JP2020133061A - ロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。 - Google Patents

ロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。 Download PDF

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崇志 潤間
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育夫 松鳥
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Abstract

【課題】高強度な低吸水のポリアミド610のマルチフィラメントを提供することで、上述のような吸水によるポリアミドマルチフィラメントの欠点を解消し、ロープ用途として適したマルチフィラメントを提供する。【解決手段】吸水時の強力保持率が90%以上であり、吸水−乾燥処理後のロープの硬度と吸水未処理のロープの硬度との比が1.4以下であることを特徴とするロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。【選択図】なし

Description

本発明は、ロープ用のポリアミドマルチフィラメントに関する。
ポリアミド6やポリアミド66のマルチフィラメントは、ポリエステルやポリプロピレン等の汎用マルチフィラメントと比較して強伸度が高く、毛羽品位に優れるため、エアバッグ、タイヤコード、スポーツラケット用ガット、ロープ、漁網、鞄用ベルト等の多岐に渡る用途に用いられている。
上述の用途の中でもロープ分野ではポリアミド6、66の有する高強伸度、高耐摩耗、耐久性の観点から長年に渡り利用されてきた。(特許文献1)
産業資材分野、特に船舶繋留用ロープまたは各種建設現場で使用されるロープには、ロープとしての強さや耐久性が要求される。また海水中で使用される船舶繋留用ロープはもとより、産業資材用ロープでは屋外で長期間使用されることが多く、ロープが風雨に晒されるため、乾燥状態に加えて吸水状態についても想定する必要がある。他方、水中に沈まずに水面に長時間浮いている性能を有することも船舶繋留用ロープとして重要であり、例えば、ロープ用中空ポリアミド6繊維が提案されたりしている(特許文献2)が、水浮上性は優れるものの、吸水時の強力低下が懸念される。
ロープに使用されるポリアミドは一般的に、吸水、吸湿性を有するポリマーである。ポリアミド6やポリアミド66などのいわゆる汎用ポリアミドのマルチフィラメントでは、吸水による強度低下や吸湿による寸法変化が大きい。そのため吸水による強度低下や吸水−乾燥の繰り返しに伴い、ロープが硬化する、または耐磨耗性が低下する問題があった。ロープが硬化すると、ロープの設置に係る作業性の低下、また巻き上げ後の収納性悪化等、実用上の様々な問題が発生する。
一方で低吸水ポリアミドマルチフィラメントとしてポリアミド11やポリアミド610、ポリアミド612のマルチフィラメントなどが知られており、例えば洗浄ブラシ用繊維として提案されたりしている(特許文献3)が、従来手法で製造されたこれらのポリアミドマルチフィラメントはポリアミド6やポリアミド66に比べて低強度かつ毛羽品位が悪いことから、強度が高いマルチフィラメントを必須とするロープ用途への展開は困難であった。
特開平9−95877号公報 特開2003−55836号公報 特開2011−1635号公報
本発明の課題は、従来技術では得られなかった高強度な低吸水のポリアミドのマルチフィラメントとすることで、特にロープ用途として適したマルチフィラメントを提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討したものであり、本発明は下記の構成からなる。
(1)吸水時の強力保持率が90%以上であり、吸水−乾燥処理後のロープの硬度と吸水未処理のロープの硬度との比が1.4以下であることを特徴とするロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
(2)総繊度が400〜4000dtex、単繊維繊度が4〜40dtexであることを特徴とする前記(1)記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
(3)硫酸相対粘度が3.3〜3.7であること、乾燥時強度7.3〜9.3cN/dtex、乾燥時伸度19〜30%であることを特徴とする前記(1)または(2)記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
(4)吸水時のロープの寸法変化率が5%以下であり、吸水時のロープの引張疲労試験による強力保持率が50%以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメントを用いることを特徴とするロープ。
本発明により、ポリアミド6やポリアミド66マルチフィラメントと同等の強度、毛羽品位を示し、ロープ用途として求められる低吸水性、吸水−乾燥時の特性を発現したポリアミド610マルチフィラメントを提供することが可能となる。
図1は本発明で好ましく用いられる直接紡糸延伸装置の概略図である。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの原料はポリアミド610である。ポリアミド610のみから構成されることが好ましいが、実質的にポリアミド610で構成されていればよく、本発明の特性を損なわない範囲で、具体的には5質量%以下の範囲で他のポリマーが混合されていてもよく、また共重合がなされていてもよい。混合または共重合されるポリマー・共重合単位としてはポリアミド6、66、11、12などのポリアミドが好ましい。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの吸水時の強力保持率は90%以上であることが必要である。より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。吸水時の強力保持率が90%以上であれば、汎用ポリアミドであるポリアミド6やポリアミド66と比較して、吸水時の強度低下を抑制することができる。なお、吸水時の強力保持率とは、後述する方法で測定した値をいう。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントを使用したロープの吸水処理後(吸水−乾燥処理後)の硬度と吸水未処理の硬度との比(吸水−乾燥処理後硬度/吸水未処理硬度)は1.4以下であることが必要であり、より好ましくは1.2以下である。吸水処理前後の硬度比が1.4を超えてくると、吸水−乾燥を繰り返した後のロープの締まりが強く手触りが硬く感じる。また結ぶ、解く、繋ぐなどの作業性の低下や硬化により巻き上げ後の収納性悪化が発生する。なお、吸水処理後の硬度とは、後述する方法で測定した値をいう。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの総繊度は400〜4000dtexが好ましく、より好ましくは700〜2000dtexである。400dtex未満でも用いることができるが、通常は合糸したり、合撚糸して目的とする製品に加工されるため、総繊度が小さいと効率が悪く好ましくない。一方、4000dtexを超える総繊度のマルチフィラメントも得ることができるが、総繊度の大きな糸が必要な場合は適当に合糸して用いれば良く、敢えて大型の製糸設備を用いて総繊度の大きなマルチフィラメントを製造する必要はない。
単繊維繊度としては、4〜40dtexが好ましく、より好ましくは5〜15dtexである。単繊維繊度が4dtex未満のポリアミド610マルチフィラメントは、製糸工程における延伸ロールとの耐摩耗性が低く、高強度繊維を得るために延伸倍率を上げた際に、毛羽品位が悪化する。一方、40dtexを超えると、硬すぎたり、フィラメントを集束し難いことがある。また、紡糸工程ではポリマーの冷却が困難になる、製糸工程では均一な延伸が行われない、3000m/min以上の高速でチ−ズ状に巻き取る時にフォ−ムが悪化する等の問題がある。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの原料チップの硫酸相対粘度(以下、単に粘度とも言う)は3.6〜4.0であることが好ましく、より好ましくは3.7〜3.9であり、さらに好ましくは3.7〜3.8である。チップの粘度が3.5以下であるとチップ水分率を下記の好ましい範囲にした際に、本発明のポリアミド610マルチフィラメントを安定して得ることが難しくなることがある。なお、硫酸相対粘度は、試料を98%硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した値をいう。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの原料となるポリアミド610のチップの水分率は0.05%以上であることが好ましく、特に0.05〜0.13%であることが好ましく、更には0.07〜0.09%であることが好ましい。ポリアミド610は吸水しにくいことから水分率による影響が少ないことが示唆されるが、水分率調整による粘度調整により、劇的に強伸度、毛羽品位が改善する。水分率が0.05%未満であると毛羽品位が悪化する。水分率を調整する手法としては、乾燥後のチップに軽量した水を添加し、チップを攪拌する方法が好ましいが、上記範囲を達成すれば手法は問わない。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントは硫酸相対粘度が3.3〜3.7であることが好ましく、特に3.3〜3.6であることが好ましく、更には3.4〜3.6であることが好ましい。粘度が3.3未満であると十分な強度を有する原糸を毛羽品位良く得ることができず、粘度が3.8以上であると製糸性、毛羽品位が悪化する。
上述の通り、ポリアミド610マルチフィラメントの強伸度、毛羽品位が劇的に改善させるには、紡糸機内での熱によるポリマーの重合と分解のバランスを制御するため、原料チップの粘度を3.6〜4.0、かつ水分率0.05〜0.13%とし、ポリアミド610マルチフィラメントの粘度が3.3〜3.7にすることが重要である。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの強度としては7.3〜9.3cN/dtexが好ましく、8.0〜9.2cN/dtexがより好ましく、更には8.3〜8.9cN/dtexであることがより好ましい。通常の方法で高強度繊維を製造すると毛羽が発生しやすいが、本発明で用いる水分率の調整と上記の粘度範囲により、紡出および延伸工程での毛羽発生、糸切れ等が抑制され、品位の高いポリアミドマルチフィラメントを得ることができる。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントの伸度としては19〜30%であることが好ましく、20〜25%であることがより好ましい。特に強度が上記範囲であり、且つ伸度がかかる範囲にあるようなポリアミドマルチフィラメントにおいて特に有効に効果を発揮し、毛羽発生、糸切れ等が抑制され、品位の高いポリアミドマルチフィラメントを得ることができる。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントを使用したロープの吸水時の寸法変化率は5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。一般に、吸水−乾燥を繰り返すことで、ポリアミド6等の吸水性繊維で構成されたロープは伸び縮みが発生するが、本発明のポリアミド610マルチフィラメントを使用したロープでは、吸水−乾燥を繰り返しても伸び縮みが小さく、具体的には寸法変化率として5%以下を実現すると、水中で繰り返し加重がかかる条件下においてもロープの変形が小さく、耐久性が向上する。なお、ロープの製造方法およびロープの吸水条件は後述する製造方法、処理方法をいう。
本発明のポリアミド610マルチフィラメントを使用したロープの吸水時の引張疲労試験による強力保持率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい、さらに好ましくは75%以上である。吸水時の引張疲労試験による強力保持率が50%以上であると、船舶繋留ロープ等の水中で繰り返し強い荷重がかかる用途において、ロープの疲労が少なく、より耐久性が高いロープとなる。なお、ロープの吸水条件および引張疲労試験による強力保持率は後述する処理方法により測定された値をいう。
次に、本発明のポリアミド610マルチフィラメントを製造する方法について説明する。ポリアミド610マルチフィラメントは通常の溶融紡糸をベースに以下の方法により好ましく製造することができるが、本発明においてはポリアミド610フィラメントを直接紡糸延伸法により製造することが特に有効である。また、溶融紡糸をする際、チップを適正粘度に管理した上で、所定量の水分を付与することが好ましく、これにより強伸度を向上させ、延伸時の糸切れや毛羽の発生を抑制することができるので、結果として強度が高く、品位に優れたポリアミド610マルチフィラメントを得ることができるのである。
以下、図1を例にとり、説明する。
図1は本発明で好ましく用いられる直接紡糸延伸装置の概略図である。
粘度、水分率等を調整したポリアミド610チップをエクストルーダー型紡糸機(図1には図示されていない)で溶融・混練し、紡出部において紡糸口金1より吐出して紡糸する。紡糸温度は対象ポリマーの融点より30℃以上高い温度とすることが一般的である。30℃未満であると熱量不足によりポリマーが均一に溶解せず、また溶融粘度も高くなるため紡糸性が不安定となる。紡糸口金1から紡出した紡出糸条5は加熱筒2を経て、クロスフロー冷却装置3により冷却風4で冷却される。冷却された糸条5はダクト6を通過し、給油装置7により処理剤を付与されながら、引き取りローラ8により引き取られる。引き取られた糸条5は引き取りローラ8と給糸ローラ9の間でプレストレッチ延伸をかけられる。その後、第1延伸ローラ10、第2延伸ローラ11、第3延伸ローラ12において3段延伸され、弛緩ローラ13において弛緩される。弛緩された糸条5は交絡付与装置14により交絡を付与され、ワインダー15により巻き取られ、繊維パッケージ16となる。
上記のとおり、原料として用いるポリアミド610チップの粘度は3.6〜4.0であることが好ましく、水分率は0.05%以上であることが好ましい。
上記において引き取る際の引き取り速度は350〜1100m/min、好ましくは400〜800m/minであることが好ましい。本発明における処理剤は非水系処理剤として用いることが好ましいが、含水処理剤を用いても十分な物性を得られる。処理剤の付与方法はオイリングロール装置やガイド給油が好ましい。
延伸から巻取りまでの工程は、通常2段以上の多段延伸したのち、弛緩処理して巻き取る方法が好ましい。2段以上で延伸する際、プレストレッチ延伸を施した後、延伸することが好ましい。プレストレッチ延伸、1段目延伸はガラス転移温度前後で熱延伸を行い、残りの延伸および熱セット温度は通常150〜220℃の高温で行うことが好ましい。より好ましくは170〜210℃である。
延伸倍率、すなわち引き取りローラ8から第2延伸ローラ11間の倍率は通常3〜6倍の範囲で行う。なお。巻取速度は通常2000〜5000m/minであることが好ましく、2500〜4500m/minであることがより好ましい。また、巻取張力は20〜250gfの条件下で巻取装置にてチーズ条に巻き上げることが好ましい。
以上のような方法により、本発明のポリアミド610マルチフィラメントを製造することができる。
本発明のロープは、通常、上記のように得られたマルチフィラメントを数本撚り合わせて合成する。合わせ本数、すなわちロープ構造体の直径は使用用途、要求特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、小型の船舶を係留するロープでは1400dtex程度のマルチフィラメントを20〜100本程度撚り合わせて設計されるものが多く、大型船舶用の係留ロープとしては1400dtexを100本程度撚り合わせたものをさらに100本程度撚り合わせてなるものもある。撚りについても使用用途によって下撚り、中撚り、上撚りなど、各々設定すればよい。
以下に、実施例に基づき本発明を詳述する。本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の各測定値の測定方法は以下の通りである。
(1)硫酸相対粘度(ηr):ポリマチップまたは原糸(フィラメント)を試料として、試料0.25gを98%硫酸25mLに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定し、以下の式から求めた。測定値は5サンプルの平均値から求めた。
ηr= 試料溶液の流下秒数/硫酸のみの流下秒数。
(2)水分率:平沼産業の水分測定装置AQ−2200と平沼産業の水分気化装置EV−2000を組み合わせて用いて測定した。すなわち、平沼産業のEV−2000を用いて、試料チップ中の水分を抽出し、平沼産業のAQ−2200を用いて、水分率を計測した。試料は1.5gとし、水分気化に用いる窒素は0.2L/minとした。
測定条件は以下の通りとした。
・ステップ1 温度 210℃、時間 21分
・空焼き時間 0分
・終了B.G. 0μg
・冷却時間 1分
・B.G.安定回数 30回
・バックパージ゛時間 20秒。
(3)総繊度:JIS L1013(1999) 8.3.1 A法により、所定荷重0.045cN/dtexで正量繊度を測定して総繊度とした。
(4)フィラメント数:JIS L1013(1999) 8.4の方法で算出した。
(5)(乾燥時)強力・強度・伸度:JIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は250mm、引張り速度は300mm/minで行った。強力はS−S曲線における最大強力から求め、強度は強力を総繊度で除して求めた。
(6)吸水時の強力保持率:JIS L1013(1999) 8.3.1 A法の要領で所定糸長の小かせを作成し、小かせを20℃の水道水に24時間浸漬させた。24時間経過後に、小かせを取り出し、10分以内にJIS L1013(1999)8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この測定で得られた吸水時強力を乾燥時強力(上記(5)項で測定)で除して百分率表記とし、吸水時強力保持率を算出した。
(7)吸水未処理ロープの硬度:硬度の測定にはASKER社製C型のデュロメータ計を使用した。1m程度のロープを机等の平らな場所に置き、10cm間隔でロープ一本あたり10点硬度を測定し、その値を平均して吸水未処理(乾燥時)ロープの硬度を求めた。
(8)吸水−乾燥処理ロープの硬度:1m程度のロープを準備し、20℃の水道水に30分浸漬させた。30分経過後、ロープを水中から取り出し、水が滴らない程度に布等でロープを拭き、温度20℃、湿度65%の部屋の中で24時間乾燥させた。上記吸水−乾燥作業を4回繰り返した後、(7)項記載の要領でロープ硬度を10点測定し、平均値を吸水−乾燥処理ロープの硬度を求めた。
(9)吸水時のロープの寸法変化率:ロープ(φ17)を水中に18日間浸漬させた後、引張試験機によってロープの繰り返し伸び試験を実施した。繰り返し伸び試験では、初荷重時に標点間をとり、吸水状態にて9810Nの荷重を載荷後、1分間保持し伸度を測定した。これを10回繰り返し、初荷重時の伸度と10回目の伸度との差分を寸法変化率とした。
(10)吸水時のロープの引張疲労試験による強力保持率:吸水前の乾燥状態のロープで引張試験を実施し、初期強力を評価した。続けて別ロープに水を滴下しながら、規格強度の荷重を負荷しながら10万回繰り返し、ロープへ引張疲労を加えた。引張疲労を加えたロープを使用して引張試験を実施し、引張疲労試験後の引張強さを評価した。この測定で得られた引張強さを初期強力で除して百分率表記とし、吸水時のロープの引張疲労試験による強力保持率とした。引張疲労試験時に破断したロープは破断と記録した。
[実施例1]
液相重合で得られたポリアミド610チップに酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマー重量に対し銅として70ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、固相重合装置を用いて固相重合させた後、水分を添加し、表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド610チップを得た。
紡糸装置としては図1の装置を用いた。前記したポリアミド610チップをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が約1400dtexになるように吐出量を調整した。紡糸温度は285℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数204の紡糸口金を通して紡糸した。紡出糸条は250℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速40m/minの冷却風により冷却固化した。冷却固化した糸条には、含水系処理剤を付与し、紡糸引き取りローラに旋回し糸条を引き取った。引き取られた糸条にはその後、一旦巻き取られることなく引き取りローラ8と給糸ローラ9の間での5%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.6となるように1段目の延伸、続いて第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.35となるように2段目の延伸を行った。続いて、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で該ローラ間の回転速度比が1.35となるように3段目の延伸を行った。引き取りローラ8と第3延伸ローラ12の間の該ローラ間の回転速度比を5.0に設定した。
引き続き、第3延伸ローラ12と弛緩ローラ13との間で5%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機14にて巻き取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが常温、給糸ローラ40℃、第1延伸ローラ95℃、第2延伸ローラ150℃、第3延伸ローラ200℃、弛緩ローラ140℃となるように設定した。交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に直角方向から高圧空気を噴射することにより行った。交絡付与装置の前後には走行糸条を規制するガイドを設け、噴射する空気の圧力は0.2MPaで一定とした。上記条件により1400dtexのポリアミド610マルチフィラメントを得た。
次に得られた1400dtexのポリアミド610マルチフィラメント3本を引き揃え80T/mのZ下撚りを掛けた後、さらに8本を引き揃え120T/mのS中撚りを掛けストランドを作製し、最後に6本引き揃え130T/mのZ上撚りを掛け直径17mmのロープを作製した。
[実施例2]
給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.5となるように1段目の延伸、第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.30となるように2段目の延伸、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で該ローラ間の回転速度比が1.32となるように3段目の延伸を行い、引き取りローラ8と第3延伸ローラ12の間の該ローラ間の回転速度比を4.5に変更した以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
[実施例3]
表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド610ペレットを用い、計量ポンプにより総繊度1000dtexになるように吐出量を調整した以外は、実施例1と同様の方法で製造した。
[実施例4]
表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド610ペレットを用い、計量ポンプにより総繊度1000dtexになるように吐出量を調整し、給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.4となるように1段目延伸、第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.30となるように2段目延伸、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で該ローラ間の回転速度比が1.22となるように3段目延伸を行い、引き取りローラ8と第3延伸ローラ12の間の該ローラ間の回転速度比を4.0に変更した以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
[比較例1]
液相重合で得られたポリアミド6チップを酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマー重量に対し、銅として68ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、固相重合装置を用いて固相重合させた後、水分を添加し、表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド6ペレットを得た。紡糸装置としては図1の装置を用いた。 前記したポリアミド6チップをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が約1400dtexになるように吐出量を調整した。
紡糸温度は270℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数204の紡糸口金を通して紡糸した。紡出糸条は270℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速30m/minの冷却風により冷却固化した。それ以降の条件は実施例1と同様な方法で製造した。冷却固化した糸条には、含水系処理剤を付与し、紡糸引き取りローラに旋回し糸条を引き取った。引き取られた糸条にはその後、一旦巻き取られることなく引き取りローラ8と給糸ローラ9の間での9%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.8となるように1段目の延伸、続いて第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.4となるように2段目の延伸を行った。続いて、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で該ローラ間の回転速度比が1.2となるように3段目の延伸を行った。引き取りローラ8と第3延伸ローラ12の間の該ローラ間の回転速度比を4.9に設定した。
引き続き、第3延伸ローラ12と弛緩ローラ13との間で8%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機14にて巻き取った。この際、引取速度と延伸速度比で表される総合延伸倍率はそれぞれ表1記載の倍率となるように調節した。各ローラの表面温度は、引き取りローラが常温、給糸ローラ45℃、第1延伸ローラ100℃、第2延伸ローラ160℃、第3延伸ローラ200℃、弛緩ローラ140℃となるように設定した。交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に直角方向から高圧空気を噴射することにより行った。交絡付与装置の前後には走行糸条を規制するガイドを設け、噴射する空気の圧力は0.3MPaで一定とした。
[比較例2]
液相重合で得られたポリアミド66チップを酸化防止剤として酢酸銅の5重量%水溶液を添加して混合し、ポリマー重量に対し、銅として68ppm添加吸着させた。次に沃化カリウムの50重量%水溶液および臭化カリウムの20重量%水溶液をポリマチップ100重量部に対してそれぞれカリウムとして0.1重量部となるよう添加吸着させ、固相重合装置を用いて固相重合させた後、水分を添加し、表1の硫酸相対粘度、水分率のポリアミド66ペレットを得た。
紡糸装置としては図1の装置を用いた。前記したポリアミドチップをエクストルーダーへ供給し、計量ポンプにより総繊度が約1400dtexになるように吐出量を調整した。紡糸温度は295℃で行い、紡糸パック内にて金属不織布フィルターで濾過したのち、孔数204の紡糸口金を通して紡糸した。紡出糸条は280℃の温度に加熱した加熱筒を通過させたのち風速33m/minの冷却風により冷却固化した。冷却固化した糸条には、含水系処理剤を付与し、紡糸引き取りローラに旋回し糸条を引き取った。引き取られた糸条にはその後、一旦巻き取られることなく引き取りローラ8と給糸ローラ9の間での3%のストレッチをかけ、次いで給糸ローラ9と第1延伸ローラ10の間で該ローラ間の回転速度比が2.8となるように1段目の延伸、続いて第1延伸ローラ10と第2延伸ローラ11の間で該ローラ間の回転速度比が1.3となるように2段目の延伸を行った。続いて、第2延伸ローラ11と第3延伸ローラ12の間で該ローラ間の回転速度比が1.3となるように3段目の延伸を行った。引き取りローラ8と第3延伸ローラ12の間の該ローラ間の回転速度比を4.9に設定した。
引き続き、第3延伸ローラ12と弛緩ローラ13との間で7%の弛緩熱処理を施し、交絡付与装置にて糸条を交絡処理した後、巻き取り機14にて巻き取った。各ローラの表面温度は、引き取りローラが常温、給糸ローラ55℃、第1延伸ローラ140℃、第2延伸ローラ205℃、第3延伸ローラ228℃、弛緩ローラ144℃となるように設定した。交絡処理は、交絡付与装置内で走行糸条に直角方向から高圧空気を噴射することにより行った。交絡付与装置の前後には走行糸条を規制するガイドを設け、噴射する空気の圧力は0.3MPaで一定とした。

1:紡糸口金
2:加熱筒
3:クロスフロー冷却装置
4:冷却風
5:糸条
6:ダクト
7:給油装置
8:引き取りローラ
9:給糸ローラ
10:第1延伸ローラ
11:第2延伸ローラ
12:第3延伸ローラ
13:弛緩ローラ
14:交絡付与装置
15:ワインダー
16:繊維パッケージ

Claims (5)

  1. 吸水時の強力保持率が90%以上であり、吸水−乾燥処理後のロープの硬度と吸水未処理のロープの硬度との比が1.4以下であることを特徴とするロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
  2. 総繊度が400〜4000dtex、単繊維繊度が4〜40dtexであることを特徴とする請求項1記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
  3. 硫酸相対粘度が3.3〜3.7であること、乾燥時強度7.3〜9.3cN/dtex、乾燥時伸度19〜30%であることを特徴とする請求項1または2記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
  4. 吸水時のロープの寸法変化率が5%以下であり、吸水時のロープの引張疲労試験による強力保持率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメント。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項記載のロープ用ポリアミド610マルチフィラメントを用いることを特徴とするロープ。
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