯類細胞ならびにHEK293、PER.C6、CAP、CAP−T、AGE1.HN、Mutz−3およびKG1細胞株などのヒト細胞がある。
ある特定の実施形態においては、ヒト化抗CD40抗体は、ヒト血液細胞株において、特に、ヒト骨髄性白血病細胞株において組換え生成される。ヒト化抗体の生成に使用され得る好ましいヒト細胞株および好適な生成手技は、WO 2008/028686 A2で説明されている。特定の実施形態においては、ヒト化抗CD40抗体は、NM−H9D8、NM−H9D8−E6、およびNM−H9D8−E6Q12からなる群より選択されるヒト骨髄性白血病細胞株における発現により得られる。これらの細胞株は、Glycotope GmbH、Robert−Roessle−Str.10、13125 Berlin(DE)によりDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)、Inhoffenstrasse 7B、38124 Braunschweig(DE)にブダペスト条約の要件に従って、受託番号DSM ACC2806(NM−H9D8;2006年9月15日に寄託された)、DSM ACC2807(NM−H9D8−E6;2006年10月5日に寄託された)およびDSM ACC2856(NM−H9D8−E6Q12;2007年8月8日に寄託された)の下で寄託された。NM−H9D8細胞は、高度のシアル酸付加、高度の二分岐GlycNAc、高度のガラクトシル化および高度のフコシル化を有するグリコシル化パターンを提供する。NM−H9D8−E6およびNM−H9D8−E6Q12細胞は、フコシル化の程度が非常に低いことを除いてNM−H9D8細胞と同様のグリコシル化パターンを提供する。他の好適な細胞株としては、米国培養細胞系統保存機関に存在するヒト骨髄性白血病細胞株であるK562(ATCC CCL−243)および上記の細胞株に由来する細胞株がある。
特定の実施形態では、ヒト化抗CD40抗体は、検出可能マーカー治療的活性物質などのさらなる作用物質とコンジュゲートした抗体を含むコンジュゲートとして提供される。ヒト化抗体は、1つまたは複数のさらなる作用物質とコンジュゲートすることができる。1つを超えるさらなる作用物質がコンジュゲートにおいて存在する場合、これらのさらなる作用物質は、同一であっても、異なっていてもよく、特に、すべて同一である。ヒト化抗体へのさらなる作用物質のコンジュゲーションは、当該分野で公知の任意の方法を使用して達成することができる。さらなる作用物質は、特に、融合もしくは化学的カップリングによって共有結合的に、または非共有結合的に抗体に結合され得る。ある特定の実施形態においては、さらなる作用物質は、特に、リンカー部分を介して、ヒト化抗体に共有結合される。リンカー部分は、ヒト化抗体にさらなる作用物質を結合するために好適な任意の化学的実体であり得る。
さらなる作用物質は、好ましくは、疾患、特にがんの療法、診断、予後診断および/または監視において有用である。例えば、さらなる作用物質は、放射性核種、化学療法剤、抗体、二特異的抗体または抗体断片、特に、ヒト化抗CD40抗体と異なる種および/または異なる特異性のもの、酵素、相互作用ドメイン、検出可能標識、毒素、細胞溶解性成分、免疫調節剤、免疫エフェクター、サイトカイン、ケモカイン、MHCクラスIまたはクラスII抗原、ならびにリポソームからなる群より選択することができる。特定の好適なさらなる作用物質は、放射性核種、またはがん細胞を死滅させることができる細胞傷害性剤、例えば、化学療法剤である。ある特定の好ましい実施形態においては、化学療法剤は、抗MUC1抗体に結合してコンジュゲートを形成する。
さらなる態様においては、本発明は、ヒト化抗CD40抗体をコードする核酸を提供する。前記核酸の核酸配列は、抗体をコードするために好適な任意のヌクレオチド配列を有し得る。しかし、好ましくは核酸配列は、核酸が発現される宿主細胞または生物の特定のコドン使用頻度、特にヒトコドン使用頻度に少なくとも部分的に適応される。核酸は、2本鎖または1本鎖DNAまたはRNA、好ましくはcDNAなどの2本鎖DNAまたはmRNAなどの1本鎖RNAであってよい。それは連続的な核酸分子であってよく、またはそれはヒト化抗体の異なる部分をそれぞれコードしているいくつかの核酸分子からなってよい。
ヒト化抗体が軽鎖および重鎖などの1つより多い異なるアミノ酸鎖からなる場合、核酸は、別々のアミノ酸鎖を産生するためにIRESエレメントなどの調節エレメントによって好ましくは分離された、例えば抗体のアミノ酸鎖の1つをそれぞれコードするいくつかのコード領域を含有する単一の核酸分子であってよく、または核酸は、各核酸分子が抗体のアミノ酸鎖の1つをそれぞれコードする1つまたは複数のコード領域を含むいくつかの核酸分子からなってよい。ヒト化抗体をコードするコード領域に加えて核酸は、例えば、他のタンパク質をコードできる、コード領域(複数可)の転写および/もしくは翻訳に影響を与えることができる、核酸の安定性もしくは、他の物理的もしくは化学的特性に影響を与えることができる、またはまったく機能を有さない場合があるさらなる核酸配列または他の改変も含む場合がある。
さらなる態様においては、本発明は、本発明による核酸および前記核酸に作動可能に繋がれたプロモーターを含む発現カセットまたはベクターを提供する。さらに発現カセットまたはベクターは、さらなるエレメント、特に核酸の転写および/もしくは翻訳、発現カセットもしくはベクターの増幅および/もしくは再生成、宿主細胞のゲノムへの発現カセットもしくはベクターの組み込み、ならびに/または宿主細胞中の発現カセットもしくはベクターのコピー数に影響を与えるおよび/または制御することができるエレメントを含んでよい。抗体を発現するためのそれぞれの発現カセットを含む好適な発現カセットおよびベクターは、先行技術において周知であり、かくして本明細書でさらなる記載を必要としない。
さらに本発明は、本発明による核酸または本発明による発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の宿主細胞であってよい。それは、単離された細胞または組織に含まれる細胞であってよい。好ましくは宿主細胞は、培養細胞、特に初代細胞または確立された細胞株の細胞、好ましくは腫瘍由来細胞である。好ましくは、それは、E.coliなどの細菌細胞、Saccharomyces属細胞、特にS.cerevisiaeなどの酵母細胞、Sf9細胞などの昆虫細胞または哺乳動物細胞、特に腫瘍由来ヒト細胞などのヒト細胞、CHOなどのハムスター細胞もしくは霊長類細胞である。本発明の好ましい実施形態においては、宿主細胞は、ヒト骨髄性白血病細胞由来である。好ましくは、それは、次の細胞または細胞株:K562、KG1、MUTZ−3またはそれらに由来する細胞もしくは細胞株または前述の細胞の少なくとも1つを含む細胞もしくは細胞株の混合物から選択される。宿主細胞は、NM−H9D8、NM−H9D8−E6、NM H9D8−E6Q12および前記宿主細胞のいずれか1つに由来する細胞もしくは細胞株または前述の細胞の少なくとも1つを含む細胞もしくは細胞株の混合物からなる群から好ましくは選択される。これらの細胞株およびそれらの特性は、PCT出願WO2008/028686A2に詳細に記載されている。好ましい実施形態においては、宿主細胞は、特定のグリコシル化パターンを有する糖タンパク質、特に抗体の発現のために最適化される。好ましくは、本発明による核酸のコード領域ならびに/または発現カセットもしくはベクターのプロモーターおよびさらなるエレメントにおけるコドン使用頻度は、使用される宿主細胞の種類に適合性であり、より好ましくは最適化されている。好ましくは、ヒト化抗体は、上に記載のとおり宿主細胞または細胞株によって生成される。
別の態様においては、本発明は、ヒト化抗体、核酸、発現カセットもしくはベクター、宿主細胞またはコンジュゲートを含む組成物を提供する。組成物は、1つを超えるこれらの成分を含有する場合もある。さらに組成物は、溶媒、希釈剤および賦形剤からなる群より選択される1つまたは複数のさらなる成分を含んでよい。好ましくは、組成物は、医薬組成物である。本実施形態においては、組成物の成分は、好ましくはすべて薬学的に許容される。組成物は、固体または液体組成物、特に好ましくは水溶液、エマルジョンもしくは懸濁物または凍結乾燥粉末であってよい。
特にヒト化抗CD40抗体またはそのコンジュゲートは、医療において、特に疾患、特に本明細書に記載される疾患、好ましくはがん、感染および免疫不全の治療、診断、予後診断および/またはモニタリングにおいて有用である。したがって、さらなる態様においては、本発明は、医療における使用のためのヒト化抗体、核酸、発現カセットもしくはベクター、宿主細胞、コンジュゲートまたは組成物を提供する。好ましくは医療における使用は、例えばがんなどの異常な細胞増殖に関連する疾患、細菌性、ウイルス性、真菌性または寄生虫感染などの感染、および免疫不全などの免疫活性の低減に関連する疾患などの疾患の処置、予後診断、診断および/またはモニタリングにおける使用である。好ましい実施形態においては、疾患は、がんである。好ましくは、がんは、卵巣がん、乳がん、肺がん、膵臓がん、白血病およびリンパ腫、特に慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞悪性疾患、多発性メラノーマ、濾胞リンパ腫およびホジキンリンパ腫からなる群より選択される。
ある特定の実施形態においては、処置される疾患は、がんなどの異常な細胞増殖に関連する疾患である。がんは、CD40陽性またはCD40陰性であってよい。がん細胞のCD40発現とは無関係に、ヒト化抗CD40抗体は、がん細胞に対する免疫応答を誘導するまたは増強するために前記がんの治療において使用され得る。特定の実施形態においては、ヒト化抗CD40抗体は、別の抗がん治療剤との組合せで使用される。前記さらなる治療剤は、任意の公知の抗がん薬であってよく、特にがん抗原に対する抗体であってよい。ヒト化抗CD40抗体との組合せに好適な抗体として、セツキシマブ(Erbitux)、トムゾツキシマブ(tomuzotuximab)、パニツモマブ(Vectibix)およびニモツズマブ(Theraloc)などの抗EGFR抗体、トラスツズマブ(Herceptin)、チミグツズマブ(timigutuzumab)およびペルツズマブなどの抗HER2抗体;ベバシズマブ(Avastin)およびバヌジズマブ(vanuzizumab)などの抗VEGF抗体;アレムツズマブ(Campath)などの抗CD52抗体;ブレンツキシマブ(Adcetris)などの抗CD30抗体;ゲムツズマブ(Mylotarg)などの抗CD33抗体;リツキシマブ(Rituxan、Mabthera)、トシツモマブ(Bexxar)およびイブリツモマブ(Zevalin)などの抗CD20抗体;例えばWO2004/050707において開示されるKaroMabなどの抗TF抗体、例えばWO2004/065423およびWO2011/012309において開示されるpankomab(ガチポツヅマブ(gatipotuzumab))などの抗MUC1抗体、イピリムマブおよびトレメリムマブなどの抗CTLA4抗体、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブおよびアベルマブなどの抗PD1/PD−L1抗体、ウレルマブ、MEDI6469、TRX518およびバリルマブ(varilumab)などのTNFおよびTNFRスーパーファミリーメンバーに対する抗体;エマクツズマブ(emactuzumab)などのCSF1R抗体;エノブリツズマブ(enoblituzumab)などの抗B7−H3抗体;抗LAG3抗体;抗4−1BB抗体;抗ICOS抗体;ならびに抗OX−40抗体が挙げられる。
ヒト化抗CD40抗体および任意選択の1つまたは複数のさらなる抗体と組み合わせられ得るさらなる抗がん療法剤は、パクリタキセル(Taxol)、ドセタキセル(Taxotere)およびSB−T−1214などのタキサン;シクロホスファミド;イマチニブ;パゾパニブ;カペシタビン;シタラビン;ビノレルビン;ゲムシタビン;ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシンおよびミトキサントロンなどのアントラサイクリン;アミノグルテチミド、テストラクトン(Teslac)、アナストロゾール(Arimidex)、レトロゾール(Femara)、エキセメスタン(Aromasin)、ボロゾール(Rivizor)、ホルメスタン(Lentaron)、ファドロゾール(Afema)、4−ヒドロキシアンドロステンジオン、1,4,6−アンドロスタトリエン−3,17−ジオン(ATD)および4−アンドロステン−3,6,17−トリオン(6−OXO)などのアロマターゼ阻害剤;イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリンD、エトポシド(VP−16)、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸およびHU−331などのトポイソメラーゼ阻害剤;cis−ジアンミンジクロロ白金(II)(シスプラチン)、cis−ジアンミン(1,1−シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)(カルボプラチン)および[(1R,2R)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン](エタンジオアト−O,O’)白金(II)(オキサリプラチン)などの白金系化学療法剤、ならびに代謝拮抗剤、特に、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセドおよびプララトレキサートなどの葉酸拮抗薬、フルオロウラシル、ゲムシタビン、フロクスウリジン、5−フルオロウラシルおよびテガフル−ウラシルなどのピリミジン類似体、ならびにプリン類似体からなる群より選択することができる。ヒト化抗CD40抗体を用いる処置は、免疫賦活剤、サイトカイン、ケモカイン、放射線治療、タンパク質、ペプチドまたはRNAワクチンなどのワクチン、ベムラフェニブなどのB−Raf阻害剤、デキサメタゾン(dexametasone)、ボルテゾミブおよびレナリドミドなどのプロテアーゼ阻害剤とさらに組み合わされてよい。
細胞がCD40を発現するがんの処置における使用のために、ヒト化抗体は、上に記載のさらなる作用物質にカップリングされてよく、さらなる作用物質は、好ましくは放射性核種または細胞毒のような細胞傷害剤である。上に記載された抗がん治療剤の1つまたは複数は、ヒト化抗CD40抗体にカップリングするためのさらなる作用物質としても使用されてよい。さらに、ヒト化抗体は、患者の免疫応答を活性化するその能力、特にADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)および/またはCDC(補体依存性細胞傷害)を活性化する能力を増強するように操作されてよい。例えばこれは、抗体の、特にその定常領域のアミノ酸配列および/またはグリコシル化パターンを最適化することによって達成され得る。
疾患の診断、予後診断および/またはモニタリングにおける検出剤としての使用のために、ヒト化抗体は、検出可能なシグナルを生成できる標識剤に好ましくはカップリングされる。特に前記標識化剤は、放射性核種、フルオロフォアまたは酵素であってよい。
(実施例1:抗CD40抗体のマウス重鎖および軽鎖可変領域のヒト化)
モノクローナルアゴニスト性抗CD40抗体のマウス重鎖および軽鎖可変領域(VH、配列番号4およびVL、配列番号8)をコードしている核酸配列をヒト定常γ1またはγ2領域(CH)およびヒト定常κ領域(CL)のゲノム配列にそれぞれライゲーションした。
モノクローナルアゴニスト性抗CD40抗体のマウス重鎖および軽鎖可変領域(VH、配列番号4およびVL、配列番号8)をコードしている核酸配列をヒト定常γ1またはγ2領域(CH)およびヒト定常κ領域(CL)のゲノム配列にそれぞれライゲーションした。
これらのキメラクローンに基づいて、ヒト化抗体を構築した。この目標に向かって、点変異を、対応するヒトフレームワーク領域を生成するためにVHおよびVLのマウスフレームワーク領域の核酸配列に導入した。標的ヒトフレームワーク領域をヒト生殖系列抗体ライブラリーから選択した。特に最も関連するフレームワーク領域をそれらの全配列類似性およびそれらのCDRループ分類に応じてライブラリーから選択した。得られたすべてのデータをヒト化可変軽鎖および可変重鎖のさまざまな可変配列のセットを設計するために考慮した。一部のバリアントは、重大な位置にマウス配列への復帰変異を含有している。軽鎖可変領域のヒト化バリアントをκ鎖ベクターにクローニングし、重鎖可変領域のヒト化バリアントをγ1またはγ2鎖ベクターにクローニングした。
上に記載された方法によって、次のヒト化抗体重鎖および軽鎖可変領域を得た。
mVHおよびmVLは、ヒト化のためのベースとして使用されたマウス重鎖および軽鎖可変領域をそれぞれ表す。
(実施例2:ヒト化抗体バリアントの等電点の決定)
等電点電気泳動は、pH勾配を生じる両性電解質担体を含有するポリアクリルアミドゲル中の電気泳動による、タンパク質の等電点による分離のための分析方法である。それにより、タンパク質のさまざまなグリコフォームは、特徴的なバンドパターンを生じる。
等電点電気泳動は、pH勾配を生じる両性電解質担体を含有するポリアクリルアミドゲル中の電気泳動による、タンパク質の等電点による分離のための分析方法である。それにより、タンパク質のさまざまなグリコフォームは、特徴的なバンドパターンを生じる。
IEF分析のために、抗体調製物の緩衝液をナノ純水(nanopure water)に交換した。抗体タンパク質をpH6〜9プレキャスト水平ゲルに添加し、Multiphor II instrument(GE Healthcare)上で泳動させた。その後ゲルをクーマシーブリリアントブルー(0.02%クーマシーブリリアントブルーG250;5%硫酸アルミニウム水和物;10%エタノール;2%オルトリン酸)を使用して染色した。
図1は、NM−H9D8およびNM−H9D8−E6Q12において発現されたcLobおよびhLob試料のIEFゲルの一例をChiLob7/4と比較して示している。各タンパク質について観察されるいくつかの明確なバンドがある。一般に、すべてのIgG1タンパク質について、アイソフォームパターンは、すべてのIgG2抗体と比較して、より塩基性形態にシフトしている。hLobアイソフォームはcLobアイソフォームよりも塩基性の等電点(pI)を有する。Chilob7/4IgG1は、ChiLob7/4IgG2よりも多いバンド(アイソフォーム)を含有している。観察されたpIについてのこれらの全般的差異は、結合したグリカン構造を考慮していない抗体の純粋なアミノ酸配列について決定された理論的等電点と相関している(図1を参照されたい)。
(実施例3:固定化CD40へのヒト化抗体バリアントの結合)
NM−H9D8およびNM−H9D8−E6Q12細胞でのさまざまな構築物の発現に続いて、ヒト化抗体バリアントの力価を決定し、それらの濃度を調整した。次にヒト化抗体を抗原ELISAにおいておよび表面プラズモン共鳴を介してスクリーニングした。すべてのバリアントは、親キメラ抗体と同様のCD40への顕著な結合を示した。特にバリアントVH10/VL2は、28nMであるキメラ抗CD40抗体よりわずかに低くさえある(すなわち結合はより強い)、25nMのCD40への結合についての解離定数KDを有して良好な結果を示した。
NM−H9D8およびNM−H9D8−E6Q12細胞でのさまざまな構築物の発現に続いて、ヒト化抗体バリアントの力価を決定し、それらの濃度を調整した。次にヒト化抗体を抗原ELISAにおいておよび表面プラズモン共鳴を介してスクリーニングした。すべてのバリアントは、親キメラ抗体と同様のCD40への顕著な結合を示した。特にバリアントVH10/VL2は、28nMであるキメラ抗CD40抗体よりわずかに低くさえある(すなわち結合はより強い)、25nMのCD40への結合についての解離定数KDを有して良好な結果を示した。
(実施例4:CD40を発現しているさまざまな細胞へのヒト化抗体バリアントの結合)
最良の重鎖および軽鎖可変領域バリアント(VH10/VL2)を使用して、IgG1およびIgG2抗体を生成し、CD40陽性Raji細胞を用いたフローサイトメトリー分析を実施した。ヒト化抗体およびそれらのキメラ対応物の細胞への結合を図2に示す。ヒト化抗体がそれらが由来するキメラ抗体に匹敵する抗原結合特性を有することが実証された。
最良の重鎖および軽鎖可変領域バリアント(VH10/VL2)を使用して、IgG1およびIgG2抗体を生成し、CD40陽性Raji細胞を用いたフローサイトメトリー分析を実施した。ヒト化抗体およびそれらのキメラ対応物の細胞への結合を図2に示す。ヒト化抗体がそれらが由来するキメラ抗体に匹敵する抗原結合特性を有することが実証された。
(実施例5:Fcγ受容体IIAおよびIIBへのヒト化抗体バリアントの結合)
FcγRIIIa(CD16a)、FcγRIIa(CD32a)およびFcγRIIb(CD32b)についてのFcγR結合アッセイは、PerkinElmerのAlphaScreen(登録商標)技術に基づいている。AlphaScreen(登録商標)プラットホームは、PerkinElmerの単純なビーズベース技術に依拠しており、伝統的ELISAへのさらに効率的な代替法である。
FcγRIIIa(CD16a)、FcγRIIa(CD32a)およびFcγRIIb(CD32b)についてのFcγR結合アッセイは、PerkinElmerのAlphaScreen(登録商標)技術に基づいている。AlphaScreen(登録商標)プラットホームは、PerkinElmerの単純なビーズベース技術に依拠しており、伝統的ELISAへのさらに効率的な代替法である。
受容体結合アッセイのために、Hisタグ付きFcγR(FcγRIIIa:Glycotope GmbH、FcgRIIa:Hisタグ付き組換えヒトCD32a、Sino Biological、FcgRIIb: Hisタグ付き組換えヒトCD32b、Sino Biological)をNiキレートドナービーズによって捕捉する。抗CD40抗体とウサギ抗マウスカップリングアクセプタービーズとはFcγRへの結合について競合する。FcγRのウサギ抗マウスアクセプタービーズとの相互作用の場合には、ドナービーズとアクセプタービーズとは、680nmでのレーザー励起の際に発光を引き起こすように密に近接する。最大シグナルは、競合物を含まずに達成される(シグナルmax)。試験抗体がFcγRに結合する競合の場合においては、シグナルmaxは濃度依存的様式で低減する。化学発光は、EnSpire 2300 multilabel reader(PerkinElmer)を使用して520〜620nm(AlphaScreen(登録商標)法)での測定によって定量した。すべての結果を重複試料の平均±標準偏差として表した。データをGraphPad Prism 5ソフトウェアでの非線形カーブフィッティング(シグモイド用量応答可変スロープ)を使用して評価および算出した。結果として、濃度依存シグモイドカーブが得られ、トップ−プラトー、ボトム−プラトー、スロープおよびEC50によって定義される。
FcγR IIA結合親和性がIgG1およびIgG2抗体に匹敵するものであった一方で、hLobはcLobよりも高いFcγR IIA結合を示した(図3AおよびB)。
NM−H9D8−E6Q12において発現されたIgG1抗体バリアントは、さらに高い親和性でFcγR IIBに結合し、hLobはcLobよりも高いFcγR IIB結合を示した(図3C)。
一方、IgG2抗体バリアントは、IgG1抗体バリアントよりも低い親和性でFcγRIIBに結合したが、試験したグリコバリアントは、同等のFcγRIIB結合を示した(図3D)。
NM−H9D8−E6Q12において発現されたIgG1およびIgG2抗体バリアントは、高い親和性でFcγR IIIAに結合した(図3EおよびF)。
(実施例6:ヒト化抗体バリアントによって誘導されたCD40Lトランスフェクトレポーター細胞株におけるNFκB活性化)
NFκB活性化は、細胞表面でのCD40のアゴニスト性係合によって活性化されるシグナル伝達カスケードにおける重要なマーカーである。NFκB活性化を測定するために、CD40LトランスフェクトHEK−Blue sensor cell line(Invivogen)を使用した。CD40刺激に続くNFκB活性化の際に、これらの細胞は、QUANTI−Blue(InvivogenによるSEAP検出アッセイ)によって測定される胚性アルカリホスファターゼを分泌する。
NFκB活性化は、細胞表面でのCD40のアゴニスト性係合によって活性化されるシグナル伝達カスケードにおける重要なマーカーである。NFκB活性化を測定するために、CD40LトランスフェクトHEK−Blue sensor cell line(Invivogen)を使用した。CD40刺激に続くNFκB活性化の際に、これらの細胞は、QUANTI−Blue(InvivogenによるSEAP検出アッセイ)によって測定される胚性アルカリホスファターゼを分泌する。
簡潔には、HEK−Blue CD40L細胞を抗CD40抗体、CD40L(陽性対照として)またはアイソタイプ対照(陰性対照)と共に濃度100ng/mlで1日インキュベートし、SEAPレベルをQUANTI−Blue検出アッセイによって上清において測定した。
図4Aは、IgG2アイソタイプの抗CD40抗体を用いたインキュベーションの結果を示す。バリアントVH10/VL2のヒト化hLob抗体は、親およびキメラ抗体と同様のNFκB活性化を示した。反対に、低親和性を有する参照ヒト化(hLob1)は、NFκB活性化の顕著な低減を生じた。
IgG1アイソタイプの抗CD40抗体によって媒介されるNFκB活性化は、抗体の架橋結合に強く依存する一方でIgG2抗体は、架橋剤の存在に非依存性のNFκB活性化を示した。架橋剤としてFcgRIIIAを発現するNK細胞株の添加は、NM−H9D8において発現されるヒト化抗CD40抗体よりも、NM−H9D8−E6Q12において発現されるヒト化抗CD40抗体によって媒介されるNFκB活性化におけるさらに強い増大を示した(図4B)。
(実施例7:ヒト化抗CD40抗体バリアントによるB細胞増殖の誘導)
B細胞増殖は、初代ヒトB細胞へのアゴニスト性抗CD40抗体の結合によって誘導される。
B細胞増殖は、初代ヒトB細胞へのアゴニスト性抗CD40抗体の結合によって誘導される。
簡潔には、ヒトPBMCを解凍し、B細胞濃縮を、未刺激(untouched)ヒトB細胞のためのDynabead(Thermo Fisher)を使用して実施した。B細胞をヒト化抗CD40抗体(hLob)、キメラ抗体cLobおよびChiLob 7/4または陽性対照としてのCD40Lの存在下で数日培養した。試料中のATP含有量をCellTiter−Glo assay(Promega)を使用して生細胞についてのマーカーとして測定した。
図5は、8日間のインキュベーション期間後にIgG2アイソタイプの抗CD40抗体バリアントを濃度100ng/mlで使用するB細胞増殖アッセイの結果を示している。低い抗CD40結合親和性を有するヒト化抗体は、B細胞増殖の誘導の顕著な減少を示した。
(実施例8:抗CD40抗体バリアントによる樹状細胞の刺激の増大)
初代ヒトPBMCを健康ドナーのバフィーコートから単離した。単球をDynabeads untouched human monocytes kit(Thermo Fisher)を製造者のプロトコールにより使用してPBMC調製物の半量から単離した。単球を10%ウシ胎仔血清、50ng/ml IL−4および150ng/ml GM−CSFを含有するRPMI培地を用いて6〜7日間培養し、未成熟樹状細胞(iDC)に分化させた。残りのPBMCを1週間凍結保存し、Dynabeads Untouched human NK cells kit(Thermo Fisher)を製造者のプロトコールにより使用するヒトNK細胞の単離のために使用した。その後2×105個の分化したiDCを、NM−H9D8もしくはNM−H9D8−E6Q12において生成されたIgG1アイソタイプのヒト化抗CD40抗体(hLob)(300ng/ml)、またはNM−H9D8−E6Q12において生成された非特異的対照抗体または陰性対照としてヒトIgG1の存在下で、75ng/ml組換えヒトTNF−αの存在下で1×105個のNK細胞と共にもしくは伴わずに2日間インキュベートした。組換えCD40Lを用いたインキュベーションを陽性対照とした。細胞を回収し、活性化マーカーCD80、CD86およびHLA−DRならびに成熟マーカーCD83に特異的な直接蛍光標識した抗体を使用するフローサイトメトリーによって分析した。図6において、結果は、平均蛍光強度(A〜C)または高度にCD11c陽性のDC集団内の陽性細胞のパーセンテージとして示されている。
初代ヒトPBMCを健康ドナーのバフィーコートから単離した。単球をDynabeads untouched human monocytes kit(Thermo Fisher)を製造者のプロトコールにより使用してPBMC調製物の半量から単離した。単球を10%ウシ胎仔血清、50ng/ml IL−4および150ng/ml GM−CSFを含有するRPMI培地を用いて6〜7日間培養し、未成熟樹状細胞(iDC)に分化させた。残りのPBMCを1週間凍結保存し、Dynabeads Untouched human NK cells kit(Thermo Fisher)を製造者のプロトコールにより使用するヒトNK細胞の単離のために使用した。その後2×105個の分化したiDCを、NM−H9D8もしくはNM−H9D8−E6Q12において生成されたIgG1アイソタイプのヒト化抗CD40抗体(hLob)(300ng/ml)、またはNM−H9D8−E6Q12において生成された非特異的対照抗体または陰性対照としてヒトIgG1の存在下で、75ng/ml組換えヒトTNF−αの存在下で1×105個のNK細胞と共にもしくは伴わずに2日間インキュベートした。組換えCD40Lを用いたインキュベーションを陽性対照とした。細胞を回収し、活性化マーカーCD80、CD86およびHLA−DRならびに成熟マーカーCD83に特異的な直接蛍光標識した抗体を使用するフローサイトメトリーによって分析した。図6において、結果は、平均蛍光強度(A〜C)または高度にCD11c陽性のDC集団内の陽性細胞のパーセンテージとして示されている。
NK細胞の存在下で、NM−H9D8−E6Q12において生成されたヒト化抗CD40抗体(hLob)は、NM−H9D8において生成されたヒト化抗CD40抗体(hLob)と比較して樹状細胞のより強い活性化および成熟を誘導し、NM−H9D8−E6Q12において生成されたhLobのより強い架橋結合能力がより強いDC活性化を生じることを示している。
(実施例9:混合リンパ球反応中のヒト化抗CD40抗体バリアントによるT細胞刺激の増大)
混合リンパ球反応では、T細胞活性化に対するより強いDC活性化の影響を分析した。簡潔には、ヒト単球をPan Monocyte Isolation Kit(Miltenyi Biotec GmbH)を使用してバフィーコート由来PBMCから単離した。単球を20% FCS、10%馴化培地、500U/ml IL−4および250U/ml GM−CSFを含有するMEM培地中で7日間培養することによって未成熟樹状細胞に分化させた。
混合リンパ球反応では、T細胞活性化に対するより強いDC活性化の影響を分析した。簡潔には、ヒト単球をPan Monocyte Isolation Kit(Miltenyi Biotec GmbH)を使用してバフィーコート由来PBMCから単離した。単球を20% FCS、10%馴化培地、500U/ml IL−4および250U/ml GM−CSFを含有するMEM培地中で7日間培養することによって未成熟樹状細胞に分化させた。
T細胞をDynabeads untouched human T Cells(Thermo Fisher)を使用してヒトPBMCから単離した。次にT細胞1×106個を、1×105iDCおよびNM−H9D8またはNM−H9D8−E6Q12において生成したIgG1アイソタイプのヒト化抗CD40抗体(hLob)(1μg/ml)を用いてインキュベートした。5日後、T細胞の活性化を細胞表面に発現された活性化マーカーCD25のフローサイトメトリー分析によって細胞傷害性CD8+陽性T細胞の亜集団において測定した(図7A)。NM−H9D8−E6Q12において生成したヒト化抗CD40抗体(hLob)は、NM−H9D8において生成されたヒト化抗CD40抗体(hLob)よりも強いT細胞活性化を誘導し、増大したDC活性化が実際にさらに良好なT細胞活性化に変わることを示している。さらに、NM−H9D8−E6Q12において生成されたhLobと共にインキュベートしたCD8 T細胞は、CD137(4−1BB)、T細胞共起刺激分子のより強い発現を示した(図7B)。
寄託された生体材料の識別
細胞株DSM ACC 2806、DSM ACC 2807およびDSM ACC 2856は、以下の表に示す日付に、Glycotope GmbH、Robert−Roessle−Str.10、13125 Berlin(DE)によりDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstrasse 7B、38124 Braunschweig(DE)に寄託された。
細胞株DSM ACC 2806、DSM ACC 2807およびDSM ACC 2856は、以下の表に示す日付に、Glycotope GmbH、Robert−Roessle−Str.10、13125 Berlin(DE)によりDSMZ−Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、Inhoffenstrasse 7B、38124 Braunschweig(DE)に寄託された。
Claims (22)
- CD40に結合することができ、重鎖可変領域を含むヒト化抗体であって、前記重鎖可変領域が配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、ヒト化抗体。
- 前記重鎖可変領域が、配列番号12のアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−H1、配列番号13のアミノ酸配列を有するCDR−H2および配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR−H3を含む、請求項1に記載の抗体。
- 前記重鎖可変領域が配列番号1から10の群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体。
- 軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域が配列番号18のアミノ酸配列または配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
- 前記軽鎖可変領域が、配列番号19のアミノ酸配列を有する相補性決定領域CDR−L1、配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR−L2および配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR−L3を含む、請求項4に記載の抗体。
- 前記軽鎖可変領域が配列番号15から17の群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体。
- 前記重鎖可変領域が配列番号10のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖可変領域が配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の抗体。
- Fc領域を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
- IgG1型、IgG2型またはIgG4型抗体である、請求項8に記載の抗体。
- 以下の特徴:
(i)二分岐GlcNAc残基を担持する検出可能な量のグリカン;
(ii)組成物中の前記抗体のFcグリコシル化部位に結合したグリカンの総量の少なくとも2%の少なくとも1つのシアル酸残基を担持するグリカンの相対量
のうちの1つまたは複数を有するFc領域でのグリコシル化パターンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体。 - 同じ定常領域を有する抗体より強い、ヒトFcγ受容体IIAおよび/またはヒトFcγ受容体IIBに対する結合親和性を有し、前記重鎖可変領域が配列番号22のアミノ酸配列を有し、前記軽鎖可変領域が配列番号23のアミノ酸配列を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体。
- NM−H9D8(DSM ACC 2806)、NM−H9D8−E6(DSM ACC 2807)、NM−H9D8−E6Q12(DSM ACC 2856)およびこれらに由来する細胞株からなる群より選択されるヒト細胞株における生成によって得ることができる、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体。
- 請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体をコードする核酸。
- 請求項13に記載の核酸および前記核酸に作動可能に繋がれたプロモーターを含む発現カセットまたはベクター。
- 請求項13に記載の核酸または請求項14に記載の発現カセットもしくはベクターを含む宿主細胞。
- さらなる作用物質にコンジュゲートされている、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体を含むコンジュゲート。
- 前記さらなる作用物質が細胞傷害剤、腫瘍特異的抗体または免疫チェックポイント遮断抗体もしくは免疫チェックポイント活性化抗体である、請求項16に記載のコンジュゲート。
- 請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載の発現カセットもしくはベクター、請求項15に記載の宿主細胞または請求項16もしくは17に記載のコンジュゲートを含む組成物。
- 溶媒、希釈剤および賦形剤からなる群より選択される1つまたは複数の成分を好ましくはさらに含む医薬組成物である、請求項18に記載の組成物。
- 医療における使用のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体、請求項16もしくは17に記載のコンジュゲートまたは請求項19に記載の組成物。
- がん、感染または免疫不全障害の処置における使用のための、請求項20に記載の抗体、コンジュゲートまたは組成物。
- 前記がんが、卵巣がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、白血病およびリンパ腫、特に慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫およびB細胞悪性疾患からなる群より選択される、請求項21に記載の抗体、コンジュゲートまたは組成物。
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