JP2020132902A - 焼結部材用予合金鋼粉、焼結部材用粉末、および焼結部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の粉末に比べて、さらに強度に優れた焼結部材を製造することができる焼結部材用予合金鋼粉を提供する。【解決手段】Cu:0.5〜5.0質量%、Mo:0.1〜0.5質量%、およびV:0.05〜0.5質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる焼結部材用予合金鋼粉。【選択図】なし
Description
本発明は、焼結部材用予合金鋼粉に関し、特に、強度に優れた焼結部材を製造することができる焼結部材用予合金鋼粉に関する。また、本発明は、前記焼結部材用予合金鋼粉を含む焼結部材用粉末に関する。さらに本発明は、前記焼結部材用予合金鋼粉および焼結部材用粉末の少なくとも一方を原料として含む焼結部材に関する。
粉末冶金法は、金属粉を金型内で加圧して成形体としたのち、焼結して機械部品等を製造する技術である。例えば、金属粉として鉄粉を用いる場合には、該鉄粉にCu粉、黒鉛粉等を混合し、成形、焼結を行い、焼結体とする。このような粉末冶金法を利用すれば、複雑な形状の機械部品を寸法精度良く製造することができる。そのため、粉末冶金法を用いて製造される焼結部材は、ギヤ等の自動車用部品として広く用いられている。
近年では、部材の軽量化や小型化といった目的を達成するため、粉末冶金焼結体の高強度化が望まれており、高強度化を目的として様々な手法が提案されている。
例えば、特許文献1では、Nb、V、およびTiのうちから選んだ一種または二種以上を予合金化した鋼粉の表面に、Niおよび/またはCu粉末を拡散付着させた粉末冶金用混合粉末が提案されている。
特許文献2では、Vを予合金化した鋼粉と、Cu粉および/またはNi粉とを含む粉末冶金用混合粉末が提案されている。
特許文献3では、Wおよび/またはVを予合金化した鋼粉と、Cu粉および/またはNi粉とを含む粉末冶金用混合粉末が提案されている。
特許文献4では、Mo−V−Cu−Ni−Co−W系の予合金鋼粉に対して、Mo粉、Cu粉、Ni粉、Co粉およびW粉のうちの1種以上の金属粉末を配合または部分的に拡散付着した粉末冶金用粉末が提案されている。
特許文献5では、Cuを予合金化させた鋼粉の表面に、Cu粉を拡散付着させた粉末冶金用合金粉末が提案されている。
特許文献6ではMoを予合金化させた鋼粉の表面に、Cu粉末及びあるいはNi粉末を混合した粉末冶金用粉末が提案されている。
特許文献1〜3で提案されている粉末冶金用粉末は、V等の元素を予合金化させた鋼粉(予合金鋼粉)を用いるものであり、V等の析出強化によって焼結体の強度を向上させることができる。また、Vの析出強化のみでは強度向上効果が限定的であるため、強度向上効果を有するCu粉等をさらに併用している。
しかし、特許文献1〜3で提案されている方法では、Cu粉等を併用しているにもかかわらず、強度向上効果は限定的であり、さらなる焼結体強度の向上が求められている。
特許文献4で提案されている方法で得られる焼結部材は、マルテンサイトを主体とするミクロ組織を有するため、パーライトを主体とするミクロ組織を有する部材に比べて被削性に劣る。そのため、さらなる被削性の向上が求められている。
特許文献5で提案されている粉末は、Cuのみを利用したものであるが、Cu単独の使用では強度向上が限定的であり、さらなる焼結体強度の向上が求められる。
特許文献6で提案されている粉末は、Moのみを予合金化して利用したものであるが、Mo予合金単独の使用では強度向上が限定的であり、さらなる焼結体強度の向上が求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上記従来の粉末に比べて、さらに強度に優れた焼結部材を製造することができる焼結部材用予合金鋼粉と、該焼結部材用予合金鋼粉を原料として用いた焼結部材を提供することを目的とする。
本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.Cu:0.5〜5.0質量%、Mo:0.1〜0.5質量%、およびV:0.05〜0.5質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる焼結部材用予合金鋼粉。
2.上記1に記載の焼結部材用予合金鋼粉と、金属粉とからなる焼結部材用粉末であって、
前記金属粉が、前記焼結部材用粉末の全質量に対する割合で、4質量%以下のCu粉と4質量%以下のMo粉の一方または両方である、焼結部材用粉末。
前記金属粉が、前記焼結部材用粉末の全質量に対する割合で、4質量%以下のCu粉と4質量%以下のMo粉の一方または両方である、焼結部材用粉末。
3.上記1に記載の焼結部材予合金鋼粉および上記2に記載の焼結部材用粉末の少なくとも一方を原料として含む焼結部材。
本発明によれば、従来の焼結部材用粉末に比べてCu分布を均一化できるため、低い焼結温度でも焼結体中のCu分布を均一化することができ、その結果、焼結部材の強度を向上させることができる。また、Cu、MoおよびVの相互作用により、析出物がより微細に析出し、組織も微細化する。その結果、さらに強度に優れる焼結部材を、低コストで製造することができる。
以下、本発明を実施する方法を具体的に説明する。
[焼結部材用予合金鋼粉]
本発明の一実施形態における焼結部材用予合金鋼粉(以下、単に「予合金鋼粉」という場合がある)は、Cu:0.5〜5質量%、Mo:0.1〜0.5質量%およびV:0.05〜0.5質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる焼結部材用予合金鋼粉である。Cu、MoおよびVの含有量を前記範囲に限定する理由は次のとおりである。
本発明の一実施形態における焼結部材用予合金鋼粉(以下、単に「予合金鋼粉」という場合がある)は、Cu:0.5〜5質量%、Mo:0.1〜0.5質量%およびV:0.05〜0.5質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる焼結部材用予合金鋼粉である。Cu、MoおよびVの含有量を前記範囲に限定する理由は次のとおりである。
Cu:0.5〜5.0質量%
上述したように、Cuは焼結体の強度を向上させる作用を有する元素である。予合金鋼粉中のCu含有量が0.5質量%未満であると、Cuの添加による強度向上効果が不十分となる。そのため、Cu含有量を0.5質量%以上とする。一方、予合金鋼粉中のCu含有量が5.0質量%を超えると、粉末の圧縮性が低下し、圧粉体の密度が低下する結果、Cu含有量に見合った焼結体強度の向上効果が得られなくなる。そのため、Cu含有量は5.0質量%以下とする。なお、より高い強度を効果的に得るためには、Cu含有量を1.0〜4.0質量%とすることが好ましい。
上述したように、Cuは焼結体の強度を向上させる作用を有する元素である。予合金鋼粉中のCu含有量が0.5質量%未満であると、Cuの添加による強度向上効果が不十分となる。そのため、Cu含有量を0.5質量%以上とする。一方、予合金鋼粉中のCu含有量が5.0質量%を超えると、粉末の圧縮性が低下し、圧粉体の密度が低下する結果、Cu含有量に見合った焼結体強度の向上効果が得られなくなる。そのため、Cu含有量は5.0質量%以下とする。なお、より高い強度を効果的に得るためには、Cu含有量を1.0〜4.0質量%とすることが好ましい。
Mo:0.1〜0.5質量%
Moは、フェライト、パーライトおよびベイナイトの微細化によって焼結部材の強度を向上させる作用を有する元素である。また、Moの添加によりベイナイト組織が形成されやすくなるため、パーライトの一部がベイナイト化する。そしてその結果、焼結部材の強度および靱性が向上する。予合金鋼粉中のMo含有量が0.1質量%未満であると、Moの添加による強度向上効果が不十分となる。そのため、Mo含有量を0.1質量%以上とする。一方、予合金鋼粉中のMo含有量が0.5質量%を超えると、予合金鋼粉の圧縮性が低下して成形用金型が損耗しやすくなるのみならず、Mo含有量が0.5質量%である場合に比べて、焼結部材の強度は向上しない。そのため、Mo含有量は0.5質量%以下とする。なお、より高い強度を得るためには、Mo含有量を0.1〜0.3質量%とすることが好ましい。
Moは、フェライト、パーライトおよびベイナイトの微細化によって焼結部材の強度を向上させる作用を有する元素である。また、Moの添加によりベイナイト組織が形成されやすくなるため、パーライトの一部がベイナイト化する。そしてその結果、焼結部材の強度および靱性が向上する。予合金鋼粉中のMo含有量が0.1質量%未満であると、Moの添加による強度向上効果が不十分となる。そのため、Mo含有量を0.1質量%以上とする。一方、予合金鋼粉中のMo含有量が0.5質量%を超えると、予合金鋼粉の圧縮性が低下して成形用金型が損耗しやすくなるのみならず、Mo含有量が0.5質量%である場合に比べて、焼結部材の強度は向上しない。そのため、Mo含有量は0.5質量%以下とする。なお、より高い強度を得るためには、Mo含有量を0.1〜0.3質量%とすることが好ましい。
V:0.05〜0.5質量%
Vは、析出強化により焼結体の強度を向上させる作用を有する元素である。予合金鋼粉中のV含有量が0.05質量%未満であると、Vの添加による強度向上効果が不十分となる。そのため、V含有量を0.05質量%以上とする。一方、予合金鋼粉中のV含有量が0.5質量%を超えると、炭化物の粗大化に起因する強度向上効果の低下や、粉末の圧縮性の低下に起因する圧粉体密度の低下のため、V含有量に見合った焼結体強度の向上効果が得られなくなる。そのため、V含有量は0.5質量%以下とする。なお、より高い強度を得るためには、V含有量を0.1〜0.4質量%とすることが好ましい。
Vは、析出強化により焼結体の強度を向上させる作用を有する元素である。予合金鋼粉中のV含有量が0.05質量%未満であると、Vの添加による強度向上効果が不十分となる。そのため、V含有量を0.05質量%以上とする。一方、予合金鋼粉中のV含有量が0.5質量%を超えると、炭化物の粗大化に起因する強度向上効果の低下や、粉末の圧縮性の低下に起因する圧粉体密度の低下のため、V含有量に見合った焼結体強度の向上効果が得られなくなる。そのため、V含有量は0.5質量%以下とする。なお、より高い強度を得るためには、V含有量を0.1〜0.4質量%とすることが好ましい。
上記予合金鋼粉の成分組成は、Cu、MoおよびVと、残部のFeおよび不可避的不純物からなる。前記不可避的不純物の量は特に限定されず、任意の量であってよい。しかし、C:0.01質量%以下、O:0.15質量%以下、Mn:0.15質量%以下、Si:0.05質量%以下、P:0.015質量%以下、S:0.015質量%以下、Cr:0.1質量%以下、N:0.01質量%以下、およびその他の元素:0.01質量%以下に抑制されることが好ましい。とくにNiは高コストであるため、Ni含有量を0.1質量%以下とすることが好ましい。
上記予合金鋼粉は、特に限定されることなく任意の方法で製造することができる。例えば、前記予合金鋼粉は、アトマイズ法によって製造されるアトマイズ粉であってよく、中でも水アトマイズ法によって製造される水アトマイズ粉であることが好ましい。アトマイズ法で予合金鋼粉を製造する場合は、例えば、上記成分組成に調製された溶鋼をアトマイズして粉末とし、さらに必要に応じて分級することで予合金鋼粉を得ることができる。
なお、得られた予合金鋼粉に含まれる酸素や炭素を除去する目的で、還元雰囲気中、800〜1000℃の温度範囲で0.5〜2時間程度保持する熱処理を行うことが可能である。
上記予合金鋼粉の粒径は特に限定されず任意の粒径とすることができる。しかし、製造の容易さの観点からは、平均粒径を30〜150μmとすることが好ましい。特に、予合金鋼粉が水アトマイズ粉である場合、平均粒径が前記範囲である予合金鋼粉を工業的に低コストで製造できるため、好ましい。なお、ここで平均粒径とは、質量基準におけるメジアン径(D50)を指すものとする。前記平均粒径は、JIS Z 2510に記載の乾式ふるい分け法で測定した粒度分布から質量基準の積算粒度分布を算出し、その値が50%となる粒径を内挿法で求めることができる。
[焼結部材用粉末]
上記予合金鋼粉は、そのまま粉末冶金に用いることもできるが、さらにCu粉およびMo粉の一方または両方と組み合わせた焼結部材用粉末として用いることが好ましい。前記焼結部材用粉末は、具体的には、以下に述べる実施形態とすることが好ましい。
上記予合金鋼粉は、そのまま粉末冶金に用いることもできるが、さらにCu粉およびMo粉の一方または両方と組み合わせた焼結部材用粉末として用いることが好ましい。前記焼結部材用粉末は、具体的には、以下に述べる実施形態とすることが好ましい。
本発明の一実施形態における焼結部材用粉末は、上記焼結部材用予合金鋼粉と、金属粉とからなる焼結部材用粉末であって、前記金属粉が、前記焼結部材用粉末の全質量に対する割合で、4質量%以下のCu粉と4質量%以下のMo粉の一方または両方である。言い換えると、本実施形態の焼結部材用粉末は、前記予合金鋼粉と前記金属粉とからなる混合粉である。
Cu粉、Mo粉の配合は、焼結を促進させるとともに、局所的にベイナイト相とマルテンサイト相を有する複合組織を形成して焼結体の強度を向上させる効果を有する。しかし、それぞれCu量:4質量%、Mo量:4質量%である上限を超えて添加されると、圧粉密度の低下が顕著となり、強度が低下する。そのため、Cu粉およびMo粉の添加量を上記範囲とする。
上記焼結部材用粉末は、任意の方法で製造することができる。例えば、上記予合金鋼粉に対して、前記金属粉としてのCu粉およびMo粉の一方または両方を、上記含有量となるように混合することによって製造すればよい。予合金鋼粉と金属粉の混合は、任意の方法で行うことができる。例えば、V型混合機、ダブルコーン型混合機、へンシェルミキサ、またはナウターミキサを用いて混合する方法が挙げられる。なお、粉末混合時には、金属粉末の偏析防止のために、マシン油などの結合剤を添加しても良い。
[焼結部材]
本発明の一実施形態における焼結部材は、上記焼結部材用予合金鋼粉および焼結部材用粉末の少なくとも一方を原料として含む焼結部材である。
本発明の一実施形態における焼結部材は、上記焼結部材用予合金鋼粉および焼結部材用粉末の少なくとも一方を原料として含む焼結部材である。
(副原料)
前記原料としては、上記焼結部材用予合金鋼粉および上記焼結部材用粉末の一方または両方を、そのまま用いることができるが、さらに副原料を併用することもできる。
前記原料としては、上記焼結部材用予合金鋼粉および上記焼結部材用粉末の一方または両方を、そのまま用いることができるが、さらに副原料を併用することもできる。
前記副原料としては、例えば、炭素粉および金属粉からなる群より選択される1または2以上を用いることができる。前記炭素粉としては、特に限定されることなく任意のものを用いることができるが、例えば、黒鉛粉およびカーボンブラックの一方または両方を用いることが好ましい。前記黒鉛粉としては、天然黒鉛粉および人造黒鉛粉のいずれも用いることができる。炭素粉を副原料として添加することにより、焼結体の強度をさらに向上させることができる。また、前記金属粉としては、任意の金属粉を用いることができる。例えば、Cu粉、およびMo粉からなる群より選択される1種以上を副原料として添加することにより、焼結部材の最終的な金属成分を調整することも可能である。
(潤滑剤)
また、成形に先立って、上記原料にさらに潤滑剤を添加することもできる。前記潤滑剤としては、粉末状の潤滑剤を用いることが好ましい。また、金型に潤滑剤を塗布あるいは付着させて上記成形を行うこともできる。いずれの場合であっても、前記潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸リチウムなどの金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアミド系ワックスなど、任意の潤滑剤を用いることができる。前記潤滑剤の量は、前記原料100質量部に対し、0.3〜1.0質量部とすることが好ましい。すなわち、前記原料として上記焼結部材用予合金鋼粉を用いる場合は、潤滑剤の量を、前記焼結部材用予合金鋼粉100質量部に対し、0.3〜1.0質量部とすることが好ましい。また、前記原料として上記焼結部材用粉末を用いる場合は、潤滑剤の量を、前記焼結部材用粉末100質量部に対し、0.3〜1.0質量部とすることが好ましい。
また、成形に先立って、上記原料にさらに潤滑剤を添加することもできる。前記潤滑剤としては、粉末状の潤滑剤を用いることが好ましい。また、金型に潤滑剤を塗布あるいは付着させて上記成形を行うこともできる。いずれの場合であっても、前記潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸リチウムなどの金属石鹸、エチレンビスステアリン酸アミドなどのアミド系ワックスなど、任意の潤滑剤を用いることができる。前記潤滑剤の量は、前記原料100質量部に対し、0.3〜1.0質量部とすることが好ましい。すなわち、前記原料として上記焼結部材用予合金鋼粉を用いる場合は、潤滑剤の量を、前記焼結部材用予合金鋼粉100質量部に対し、0.3〜1.0質量部とすることが好ましい。また、前記原料として上記焼結部材用粉末を用いる場合は、潤滑剤の量を、前記焼結部材用粉末100質量部に対し、0.3〜1.0質量部とすることが好ましい。
なお、成形に先立って、上記原料に対し、切削性改善用粉末を混合することができる。前記切削性改善用粉末としては、例えば、MnSなどを用いることができる。前記切削性改善用粉末の量は、前記原料100質量部に対し0.1〜0.7質量部とすることが好ましい。
上記原料に対し、必要に応じて上記副原料、潤滑剤、および切削性改善用粉末からなる群より選択される1または2以上を添加混合した後、さらに所望の形状に圧縮成形して圧粉体(成形体)とする。前記圧縮成形は、特に限定されることなく、上記粉末を成型できる方法であれば任意の方法で行うことができる。一般的な成形方法としては、粉末を金型内に充填し、圧縮成形する方法が挙げられる。
次いで、得られた圧粉体を焼結する。前記焼結は、特に限定されることなく、一般的な粉末冶金における焼結方法に準じ、任意の条件で行うことができる。しかし、焼結温度が1100℃に満たないと焼結が十分に進行しない場合がある。そのため、焼結温度を1100℃以上とすることが好ましく、1120℃以上とすることがより好ましい。一方、焼結温度が高いほど焼結体中におけるCu分布が均一となるため、焼結温度の上限は特に限定されない。しかし、過度に焼結温度を高くすると製造コストが増大する。そのため、焼結温度は1250℃以下とすることが好ましく、1180℃以下とすることがより好ましい。本発明の焼結部材用予合金鋼粉では、従来の粉末と異なり、Cu、MoおよびVの三者を予合金化しているため、上記焼結温度でもCu分布を均一とすることができ、その結果、焼結体の強度を効果的に向上させることができる。
なお、上記焼結前に、潤滑剤を分解除去するために、400〜700℃の温度範囲で一定時間保持する脱脂工程を追加してもよい。
上記した以外の焼結部材の製造条件や設備、その方法等は、特に限定されず、例えば、公知のものを適用することができる。ただし、焼結後に鍛造処理を行う焼結鍛造部材は除く。
(実施例1)
・焼結部材用予合金鋼粉の製造
以下の手順で焼結部材用予合金鋼粉を製造した。まず、表1に示す含有量でCu、MoおよびVのうち、1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の溶鋼を調整した。前記溶鋼を水アトマイズして、水アトマイズ粉を作製した。前記水アトマイズ粉に不純物として含まれるSi、Mn、P、S、およびCrの量は、いずれの条件においてもSi≦0.05質量%、Mn≦0.15質量%、P≦0.025質量%、S≦0.025質量%、およびCr≦0.03質量%であった。
・焼結部材用予合金鋼粉の製造
以下の手順で焼結部材用予合金鋼粉を製造した。まず、表1に示す含有量でCu、MoおよびVのうち、1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の溶鋼を調整した。前記溶鋼を水アトマイズして、水アトマイズ粉を作製した。前記水アトマイズ粉に不純物として含まれるSi、Mn、P、S、およびCrの量は、いずれの条件においてもSi≦0.05質量%、Mn≦0.15質量%、P≦0.025質量%、S≦0.025質量%、およびCr≦0.03質量%であった。
次に、得られた水アトマイズ粉に還元熱処理を施した。前記還元熱処理は、水素雰囲気中、温度:920℃で、30分間行った。前記還元熱処理を施された粉末はケーキ状に固化した熱処理体となっているため、該熱処理体を、ハンマーミルを用いて粉砕し、次いで分級した。前記分級では、目開きが180μmの篩を使用し、篩下を焼結部材用予合金鋼粉とした。前記粉砕後の焼結部材用予合金鋼粉に不純物として含まれるC、O、およびNの量は、いずれの条件においても、C:0.01質量%以下、O:0.15質量%以下、N:0.01質量%以下であった。なお、最終的に得られた焼結部材用予合金鋼粉におけるCu、MoおよびV含有量は、上記溶鋼における含有量に等しい。
・焼結部材の製造
得られた予合金鋼粉:100質量部に対して、黒鉛粉:0.8質量部、潤滑剤(ステアリン酸亜鉛):0.6質量部を添加し、ダブルコーン型混合機を用いて混合して混合粉を得た。前記混合粉を、10mm×10mm×55mmの直方体形状に、所定の圧力で、圧縮成形して圧粉体とした。前記圧粉体の密度(圧縮密度)を表1に併記する。
得られた予合金鋼粉:100質量部に対して、黒鉛粉:0.8質量部、潤滑剤(ステアリン酸亜鉛):0.6質量部を添加し、ダブルコーン型混合機を用いて混合して混合粉を得た。前記混合粉を、10mm×10mm×55mmの直方体形状に、所定の圧力で、圧縮成形して圧粉体とした。前記圧粉体の密度(圧縮密度)を表1に併記する。
次いで、前記圧粉体を、10%H2−90%N2雰囲気で、焼結温度:1130℃で20分間焼結し、焼結体(焼結部材)とした。得られた焼結体から、長さ:50mm×直径:3mmの引張試験片を切り出して、引張強さを測定した。測定結果は表1に示したとおりであった。
なお、比較のために、MoとVを予合金化し、Cuを別途添加した粉末(No.10、11)と、CuとVを予合金化し、Moを別途添加した粉末(No.12、13)を用いて同様の試験を行った。具体的には、以下の通りとした。
比較例No.10では、MoとVを合金元素として含む予合金鋼粉の表面に、Cu粉を拡散付着させた合金鋼粉を使用した。比較例No.12では、CuとVを合金元素として含む予合金鋼粉の表面に、Mo粉を拡散付着させた合金鋼粉を使用した。比較例No.11では、MoとVを合金元素として含む予合金鋼粉に、Cu粉を混合した混合粉を使用した。比較例No.13では、CuとVを合金元素として含む予合金鋼粉に、Mo粉を混合した混合粉を使用した。なお、これらの比較例においても、最終的に得られた粉末におけるCu、MoおよびV含有量は表1に示したとおりとした。また、前記比較例におけるCu粉およびMo粉の拡散付着方法および混合方法は、後述する実施例2、3における拡散付着方法および混合方法と同様とした。
表1の結果から分かるように、本発明の条件を満たす予合金鋼粉を用いた発明例の焼結体は、Cu量およびV量が同じでMoを含まない比較例No.1および2に比べて引張強さに優れていた。また、本発明の条件を満たす予合金鋼粉を用いた発明例の焼結体は、Mo量およびV量が同じでCuを含まない比較例No.3に比べても引張強さに優れていた。さらに、Cu量およびMo量が同じでVを含まない比較例No.4に比べても引張強さに優れていた。
また、本発明の条件を満たす、Cu、MoおよびVを予合金化した鋼粉を用いた発明例の焼結体は、比較例No.10〜13に比べて、Cu量、Mo量およびV量が同じであるにもかかわらず、引張強さに優れていた。
(実施例2)
・焼結部材用粉末の製造
実施例1で作製した発明例No.6の予合金鋼粉に、Cu粉およびMo粉の一方または両方である金属粉を混合することにより、焼結部材用粉末を製造した。前記焼結部材用粉末の全質量に対する前記金属粉の質量の割合は、表2に示す通りとした。使用した金属粉の平均粒径は、Cu粉:45μm以下、Mo粉:25μm以下とした。
・焼結部材用粉末の製造
実施例1で作製した発明例No.6の予合金鋼粉に、Cu粉およびMo粉の一方または両方である金属粉を混合することにより、焼結部材用粉末を製造した。前記焼結部材用粉末の全質量に対する前記金属粉の質量の割合は、表2に示す通りとした。使用した金属粉の平均粒径は、Cu粉:45μm以下、Mo粉:25μm以下とした。
・焼結部材の製造
得られた焼結部材用粉末100質量部に対し、黒鉛粉:0.8質量部、潤滑剤(ステアリン酸亜鉛):0.6質量部を添加し、ダブルコーン型混合機を用いて混合して混合粉を得た。前記混合粉を、10mm×10mm×55mmの直方体形状に、所定の圧力で、圧縮成形して圧粉体とした。前記圧粉体の密度(圧縮密度)を表2に併記する。
得られた焼結部材用粉末100質量部に対し、黒鉛粉:0.8質量部、潤滑剤(ステアリン酸亜鉛):0.6質量部を添加し、ダブルコーン型混合機を用いて混合して混合粉を得た。前記混合粉を、10mm×10mm×55mmの直方体形状に、所定の圧力で、圧縮成形して圧粉体とした。前記圧粉体の密度(圧縮密度)を表2に併記する。
次いで、前記圧粉体を、10%H2−90%N2雰囲気で、焼結温度:1130℃で20分間焼結し、焼結体(焼結部材)とした。得られた焼結体から、長さ:50mm×直径:3mmの引張試験片を切り出して、引張強さを測定した。測定結果は表2に示したとおりであった。
表2に示した結果から分かるように、本発明の条件を満たす焼結部材用粉末は、いずれも、元の予合金鋼粉よりもさらに高い圧粉密度を示し、また、その焼結材の引張強さも元の予合金鋼粉の場合と比べて一段と高かった。
Claims (3)
- Cu:0.5〜5.0質量%、Mo:0.1〜0.5質量%、およびV:0.05〜0.5質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる焼結部材用予合金鋼粉。
- 請求項1に記載の焼結部材用予合金鋼粉と、金属粉とからなる焼結部材用粉末であって、
前記金属粉が、前記焼結部材用粉末の全質量に対する割合で、4質量%以下のCu粉と4質量%以下のMo粉の一方または両方である、焼結部材用粉末。 - 請求項1に記載の焼結部材予合金鋼粉および請求項2に記載の焼結部材用粉末の少なくとも一方を原料として含む焼結部材。
Priority Applications (1)
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JP2019023697A JP2020132902A (ja) | 2019-02-13 | 2019-02-13 | 焼結部材用予合金鋼粉、焼結部材用粉末、および焼結部材 |
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2019
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