JP2020191325A - 磁気センサおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】出力および出力の温度特性におけるオフセットが抑制されたトップピン型の磁気センサを提供すること。【解決手段】感度軸の方向が異なる複数の磁気抵抗効果素子を含む磁気センサであって、磁気抵抗効果素子はそれぞれ、基板11上に、基板11側からフリー磁性層14、非磁性材料層15、および固定磁性層16が積層された構成を有し、固定磁性層16は、非磁性中間層16bを介して積層された二つの磁性層16aと磁性層16cとが反平行に磁化固定されており、固定磁性層16を構成する二つの磁性層のうち、非磁性材料層15に接していない磁性層16aが、非磁性中間層16bに接する第2の強磁性材料層16a3と、第2の強磁性材料層16a3の上に設けられた介在層16a2と、介在層16a2の上に設けられた第1の強磁性材料層16a1とを備えている。【選択図】図3

Description

本発明は、磁気センサおよびその製造方法に関する。
電気自動車やハイブリッドカーにおけるモータ駆動技術などの分野では、比較的大きな電流が取り扱われるため、大電流を非接触で測定することが可能な電流センサが求められている。このような電流センサとしては、被測定電流からの誘導磁界を検出する磁気センサを用いたものが知られている。磁気センサ用の磁気検出素子として、例えば、GMR素子やTMR素子などの磁気抵抗効果素子が挙げられる。
GMR素子は、固定磁性層とフリー磁性層とが非磁性材料層を介して積層された積層構造体を基本構造とする。固定磁性層は、反強磁性層と強磁性層との積層構造体による交換結合バイアスや、2つの強磁性層が非磁性中間層を介して積層されるセルフピン止め構造によるRKKY相互作用(間接交換相互作用)により、磁化方向が一方向に固定されている。フリー磁性層は外部磁界に応じて磁化方向が変化可能とされている。
GMR素子を備えた磁気センサを用いてなる電流センサでは、被測定電流からの誘導磁界がGMR素子に印加されることにより、フリー磁性層の磁化方向が変化する。このフリー磁性層の磁化方向と、固定磁性層の磁化方向との相対角度に応じてGMR素子の電気抵抗値が変動するため、この電気抵抗値を測定することにより、フリー磁性層の磁化方向を検出することができる。そして、磁気センサにより検出された磁化方向に基づいて、誘導磁界を与えた被測定電流の大きさおよびその向きを求めることが可能である。
ところで、電気自動車やハイブリッドカーにおいては、モータの駆動を電流値に基づいて制御する場合があり、また、バッテリーに流れ込む電流値に応じてバッテリーの制御方法を調整する場合がある。したがって、磁気センサを用いてなる電流センサには、電流値をより正確に検出できるように、磁気センサの測定精度を高めることが求められている。
磁気センサの測定精度を向上させるための一手法として、特許文献1に記載されるように、磁気センサが、複数の磁気検出素子(特許文献1では磁気抵抗効果素子)からなる磁気検出ブリッジ回路を備えることが挙げられる。
特許文献1に記載の磁気センサには、同一基板上に感度軸の方向が異なる複数の磁気抵抗効果素子を備えている。特許文献1の磁気センサでは、特定方向に感度軸をもつ磁気抵抗効果素子となる第1積層膜を形成した後、第1積層膜を残存させる領域以外の第1積層膜を基板から除去し、特定方向と異なる方向に感度軸をもつ磁気抵抗効果素子となる第2積層膜を形成する。
WO2011/111649
特許文献1に記載の磁気センサは、感度軸の異なる磁気抵抗効果素子を形成するため、磁気抵抗効果素子ごとに積層工程が行われる。したがって、積層工程の誤差に起因する積層体の層厚差(膜厚差)が生じ、この層厚差は、磁気検出ブリッジ回路からの出力および出力の温度特性にオフセットが生じる原因となる。
そこで、本発明は、磁気検出ブリッジ回路を構成する複数の磁気抵抗効果素子の層厚の差を抑えることにより、磁気検出ブリッジ回路からの出力および出力の温度特性におけるオフセットが抑制されたトップピン型の磁気センサを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために提供される本発明は、一態様において、感度軸の方向が異なる複数の磁気抵抗効果素子を含む磁気センサであって、前記磁気抵抗効果素子はそれぞれ、基板上に、前記基板側からフリー磁性層、非磁性材料層、および固定磁性層が積層された構成を有し、前記固定磁性層は、非磁性中間層を介して積層された二つの磁性層が反平行に磁化固定されており、前記固定磁性層を構成する前記二つの磁性層のうち、前記非磁性材料層に接していない磁性層が、前記非磁性中間層に接する第2の強磁性材料層と、前記第2の強磁性材料層の上に設けられた介在層と、前記介在層の上に設けられた第1の強磁性材料層とを備えている。
磁気抵抗効果素子が、固定磁性層の構成する二つの磁性層のうち基板から遠いほうの磁性層を、第1と第2の強磁性材料層が介在層を挟んだ構成を備えている。したがって、フリー磁性層から介在層までを複数の磁気抵抗効果素子で同時に形成し、介在層の上に第1の強磁性材料層を形成する際の磁場の印加方向によって、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子を形成することができる。
磁気センサにおける磁気抵抗効果素子は、前記第1の強磁性材料層と前記第2の強磁性材料層とが磁気的に結合している。第1と第2との強磁性材料層の磁気的な結合により、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子を同一基板上に形成することが容易になる。
第1と第2との強磁性材料層を磁気的に結合させるために、前記介在層は、PtおよびPdからなる群から選ばれる1種または2種であること、前記第1の強磁性材料層の磁化量および保磁力が、前記第2の強磁性材料層の磁化量および保磁力以上であること、前記介在層の層厚が15Å以下であることが好ましい。
前記第1の強磁性材料層に反強磁性層が積層されていてもよい。反強磁性層と第1の強磁性材料層との反強磁性結合により固定磁性層の磁化が安定化し、磁気センサの磁場耐性が向上する。
前記磁気抵抗効果素子はそれぞれ、前記フリー磁性層の前記基板側に反強磁性層を有していてもよい。反強磁性層とフリー磁性層との反強磁性結合により、フリー磁性層の磁化分散を抑制し、多磁区化し難い、つまり強磁場耐性に優れる磁気センサとすることができる。
本発明は、他の一態様において、上記磁気センサの製造方法であって、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層、前記非磁性材料層に接する磁性層、前記非磁性中間層、第2の強磁性材料層および前記介在層を、感度軸の方向が異なる前記複数の磁気抵抗効果素子について同時に成膜し、前記磁気抵抗効果素子の前記感度軸の方向毎に、前記磁気抵抗効果素子の個別パターンを形成し、前記感度軸の方向の磁場を印加しながら、前記第1の強磁性材料層を成膜する、磁気センサの製造方法である。
感度軸の方向が異なる前記複数の磁気抵抗効果素子について、磁性層、非磁性中間層、第2の強磁性材料層および前記介在層を同時に成膜することにより、各層を同じ厚みにすることができる。したがって、出力および出力の温度特性におけるオフセットが抑制された磁気センサとなる。
本発明は、他の一態様において、前記フリー磁性層の前記基板側に反強磁性層を有する上記磁気センサの製造方法であって、前記反強磁性層、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層、前記非磁性材料層に接する磁性層、前記非磁性中間層、第2の強磁性材料層および前記介在層を、前記感度軸の方向が異なる前記複数の磁気抵抗効果素子について同時に成膜し、前記反強磁性層により前記フリー磁性層にバイアス磁界を印加するために磁場中アニールを行い、前記磁気抵抗効果素子の前記感度軸の方向毎に前記磁気抵抗効果素子の個別パターンを形成し、前記感度軸の方向の磁場を印加しながら、前記第1の強磁性材料層を成膜する、磁気センサの製造方法である。
同時に成膜した積層体に対して磁場中アニールを行った後に、第1の強磁性材料層を成膜することにより、磁場中アニールによる固定磁性層の磁化分散、または磁化傾斜を抑制し、強磁場耐性が良好で、高精度の磁気センサとなる。
本発明の磁気センサは、フリー磁性層から介在層までを複数の磁気抵抗効果素子で同時に成膜することができる。したがって、磁気検出ブリッジ回路を構成する複数の磁気抵抗効果素子の層厚の差を抑えることができるから、出力および出力の温度特性におけるオフセットが抑制されたトップピン型の磁気センサを提供することができる。
第一の実施形態に係る磁気センサの構成を概念的に示す平面図 磁気抵抗効果素子の構造を概念的に示す平面図 図2に示した破線で切断したB−B矢視断面における積層構造を模式的に示す図 (a)〜(h)第一の実施形態に係る磁気抵抗効果素子(GMR素子)の製造方法を説明する図 (a)〜(c)第一の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の積層構造を模式的に示す図 第一の実施形態に係る磁気抵抗効果素子(TMR素子)の積層構造を模式的に示す図 (a)〜(c)第二の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の積層構造を模式的に示す図 強磁性材料の層厚比とMR比との関係を示すグラフ 磁気抵抗効果素子における印加磁界と△R/Rとの関係を示すグラフ(a)比較例1、(b)実施例4、(c)実施例5 磁性層を構成する介在層の層厚とMR比との関係を示すグラフ 磁気抵抗効果素子における印加磁界と△R/Rとの関係を示すグラフ(a)比較例2、(b)実施例10、(c)実施例11 強磁性材料の層厚比とMR比との関係を示すグラフ 磁気抵抗効果素子における印加磁界と△R/Rとの関係を示すグラフ(a)比較例3、(b)実施例16、(c)実施例17 磁気抵抗効果素子における印加磁界と△R/Rとの関係を示すグラフ、アニール条件(a)強磁性材料層形成前、磁場中、(b)全層形成後、磁場中、(c)全層形成後、無磁場中 磁気抵抗効果素子における印加磁界と△R/Rとの関係を示すグラフ、アニール条件(a)強磁性材料層形成前、磁場中、(b)全層形成後、磁場中、(c)全層形成後、無磁場中
(第一の実施形態)
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る磁気センサの構成を概念的に示す平面図である。同図に示されるように、本発明の一実施形態に係る磁気センサ10は、外部磁界の変化に応じて抵抗値が変化する4つの磁気検出部を備えた、磁気検出ブリッジ回路10Cを有している。
各磁気検出部は、磁気抵抗効果素子からなる磁気測定素子を備えている磁気を検出する部分である。4つの磁気検出部は、感度軸の方向が異なる2種類の磁気検出部(磁気抵抗効果素子1、磁気抵抗効果素子2、以下、これらを区別しない場合、適宜、磁気抵抗効果素子という)から構成される。
磁気抵抗効果素子1と磁気抵抗効果素子2とは、共通の積層構造であるが、感度軸の方向が互いに反対である。中抜き矢印は、固定磁性層の磁化の向きすなわち感度軸の方向を示している。磁気センサ10は、同一基板上に磁気抵抗効果素子1および磁気抵抗効果素子2が形成されたいわゆるワンチップ構成であるから、小型化に有利である。
磁気検出ブリッジ回路10Cは、電源給電点である電源端子Vddとグランド端子Gndとの間に、磁気抵抗効果素子1と磁気抵抗効果素子2とが直列に接続された部分(直列部分)が、並列に接続されている。並列に接続された2つの直列部分は、磁気抵抗効果素子1と磁気抵抗効果素子2とが異なる順で接続されている。
並列に接続された各直列部分の磁気抵抗効果素子の間には、それぞれ出力(Out1、Out2)が設けられる。これらの2つの出力の電位差(Out1−Out2、中点電位差)を増幅器Ampに入力する。磁気センサ10は、増幅器Ampからの出力(差動出力)により、外部から印加された磁場(外部磁場)の大きさを定量的に測定できる。
図2は、第1実施形態に係る磁気センサ10が備える磁気抵抗効果素子の構造を概念的に示す平面図である。磁気抵抗効果素子は、図2に示すように、その長手方向が互いに平行になるように配置された複数の長尺パターン(ストライプ)3が折り返し部4により接続された形状(ミアンダ形状)を有する。長尺パターン3が折り返し部4で接続されることにより、長尺パターン3は全体が電気的に直列に接続され、両端部のそれぞれには電極4Aが設けられている。このミアンダ形状を備えた磁気抵抗効果素子は、感度軸方向(Pin方向)が長尺パターン3の長手方向に対して直交する幅方向であり、幅方向の外部磁場を測定する。
図3は、図2に示した破線で切断したB−B矢視断面における積層構造を模式的に示す図である。磁気センサ10が備える磁気抵抗効果素子は、基板11上に、基板11側からフリー磁性層14、非磁性材料層15、および固定磁性層16が積層された構成を有している。固定磁性層16は、非磁性中間層16bを介して積層された二つの磁性層16a、16cが反平行に磁化固定されたRKKY相互作用に基づくセルフピン止め層である。磁気抵抗効果素子は、フリー磁性層14よりも基板11から離れた位置に固定磁性層16が積層されたトップピン型である。
図3には、参照の便宜のため、磁気抵抗効果素子を構成する層の機能または材料の一例を示している。本明細書および図面において、AとBとの合金AXat.%(100−X)at.%をXABと記載する。例えば、Fe60at.%Co40at.%-は60FeCoと記載し、Co90at.%Fe10at.%は90CoFeと記載する。
固定磁性層16は、非磁性中間層16bを介して配置される磁性層16aと磁性層16cとの間のRKKY相互作用により、一方の向きに磁化が固定されている。
磁性層16a、16cはいずれも強磁性層であり、これらを構成する材料として、CoFe合金が例示される。磁性層16a、16cがCoFe合金から構成される場合において、磁性層16aを構成するCoFe合金におけるFeの含有量を、磁性層16cを構成するCoFe合金におけるFeの含有量よりも高くすることが好ましい。このようにすることで、磁性層16aの保磁力が磁性層16cの保磁力よりも高くなり、成膜中に磁化された磁性層16aによって磁性層16cが磁化固定されやすくなる。
磁性層16aと磁性層16cとの間に位置する非磁性中間層16bはRuなどにより構成される。非磁性中間層16bの厚さを3〜5Å、または、7〜10Åにすることにより、磁性層16aと磁性層16cとの間の反強磁性結合が強くなる。
図3に示すように、磁気センサ10の備える磁気抵抗効果素子は、固定磁性層16を構成する二つの磁性層16aおよび磁性層16cのうち、非磁性材料層15に接していない磁性層16aが積層構造を備えている。具体的には、非磁性中間層16b側から、非磁性中間層16bに接する強磁性材料層(第2の強磁性材料層)16a3と、強磁性材料層16a3の上に設けられた介在層16a2と、介在層16a2の上に設けられた強磁性材料層(第1の強磁性材料層)16a1との積層構造である。
介在層16a2の具体的な構成(組成、厚さなど)は、強磁性材料層16a1と強磁性材料層16a3とが介在層16a2を介して磁気的に結合することができる限り、限定されない。
強磁性材料層16a1は、磁化量(飽和磁化Ms・層厚t)および保磁力(Hc)が、強磁性材料層16a3以上であることが好ましい。これにより、基板11上の、絶縁層12、シード層13、フリー磁性層14、非磁性材料層15、磁性層16a、非磁性中間層16b、強磁性材料層16a3および介在層16a2を積層した後に、介在層16a2上に所定のパターンで強磁性材料層16a1を積層する際に印加する磁場の方向により、パターンに対応する領域ごとに感度軸の向きが異なる磁気抵抗効果素子を容易に形成することができる。なお、強磁性材料層16a1および強磁性材料層16a3は、単層または多層のいずれとしてもよい。
介在層16a2は、強磁性材料層16a1と強磁性材料層16a3とを介在層16a2を介して磁気的に結合するものであり、PtおよびPdからなる群から選ばれる1種または2種含有することが好ましく、これらの1種または2種からなることがより好ましい。同様の観点から、介在層16a2の厚さは、15Å以下であることが好ましい。
介在層16a2は、介在層16a2の基板11側に下に形成された強磁性材料層16a3層の酸化を抑制する機能をも有する。厚さが3Å以上の介在層16a2を形成すれば、安定的に、強磁性材料層16a3層の酸化を抑制することができる。
セルフピン止め型の固定磁性層16の磁化状態は、図3に示されるとおりである。すなわち、磁性層16cの磁化の向きScが右向きとなっており、非磁性中間層16bを介して磁性層16cとのRKKY相互作用が生じている磁性層16aを構成する強磁性材料層16a1、16a3の磁化の向きSa1、Sa3はいずれも左向きとなっている。なお、固定磁性層16の磁化固定力をできるだけ強くする観点から、磁性層16aと磁性層16cとの磁化量(飽和磁化Ms・層厚t)の差が実質的にゼロとなるように調整されている。フリー磁性層14の磁化の向きFは、形状異方性に基づく磁気異方性により、紙面奥向きである。
非磁性材料層15はCuなどにより構成される。フリー磁性層14はCoFe合金、NiFe合金、CoFeNi合金などの磁性材料で構成される。フリー磁性層14は、単層でも複数の膜からなる積層構造を有していてもよい。
磁気センサ10が備えている磁気抵抗効果素子は、図3に示すように、強磁性材料層16a1に反強磁性層17が積層されていても良い。反強磁性層17を積層することにより、交換結合により磁性層16aの磁化が安定化し、強磁場耐性が向上する。反強磁性層17としては、IrMnやPtMn等が挙げられるが、Hcに対してHexを大きくできることからIrMnが好ましい。反強磁性層17は、Taなどの保護層18により保護される。
(製造方法)
本実施形態に係る磁気センサ10を効率的に製造できる方法について、以下に説明する。
同一基板上に複数の感度軸を持つ(以降、マルチピンと称する)磁気センサ10において、磁気抵抗効果素子を構成する積層体に層厚差が僅かでも生じると、磁気検出ブリッジ回路10Cからの出力および温度特性にオフセットが発生してしまう。従来、感度軸方向の異なる磁気抵抗効果素子を備えたマルチピンの磁気センサ10は、特定方向に感度軸を備えた磁気抵抗効果素子と、感度軸方向の異なる他の磁気抵抗効果素子とが、別々に形成されていたため、製造工程の誤差により生じた層厚差に起因する出力および温度特性にオフセットが発生しやすい。
磁気抵抗効果素子を構成する材料のうち、磁気検出ブリッジ回路10Cからの出力のオフセットへの影響度が大きいのは、比抵抗が比較的小さい非磁性材料層15および非磁性材料層15に隣接するフリー磁性層14および磁性層16cである。また、オフセット温度特性への影響度が大きい層も、非磁性材料層15に隣接するフリー磁性層14および磁性層16cである。これらは、抵抗温度係数(TCR、Temperature Coefficient of Resistance)が比較的大きい材料のCoFe、NiFe等を含み、電流密度が高いからである。
そこで、本実施形態の製造方法は、フリー磁性層14、非磁性材料層15、非磁性材料層15に接する磁性層16c、非磁性中間層16b、強磁性材料層16a3および介在層16a2を、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子について同時に成膜する(同時成膜工程)。そして、個別パターンを形成し、感度軸方向の磁場を印加しながら、強磁性材料層16a1を成膜する(個別成膜工程)ことにより、感度軸方向が異なる磁気抵抗効果素子1と磁気抵抗効果素子2を形成する。
このように、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子を構成する層を同時に成膜することにより、製造工程の誤差に起因して層厚差が発生することを防止できる。磁気センサ10は、磁気抵抗効果素子を構成する積層構造のうち、フリー磁性層14、非磁性材料層15および磁性層16cが積層された部分を同時に成膜する。これにより、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子1と磁気抵抗効果素子2とにおいて、オフセットに対する影響が大きい層の層厚が同一になる。したがって、磁気検出ブリッジ回路10Cからの出力および温度特性のオフセットが抑制された。測定精度の良好な磁気センサ10となる。
また、GMR1とGMR2とで上記の層を同時に成膜することにより、磁気センサ10の出力のオフセットおよびオフセットの温度特性を小さくすることができる。また、ウェハ内、ウェハ間、ロット間における磁気センサ10の出力のオフセットおよびオフセットの温度特性のばらつきも小さくできる。
図4(a)〜図4(h)は、本実施形態に係る磁気抵抗効果素子の製造方法を説明する図であり、図5(a)〜図5(c)は、磁気抵抗効果素子の積層構造を模式的に示す図である。
図4(a)に示すように、基板11上に、絶縁層12、シード層13、フリー磁性層14、非磁性材料層15、磁性層16c、非磁性中間層16b、強磁性材料層16a3および介在層16a2を順次形成する(同時成膜工程)。なお、同時成膜工程は、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子において機能が共通する層を「同時」に成膜する工程である。図5(a)は、この段階における、磁気抵抗効果素子の積層構造を示している。
次いで、図4(b)に示すように、介在層16a2の上にAl保護層21を形成した後、Al保護層21を覆うレジスト層22を形成する。レジスト層22を形成する前に、介在層16a2の上にAl保護層21を形成しておくことにより、フォトリソグラフィにおいて用いられる有機物の残渣が磁気抵抗効果素子に対して悪影響を及ぼすことを防止できる。
フォトリソグラフィにより、磁気抵抗効果素子2となる領域にレジスト層22を残存させ、レジスト層22のパターンを形成する。この際、図4(c)に示すようにAl保護層21は現像液で溶解する。これにより、磁気抵抗効果素子1を設ける領域の介在層16a2を露出させることができる。
次いで、図4(d)に示すように、矢印で示すミアンダ形状のストライプ幅方向(図に向かって左方向)に向かって磁場を印加しながら強磁性材料層16a1を成膜した後、強磁性材料層16a1の上に反強磁性層17および保護層18を成膜する。次いで、図4(e)に示すように、レジスト層22のパターンを取り除く。この段階で、所定の領域に磁気抵抗効果素子1が形成される。図5(b)は、この段階における、磁気抵抗効果素子の積層構造を示している。
磁性層16aと磁性層16cとを交換結合させるには、この場合、非磁性中間層16bの層厚最適化および磁性層16aと磁性層16cとでMs・tを一致させることが重要である。
次いで、図4(f)に示すように、レジスト層22を形成し、フォトリソグラフィにより、磁気抵抗効果素子1の領域上にレジスト層22を残存させて、レジスト層22のパターンを形成する。この際に現像液に溶解することにより、磁気抵抗効果素子2の領域上のAl保護層21が除去される。
次いで、図4(g)に示すように、矢印で示す方向(図に向かって右)に向かって磁場を印加しながら強磁性材料層16a1を成膜した後、強磁性材料層16a1の上に反強磁性層17および保護層18を成膜する。次いで、図4(h)に示すように、磁気抵抗効果素子1を覆うレジスト層22のパターンを取り除くことにより、所定の領域に磁気抵抗効果素子1および磁気抵抗効果素子2が形成される。
次いで、磁気抵抗効果素子を覆うレジスト層22を形成し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、磁気抵抗効果素子のミアンダ形状(図2参照)に対応する領域にレジスト層22を残存させて、レジスト層22のパターンを形成する。そして、露出した領域をイオンミリングなどにより除去した後、レジスト層22のパターンを取り除く。
図5(c)に示すように、磁気抵抗効果素子1の強磁性材料層16a1とは異なる方向に磁場を印加しながら、磁気抵抗効果素子2となる領域に強磁性材料層16a1が成膜される。成膜された強磁性材料層16a1が介在層16a2を介して、強磁性材料層16a3と磁気的に結合すことで、強磁性材料層16a3の磁化方向を変化させることができる。
以上のように、磁気抵抗効果素子1と磁気抵抗効果素子2とは、絶縁層12から介在層16a2までの層が同時に成膜され同じ膜厚になる。このように磁気検出ブリッジ回路10Cからの出力および温度特性のオフセットへの影響が大きい層を、同時に成膜して同じ膜厚とすることにより、オフセットが抑制された測定精度が良好な磁気センサ10(図1参照)となる。
図4(a)〜図4(h)には、同一基板上に感度軸の方向が180°異なる2種類の磁気抵抗効果素子を示したが、磁気抵抗効果素子の種類は2種類に限定されない。例えば、感度軸の方向が90°、180°、270°異なる4種類の磁気抵抗効果素子を同一基板上に形成してもよい。この場合、感度軸の方向の異なる磁気抵抗効果素子毎に、異なる方向に磁場を印加しながら強磁性材料層16a1の成膜が4回繰り返される。
上述した説明では、磁気抵抗効果素子の例として、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)を示したが、GMR素子に代えて、トンネル型磁気抵抗効果素子(TMR素子)を用いることもできる。
図6は、TMR素子の積層構造を模式的に示す図である。同図に示すように、TMR素子は、下部電極31および上部電極32を備えている。また、GMR素子における非磁性材料層15に代えて絶縁障壁層35を備えている。絶縁障壁層35は、MgO、Al、酸化チタンなどにより構成される。
(第二の実施形態)
本実施形態では、磁気抵抗効果素子におけるフリー磁性層の基板側に反強磁性層が設けられた磁気抵抗効果素子について説明する。本実施形態の製造方法は、反強磁性層との交換結合によってフリー磁性層にバイアス磁界を印加してフリー磁性層の磁化分散を抑制するため、磁場中においてアニール処理を行う。この点において、上述した第一の実施形態の製造方法とは異なっている。以下、機能が同じ部材には同じ番号を付し、第一の実施形態との相違点を中心に説明する。
本実施形態の製造方法は、強磁性材料層16a1を形成する前に磁場中アニールを行うこと以外、図4(a)〜図4(h)及び図5(a)〜図5(c)を参酌して説明した第一の実施形態における製造方法と同様である。
図7(a)に示すように、まず、反強磁性層27、フリー磁性層14、非磁性材料層15、磁性層16c、非磁性中間層16b、強磁性材料層16a3および介在層16a2を、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子について同時に成膜する。次いで、ミアンダ形状のストライプ長手方向(図2参照、図7(a)に向かって奥方向)に向かって磁場を印加しながらアニール処理を行い、反強磁性層27との交換結合によるバイアス磁界を印加してフリー磁性層14の磁化分散を抑制する。
図7(b)および図7(c)に示すように、本実施形態の磁気抵抗効果素子は、磁場中アニールを行った後に強磁性材料層16a1が形成される。このため、感度軸の方向が異なる磁気抵抗効果素子が形成された後の磁場中アニールにより、磁性層16a、非磁性中間層16b、磁性層16cからなる固定磁性層16の磁化が分散、または傾斜することがない。したがって、磁気センサ10(図1参照)は、固定磁性層16の磁化が分散の小さい状態で感度軸の方向に強く固定され、磁場耐性が良好なものとなる。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
(実施例1〜6)
基板11に形成した絶縁層12上に、表1に示す材料および層厚で、感度軸の方向が異なる複数の磁気抵抗効果素子に共通する共通層[シード層13/フリー磁性層14/非磁性材料層15/磁性層16c/非磁性中間層16b/強磁性材料層16a3/介在層16a2]を形成した。
図5(b)に示すように、共通層における強磁性材料層16a3は、共通層上に先に形成された磁気抵抗効果素子1における強磁性材料層16a1と同じ方向に磁化されている。その後、図5(c)に示すように、磁気抵抗効果素子1とは異なる方向に磁場を印加しながら強磁性材料層16a1を形成することにより、磁気抵抗効果素子2となる領域の強磁性材料層16a3は、強磁性材料層16a1と同じ方向に磁化される。共通層上の強磁性材料層16a1を成膜時に印加する磁場方向により、セルフピン止め層の磁化方向を制御することが可能かを検証するため、表1に示すように、実施例1〜6では、成膜する際に印加する磁場の方向を強磁性材料層16a3と強磁性材料層16a1とで反対にした。
表1に示すように、磁性層16aを構成する、介在層16a2の層厚を7.0Åに固定し、強磁性材料層16a3と強磁性材料層16a1との厚みの合計を20Åとしたうえで、強磁性材料層16a1の層厚Xを、18.0Å、15.0Å、12.5Å、10.0Å、7.0Åまたは4.0Åに変化させた磁気抵抗効果素子を製造した。表1、表2、表4、表6、表7および表9に示す成膜時磁場方向は、←がマイナス磁場方向、→がプラス磁場方向を示す。
Figure 2020191325
(比較例1)
実施例1〜6における、磁性層16a(強磁性材料層16a3/介在層16a2/強磁性材料層16a1)を構成する60FeCo(20−X)/Pt(7.0)/60FeCo(X)を、60FeCo(20.0)に変更して、表2に示す構成を備えた比較例1の磁気抵抗効果素子を製造した(カッコ内の数字は各層の層厚(Å)を示す。)。
Figure 2020191325
以上のようにして得られた実施例1〜6および比較例1の磁気抵抗効果素子を290℃で3時間アニールした後、外部磁場を印加してMR比(△R/R、単位:%)を測定した。磁性層16aの強磁性材料層16a1および16a3の層厚の合計に対する強磁性材料層16a1の層厚比(16a1/(16a1+16a3))と、MR比(△MR)との関係を表3および図8に示す。
図9(a)、図9(b)および図9(c)は、比較例1、実施例4(層厚比0.50)および実施例5(層厚比0.35)の磁気抵抗効果素子における印加磁界(外部磁場)と△R/Rとの関係を示すグラフである。
Figure 2020191325
図9(b)に示す、強磁性材料層16a1と強磁性材料層16a3との層厚の合計に対して、強磁性材料層16a1の層厚が占める割合(層厚比)が0.50の磁気抵抗効果素子の外部磁界と△R/Rとの関係を示すグラフの形は、図9(a)に示す比較例1同様、プラス磁場側で高抵抗になった。対して、図9(c)に示す、層厚比が0.35の磁気抵抗効果素子のグラフは、図9(a)に示す比較例1とは異なりマイナス磁場側で高抵抗になった。この結果から、層厚比が0.50以上であれば、強磁性材料層16a1成膜時の磁場方向でセルフピン止め層の磁化方向を制御可能であることが分かった。
実施例1〜実施例6では、強磁性材料層16a1と強磁性材料層16a3とを同じ強磁性材料(60FeCo)を用いて形成した。しかし、両者を異なる強磁性材料を用いて形成してもよい。この場合、強磁性材料層16a1は、強磁性材料層16a3よりも、磁化量(=飽和磁化Ms・層厚t)および保磁力(Hc)が大きくなる材料および層厚とする。
(実施例7〜12)
基板11に形成した絶縁層12上に、表4に示す材料および層厚で、感度軸の方向が異なる複数の磁気抵抗効果素子に共通する共通層[シード層13/フリー磁性層14/非磁性材料層15/磁性層16c/非磁性中間層16b/強磁性材料層16a3/介在層16a2]を形成した。
表4に示すように、磁性層16aを構成する、介在層16a2の層厚Yを変化させた実施例7〜12の磁気抵抗効果素子を作製した。具体的には、表5に示すように、介在層16a2の層厚Yを、7.5Å、10.0Å、12.5Å、15.0Å、17.5Åまたは20.0Åに変化させた磁気抵抗効果素子を製造した。
Figure 2020191325

(比較例2)
実施例7〜12における60FeCo(7.5)/Pt(Y)/60FeCo(12.5)を、60FeCo(20.0)に変更して、表1に示す実施例1と同じ構成を備えた磁気抵抗効果素子を製造した。
以上のようにして得られた実施例7〜12および比較例2を290℃で3時間アニールした後、外部磁場を印加してMR比(△R/R、単位:%)を測定した。磁性層16aを構成する介在層16a2の層厚とMR比との関係を表5および図10に示す。
図11(a)、図11(b)および図11(c)は、比較例2、実施例10(層厚15.0Å)および実施例11(層厚17.5Å)の磁気抵抗効果素子における印加磁界(外部磁場)と△R/Rとの関係を示すグラフである。
図11(a)および図11(b)に示すように、介在層16a2の層厚が15Åである磁気抵抗効果素子の外部磁界と△R/Rとの関係を示すグラフの形は、比較例1同様にプラス磁場側で高抵抗になった。対して、図11(c)に示す介在層16a2の層厚が17.5Åの磁気抵抗効果素子のグラフは、比較例1とは異なり、グラフの形が反転してマイナス磁場側で高抵抗になった。この結果は、介在層16a2の層厚が17.5Å以上となると強磁性結合が消失したことを示唆している。したがって、介在層16a2の層厚が15Å以下であれば、Ptからなる介在層16a2を介して60FeCoの強磁性結合が発生し、強磁性材料層16a1と強磁性材料層16a3とが磁気的に結合するといえる。
Figure 2020191325
(実施例13〜18)
基板11に形成した絶縁層12上に、表1に示す材料および層厚で、感度軸の方向が異なる複数の磁気抵抗効果素子に共通する共通層[シード層13/反強磁性層27/フリー磁性層14/非磁性材料層15/磁性層16c/非磁性中間層16b/強磁性材料層16a3/介在層16a2]を形成した。実施例13〜18は、シード層13とフリー磁性層14との間に反強磁性層27を備えている点において、実施例1〜6と異なる。
表6に示すように、磁性層16aを構成する、介在層16a2の層厚を7.0Åに固定し、強磁性材料層16a3と強磁性材料層16a1との厚みの合計を20Åとしたうえで、強磁性材料層16a1の層厚Xを18.0Å、15.0Å、12.5Å、10.0Å、7.0Åまたは4.0Åに変化させて、磁気抵抗効果素子を製造した。
Figure 2020191325
(比較例3)
実施例13〜18における、磁性層16a(強磁性材料層16a3/介在層16a2/強磁性材料層16a1)を構成する60FeCo(20−X)/Pt(7.0)/60FeCo(X)を、60FeCo(20.0)に変えて、表7に示す構成を備えた比較例3の磁気抵抗効果素子を製造した(カッコ内の数字は各層の層厚(Å)を示す。)。
Figure 2020191325
以上のようにして得られた実施例13〜18および比較例3の磁気抵抗効果素子を290℃で3時間アニールした後、外部磁場を印加してMR比(△R/R、単位:%)を測定した。磁性層16aを構成する強磁性材料層16a1および16a3における強磁性材料層16a1の層厚比(16a1/(16a1+16a3))と、MR比との関係を表8および図12に示す。
図13(a)、図13(b)および図13(c)は、比較例3、実施例16(層厚比0.50)および実施例17(層厚比0.35)の磁気抵抗効果素子における印加磁界(外部磁場)と△R/Rとの関係を示すグラフである。
Figure 2020191325
表8および図13(a)〜図13(c)に示すように、シード層13とフリー磁性層14との間に反強磁性層27を設けた実施例13〜18および比較例3の磁気抵抗効果素子は、実施例1〜6および比較例1と同様の結果を示した。
(実施例15)
表9に示す構成を備えた実施例15の磁気抵抗効果素子について、反強磁性層27との交換結合によりフリー磁性層14の磁化分散抑制のために行うアニールの条件(実施タイミング、および磁場の有無)を変えて、印加磁場と△R/Rとの関係を測定した。
図14(a)〜(c)および図15(a)〜(c)は、以下の条件で磁気抵抗効果素子をアニールした後の測定結果である。
(a)共通層を形成した後、強磁性材料層16a1を形成する前に、磁場中(100mT)でアニール
(b)全層を形成した後に、磁場中(100mT)でアニール
(c)全層を形成した後に、無磁場中でアニール
Figure 2020191325
磁場中でアニール処理した図14(a)および図14(b)の磁気抵抗効果素子はいずれも、無磁場中でアニール処理した図14(c)の磁気抵抗効果素子よりも高いヒステリシス抑制効果を示した。これは、反強磁性層27との交換結合によりフリー磁性層14の磁化分散が抑制されたためと考えられる。また、図14(a)と図14(b)とはグラフ形状が略同じであった。このことから、強磁性材料層16a1を形成する前に行った磁場中アニールの効果は、その後の強磁性材料層16a1を形成する際に印加された磁場によって低下しないといえる。
また、図15(a)に示すように、強磁性材料層16a1を形成する前にアニールを磁場中で行うことにより、印加磁場と△R/Rとの関係を示すグラフにプラトー領域が形成された。このことは、磁気抵抗効果素子を構成する固定磁性層の磁化分散、または磁化傾斜が小さく、強磁場耐性が高いことを示している。固定磁性層の磁化分散の程度は、プラトー領域におけるプラトー磁場(Hp(+)、Hp(−))で評価することができる。ここで、「プラトー磁場」とは、磁化固定層の磁化反転が始まる磁場の大きさであり、固定磁性層のMs・tが2%変動した磁場の大きさ(単位面積当たりの飽和磁化、フリー磁性層磁化反転の終了時)で定義する。
図15(b)に示すように、全層を形成した後に磁場中でアニールすると、印加磁場と△R/Rとの関係を示すグラフにプラトー領域が形成されなかった。対して、図15(c)に示すように、全層を形成した後に無磁場中でアニールした場合には、プラトー領域が形成されている。このことから、磁場中でのアニールにより、セルフピン止め層を形成する固定磁性層16の磁性層16a、非磁性中間層16bおよび磁性層16cの間の磁化分散、または磁化傾斜が大きくなって、高磁場耐性が低下したものといえる。
共通層を形成した後、強磁性材料層16a1を形成する前に、磁場中(100mT)でアニールすることにより、高いヒステリシス抑制効果(図14(a)参照)と、良好な強磁場耐性(図15(a)参照)とを、安定的に実現することができる。
本発明の磁気センサは、検出された磁化方向に基づいて、誘導磁界を与えた被測定電流の大きさおよびその向きを求める電流センサなどに用いることができる。
1、2 :磁気抵抗効果素子
3 :長尺パターン
4 :折り返し部
4A :電極
10 :磁気センサ
10C :磁気検出ブリッジ回路
11 :基板
12 :絶縁層
13 :シード層
14 :フリー磁性層
15 :非磁性材料層
16 :固定磁性層
16a :磁性層
16a1、16a3:強磁性材料層
16a2 :介在層
16b :非磁性中間層
16c :磁性層
17、27 :反強磁性層
18 :保護層
21 :Al保護層
22 :レジスト層
31 :下部電極
32 :上部電極
35 :絶縁障壁層
Gnd :グランド端子
Vdd :電源端子
Out1、Out2:出力
Amp :増幅器
Sc、Sa1、Sa3:磁化の向き

Claims (9)

  1. 感度軸の方向が異なる複数の磁気抵抗効果素子を含む磁気センサであって、
    前記磁気抵抗効果素子はそれぞれ、基板上に、前記基板側からフリー磁性層、非磁性材料層、および固定磁性層が積層された構成を有し、
    前記固定磁性層は、非磁性中間層を介して積層された二つの磁性層が反平行に磁化固定されており、
    前記固定磁性層を構成する前記二つの磁性層のうち、前記非磁性材料層に接していない磁性層が、前記非磁性中間層に接する第2の強磁性材料層と、前記第2の強磁性材料層の上に設けられた介在層と、前記介在層の上に設けられた第1の強磁性材料層とを備えていることを特徴とする磁気センサ。
  2. 前記第1の強磁性材料層と前記第2の強磁性材料層とが磁気的に結合している、
    請求項1に記載の磁気センサ。
  3. 前記介在層は、PtおよびPdからなる群から選ばれる1種または2種である、
    請求項1に記載の磁気センサ。
  4. 前記第1の強磁性材料層の磁化量および保磁力が、前記第2の強磁性材料層の磁化量および保磁力以上である、
    請求項1に記載の磁気センサ。
  5. 前記介在層の層厚が15Å以下である、
    請求項1に記載の磁気センサ。
  6. 前記第1の強磁性材料層に反強磁性層が積層されている、
    請求項1に記載の磁気センサ。
  7. 前記複数の磁気抵抗効果素子のそれぞれは、前記フリー磁性層の前記基板側に反強磁性層を有している、
    請求項1に記載の磁気センサ。
  8. 請求項1に記載される磁気センサの製造方法であって、
    前記フリー磁性層、前記非磁性材料層、前記非磁性材料層に接する磁性層、前記非磁性中間層、第2の強磁性材料層および前記介在層を、感度軸の方向が異なる前記複数の磁気抵抗効果素子について同時に成膜し、
    前記磁気抵抗効果素子の前記感度軸の方向毎に、前記磁気抵抗効果素子の個別パターンを形成し、
    前記感度軸の方向の磁場を印加しながら、前記第1の強磁性材料層を成膜する、磁気センサの製造方法。
  9. 請求項7に記載される磁気センサの製造方法であって、
    前記反強磁性層、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層、前記非磁性材料層に接する磁性層、前記非磁性中間層、第2の強磁性材料層および前記介在層を、前記感度軸の方向が異なる前記複数の磁気抵抗効果素子について同時に成膜し、
    前記反強磁性層により前記フリー磁性層にバイアス磁界を印加するために磁場中アニールを行い、
    前記磁気抵抗効果素子の前記感度軸の方向毎に、前記磁気抵抗効果素子の個別パターンを形成し、
    前記感度軸の方向の磁場を印加しながら、前記第1の強磁性材料層を成膜する、磁気センサの製造方法。
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