JP2020113117A - 集団環境評価方法ならびに集団環境評価システム - Google Patents

集団環境評価方法ならびに集団環境評価システム Download PDF

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Abstract

【課題】複数の対象者から得られる生体情報を用いて、実際に対象者が置かれている労働環境や運動環境を正確に評価する集団環境評価方法ならびに集団環境評価システムを提供する。【解決手段】集団環境評価方法は、複数の対象者からなる集団より得られた生体情報に基づいて、当該集団における環境リスクを評価する。また、集団環境評価システム(暑熱環境評価システム)は、対象者の生体情報を取得する測定装置11と、前記複数の対象者から取得された生体情報に基づいて、当該複数の対象者からなる集団における環境リスクを評価する評価判定部22とを備える。【選択図】図2

Description

本願は、共通する環境条件下にいる複数の対象者を一つの集団として特定し、この集団に属する複数の対象者から得られた生体情報に基づいて、当該集団が置かれている環境を評価する集団環境評価方法、ならびに、集団環境評価システムに関する。
近年、無線LANなどインターネットへの接続環境が整備されるとともに、ブルートゥース(登録商標)などの近距離での情報伝達を可能とする手段の発達、さらに、スマートフォンなどの高性能のモバイル機器や、体温や心拍数、発汗量などの身体データを測定可能な小型センサ機器の普及により、センサ機器で取得された評価対象者の生体情報をインターネットに接続されたモバイル機器に伝達し、評価対象者の健康状態を管理して体調不良に起因する事故などの不測の事態を防止する管理システムが実用化されている。
このような体調管理システムの例として、地球温暖化に伴って発症リスクの高まりが社会問題化されている熱中症などの熱障害の危険度を管理するシステムが知られている。例えば、加速度センサと紫外線センサ、GPS受信部を備え、操作入力部と表示・音声報知部、インターネット接続部などを有する筐体を被管理者に装着させて、被管理者の運動量と、被管理者が屋外屋内のいずれにいるかなどの位置情報とを把握し、インターネット経由で取得した気温、湿度などの気象条件に基づいてWBGT指標によって熱中症の発症リスクを判定し、判定結果にしたがって適宜の休憩を指示することで熱中症の発症を予防する熱中症発症予防システムが提案されている(特許文献1参照)。
また、複数の被評価者が運動するエリアに配置された気象計測装置からの気象データと、複数の被評価者それぞれが携帯する活動量センサにより得られた活動情報と、複数の被評価者それぞれが携帯する生体情報センサが取得した生体情報とに基づいて、エリア内を移動する複数の被評価者それぞれの体調レベルを判定し、危険状態にあると判定された場合にそれを当該被評価者に報知する監視システムが提案されている(特許文献2参照)。
特開2012−210233号公報 特開2013− 85896号公報
上記のように、従来の熱中症発症予防システムや被評価者の体調を監視する監視システムでは、複数の被評価者の体調を把握して管理するものであるが、評価結果はあくまでも被評価者それぞれについてのものにとどまる。
このように、被評価者個人の体調を評価することによって、個人差や、同じ被評価者でも時と場所によって異なる体調の変化を把握することができ、例えば熱中症の発症リスクが高まっている場合は、当該被評価者に対して警告を行うことができる。しかし、心拍数等の生体情報は個人差が大きいため的確な評価を行うことは難しい。個人差の影響を少なくするためには、例えば個人の過去の蓄積データや大規模な実証データから推定した心拍応答モデルなどを用いて評価する必要があり、複雑なアルゴリズムや大量のデータが必要であった。
また、このような個人を評価するシステムでは、センサを装着していない人物を評価することができない。例えば、被評価者とともに同じ環境下にある人物、すなわち、同じ場所で同じような労働や運動を行っている人物がいる場合でも、その人物が生体情報や活動量を計測するセンサを装着しておらず、体調を評価するシステムの評価対象となっていない場合には、当該人物の体調レベルの変化を把握することができない。
一方で、人体に対する熱的負荷の大きさを環境的に把握する指標として、上記熱中症発症リスク予防システムでも利用されているWBGT(wet bulb globe temperature:湿球黒球温度)指数があるが、WBGT指数は、特定の地域における屋外の計測点における計測結果に基づく指標であり、屋内の作業者や、直射日光が当たっている場所での作業者など、計測点とは異なる状況下にいる場合には正確な指標とはなり得ない。また、特に近年、日本国内でも40℃を超える最高気温を観測するなど、温暖化の影響で夏の暑さが増しており、従来のWBGT指数では、現在の温度環境下における熱中症発症リスクの評価として十分に対応できているとは言い難い状況が生じている。
本願は、上記従来技術の有する課題を解決することを目的とするものであり、複数の対象者から得られる生体情報を用いて、実際に対象者が置かれている労働環境や運動環境を正確に評価することができる、集団環境評価方法、ならびに、集団環境評価システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本願で開示する集団環境評価方法は、複数の対象者からなる集団より得られた生体情報に基づいて、当該集団における環境リスクを評価することを特徴とする。
また、本願で開示する集団環境評価システムは、対象者の生体情報を取得する測定装置と、複数の前記対象者から取得された前記生体情報に基づいて、当該複数の対象者からなる集団における環境リスクを評価する評価判定部とを備えることを特徴とする。
上記構成により、本願で開示する集団環境評価システムは、その集団が実際に活動している環境そのものを定量的に評価することができ、対象者の個人差や評価時点での体調の良否に左右されずに、当該集団における環境リスクを正確に評価することができる。
また、本願で開示する集団環境評価システムでは、評価対象の集団を形成する対象者の生体情報を評価判定部がリアルタイムで把握することができ、当該集団における環境リスクを迅速に評価することができる。
さらに、環境リスクを定量的に評価できることから、例えば、空調設備の導入や適切な休憩時間、休憩場所の設定といった、現場の環境改善や対策の効果を見える化するツールとして有用である。
図1は、実施形態として説明する暑熱環境評価システムの全体構成を説明するイメージ図である。 図2は、実施形態として説明する暑熱環境評価システムの各部の構成を示すブロック図である。 図3は、被管理者の各種情報を取得する測定装置である生体センサを備えたアンダーシャツの構成を説明する図である。図3(a)がアンダーシャツの表面を、図3(b)がアンダーシャツの裏面を示す。 図4は、本実施形態で説明する暑熱環境評価システムにおける、熱中症発症リスクの評価方法を説明するフローチャートである。 図5は、加速度偏差に対する心拍応答を示す標準心拍応答の測定結果を示す図である。図5(a)は、約300万点のデータをすべてプロットした図を、図5(b)は、加速度データに対する心拍応答の中央値を用いて得られた標準心拍応答を示す。 図6は、本実施形態にかかる暑熱環境評価方法における、心拍指数と体力指数との推定方法を説明する図である。 図7は、本実施形態において説明する作業負担推定方法において、作業負担指数を求める第1の補正マップを説明する図である。 図8は、本実施形態において説明する作業負担推定方法において、作業負担指数を求める第2の補正マップを説明する図である。 図9は、ヒトヒトの核心温と体温の分布状態を示すイメージ図である。図9(a)が気温20℃における安静時の状態を、図9(b)が気温35℃の高温環境下での安静時の状態を、図9(c)が気温35℃の高温環境下での作業時の状態を示している。 図10は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムで取得された、集団の平均心拍数の変化を示す図である。 図11は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムで取得された、集団の休憩を挟んだ平均心拍数の変化を示す図である。 図12は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムで取得された、集団の1日の平均心拍数の変化を示す図である。 図13は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムを用いた環境評価の一例を示す、集団の平均心拍数の変化を示す図である。 図14は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムを用いた集団平均心拍数に基づく熱中症発症リスク評価の一例を示す図である。 図15は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムを用いた作業負担指数の平均値に基づく熱中症発症リスク評価の一例を示す図である。
本願で開示する集団環境評価方法は、複数の対象者からなる集団より得られた生体情報に基づいて、当該集団における環境リスクを評価する。
このように、複数の対象者(被評価者)から得られた生体情報に基づいて集団の環境評価を行うことにより、本願で開示する集団環境評価方法は、対象者の個人差や対象者の評価時点での体調の良否に左右されずに、集団の平均的な生体応答に基づいて環境リスクを定量的に評価することができる。
本願で開示する集団環境評価方法において、前記生体情報が前記対象者の心拍数であり、前記集団に属する前記対象者の心拍数の代表値に基づいて、前記集団における暑熱環境リスクを評価することが好ましい。このようにすることで、暑熱環境リスクの共通因子である集団の心拍数に基づいて集団の暑熱環境評価を正確に行うことができる。
この場合において、前記心拍数の代表値として、前記複数の対象者の心拍数の平均値、中央値、または、最頻値のいずれかを用いることが好ましい。心拍数の上昇は熱ストレスに対する人体の核心温度の上昇を表しており、これらの手法によって得られた集団の心拍数の代表値は、信頼度の高い熱ストレス指標となる。
また、前記集団は、環境条件が共通する複数の対象者からなることが好ましい。ここで、「環境条件が共通する」とは、複数の対象者における地理条件、気象条件、作業内容等が一定の範囲で同じレベルであることを指す。例えば、同じ市町村内、同じ建物内、同じ現場内、同じ会場内などの、所定の範囲内に存在する複数の対象者で集団を形成してもよい。また、同じ業務、同じサービスに従事している複数の対象者で集団を形成してもよい。環境条件が共通する複数の対象者で集団を形成することで、より精度の高い環境評価を行うことができる。
また、前記生体情報が、前記対象者の心拍データと当該対象者の動作を示す加速度データを含み、前記集団に属する前記複数の対象者から得られた前記心拍データと前記加速度データとに基づいて前記対象者それぞれについての作業負担指数を算出し、前記集団に属する前記対象者の前記作業負担指数の代表値に基づいて、前記集団における暑熱環境リスクを評価することが好ましい。このようにすることで、作業負荷の大きさを考慮した集団の暑熱評価を行うことができ、集団の暑熱環境リスクをより正確に評価することができる。 本願で開示する集団環境評価システムは、対象者の生体情報を取得する測定装置と、複数の前記対象者から取得された前記生体情報に基づいて、当該複数の対象者からなる集団における環境リスクを評価する評価判定部とを備える。
このようにすることで、対象者の生体情報を随時取得し、評価することができるため、評価対象の集団が晒されている環境の評価を迅速に行うことができる。
また、取得された前記生体情報を前記評価判定部に送信する情報送信手段を備えることが好ましい。
本願で開示する集団環境評価システムにおいて、前記評価判定部がネットワーク上のサーバに設置されていることが好ましい。評価判定部が、インターネットやイントラネットなどのネットワーク上のサーバに設置されることで、集団環境評価システムをクラウドサービスとして運用することができ、例えば、対象者が移動する状況でも集団環境評価を容易に行うことができる。また、必要に応じて類似の環境に置かれている他の集団の情報を評価結果に反映させるなどして、より正確な集団評価を行うことができる。
また、前記測定装置が、前記対象者が身につけた心拍データを検出する心拍センサと加速度データを検出する加速度センサとを備えることが好ましい。このようにすることで、例えば、対象者の位置情報や種々の属性等に基づいて最適な集団を形成することができる。
また、前記集団形成手段は、環境条件が共通する複数の対象者を検知し、前記検知した複数の対象者で前記集団を形成することが好ましい。このようにすることで、対象者のおかれた環境をリアルタイムに検知し動的に集団を形成することができる。
以下、本願で開示する集団環境評価方法と集団環境評価システムについて、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
本実施形態では、本願で開示する集団環境評価方法、集団環境評価システムについて、対象者である被評価者個人の熱中症の発症リスクを管理する管理システムによって得られたデータを用いて、複数の作業員により構成される集団の暑熱環境を評価する場合を例示してその内容を詳述する。
本願で開示する集団環境評価方法としての暑熱環境評価は、建設現場の作業員を被評価者として、各作業員が生体情報として少なくとも心拍数と体の動きを表す加速度とを測定可能な測定装置を装着し、被測定者である作業員に対して加わる熱的負担と作業負担とに基づいて、集団としての作業員の暑熱環境を評価するものである。
[評価システムの概要]
本実施形態にかかる暑熱環境評価システムは、熱的条件や作業負担の大きさなどの観点から共通する環境下にあると判断できる複数の被測定者を集団として把握し、その集団に属する被測定者の生体情報を用いて集団の暑熱環境を評価するものである。まず、集団評価の前提となる、複数の被測定者の生体情報を取得してそれぞれの被評価者についての熱中症発症リスクを評価する評価システムの概要を説明する。
図1は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムの概略構成を説明するためのイメージ図である。
また、図2は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムの各部の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、建築現場で作業する作業者10は、服内温度と、心拍データと、体の動きを検出するための加速度検出手段である3次元加速度センサを備えた、測定装置である生体センサ11を胸部に装着するとともに、生体センサ11で得られた各種情報を外部に送信する情報送信部として機能する携帯端末としてのスマートフォン12を所持している。なお、本実施形態で説明する暑熱環境評価システムの前提となる熱中症発症リスク管理システムでは、作業者10が被評価者であり、かつ、集団の対象者に相当する。
本実施形態で説明する暑熱環境評価システムでは、作業者10の各種情報を取得する生体センサ11は、作業者10が着用するアンダーシャツの胸部に装着されている。
図3は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムで作業者が着用するアンダーシャツの構成例を示す図である。図3(a)が、生体センサが装着されたアンダーシャツの表面を示し、図3(b)がアンダーシャツの裏面、すなわち、作業者の体表面に対向して接触する側を示している。
図3に示すように、作業者10が着用するアンダーシャツ18の胸部には、生体センサ11が配置されている。より具体的には、生体センサ11は、アンダーシャツ18の表面18aの胸部中央部分に配置された、データ取得送信ユニット11aと、このデータ取得送信ユニット11aに接続され、アンダーシャツ18の裏面18b、つまり、皮膚に接する側の部分に左右方向に延在して配置された心拍センサの電極部11bとから構成されている。
本実施形態にかかる暑熱環境評価システムでは、生体センサ11によって作業者10の心拍、服内温度、動作を検出するものであり、アンダーシャツ18の裏面に配置された心拍検出手段(心拍センサ)である電極が胸部に接触することで、より正確に作業者10の心拍を検出することができるようになっている。また、服内温度を検出する温度センサ(図示省略)と、3次元方向の加速度を検出する加速度センサチップ(図示省略)は、データ取得送信ユニット11a内に収容されている。
なお、本実施形態で説明する暑熱環境評価システムにおいて、作業者10の心拍、服内温度、動作を取得する測定装置の配置例は、図3に示したアンダーシャツ18に生体センサ11を固着する方法には限られない。たとえば、生体センサ11を接着性の高いシート状の装着カバー内に入れてこれを胸部に直接貼り付ける方法、生体センサ11を体に密着保持することができる伸縮性のある装着ベルトを用いて作業者の胸部に配置する方法などを採用することができる。しかし、図3に示したように生体センサ11を作業者10が着用するアンダーシャツ18に固着する方法によれば、作業者10が、生体センサ11を装着することに対する特別な意識を緩和して必要な情報を取得することができる。また、仮に作業者10の発汗や作業中の体のひねりなどが生じた場合でも、アンダーシャツ18に固着された生体センサ11が、作業者10の体表面から外れてしまうことはなく、その装着位置も実質的に変化しない状態を維持することができる。このため、作業者10の心拍の一部を心拍データとして取得できない場合はあるものの、心拍データが全く取得できない状況が継続して続く事態は回避することができる。
なお、作業者10の心拍数を把握するための生体センサ11の配置場所としては、上記した作業者の胸部以外にも、作業者の腰部、背中、上腕部や脚部などに配置される形態を採用することができる。また、本実施形態で説明したような、工事現場で働く作業者を被評価者として熱中症の発症リスクを管理するシステムとしてではなく、たとえば、トレーニングを行うスポーツ選手などの体調評価として熱中症の発症リスクの評価を行う場合などでは、被評価者がスポーツウェアを着用することが考えられ、この場合も上半身に着用されるウェアの胸部に生体センサを配置することが最も合理的である。
生体センサ11と作業者11が所持するスマートフォン12とは、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの短距離間通信によって常時接続されていて、生体センサ11が取得する各種の情報は、随時スマートフォン12に送られている。
スマートフォン12は、生体センサ11から送られた作業者10の情報を送信する情報送信手段としての被評価者情報送信部13、データ受信部15、データ送信部16によって、無線LANや携帯電話の情報キャリアを用いて常時ネットワーク環境としてのインターネット20に接続されている。そして、スマートフォン12は、インターネット20上に設置されたリスク評価判定部22を備えたサーバであるクラウドサーバ21に被評価者情報である作業者10の服内温度、心拍データ、加速度センサの測定データを伝送する。
クラウドサーバ21は、内部にデータ受信部23とデータ送信部26を備えていて、インターネット20を介した情報の授受を行うことができるとともに、評価判定部22を備えていて、複数の作業者10からの測定データを受信する。そして、それぞれの作業者を属する集団に分類し、その集団の暑熱環境を評価する。
また、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムが前提とする、熱中症発症リスク管理システムでは、個々の作業者の熱中症発症リスクを管理して、特に熱中症発症リスクが高いと判断された場合には、その情報を伝達して当該作業者が熱中症発症リスクを低減する対策を採ることを促すものであるため、クラウドサーバ21は、熱中症発症リスクを評価、判定し、熱中症の発症リスクが高まっている場合にはその旨を当該作業者に警告する警告情報を作成する。また、クラウドサーバ21は、データ記録部24を備えていて、複数人いる作業者10それぞれからの測定データ、警告情報の作成履歴などを時系列に記録することができる。
さらに、クラウドサーバ21は、気象情報取得部25を有していて、インターネット20を介して気象情報を提供する情報サイトから気象情報を取得して、作業者10が作業している地域での気温や湿度、日照量などの現在時刻での気象条件や、今後数時間内における変化を見込んだ気象予報を取得することができる。
また、クラウドサーバ21は、インターネット20を介して、被評価者である作業者10の作業を建築現場で監督する管理者である現場監督30が使用する管理者情報端末としてのパソコン31と接続されている。このため、作業者10が作業する作業現場にいる現場監督30は、パソコン31のデータ受信部33によって、クラウドサーバ21から随時送信される作業者10から得られた測定結果や、評価判定部22によって警告情報が生成されたか否かを把握することができる。
クラウドサーバ21の評価判定部22は、作業者10が装着する測定装置である生体センサ11から得られた心拍データ、加速度データ、服内温度データに基づいて、作業者10の体調を評価し、さらに、作業負担指数を算出して、服内温度情報と、インターネットを経由して取得した作業地の環境温度情報とを加味して、作業者10の熱中症発症リスク指数を算出する。
なお、評価判定部22で行われる、評価対象の集団の暑熱環境評価、および、熱中症発症リスク管理として行われる作業者10の作業負担推定、体調評価、作業者個人の熱中症発症リスク評価の具体的な内容については、後に詳述する。
クラウドサーバ21は、データ記録部24に記録された判定対象の作業者10の過去の履歴情報としての履歴データや、気象情報取得部25で取得した作業地域の気象情報、さらには、判定対象の作業者と同じ現場で働いている、判定対象の作業者以外の作業者から取得された各種情報の変化などの環境情報に基づいて、作業者10個人の熱中症発症リスクの評価結果を補正して、より現実に即した熱中症発症リスクの管理を行うことができる。
なお、本実施形態で例示する暑熱環境評価システムにおいて、評価判定部22を備えるのはクラウドサーバ21に限られない。例えば、管理者情報端末や事業所の管理コンピュータ上に、集団評価機能やリスク判定機能を含めたクラウドサーバ21の各種機能を実装してもよく、その機能が実現できるのであれば、評価判定部が実装される場所や機器は問わない。
現場監督30のパソコン31は、作業者10を含めた当該現場監督30が監督する作業現場に所属する作業者についての測定装置で得られた各種の情報や警告情報が生成されたか否かを管理する情報管理部32を備えている。情報管理部32は、クラウドサーバ21から送信された情報に基づいて、それぞれの作業者10から得られた情報や警告情報が生成されたか否かの熱中症発症リスク評価の基準となる情報を常に最新情報として把握している。また、情報管理部32は、取得した各作業者の熱中症発症リスクの評価判定結果やその他の環境情報を表示画像処理部35へと出力し、表示画像処理部35で液晶モニタなどの表示デバイス36上に表示される画面内容が調整される。
このようにして、現場監督30は、自分が監督する作業現場で働く作業者10の情報や熱中症発症リスクなどを、全体として一元的に、または、作業者個々の詳細情報として見やすい画面で把握することができる。さらに、現場監督30は、自身が監督する作業者が一つのグループを構成している場合には当該グループと他の現場監督が管理する他のグループについての集団評価結果を、また、自身が監督する作業員が複数のグループに属している場合には、それぞれのグループ毎の集団評価結果を、さらに他の現場監督が管理する他のグループの集団評価結果を参照することができる。なお、表示画像処理部35で処理された表示デバイス36に表示される具体的な画面内容については、適宜形成されるシステムによって求められる情報を見やすく表示できればよいため、本明細書での具体的な詳細の説明は省略する。
さらに、現場監督30のパソコン31では、警告情報を通知した後に当該作業者10から得られる各種情報や、作業者10からの警告情報の受領確認を受け取ることで、作業者10が熱中症の発症を予防するための対策を行ったか否かを確認することができ、作業者10が熱中症の発症を予防するための対応をとっていない場合には、対象の作業者10に繰り返して警告情報を伝達するなど、作業者10の注意喚起を行うことができる。
現場監督30は、パソコン31に表示されることで把握が可能となる、少なくとも自分が監督する作業員についての集団としての暑熱環境評価、または、個々の作業者毎の熱中症発症リスク評価結果に基づいて、空調や換気などの作業現場の作業環境を改善するための対策を採ることが可能である場合には、適宜実行して自身が監督する作業現場での暑熱環境を改善し、熱中症の発症を予防することができる。
なお、上記説明では、作業者10に熱中症を発症するリスクが高くなっていることを報知する警告情報を、クラウドサーバ21の評価判定部22で生成する例を説明したが、警告情報を、現場監督30のパソコン31に設置された情報管理部32で生成することができる。また、評価判定部22と、情報管理部32の双方で警告情報を生成するように設定することもできる。このようにすることで、作業現場を実際に監督している現場監督30のパソコン31から、評価判定部22での判定結果に先んじて警告情報を生成して対象となる作業者10に伝達することで、作業現場の実情に応じて熱中症の発症リスクをより低減することができる場合がある。
クラウドサーバ21の評価判定部22、または、現場監督30のパソコン31で生成された警告情報は、現場監督30のパソコン31のデータ送信部34から、無線LANなどのローカルネットワークや携帯電話の情報キャリアを含めたネットワークを介して作業者10が装備するスマートフォン12に送信される。警告情報を受け取ったスマートフォン12の警告報知部14は、音声、画面表示、ランプの点灯または点滅、振動などの各種の情報伝達手段を用いて、作業者10に対して、自分が熱中症を発症するリスクが高まっていることを報知する。警告情報を確認した作業者10は、スマートフォン12のタッチパネルまたは操作ボタンなどを通じて警告情報を受け取った旨を報告するとともに、作業を中断して休息をとるなど熱中症を予防するための対策を実行する。
作業者10のスマートフォン12は、作業者10が警告情報を確認して作業を中断したことを監督者30のパソコン31に送信し、監督者30は、作業者10が熱中症の発症を予防する対策をとったことを確認できる。
さらに、本実施形態で説明する暑熱環境評価システムでは、現場監督30が把握している作業現場での熱中症発症リスクデータを、作業者10のスマートフォン12に送信して、作業者10が、自分が働いている作業現場での熱中症発症リスクの現状を確認することができる。自分を含めた集団としての熱中症発症リスクが高くなっていることが確認できれば、各作業者が熱中症の発症を積極的に予防する対応を採ることが可能となる。また、個々の作業者に対する熱中症発症リスク評価結果を把握できるようにすることで、例えば、自分が属する集団の中に、熱中症発症リスクの警告情報を受け取って作業を中断した作業者がいることがわかれば、現場監督30から自分宛に警告情報が届いた場合に、素直に応じることが期待できる。
さらに、作業者10が所有するスマートフォン12で、当該作業者10の現在までの熱中症発症リスクの変化や、生体センサ11で取得された自身の心拍数、加速度データから計算された健康状態の評価結果や、消費カロリーなどの関連情報を画面に表示して、作業者10自身が参照することができる。また、作業者10が所有するスマートフォン12の表示画面に、当該作業者が含まれる集団の現在までの暑熱環境評価結果の推移を表示することもできる。作業者10は、自分が属する集団の暑熱環境評価結果を知ることで、自分が置かれている環境についてより正確に把握することができ、熱中症発症リスクを低減するための方策を採ることができる。なお、作業者10が所有するスマートフォンでの表示画面については、それぞれの目的に応じて必要事項を見やすく表示することができればよいため、本明細書での詳細な説明は省略する。
クラウドサーバ21は、インターネット20を通じて作業者10が所属する会社や事業所40内の管理コンピュータ41にも接続されていて、現場監督30のパソコン31に送信された作業者10の測定結果情報や、クラウドサーバ21が熱中症の発症リスクを判断するために用いた各種の情報を、リアルタイムで、事業所40の管理コンピュータ41に対して送信する。事業所40の管理コンピュータ41は、自身のデータ受信部42とデータ送信部43とを備えているため、インターネットを介して現場監督30のパソコン31とも接続されていて、現場監督30から作業者10に対して警告情報が正しく伝達されたか、作業者10が熱中症の予防対策をとったか、などの情報を確認し、必要に応じて所定の指示を行うことができる。また、それぞれの現場としての一つの集団、または、一つの作業現場における作業環境などの違いにより細分化された複数の集団についての暑熱評価結果を把握することで、より大局的な環境としての作業現場の状況を把握できるため、それぞれの作業場毎の対策、または、作業場は異なるが同じような作業環境に属する作業者に対する対策について検討でき、作業者10の熱中症発症リスクの回避を効果的にバックアップすることができる。
また、図1では明示していないが、クラウドサーバ21、現場監督30のパソコン31、および、事業所40の管理コンピュータ40は、インターネット20で接続されているため、パソコン31や管理コンピュータ40の側からクラウドサーバ21にアクセスすることができ、クラウドサーバ21でのデータ処理内容を制御したり、評価判定部22での判定プログラムを更新したり、クラウドサーバ21から熱中症予防管理に必要な情報を適宜取り出したりすることができる。
なお、上記説明においては、作業者が装備する携帯端末としてスマートフォンを例示したが、作業者の携帯端末はスマートフォンには限られず、携帯電話機やタブレット機器、さらには、熱中症発症リスク管理システムに特化した、情報の送受信が可能な専用の小型端末機器を用いることができる。また、現場監督が操作する管理者情報端末としては、例示したパソコン、特に図1で図示したデスクトップパソコン以外にも、ノートパソコン、タブレット型パソコン、小型サーバ機器などの、ネットワークを通じた情報の送受信とデータ表示、データ記録などが可能な各種の情報機器を採用することができる。
さらに、上記説明では、現場監督の管理者情報端末から作業者の携帯端末に警告情報を送信する形態を説明したが、警告情報がクラウドサーバの評価判定部で生成される場合には、クラウドサーバから直接作業者の携帯端末に警告情報を送信するようにシステムを構成することもできる。
さらに、作業者、現場監督、事業所内の管理部門を結ぶ情報伝達手段としては、上記例示したものに限られず、データの送受信を行う各種のデータ情報通信手段を利用できることは言うまでもない。
[熱中症発症リスク評価方法]
次に、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムで行われる暑熱環境評価方法について、まず、作業者個人についての熱中症発症リスク評価の具体的内容について説明する。
本実施形態にかかる熱中症発症リスク評価方法は、被評価者が装着する測定装置が備える心拍検出手段によって検出された被評価者の心拍データと、三次元の加速度センサにより取得された加速度データとに基づいて被評価者の行った作業の強度を示す作業負担指数を算出する。また、測定装置から得られた被評価者の服内温度と、被評価者が作業している現場の環境温度とに基づいて、被評価者の暑熱負荷指数を算出する。そして、これら算出された作業負担指数と暑熱負荷指数とに基づいて、熱中症を発症するリスクを示す熱中症発症リスク指数を算出する。
なお、以下の熱中症発症リスク評価方法の説明に当たっては、図2を用いて説明した本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムの各構成部分を適宜例示して説明する。
図4は、本実施形態で説明する熱中症発症リスク管理システムでの、評価判定部における熱中症発症リスク評価の流れを示すフローチャートである。
本実施形態にかかる熱中症発症リスク評価システムでは、インターネット上のクラウドサーバ21が備える制御手段である評価判定部22が、被評価者である作業者10が装着している測定装置である生体センサ11からの得られたデータと、クラウドサーバ21内の各構成部分から取得されたデータに基づいて、作業者10の作業負担指数と暑熱負荷指数とを算出して熱中症発症リスク指数を算出する。
図4に示すように、評価判定部22での評価が始まる(START)と、評価判定部22は、被評価者の作業負担指数の算出を開始する。
なお、評価判定部22での評価の開始(START)は、作業者10自身、または、管理者である現場監督30などが測定装置である生体センサ11の電源スイッチを「ON」にする、タイマーによって作業開始時間となると自動的に生体センサ11の動作が開始するように設定されている、生体センサ11を備えたアンダーシャツ18を作業者が着用したことを生体センサ11自体が検出して動作を開始する、などの各種方法で設定することができる。
作業負担指数の算出を行うために、評価判定部22は、まず、データ記録部24に評価対象の作業者10の過去のデータとして心拍データと加速度データである履歴データが記録されているか否かを確認する(ステップS101)。
当該作業者10が過去に本実施形態で説明する熱中症発症リスク管理システムでの評価対象となって、データ記録部24に作業者10の履歴データが記録されている場合(ステップS101で「Yes」の場合)は、その履歴データの集合から、加速度に対して心拍数が線形に変化する線形区間を求め、その線形区間に含まれる履歴データに対して回帰直線を求める。この履歴データから求めた回帰直線は、当該作業者の心拍応答の特徴(個性)を表している。この回帰直線の傾きを心拍応答係数αr、切片を切片心拍数βrと定義し算出する(ステップS102)。
その後、評価判定部22は、生体センサ11で測定された作業者10の心拍データの検出を行う(ステップS103)。
一方、当該作業者10の履歴データが存在していない場合、また、データは存在しているが前回のデータが記録されてから一定の期間(一例として1ヶ月)が経過している場合は、評価判定部22は当該作業者10の正しい標準化心拍数を算出できないと判断して、心拍データに基づかず加速度データのみから当該作業者10の作業負担指数を算出する。評価判定部22は、作業者10の動作を示す数値である加速度偏差を算出(ステップS110)し、加速度偏差のみに基づいて、作業者10の作業負担指数を算出する(ステップS111)。この場合、加速度偏差に適当な係数を掛ける等、所定の数式を用いて作業負担指数に変換すればよい。
データ記録部24に作業者10の履歴データが記録されている場合(ステップS101で「Yes」の場合)、心拍データを検出するに当たって評価判定部22は心拍データの信頼性を確保する。本実施形態の熱中症発症リスク管理システムでは、上述したように被評価者である作業者10の心拍データをより良好に取得できるよう、作業者10が着用するアンダーシャツ18の裏面18bに生体センサ11の電極部11bが配置されている。しかし、作業者の体の動きや体表面の発汗などの影響で、心拍を正しく検出できないことがある。このため、本実施形態の熱中症発症リスク管理システムでは、被評価者である作業者10の心拍データを正しく測定できていない場合に、誤ったデータで作業負担指数を算出して熱中症の発症リスク評価を誤ることがないように、心拍データが正しく取得できているか否かを確認している。
まず、評価判定部22は、心拍データの信頼性を評価するために心拍波形検出率を算出する(ステップS104)。
生体センサからサンプリングした生データは、被評価者の皮膚と電極との接触不良等の影響で、一定割合のノイズ(異常な心拍データ)が含まれている可能性がある。そこで1拍ごとのデータ(心拍間隔)に対して、例えば、心拍間隔が0.33秒以上かつ1.33秒以下であって、かつ、1つ前のデータとの差(差分心拍間隔)が0.15秒以下のデータを正常と判定してラベリングする。
正常/異常を判定する閾値は、任意に設定可能であるが、生理学的な見地に基づいて有り得ない心拍間隔のデータを除去できるように適当な数値を設定すればよい。そして、測定データを所定の時間幅でk個 の部分区間に分け、各部分区間ごとに正常とラベリングされたデータが区間全データ中に何割含まれているかを心拍波形検出率Qとして計算する。
次に、評価判定部22は、各部分区間ごとに心拍波形検出率を判定する(ステップS105)。
心拍波形検出率が基準値(例えば50%)以上であれば当該区間について信頼性があると判断し(ステップS105で「Yes」の場合)、心拍データを用いて作業負担指数を算出する(ステップS106)。
一方、心拍波形検出率が基準値(50%)未満であれば信頼性がないと判断し(ステップS105で「No」の場合)、当該区間については加速度データを用いて作業負担指数を算出するステップS110に進む。
なお、上記説明において基準値は一例であり、生体センサの性能や対象者の職種等によって適宜調整すればよい。例えば、動作の激しい職種では閾値を低く、動作の少ない職種では閾値を高く設定してもよい。
心拍波形検出率が50%以上である場合(ステップS105で「Yes」の場合)には、評価判定部22は、得られた心拍データから中央心拍数を算出する(ステップS106)。ここでは、ステップS104で設定した部分区間に対して、各部分区間ごとの代表値(中央値)をもって中央心拍数データとする。代表値は区間平均値であってもよいが、好ましくは、区間中央値である。測定装置から取得したデータにイレギュラーな値が少数含まれていても、その影響を排除できるからである。
さらに、評価判定部22は、同時に生体センサ11から得られた加速度データから、作業者10の動作状況を示す数値である加速度偏差を算出する(ステップS107)。
次に、履歴データと予め作成した標準心拍応答モデルとに基づいて、中央心拍数を補正し、標準化心拍数を求める(ステップS108)。
具体的には、心拍応答係数および切片心拍数、ならびに、標準心拍応答モデルのパラメータである標準心拍応答係数および標準切片心拍数を用いて、中央心拍数データを以下の数式(式1)で標準化心拍数に変換する。
HRS[k]=(αs/αr)(HR[k]−βr)+βs (式1)
ここで、
・中央心拍数データ :HR[k]
・標準化心拍数 :HRS[k]
・心拍応答係数 :αr
・切片心拍数 :βr
・標準心拍応答係数 :αs
・標準切片心拍数 :βs
である。なお、ここでkは、部分区間の番号を表す。
標準心拍応答モデルとは、大人数を測定対象として得られた大規模データを基に作成された心拍応答モデルである。加速度(身体の動き)に対するヒトの標準的な心拍応答を表したモデルで、各種パラメータ及び所定の数式で表現できる。
標準心拍応答モデルを求めるための測定結果の一例を、図5に示す。
図5(a)は大規模データの全て(約300万点)をプロットしたもので、濃淡はデータの密度を表している。図5(a)中に示す線51が5%のデータラインを、線52が25%のデータラインを、線53が50%のデータラインを、線54が75%のデータラインを、線55が95%のデータラインを示している。
これに対して各区間の中央値を求めたものが図5(b)の×印であり、各中央値に対して当てはめた近似曲線FHR(符号76)が標準心拍応答モデルを表している。
近似曲線FHRは種々の曲線あてはめ手法によって求めることができ、加速度偏差ARMSを与えたとき、推定標準化心拍数FHRを与える関数FHR(ARMS)として表現できる。また、FHRの直線的に変化している部分(加速度が0.05あたり〜0.45あたりの区間)の傾きが標準心拍応答係数に相当し、近似曲線の切片が標準切片心拍数に相当する。
なお、大規模データは、当該現場における複数の作業員の過去数日間のデータであってもよいし、別の現場で予めサンプリングしておいた蓄積データであってもよい。好ましくは、当該作業者と同様の作業に従事する大人数の作業者を測定対象として得られた大規模データを基に、標準心拍応答モデルを作成するのがよい。これは当該作業に最適化された心拍応答モデルであり、その作業に従事する作業者の典型的な心拍応答を表すと考えられる。大規模データの基になる人数に特に決まりはないが、サンプリング数が多い方がより高精度に心拍応答を近似できる。好ましくは5人以上、より好ましくは50人以上である。蓄積期間についても特に決まりはないが、好ましくは同じ現場で2日以上、より好ましくは5日以上のデータを取得することが好ましい。
このようにして得られた標準化心拍数と加速度偏差とに基づいて、評価判定部22は作業者10の作業負担指数を算出する(ステップS109)。
このとき、評価判定部22は、標準化心拍数を用いるか、それとも推定標準化心拍数を用いるかを、標準化心拍応答モデルに基づいて作成された補正マップを利用して判定する。測定装置である生体センサ11から得られた心拍データと3次元加速度センサの数値から、中央心拍数と加速度偏差とを求める具体的方法、補正マップを用いた心拍データの選択基準等については、後に詳述する。
一方、心拍波形検出率Qが基準値(上記例では50%)以上ではない場合(ステップS105で「No」の場合)には、評価判定部22は、得られた心拍データの信憑性が低いと判断して中央心拍数の算出は行わずに、生体センサ11から得られた加速度データから作業者10の動作状況を示す数値である加速度偏差を算出する(ステップS110)。この場合には、加速度偏差のみに基づいて、評価判定部22は作業者10の作業負担指数を算出する(ステップS111)。
ステップS111で得られた作業負担指数は、ステップS109で得られた作業負担の数値と比較して、心拍データが反映されていない分精度が劣ると考えられるが、作業者10の動作が連続して行われていることから、心拍データが得られていないことを理由としてその間の作業負担指数を算出しないよりも連続して作業負担指数が得られていることが好ましい。
さらに評価判定部22は、生体センサ11から得られた作業者10の服内温度データと、作業者10が作業する現場での環境温度データとに基づいて、作業者10の暑熱負荷指数を算出する(ステップS112)。作業現場の環境温度データは、クラウドサーバ21の気象情報取得部25により取得された作業現場の周囲の気温データ、作業者が屋内で作業している場合などではその作業場に配置された温度センサから得られる温度情報などに基づいて、取得することができる。
なお、作業者10の服内温度データと環境温度データとに基づいて暑熱負荷指数を算出する具体的な手順については、追って詳述する。
そして、評価判定部22は、得られた作業負担指数と暑熱負荷指数とに基づいて、当該作業者10の熱中症発症リスクを熱中症発症リスク指数として算出する(ステップS113)。
本実施形態に示す熱中症発症リスク評価システムにおける熱中症発症リスク指数は、作業負担指数と暑熱負荷指数との線形和として判断できる。このため、熱中症発症リスク指数の値が大きいほど、当該作業者が熱中症を発症するリスクが高くなり、熱中症発症リスク指数の大きさを領域として規定することで、熱中症発症リスクが、高い(=危険)な状態にあるのか、やや高い(=注意)な状態にあるのか、それとも低い(=安全)な状態にあるのかをランク付けすることができる。このため、評価判定部22で算出された熱中症発症リスク指数のランクに応じて、作業者10自身が、または、監督者である現場監督30が、作業を停止して休憩する、作業負担を減らす、または、服内温度を下げるなどして暑熱負荷を低減する、などの対応を採ることができ、熱中症の発症を効果的に回避することが可能となる。
[熱中症発症リスクの評価方法]
ここで、本実施形態にかかる熱中症発症リスク評価システムにおいて行われる、個々の作業者についての熱中症発症リスク評価指標である、熱中症発症リスク指数を算出するアルゴリズムについて説明する。
(作業負担の推定)
<a.前処理>
まず、心拍データと加速度データについて、作業負担指数を算出する前処理を行う。
心拍データの前処理は、図4のフローチャートを用いて説明したとおり、作業者10が装着している生体センサ11が検出した心拍データから、中央心拍数を算出する(図4におけるステップS106)ことで行われる。
より具体的には、部分区間の心拍波形検出率が50%以上であった場合に、部分区間に含まれる心拍データの取得間隔から部分区間あたり(例えば、過去1分間あたり)の心拍数に換算して中央心拍数HRを得る。
一方、加速度センサによって得られた加速度データについては、以下の手続きによって過去1分間の平均値ΔAを求める。
1)不等時間間隔データの指数移動平均
x軸、y軸、z軸それぞれの方向の加速度データ{Ax(t)}、{Ay(t)}、{Az(t)}について、時定数を10secとして、統計学の手法である指数移動平均法を用いてそれぞれの軸方向における加速度データの指数移動平均を求める。時定数は特に限定されないが、例えば5〜10secの範囲で加速度センサの性能に応じて適宜決定すればよい。
ここでは、x軸、y軸、z軸それぞれの方向の指数移動平均を、それぞれ{Sx(t)}、{Sy(t)}、{Sz(t)}とする。
2)指数移動平均の除去
各軸の加速度データから、上述の指数移動平均を除去し、トレンド除去された時系列加速度を求める
たとえば、x軸の場合は、「Ax(t)−Sx(t)」となる。
3)2乗和の計算
トレンド除去された時系列加速度について、以下の式(式2)を用いて各時刻での2乗を計算して和を求める
4)1分ごとの加速度の平均
上記求めた2乗和「ΔA2(t)」の1分ごとの平均値「ΔA2 ave」を計算する。ここでは、データ点数の数で割って平均値とする。また、加速度の2乗平均「ΔA2 ave」の平方根「ΔAave」を計算する。ここで、ΔAaveは加速度偏差ARMSである。
<b.異常値の除去>
心拍データから得られた心拍数のデータについて、非数値データと、心拍数が40以下のものと180以上のものとを異常値として除去する。
また、加速度データについては、非数値データと、「ΔAが0.05以下、もしくは、0.55以上のデータを異常値として除外する。
<c.切片心拍数と心拍応答係数の計算>
履歴データの集合に関して、加速度偏差に対して中央心拍数が線形に変化する線形応答区間を設定し、その線形応答区間に含まれるデータに対して回帰直線を求める。この回帰直線の傾きが心拍応答係数αr、切片が切片心拍数βrとなる。
回帰直線の当てはめ方法については、特に限定しない。例えば、加速度偏差が0.05〜0.4の区間を線形応答区間と設定し、その間をm個の部分区間(mは例えば3〜7)に分ける。次に、各部分区間に関して中央心拍数と加速度偏差の中央値をそれぞれ求める。そして、求めたm点の中央値座標に対して回帰直線をあてはめる。
<d.作業負担指数の計算>
図4において、ステップS108で示したように、被測定者である作業者10の履歴データがある場合は、この履歴データと標準心拍応答モデルとに基づいて、標準化心拍数HRSが計算される。標準化心拍数HRSを算出することで、被測定者個々の特性による心拍データから作業負担指数を算出する上での個人差を補正することができる。
一方、推定標準化心拍数は、標準心拍応答モデルの近似式FHR(ARMS)を用いて、被測定者の加速度偏差ARMSから標準的な心拍数を推定するものである。実際の作業負担指数算出においては、標準化心拍数と推定標準化心拍数のどちらを信頼するかがポイントとなる。本実施例では、標準心拍応答モデルに基づいて作成した補正マップを用いて、どちらの心拍数を選択するかを判定し、補正心拍数HRsを得る。
図7は、補正マップの第1の例である。
図7に示すように、補正マップには、標準切片心拍数βsをy軸切片とし直線部分の傾きが標準心拍応答係数αsである近似曲線FHR71が記載されている。ここで近似曲線FHR71を判定線とする。なお、加速度偏差が0.45を超える部分からは、図7に示すように判定線71は直線ではなくなり、加速度偏差に対する中央心拍数の上昇度合いが低下していくことが判明している。
図7に示す補正マップでは、被測定者である作業者の動作を示す加速度偏差が0.2である部分に境界線72が設けられている。加速度偏差が0.2よりも小さい領域では、動作による心拍数の変化よりも情動による影響が大きく現れ、加速度偏差が0.2よりも大きい領域では、体が動くことによる心拍数の変動が大きいと考えられるからである。
図7に示す補正マップでは、心拍数と加速度偏差との関係がマップ中ハッチングで示された領域73および領域77の範囲となるように補正される。たとえば、加速度偏差が0.2までの範囲では、標準化心拍数が大きく判定線71よりも上側に位置する場合には、図中矢印74として示すように判定線71の数値、すなわち推定標準化心拍数が補正心拍数HRsとして用いられ、標準化心拍数が標準切片心拍数βsよりも小さい場合には、標準切片心拍数βsの値を補正心拍数HRsとして採用する。また、標準化心拍数が判定線71以下かつ標準切片心拍数βs以上の場合は、標準化心拍数をそのまま補正心拍数HRsとして採用する。このようにすることで、加速度偏差が0.2よりも小さな領域では、推定標準化心拍数よりも大きな標準化心拍数が検出された場合は情動による影響としてこれを排除することができる。
一方、加速度偏差が0.2よりも大きな領域では、前述の標準心拍応答係数αsと同じ傾き、すなわち、近似曲線FHRの直線部分と平行に、心拍数値が大きすぎると判断される領域を規定する平行線76を引いて、この平行線76と判定線71とで挟まれた領域77内が正しい心拍数が検出できたと判断する。この領域77に該当する場合には、そのままの標準化心拍数を補正心拍数HRsとして用いて作業負担指数が計算される。標準化心拍数が、上限を示す平行線76よりも大きい場合は、図中矢印78として示すように、平行線76上の値を補正心拍数HRsとして採用することでエラーの影響を排除する。また、判定線71よりも下側の領域に現れた数値は、図中矢印79として示すように判定線71上の数値、すなわち推定標準化心拍数を補正心拍数HRsとして採用することで、被測定者が一定以上の動きをしているにもかかわらず低すぎる心拍数値が作業負担指数の算出に用いられることを回避できる。
図8に示す補正マップは、検出された心拍データの信頼性がより高いと判断される場合に使用される補正マップである。
心拍データの信頼性が高い場合としては、生体センサ11より取得された心拍データの検出率が判定基準(一例として50%)よりも高く、例えば、80%を超える状態が続いているような場合が想定できる。
図8に示す補正マップは、基本的には図7に示した補正マップと同様であるが、加速度偏差が0.2以上であって、標準化心拍数が判定線81よりも低い領域にある場合が異なっている。図8に示す、心拍データの信頼性が高い場合には、判定線81の下方に、加速度偏差0.2における標準切片心拍数βsの位置から判定線81に平行な下限を規定する境界線88を引いて、境界線88と判定線81との間の領域89の標準化心拍数を補正心拍数HRsとしてそのまま用いるとともに、標準化心拍数が境界線88よりも小さい場合には、図中矢印91として示すように境界線88上の値が補正心拍数HRsとして採用される。
このようにすることで、広い範囲で標準化心拍数を採用して、より精度の高い作業負担指数を算出することができる。
<e.作業負担の評価>
補正マップを用いて得られた補正心拍数HRcに基づいて、以下のように作業負担指数Wを計算する。
まず、以下の数式(式3)を用いて補正心拍数HRcを代謝当量METsに変換する。
METs=aMETs×HRc+bMETs (式3)
ここで、aMETsとbMETsは所定のパラメータであり、呼吸計測実験に基づいて決定することができる。
次に、以下の数式(式4)を用いて代謝当量METsを作業負担指数Wに変換する。
W=aW×METs+bW (式4)
ここで、aWとbWは所定のパラメータである。
例えば、aW=0,2、bW=−0.2と設定した場合、作業負担の評価としては、作業負担指数Wが0.6以上であれば高代謝率の作業、すなわち、負担が大きい作業、Wの数値が1以上の場合は、きわめて代謝率の高い作業、すなわち作業者への負担がとても大きな作業とすることができる。
(暑熱負荷の評価)
測定装置11により得られた服内温度Tiと、環境温度として得られた外気温Toとを用いて、暑熱負荷指数Hを以下の式(式5)によって求める。
なお、暑熱負荷指数Hが0より小さい場合は、H=0とする。
暑熱負荷指数Hが0.6以上の場合は、暑熱負荷が比較的高い状態、暑熱負荷指数Hが1以上である場合は、暑熱負荷が極めて高い状態であると評価することができる。
(熱中症発症リスクの評価)
上記計算によって得られた作業負担指数Wと暑熱負荷指数Hとを用いて、下記式(式6)として示すように、評価対象の作業者10の熱中症発症リスク評価指数Rを求める。
ここで、aは、評価対象の作業者の暑熱順化に対応して規定される数値であり、暑熱順化ありの場合a=−1.8、暑熱順化なしの場合a=−1.3とする。
以上のようにして求めた熱中症発症リスク評価数値Rについて、Rが0.6未満の場合は発症リスクが低リスク、Rが0.6以上で1.0未満の場合は要注意の警戒レベル、Rが1.0以上の場合は高リスクであり熱中症発症の危険レベル、と判定することができる。
なお、実際に熱中症の発生まで検証することはできないため、熱中症の発症リスクの判断基準を定めるに当たっては、熱中症の発症リスクをより厳しく判断できるように、すなわち、より安全サイドにたって決定すべきである。
(熱中症発症リスクの連続評価)
作業者10が装着する測定装置である生体センサ11から得られる測定結果などに基づいて、当該作業者の熱中症発症リスクを連続的に評価する場合には、暑熱負荷指数Hと作業負担指数Wそれぞれの指数移動平均値を、サンプリングの間隔を1分間として以下の式(式7)、(式8)から求める。
なお、ここでw1=2/31、w2=2/11とする。
さらに以下の式(式9)から、熱中症発症リスク指数Rの指数移動平均値が求まる。
たとえば、熱中症発症リスク指数Rの指数移動平均値が1以上の状態が30分以上続いた場合には、熱中症を発症するリスクが極めて高い状態であると判断されて、作業者に休憩を促すなどの熱中症を発症しないように対応策を採る。
(2次元マップでの表示)
上記の式(式6)からわかるように、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムにおいて熱中症発症リスクを表す指数Rは、作業者10に対する暑熱負荷指数Hと、作業負担指数Wとの線形和として表現される。
このことを利用して、熱中症発症リスク指数を、暑熱負荷指数と作業負担指数とをそれぞれ軸とする2次元のマップ上に熱中症発症リスク指標として表示することができる。たとえば、2次元のマップ上に、管理者である現場監督30が管理する複数人の作業者10それぞれにおける、現在時点での熱中症発症リスク指数に応じた記号を表示することで、 現場監督30は、管理対象の作業者の全体的なリスク指標を一目で把握することができる。なお、作業者10の熱中症発症リスクの程度を表示する表示画像について、具体的な説明は省略する。
[集団としての暑熱環境の評価]
以下、本願で開示する暑熱環境評価システムにおける、集団としての暑熱環境の評価について説明する。
以下で説明するのは、上記でその内容を説明した建設現場で働く作業員についての熱中症発症リスク評価システムにおいて取得された、対象者(被評価者)である作業員の心拍数に基づいて、当該作業者が属する集団の環境的な暑熱負荷を評価する例である。
本願で開示する暑熱環境評価では、労働現場における熱的な条件と、作業員が作業することで加わる作業負担とを評価し、例えば、評価対象の集団が置かれている環境が熱中症の発症リスクが高い状態であるか否かを判断することができ、この評価結果を、熱中症を発症するリスクが高い環境で作業する作業者の熱中症発症リスクを低減するために活用することができる。
(核心温について)
人間に対する熱的負荷の評価に、核心温を用いることが知られている。
核心温とは、身体の内部の温度であり、脳や心臓などの重要な臓器の働きを保つためにほぼ一定(安静時で37℃程度)に維持されている。生体の体温調節機能が効果的に働く領域では、熱放射と熱産生との熱収支バランスが保たれるために、核心温は外気温などの環境要因が変化してもほぼ一定となる。ここで、熱放散としては、発汗による蒸散、呼吸、皮膚からの放熱などが挙げられ、体表面積や衣服の状態、気温・湿度・風などの環境条件によって、熱放散の度合いが変化する。一方の熱産生としては、運動・労作時の筋運動、筋の振動(ふるえ)、基礎代謝や体温調節性の非ふるえ熱産生、日射・高温環境などの環境からの熱流入が挙げられる。
このような熱放散と熱産生とのバランスがとられた結果としての、核心温と体表を含む身体の周辺部分の温度の分布例のイメージを図9に示す。
図9において、図9(a)が気温20℃における安静時の状態、、図9(b)が気温35℃という高温環境下での安静時の状態、図9(c)が気温35℃という高温環境下での作業時の体温の分布を示している。
図9(a)に示す、気温25℃の安静時には、核心温は37℃に維持されているが、腕から手、腰から脚部へと体の中心から遠ざかるにつれて温度が下がっていることがわかる。このように、外気温が25℃と低い場合のように、身体の中心部の核心温は37℃であるが手足の温度が低くなっている状態であれば、作業負荷が加わってもすぐに核心温の上昇にはつながらず、核心温を37℃に保った状態で作業を行うことができる。
一方、図9(b)に示すように、気温が35℃と高い場合には、安静時であっても身体の周辺部の温度が核心温である37℃に近い温度(一例として36℃)となっている状態では、作業負荷が加わることによる熱産生を吸収することができず、また、発汗や蒸散などの身体の熱を逃がす作用が乏しくなる。
このため、図9(c)に示すように、気温が35℃と高い状態でさらに作業負荷が加わると、核心温が38℃と37℃を超えてしまうこととなる。
上述のように、核心温は脳、心臓などの重要な臓器が配置されている身体の中心部の温度であり、核心温が上昇すると熱中症発症リスクが高くなる。従来の研究結果から、容易に作業ができる目安温度の上限が38℃、基本的な熱負担の限界値が38.3℃と考えられており、核心温が39℃となると作業を中止することが望ましく、39.2℃以上となると、それ以上の熱暴露を中止する必要が生じる緊急事態であると考えられている。このように、核心温を把握することで、その状態で作業を続けてよいか、休憩を取るなど核心温を下げる努力をするべきか、直ちに涼しい場所に移動する必要があるか、などの熱中症の発症を回避する上で重要な暑熱環境の評価を行うことができる。
(心拍数に基づく核心温の評価)
一方、人間の核心温と心拍数の間には、強い相関関係があることが知られている。このため、上述した熱中症発症リスク評価システムでのように、ウェアラブルの生体センサを用いて作業者の心拍数を随時把握することで、当該作業者の核心温を推定することができる。
この際、心拍数の変化と核心温の変化との間には相関が認められるものの、心拍数がいくつの時に核心温が37℃であるかという、具体的な数値については個人個人のばらつきが大きい。発明者らは、これらの知見に基づいて検討を行った結果、熱中症発症リスク評価システムにおける対象者である作業者を、その作業環境や作業負担に応じて集団に分け(グループ化)、その集団に属する作業者の心拍数の平均値(単純平均)を取得することで、心拍数と核心温との相関関係に基づく環境評価を心拍数の具体的数値についての個人差を吸収して行うことができることを見い出し、集団に対する暑熱環境評価方法を発明した。
(集団(=グループ)の形成)
本実施形態で示す暑熱環境評価方法では、まず、集団作成手段によって評価対象の集団(=グループ)を形成する。上述したとおり、対象者である作業者の心拍数は、作業者が作業をする気象環境などの周辺環境から与えられる熱的負荷と、作業内容によって異なる作業負荷とによって変化する。建設現場において、同一の作業現場でほぼ同じ作業を行う作業者の集団には、ほぼ同じ大きさの熱的負荷と作業負担とがかかることになると考えられる。このように、本実施形態にかかる暑熱環境評価方法では、工事現場における作業場所と作業内容を基準として評価対象である集団が形成される。
集団の形成は、評価したい暑熱環境の大きさに基づいて定めることとなり、例えば、一つのビルの建設現場全体、建設現場において直射日照が当たっている場所か陰の中の作業現場かなど、より細分化された現場ごと、フロア毎などの作業領域に基づいた設定、重機を操作する作業に従事しているか、それとも建設資材を運ぶ作業をしているかなどの、明らかな作業負荷の大小に基づく設定など、それぞれの集団に複数の対象者である作業者が含まれていることを前提として、適宜形成することができる。本実施形態にかかる暑熱環境評価システムでは、これら対象者の属性に基づいて集団を形成する集団形成手段の機能を実装し、対象者に紐つけられた属性情報に基づいて、集団を自動的に形成できるようになっている。
なお、集団に含まれる作業者の人数について、特に制限はないものの、集団評価を行うことで作業者個人個人のばらつきを低減させるという目的からは、5〜6名程度以上の集団とすることが望ましく、10名以上の集団であればより好ましい。一般的には、心拍が20(bpm)程度上昇すると核心温が1℃上昇する関係にあることがわかっている。また、ほぼ同じ条件下における心拍数の個人差は±10(bpm)程度であることから、測定データの数(n数)による測定精度は「±10/n1/2」となり、集団を構成する作業者数nが10名であれば核心温の精度は約±0.15℃、nが100名であれば核心温の測定精度は約±0.05℃となる。
なお、本実施形態にかかる集団評価方法における評価対象の集団としては、リアルタイムで心拍を計測している作業者に限らず、作業者の心拍データの履歴の中からほぼ同一の環境下で作業している際に測定された心拍データを取得して、集団を構成する一作業者のデータとして取り扱うことができる。具体的には、5名ずつの集団のほぼ同じ温度下における2日間の測定データを用いて、n=10名の集団の暑熱環境を評価することができる。
また、集団形成手段は、同じ暑熱環境、作業環境に置かれている作業者について、例えば、年齢や作業経験期間の長短などの指標でさらに細分化して集団を設定することで、同じ外的環境下でも被測定者の個人的な条件の違いによる暑熱負荷の差異を検証するなど、特定の条件下における暑熱環境を評価することができる。
(熱的条件の違いによる心拍数数値の変化)
次に、本実施形態にかかる集団評価方法によって取得された暑熱環境評価のためのデータの例を説明する。
なお、以下の各図において、集団心拍数とは、対象者である作業者の1分間の心拍数(bpm)の平均値であり、上述の熱中症発症リスク評価システムにおいて取得された心拍データから、ノイズを除去した状態での心拍数の数値そのものである。また、平均値は、複数の作業者の心拍数の数値の単純な算術平均であり、誤差を除去するための10分間に正しく取得できた心拍数値を平均化している。
図10は、同一の建設現場で働く作業者の集団における平均心拍数の時間経過にともなう変化を示す図である。
図10のデータは、作業者10名の集団における、昼食休憩後2時間に相当する13:00〜15:00の平均心拍数の変化を示している。図10において、破線101で示されるものが、最高気温が25℃の平均的な気温であった日のデータ、図10中に実線102で示されるものが、日中の最高気温が35℃を超えた猛暑日におけるデータである。
2つのデータにおいて作業を行っている作業員はほぼ同じであり、作業内容も同じであった。このように、対象者である作業員にかかる負担がほぼ同じ条件であったにもかかわらず、外気温が35℃を超えた猛暑日のデータ102では、作業開始時からすぐに平均心拍数が高くなり、特に14:00以降では平均的な温度であった日の場合と比べて、平均心拍数が15bpm以上も大きくなっていることがわかる。前述のように、心拍数が20bpm程度上がれば核心温が1℃上昇することから、猛暑日において作業者の核心温は38℃近くまで上昇しており、熱中症を発症するリスクが高くなっていたことがわかる。
図11は、同じく建設現場で働く作業員からなる集団の平均心拍数の変化を示す図である。
図11では、14:00から16:00までの2時間の平均心拍数の変化を示しており、途中15:00から20分間の休憩(図中のハッチング部分)をとった場合の平均心拍数の変化が示されている。
図11において、破線111で示されるのが、休憩時間中に扇風機を使用した集団(12名)の平均心拍数の変化を示し、図11において、実線112で示されるのが、休憩時間中に扇風機を使用しなかった集団(13名)の平均心拍数の変化を示している。なお、調査は同じ日の同じ工場内で行われ、、環境温度は35℃を超えていた。
図11からわかるように、扇風機を使用した集団では、休憩時間の終了時点で平均心拍数が80bpmと作業前の安静時の心拍数の水準に戻っている。これに対し、休憩時間に扇風機を使用しなかった集団では、休憩に入ると同時に平均心拍数の低下が見られるものの、平均心拍数112の低下が96(bpm)付近で止まり、20分間の休憩時間の終了時でもそれ以下に下がることはなかった。そして、休憩時間の終了後の作業開始とともに平均心拍数112が上昇し、休憩時間後の作業では、休憩時間に扇風機を使用した集団と比較して平均心拍数が15bpm程度高い状態が続いた。このことから、同じ時間休憩した場合でも、休憩時に扇風機を使用することで核心温度を約0.6℃程度下げることができることがわかった。
このように、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムによれば、評価対象の集団における暑熱負荷を、気温や休憩の取り方などの環境条件の違いに応じて把握することができる。このように、実際に作業員に加わる暑熱負荷の大きさを、平均心拍数を介して核心温を把握することで評価できるため、集団が置かれた環境としての暑熱負荷を現実に即して、正確に評価することができる。また、対象者である作業員の心拍数を随時把握することで、例えば、休憩を取った直後の状態における暑熱環境の評価など、迅速にリアルタイムでの環境評価を行うことができる。
このように、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムを利用することによって、正確、かつ、迅速な暑熱環境評価を行うことができ、より効果的な熱中症予防対策を採ることができるようになる。また、休憩場所に扇風機を設置するといった、環境改善の効果を定量的に見える化することができる。
図12は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムで取得された、対象者の集団の平均心拍数の1日の変化を示す図である。
図12では、作業員13名の集団の平均心拍数の1日の変化を示している。図12において、左側の図が午前中の8:00から12:00まで、右側の図が午後の13:00から17:00時までの平均心拍数を示し、昼食休憩中の12:00から1:00までは、心拍データの取得を行っていなかったため、空隙として表示している。また、図12において、破線121は最高気温が25℃の日、図12において実線122はWBGT指数が31℃以上(最高気温35℃以上)であり、熱中症の発症リスクが高いため十分な注意が必要であると評価された日のデータである。
図12において、8:30前後において平均心拍数が高くなっているのは、作業開始時の作業強度が高い職種の作業者を対象者としたからである。この時点においては、平均心拍数121と122に見られる心拍数の上昇は、主に作業負担によって生じている。
しかし、8:30以降の心拍数には大きな違いが生じており、最高温度が25℃の日の平均心拍数121は95bpm程度に下がっているのに対し、WBGT指数が31℃以上の日は、平均心拍数122は低下することなく、110bpm程度まで高くなって、その値を維持している(図12中の白矢印aの部分)。このように、外気温や湿度などのWBGT指数として表される熱中症発症リスクの評価値が高ければ、作業者の平均心拍数が下がりにくく、熱中症発症リスクがかなり高くなっていると判断される、平均心拍数110bpm前後となっている。なお、このとき、作業者の核心温は38℃を超えていると推定できる。
いずれの日においても、作業者は、10:00から15分間の休憩を取っている(図12左側のハッチング部分)。このとき、最高温度が25℃の日の平均心拍数121も、WBGT指数が31℃以上の日の平均心拍数122も、安静時の心拍数と評価される80bpmに下がっている。これは、まだ午前中で気温が完全には上がりきっていないこと、さらに、まだ通算の作業時間も短く作業者の体力の消耗が少なかったことなどから、15分間の休憩で、核心温が平常状態の37℃まで下がったからであると考えられる。
しかし、休憩時間終了後の作業の再開にともなって、特にWBGT指数が31℃以上の日の平均心拍数122は急激に上昇し、最高温度が25℃の日の平均心拍数と比較してやはり15bpm程度高くなっている(図12中の白矢印bの部分)。
図12の右側の午後の作業時の平均心拍数についても、作業開始とともにWBGT指数が31℃以上の日の平均心拍数122は最高気温が25℃の日の平均心拍数121よりも高くなっている(図12中の白矢印cの部分)。ただし、午後の気温が高い時間帯であることから、最高気温が25℃の日でも平均心拍数が105bpm程度となっていて、作業者の集団の暑熱負荷は、熱中症発症リスクがかなり高くなっている状態であると判断される。このように、建設現場などの肉体的負荷が強くかかる作業場で従事する作業者には、最高気温が25℃であっても、作業時間帯によっては、一定以上の熱中症発症リスクが生じていることが理解できる。
また、気温も高く、作業者の肉体的疲労の蓄積も大きくなっていることが理由となって、午後の休憩(図中右側のハッチング部分)では、最高温度が25℃の日の場合には安静時の心拍数レベルに低下しているのに対し、WBGT指数が31℃以上の日は、15分間の休憩時間の終了時点では、平均心拍数が約90bpmと安静時と比較して10bpmも高い状態に留まっている(図12中の白矢印dの部分)。このように、休憩時間の終了時点で平均心拍数が十分に下がっていない状態とは、作業者に熱的負荷による疲労が大きく残っている状態であり、熱中症の発症リスクが高くなっている状態であると評価できる。
このように、本実施形態にかかる暑熱環境評価方法による評価結果では、WBGT指数として表される気温と湿度という外的な気象条件のみではなく、作業者の作業負担の大きさや休憩を取ることによる体力回復など、実際に作業者が置かれている暑熱環境の評価が行われていることが確認できた。
(熱中症リスク低減対策の実効評価)
上述のように、本実施形態にかかる暑熱環境評価では、外的な要因のみではなく作業負担を含めた、作業者の集団が実際に置かれている環境についての評価を行うことができる。このことを利用して、熱中症対策としての様々な施策について、どのくらいの実効性が認められるかを評価することができる。
図13は、休憩時間における作業者の平均心拍数の変化を示す図である。
より具体的には、図13は、休憩時間を15分間から30分間に延長することによる平均心拍数、すなわち核心温の低下度合いを評価した際の評価結果である。なお、図13のデータは、図12で示した建設現場で作業する13名の作業員の集団についての暑熱環境評価であり、図12の測定結果と同様に、最高温度が25℃の日における平均心拍数131と、WBGT指数が31℃以上の日における平均心拍数132とを示している。
図13に示すように、休憩時間の間、平均心拍数はほぼ直線的に下がっている。そして、外的な熱ストレスが小さい最高温度が25℃の日の場合には、約20分で安静時の心拍数レベルである80bpm前後まで低下している。これに対し、外的な熱ストレスが大きなWBGT指数が31℃以上の日は、30分間の休憩時間では、平均心拍数は85bpmまでしか低下しておらず、安静時の水準まで核心温が下がっていないことがわかる。一方で、休憩時間が長くなれば、平均心拍数が徐々に低下する傾向は明らかであるから、休憩時間を30分間以上に延長することで、図13中に点線133として示したように、平均心拍数のさらなる低下が期待できる。
このように、外的な熱ストレスを変えて、集団の平均心拍数を把握することで、例えば、集団の平均心拍数が十分に低下するまで休憩時間を延長するなどの対策を採用することで、熱中症発症リスクを低下させることができることがわかる。また、図13に示すように、WBGT指数が31℃以上となるような大きな熱ストレスがかかる状態では、さらに休憩時間を長くすることや、休憩室の温度を下げる、休憩場所に庇を設置して直射日光を遮る、などの環境改善を行い、さらに効果的な状態での休憩を取ることが必要であると評価することができる。
本実施形態で説明した、暑熱環境評価方法によれば、仮に、体感としての効果と、実際に核心温を下げて熱中症発症リスクを低下させる実効的な効果とに差があるような場合であっても、客観的なデータとして定量的に評価することができる。
(熱中症発症リスク評価指数としての評価結果)
次に、本実施形態にかかる暑熱環境評価の評価結果例として、以上説明してきた作業者の集団平均心拍数からの核心温についての評価と、前述の熱中症発症リスク評価システムにおいて、心拍データと加速度データとから求められたそれぞれの作業者の暑熱作業リスク指数(作業負担指数)の平均値を用いた評価結果について、WBGT指数との違いを含めて説明する。
図14は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムを用いた平均心拍数に基づく熱中症発症リスク評価の一例を示す図である。また、図15は、本実施形態にかかる暑熱環境評価システムを用いた作業負担指数の平均値に基づく熱中症発症リスク評価の一例を示す図である。
図14は、最高気温が39℃を記録した酷暑日における作業者の平均心拍数141と、作業現場周辺の気温142の変化を示す図である。図14に示すように、12時から14時にかけて、周辺の気温142が39℃前後となっている。しかし、この日の作業者の平均心拍数は、午前中の9時前後と、午後14時〜15時にかけて、熱中症発症リスクが極めて高い核心温が38℃を示すライン143を超えている。
このように、作業者が、午前と午後の2回、さらに、12時から13時までの昼食時に休憩を取ることや、直射日光の当たり具合、作業内容による肉体的負担の大小によって、核心温の変化、特に熱中症の発症リスクが高くなる時間帯は、気温の変化のみに依存しないことがわかる。
また、図15に示される、作業負担指数として表された暑熱作業リスクの平均値151は、午前中は「要注意」状態の基準となる指数0.8のライン153を超える程度であったが、午後の14時前後には「危険」状態と判断される指数1.0のライン154を大きく超える状態となっている。このように、身体の動きを示す加速度データと心拍データとの両方に基づいて、作業者の実際の暑熱負荷を示す作業負担指数の平均値を採った集団評価を行うことで、作業内容や、作業時間の経過による疲労の蓄積をも考慮した、作業者の集団に対するより正確な暑熱環境評価が行えることがわかる。
これに対し、図15に実線152で示すWBGT指数は、一日における数値の変化に乏しく、また、気温(図14の142)が39℃を超えているにもかかわらず、最大でも31℃となっている。これは、WBGT指数は、気温と湿度とに基づいて決定される数値であり、測定日の湿度が40%程度と低かったことが原因となっていると考えられる。また、WBGT指数は、あくまでも外部環境としての暑熱環境を評価する指数であり、発汗などの作業者の体温を下げる作用に与える影響が大きい作業服内の暑熱環境を評価できていないことが原因として考えられる。
このように、従来熱中症発症リスク評価などの暑熱環境評価数値として利用されてきたWBGT指数では、そのままでは作業者の作業環境に追従した暑熱環境評価ができない。このため、WBGT指数を用いた熱中症発症リスクの評価では、作業状況や作業服の状況などを勘案して、より実情に合った暑熱環境評価数値に変換して利用する必要が生じる。しかし、実際の作業状態をどのように想定するかによって、この数値が異なり、一般化された変換指数のデータはあるものの、どの程度の正確性を持って、現実の作業者の暑熱負荷が評価できているかは定かではない。また、図15を用いて示した暑熱環境の評価結果にも表れているように、日本において近年多発する最高気温が40℃前後となる酷暑日における熱中症発症リスク評価に、WBGT指数が十分に対応できているとは考えにくい。
これに対し、本願で開示する作業者の生体情報を集団として把握して、心拍数や作業負担指数の平均値を用いて暑熱環境を評価する方法によれば、実際に作業者の集団が置かれている暑熱環境を正確に評価することができる。
なお、上記実施形態では、建設現場の作業員を対象者として、熱中症の発症リスクを評価する評価システムで得られた作業者の生体情報を用いて(いわば、“観測ポスト
“として用いて)、集団としての暑熱環境リスクを評価する評価方法と評価システムについて説明した。
しかし、本願で開示する集団評価方法、集団評価システムは、上記例示した物には限らず、特定の集団を構成する複数の対象者の生体情報を取得することができ、取得された生体情報に基づいて集団の環境を評価することができれば、対象者個人の体調などを評価する、例えば、運動選手のトレーニング時における体調管理や、高齢者施設での入所者の体調管理システムなど、他の評価・管理システムに加えて集団としての環境評価を行うできる。また、当然ながら、評価者個人について体調などを評価する評価システムに付属するものとしてではなく、複数の対象者が構成する集団についての環境評価を行うために構成された評価システムとして、集団評価を行うことができる。
また、近年普及しているBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を用いて、集団を動的かつ自動的に形成することもできる。例えば、各対象者の生体センサにBLE(Bluetooth Low Energy)のデバイスを実装し、ビーコンによって近傍に存在する他の対象者を検知することができる。環境内にビーコン受信機を設置しておき、これと評価判定部の機能を組み合わせれば、インターネット等の通信環境が使えない場所でも、集団を形成し、集団環境評価を行うことができる。近年では、さらに進んだBluetooth Mesh(ブルートゥース メッシュ)といった規格も実用化されており、これにより生体センサ同士の多対多の通信が可能となり、不特定多数の集団による環境評価システムを実現することができる。
本願で開示する集団評価方法、集団評価システムは、たとえば、建築現場や運送業など、肉体的負荷と熱的負荷とが大きな状態で作業する作業者が置かれた環境について、現状に即した集団的な評価を、正確に、かつ、迅速に行うことができる評価方法、評価システムを実現できる。
10 作業者(被評価者、対象者)
11 生体センサ(測定装置)
12 スマートフォン(携帯端末)
13 評価者情報送信部(情報送信手段)
22 リスク判定部(評価判定部)

Claims (12)

  1. 複数の対象者からなる集団より得られた生体情報に基づいて、当該集団における環境リスクを評価することを特徴とする、集団環境評価方法。
  2. 前記生体情報が前記対象者の心拍数であり、前記集団に属する前記複数の対象者の心拍数の代表値に基づいて、前記集団における暑熱環境リスクを評価する、請求項1に記載の集団環境評価方法。
  3. 前記心拍数の代表値として、前記複数の対象者の心拍数の平均値、中央値、または、最頻値のいずれかを用いる、請求項2に記載の集団環境評価方法。
  4. 前記集団は、環境条件が共通する複数の対象者からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の集団環境評価方法。
  5. 前記生体情報が、前記対象者の心拍データと当該対象者の動作を示す加速度データを含み、
    前記集団に属する前記複数の対象者から得られた前記心拍データと前記加速度データとに基づいて前記対象者それぞれについての作業負担指数を算出し、
    前記集団に属する前記対象者の前記作業負担指数の代表値に基づいて、前記集団における暑熱環境リスクを評価する、請求項1に記載の集団環境評価方法。
  6. 対象者の生体情報を取得する測定装置と、

    複数の前記対象者から取得された前記生体情報に基づいて、当該複数の対象者からなる集団における環境リスクを評価する評価判定部とを備えることを特徴とする、集団環境評価システム。
  7. 取得された前記生体情報を前記評価判定部に送信する情報送信手段を備える、請求項6に記載の集団環境評価システム。
  8. 前記評価判定部がネットワーク上のサーバに設置されている、請求項6または7に記載の集団環境評価システム。
  9. 前記測定装置が、前記対象者が身につけた心拍データを検出する心拍センサと加速度データを検出する加速度センサとを備える生体センサである、請求項6〜8のいずれかに記載の集団環境評価システム。
  10. 前記集団を形成する集団形成手段をさらに備える、請求項6〜9のいずれか一項に記載の集団環境評価システム。
  11. 前記集団形成手段は、環境条件が共通する複数の対象者を検知し、検知した前記複数の対象者で前記集団を形成する、請求項10に記載の集団環境評価システム。
  12. 前記集団形成手段は、近距離無線通信手段によって、前記対象者の近傍に存在する他の対象者を前記環境条件が共通する複数の対象者として検知する、請求項11に記載の集団環境評価システム。
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