本明細書では、用語「アルデヒドデヒドロゲナーゼ」すなわち「ALDH」とは、NAD+依存性又はNADP+依存性の反応において、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、又は摂取、吸入、もしくは吸収された化合物から産生されるアルデヒド)をその対応する酸へと酸化する酵素をいう。上記ALDHとしては、様々な内因性及び外因性前駆体から生成した広範囲の脂肪族及び芳香族アルデヒド基質の酸化を触媒するNAD(P)+依存性酵素を挙げることができる。内因性アルデヒドは、アルコール、アミノ酸、生体アミン、ビタミン、ステロイド、レチノール、コレステロール、及び脂質の代謝の間に生成する。外因性アルデヒドは、多くの場合、数多くの薬物及び環境因子の代謝から生成する。例えば、ALDHは、化合物、例えば摂取される、吸収される、吸入される、酸化ストレスの結果として生成する、又は通常の代謝の間に生成する毒性化合物の分解に由来するアルデヒドを酸化する(例えば、レチンアルデヒド又はレチノールをレチノイン酸へと変換する)。生体アルデヒドの例としては、摂取したエタノールに対するアルコールデヒドロゲナーゼ活性の生成物として産生されるアセトアルデヒドがある。アルデヒドデヒドロゲナーゼはまた、エステラーゼ活性及び/又はレダクターゼ活性も示す場合がある。用語「ALDH」は、細胞質中、ミトコンドリア中、ミクロソーム、又は他の細胞内コンパートメント中に存在するALDHを包含する。ALDHはまた、レチノールデヒドロゲナーゼ及びミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼも包含する。用語「ALDH」は、主として1又は少数の組織、例えば網膜、角膜、唾液、肝臓などに、又は幹細胞及び胚に存在するALDHを包含する。用語「ALDH」は、ALDH1、ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH1A3、ALDH1B1、ALDH1L1、ALDH1L2、ALDH2、ALDH3、ALDH3B1、ALDH3B2、ALDH4、ALDH4A1、ALDH5、ALDH5A1、ALDH6A1、ALDH7A1、ALDH8A1、ALDH9A1、ALDH16A1、ALDH18A1、AKR1b1などを含む、既知のいずれのALDHアイソザイムも包含する。
本明細書では、用語「ALDH1」とは、NAD+依存性の反応において、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、又は摂取、吸入、もしくは吸収される化合物から生成するアルデヒド)をその対応する酸へと酸化する細胞質アルデヒドデヒドロゲナーゼをいう。
用語「ALDH1」は、様々な種由来のALDH1を包含する。様々な種由来のALDH1のアミノ酸配列が公的に利用可能である。例えば、GenBank受入番号第AAC51652号(Homo sapiens ALDH1)、第NP_000680号(Homo sapiens ALDH1)、第AAH61526号(Rattus norvegicus ALDH1)、第AAI05194号(Bos taurus ALDH1)、第NP_036051号(Mus musculus ALDH1)を参照されたい。本明細書では、用語「ALDH1」はまた、ALDH1酵素活性を保持するフラグメント、融合タンパク質、ならびに変異体(例えば、1もしくは複数のアミノ酸置換、付加、欠失、及び/又は挿入を有する変異体)も包含する。用語「ALDH1」は、一連のナフトアルデヒド、フェナントレンアルデヒド、及びクマリルアルデヒド、ならびに複雑なポリ芳香族アルデヒドのアルデヒドデヒドロゲナーゼを含む、芳香族アルデヒドを酸化するアルデヒドデヒドロゲナーゼを包含する。用語「ALDH1」は、ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH1A3、ALDH1B1、ALDH1B1、ALDH1L1を含む、但しこれらに限定されない細胞質アルデヒドデヒドロゲナーゼを包含する。
用語「ALDH1」は、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%の、配列番号3又は配列番号4(それぞれ図2のA及びBに示す)に示すアミノ酸配列に対するアミノ酸配列同一性を有する、酵素的に活性なポリペプチドを包含する。
本明細書では、用語「アルデヒドデヒドロゲナーゼ−2」すなわち「ALDH2」とは、NAD+依存性の反応において、アルデヒド(例えば、異種アルデヒド、生体アルデヒド、又は摂取、吸入、もしくは吸収される化合物から生成するアルデヒド)をその対応する酸へと酸化する酵素をいう。例えば、ALDH2は、化合物、例えば摂取される、吸収される、吸入される、又は通常の代謝の間に生成する毒性化合物の分解に由来するアルデヒドを酸化する。ミトコンドリアALDH2はミトコンドリアに天然に存在する。
用語「ALDH2」は、種々の種由来のALDH2を包含する。様々な種由来のALDH2のアミノ酸配列が公的に利用可能である。例えば、ヒトALDH2のアミノ酸配列はGenBank受入番号第AAH02967号及び第NP_000681号で見られ、マウスALDH2のアミノ酸配列はGenBank受入番号第NP_033786号で見られ、ラットALDH2のアミノ酸配列はGenBank受入番号第NP_115792号で見られる。用語「ALDH2」は、基質特異性を示す、例えば脂肪族アルデヒドを優先的に酸化するアルデヒドデヒドロゲナーゼを包含する。用語「ALDH2」は、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%の、配列番号1(図1のA)又は配列番号2(図1のB)に示すアミノ酸配列のアミノ酸18〜517に対するアミノ酸配列同一性を有する、酵素的に活性なポリペプチドを包含する。
本明細書では、用語「ALDH2」はまた、ALDH2酵素活性を保持するフラグメント、融合タンパク質、ならびに変異体(例えば、1もしくは複数のアミノ酸置換、付加、欠失、及び/又は挿入を有する変異体)も包含する。特定の酵素的に活性なALDH2変異体、フラグメント、融合タンパク質などは、本明細書に記載の方法を適合させることによって検証することができる。ALDH2変異体の例としては、図1のBに示すヒトALDH2のアミノ酸位置487(配列番号2のアミノ酸504)、又はヒトALDH2のアミノ酸487に対応する位置にGluからLysへの置換を含むALDH2ポリペプチドがある。この変異は「E487K変異」、「E487K変異体」、又は「Glu504Lys多型」と呼ばれる。例えば、Larson et al. (2005) J. Biol. Chem. 280:30550;and Li et al. (2006) J. Clin. Invest. 116:506を参照されたい。ALDH2変異体は、対応する野生型ALDH2酵素の酵素活性の少なくとも約1%を保持している。例えば、E487K変異体は、図1のAに示すアミノ酸配列(配列番号1)を含む酵素の活性の少なくとも約1%の活性を保持している。「ALDH2」は、例えば、摂取されたエタノールに対するアルコールデヒドロゲナーゼの作用によってアセトアルデヒドがイン・ビボで生成する場合に、アセトアルデヒドを酢酸へと変換する酵素を含む。
用語「ALDH3」は様々な種由来のALDH3を包含する。様々な種由来のALDH3のアミノ酸配列が公的に利用可能である。例えば、GenBank受入番号第AAB26658号(Homo sapiens ALDH3)、第NP_000683号(Homo sapiens ALDH3)、第P30838号(Homo sapiens ALDH3)、第NP_001106196号(Mus musculus ALDH3)、及び第AAH70924号(Rattus norvegicus ALDH3)を参照されたい。本明細書では、用語「ALDH3」はまた、ALDH3酵素活性を保持するフラグメント、融合タンパク質、ならびに変異体(例えば、1もしくは複数のアミノ酸置換、付加、欠失、及び/又は挿入を有する変異体)も包含する。用語「ALDH3」は、芳香族アルデヒドに対して特異性を示すアルデヒドデヒドロゲナーゼ、例えば、一連の2−ナフトアルデヒドの芳香族アルデヒドを酸化するが、1−ナフトアルデヒド及び高級ポリ芳香族アルデヒドに対しては不活性であるアルデヒドデヒドロゲナーゼを包含する。用語「ALDH3」は、NAD+及びNADP+の両方を共基質として用いることができるアルデヒドデヒドロゲナーゼを包含する。用語「ALDH3」は、唾液中及び角膜中に天然に存在するアルデヒドデヒドロゲナーゼを包含する。
用語「ALDH3」は、ALDH3A1遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する、酵素的に活性なポリペプチドを包含する。
用語「ALDH4」とは、プロリン分解経路の第2ステップ、すなわちプロリン又はオルニチンのいずれかから誘導される1−ピロリン−5−カルボン酸(P5C)のグルタミン酸への不可逆的変換を触媒するミトコンドリアマトリクスデヒドロゲナーゼ酵素をいう。ALDH4A1の変異は、P5C及びプロリンの蓄積を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患であるII型高プロリン血症に関連し、発作及び精神遅滞を含む神経症状を引き起こす場合がある。
用語「ALDH5」(「コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ」とも呼ばれる)とは、コハク酸セミアルデヒドをコハク酸に酸化するNAD+依存性酵素を包含する。ALDH5は4−アミノ酪酸(GABA)の異化作用に関与する。天然のALDH5は真核細胞のミトコンドリアに存在する。用語「ALDH5」は、GenBank受入番号第AAH34321号に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する、酵素的に活性なポリペプチドを包含する。
用語「ALDH6」とは、マロン酸及びメチルマロン酸セミアルデヒドのアセチル及びプロピオニルCoAへの不可逆的酸化的脱炭酸を触媒する役割を担うミトコンドリアデヒドロゲナーゼ酵素(アセチルCoA依存性メチルマロン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼとしても知られる)をいう。ALDH6A1はCoA依存性であるため、ALDHファミリーの中で独特である。他のALDHファミリーと同様に、ALDH6A1もエステラーゼ活性を保持しており、それにより同時にS−アシル酵素を生成しながら酢酸p−ニトロフェニルを加水分解することが可能であり、CoAの存在下ではアセチル−CoAを生成する。ALDH6A1活性欠乏症は、尿中のβ−アラニン、3−ヒドロキシプロピオン酸、ならびに3−アミノ及び3−ヒドロキシイソ酪酸の両方の異性体のレベルの上昇を特徴とする。
用語「ALDH7」とは、α−アミノアジピン酸セミアルデヒドの解毒を触媒する細胞質アルデヒドデヒドロゲナーゼ、核アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼをいう。哺乳動物のALDH7A1は、アルコール代謝及び脂質の過酸化によって生成するアルデヒドの解毒に主要な役割を果たすことができる。
用語「ALDH8」とは、レチンアルデヒドをレチノイン酸へと酸化することができる細胞質デヒドロゲナーゼ酵素をいう。ALDH8は、9−シス−レチナールをレチノイドX受容体リガンドである9−シス−レチノイン酸へと変換することによって、イン・ビボで9−シス−レチノイン酸の生合成経路に関与する。ALDH8A1は、全トランス−レチナールに対するよりも9−シス−レチナールに対して約40倍高い活性を有する。ALDH8A1は、全トランス−レチナールと比較して9−シス−レチナールに対する優先性を示すことが最初に知られたアルデヒドデヒドロゲナーゼである。この遺伝子について、異なるアイソフォームをコードする2種の転写変異体が同定されている。
用語「ALDH8」とは、γ−アミノブチルアルデヒド及びポリアミン由来のアミノアルデヒドの脱水素を触媒する細胞質デヒドロゲナーゼ酵素をいう。ALDH9A1はベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼとしても同定されている。ALDH9A1は肝臓、骨格筋、腎臓で高発現される。
用語「ALDH8」とは、グルタミン酸γ−セミアルデヒドの脱水素を触媒するミトコンドリアデヒドロゲナーゼ酵素をいう。ALDH18A1遺伝子は、γ−グルタミルキナーゼ及びγ−グルタミルホスファートレダクターゼ活性の両方を有する二機能性ATP依存性及びNAD(P)H依存性ミトコンドリア内膜酵素(約87.1kDaサブユニット)をコードする。Δl−ピロリン−5−カルボン酸シンセターゼとしても知られるALDH18A1は、プロリン、オルニチン、及びアルギニンの新規生合成における重要なステップであるL−グルタミン酸のΔ1−ピロリン−5−カルボン酸への還元を触媒する。ALDH18A1遺伝子に対立遺伝子変異体(251位におけるGからAへの転移)を有する個体は、高アンモニア血症、低オルニチン血症、低シトルリン血症、低アルギニン血症、及び低プロリン血症、ならびに関連する、上記酵素の長い及び短いアイソフォームの機能障害に続発する神経変性、白内障、及び結合組織疾患を示す。
用語「レチノールデヒドロゲナーゼ」すなわち「RDH」とは、全トランス−レチナールなどのレチンアルデヒド及び4−HNEなどの中鎖アルデヒドを含む、アルデヒド性基質の還元を触媒するALDHファミリーの酵素をいう。用語「RDH」は、RDH11、RDH12、ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH1A3、ALDH2、ALDH8A1、及びAKR1b1を含む、但しこれらに限定されない、あらゆる既知のアイソザイムを包含する。
本明細書では、用語「神経障害」とは、神経系の神経細胞のあらゆる疾患又は異常をいう。「神経障害」は特に、脳及び脊髄以外のあらゆる場所の神経に影響を及ぼす末梢神経系の障害を意味する。神経障害の非限定的な例としては、しびれ、自然発生的に又は外部刺激に応答して起こる知覚不全及び異痛と呼ばれる異常感覚、ならびに神経障害性疼痛又は神経痛と呼ばれる特徴的な形態の疼痛を特徴とするアルコール性多発神経障害がある。
本明細書では、用語「神経変性疾患」とは、神経細胞の死滅及び神経伝達物質の機能喪失を含む、神経細胞の劣化に起因する神経系のあらゆる疾患又は異常をいう。神経変性疾患の非限定的な例としてはアルツハイマー病及びパーキンソン病がある。本明細書では、用語「食品組成物」とは、当該のそれぞれの組成物を飲食する対象に中毒症状を生じさせることなく飲食可能なあらゆる種類の組成物をいう。
本明細書では、用語「遅発型アルツハイマー病」とは、高齢者、特に65歳以上の人におけるアルツハイマー病の発症をいう。
本明細書では、用語「若年性アルツハイマー病」とは、65歳未満の人におけるアルツハイマー病の発症をいう。
本明細書では、用語「ビスアリル位」とは、多価不飽和脂肪酸又はそのエステルなどの化合物における位置であって、1,4−ジエン系のメチレン基に相当する上記位置をいう。1以上のビスアリル位に重水素を有する化合物の例としては、11,11−ジデューテロ(dideutero)−シス,シス−9,12−オクタデカジエン酸(11,11−ジデューテロ−(9Z,12Z)−9,12−オクタデカジエン酸;D2−LA)、及び11,11,14,14−テトラデューテロ(tetradeutero)−シス,シス,シス−9,12,15−オクタデカトリエン酸(11,11,14,14−テトラデューテロ−(9Z,12Z,15Z)−9,12,15−オクタデカトリエン酸;D4−ALA)が挙げられるが、これらに限定はされない。
本明細書では、用語「プロ−ビスアリル位」とは、不飽和化に際してビスアリル位になるメチレン基をいう。当該の前駆体PUFA中のビスアリルではないいくつかの部位が、生化学的変換に際してビスアリルになることとなる。上記プロ−ビスアリル位は、重水素化に加えて、それぞれが天然に存在する量のレベルを超える同位体存在量レベルで、炭素13によって更に強化されていてもよい。例えば、以下に式(2)(式中、R1はアルキル、カチオン、又はHであり、m=1〜10、n=1〜5、p=1〜10である)で示すように、上記プロ−ビスアリル位は、既に存在するビスアリル位に加えて、同位体置換によって補強されていてもよい。式(2)において、X原子の位置が上記プロ−ビスアリル位を表す一方、Y原子の位置が上記ビスアリル位を表し、(各mについて)X1及びX2のそれぞれは独立に水素又は重水素であってよく、(各nについて)Y1及びY2のそれぞれは独立に水素又は重水素であってよく、X1、X2、Y1、もしくはY2原子のうちの1以上の重水素原子であってよい。いくつかの実施形態において、X1、X2、Y1、もしくはY2原子のうちの少なくとも1つ以上が重水素原子であってよい。
ビスアリル位及びプロ−ビスアリル位を有する化合物の別の例を式(3)に示し、式中、Y1〜Yn及び/又はX1〜Xmの任意の対が、PUFAのそれぞれビスアリル位及びプロ−ビスアリル位を表し、これらの位置は重水素原子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、それぞれのY1〜Yn及び/又はX1〜Xmは、独立に水素又は重水素であってよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1のY1〜Yn及び/又はX1〜Xmが重水素である。
本明細書では、用語「多価不飽和脂肪酸模倣体」すなわち「PUFA模倣体」とは、1以上のビスアリル位であって、当該ビスアリル位の1以上の水素を除去するように化学的に修飾されたPUFA中の上記ビスアリル位を有する化合物をいう。上記PUFA模倣体は、未修飾のPUFAと比較して酸化を受け難い。
本明細書では、用語「チオエステル」とは、カルボン酸とチオール基とがエステル結合によって結合している、すなわち、カルボニル炭素が硫黄原子と共有結合を形成している構造−COSRをいい、式中、Rは、水素、C1〜30アルキル(分枝鎖又は直鎖)、及び任意選択で置換されたC6〜10アリール、ヘテロアリール、環式、又はヘテロ環式構造を含んでいてもよい。「多価不飽和脂肪酸チオエステル」とは構造P−COSRをいい、式中、Pは本明細書に記載の多価不飽和脂肪酸である。例としては、メルカプトエタノール、システイン、ホモシステイン、プロパンチオール、ジチオエリトリトール、チオフェニル、2−ブテンチオール、フルフリルチオール、6−メルカプトプリン、2−メルカプトベンゾチアゾールのチオエステルが挙げられるが、これらに限定はされない。
本明細書では、用語「アミド」とは、−C(O)NR1R2もしくは−S(O)N NR1R2を含有する化合物などの、カルボニル又はチオカルボニルの炭素に結合した窒素原子を含有する化合物あるいは部分をいい、R1及びR2は独立に、C1〜30アルキル(分枝鎖又は直鎖)、任意選択で置換されたC6〜10アリール、ヘテロアリール、環式、ヘテロ環式、又はC1−20ヒドロアルキルである。「多価不飽和脂肪酸アミド」とは、当該アミド基が当該カルボニル部分の炭素を介して本明細書に記載の多価不飽和脂肪酸に結合している構造をいう。多価不飽和脂肪酸アミドの例としては、エタノールアミン、リシン、アルギニン、ジエタノールアミン、モルホリン、グルカミン、N,N−ジメチルグルカミン、N−メチルグルカミン、及びオルニチンのアミドが挙げられるが、これらに限定はされない。
本明細書では、「対象」とは、ヒト又は非ヒト哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長動物、又は鳥、例えば、ニワトリ、ならびに他の任意の脊椎動物又は無脊椎動物を意味する。
用語「哺乳動物」は、その通常の生物学的意味で用いられる。したがって、哺乳動物としては、特にサル(チンパンジー、類人猿、サル)及びヒトを含む霊長動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、げっ歯動物、ラット、マウス、モルモットなどが挙げられるが、これらに限定はされない。
本明細書では、「有効量」又は「治療有効量」とは、疾患もしくは疾病の1以上の症状の発症をある程度軽減する、又は上記症状の発症の可能性を低減するのに有効な治療薬の量をいい、疾患又は疾病の治癒を含む。「治癒」とは、疾患又は疾病の症状が取り除かれることを意味する。但し、治癒が得られた後であっても、特定の長期的又は恒久的な影響が存在する場合もある(広範な組織損傷など)。
本明細書では、「治療する」、「治療」、又は「治療すること」とは、予防及び/又は治療目的で対象に化合物又は医薬組成物を投与することをいう。用語「予防的処置」とは、疾患もしくは疾病の症状を未だ示していないが、特定の疾患もしくは疾病に罹患しやすい、又は他の形態で特定の疾患もしくは疾病の危険性がある対象を治療し、それによって上記患者が上記疾患又は疾病を発症することとなる可能性を低減することをいう。用語「治療的処置」とは、既に疾患又は疾病に罹患している対象に治療を施すことをいう。
同位体修飾化合物又は化学的修飾化合物
本明細書に記載の別の化合物は、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸チオエステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、又は同位体修飾多価不飽和脂肪酸プロドラッグを有する。いくつかの実施形態において、上記化合物は同位体修飾多価不飽和脂肪酸である。いくつかの実施形態において、上記化合物は同位体修飾多価不飽和脂肪酸チオエステルである。いくつかの実施形態において、上記化合物は同位体修飾多価不飽和脂肪酸アミドである。いくつかの実施形態において、上記化合物は多価不飽和脂肪酸模倣体である。いくつかの実施形態において、上記化合物は同位体修飾多価不飽和脂肪酸プロドラッグである。
いくつかの実施形態において、上記多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、又は多価不飽和脂肪酸プロドラッグは、天然に存在するPUFAであってよい。いくつかの実施形態において、上記多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、又は多価不飽和脂肪酸プロドラッグは、共役二重結合を有していてもよい。
いくつかの実施形態において、上記化合物は1以上の位置で重水素化されている。いくつかの実施形態において、上記化合物は1以上のビスアリル位で重水素化されている。いくつかの実施形態において、上記多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、又は多価不飽和脂肪酸プロドラッグは、1以上の位置で重水素化されている。いくつかの実施形態において、上記多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、又は多価不飽和脂肪酸プロドラッグは、1以上のビスアリル位で重水素化されている。
いくつかの実施形態において、上記多価不飽和脂肪酸エステルは、トリグリセリド、ジグリセリド、又はモノグリセリドである。
いくつかの実施形態において、上記多価不飽和脂肪酸エステルはエチルエステルである。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、ω−3もしくはω−6脂肪酸、ω−3もしくはω−6脂肪酸エステル、ω−3もしくはω−6脂肪酸アミド、ω−3もしくはω−6脂肪酸チオエステル、又はそのプロドラッグである。いくつかの実施形態において、上記化合物は、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、又はそれらのエステル、アミド、チオエステル、及びそれらのプロドラッグである。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、未修飾の多価不飽和脂肪酸又は多価不飽和脂肪酸エステルと共に患者に投与される。いくつかの実施形態において、上記化合物は、未修飾の多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、又は多価不飽和脂肪酸プロドラッグと共に患者に投与される。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、当該の患者に投与される多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、及び多価不飽和脂肪酸プロドラッグの総量の約0.01%〜100%、0.01%〜95%、0.05%〜90%、0.05%〜80%、0.05%〜75%、0.05%〜70%、0.05%〜60%、0.05%〜50%、0.05%〜40%、0.05%〜30%、0.05%〜20%、0.05%〜10%、0.5%〜90%、0.5%〜80%、0.5%〜75%、0.5%〜70%、0.5%〜60%、0.5%〜50%、0.5%〜40%、0.5%〜30%、0.5%〜20%、0.5%〜10%、1%〜90%、1%〜80%、1%〜75%、1%〜70%、1%〜60%、1%〜50%、1%〜40%、1%〜30%、1%〜20%、1%〜10%、2.5%〜90%、2.5%〜80%、2.5%〜75%、2.5%〜70%、2.5%〜60%、2.5%〜50%、2.5%〜40%、2.5%〜30%、2.5%〜20%、2.5%〜10%、4%〜90%、4%〜80%、4%〜75%、4%〜70%、4%〜60%、4%〜50%、4%〜40%、4%〜30%、4%〜20%、4%〜10%、5%〜90%、5%〜80%、5%〜75%、5%〜70%、5%〜60%、5%〜50%、5%〜40%、5%〜30%、5%〜20%、5%〜10%、7.5%〜90%、7.5%〜80%、7.5%〜75%、7.5%〜70%、7.5%〜60%、7.5%〜50%、7.5%〜40%、7.5%〜30%、7.5%〜20%、7.5%〜10%、9%〜90%、9%〜80%、9%〜75%、9%〜70%、9%〜60%、9%〜50%、9%〜40%、9%〜30%、9%〜20%、9%〜10%、10%〜90%、10%〜80%、10%〜75%、10%〜70%、10%〜60%、10%〜50%、10%〜40%、10%〜30%、10%〜20%、約0.1%〜100%、又は約1%〜100%の範囲の治療上活性な用量を構成する。いくつかの実施形態において、上記化合物は、当該の患者に投与される多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、及び多価不飽和脂肪酸プロドラッグの総量の少なくとも約0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12.5%、1517.5%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を構成する。いくつかの実施形態において、上記化合物が構成するのは、当該の患者に投与される多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、及び多価不飽和脂肪酸プロドラッグの総量の約10%、12.5%、1517.5%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%未満である。いくつかの実施形態において、上記化合物は、当該の患者に投与される多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、及び多価不飽和脂肪酸プロドラッグの総量の0.01%〜90%、約0.1%〜90%、又は約5%〜90%を構成する。いくつかの実施形態において、上記化合物は、当該の患者に投与される多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、及び多価不飽和脂肪酸プロドラッグの総量の約20%〜80%を構成する。いくつかの実施形態において、上記化合物は、当該の患者に投与される多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、及び多価不飽和脂肪酸プロドラッグの総量の約10%〜40%を構成する。いくつかの実施形態において、上記化合物は、当該の患者に投与される多価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸エステル、多価不飽和脂肪酸チオエステル、多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、及び多価不飽和脂肪酸プロドラッグの総量の約20%以上を構成する。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、負荷用量及びそれに続くより低い維持用量であって、それぞれが治療を必要とする対象において治療上有益な効果を引き出すのに十分な上記負荷用量及び維持用量として与えられる、治療上活性な用量を表す。いくつかの実施形態において、上記負荷用量は、約0.1mg〜約20mg、約0.5mg〜約15mg、又は約1mg〜約12mgの範囲内であってよい。いくつかの実施形態において、上記維持量は、約0.1mg〜約20mg、約0.5mg〜約15mg、又は約1mg〜約12mgの範囲内であってよい。いくつかの実施形態において、上記負荷用量は維持用量より多い。いくつかの実施形態において、上記負荷用量は維持用量より少ない。
いくつかの実施形態において、上記対象の細胞又は組織は、天然に存在する未修飾の多価不飽和脂肪酸もしくは多価不飽和脂肪酸エステルの自動酸化を防止又は低減するのに十分な濃度の上記化合物を維持する。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、重水素の天然存在量レベルを有意に上回る量の重水素を含む。いくつかの実施形態において、上記化合物は、分子中の13Cの天然存在量レベルを有意に上回る量の13Cを含む。
いくつかの実施形態において、上記化合物は、11,11−D2−リノレン酸、14,14−D2−リノレン酸、11,11,14,14−D4−リノレン酸、11,11−D2−リノール酸、14,14−D2−リノール酸、及び11,11,14,14−D4−リノール酸からなる群より選択される。
いくつかの実施形態において、上記化合物はω−3脂肪酸である。いくつかの実施形態において、上記ω−3脂肪酸はα−リノレン酸である。
いくつかの実施形態において、上記化合物はω−6脂肪酸である。いくつかの実施形態において、上記ω−6脂肪酸はリノール酸である。いくつかの実施形態において、上記ω−6脂肪酸はγ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、又はドコサテトラエン酸である。
いくつかの実施形態において、上記化合物は抗酸化剤と共に投与される。
いくつかの実施形態において、上記化合物は未修飾の脂肪酸又は脂肪酸エステルと共に患者に投与される。
いくつかの実施形態において、上記患者の細胞又は組織は、上記天然に存在する非重水素化脂肪酸もしくは脂肪酸エステルの自動酸化を防止又は低減するのに十分な濃度の上記重水素化脂肪酸又は脂肪酸エステルを維持する。
上記の構造によって説明した酸化感受性位置において同位体により強化された化合物は、上記位置において、適宜の同位体の天然存在量と比較して、重同位体が富化されている。いくつかの実施形態において、上記化合物は、重水素原子であって、その天然存在量レベルよりも高いレベルで存在する上記重水素原子を有する。いくつかの実施形態において、重水素の天然存在量は、地球上の海洋中の全ての天然に存在する水素の約0.0156%である。したがって、天然存在量よりも多くの重水素を有する化合物は、各化合物分子中の1以上の水素原子に関して、このレベルより大きい、すなわち約0.0156%の天然存在量レベルよりも大きい、重水素で強化された上記化合物の水素原子、例えば0.02%、但し好ましくは、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の重水素を有していてもよい。他の実施形態において、重水素で強化された全水素原子の割合は、少なくとも0.02%、0.05%、0.1%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である。他の実施形態において、重水素で強化された全水素原子の割合は、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%未満である。
いくつかの態様において、組成物は同位体修飾化合物及び同位体未修飾化合物の両方を含む。同位体純度とは、a)同位体修飾化合物の相対的分子数と、b)同位体修飾化合物及び重原子を含まない化合物の両方の全分子の間の比である。いくつかの実施形態において、上記同位体純度とは、重原子に関する以外の他の点では同一である化合物をいう。
いくつかの実施形態において、同位体純度は、当該組成物における、同位体修飾化合物と重原子を含まない化合物との合計の分子数に対する、上記同位体修飾化合物の分子の割合をいう。例えば、上記同位体純度は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の、同位体修飾化合物と重原子を含まない化合物の両方の合計の分子数に対する上記同位体修飾化合物の分子であってよい。他の実施形態において、上記同位体純度は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である。いくつかの実施形態において、上記化合物の同位体純度は、約10%〜100%、10%〜95%、10%〜90%、10%〜85%、10%〜80%、10%〜75%、10%〜70%、10%〜65%、10%〜60%、10%〜55%、10%〜50%、10%〜45%、10%〜40%、10%〜35%、10%〜30%、10%〜25%、又は10%〜20%の、当該組成物中の上記化合物の全分子数であってよい。他の実施形態において、上記化合物の同位体純度は、約15%〜100%、15%〜95%、15%〜90%、15%〜85%、15%〜80%、15%〜75%、15%〜70%、15%〜65%、15%〜60%、15%〜55%、15%〜50%、15%〜45%、15%〜40%、15%〜35%、15%〜30%、15%〜25%、又は15%〜20%の、当該組成物中の上記化合物の全分子数であってよい。いくつかの実施形態において、上記化合物の同位体純度は、約20%〜100%、20%〜95%、20%〜90%、20%〜85%、20%〜80%、20%〜75%、20%〜70%、20%〜65%、20%〜60%、20%〜55%、20%〜50%、20%〜45%、20%〜40%、20%〜35%、20%〜30%、又は20%〜25%の、当該組成物中の上記化合物の全分子数であってよい。同位体修飾化合物に重原子を含まない化合物を加えた合計100分子のうちの同位体修飾化合物の2分子が、当該の同位体修飾された2分子が含有する重原子の数にかかわらず、2%の同位体純度を有することとなる。
いくつかの態様において、同位体修飾PUFA分子は、メチレン基中の2個の水素のうちの一方が重水素で置換されている場合のように、1個の重水素原子を含有することがあり、したがって「D1」−PUFAと呼ばれる場合がある。同様に、同位体修飾PUFA分子は、メチレン基中の2個の水素が両方共重水素で置換されている場合のように、2個の重水素原子を含有することがあり、したがって「D2」−PUFAと呼ばれる場合がある。同様に、同位体修飾PUFA分子は3個の重水素原子を含有することがあり、「D3」−PUFAと呼ばれる場合がある。同様に、同位体修飾PUFA分子は4個の重水素原子を含有することがあり、「D4」−PUFAと呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態において、同位体修飾PUFA分子は、5個の重水素原子又は6個の重水素原子を含有することがあり、それぞれ「D5」−又は「D6」−PUFAと呼ばれる場合がある。
分子中の重原子の数、すなわち同位体量(isotopic load)は変化し得る。例えば、同位体量が比較的低い分子は、約1、2、3、4、5、又は6個の重水素原子を含有する場合がある。同位体量が中程度である分子は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の重水素原子を含有する場合がある。同位体量が非常に高い分子においては、全ての水素が重水素に置換されている場合がある。このように、上記同位体量とは各化合物分子中の重原子の割合をいう。例えば、上記同位体量は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の、同一の種類の重原子を含まない化合物との比較における、同一の種類の原子の数であってよい(例えば、水素は重水素と「同一の種類」となる)。いくつかの実施形態において、上記同位体量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である。化合物の組成物中の同位体純度が高いが所与の分子中の同位体量が低い場合に、意図しない副作用が低下すると予想される。例えば、代謝経路は、同位体純度は高いが同位体量が低い組成物を使用することによって、影響がより少ない可能性があろう。
メチレン基の2個の水素のうちの1個が重水素原子で置換されている場合、得られる化合物は立体中心を有する場合があることが容易に理解されよう。いくつかの実施形態において、ラセミ化合物を用いることが望ましい場合がある。他の実施形態において、鏡像異性的に純粋な化合物を用いることが望ましい場合がある。更なる実施形態において、ジアステレオマー的に純粋な化合物を用いることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態において、鏡像異性体過剰率及び/又はジアステレオマー過剰率が約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である化合物の混合物を用いることが望ましい場合がある。他の実施形態において、上記鏡像異性体過剰率及び/又はジアステレオマー過剰率は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である。いくつかの実施形態において、酸化的損傷を軽減するためにキラル分子と接触させることを目的としている場合など、立体化学的に純粋な鏡像異性体及び/又はジアステレオマーを利用することが好ましい場合がある。しかしながら、多くの状況において、酸化的損傷を軽減するために、非キラル分子を標的としている。かかる状況においては、実施形態を、該実施形態の立体化学的純度を配慮することなく利用してもよい。更に、いくつかの実施形態において、上記化合物が酸化的損傷を軽減するためにキラル分子を標的としている場合であっても、鏡像異性体の混合物及びジアステレオマーの混合物を用いてもよい。
いくつかの態様において、同位体修飾化合物は特定の組織にある量の重原子を付与する。したがって、いくつかの態様において、上記重分子の量を、組織中の同一の種類の分子の特定の割合とすることになる。例えば、重分子の数は、同一の種類の分子の総量の約1%〜100%であってよい。いくつかの態様において、当該分子の10〜50%が同一の種類の重分子によって置換される。
いくつかの実施形態において、上記化合物は1以上のビスアリル位で重水素化されている。ビスアリル位において同位体修飾された必須PUFAなどの化合物の一例を以下の式(1)(式中、R1=アルキル、H、又はカチオンであり、m=1〜10、n=1〜5である)に示す。上記ビスアリル位は、重水素化に加えて、それぞれが天然に存在する量のレベルを超える同位体存在量レベルで、炭素13によって更に強化されていてもよい。式(1)中の各ビスアリル位において、Y1、Y2原子の一方又は両方が重水素原子である。各−[CY1Y2−CH2=CH2]−単位中のY1及びY2のそれぞれは独立にH又はDであってよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1個のY1及びY2(全ての−[CY1Y2−CH2=CH2]n−単位のうちの)は重水素である。例えば、nが2である場合、2個の−[CY1Y2−CH2=CH2]−単位のそれぞれにおける各Y1及びY2は、独立にH又はDであってよく、nが3である場合、3個の−[CY1Y2−CH2=CH2]−単位のそれぞれにおける各Y1及びY2は、独立にH又はDであってよく、nが4である場合、4個の−[CY1Y2−CH2=CH2]−単位のそれぞれにおける各Y1及びY2は、独立にH又はDであってよく、nが5である場合、5個の−[CY1Y2−CH2=CH2]−単位のそれぞれにおける各Y1及びY2は、独立にH又はDであってよい。
上記に例示した化合物の正確な構造を以下に示すが、これらの構造は、同位体強化n−3(ω−3)及びn−6(ω−6)必須多価不飽和脂肪酸、ならびに上記脂肪酸から生化学的に、不飽和化/延長によって製造されるPUFAの両方を示す。これらの化合物のいずれの1種も酸化を遅延させるために用いることができる。以下の化合物において、上記PUFAは、酸化感受性部位及び/又は生化学的不飽和化/伸長に際して酸化感受性になる場合がある部位において同位体により強化されている。R1は、H、アルキル、又はカチオンであってよく、R2はH又はDであってよく、*は12C又は13Cを表す。
D−リノール酸としては、
が挙げられる。
以下の全重水素化リノール酸は、微生物学的方法によって、例えば重水素及び/又は炭素13を含有する培地中で増殖させることによって産生させてもよい。
D−アラキドン酸としては、
が挙げられる。
以下の全重水素化アラキドン酸は、微生物学的方法によって、例えば重水素及び/又は炭素13を含有する培地中で増殖させることによって産生させてもよい。
D−リノレン酸としては、
が挙げられる。
いくつかの同位体修飾多価不飽和脂肪酸及びそのエステルのいくつかの例としては、以下の化合物を挙げることができる。
以下の全重水素化リノレン酸は、重水素及び/又は炭素13を含有する培地中で増殖させるなどの微生物学的方法によって産生させてもよい。
更なる実施形態において、以下に示すように、ビスアリル水素を活性化する二重結合を移動させて更に離し、そのようにしてビスアリル位を除去することによって、一定のPUFAの流動性を保持しつつ、酸化を受けやすいPUFAのビスアリル位を水素引き抜きに対して保護してもよい。これらのPUFA模倣体はビスアリル位をもたない。
更なる実施形態において、以下に示すように、II価のヘテロ原子を用い、そのようにしてビスアリル水素を除去することによって、酸化を受けやすいPUFAのビスアリル位を水素引き抜きに対して保護してもよい。これらのPUFA模倣体もビスアリル位をもたない。
更なる実施形態において、PUFA模倣体、すなわち天然のPUFAと構造的に類似しているが、構造上の相違のために酸化されない化合物を、上述の目的のために用いてもよい。以下に示すように、ジメチル化又はハロゲン化によって、酸化を受けやすいPUFAのビスアリル位を水素引き抜きに対して保護してもよい。上記メチル基上の水素原子は、任意選択でフッ素などのハロゲン、又は重水素であってもよい。これらのPUFA模倣体はビスアリル位においてジメチル化されている。
更なる実施形態において、以下に示すように、アルキル化によって、酸化を受けやすいPUFAのビスアリル位を水素引き抜きに対して保護してもよい。これらのPUFA模倣体はビスアリル位においてジアルキル化されている。
更なる実施形態において、以下に示すように、二重結合に代えてシクロプロピル基を用い、そのようにして、ビスアリル位を除去しつつ、当該の酸に一定のPUFAの流動性を与えてもよい。これらのPUFA模倣体は二重結合に代えてシクロプロピル基を有する。
更なる実施形態において、以下に示すように、二重結合に代えて適宜の立体配座の1,2−置換シクロブチル基を用い、そのようにして、ビスアリル位を除去しつつ、当該の酸に一定の流動性を与えてもよい。これらのPUFA模倣体は二重結合に代えて1,2−シクロブチル基を有する。
二重結合に代えて1,2−シクロブチル基を有する模倣体の上述の実施形態の変形において、二重結合に代えて適宜の立体配座の1,3−置換シクロブチル基を用い、そのようにして、ビスアリル位を除去しつつ、当該の酸に一定の流動性を与えてもよい。以下のPUFA模倣体は二重結合に代えて1,3−シクロブチル基を有する。
特定の官能基が特定の他の官能基と等価である及び/又は生物学的に等価であることは、医薬化学における周知の原理である。生物学的等価体とは、化合物に広く類似した生物学的特性を生じさせる、類似の物理的もしくは化学的特性を有する置換基又は基である。例えば、水素の周知の等価体及び/又は生物学的等価体としてはフッ素などのハロゲンが挙げられ、アルケンの等価体及び/又は生物学的等価体としては、アルキン、フェニル環、シクロプロピル環、シクロブチル環、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、チオエーテルなどが挙げられ、カルボニルの等価体及び/又は生物学的等価体としては、スルホキシド、スルホン、チオカルボニルなどが挙げられ、エステルの等価体及び/又は生物学的等価体としては、アミド、スルホン酸エステル、スルホンアミド、sulfinyl acid esters、sulfinylamindesなどが挙げられる。その結果、PUFA模倣体は、等価である及び/又は生物学的に等価である官能基を有する化合物も包含する。
PUFA及び/又はPUFA模倣体を、特定の実施形態において使用するためのプロドラッグとして製剤することが有用な場合があることが考えられる。プロドラッグは、それ自体が生物学的活性を有していてもよい薬理学的物質であるが、上記プロドラッグは、投与に際してそれも生物学的活性を発揮する形態に代謝される。多くの異なる種類のプロドラッグが公知であり、これらのプロドラッグはそれらが代謝される細胞の部位に基づいて2つの主要な種類に分類することができる。I型プロドラッグは細胞内で代謝されるプロドラッグであり、一方II型は細胞外で代謝されるプロドラッグである。カルボン酸をエステル及び他の種々の官能基に変換して、吸収、分布、代謝、及び***などの薬物動態を向上させることができることは周知である。エステルは、アルコール(又はその化学的等価物)のカルボン酸(又はその化学的等価物)との縮合によって形成されるカルボン酸の周知のプロドラッグの形態である。いくつかの実施形態において、PUFAのプロドラッグに導入するためのアルコール(又はそれらの化学的等価物)としては、薬学的に許容されるアルコール、又は代謝に際して薬学的に許容されるアルコールを生成する化学物質が挙げられる。かかるアルコールとしては、プロピレングリコール、エタノール、イソプロパノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(Transcutol(登録商標)、Gattefosse, Westwood, N.J. 07675)、ベンジルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、又はポリエチレングリコール400;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、ポリオキシエチレングリセリントリリシノレアートもしくはポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor(登録商標)EL、BASF Corp.)、ポリオキシエチレングリセリンオキシステアラート(Cremophor(登録商標)RH40(ポリエチレングリコール40水素化ヒマシ油)もしくはCremophor(登録商標)RH60(ポリエチレングリコール60水素化ヒマシ油)、BASF Corp.));飽和ポリグリコール化グリセリド(例えば、Gattefosse, Westwood、N.J. 07675から入手可能なGelucire(登録商標)35/10、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)46/07、Gelucire(登録商標)50/13、もしくは、Gelucire(登録商標)53/10);ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000);ポリオキシエチレンステアラート(例えば、PEG−6ステアラート、PEG−8ステアラート、ポリオキシル40ステアラートNF、ポリオキシエチル50ステアラートNF、PEG−12ステアラート、PEG−20ステアラート、PEG−100ステアラート、PEG−12ジステアラート、PEG−32ジステアラート、もしくはPEG−150ジステアラート);オレイン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル;ジメチルイソソルビド;N−メチルピロリジノン;パラフィン;コレステロール;レシチン;坐薬基材;薬学的に許容されるワックス(例えば、カルナバワックス、イエローワックス、ホワイトワックス、マイクロクリスタリンワックス、乳化ワックス);薬学的に許容される液状ケイ素;ソルビタン脂肪酸エステル(ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、もしくはステアリン酸ソルビタンを含む);薬学的に許容される飽和脂肪又は薬学的に許容される飽和油(例えば、水素化ヒマシ油(グリセリル−トリス−12−ヒドロキシステアラート)、セチルエステルワックス(融点範囲が約43〜47℃の、主としてC14〜C18飽和脂肪酸のC14〜C18飽和エステルの混合物)、もしくはモノステアリン酸グリセリル)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、上記脂肪酸プロドラッグはエステルP−Bによって表され、但し、上記残基PはPUFAであり、上記残基Bは生物学的に許容される分子である。したがって、エステルP−Bの切断により、PUFA及び生物学的に許容される分子が生成する。かかる開裂は、酸、塩基、酸化剤、及び/又は還元剤によって誘導することができる。生物学的に許容される分子の例としては、栄養学的物質、ペプチド、アミノ酸、タンパク質、炭水化物(単糖、二糖、多糖、グリコサミノグリカン、及びオリゴ糖を含む)、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂質(1置換、2置換、及び3置換グリセリン、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、及びステロイドを含む)が挙げられるが、これらに限定はされない。
いくつかの実施形態において、PUFAのプロドラッグに導入するためのアルコール(又はそれらの化学的等価物)としては、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオールなどの多価アルコールが挙げられる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルプロパンジオール、エトキシジグリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコールグリセリン、及び炭水化物が挙げられる。多価アルコール及びPUFAから形成されるエステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどであってよい。いくつかの実施形態において、多重エステル化多価アルコールは、同一のPUFAでエステル化されている。他の実施形態において、多重エステル化多価アルコールは異なるPUFAでエステル化されている。いくつかの実施形態において、上記異なるPUFAは同一の形態で安定化されている。他の実施形態において、上記異なるPUFAは、(1種のPUFA中では重水素置換、且つ別種のPUFA中では13C置換といった)異なる形態で安定化されている。いくつかの実施形態において、1種以上のPUFAがω−3脂肪酸であり、1種以上のPUFAがω−6脂肪酸である。
PUFA及び/又はPUFA模倣体及び/又はPUFAプロドラッグを、特定の実施形態において使用するための塩として製剤することが有用な場合があることも考えられる。例えば、医薬化合物の特性を目的に適合させる手段としての塩形成を用いることは周知である。Stahl et al., Handbook of pharmaceutical salts: Properties, selection and use (2002) Weinheim/Zurich: Wiley-VCH/VHCA;Gould, Salt selection for basic drugs, Int. J. Pharm. (1986), 33:201-217を参照されたい。塩形成を用いて、溶解度を増加又は減少させる、安定性又は毒性を改善する、及び製剤の吸湿性を低減することができる。
塩としてのPUFA及び/又はPUFAエステル及び/又はPUFA模倣体及び/又はPUFAプロドラッグの製剤は、本明細書に記載の任意のPUFA塩を含むことができる。
未重水素化PUFAなどの全ての同位体未修飾PUFAを重水素化PUFAなどの同位体修飾PUFAで置換する必要がない場合がある。いくつかの実施形態において、H−PUFAなどの未修飾PUFAが自己酸化の連鎖反応を持続することを防ぐのに十分な、D−PUFAなどの同位体修飾PUFAを膜中に有することが好ましい。自己酸化中に、1つのPUFAが酸化し、その近傍に未酸化のPUFAが存在する場合、この未酸化のPUFAは上記酸化されたPUFAによって酸化される場合がある。これは自動酸化とも呼ばれる場合がある。いくつかの例において、低濃度の、例えば「希釈した」H−PUFAがD−PUFAと共に膜中に存在する場合、この酸化サイクルは、H−PUFA間を隔てる距離のために遮断される場合がある。いくつかの実施形態において、同位体修飾PUFAの濃度は、自動酸化連鎖反応を維持するのに十分な量で存在する。自動酸化連鎖反応を遮断するためには、例えば、同一の種類の全分子の1〜60%、5〜50%、又は15〜35%が膜中に存在する。
抗酸化剤
上記化合物は抗酸化剤と共に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、上記抗酸化剤は、コエンザイムQ、イデベノン、ミトキノン、ミトキノール、ビタミンE、ビタミンC、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
上記抗酸化剤のいくつかの例としては、ビタミンE及びその誘導体、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態において、上記抗酸化剤はビタミンEである。
抗酸化剤は、当該過程の確率論的性格及び抗酸化剤処理に対するPUFA過酸化生成物(反応性カルボニル)の安定性のために、PUFA過酸化の悪影響を相殺することはできないが、抗酸化剤の、本明細書に記載の組成物などの酸化に対して抵抗性の組成物との同時投与は、酸化ストレス関連の障害の治療にとって有益であることが判る場合がある。
同時投与に有用であると考えられる特定の抗酸化剤としては、ビタミンC及びビタミンEなどのビタミン;グルタチオン、リポ酸、尿酸、カロテン、リコペン、ルテイン、アントシアニン、シュウ酸、フィチン酸、タンニン、コエンザイムQ、メラトニン、トコフェロール、トコトリエノール、レスベラトロールを含むポリフェノール、フラボノイド、セレン、オイゲノール、イデベノン、ミトキノン、ミトキノール、ユビキノン、Szeto−Schillerペプチド、及びミトコンドリア標的抗酸化剤が挙げられる。明示的に述べられていない場合、上述の抗酸化剤のキノン誘導体も同時投与に有用であると考えられる。
いくつかの実施形態において、安定化された化合物は、抗酸化遺伝子を上方制御する化合物と共に投与される。他の実施形態において、安定化された化合物は、Keap1/Nrf2/AREシグナル伝達経路などのシグナル伝達経路に作用する化合物と共に投与され、それによってヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)などの抗炎症性及び/又は抗酸化性タンパク質が産生される。いくつかの実施形態において、安定化された化合物は、抗酸化炎症モジュレーターと共に投与される。抗酸化炎症モジュレーターは酸化促進因子及び/又は炎症促進性転写因子を抑制する。いくつかの実施形態において、抗酸化炎症モジュレーターは転写因子Nrf2の活性化剤である。Nrf2の活性化は、抗酸化、解毒、及び抗炎症遺伝子の上方制御を促進する。他の実施形態において、抗酸化炎症モジュレーターはNF−κBを抑制する。いくつかの実施形態において、抗酸化炎症モジュレーターはSTAT3を抑制する。他の実施形態において、安定化された化合物は、ヒストンデアセチラーゼ活性に作用する化合物と共に投与される。いくつかの実施形態において、安定化された化合物は、抗酸化剤応答配列(ARE)に結合する化合物と共に投与される。他の実施形態において、安定化された化合物は、上記抗酸化炎症モジュレーターとしてのバルドキソロンメチル(2−シアノ−3,12−ジオキソオレアン−1,9(11)−ジエン−28−酸メチルエステル)と共に投与される。いくつかの実施形態において、上記抗酸化炎症モジュレーターは2−シアノ−3,12−ジオキソオレアン−1,9(11)−ジエン−28−酸、又はその薬学的に許容されるエステルである。他の実施形態において、上記抗酸化炎症モジュレーターは2−シアノ−3,12−ジオキソオレアン−1,9(11)−ジエン−28−酸のアミドである。いくつかの実施形態において、上記抗酸化炎症モジュレーターはトリテルペノイドである。他の実施形態において、上記抗酸化炎症モジュレーターは以下の化合物
から選択される。
同時投与治療に有用であると考えられる更なる抗酸化剤としては、米国特許第6,331,532号、第7,179,928号、第7,232,809号、第7,888,334号、第7,888,335号、第7,432,305号、第7,470,798号、及び第7,514,461号、ならびに米国特許公開第20020052342号、第20030069208号、第20040106579号、第20050043553号、第20050245487号、第20060229278号、第20070238709号、第20070270381号、第20080161267号、第20080275005号、第20090258841号、第20100029706号、及び第20110046219号に開示される抗酸化剤が挙げられ、これらの特許文献に開示される化合物は参照により本明細書に援用される。これらの化合物はミトコンドリア標的化合物であり、該化合物としては以下の化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
式I又は式IIの化合物
(式中、R1及びR2は独立に、−C1〜C4アルキル、−C1〜C4ハロアルキル、−CN、−F、−Cl、−Br、及び−Iから選択され、R3は、−C1〜C4アルキル、−C1−C4ハロアルキル、−CN、−F、−Cl、及び−Iから選択され、R20は独立に、−C1〜C20アルキル、−C1〜C20アルケニル、−C1〜C20アルキニル、及び少なくとも1の二重結合及び少なくとも1の三重結合を含有する−C1〜C20から選択される)。
3−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−2−イル)プロピオン酸メチルエステル、3−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロマン−2−イル)プロピオン酸、2,2−ジメチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、3−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−プロパノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−2−イル)プロピオン酸メチルエステル、2−メチル−2−[3−(チアゾール−2−イルスルファニル)プロピル]−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、[3−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−2−イル)プロピル]ホスホン酸ジメチルエステル、[3−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−2−イル)プロピル]ホスホン酸、3−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−2−イル)プロピオン酸メチルエステル、4−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−2−イル)ブタン−1−スルホン酸ジメチルアミド、2−(3−ヒドロキシプロピル)−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、2−(3−クロロプロピル)−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、2,2−ジメチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、−(2−クロロエチル)−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、2−メチル−2−チアゾール−2−イル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、2,2−ジメチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−エタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、3−(6−ヒドロキシ−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−エタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−2−イル)プロピオン酸、2−(3−クロロプロピル)−2−メチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−エタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−6−オール、4−(6−ヒドロキシ−2,2−ジメチル−3,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−7,10−メタノ−2H−ベンゾ[h]クロメン−5−イルメチレン)−2−メチル−5−プロピル−2,4−ジヒドロピラゾール−3−オンなどの化合物。
2,2,7,8−テトラメチル−5−フェニルクロマン−6−オール、4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イル)安息香酸メチルエステル、4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イル)安息香酸、2,2,7,8−テトラメチル−5−ピリジン−4−イルクロマン−6−オール、2,2,7,8−テトラメチル−5−ピリジン−3−イルクロマン−6−オール、5−(4−メタンスルホニルフェニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−(4−ジメチルアミノフェニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−(4−クロロフェニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イル)ベンゼンスルホンアミド、5−(4−メトキシフェニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イルメチル)−1−ヒドロキシ尿素、2,2,7,8−テトラメチル−5−(3−ニトロフェニル)クロマン−6−オール、5−(4−tert−ブチルフェニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、2,2,7,8−テトラメチル−5−(3,4,5−トリメトキシフェニル)クロマン−6−オール、4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イル)ベンゾニトリル、5−(2,5−ジメトキシ−3,4−ジメチルフェニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イル)ベンゼン−1,2,3−トリオール、5−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イル)−2,3−ジメチルベンゼン−1,4−ジオール、5−(2−クロロフェニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−フラン−2−イル−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−アリルスルファニルメチル−2,2,8−トリメチル−7−(3−メチルブチル)クロマン−6−オール、5−シクロペンチルスルファニルメチル−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−ヘキシルスルファニルメチル−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−アリルスルファニルメチル−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イルスルファニルメチル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、1−[3−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イルメチルスルファニル)−2−メチルプロピオニル]ピロリジン−2−カルボン酸、4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イルメチレン)−5−メチル−2−フェニル−2,4−ジヒドロピラゾール−3−オン、4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イルメチレン)−3−フェニル−4H−イソオキサゾール−5−オン、4−[4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イルメチレン)−3−メチル−5−オキソ−4,5−ジヒドロピラゾール−1−イル]安息香酸、4−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イルメチレン)−2−メチル−5−プロピル−2,4−ジヒドロピラゾール−3−オン、5−ヒドロキシ−3−(6−ヒドロキシ−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−5−イルメチレン)−3H−ベンゾフラン−2−オン、2,5,7,8−テトラメチル−2−チオフェン−2−イルクロマン−6−オール、2−(2,5−ジメチルチオフェン−3−イル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、2−(2,5−ジメチルチオフェン−3−イル)−2,7,8−トリメチルクロマン−6−オール、8−クロロ−2−(2,5−ジメチルチオフェン−3−イル)−2,5,7−トリメチルクロマン−6−オール、5−クロロ−2,7,8−トリメチル−2−チオフェン−2−イルクロマン−6−オール、5−[3−(6−メトキシメトキシ−2,7,8−トリメチルクロマン−2−イル)プロピリデン]チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(6−ヒドロキシ−2,7,8−トリメチルクロマン−2−イル)プロピリデン]チアゾリジン−2,4−ジオン、3−[6−ヒドロキシ−2,7,8−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−5−イルメチルスルファニル]−2−メチルプロピオン酸、2,7,8−トリメチル−5−(5−メチル−1H−ベンゾイミダゾール−2−イルスルファニルメチル)−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、2−[6−ヒドロキシ−2,7,8−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−5−イルメチルスルファニル]エタンスルホン酸、5−(4,6−ジメチルピリミジン−2−イルスルファニルメチル)−2,7,8−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、4−[2−(4,8−ジメチルトリデシル)−6−ヒドロキシ−2,7,8−トリメチルクロマン−5−イルメチルスルファニル]安息香酸、1−{3−[6−ヒドロキシ−2,7,8−トリメチル−2−(4,8,12−トリメチルトリデシル)クロマン−5−イルメチルスルファニル]−2−メチルプロピオニル}ピロリジン−2−カルボン酸、2−(2,2−ジクロロビニル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、2−(2,2−ジブロモビニル)−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−(5−クロロ−3−メチルペンタ−2−エニル)−2,2,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、5−クロロ−2−(2,5−ジメチルチオフェン−3−イル)−2,7,8−トリメチルクロマン−6−オール、2−(3−クロロプロピル)−5,7−ジメチル−2−チオフェン−2−イルクロマン−6−オール、5−クロロ−2−(2,5−ジメチルチアゾール−4−イル)−2,7,8−トリメチルクロマン−6−オール、5−クロロ−2−(2,5−ジメチルチアゾール−4−イル)−2,7,8−トリメチル−2H−クロメン−6−オール、及び5−クロロ−2−(2,5−ジメチルチアゾール−4−イル)−2,7,8−トリメチルクロマン−6−オールなどの化合物。
ジメボリン(2,8−ジメチル−5−(2−(6−メチルピリジン−3−イル)エチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドール)、8−クロロ−2−メチル−5−(2−(6−メチルピリジン−3−イル)エチル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドール、メブヒドリン(5−ベンジル−2−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドール)、2,8−ジメチル−1,3,4,4a、5,9b−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドール、8−フルオロ−2−(3−(ピリジン−3−イル)プロピル)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドール、及び8−メチル−1,3,4,4a、5,9b−テトラヒドロ−1H−ピリド[4,3−b]インドールなどの化合物。
2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5−ジメチル−6−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−6−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチル−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、4−(5−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−2,4−ジメチル−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)ベンゾニトリル、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5−ジメチル−6−(ナフタレン−2−イル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3,4−ジフルオロフェニル)−6−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−フルオロフェニル)−6−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−クロロフェニル)−6−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−2−イル)−6−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−フェネチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−フェニルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−ベンジル−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(3−フェニルプロピル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(1−ヒドロキシ−2−フェニルエチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(ナフタレン−2−イル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(ベンゾフラン−2−イル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−クロロフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−エチルフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−フルオロフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−フルオロフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、4−(2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−4,5−ジメチル−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)ベンゾニトリル、2−(3,4−ジフルオロフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−フルオロフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3−(3−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−フルオロ−2−メトキシフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3−(4−メトキシフェニル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(4−クロロフェニル)−6−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−3,5−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(チアゾール−2−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(チアゾール−5−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(ピリジン−2−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(ピリダジン−4−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(チオフェン−2−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(チオフェン−3−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−(フラン−2−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−(フラン−3−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−(1H−ピラゾール−5−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−(1H−ピラゾール−4−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−(1H−ピラゾール−1−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−(1H−イミダゾール−5−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(2−(1H−イミダゾール−2−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(オキサゾール−5−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(オキサゾール−2−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、2−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチル−3−(2−(オキサゾール−4−イル)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン、及び2−(2−(1H−インドール−3−イル)エチル)−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−5,6−ジメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオンなどの化合物。
(式中、mは、−C1〜C20アルキル、−C1〜C20アルケニル、−C1〜C20アルキニル、又は少なくとも1の二重結合及び少なくとも1の三重結合を含有する−C1〜C20であり、対イオンが薬学的に許容されるアニオンである)などの化合物。
3−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)プロピルトリフェニルホスホニウム塩、4−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ブチルトリフェニルホスホニウム塩、5−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ペンチルトリフェニルホスホニウム塩、6−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、7−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、8−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)オクチルトリフェニルホスホニウム塩、9−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ノニルトリフェニルホスホニウム塩、10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)デシルトリフェニルホスホニウム塩、11−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ウンデシルトリフェニルホスホニウム塩、12−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、13−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)プロピルデシルトリフェニルホスホニウム塩、14−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ブチルデシルトリフェニルホスホニウム塩、15−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ペンタデシルトリフェニルホスホニウム塩、16−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ヘキサデシルトリフェニルホスホニウム塩、17−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ヘプタデシルトリフェニルホスホニウム塩、18−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)オクタデシルトリフェニルホスホニウム塩、19−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)ノナデシルトリフェニルホスホニウム塩、20−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソ−1,4−シクロヘキサジエン−1−イル)イコシルトリフェニルホスホニウム塩、3−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)プロピルトリフェニルホスホニウム塩、4−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ブチルトリフェニルホスホニウム塩、5−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ペンチルトリフェニルホスホニウム塩、6−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ヘキシルトリフェニルホスホニウム塩、7−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ヘプチルトリフェニルホスホニウム塩、8−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)オクチルトリフェニルホスホニウム塩、9−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ノニルトリフェニルホスホニウム塩、10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)デシルトリフェニルホスホニウム塩、11−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ウンデシルトリフェニルホスホニウム塩、12−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、13−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシベンジル)プロピルデシルトリフェニルホスホニウム塩、14−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ブチルデシルトリフェニルホスホニウム塩、15−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ペンタデシルトリフェニルホスホニウム塩、16−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ヘキサデシルトリフェニルホスホニウム塩、17−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ヘプタデシルトリフェニルホスホニウム塩、18−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)オクタデシルトリフェニルホスホニウム塩、19−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)ノナデシルトリフェニルホスホニウム塩、20−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジヒドロキシフェニル)イコシルトリフェニルホスホニウム塩などの化合物であり、上記塩の対イオンは、ブロミド、メタンスルホナート、エタンスルホナート、プロパンスルホナート、ベンゼンスルホナート、p−トルエンスルホナート、又は2−ネフチレンスルホナートなどの薬学的に許容されるアニオンである。
更に、抗酸化剤の同時投与は、高いレベルの有益な抗酸化物質を有することが知られている食品を摂取する形をとってもよいことが企図される。かかる食品としては、通常の食品及び抗酸化物質を含有する「スーパーフード」の両方が挙げられる。これらの食品としては、イチゴ、クロスグリ、ブラックベリー、オレンジ、ブルーベリー、ザクロ、紅茶、コーヒー、オリーブ油、チョコレート、シナモン、ハーブ、赤ワイン、穀物、卵、肉、豆類、ナッツ、ホウレンソウ、カブ、ダイオウ、カカオ豆、トウモロコシ、豆、キャベツなどの果実、野菜、及び他の食品が挙げられる。
投与及び組成物
上記化合物は、好ましくは治療上有効な用量で投与される。本明細書に記載の化合物のヒトに対する用量レベルは多様であってよいが、一般には、上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質(例えば、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸チオエステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、もしくは同位体修飾脂肪酸プロドラッグ)の日用量(又は1日に2、3もしくは4回投与)は、当該の対象が、その食事において一般的に摂取することとなる、対応する未修飾化合物の量とほぼ同一であるか、又は上記量の0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.2、1.4、1.5、1.75、2、3、4、5倍もしくはそれ以上であってよく、上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質が上記未修飾化合物の一部又は大部分又は全てに取って替わる。したがって、通常の1日当たりのPUFAの摂取量が15〜20gである成人の場合、同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の日用量は、好ましくは1、1.5、又は2gから最大で15、20、30、40g又はそれ以上の範囲である。上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質は、上記対象の1日のPUFA摂取量の少なくとも10、15、又は20%を構成し、且つ上記対象の1日のPUFA摂取量の最大で90%、95%、99%又はそれ以上を構成してもよいことが好ましい。上記治療の目的は、体内におけるPUFA又はPUFA代謝産物の約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%もしくはそれ以上が同位体修飾されるような、有意な量の体内における上記PUFAを同位体修飾PUFA又はその代謝産物で置換えることである。換言すれば、体内(もしくは対象となる局所部位)における有意な割合の上記PUFA又はその代謝産物が同位体修飾されるような、当該患者への反復する上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の投与によって、上記修飾化合物がそれ自体で酸化に対して抵抗性となるのみならず、体内に存在する上記未修飾PUFA又はその代謝産物の酸化を低減するのに有効な量で存在することにもなる。
いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の量は、上記対象によって摂取される上記未修飾の多価不飽和脂肪酸物質の量の約0.01%、0.05%、0.075%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、又は200%の治療上有効な用量である。いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の量は、上記対象によって摂取される上記未修飾の多価不飽和脂肪酸物質の量の約0.01%、0.05%、0.075%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、又は200%を超える。いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の量は、上記対象によって摂取される上記未修飾の多価不飽和脂肪酸物質の量の約0.01%、0.05%、0.075%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、180%、又は200%未満である。いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の量は、上記対象によって摂取される上記未修飾の多価不飽和脂肪酸物質の量の約0.01%〜20%、0.1%〜20%、1〜50%、10〜50%、50%〜80%、50%〜100%、1〜200%、10%〜200%、10%〜100%、又は20%〜100%の範囲である。
いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の量は、上記未修飾の多価不飽和脂肪酸物質に関して参照される食事必要日量を満たす。いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記同位体修飾多価不飽和脂肪酸物質の量は1日当たり約1g〜100gの範囲である。いくつかの実施形態において、同位体修飾ω6多価不飽和脂肪酸の量は1日当り約3g〜約10gの範囲である。いくつかの実施形態において、同位体修飾ω3多価不飽和脂肪酸の量は1日当り約0.2g〜約5gの範囲である。いくつかの実施形態において、同位体修飾アラキドン酸の量は1日当り約2.5gである。いくつかの実施形態において、同位体修飾アラキドン酸の量は1日当り約0.5g〜約5gグラムである。いくつかの実施形態において、同位体修飾ドコサヘキサエン酸の量は1日当り約0.5gである。いくつかの実施形態において、同位体修飾ドコサヘキサエン酸の量は1日当り約0.1g〜約2gの範囲である。
上記化合物又は組成物は、投与のために種々の送達システムに製剤化されてもよい。送達システムの形態のいくつかの例としては、溶液、コロイド、バイオポリマーマトリクス、ミセル、散剤、乳剤(例えば、従来の乳剤、複合乳剤、多層乳剤)、固体脂質粒子、及び充填ヒドロゲル粒子が挙げられるが、これらに限定はされない。これらの送達システムのそれぞれは、種々の加工操作(例えば、混合、均質化、又は熱処理)を用いて食品グレード(GRAS)の原料成分(例えば、脂質、タンパク質、多糖類、界面活性剤、又はミネラル)から製造することができる。いくつかの実施形態において、上記乳剤送達システムは、賦形剤ナノエマルションを含む賦形剤乳剤であってよい。いくつかの実施形態において、上記送達システムは脂質ベースの送達システムであってよい。いくつかの実施形態において、上記送達システムはベシクル又はミセル(例えば、混合ミセル又は均一ミセル)を含むコロイドシステムであってよい。送達システムの他の例は、Porter C.;et al., Nat Rev Drug Discov. 2007 Mar;6(3):231-48.;Ruojie Zheng, et al., Food Biophysics (2016) 11: 71;及びMcClements DJ, et al.;J Food Sci. 2007 Oct;72(8):R109-2に記載され、上記文献はそれらの全体がこの目的のために本出願に援用される。
本明細書に開示の化合物又は組成物の投与は、経口投与、皮下投与、静脈内投与、鼻腔内投与、局所投与、経皮投与、腹腔内投与、筋肉内投与、肺内投与、経膣投与、経直腸投与、又は眼内投与を含む、但しこれらに限定されない、類似の効用を提供する薬剤に対して許容される投与形態のいずれによるものであってよい。好ましい実施形態の対象である適応症の治療では、経口投与及び非経口投与が通例である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物又は組成物の投与は摂取による投与をいう。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物又は組成物は経口投与される。
上述の有用な化合物又は組成物は、医薬組成物、機能性食品組成物、又は栄養補助食品に製剤化されてもよい。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)(その全体が参照により本明細書に援用される)に開示されるものなどの標準的な医薬製剤技法が用いられる。したがって、いくつかの実施形態としては、(a)安全かつ治療上有効な量の本明細書に記載の化合物(その鏡像異性体、ジアステレオ異性体、互変異性体、多形体、及び溶媒和物を含む)、又はその薬学的に許容される塩と、(b)薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、又はそれらの組み合わせとを含む医薬組成物が挙げられる。
上記のように有用な選択された化合物に加えて、いくつかの実施形態としては、薬学的に許容される担体を含む組成物が挙げられる。用語「薬学的に許容される担体」又は「薬学的に許容される賦形剤」とは、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤などを包含する。薬学的に活性な物質に対してかかる媒体及び物質を用いることは当技術分野において周知である。いずれかの従来の媒体又は物質が当該活性成分と適合しない場合を除いて、上記治療用組成物における上記媒体又は物質の使用が企図される。更に、当技術分野で一般的に用いられる種々のアジュバントを含んでいてもよい。例えば、Gilman et al. (Eds.) (1990);Goodman and Gilman’s: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Pressに、医薬組成物中に種々の成分を含めることに関する考察が記載され、該文献はその全体が参照により本明細書に援用される。
薬学的に許容される担体又はその成分として役立つ場合がある物質のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及びメチルセルロースなどのセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなどの固体滑沢剤;硫酸カルシウム;ラッカセイ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及びカカオ脂などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール類;アルギン酸;TWEENSなどの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色料;香味料;錠剤化剤、安定剤;抗酸化剤;防腐剤;発熱物質を含まない水;等張生理学的食塩水;ならびにリン酸緩衝液がある。
本主題の化合物と組み合わせて用いられる薬学的に許容される担体の選択は、基本的に当該化合物が投与される方法によって決定される。
本明細書に記載の組成物は、好ましくは単位剤形で提供される。本明細書中では、「単位剤形」とは、適正診療規範(Good Medical Practice)に従って、動物、好ましくは哺乳動物の対象への単回投与での投与に適した量の化合物を含有する組成物である。しかしながら、単回用剤形又は単位剤形の製剤化は、当該の剤形が1日に1回又は治療の過程に1回投与されることを意味しない。かかる剤形は、1日に1回、2回、3回、又はそれ以上投与されることが企図され、ある期間(例えば、約30分から約2〜6時間)にわたる注入として投与されてもよく、又は連続注入として投与されてもよく、治療過程の間に複数回投与されてもよい。但し、単回投与が特に排除されるわけではない。当業者であれば、上記製剤が特に治療の全過程を企図するものではなく、かかる判断は製剤よりもむしろ治療の当業者に委ねられていることを認識していよう。
上記のように有用な組成物は、種々の投与経路、例えば経口投与、経鼻投与、経直腸投与、局所投与(経皮投与を含む)、眼内投与、脳内投与、頭蓋内投与、髄腔内投与、動脈内投与、静脈内投与、筋肉内投与、又は他の非経口投与の経路に適した形態のいずれであってもよい。当業者は、経口用及び経鼻用組成物が、吸入により投与され、利用可能な方法論を用いて製造される組成物を含むことを認識しよう。所望の特定の投与経路に応じて、当技術分野において周知の様々な薬学的に許容される担体を用いることができる。薬学的に許容される担体としては、例えば、固体又は液体の充填剤、希釈剤、ヒドロトロピー剤、界面活性剤、及び封入用物質が挙げられる。上記化合物の阻害活性を実質的に妨害しない、任意選択の薬学的に活性な物質が含まれていてもよい。上記化合物と共に用いられる担体の量は、当該化合物の単位用量当たりの投与に実用的な量の材料を提供するのに十分な量である。本明細書に記載の方法に有用な剤形を作製するための技法及び組成物は、全てが参照により本明細書に援用される以下の参照文献、すなわち、Modern Pharmaceutics, 4th Ed., Chapters 9 and 10 (Banker & Rhodes, editors, 2002);Lieberman et al., Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1989);及びAnsel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 8th Edition (2004)に記載される。
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及びバルク散剤などの固体剤形を含む、種々の経口剤形を用いることができる。錠剤は、適宜の結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、香味料、流動化剤、及び融解剤を含有する、圧縮成形剤、粉薬錠剤、腸溶性被覆材、糖衣錠、フィルム被覆剤、又は多重圧縮剤であってよい。液体経口剤形としては、適宜の溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、融解剤、着色料、及び香味料を含有する、水溶液剤、乳剤、懸濁液剤、非発泡性顆粒から再構成された溶液及び/又は懸濁液、ならびに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物が挙げられる。
経口投与用の単位剤形の製剤化に適した薬学的に許容される担体は当技術分野において周知である。錠剤は一般的に、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトース、及びセルロースなどの不活性希釈剤として従来の薬学的に適合性のあるアジュバント;デンプン、ゼラチン、及びスクロースなどの結合剤;デンプン、アルギン酸、及びクロスカルメロースなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びタルクなどの滑沢剤を含む。二酸化ケイ素などの滑剤を用いて、粉末混合物の流動特性を改善してもよい。FD&C色素などの着色料を外観のために添加してもよい。アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、及びフルーツフレーバーなどの甘味料及び香味料は、咀嚼錠用の有用なアジュバントである。カプセル剤は、一般的には上記に開示した1種以上の固体希釈剤を含む。担体成分の選択は、味、コスト、及び保存安定性などの二次的な考慮事項に依存し、これらは必須なものではなく、当業者によって容易になし得る。
経口用組成物としては、溶液剤、乳剤、懸濁液剤なども挙げられる。かかる組成物の製剤化に適した薬学的に許容される担体は当技術分野において周知である。シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、及び懸濁液剤用の担体の一般的な成分としては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトール、及び水が挙げられる。懸濁液剤の場合、一般的な懸濁剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC−591、トラガカント、及びアルギン酸ナトリウムが挙げられ、一般的な湿潤剤としてはレシチン及びポリソルベート80が挙げられ、一般的な防腐剤としてはメチルパラベン及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口液体組成物はまた、上記に開示の甘味料、着香料、及び着色料などの1種以上の成分も含んでいてよい。
かかる組成物はまた、従来の方法によって、一般的には、所望の局所適用の近傍で又は所望の作用が長続きするように様々な時点で、本主題の化合物が消化管中に放出されるような、pH依存性又は時間依存性被膜で被覆されていてもよい。かかる剤形は、一般的には、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、エチルセルロース、Eudragit被覆材、ワックス、及びシェラック(但しこれらに限定されない)の1種以上を含む。
本明細書に記載の組成物は、任意選択で他の有効成分(drug actives)を含んでいてもよい。
本主題の化合物を全身送達するのに有用な他の組成物としては、舌下剤形、口腔剤形、及び経鼻剤形が挙げられる。かかる組成物は、一般的には、スクロース、ソルビトール、及びマンニトールなどの可溶性充填剤物質、ならびにアラビアガム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤の1種以上を含む。上記に開示した滑剤、滑沢剤、甘味剤、着色料、抗酸化剤、及び香味料も含まれていてよい。
局所眼科的使用のために製剤化される液体組成物は、眼に局所投与することができるように製剤化される。快適性は可能な範囲で最大にするべきであるが、時には製剤の考慮事項(例えば薬物安定性)により、快適性を最適な場合よりも落とさざるを得ない場合もある。快適性を最大にすることができない場合には、当該の液剤を、患者による局所眼科的使用に対して忍容性があるように処方する必要がある。更に、眼科的に許容される液剤は、単回使用用に包装するか、又は複数回の使用にわたって汚染を防止するために防腐剤を含有させるかのいずれかを必要とする。
眼科適用用には、溶液すなわち薬剤は、多くの場合、主たるビヒクルとして生理学的食塩水を用いて製剤化される。眼科用溶液剤は、好ましくは、適宜の緩衝系を用いて快適なpHに維持する必要がある。上記製剤は、従来の薬学的に許容される防腐剤、安定剤、及び界面活性剤も含んでいてよい。
本明細書に開示される医薬組成物に用いてもよい防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、PHMB、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、及び硝酸フェニル水銀が挙げられるが、これらに限定はされない。有用な界面活性剤としては、例えばTween 80がある。同様に、本明細書に開示される眼科用製剤には、種々の有用なビヒクルを使用してもよい。これらのビヒクルとしては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び精製水が挙げられるが、これらに限定はされない。
必要又は都合に応じて、張度調整剤を添加してもよい。張度調整剤としては、塩、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、及びグリセリン、又は他の任意かつ適宜の眼科的に許容される張度調整剤が挙げられるが、これらに限定はされない。
得られる製剤が眼科的に許容されるものである限り、pHを調整するための種々の緩衝液及び手段を用いてもよい。多くの組成物について、pHは4〜9の間となる。従って、緩衝液としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、及びホウ酸緩衝液が挙げられる。必要に応じて、酸又は塩基を用いてこれらの製剤のpHを調整してもよい。
同様に、眼科的に許容される抗酸化剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これらに限定はされない。
眼科用製剤に含まれていてもよい他の賦形剤成分としてはキレート剤がある。有用なキレート剤はエデト酸二ナトリウムである。但し、他のキレート剤も、エデト酸二ナトリウムに代えて、又はエデト酸二ナトリウムと共に用いてよい。
局所使用には、本明細書に開示される化合物を含有するクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、溶液剤、又は懸濁液剤などが用いられる。局所用製剤は一般に、医薬担体、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、防腐剤系、及び皮膚軟化剤から構成されてもよい。
静脈内投与の場合、本明細書に記載の化合物及び組成物を、生理学的食塩水もしくはデキストロース溶液などの薬学的に許容される希釈剤に溶解又は分散させてもよい。所望のpHを得るために、NaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HCl、及びクエン酸を含む、但しこれらに限定されない適宜の賦形剤を含んでいてもよい。種々の実施形態において、最終組成物のpHは、2〜8、又は好ましくは4〜7の範囲である。抗酸化賦形剤としては、重亜硫酸ナトリウム、アセトン中亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウム、スルホキシラート、チオ尿素、及びEDTAを挙げることができる。最終的な静脈内用組成物中に存在する好適な賦形剤の他の非限定的な例としては、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、ならびにデキストロース、マンニトール、及びデキストランなどの炭水化物を挙げることができる。更なる許容可能な賦形剤が、Powell, et al., Compendium of Excipients for Parenteral Formulations, PDA J Pharm Sci and Tech 1998, 52 238-311、及びNema et al., Excipients and Their Role in Approved Injectable Products: Current Usage and Future Directions, PDA J Pharm Sci and Tech 2011, 65 287-332に記載されており、これらの両文献は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。静菌性又は静真菌性溶液剤を得るために、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、及びクロロブタノールを含む、但しこれらに限定されない抗菌剤も含まれていてよい。
静脈内投与用の組成物は、投与直前に、無菌の水、生理学的食塩水、もしくはデキストロース水溶液などの適宜の希釈剤で再構成される、1種以上の固体の形態で介護者に提供されてもよい。他の実施形態において、上記組成物は、そのまま非経口投与することができる溶液剤で提供される。更に他の実施形態において、上記組成物は、投与前に更に希釈される溶液剤で提供される。本明細書に記載の化合物と他の薬剤との組み合わせを投与することを含む実施形態において、上記組み合わせは介護者に混合物として提供されてもよく、介護者は投与前に2種の薬剤を混合してもよく、又は2種の薬剤を別個に投与してもよい。
治療方法
いくつかの実施形態は、対象にアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害があることを鑑別することと、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸チオエステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸アミド、多価不飽和脂肪酸模倣体、又は同位体修飾多価不飽和脂肪酸プロドラッグを含む化合物であって、該化合物の酸化を低減し、それによって上記対象における上記アルデヒドデヒドロゲナーゼに関連する1種以上の代謝産物の産生を低減する同位体修飾を有する上記化合物を上記対象に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態において、上記代謝産物はアルデヒドである。いくつかの実施形態において、上記代謝産物はマロンジアルデヒドである。いくつかの実施形態において、上記代謝産物は4−ヒドロキシノネナールである。いくつかの実施形態において、上記代謝産物は4−ヒドロキシヘキセナールである。いくつかの実施形態において、上記代謝産物は3,4−ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド(DOPAL)である。いくつかの実施形態において、上記代謝産物はレチノールである。いくつかの実施形態において、上記代謝産物はレチナールアルデヒド(retinal aldehyde)である。
いくつかの実施形態において、上記対象にはミトコンドリアアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害がある。いくつかの実施形態において、上記対象にはレチノールデヒドロゲナーゼ活性障害がある。
いくつかの実施形態において、上記ALDH酵素は、以下の表1に列挙されるALDH酵素から、ならびにMarchitti et al., Expert Opin Drug Metab Toxicol. 2008 Jun;4(6):697-720;及びMarchitti et al., Pharmacol Rev. 2007 Jun;59(2):125-50. Epub 2007(この開示は、この目的に対して、それらの全体が参照により本明細書に援用される)中のALDH酵素からも選択される。
いくつかの実施形態において、上記対象には神経障害があるか又はその危険性があり、投与される上記化合物の量は神経障害を予防する又はその進行を抑制するのに十分である。いくつかの実施形態において、上記神経障害はアルツハイマー病である。
いくつかの実施形態において、上記対象にはアルツハイマー病の早期発症があるか又はその危険性があり、上記投与される化合物の量がアルツハイマー病の早期発症を予防する又はその進行を抑制するのに十分である。いくつかの実施形態において、上記対象にはアルツハイマー病の遅発があるか又はその危険性があり、上記投与される化合物の量がアルツハイマー病の遅発を予防する又はその進行を抑制するのに十分である。
いくつかの実施形態において、上記対象には酸化性網膜疾患があるか又はその危険性がある。いくつかの実施形態において、上記対象には上記網膜症があるか又はその危険性がある。いくつかの実施形態において、上記対象には、スターガルト病、家族性黄斑変性症、及びレーバー先天性黒内障があるか又はその危険性がある。いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記化合物の量は、上記酸化性疾患もしくは網膜症を予防する、改善する、治療する、又はそれらの進行を抑制するのに十分である。いくつかの実施形態において、上記対象に投与される上記化合物の量は、上記スターガルト病、家族性黄斑変性症、及びレーバー先天性黒内障を予防する、改善する、治療する、又はそれらの進行を抑制するのに十分である。いくつかの実施形態において、上記対象には変異型のアルデヒドデヒドロゲナーゼタンパク質の発現に関連する酸化性網膜疾患又は網膜症がある。いくつかの実施形態において、上記対象には変異型のRDHタンパク質の発現と関連する酸化性網膜疾患又は網膜症がある。いくつかの実施形態において、上記対象にはALDH遺伝子における変異又は欠失がある。いくつかの実施形態において、上記対象にはRDH遺伝子における変異又は欠失がある。
いくつかの実施形態において、上記対象にはパーキンソン病があるか又はその危険性があり、投与される上記化合物の量はパーキンソン病を予防する又はその進行を抑制するのに十分である。いくつかの実施形態において、上記対象にはパーキンソン病があるか又はその危険性がある。
いくつかの実施形態において、上記アルデヒドデヒドロゲナーゼは、アルデヒドデヒドロゲナーゼ−1、アルデヒドデヒドロゲナーゼ−2、アルデヒドデヒドロゲナーゼ−3、アルデヒドデヒドロゲナーゼ−4、又はアルデヒドデヒドロゲナーゼ−5である。いくつかの実施形態において、上記アルデヒドデヒドロゲナーゼはアルデヒドデヒドロゲナーゼ−2である。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物又は組成物は経口投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物又は組成物は静脈内又は筋肉内投与される。
いくつかの実施形態において、上記対象には、心血管疾患、糖尿病、神経変性疾患、脳卒中、又はがんがあるか、又はそれらの危険性があり、投与される上記化合物の量は、心血管疾患、糖尿病、神経変性疾患、脳卒中、及びがんを予防する又はそれらの進行を抑制するのに十分である。
いくつかの実施形態は、疾病がある対象の治療方法であって、上記対象にアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害又はレチノールデヒドロゲナーゼ活性障害があることを鑑別すること;及び、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾脂肪酸チオエステル、同位体修飾脂肪酸アミド、同位体修飾脂肪酸模倣体、又は同位体修飾脂肪酸プロドラッグを含む化合物であって、酸化(例えば脂質の酸化)を低減し、それによって上記アルデヒドデヒドロゲナーゼに関連する1種以上の代謝産物の蓄積を低減する同位体修飾を有する、有効量の上記化合物を上記対象に投与すること;を含む上記方法に関する。いくつかの実施形態において、上記疾病は神経障害又は神経変性疾患である。いくつかの実施形態において、上記疾病は酸化性網膜疾患又は網膜症である。
いくつかの実施形態において、上記疾病は網膜症である。
いくつかの実施形態において、神経障害もしくは神経変性疾患の危険性があるか又はそれらを有する対象には、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害もあってよい。いくつかの実施形態において、酸化性網膜疾患もしくは網膜症の危険性があるか又はそれらを有する対象には、レチノールデヒドロゲナーゼ活性障害も有していてよい。
他の実施形態は、神経障害又は神経変性疾患がある対象の治療方法であって、上記対象にアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害があることを鑑別すること;及び、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾脂肪酸チオエステル、同位体修飾脂肪酸アミド、同位体修飾脂肪酸模倣体、又は同位体修飾脂肪酸プロドラッグを含む化合物であって、酸化を低減し、それによって上記アルデヒドデヒドロゲナーゼに関連する1種以上の代謝産物の蓄積を低減する同位体修飾を有する、有効量の上記化合物を上記対象に投与すること;を含む上記方法に関する。
他のいくつかの実施形態は、酸化性眼疾患又は網膜症がある対象の治療方法であって、上記対象にレチノールデヒドロゲナーゼ活性障害があることを鑑別すること;及び、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾脂肪酸チオエステル、同位体修飾脂肪酸アミド、同位体修飾脂肪酸模倣体、又は同位体修飾脂肪酸プロドラッグを含む化合物であって、酸化を低減し、それによって上記レチノールアルデヒドデヒドロゲナーゼに関連する1種以上の代謝産物の蓄積を低減する同位体修飾を有する、有効量の上記化合物を上記対象に投与すること;を含む、上記方法に関する。
いくつかの実施形態において、上記投与することは反復投与すること又は摂取することである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は経口投与される。
いくつかの実施形態において、投与される上記化合物の量は、上記神経障害又は神経変性疾患を予防する、改善する、又はそれらの進行を抑制するのに十分である。いくつかの実施形態において、上記神経障害又は神経変性疾患は、ALDH遺伝子の変異又は欠失と関連する。
いくつかの実施形態において、投与される上記化合物の量は、上記酸化性網膜疾患又は網膜症を予防する、改善する、又はそれらの進行を抑制するのに十分である。いくつかの実施形態において、上記酸化性網膜疾患又は網膜症は、ALDH遺伝子の変異又は欠失と関連する。いくつかの実施形態において、上記レチノールデヒドロゲナーゼは、11−シス−レチノールデヒドロゲナーゼなどの短鎖デヒドロゲナーゼであり、好ましくは酵素的に活性である。いくつかの実施形態において、上記レチノールデヒドロゲナーゼは、レチノール(例えば、11−シス−レチノール)を一掃し、網膜色素上皮(RPE)から有毒なレチノールを除去することができる。いくつかの実施形態において、上記レチノールデヒドロゲナーゼは、コレステロール及び/又は膜脂質を一掃し、それらを網膜色素上皮(RPE)から除去することができる。
患者の層別化
いくつかの実施形態において、上記方法は、本明細書に記載の化合物による治療のために、上記対象を層別化することを含む。層別化とは、分子的検査、遺伝的検査、生化学的検査、又は画像診断検査を用いることによる、当該の患者にとって最適な治療を選択し、且つ の観点から(分類及び疾患の特徴に基づいて)、可能な限り最良の結果を得るための、共有する「生物学的」特徴を有する患者の群の鑑別をいう。かかる層別化は、治療を開始する前及び/又は治療中に行ってもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象に神経障害もしくは神経変性疾患があるか又はその危険性があることを鑑別することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象の神経障害又は神経変性疾患の重篤度を評価することを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象に酸化性網膜疾患があるか又はその危険性があることを鑑別することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象の上記酸化性網膜疾患の重篤度を評価することを含む。いくつかの実施形態において、上記酸化性網膜疾患は、スターガルト病、家族性黄斑変性症、及びレーバー先天性黒内障である。いくつかの実施形態において、上記網膜症又は網膜酸化性疾患は、レチノールデヒドロゲナーゼ遺伝子の変異又は欠失と関連する。いくつかの実施形態において、上記網膜症又は網膜酸化性疾患は、RDH11、RDH12、ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH2、又はAKR1b1遺伝子における変異又は欠失と関連する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象にアルツハイマー病があるか又はその危険性があることを鑑別することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象にがんがあるか又はその危険性があることを鑑別することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象に網膜症もしくはホスホリパーゼ欠損症があるか又はその危険性があることを鑑別することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象が、上記アルデヒドデヒドロゲナーゼに関連する代謝産物(例えばアルデヒド)の蓄積を引き起こす場合がある環境因子に曝露されていることを鑑別することを含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、対象にALDN活性障害があることを鑑別することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象にALDH遺伝子の変異又は欠失があるかどうかを判定することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象にALDH遺伝子の変異又は欠失があるかどうかを判定することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記対象にALDH2遺伝子の変異又は欠失があるかどうかを判定することを含む。いくつかの実施形態において、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害がある対象は、遺伝子型決定によって、又はアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害に特徴的な症状もしくは表現型の観察によって鑑別することができる。いくつかの実施形態において、かかるアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害がある対象は、遺伝子検査によって鑑別することができる。いくつかの実施形態において、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害がある対象は、アルコール誘発性紅潮によって鑑別することができる。いくつかの実施形態において、唾液をアルデヒド含有量及びALDH活性に関して検査することによって、上記対象を鑑別することができる。いくつかの実施形態において、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害がある対象は、アルコールに対する耐性がないことよって又は低いアルコール耐性によって鑑別することができる。いくつかの実施形態において、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害がある対象は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ障害の状態の家族歴に基づいて鑑別することができる。いくつかの更なる選択基準としては、中国、日本、及び朝鮮などの東南アジア地域出身の人々が挙げられる。
本明細書に記載の方法は、対象に神経障害もしくは神経変性疾患があるか又はその危険性があることを鑑別するステップを含んでいてもよい。上記鑑別するステップは、本技術分野で公知の任意且つ適宜の方法によって実現することができる。いくつかの実施形態において、上記鑑別するステップは、1種以上の神経変性疾患診断用自己抗体の有無を判定するためのアッセイを実施することを含む。いくつかの実施形態において、上記鑑別するステップは、神経障害又は神経変性疾患に関連する上記対象の遺伝的マーカーを分析することを含む。いくつかの実施形態において、神経障害もしくは神経変性疾患があるか又はその危険性がある対象は、生理学的指標に基づいて鑑別することができる。
アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害
いくつかの実施形態において、上記アルデヒドの蓄積はALDH活性障害と関連する。いくつかの実施形態において、ALDH活性障害は遺伝性であるか又は環境因子によって生じる場合がある。いくつかの実施形態において、上記毒性化合物の蓄積は、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病の発症と関連する場合がある。いくつかの実施形態において、ALDH活性障害による毒性化合物の蓄積は、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病の発症と関連する場合がある。
本明細書に記載の化合物及び方法は、神経障害、遅発型アルツハイマー病及び若年性アルツハイマー病を含む神経変性疾患の危険性を低減することができる。この点に関して、特定の実施形態は、それぞれが人体内でのアルコール分解過程を補助及び/又は緩和する、組成物、特に食品組成物、栄養補助食品、及び医薬組成物を対象とする。特定の実施形態の方法及び組成物は、アルデヒド活性障害があるほとんどの人に起こり得る急速なアルコール分解、すなわちアルコール代謝の後のアセトアルデヒドの蓄積の問題に対処することができる。特定の実施形態の方法及び組成物は、アルデヒド活性障害があるほとんどの人に起こり得る過酸化(例えば脂質過酸化)の後の毒性のあるアルデヒドの蓄積の問題にも対処することができる。
本明細書に記載の化合物及び方法を用いて、対象における1種以上の毒性化合物の蓄積に関連する疾病を治療又は改善することができる。本明細書に記載の化合物及び方法を用いて、対象における1種以上の毒性化合物の蓄積に関連する影響を逆転又は改善することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物及び方法を用いて、対象に蓄積した1種以上の毒性化合物の量を低減することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物及び方法を用いて、ALDH活性障害に起因する、対象に蓄積した1種以上の毒性化合物の量を低減することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物及び方法を用いて、対象に蓄積した、該対象における過酸化に関連する1種以上の毒性化合物の量を低減することができる。いくつかの実施形態において、対象に蓄積した毒性化合物は、アルデヒド又は対象における脂質過酸化の生成物であってよい。いくつかの実施形態において、上記脂質過酸化の生成物は、マロンジアルデヒド(MDA)及び/又は4−ヒドロキシノネナール(HNE)及び/又は4−ヒドロキシヘキセナール(HHE)及び/又はDOPALであってよい。対象に蓄積する可能性のある毒性化合物の例はM.C-Y.Wey, et al., PloS One, 2012,7(2): e31522に記載され、該文献はその全体が参照により援用される。
本明細書に記載の方法を用いて、心筋損傷もしくは心筋症を予防又は改善することができる。本明細書に記載の方法を用いて、心筋損傷又は心筋症を治療することができる。いくつかの実施形態において、上記心筋症はアルコール性心筋症である。ALDH機能障害がある対象(例えばALDH2*2保有者)においては、過剰なアルコール摂取により、心筋収縮性の低下及び駆出量の低下を伴う筋原線維構造の破壊を含む悪化した心筋損傷を発症する場合がある。アルコール性心筋症の主な特徴は心臓肥大(cardiac hypertrophy)及び心室拡張であり、これらは心臓肥大(cardiomegaly)、うっ血性心不全、更には心臓死さえも引き起こす。心臓のミトコンドリアALDH2は心臓防御における重要な酵素である。
4−HNE、4−HHE、又はDOPALなどの反応性アルデヒドの解毒を高める本明細書に記載の方法は、急性虚血/再灌流障害、ニトログリセリン耐性、糖尿病性及びアルコール性心筋症、ならびに心不全に対する防御、これらの改善、又は治療に有効である場合がある。
本明細書に記載の方法は、がんの予防、その危険性の低減、治療、又はその進行の抑制に有効である場合がある。本明細書に記載の方法は、食道癌及び消化管癌の予防又はそれらの危険性の低減に有効である場合がある。本明細書に記載の方法は、食道癌及び消化管癌の予防、治療、又はそれらの進行の抑制に有効である場合がある。ALDH(例えばALDH2)活性障害がある個体は、同量のアルコールを飲む完全に活性なALDH酵素をもつ個体と比較した場合、食道癌を発症する可能性が約6〜10倍高い。週に33杯の米国の標準的な飲酒量と同等又はそれを超える飲酒量の、不活性ALDH2変異体をもつ個体は、飲酒しない人と比較して食道癌の危険性が89倍増加する。
本明細書に記載の化合物及び治療方法は、心血管疾患、糖尿病、神経変性疾患、脳卒中、及びがんの危険性を低減する場合がある。
ALDH2は、エタノール代謝におけるその重要な役割により最もよく知られている。ヒトにおけるエタノールの無毒化経路は主として肝臓で起こり、2種の酵素的ステップによって行われる。第1のステップはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によって触媒され、第2のステップは主としてADH4としても知られるALDH2、アルコールデヒドロゲナーゼ4(クラスII)によって触媒される。19種のヒトALDHアイソザイムの中で、ALDH2はエタノール由来のアセトアルデヒドの代謝に対して最も効率的なALDHアイソザイムであり、ALDH2はこの基質に対して最も低いKm(約0.2μM)を有する(72)。このKmは、多量に存在する細胞質ALDHであるALDH1のKmの1/900の低さであり、そのために、ヒトにおいては、ALDH2はおそらくアセトアルデヒドの代謝に有意に寄与する唯一のALDH酵素である(149)。あまり知られていないことであるが、ALDH2はまた、他の多くの短鎖脂肪族アルデヒドのみならず、一部の芳香族及び多環式アルデヒドを代謝する能力もあり、これらの有毒物質に対する重要な防御的酵素として機能する(148)。特に、ALDH2は、ω−6由来の4−ヒドロキシ−2−ノネナール(4−HNE)、ω−3由来の4−ヒドロキシ−2−ヘキセナール(4−HHE)、及びマロンジアルデヒド(MDA)、ならびに(例えば、タバコの煙及び自動車の排気中に存在する)アクロレインなどの環境アルデヒドなどの、酸化ストレス下で脂質過酸化から生じる内因性アルデヒド産生物の酸化において重要な役割を果たす。ALDH機能障害は、心血管疾患、糖尿病、神経変性疾患、脳卒中、及びがんの発症にも関与する。
体内に取り込まれたエタノールは、主として肝臓においてその酸化によって除去される。エタノール(CH3CH2OH)は最初にアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)によってアセトアルデヒド(CH3CHO)に代謝され、次いでアセトアルデヒド(CH3CHO)は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)、主として、ADH4(アルコールデヒドロゲナーゼ4(クラスII))としても知られる肝臓アルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2)によって酢酸(CH3COOH)へと更に代謝される。
CH3CH2OH + NAD → CH3CHO + NADH + H+
CH3CHO + NAD + H2O → CH3COOH + NADH + H+
アルコール代謝の間に生成するアセトアルデヒドの大部分は、低KmのALDHであるALDH2によって速やかに除去される。ALDHの多型アイソフォームが存在し、クラス2のALDH(ALDH2)は、最も低い親和定数(Km)を有し、アセトアルデヒド酸化にとって最も重要な酵素である。変異型対立遺伝子ALDH2*2は、活性型のALDH2*1遺伝子のエクソン12に一点変異(G→A)を有する。この変異により、アミノ酸487位のグルタミン酸(Glu)のリシン(Lys)による置換を生じる。ALDH2*2は、このように触媒的に不活性なサブユニットをコードし、優性阻害形態で作用する。ヘテロ接合性ALDH2*1/2*2遺伝子型をもつ個体には、正常なホモ接合性ALDH2*1/2*1遺伝子型をもつ個体と比較してわずか6%の活性しかないこととなる。ALDH2*2対立遺伝子の分布は人種によって異なり、東アジアでは高頻度で見られるが、白人やアフリカ人には見られず、活性なALDH2*1対立遺伝子をもつ。東アジア人の40〜50%が不活性なALDH2*2対立遺伝子をもつ。少量のエタノール(0.1g/kg−体重)を飲んだ後の、ALDH2*1/2*2ヘテロ接合体及びALDH2*2/2*2ホモ接合体の血中アセトアルデヒド濃度の平均ピークは、それぞれ、中程度のエタノール(0.8g/kg−体重)を飲んだ後のALDH2*1/2*1ホモ接合体で検出された血中アセトアルデヒド濃度の5倍及びIS倍である。アルコールを摂取したALDH2*1/2*2ヘテロ接合体では、唾液中のアセトアルデヒド量が増加し、活性なALDH2*1/2*1ホモ接合体のアルコール酸化をALDH阻害剤である4−メチルピラゾールによって阻害すると、そのレベルは低下する。したがって、アセトアルデヒドの酸化は、ALDH2*2対立遺伝子をもつ個体では著しく損なわれている。
ALDH2欠損症は、神経障害及び遅発性アルツハイマー病の危険性の増大と関連する場合がある。更に、機能低下ALDH2*2対立遺伝子をもつ日本人のアルコール中毒患者において、知覚伝導時間は、活性なALDH2*1/2*1ホモ接合体における知覚伝導時間よりも有意に長く、このことは、前者の末梢神経細胞の機能不全を示している。ALDHが遺伝的に不活性化されている実験的神経細胞系は、外因的に添加されたアルデヒド代謝産物に対して非常に受攻性であり、このことは、アセトアルデヒドによって生じる酸化ストレスが神経細胞に相当な損傷を与えることを示している。これらの結果をまとめると、アセトアルデヒドによって誘発される酸化ストレスがミトコンドリアのエネルギー産生に損傷を与え、神経細胞中のタンパク質を変性させ、変性タンパク質の沈着を形成する可能性があることが示唆される。これらの変化は細胞機能に更に損傷を与え、最終的に細胞死を引き起こす。したがって、アセトアルデヒドは、多発性神経障害及び/又は遅発性アルツハイマー病などの神経変性疾患の病因に密接に関与している可能性がある。
本明細書に記載の組成物及び化合物は、アセトアルデヒド及び4−ヒドロキシノネナール(HNE)、4−ヒドロキシ−2−ヘキセナール(HHE)、マロンジアルデヒド(MDA)、アクリル、メチルグリオキサール、及びシュウ酸などの脂質酸化過程の中で産生される他のアルデヒド化合物の消失を促進する。
本明細書に記載の組成物は、飲酒後のアルコール及びアセトアルデヒドの消失を促進する。上記組成物は、好ましくはALDH2*1/2*1ホモ接合体及びALDH2*1/2*2ヘテロ接合体の対象において活性である。本明細書に記載の組成物は、体内のアセトアルデヒドの量を効果的に低減することができる。したがって、本明細書に記載の組成物を用いて、神経障害、神経変性疾患、例えば、遅発型アルツハイマー病又は若年性アルツハイマー病の危険性を減じることができる。
本明細書に記載の組成物は、アルデヒドの蓄積に関連する疾病の改善又は治療に有効な場合がある。いくつかの実施形態において、上記アルデヒドの蓄積は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性障害によって生じる場合がある。いくつかの実施形態において、上記アルデヒドの蓄積は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を阻害する化学剤によって起こる場合がある。いくつかの実施形態において、上記化学薬剤は、ベノミル及びN−ブチルチオカルバミン酸S−メチルスルホキシドを含む環境ストレス因子である場合がある。環境ストレス因子の例はFitzmaurice AG., et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2013 110:636-41に記載され、該文献の全体が参照により本明細書に援用される。
多価不飽和脂質及びオキシリピンの同時投与
いくつかの実施形態は、同位体修飾多価不飽和脂質及び1種以上のオキシリピンを含む組成物に関する。いくつかの実施形態は、同位体修飾多価不飽和脂質及び1種以上のプロスタノイドを含む組成物に関する。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンは、アラキドン酸がCOX酵素により触媒される反応を経た後のその代謝産物である。
いくつかの実施形態において、上記オキシリピンは、多価不飽和脂肪酸を酸化することによって形成された化合物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンは、多価不飽和脂肪酸の酸化代謝産物を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、オキシリピンは、PUFAから、例えばC18、C20 PUFA(例えばエイコサノイド)、及びC22 PUFAから酵素的に産生されてもよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンはエイコサノイドであってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンはプロスタノイドであってよい。いくつかの実施形態において、上記プロスタノイドはプロスタグランジンである。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンは、例えば、年齢に伴う腎機能の低下などにおいて、プロスタグランジンであってよい。
オキシリピンは、維持用量の上記同位体修飾多価不飽和脂質と共に投与してもよい。オキシリピンの投与量は、特定のオキシリピン化合物について認可された任意且つ適宜の量であってよい。オキシリピンと同時投与される上記同位体修飾多価不飽和脂質の量は、当該多価不飽和脂肪酸の総食事量の約0.1重量%〜40重量%の範囲であってよい。いくつかの実施形態において、オキシリピンと同時投与される上記同位体修飾多価不飽和脂質の量は、当該多価不飽和脂肪酸の総食事量に該当する量の約0.1%〜99%、0.1重量%〜90重量%、0.1重量%〜80重量%、0.1重量%〜70重量%、0.1重量%〜60重量%、0.1重量%〜50重量%、0.1重量%〜45重量%、0.1重量%〜40重量%、0.1重量%〜35重量%、0.1重量%〜30重量%、0.1重量%〜25重量%、0.1重量%〜20重量%、0.1重量%〜15重量%、01重量%〜10重量%、0.1重量%〜5重量%、又は0.1重量%〜2.5重量%の範囲であってよい。いくつかの実施形態において、オキシリピンと同時投与される上記同位体修飾多価不飽和脂質の量は、当該多価不飽和脂肪酸の総食事量の0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、12重量%、15重量%、17.5重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、又は70重量%より多くてよい。いくつかの実施形態において、オキシリピンと同時投与される上記同位体修飾多価不飽和脂質の量は、当該多価不飽和脂肪酸の総食事量の1重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、12重量%、15重量%、17.5重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、85重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%未満であってよい。
オキシリピンの量は、上記対象、同時投与される同位体修飾多価不飽和脂質の種類、及びその他の因子に応じて変化してよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンの量は医師によって推奨される量であってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンの量は、特定のオキシリピンに対して推奨される又は認可される食事日量の5%、10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、又は100%であってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンの量は、同時投与される同位体修飾多価不飽和脂質の量の1%、2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、又は300%であってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンの量は、約0.01μg、0.05μg、0.1μg、0.25μg、0.5μg、1.0μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、1.5mg、2mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、又は1gより多くてよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンの量は、0.1μg、0.25μg、0.5μg、1.0μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、1mg、1.5mg、2mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1g、1.5g、2g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10g、20g、30g、40g、50g、60g、70g、80g、90g、100g、200g、300g、400g、又は500g未満であってよい。いくつかの実施形態において、オキシリピン(例えばプロスタグランジン)の注射(例えば静脈内注射又は筋肉注射)の場合、上記オキシリピンの量は、0.1〜1000μg、0.1〜500μg、0.1〜100μg、0.1〜80μg、0.1〜50μg、0.1〜40μg、0.1〜30μg、0.1〜20μg、0.5〜40μg、1〜40μg、5〜40μg、10〜40μg、1〜30μg、5〜30μg、10〜30μg、1〜20μg、5〜20μg、100〜1000μg、100〜500μg、200〜1000μg、200〜500μg、又は250〜500μgの範囲内であってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンの量は約10〜30μgであってよい。いくつかの実施形態において、いくつかの実施形態において、一部のオキシリピン(例えばリポキシン)は、100〜1000μg、より詳細には250〜500μgで注入してもよい。いくつかの実施形態において、100mgの局所送達用のクリームは、100〜500μg、より詳細には200〜300μgのプロスタグランジンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、経口用錠剤形態中の上記オキシリピンの量は、1〜1000μg、1〜800μg、1〜500μg、1〜250μg、50〜500μg、50〜300μg、100〜500μg、又は100〜300μgであってよい。いくつかの実施形態において、経口用錠剤形態中の上記オキシリピンの量は、十二指腸潰瘍の治療用などの場合、100〜300μgであってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンがω−3の代謝産物である場合、その量はメガ−6に由来する代謝産物の1/10〜1/1000の少なさであってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンがω−3の代謝産物である場合、その量はメガ−6に由来する代謝産物の1/10〜1/1000の少なさであってよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンがω−3の代謝産物である場合、その量はω−6に由来する代謝産物の1/1〜1/1000、1/10〜1/1000、1/100〜1/1000、1/200〜1/1000、1/500〜1/1000、1/800〜1/1000、1/10〜1/500、1/10〜1/250、10〜100、又は1/50〜1/250の少なさであってよい。
上記オキシリピンは、上記同位体修飾多価不飽和脂質の投与の前に、それと同時に、又はその後に投与してもよい。いくつかの実施形態において、上記オキシリピンは、上記同位体修飾多価不飽和脂質の投与の前に投与される。上記オキシリピンは、上記同位体修飾多価不飽和脂質の投与と同時に投与される。上記オキシリピンは、上記同位体修飾多価不飽和脂質の投与の後に投与される。
いくつかの実施形態において、上記オキシリピンは、例えばヒックマン又はグローションカテーテルを介した注射によって、上記同位体修飾多価不飽和脂質と同時投与してもよい。あるいは、噴霧器を用いてオキシリピンを肺に吸入してもよい。いくつかの実施形態において、上記送達方法はカテーテルを介した皮下送達であってよい。いくつかの実施形態において、上記送達方法としては局所用クリーム剤を挙げることができる。いくつかの実施形態において、上記送達方法の剤形は、コロイドを伴う溶液、バイオポリマーマトリクス、ミセル、粉末、乳剤(例えば、従来の乳剤、複合乳剤、多層乳剤)、固体脂質粒子、充填ヒドロゲル粒子などであってよい。いくつかの実施形態において、上記送達方法の剤形は、食品用(GRAS)原料成分(例えば、脂質、タンパク質、多糖類、界面活性剤、ミネラルなど)から、種々の処理操作(例えば、混合、均質化、熱処理など)を用いて製造してもよい。いくつかの実施形態において、上記乳剤送達剤形は、賦形剤ナノ乳剤などの賦形剤乳剤であってよい。いくつかの実施形態において、上記送達方法の剤形は、脂質ベースの送達システムであってよい。いくつかの実施形態において、上記送達方法の剤形は、ベシクル、混合ミセル、及びミセルを含むコロイド系であってよい。いくつかの実施形態において、上記送達方法の剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及びバルク散剤などの、但しこれらに限定されない固体剤形を含む経口剤形であってよい。
いくつかの実施形態において、上記組成物は、同位体修飾多価不飽和脂質及び当該未修飾多価不飽和脂質の対応する酸化生成物を含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、同位体修飾n−3多価不飽和脂肪酸又はエステル、及び酸化代謝産物であるか又は未修飾n−3多価不飽和脂肪酸もしくはエステル由来のオキシリピンを含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、同位体修飾n−6多価不飽和脂肪酸又はエステル、及び酸化代謝産物であるか又は未修飾n−6多価不飽和脂肪酸もしくはエステル由来のオキシリピンを含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、同位体修飾ω−3多価不飽和脂肪酸又はエステル、並びに、酸化代謝産物であるか又は未修飾ω−3多価不飽和脂肪酸もしくはエステル由来のオキシリピンを含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、同位体修飾ω−6多価不飽和脂肪酸又はエステル、並びに、酸化代謝産物であるか又は未修飾ω−6多価不飽和脂肪酸もしくはエステル由来のオキシリピンを含む。
いくつかの実施形態は、対象における同位体修飾多価不飽和脂質の副作用の防止又は改善方法であって、上記同位体修飾多価不飽和脂質とプロスタノイドとを上記対象に同時投与することを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態は、対象における同位体修飾多価不飽和脂質の副作用の防止又は改善方法であって、有効量のプロスタノイドを上記対象に投与することを含む上記方法に関する。
いくつかの実施形態は、対象における、シクロオキシゲナーゼが関与する代謝経路に対する破壊の逆転、防止、又は低減方法であって、有効量のプロスタノイドを上記対象に投与することを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態は、対象における、シクロオキシゲナーゼが関与する代謝経路に対する破壊の逆転、防止、又は低減方法であって、上記同位体修飾多価不飽和脂質及びプロスタノイドを上記対象に同時投与することを含む上記方法に関する。
いくつかの実施形態は、対象における、シクロオキシゲナーゼが関与する酵素過程に対する阻害の逆転、防止、又は低減方法であって、有効量のプロスタノイドを上記対象に投与することを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態は、対象における、シクロオキシゲナーゼが関与する代謝経路に対する破壊の逆転、防止、又は低減方法であって、上記同位体修飾多価不飽和脂質及びプロスタノイドを上記対象に投与することを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態は、対象における、シクロオキシゲナーゼが関与する酵素過程に対する阻害の逆転、防止、又は低減方法であって、上記同位体修飾多価不飽和脂質及びプロスタノイドを上記対象に同時投与することを含む上記方法に関する。
いくつかの実施形態は、対象におけるシクロオキシゲナーゼ活性の増強又は維持方法であって、有効量のプロスタノイドを上記対象に投与することを含む上記方法に関する。いくつかの実施形態は、対象におけるシクロオキシゲナーゼ活性の増強又は維持方法であって、上記同位体修飾多価不飽和脂質及びプロスタノイドを上記対象に同時投与することを含む上記方法に関する。
いくつかの実施形態において、上記対象は同位体修飾多価不飽和脂質の投与を受けている。いくつかの実施形態において、上記対象は体内に導入された同位体修飾多価不飽和脂質を有する。
いくつかの実施形態において、上記プロスタノイドはプロスタグランジンである。いくつかの実施形態において、上記プロスタグランジンは、プロスタグランジンI2(PGI2)、プロスタグランジンE2(PGE2)、又はプロスタグランジンF2α(PGF2α)である。いくつかの実施形態において、上記プロスタノイドはトロンボキサンである。いくつかの実施形態において、上記プロスタノイドはプロスタサイクリンである。いくつかの実施形態において、上記プロスタノイドは、5−、11−、12−、又は15−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(HETE、DIHETE)である。いくつかの実施形態において、上記プロスタノイドはヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸である。いくつかの実施形態において、上記プロスタノイドはロイコトリエンである。
いくつかの実施形態において、上記対象は、0.001g、0.005g、0.01g、0.05g、0.1g、0.2g、0.5g、0.6g、1g、2g、3g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10g、12g、15g、17.5g、20g、25g、30g、35g、40g、50g、60g、70gを超える上記同位体修飾多価不飽和脂質を摂取している。いくつかの実施形態において、上記対象は、少なくとも1日、3日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、又は2ヶ月間、上記同位体修飾多価不飽和脂質の投与を受けている。
本明細書における「同位体修飾多価不飽和脂質」への言及は、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸チオエステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸アミド、同位体修飾多価不飽和脂肪酸模倣体、及び同位体修飾多価不飽和脂肪酸プロドラッグを含むが限定されない、本明細書に記載の全ての同位体修飾化合物を包含すると理解されるべきものである。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は同位体修飾多価不飽和脂肪酸である。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は同位体修飾多価不飽和脂肪酸チオエステルである。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は同位体修飾多価不飽和脂肪酸アミドである。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は同位体修飾多価不飽和脂肪酸模倣体である。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は同位体修飾多価不飽和脂肪酸プロドラッグである。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は、1以上の位置で重水素化されたアラキドン酸である。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質はD6−アラキドン酸である。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は13,13−D2−アラキドン酸である。いくつかの実施形態において、上記同位体修飾多価不飽和脂質は、7,7−D2−アラキドン酸、10,10−D2−アラキドン酸、7,10−D2−アラキドン酸、7,13−D2−アラキドン酸、7,10,13−D6−アラキドン酸である。
磁気共鳴画像法を用いる方法
スーパーオキシド及び一酸化窒素などのフリーラジカルは不対電子を有し、それにより本質的に常磁性となり、したがって1/T1磁気共鳴画像法(MRI)によって検出可能である。一部の対象となる神経細胞は、正常な機能の一部として又は酸化ストレスの際のいずれかで、フリーラジカルを連続的に産生する。この定常的なフリーラジカルの流れは、1/T1 MRIで検出可能な、内因性の、擬似定数的な、且つ高度に局在化した常磁性緩和機構を生む可能性が高い。1/T1シグナルに対するフリーラジカルの寄与を確認するために、クエンチ条件の非存在下及び存在下でデータを収集する。このクエンチ支援(quench assisted)MRI手法は、多くの抗酸化剤が血液脳/網膜関門を容易に通過し、ヒトにおける安全な使用に関して食品医薬品局による認可を受けている、という点で有利である。
上記同位体修飾多価不飽和脂質(例えば、重水素化多価不飽和脂肪酸)治療の有効性は、患者において、造影剤を用いない可変磁気共鳴画像法(MRI)に基づく技法を用いて、D−PUFAに誘導される神経細胞の酸化ストレスの減少を通してモニターすることができる。いくつかの実施形態において、この技法は縦緩和時間(減衰定数)T1の測定に基づく。いくつかの実施形態において、通常よりも大きい1/T1パラメータは酸化ストレスの増加を示すこととなる一方、1/T1の減少は、連続的に生成する常磁性フリーラジカルレベルの軽減又は低減における上記同位体修飾多価不飽和脂質の有効性を示す場合があり、これは、確認クエンチを用いない及び確認クエンチを用いた(クエンチ支援MRI)高分解能(22μmの軸方向分解能)1/T1磁気共鳴画像法(MRI)を使用して、イン・ビボで測定することができる。上記クエンチ支援MRIは、イン・ビボでの正常な及び病的なフリーラジカルの生成を評価するための層分解能及び検出感度を有する。
いくつかの実施形態は、同位体修飾多価不飽和脂質治療を受けた後の患者に対して可変磁気共鳴法を実施して、上記患者の治療後の神経細胞の酸化ストレスを測定することを含む方法に関する。
いくつかの実施形態は、患者における酸化ストレスの変化のモニター方法であって、同位体修飾多価不飽和脂質治療を受けた後の上記患者に対して可変磁気共鳴法を実施して、上記患者の治療後の神経細胞の酸化ストレスを測定することと、D−PUFA治療の前の上記患者に対して可変磁気共鳴法を実施して、上記患者の神経細胞の酸化ストレスの最初の測定値を得ることと、上記神経細胞の酸化ストレスの減少を上記治療の有効性と相関させることとを含む上記方法に関する。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、D−PUFA治療の前の上記患者に可変磁気共鳴法を実施して、上記患者の神経細胞の酸化ストレスの最初の測定値を得ることを更に含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、神経細胞の酸化ストレスの最初の測定値を酸化ストレスの治療後の測定値と比較して、上記同位体修飾多価不飽和脂質治療の有効性を判定することを更に含む。
いくつかの実施形態において、上記治療に使用される上記同位体修飾多価不飽和脂質は、同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾多価不飽和脂肪酸アミド、同位体修飾多価不飽和脂肪酸チオエステル、又は同位体修飾多価不飽和脂肪酸プロドラッグである。
いくつかの実施形態において、上記神経細胞の酸化ストレスは、縦緩和時間(減衰定数)T1を測定することによって判定される。いくつかの実施形態において、上記MRIによって測定される1/T1の増加は酸化ストレスの増加と相関する。いくつかの実施形態において、1/T1の減少は酸化ストレスの減少と相関する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記治療の前に測定した1/T1と治療後に測定した1/T1とを比較して、酸化ストレスの変化を判定することを更に含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記MRI測定によって酸化ストレスの減少が検出された場合に、上記治療を継続することを更に含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記MRI測定によって酸化ストレスの増加又は変化がないことが検出された場合に、上記同位体修飾多価不飽和脂質の量を増加させることを更に含む。
いくつかの実施形態において、上記連続的に生成する常磁性フリーラジカルの量は、確認クエンチを用いない及び/又は確認クエンチを用いた(クエンチ支援MRI)可変磁気共鳴画像法(MRI)(例えば1/T1)を使用してイン・ビボで測定することができる。いくつかの実施形態において、上記クエンチ支援MRIは、イン・ビボでの正常な及び病的なフリーラジカルの生成を評価するのに十分な層分解能及び検出感度を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、クエンチ支援磁気共鳴分析を用いて、上記治療後にイン・ビボでのフリーラジカルの量を測定することを更に含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記患者の脳に対して可変磁気共鳴法を実施することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記患者の網膜に対して可変磁気共鳴法を実施することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、上記患者の眼に対して可変磁気共鳴法を実施することを含む。いくつかの実施形態において、上記患者の脳切片中の1/T1が測定される。いくつかの実施形態において、上記患者の脳切片のフリーラジカルの量が測定される。MRI測定法の例は、Bruce A. Berkowitz;et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science (December 2015) Vol. 56;No. 13, pp. 7931-38及びBruce A. Berkowitz;et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science (February 2016), Vol. 57, No. 2, pp. 577-85に記載され、上記文献はこの目的に対してそれらの全体が援用される。
実験的研究によって、抗酸化剤による方法が、AD(アルツハイマー病)モデルにおいて神経細胞を防御することが明らかになっているが、ADの治療又は予防のための抗酸化剤を用いたほとんど全ての治験は一貫して否定的である。ADの病因、又はD−PUFA治療の臨床的可能性における酸化ストレス及びLPOは重要である。抗酸化剤による介入の無効性を主張する研究は、治療レジメン及び試験期間の変動、治療薬のモニタリングの欠如、薬物治療によって生じる酸化ストレスの低下のモニタリングの欠如、ならびに抗酸化剤の選択及び投与量の問題を抱えている。例えば、ある条件下では、親油性連鎖停止抗酸化剤であるビタミンEは酸化促進剤としても作用する場合があり、そのようにしてLPOを増加させる働きをする。LPOにおける酵素的過程であるか非酵素的過程であるか、ならびに二電子過程であるか一電子過程であるかの相対的な重要性も考慮する必要がある。D−PUFAによる非酵素的LPOの特異的阻害は、LPOにより誘発される損傷が関与する多くの病状において有益であり、且つこのLPO減少の機序は、LPOの一般的な抗酸化剤による阻害又は酵素的阻害よりも優れている可能性が高いことが判明する場合がある。DPUFA自体は抗酸化剤ではなく、DPUFAはROSをクエンチしないだけでなく、細胞の酸化還元状態又は抗酸化剤−ROS比にも影響を及ぼさず、したがって通常のROS媒介シグナル伝達経路は無傷のままである。ALDH2の阻害又は欠失によりHNE及び反応性アルデヒドに誘導される損傷に対する脆弱性が増大する一方、ALDH2の発現又は活性化の増大が防御効果を与えるという多くの研究によって、抗酸化剤による防御に対するALDH2の関連性及び重要性が示唆される。
ALDH2は多数の脳領域において発現され、その発現/活性は、AD患者の脳の側頭皮質及び被殻、ならびにPD(パーキンソン病)患者の脳の被殻においても増加し、これはAD及びPDに関連するLPOの増加に対する防御反応を示唆する。更に、いくつかの疫学的研究において、ALDH2のGlu504Lys機能欠失型変異を有する個体においてADの危険性が増加することが報告されている。一部の研究においては、上記Glu504Lys ALDH2多型は、特定のがんの発生率の増加、統合失調症の発症及びPDの発症の危険性の増加とも関連している。但し、他の研究ではこれらの関連性はない。Aldh1A1/Aldh2ダブルノックアウトマウスにおいて、毒性のあるドーパミン代謝物である3,4−ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒドの線条体中の濃度の上昇が見られる。これらのマウスは加齢に伴う運動能力不全を示し、PDの動物モデルであることが示唆されており、PDはLPO及びHNEタンパク質付加体の形成の増加も伴う。
若年性家族性ADに繋がるヒト変異型遺伝子の過剰発現に依存するADの多数のトランスジェニックマウスモデルに対する、代替的且つ相補的なモデルとしてのAldh2−/−マウスの開発。Aldh2−/−マウスならびにAPP/PS1及び3xTgトランスジェニックマウスにおいて、NMZ(4−メチル−5−(2−(ニトロオキシ)エチル)チアゾール−3−イウムクロリド);4−アミノ酪酸様活性とNO/cGMP/CREBシグナル伝達の増加との組み合わせによってシナプス不全を標的とする神経保護剤)が記憶を改善することができる。上記Aldh2−/−マウスは、加齢に伴ういくつかの海馬依存性記憶課題の成績の低下、ならびにアミロイドb(Ab)、リン酸化タウタンパク質、CREBシグナル伝達不全、シナプス減少、及びいくつかの血管病変の増加を含む多くのAD様病理学的変化を特徴とする。
D−PUFA強化食の有効性の指標として、行動反応の変化を用いることができる。DPUFAが示す認知能力の改善は、野生型マウスと比較した、Aldh2−/−マウスの海馬の背側CA1領域におけるフリーラジカル生成の増加を示したクエンチ支援MRIを用いて(及びLPOの増加の延長によって)モニターすることもできる。げっ歯動物では、この海馬サブフィールドは空間記憶の符号化(MWM課題などの行動試験によって評価することができる)と関連し、したがってAldh2−/−マウスが示す空間参照記憶障害におけるLPOの役割の考え方、更には、D−PUFA処置によるその改善とも整合する。
実施例1
同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾脂肪酸チオエステル、同位体修飾脂肪酸アミド、同位体修飾脂肪酸模倣体、又は同位体修飾脂肪酸プロドラッグなどの同位体修飾化合物を含有する医薬製剤又は栄養学的製剤を調製する。同位体未修飾の多価不飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸チオエステル、脂肪酸アミド、脂肪酸模倣体、及び/又は脂肪酸プロドラッグなどの更なる成分を上記組成物に添加してもよい。
ALDH活性障害がある及び正常なALDH機能をもつ成人のボランティア(26〜48歳の男性及び女性の両方のボランティア)を選別し、1杯のアルコール飲料を与える。各ボランティアのALDH機能を遺伝子型決定により判定する。ALDH2遺伝子の遺伝子型は、Takeshita, T., et al. (1994) Hum. Genet. 94, 217-223に既報のものに軽微な改変を行ったミスマッチPCR−RFLP法によって判定する。簡単に説明すると、5ngのDNAを、以下のプライマー、すなわち、センスプライマー:59−TTACAGGGTCAACTGCTATG−39、及びアンチセンスプライマー:59−CCACACTCACAGTTTTCTCTT−39を含む15mlのPCR混合物中で増幅し、ALDH2遺伝子のエクソン12を含む131bpのDNAフラグメントを増幅する。上記PCR産物を、100mg/mlのウシ血清アルブミン及び製造元(New England Biolab, Beverly, MA)により提供される反応緩衝液中の1.5単位のEarIで消化する。消化したDNAを2.5%アガロースによる電気泳動により分離する。通常のALDH2*1対立遺伝子は108及び23bpを示し、変異型ALDH2*2対立遺伝子は131bpを示す。未消化パターンを示す試料は、2単位のEarIを用いた消化によって繰り返し遺伝子型決定して、遺伝子型を確認する。変異型ALDH遺伝子をもつボランティアを2群に分け、一方の群(治療群)には、D2−LA、D4−ALA、又はD2−LAとD4−ALAの両方の1:1の組み合わせなどの同位体修飾化合物を含有する組成物を投与し、もう一方の群(陽性対照群)には、LA、ALA、及びLAとALAの両方の1:1の組み合わせなどの同位体未修飾化合物を含有する組成物を投与する。野生型ALDH遺伝子をもつボランティアを陰性群に割り当てる。
3群全てのボランティアに、アルコールとして用いた、12.5%のエタノールを含有する400mlの赤ワインを与える。この量は50グラムのエタノールと正確に同一である。赤ワインは実験開始から最初の30分の間に投与する。
3群全てのボランティアについて、以下の時点、すなわち、アルコール投与の前(0)、ならびにアルコール投与の30分後、60分後、90分後、6時間後、12時間後、及び24時間後に血液試料を採取する。同位体修飾化合物を含有する組成物を投与する。エタノール測定用に、全血をヘパリン被覆管中、4℃で保存する。アセトアルデヒド測定用には、血液試料を直ちにヘパリン被覆管により1500rpm×10分間遠心分離し、血清を−50℃で凍結する。エタノール及びアセトアルデヒドを測定し、r検定により結果の統計学的解析を行う。上記アルコールの投与の30分後、60分後、90分後、6時間後、12時間後、及び24時間後の時点で、治療群は陽性対照群と比較して低い血中アセトアルデヒドレベル、及び陰性対照群と同程度の血中アルデヒドレベルを示す。
実施例2
同位体修飾多価不飽和脂肪酸、同位体修飾多価不飽和脂肪酸エステル、同位体修飾脂肪酸チオエステル、同位体修飾脂肪酸アミド、同位体修飾脂肪酸模倣体、又は同位体修飾脂肪酸プロドラッグなどの同位体修飾化合物を含有する医薬製剤又は栄養学的製剤を調製する。同位体未修飾の多価不飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸チオエステル、脂肪酸アミド、脂肪酸模倣体、及び/又は脂肪酸プロドラッグなどの更なる成分を上記組成物に添加してもよい。
ALDH活性障害がある及び正常なALDH機能をもつ成人のボランティア(26〜48歳の男性及び女性の両方のボランティア)を選別する。各ボランティアのALDH機能を遺伝子型決定により判定する。ALDH2遺伝子の遺伝子型は、Takeshita, T., et al. (1994) Hum. Genet. 94, 217-223に既報のものに軽微な改変を行ったミスマッチPCR−RFLP法によって判定する。簡単に説明すると、5ngのDNAを、以下のプライマー、すなわち、センスプライマー:59−TTACAGGGTCAACTGCTATG−39、及びアンチセンスプライマー:59−CCACACTCACAGTTTTCTCTT−39を含む15mlのPCR混合物中で増幅し、ALDH2遺伝子のエクソン12を含む131bpのDNAフラグメントを増幅する。上記PCR産物を、100mg/mlのウシ血清アルブミン及び製造元(New England Biolab,Beverly,MA)により提供される反応緩衝液中の1.5単位のEarIで消化する。消化したDNAを2.5%アガロースによる電気泳動により分離し、通常のALDH2*1対立遺伝子は108及び23bpを示し、変異型ALDH2*2対立遺伝子は131bpを示す。未消化パターンを示す試料は、2単位のEarIを用いた消化によって繰り返し遺伝子型決定して、遺伝子型を確認する。変異型ALDH遺伝子をもつボランティアを2群に分け、一方の群(治療群)には、D2−LA、D4−ALA、又はD2−LAとD4−ALAの両方の1:1の組み合わせなどの同位体修飾化合物を含有する組成物を投与し、もう一方の群(陽性対照群)には、LA、ALA、及びLAとALAの両方の1:1の組み合わせなどの同位体未修飾化合物を含有する組成物を投与する。いずれの場合も、アルコール投与前の1ヶ月間、毎日10gの化合物を投与する。野生型ALDH遺伝子をもつボランティアを陰性群に割り当てる。
3群全てのボランティアについて、以下の時点、すなわち、アルコール投与の前(0)、ならびにアルコール投与の30分後、60分後、90分後、6時間後、12時間後、及び24時間後に血液試料を採取する。アルデヒド化合物の測定用に、血液試料を直ちにヘパリン被覆管により1500rpm×10分間遠心分離し、血清を−50℃で凍結する。HNE、HHE、MDA、アクリル酸、メチルグリオキサール、シュウ酸などのアセトアルデヒド化合物を測定し、r検定により結果の統計学的解析を行う。治療群は、30分、60分、90分、6時間、12時間、及び24時間の時点で、陽性対照群と比較して低い血中アルデヒド化合物レベル、及び陰性対照群に匹敵する血中アルデヒドのレベルを示す。
実施例3
ALDH2*2東アジア人において観測されたアルコール代謝における欠陥、アルコールに誘導される病理学、及びアセトアルデヒドに対する過敏性の多くの徴候は、ALDH2ノックアウト(ALDH2−/−と表される)マウスモデルにおいて再現することができる。ALDH2−/−マウスにおいては、虚血再灌流障害に対する顕著な感受性及びアルデヒド付加物の蓄積も実証される。ALDH2遺伝子内のネオマイシン耐性マーカーでタグ付けした2種の独立したALDH2ノックアウト対立遺伝子をC57BL/6マウスゲノムに導入し、上記遺伝子機能を破壊した。ウエスタンブロット分析により、ホモ接合ALDH2−/−マウスにおいて、免疫反応性ALDH2タンパク質が産生されなかったことが確認された。ALDH2ノックアウトマウスは、ALDH2機能の完全な欠如に起因する生理学、表現型、及び病理学を調査するための有用な研究手段を提供した。但し、これらのマウスは、ヒトにおけるALDH2*2対立遺伝子が残留酵素活性を保有することから、ヒトALDH2*2集団の表現型を完全には反映しない可能性がある。最も影響を受けるヒト集団を代表するALDH2−/−、ALDH2+/−、及びALDH2*1/*2の遺伝子型の間に微妙な生物学的差異が存在し得ると考えられる。最近、Yu et al. (Yu HS, et al., Characteristics of aldehyde dehydrogenase 2 (Aldh2) knockout mice. Toxicol Mech Methods 19: 535-540, 2009)によって、ALDH2ノックアウトマウスに関する包括的な総説が発表されている。
10週齢のALDH2ノックアウトマウス及び野生型マウスを用いて、本明細書に開示の化合物又は組成物の有効性を判定する。上記ALDHノックアウトマウス及び野生型マウスを、積極的治療群(ALDHノックアウトマウスに同位体修飾成分を投与)、陽性対照(ALDHノックアウトマウスに同位体未修飾成分を投与)、及び陰性群(野生型マウスに同位体未修飾成分を投与)に分け、各群は8頭のマウスから構成される。全ての群に非致死量の、体重の0.1%を構成する20%エタノール溶液を投与し、該溶液は腹腔内注射によって投与する。エタノール投与後、3つの時点、すなわち、エタノール投与後30分の時点0、エタノール投与の1時間後の時点1、及びエタノール投与の2時間後の時点3でエタノールレベルを収集する。治療群には、重水素化多価不飽和脂肪酸などの同位体修飾化合物(0.01、0.1、1.0、10.0、及び100mg/kgのD2−LA、D4−ALA、ならびにD2−LAとD4−ALAの両方の1:1の組み合わせ)を含有する組成物も摂取させる。対照群には同一の時点で、未重水素化多価不飽和脂質(0.01、0.1、1.0、10.0、及び100mg/kgのLA、ALA、及びLAとALAの両方の1:1の組み合わせ)摂取させる。上記同位体修飾組成物又は未修飾組成物の投与の前には、対照群と処置群との間に統計的に有意な差は観測されなかった。上記同位体修飾組成物の投与の30分後又は1時間後(すなわち上記エタノールの投与の1時間後)に、血中エタノールレベル及びアセトアルデヒドレベルを測定する。これらの結果は、治療群におけるアルデヒドレベルは、陽性対照群と比較した場合に有意に減少することを示す。これらの結果はまた、治療群におけるアルデヒドレベルは、陽性対照群と比較した場合に同等であることも示す。
実施例4
ALDH2ノックアウトマウス及び野生型マウスを用いて、本明細書に開示の化合物又は組成物の有効性を判定した。治療群に重水素化多価不飽和脂肪酸などの同位体修飾化合物を毎日投与した。これらのマウスに与えた食餌は、10%の脂肪を含有する組成物をベースとしたものであり、上記脂肪の65%が飽和脂肪(ヤシ油101(水素化))であり;25%がオレイン酸エチル(1価の不飽和)であり;残余の10%が、通常の水素化リノール酸エチルエステルとリノレン酸エチルエステルとの1:1(すなわちそれぞれが5%)の混合物(対照食餌)であるか、又は11,11−D2−リノール酸エチルエステルと11,11,14,14−D4−リノレン酸エチルエステルとの1:1(すなわちそれぞれが5%)の混合物(D食餌)であるかのいずれかであった。
通常の食餌の6月齢の野生型又はAldh2−/−マウスに対してモリス水迷路実験を実施した。(A)逃避台を見える位置とした3日間の試験区(4回の試験/日)、及びそれに続く逃避台を見えない位置とした5日間の試験区(6回の試験/日)において、逃避に要する時間(見えない位置の逃避台に到達するまでの時間)を測定した。9日目はプローブ試験であり、該試験において、目標の区画内で費やした時間(B)及び逃避台があった区画への移動の回数(C)を測定した(試験の合計時間:60秒)。これらの結果は、野生型群とALDH2−/−群との間で、野生型群のマウスは、水迷路において、逃避台を見つけるのに要する時間がより良好であり、目標の区画で費やす時間がより短く、逃避台があった区画への移動の回数がより少ないことを示した。Aldh2−/−マウス群は野生型群と比較した場合、記憶の減退を示した。野生型群及びAldh2−/−群のモリス水迷路試験の結果の詳細はD’Souza et al. Molecular Brain (2015) 8:27に記載され、該文献はこの目的に対してその全体が参照により援用される。
D−PUFAの添加はこの記憶減退を劇的に軽減する。Aldh2−/−マウスは、2ヶ月の時点でD−PUFA又はH−PUFA食を開始し、2週間又は10週間後にモリス水迷路試験を実施した。図1のAはD−PUFAを給餌した群及びH−PUFAを給餌した群のAldh2−/−マウスに関する逃避台に到達するまでの時間を示す図であり、図1のBは、D−PUFAを給餌した群及びH−PUFAを給餌した群のAldh2−/−マウスに関する4等分した各区画のうちの目標の区画にいる時間を示す図であり、図1のCは、D−PUFAを給餌した群及びH−PUFAを給餌した群のAldh2−/−マウスによる区画間の移動の回数を示す図である。上記H−PUFAコホートにおける進行性の成績の低下が観測され、上記D−PUFAコホートにおける成績の顕著な向上も認められた。
実施例5
6月齢の野生型又はAldh2−/−のオス/メスマウスに対し、3ヶ月目から月に1回新規物体認知(NOR)課題を実施した。各物体に費やされた時間を測定し、既知物体に費やされた時間に対する新規物体に費やされた時間の比(上)及び識別指数(DI、新規物体及び既知物体を探索する時間の差を、両者を探索するのに費やされた合計時間で除した値)(下)を計算した。DI=0の場合、マウスは物体が新規であるか又は既知であるかを思い出すことができない。(野生型n=18、Aldh2−/− n=17)、2元配置分散分析によって解析。通常食を給餌した野生群のマウスと通常食を給餌したAldh2−/−群のマウスとでは、野生型群の方が、より高い当該のマウスによって認知された既知物体に対する新規物体の比を示し、より高い識別指数も示した。全体としては、上記ALDHノックアウトマウスは、野生型マウスと比較した場合に、低い新規物体/既知物体認知を示した。野生型群及びAldh2−/−群の新規物体認知及び識別指数の詳細はD’Souza et al. Molecular Brain (2015) 8:27に記載され、該文献はこの目的に対してその全体が参照により援用される。
D−PUFAの添加は、新規物体/既知物体認知における上記の差を劇的に増大させた。Aldh2−/−マウスは、2ヶ月の時点でD−PUFA(例えば、D2−LA、D4−ALA、もしくはD2−LAとD4−ALAの両方の1:1の組み合わせ)又はH−PUFA食を開始し、2週間又は10週間後にNOR課題を実施した。結果を図2に示す。図2のAは、D−PUFAを給餌した群及びH−PUFAを給餌した群のAldh2−/−マウスが認知した既知物体に対する新規物体の比を示し、図2のBは、D−PUFAを給餌した群及びH−PUFAを給餌した群のAldh2−/−マウスの識別指数を示す。図2において、非修飾食餌(例えばH−PUFA)を給餌したマウスは、同位体修飾食餌(例えばD−PUFA)を給餌したマウスと比較した場合、低い新規物質/既知物質認知を示した。H−PUFA食を給餌したマウスと比較して、D−PUFA食を給餌したマウスの成績の向上が認められた。(D−PUFA n=16、H−PUFA n=16)。(対応のないt検定によって解析)。
実施例6
6月齢の野生型又はAldh2−/−マウスにおけるY字迷路課題を実施して、上記マウスの年齢依存的な進行性の減退を試験した。オス及びメスのマウスをY字迷路課題に供し、自発的交替行動の割合を測定した。データは平均値±標準偏差(野生型n=18、Aldh2−/− n=17)として示し、2元配置分散分析によって解析した。4D:Aldh2ヌルマウスは、2月齢の時点でD−PUFA(例えば、D2−LA、D4−ALA、もしくはD2−LAとD4−ALAの両方の1:1の組み合わせ)又はH−PUFA食を開始し、2週間、10週間、又は18週間後にY字迷路課題を実施した。通常食を給餌した野生群及び通常食を給餌したAldh2−/−群のマウスの場合、Aldh2−/−マウスは野生型同腹仔と比較して、両方の記憶課題において進行性の成績の低下を示した。野生型群及びAldh2−/−群のY字迷路試験の詳細はD’Souza et al. Molecular Brain (2015) 8:27に記載され、該文献はこの目的に対してその全体が参照により援用される。図3は、D−PUFAを給餌し、18週後には通常食を給餌したAldh2−/−マウスの群の結果を示す。これらの結果は、D−PUFA食を給餌したマウスがH−PUFA食を給餌したマウスと比較して成績が向上したことを示した。(D−PUFA n=16、H−PUFA n=16)。対応のないt検定によってデータを解析。
実施例7
シクロオキシゲナーゼ(COX)の酵素活性に対する高レベルの同位体修飾多価不飽和脂質(例えばビスアリル位に重水素をもつアラキドン酸)の効果をイン・ビトロで試験した。COX1活性はイン・ビトロでの酸素消費量(クラーク電極)によって測定した。図4のAは、種々の重水素化アラキドン酸を細胞に添加したときのCOX1酵素活性の変化を示す。図4のBは被験重水素化アラキドン酸の構造を示す。重水素修飾していないアラキドン酸を対照として用いた。図4に示すように、13,13−D2−アラキドン酸が、他の種類の重水素化アラキドン酸と比較して、COX1の活性を低下させる効果が最も高かった。
実施例8
パーキンソン病の遺伝的及び毒素(例えばアルコール)誘発性動物モデルを用いて、D−PUFAの効果を検討する。H−PUFAを給餌した群において、歩幅が短くなり、パーキンソン病の徴候である歩行パターンの変化を検討する。動物モデルにおけるロータロッドの成績での進行性の加齢に伴う障害を検討する。治療群及び対照群における線条体ドーパミン及び代謝産物に対する年齢ならびに遺伝子型の影響も測定する。これらの結果は、D−PUFAが、H−PUFAを給餌した群と比較した場合、疾患パターンの向上、治療、及び改善に有効である場合があることを示す。
実施例9
動物モデルに同位体修飾多価不飽和脂質(例えば、ビスアリル位に重水素をもつアラキドン酸)を投与し、COX酵素活性に関与するその対応する代謝産物(例えば、同位体修飾のないプロスタグランジン)をモニターする。一方の対照群に同位体修飾多価不飽和脂質のみを給餌し、もう一方の対照群には未修飾多価不飽和脂質のみを給餌する。これらの結果は、上記同位体修飾多価不飽和脂質とその対応するCOX酵素代謝産物との同時投与が、同位体修飾多価不飽和脂質によって生じるシクロオキシゲナーゼ(例えばCOX1)が関与する代謝経路に対する破壊の逆転、防止、又は低減に有効な場合があることを示す。
実施例10
MRIを用い、上記同位体修飾多価不飽和脂質による治療の前後で、動物モデルの網膜における酸化ストレスの変化を測定する。全ての群において、MRI実験の直前に動物をウレタンで麻酔する。成体を1%アトロピンで局所処置して露光中の散瞳を確保し、続いて3.5%リドカインゲルで局所処置して眼球運動を引き起こす可能性がある感覚を低下させ、且つ眼球表面を湿潤状態に維持する。高解像度1/T1データ(詳細は後述)を、左眼を中心に合わせた受信専用表面コイル(1.0cm径)を使用して7Tシステム(ClinScan;Bruker Corporation、Billerica,MA,USA)上で取得する。各1/T1データセットの収集に15分を要する。1/T1データは、最初は暗所で、次いで13分及び29分の時点(データ取得の中間点)で点灯後に収集した。網膜部分飽和T1データを7T Bruker ClinScanシステム上で、デュアルコイルモードを使用して取得し、いくつかのシングルスピンエコー(エコーまでの時間[TE]13ms、7 37mm2、マトリクスサイズ1603320、スライス厚600lm、平面解像度21.9lm)の画像を取得する。換言すれば、より短いTRにおける信号/雑音比の低下を補償するために、TRが小さくなるにつれて漸進的により多くの画像を収集する。MRI測定の間、動物は対照マウスと実験マウスとの間で交互の順序で試験する。
各成体動物において、上記散瞳はMRIデータ上の虹彩位置に基づく。網膜中心部(視神経中心から61mm)の1/T1 MRIデータを解析する。同一のTRで単一の画像を取得し、最初に位置合わせを行い(剛体)、次いで平均する。次にこれらの平均した画像をTR間で相互に位置合わせする。3パラメータT1式
式中、a、b、及びcはフィッティングを行ったパラメータである)にピクセル単位でフィッティングを行うことで1/T1マップを計算することによって、網膜中心部の対象領域を解析する。逆数(1/T1)値は常磁性フリーラジカルレベルを直接反映する。中心部の網膜内1/T1プロファイルを他の文献に詳述されているようにして得る。網膜上部から下部までの網膜全体にわたるプロファイルを平均する。
光干渉断層撮影(OCT)画像との相互位置合わせによって得られる解剖学的確認により、イン・ビボでのいくつかの桿体細胞のコンパートメント特異的機能の測定を可能にする、軸方向分解能が22μmであるMRIを得る。異なるクエンチ機序で作用する臨床的に意義のある抗酸化剤の組み合わせ、すなわち、メチレンブルー(MB、ミトコンドリアによるスーパーオキシド生成を効果的に阻害する代替電子輸送体(alternative electron transporter))及び−リポ酸(LPA、強力なフリーラジカル捕捉剤)を使用し、2種の確立された、酸化ストレスに基づく網膜症のモデルにおいて、クエンチ支援MRIを試験する。測定感度を評価するために、健常な光受容体及びRPEも試験する。測定する1つの位置は網膜中のミトコンドリアの約75%であり、測定する別の位置は脳内である。本検討のこの部分におけるクエンチ条件状態は光である。光の下では、桿体細胞のイオンチャネルが閉じ、したがって相当する量のATPに対する必要性がなくなり、フリーラジカルの生成が暗所の場合と比較して大幅に減少する。桿体細胞とは対照的に、錐体細胞は光によって飽和せず、光の下で高レベルのフリーラジカルを生成し続けると予想される。
治療前及び治療後の動物モデルの脳における酸化ストレスの変化も、上記の手法を用いて測定することができる。上記試験結果は、網膜における酸化ストレスの低減における同位体修飾多価不飽和脂質による治療の有効性を実証することができる。
実施例11
スターガルト病、家族性黄斑変性症、及びレーバー先天性黒内障などの酸化性網膜疾患の遺伝的及び毒素(例えば、アルコール又は他の環境ストレス因子)誘発性動物モデルを用いて、D−PUFAの効果を検討する。レチノールデヒドロゲナーゼ遺伝子(例えば、RDH11、RDH12、ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH2、及びAKR1b1)のヌル変異又は欠失があるマウスの創出及び表現型のキャラクタリゼーションを実施し、これらのマウスを、レチノールデヒドロゲナーゼの変異又は欠失に関連する酸化性網膜疾患に対するD−PUFAの効果のイン・ビボスクリーニングに用いることができる。眼におけるコレステロール、膜脂質、及び/又はレチノール蓄積のレベルを測定し、上記疾患の重篤度の変化と相関させる。これらの結果は、H−PUFAを給餌した群と比較した場合に、D−PUFAを用いて、上記疾患のパターンを治療する、改善する、又は向上させることができることを示す。
実施例12
D−PUFAの組織中への取り込みを検討した。Aldh2
−/−マウスを、重水素強化D−PUFA又は対照H−PUFAのいずれかを含有する食餌で処置した(上記食餌の組成については表を参照のこと)。西洋型の食餌の給餌の18週間後の本検討の終了時に、上記マウスの脳切片中の重水素含有量を測定することによって、D−PUFAが効率的に取り込まれていたことが確認された。上記D−PUFA(33342±3223%
0)群と上記H−PUFA(−140.7±12.5%
0;P<0.001)群との間の差は、約35%のD−PUFAの取り込み(すなわち、全PUFAのD−PUFA分率)に相当する。約10〜20%でLPOを停止させるのに十分であることから、このレベルのD−PUFA置換は生物学的に意味があった。
実施例13
脂質過酸化生成物を低減するD−PUFAの効果を検討した。酸化ストレスがADの発症において重要な因子と考えられたことから、また他のモデルにおいて、D−PUFAがLPO生成物を低減することが明らかになっていたことから、D−PUFAによる処置もLPOを低減するかどうかも、孤発性ADのAldh2−/−マウスモデルにおいて検討した。D−PUFAによる処置は、皮質及び海馬の両方においてエステル化F2−IsoPを約55%、プロスタグランジンF2a(PGF2a)レベルを20〜25%、顕著に低減し(図5)、これらのことは、D−PUFAがAldh2−/−マウスにおいて脳のLPO生成物を効果的に低減することを示す。図5は、D−PUFA食を給餌したAldh2−/−マウスの皮質及び海馬においてF2−IsoP(A)及びPGF2a(B)が減少したことを示す。D−PUFA又はH−PUFA食のいずれかの開始後18週間で、皮質又は海馬のホモジネートを結合したF2−IsoP又はPGF2aに関して分析した。データは平均値±標準偏差(n=6〜8)として示し、対応のないデータに関するスチューデントのt検定によって解析した。
実施例14
Aldh2−/−マウスにおける認知障害及び不安様行動を予防するD−PUFAの効果を検討した。3種の広く使用され受け入れられている空間記憶及び作業記憶の試験を用いて、Aldh2−/−マウスにおける記憶障害に対するD−PUFA食の効果を評価した。MWM課題は空間参照記憶を評価し、Y字迷路における自発的交替行動は空間作業記憶についての試験であり、オープンフィールドNOR課題は参照記憶成分の非存在下での作業記憶を評価した。この検討で用いたMWM課題のバージョンは、マウスが視認可能な逃避台まで泳ぐ、逃避台を見える位置とした3日間の訓練、及びそれに続く逃避台を見えない位置とした5日間の試験から構成されていた。野生型及びAldh2−/−マウスと比較した場合に、逃避台を見える位置とした訓練に関して、上記2種の食餌の間で逃避に要する時間に差はなかった(図6のA〜C)。逃避台を見えない位置とした試験では、D−PUFA又はH−PUFA食での2週間後に、試験の4日目及び5日目(図6のAの第7区及び第8区)で、H−PUFA食マウスと比較して、D−PUFA食マウスの逃避に要する時間が有意に減少した。逃避に要する時間の差は、2種の食餌での10週間又は18週間後により顕著になり(図6のB、C)、試験の2、3、4、及び5日目(第5区〜第8区)で有意に異なった。プローブ試験では、上記2種の食餌での2、10、又は18週間後に、D−PUFA食を給餌したマウスは、HPUFA食のマウスと比較して、目標の区画で費やす時間がより長く(図6のD)、逃避台があった区画への移動の回数がより多かった(図6のE)。
図6のA〜Fは、D−PUFA食を給餌したAldh2−/−マウスにおけるモリス水迷路課題における優れた成績を示す。D−PUFA食又はH−PUFA食の開始の2週間後(A)、10週間後(B)、又は18週間後(C)に、逃避台を見える位置とした3日間の試験区(1日当り4回の試験)、及びそれに続く逃避台を見えない位置とした5日間の試験区(1日当り6回の試験)において、逃避に要する時間(見えない位置の逃避台に到達するまでの時間)を測定した。9日目はプローブ試験であり、該試験において、目標の区画内で費やした時間(D)及び逃避台があった区画への移動の回数(E)を測定した(試験の合計時間は60秒であった)。別個のコホートの野生型マウスにおける上記MWM課題の成績を、2週間D−PUFA食を給餌したAldh2−/−マウスと比較した(F)。Fにおいては、どの試験区でも有意差は見られなかった。A、B、C、及びFにおいて、データは各試験区における平均スコアの平均値±標準偏差として表す(D−PUFAについてはn=16、H−PUFAについてはn=15、野生型についてはn=20)。D及びEにおいては、データは平均値±標準偏差として表す(D−PUFAについてはn=16、H−PUFAについてはn=15)。Dにおいては、点線は偶然のみによって任意の区画で費やされるであろう予想時間を表す。データは、A、B、C、及びFにおいては2元配置分散分析及びボンフェローニ事後検定によって、D、Eにおいては対応のないデータに関するスチューデントのt検定によって解析した。
各食餌のマウスにおける課題成績の経時的変化を評価した。H−PUFA食を給餌したマウスでは、18週間の試験期間にわたって、いずれの試験区においても成績に差はなかった。D−PUFA食を給餌したマウスでは、18週間の食餌の後の最初の試験区(第4区)における逃避に要する時間が、2週間又は10週間の食餌のいずれかの後のマウスの時間と比較して減少したことが唯一の違いであった。プローブ試験においては、いずれの群についても、目標の区画で費やした時間及び逃避台があった区画への移動の回数は経時的に変化しなかった。したがって、H−PUFA食を給餌したマウスの記憶障害、及びD−PUFA食を給餌したマウスの課題成績は、本検討期間で安定した状態を維持した。同様に、標準食(Lab−Diet 5015マウス飼料)を給餌した野生型及びAldh2−/−マウスの課題成績は3〜12月齢のマウスにおいて安定した状態を維持した。
オープンフィールドNOR課題(図7)及びY字迷路における自発的交替行動(図8)の両方の記憶課題において、H−PUFA食を給餌したAldh2−/−マウスは、D−PUFA食のマウスが漸進的な成績の上昇を示したのに対して、進行性の成績の低下を示した。上記NOR課題の成績は、10週間の食餌後及び18週間の食餌後において、及びY字迷路課題では18週間の食餌後に、上記2群間で有意差があった。図7のA及びBは、D−PUFA食を給餌したAldh2−/−マウスの新規物体認知(NOR)課題における成績が優れていたことを示している。上記D−PUFA又はH−PUFA食のいずれかの開始の2、10、及び18週間後に、オス及びメスのマウスをNOR課題に供し、物体に近づく頻度及び各物体を探索するのに費やした時間を記録した。(A)新規物体に費やした時間の既知物体に費やした時間に対する比。(B)識別指数(新規物体及び既知物体を探索する時間の差を、両者の探索の合計時間で除した値)。データは平均値±標準偏差(n=16)として示し、対応のないデータに関するスチューデントのt検定によって解析した。図8は、D−PUFA食を給餌したAldh2−/−マウスによるY字迷路課題における成績が優れていたことを示している。Y字迷路課題における自発的交替行動の割合を、上記D−PUFA又はH−PUFAのいずれかの食餌の開始から2、10、及び18週間後に、オス及びメスのマウスにおいて評価した。データは平均値±標準偏差(n=16)として示し、対応のないデータに関するスチューデントのt検定によって解析した。
オープンフィールド試験を用いて、薄暗い環境において自由に探索している間の自発運動活性を評価し、群間に、移動している全時間(D−PUFA:161±29秒、H−PUFA:163±17秒、P>0.05、対応のないデータに関するスチューデントのt検定)又は移動した総距離(D−PUFA:83±20m、H−PUFA:83±18m、P>0.05、対応のないデータに関するスチューデントのt検定)において差がないことが明らかになった。
明/暗箱試験を用いて、不安様行動の尺度として明るい照明に対する嫌悪を評価した。両群共に暗いチャンバをより好むことを示したが、D−PUFA食を10週間給餌したマウスでは、H−PUFA食のマウスと比較して、明るい側で費やした時間及び明るい側と暗い側の間の移動の全回数の両方において有意な増加があった(図9)。ここで観測されたD−PUFA給餌マウスとH−PUFA給餌マウスの間の差は、同等の年齢の野生型マウスとAldh2−/−マウスの間の差と類似していた。図9は、D−PUFA食を10週間給餌したAldh2−/−マウスによる、明/暗箱の照明したチャンバで費やした時間、及び上記照明したチャンバへの移動回数が増加したことを示す。マウスを明/暗箱の暗い側に置き、5分間探索させた。チャンバの明るい側と暗い側との間の移動の回数、及び明るい側で費やした合計時間を記録した。データは平均値±標準偏差(DPUFAではn=16、H−PUFAではn=13)として示し、対応のないデータに関するスチューデントのt検定によって解析した。
実施例15
重水素強化D−PUFAは非酵素的LPOに対する耐性があり、いくつかの実験モデルにおいて酸化ストレスを低減することが明らかになっている。本検討では、D−PUFA強化食による脂質代謝の変化が、AD様の病理学的変化を示す、本発明者の酸化ストレス誘発性認知障害モデルにおける認知障害を改善するかを評価した。D−PUFA(例えば、11,11−D2−LA及び11,11,14,14−D4−ALA)のエチルエステルの経口投与により、Aldh2−/−マウスにおけるLPO生成物が顕著に低下した。このことは、作業記憶及び空間記憶の両方を評価する3種の異なる記憶課題における成績の向上、ならびに不安様行動の減少と関連があった。
逃避台を見える位置とした3日間の試験の後に逃避台を見えない位置とした5日間の試験を行う上記MWMのプロトコルにより、空間参照記憶を徹底的に評価した。上記逃避台を見える位置とした3日間の試験において、D−PUFA給餌マウスとH−PUFA給餌マウスの間に差が見られないことは、視力、泳ぐ速度、基本的な計画、及び動機付けが各処置群で同一であることを示唆している。いずれの群においても浮遊性又は走触性などの非特異的行動の変化は観測されなかった。D−PUFA食を給餌したマウスは、わずか2週間の給餌の後に、MWM課題の逃避台を見えない位置とした試験区の全ての測定において有意により良好な成績を収め、給餌の10週間及び18週間の給餌の後に差がより顕著になった。両方の上記Y字迷路NOR課題において、D−PUFA食のマウスにおいて成績が漸進的に上昇したのと比較して、H−PUFA食を給餌したAldh2−/−マウスは進行性の成績の低下を示した。上記明/暗箱試験において、D−PUFA食を給餌したマウスは、このモデルで見られた不安様行動(明るい照明に対する嫌悪)の低下を示した。したがって、D−PUFAによって非酵素的LPOを低減することには、Aldh2−/−マウスにおいて認知を回復させる特性があり、ADなどの神経変性疾患の治療にD−PUFAを経口投与することによって得られる治療機会が存在することを示唆した。
D−PUFA食又はH−PUFA食を給餌した野生型マウスはこの検討では使用しなかったが、D−PUFA食を2週間給餌したマウスの成績を、類似の齢の、但しLabDiet 5015マウス飼料を給餌した野生型マウスの成績と比較したところ、いずれの試験区においても逃避に要する時間に有意差は見られなかった。どちらの食餌も12%の脂肪を含んでいたが、リノール酸とALAの量と比率が異なっていた。このように、D−PUFA食は、D−PUFA食を給餌しなければAldh2−/−マウスにおいて生じたであろう特別な参照記憶能力の喪失を防止した。更に、D−PUFA食及びH−PUFA食を8週間給餌したマウスの成績の差は、類似の齢の野生型マウスとAldh2−/−マウスの間の差と酷似しており、このことは、D−PUFAが本質的にAldh2−/−マウスの能力を、野生型マウスの能力に復帰させることを示している。
同位体比質量分析は、既報に記載されたものと同様の程度の重水素の脳脂質中への取り込みを示した。このレベルの取り込みは、エステル化F2−IsoPの減少によって測定されるように、LPO生成物を著しく低減するのに十分であり、これは酵母及びマウスにおける既報と整合する。F2−IsoPは、ARAの非酵素的酸化に由来する。ARAは酵素的酸化も受けて、PGF2aならびにシクロオキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼによって触媒される多数の他の生成物を生じる場合がある。
D−PUFAを給餌したマウスにおけるF2−IsoP及びPGF2aレベルを比較すると、酵素的脂質酸化よりも非酵素的LPOが実質的により大きく低下したことが明らかになっている。D−PUFAが酵素的酸化にも影響を及ぼしたことは、11,11−D2−LAが13,13−D2−ARAへと効率的に変換されるという事実によって説明することができる。ARA上の炭素13に重水素が存在することは、ここがシクロオキシゲナーゼ酵素の作用部位であることから、非酵素的及び酵素的酸化の両方に影響を及ぼすと予想されることとなる。非酵素的酸化は脂質膜中に他のD−PUFAが存在することによっても影響を受け、これによりフリーラジカル連鎖反応が遅くなり、その結果F2−IsoPのレベルが大幅に低下する。
F2−IsoPは、それらの遍在性、それらの体液及び組織中での化学的安定性、及びそれらがGC/MSによる定量分析が可能であることにより、内因性LPOの信頼できるバイオマーカーとして認知され、非酵素的LPOの評価のための現在の検討において、カルボニルタンパク質付加物の免疫ブロット分析によって与えられるより半定量的な評価よりも用いられる尺度であった。ADの進行との関連で、健忘型軽度認知機能障害(MCI)のある対象の前頭葉、頭頂葉、及び後頭葉において、同年齢の健常対照者と比較して、F2−IsoP及びF4−NeuroPのレベルの上昇が認められた[35]。これらのレベルは、後期ADのある対象に見られるレベルに匹敵しており、このことは、ARA及びDHAのLPOが、ADの進行全体を通して継続する初期の事象であることを示唆している。このことは、MCI、初期AD、及び後期ADのある個体の研究と一致した。これらの研究では、HNE及びHHEなどのLPO由来の反応性アルデヒドのタンパク質付加物の形成を調べていた。HHE及びHNEが培養において同様の毒性を示すこと、及び多くの脳領域で支配的なω−3 PUFAであるDHAが、支配的なω−6 PUFAであるARAよりも30〜100%多く存在することを考えると、HHEタンパク質付加物が反応性アルデヒド誘発性の神経細胞損傷に関与する可能性が高まる。
本開示を図面及び上述の説明において詳細に図解及び説明してきたが、かかる図解及び説明は例証又は例示のためのものであり、限定するものではないと考えられたい。本開示は開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する変化形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、権利請求された開示を実施する際に、当業者であれば理解し実現することができる。
本明細書に引用された全ての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。参照により援用される刊行物及び特許又は特許出願が、本明細書に含まれる開示と矛盾する限りにおいて、本明細書はかかる矛盾するいかなる資料よりも優先される及び/又は該資料にまさることが意図される。
別段の定義がなされていない限り、全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)には、それらの当業者にとって通常の且つ慣習的な意味が与えられるべきものであり、本明細書中で明示的に特別な又は個別化された意味であることが定義されない限り、かかる意味に限定されるべきものではない。本開示の特定の特徴又は態様を記述する際の特定の用語の使用は、当該用語が関連する本開示の特徴又は態様の任意の特定の特徴を含むように限定するために、本明細書で再定義されていることを意味すると解釈されるべきものではない。本出願において、特に添付の特許請求の範囲において使用される用語及び語句、ならびにそれらの変化形は、別段の明示がない限り、限定とは対極にあるオープンエンド(open−ended)として解釈されるべきものである。上記の例として、用語「含む(including)」は、「限定することなく含む」、「〜を含む、但し〜に限定されない」などを意味すると解釈されるべきであり;本明細書では、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義であり、非排他的(inclusive)すなわちオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素又は方法のステップを除外せず;用語「有する(having)」は「少なくとも〜を有する」と解釈されるべきであり;用語「含む(includes)」は、「〜を含む、但し〜に限定されない」と解釈されるべきであり;用語「例」とは、論議中の当該項目の例示的な場合を示すために用いられ、その網羅的又は限定的な一覧ではなく;「公知の(known)」、「通常の(normal)」、「標準的な(standard)」などの形容詞、及び同様の意味の用語は、記載された事項を所与の期間又は所与の時点で利用可能な事項に限定するものと解釈されるべきではなく、現在又は将来の任意の時点で利用可能な又は公知であってよい、公知の、通常の、又は標準的な技術を包含すると解釈されるべきであり;「好ましくは(preferably)」、「好ましい(preferred)」、「望ましい(desired)」、又は「望ましい(desirable)」などの用語及び類似の意味の語の使用は、特定の特徴が本発明の構造又は機能にとって必須である(critical)、本質的である(essential)、又は重要でさえある(even important)ことを意味すると理解されるべきではなく、単に本発明の特定の実施形態において利用されてもされなくてもよい選択肢又は追加の特徴を強調することを意図するものと理解されるべきである。同様に、接続詞「and」によって連結された1群の事項は、それらの事項のそれぞれ及び1つ1つが集団中に存在することを必要とするものとして解釈されるべきではなく、別段の明示がない限り、「及び/又は」として解釈されるべきである。同様に、接続詞「or」によって連結された1群の事項は、当該の群の中で、相互排他性を必要とすると解釈されるべきではなく、別段の明示がない限り、「及び/又は」として解釈されるべきである。
数値の範囲が与えられる場合、その上限及び下限、ならびに該範囲の該上限と該下限の間にある各数値が当該実施形態内に包含されると理解されたい。
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は使用に適するように、複数形から単数形及び/又は単数形から複数形に変換することができる。明確性を目的に、本明細書において種々の単数形/複数形の入れ替えが明示的に記載される場合がある。不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他の装置が特許請求の範囲に記載されるいくつかの事項の機能を果たす場合がある。特定の手段が互いに異なる従属項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に用いることができないことを示すものではない。請求項中の如何なる参照符号も範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
特定の数の導かれた請求項の記載事項が意図される場合、かかる意図は当該請求項において明示的に記載されることとなり、かかる記載事項がない場合にはかかる意図は存在しないことが当業者には更に理解されよう。例えば、理解の補助として、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載事項を導くための導入句「少なくとも1の」及び「1以上の」の使用を含んでいてもよい。しかしながら、かかる語句の使用は、同一の請求項が導入句「1以上の」すなわち「少なくとも1の」及び「a」もしくは「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」によって請求項の記載事項を導くことが、かかる導かれた請求項の記載事項を含むいずれかの特定の請求項を、1のみのかかる記載事項を含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく(例えば、「a」及び/又は「an」は一般的に「少なくとも1の」すなわち「1以上の」を意味すると解釈されるべきである);請求項の記載事項を導くために用いられる定冠詞の使用に関しても同一のことがいえる。更に、特定の数の導かれた請求項の記載事項が明示的に記載されるとしても、当業者であれば、かかる記載事項は一般的に少なくとも当該の記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識しよう(例えば、「2の記載事項」の、他の修飾語のないそれのみの記載事項は、一般的に少なくとも2の記載事項、すなわち2以上の記載事項を意味する)。更に、「A、B、及びC、等の少なくとも1」に類似する伝統的表現法が用いられる場合、一般にかかる構文は、当業者であれば当該の伝統的表現法を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1を有するシステム」は、Aのみを、Bのみを、Cのみを、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、ならびに/又はA、B、及びCを共に有する等の、但しこれらに限定されないシステムを含むこととなる)。「A、B、又はCなどの少なくとも1」に類似する伝統的表現法が用いられる場合、一般にかかる構文は、当業者であれば当該の伝統的表現法を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1を有するシステム」は、Aのみを、Bのみを、Cのみを、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、ならびに/又はA、B、及びCを共に有する等の、但しこれらに限定されないシステムを含むこととなる)。2以上の代替用語を提示する事実上任意の選言的な語句は、明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれであっても、上記用語の一方、上記用語のいずれか一方、又は上記用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者であれば更に理解されよう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されよう。
本明細書で用いられる、成分の量、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されていると理解されるべきものである。したがって、それに反することが示されない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、得ようとしている所望の特性に応じて変化する場合がある近似値である。最低でも、また本出願の優先権を主張する任意の出願における任意の請求項の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものとしてではなく、各数値パラメータは、有効数字の桁数及び通常の丸め手法の観点から解釈されるべきものである。
更に、明確性及び理解を目的として、例示及び実施例によって上述したものがある程度詳細に記載されてはいるが、特定の変更及び改変が実施され得ることは当業者には明らかである。したがって、上記説明及び実施例は、本発明の範囲を本明細書に記載の特定の実施形態及び実施例に限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の真の範囲及び趣旨に伴う全ての改変及び代替も含むと解釈されるべきである。