JP2020143008A - 新規褐色脂肪細胞分化誘導剤 - Google Patents

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達也 楠堂
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Abstract

【課題】褐色脂肪細胞の分化誘導に有効な実用性に優れた手段を提供することを課題とする。【解決手段】ビタミンD又はその誘導体を有効成分とした褐色脂肪細胞分化誘導剤が提供される。褐色脂肪細胞分化誘導剤は例えば医薬、医薬部外品、食品又は化粧料の有効成分として利用される。【選択図】なし

Description

本発明は褐色脂肪細胞への分化を促す剤及びその用途(例えば、肥満の予防・治療)に関する。
脂肪組織には白色脂肪組織と褐色脂肪組織の2種類が存在し、白色脂肪組織がエネルギーを蓄積する貯蔵器官であるのに対して、褐色脂肪組織は蓄積されたエネルギーを消費し、熱として放出する燃焼器官である。ヒトにおいて褐色脂肪組織は新生児では豊富に存在するものの、その後、著しく減少し成人では生理的に意味のある量は存在しないと考えられてきた。しかし、近年、褐色脂肪組織が成人においても生理的に機能しているだけでなく、その減少が肥満や糖尿病の原因となることが明らかとなった(非特許文献1)。そのため、褐色脂肪組織の活性化、増量、及び白色脂肪組織の褐色脂肪化は画期的な肥満やメタボリックシンドローム対策法として期待されている(非特許文献2)。現在までに褐色脂肪細胞の分化を制御する因子としてPRDM16、BMP7、PGC1αなどが報告されてきているが(非特許文献3、4)、これらを作動させる方法はいずれも実用には至っていない。また、褐色脂肪組織を活性化する方法として交感神経刺激が有効であることが明らかとなっているが、交感神経作動薬を用いた活性化剤は副作用のため開発が中止されている。その他、褐色脂肪細胞への分化を誘導する手段がいくつか提案されている(例えば特許文献1〜3を参照)。
国際公開第2014/027608号パンフレット 特開2016−199481号公報 特開2017−193508号公報
N Engl J Med 360:1509-1517,2009 科学技術動向2009年6月号(文部科学省 科学技術政策研究所 科学技術動向研究センター) Cell Metab 1:361-370,2005 Nature 454:961-967,2008 Eur J Nutr. 2015 Sep;54(6):1001-12.
褐色脂肪細胞の活性化や褐色脂肪細胞の分化誘導のための種々の方策が提案されているが、現状、実用化レベルのものはない。このような状況に鑑み、本発明の課題は、褐色脂肪細胞の分化誘導に有効な実用性に優れた手段を提供し、肥満やメタボリックシンドローム等に対する新たな予防・治療法の確立に貢献することを課題とする。
上記課題を解決すべく検討を進める中で本発明者らは、血中カルシウム濃度の維持に重要な役割を果たすビタミンDに注目した。ビタミンDは骨粗鬆症や乾癬の予防・治療に利用されている。また、がんの予防への利用も検討されている。褐色脂肪細胞との関係においては、活性型ビタミンD3が褐色脂肪細胞への分化を抑制するという報告がある(非特許文献5)。但し、当該報告での実験は非生理的濃度の活性型ビタミンD3を用いており、生体での利用を想定したものとは言い難い。従って、臨床上ないし実用上のビタミンDの有用性を示唆するものではない。
本発明者らは、生体での利用を想定した実験系を構築し、生理的濃度での活性型ビタミンD3の作用を検討した。その結果、活性型ビタミンD3が褐色脂肪化を促進した。即ち、生理的濃度では活性型ビタミンD3が既報とは正反対の活性ないし作用を示すという、驚くべき事実が明らかとなった。また、更なる検討の結果、活性型ビタミンD3の前駆体(25(OH)D3)及びビタミンD誘導体にも同様の効果が認められた。この実験結果は、褐色脂肪化の促進という生理活性が活性型ビタミンD3に固有のものではなく、前駆体や類縁化合物にも認められる、共通性ないし一般性が高い特性であることを裏付ける。尚、ビタミンDは元来天然物であり且つ生体に存在する成分でもあり、その安全性は高いといえる。この特徴は、ビタミンD及びその誘導体に見出された新たな有用性を利用する上で重要であり、本発明の実用上の価値及び意義が高いことを示す。
以上の成果及び考察に基づき、以下の発明が提供される。
[1]ビタミンD又はその誘導体を有効成分とした褐色脂肪細胞分化誘導剤。
[2]ビタミンDがビタミンD2又はビタミンD3である、[1]に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
[3]ビタミンD2が1α,25(OH)2D2又は25(OH)D2αであり、ビタミンD3が1α,25(OH)2D3又は25(OH)D3である、[2]に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
[4]誘導体がエルデカルシトール又はファレカルシトリオールである、[1]に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤を含む、代謝異常又はその関連疾患の治療又は予防用組成物。
[6]代謝異常又はその関連疾患が、肥満、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化性疾患又はメタボリック症候群である、[5]に記載の組成物。
[7]医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、[5]又は[6]に記載の組成物。
活性型ビタミンD3(1α,25(OH)2D3)による褐色脂肪化の促進。左図:分化誘導後の細胞を脂肪染色した結果(左)(黒い部分が脂質)と脂肪マーカー遺伝子FABP4の相対発現量(右)を示す。 活性型ビタミンD3(1α,25(OH)2D3)による褐色脂肪化の促進。褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子UCP1の相対発現量を示す。 25(OH)D3による褐色脂肪化の促進。褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子UCP1の相対発現量を示す。 エルデカルシトールによる褐色脂肪化の促進。褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子UCP1の相対発現量を示す。
1.褐色脂肪細胞分化誘導剤
本発明の第1の局面は褐色脂肪細胞分化誘導剤(以下、説明の便宜上「分化誘導剤」とも呼ぶ)に関する。「褐色脂肪細胞分化誘導剤」とは、褐色脂肪細胞への分化能を有する細胞(即ち前駆細胞又は幹細胞。典型的には、筋・褐色脂肪前駆細胞又は脂肪前駆細胞)に作用し、褐色脂肪細胞への分化を促す薬剤をいう。褐色脂肪細胞分化誘導剤を使用すると、褐色脂肪細胞への分化が促進される結果、褐色脂肪細胞数が増大する。
本発明の分化誘導剤の有効成分はビタミンD又はビタミンD誘導体である。17位の側鎖構造の違いによりビタミンD2〜D7が存在する。自然界に広く分布し、生理学的に重要なものはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)である。本発明の有効成分として好ましくはビタミンD2又はビタミンD3が用いられる。尚、ビタミンD2とビタミンD3はヒト体内において同様に代謝され、活性も同等と考えられている。
好ましい一態様では活性型のビタミンD2(1α,25(OH)2D2)又はビタミンD3(1α,25(OH)2D3)、或いはこれらの前駆体である25(OH)D2又は25(OH)D3が有効成分となる。
数多くのビタミンD誘導体が合成されている。既存のビタミンD誘導体を例示すると、アルファカルシドール、マキサカルシトール、エルデカルシトール、ファレカルシトリオールである。期待される効果、即ち、褐色脂肪細胞への分化を誘導する効果が認められる限り、本発明の有効成分となるビタミンD誘導体は特に限定されない。従って、今後開発されるビタミンD誘導体についても、本発明の有効成分として採用し得る。好ましいビタミンD誘導体の例としてエルデカルシトールを挙げることができる。
本発明の分化誘導剤が二種類以上の有効成分を含んでいてもよい。言い換えれば、複数種類のビタミンD又はビタミンD誘導体を併用して本発明の分化誘導剤を構成してもよい。その場合の組合せ、有効成分の数などは任意である。
2.褐色脂肪細胞分化誘導剤を含む組成物
褐色脂肪細胞は中性脂肪を燃焼して過剰エネルギーを消費する特殊な細胞であり、その減少が肥満やメタボリック症候群発症の原因となることが明らかとなってきた。従って、褐色脂肪細胞を増加させることは、肥満やメタボリック症候群など、代謝異常やその関連疾患の予防・治療に有効な手段となる。そこで本発明の第2の局面は、代謝異常又はその関連疾患の治療又は予防用の組成物を提供する。
本発明の組成物は、好ましくは医薬、医薬部外品、食品、化粧料の形態で提供される。即ち、本発明は好ましい態様として、本発明の分化誘導剤を有効成分として含有する医薬組成物、医薬部外品組成物、食品組成物及び化粧料組成物を提供する。本発明の組成物の治療ないし予防対象となる「代謝異常又はその関連疾患」(以下、説明の便宜上「標的疾患」と呼ぶ)の具体例は、肥満、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化性疾患、メタボリック症候群である。
「肥満」とは一般的には体内に脂肪組織が過剰に蓄積した状態をいう。本明細書では用語「肥満」は広義に解釈されるものとし、その概念に肥満症を含む。「肥満症」とは肥満に起因ないし関連する健康障害(合併症)を有するか又は将来的に有することが予測される場合であって、医学的に減量が必要とされる病態をいう。肥満の判定法には、例えば、国際的に広く使用されているBMI(body mass index)を尺度としたものがある。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で除した数値(BMI=体重(kg)/身長(m)2)である。BMI<18.5は低体重(underweight)、18.5≦BMI<25は普通体重(normal range)、25≦BMI<30は肥満1度(preobese)、30≦BMI<35は肥満2度(obese class I)、35≦BMI<40は肥満3度(obese class II)、40≦BMIは肥満4度(obese class III)と判定される(WHO)。また、BMIを利用して、日本人の成人の標準体重(理想体重)を以下の式、標準体重(kg)=身長(m)2×22から計算し、実測体重が標準体重(計算値)の120%を超える状態を肥満とする判定法もある。もっとも、標準体重(理想体重)は性別、年齢、又は生活習慣の差異などによって個人ごとに相違することから、肥満の判定をこの方法で一律に行うことは妥当でないと考えられている。
「メタボリック症候群」とは、肥満・内臓脂肪の蓄積を基盤としてインスリン抵抗性、動脈硬化惹起性リポ蛋白異常、高血圧を合併し、心血管病に罹るリスクが高くなった状態をいう。メタボリック症候群の診断基準については、2005年4月に内科系8学会(日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本内科学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会)が合同で以下の診断基準を作成している。
<日本内科学会等8学会による診断基準>
以下の(a)に加え、(b)〜(d)の中の二つ以上を満たす。
(a)腹囲: 男性は85cm以上、女性は90cm以上
(b)中性脂肪が150mg/dl以上かつ/又はHDL-Cが40mg/dl未満
(c)血圧が130/85mmHg以上
(d)空腹時血糖が110mg/dl以上
尚、国際糖尿病連盟(IDF)は、以下の世界統一診断基準を作成している。
<国際糖尿病連合(IDF)の診断基準>
以下の(a)に加え、(b)〜(e)の中の二つ以上を満たす。
(a)腹囲: 男性は90cm以上、女性は80cm以上
(b)中性脂肪が150mg/dl以上
(c)空腹時血糖が100mg/dl以上
(d)HDL-C: 男性は40mg/dl未満、女性は45mg/dl未満
(e)血圧が130/85mmHg以上
(1)医薬組成物・医薬部外品組成物
本発明における「医薬」及び「医薬部外品」は、標的疾患に対する治療的又は予防的効果を示す薬剤組成物である。治療的効果には、標的疾患に特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であり、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、標的疾患に特徴的な症状や病態の発現(発症)又は再発を阻止ないし遅延することである。尚、標的疾患に対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、本発明の医薬組成物ないし医薬部外品組成物に該当する。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
製剤化する場合の剤型も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤などとして本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物を提供できる。
本発明の医薬組成物には、期待される治療効果や予防効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。同様に本発明の医薬部外品組成物には、期待される改善効果や予防効果等を得るために必要な量の有効成分が含有される。本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物に含まれる有効成分量は一般に剤型や形態によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%〜約99重量%の範囲内で設定する。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物はその剤型・形態に応じて経口又は非経口(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜、塗布など)で対象に適用される。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい態様では、適用対象はヒトである。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の投与量・使用量は、期待される効果が得られるように設定される。有効な投与量の設定においては一般に適用対象の症状、年齢、性別、体重などが考慮される。当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。生理的濃度のビタミンDに特有の効果(褐色脂肪細胞への分化誘導)が認められたこと(後述の実施例を参照)を考慮し、過剰量が投与されないように投与量を設定することが好ましい。「過剰量」とは、生体内での通常の濃度(即ち、生理的濃度)を大幅に超える量であり、活性型ビタミンD3(1α,25(OH)2D3)を投与する場合であれば投与後の血中最大濃度が例えば1000 pM以上(好ましくは750 pM以上、更に好ましくは500 pM以上、更に更に好ましくは250 pM以上、より一層好ましくは150 pM以上)になる投与量を過剰量の目安にすることができる。従って、投与後の血中最大濃度が例えば1000 pM未満、好ましくは750 pM未満、更に好ましくは500 pM未満、更に更に好ましくは250 pM未満、より一層好ましくは150 pM未満になるように投与量を設定するとよい。最適な投与量は予備実験によって決定すればよい。活性型ビタミンD3以外のビタミンD、或いはビタミンD誘導体の場合の投与量については、投与対象の生体内に存在するもの(例えば25(OH)D3)であれば、その生理的濃度を考慮しつつ、活性型ビタミンD3の上記投与量に準じて設定することができ、投与対象の生体内に存在しないもの(例えばエルデカルシトールやファレカルシトリオール等の合成化合物)であれば、その活性と活性型ビタミンD3の活性を比較し、活性型ビタミンD3の上記投与量に準じて設定すればよい。
投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、適用対象の症状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
以上の記述から明らかな通り本出願は、代謝異常又はその関連疾患の患者又は潜在的患者(将来罹患するおそれのある者)に対して本発明の医薬組成物を治療上有効量投与することを特徴とする、予防法や治療法も提供する。
(2)食品組成物
上記の通り本発明の一態様は、本発明の分化誘導剤を含有する食品組成物である。本発明での「食品組成物」の例として、米飯類、パン類、野菜加工品、食肉加工品、麺類、みそ汁、スープ、菓子類(例えば、ビスケット、クッキー、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)、茶飲料、清涼飲料水、炭酸飲料、果汁飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、アルコール飲料、スプレッド/ジャム類(マーガリン、ファストスプレッド、ジャム等)、ふりかけ、マヨネーズ/ドレッシング類、ソース/タレ類、栄養補助食品ないし保健機能食品(栄養機能食品、機能性表示食品、特定健康用食品)、食品添加物、愛玩動物用食品、愛玩動物用栄養補助食品を挙げることができる。栄養補助食品ないし保健機能食品、食品添加物、愛玩動物用食品、愛玩動物用栄養補助食品の場合、粉末、顆粒末、錠剤(タブレット)、ペースト、液体等の形状で提供することができる。食品組成物の形態で提供することによって、本発明の有効成分を日常的に摂取したり、継続的に摂取したりすることが容易となる。
本発明の食品組成物には、治療的又は予防的効果が期待できる量の有効成分が含有されることが好ましい。含有量(添加量)は、それが使用される対象となる者の病状、健康状態、年齢、性別、体重などを考慮して定めることができる。
(3)化粧料組成物
上記の通り本発明の一態様は、本発明の分化誘導剤を有効成分として含有する化粧料組成物である。本発明の化粧料組成物は、本発明の分化誘導剤と、化粧料に通常使用される成分・基材(例えば、各種油脂、ミネラルオイル、ワセリン、スクワラン、ラノリン、ミツロウ、変性アルコール、パルミチン酸デキストリン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール、パラベン、カンフル、メントール、各種ビタミン、酸化亜鉛、酸化チタン、安息香酸、エデト酸、カミツレ油、カラギーナン、キチン末、キトサン、香料、着色料など)を配合することによって得ることができる。
化粧料組成物の形態として、フェイス又はボディー用の乳液、化粧水、クリーム、ローション、エッセンス、オイル、パック、シート、洗浄料などを例示できる。化粧料組成物における分化誘導剤の添加量は特に限定されない。例えば0.001重量%〜60重量%となるように分化誘導剤を添加するとよい。
血中カルシウム濃度の維持等、重要な生理機能を担うビタミンDに注目し、ビタミンDが褐色脂肪分化誘導能を示すとの期待の下、以下の実験を行った。
1.方法
褐色脂肪分化誘導能を評価するため、褐色脂肪細胞への分化能を有する、マウス胚由来のC3H10T1/2細胞を用いた。通常培養には10% FBSを含むDulbecco's modified Eagle's Mediumを用い、CO2インキュベーター内(37℃、CO2 濃度5%)で培養した。褐色脂肪への分化は、細胞がコンフルエントになったところで、上記培地に1 μM Dexamethasone、10 μg/ml Insulin、0.5 μM 3-isobutyl-1-methyl-xanthine、125 μM Indomethacin、3 nM Triiodothyronineを添加し、さらにビタミンD(1α,25(OH)2D3又は25(OH)D3)を終濃度が0-1000 pM(1α,25(OH)2D3の場合)、0-2000pM(25(OH)D3の場合)になるように添加した分化誘導培地に交換し48時間処理を行った。48時間後に10 μg/ml Insulin、3 nM Triiodothyronine、及びビタミンD(1α,25(OH)2D3又は25(OH)D3)を含む培地に交換し、2日毎に同培地で培地交換を行いながら計7日間培養した。培養終了後、細胞よりRNAを抽出し、脂肪マーカーであるFABP4、褐色脂肪マーカーであるUCP1の発現量をリアルタイムPCRにて測定し評価した。一方、培養後の細胞をoilredO染色に供した。
2.結果
活性型ビタミンD3である1α,25(OH)2D3は用量依存的にC3H10T1/2細胞の脂肪細胞への分化を抑制した(図1)。褐色脂肪マーカーUCP1の発現を見ると、低濃度の活性型ビタミンD3は褐色脂肪細胞への分化を促進した(図2)。活性型ビタミンD3のヒト血中濃度は10〜150 pM程度であることから、生理的濃度での活性型ビタミンD3は褐色脂肪化作用を有するといえる。
同様に、活性型ビタミンD3の前駆体である25(OH)D3も、高濃度では褐色脂肪細胞への分化を抑制するものの、低濃度では褐色脂肪マーカーの発現を促進した(図3)。ヒト血中25(OH)D3濃度は30〜250 nM程度であることから、生理的濃度の25(OH)D3は活性型ビタミンD3と同様に褐色脂肪化作用を有することが示された。
以上の実験結果を受け、ビタミンD誘導体も褐色脂肪化作用を示すか検討することにした。供試化合物としてエルデカルシトールを用いた。図4に示す通り、エルデカルシトールにも褐色脂肪化作用が求められ、褐色脂肪化作用がビタミンD及びその誘導体において共通性及び一般性の高い特性であることが判明した。
本発明の褐色脂肪細胞分化誘導剤は肥満やメタボリック症候群はもとより、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化性疾患等の予防や治療に利用され得る。ビタミンD又はその誘導体を有効成分とする本発明には安全性が高いことが期待され、医薬、食品、食品素材など、広範な用途・利用形態での利用・応用が可能といえる。特に、日常的ないし継続的な摂取(投与)に適する。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (7)

  1. ビタミンD又はその誘導体を有効成分とした褐色脂肪細胞分化誘導剤。
  2. ビタミンDがビタミンD2又はビタミンD3である、請求項1に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
  3. ビタミンD2が1α,25(OH)2D2又は25(OH)D2αであり、ビタミンD3が1α,25(OH)2D3又は25(OH)D3である、請求項2に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
  4. 誘導体がエルデカルシトール又はファレカルシトリオールである、請求項1に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の褐色脂肪細胞分化誘導剤を含む、代謝異常又はその関連疾患の治療又は予防用組成物。
  6. 代謝異常又はその関連疾患が、肥満、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化性疾患又はメタボリック症候群である、請求項5に記載の組成物。
  7. 医薬、医薬部外品、食品又は化粧料である、請求項5又は6に記載の組成物。
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