この発明に係る眼科撮影装置の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
実施形態に係る眼科撮影装置は、光源からの光を偏向する走査光学系を含む光学ユニットを被検眼の瞳孔を基準に移動させることにより、瞳孔を通して光を被検眼の後眼部(眼底、硝子体等)の広い範囲に照射することが可能な装置である。このような構成は、後眼部に光を照射することが可能な任意の眼科撮影装置に適用することができる。後眼部に光を照射することが可能な眼科撮影装置は、レーザー光を眼底における治療部位に照射するためのレーザー治療装置や、被検眼に固視させた状態で視標を移動させながら被検者(患者)の応答に基づき視野を測定するための視野計などであってもよい。また、実施形態に係る眼科撮影装置は、走査光学系を備えていない眼底観察装置(眼底カメラ)であってもよい。
また、実施形態に係る眼科撮影装置は、被検眼の後眼部からの戻り光を受光することにより当該後眼部における所定データの分布(画像や層厚分布や病変分布など)を形成することが可能である。このような構成は、後眼部を光で走査してデータを取得可能な任意の眼科撮影装置に適用することができる。後眼部を光で走査してデータを取得可能な眼科撮影装置には、共焦点光学系を用いたレーザー走査により眼底の正面画像を得るSLOや、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、OCT)を用いて眼底の断層像を得る光干渉断層計などがある。以下、実施形態に係る眼科撮影装置は、SLOの機能と光干渉断層計の機能とを組み合わせた複合機であるものとして説明する。
以下では、被検者から見て左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、被検者から見て光学系の奥行き方向をZ方向として説明する。
[構成]
図1に、実施形態に係る眼科撮影装置の概略構成の機能ブロック図を示す。
眼科撮影装置1は、被検眼Eの後眼部をレーザー光でスキャンしてデータを取得し、この取得されたデータに基づいて眼底Efの正面画像を形成する装置である。眼科撮影装置1は、測定ユニット10と、処理ユニット70とを含む。測定ユニット10は、眼底Efの光学的な観察や眼底Efの光学的な計測を行うために用いられる。処理ユニット70は、測定ユニット10により取得されたデータの処理や、装置各部の制御などを行う。
(測定ユニット)
測定ユニット10は、光学ユニット20と、移動機構30と、駆動部30Dと、光源40と、固視光学系50と、アライメント系60とを含む。測定ユニット10は、被検眼Eの瞳位置(瞳孔位置)R(又は瞳位置Rの近傍位置)を基準に移動可能に構成された光学ユニット20により被検眼Eの瞳孔を通して光源40からの光を被検眼Eの後眼部に照射する。被検眼Eの瞳位置R又はその近傍位置は、光学ユニット20が備える対物レンズから当該光学ユニット20の光軸に沿って所定距離だけ離間した位置である。所定距離は、光学ユニット20の作動距離に被検眼Eの角膜瞳孔間距離を加えた距離に相当する。測定ユニット10は、被検眼Eの後眼部に照射された光の戻り光を受光することにより取得されたデータを処理ユニット70に送る。
光学ユニット20は、走査光学系21と、投射系22と、受光系23とを含む。
走査光学系21は、光源40からの光を所定の偏向角度範囲内で偏向する。実施形態では、走査光学系21は、光源40からの光を所定の偏向角度範囲内で2次元的に偏向するが、光源40からの光を所定の偏向角度範囲内で1次元的に偏向するよう構成されてもよい。このような走査光学系21は、光スキャナを含んでもよい。光スキャナには、1軸又は互いに直交する2軸の偏向部材が用いられる。偏向部材の例として、ガルバノミラー、レゾナントミラー、ポリゴンミラー、回転ミラー、ダボプリズム(Dove Prism)、ダブルダボプリズム(Double Dove Prism)、ローテーションプリズム(Rotation Prism)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラースキャナなどがある。
投射系22は、走査光学系21により偏向された光源40からの光を被検眼Eの後眼部(例えば眼底Ef)に投射するための光学素子を含む光学系である。投射系22は、走査光学系21を含んでいてもよい。
受光系23は、投射系22により投射された光に対する被検眼Eの後眼部からの戻り光を受光するための光学素子や受光素子を含む光学系である。受光素子には、光源40から出力される光に応じて、可視領域や赤外領域に感度を有するものが用いられる。受光系23は、走査光学系21を含んでいてもよい。
なお、光学ユニット20は、光源40及び固視光学系50のうち少なくとも一方を含んでいてもよい。投射系22及び受光系23のうち少なくとも一方は、光学ユニット20の外部に設けられていてもよい。
移動機構30は、光学ユニット20をX方向、Y方向及びZ方向に移動させることが可能である。それにより、被検眼Eと光学ユニット20との位置合わせを行うことができる。
また、移動機構30は、被検眼Eの瞳位置Rを基準に光学ユニット20を所定の移動角度範囲内で移動させる。光学ユニット20の光軸が被検眼Eの正面側から瞳位置Rを通る場合に、当該光軸に直交する平面をXY平面(X方向は水平方向、Y方向は垂直方向)とし、当該光軸に平行な眼底方向をZ方向とすると、瞳位置Rには、瞳に実際に相当する位置だけでなく、後眼部の走査を妨げない範囲において瞳位置RからX方向、Y方向及び/又はZ方向に変位した位置(近傍位置)も含まれる。以下、この明細書において、特に「近傍位置」を明示したときを除いて単純に「瞳位置」と表記した場合は、瞳位置又はその近傍位置を意味するものとする。
移動機構30は、被検眼Eの瞳位置Rを中心に光学ユニット20を所定の移動角度範囲内で旋回させる。このような移動機構30は、例えば、光学ユニット20を保持する1以上の保持部材と、上記の移動角度範囲の任意の位置に移動可能に設けられた1以上のガイドアームとを含んで構成される。ガイドアームは、スライド可能な状態で保持部材を保持する。それにより、被検眼Eの向き(眼球の向き)と光学ユニット20の光軸の向きとを相対的に変更することができる。すなわち、互いに異なる方向から被検眼Eの後眼部に光を投射し、その戻り光を受光することができる。
駆動部30Dは、後述の処理ユニット70の制御部200からの制御を受け、移動機構30を駆動する。駆動部30Dは、移動機構30を移動させるための駆動力を発生させるアクチュエータを含む。後述の制御部200からの制御信号を受けたアクチュエータは、この制御信号に応じた駆動力を発生させる。この駆動力は、図示しない駆動力伝達機構を介して移動機構30に伝達され、制御信号により指示された位置に配置されるように移動機構30を移動させる。これにより、光学ユニット20を所望の位置に移動させることが可能となる。
光源40は、被検眼Eの後眼部に照射するための光(例えば、レーザー光)を出力する。光源40には、半導体レーザー光源(波長掃引レーザー、スーパールミネッセントダイオードなど)、固体レーザー、ガスレーザー、ファイバレーザーなどがある。なお、光源40として、複数の光源を光ファイバ合波器やダイクロイックミラーなどの合波器により合成して用いるものを適用することも可能である。この実施形態では、光ファイバによりレーザー光を光学ユニット20に導く。例えば、光ファイバのジョイント部には、光学ユニット20の移動に起因した捻れや引っ張りなどのストレスを低減する手段が設けられている。
固視光学系50は、内部固視及び外部固視の少なくとも一方を実現するための構成を備えている。内部固視を実現する場合、固視光学系50は、被検眼Eの眼底Efに固視標を投影するための光学系を含んで構成される。固視標は、被検眼Eを固視させるための視標である。固視光学系50は、少なくとも可視光を出力する固視光源を含む。例えば、固視光学系50により形成された光路は、光学ユニット20内において、投射系22又は受光系23により形成された光路に結合される。それにより、固視光学系50は、光学ユニット20により形成される光路を通じて被検眼Eに固視標を呈示することができる。固視光学系50は、光学ユニット20に含まれていてもよい。
外部固視を実現する場合、固視光学系50は、例えば、光学ユニット20の筐体に設けられる。固視光学系50は、例えば、一端が光学ユニット20に固定され関節部を介して互いに接続された2以上のアームの他端にLED等の発光部が設けられた構成を有する。外部固視を実現する場合、固視光学系50は、測定ユニット10の筐体に設けられ、光学ユニット20とともに移動しないように構成されていてもよい。
固視光学系50が内部固視を実現する場合、制御部200は、光学ユニット20の移動に伴い固視標の投影位置(呈示位置)を移動させることが可能である。固視光学系50が内部固視及び外部固視の双方を実現する場合、制御部200は、上記の構成を用いて内部固視と外部固視とを連係させることが可能である。内部固視と外部固視とを連係させる例として、光のスキャン領域内に黄斑部が含まれているときには内部固視により被検眼に固視させ、当該スキャン領域内に黄斑部が含まれないときには外部固視により被検眼に固視させる。
また、固視光学系50は、2以上の内部固視を実現するための構成(光学系)を備えていてもよい。2つの内部固視を実現する場合、固視光学系50は、光学ユニット20の内部に設けられ第1内部固視を実現するための構成と、光学ユニット20の外部に設けられた第2内部固視を実現するための構成とを含んでもよい。2つの内部固視を連係させる例として、光のスキャン領域内に黄斑部が含まれているときには第1内部固視(光学ユニット20の内部)により被検眼Eに固視させ、当該スキャン領域内に黄斑部が含まれないときには第2内部固視(光学ユニット20の外部)により被検眼Eに固視させる。
アライメント系60は、例えば、XYアライメント検出用光源と、XYアライメントセンサーと、Zアライメント検出用光源と、Zアライメントセンサーとを含んで構成される。XYアライメント光源からのXYアライメント検出用光は、被検眼Eの角膜に平行光束として導かれる。その角膜には、XYアライメント検出用光の角膜反射による輝点像(虚像)が形成される。角膜で反射されたXYアライメント検出用光は、XYアライメントセンサーにより検出される。XYアライメントセンサーにより得られた検出信号は、制御部200に送られる。制御部200は、この検出信号から被検眼Eの角膜に形成された輝点像の位置を特定し、X方向及びY方向の光学ユニット20に対する位置ずれを検出する。
Zアライメント検出用光源からのZアライメント検出用光は、被検眼Eの角膜に投射される。その角膜にはZアライメント検出用光の角膜反射による輝点像(虚像)が形成される。角膜で反射されたZアライメント検出用光は、Zアライメントセンサーにより検出される。Zアライメントセンサーにより得られた検出信号は、制御部200に送られる。制御部200は、この検出信号から被検眼Eの角膜に形成された輝点像の位置を特定し、Z方向の光学ユニット20に対する位置ずれを検出する。
また、上記のXYアライメント及びZアライメントの少なくとも一方は、測定ユニット10に設けられた1以上のカメラを用いて行われてもよい。この場合、1以上のカメラにより撮影された画像に基づいて被検眼Eの位置を求めることで、X方向、Y方向、及びZ方向の少なくとも1つの位置ずれが検出される。なお、2以上のカメラが設けられている場合には、異なる方向から実質的に同時に撮影された画像に基づいて被検眼Eの3次元位置を求めることで、X方向、Y方向及びZ方向の少なくとも1つの位置ずれが検出される。
制御部200は、検出されたX方向、Y方向及びZ方向の位置ずれをキャンセルするように移動機構30により光学ユニット20を移動させることによりアライメントを行う。
測定ユニット10は、フォーカス光学系を含み、眼底Efに対してフォーカス(ピント)を合わせるための指標(スプリット指標)を生成するようにしてもよい。この場合、フォーカス光学系から出力された光(フォーカス光)は、眼底Efに投射される。眼底Efに投射された光の眼底反射光は、図示しないセンサーにより検出される。制御部200は、このセンサーにより得られた検出信号からスプリット指標の位置を解析し、例えば光学ユニット20に含まれる合焦レンズ及びフォーカス光学系を移動させてピント合わせを行うことが可能である(オートフォーカス機能)。
[光学系]
次に、実施形態に係る眼科撮影装置1がSLOの機能と光干渉断層計の機能とを有するものとし、図1の光学ユニット20の構成例を説明する。以下では、固視光学系50の図示が省略されている。また、図1のアライメント系60の機能は、前眼部撮影系120等により実現されるものとする。
眼科撮影装置1は、撮影モードに対応した範囲の被検眼Eの画像を取得することが可能である。眼科撮影装置1は、撮影モードに対応した対物レンズユニットを光学系の光軸に選択的に配置することが可能である。
図2〜図4に、光学ユニット20が備える光学系の構成例を示す。光学ユニット20は、光学系100を含む。図2は、広角(広画角)撮影モードに設定されているときの光学系100の構成例を表す。図3は、撮影モードに応じて切り替え可能な実施形態に係る対物レンズ系の構成例を表す。図3において、図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図4は、高倍率撮影モードに設定されているときの光学系100の構成例を表す。図4において、図2又は図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図2及び図4では、被検眼Eの眼底Efと光学的に共役な位置が眼底共役位置Pとして図示され、被検眼Eの瞳と光学的に共役な位置が瞳共役位置Qとして図示されている。
光学系100は、対物レンズ系110を介して被検眼に光を投射する投射系と、被検眼Eに投射された光の戻り光を対物レンズ系110を介して受光する受光系とを含む。眼科撮影装置1は、受光系による受光結果に基づいて画像を形成する。眼科撮影装置1は、SLO画像及びOCT画像を形成することが可能である。すなわち、光学系100は、SLO光学系130と、OCT光学系140とを含む。SLO光学系130は、SLO投射系と、SLO受光系とを含む。OCT光学系140は、OCT投射系と、OCT受光系とを含む。SLO投射系やOCT投射系は、図1の投射系22の機能を実現する。SLO受光系やOCT受光系は、図1の受光系23の機能を実現する。
光学系100には、被検眼の前眼部を撮影するための前眼部撮影系(前眼部観察系)120が設けられている。光学系100は、対物レンズ系110や前眼部撮影系120と共に、移動機構30によりX方向、Y方向及びZ方向に移動可能である。眼科撮影装置1は、前眼部撮影系120により得られた被検眼Eの前眼部画像に基づいて移動機構により光学系100等を移動することにより、被検眼Eに対して光学系100の位置合わせを行うためのアライメントを行うことが可能である。以下では、光学系100が対物レンズ系110や前眼部撮影系120を含む場合について説明するが、光学系100がこれらを含まない構成であってもよい。
(対物レンズ系)
眼科撮影装置1は、撮影モードに応じた対物レンズユニットを光学系100の光軸Oに配置することが可能である。この実施形態では、撮影モードには、第1範囲(例えば画角が100度)で被検眼Eの画像を撮影する広角撮影モードと、第1範囲より狭い第2範囲(例えば画角が50度)で被検眼Eの画像を撮影する高倍率撮影モードとがある。
対物レンズ系110は、対物レンズユニット110A、110Bを含む(図3参照)。例えば、公知の回転機構又はスライド機構により対物レンズユニット110A、110Bを手動で光軸Oに選択的に配置させることが可能である。広角撮影モードでは、光学系100の光軸に対物レンズユニット110Aの光軸が一致するように配置される(図2)。高倍率撮影モードでは、光軸Oに対物レンズユニット110Bの光軸が一致するように配置される(図4)。
対物レンズユニット110Aは、2以上のレンズを含む。2以上のレンズの間には、ダイクロイックミラーDM1Aが設けられる。例えば、対物レンズユニット110Aは、凸レンズ111A、112Aと、凹レンズ113Aとを含むレンズユニット(ナグラータイプ)であってよい。被検眼Eの側から凸レンズ111A、112A、及び凹レンズ113Aの順序で配置されている。凸レンズ112Aと凹レンズ113Aとの間にダイクロイックミラーDM1Aが配置されている。ダイクロイックミラーDM1Aは、広角撮影モードにおいて、SLO光学系130の光路及びOCT光学系140の光路の双方に前眼部撮影系120の光路を結合する光路結合部材である。ダイクロイックミラーDM1Aと凹レンズ113Aとの間に眼底(網膜)と光学的に共役な位置(眼底共役位置)P又はその近傍が配置されている。対物レンズユニット110Aは、ダイクロイックミラーDM1Aを含んでもよい。
ダイクロイックミラーDM1Aは、SLO光学系130からの光(SLO光)、その被検眼Eからの戻り光、OCT光学系140からの光(OCT光、測定光)及びその被検眼Eからの戻り光を透過させる。ダイクロイックミラーDM1Aは、前眼部撮影系120からの光を被検眼Eに向けて反射し、その被検眼Eからの戻り光を前眼部撮影系120に向けて反射する。
対物レンズユニット110Bは、少なくとも1つのレンズを含む。当該少なくとも1つのレンズに対して光源(SLO光源及びOCT光源)側にダイクロイックミラーDM1Bが設けられる。例えば、対物レンズユニット110Bは、凸レンズ111Bを含んでよい。ダイクロイックミラーDM1Bは、高倍率撮影モードにおいて、SLO光学系130の光路及びOCT光学系140の光路の双方に前眼部撮影系120の光路を結合する光路結合部材である。対物レンズユニット110Bは、ダイクロイックミラーDM1Bを含んでもよい。
ダイクロイックミラーDM1Bは、ダイクロイックミラーDM1Aと同様に、SLO光学系130からの光(SLO光)、その被検眼Eからの戻り光、OCT光学系140からの光(OCT光、測定光)及びその被検眼Eからの戻り光を透過させる。また、ダイクロイックミラーDM1Bは、前眼部撮影系120からの光を被検眼Eに向けて反射し、その被検眼Eからの戻り光を前眼部撮影系120に向けて反射する。光軸Oに対物レンズユニット110Bが配置されているときの光軸O上におけるダイクロイックミラーDM1Bの位置は、光軸Oに対物レンズユニット110Aが配置されているときの光軸O上におけるダイクロイックミラーDM1Aの位置と略同じであってよい。それにより、撮影モードを変更したとき、前眼部撮影系120の位置や向きの調整が不要になる。
対物レンズユニット110Aが凸レンズ111A、112Aと凹レンズ113Aだけを含み、対物レンズユニット110Bが凸レンズ111Bだけを含んでもよい。それにより、光軸Oに配置される対物レンズユニットを切り替えたときにダイクロイックミラーDM1A、DM1Bを1つのダイクロイックミラーで共用することが可能である。
対物レンズ系110は、図示しない移動機構(後述の移動機構110D)により光軸Oに沿って移動可能である。それにより、光学系100に対して対物レンズ系110をZ方向に移動することが可能になり、SLO光学系130及びOCT光学系140の双方の焦点位置を変更することができる。
以下、主として、光軸Oに対物レンズユニット110Aが配置されている場合について説明する。
(前眼部撮影系)
前眼部撮影系120は、前眼部照明光源121と、コリメートレンズ122と、前眼部撮影カメラ123と、結像レンズ124と、ビームスプリッタBS1とを含む。ビームスプリッタBS1は、被検眼Eの前眼部を照明するための照明光の光路に、その戻り光の光路を結合する光路結合部材である。例えば、図1に示す光源40は、前眼部照明光源121を含んでもよい。
前眼部照明光源121は、被検眼Eの前眼部を照明するための光源である。前眼部撮影カメラ123は、前眼部照明光源121により照明された被検眼Eの前眼部からの反射光(戻り光)を検出するための撮像素子を備えている。前眼部照明光源121には、例えば、中心波長が950nmの光を発するLEDが用いられる。前眼部照明光源121により発せられた光は、コリメートレンズ122により平行光束とされる。平行光束とされた照明光は、ビームスプリッタBS1によりダイクロイックミラーDM1Aに向けて反射される。ビームスプリッタBS1により反射された照明光は、ダイクロイックミラーDM1Aにより被検眼Eに向けて偏向される。被検眼Eからの照明光の戻り光は、ダイクロイックミラーDM1Aにより反射され、ビームスプリッタBS1を透過する。ビームスプリッタBS1を透過した戻り光は、結像レンズ124により前眼部撮影カメラ123における撮像素子の検出面に集光される。撮像素子の検出面は、瞳共役位置(前眼部共役位置)Q又はその近傍に配置されている。撮像素子は、例えば、CCD又はCMOSイメージセンサにより構成されている。撮像素子による被検眼Eの前眼部からの戻り光の検出結果は、前眼部の画像の形成に用いられる。
(SLO光学系)
SLO光学系130の光路とOCT光学系140の光路とは、ダイクロイックミラーDM2により結合される。SLO光学系130の少なくとも一部がテレセントリック光学系として形成されている。同様に、OCT光学系140の少なくとも一部がテレセントリック光学系として形成されている。ダイクロイックミラーDM2は、SLO光学系130のテレセントリック光学系により形成される光路とOCT光学系140のテレセントリック光学系により形成される光路とを結合する。それにより、対物レンズ系110の移動により光学系100の焦点位置を変更した場合でも瞳(例えば対物レンズ系110による射出瞳)の収差が小さくなるため、合焦状態の調整が容易になる。
ダイクロイックミラーDM1A(DM1B)、DM2は、ねじれの関係を保持した状態で光軸Oに配置されていることが望ましい。ダイクロイックミラーDM1A(DM1B)は、SLO光学系130の光路及びOCT光学系140の光路(光学系100の光路)を導かれる光の少なくとも一部及び前眼部撮影系120の光路を導かれる光の少なくとも一部のうち一方の光を反射し、かつ、他方の光を透過させる第1光学面を備えている。ダイクロイックミラーDM2は、SLO光学系130の光路を導かれる光の少なくとも一部及びOCT光学系140の光路を導かれる光の少なくとも一部のうち一方の光を反射し、かつ、他方の光を透過させる第2光学面を備えている。ダイクロイックミラーDM1A(DM1B)、DM2は、第1光学面の法線とSLO光学系130の光軸とを含む平面と、第2光学面の法線とSLO光学系130の光軸とを含む平面とが互いに直交する、又は略直交するように配置されている。それにより、図4に示す高倍率撮影モードでは、ダイクロイックミラーDM1BとダイクロイックミラーDM2との間に凹レンズ113Aが配置されないため、ダイクロイックミラーDM1BとダイクロイックミラーDM2とにより非点収差を除去、又は非点収差を極めて小さくすることができるので、画質の劣化を抑えることが可能になる。一方、図2に示す広角撮影モードでは、高倍率撮影モード時よりも画像の粗さが許容されるため、非点収差の残存に起因する画質への影響は小さくて済む。
SLO光学系130は、SLO光源131と、コリメートレンズ132と、ビームスプリッタBS2と、集光レンズ133と、共焦点絞り134と、検出器135と、光スキャナ136と、レンズ137とを含む。ビームスプリッタBS2は、被検眼Eに投射されるSLO光の光路に、その戻り光の光路を結合する光路結合部材である。
SLO光源131は、例えば中心波長が840nmの光を発するものが用いられる。SLO光源131として、例えばレーザーダイオード(Laser Diode:以下、LD)、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)、レーザードリブンライトソース(Laser Driven Light Source:LDLS)などが挙げられる。SLO光源131は、眼底(網膜)と光学的に共役な位置(眼底共役位置)P又はその近傍に配置されている。例えば、図1に示す光源40は、SLO光源131を含んでもよい。
SLO光源131から発せられた光は、コリメートレンズ132により平行光束とされる。平行光束とされた光は、ビームスプリッタBS2を透過する。ビームスプリッタBS2を透過した光は、光スキャナ136により偏向される。光スキャナ136は、SLO光源131からの光で被検眼Eの眼底Efを走査するために用いられる。光スキャナ136は、X方向に光を偏向させる光スキャナ136Xと、Y方向に光を偏向させる光スキャナ136Yとを含む。光スキャナ136Xは、その反射面の傾きを変更することにより光の偏向が可能なミラーであり、後述の制御部200により反射面の傾きが制御される。光スキャナ136Xは、例えば、眼底面内の水平方向の走査に用いられる。光スキャナ136Xの被検眼Eの側には、光スキャナ136Yが配置されている。光スキャナ136Yは、その反射面の傾きを変更することにより光の偏向が可能なミラーであり、制御部200により反射面の傾きが制御される。光スキャナ136Yは、例えば、水平方向に直交する眼底面内の垂直方向の走査に用いられる。光スキャナ136X及び光スキャナ136Yのいずれか一方は、ガルバノミラーなどの低速スキャナであり、他方は、レゾナントミラーやポリゴンミラー、或いはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーなどの高速スキャナであってよい。光スキャナ136Yの反射面は、被検眼Eの瞳と光学的に共役な位置(瞳共役位置)Q又はその近傍に配置されている。光スキャナ136Yの被検眼Eの側には、レンズ137と、ダイクロイックミラーDM2とが配置されている。光スキャナ136により偏向されたSLO光源131からの光は、レンズ137及びダイクロイックミラーDM2を透過し、対物レンズ系110を介して被検眼Eに投射される。光スキャナ136は、図1の走査光学系21の機能を実現する。
被検眼Eに投射されたSLO光源131からの光の戻り光は、同じ光路を経由してビームスプリッタBS2により検出器135に向けて反射される。ビームスプリッタBS2と検出器135との間には、集光レンズ133と共焦点絞り134とが配置されている。集光レンズ133は、ビームスプリッタBS2により反射された光を集光する。集光レンズ133により集光された光は、共焦点絞り134に形成された開口を通過し、検出器135の検出面に入射する。共焦点絞り134に形成された開口は、眼底(網膜)と光学的に共役な位置(眼底共役位置)P又はその近傍に配置されている。検出器135は、例えば、アバランシェフォトダイオード(Avalanche PhotoDiode:APD)又は光電子増倍管(PhotoMultiplier Tube:PMT)により構成されている。
(OCT光学系)
OCT光学系140は、合焦レンズ141と、光スキャナ142と、コリメートレンズ143と、干渉光学系150とを含む。干渉光学系150は、OCT光源151と、ファイバーカプラ152、153と、プリズム154と、検出器155とを含む。
合焦レンズ141は、図示しない移動機構(後述の移動機構141D)によりOCT光学系140の光軸(光路)に沿って移動可能である。それにより、SLO光学系130とは独立にOCT光学系140の焦点位置を変更することが可能になる。従って、例えば対物レンズ系110の移動によりSLO光学系130及びOCT光学系140の合焦状態が調整された後、合焦レンズ141の移動によりOCT光学系140の合焦状態の微調整を行うことができる。
光スキャナ142は、OCT光源151からの光に基づく測定光で被検眼Eの眼底Efを走査するために用いられる。光スキャナ142は、X方向に光を偏向させる光スキャナ142Xと、Y方向に光を偏向させる光スキャナ142Yとを含む。光スキャナ142Xは、その反射面の傾きを変更することにより光の偏向が可能なミラーであり、制御部200により反射面の傾きが制御される。光スキャナ142は、例えば、眼底面内の水平方向の走査に用いられる。光スキャナ142Xの被検眼Eの側には、光スキャナ142Yが配置されている。光スキャナ142Yは、その反射面の傾きを変更することにより光の偏向が可能なミラーであり、制御部200により反射面の傾きが制御される。光スキャナ142Yは、例えば、水平方向に直交する眼底面内の垂直方向の走査に用いられる。光スキャナ142X及び光スキャナ142Yのいずれか一方は、低速なガルバノミラーなどの低速スキャナであり、他方は、高速なガルバノミラーなどの高速スキャナであってよい。光スキャナ142X、142Yの中間位置は、被検眼Eの瞳と光学的に共役な位置(瞳共役位置)Q又はその近傍に配置されている。光スキャナ142YのOCT光源151の側には、コリメートレンズ143が配置されている。光スキャナ142は、図1の走査光学系21の機能を実現する。
干渉光学系150には、被検眼EのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスウェプトソースタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、波長掃引型(波長走査型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系である。干渉光学系による干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号である。なお、干渉光学系150は、スウェプトソースタイプのOCT装置ではなく、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有していてもよい。
OCT光源151は、OCT光(出射光)の波長を掃引(走査)可能な波長掃引型(波長走査型)光源である。波長掃引型光源には、例えば、共振器を含み、中心波長が1050nmの光を発するレーザー光源が用いられる。OCT光源151は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。例えば、図1に示す光源40は、OCT光源151を含んでもよい。
OCT光源151から出力された光L0は、光ファイバf1によりファイバーカプラ152に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバf2によりファイバ出射端c1に導かれて、ファイバ出射端c1からコリメートレンズ156に照射される。ファイバ出射端c1から出射された参照光LRは、コリメートレンズ156により平行光束とされる。平行光束とされた参照光LRは、プリズム154に導かれる。プリズム154は、コリメートレンズ156により平行光束とされた参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。プリズム154に入射する参照光LRの光路と、プリズム154から出射する参照光LRの光路とは平行である。プリズム154は、図示しない移動機構(後述の移動機構154D)により参照光LRの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能である。この場合、移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。それにより、参照光LRの光路の長さが変更される。
プリズム154を経由した参照光LRは、コリメートレンズ157によって平行光束から集束光束に変換されてファイバ入射端c2に入射し、光ファイバf3によりファイバーカプラ153に導かれる。なお、コリメートレンズ156,157とプリズム154との間に、光路長補正部材や分散補償部材が配置されていてもよい。光路長補正部材は、参照光LRの光路長(光学距離)と測定光LSの光路長とを合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
一方、ファイバーカプラ152により生成された測定光LSは、光ファイバf4によりファイバ端c3に導かれる。ファイバ端c3に導かれた測定光LSは、コリメートレンズ143に照射される。ファイバ端c3から照射された測定光LSは、コリメートレンズ143により平行光束とされる。平行光束にされた測定光LSは、光スキャナ142及び合焦レンズ141を経由してダイクロイックミラーDM2に到達する。測定光LSは、ダイクロイックミラーDM2により反射され、対物レンズ系110により屈折されて被検眼Eに照射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。このような後方散乱光を含む測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバーカプラ152に導かれ、光ファイバf5を経由してファイバーカプラ153に到達する。
ファイバーカプラ153は、光ファイバf5を介して入射された測定光LSと、光ファイバf3を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバーカプラ153は、所定の分岐比(例えば1:1)で、測定光LSと参照光LRとの干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバーカプラ153から出射した一対の干渉光LCは、検出器155に導かれる。
検出器155は、例えば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。検出器155は、その検出結果(検出信号)を図示しないDAQ(Data Acquisition System)に送る。DAQには、OCT光源151からクロックが供給される。このクロックは、OCT光源151において、波長掃引型光源により所定の波長範囲内で掃引(走査)される各波長の出力タイミングに同期して生成される。DAQは、このクロックに基づき、検出器155の検出結果をサンプリングし、後述の画像形成部等に送る。画像形成部は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器155により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、画像形成部は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。
以上のような構成を有する測定ユニット10においてSLO画像を取得する場合、SLO光源131(光源40)から出力されたレーザー光は、移動機構30により移動された光学ユニット20により2次元的に偏向される。2次元的に偏向されたレーザー光は、光学ユニット20の光軸方向から被検眼Eの瞳孔を通過して眼底Efに投射される。
眼底Efに投射されたレーザー光の戻り光は、スポット光の形成位置(およびその近傍位置)から光学ユニット20に戻ってくる光である。戻り光には、眼底Efによるレーザー光の散乱光(反射光や後方散乱光)、並びに、レーザー光を励起光とする蛍光及びその散乱光などが含まれる。戻り光は、瞳孔を通過し、被検眼Eから出射する。被検眼Eからの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行して検出器135に導かれる。検出器135に導かれた戻り光は、受光素子により検出される。受光素子は、検出された戻り光を光電変換し、電気信号(受光信号)を出力する。
以上のプロセスは、眼底Efの一点の計測に相当し、眼底Efに対する単一のスポット光の照射領域における計測に相当する。この実施形態では、移動機構30により光学ユニット20を瞳位置Rを中心に(1次元的、2次元的又は3次元的に)旋回しつつ、この光学ユニット20内の走査光学系21によりスポット光の(1次元的又は2次元的な)偏向を行う。それにより、眼底Efにおけるスポット光の照射領域が移動される。すなわち、この実施形態では、移動機構30による光学ユニット20の旋回と、走査光学系21による偏向とを組み合わせることにより、SLO画像を取得するための眼底Efのスキャンが実行される。
同様に、測定ユニット10においてOCT画像を取得する場合も、OCT光源151(光源40)から出力された光L0に基づく測定光LSは、移動機構30により移動された光学ユニット20により2次元的に偏向される。2次元的に変更された測定光LSは、光学ユニット20の光軸方向から被検眼Eの瞳孔を通過して眼底Efに投射される。被検眼Eに入射した測定光LSは、被検眼Eの前眼部にて散乱される。また、被検眼Eに入射したレーザー光の一部は、瞳孔を通過し、眼底Efにスポット光として結像される。
眼底Efに投射された測定光LSの戻り光は、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。このような後方散乱光を含む測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行し、参照光LRと合成されて干渉光LCとなり、検出器155に導かれる。検出器155に導かれた戻り光は、受光素子により検出される。受光素子は、検出された戻り光を光電変換し、電気信号(受光信号)を出力する。
以上のプロセスは、眼底Efの一点の計測に相当し、眼底Efに対する単一のスポット光の照射領域における計測に相当する。上記のように、移動機構30により光学ユニット20を瞳位置Rを中心に旋回しつつ、この光学ユニット20内の走査光学系21によるスポット光の偏向を行う。それにより、眼底Efにおけるスポット光の照射領域が移動される。すなわち、移動機構30による光学ユニット20の旋回と、走査光学系21による偏向とを組み合わせることにより、OCT画像を取得するための眼底Efのスキャンが実行される。
[処理系]
図5に、実施形態に係る眼科撮影装置1の処理ユニット70の構成例を示す。図5において、図1〜図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
(制御部)
図1の処理ユニット70(眼科撮影装置1の処理系)は、制御部200を中心に構成される。制御部200は、眼科撮影装置1の各部の制御を行う。制御部200は、主制御部201と、記憶部202とを含む。主制御部201の機能は、例えばマイクロプロセッサにより実現される。記憶部202には、眼科撮影装置を制御するためのコンピュータプログラムがあらかじめ格納される。このコンピュータプログラムには、各種の光源制御用プログラム、光スキャナ制御用プログラム、各種の検出器制御用プログラム、画像形成用プログラム、データ処理用プログラム及びユーザインターフェイス用プログラムなどが含まれる。このようなコンピュータプログラムに従って主制御部201が動作することにより、制御部200は制御処理を実行する。
対物レンズ系110に対する制御として、対物レンズ系110を光軸Oに沿って移動させる移動機構110Dに対する制御などがある。例えば、移動機構110Dには、移動機構110Dを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。主制御部201は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより、移動機構110Dに対する制御を行う。
SLO光学系130に対する制御として、SLO光源131の制御、光スキャナ136の制御、検出器135の制御などがある。SLO光源131の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナ136の制御には、光スキャナ136Xによる走査位置や走査範囲の制御、光スキャナ136Yによる走査位置や走査範囲の制御などがある。検出器135の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。
OCT光学系140に対する制御として、OCT光源151の制御、光スキャナ142の制御、移動機構141Dや移動機構154Dの制御、検出器155の制御などがある。OCT光源151の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。光スキャナ142の制御には、光スキャナ142Xによる走査位置や走査範囲の制御、光スキャナ142Yによる走査位置や走査範囲の制御などがある。移動機構141Dは、OCT光学系140の光路に沿って合焦レンズ141を移動する。例えば、移動機構141Dには、移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。主制御部201は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより、移動機構141Dに対する制御を行う。移動機構154Dは、プリズム154を参照光LRの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動する。例えば、移動機構154Dには、移動機構を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。主制御部201は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより、移動機構154Dに対する制御を行う。検出器155の制御には、検出素子の露光調整やゲイン調整や検出レート調整などがある。
前眼部撮影系120に対する制御として、前眼部照明光源121の制御、前眼部撮影カメラ123の制御などがある。前眼部照明光源121の制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞り調整などがある。前眼部撮影カメラ123の制御には、撮像素子の露光調整やゲイン調整や撮影レート調整などがある。
光学系100に対する制御として、光学系100(ダイクロイックミラーDM1A、DM1B、前眼部撮影系120を含む)をX方向、Y方向及びZ方向に移動する移動機構30を駆動する駆動部30Dの制御などがある。主制御部201は、アクチュエータに対して制御信号を送ることにより駆動部30Dに対する制御を行う。
主制御部201は、アライメント制御部201Aと、トラッキング制御部201Bと、固視標制御部201Cと、表示制御部201Dとを含む。
アライメント制御部201Aは、被検眼Eに対して光学系100の位置合わせを行うためのアライメントの実行を制御する。アライメント制御部201Aは、アライメント系60により得られた輝点像に基づいて検出された位置ずれ量がキャンセルされるように駆動部30Dを制御することにより被検眼Eに対して光学系100の位置合わせを行う(XY方向、Z方向)。
また、アライメント制御部201Aは、前眼部撮影系120により得られた被検眼Eの前眼部画像に基づいて移動機構30(駆動部30D)及び移動機構110Dを制御することが可能である。アライメント制御部201Aは、例えば、前眼部撮影系120により得られた被検眼Eの前眼部画像中の特徴部位を特定し、特定された特徴部位の位置と所定の目標位置とのずれ量がキャンセルされるように光学系100等の移動量を求める。アライメント制御部201Aは、求められた移動量に基づいて駆動部30Dを制御することにより被検眼Eに対して光学系100の位置合わせを行う(XY方向)。目標位置は、あらかじめ決められた位置であってもよいし、UI部230を用いて指定された前眼部画像中の位置であってもよい。
アライメント制御部201Aは、例えば、前眼部撮影系120により得られた被検眼Eの前眼部画像の合焦状態(ぼけ具合)を特定し、特定された合焦状態が所望の合焦状態となるように対物レンズ系110のZ方向の移動量を求めることが可能である。アライメント制御部201Aは、求められた移動量に基づいて移動機構100D、110Dを制御することにより、被検眼Eに対する光学系100及び対物レンズ系110の位置合わせを行う(Z方向)。なお、2以上のカメラを用いて互いに異なる方向から前眼部を撮影し、視差が設けられた2以上の画像から3次元的に合焦状態を特定し、特定された合焦状態が所望の合焦状態となるように対物レンズ系110のZ方向の移動量を求めてもよい。
アライメント制御部201Aは、SLO光学系130により得られたSLO画像に基づいて移動機構110Dを制御することにより被検眼Eに対する対物レンズ系110の位置合わせ(Z方向)を行ってもよい。この場合、アライメント制御部201Aは、取得されたSLO画像の合焦状態(ぼけ具合)を特定し、特定された合焦状態が所望の合焦状態となるように対物レンズ系110のZ方向の移動量を求める。アライメント制御部201Aは、求められた移動量に基づいて移動機構110Dを制御する。
トラッキング制御部201Bは、SLO光学系130により得られた被検眼EのSLO画像に対するトラッキングを制御する。トラッキング制御部201Bは、例えば、所定のタイミングでSLO画像中の特徴部位を特定し、特定された特徴部位の位置が変化したとき、その位置のずれ量がキャンセルされるように移動量を求める。トラッキング制御部201Bは、求められた移動量に基づいてSLO画像に対するトラッキングを制御する。
また、トラッキング制御部201Bは、OCT光学系140により得られた被検眼EのOCT画像に対するトラッキングをSLO画像に基づいて制御する。トラッキング制御部201Bは、例えば、所定のタイミングでSLO画像中の特徴部位を特定し、特定された特徴部位の位置が変化したとき、その位置のずれ量がキャンセルされるように移動量を求める。トラッキング制御部201Bは、求められた移動量に基づいてOCT画像に対するトラッキングを制御する。トラッキング制御部201Bは、データ処理部220に設けられていてもよい。
固視標制御部201Cは、固視光学系50を制御する。固視標制御部201Cは、固視光源(内部固視用や外部固視用)の点灯及び消灯を制御したり、眼底Efにおける固視標の投影位置(固視位置)を移動させたりすることが可能である。移動機構30により光学系100を被検眼Eの瞳位置Rを中心に旋回させる場合、固視標制御部201Cは光軸Oに対して被検眼E(眼球)の向きが静止するように光学系100の移動に連係して固視標の呈示位置を移動させる。また、移動機構30により光学系100を旋回させることなく固視標制御部201Cが固視標の呈示位置を移動させるようにしてもよい。この場合でも、被検眼Eの向きと光軸Oの向きとを相対的に変更することができる。
表示制御部201Dは、各種情報を後述のUI部230に表示させる。UI部230に表示される情報には、制御部200により生成された情報、画像形成部210により形成された画像、データ処理部220によるデータ処理後の情報などがある。
(画像形成部)
画像形成部210は、SLO画像形成部210Aと、OCT画像形成部210Bとを含む。SLO画像形成部210Aは、検出器135から入力される検出信号と、制御部200から入力される画素位置信号とに基づいて、SLO画像の画像データを形成する。OCT画像形成部210Bは、検出器155から入力される検出信号と、制御部200から入力される画素位置信号とに基づいて、OCT画像(眼底Efの断層像)の画像データを形成する。また、画像形成部210は、前眼部撮影カメラ123の撮像素子による被検眼Eの前眼部からの反射光の検出結果に基づいて前眼部画像を形成する。画像形成部210により形成された各種の画像(画像データ)は、例えば記憶部202に保存される。
(データ処理部)
データ処理部220は、各種のデータ処理を実行する。データ処理の例として、画像形成部210又は他の装置により形成された画像データに対する処理がある。この処理の例として、各種の画像処理や、画像に対する解析処理や、画像データに基づく画像評価などの診断支援処理がある。
データ処理部220は、画像合成部220Aを含む。画像合成部220Aは、被検眼Eの向きと光学系100の光軸Oの向きとの相対的向きが互いに異なる状態でSLO光学系130又はOCT光学系140を用いて取得された2以上の画像(SLO画像又はOCT画像)を合成することによりゴースト(ノイズ)が抑制された合成画像を生成する。具体的には、画像合成部220Aは、互いに相対的向きが異なる状態で取得された第1画像及び第2画像に対し、第1画像の部分領域を第2画像中の当該部分領域に対応する領域で置き換えることにより合成画像を生成する。この場合、被検眼Eの向きと光学系100の光軸Oの向きとの相対的向きが所定の相対的向きの状態のときに第1画像が取得された後、移動機構30により光学系100を所定の角度だけ旋回させ、第1画像が取得されたときの相対的向きと異なる相対的向きに設定された状態のときに第2画像が取得される。また、移動機構30により光学系100を旋回させることなく、所定の位置に固視標が呈示された状態で第1画像が取得された後、第1画像が取得されたときと異なる呈示位置に固視標が呈示された状態で第2画像が取得されてもよい。それにより、第1画像及び第2画像の一方に描出されたゴーストが他方の画像を用いて抑制された合成画像を取得することができる。
図6A及び図6Bに、画像合成部220Aの動作の一例を示す説明図を示す。図6A及び図6Bは、画像合成部220Aが2つのSLO画像を合成する場合の動作内容を表すが、2つのOCT画像を合成する場合の動作も同様である。
例えば移動機構30により光学系100を旋回させたり、固視標の呈示位置を変更したりすることにより、図6Aに示すように、第1SLO画像IAと第2SLO画像IBとが取得される。第1SLO画像IAは、被検眼Eと光軸Oとが第1相対的向きに設定されているときにSLO光学系130を用いて取得された所定の画角fのSLO画像である。第2SLO画像IBは、第1相対的向きと異なる第2相対的向きに設定されているときにSLO光学系130を用いて取得された所定の画角fのSLO画像である。
第1SLO画像IA及び第2SLO画像IBのそれぞれの所定領域(中心部を含む中心領域)には、対物レンズや被検眼Eの角膜の表面反射に起因したゴースト(ノイズ)N1、N2が描出されている。ゴーストN1、N2は、光学素子の配置関係や被検眼Eによって決まる画像中の既定の位置に既定の形状で描出される。
画像合成部220Aは、第1SLO画像IAの第1部分領域を第2SLO画像IB中の当該第1部分領域に対応する領域で置き換えた合成画像ICを生成する。画像合成部220Aは、第2SLO画像IBの第2部分領域を第1SLO画像IA中の当該第2部分領域に対応する領域で置き換える処理を更に行う。
以下、説明の便宜上、旋回方向がX方向である場合について説明する。例えば、図6Bでは、横方向が移動機構30による光学系100の旋回方向(第1相対的向きと第2相対的向きの差分方向)を表す。移動機構30により光学系100を角度αだけ旋回させたとき、第1SLO画像IAは、図6Bに示すように画角0〜画角fの画像として表され、第2SLO画像IBは、画角α〜画角(f+α)の画像であるとして表される。角度α(第1相対的向きと第2相対的向きの差分)は、ノイズN1、N2が描出される画像中の位置やサイズなどから決定される。
まず、画像合成部220Aは、第1SLO画像IA及び第2SLO画像IBのそれぞれを旋回方向に3つの短冊状領域に分割する。ここでは、画角0〜画角αまでの領域と、残りの領域を旋回方向に分割した2つの領域とに分割される。具体的には、第1SLO画像IAは、画角0〜画角αまでの領域BR1a(IA(0〜α))と、画角α〜画角((f+α)/2)までの領域BR1b(IA(α〜(f+α)/2))と、画角((f+α)/2)〜画角fまでの領域BR1c(IA((f+α)/2)〜f)とに分割される。ノイズN1は、領域Br1bに含まれる。同様に、第2画像SLO画像IBは、画角α〜画角((f+α)/2)までの領域BR2a(IB(α〜(f+α)/2))と、画角((f+α)/2)〜画角fまでの領域BR2b(IB((f+α)/2)〜f)と、画角f〜画角(f+α)までの領域BR2c(IB(f〜(f+α)))とに分割される。ノイズN2は、領域BR2bに含まれる。すなわち、ノイズN1が領域BR1aに含まれ、かつ、ノイズN2が領域BR2bに含まれるように、角度αが決定される。領域BR2aは領域BR1bに対応する部分領域である。領域BR1cは領域BR2bに対応する部分領域である。例えば、ノイズN1、N2の旋回方向の幅Wが互いに等しい場合、領域BR1b、領域BR2bのそれぞれにノイズが含まれるようにW<(f−α)/2であってよい。すなわち、α<(f−2W)であってよい。例えば、ノイズN1に対して旋回方向に移動されるノイズN2がノイズN1と重ならないようにするために、α>Wであってよい。
次に、画像合成部220Aは、第1SLO画像IAと第2SLO画像IBとの公知の位置合わせ処理を行い、位置合わせが行われた両画像を合成した合成画像ICを生成する。このとき、第1SLO画像の領域BR1bを第2SLO画像IBの領域BR2aに置き換える。更に、画像合成部220Aは、第2SLO画像IBの領域BR2bを第1SLO画像IAを第1SLO画像IAの領域BR1cで置き換える。それにより、合成画像ICは、画角0〜画角αまでは領域BR1a、画角α〜画角((f+α)/2)までは領域BR2a、画角((f+α)/2)〜画角fまでは領域BR1c、画角f〜画角(f+α)では領域BR2cの画像となる。以上のように、画像合成部220Aは、角度αに基づいて合成画像ICを生成することができる。それにより、生成された合成画像ICでは、第1SLO画像IA及び第2SLO画像IBの少なくとも一方の画像中の既知の位置に既知の形状で描出されるゴーストが抑制される。また、合成画像ICは、第1SLO画像IA及び第2SLO画像IBのそれぞれの画角よりも広画角の画像として新たに取得される。
画像合成部220Aは、第1画像(第1SLO画像IA)及び第2画像(第2SLO画像IB)の少なくとも一方の画像中の既知の位置に既知の形状で描出されるゴーストだけではなく、当該一方の画像中の任意の位置に任意の形状で描出されるゴーストが抑制された合成画像を生成することが可能である。この場合、画像合成部220Aは、第1画像及び第2画像のそれぞれを画素値に基づいて、両画像に共通に描出されるゴーストの位置及び形状を特定する。画像合成部220Aは、第1画像中のゴーストが描出される領域に対応する第2画像中の対応領域を特定し、第2画像中のゴーストが描出される領域に対応する第1画像中の対応領域を特定する。画像合成部220Aは、第1画像中のゴーストが描出される領域を、第2画像中の対応領域で置き換え、第2画像中のゴーストが描出される領域を第1画像中の対応領域で置き換えることにより合成画像を生成する。それにより、合成画像では、第1画像及び第2画像の少なくとも一方の画像中の任意の位置に任意の形状で描出されるゴーストが抑制される。また、合成画像は、第1画像及び第2画像のそれぞれの画角よりも広画角の画像として新たに取得される。
また、画像合成部220Aは、被検眼Eと光軸Oとが第1相対的向きに設定されているときにOCT光学系140を用いて取得された第1OCT画像の第1部分領域を、第2相対的向きに設定されているときにOCT光学系140を用いて取得された第2OCT画像中の当該第1部分領域に対応する領域で置き換えた合成画像を生成してもよい。この場合も、画像合成部220Aは、第2OCT画像の第2部分領域を当該第2部分領域に対応する第1OCT画像中の領域で置き換える処理を更に行ってもよい。
(UI部)
UI(User Interface)部230は、ユーザと眼科撮影装置との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。UI部230は、表示デバイスと操作デバイス(入力デバイス)とを含む。表示デバイスは、表示部を含んでよく、それ以外の表示デバイスを含んでもよい。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。制御部200は、操作デバイスに対する操作内容を受け、操作内容に対応した制御信号を各部に出力することが可能である。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
移動機構30、又は、固視光学系50、固視標制御部201C及び制御部200は、実施形態に係る「変更部」の一例である。第1SLO画像IAは実施形態に係る「第1画像」の一例であり、第2SLO画像IBは実施形態に係る「第2画像」の一例である。
[動作]
実施形態に係る眼科撮影装置の動作について説明する。
図7に、実施形態に係る眼科撮影装置の動作の一例を示す。図7は、実施形態に係る眼科撮影装置がSLO画像を取得する場合の動作例のフロー図を表す。
(S1)
まず、光軸Oに広角撮影モード用の対物レンズユニット110Aがセットされる。例えば、検者、被検者、医師、患者等のユーザが手動で光軸Oに対物レンズユニット110Aをセットする。眼科撮影装置は、UI部230に対してユーザにより行われた操作に基づきS2に動作を移行することが可能である。また、眼科撮影装置は、光軸Oに配置された対物レンズユニットの種別を検出し、検出された種別があらかじめ登録された当該撮影モードに対応する種別であると判定されたとき、眼科撮影装置の動作をS2に移行するようにしてもよい。
(S2)
移動機構30により被検眼Eの向きと光学系100の光軸Oの向きとの相対的な向きが所定の向きとされた状態で、制御部200は、前眼部撮影系120により被検眼Eの前眼部を撮影することにより前眼部画像を取得する。
(S3)
アライメント制御部201Aは、前述のようにS2において取得された前眼部画像に基づいて移動機構30(駆動部30D)を制御することにより、被検眼Eに対する光学系100及び対物レンズ系110の位置合わせを行う(X方向、Y方向及びZ方向)。あるいは、アライメント系60を用いてアライメントを実行してもよい。
(S4)
制御部200は、光スキャナ136をあらかじめ決められた初期位置に移動させる。
(S5)
制御部200は、SLO光源131をオンにして、光スキャナ136を制御することによりSLO光源131からの光で被検眼Eの眼底Efのスキャンを開始させる。SLO画像形成部210Aは、検出器135による眼底反射光の検出結果に基づいて眼底EfのSLO画像を形成する。S5において、トラッキング制御部201Bは、SLO画像に対するトラッキング制御を開始してもよい。
(S6)
制御部200は、駆動部30Dを制御することにより指定角度αだけ光学系100を旋回させる。指定角度αは、UI部230を用いてユーザにより指定された角度であってもよいし、あらかじめ決められた角度であってもよい。
(S7)
制御部200は、再び、光スキャナ136を制御することによりSLO光源131からの光で被検眼Eの眼底Efのスキャンを開始させる。SLO画像形成部210Aは、検出器135による眼底反射光の検出結果に基づいて眼底EfのSLO画像を形成する。なお、スキャンの開始前に、S2及びS3と同様に前眼部を撮影し、得られた前眼部画像に基づいてアライメントを実行してもよい。
(S8)
次に、制御部200は、S5において取得されたSLO画像とS7において取得されたSLO画像とを用いた合成処理を画像合成部220Aに実行させる。画像合成部220Aは、図6Bに示すように2つのSLO画像を用いて合成画像を生成する。
(S9)
次に、表示制御部201Dは、S8において生成された合成画像をUI部230に含まれる表示デバイスに表示させる。以上で、眼科撮影装置の動作は終了する(エンド)。
<変形例>
前述の実施形態では、移動機構30により指定角度αだけ光学系100を旋回させることにより被検眼Eの向きと光学系100の光軸Oの向きとの相対的向きが互いに異なる状態で2つの画像を取得する場合について説明したが、実施形態に係る構成はこれに限定されるものではない。
図8に、実施形態の変形例に係る眼科撮影装置の概略構成の機能ブロック図を示す。
変形例に係る眼科撮影装置1aの構成が実施形態に係る眼科撮影装置1の構成と異なる点は、測定ユニット10aに角度検出部25が設けられた点と、処理ユニット70aが角度検出部25による検出結果に基づいて処理を行う点である。角度検出部25は、基準方向を基準に、移動機構30により旋回される光学系100の角度を検出する。処理ユニット70aの制御部200aは、旋回前に角度検出部25により検出された角度と、旋回後に角度検出部25により検出された角度との差分を求めることにより、光学系100が旋回された角度(指定角度αに相当)を求めることができる。それにより、求められた角度は、被検眼Eの向きと光軸Oの第1相対的向きと第2相対的向きとの差分に相当するため、実施形態と同様に、画像合成部220Aは、制御部200aにより求められた光学系100の旋回角度に応じて合成画像を生成することが可能になる。
なお、角度検出部25は、移動機構30による旋回前後の角度の差分を検出するようにしてもよい。角度検出部25及び制御部200a、又は、角度検出部25は、実施形態の変形例に係る「検出部」の一例である。
本変形例によれば、実施形態と同様に、被検眼Eの向きと光学系100の光軸Oの向きとの相対的向きが互いに異なる状態での撮影により取得された2つの画像の少なくとも一方の画像に描出されるゴーストが抑制された合成画像を取得することができる。この合成画像は、当該2つの画像のそれぞれの画角よりも広画角の画像として新たに取得される。
[効果]
実施形態に係る眼科撮影装置の効果について説明する。
実施形態に係る眼科撮影装置(眼科撮影装置1、1a)は、光学系(光学系100)と、変更部(移動機構30、又は、固視光学系50、固視標制御部201C及び制御部200)と、画像合成部(画像合成部220A)とを含む。光学系は、被検眼(被検眼E)の眼底(眼底Ef)を撮影するために用いられる。変更部は、被検眼の向きと光学系の光軸(光軸O)の向きを相対的に変更する。画像合成部は、被検眼と光軸とが第1相対的向きに設定されているときに光学系を用いて取得された第1画像(第1SLO画像IA)の部分領域(領域BR1b)を、第1相対的向きと異なる第2相対的向きに設定されているときに光学系を用いて取得された第2画像(第2SLO画像IB)中の上記の部分領域に対応する領域(領域BR2a)で置き換えた合成画像(合成画像IC)を生成する。
このような構成によれば、被検眼の向きと光学系の光軸Oとの相対的向きが互いに異なる状態で得られた第1画像及び第2画像を取得し、第1画像の部分領域を第2画像中の当該部分領域に対応する領域で置き換えて合成画像を生成するようにしたので、第1画像の部分領域に描出されるゴースト(ノイズ)を除去した合成画像を取得することができる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置では、画像合成部は、第2画像の部分領域(領域BR2b)を当該部分領域に対応する第1画像中の領域(領域BR1c)で置き換える処理を更に行ってもよい。
このような構成によれば、更に、第2画像の部分領域を第1画像中の当該部分領域に対応する領域で置き換えて合成画像を生成するようにしたので、第1画像の部分領域の描出されるゴーストだけではなく、第2画像の部分領域に描出されるゴースト(ノイズ)を除去した合成画像を取得することができる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置では、部分領域は、画像の中心部を含む中心領域であってもよい。
このような構成によれば、対物レンズや被検眼の角膜の表面反射に起因したゴーストの描出が抑制された合成画像を取得することができる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置では、光学系は、対物レンズ(対物レンズ系110)を含み、変更部は、対物レンズから光軸に沿って所定距離だけ離間した位置(瞳位置R又はその近傍位置)を中心に光学系を旋回させる移動機構(移動機構30)を含んでもよい。
このような構成によれば、所定の位置を中心に光学系を旋回させることにより被検眼の向きと光学系の光軸Oとの相対的向きを変更するようにしたので、簡素な構成で、ゴーストの描出が抑制され、より広角の合成画像を取得することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置では、変更部は、光学系により形成される光路を通じて被検眼に固視標を呈示する固視光学系(固視光学系50)と、固視標の呈示位置を変更する制御部(制御部200、固視標制御部201C)と、を含んでもよい。
このような構成によれば、固視標の呈示位置を変更することにより被検眼の向きと光学系の光軸Oとの相対的向きを変更するようにしたので、装置の小型化を図りつつ、ゴーストの描出が抑制され、より広角の合成画像を取得することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置では、部分領域は、光学系により取得された画像の中心を含む既定サイズ、かつ、既定形状の領域であってよい。
このような構成によれば、既知の位置に既知の形状のゴーストの描出が抑制された合成画像の取得が可能になる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置では、画像合成部は、光学系により取得された画像の画素値に基づいて部分領域を特定してもよい。
このような構成によれば、任意の位置に任意の形状のゴーストの描出が抑制された合成画像の取得が可能になる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置では、画像合成部は、第1相対的向きと第2相対的向きとの差分に基づいて、部分領域を決定してもよい。
このような構成によれば、第1相対的向きと第2相対的向きとの差分に応じて部分領域を決定するようにしたので、取得された画像中に描出されたゴーストの描出を精度よく抑制することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科撮影装置は、第1相対的向きと第2相対的向きとの差分を検出する検出部(角度検出部25及び制御部200a、又は、角度検出部25)を含んでもよい。
このような構成によれば、検出部により第1相対的向きと第2相対的向きとの差分を検出するようにしたので、被検眼の向きと光学系の光軸の向きとの相対的向きの変更量に応じて、画像中に描出されたゴーストの描出を精度よく抑制することが可能になる。
<その他>
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
前述の実施形態では、光学系100の構成が図2及び図4に示す構成である場合について説明したが、実施形態に係る光学系の構成はこれに限定されるものではない。実施形態に係る光学系は、レーザー光を眼底における治療部位に照射するための光学系や、被検眼に固視させた状態で視標を移動させるための光学系などを備えていてもよい。
前述の実施形態では、対物レンズ系110の構成が図2〜図4に示す構成である場合について説明したが、実施形態に係る対物レンズ系の構成はこれに限定されるものではない。
前述の実施形態では、画像合成部220Aが図6A及び図6Bに示すように合成画像を生成する場合について説明したが、実施形態は画像合成部220Aによる処理内容に限定されるものではない。例えば、画像合成部220Aは、相対的向きが異なる2つの画像の加減算を行うことによりノイズの描出が抑制された合成画像を生成してもよい。