図1は、本実施形態に係る車両の走行制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の車両の走行制御装置1は、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一実施の形態でもある。図1に示すように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1は、センサ11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、車載機器14と、提示装置15と、入力装置16と、駆動制御装置17と、制御装置18とを備える。これらの装置は、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
センサ11は、自車両の走行状態を検出する。たとえば、センサ11として、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の左右の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー、自車両の車速を検出する車速センサ、ドライバーがハンドルを持っているか否かを検出するタッチセンサ(静電容量センサ)およびドライバーを撮像する車内カメラなどが挙げられる。なお、センサ11として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ11の検出結果は、所定時間間隔で制御装置18に出力される。
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成され、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12により検出された対象車両の位置情報は、所定時間間隔で制御装置18に出力される。
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、制御装置18からアクセス可能とされたメモリ(記憶媒体)である。地図データベース13に格納された三次元高精度地図情報は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された道路形状に基づく三次元地図情報であり、地図情報とともに、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア/パーキングエリアなどの詳細かつ高精度の位置情報が、三次元情報として関連付けられた地図情報である。
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーにより操作されることで動作する。このような車載機器としては、ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14がドライバーにより操作された場合に、その情報が制御装置18に出力される。
提示装置15は、たとえば、ナビゲーション装置が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、オーディオ装置が備えるスピーカー、および振動体が埋設された座席シート装置などの装置である。提示装置15は、制御装置18の制御に従って、後述する提示情報および車線変更情報をドライバーに報知する。
入力装置16は、たとえば、ドライバーの手動操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置16を操作することで、提示装置15により提示された提示情報に対する設定情報を入力することができる。図2は、本実施形態の入力装置16の一部を示す正面図であり、ステアリングホイールのスポーク部などに配置されたボタンスイッチ群からなる一例を示す。図示する入力装置16は、制御装置18が備える自律速度制御機能及び自律操舵制御機能のON/OFFを設定する際に使用するボタンスイッチであり、メインスイッチ161と、リジューム・アクセラレートスイッチ162と、セット・コーストスイッチ163と、キャンセルスイッチ164と、車間調整スイッチ165と、車線変更支援スイッチ166とを備える。
メインスイッチ161は、制御装置18の自律速度制御機能及び自律操舵制御機能を実現するシステムの電源をON/OFFするスイッチである。リジューム・アクセラレートスイッチ162は、自律速度制御機能の作動をOFFしたのちOFF前の設定速度で自律速度制御機能を再開したり、設定速度を上げたり、先行車に追従して停車したのち再発進させたりするスイッチである。セット・コーストスイッチ163は、走行時の速度で自律速度制御機能を開始したり、設定速度を下げたりするスイッチである。キャンセルスイッチ164は、自律速度制御機能をOFFするスイッチである。車間調整スイッチ165は、先行車との車間距離を設定するためのスイッチであり、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択するスイッチである。車線変更支援スイッチ166は、制御装置18が車線変更の開始をドライバーに確認した場合に車線変更の開始を指示する(承諾する)ためのスイッチである。
なお、図2に示すボタンスイッチ群以外にも、方向指示器やその他の車載機器14のスイッチを入力装置16として用いることもでき、制御装置18が自動で車線変更を行うか否かの問い合わせに対して、ドライバーが方向指示器のスイッチをオンにすることで、車線変更の承諾乃至許可を入力する構成とすることもできる。なお、入力装置16により入力された設定情報は、制御装置18に出力される。
駆動制御装置17は、自車両の走行を制御する。たとえば、駆動制御装置17は、自律速度制御機能により、自車両が設定速度で定速走行したり、先行車に追従走行したりする場合には、自車両が設定速度となるように、又は先行車が存在する場合には自車両と先行車との車間距離が一定距離となるように、加減速度および走行速度を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作を制御する。また、自律操舵制御機能により、自車両が走行する車線(以下、自車線ともいう。)のレーンマークを検出し、自車両が自車線内の、たとえば中央を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御を行う場合、車線変更支援機能、追い越し支援機能又はルート走行支援機能により、自車両が先行車の追い越しや走行方向の変更などの自動車線変更制御を行う場合、右左折支援機能により、交差点などにおいて右折又は左折する走行制御を行う場合には、加減速度および走行速度を実現するための駆動機構の動作並びにブレーキ動作に加えて、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。なお、駆動制御装置17は、後述する制御装置18の指示により自車両の走行を制御する。また、駆動制御装置17による走行制御方法として、その他の公知の方法を用いることもできる。
制御装置18は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
制御装置18は、ROMに格納されたプログラムをCPU(プロセッサ)により実行することにより、自車両の走行状態に関する情報を取得する走行情報取得機能と、自車両の走行速度及び/又は操舵を自律制御する自律走行制御機能(自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御機能と、自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御機能を含む。)を実現する。以下、制御装置18が備える各機能について説明する。
制御装置18の走行情報取得機能は、自車両の走行状態に関する走行情報を取得する機能である。たとえば、制御装置18は、走行情報取得機能により、センサ11に含まれる前方カメラおよび後方カメラにより撮像された車両外部の画像情報や、前方レーダー、後方レーダー、および側方レーダーによる検出結果を、走行情報として取得する。また、制御装置18は、走行情報取得機能により、センサ11に含まれる車速センサにより検出された自車両の車速情報や、車内カメラにより撮像されたドライバーの顔の画像情報も走行情報として取得する。
さらに、制御装置18は、走行情報取得機能により、自車両の現在位置の情報を走行情報として自車位置検出装置12から取得する。また、制御装置18は、走行情報取得機能により、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報を走行情報として地図データベース13から取得する。加えて、制御装置18は、走行情報取得機能により、ドライバーによる車載機器14の操作情報を、走行情報として車載機器14から取得する。
ここで、走行情報取得機能について、図3を用いて説明する。図3は、地図データベース13及び制御装置18のブロック図である。制御装置18は、第1メモリ18a、第2メモリ18b、データ取得部18c、及び走行制御部18dを有している。第1メモリ18aは、地図データベース13から取得したデータを一時的に記憶するメモリ(記憶媒体)である。第1メモリ18aの記憶容量は、地図データベース13の記憶容量よりも小さい。第2メモリ18bは、第1メモリ18aから取得したデータを一時的に記憶するメモリ(記憶媒体)である。第2メモリ18bの記憶容量は、第1メモリ18aの記憶容量よりも小さい。
データ取得部18cは、走行情報取得機能の機能ブロックである。データ取得部18cは、第1メモリ18a、第2メモリ18bの保存及び削除を行う。またデータ取得部18cは、自車両の走行状態に応じて、第2メモリ18bに記憶されているデータのうち、自律制御に必要なデータを取得し、走行制御部18dに出力する。走行制御部18dは、自律走行制御機能の機能ブロックである。
地図データベース13は、例えば日本全国等、特定の地域のデータを記憶している。地図データベース13に記憶されているデータは、ナビゲーションシステムにおけるルート検索に用いられる。そして、データ取得部18cは、地図データベース13に記憶された地図情報のうち、自車両の現在位置に対して所定範囲内の道路情報を第1メモリ18aに記憶させる。例えば、データ取得部18cは、自車両の現在位置から所定距離(例えば2km)先までの道路情報を第1メモリ18aに記憶させる。第1メモリ18aに記憶される車両情報は、車線の中心線、レーンマーク(白線)、制限速度、標識などの情報である
。
またデータ取得部18cは、第1メモリ18aに記憶された道路情報のうち、自車両の現在位置に対して所定範囲の道路情報を第2メモリ18bに記憶させる。例えば、データ取得部18cは、自車両の現在位置から所定距離(例えば1km)先までの道路情報を第2メモリ18bに記憶させる。自車両の現在位置から所定距離先前の道路情報を第1メモリ18a及び第2メモリ18bに記憶させる場合には、メモリへの記憶対象となる所定距離は、第1メモリ18aよりも第2メモリ18bの方が短くなる。
データ取得部18cは、第2メモリ18bに記憶された道路情報のうち、自律制御に必要な道路情報だけを取得し、走行制御部18dに出力する。このとき、データ取得部18cは、複数の車線のうち車両の走行道路を限定できる場合には、車両の走行が走行する道路の道路情報を、第2メモリ18bに記憶された記録情報(データ)から選択的に取得して、走行制御部18dに出力する。言い換えると、データ取得部18cは、複数の車両のうち車両の走行道路を限定できる場合には、第2メモリ18bに記憶された道路情報を抽出し、抽出された道路情報を走行制御部18dに出力する。
データ取得部18cは、ドライバーの操作及び/又は走行ルートに基づき、複数の車線から車両の走行道路を限定する。例えば、自車両の現在位置の前方の道路が分岐している場合に、ドライバーがウィンカーを操作し、左側のウィンカーランプを点滅させたときには、データ取得部18cは、分岐した道路のうち左側の道路に限定する。
車両が高速道路から料金所を出て一般道にむかうような走行経路が設定されており、自車両がインターチェンジに近づいている場合を一例として説明する。このような場合には、ドライバーが、本線から分岐された道路(本線から出て料金所まで接続している道路)に向かうために、車線変更区間の手前でウィンカーを操作した場合には、車両の走行道路が限定できる。第2メモリ18bには、本線の道路情報と、分岐された道路の道路情報が記憶されており、データ取得部18cは、ウィンカーの点滅に起因して、分岐された道路の道路情報を選択的に取得し、選択された道路情報を走行制御部18dに出力する。
このように、データ取得部18cは、自車両の現在位置の前方の道路が分岐されており、車両の走行状態、ドライバー操舵、走行ルート等に基づき、自車両の走行道路を限定できる場合には、道路情報を選択的に取得して、走行制御部18dに出力する。走行制御部18dには、自車両の自律制御とは関係のない車線の道路情報が入力されず、自車両の自律制御に必要な道路情報が入力されるため、走行制御部18dにおける演算負荷を軽減できる。
制御装置18の自律走行制御機能は、自車両の走行をドライバーの操作に依ることなく自律制御する機能であり、自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御機能と、自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御機能とを含む。以下、本実施形態の自律速度制御機能と自律操舵制御機能を説明する。
《自律速度制御機能》
自律速度制御機能は、先行車を検出しているときは、ドライバーが設定した車速を上限にして、車速に応じた車間距離を保つように車間制御を行いつつ先行車に追従走行する一方、先行車を検出していない場合はドライバーが設定した車速で定速走行する機能である。前者を車間制御、後者を定速制御ともいう。なお、走行情報取得機能により、走行車線の制限速度を検出した場合、制限速度標識の速度を自動的に設定車速にする機能を含んでもよい。
自律速度制御機能を作動させるには、まずドライバーが、図2に示す入力装置16のリジューム・アクセラレートスイッチ162又はセット・コーストスイッチ163を操作して、所望の走行速度を入力する。たとえば、自車両が70km/hで走行中にセット・コーストスイッチ163を押すと、現在の走行速度がそのまま設定されるが、ドライバーが所望する速度が80km/hであるとすると、リジューム・アクセラレートスイッチ162を複数回押して、設定速度を上げればよい。逆にドライバーが所望する速度が60km/hであるとすると、セット・コーストスイッチ163を複数回押して、設定速度を下げればよい。また、ドライバーが所望する車間距離は、図2に示す入力装置16の車間調整スイッチ165を操作し、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択すればよい。
定速制御は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダーなどのセンサ11を用いて自車両が走行する車線の前方に先行車が存在しないことを検出しながら、ドライバーにより設定された走行速度を維持するように、車速センサによる車速データをフィードバックしながら、駆動制御装置17によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御するものである。
車間制御は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダーなどのセンサ11を用いて自車両が走行する車線の前方に先行車(自車両の直前の車両)が存在することとその車間距離を検出しながら、ドライバーにより設定された走行速度を上限にして、ドライバーにより設定された車間距離を維持するように、センサ11(前方レーダー)による車間距離データをフィードバックしながら、駆動制御装置17によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御するものである。なお、車間制御で走行中に先行車が停止した場合は、先行車に続いて自車も停止し、自車が停止した後、たとえば30秒以内に先行車が発進すると、自車も発進し、再び車間制御による追従走行を開始する。自車が30秒を超えて停止している場合は、先行車が発進しても自動で発進せず、先行車が発進した後、リジューム・アクセラレートスイッチ162を押すか又はアクセルペダルを踏むと、再び車間制御による追従走行を開始する。
《自律操舵制御機能》
自律操舵制御機能は、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する機能である。車線のたとえば中央付近を走行するようにステアリングを制御して、ドライバーのハンドル操作を支援するレーンキープ機能(車線幅員方向維持機能)、ドライバーがウィンカーレバーを操作するとステアリングを制御し、車線変更に必要なステアリング操作を支援する車線変更支援機能、設定車速よりも遅い車両を前方に検出すると、表示によりドライバーに追い越し操作を行うか確認し、ドライバーが承諾スイッチを操作した場合、ステアリングを制御し追い越し操作を支援する追い越し支援機能、ドライバーがナビゲーション装置などに目的地を設定している場合には、ルートに従って走行するために必要な車線変更地点に到達すると、表示によりドライバーに車線変更を行うか確認し、ドライバーが承諾スイッチを操作した場合、ステアリングを制御し車線変更を支援するルート走行支援機能などが含まれる。
ルート走行支援機能は、目的地までの走行ルートが設定している場合に、自車両が走行ルートに沿って走行するように、ステアリング、車速、ウィンカーを制御する機能である。図4Aは、分岐路において、車両が本線から分岐車線を走行する際の走行軌跡及び目標点を説明するための図である。図4Bは、図4Aの走行軌跡及び目標点の一部を示す概略図である。図4A及び図4Bにおいて、X軸は車両の横方向(車幅方向)の座標軸を示しており、Y軸は、本線における車両進行方向の座標軸を示している。
例えば、高速道路の本線からインターチェンジで分岐車線に抜けて料金所に向かうような走行ルートが設定している場合のルート走行支援機能について説明する。図4Aに示すように、車線Aは本線から料金所までを接続する分岐車線である。本線は車線B、Cを含んでおり、車線Cが追越車線である。
制御装置180は、ユーザ等により目的地が設定されると、目的地までの走行ルートを演算する。制御装置180は、走行ルートに従って走行するために、レーンキープ機能、車線変更機能を実行する。制御装置180は、カメラ画像により認識した情報、データベース13に記憶された地図情報に基づき、各機能を実行する。カメラ画像により認識できる情報は、実際の走行環境を示しているため、カメラ画像からレーンマークを認識できる場合には、制御装置180は、カメラ画像から認識された情報を優先的に用いて、車両を自律制御する。図4Aに示すような分岐路において、本線と分岐車線との間には点線の境界線が描かれているが、本線から分岐車線に向かう多くの車両が、この境界線を跨いて走行するため、境界線の一部が消えており、レーンマークをカメラ画像から認識できない可能性がある。またインターチェンジは場所によって形状が様々であり、分岐車線の道路形状が複雑なため、分岐路を走行する際に、レーンマークをカメラ画像から認識できない可能性がある。そして、このようなレーンマークを認識できないエリアで、走行ルートに従って走行するために、制御装置180は、データベース13に記憶された地図情報に基づき、車両を自律制御する。
本実施形態では、レーンマーク及び/又は障害物など、自律制御のために認識すべき地物が、カメラ画像から認識できないエリアを、認識不可エリアとして予め特定する。認識不可エリアは、カメラ画像により車両の外部状況を認識できない領域を示している。認識不可エリアの大きさや位置の情報は、地図データベース13に予め記憶されている。制御装置180は、地図データベース13を参照し、車両が演算された走行ルート上に、認識不可エリアが存在するか否かを判定する。認識不可エリアが走行ルート上にある場合には、車両は認識不可エリアを走行することになる。認識不可エリアでは、カメラ画像から認識された情報を用いてレーンキープ機能を作動させることができないため、制御装置180は、カメラ画像の代わりに、地図データベースに記憶された道路情報を用いて、レーンキープ機能及び/又は車線変更機能を実行する。すなわち、認識不可エリアを走行していない場合には、制御装置180はカメラ画像から認識された情報を用いて車両を自律制御し、認識不可エリアを走行する場合には、制御装置180は、カメラ画像の代わりに、地図データベースに記憶された道路情報を用いて、車両を自律制御する。
カメラ画像に基づく自律制御(以下、カメラ制御とも称す)から、地図情報に基づく自律制御(以下、地図制御とも称す)に切り替える際に、カメラ画像により、車両前方の地物を認識できないことを確認した後に、自律制御を切り替えた場合には、車両の挙動が大きくなる可能性がある。車両の自律制御は、車両の走行軌跡上に目標点を設定し、車両の位置が目標点を通過するように、ステアリングを制御する。車両の走行軌跡は演算により算出され、カメラ画像を用いる場合には、例えば、認識された左右のレーンマークの中央線を、車両の走行軌跡(目標軌跡)とする。また、地図情報を用いる場合には、地図情報に含まれる車線の中心線を、車両の走行軌跡とする。目標点は、自車両の現在位置から所定の走行時間(例えば1.25秒)分、離れた位置に設定される。そして、カメラ画像で認識されたレーンマークと、地図情報で記憶されているレーンマークとの間のずれが大きい場合には、目標点のずれも大きくなる。そのため、カメラ画像により地物を認識できないことを確認した後に、自律制御に使用する情報を、カメラ制御から地図制御に切り替える場合には、自律制御モードの切り替えの遅れ及び/又は目標点のずれにより、車両の挙動が大きくなるおそれがある。
本実施形態では、認識不可エリアを予め特定し、車両の自律制御を行う際には、車両が認識不可エリアに進入する前に、カメラ画像に基づく自律制御から、地図情報に基づく自律制御に切り替えている。
図4Aに示す例では、制御装置180は、分岐路を含む所定のエリアRを、認識不可エリアとして特定する。認識不可エリアAには、本線と分岐車線との間の境界線や分岐車線の一部を少なくとも含んでいる。
制御装置180は、インターチェンジの分岐路において、本線から分岐車線へ車線変更が必要になるため、車線変更開始地点Pを設定する。車線変更開始地点は、車両が横方向(車幅方向)に移動するよう、ステアリング制御を開始する点である。自車両が車線Bを走行している場合には、制御装置180は、車線B上に車線変更開始地点Pを設定する。車線変更開始地点Pは、分岐車線が開始する地点Oよりも、所定距離分、手前の位置に設定される。自車両が車線Bを走行している場合には、車線変更開始地点Pは車線B上に設定される。また、自車両が車線Cを走行している場合には、車線変更開始地点は、車線B上及び車線C上にそれぞれ設定される。車線C上に設定される車線変更開始地点から車線B上に設定される車線変更開始地点までの距離は、車両の進行方向で、車線B上に設定される車線変更地点から分岐車線が開始する地点Oまでの距離よりも長い時間に設定されている。車両が追越車線Cを走行している場合には、分岐車線を走行するまでに2回の車線変更を必要とするため、車線C上に車線変更開始地点を設定するときの所定距離を長めに設けて、車線変更に余裕を持たせている。
制御装置180は、車線変更開始地点Pよりも所定距離分手前の位置に、ユーザに対して車線変更の意思を確認するための意思確認地点Qを設定する。自車両が意思確認地点Qに到達したタイミングで、制御装置180は、ディスプレイの表示によりドライバーに車線変更を行うか確認する。ドライバーが承諾スイッチを操作した場合には、制御装置180のデータ取得部18cは、分岐車線である車線Aの道路情報を取得し、車線B、Cの道路情報を取得しない。また、ドライバーが車線変更の方向と同じ向きに、ウィンカーを操作した場合には、制御装置180のデータ取得部18cは、分岐車線である車線Aの道路情報を取得し、車線B、Cの道路情報を取得しない。なお、制御装置180のデータ取得部18cが車線Aの道路情報を取得するタイミングは、ウィンカーの点滅の開始時、又は、ウィンカーの点滅の開始後でもよい。自車両が車線変更開始時点Pに到達したタイミングで、ウィンカーの点滅が開始するため、制御装置180のデータ取得部18cは、このウィンカーの点滅に合わせて、車線Aの情報を取得してもよい。
一方、ドライバーが承諾スイッチを操作しない場合、ドライバーが車線変更の方向とは逆向きにウィンカーを操作した場合には、車線変更の意思はないものと判定し、制御装置180のデータ取得部18cは、本線である車線B、Cの道路情報を取得し、車線Aの道路情報を取得しない。車線Bは、車両が現在走行している道路と同一の道路である。
制御装置180は、レーンキープ機能により、カメラ画像からレーンマークを認識した上で、車線Bの中央付近を走行するようにステアリングを制御する。そして、車線変更の意思を確認し、自車両が車線変更開始地点Pに到達した場合には、制御装置180は、車線変更支援機能により、カメラ画像からレーンマークを認識した上で、車線変更用の走行軌跡を演算し、車両の位置が走行軌跡上の目標点を通過するように、ステアリングを制御する。これにより、車両は、車両の現在位置と右側のレーンマークとの間の距離が広がるように、横方向に移動する。
制御装置180は、カメラ制御から地図制御へ切り替える準備として、カメラ制御を実行している間に、分岐路において制御切替点を設定する。制御切替点は、例えば、カメラ画像から認識された左右レーンマークの間の中心線(あるいは、当該中心線を延長させた延長線)と、地図情報に含まれる車線の中心線との交点に設定される。あるいは、カメラ画像から認識された左右レーンマークの中心線(あるいは、当該中心線を延長させて延長線)と、地図情報に含まれる車線の中心線との横方向のずれが所定長さ未満となる位置に、制御切替点が設定される。制御切替点は、認識不可エリアの外側であって、車線Bの中心線上の位置に設定される。図4Aの例では、車線変更開始点Pの位置に、制御切替点が設定される。車両が制御切替点P(車線変更開始点P)に到達した場合に、制御装置180は、カメラ制御から地図制御に切り替える。カメラ制御から地図制御に切り替えた後、車両が道路情報Aに含まれる車線の中心線に沿って走行するように、車両の自律制御が実行され、車両は分岐車線上を走行する。
車両が認識不可エリアを走行中、又は、車両が認識不可エリアを通過した後、制御装置180は、地図制御からカメラ制御に切り替えるタイミングを演算で求める。制御装置180は、認識不可エリアを走行中、又は、認識不可エリアを通過した後に、カメラ画像を用いて目標点(以下、第1目標点とも称す)を演算する。なお、認識不可エリアにおいて、カメラ画像からレーンマークを安定して認識できない場合には、レーンマークを認識できる状態になった後に、第1目標点を演算する。また、制御装置180は、道路情報Aを用いて目標点(以下、第2目標点とも称す)を演算する。そして、制御装置180は、第1目標点と第2目標点との差分が所定値以下となった場合に、地図制御からカメラ制御に切り替える。
図4Bに示すように、曲線C
Lはカメラ画像から演算される走行軌跡を表しており、曲線M
Lは地図情報(道路情報A)から演算される走行軌跡を表している。第1目標点Cは位置(X
c、Y
c)で表され、第2目標点Mは位置(X
M、Y
M)で表される。車両の現在位置を原点とし、原点と第1目標点Cとを結ぶ線分とX軸でなす角の角度(θ
C)を演算する。また、車両の現在位置を原点とし、原点と第2目標点Mとを結ぶ線分とX軸でなす角の角度(θ
M)を演算する。角度(θ
C、θ
M)は下記式(1)、(2)で演算される。
角度(θ
C)から角度(θ
M)を差し引くことで、第1目標点と第2目標点との差分を演算する。差分は、絶対値で演算される。そして、演算された差分と、予め設定された閾値(Δθ
th)とを比較する。すなわち、制御装置180は下記式(3)の条件を満たすか否か判定する。
演算された差分の絶対値が閾値(Δθth)以下である場合には、制御装置180は、地図制御からカメラ制御に切り替え、車両の位置が第1目標点を通過するように、車両を自律制御する。
図4Bの例では、第1目標点C1に対して演算される角度(θC1)と、第2目標点M1に対して演算される角度(θM1)と差分は、閾値(Δθth)より大きい。そのため、第2目標点M1を演算したタイミングでは、制御装置180は地図制御を継続する。第1目標点C2に対して演算される角度(θC2)と、第2目標点M2に対して演算される角度(θM2)と差分は、閾値(Δθth)より小さい。そのため、自車両が第1目標点C2を通過するタイミングで、制御装置180は地図制御からカメラ制御に切り替える。これにより、地図制御からカメラ制御に切り替える際に、車両の挙動が大きくなることを抑制できる。
図5は、制御装置18に確立された各機能の状態遷移を示すブロック図である。同図においてシステムとは、制御装置18により実現される自律走行制御システムを意味する。同図に示すシステムOFFの状態から、図2のメインスイッチ161をONすると、当該システムがスタンバイ状態となる。このスタンバイ状態から、図2のセット・コーストスイッチ163又はリジューム・アクセラレートスイッチ162をONすることで、自律速度制御が立ち上がる。これにより、上述した定速制御又は車間制御が開始し、ドライバーはハンドルを操作するだけで、アクセルやブレーキを踏むことなく、自車両を走行させることができる。
自律速度制御を実行中に、図5の条件(1)が成立すると自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(1)としては、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマークを検出していること、ドライバーがハンドルを持っていること、車線の中央付近を走行していること、ウィンカーが作動していないこと、ワイパーが高速(HI)で作動していないこと、高精度地図がある場合、前方約200m以内に料金所、出口、合流、交差点、車線数減少地点がないこと、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。なお、ハンズオンモードとは、ドライバーがハンドルを持っていないと自律操舵制御が作動しないモードをいい、ハンズオフモードとは、ドライバーがハンドルから手を離しても自律操舵制御が作動するモードをいう。
自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードを実行中に、図5の条件(2)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(2)として、特に限定されないが、自車両が自動車専用道を走行していること、対向車線と構造的に分離された道路を走行していること、高精度地図がある道路を走行していること、制限速度以下の車速で走行していること、GPS信号が有効であること、ドライバーがハンドルを持っていること、ドライバーが前を向いていること、前方約800m以内に料金所、出口、合流、交差点、車線数減少地点がないこと、前方約500m以内に100R以下の急カーブがないこと、トンネル入り口から500mを超えたトンネル内走行していないこと、アクセルペダルが踏まれていないこと、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。
逆に、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図5の条件(3)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(3)として、特に限定されないが、自車両が自動車専用道以外の道路を走行していること、対面通行区間を走行していること、高精度地図がない道路を走行していること、制限速度を超えた車速で走行していること、GPS信号が受信できなくなったこと、前方注視警報が作動した後、ドライバーが5秒以内に前を向かなかったこと、ドライバーモニターカメラで運転者を検知できなくなったこと、前方約800m先に料金所、出口、合流、車線数減少のいずれかがあること、車速が約40km/h未満で走行している場合、前方約200m以内に100R以下の急カーブがあること、車速が約40km/h以上で走行している場合、前方約200m以内に170Rの以下急カーブがあること、トンネル入り口から500mを超えたトンネル内を走行していること、ドライバーがハンドルを持って、アクセルペダルを踏んだこと、接近警報が作動したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図5の条件(4)が成立すると、自律操舵制御を中止して自律速度制御に遷移する。この条件(4)として、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマークを一定時間検出しなくなったこと、ドライバーがハンドル操作をしたこと、ワイパーが高速(HI)で作動したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。また、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図5の条件(5)が成立すると、自律操舵制御及び自律速度制御を中止してスタンバイ状態に遷移する。この条件(5)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ164を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントカメラが、汚れ、逆光、雨・霧などで対象物を正しく認識できないといった視界不良を検出したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、サイドレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、サイドレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオンモードを実行中に、図5の条件(6)が成立すると、自律操舵制御を中止して自律速度制御に遷移する。この条件(6)として、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマークを検出しなくなったこと、ドライバーがハンドル操作をしたこと、ドライバーがウィンカーを操作したこと、ワイパーが高速(HI)で作動したこと、高精度地図がある場合に料金所区間になったこと、フロントカメラが、汚れ、逆光、雨・霧などで対象物を正しく認識できない視界不良を検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。また、自律操舵制御・ハンズオンモードを実行中に、図5の条件(7)が成立すると、自律操舵制御及び自律速度制御を中止してスタンバイ状態に遷移する。この条件(7)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ164を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律速度制御を実行中に、図5の条件(8)が成立すると、スタンバイ状態に遷移する。この条件(8)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ164を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図5の条件(9)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンチェンジモードに遷移する。この条件(9)として、特に限定されないが、システムがレーンチェンジを提案したときに、ドライバーが図2の車線変更支援スイッチ166を押したこと、ドライバーがウィンカーを操作したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンチェンジモードを実行中に、図5の条件(10)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(10)として、特に限定されないが、車線変更操作(以下LCP)開始前に、制限速度を超えたこと、LCP開始前に、ドライバーが、ハンドルを持って、アクセルペダルを踏んだこと、前方に遅い車がいた場合の車線変更提案中に車線変更支援スイッチ166を押した後、10秒以内にLCPが開始できなかったこと、ルートに従って走行するための車線変更提案中に車線変更支援スイッチ166を押した後、LCPを開始できず分岐に近づきすぎてしまったこと、LCP作動後、5秒以内に実際の車線変更操縦(以下、LCM)を開始できなかったこと、LCPを開始し、LCMを開始する前に車速が約50km/hを下回ったこと、LCPが作動した後、LCMを開始する前に車線変更に必要な隣車線のスペースがなくなったこと、LCM開始前にドライバーがキャンセル操作を行ったこと、LCM開始前にレーンマークが非検知となったこと、LCM開始前に、車線変更する方向に隣接車線がない、または、前方一定距離内にその隣接車線がなくなると判断したこと、LCM開始前に、前方一定距離内に曲率半径250m以下のカーブがあると判断したこと、LCM開始前に、前方一定距離内に区分線の種類がその隣接車線への車線変更禁止している区間があると判断したこと、LCM開始前に、サイドレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、LCM開始前に、サイドレーダが軸ズレを検出したこと、ハンズオン警報が作動したこと(LCPが作動した後、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかった、前方に遅い車がいた場合の車線変更提案中に車線変更支援スイッチ166を押した後、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかった、ルートに従って走行するための車線変更提案中に車線変更支援スイッチ166を押したのち、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかったといういずれかの条件にて成立)、ドライバーがウィンカーを消したこと、LCPが完了したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
なお、自律操舵制御・ハンズオフモード、自律操舵制御・ハンズオンモード、自律速度制御、スタンバイ状態のいずれかの状態でメインスイッチ161をOFFすると、システムOFFとなる。
次に、図6A〜図6Cを参照して、本実施形態に係る走行制御処理について説明する。図6A〜図6Cは、本実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する走行制御処理は、制御装置18により所定時間間隔で実行される。また、以下においては、制御装置18の自律走行制御機能により、自律速度制御と自律操舵制御が実行され、自車両が、ドライバーが設定した速度で車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御が行われている間に、インターチェンジが近づき、走行ルートに従って走行するためには車線変更が必要になるようなルートを走行しているものとして説明する。
まず、図6AのステップS1にて、制御装置18のメインスイッチ161がONされているか否かを判定し、メインスイッチ161がOFFである場合はONになるまでステップS1を繰り返す。メインスイッチ161がONである場合はステップS2に進み、ドライバーにより走行速度が設定されているか否かを判定する。走行速度が設定されていない場合はステップS1へ戻り、走行速度が設定されるまでステップS1及びS2を繰り返す。なお、ドライバーによる走行速度の設定は、ドライバーが、図2に示す入力装置16のリジューム・アクセラレートスイッチ162又はセット・コーストスイッチ163を操作して、所望の走行速度を入力することにより行われる。
走行速度が設定されたら自律速度制御が開始される。ステップS3では、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて自車両が走行する車線の前方に先行車が存在するか否かを検出し、先行車が存在する場合はステップS4へ進んで車間制御を実行し、先行車が存在しない場合はステップS5へ進んで定速制御を実行する。これにより、ドライバーは、ハンドルを操作するだけで、アクセルやブレーキを踏むことなく、自車両を所望の速度で走行させることができる。
ステップS4の車間制御又はステップS5の定速制御が実行されている間に、ステップS6にて、上述した自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する条件(1)が成立するか否かを判定する。条件(1)が成立する場合はステップS7へ進み、条件(1)が成立しない場合はステップS2に戻る。
ステップS7では、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて自車両が走行する車線の前方に先行車が存在するか否かを検出し、先行車が存在する場合はステップS8へ進んで車間制御・レーンキープモードを実行し、先行車が存在しない場合はステップS9へ進んで定速制御・レーンキープモードを実行する。なお、ステップS8又はステップS9の自律制御は、カメラ画像に基づく制御である。
ステップS8の車間制御・レーンキープモード又はステップS9の定速制御・レーンキープモードが実行されている間に、続く図6BのステップS10にて、目的地が設定されているか否か判定する。目的地が設定されていない場合には、図6AのステップS2に戻る。目的地が設定されている場合には、ステップS11に進み、ルート走行支援を実行する。ルート走行支援において、走行ルートに従って走行するために車線変更を必要とする場合には、車線変更開始地点及び車線変更の意思を確認するための意思確認地点を設定する。ステップS12では、地図データベース13に記憶されている地図情報を参照し、走行ルート上で認定不可エリアを特定する。このとき、認識不可エリア内に車線変更開始点が含まれる場合には、車線変更開始点が認識不可エリアの外側になるように、再設定する。ステップS13では、車両の現在位置が意思確認地点に到達したか否か判定し、意思確認地点に到達していない場合にはステップS11に戻り、意思確認地点に到達した場合には、車線変更を行うか否か、ドライバーの意思を確認するための表示画面をディスプレイに表示する。
ステップS14では、車線変更の意思が有るか否かを判定する。ディスプレイの表示後、ドライバーが承諾スイッチを操作した場合には、車線変更の意思が有ると判定し、ステップS15に進み、承諾スイッチが操作されない場合には、車線変更の意思が無いものと判定し、ステップS18に進む。
ステップS15では、車線変更可能条件を満たすか否か判定する。車線変更可能条件は、図5(9)に示す条件である。ただし、図5(9)の条件として、レーンマークを認識していること、及び、車線変更に必要な隣車線のスペースがあることを含む場合には、ステップS15の判定処理で設定される車線変更可能条件から、これら条件が除かれる。車線変更可能条件を満たす場合にはステップS16に進み、車線変更可能条件を満たさない場合にはステップS19に進む。
ステップS16では、車両の現在位置が車線変更開始点に到達したか否かを判定し、車線変更開始点に到達した場合にはステップS17に進み、車線変更開始点に到達していない場合にはステップS16に戻る。なお、車線変更開始点に到達する前に、走行ルートに従わない走行が行われた場合(例えば、車両が現在の走行車線と隣接する車線に移動する場合)には、ステップS19に進む。
ステップS17では、制御装置180はウィンカーの点滅を開始する。ステップS18では、制御装置180は、第2メモリ18bに記憶されている道路情報のうち、分岐車線である車線Aの道路情報を取得し、ステップS20に進む。なお、車両の現在位置が意思確認地点又は車線変更開始地点に到達した時に、既に分岐車線の情報を取得している場合には、既に取得した分岐車線の先にある車線Aの道路情報を取得する。ステップS19では、制御装置180は、第2メモリ18bに記憶されている道路情報のうち、本線である車線B、Cの道路情報を取得し、図6AのステップS2に戻る。
ステップS20では、カメラ画像に基づく自律制御から、地図情報に基づく自律制御に切り替え、車線変更支援を実行する。ステップS20の車線変更支援は、ハンズオンモードで実行される。地図情報に基づく自律制御では、車線Aの道路情報を用いて目標点Mを演算し、車両が目標点Mを通過するように、ステアリングを制御する。なお、地図情報に基づく自律制御中、目標点Mの演算は所定周期で繰り返し行い、車両が演算された各目標点Mを通過するように、ステアリングを制御する。
ステップS21では、カメラ画像からレーンマークを認識できるか否か判定し、レーンマークを認識できる場合にはステップS22に進み、レーンマークを認識できない場合にはステップS20に戻る。なお、ステップS21の判定タイミングは、例えば、カメラ画像に基づく自律制御から、地図情報に基づく自律制御に切り替えた時点から、所定時間を経過した後に行ってもよい。所定時間の長さは、車線変更開始から完了までの時間長さ以上に設定されればよい。ステップS22にて、目標点C、Mを演算する。つまり、目標点Mに加えて、目標点Cを演算する。ステップS23では、角度(θC、θM)を演算する。ステップS24にて、第1目標点と第2目標点との差分(|θC−θM|)を演算し、演算された差分(|θC−θM|)が閾値(Δθth)以下であるか否か判定する。差分(|θC−θM|)が閾値(Δθth)以下である場合には、地図情報に基づく自律制御から、カメラ画像に基づく自律制御に切り替える(S29)。図4Aの例では、分岐路での車線変更が完了し、車両が分岐車線を走行してる途中に、地図情報に基づく自律制御からカメラ画像に基づく自律制御に切り替わる。
差分(|θC−θM|)が閾値(Δθth)より大きいである場合には、ステップS26にて、差分(|θC−θM|)が閾値(Δθth)より大きい状態が所定時間(例えば10秒)経過したか否か判定する。所定時間(例えば10秒)経過していない場合には、ステップS22に戻り、所定時間(例えば10秒)経過した場合には、自律操舵制御をオフにして、ドライバーによるステアリング操作に切り替える。ステップS20以降の制御フローはハンズオンモードで実行されるため、ステップS27で自動操舵制御をオフにする時には、ドライバーがステアリングを握っていることになり、ドライバーはステアリング操作をスムーズに行うことができる。地図情報に基づく自律制御を実行中に、カメラ画像からレーンマークを認識できる状態になった場合に、第1目標点(目標点C)と第2目標点(目標点M)との差分が大きい状態で、地図制御からカメラ制御に切り替えると、車両の挙動が大きくなる。そのため、本実施形態では、第1目標点(目標点C)と第2目標点(目標点M)との差分が大きい状態が所定時間以上継続する場合には、自律操舵制御をオフにすることで、制御切替の際に、車両の挙動が大きくなることを防止できる。
以上のように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、走行ルート上に分岐路があり、走行ルートに従って走行するために車線変更が必要な場合には、分岐路で分岐された各道路のうち車両が走行する道路の道路情報を、車両の記憶媒体に記憶された情報から選択的に取得し、自律操舵制御機能に含まれる車線変更支援機能を作動させて、取得された道路情報を用いて車両を自律制御する。これにより、分岐路を走行する際に、車両の走行に使用する道路情報を選択に取得できるので、データ処理の負荷を軽減できる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、ウィンカーの点滅に合わせて、車両が走行する道路の道路情報を選択的に取得する。これにより、ウィンカーに連動して、車両の走行に使用する道路情報を選択に取得できるので、データ処理の負荷を軽減できる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、走行ルートに従って走行するために車線変更が必要な場合には、車線変更を行うか否かをドライバーに通知し、ドライバーによる車線変更の意思表示、又は、ウィンカーの操作により特定される道路の道路情報を選択的に取得する。これにより、車両の走行に使用する道路情報を選択に取得できるので、データ処理の負荷を軽減できる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、走行ルートに従って走行するために車線変更が必要な場合には、車線変更を行うか否かをドライバーに通知し、ドライバーによる車線変更の意思表示がない場合には、現在走行している道路と同一の道路の道路情報を選択的に取得する。これにより、車両の走行に使用する道路情報を選択に取得できるので、データ処理の負荷を軽減できる。