JP2020109331A - 個別分散空調高効率制御方法、制御装置及び制御プログラム - Google Patents
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しかし、これはあくまでも目標となるデマンド値を超えないようにするためのものであり、エネルギー消費効率(COP:Coefficient Of Performance)に着目したものではない。
そこで、室内の温度が設定温度に達した場合に、室外機が停止して室内を暖める動作、或は、冷やす動作を止めるサーモオフと呼ばれる制御がなされる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。サーモオフによれば、軽負荷時におけるエネルギー消費効率の低下を防止できる。
しかしながら、空調装置におけるエネルギー消費効率を高めることは、軽負荷時に限らず、軽負荷から重負荷にいたるまで、あらゆる場合において求められるものである。
1)室外機に供給される電流値を計測する計測ステップ、
2)計測した電流値に基づいて負荷率及びエネルギー消費効率を算出する算出ステップ、
3)予め設定された負荷率ゾーン制御の制御段数の内、よりエネルギー消費効率の高い制御段数での運転時間が長くなるように制御段数を切換える制御ステップ。
制御段数は、室外機毎に設定され、接点信号のオンオフ動作により、各制御段数の切換えが行われる。
2)算出ステップでは、計測した電流値を定格電流値で割り戻した定格電流比率を算出して負荷率とみなし、当該空調システムのエネルギー消費効率曲線から室外機の負荷率及びエネルギー消費効率(COP)を算出する。3)制御ステップにおける制御段数の切換えとは、積極的に切換えを行う場合だけではなく、段数決定の結果、切換えを行わない場合も含む。
段数の変更を一定時間の経過を待って行うことにより、効率性を高めながら、快適性を維持することができる。
ここで一定時間とは、対象となる空調システムの種類や設置場所、ユーザの使用頻度等に応じて、決定される。
エネルギー消費効率曲線におけるピーク値へ近づく方向への変更は、より効率を高める変更であることから、待機時間を短くすることで、速やかに効率の高い運転を行うことができる。これに対して、ピーク値から遠退く方向への変更である場合には、効率が低下することとなるため、待機時間を長くすることで、効率の低下を遅らせることができる。
初期設定となる制御段数を、エネルギー消費効率が最も高い負荷率を含むゾーンの制御段数とすることにより、運転開始当初から効率の高い運転が可能となる。したがって、対象となる空調システムの種類や設置場所、ユーザの使用頻度等から、より適切な制御段数が存在する場合には、エネルギー消費効率が最も高い負荷率を含むゾーンの制御段数以外の制御段数を選択してもよい。
デマンド値とは、30分間の平均使用電力のことであり、1ヵ月間における最大デマンド値を基準に契約電力が決定されることから、電気料金を抑制するためには、デマンド値を下げる必要がある。そこで、空調システムにおいては、目標となるデマンド値を設定し、それを超えるデマンド値とならないような制御が行われている。
なお、制御段数の比較を容易なものとするために、室外機に設定される制御段数とデマンド制御用の制御段数は、同じ数で、かつ同一の出力上限を有することが好ましい。
室外機毎に、電流値の計測、負荷率及びエネルギー消費効率の算出及び制御段数の切換え等が行われることにより、より高効率な制御が可能となる。
1)室外機に供給される電流値を計測する計測手段、
2)計測した電流値に基づいて負荷率及びエネルギー消費効率を算出する算出手段、
3)予め設定された負荷率ゾーン制御の制御段数の内、よりエネルギー消費効率の高い制御段数での運転時間が長くなるように制御段数を切換える制御手段。
空調装置9は、ビル用マルチエアコンであり、1基の室外機で複数の室内機を個別に運転できる構造となっている。
室外機3は、ここでは1基しか図示していないが、2基以上設けることが可能である。また、室内機4は、ここでは3台以上設けられているが、2台以下でもよい。
室内機4には、温度計(図示せず)が設けられており、図示しないが、室内温度と各室内機4の設定温度から、室内温度を自動で制御する温度制御手段が設けられている。また、空調装置9には、図示しないが、目標となるデマンド値に基づいた制御を行うデマンド制御手段が設けられている。
コンピュータ6は、計測した電流値を定格電流値で割り戻した定格電流比率を算出して負荷率とする。コンピュータ6は、算出された負荷率の状態を基に、より効率の良い運転が可能となるように、制御デバイス2を用いて室外機3を制御する。制御デバイス2は、コンピュータ6からの通信指令を物理的なオンオフの電気信号に変換することで、室外機3を制御する。
制御デバイス2とコンピュータ6は有線の通信手段11aにより接続されており、コンピュータ6により、制御デバイス2の設定変更等を行うことが可能である。コンピュータ6には、計測されたデータを記憶できる記憶手段(図示せず)が設けられており、電力量計5によって計測されたデータや、算出された負荷率及びエネルギー消費効率、制御デバイス2から送信された制御に関するログ、制御デバイス2の設定等を記憶する。
また、段数1はビット1、段数2はビット2というように同じ番号を有するビットに段数を設定する必要はなく、例えば、段数1はビット3、段数2はビット1というように異なる番号を有するビットに設定することも可能である。
なお、ステップS01においては、負荷率ゾーン制御の制御段数を、エネルギー消費効率が最も高い負荷率を含むゾーンの制御段数に、初期設定することも可能である。
図7に示すように、実施例1の室外機3のエネルギー消費効率は、40%付近で最も高くなっており、それよりも高くなっても低くなっても次第に効率が悪くなることが判る。また、負荷率が10%未満になると、負荷率が100%の場合よりも効率が悪くなることも判る。したがって、室外機3においては、できる限り負荷率が40%に近い値となるように制御することが望ましく、また、負荷率が10%未満になった場合には、室外機の運転を止めることが望ましいといえる。
次に具体的な制御フローについて、図4を参照しながら説明する。図4は、実施例1の個別分散空調高効率制御方法における高効率制御のフロー図を示している。なお、図4において出力下限とは、高効率制御用に設けられた閾値のことであり、出力制限無しの場合の出力下限は、段数1の出力上限である70%、段数1の出力下限は、段数2の出力上限である40%となっている。表1に示した負荷率の範囲内であれば、出力下限を下回った状態での運転も可能である。したがって、図4の高効率制御フローにおける“出力下限のまま一定時間経過”とは、実際の運転状況においては、“出力下限以下の状態で一定時間経過”した場合のことを意味している。
図4に示すように、まず、出力制限を段数2に設定する(ステップS101)。本実施例では、最初に出力制限を段数2に設定しているが、設定次第では、出力制限を段数1、3又は無しに設定することも可能である。
現在出力が10%を下回った状態で一定時間経過した場合(ステップS102)には、出力制限を段数3に設定する(ステップS103)。出力制限を段数3に設定した後、一定時間経過すると(ステップS104)、再度出力制限を段数2に設定する。ここでの一定時間とは、室内の在室人員や内部発熱機器の密度に応じて適宜決定される。
図3に示すように、コンピュータ6は、算出された負荷率の状態を基に、エネルギー効率の良い制御段数を決定する(ステップS04)が、空調装置9において、目標となるデマンド値に基づく制御が行われている場合(ステップS05)は、エネルギー効率の良い段数と、デマンド制御による段数を比較し(ステップS07)、より強い出力制限となる段数に切換える(ステップS08)。これは、デマンド制御が行われている場合には、コスト削減の観点からデマンド値を無視することはできないところ、より強い出力制限となる段数を採用していれば、デマンド値を超えることはないからである。これに対して、デマンド制御が行われていない場合には、エネルギー効率の良い段数に切換える(ステップS06)。
下記表2は、デマンド制御用の制御段数設定を示している。
例えば、デマンド制御用の段数が段数1で、高効率制御用の段数が段数3である場合には、段数3が適用されることになる。また、デマンド制御用の段数が段数2で、高効率制御用の段数が段数1である場合には、段数2が適用されることになる。このようにより強い出力制限の段数を選択することで、デマンド値を超えることなく、エネルギー効率の良い制御を行うことが可能になる。
コンピュータ111は、計測手段105によって計測された室外機103の電流値を基に、エネルギー効率の良い運転となるような制御を行う。具体的には、算出手段108により算出された負荷率及びエネルギー消費効率を基に、制御手段109においてエネルギー効率の良い制御段数を決定し、制御デバイス106を用いて制御を行う。制御デバイス106は、制御手段109からの通信指令を物理的なオンオフの電気信号に変換することで、室外機103を制御する。また、制御に当たっては、比較手段110を用いることで、デマンド制御手段104における制御を超える負荷率とならないように制御する。設定手段107は、負荷率ゾーン制御の制御段数を、エネルギー消費効率が最も高い負荷率を含むゾーンの制御段数に、初期設定するためのものである。また、コンピュータ111は、制御デバイス106の設定変更等を行うことができる。
記憶手段112は、計測手段105によって計測されたデータや、算出手段108により算出された負荷率及びエネルギー消費効率、制御デバイス106により行われた制御に関するログ、制御デバイス106の設定等を記憶する。
図5は、実施例2の個別分散空調高効率制御方法における高効率制御のフロー図を示している。図5に示すように、まず、出力制限を無しに設定する(ステップS201)。現在出力が10%を下回った状態で一定時間経過した場合(ステップS202)には、出力制限を段数1に設定する(ステップS203)。出力制限を段数1に設定後、一定時間が経過(ステップS204)すると、再度、出力制限を無しに設定する。
ステップS202において、現在出力が10%を下回った状態で一定時間経過した場合ではないときは、再度、現在出力が10%を下回った状態で一定時間経過したかの判定がなされる。
本実施例によれば、エネルギー効率の悪い負荷率10%以下の場合のみ、運転を一時停止することで、簡易な構成で効率の良い運転が可能となる。
図6は、実施例3の個別分散空調高効率制御システムのシステム構成図を示している。図6に示すように、個別分散空調高効率制御システム10は、個別分散空調高効率制御装置80及び空調装置90から成る。個別分散空調高効率制御装置80は、制御デバイス2、電力量計(5a,5b)、コンピュータ6から成る。また、空調装置90は、室外機(3a,3b)及び室内機(4a〜4f)から成る。
電力量計(5a,5b)及び制御デバイス2は、それぞれ無線の通信手段11bにより、コンピュータ6と接続されている。なお、通信手段11bの代わりに有線の通信手段を用いてもよい。
空調装置90は、実施例1と同様にビル用マルチエアコンであり、1基の室外機で複数の室内機を個別に運転できる構造である。
室外機3aには、室内機(4a〜4d)が接続され、室外機3bには、室内機(4e,4f)が接続されている。また、室外機3aには電力量計5a、室外機3bには電力量計5bが接続され、室外機(3a,3b)はいずれも制御デバイス2と接続されている。制御デバイス2は、1台で32点の接点信号を出力できるが、制御に必要な接点信号数は空調装置の機種によって異なり、接続可能最大数も制御デバイスの機種によって異なる。本実施例では、1台の制御デバイス2で室外機3a及び室外機3bの制御を行う。室外機3aと室外機3bの制御段数は、同一の制御デバイス2を使用していても、それぞれ異なる段数を選択できる。したがって、例えば、実施例1で示した室外機3の制御段数と同じ段数を室外機(3a,3b)にも使用した場合、ある時点において室外機3aでは段数1、室外機3bでは段数3というように室外機毎で異なる段数が選択される場合も存在することになる。このように、異なる台数の室内機が接続された室外機であっても、室外機自体の電流値を個別に計測し、個別に制御することで効率の良い運転を行うことが可能となっている。
2,106 制御デバイス
3,3a,3b,103 室外機
4,4a〜4f 室内機
5,5a,5b 電力量計
6,111 コンピュータ
8,80,102 個別分散空調高効率制御装置
9,90,101 空調装置
11a,11b 通信手段
104 デマンド制御手段
105 計測手段
107 設定手段
108 算出手段
109 制御手段
110 比較手段
112 記憶手段
Claims (10)
- 1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転できる空調システムにおける制御方法であって、
室外機に供給される電流値を計測する計測ステップと、
計測した電流値に基づいて負荷率及びエネルギー消費効率を算出する算出ステップと、
予め設定された負荷率ゾーン制御の制御段数の内、よりエネルギー消費効率の高い制御段数での運転時間が長くなるように制御段数を切換える制御ステップ、
を備えたことを特徴とする個別分散空調高効率制御方法。 - 前記制御ステップは、
室外機が設定された制御段数における出力上限のまま一定時間運転した場合には、より大きい負荷率ゾーンを有する制御段数、又は、負荷率の制限が無い制御段数に切換え、
室外機が設定された制御段数における出力下限のまま一定時間運転した場合には、より小さい負荷率ゾーンを有する制御段数、又は、運転を停止する制御段数に切換える、
ことを特徴とする請求項1に記載の個別分散空調高効率制御方法。 - 前記一定時間は、制御段数の変更が、エネルギー消費効率を改善する方向への変更である場合には、エネルギー消費効率を改善しない方向への変更よりも、短時間に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の個別分散空調高効率制御方法。
- 前記室外機毎に負荷率ゾーン制御の制御段数を、エネルギー消費効率が最も高い負荷率を含むゾーンの制御段数に、初期設定する設定ステップ、
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の個別分散空調高効率制御方法。 - 前記負荷率及び前記エネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御段数の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較して、より低い出力上限に該当する前記制御段数を選択する比較ステップを更に備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の個別分散空調高効率制御方法。
- 前記室外機が複数設けられ、前記室外機に設定された各制御段数が異なる設定値を有する場合には、室外機毎に制御が行われることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の個別分散空調高効率制御方法。
- 1基の室外機で1台以上の室内機を個別に運転できる空調システムにおける制御装置であって、
室外機に供給される電流値を計測する計測手段と、
計測した電流値に基づいて負荷率及びエネルギー消費効率を算出する算出手段と、
予め設定された負荷率ゾーン制御の制御段数の内、よりエネルギー消費効率の高い制御段数での運転時間が長くなるように制御段数を切換える制御手段、
を備えたことを特徴とする個別分散空調高効率制御装置。 - 前記室外機毎に負荷率ゾーン制御の制御段数を、エネルギー消費効率が最も高い負荷率を含むゾーンの制御段数に、初期設定する設定手段、
を更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の個別分散空調高効率制御装置。 - 前記負荷率及び前記エネルギー消費効率を基に算出されたよりエネルギー消費効率の高い制御段数の出力上限と、目標となるデマンド値に基づく出力上限を比較して、より低い出力上限に該当する前記制御段数を選択する比較手段を更に備えたことを特徴とする請求項7又は8に記載の個別分散空調高効率制御装置。
- 請求項1〜6の何れかの個別分散空調高効率制御方法における各ステップを、コンピュータに実行させるための個別分散空調高効率制御プログラム。
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