JP2020192806A - フィルムの製造方法 - Google Patents

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敦紀 小原
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Abstract

【課題】 本発明は、オリゴマの析出を抑制し、オリゴマの付着による欠点の発生を軽減すると共に、フィルムの長手方向の厚みムラを抑制することができるフィルムの製造方法を提供することをその課題とする。【解決手段】 内部に白金触媒と加熱機構とを備える気体循環経路を気体循環経路A、前記気体循環経路Aを備える部屋を部屋Bとしたときに、前記部屋Bを少なくとも一つ備えるテンター装置で少なくとも一方向にシートを延伸する工程を有するフィルムの製造方法であって、前記気体循環経路Aの内部に以下条件(i)〜(iii)を全て満たす白金触媒を備えることを特徴とする、フィルムの製造方法。(i) 基材がハニカム構造を有すること。(ii) (i)に記載のハニカム構造の細孔平均面積が0.5mm2以上3.0mm2以下であること。(iii) 充填比重が0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下であること。【選択図】図1

Description

本発明は、長期間にわたってオリゴマの付着による欠点の発生を軽減することができ、かつ長手方向の厚みムラを抑制するフィルムの製造方法に関する。
フィルムは、テンター装置等を用いて熱可塑性樹脂を主成分とするシートを少なくとも一方向に延伸することにより製造することができる。このテンター装置は一般に、入口から出口に至るまで温度を個別に制御することができる複数の部屋に区画されており、シートが延伸によりフィルムとなるまでには温度の異なる複数の部屋を通過する。そして、テンター装置における各部屋の温度調節手段の一つとして、部屋に気体循環経路を設けて、ここで給排気や部屋を循環する空気の加熱を行うことで温度を上下させる方法が用いられる。
テンター装置によりシートを延伸してフィルムを得る過程では、特に温度の高い部屋を通過する際に、シートやフィルムからオリゴマ等の低分子量物(以下、単にオリゴマということがある。)が揮発する。そして、部屋の空気中のオリゴマ量が飽和量に達したり、オリゴマを多く含む気体がシートやフィルムの走行等により温度の低い部屋へ流入したりすること等により、やがてオリゴマが析出してテンター装置内の汚染やフィルムへの異物付着を引き起こす。
このオリゴマの析出を軽減するための手段として、オリゴマを多く含む空気を部屋から排出して外から給気した後に再度空気を加熱して部屋に送る方法が考えられるが、部屋の空気中のオリゴマ量を減らそうと給排気量を多くすれば、それに比例して空気の温度も下がるため、空気の加熱のためにより膨大なエネルギーが必要となる。そのため、給排気による処置には限界があり、オリゴマの析出に対して種々の対策が検討されている。このようなオリゴマの析出を軽減させる方法としては、例えば、気体循環経路内に高温に加熱した白金触媒を設けて気体中のオリゴマを分解する方法等が提案されている(特許文献1、2)。
特開2017−177534号公報 特開平11−342535号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の白金触媒を使用する場合は、発泡させた金属に気体を通過させるため、圧力損失が大きく、気体循環経路の風量が安定しない。そのため、気体循環経路を経てノズルから噴出される気体の風速が安定せず、最終的に得られるフィルムの長手方向の厚みムラが悪化する課題がある。本発明は、係る従来技術の欠点を解消し、オリゴマの析出を抑制し、オリゴマの付着による欠点の発生を軽減すると共に、長手方向の厚みムラを抑制することができるフィルムの製造方法を提供することをその課題とする。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
(1) 内部に白金触媒と加熱機構とを備える気体循環経路を気体循環経路A、前記気体循環経路Aを備える部屋を部屋Bとしたときに、前記部屋Bを少なくとも一つ備えるテンター装置で少なくとも一方向にシートを延伸する工程を有するフィルムの製造方法であって、前記気体循環経路Aの内部に以下条件(i)〜(iii)を全て満たす白金触媒を備えることを特徴とする、フィルムの製造方法。
(i) 基材がハニカム構造を有すること。
(ii) (i)に記載のハニカム構造の細孔平均面積が0.5mm以上3.0mm以下であること。
(iii) 充填比重が0.3g/cm以上0.7g/cm以下であること。
(2) 前記白金触媒の基材が金属であることを特徴とする、(1)に記載のフィルムの製造方法。
(3) 前記白金触媒の厚みが10mm以上70mm以下であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のフィルムの製造方法。
(4) 前記白金触媒の温度を、210℃を超え、250℃未満に制御することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
(5) 前記部屋Bが、長手方向への気体の流動を抑制する手段を備えることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
(6) テンター装置内のオリゴマ濃度を0.40mg/m以下に制御することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
本発明により、オリゴマの付着による欠点の発生を軽減し、かつ長手方向の厚みムラを抑制することができるフィルムの製造方法を提供することができる。
ハニカム構造の具体例を示す模式図である。 各実施例及び比較例6を除く各比較例で用いたテンター装置における熱固定ゾーンの入口側から数えて3番目の部屋(熱風循環経路に白金触媒を配置した部屋)を、フィルム面及び長手方向と垂直な面で切断したときの概略断面図である。 オリゴマ濃度の測定に用いる装置の概略図である。
本発明のフィルムの製造方法は、内部に白金触媒と加熱機構とを備える気体循環経路を気体循環経路A、前記気体循環経路Aを備える部屋を部屋Bとしたときに、前記部屋Bを少なくとも一つ備えるテンター装置で少なくとも一方向にシートを延伸する工程を有するフィルムの製造方法であって、前記気体循環経路Aの内部に以下条件(i)〜(iii)を全て満たす白金触媒を備えることを特徴とする。
(i) 白金触媒の基材がハニカム構造を有すること。
(ii) 白金触媒におけるハニカム構造の細孔平均面積が0.5mm以上3.0mm以下であること。
(iii) 白金触媒の充填比重が0.3g/cm以上0.7g/cm以下であること。
本発明のフィルムの製造方法は、内部に白金触媒と加熱機構とを備える気体循環経路を気体循環経路A、気体循環経路Aを備える部屋を部屋Bとしたときに、部屋Bを少なくとも一つ備えるテンター装置で少なくとも一方向にシートを延伸する工程を有する。このような態様とすることにより、白金触媒により部屋B内の気体に含まれるオリゴマを分解することができるため、部屋B内の気体中のオリゴマ量が低下する。その結果、オリゴマに起因するテンター装置内の汚染や、テンター装置内を走行するシートやフィルムへの異物付着を軽減することができる。
本発明のフィルムの製造方法において、シートとはテンター装置での延伸終了前の段階における平面状の樹脂成型物をいい、フィルムとはシートをテンター装置で少なくとも一方向に延伸したものをいう。白金触媒とは、表面に白金が付着した触媒をいい、これにより高温下でオリゴマを燃焼処理することができる。この白金触媒は本発明の効果を損なわない限り気体循環経路内のどの位置に配置してもよい。以下、白金触媒のうち白金以外の部分を基材、白金部分を白金触媒成分ということがある。
加熱機構とは、白金触媒を昇温させることができる機構をいう。加熱機構は、本発明の効果を損なわない範囲で自由に選定することができ、例えば、電気ヒータやバーナ等を用いることができる。また、その配置についても、白金触媒の加熱が可能であれば本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、白金触媒に対向して配置することや、白金触媒内部に配置することが可能である。
オリゴマとは、テンター装置内でシートを加熱延伸してフィルムを得る過程において、シートやフィルムから気体中に昇華する低分子化合物をいい、気体中のオリゴマは濃度が飽和に達すると析出する。オリゴマの具体例としては、例えば、フィルムがポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある。)フィルムである場合における、線状オリゴマ(テレフタル酸、モノヒドロキシエチルテレフタル酸、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタル酸等)や、環状オリゴマ(前記線状オリゴマの環状三量体や環状二量体)等が挙げられる。また、フィルムがエステル系やアクリル系の塗液を塗布したものである場合等には、これらの塗液に由来するエステル系若しくはアクリル系の低分子化合物がオリゴマとして昇華することもある。
テンター装置とは、シートの幅方向の両端部を把持するクリップを搬送方向に走行させながら、このクリップの速度を調整することや間隔を広げることによって、シートを長手方向及び幅方向の少なくとも一方向に延伸してフィルムとするための装置である。部屋とは、シートやフィルムが通過する隙間を有する壁で区画された、テンター装置内における各空間をいい、気体循環経路とは、部屋内の気体が循環することが可能な経路をいう。気体循環経路は、部屋内の気体が循環することができる構造となっていれば、本発明の効果を損なわない範囲で、外気を取り込む給気ラインや、部屋内の気体を部屋外に排出する排気ラインを備えていてもよい。なお、長手方向とはシートやフィルムが走行する方向をいい、幅方向とはシート又はフィルム面内で長手方向と直交する方向をいう。
本発明のフィルムの製造方法においては、最終的に得られるフィルムにおけるオリゴマ由来の欠点や長手方向の厚みムラを軽減する観点から、白金触媒の基材がハニカム構造を有することが重要である。白金触媒の基材とは、表層に白金触媒成分を付着させる前の骨組みをいう。ここでハニカム構造とは、頂面と底面が開放状態である柱状の立体図形を網目状に隙間なく並べた構造(3次元空間充填構造)をいい、柱状の立体図形の具体例としては、例えば、(正)三角柱、(正)四角柱、(正)六角柱等が挙げられる。図1は、柱状の立体図形の底面側より観察したときのハニカム構造の具体的態様を表しており、図1のAは三角柱1、図1のBは四角柱2、図1のCは六角柱3により形成されるハニカム構造である。なお、ハニカム構造を形成する立体図形の大きさや種類は、本発明の効果を損なわない限り、全て同じであっても、複数種類が混在していてもよい。
白金触媒の基材がハニカム構造を有することにより、同セル数の他構造体と比較して表面積が大きくなるため、その表面に白金触媒を付着させると白金触媒とオリゴマの接触面積が大きくなり、オリゴマ分解効率が向上する。また、基材の表面積が同程度である発泡金属構造の白金触媒に比べると、このような態様では、ハニカム構造を形成する多角柱の中空部分より空気が通りやすいために圧損が小さくなり、白金触媒を通過する前後で空気の圧力差が小さくなって通過後の空気の速度が安定する。そのため、気体循環経路Aを経てノズルから噴出される気体の風速が安定し、最終的に得られるフィルムの長手方向の厚みムラが抑制される。
本発明のフィルムの製造方法においては、最終的に得られるフィルムにおけるオリゴマ由来の欠点や長手方向の厚みムラを軽減する観点から、白金触媒におけるハニカム構造の細孔平均面積が0.5mm以上3.0mm以下であることが重要である。ここで、ハニカム構造の細孔平均面積とは、ハニカム構造を成す多角形面と平行に白金触媒を切断した場合における、1つの多角形が成す中空部(基材部を除く)の面積の平均値を指す。なお、ハニカム構造を成す多角形面とは、柱状の立体図形の頂面や底面をいい、具体的には柱状の立体図形が正六角柱の場合は、正六角形の面がこれに該当する。
白金触媒におけるハニカム構造の細孔平均面積が0.5mm以下であると、網の目が細かすぎて空気の通過が抑えられるために圧損が大きくなり、白金触媒通過後の気体の速度が安定せず、最終的に得られるフィルムの長手方向の厚みムラが悪化する。一方で、白金触媒におけるハニカム構造の細孔平均面積が3.0mm以上であると、網の目が粗すぎて白金触媒と空気の接触面積が不足するためにオリゴマ分解効率が低下し、オリゴマに起因するテンター装置内の汚染やフィルムへの異物付着が増加する。このような観点から、白金触媒におけるハニカム構造の細孔平均面積は0.7mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上1.5mm以下であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムの製造方法においては、最終的に得られるフィルムの長手方向の厚みムラ軽減と白金触媒自体の強度を両立する観点から、白金触媒の充填比重が0.3g/cm以上0.7g/cm以下であることが重要である。白金触媒の充填比重とは、白金触媒部分(基材、及び中空部を含む)1cm当たりの質量(g)を指し、白金触媒を適当な大きさの直方体に切断して、その質量(g)を体積(cm)で割ることにより求めることができる。なお、その際、通常は計測誤差の低減を目的として、白金触媒は体積が10cm以上となるように切断する。
白金触媒の充填比重が0.3g/cm未満であると、白金触媒自体の強度が不足するため、テンター装置内での使用による破損や変形、加熱による熱劣化等が発生しやすくなり、オリゴマに起因するテンター装置内の汚染やフィルムへの異物付着が増加する。また、白金触媒の充填比重が0.7g/cmより大きくなると、白金触媒全体に占める基材や白金触媒成分の占有体積が過度に大きくなるため、圧損が増加してノズルから吹き付けられるエアの風速が安定せず、最終的に得られるフィルムの長手方向の厚みムラが悪化する。上記観点から、白金触媒の充填比重は0.4g/cm以上0.6g/cm以下がより好ましく、0.5g/cm以上0.6g/cm以下がさらに好ましい。
また、白金触媒は、本発明の効果を損なわない限り、気体循環経路の一箇所に配置しても、複数個所に配置してもよいが、オリゴマを多段階に燃焼処理して気中のオリゴマ含有量低減効果を向上させる観点から、複数個所に配置することが好ましい。なお、複数個所に白金触媒を配置する場合、それに併せて加熱機構も複数配置することができる。
テンター装置の構成は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、延伸とその後の熱固定を連続して行う観点から、入口側から順に、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーン、及び冷却ゾーンを備えることが好ましい。予熱ゾーンとは、入口から入ったシートを延伸温度まで昇温させる区間をいい、延伸ゾーンとは、予熱されたシートを少なくとも一方向に延伸させる区間をいう。延伸ゾーンにおける延伸方向及び倍率は、例えば、クリップの幅方向への広がりや、先行するクリップと後続のクリップとの走行速度差(以下、クリップの速度差ということがある。)により調整することができる。より具体的には、クリップの速度差により長手方向への延伸が、クリップの幅方向への広がりにより幅方向への延伸が可能となる。そして、クリップの速度差やクリップの幅方向への広がりを大きくすることにより、各方向の延伸倍率を大きくすることができる。熱固定ゾーンとは、延伸により得られたフィルムを延伸温度よりも高い温度で処理する部屋をいい(以下、この処理を熱固定ということがある。)、熱固定によりフィルムの熱寸法安定性が向上する。冷却ゾーンとは、熱固定ゾーンで加熱されたフィルムを冷却する部屋をいう。なお、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーン、及び冷却ゾーンにおける部屋数は、本発明の効果を損なわない限り、いずれも一つであっても複数であってもよく、部屋が複数である場合は部屋毎に温度制御が可能な態様であってもよい。
本発明におけるテンター装置は、部屋Bを少なくとも一つ備える限り、本発明の効果を損なわない範囲で部屋Bの数や配置を自由に選定することができる。但し、フィルムから昇華するオリゴマによる部屋の汚染や品質悪化を軽減する観点から、部屋Bの少なくとも一つが熱固定ゾーン内に存在することが好ましい。熱固定ゾーンは、通常テンター装置を構成する他の部屋よりも温度が高く、フィルムからオリゴマが昇華しやすいため、他のゾーンに比べて気中のオリゴマ濃度が相対的に高くなる。そのため、熱固定ゾーン内に部屋Bを設けて白金触媒によりオリゴマを燃焼処理することで、オリゴマに起因する上記不具合を軽減できる。さらに、部屋の温度調節に要するエネルギーを減らす点も考慮すれば、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーン、及び冷却ゾーンの全てに部屋Bが存在することが好ましい。
本発明のフィルムの製造方法においては、白金触媒のオリゴマ分解効果と寿命を両立する観点から、白金触媒の温度を、210℃を超え、250℃未満に制御することが好ましい。白金触媒の温度とは、接触式温度計によって測定した白金触媒の表面温度をいう。白金触媒の温度測定に用いる接触式温度計は、測定が可能なものから任意に選択することができ、例えば、HPD−1100 タイプE(安立計器社製)等を好適に用いることができる。
白金触媒の温度を210℃より高くすることにより、白金触媒が十分な触媒活性を発現するため、使用中に白金触媒の表面に未分解のオリゴマや埃などの不純物が堆積しにくくなり、これらの堆積物による白金触媒のオリゴマ分解効果の低下が軽減される。その結果、テンター装置の部屋B内における空気中のオリゴマ濃度の上昇が抑えられ、オリゴマによるテンター装置の汚染やフィルムの品質低下を軽減できる。一方で、白金触媒の温度を250℃未満とすることにより、触媒表面の熱による劣化を軽減し、触媒活性消失までの期間を長くすることができる。その結果、フィルムの生産を停止して白金触媒の交換をする頻度が少なくなり、生産性の悪化や、生産コストのアップが抑制される。上記観点から、気体循環経路Aの内部における白金触媒の温度を、225℃以上250℃未満に制御することが好ましく、230℃以上250℃未満に制御することがより好ましい。また、昇温のためのエネルギーの節約も考慮すると、230℃以上240℃未満に制御することが特に好ましい。
白金触媒の温度を、210℃を超え、250℃未満に制御する方法は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば、電気ヒータやバーナ等の加熱手段の出力を調整する方法を用いることができる。より具体的には、これらの出力を上げることにより、白金触媒の温度を高くすることができる。
本発明のフィルムの製造方法において、白金触媒の基材の材質は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えば金属やセラミック等とすることができる。但し、高温に加熱する際の昇温エネルギーを軽減する観点から、白金触媒の基材が金属であることが好ましい。白金触媒の基材が金属であるとは、白金触媒の基材の全構成成分を100質量%としたときに、金属が50質量%より多く含まれることをいう。
金属は一般的に比熱が高いため、白金触媒の基材が金属である場合は白金触媒の昇温が容易となり、かつ比較的少量のエネルギーで目的の温度を保つことができる。また、金属は一般的に強度面で優れるため、白金触媒として使用するのに必要な強度を保ったまま充填比重を低くすることや、基材を形成する柱状の立体図形の面をより薄くして空気の流路を広くするように設計すること等により、圧損を軽減することもできる。さらに、金属は一般的に耐熱性や耐薬品性にも優れるため、高温環境下での薬品による洗浄や焙焼による洗浄が容易である。そのため、白金触媒の基材が金属であれば、オリゴマの堆積等により白金触媒のオリゴマ分解効果が低下しても、洗浄によってこれを回復し、白金触媒を繰り再利用することも容易となる。
白金触媒の基材に用いる金属は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、例えばアルミニウム、クロム、ニッケル、鉄等を好適に用いることが可能である。また、これらの金属は単独で用いても、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
本発明のフィルムの製造方法においては、白金触媒のオリゴマ分解効果と圧損低減効果を保ちつつ、白金触媒を設置するスペースの確保や白金触媒の交換など操業性を向上させる観点から、白金触媒の厚みが10mm以上70mm以下であることが好ましい。ここで白金触媒の厚みとは、ハニカム構造を成す多角形面と垂直な方向の長さ、すなわち気体が通過する方向の長さを指す。なお、白金触媒の厚みは、巻き尺、定規、及びノギス等、一般的に数mm〜数十cm程度の長さの測定が可能な手段により測定することができる。
白金触媒の厚みを10mm以上とすることにより、白金触媒の製造コストに影響する比重や細孔平均面積を過度に大きくすることなく、白金触媒の不足に起因するオリゴマ分解効果の低下を軽減することができる。一方で、白金触媒の厚みを70mm以下とすることにより、白金触媒の厚みが適度に抑えられるため、圧損増加によるノズルからのエアの速度ムラが軽減され、最終的に得られるフィルムの長手方向の厚みムラを低く抑えることができる。その上、白金触媒の厚みが抑えられることで、昇温に要するエネルギーの低減、気体循環経路に白金触媒を導入するスペースの確保、及び白金触媒のメンテナンス(洗浄)や交換作業が容易となる。これらの観点から、白金触媒の厚みは10mm以上60mm以下であることがより好ましい。
本発明のフィルムの製造方法においては、部屋Bを循環する気体の温度は、部屋の種類や役割、製造するフィルムを構成する樹脂成分の種類等に応じて適宜設定することができる。具体例を挙げると、例えば製造するフィルムがPETフィルムであり、部屋Bが熱固定ゾーン内に存在する場合は、部屋Bを循環する気体の温度が210℃以上300℃以下であることが好ましく、220℃以上300℃以下であることがより好ましく、230℃以上300℃以下であることがさらに好ましい。
部屋Bを循環する気体の温度の調節手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、適宜選択することができる。例えば、白金触媒の加熱機構とは別に、気体循環経路Aにヒータや熱交換器、冷却器等の温度調節装置を配置して制御する方法や、気体循環経路Aに給気ラインと排気ラインを設けて給排気量を調整する方法等を用いることができる。具体的には、ヒータ等の加熱装置で気体を加熱することや、部屋B内の温度が外気の温度よりも高い場合において給排気量を少なくすること等により、部屋Bを循環する気体の温度を上昇させることができる。
本発明のフィルムの製造方法は、オリゴマの析出に伴う装置の汚染やフィルムの異物発生を軽減する観点から、長手方向への気体の流動を抑制する手段を備えることが好ましい。長手方向への気体の流動を抑制する手段は、本発明の効果を損なわない限り特にどこに存在してもよいが、中の気体の温度が異なる2つの部屋の境目に存在することが好ましく、上流の部屋における気体の温度が下流の部屋における気体の温度よりも相対的に高い場合に、この2つの部屋の間に存在することがより好ましい。
例えば、熱固定ゾーンの下流に冷却ゾーンが存在する態様のように、下流側に相対的に温度の低い部屋が隣接する状況で長手方向への気体の流動が生じると、内部の気体の温度差に起因するオリゴマの飽和濃度の差により、下流側の部屋でオリゴマが析出することがある。このような状況下において、部屋間に長手方向への気体の流動を抑制する手段があれば、上記メカニズムによるオリゴマの析出を軽減できる。
このメカニズムによるオリゴマの析出について、熱固定ゾーンの下流に冷却ゾーンが存在する態様を例に具体的に説明する。熱固定ゾーンでフィルムを高温処理すると、大量のオリゴマが揮発し、熱固定ゾーン内の気体はオリゴマを豊富に含むこととなる。そして、通常、冷却ゾーンは熱固定ゾーンよりも室内の温度が低いため、冷却ゾーンでは気体中に含むことができるオリゴマの量は熱固定ゾーンよりも少なくなる。そのため、長手方向への気体の流動により熱固定ゾーンの気体が冷却ゾーンに流入すると、オリゴマが析出することがある。
長手方向への気体の流動を抑制する手段は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず適宜選択することができる。例えば、テンター装置におけるエア吹き付けノズルとして、スリットノズルよりも長手方向への気体の流動の少ないホールノズルを用いることの他、エアカーテン等の物理的な手段を採用することもできる。
本発明のフィルムの製造方法は、オリゴマによる装置の汚染や最終的に得られるフィルムの品質悪化を軽減する観点から、テンター装置内のオリゴマ濃度を0.40mg/m以下に制御することが好ましく、0.30mg/m以下に制御することがより好ましく、0.25mg/m以下に制御することがさらに好ましい。ここで、テンター装置内のオリゴマ濃度とは、テンター装置内で最も温度が高い部屋(複数存在する場合は、最も下流側の部屋とする。)におけるオリゴマ濃度をいう。テンター装置内のオリゴマ濃度の下限値は、上記観点から小さければ小さいほど好ましく特に制限はないが、実現可能性の観点から0.10mg/mとなる。
テンター装置内のオリゴマ濃度を0.40mg/m以下とするための手段は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、前述の白金触媒によりオリゴマを分解する方法が挙げられる。
以下、本発明のフィルムの製造方法について、逐次二軸延伸法によるPETフィルムの製造を例に挙げて以下に説明する。
先ず、樹脂ペレットを押出機の原料投入部に供給し、樹脂を加熱溶融する。その後、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化して加熱溶融された樹脂を押出し、フィルター等を介して異物やゲル化物などを取り除く。このとき、押出機は1台であっても複数台であってもよく、複数台の押出機を用いる場合は、フィルターを通過した熱可塑性樹脂を積層装置に送り込む。積層装置としては、マルチマニホールドダイ、フィードブロック、及びスタティックミキサー等を用いることができ、これらを任意に組み合わせてもよい。
このようにして得られた樹脂の溶融体を、口金からシート状溶融物として吐出し、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出して冷却固化することにより、無配向シートを得る。シート状溶融物から無配向フィルムを得る具体的な方法としては、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、シート状溶融物を静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させて急冷固化させる方法が好ましい。他には、スリット状、スポット状又は面状の装置からエアを吹き出して、シート状溶融物をキャスティングドラム等の冷却体に密着させて急冷固化させる方法や、ニップロールにてシート状溶融物を冷却体に密着させて急冷固化させる方法も好ましい。
次に、得られた無配向シートを、長手方向に延伸(縦延伸)して一軸配向シートを得る。縦延伸は、周速差がある一対の延伸ロールを使用して1段階で行うことも、このような一対の延伸ロールを複数組使用して多段階に行うことも可能であり、その倍率は2〜7倍が好ましい。なお、縦延伸では、予熱ロールにて無配向シートを加熱した後に、赤外線ヒータ等により無配向シートをさらに加熱することも可能である。
また、縦延伸後、得られた一軸配向シートの両面若しくは片面に、易接着層等の機能層を形成させるための塗剤を塗布する工程を設けることも可能である。塗剤を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、及びスプレーコート法などを用いることができる。
その後、縦延伸により得られた一軸配向シートを、テンター装置に導き、幅方向に延伸(横延伸)することにより二軸配向フィルムを得る。横延伸を行う際に用いられるテンター装置は、内部に白金触媒と加熱機構とを備える気体循環経路を気体循環経路A、前記気体循環経路Aを備える部屋を部屋Bとしたときに、前記部屋Bを少なくとも一つ備える。そして、白金触媒は以下条件(i)〜(iii)を全て満たす。このような態様とすることにより、オリゴマ析出による装置の汚染や異物の発生、及び最終的に得られるフィルムの長手方向の厚みムラを軽減することができると共に、白金触媒の交換頻度を少なくすることができる。
(i) 白金触媒の基材がハニカム構造を有すること。
(ii) 白金触媒におけるハニカム構造の細孔平均面積が0.5mm以上3.0mm以下であること。
(iii) 白金触媒の充填比重が0.3g/cm以上0.7g/cm以下であること。
このとき、白金触媒の基材が金属であることが好ましく、また、オリゴマ分解効果と白金触媒の耐久性を両立する観点から、白金触媒の温度を、210℃を超え、250℃未満に制御することも好ましい。上記観点から白金触媒の温度は、より好ましくは225℃以上250℃未満であり、さらに好ましくは230℃以上250℃未満である。さらに、上流の部屋よりも相対的温度の低い部屋におけるオリゴマ析出を抑える観点から、長手方向への気体の流動を抑制する手段を備えることも好ましい。
また、白金触媒のオリゴマ分解効果と圧損低減効果を保ちつつ、白金触媒のメンテナンスや交換作業を容易にする観点から、白金触媒の厚みは10mm以上70mm以下であることが好ましく、10mm以上60mm以下であることがより好ましい。
テンター装置は、その内部を走行するクリップで一軸配向シートの幅方向両端部を把持して予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーン、及び冷却ゾーンの順に走行させることにより、一軸配向シートを延伸温度に加熱して横延伸し、その後、熱固定して冷却することができる。この一連の工程を経て、一軸配向シートは二軸配向フィルムとなる。なお、テンター装置における予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーン、及び冷却ゾーンは、一つの部屋のみで構成されていても、個々に温度の設定を変更できる複数の部屋で構成されていてもよい。
延伸ゾーンを構成する部屋の温度は、最終的に得るフィルムの厚み、延伸の速度、インラインコーティング有無等にもよるが、80℃よりも低いとフィルムが破断し易く、160℃よりも高いと十分な強度が得られないことから、80〜160℃が好ましく、85〜130℃がより好ましく、90〜120℃がさらに好ましい。
横延伸の倍率は、最終的に得るフィルムの厚み、延伸の速度、インラインコーティング有無等にもよるが、延伸ムラやフィルムの破断などを防止する観点から、2.5〜6.0倍が好ましく、3.0〜5.5倍がより好ましく、3.5〜5.0倍がさらに好ましい。
熱固定ゾーンを構成する部屋の温度は、結晶化によりPETの構造を安定させる観点及び白金触媒を活性化させる観点から、210℃以上300℃以下であることが好ましく、220℃以上300℃以下であることがより好ましく、230℃以上300℃以下であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムの製造方法においては、横延伸工程後、フィルムの厚みが大きい幅方向両側のエッジ部分を切断し除去する工程を有することが好ましい。こうして得られた二軸配向フィルムは、その後の搬送工程で冷却され、一旦広幅の巻き取り機で中間ロールとして巻き取られた後、スリッター等により、必要な幅と長さに裁断されて最終製品となる。このとき、一本の中間ロールから得る最終製品は、一本であっても複数本であってもよい。
本発明のフィルムの製造方法により得られるフィルムは、オリゴマに起因する欠点や長手方向の厚みムラが少ないため、各種光学用フィルムとして用いることができ、特に、プリズムシート用ベースフィルム、ハードコート用ベースフィルム、反射防止(AR)フィルム用ベースフィルム、光拡散用ベースフィルム、及び透明導電性フィルム等として好適に用いることができる。
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例において使用したテンター装置や白金触媒、及び各項目の測定方法等は以下のとおりである。
[テンター装置]
テンター装置は、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーン、及び冷却ゾーンがこの順に位置し、熱固定ゾーンが4つの部屋に区画されており、かつ冷却ゾーンが3つの部屋に区画されているものを用いた。温度はゾーン毎に全ての部屋で均一とし、白金触媒を配置する場合は、熱固定ゾーンの熱風循環経路に配置して電気ヒータ(シーズヒータ)で加熱して温度を制御した。なお、白金触媒は未使用のものを熱固定ゾーンにおける4つの部屋のうち、入口側から数えて3番目の部屋の循環経路内に設けた(白金触媒を設置しない比較例6を除く。)。また、シートやフィルムにエアを噴き付けるノズルとしては、長手方向への気体の流動を抑制する効果のある、ホールノズル(H:170mm B:13mm)を用いた。ここで、Hとはノズルの噴出孔とシート又はフィルムとの距離、Bとは噴出孔の長径をいう。
図2は各実施例及び比較例6を除く各比較例で用いたテンター装置における熱固定ゾーンの入口側から数えて3番目の部屋(熱風循環経路に白金触媒を配置した部屋)を、フィルム面及び長手方向と垂直な面で切断したときの概略断面図である。テンター装置4における熱固定ゾーンの部屋5では、その内部を走行するフィルム6の上下に対向して配置されたノズル7a及び7bから熱風が噴出される。噴出された熱風は、モーター(図2中にMで表示。)を動力とする熱風循環ファン8により熱風循環経路9内を循環し、スチームヒータ10で温度制御されて、再びノズル7a、7bから噴出される。熱風循環経路9内(スチームヒータ10の上流)にあるフィルター11の上流側に白金触媒12が設けられており、白金触媒12に対向させて電気ヒータ13(シーズヒータ:1.7kW×10本)が配置されている。この電気ヒータ13により、白金触媒12を所望の温度に加熱できる構成となっている。
[白金触媒]
(ハニカム構造を有する金属白金触媒)
三角柱からなるハニカム構造を有し、基材が鉄、クロム、及びアルミからなる白金触媒(田中貴金属社製)を用いた。
(ハニカム構造を有するセラミック白金触媒)
四角柱からなるハニカム構造を有し、基材がセラミックである白金触媒(日揮ユニバーサル社製)を用いた。
(ハニカム構造を有さない金属白金触媒)
NM−12(日揮ユニバーサル社製)を用いた。
[白金触媒の充填比重]
白金触媒を10cm×10cm×5cm(500cm)のサイズに切り出し、その質量を体積で除した値を白金触媒の充填比重(g/cm)とした。
[白金触媒の細孔平均面積]
細孔平均面積は、以下の手順により求めた。先ず、開口方向を顕微鏡で50倍に拡大して観察し、顕微鏡の測長機能で細孔の辺の長さを求めた。続いて、得られた辺の長さより、細孔の面積を算出した。ランダムに選定した10個の細孔を対象に同様の測定を行い、得られた面積の平均値を細孔平均面積とした。
[白金触媒の厚み]
白金触媒の厚み方向の長さを巻き尺により測定し、得られた値を白金触媒の厚みとした。なお、白金触媒がハニカム構造を有する場合は、ハニカム構造が成す多角形平面と垂直な方向を厚み方向とし、発泡体である場合は気体循環経路に配置した際に空気が通過する方向を厚み方向とした。
[熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスク]
フィルムの製造を開始してから7日目の時点で、以下の手順で熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度の測定を行い、以下の評価基準で熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスクを評価した。以下、測定手順及び評価基準について説明する。なお、熱固定ゾーンにおけるオリゴマ量の測定は最も冷却ゾーンに近い部屋で実施した。
(手順)
図2及び図3を参照しながら、熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度の測定手順について説明する。熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度の測定は、以下の(1)〜(5)の手順で行った。なお、図2に破線で示すテンター装置の一部「A」は、図3に符号Aで表すものと同じである。
(1) テンター装置4におけるサンプリング用の穴にステンレス製パイプ14を通し、その一端がノズル7a及び7bの端に位置するようにセットした。なお、ステンレス製パイプ14の他端はテンター装置4の外でガラスサンプラー15に接続し、ステンレス製パイプ14は冷却を防ぐためヒータ16で昇温させた。
(2) 吸引ポンプ17によるガスメーター18への流量を規定の流量x(ml/min)とし、ガラスサンプラー15にT時間エアを通過させた。また、エア通過中、ガラスサンプラー15にオリゴマを析出させるために、ガラスサンプラー15を氷水で冷却した。なお、各実施例及び各比較例において、xは(ml/min)5以下、Tは18時間とした。
(3) ガラスサンプラー15を外し、その内部をメタノールy(g)で洗浄した。なお、各実施例及び各比較例ではy(g)は15(g)とした。
(4) 洗浄後のメタノールを回収し、UV分光光度計により波長285nmにおける吸光度Aを測定した。
(5) 吸光度を検量線により濃度Z(mg/m)に換算し、得られた値をオリゴマ濃度(mg/m)とした。その際に使用した式は下記式2である。
式2:Z(mg/m)=A×y/(118.13×6×x×T)。
(評価基準)
熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度より、熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスクを下記に示すA〜Dの4段階で評価し、A〜Cであった場合を合格とした。
A:熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度が0.25mg/m以下であった。
B:熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度が0.25mg/mを超え0.30mg/m以下であった。
C:熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度が0.30mg/mを超え0.40mg/m以下であった。
D:熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度が0.40mg/mを超えた。
[白金触媒の耐久性]
フィルム製造開始から180日目に、[熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスク]に記載の方法で再度熱固定ゾーンにおけるオリゴマ濃度(mg/m)を測定した。得られた値をフィルム製造開始から7日目におけるオリゴマ濃度(mg/m)で除した値(以下、オリゴマ増加量(倍)ということがある。)より、下記評価基準で評価し、A〜Cを合格とした。
(評価基準)
A:熱固定ゾーンにおけるオリゴマ増加量が1.5倍以下であった。
B:熱固定ゾーンにおけるオリゴマ増加量が1.5倍を超え2.0倍以下であった。
C:熱固定ゾーンにおけるオリゴマ増加量が2.0倍を超えた。
[フィルムの厚み、長手方向の厚みムラ]
各実施例及び各比較例で製造されたフィルムより、30mm(幅方向)×10m(長手方向)サイズの長方形状に測定サンプルを切り出した。次いで、アンリツ株式会社製フィルムシックネステスター「KG601A」及び電子マイクロメータ「K306C」を用いて、測定サンプルを搬送速度3m/minで搬送させながら、その厚みを連続的に測定した。得られた値の最大値Tmax(μm)、最小値Tmin(μm)、及び平均値Tave(μm)より、下記式1により長手方向の厚みムラ(%)を算出し、以下の評価基準で評価した。なお、フィルムの厚みはTave(μm)とした。
式1:長手方向の厚みムラ(%)=(Tmax−Tmin)×100/Tave。
(評価基準)
下記に示すA〜Cの3段階で評価し、A又はBであった場合を合格とした。
A:長手方向の厚みムラ(%)が3.5%以下であった。
B:長手方向の厚みムラ(%)が3.5%を超え4.1%以下であった。
C:長手方向の厚みムラ(%)が4.1%を超えた。
[昇温エネルギー]
室温温度下(25℃)で、長さ400mmの直線状の電気ヒータ3本により、幅600mm×高さ600mm×厚さ10mm(厚さが10mmに満たない実施例13については8mm)の白金触媒を表1の温度(℃)になるまで加熱した。このとき電気ヒータは白金触媒の幅方向と平行に150mmピッチで設置した。各実施例及び各比較例に記載の白金触媒が表1の温度に達するまでに要した時間より下記の評価基準で昇温エネルギーを評価し、A又はBを合格とした。
(評価基準)
A:昇温開始から5分未満で表1の温度に達した。
B:昇温開始から5分以上30分未満で表1の温度に達した。
C:昇温開始から30分以上で表1の温度に達した。
[洗浄可否]
各実施例及び各比較例で使用した白金触媒を250℃に加熱したトリエチレングリコールで洗浄し、顕微鏡での観察により形状を確認した。さらに、洗浄後の白金触媒を再度[熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスク]に記載の方法で評価した。形状及び熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスクより下記の基準で評価し、Aを合格とした。
A:変形がなく、熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスクがA〜Cであった。
B:Aに該当しなかった。
(実施例1)
押出機により、固有粘度0.6のポリエチレンテレフタレートを285℃で溶融押出して、口金よりシート状に吐出させ、これを表面温度30℃の冷却ドラムで冷却固化してシート化した。その後、得られた無配向シートを、回転速度の異なる複数のロールを有する縦延伸機を用いて温度90℃、倍率3.5倍の条件で長手方向に延伸して一軸配向シートとした。次いで、この一軸配向シートを前述のテンター装置に導入し、温度115℃、倍率3.5倍の条件で幅方向に延伸して二軸配向フィルムとした後、熱固定ゾーンのホールノズルが噴出する熱風の温度を230℃に制御した環境下で熱固定処理を施した。その後、二軸配向フィルムを70℃以下に冷却して、巻き取り機で150m/分の速度で巻き取り、厚みが12μmである二軸配向フィルムのフィルムロールを得た。このとき、熱固定ゾーンの熱風循環経路に配置した白金触媒は、電気ヒータで加熱して温度を230℃に制御した。上記のとおりフィルムを製造しつつ、熱固定ゾーンにおけるオリゴマ析出リスクを評価し、また、得られたフィルムロールより測定サンプルを採取して長手方向の厚みムラを評価した。評価結果を表1に示す。なお、白金触媒の温度は接触式温度計(HPD−1100 タイプE(安立計器社製))により計測した。
(実施例2〜14 比較例1〜5)
白金触媒の材質、構造、細孔平均面積、充填比重、及び温度を表1のとおりとした以外は、実施例1と同様にフィルムの製造及び各項目の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例6)
白金触媒を配置しなかった以外は、実施例1と同様にフィルムの製造及び各項目の評価を行った。評価結果を表1に示す。
オリゴマの析出を抑制し、オリゴマの付着による欠点の発生を軽減すると共に、長手方向の厚みムラを抑制することができるフィルムの製造方法を提供することができる。本発明のフィルムの製造方法により得られるフィルムは、オリゴマに起因する欠点や長手方向の厚みムラが少ないため、各種光学用フィルムとして用いることができ、特に、プリズムシート用ベースフィルム、ハードコート用ベースフィルム、反射防止(AR)フィルム用ベースフィルム、光拡散用ベースフィルム、及び透明導電性フィルムなどとして好適に用いることができる。
1 三角柱
2 四角柱
3 六角柱
4 テンター装置
5 熱固定ゾーンの部屋
6 フィルム
7a、7b ノズル
8 熱風循環ファン
9 熱風循環経路
10 スチームヒータ
11 フィルター
12 白金触媒
13 電気ヒータ
14 ステンレス製パイプ
15 ガラスサンプラー
16 ヒータ
17 吸引ポンプ
18 ガスメーター
A テンター装置の一部

Claims (6)

  1. 内部に白金触媒と加熱機構とを備える気体循環経路を気体循環経路A、前記気体循環経路Aを備える部屋を部屋Bとしたときに、前記部屋Bを少なくとも一つ備えるテンター装置で少なくとも一方向にシートを延伸する工程を有するフィルムの製造方法であって、前記気体循環経路Aの内部に以下条件(i)〜(iii)を全て満たす白金触媒を備えることを特徴とする、フィルムの製造方法。
    (i) 基材がハニカム構造を有すること。
    (ii) (i)に記載のハニカム構造の細孔平均面積が0.5mm以上3.0mm以下であること。
    (iii) 充填比重が0.3g/cm以上0.7g/cm以下であること。
  2. 前記白金触媒の基材が金属であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 前記白金触媒の厚みが10mm以上70mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 前記白金触媒の温度を、210℃を超え、250℃未満に制御することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  5. 前記部屋Bが、長手方向への気体の流動を抑制する手段を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  6. テンター装置内のオリゴマ濃度を0.40mg/m以下に制御することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
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