JP2020183568A - 建設機械の関節用ブッシュ - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動性能とともに機械的強度に優れる建設機械の関節用ブッシュを提供することである。【解決手段】基地と、気孔部と、この気孔部に溶浸された銅とを含む鉄基焼結体を含む、建設機械の関節用ブッシュである。この鉄基焼結体には、銅の溶浸前の組成が、質量%で、Cu:0.1〜10%、C:0.1〜1%を含み、残部Fe及び不可避不純物からなるものを用いることができる。【選択図】図1
Description
本発明は、建設機械の関節用ブッシュに関する。
原料粉末を金型内で圧縮成形して得られた圧粉体を焼結する、いわゆる粉末冶金法は、ニアネットシェイプに造形できるので、後の機械加工による削り代が少なく材料損失が小さいこと、また一度金型を作製すれば同じ形状の製品が多量に生産できること等の理由から経済性に優れている。また、粉末冶金法は、通常の溶解によって製造される合金で得ることができない特殊な合金を製造できること等の理由から合金設計の幅が広い。このため自動車部品を始めとする機械部品に広く適用されている。
機械部品の中でも摺動部材は、低摩擦係数であるとともに耐摩耗性を備えることが重要になる。特に高面圧が付加される用途では、鉄基焼結体によって形成される摺動部材を好ましく用いることができる。さらに、鉄基焼結体に含まれる気孔部に潤滑油を保持させて用いることで、耐摩耗性をより改善することができる。
例えば、建設機械の油圧ショベルは、掘削動作をするときに、油圧シリンダを用いて、アーム先端に取り付けられたバケットを揺動させるようになっている。バケットとアームとの関節は、軸と軸受を備える滑り軸受要素で構成されている。
また、建設機械のクレーンは、アームとアームの先端部の吊り下げ部とを備え、アームは駆動部との関節部分に搖動可能に支持されている。アームと駆動部との関節は、軸と軸受を備える滑り軸受要素で構成されている。
このような軸受要素は、大きな面圧がかかるため、耐摩耗性が高い軸受を用い、摺動面には粘度の高い潤滑油やグリース等を介在させて用いる方法がある。
特許文献1には、建設機械油圧ショベルの関節用軸受又はクレーンのアーム支持関節用軸受として用いることができる焼結含油軸受において、軸受は鉄基焼結合金によって形成され、内周面が切削面であり、内周面に露出している気孔の面積率が10%以下であり、表面近傍に封孔されている気孔を有することで、摩擦の少ない状態を長期間安定して維持することができることが提案されている。この軸受は気孔部に潤滑剤を含ませ、軸受と軸とが摺動する際に摺動面に潤滑剤が供給されるようになる。
特許文献2には、建設機械油圧ショベルの関節用軸受又はクレーンのアーム支持関節用軸受として用いることができる焼結含油滑り軸受において、軸受は鉄基焼結合金によって形成され、内周面を切削することで、円周方向に延びる凹凸条を軸方向に複数並列させ、内周面を緻密化し表面気孔を封孔することで、摩擦の少ない状態を長期間安定して維持することができることが提案されている。この軸受は凹条部に潤滑剤を含ませ、軸受と軸とが摺動する際に摺動面に潤滑剤が供給されるようになる。
特許文献1及び2には、鉄基焼結合金の基地中に銅を分散させることで、鉄合金の硬い性質をやわらげ、軸のアブレシング摩耗を抑制することが提案されている。
一方で、鉄基焼結体は、原料粉末に由来して多孔質材料であるため、材料強度が低くなる傾向がある。また、相手部材である軸との摩耗を低減するために、鉄基焼結体の基地に銅を含ませると、鉄基焼結体の基地自体の材料強度が低下する問題がある。
本発明の一目的としては、摺動性能とともに機械的強度に優れる建設機械の関節用ブッシュを提供することである。
一実施形態は、以下を要旨とする。
[1]基地と、気孔部と、前記気孔部に溶浸された銅とを含む鉄基焼結体を含む、建設機械の関節用ブッシュ。
[2]前記鉄基焼結体は、前記銅の溶浸前の組成が、質量%で、Cu:0.1〜10%、C:0.1〜1%を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる、[1]に記載の建設機械の関節用ブッシュ。
[3]前記鉄基焼結体は、前記銅の溶浸前の開放気孔率が15〜30%である、[1]又は[2]に記載の建設機械の関節用ブッシュ。
一実施形態によれば、摺動性能とともに機械的強度に優れる建設機械の関節用ブッシュを提供することができる。
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。以下の実施形態における例示が本発明を限定することはない。
一実施形態の建設機械の関節用ブッシュは、基地と、気孔部と、気孔部に溶浸された銅とを含む鉄基焼結体を含む、ことを特徴とする。
これによれば、摺動性能とともに機械的強度に優れる建設機械の関節用ブッシュを提供することができる。
建設機械の関節用ブッシュとしては、例えば、油圧ショベルの関節用ブッシュ、クレーンの関節用ブッシュ、ホイールローダー関節用ブッシュ等に用いることができる。
例えば、油圧ショベルのバケットとアームとの関節、クレーンのアームと駆動部との関節は、高面圧が負荷されるとともに、耐久性が要求されるため、一実施形態によるブッシュを好ましく用いることができる。
一実施形態によるブッシュは、気孔部に銅が溶浸され、この銅が固体潤滑剤のように作用して摺動性能を改善することができる。そのため、一実施形態によるブッシュを用いる場合には、摺動面に潤滑剤を供給してもよいが、潤滑剤を供給しなくても十分に摺動性能を得ることができる。
また、一実施形態によるブッシュは、鉄基焼結体の基地と、気孔部に溶浸された銅とによって、その材料強度をより高めることができる。例えば、鉄基焼結体の基地に硬い鉄系材料を用いても、気孔部に銅を溶浸させるため、材料強度を高めながら、摺動性能を改善することができる。
一実施形態によるブッシュにおいて、銅溶浸前の鉄基焼結体は、粉末冶金法によって、鉄粉末及び/又は鉄合金粉末を含む原料を用いて製造することができる。
鉄基焼結体には、鉄紛等の原料粉末に由来して気孔部が形成される。この気孔部は、連通孔及び独立孔のいずれであってもよい。鉄基焼結体に、連通孔及び独立孔がともに含まれてもよい。また、鉄基焼結体は、銅溶浸のために、開放気孔を含むことが好ましい。鉄基焼結体に、開放気孔とともに閉気孔が含まれてもよい。
鉄基焼結体の基地は、主成分としてFeを含む。ここで、主成分は、鉄基焼結体の基地中の過半を占める成分を意味する。鉄基焼結体の基地の全体組成に対して、Fe量は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
鉄基焼結体の基地は、鉄基焼結体の原料に由来して、鉄とともに、銅、黒鉛等を含んでもよい。鉄基焼結体の原料に由来する銅、黒鉛等は、鉄基焼結体の基地に分散して含まれることが好ましい。
鉄基焼結体の基地には、Cu−C−Fe系焼結体を好ましく用いることができる。詳細な組成については、後述する。
ブッシュは、鉄基焼結体によって一体的に形成されてもよい。ブッシュは、複数の鉄基焼結体によって形成される部材を接合して形成されてもよい。また、ブッシュは、鉄基焼結体とその他の部材とを組み合わせて用いる場合は、少なくとも摺動面を含む部分が鉄基焼結体によって形成されることが好ましい。
銅溶浸前の鉄基焼結体は、開放気孔率が15〜30%が好ましい。これによって、銅の溶浸を促進させて、銅の溶浸量を確保するとともに、材料強度の低下を防止することができる。
銅溶浸前の鉄基焼結体は、気孔の大きさが円相当直径で10〜40μmが好ましい。これによって、銅の溶浸量を確保するとともに、材料強度の低下を防止することができる。
また、鉄基焼結体の開放気孔率は、JISZ2501に準じ測定でき、試料の乾燥重量、油浸重量、水中重量を測定し、計算式にしたがって求めることができる。開放気孔率の計算式は以下の通りである。
開放気孔率=(完全溶浸後の試験片質量−脱脂、乾燥後の試験片質量)/(含油に使った油の密度×試験片の体積)×100
また、鉄基焼結体の気孔の大きさは、試料をカットし断面を光学顕微鏡で観察し、所定領域内に観察される気孔の直径を測定し、その平均値から求めることができる。観察領域は、例えば300μm×400μmとすることができる。
また、鉄基焼結体の気孔の大きさは、試料をカットし断面を光学顕微鏡で観察し、所定領域内に観察される気孔の直径を測定し、その平均値から求めることができる。観察領域は、例えば300μm×400μmとすることができる。
鉄基焼結体は、気孔部に溶浸された銅を含む。
鉄基焼結体の気孔部の銅は、銅からなることが好ましく、不可避不純物が含まれてもよい。
鉄基焼結体の開放気孔容積に対して、銅が溶浸される体積は、60〜100体積%が好ましい。鉄基焼結体の気孔部に銅が溶浸されることで、摺動性能及び材料強度を高めることができるため、鉄基焼結体の気孔部はより大きな割合で銅によって満たされることが好ましい。鉄基焼結体に小さな気孔部、独立孔等が含まれることを考慮すると、鉄基焼結体の気孔部の全てに銅が溶浸されなくてもよい。
ここで、鉄基焼結体の開放気孔容積に対して銅が溶浸される体積の体積割合は、銅溶浸前の鉄基焼結体の開放気孔率から求めた開放気孔容積に対し、銅溶浸後の質量増加量から求めた銅溶浸量と銅の密度とから求めた銅の体積の割合として求めることができる。
銅溶浸後の鉄基焼結体は、開放気孔率が10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、実質的に緻密体であってもよい。
上記開放気孔率の範囲によって、鉄基焼結体の気孔部がより大きい割合で銅によって溶浸されるようになり、摺動性能及び材料強度をより改善することができる。
銅溶浸後の鉄基焼結体の開放気孔率は、上記した銅溶浸前の鉄基焼結体と同様に測定することができる。その際に、銅の真密度を8.96g/cm3とする。
銅溶浸後の鉄基焼結体は、全体積に対して、気孔部に溶浸された銅が15〜30体積%が好ましい。これによって、鉄基焼結体の材料強度を維持しながら、銅の溶浸量をより多く確保して、摺動性能及び材料強度をより高めることができる。
銅溶浸後の鉄基焼結体は、摺動面において、全面積に対して銅が溶浸された面積が、10〜40面積%が好ましく、20〜30面積%がより好ましい。これによって、鉄基焼結体の材料強度を維持しながら、摺動面における銅の露出面積をより大きく確保して、摺動性能及び材料強度をより高めることができる。
ここで、銅溶浸後の鉄基焼結体の全体積に対して気孔部に溶浸された銅の体積割合は、銅溶浸後の鉄基焼結体の全体積を溶浸後の鉄基焼結体の質量及び密度から求め、溶浸された銅の体積を溶浸前後の質量増加量及び銅の密度から求め、銅溶浸後の鉄基焼結体の全体積に対し銅の体積の割合として求めることとができる。
また、銅溶浸後の鉄基焼結体の摺動面の全面積に対して銅が溶浸された面積の面積割合は、摺動面の任意の領域を顕微鏡によって画像観察し、画像処理ソフトウェアによって、鉄基焼結体の基地と気孔部の銅とを区別して気孔部の銅の全面積を求め、観察領域全体に対して気孔部の銅の全面積の割合として求めることができる。
銅溶浸後の鉄基焼結体の密度は、5〜10g/cm3が好ましく、6〜8g/cm3がより好ましい。銅溶浸後の鉄基焼結体の密度は、銅溶浸前の鉄基焼結体の密度を1とする場合に1.1以上が好ましい。
銅溶浸前の鉄基焼結体は、全体組成が、質量%で、Cu:20%以下、C:5%以下を含み、残部:鉄及び不可避不純物からなることが好ましい。
より好ましくは、銅溶浸前の鉄基焼結体の全体組成は、質量%で、Cu:0.1〜10%、C:0.1〜1%を含み、残部鉄及び不可避不純物からなる。
鉄基焼結体において、Cu、C等のその他の金属は基地に分散させて含ませることができる。鉄基焼結体の基地にCu、C等が分散して含まれることで、基地自体に柔軟性を付与して、耐摩耗性をより改善することができる。
以下、鉄基焼結体の組成について説明する。
Cu:0〜20%
Cuは、Feに拡散して材料強度を高める作用を有する。
Cuは、Feに拡散して材料強度を高める作用を有する。
Cuは、焼結中に一部がFeの基地中に拡散し、一部はFeを溶かし混んで銅合金を形成する。よって、焼結合金を冷却すると、鉄系焼結体の基地に銅相又は銅合金相の形態で分散した組織状態になる。
銅又は銅合金は比較的軟質であるから、相手部材である軸への切削性を抑える作用を備えるとともに、適度に変形して軸との馴染み性を向上させることができる。
また、Cuは、Cと併用した場合に、鉄基地の焼入れ性を改善して、パーライトを微細にして強度を高めたり、焼結の際に通常の冷却速度で強度の高いベイナイトやマルテンサイトを得ることを促進したりすることができる。
Cuは、必須元素ではないが、0.1%以上が好ましく、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1%以上である。Cuは、材料強度の低下を防止する観点から、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。さらに、Cuは、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。これによって、軟質なCu相の発生を抑制して、材料強度の低下をより防止することができ、また、焼結の際にCu液相の発生を抑制して、製品全体の寸法精度をより高めることができる。
Cuは、Cu粉末及び/又はCu合金粉末として添加することができる。
C:0〜5%
Cは、その一部がFeに固溶して強度を向上させることができる。鉄基焼結体にCが添加されることで、ブッシュの耐摩耗性をより改善することができる。Cが過剰に配合されると、脆いセメンタイトがネットワーク状に析出する問題がある。また、Cが過剰に配合されると、鉄基焼結体が硬くなり過ぎて、相手部材である軸受が摩耗される問題がある。このため、Cは0〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましく、0.5〜1%がさらに好ましい。また、Cの全量が基地中に固溶もしくは金属炭化物として析出していることが好ましい。この金属炭化物は、基地中に分散して含まれることが好ましい。
Cは、その一部がFeに固溶して強度を向上させることができる。鉄基焼結体にCが添加されることで、ブッシュの耐摩耗性をより改善することができる。Cが過剰に配合されると、脆いセメンタイトがネットワーク状に析出する問題がある。また、Cが過剰に配合されると、鉄基焼結体が硬くなり過ぎて、相手部材である軸受が摩耗される問題がある。このため、Cは0〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましく、0.5〜1%がさらに好ましい。また、Cの全量が基地中に固溶もしくは金属炭化物として析出していることが好ましい。この金属炭化物は、基地中に分散して含まれることが好ましい。
Cは、成形体の圧縮性を高めるために、黒鉛粉末の形態で付与することが好ましい。
さらに、鉄基焼結体は、質量%で、Cr、Mn、Mo、W、Ni、Co、V、及びNbからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
Crは、鉄基焼結体の焼き入れ性を向上し、焼結及び冷却を経て、鉄基焼結体に焼入れ組織を含ませる作用を有する。Crは、必須元素ではないが、0.1〜20%で含まれてよく、1〜10%が好ましい。
Mn、Mo、Wは、それぞれ、鉄基焼結体の焼き入れ性を向上し、焼結及び冷却を経て、鉄基焼結体に焼入れ組織を含ませる作用を有する。Mn、Mo、Wは、それぞれ必須元素ではないが、0.1〜5%で含まれてよく、1〜5%が好ましい。
Niは、鉄基焼結体の焼き入れ性を向上し、焼結及び冷却を経て、鉄基焼結体に焼入れ組織を含ませる作用とオーステナイトとして残留する作用を有する。Niは、必須元素ではないが、0.1〜10%で含まれてよく、1〜8%が好ましい。
Coは耐熱性向上効果があるが、15%を超えると粉末の圧縮性が低下して十分な圧粉体密度を得られないため、15%以下が好ましい。
Vは耐熱性向上効果があるとともに炭化物を形成して耐摩耗性向上に寄与するが、5%を超えると粉末の圧縮性が低下して十分な圧粉体密度を得られないため、5%以下が好ましい。
Nbは耐熱性向上効果があるとともに炭化物を形成して耐摩耗性向上に寄与するが、5%を超えると粉末の圧縮性が低下して十分な圧粉体密度を得られないため、5%以下が好ましい。
上記したCr、Mn、Mo、W、Ni、Co、V、及びNbの合計量は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。
鉄基焼結体は、残部Feであり、不可避不純物が含まれることがある。
鉄基焼結体は、基地に拡散しない鉱物、酸化物、窒化物、及びホウ化物からなる群から選択される1種以上をさらに含んでもよい。これらの添加剤としては、例えば、MgO、SiO2、TiN、CaAlSiO3、CrB2等、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
鉄基焼結体の基地は、金属組織として、フェライト、パーライト、及びマルテンサイトからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。なかでも、基地は、マルテンサイトを含むことが好ましい。
以下、ブッシュの製造方法の一例について説明する。なお、一実施形態によるブッシュは、以下の製造方法によって製造されたものに限定されない。
ブッシュの製造方法としては、例えば、鉄基圧粉成形体又は鉄基焼結体に銅を接触させて熱処理する工程を含むことができる。
一例では、鉄基圧粉成形体に銅を接触させ、鉄基圧粉成形体が焼結可能な温度で熱処理することで、鉄基圧粉成形体を焼結させ鉄基焼結体とするとともに、銅を溶融させ鉄基焼結体の気孔部に溶浸させることができる。この際の熱処理温度は、950〜1250℃が好ましい。熱処理時間は、150〜240分間が好ましい。
この鉄基圧粉成形体は、鉄基焼結体の組成となるように原料粉末を混合し、必要に応じて成形助剤を添加し、この混合粉末を圧粉成形することで得ることができる。成形助剤には、ステアリン酸又はその塩等を用いることができる。圧粉成形体の密度は、5〜10g/cm3が好ましい。
他の例では、鉄基焼結体に銅を接触させ、銅が溶融可能な温度で熱処理することで、銅を溶融させ鉄基焼結体の気孔部に溶浸させることができる。この際の熱処理温度は、950〜1250℃が好ましい。熱処理時間は、30〜60分間が好ましい。
この鉄基焼結体は、鉄基圧粉成形体を予め熱処理し焼結させることで得ることができる。鉄基圧粉成形体の熱処理は、950〜1250℃、150分〜240分が好ましい。
銅としては、銅塊、銅板、銅線等を用いることができる。鉄基圧粉成形体又は鉄基焼結体の上面、下面、側面、又はこれらの組み合わせの部位に、銅を接触させて配置し、熱処理することができる。
銅は、熱処理によって溶融状態になると、毛細管現象又は表面張力等によって鉄基焼結体の気孔部に溶浸されるようになる。用いる銅は、鉄基焼結体の気孔容積よりも少ない量の場合では、ほとんど気孔部に溶浸するようになる。しかし、鉄基焼結体の気孔部が銅によって満たされると、余剰の銅は鉄基焼結体の外表面に付着したり、周囲に漏れ出したりする。そのため、銅は、焼成後の鉄基焼結体の開放気孔容積に対して、60〜100体積%の量で用いることが好ましい。
銅を溶浸する際の熱処理は、非酸化性雰囲気、中でも還元性雰囲気で行うことが好ましい。還元性雰囲気としては、例えば、水素ガス、一酸化炭素ガス、炭化水素ガス等が挙げられる。その他の非酸化性雰囲気としては、例えば、分解アンモニアガス、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以下、本発明を一実施例を用いて説明する。以下の例示によって、本発明は限定されない。
(実施例1のブッシュの作製)
基地組織が表1に示す組成(質量%)となるように原料粉末を混合し、混合粉末を用意した。混合粉末100質量部に対して潤滑剤0.77質量部を添加した。潤滑剤には、ステアリン酸亜鉛を用いた。この潤滑剤を添加した混合粉末を、密度6.6±0.1g/cm3の円筒形状のブッシュに圧粉成形した。ブッシュの形状は、外径95mm、内径80mm、軸方向長さ65mmとした。
基地組織が表1に示す組成(質量%)となるように原料粉末を混合し、混合粉末を用意した。混合粉末100質量部に対して潤滑剤0.77質量部を添加した。潤滑剤には、ステアリン酸亜鉛を用いた。この潤滑剤を添加した混合粉末を、密度6.6±0.1g/cm3の円筒形状のブッシュに圧粉成形した。ブッシュの形状は、外径95mm、内径80mm、軸方向長さ65mmとした。
圧粉成形体の上に93gの銅塊を載置した状態で、還元性雰囲気中で、1110±10℃、180分間で熱処理し、焼結体を得た。還元性雰囲気は、N2+分解アンモニアガスとした。熱処理によって銅塊が溶融して圧粉成形体の気孔部に溶浸された。この焼結体を850℃の浸炭雰囲気中で保持したのち焼入れを行い、180℃で60分間焼戻しを行った。
得られた焼結体の密度を測定し、表2に示した。
(比較例1のブッシュの作製)
基地組織が表1に示す組成(質量%)となるように原料粉末を混合し、混合粉末を用意した。混合粉末100質量部に対して潤滑剤1.18質量部を添加した。潤滑剤には、ステアリン酸亜鉛を用いた。この潤滑剤を添加した混合粉末を、密度6.3±0.1g/cm3の円筒形状のブッシュに圧粉成形した。ブッシュの形状は、外径95mm、内径80mm、軸方向長さ65mmとした。
基地組織が表1に示す組成(質量%)となるように原料粉末を混合し、混合粉末を用意した。混合粉末100質量部に対して潤滑剤1.18質量部を添加した。潤滑剤には、ステアリン酸亜鉛を用いた。この潤滑剤を添加した混合粉末を、密度6.3±0.1g/cm3の円筒形状のブッシュに圧粉成形した。ブッシュの形状は、外径95mm、内径80mm、軸方向長さ65mmとした。
圧粉成形体を、還元性雰囲気中で、1130±10℃、170分間で熱処理し、焼結体を得た。還元性雰囲気は、N2+分解アンモニアガスとした。この焼結体を850℃の浸炭雰囲気中で保持したのち焼入れを行い、180℃で60分間焼戻しを行った。
得られた焼結体の密度を測定し、表2に示した。
(ブッシュの微細構造の観察)
得られたブッシュの微細構造を光学顕微鏡を用いて200倍の倍率にて観察した。図1に、実施例1のブッシュの内周面の表面の写真を示す。
得られたブッシュの微細構造を光学顕微鏡を用いて200倍の倍率にて観察した。図1に、実施例1のブッシュの内周面の表面の写真を示す。
実施例1のブッシュの内周面の表面を観察したところ、図1に示す通り、鉄系焼結体の焼結した基地組織と、基地組織の気孔部に形成された銅組織とが観察された。図1において、灰色部分は鉄基地であり、白い部分は溶浸された銅であり、黒い部分は気孔部である。
比較例1のブッシュの内周面の表面には、鉄系焼結体が焼結した基地組織と、気孔部とが観察された。この気孔部は空洞状であった。比較例1では、銅組織は、基地組織に分散して含まれていた。
実施例1のブッシュの直径方向の断面形状を光学顕微鏡を用いて観察したところ、ブッシュの内周面から外周面にわたり、鉄系焼結体の焼結した基地組織と、基地組織の気孔部に形成された銅組織とが観察された。
(圧環強さの評価)
実施例1及び比較例1のブッシュについて圧環強さを評価した。結果を表2に示す。
実施例1及び比較例1のブッシュについて圧環強さを評価した。結果を表2に示す。
ブッシュの軸方向を水平方向にしてブッシュを試験機にセットし、ブッシュの直径方向から10mm/分で荷重を負荷した。ブッシュが破壊する際の荷重から、圧環強さを求めた。試験機には、株式会社エー・アンド・デイ製の材料試験機「RTC−2423A」を用いた。
表2に示す通り、銅溶浸ありの実施例1では、圧環強さが改善された。
Claims (3)
- 基地と、気孔部と、前記気孔部に溶浸された銅とを含む鉄基焼結体を含む、建設機械の関節用ブッシュ。
- 前記鉄基焼結体は、前記銅の溶浸前の組成が、質量%で、Cu:0.1〜10%、C:0.1〜1%を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる、請求項1に記載の建設機械の関節用ブッシュ。
- 前記鉄基焼結体は、前記銅の溶浸前の開放気孔率が15〜30%である、請求項1又は2に記載の建設機械の関節用ブッシュ。
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