JP2020182463A - 核酸増幅試薬 - Google Patents
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Abstract
Description
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)、及びベタインを含む核酸増幅試薬であって、該PCNAが以下の(1)又は(2)に示されるいずれかからなるものであることを特徴とする核酸増幅試薬。
(1)配列番号13に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
(2)配列番号13に記載のアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
[項2]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、PCNA及びベタインを含む核酸増幅試薬であって、該PCNAが以下の(1)又は(2)に示されるいずれかからなるものであることを特徴とする核酸増幅試薬。
(1)配列番号14に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
(2)配列番号14に記載のアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
[項3]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、PCNA及びベタインを含む核酸増幅試薬であって、該PCNAが以下の(1)又は(2)に示されるいずれかからなるものであることを特徴とする核酸増幅試薬。
(1)配列番号19に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
(2)配列番号19に記載のアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
[項4]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである項1から3のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
[項5]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である項1から4のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
[項6]
ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域を構成するアミノ酸のいずれかに、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するものである項1から5のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
[項7]
PCNAが増幅増強活性を有する変異型PCNAである項1から6のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
本明細書においては、塩基配列、アミノ酸配列及びその個々の構成因子については、アルファベット一文字表記による簡略化した記号を用いる場合があるが、いずれも分子生物学・遺伝子工学分野における慣行に従う。また、本明細書においては、アミノ酸配列の変異を簡潔に示すため、例えば「D143A」などの表記を用いる。「D143A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示しており、すなわち、置換前のアミノ酸残基の種類、その場所、置換後のアミノ酸残基の種類を示している。また、配列番号は、特に断らない限り、配列表に記載された配列番号に対応する。また、多重変異体の場合は、上記の表記を「/」でつなげて表す。例えば「D143A/D147A」は、第143番目のアスパラギン酸をアラニンに置換し、かつ、第147番目のアスパラギン酸をアラニンに置換したことを示す。三重変異体以上の多重変異体については、さらに「/」の記号の後に「P36H」などの変異箇所についての情報を追記する。また、本明細書において「変異型PCNA」などという場合の「変異型」とは、従来知られたPCNAとは異なるアミノ酸配列を備えることを意味するものであり、人為的変異によるか自然界における変異によるかを区別するものではない。
本発明の実施形態の一つは、核酸を増幅させるための試薬であって、
(a)ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、及び
(b)PCNA
(c)ベタイン
の存在下で、DNAの合成反応を行うことを特徴とする核酸増幅試薬である。
本発明における核酸増幅試薬は、DNAポリメラーゼで増幅可能であれば特に限定されない。典型的な核酸増幅方法としてははPCRであるが、本発明の核酸増幅試薬はPCRのみならず、DNAを鋳型とし、1種のプライマー、dNTP(デオキシリボヌクレオチド3リン酸)を反応させることによりプライマーを伸長して、DNAプライマー伸長物を合成する方法にも使用される。具体的には、プライマーエクステンション法、シークエンス法、従来の温度サイクルを行わない方法及びサイクルシーケンス法等を含む。
(a)ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ
(b)PCNA
(c)ベタイン
のほか、
(d)一方のプライマーが他方のプライマーのDNA伸長生成物に互いに相補的である一対のプライマー
(e)DNA合成基質(デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP))、及び、
(f)マグネシウムイオン、アンモニウムイオン及び/又はカリウムイオンを含む緩衝液溶液を、混合し、
サーマルサイクラー等を用いて反応液の温度を以下の(I)から(IV)で示されるサイクルで上下させることにより、(1)DNA変性、(2)プライマーのアニーリング、(3)プライマーの伸長の熱サイクルを繰り返し、特定のDNA断片を増幅させる。
(I)反応液を94℃程度に加熱し、30秒から1分間温度を保ち、2本鎖DNAを1本鎖に分かれさせる。
(II)60℃程度(プライマーによって若干異なる)にまで急速冷却し、その1本鎖DNAとプライマーをアニーリングさせる。
(III)プライマーの分離がおきずDNAポリメラーゼの活性に至適な温度帯まで、再び加熱する。実験目的により、その温度は60−72℃程度に設定される。DNAが合成されるのに必要な時間、増幅する長さによるが通常1分から2分、この温度を保つ。
(IV)ここまでが1つのサイクルで、以後、(I)から(III)までの手順を繰り返していく事で特定のDNA断片を増幅させる。
[ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ]
本発明の核酸増幅試薬に用いるDNAポリメラーゼは、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである。本発明においてファミリーBに属するDNAポリメラーゼとは、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有し、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有さないDNAポリメラーゼをいう。好ましくは古細菌(アーキア、Archea)由来のDNAポリメラーゼである。前記ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、好ましくは古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである。
ファミリーBに属する古細菌由来のDNAポリメラーゼとしては、パイロコッカス(Pyrococcus)属及びサーモコッカス(Thermococcus)属の細菌から単離されるDNAポリメラーゼ等が挙げられる。パイロコッカス属由来のDNAポリメラーゼとしては、Pyrococcus furiosus、Pyrococcus sp.GB−D、Pyrococcus Woesei、Pyrococcus abyssi、Pyrococcus horikoshiiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。サーモコッカス属に由来するDNAポリメラーゼとしては、Thermococcus kodakaraensis、Thermococcus gorgonarius、Thermococcus litoralis、Thermococcus sp.JDF−3、Thermococcus sp.9degrees North−7(Thermococcus sp.9°N−7)、Thermococcus sp.KS−1、Thermococcus celer、又はThermococcus siculiから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに特に限定されない。これらのDNAポリメラーゼは市販されており、Pfu(Staragene)、KOD(東洋紡)、Pfx(Life Technologies)、Vent(New England Biolabs)、Deep Vent(New England Biolabs)、Tgo(Roche)、Pwo(Roche)などがある。なかでもPCR効率の観点から、伸長性や熱安定性の優れたKOD DNAポリメラーゼが好ましい。
[DNAポリメラーゼの改変(I)3’−5’エキソヌクレアーゼ領域の改変]
本発明の核酸増幅試薬に用いる改変されたDNAポリメラーゼは、さらに3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域のアミノ酸配列のいずれかに少なくとも1つのアミノ酸の改変を含んでいてもよい。
[DNAポリメラーゼの改変(II)減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体を作製する改変]
本発明の核酸増幅試薬に用いるファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、減少した塩基類似体検出活性を有する変異体でもよい。塩基類似体とはアデニンやシトシン、グアニン、チミン以外の塩基を示し、ウラシルやイノシンなどが挙げられる。通常、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、塩基類似体であるウラシルやイノシンを検出すると強く結合し、ポリメラーゼ機能を阻害する。塩基類似体検出活性とは、塩基類似体と強く結合し、ポリメラーゼ機能を阻害する活性を示す。減少した塩基類似体検出活性を有するファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体とは、ウラシルやイノシンへの結合能力が低いことを特徴とするファミリーBに属するDNAポリメラーゼ変異体である。
本発明の核酸増幅試薬に用いる減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体として、より好ましいのは、ウラシルと相互作用に直接関連していると想定されている7、36、37、90〜97、及び112〜119番目のアミノ酸のうち少なくとも1つに改変を加えた古細菌DNAポリメラーゼ変異体、例えば、(a)配列番号1又は配列番号2で示されるアミノ酸配列の7、36、37、90〜97及び112〜119番目に相当するアミノ酸のうち、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するアミノ酸配列で示される古細菌DNAポリメラーゼ変異体である。
上記のDNAポリメラーゼ変異体は、以下の(b)のアミノ酸配列で示されるものであってもよい。
(b)(a)で示されるアミノ酸配列においてさらに7、36、37、90〜97及び112〜119番目以外の部位において少なくとも1つのアミノ酸が改変されており、そのアミノ酸配列と配列番号1との同一性又はそのアミノ酸配列と配列番号2との同一性が80%以上(好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上であり、さらに好ましくは99%以上である)であり、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
上記のDNAポリメラーゼ変異体は、以下の(c)のアミノ酸配列で示されるものであってもよい。
(c)(a)で示されるアミノ酸配列において、さらに7、36、37、90〜97及び112〜119番目以外の部位において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されており、かつ、減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼをコードするアミノ酸配列。
本発明の核酸増幅試薬に用いる減少した塩基類似体検出活性を有するDNAポリメラーゼ変異体は、より好ましくは配列番号1又は配列番号2におけるアミノ酸Y7、P36、又はV93に相当するアミノ酸から選択される少なくとも1つのアミノ酸の改変を有する。ここで、例えば、Y7とは、7番目のアミノ酸であるチロシン(Y)残基を意味しており、アルファベット1文字は通用されているアミノ酸の略号を表している。好ましい例において、Y7アミノ酸はチロシン(Y)が非極性アミノ酸に置換されており、具体的にはY7A、Y7G、Y7V、Y7L、Y7I、Y7P、Y7F、Y7M、Y7W、及びY7Cからなる群より選ばれるアミノ酸置換である。別の好ましい例において、P36アミノ酸はプロリン(P)が正電荷をもつ極性アミノ酸に置換されており、具体的にはP36H、P36K、又はP36Rのアミノ酸置換である。別の好ましい例において、V93アミノ酸はバリン(V)が正電荷をもつ極性アミン酸に置換されており、具体的にはV93H、V93K、又はV93Rのアミノ酸置換である。
上記に例示したDNAポリメラーゼの改変をもとに、本発明の核酸増幅試薬に用いる改変されたDNAポリメラーゼとしては、種々の変異体が考えられる。そのような変異体として、以下の(1)−(4)のいずれかの改変を有する古細菌DNAポリメラーゼの変異体が例示されるが、これに限定されるものではない。
(1)(A)H147Eと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36H/V93K、P36K、P36R、P36H、V93R又はV93Qのいずれか
(2)(A)N210Dと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36K、P36R、P36H、V93Q、V93K又はV93Rのいずれか
(3)(A)I142Rと、(B)Y7A/V93K、Y7A/V93R、Y7A/V93Q、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H、V93K、V93R又はV93Qのいずれか
(4)(A)D141A/E143Aと、(B)Y7A/V93K、Y7A/P36H、Y7A/P36R、P36R、P36H又はV93Kのいずれか
[塩基類似体検出活性の評価方法]
本発明における塩基類似体検出活性は、PCRによって評価することができる。塩基類似体は典型的にはウラシルである。例えば、鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー及び評価対象のDNAポリメラーゼを含む通常のPCR反応液に、dUTP溶液を、終濃度0.5μM〜200μMで添加し、熱サイクルを行う。反応後にエチジウムブロマイド染色1%アガロース電気泳動でPCR産物の有無を確認し、許容できたdUTP濃度によって、ウラシルの検出活性を評価することが出来る。ウラシル検出活性の高いDNAポリメラーゼは少しのdUTPの添加で伸長反応が阻害され、PCR産物が確認できない。また、ウラシルの検出活性の低いDNAポリメラーゼは高濃度のdUTPを添加しても問題なくPCRによるDNA増幅が確認できる。
KOD −Plus− Ver.2(東洋紡製)添付の10×PCR Buffer、又はPfu DNA Polymerase(Agilent製)添付の10×PCR Bufferを用い、1×PCR Buffer、及び1.5mM MgSO4、0.2mM dNTPs(dATP、dTTP,dCTP、dGTP)、約1.3kbを増幅する15pmolの配列番号11及び12に記載のプライマー、10ngのヒトゲノムDNA(Roche製Human Genomic DNA;型番11691112001)、1Uの各酵素を含む50μlの反応液中に、dUTP(Roche製)を終濃度0.5、5、50、100、200μMになるよう添加する。94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→65℃、30秒→68℃、1分30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp9700(Applied Biosystem)にてPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液について1%アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下、約1.3kbの増幅DNA断片を確認することで塩基類似体検出活性が減少しているかどうかが評価することができる。
[アミノ酸改変の導入方法]
本発明の核酸増幅試薬に用いるDNAポリメラーゼを改変する方法は、既に当該技術分野において確立されている。よって、公知の方法に従い改変を行うことが出来、その態様は特に制限されない。
[DNAポリメラーゼ活性測定法]
本発明において、核酸増幅試薬に用いるDNAポリメラーゼは、以下のようにして活性を測定するものとする。酵素活性が強い場合には、保存緩衝液(50mM Tris−HCl(pH8.0),50mM KCl,1mM ジチオスレイトール,0.1% Tween20,0.1% Nonidet P40,50% グリセリン)でサンプルを希釈して測定を行う。
(1)下記のA液25μl、B液5μl、C液5μl、滅菌水10μl、及び酵素溶液5μlをマイクロチューブに加えて75℃にて10分間反応する。(2)その後氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後更に10分間氷冷する。(3)この液をガラスフィルター(ワットマン製GF/Cフィルター)で濾過し、0.1N 塩酸及びエタノールで十分洗浄する。(4)フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パーキンエルマー製TriCarb 2810TR)で計測し、鋳型DNAのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件で30分当りの10nmolのヌクレオチドを酸不溶性画分(即ち、D液を添加したときに不溶化する画分)に取り込む酵素量とする。
A液:40mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)、16mM 塩化マグネシウム15mM ジチオスレイトール、100μg/mL BSA(牛血清アルブミン)
B液:1.5μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C液:1.5mM dNTP(250cpm/pmol [3H]dTTP)
D液:20% トリクロロ酢酸(2mM ピロリン酸ナトリウム)
E液:1mg/mL仔牛胸腺DNA
(2.1)
本発明の核酸増幅試薬に用いられるPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)は、PCR増強因子の一種である。前記PCNAとしては、特に限定されないが、PCRの熱サイクルに耐えられる耐熱性のものが望ましく、好ましくはPCR後も活性が残るものが望まれる。より好ましくは80℃で30分の熱処理を行っても可溶性であり、活性が50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上残っているものが望まれる。
PCNAが多量体形成に関する部位は、サーモコッカス・コダカラエンシスに由来するPCNA(以下、「KOD−PCNA」とも記載)(配列番号14)、パイロコッカス・フリオサスのPCNA(以下、「Pfu−PCNA」とも記載)(配列番号13)においては、82、84、109番目のアミノ酸からなるN末端領域と139、143、147番目のアミノ酸からなるC末端領域があげられる。N末端領域はプラスに帯電し、C末端領域はマイナスに帯電し、相互作用することで多量体形成を行う。
(a)82、84、109番目に相当するアミノ酸からなるN末端領域、又は
(b)139、143、147番目に相当するアミノ酸からなるC末端領域に少なくとも一つの改変を有し、RFCがなくともDNAにロードし、DNAポリメラーゼによる伸長反応を促進する変異体が挙げられる。
また、本発明の核酸増幅試薬に用いるPCNAは、以下の(1)から(3)のうちいずれかで示されるPCNA単量体であることが好ましい。
[1]配列番号19に記載のアミノ酸配列の142番目のアミノ酸残基を塩基性アミノ酸残基に置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド。
[2][1]で示されるPCNA単量体において、さらに、配列番号19に記載のアミノ酸配列における、142番目に相当するアミノ酸残基以外の、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入及び/又は付加(これらを纏めて「変異」とも表す。)されているアミノ酸配列からなり、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
[3]配列番号19で示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド。
(a)80、82、108番目のアミノ酸残基群
(b)138、142、146番目のアミノ酸残基群
上記PCNAを得る方法は、PCNA遺伝子を必要に応じて発現ベクターに移し替え、宿主として例えば大腸菌を、該発現ベクターを用いて形質転換した後、アンピシリン等の薬剤を含む寒天培地に塗布し、コロニーを形成させる。コロニーを栄養培地、例えばLB培地や2×YT培地に接種し、37℃で12〜20時間培養した後、菌体を破砕して粗酵素液を抽出する。ベクターとしては、pBluescript由来のものが好ましい。菌体を破砕する方法としては、公知のいかなる手法を用いても良いが、例えば超音波処理、フレンチプレスやガラスビーズ破砕のような物理的破砕法やリゾチームのような溶菌酵素を用いることができる。この粗酵素液を80℃、30分間熱処理し、遠心分離することで宿主由来のタンパク質を除去し、SDS−PAGEに供することで、目的タンパク質の発現を確認することができる。
上記PCNA変異体が単独でDNAにロードできるか(DNAポリメラーゼ増幅増強活性があるか)どうかは、PCRによって評価できる。鋳型となるDNA、緩衝材、マグネシウム、dNTPs、プライマー、及びファミリーBに属するDNAポリメラーゼを含むPCR反応液に、評価するPCNAを添加し、PCNA添加なしのもの、また野生型PCNA添加のものとDNA増幅量を比較することで、単独でDNAにロードできるかを確認することができる。野生型のPCNAをはじめ、単独でDNAにロードできないPCNAは添加しても、PCRによるDNA増幅量は変化せず、むしろDNA増幅量を減らす傾向がある。一方、単独でDNAにロードできる変異体は、PCNA添加なしのものと比較することでDNAポリメラーゼ増幅増強活性を評価することができる。
KOD Dash(東洋紡製)に添付の10×PCR Buffer(反応に用いる濃度の10倍に濃縮されている)を用いて、
1×PCR Buffer、
0.2mM dNTPs、
約3.6kbのDNAを増幅する15pmolの配列番号15及び16に記載のプライマー、
10ngのヒトゲノムDNA(Roche製Human Genomic DNA;型番11691112001)、
1U KOD −Plus− DNAポリメラーゼ
を含むよう反応液を調製し、
50μlの反応液中に、評価するPCNAを250ng添加し、94℃、30秒の前反応の後、98℃、10秒→68℃、30秒を30サイクル繰り返すスケジュールでPCRを行う。反応終了後、5μlの反応液について1%アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下約3.6kbの増幅DNA断片を、野生型PCNAを添加したものと比較することで単独でDNAにロードできるPCNAかどうかを評価することができる。単独でDNAにロードできるPCNAは添加によってDNA増幅量が増加する。
KOD DNAポリメラーゼ変異体の作製
後述の実施例に用いるために、サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ(Y7A/V93K/H147E及び、Y7A/P36H/N210D変異体)遺伝子を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号17)(pKOD)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(東洋紡製)を用いて、取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
(実施例1−2)
Pfu DNAポリメラーゼ変異体の作製
後述の実施例に用いるために、パイロコッカス・フリオサス株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ(Y7A/P36H/N210D変異体)遺伝子を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBluescriptにクローニングされたパイロコッカス・フリオサス株由来の改変型耐熱性DNAポリメラーゼ遺伝子(配列番号35)(pPfu)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(東洋紡製)を用いて、取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリJM109を形質転換し、酵素調製に用いた。
改変型耐熱性DNAポリメラーゼの作製
実施例1で得られた菌体の培養は、以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1% バクトトリプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリJM109(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に、細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、ヘパリンセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1% ノニデットP40、50% グリセリン)に置換し、改変型耐熱性DNAポリメラーゼを得た。上記精製工程のDNAポリメラーゼ活性測定は、上記のDNAポリメラーゼ活性測定法に従い行った。また、酵素活性が高い場合はサンプルを希釈して測定を行った。
KOD−PCNA1変異体の作製
サーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来の改変型耐熱性PCNA1(M73L/D147A変異体)遺伝子を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pBlueScriptにクローニングされたサーモコッカス・コダカラエンシス KOD1株由来のPCNA(配列番号18)(pKODPCNA)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(東洋紡製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読により行った。得られたプラスミドによりエシェリシア・コリDH5αを形質転換し、酵素の調製に用いた。
KOD−PCNA1の作製
実施例3で得られた菌体の培養は、以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するTB培地(Molecular cloning 2nd edition、p.A.2)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地(1% バクトトリプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム;ギブコ製)で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリDH5α(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にて16時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、Qセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1% ノニデットP40、50% グリセリン)に置換し、改変型耐熱性PCNAを得た。
Mja−PCNA変異体のプラスミド作製
Methanocaldococcus jannaschii株由来の改変型耐熱性PCNA遺伝子変異体(E142K)を含有するプラスミドを作製した。変異導入に使用されるDNA鋳型は、pET23bにクローニングされたMethanocaldococcus jannaschii株由来のPCNA(配列番号34)(pMjaPCNA)を用いた。変異導入にはKOD −Plus− Mutagenesis Kit(東洋紡製)を用いて、方法は取扱い説明書に準じて行った。なお、変異体の確認は塩基配列の解読で行った。得られたプラスミドにより、エシェリシア・コリBL21(DE3)pLysSを形質転換し、酵素の調製に用いた。
Mja−PCNAの作製
実施例1で得られた菌体の培養は、以下のようにして実施した。まず、滅菌処理した100μg/mLのアンピシリンを含有するLB培地(1% バクトトリプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% 塩化ナトリウム;ギブコ製)80mLを、500mL坂口フラスコに分注した。この培地に予め100μg/mLのアンピシリンを含有する3mLのLB培地で37℃、16時間培養したエシェリシア・コリBL21(DE3)pLysS(プラスミド形質転換株)(試験管使用)を接種し、37℃にてOD600が0.3〜0.6になるまで通気培養した。その後、IPTGを終濃度0.5mMになるように添加し、4時間通気培養した。培養液より菌体を遠心分離により回収し、50mLの破砕緩衝液(30mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁後、ソニケーション処理により菌体を破砕し、細胞破砕液を得た。次に、細胞破砕液を80℃にて15分間処理した後、遠心分離にて不溶性画分を除去した。更に、ポリエチレンイミンを用いた除核酸処理、硫安塩析、Qセファロースクロマトグラフィーを行い、最後に保存緩衝液(50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、50mM 塩化カリウム、1mM ジチオスレイトール、0.1% Tween20、0.1% ノニデットP40、50% グリセリン)に置換し、Mja−PCNA変異体を得た。
長鎖ターゲットDNAの増幅
KOD DNAポリメラーゼ変異体(Y7A/V93K/H147E)、KOD−PCNA1 M73L/D147A変異体を用い、17.5kbのDNAを増幅する系で、PCNAがある場合とない場合とでDNA増幅の比較を行った。なお、前記のそれぞれの場合において、さらにベタインがある場合とない場合とでDNA増幅を比較した。PCRにはKOD −Plus− Ver.2(東洋紡製)に添付の10×PCR Bufferを用い、
1×PCR Buffer、
1.5mM MgSO4、
0.2mM dNTPs、
約8.5kbのDNAを増幅する15pmolの配列番号20及び21に記載のプライマー、
300、30、3コピー相当のヒトゲノムDNA(Roche製Human Genomic DNA;型番11691112001)、及び、
1μgのKOD抗体と混合した1.25U KOD DNAポリメラーゼ変異体(Y7A/V93K/H147E)を含む50μlの反応液中に、KOD−PCNA1変異体(M73L/D147A)を500ng添加(又は添加せず)し、また、1M ベタインを添加(又は添加せず)して、反応系を比較した。
GC率の高い領域をもつターゲットDNAの増幅
KOD DNAポリメラーゼ変異体(Y7A/V93K/H147E)、KOD−PCNA1 M73L/D147A変異体を用い、約10kbのDNAを増幅する系5種(これら5種はGC率が70%を超える500bp以上の領域を内部に含んでいる。)で、PCNAがある場合とない場合とでDNA増幅の比較を行った。なお、前記のそれぞれの場合において、さらにベタインがある場合とない場合とでDNA増幅を比較した。PCRにはKOD −Plus− Ver.2(東洋紡製)に添付の10×PCR Bufferを用い、
1×PCR Buffer、
1.5mM MgSO4、
0.2mM dNTPs、
約10kbを増幅する6pmolのプライマー(ATCB:配列番号22及び23、BRAF:配列番号24及び25、TGFb:配列番号26及び27、ACE:配列番号28及び29、CASP3:配列番号30及び31)、
20ngのヒトゲノムDNA(Roche製Human Genomic DNA;型番11691112001)、及び、
0.5μgのKOD抗体と混合した0.6U KOD DNAポリメラーゼ変異体(Y7A/V93K/H147E)
を含む20μlの反応液中に、ベタインを1Mになるように添加(又は添加せず)し、また、PCNA変異体を400ng添加(又は添加せず)して、反応系を比較した。コントロールとしてPCNA、ベタインを添加しないものも実施した。サイクルは94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→60℃、10秒→68℃、2分を30サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp(登録商標)9700(Applied Biosystem)を用いてPCRを行った。
植物ライセートからのDNA増幅
DNA ポリメラーゼとしてKOD DNAポリメラーゼ変異体(Y7A/P36H/N210D)及びPfuポリメラーゼ変異体(Y7A/P36H/N210D)の2種類、PCNAとしてKOD−PCNA1変異体(M73L/D147A)、Mja−PCNA変異体(E142K)の2種類を用いて、植物のライセートから精製を行うことなくPCRができるかをベタインありなしで比較検討した。鋳型にはタバコの葉3mm角をBuffer A(100mM Tris−HCl(pH9.5)、1M KCl、10mM EDTA)100μlに添加し、95℃、10分の熱処理を行ったものをライセートとして用いた。PCRにはKOD Dash(東洋紡製)添付の10×PCR Bufferを用い、
1×PCR Buffer、
0.2mM dNTPs、
約1.3kbを増幅する15pmolの配列番号32及び33に記載のプライマー、
1μgのKOD抗体と混合した1.25U DNAポリメラーゼ変異体(KOD、PfuそれぞれY7A/P36H/N210D変異体)を含む50μlの反応液中に、評価するPCNAを1000ng添加(又は添加せず)し、また、ベタインは1Mを含むものと含まないものを比較した。コントロールとしてPCNA、ベタインを添加しないものも実施した。サイクルは94℃、2分の前反応の後、98℃、10秒→65℃、10秒→68℃、1.5分を35サイクル繰り返すスケジュールでPCR system GeneAmp(登録商標)9700(Applied Biosystem)を用いてPCRを行った。
反応終了後、5μlの反応液について1%アガロース電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色し、紫外線照射下、増幅DNA断片の増幅量を確認した。
Claims (7)
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、Proliferating Cell Nuclear Antigen(PCNA)、及びベタインを含み、8.5kb以上の長鎖ターゲットを核酸増幅するために用いられる核酸増幅試薬であって、該PCNAが以下の(1)又は(2)に示されるいずれかからなるものであることを特徴とする核酸増幅試薬。
(1)配列番号13に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
(2)配列番号13に記載のアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド - ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、PCNA及びベタインを含み、8.5kb以上の長鎖ターゲットを核酸増幅するために用いられる核酸増幅試薬であって、該PCNAが以下の(1)又は(2)に示されるいずれかからなるものであることを特徴とする核酸増幅試薬。
(1)配列番号14に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
(2)配列番号14に記載のアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド - ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ、PCNA及びベタインを含み、8.5kb以上の長鎖ターゲットを核酸増幅するために用いられる核酸増幅試薬であって、該PCNAが以下の(1)又は(2)に示されるいずれかからなるものであることを特徴とする核酸増幅試薬。
(1)配列番号19に記載のアミノ酸配列において、1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入又は付加されているアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド
(2)配列番号19に記載のアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ、DNAポリメラーゼ増幅増強活性を有するポリペプチド - ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、古細菌(Archea)由来のDNAポリメラーゼである請求項1から3のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが減少した塩基類似体検出活性を有する古細菌DNAポリメラーゼ変異体である請求項1から4のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
- ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが3’−5’エキソヌクレアーゼ活性領域を構成するアミノ酸のいずれかに、少なくとも1つのアミノ酸の改変を有するものである請求項1から5のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
- PCNAが増幅増強活性を有する変異型PCNAである請求項1から6のいずれかに記載の核酸増幅試薬。
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