JP2020121962A - タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法 - Google Patents

タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020121962A
JP2020121962A JP2019016332A JP2019016332A JP2020121962A JP 2020121962 A JP2020121962 A JP 2020121962A JP 2019016332 A JP2019016332 A JP 2019016332A JP 2019016332 A JP2019016332 A JP 2019016332A JP 2020121962 A JP2020121962 A JP 2020121962A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
seq
silk fibroin
spider silk
acid sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019016332A
Other languages
English (en)
Inventor
雲翔 張
Yunxiang Zhang
雲翔 張
原田 諭
Satoshi Harada
諭 原田
浩一 小鷹
Koichi KOTAKA
浩一 小鷹
俊次郎 永井
Shunjiro Nagai
俊次郎 永井
賢二 山崎
Kenji Yamazaki
賢二 山崎
かおり 八尾坂
Kaori Yaosaka
かおり 八尾坂
正隆 藤井
Masataka Fujii
正隆 藤井
ヴィジャーヤ ラクシミ マンチナセティ ナガ
Vijaya Lakshmi Manchinasetty Naga
ヴィジャーヤ ラクシミ マンチナセティ ナガ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Spiber Inc
Original Assignee
Spiber Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Spiber Inc filed Critical Spiber Inc
Priority to JP2019016332A priority Critical patent/JP2020121962A/ja
Publication of JP2020121962A publication Critical patent/JP2020121962A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】伸度が向上したタンパク質フィルム及びその製造方法を提供すること。【解決手段】クモ糸フィブロインと、多価アルコールと、を含む、タンパク質フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法に関する。
環境保全意識の高まりから、石油由来の材料の代替物質の検討が進められており、強度などの点で優れる構造タンパク質がその候補として挙げられる。例えば、構造タンパク質からなるキャストフィルム等の成形体が提案されており、例えば、特許文献1には、結晶化度が25〜50%の範囲内であり、可塑剤を2〜30重量%の範囲内で含む絹フィブロインフィルムが開示されている。
国際公開第2005/103158号
優れた伸度を有するタンパク質フィルムは、果物カバー等の被覆材、医療用フィルム等の用途への応用が期待できる。しかしながら、従来のタンパク質フィルムでは、伸度の点で改善の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、伸度が向上したタンパク質フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[1]
クモ糸フィブロインと、多価アルコールとを含む、タンパク質フィルム。
[2]
多価アルコールが、グリセリンである、[1]に記載のタンパク質フィルム。
[3]
多価アルコールの含有量が、タンパク質フィルムの全質量を基準として、5〜40質量%である、[1]又は[2]に記載のタンパク質フィルム。
[4]
クモ糸フィブロインを含む、タンパク質フィルムであって、タンパク質フィルムの破断点変位が300%以上である、タンパク質フィルム。
[5]
タンパク質フィルムのひずみエネルギーが、25mJ以上である、[4]に記載のタンパク質フィルム。
[6]
タンパク質フィルムのタフネスが、タフネスが、20MJ/m以上である、[4]又は[5]に記載のタンパク質フィルム。
[7]
クモ糸フィブロインが、改変クモ糸フィブロインである、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のタンパク質フィルム。
[8]
クモ糸フィブロイン及び多価アルコールを含むドープ液を用いて、タンパク質フィルムを成形する工程を備える、タンパク質フィルムの製造方法。
[9]
多価アルコールがグリセリンである、[8]に記載のタンパク質フィルムの製造方法。
[10]
クモ糸フィブロインと多価アルコールとを含むタンパク質フィルムに対して、メタノール処理を行う工程を備える、タンパク質フィルムのタフネスをコントロールする方法。
本発明によれば、伸度が向上したタンパク質フィルム及びその製造方法が提供される。本発明に係るタンパク質フィルムは、応力を維持しつつ、伸度が向上しているため、タフネスも向上している。
クモ糸フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 クモ糸フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 クモ糸フィブロインのドメイン配列の一例を示す模式図である。 タンパク質フィルムの構造解析結果を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
〔タンパク質フィルム〕
第一の実施形態に係るタンパク質フィルムは、クモ糸フィブロインと、多価アルコールと、を含む。多価アルコールは、当該タンパク質フィルムの内部に含まれているものである。多価アルコールは、タンパク質フィルムの内部に分散して含まれていてよい。多価アルコールはタンパク質フィルムの内部に均一に分散していてよい。
第一の実施形態に係るタンパク質フィルムは、クモ糸フィブロインと、多価アルコールとを含むため、伸度が顕著に向上している。第一の実施形態に係るタンパク質フィルムは、応力を維持しつつ、伸度が向上しているため、タフネスも向上している。
第二の実施形態に係るタンパク質フィルムは、クモ糸フィブロインを含む、タンパク質フィルムであって、タンパク質フィルムの破断点変位が300%以上である。第二の実施形態に係るタンパク質フィルムは、優れた伸度を有している。第二の実施形態に係るタンパク質フィルムは、多価アルコールを含んでいてよい。第二の実施形態に係るタンパク質フィルムは、タンパク質フィルムの破断点変位が300%以上であることに加えて、後述するひずみエネルギーが、25mJ以上であってよい。
第三の実施形態の実施形態に係るタンパク質フィルムは、クモ糸フィブロインを含む、タンパク質フィルムであって、タンパク質フィルムのひずみエネルギーが、25mJ以上である。第三の実施形態に係るタンパク質フィルムは、優れた伸度を有している。第三の実施形態に係るタンパク質フィルムは、優れた伸度を有していることに加えて、タフネスにも優れている。第三の実施形態に係るタンパク質フィルムは、多価アルコールを含んでいてよい。第三の実施形態に係るタンパク質フィルムは、タンパク質フィルムのひずみエネルギーが、25mJ以上であることに加えて、タンパク質フィルムの破断点変位が300%以上であってよい。
本実施形態に係るタンパク質フィルムは、タンパク質であるクモ糸フィブロインを原料としていることから、生分解性も有している。本実施形態に係るタンパク質フィルムは、優れた伸度を有しているため、果物カバー等の被覆材、医療用フィルム等の用途に好適に用いることができる。
本実施形態に係るタンパク質フィルムの破断点変位は、300%以上、350%以上、400%以上、450%以上、500%以上、又は520%以上であることが好ましい。本実施形態に係るタンパク質フィルムの破断点変位は、例えば、700%以下、600%以下、又は550%以下であってよい。未延伸フィルムであるタンパク質フィルムの破断点変位が上記範囲内であってよい。
本実施形態に係るタンパク質フィルムひずみエネルギーは、25mJ以上、30mJ以上、35mJ以上、又は40mJ以上であることが好ましい。本実施形態に係るタンパク質フィルムのひずみエネルギーは、例えば、60mJ以下、又は55mJ以下であってよい。未延伸フィルムであるタンパク質フィルムのひずみエネルギーが上記範囲内であってよい。
本実施形態に係るタンパク質フィルムの最大点応力は、例えば、10MPa以上、又は15MPa以上であってよく、100MPa以下であってよい。
タンパク質フィルムのタフネスは、25MJ/m以上、30MJ/m以上、35MJ/m以上、又は40MJ/m以上であることが好ましい。本実施形態に係るタンパク質フィルムのタフネスは、例えば、60MJ/m以下、又は55MJ/m以下あってよい。未延伸フィルムであるタンパク質フィルムのタフネスが上記範囲内であってよい。
タンパク質フィルムの破断点変位、最大点応力、ひずみエネルギー及びタフネスは、後述する実施例に記載の引張試験により求めることができる。具体的には、まず、ダンベル形状に切り出したタンパク質フィルムを、試験片として、引張試験により25℃、相対湿度60%の条件で測定される破断点変位である。引張試験は、測定長(つかみ具間)は8mm、測定幅2mm、両つかみ部位長は7mm、両つかみ部幅5mmの条件で行うことができる。厚測定は8mmの部分をN=1で測定した。引張試験機はインストロン3345を用い、ロードセルを10Nで使用し、引張速度は10mm/minで行うことができる。測定数は1水準につき最低3回行い、平均値を用いる。
タンパク質フィルムの厚みは、タンパク質フィルムの用途に応じて、適宜設定してよい。例えば、タンパク質フィルムの厚みは、伸度のばらつきが抑制されやすくなる観点から、1〜1000μmであってよく、10〜300μmであってよく、10〜100μmであってよく、30〜100μmであってよく、50〜200μmであってよく、30〜70μmであることが好ましい。タンパク質フィルムの厚みは、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。タンパク質フィルムの厚みは、ドープ液に用いる溶媒の選択等により調整することができる。例えば、ドープ溶媒に水を用いる場合、厚み30〜100μmのタンパク質フィルムが得られやすくなる傾向があり、ドープ溶媒に有機溶媒を用いる場合、厚み50〜200μmのタンパク質フィルムが得られやすくなる傾向がある。
タンパク質フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムは、1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルムであってよい。
タンパク質フィルムは、メタノール処理がなされていてもよく、メタノール処理がなされていなくてもよい。伸度及びタフネスの観点からは、メタノール処理がなされていないことが好ましく、応力の観点からは、メタノール処理がなされていることが好ましい。メタノール処理は、タンパク質フィルムと、メタノールとを接触させることにより実施することができる。メタノール処理は、メタノールと接触させた後に、メタノールを乾燥させることを含んでいてよい。例えば、メタノール処理は、タンパク質フィルムを室温(20〜30℃)でメタノール中に浸漬させ、その後、室温(20〜30℃)で乾燥させることにより実施してよい。タンパク質フィルムと、メタノールとを接触させる時間は、例えば、1〜10分間であってよい。メタノールとしては、和光純薬 試薬特級99.5%メタノールを用いることができる。
<クモ糸フィブロイン>
本実施形態に係るクモ糸フィブロインは、天然由来のクモ糸フィブロインであってもよく、改変クモ糸フィブロインであってもよい。改変クモ糸フィブロインは、遺伝子組換え技術により微生物等で製造したフィブロインであってもよく、合成により製造されたフィブロインであってもよい。
本明細書において「改変クモ糸フィブロイン」とは、天然由来のクモ糸フィブロインとは異なるアミノ酸配列を有するクモ糸フィブロインを意味し、本明細書において「天然由来のクモ糸フィブロイン」とは、天然由来のクモ糸フィブロインと同一のアミノ酸配列を有するクモ糸フィブロインを意味する。
天然由来のクモ糸フィブロインとしては、例えば、大吐糸管しおり糸タンパク質、横糸タンパク質、及び小瓶状腺タンパク質等のクモ類が産生するクモ糸フィブロインが挙げられる。大吐糸管しおり糸は、結晶領域と非晶領域(無定形領域とも言う。)からなる繰り返し領域を持つため、高い応力と伸縮性を併せ持つ。クモ糸の横糸は、結晶領域を持たず、非晶領域からなる繰り返し領域を持つという特徴を有する。横糸は、大吐糸管しおり糸に比べると応力は劣るが、高い伸縮性を持つ。
大吐糸管しおり糸タンパク質は、クモの大瓶状腺で産生され、強靭性に優れるという特徴を有する。大吐糸管しおり糸タンパク質としては、例えば、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する大瓶状腺スピドロインMaSp1及びMaSp2、並びに二ワオニグモ(Araneus diadematus)に由来するADF3及びADF4が挙げられる。ADF3は、ニワオニグモの2つの主要なしおり糸タンパク質の一つである。ADF3に由来するクモ糸タンパク質は、比較的合成し易く、また、強伸度及びタフネスの点で優れた特性を有する。
横糸タンパク質は、クモの鞭毛状腺(flagelliform gland)で産生される。横糸タンパク質としては、例えばアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する鞭毛状絹タンパク質(flagelliform silk protein)が挙げられる。
クモ類が産生するクモ糸フィブロインの更なる例として、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。
クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質のより具体的な例としては、例えば、fibroin−3(adf−3)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47010(アミノ酸配列)、U47855(塩基配列))、fibroin−4(adf−4)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47011(アミノ酸配列)、U47856(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 1[Nephila clavipes由来](GenBankアクセッション番号AAC04504(アミノ酸配列)、U37520(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Latrodectus hesperus由来](GenBankアクセッション番号ABR68856(アミノ酸配列)、EF595246(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 2[Nephila clavata由来](GenBankアクセッション番号AAL32472(アミノ酸配列)、AF441245(塩基配列))、major ampullate spidroin 1[Euprosthenops australis由来](GenBankアクセッション番号CAJ00428(アミノ酸配列)、AJ973155(塩基配列))、及びmajor ampullate spidroin 2[Euprosthenops australis](GenBankアクセッション番号CAM32249.1(アミノ酸配列)、AM490169(塩基配列))、minor ampullate silk protein 1[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14589.1(アミノ酸配列))、minor ampullate silk protein 2[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14591.1(アミノ酸配列))、minor ampullate spidroin−like protein[Nephilengys cruentata](GenBankアクセッション番号ABR37278.1(アミノ酸配列)等が挙げられる。
本実施形態に係る改変クモ糸フィブロインは、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質であってもよい。本実施形態に係る改変クモ糸フィブロインは、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、フィブロインに特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
本明細書において「ドメイン配列」とは、フィブロイン特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、アミノ酸残基数は2〜27である。(A)モチーフのアミノ酸残基数は、2〜20、4〜27、4〜20、8〜20、10〜20、4〜16、8〜16、又は10〜16であってもよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2〜300の整数を示し、10〜300の整数であってもよい。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
改変クモ糸フィブロインは、例えば、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列に依拠してそのアミノ酸配列を改変したもの(例えば、クローニングした天然由来のクモ糸フィブロインの遺伝子配列を改変することによりアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、また天然由来のクモ糸フィブロインに依らず人工的に設計及び合成したもの(例えば、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより所望のアミノ酸配列を有するもの)であってもよい。
改変クモ糸フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のクモ糸フィブロインの遺伝子配列に対し、例えば、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行うことで得ることができる。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
改変クモ糸フィブロインの具体的な例として、クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変クモ糸フィブロイン(第1の改変クモ糸フィブロイン)、グリシン残基の含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第2の改変クモ糸フィブロイン)、(A)モチーフの含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第3の改変クモ糸フィブロイン)、グリシン残基の含有量、及び(A)モチーフの含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第4の改変クモ糸フィブロイン)、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有する改変クモ糸フィブロイン(第5の改変クモ糸フィブロイン)、及びグルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変クモ糸フィブロイン(第6の改変クモ糸フィブロイン)が挙げられる。
クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質に由来する改変クモ糸フィブロイン(第1の改変クモ糸フィブロイン)としては、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。第1の改変クモ糸フィブロインは、式1中、nは3〜20の整数が好ましく、4〜20の整数がより好ましく、8〜20の整数が更に好ましく、10〜20の整数が更により好ましく、4〜16の整数が更によりまた好ましく、8〜16の整数が特に好ましく、10〜16の整数が最も好ましい。第1の改変クモ糸フィブロインは、式1中、REPを構成するアミノ酸残基の数は、10〜200残基であることが好ましく、10〜150残基であることがより好ましく、20〜100残基であることが更に好ましく、20〜75残基であることが更により好ましい。第1の改変クモ糸フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列中に含まれるグリシン残基、セリン残基及びアラニン残基の合計残基数がアミノ酸残基数全体に対して、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
第1の改変クモ糸フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるアミノ酸配列の単位を含み、かつC末端配列が配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列、又は配列番号1〜3のいずれかに示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列である、タンパク質であってもよい。
配列番号1に示されるアミノ酸配列は、ADF3(GI:1263287、NCBI)のアミノ酸配列のC末端の50残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列と同一であり、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から20残基取り除いたアミノ酸配列と同一であり、配列番号3に示されるアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端から29残基取り除いたアミノ酸配列と同一である。
第1の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(1−i)配列番号4で示されるアミノ酸配列、又は(1−ii)配列番号4で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
配列番号4で示されるアミノ酸配列は、N末端に開始コドン、His10タグ及びHRV3Cプロテアーゼ(Human rhinovirus 3Cプロテアーゼ)認識サイトからなるアミノ酸配列(配列番号5)を付加したADF3のアミノ酸配列において、第1〜13番目の反復領域をおよそ2倍になるように増やすとともに、翻訳が第1154番目アミノ酸残基で終止するように変異させたものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列のC末端のアミノ酸配列は、配列番号3で示されるアミノ酸配列と同一である。
(1−i)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
グリシン残基の含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第2の改変クモ糸フィブロイン)は、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。第2の改変クモ糸フィブロインは、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第2の改変クモ糸フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、REP中のGGX及びGPGXX(但し、Gはグリシン残基、Pはプロリン残基、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)から選ばれる少なくとも一つのモチーフ配列において、少なくとも1又は複数の当該モチーフ配列中の1つのグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第2の改変クモ糸フィブロインは、上述のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上であってもよい。
第2の改変クモ糸フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の全REPに含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列中の総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが30%以上、40%以上、50%以上又は50.9%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であってよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
第2の改変クモ糸フィブロインは、GGXモチーフの1つのグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換することにより、XGXからなるアミノ酸配列の含有割合を高めたものであることが好ましい。第2の改変フィブロインは、ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、6%以下であることが更により好ましく、4%以下であることが更によりまた好ましく、2%以下であることが特に好ましい。ドメイン配列中のGGXからなるアミノ酸配列の含有割合は、下記XGXからなるアミノ酸配列の含有割合(z/w)の算出方法と同様の方法で算出することができる。
z/wの算出方法を更に詳細に説明する。まず、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むクモ糸フィブロイン(改変クモ糸フィブロイン)において、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる全てのREPから、XGXからなるアミノ酸配列を抽出する。XGXを構成するアミノ酸残基の総数がzである。例えば、XGXからなるアミノ酸配列が50個抽出された場合(重複はなし)、zは50×3=150である。また、例えば、XGXGXからなるアミノ酸配列の場合のように2つのXGXに含まれるX(中央のX)が存在する場合は、重複分を控除して計算する(XGXGXの場合は5アミノ酸残基である)。wは、ドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列に含まれる総アミノ酸残基数である。例えば、図1に示したドメイン配列の場合、wは4+50+4+100+4+10+4+20+4+30=230である(最もC末端側に位置する(A)モチーフは除いている。)。次に、zをwで除すことによって、z/w(%)を算出することができる。
第2の改変クモ糸フィブロインにおいて、z/wは、50.9%以上であることが好ましく、56.1%以上であることがより好ましく、58.7%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、80%以上であることが更によりまた好ましい。z/wの上限に特に制限はないが、例えば、95%以下であってもよい。
第2の改変クモ糸フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のクモ糸フィブロインの遺伝子配列から、グリシン残基をコードする塩基配列の少なくとも一部を置換して別のアミノ酸残基をコードするように改変することにより得ることができる。このとき、改変するグリシン残基として、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフにおける1つのグリシン残基を選択してもよいし、またz/wが50.9%以上になるように置換してもよい。また、例えば、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列から上記態様を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列からREP中のグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
上記の別のアミノ酸残基としては、グリシン残基以外のアミノ酸残基であれば特に制限はないが、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基、メチオニン(M)残基、プロリン(P)残基、フェニルアラニン(F)残基及びトリプトファン(W)残基等の疎水性アミノ酸残基、グルタミン(Q)残基、アスパラギン(N)残基、セリン(S)残基、リシン(K)残基及びグルタミン酸(E)残基等の親水性アミノ酸残基が好ましく、バリン(V)残基、ロイシン(L)残基、イソロイシン(I)残基及びグルタミン(Q)残基がより好ましく、グルタミン(Q)残基が更に好ましい。
第2の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(2−i)配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列、又は(2−ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。
(2−i)の改変クモ糸フィブロインについて説明する。配列番号6で示されるアミノ酸配列は、天然由来のクモ糸フィブロインに相当する配列番号10で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、配列番号6で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号8で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号7の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号9で示されるアミノ酸配列は、配列番号11で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にHisタグが付加されたものである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然由来のクモ糸フィブロインに相当)におけるz/wの値は、46.8%である。配列番号6で示されるアミノ酸配列、配列番号7で示されるアミノ酸配列、配列番号8で示されるアミノ酸配列、及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ58.7%、70.1%、66.1%及び70.0%である。また、配列番号10、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のギザ比率(後述する)1:1.8〜11.3におけるx/yの値は、それぞれ15.0%、15.0%、93.4%、92.7%及び89.3%である。
(2−i)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−ii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−ii)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(2−ii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であることが好ましい。
第2の改変クモ糸フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変クモ糸フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列として、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例として、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)による改変フィブロインの単離に利用することができる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号12で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含むアミノ酸配列)が挙げられる。
また、グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列を利用することもできる。
さらに、抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグとして、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、FLAGタグ等を挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易に改変クモ糸フィブロインを精製することができる。
さらにタグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せるようにしたものも使用することができる。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離した改変クモ糸フィブロインを回収することもできる。
タグ配列を含む第2の改変フィブロインのより具体的な例として、(2−iii)配列番号13、配列番号11、配列番号14若しく配列番号15で示されるアミノ酸配列、又は(2−iv)配列番号13、配列番号11、配列番号14若しく配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。
配列番号16、配列番号17、配列番号13、配列番号11、配列番号14及び配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10、配列番号18、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号12で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(2−iii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号13、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(2−iv)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号13、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(2−iv)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(2−iv)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号13、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつREP中に含まれるXGX(但し、Xはグリシン以外のアミノ酸残基を示す。)からなるアミノ酸配列の総アミノ酸残基数をzとし、上記ドメイン配列中のREPの総アミノ酸残基数をwとしたときに、z/wが50.9%以上であることが好ましい。
第2の改変クモ糸フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
(A)モチーフの含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第3の改変クモ糸フィブロイン)は、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。第3の改変フィブロインのドメイン配列は、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。
第3の改変クモ糸フィブロインは、天然由来のクモ糸フィブロインから(A)モチーフを10〜40%欠失させたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変クモ糸フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって1〜3つの(A)モチーフ毎に1つの(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変クモ糸フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つ連続した(A)モチーフの欠失、及び1つの(A)モチーフの欠失がこの順に繰り返されたことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変クモ糸フィブロインは、そのドメイン配列が、少なくともN末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。
第3の改変クモ糸フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが20%以上、30%以上、40%以上又は50%以上であるアミノ酸配列を有するものであってもよい。(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は83%以上であってよいが、86%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であること(アラニン残基のみで構成されることを意味する)が更により好ましい。
x/yの算出方法を図1を参照しながら更に詳細に説明する。図1には、クモ糸フィブロインからN末端配列及びC末端配列を除いたドメイン配列を示す。当該ドメイン配列は、N末端側(左側)から(A)モチーフ−第1のREP(50アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第2のREP(100アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第3のREP(10アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第4のREP(20アミノ酸残基)−(A)モチーフ−第5のREP(30アミノ酸残基)−(A)モチーフという配列を有する。
隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットは、重複がないように、N末端側からC末端側に向かって、順次選択する。このとき、選択されない[(A)モチーフ−REP]ユニットが存在してもよい。図1には、パターン1(第1のREPと第2のREPの比較、及び第3のREPと第4のREPの比較)、パターン2(第1のREPと第2のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン3(第2のREPと第3のREPの比較、及び第4のREPと第5のREPの比較)、パターン4(第1のREPと第2のREPの比較)を示した。なお、これ以外にも選択方法は存在する。
次に各パターンについて、選択した隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニット中の各REPのアミノ酸残基数を比較する。比較は、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときの、他方のアミノ酸残基数の比を求めることによって行う。例えば、第1のREP(50アミノ酸残基)と第2のREP(100アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第1のREPを1としたとき、第2のREPのアミノ酸残基数の比は、100/50=2である。同様に、第4のREP(20アミノ酸残基)と第5のREP(30アミノ酸残基)の比較の場合、よりアミノ酸残基数の少ない第4のREPを1としたとき、第5のREPのアミノ酸残基数の比は、30/20=1.5である。
図1中、よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組を実線で示した。以下このような比をギザ比率と呼ぶ。よりアミノ酸残基数の少ない方を1としたときに、他方のアミノ酸残基数の比が1.8未満又は11.3超となる[(A)モチーフ−REP]ユニットの組は破線で示した。
各パターンにおいて、実線で示した隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットの全てのアミノ酸残基数を足し合わせる(REPのみではなく、(A)モチーフのアミノ酸残基数もである。)。そして、足し合わせた合計値を比較して、当該合計値が最大となるパターンの合計値(合計値の最大値)をxとする。図1に示した例では、パターン1の合計値が最大である。
次に、xをドメイン配列の総アミノ酸残基数yで除すことによって、x/y(%)を算出することができる。
第3の改変クモ糸フィブロインにおいて、x/yは、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、75%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/yの上限に特に制限はなく、例えば、100%以下であってよい。ギザ比率が1:1.9〜11.3の場合には、x/yは89.6%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.8〜3.4の場合には、x/yは77.1%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜8.4の場合には、x/yは75.9%以上であることが好ましく、ギザ比率が1:1.9〜4.1の場合には、x/yは64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変クモ糸フィブロインが、ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフの少なくとも7つがアラニン残基のみで構成される改変クモ糸フィブロインである場合、x/yは、46.4%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが更により好ましく、70%以上であることが更によりまた好ましく、80%以上であることが特に好ましい。x/yの上限に特に制限はなく、100%以下であればよい。
第3の改変クモ糸フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のクモ糸フィブロインの遺伝子配列から、x/yが64.2%以上になるように(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。また、例えば、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列から、x/yが64.2%以上になるように1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第3の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(3−i)配列番号18、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列、又は(3−ii)配列番号18、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変フィブロインを挙げることができる。
(3−i)の改変クモ糸フィブロインについて説明する。配列番号18で示されるアミノ酸配列は、天然由来のクモ糸フィブロインに相当する配列番号10で示されるアミノ酸配列から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、配列番号18で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号8で示されるアミノ酸配列は、配列番号7で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号7の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号9で示されるアミノ酸配列は、配列番号11で示されるアミノ酸配列中に存在する20個のドメイン配列の領域(但し、当該領域のC末端側の数アミノ酸残基が置換されている。)を4回繰り返した配列のC末端にHisタグが付加されたものである。
配列番号10で示されるアミノ酸配列(天然由来のクモ糸フィブロインに相当)のギザ比率1:1.8〜11.3におけるx/yの値は15.0%である。配列番号18で示されるアミノ酸配列、及び配列番号7で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、いずれも93.4%である。配列番号8で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、92.7%である。配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるx/yの値は、89.3%である。配列番号10、配列番号18、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列におけるz/wの値は、それぞれ46.8%、56.2%、70.1%、66.1%及び70.0%である。
(3−i)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号18、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−ii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号18、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−ii)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(3−ii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号18、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3(ギザ比率が1:1.8〜11.3)となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変クモ糸フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方に上述したタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む第3の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(3−iii)配列番号17、配列番号11、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列、又は(3−iv)配列番号17、配列番号11、配列番号14若しくは配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。
配列番号16、配列番号17、配列番号13、配列番号11、配列番号14及び配列番号15で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号10、配列番号18、配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号12で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(3−iii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号17、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(3−iv)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号17、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(3−iv)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(3−iv)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号17、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつN末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8〜11.3となる隣合う2つの[(A)モチーフ−REP]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが64.2%以上であることが好ましい。
第3の改変クモ糸フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
グリシン残基の含有量、及び(A)モチーフの含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第4の改変クモ糸フィブロイン)は、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、(A)モチーフの含有量が低減されたことに加え、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有するものである。第4の改変クモ糸フィブロインのドメイン配列は、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、少なくとも1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに加え、更に少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたことに相当するアミノ酸配列を有するものということができる。すなわち、第4の改変クモ糸フィブロインは、上述したグリシン残基の含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第2の改変クモ糸フィブロイン)と、(A)モチーフの含有量が低減された改変クモ糸フィブロイン(第3の改変クモ糸フィブロイン)の特徴を併せ持つ改変クモ糸フィブロインである。具体的な態様等は、第2の改変クモ糸フィブロイン、及び第3の改変クモ糸フィブロインで説明したとおりである。
第4の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(4−i)配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列、(4−ii)配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9で示されるアミノ酸配列を含む改変クモ糸フィブロインの具体的な態様は上述のとおりである。
局所的に疎水性指標の大きい領域を含むドメイン配列を有する改変クモ糸フィブロイン(第5の改変クモ糸フィブロイン)は、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列を有するものであってよい。
局所的に疎水性指標の大きい領域は、連続する2〜4アミノ酸残基で構成されていることが好ましい。
上述の疎水性指標の大きいアミノ酸残基は、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であることがより好ましい。
第5の改変フィブロインは、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変があってもよい。
第5の改変クモ糸フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のクモ糸フィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基を疎水性アミノ酸残基に置換したこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。
第5の改変フィブロインは、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含み、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を上記ドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフから上記ドメイン配列のC末端までの配列を上記ドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であるアミノ酸配列を有してもよい。
アミノ酸残基の疎水性指標については、公知の指標(Hydropathy index:Kyte J,&Doolittle R(1982)“A simple method for displaying the hydropathic character of a protein”,J.Mol.Biol.,157,pp.105−132)を使用する。具体的には、各アミノ酸の疎水性指標(ハイドロパシー・インデックス、以下「HI」とも記す。)は、下記表1に示すとおりである。
Figure 2020121962
p/qの算出方法を更に詳細に説明する。算出には、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列から、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列を除いた配列(以下、「配列A」とする)を用いる。まず、配列Aに含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値を算出する。疎水性指標の平均値は、連続する4アミノ酸残基に含まれる各アミノ酸残基のHIの総和を4(アミノ酸残基数)で除して求める。疎水性指標の平均値は、全ての連続する4アミノ酸残基について求める(各アミノ酸残基は、1〜4回平均値の算出に用いられる。)。次いで、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域を特定する。あるアミノ酸残基が、複数の「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」に該当する場合であっても、領域中には1アミノ酸残基として含まれることになる。そして、当該領域に含まれるアミノ酸残基の総数がpである。また、配列Aに含まれるアミノ酸残基の総数がqである。
例えば、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が20カ所抽出された場合(重複はなし)、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、連続する4アミノ酸残基(重複はなし)が20含まれることになり、pは20×4=80である。また、例えば、2つの「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が1アミノ酸残基だけ重複して存在する場合、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域には、7アミノ酸残基含まれることになる(p=2×4−1=7。「−1」は重複分の控除である。)。例えば、図2に示したドメイン配列の場合、「疎水性指標の平均値が2.6以上となる連続する4アミノ酸残基」が重複せずに7つ存在するため、pは7×4=28となる。また、例えば、図2に示したドメイン配列の場合、qは4+50+4+40+4+10+4+20+4+30=170である(C末端側の最後に存在する(A)モチーフは含めない)。次に、pをqで除すことによって、p/q(%)を算出することができる。図2の場合28/170=16.47%となる。
第5の改変クモ糸フィブロインにおいて、p/qは、6.2%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、20%以上であることが更により好ましく、30%以上であることが更によりまた好ましい。p/qの上限は、特に制限されないが、例えば、45%以下であってもよい。
第5の改変クモ糸フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列を、上記のp/qの条件を満たすように、REP中の1又は複数の親水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がマイナスであるアミノ酸残基)を疎水性アミノ酸残基(例えば、疎水性指標がプラスであるアミノ酸残基)に置換すること、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性アミノ酸残基を挿入することにより、局所的に疎水性指標の大きい領域を含むアミノ酸配列に改変することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列から上記のp/qの条件を満たすアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のアミノ酸残基が疎水性指標の大きいアミノ酸残基に置換されたこと、及び/又はREP中に1又は複数の疎水性指標の大きいアミノ酸残基が挿入されたことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当する改変を行ってもよい。
疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、特に制限はないが、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)が好ましく、バリン(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I)がより好ましい。
第5の改変クモ糸フィブロインの具体的な例として、(5−i)配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21で示されるアミノ酸配列、又は(5−ii)配列番号19、配列番号20若しくは配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。
(5−i)の改変クモ糸フィブロインについて説明する。配列番号22で示されるアミノ酸配列は、天然由来のクモ糸フィブロインの(A)モチーフ中のアラニン残基が連続するアミノ酸配列をアラニン残基が連続する数を5つになるよう欠失したものである。配列番号19で示されるアミノ酸配列は、配列番号22で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入し、かつ配列番号22で示されるアミノ酸配列の分子量とほぼ同じとなるようにC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号23で示されるアミノ酸配列は、配列番号22で示されるアミノ酸配列に対し、各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、かつ配列番号22で示されるアミノ酸配列の分子量とほぼ同じとなるようにC末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。配列番号20で示されるアミノ酸配列は、配列番号23で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を1カ所挿入したものである。配列番号21で示されるアミノ酸配列は、配列番号23で示されるアミノ酸配列に対し、REP一つ置きにそれぞれ3アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(VLI)を2カ所挿入したものである。
(5−i)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5−ii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5−ii)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(5−ii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であることが好ましい。
第5の改変クモ糸フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。
タグ配列を含む第5の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(5−iii)配列番号24、配列番号25若しくは配列番号26で示されるアミノ酸配列、又は(5−iv)配列番号24、配列番号25若しくは配列番号26で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。
配列番号24、配列番号25及び配列番号26で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号19、配列番号20及び配列番号21で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号12で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。
(5−iii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号24、配列番号25若しくは配列番号26で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(5−iv)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号24、配列番号25若しくは配列番号26で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(5−iv)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(5−iv)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号24、配列番号25若しくは配列番号26で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有し、かつ最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、連続する4アミノ酸残基の疎水性指標の平均値が2.6以上となる領域に含まれるアミノ酸残基の総数をpとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれるアミノ酸残基の総数をqとしたときに、p/qが6.2%以上であることが好ましい。
第5の改変クモ糸フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
グルタミン残基の含有量が低減されたドメイン配列を有する改変クモ糸フィブロイン(第6の改変クモ糸フィブロイン)は、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、グルタミン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する。
第6の改変クモ糸フィブロインは、REPのアミノ酸配列中に、GGXモチーフ及びGPGXXモチーフから選ばれる少なくとも一つのモチーフが含まれていることが好ましい。
第6の改変クモ糸フィブロインが、REP中にGPGXXモチーフを含む場合、GPGXXモチーフ含有率は、通常1%以上であり、5%以上であってもよく、10%以上であるのが好ましい。GPGXXモチーフ含有率の上限に特に制限はなく、50%以下であってよく、30%以下であってもよい。
本明細書において、「GPGXXモチーフ含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むクモ糸フィブロインにおいて、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるGPGXXモチーフの個数の総数を3倍した数(即ち、GPGXXモチーフ中のG及びPの総数に相当)をsとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、GPGXXモチーフ含有率はs/tとして算出される。
GPGXXモチーフ含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としているのは、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列」(REPに相当する配列)には、クモ糸フィブロインに特徴的な配列と相関性の低い配列が含まれることがあり、mが小さい場合(つまり、ドメイン配列が短い場合)、GPGXXモチーフ含有率の算出結果に影響するので、この影響を排除するためである。なお、REPのC末端に「GPGXXモチーフ」が位置する場合、「XX」が例えば「AA」の場合であっても、「GPGXXモチーフ」として扱う。
図3は、クモ糸フィブロインのドメイン配列を示す模式図である。図3を参照しながらGPGXXモチーフ含有率の算出方法を具体的に説明する。まず、図3に示したクモ糸フィブロインのドメイン配列(「[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフ」タイプである。)では、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図3中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、sを算出するためのGPGXXモチーフの個数は7であり、sは7×3=21となる。同様に、全てのREPが「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」(図3中、「領域A」で示した配列。)に含まれているため、当該配列から更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数tは50+40+10+20+30=150である。次に、sをtで除すことによって、s/t(%)を算出することができ、図3のフィブロインの場合21/150=14.0%となる。
第6の改変クモ糸フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、4%以下であることが更に好ましく、0%であることが特に好ましい。
本明細書において、「グルタミン残基含有率」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むクモ糸フィブロインにおいて、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図3の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域に含まれるグルタミン残基の総数をuとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、グルタミン残基含有率はu/tとして算出される。グルタミン残基含有率の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。
第6の改変クモ糸フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、又は他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を有するものであってよい。
「他のアミノ酸残基」は、グルタミン残基以外のアミノ酸残基であればよいが、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基であることが好ましい。アミノ酸残基の疎水性指標は表1に示すとおりである。
表1に示すとおり、グルタミン残基よりも疎水性指標の大きいアミノ酸残基としては、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)アラニン(A)、グリシン(G)、スレオニン(T)、セリン(S)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、プロリン(P)及びヒスチジン(H)から選ばれるアミノ酸残基を挙げることができる。これらの中でも、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、システイン(C)、メチオニン(M)及びアラニン(A)から選ばれるアミノ酸残基であることがより好ましく、イソロイシン(I)、バリン(V)、ロイシン(L)及びフェニルアラニン(F)から選ばれるアミノ酸残基であることが更に好ましい。
第6の改変クモ糸フィブロインは、REPの疎水性度が、−0.8以上であることが好ましく、−0.7以上であることがより好ましく、0以上であることが更に好ましく、0.3以上であることが更により好ましく、0.4以上であることが特に好ましい。REPの疎水性度の上限に特に制限はなく、1.0以下であってよく、0.7以下であってもよい。
本明細書において、「REPの疎水性度」は、以下の方法により算出される値である。
式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むクモ糸フィブロインにおいて、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列(図3の「領域A」に相当する配列。)に含まれる全てのREPにおいて、その領域の各アミノ酸残基の疎水性指標の総和をvとし、最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除き、更に(A)モチーフを除いた全REPのアミノ酸残基の総数をtとしたときに、REPの疎水性度はv/tとして算出される。REPの疎水性度の算出において、「最もC末端側に位置する(A)モチーフからドメイン配列のC末端までの配列をドメイン配列から除いた配列」を対象としている理由は、上述した理由と同様である。
第6の改変クモ糸フィブロインは、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸フィブロインと比較して、REP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変があってもよい。
第6の改変クモ糸フィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のクモ糸フィブロインの遺伝子配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失させること、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換することにより得ることができる。また、例えば、天然由来のクモ糸フィブロインのアミノ酸配列からREP中の1又は複数のグルタミン残基を欠失したこと、及び/又はREP中の1又は複数のグルタミン残基を他のアミノ酸残基に置換したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。
第6の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(6−i)配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33若しくは配列番号43で示されるアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロイン、又は(6−ii)配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33若しくは配列番号43で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。
(6−i)の改変クモ糸フィブロインについて説明する。
配列番号7で示されるアミノ酸配列(Met−PRT410)は、天然由来のフィブロインであるNephila clavipes(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、(A)モチーフ中のアラニン残基が連続するアミノ酸配列をアラニン残基が連続する数を5つにする等の生産性を向上させるためのアミノ酸の改変を行ったものである。一方、Met−PRT410は、グルタミン残基(Q)の改変は行っていないため、グルタミン残基含有率は、天然由来のフィブロインのグルタミン残基含有率と同程度である。
配列番号27で示されるアミノ酸配列(M_PRT888)は、Met−PRT410(配列番号7)中のQQを全てVLに置換したものである。
配列番号28で示されるアミノ酸配列(M_PRT965)は、Met−PRT410(配列番号7)中のQQを全てTSに置換し、かつ残りのQをAに置換したものである。
配列番号29で示されるアミノ酸配列(M_PRT889)は、Met−PRT410(配列番号7)中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号30で示されるアミノ酸配列(M_PRT916)は、Met−PRT410(配列番号7)中のQQを全てVIに置換し、かつ残りのQをLに置換したものである。
配列番号31で示されるアミノ酸配列(M_PRT918)は、Met−PRT410(配列番号7)中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号34で示されるアミノ酸配列(M_PRT525)は、Met−PRT410(配列番号7)に対し、アラニン残基が連続する領域(A)に2つのアラニン残基を挿入し、Met−PRT410の分子量とほぼ同じになるよう、C末端側のドメイン配列2つを欠失させ、かつグルタミン残基(Q)13箇所をセリン残基(S)又はプロリン残基(P)に置換したものである。
配列番号32で示されるアミノ酸配列(M_PRT699)は、M_PRT525(配列番号34)中のQQを全てVLに置換したものである。
配列番号33で示されるアミノ酸配列(M_PRT698)は、M_PRT525(配列番号34)中のQQを全てVLに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号43で示されるアミノ酸配列(Met−PRT966)は、配列番号9で示されるアミノ酸配列(C末端に配列番号42で示されるアミノ酸配列が付加される前のアミノ酸配列)中のQQを全てVFに置換し、かつ残りのQをIに置換したものである。
配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33及び配列番号43で示されるアミノ酸配列は、いずれもグルタミン残基含有率は9%以下である(表2)。
Figure 2020121962
(6−i)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33又は配列番号43で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(6−ii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33又は配列番号43で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(6−ii)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(6−ii)の改変クモ糸フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましい。また、(6−ii)の改変クモ糸フィブロインは、GPGXXモチーフ含有率が10%以上であることが好ましい。
第6の改変クモ糸フィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、改変クモ糸フィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列を含む第6の改変クモ糸フィブロインのより具体的な例として、(6−iii)配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41若しくは配列番号44で示されるアミノ酸配列を含む、改変フィブロイン、又は(6−iv)配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41若しくは配列番号44で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、改変クモ糸フィブロインを挙げることができる。
配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号44で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33及び配列番号43で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号12で示されるアミノ酸配列(Hisタグ配列及びヒンジ配列を含む)を付加したものである。N末端にタグ配列を付加しただけであるため、グルタミン残基含有率に変化はなく、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41及び配列番号44で示されるアミノ酸配列は、いずれもグルタミン残基含有率が9%以下である(表3)。
Figure 2020121962
(6−iii)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号44で示されるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
(6−iv)の改変クモ糸フィブロインは、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号44で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(6−iv)の改変クモ糸フィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]、又は式2:[(A)モチーフ−REP]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
(6−iv)の改変クモ糸フィブロインは、グルタミン残基含有率が9%以下であることが好ましい。また、(6−iv)の改変クモ糸フィブロインは、GPGXXモチーフ含有率が10%以上であることが好ましい。
第6の改変クモ糸フィブロインは、組換えタンパク質生産系において生産されたタンパク質を宿主の外部に放出するための分泌シグナルを含んでいてもよい。分泌シグナルの配列は、宿主の種類に応じて適宜設定することができる。
改変クモ糸フィブロインは、第1の改変クモ糸フィブロイン、第2の改変クモ糸フィブロイン、第3の改変クモ糸フィブロイン、第4の改変クモ糸フィブロイン、第5の改変クモ糸フィブロイン、及び第6の改変クモ糸フィブロインが有する特徴のうち、少なくとも2つ以上の特徴を併せ持つ改変クモ糸フィブロインであってもよい。
改変クモ糸フィブロインは、親水性改変クモ糸フィブロインであってもよく、疎水性改変クモ糸フィブロインであってもよい。疎水性改変クモ糸フィブロインとは、改変クモ糸フィブロインを構成する全てのアミノ酸残基の疎水性指標(HI)の総和を求め、次にその総和を全アミノ酸残基数で除した値(平均HI)が0以上である改変クモ糸フィブロインである。疎水性指標は表1に示したとおりである。また、親水性改変クモ糸フィブロインとは、上記の平均HIが0未満である改変クモ糸フィブロインである。
疎水性改変クモ糸フィブロインとしては、例えば、上述した第6の改変フィブロインを挙げることができる。疎水性改変クモ糸フィブロインのより具体的な例としては、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33又は配列番号43で示されるアミノ酸配列、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41又は配列番号44で示されるアミノ酸配列を含む改変クモ糸フィブロインが挙げられる。
親水性改変クモ糸フィブロインとしては、例えば、上述した第1の改変フィブロイン、第2の改変フィブロイン、第3の改変フィブロイン、第4の改変フィブロイン、及び第5の改変フィブロインを挙げることができる。親水性クモ糸タンパク質のより具体的な例としては、配列番号4で示されるアミノ酸配列、配列番号6、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列、配列番号13、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列、配列番号18、配列番号7、配列番号8又は配列番号9で示されるアミノ酸配列、配列番号17、配列番号11、配列番号14又は配列番号15で示されるアミノ酸配列、配列番号19、配列番号20又は配列番号21で示されるアミノ酸配列を含む改変クモ糸フィブロインが挙げられる。
上述した改変クモ糸フィブロインは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
改変クモ糸フィブロインは、例えば、当該改変クモ糸フィブロインをコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
改変クモ糸フィブロインをコードする核酸の製造方法は、特に制限されない。例えば、改変クモ糸フィブロインをコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等で増幅しクローニングする方法、又は、化学的に合成する方法によって、当該核酸を製造することができる。核酸の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手したクモ糸タンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)等で自動合成したオリゴヌクレオチドをPCR等で連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、改変クモ糸フィブロインの精製及び/又は確認を容易にするため、N末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなる改変クモ糸フィブロインをコードする核酸を合成してもよい。
調節配列は、宿主における組換えタンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、目的とする改変クモ糸フィブロインを発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、改変クモ糸フィブロインをコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
細菌等の原核生物を宿主として用いる場合は、発現ベクターは、原核生物中で自立複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、改変クモ糸フィブロインをコードする核酸、及び転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
原核生物としては、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する微生物を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
原核生物を宿主とする場合、改変クモ糸フィブロインをコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主とする場合、改変クモ糸フィブロインをコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
改変クモ糸フィブロインは、例えば、形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に改変クモ糸フィブロインを生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。形質転換された宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、該宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、該宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該宿主が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。
無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
形質転換された宿主により生産された改変クモ糸フィブロインは、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法で単離及び精製することができる。例えば、改変クモ糸フィブロインが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
上記クロマトグラフィーとしては、フェニル−トヨパール(東ソー)、DEAE−トヨパール(東ソー)、セファデックスG−150(ファルマシアバイオテク)を用いたカラムクロマトグラフィーが好ましく用いられる。
また、改変クモ糸フィブロインが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として改変クモ糸フィブロインの不溶体を回収する。回収した改変クモ糸フィブロインの不溶体は蛋白質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法により改変クモ糸フィブロインの精製標品を得ることができる。
改変クモ糸フィブロインが細胞外に分泌された場合には、培養上清から改変クモ糸フィブロインを回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
改変クモ糸フィブロインの含有量は、タンパク質フィルムの全質量を基準として、50〜90質量%であってよく、60〜85質量%であってよく、65〜80質量%であってよい。タンパク質フィルム中の改変クモ糸フィブロインの含有量は、例えば、水及び多価アルコールの含有量を測定し、全質量と水及び多価アルコールの質量との差を求めることにより算出することができる。
<多価アルコール>
多価アルコールは、分子内に2個以上のヒドロキシ基を有するアルコールを意味する。多価アルコールのヒドロキシ基数は、例えば、2〜10であってよく、2〜8であってよく、2〜6であってよく、3〜5であってよく、3であってよい。
多価アルコールの炭素原子数は、例えば、12以下、10以下、8以下、又は6以下であってよく、2以上、又は3以上であってよい。
多価アルコールとしては、低級アルコール、糖類、糖アルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
低級アルコールは、炭素原子数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルコールを意味する。低級アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールが挙げられる。低級アルコールは、タンパク質フィルムの伸度をより一層向上させることができる観点から、グリセリンであることが好ましい。
糖類としては、例えば、単糖類、二糖類が挙げられる。単糖類としては、例えば、グルコース等を挙げることができる。二糖類としては、例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトースを挙げることができる。
糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
多価アルコールの含有量は、タンパク質フィルムの全質量を基準として、5〜40質量%であってよく、10〜35質量%であってよく、15〜30質量%であってよい。多価アルコールの含有量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(例えば、島津製作所社製Prominence504H)により測定することができる。
<他の成分>
タンパク質フィルムは、クモ糸フィブロイン及びグリセリンのみからなっていてもよく、他の成分を含んでいてよい。他の成分としては、水、有機溶剤、高分子可塑剤を含んでいてよい。
タンパク質フィルムが水を含む場合、タンパク質フィルムの水分率は、例えば、タンパク質フィルムの伸度がより一層向上する観点から、50〜90質量%、又は60〜85質量%であってよく、80〜85%であることが好ましい。タンパク質フィルムの水分率とは、タンパク質フィルムの全質量を基準とする水の含有量である。タンパク質フィルムは、内部に水を含んでいてもよい。タンパク質フィルムの水分率は、カールフィッシャー水分計MKH−700(京都電子工業(株)、加熱乾燥式水分計MX−50(エーアンドデイ株式会社)等により測定することができる。
有機溶剤としては、例えば、酢酸、ギ酸、HFIP、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。タンパク質フィルムが有機溶剤を含む場合、タンパク質フィルム中の有機溶剤の含有量は、2〜20質量%、又は2〜10質量%であってよい。有機溶剤の含有量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(例えば、島津製作所社製Prominence504H)により測定することができる。
本実施形態に係るタンパク質フィルムは、不可避的な成分、例えば、タンパク質に含まれていた夾雑物を含み得る。
〔タンパク質フィルムの製造方法〕
本実施形態に係るタンパク質フィルムは、クモ糸フィブロイン及び溶媒を含むドープ液を基材表面にキャスト成形し、乾燥及び/又は脱溶媒を行うことで製造することができる。多価アルコールは、ドープ液に予め添加しておいてもよい。ドープ液が多価アルコールを含む場合も、同様にして目的とするタンパク質フィルムを得ることができる。ドープ液が多価アルコールを含む場合、上述の方法に従って成形することで内部に多価アルコールが分散して含まれるタンパク質フィルムを得ることができる。ドープ液が多価アルコールを含まない場合、上述の方法に従って成形したタンパク質フィルムを多価アルコールに浸漬させることにより、内部に多価アルコールが分散して含まれるタンパク質フィルムを得ることができる。
一実施形態に係るタンパク質フィルムは、クモ糸フィブロイン、多価アルコール及び溶媒を含むドープ液を用いて、タンパク質フィルムを成形する成形工程を備える。
ドープ液は、クモ糸フィブロイン及び多価アルコールと、これらを溶解する溶媒とを含む。溶媒としては、タンパク質を溶解できるものであれば特に制限されず、例えば、ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)及びギ酸等のプロトン性極性溶媒、並びにジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
ドープ液中のクモ糸フィブロインの含有量は、クモ糸フィブロイン、多価アルコール及び溶媒の種類等に応じて、適宜設定してよい。例えば、ドープ液中のクモ糸フィブロインの含有量は、ドープ液の全質量を基準として、1〜30質量%、2〜25質量%、3〜20質量%、4〜15質量%、又は5〜10質量%であってよい。
ドープ液中の多価アルコールの含有量は、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は3.0質量%以上であってよく、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
ドープ液の粘度は、適宜設定すればよい。ドープ液の粘度は、例えば、35℃、撹拌数1000RPMにおいて15〜1000cP(センチポイズ)とすることができる。ドープ液の粘度は、例えば京都電子工業社製の商品名“EMS粘度計”を使用して測定することができる。
成形工程では、まず、ドープ液を基材表面に所定の厚みで(例えば、乾燥及び/又は脱溶媒後の厚みで1〜1000μmとなるように)塗布する。
基材は、樹脂基板、ガラス基板、金属基板等であってよい。基材は、キャスト成形後のフィルムを容易に剥離できる観点から、好ましくは樹脂基板である。樹脂基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、又はこれらのフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムであってよい。基材は、DMSO溶媒に対して安定であり、ドープ溶液を安定してキャスト成形でき、成形後のフィルムを容易に剥離できる観点から、より好ましくは、PETフィルム又はPETフィルム表面にシリコーン化合物を固定化させた剥離フィルムである。
成形工程では、次に、基材上に塗布されたドープ液の乾燥及び/又は脱溶媒を行う。乾燥及び/又は脱溶媒は、例えば、真空乾燥、熱風乾燥、及び風乾から選ばれる少なくとも一種の手段で行われる。溶媒はできるだけ脱離したほうが好ましい。脱溶媒は、フィルムを延伸させた後に行ってもよい。
乾燥及び/又は脱溶媒後の未延伸フィルムは、1軸延伸又は2軸延伸することができる。1軸延伸又は2軸延伸は、水中で行ってもよい。2軸延伸は、逐次延伸でも同時2軸延伸でもよい。2段以上の多段延伸をしてもよい。延伸倍率は、縦、横ともに、好ましくは1.01〜6倍、より好ましくは1.05〜4倍である。この範囲であると応力−歪のバランスがとりやすい。水中延伸は、20〜90℃の水温で行われることが好ましい。延伸後のフィルムは、50〜200℃の乾熱で5〜600秒間熱固定することが好ましい。この熱固定により、常温における寸法安定性が得られる。なお、1軸延伸したフィルムは1軸配向フィルムとなり、2軸延伸したフィルムは2軸配向フィルムとなる。
乾燥及び/又は脱溶媒後の未延伸フィルム、又は未延伸フィルムを延伸して得られる延伸フィルムは、メタノールと接触させることによりメタノール処理を行ってもよい。メタノール処理により、より硬いタンパク質フィルムを得ることが可能となる。メタノール処理は、伸度及びタフネスを更に向上させる観点から、実施しなくてもよい。メタノール処理の条件については、記述のとおりである。クモ糸フィブロインと多価アルコールとを含むタンパク質フィルムに対して、メタノール処理を行うことにより、タンパク質フィルムのタフネスをコントロールすることができる。したがって、本発明の一実施形態として、クモ糸フィブロインと多価アルコールとを含むタンパク質フィルムに対して、メタノール処理を行う工程を備える、タンパク質フィルムのタフネスをコントロールする方法が提供される。
タンパク質フィルムは、カラーフィルムであってもよい。この場合、染料などの着色剤を例えばDMSO溶媒に溶解又は分散させてDMSO着色液を作製し、この着色液とドープ液とを混合して得られた溶液を、上述したのと同様にキャスト成形によりフィルムを作製する。その後、乾燥及び/又は脱溶媒して未延伸着色フィルムにするか、又は延伸して延伸フィルムとする。カラーフィルムは、反射板、マーカー、紫外線防止膜、スリット糸などに応用できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(PRT799)
[試験例1:改変クモ糸フィブロインの製造]
<(1−1)クモ糸タンパク質(改変クモ糸フィブロイン:PRT799)の製造>
(クモ糸タンパク質をコードする遺伝子の合成、及び発現ベクターの構築)
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する改変フィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
配列番号15で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列を有し、さらにN末端に配列番号12で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されている。
次に、PRT799をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
PRT799をコードする核酸を含むpET22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表4)にOD600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコ培養を行い(約15時間)、シード培養液を得た。
Figure 2020121962
当該シード培養液を500mlの生産培地(下記表5)を添加したジャーファーメンターにOD600が0.05となるように添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにした。
Figure 2020121962
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、PRT799を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存したPRT799に相当するサイズのバンドの出現により、PRT799の発現を確認した。
(PRT799の精製)
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社製)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質(PRT799)を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収した。
得られた凍結乾燥粉末におけるPRT799の精製度は、粉末のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果をTotallab(nonlinear dynamics ltd.)を用いて画像解析することにより確認した。その結果、PRT799の精製度は約85%であった。
[試験例2:タンパク質フィルムの製造及び評価1]
<(2−1)タンパク質フィルムの製造>
試験例1の(1−1)で得られたクモ糸フィブロイン(PRT799)を、水及びエタノールの混合溶媒(水:エタノール=7:3(質量比))に110℃で溶解させた。得られたクモ糸フィブロイン含有液に、グリセリンを添加して、ドープ液とした。グリセリンの添加量(含有量)は、ドープ液全量に対して、0.5質量%又は5.0質量%とした。ドープ液は、ステンレススチール瓶内で、200rpmの条件で、40分間攪拌した後、10分間冷却し、ごみ及び泡を取り除いた。以上の操作により、ドープ液全量に対して、クモ糸フィブロインを10.0質量%、水を62.7質量%、エタノールを26.9質量%、グリセリンを0.5質量%含む、ドープ液1、及び、ドープ液全量に対して、クモ糸フィブロインを10.0質量%、水を59.5質量%、エタノールを25.5質量%、グリセリンを5.0質量%含む、ドープ液2を調製した。
次の手順で、ドープ液1及びドープ液2からそれぞれ実施例1及び実施例2のタンパク質フィルムを製造した。すなわち、シリコン製の四角形モールド(サイズ(横×幅×高さ):2インチ×2インチ×2インチ)に、2mLのドープ液1又はドープ液2をキャスト成形し、濡れ膜を作製した。濡れ膜は、室温(25℃)で、24時間静置することにより、乾燥させた。乾燥後に、シリコン製モールドから、タンパク質フィルムを剥離した。得られたタンパク質フィルムの厚さは、40〜50μm程度であった。タンパク質フィルムの厚みは、新潟精機社製、テシタル外側マイクロメータを使用して測定した。
実施例1〜2のタンパク質フィルムをメタノールに1分間浸漬させた。タンパク質フィルムをメタノールから取り出し、イオン交換水で、5分間洗浄した。得られたフィルムは、室温(20〜30℃)で、24時間静置し、乾燥させた。これらの操作により実施例1〜2のタンパク質フィルムから得たメタノール処理後のタンパク質フィルムをそれぞれ実施例3〜4のタンパク質フィルムとした。
<(2−2)タンパク質フィルムの評価>
実施例2のタンパク質フィルムを、ダンベル形状に切り出し、試験片(8mm×2mm×厚み)とした。試験片を用い、島津製作所社製引張試験装置により、引張試験を実施した。引張試験は、25℃、相対湿度60%の条件で実施した。引張試験により、破断点変位(ひずみ)(%)、最大点応力(MPa)、及びひずみエネルギー([mJ])、タフネス([MJ]/[m])、ヤング率(GPa)を測定した。3回行った測定の平均値を表6に示す。タフネスは、下記式により求められる。
応力[N/m]×歪み[mm/mm]=エネルギー[Nm]/体積[m]=エネルギー[J]/体積[m
破断点変位が高いほど、伸度に優れる(高い伸度を有する)ことを示し、最大点応力(MPa)が高いほど、応力に優れる(高い応力を有する)ことを示し、ひずみエネルギーが高いほど、タフネス(靭性)に優れることを示す。
グリセリンを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、比較例1のタンパク質フィルムの製造及び評価を行った。
Figure 2020121962
改変クモ糸フィブロインと、多価アルコールと、を含む、タンパク質フィルムは、高い破断点変位を有しており、伸度に優れることが示された(実施例2と、比較例1との対比)。
<(2−3)メタノール処理による効果>
実施例1、3〜4のタンパク質フィルムは、実施例2と同様の方法で、最大点応力、ひずみエネルギー、タフネス及びヤング率を測定した。結果を表7に示す。
Figure 2020121962
メタノール処理により、より硬いタンパク質フィルムが得られた。メタノール処理によりタフネスをコントロール可能であることが示された。
<(2−4)タンパク質フィルムの分析>
実施例1〜4のタンパク質フィルムをThermo Fisher Nicolet iS50 FT−IR 分光光度計(フーリエ変換型赤外分光光度計)及び株式会社エアーテック社製の乾燥空気発生装置「AIR−TECH」を用いて、タンパク質二次構造及び含有成分(グリセリン)について分析した。結果を図4に示す。
1650cm−1付近のピークはペプチド結合におけるC=Oの伸縮振動でアミドIバンドに相当する。3200cm−1付近のピークは、タンパク質とグリセリンとの水素結合に由来するO−Hの伸縮振動を示す。メタノール処理が、タンパク質フィルムのβシート結晶度(アミドIバンドの波形を示す)に影響を与えることを認められた。
[試験例3:タンパク質フィルムの製造及び評価2]
<(3−1)タンパク質フィルムの製造>
試験例1の(1−1)で得られたクモ糸フィブロイン(PRT799)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に90℃で溶解させた。得られたクモ糸フィブロイン含有液に、グリセリンを添加して、ドープ液とした。グリセリンの添加量(含有量)は、ドープ液全量に対して、2.1質量%とした。ドープ液は、ステンレススチール瓶内で、200rpmの条件で、30分間攪拌した後、10分間冷却し、ごみ及び泡を取り除いた。以上の操作により、ドープ液全量に対して、クモ糸フィブロインを5.0質量%、DMSOを92.9質量%、グリセリンを2.1質量%含む、ドープ液5を調製した。
シリコン製の四角形モールド(サイズ(横×幅×高さ):2インチ×2インチ×2インチ)に、2mLのドープ液5をキャスト成形し、濡れ膜を作製した。濡れ膜を60℃の条件で、真空乾燥機内で、3時間以上乾燥させ、一部のDMSOを除去した。これにより、実施例5のタンパク質フィルムを得た。
実施例5のタンパク質フィルム中のDMSO及びグリセリンの含有量をガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography,GC)島津製作所製GC−2010plus(装置の型番))を用いて測定した。実施例5のタンパク質フィルムにおいて、タンパク質フィルムの全質量を基準として、DMSOの含有量は、4.4質量%であり、グリセリンの含有量は、23.2質量%であった。
実施例5のタンパク質フィルムは、試験例2と同様の方法で、最大点応力、破断点変位(ひずみ)及びひずみエネルギーを測定した。結果を表8に示す。
Figure 2020121962
ドープ液を調製するための溶媒にDMSOを用いた場合においても、改変クモ糸フィブロインと、多価アルコールと、を含む、タンパク質フィルムは、高い破断点変位を有しており、伸度に優れることが示された。

Claims (10)

  1. クモ糸フィブロインと、多価アルコールとを含む、タンパク質フィルム。
  2. 前記多価アルコールが、グリセリンである、請求項1に記載のタンパク質フィルム。
  3. 前記多価アルコールの含有量が、前記タンパク質フィルムの全質量を基準として、10〜40質量%である、請求項1又は2に記載のタンパク質フィルム。
  4. クモ糸フィブロインを含む、タンパク質フィルムであって、
    前記タンパク質フィルムの破断点変位が300%以上である、タンパク質フィルム。
  5. 前記タンパク質フィルムのひずみエネルギーが、25mJ以上である、請求項4に記載のタンパク質フィルム。
  6. 前記タンパク質フィルムのタフネスが、20MJ/m以上である、請求項4又は5に記載のタンパク質フィルム。
  7. クモ糸フィブロインが、改変クモ糸フィブロインである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタンパク質フィルム。
  8. クモ糸フィブロイン及び多価アルコールを含むドープ液を用いて、タンパク質フィルムを成形する工程を備える、タンパク質フィルムの製造方法。
  9. 前記多価アルコールがグリセリンである、請求項8に記載のタンパク質フィルムの製造方法。
  10. クモ糸フィブロインと多価アルコールとを含むタンパク質フィルムに対して、メタノール処理を行う工程を備える、タンパク質フィルムのタフネスをコントロールする方法。
JP2019016332A 2019-01-31 2019-01-31 タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法 Pending JP2020121962A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019016332A JP2020121962A (ja) 2019-01-31 2019-01-31 タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019016332A JP2020121962A (ja) 2019-01-31 2019-01-31 タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020121962A true JP2020121962A (ja) 2020-08-13

Family

ID=71993461

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019016332A Pending JP2020121962A (ja) 2019-01-31 2019-01-31 タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020121962A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021066078A1 (ja) * 2019-09-30 2021-04-08 Spiber株式会社 筋組織再生剤

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006504450A (ja) * 2002-06-24 2006-02-09 タフツ ユニバーシティー 絹糸生体材料およびその使用方法
JP2012505297A (ja) * 2008-10-09 2012-03-01 トラスティーズ オブ タフツ カレッジ グリセロールを含有する改変された絹フィルム
WO2017131196A1 (ja) * 2016-01-29 2017-08-03 国立研究開発法人理化学研究所 成形体及びその製造方法、並びに成形体のタフネスを向上させる方法
JP2018511677A (ja) * 2015-03-12 2018-04-26 タフツ・ユニバーシティ 形状記憶絹材料
WO2018221680A1 (ja) * 2017-06-02 2018-12-06 独立行政法人国立高等専門学校機構 タンパク質成形体及びその製造方法、タンパク質溶液、並びにタンパク質成形体用可塑剤

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006504450A (ja) * 2002-06-24 2006-02-09 タフツ ユニバーシティー 絹糸生体材料およびその使用方法
JP2012505297A (ja) * 2008-10-09 2012-03-01 トラスティーズ オブ タフツ カレッジ グリセロールを含有する改変された絹フィルム
JP2018511677A (ja) * 2015-03-12 2018-04-26 タフツ・ユニバーシティ 形状記憶絹材料
WO2017131196A1 (ja) * 2016-01-29 2017-08-03 国立研究開発法人理化学研究所 成形体及びその製造方法、並びに成形体のタフネスを向上させる方法
WO2018221680A1 (ja) * 2017-06-02 2018-12-06 独立行政法人国立高等専門学校機構 タンパク質成形体及びその製造方法、タンパク質溶液、並びにタンパク質成形体用可塑剤

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021066078A1 (ja) * 2019-09-30 2021-04-08 Spiber株式会社 筋組織再生剤

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6959482B2 (ja) 成形体及びその製造方法、並びに成形体のタフネスを向上させる方法
JP6337252B1 (ja) 高収縮人造フィブロイン繊維及びその製造方法、並びに人造フィブロイン繊維の収縮方法
WO2018164234A1 (ja) タンパク質繊維の製造方法、及びタンパク質繊維の防縮方法
JP2020150945A (ja) 改変フィブロイン
WO2018164190A1 (ja) 人造フィブロイン繊維
WO2018221680A1 (ja) タンパク質成形体及びその製造方法、タンパク質溶液、並びにタンパク質成形体用可塑剤
WO2020022395A1 (ja) 人工毛髪用繊維、及びその製造方法、並びに人工毛髪
WO2019151429A1 (ja) タンパク質繊維の製造方法
JPWO2018164189A1 (ja) タンパク質成形体及びこれを製造する方法、並びにタンパク質溶液
WO2019151435A1 (ja) カーボンナノチューブ分散剤、カーボンナノチューブ分散液、及びカーボンナノチューブの分散方法
JP2020121962A (ja) タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法
WO2019151440A1 (ja) タンパク質成形体の製造方法、タンパク質溶液の製造方法及びタンパク質の製造方法
JPWO2020067554A1 (ja) 成形体の製造方法および構造タンパク質成形体
WO2019151437A1 (ja) タンパク質紡績糸の製造方法
JPWO2019066047A1 (ja) タンパク質繊維の製造方法、タンパク質繊維の製造装置、およびタンパク質繊維の加工方法
WO2021065794A1 (ja) タンパク質成形体の製造方法
JPWO2019066053A1 (ja) タンパク質繊維の製造方法、タンパク質繊維の製造装置、およびタンパク質繊維の加工方法
JP2020055904A (ja) 吸湿発熱性付与剤、及び吸湿発熱性を付与する方法
WO2019151436A1 (ja) タンパク質捲縮ステープルの製造方法
WO2020158900A1 (ja) 人工毛髪用繊維を製造する方法、人工毛髪を製造する方法、人工毛髪用繊維、及び人工毛髪
WO2020027153A1 (ja) 改変フィブロイン繊維及びその製造方法
JP2020122237A (ja) タンパク質繊維の製造方法
JP2021055222A (ja) ボイドが形成された細径繊維
JP2022001669A (ja) タンパク質繊維の製造方法
JP2021080572A (ja) 油剤付着タンパク質捲縮繊維の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220128

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221223

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230110

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230704