本発明に係る第1の態様の空気調和機は、圧縮機、室内側熱交換機、減圧器、および室外側熱交換機を冷媒が循環する冷媒回路を有して、室内機と室外機で構成され、
前記室内機は、室内側熱交換器と、
前記室内機の上部に形成された吸込み口からの空気を前記室内側熱交換機で熱交換して、前記室内機の下部に形成された吹出し口から吹き出す気流を形成させる室内側ファンと、
前記室内側ファンから吹出し方向への気流を前記吹出し口に案内する背面側案内部と、
前記背面側案内部に対向して配設され、前記背面側案内部と共に前記室内側ファンからの気流を前記吹出し口に案内し、前記背面側案内部と共に前記吹出し口を形成する前面側案内部と、
前記吹出し口に案内された空気の流れを上下左右に方向付ける回動可能な風向ルーバーアセンブリと、を備え、
前記風向ルーバーアセンブリは、上下風向ルーバーと左右風向ルーバーとを有し、
前記上下風向ルーバーは、前記吹出し口における前面側となる上段羽根板と、前記吹出し口における背面側となる下段羽根板と、前記上段羽根板と前記下段羽根板との間に配設された中段羽根板の三段羽根板により構成され、それぞれの羽根板が独立して上下方向に回動するよう構成され、
前記左右風向ルーバーは、前記上段羽根板と前記中段羽根板との間の第1吹出し口に設けられた上側左右羽根と、前記下段羽根板と前記中段羽根板との間の第2吹出し口に設けられた下側左右羽根と、を備えている。
上記のように構成された本発明に係る第1の態様の空気調和機は、空調対象の室内に対して、よりきめ細やかな風向制御を行うことが可能な構成となる。
本発明に係る第2の態様の空気調和機において、前記の第1の態様における前記上側左右羽根は、実質的に同形状の複数の羽根が並設されて、左右方向の中央を境に左右の羽根群に分かれて構成され、左右の羽根群毎に左右方向に独立して回動して、吹き出し方向を左右に変更可能に構成され、
前記下側左右羽根は、実質的に同形状の複数の羽根が並設されて、左右方向の中央を境に左右の羽根群に分かれて構成され、左右の羽根群毎に左右方向に独立して回動して、吹き出し方向を左右に変更可能に構成されてもよい。この構成をなすことにより、よりきめ細やかな風向制御を行うことが可能な構成となる。
本発明に係る第3の態様の空気調和機において、前記の第1または第2の態様における前記中段羽根板は、左右方向に2分割されてそれぞれが独立して回動可能に構成され、前記第1吹出し口および前記第2吹出し口のそれぞれにおける左右の吹き出し方向を上下に変更可能に構成され、前記吹出し口が実質的に4つの吹き出し方向を有してもよい。この構成をなすことにより、よりきめ細やかな風向制御を行うことが可能な構成となる。
本発明に係る第4の態様の空気調和機において、前記の第3の態様の前記室内側熱交換機は、第1熱交換領域および第2熱交換領域を有し、前記第1熱交換領域および前記第2熱交換領域は、圧力調整器を介して冷媒が流れるよう構成され、
暖房運転時において前記圧力調整器の減圧により前記第1熱交換領域が第1凝縮温度を形成し、前記第2熱交換領域が前記第1凝縮温度より低い第2凝縮温度を形成するよう構成され、
前記第2熱交換領域の第2凝縮温度により熱交換された空気が前記第1吹出し口から主として吹き出され、前記第1熱交換領域の第1凝縮温度により熱交換された空気が前記第2吹出し口から主として吹き出されるよう構成されてもよい。この構成をなすことにより、室内の複数の領域の温調を個別且つ同時に実施することができる。
以下、本発明の空気調和機に係る一態様の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付して、説明が重複する場合にはその説明を省略する場合がある。また、図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の空気調和機の一例を示すものであり、例えば実施の形態において示される数値、形状、構成、ステップ、およびステップの順序などは例示であり、これらの例示の内容で本発明を限定するものではない。本明細書において左右方向とは、対象の装置または機器に向かっての左右方向を示している。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。全ての実施の形態において、各々の変形例における変形部分以外の構成は同様であり、各変形例に記載した構成をそれぞれ組み合わせて構成することも可能であり、それぞれの構成の効果を奏するものである。また、以下の実施の形態の空気調和機においては、具体的な構成について説明するが、本発明は、以下の実施の形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が適用された各種空気調和機を含むものである。
《実施の形態1》
実施の形態1の空気調和機は、室内機と室外機が冷媒配管及び制御配線等により互いに接続された、所謂セパレート型の空気調和機である。室内機と室外機によりヒートポンプが構成されており、室外機には圧縮機が設けられている。実施の形態1の空気調和機における室内機は、室内の壁面に取り付ける壁掛け式室内機である。
図1は、本発明に係る実施の形態1の空気調和機における室内機の概略構成を示す縦断面図である。図1に示した実施の形態1の空気調和機は、空調運転時の一状態を示している。
図1に示すように、室内機1は、室内機1の上部に形成された空気の吸込み口となる上面開口部2aと、室内機1の内部で熱交換された空気を吹き出す送風口である吹出し口2bとを有している。また、室内機1の下部に形成された吹出し口2bには、当該吹出し口2bを開閉するとともに、空気の吹き出し方向を上下左右のあらゆる方向に調整することができる風向変更手段である風向ルーバーアセンブリ3が設けられている。風向ルーバーアセンブリ3は、風向きを上下方向に変更する複数の羽根板で構成された上下風向ルーバー30と、風向きを左右方向に変更する複数の羽根板で構成された左右風向ルーバー40とにより構成されている。
室内機1の内部には、室内空気に含まれる塵埃を除去するためのフィルタ4と、上面開口部2aからフィルタ4を通して取り入れた室内空気を熱交換する室内側の熱交換機5と、上面開口部2aである吸込み口から吸い込んだ空気を熱交換機5で熱交換して吹出し口2bから室内に吹き出す気流を形成する室内側ファン6と、が設けられている。室内側ファン6としては、例えば、円周方向の気流を発生させる横置きされた円筒形状のクロスフローファンが用いられている。図1に示すように、室内側の熱交換機5は、室内側ファン6の下方の吹き出し方向を除く、略逆V字型に構成された前面側と上方側と背面側の概ね三方を囲むように設けられており、背面側熱交換部5a、および前面側熱交換部における上側の第1熱交換部5bと下側の第2熱交換部5cにより構成されている。
また、室内機1の内部において、室内側ファン6の下流側から吹出し口2bに至る通風路7は、室内側ファン6の下流側に配置され背面側に設けられて、背面側の気流を吹出し口2bに案内する機能をもつ背面側案内部であるリアガイダ8と、このリアガイダ8に対向して室内側ファン6の前面側に設けられ、通風路7における前面側の気流を安定させて案内する機能をもつ前面側案内部であるスタビライザ9と、室内機1における両側壁面(図示せず)とにより構成されている。スタビライザ(前面側案内部)9は、リアガイダ(背面側案内部)8と共に吹出し口2bを形成し、室内側ファン6からの気流を吹出し口2bに案内する機能をもつ。室内機1の前面には、前面パネル2cが設けられており、前面パネル2cは室内機1の内部のフィルタ4などの交換、掃除などのために開放可能に構成されている。
図2および図3は、実施の形態1の空気調和機を示す斜視図であり、図2が空気調和機の吹出し口2bなどが表れる室内機1の前面側を右側下方から見た図であり、図3が空気調和機における空気の吸込み口である上面開口部2bを示すように室内機1の右側上方から見た図である。
図2に示すように、吹出し口2bには風向ルーバーアセンブリ3が回動可能に設けられており、吹出し口2bが開閉可能に構成されている。風向ルーバーアセンブリ3は、風向きを上下方向に変更する複数の羽根板で構成された上下風向ルーバー30と、風向きを左右方向に変更する複数の羽根板で構成された左右風向ルーバー40とにより構成されている。
上下風向ルーバー30は、吹出し口2bにおける前面側となる上段羽根板31と、吹出し口2bにおける背面側となる下段羽根板33と、吹出し口2bにおける中央部分であり、上段羽根板31と下段羽根板33との間に配設された中段羽根板32と、を有して構成された、上中下の3段羽根板構成である。上段羽根板31と下段羽根板33との間の中段羽根板32は、後述するように吹出し口2bにおける二温度のセパレータとしての機能を有する。また、セパレータとしての中段羽根板32は、その左右方向の中央で2分割されており、中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bを有している。
左右風向ルーバー40は、上段羽根板31と中段羽根板32(セパレータ)との間に形成される上側吹出し領域FAに配設される上側左右羽根40aと、中段羽根板32(セパレータ)と下段羽根板33との間に形成される下側吹出し領域BAに配設される下側左右羽根40bとを有しており、上下2段構成である。風向ルーバーアセンブリ3における上下風向ルーバー30および左右風向ルーバー40の詳細については後述する。なお、本実施の形態1の構成においては、上側吹出し領域FAが第1吹出し口となり、下側吹出し領域BAが第2吹出し口となる。
また、実施の形態1の空気調和機の室内機1には、電装ユニット(図示なし)などが設けられており、電装ユニットには制御部50(図1参照)が含まれている。この制御部50において、上下風向ルーバー30、左右風向ルーバー40、室内側ファン6、および室外機の圧縮機などの駆動制御を行い、当該空気調和機の空調運転を制御している。制御部50は、マイクロコンピュータ等で構成されており、後述する複数のセンサからの各種情報に基づいて当該空気調和機の空調運転を制御する。
実施の形態1の空気調和機において用いられているセンサとしては、室外機1に設けられた人感センサ10、温冷感センサ11、床温センサ(図示なし)、日射センサ(図示なし)、および後述する熱交換機5における各部位の温度を検出する複数の温度センサ(18a,18b)などが含まれる。人感センサ10および温冷感センサ11は、室内における空調対象領域からの赤外線に基づいて人の存在、人の移動、および熱画像情報などを検出する構成である。また、床温センサは空調対象領域の床温度を検出し、日射センサは空調対象領域における日当たり状態を検出している。各種センサにより検出された各種情報は制御部50に送られて、それらの各種情報に基づいて当該空気調和機が駆動制御されると共に、各種センサによる検出状態などの一部は室内機1における前面パネル2cに設けられた発光表示部19において表示される。
人感センサ10は、人体から放射される赤外線を検知する焦電素子型赤外線センサである。人感センサ10は、空調対象領域における赤外線量の変化により、人の存否、人の移動を検出する。
温冷感センサ11は、サーモパイルセンサであり、多数の熱電素子型のセンサ素子をマトリクス状に配置して構成されている。マトリクス状のセンサ素子の前方には集光レンズが設けられている。実施の形態1においては、例えば、センサ素子が8×8のマトリクス状に配置されている。実施の形態1の温冷感センサ11においては、マトリクス状に配設されたセンサ素子の縦・横が回転軸に対して斜めに傾けた状態で回動して走査され、熱画像情報を示す信号を出力するよう構成されている。
実施の形態1の空気調和機における温冷感センサ11であるサーモパイルセンサは、空調対象領域である室内における床面および壁面などの熱画像情報(温度分布情報)および/または室内に存在する人の熱画像情報(温度分布情報)の二次元の熱画像情報を形成している。この熱画像情報は、温冷感センサ11により検出された赤外線量により形成されている。実施の形態1の空気調和機における人感センサ10および温冷感センサを用いた空調制御の詳細について後述する。
[冷媒回路の構成]
図4は、本発明に係る実施の形態1の空気調和機における冷媒回路を模式的に示した図である。実施の形態1の空気調和機において、室内側ファン6の下方の吹き出し方向を除く、略逆V字型に構成された前面側と上方側と背面側の概ね三方を囲むように配設された室内側の熱交換機5において、背面側熱交換部5aと前面側第1熱交換部5bにより第1熱交換領域Xが構成され、前面側第2熱交換部5cにより第2熱交換領域Yが構成される。図4の冷媒回路に示すように、背面側熱交換部5aと前面側第1熱交換部5bとにより構成される第1熱交換領域Xと、前面側第2熱交換部5cにより構成される第2熱交換領域Yとの間の冷媒管路には、冷媒圧力を調整する圧力調整器12が設けられている。本実施の形態1において、暖房運転時の圧力調整器12は冷媒圧力を降下させる膨張弁として機能する。なお、当該膨張弁に、全開時に直管と同じ位の低い圧力損失のものを使用することで、通常の暖房運転や通常の冷房運転をする際の効率低下を防ぐことができる。
図4に示すように、実施の形態1の空気調和機における冷媒回路においては、圧縮機13の吐出側に電動四方弁14が接続されており、暖房運転時には圧縮機13からの冷媒が熱交換機5の背面側熱交換部5aおよび前面側第1熱交換部5bに送り込まれる構成である。背面側熱交換部5aおよび前面側第1熱交換部5bに送り込まれた冷媒は、圧力調整器12を介して前面側第2熱交換部5cに送り込まれる。暖房運転時の冷媒回路においては、前面側第2熱交換部5cから室外側膨張弁である減圧器15、室外側熱交換機16を通り、電動四方弁14を介して圧縮機13に冷媒が流れて、冷媒循環回路が形成される。室外側熱交換機16の近傍には室外側ファン17が設けられている。なお、冷房運転時においては、電動四方弁14が切り替わり、冷媒の流れ方向が逆となる。
[熱交換機の構成]
上記のように、実施の形態1の空気調和機においては、背面側熱交換部5aと前面側第1熱交換部5bにより構成される第1熱交換領域Xと、前面側第2熱交換部5cにより構成される第2熱交換領域Yとの間に圧力調整器12が設けられており、第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yの冷媒圧力において圧力差を設けることができる構成である。
図5は、実施の形態1の空気調和機の構成において、熱交換機5(5a,5b,5c)における具体的な冷媒通路を例示として示す図であり、当該空気調和機の室内機1の縦断面図である。図5に示す冷媒通路における冷媒の流れ方向は、暖房運転時を示す。
図5に示すように、実施の形態1の空気調和機の熱交換機5において、暖房運転時の冷媒は、第1熱交換領域Xにおける4カ所の冷媒入口(A,B,C,D)から流れ込む。即ち、第1熱交換領域Xにおける背面側熱交換部5aの2カ所の冷媒入口(A,B)と、前面側第1熱交換部5bの2カ所の冷媒入口(C,D)から冷媒が供給される。背面側熱交換部5aの2カ所の冷媒入口(A,B)から供給された冷媒は、背面側熱交換部5aにおいて熱交換し、2カ所の導出部(E,F)から圧力調整器12に送られる。同様に、前面側第1熱交換部5bの2カ所の冷媒入口(C,D)から供給された冷媒は、前面側第1熱交換部5bにおいて熱交換し、2カ所の導出部(G,H)から圧力調整器12に送られる。暖房運転時において圧力調整器12で減圧された冷媒は、第2熱交換領域Yである前面側第2熱交換部5cの4カ所の導入部(I,J,K,L)に送られる。前面側第2熱交換部5cにおいて熱交換された冷媒は、4カ所の導出部(M,N,O,P)から前面側第1熱交換部5bにおける外部空気の取入れ側に設けられた過冷却部5dの導入部(Q)に送られる。そして、過冷却部5dにおいて熱交換された冷媒は、導出部(R)から背面側熱交換部5aにおける外部空気の取入れ側に設けられた過冷却部5eの導入部(S)に送られる。この過冷却部5eの導出部(T)が暖房運転時の熱交換機5における冷媒出口となる。なお、冷媒運転時の冷媒の流れは、暖房運転時の逆方向の流れとなる。
上記のように、実施の形態1の空気調和機の暖房運転時においては、熱交換機5における第1熱交換領域Xに圧縮機13からの冷媒が送られる。この結果、第1熱交換領域Xにおいては高温度の冷媒が流れているため、第1熱交換領域Xが高温度である第1凝縮温度を形成する熱交換領域となる。第1熱交換領域Xから導出した冷媒は、次に圧力調整器12において減圧されて中温度の冷媒となり、前面側第2熱交換部5cにおいて第1凝縮温度より低い第2凝縮温度を形成する第2熱交換領域Yに送られる。実施の形態1において、後述する二温度運転モードにおける高温度は、そのとき吹き出される中温度より相対的に高い温度であり、中温度とは、高温度と室内温度との間の温度である。例えば、実施の形態1の構成において、吹き出される高温度としては30℃〜55℃の範囲であり、中温度としては高温度より所定の温度だけ低くなる範囲であり、高温度と中温度との相対的な温度差が5℃以上としている。高温度および中温度は、設定条件、および各種センサなどからの各種情報に基づいて決定される。
以上にように、実施の形態1の空気調和機の暖房運転時においては、室内機1の熱交換機5で2種類の温度(高温度、中温度)に熱交換される構成である。図6は、実施の形態1の空気調和機の暖房運転時において、熱交換機5の第1熱交換領域Xおよび第2熱交換領域Yにおける各部位の温度を示すグラフである。図6のグラフにおいて、破線で示す温度グラフが通常運転時(一温度運転モード)の熱交換機5における各部位の温度推移であり、実線で示す温度グラフが二温度運転モードの熱交換機5における各部位の温度推移である。図6に示すように、通常運転時においては、熱交換機5の第1熱交換領域Xおよび第2熱交換領域Yで40℃の熱交換が行われることが理解できる。一方、圧力調整器12で冷媒圧力を降下させることにより、第1熱交換領域Xで40℃の熱交換が行われ、第2熱交換領域Yで33℃の熱交換が行われている。このように、圧力調整器12で第1熱交換領域Xおよび第2熱交換領域Yの冷媒圧力を調整することにより、当該空気調和機においては一温度運転モード(通常運転)と二温度運転モードとの切り替えを行い、室内の空調対象領域を所望の温度に空調することができる。
図7は、実施の形態1の空気調和機におけるp−h線図である。縦軸が冷媒圧力[Mpa]であり、横軸が比エンタルピー[kJ/kg]である。図7において、符号1→符号2は圧縮機13の機能による冷媒圧縮の状態が示されている。図7における符号2→符号3においては、第1熱交換領域Xが第1凝縮器として機能し、そのときの凝縮熱が吸入空気を高温度に熱交換する。高温度の空気は、前述のように室内側ファン6により生じる気流によりリアガイダ8に案内されて主として下側吹出し領域BAから空調対象の室内に対して吹き出される。
図7における符号3→符号4は、室内機1の内部の圧力調整器12により所定の圧力まで急激に圧力降下される状態を示している。符号4→符号5においては、第2熱交換領域Yが第2凝縮器として機能しており、その凝縮熱が中温度の空気を形成する。中温度の空気は、室内側ファン6により生じる気流により主として上側吹出し領域FAから空調対象の室内に吹き出される。
図7における符号5→符号6は減圧器15の機能であり、符号6→符号1は蒸発器としての室外側熱交換機16の機能である。
図8は、熱交換機5における全ての熱交換領域に対して第2熱交換領域Yが占める比率に関して、暖房能力の変化と、吹出し温度の差(二温度運転モード時)の変化を発明者が実験により得られた結果である。このときの熱交換領域の比率は熱交換面積に基づいて算出した。図8に示すように、中温度への熱交換領域である第2熱交換領域Yが50%のとき、上側吹出し領域FAからの中温度と下側吹出し領域BAからの高温度との温度差は、約10℃であった。また、暖房能力としては、第2熱交換領域Yが50%のときは、全ての熱交換領域が第1熱交換領域Xの場合と比べて約75%であった。本発明の空気調和機においては、当該空気調和機の使用目的などを考慮して、二温度運転モードにおいて必要となる暖房能力および温度差が設定され、全ての熱交換領域に対する第2熱交換領域Yの適切な比率が決定される。本実施の形態1においては、例えば、二温度運転モードにおいて必要となる暖房能力としては80%以上であり、熱交換される高温度と中温度との温度差は6℃以上として、全ての熱交換領域に対する第2熱交換領域Yの比率を約30%とした。なお、これらの数値は、例示であり、空調対象などを考慮して設計された空気調和機の仕様に対応して決定される。
図9は、実施の形態1の空気調和機の暖房運転時において、熱交換機5の第1熱交換領域Xで高温度の熱交換を行い、第2熱交換領域Yで中温度の熱交換を行った場合のコンター図である。図9はカラー図面を白黒図面としたものであるが、図9においては、室内側ファン6の上側に設けられた第1熱交換領域Xで高温度に熱交換されていることが黒色で示され、室内側ファン6の前面側に設けられた第2熱交換領域Yで中温度に熱交換されていることを灰色で示されている。図9に示すコンター図おいては、同色の符号100で示す領域が35〜36℃領域であり、符号101で示す領域が34〜35℃領域であり、符号102で示す領域が32〜33℃領域であり、符号103で示す領域が30〜31℃領域であり、符号104で示す領域が27〜28℃領域である。
図9に示すように、第1熱交換領域Xで高温度に熱交換された空気は、クロスフローファンで構成された室内側ファン6で形成された気流により通風路7を通り吹出し口2bに送り込まれる。このとき、高温度に熱交換された空気、例えば符号100で示す高温度の空気は、主として、背面側案内部であるリアガイダ8に沿って流れて、吹出し口2bに送られていることが理解できる。従って、第1熱交換領域Xからの高温度の空気の多くは、リアガイダ8に案内されて、上下風向ルーバー30のセパレータである中段羽根板32と下段羽根板33との間の下側吹出し領域BAに導かれて、吹出し口2bにおける壁側である背面側の領域から室内に吹き出される。
一方、第2熱交換領域Yからの中温度の空気は、室内側ファン6で形成された気流により通風路7を通り、吹出し口2bに送り込まれるが、例えば符号104で示す中温度の空気は、主として、室内側ファン6における吹出し位置より前面側に設けられた前面側案内部であるスタビライザ9により案内されて、上下風向ルーバー30の上段羽根板31とセパレータである中段羽根板32との間の上側吹出し領域FAに導かれる。このように、中温度の空気は、主として、スタビライザ9により案内されて、吹出し口2bにおける壁から離れた領域、即ち吹出し口2bにおける前面側の領域から室内に吹き出される。
上記のように、実施の形態1の空気調和機においては、図9に示すように、高温度に熱交換された空気は、主として、背面側のリアガイダ8に沿って流れて、セパレータである中段羽根板32と下段羽根板33との間の下側吹出し領域BAから室内に吹き出される。一方、中温度に熱交換された空気は、主として、前面側のスタビライザ9に沿って流れて、セパレータである中段羽根板32と上段羽根板31との間の上側吹出し領域FAから室内に吹き出される。このように、実施の形態1の空気調和機は、暖房運転時の二温度運転モードにおいて、上側吹出し領域FAから中温度の空気が吹き出され、下側吹出し領域BAから高温度の空気が吹き出されており、中温度の空気が高温度の空気を上側から押さえるように吹き出されている。この結果、高温度の空気が室内に吹き出された直後に上昇することが抑制されており、室内の空調対象領域まで高温度の空気を送ることが可能な構成となっている。
[セパレータ機能]
実施の形態1の空気調和機の構成において、吹出し口2bには3段構成の上下風向ルーバー30が設けられており、上下風向ルーバー30における中段羽根板32が、吹出し口2bにおける二温度(高温度+中温度)を吹き分けるためのセパレータとしての機能を有する。
図10は、図1に示した断面図において、吹出し口2bにおけるセパレータとしての中段羽根板32の位置を規定するための条件を説明するための図である。図10において、α1およびβ1は、熱交換機5における第2熱交換領域Yと第1熱交換領域Xとの領域の比率を示すために、室内側ファン6の回転中心を中心とした角度にて示したものである。α1は、室内側ファン6の回転中心を中心とした第2熱交換領域Yの広がりを示す角度である。β1は、室内側ファン6の回転中心を中心とした第1熱交換領域Xの広がりを示す角度である。なお、α1は、第2熱交換領域Yにおいて室内側ファン6の回転中心から見て最端部(前面下側端部)の位置と室内側ファン6の回転中心位置とを結んだ線と、第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yとの境界の中央点と室内側ファン6の回転中心とを結んだ線との間の角度である。β1は、第1熱交換領域Xにおいて室内側ファン6の回転中心から見て最端部(背面側端部)の位置と室内側ファン6の回転中心位置とを結んだ線と、第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yとの境界の中央点と室内側ファン6の回転中心とを結んだ線との間の角度である。
図10における、α2およびβ2は上下風向ルーバー30におけるセパレータとしての中段羽根板32の位置を規定するために、吹出し口2bにおけるセパレータの位置比率を鉛直方向の広がりの角度にて示すものである。α2は、上段羽根板31と中段羽根板32との間の上側吹出し領域FA(第1吹出し口)を鉛直方向の広がりの角度にて示しており、β2は、中段羽根板32と下段羽根板33との間の下側吹出し領域BA(第2吹出し口)を鉛直方向の広がりの角度にて示している。α2およびβ2を規定するために、図10に示すように、リアガイダ8における最下流点(吹き出し点)における接線と、そのリアガイダ8に対向して配設されたスタビライザ9における最下流点(吹き出し点)における接線との交点を中心点とした鉛直方向の広がりを示す角度にて、α2およびβ2を規定している。なお、α2は、スタビライザ9の最下流点(吹き出し点)における接線と、セパレータである中段羽根板32の最上流点と前記中心点とを結んだ線との間の鉛直方向の広がりを示す角度である。また、β2は、リアガイダ8の最下流点(吹き出し点)における接線と、中段羽根板32の最上流点と前記中心点とを結んだ線との間の鉛直方向の広がりを示す角度である。
上記のように、第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yとの領域の比率をα1およびβ1にて規定し、吹出し口2bに対するセパレータとして中段羽根板32の位置をα2およびβ2にて規定すると、中段羽根板32を下記の条件を満たすように設けることにより、空調運転時の吹出し温度状態を異なるものとすることが可能となる。
例えば、α2/(α2+β2)>α1/(α1+β1)の条件(条件1)を満たすように、セパレータとしての中段羽根板32を設けることにより、暖房運転時においては、吹出し口2bにおける中段羽根板32と下段羽根板33との間の下側吹出し領域BA(第2吹出し口)から、高温度の空気が確実に吹き出され、上段羽根板31と中段羽根板32との間の上側吹出し領域FA(第1吹出し口)から、中温度の空気が吹き出される。このとき吹出し口2bの下側吹出し領域BAから吹き出される高温度の空気は、上側吹出し領域FAから吹き出される中温度の空気との温度差が大きなものとなる。即ち、α2/(α2+β2)>α1/(α1+β1)の条件1を満たすことは、セパレータとしての中段羽根板32の配設位置が吹出し口2bにおいて背面側に寄った位置となり、吹出し口2bにおける下側吹出し領域BA(第2吹出し口)が上側吹出し領域FA(第1吹出し口)に比べて狭くなることを含む。この場合、熱交換機5における第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yとの領域の比率を変更するように構成して、条件1を満たしてもよい。図11は、実施の形態1の空気調和機の暖房運転時において、α2/(α2+β2)>α1/(α1+β1)の条件1を満たすように構成した例を示す縦断面図である。
また、反対に、α2/(α2+β2)≦α1/(α1+β1)の条件(条件2)を満たすように、セパレータとしての中段羽根板32を設けることにより、暖房運転時においては、吹出し口2bにおける上段羽根板31と中段羽根板32との間の上側吹出し領域FA(第1吹出し口)から、中温度の空気が比較的に少なく吹き出され、中段羽根板32と下段羽根板33との間の下側吹出し領域BA(第2吹出し口)から、高温度の空気が比較的に多く吹き出される。このとき吹出し口2bの下側吹出し領域BA(第2吹出し口)から吹き出される高温度の空気は、上側吹出し領域FA(第1吹出し口)から吹き出される中温度の空気との温度差が小さくなる。即ち、α2/(α2+β2)≦α1/(α1+β1)の条件2を満たすことは、セパレータとしての中段羽根板32の配設位置が吹出し口2bにおいて前面側に寄った位置となり、吹出し口2bにおける上側吹出し領域FA(第1吹出し口)が下側吹出し領域BA(第2吹出し口)に比べて狭くなることを含む。この場合、熱交換機5における第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yとの領域の比率を変更するように構成して、条件2を満たしてもよい。従って、条件2の構成の場合には、下側吹出し領域BA(第2吹出し口)から多くの高温度の空気が吹きされるが、条件1の構成の場合に比べて、下側吹出し領域BA(第2吹出し口)からの高温度の空気は低い温度となる。図12は、実施の形態1の空気調和機の暖房運転時において、α2/(α2+β2)≦α1/(α1+β1)の条件2を満たすように構成した例を示す縦断面図である。
なお、図10においては、α1およびβ1を、熱交換機5における第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yとの領域の比率を示すために、室内側ファン6の回転中心を中心とした角度にて示し、α2およびβ2を上下風向ルーバー30におけるセパレータとしての中段羽根板32の位置を規定するために、吹出し口2bにおけるセパレータの位置比率を角度にて示して説明したが、本発明としては上記の規定に限定されるものではなく、α1およびβ1を熱交換機における熱交換の面積比や、熱交換の流路比で規定してもよい。また、α2およびβ2においては、吹出し口2bにおけるセパレータとしての位置の分割比率により規定してもよい。
例えば、α1は、第2熱交換領域Yにおける熱交換面積、または熱交換の流路比を示し、β1は、第1熱交換領域Xにおける熱交換面積、または熱交換の流路比を示して規定する。このとき、α2およびβ2は、リアガイダ8における吹出し口2bの最下流点の接線とスタビライザ9における吹出し口の最下流点の接線との交点を中心点とした鉛直方向の広がりを示す角度として、α2は、上段羽根板31と中段羽根板32との間に形成される第1吹出し口(前面側吹き出し領域FA)の鉛直方向の広がりを示す角度として、β2は、中段羽根板32と下段羽根板33との間に形成される第2吹出し口(背面側吹き出し領域RA)の鉛直方向の広がりを示す角度と規定してもよい。また、α2およびβ2は、上下風向ルーバー30の3段構成の羽根板の吹出し方向面が平行に配置された状態において、吹出し口2bにおけるセパレータとしての中段羽根板32の上段/下段羽根板31,33に対する対向距離の比率により規定してもよい。
[風向ルーバーアセンブリによる吹き分け制御]
次に、実施の形態1の空気調和機において吹出し口2bに設けられている風向ルーバーアセンブリ3を用いた吹分け制御について説明する。前述のように、風向ルーバーアセンブリ3の上下風向ルーバー30は、上段羽根板31と中段羽根板32と下段羽根板33の上中下の3段構成である。また、セパレータとしての機能を有する中段羽根板32は、その左右方向の中央で2分割されており、中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bを有している。上下風向ルーバー30におけるそれぞれの羽根板は、それぞれの回転中心軸の左右両端のいずれか一方に接続された駆動モータ、例えばステッピングモータにより駆動される構成である。従って、上段羽根板31と下段羽根板33と、そして中段羽根板32における中段左羽根32aと中段右羽根32bのそれぞれは、上下方向に独立して回動して、吹出し口2bからの風向きを上下方向の所望の方向とすることができる。
また、左右風向ルーバー40は、上段羽根板31と中段羽根板32との間に形成される上側吹出し領域FA(第1吹出し口)に配設される上側左右羽根40aと、中段羽根板32と下段羽根板33との間に形成される下側吹出し領域BA(第2吹出し口)に配設される下側左右羽根40bとを有する、上下2段構成である。上側左右羽根40aは、実質的に同形状の複数枚の左右風向変更羽根が左右方向に並設されている。上側左右羽根40aは、中央を境として左領域の羽根群と右領域の羽根群に2分割されている。同様に、下側左右羽根40bは、実質的に同形状の複数枚の左右風向変更羽根が左右方向に並設されている。また、下側左右羽根40bは、中央を境として左領域の左右羽根群と右領域の左右羽根群に2分割されている。
上側吹出し領域FA(第1吹出し口)に配設される上側左右羽根40aは、左領域の左右羽根群である上側左羽根41aと、右領域の左右羽根群である上側右羽根41bとに2分割されている。上側左羽根41aおよび上側右羽根41bにおけるそれぞれの左右風向変更羽根は、それぞれが連動するように別の連結桟に連結されている。従って、上側左羽根41aおよび上側右羽根41bは、それぞれの領域の左右羽根群が独立して左右方向に回動して、上側の吹出し口2bからの空気の吹き出し方向を左右別々に特定できる構成である。
下側吹出し領域BA(第2吹出し口)に配設される下側左右羽根40bは、左領域の左右羽根群である下側左羽根42aと、右領域の左右羽根群である下側右羽根42bとに2分割されている。下側左羽根42aおよび下側右羽根42bにおけるそれぞれの左右風向変更羽根は、それぞれが連動するように別の連結桟に連結されている。従って、下側左羽根42aおよび下側右羽根42bは、それぞれの領域の左右羽根群が独立して左右方向に回動して、下側の吹出し口2bからの空気の吹き出し方向を左右別々に特定できる構成である。
これらの連結桟は、それぞれが左右風向ルーバー用の別々の駆動モータ、例えばステッピングモータの回転軸に連結されており、これらの駆動モータの回転によりそれぞれの左右羽根群における左右風向変更羽根が左右方向に方向転換する構成である。
図2に示した空気調和機においては、上下風向ルーバー30は暖房運転時のある状態を示しており、上段羽根板31と中段羽根板32と下段羽根板33が斜め前方下向きに回動して配置されている。但し、左右に2分割された中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bのそれぞれは向きが異なっている。上段羽根板31と中段左羽根板32aとの間の上側吹出し左領域は、上段羽根板31と中段右羽根板32bとの間の上側吹出し右領域に比べて狭く形成されており、中段左羽根板32aが中段右羽根板32bに比べて上向きとなっている。このように、中段左羽根板32aと中段右羽根板32bを配置することにより、上側吹出し左領域からの空気の吹き出し方向が、上側吹出し右領域からの空気の吹き出し方向に比べて上側となると共に、上側吹出し左領域が上側吹出し右領域に比べて狭い分、風速が増し、その到達距離は長くなる。
また、図2に示した空気調和機においては、左右風向ルーバー40の上側左右羽根40aと下側左右羽根40bの両方とも、左右に吹き分けている。即ち、上側左右羽根40aにおける上側左羽根41aは、当該空気調和機に向かって左側に吹き出すように配置されており、上側右羽根41bは、当該空気調和機に向かって右側に吹き出すように配置されている。従って、上側吹出し領域FA(第1吹出し口)においては、上側吹出し左領域からの空気が室内の左側に吹き出され、上側吹出し右領域からの空気が室内の右側に吹き出される。
また、下側左右羽根40bにおける下側左羽根42aは、当該空気調和機に向かって左側に吹き出すように配置されており、下側右羽根42bは、当該空気調和機に向かって右側に吹き出すように配置されている。従って、下側吹出し領域BA(第2吹出し口)においては、下側吹出し左領域からの空気は左側に吹き出され、下側吹出し右空間領域からの空気は右側に吹き出される。
この結果、前述の図2に示した空気調和機は、暖房運転時において、下側吹出し右領域からの高温度の空気が、当該空気調和機に向かって右側の室内領域に対して比較的に強く吹き出され、上側吹出し左領域からの中温度の空気が当該空気調和機に向かって左側の室内領域に対して比較的に強く吹き出される。
図13および図14は、実施の形態1の空気調和機において実行される風向ルーバーアセンブリ3における上下風向ルーバー30と左右風向ルーバー40の具体的な回動位置の例示を示す斜視図である。図13および図14は、空気調和機の吹出し口2bなどが表れる室内機1の前面側を下方から見た図である。
図13に示す空気調和機においては、上下風向ルーバー30の上段羽根板31と中段羽根板32と下段羽根板33の3段の羽根板が略同じ方向に向くように略平行に配置されている。図13に示すように、セパレータである中段羽根板32を構成する左右に2分割された中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bは、同じ向きであり、一枚板の羽根板のように形成されている。図13に示す左右風向ルーバー40における上側左右羽根40aは、両側とも上側吹出し領域FAからの空気を室内の右側に吹き出すように配置されている。また、下側左右羽根40bは両側とも下側吹出し領域BAからの空気を室内の左側に吹き出すように配置されている。
図14に示す空気調和機においては、図13と同じように上下風向ルーバー30の上段羽根板31と中段羽根板32と下段羽根板33が略同じ方向に向くように略平行に配置されている。図14における左右風向ルーバー40は、前述の図2に示したように、上側左右羽根40aと下側左右羽根40bの両方とも、左右に吹き分けるように配置されている。
上記のように、実施の形態1の空気調和機においては、吹出し口2bに設けられている上中下の3段構成の上下風向ルーバー30と、上下2段の左右風向ルーバー40とにより構成された風向ルーバーアセンブリ3により、第1吹出し口である上側吹出し領域FAと、第2吹出し口である下側吹出し領域BAから所望の方向に中温度の空気と高温度の空気を吹き分けることが可能となる。さらに、左右風向ルーバー40の上下のそれぞれが2分割されて左右に吹き分けられるように構成されているため、実施の形態1の空気調和機における吹出し口2bは、上下左右に4分割された吹出し領域となり、それぞれの領域が異なる吹き出し方向とすることが可能である。従って、実施の形態1の空気調和機の構成においては、室内における空調対象領域に対して所望の温度領域となるように空調することが可能となる。
[ミニ羽根]
図13および図14に示すように、セパレータである中段羽根板32を構成する中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bには、ミニ羽根20が形成されている。ミニ羽根20は、中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bにおける上面側の上流側に形成されている。ミニ羽根20は、中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bの上面に対して所定の隙間を有して平行に配設されている。ミニ羽根20は、薄く細長い板材で構成され、中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bの上面に突設された複数の支持部20aにより保持されている。ミニ羽根20を保持する支持部20aは、中段左羽根板32aおよび中段右羽根板32bのそれぞれの上面とミニ羽根20との間の隙間にスムーズな気流が形成されるように短い薄板で構成されている。
図15は、実施の形態1の空気調和機における風向ルーバーアセンブリ3におけるミニ羽根20の効果について説明する図である。図15は、吹出し口2bにおける中段羽根板32の上面に形成されたミニ羽根20の近傍を示す断面図である。図15において、(a)は中段羽根板320にミニ羽根が設けられていない場合の吹出し口2bからの空気の流れを示す図であり、(b)は中段羽根板32にミニ羽根20が設けられている場合の吹出し口2bの空気の流れを示す図である。
図15の(a)および(b)に示すように、通風路7からの空気は、上段羽根板31と中段羽根板32/320との間に形成される上側吹出し領域FAと、中段羽根板32/320と下段羽根板33との間に形成される下側吹出し領域BAとに分かれて吹出し口2bから吹き出される構成である。しかしながら、図15の(a)に示すように、中段羽根板320にミニ羽根が設けられていない場合、例えば、暖房運転時のように通風路7からの空気をそれぞれの羽根板により更に下向きとするとき、通風路7からの空気は中段羽根板320の上流側端部に当たったのちに羽根板表面に沿わずに剥離し、中段羽根板320の上面側に渦などにより乱流が生じる。このように、上段羽根板31と中段羽根板320との間の上側吹出し領域FAに発生した渦などの乱流により、中段羽根板320と下段羽根板33との間の下側吹出し領域BAからの空気に影響を与えて、上側吹出し領域FAからの空気と下側吹出し領域BAからの空気が混合されてしまう場合がある。この結果、上側吹出し領域FAからの中温度の空気と、下側吹出し領域BAからの高温度の空気とを吹き分けることができなくなる場合が生じる。このような問題を解決するために、実施の形態1の空気調和機においては、中段羽根板32にミニ羽根20が設けられている。
図15の(b)に示すように、中段羽根板32にミニ羽根20が設けられている場合、例えば、暖房運転時のように通風路7からの空気をそれぞれの羽根板により更に下向きとするとき、通風路7からの空気は上下風向ルーバー30に案内されて上側吹出し領域FA(第1吹出し口)および下側吹出し領域BA(第2吹出し口)から下方に吹き出される。このとき、通風路7からの空気は、特に、中段羽根板32の上流側端部に設けられたミニ羽根20により羽根板表面に沿って剥離が発生せず、中段羽根板32の上面側における渦などの発生が抑制されており、中段羽根板32の上面側をスムーズに吹き出される空気が流れる。この結果、上側吹出し領域FA(第1吹出し口)からの中温度の空気と、下側吹出し領域BA(第2吹出し口)からの高温度の空気とを確実に吹き分けることができる構成となる。なお、上記の説明においては、暖房運転時のように通風路7からの空気を中段羽根板32により下向きとする場合のミニ羽根20による整流効果について説明したが、中段羽根板32が回動して他の位置においても、ミニ羽根20が上側吹出し領域FA(第1吹出し口)における整流効果を示すことが認められた。
[温冷感検知制御]
実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ10、温冷感センサ11、床温センサ、日射センサ、および熱交換機5の各部位の温度を検出する温度センサなどからの各種情報に基づいて当該空気調和機が駆動制御されている。
例えば、人感センサ10および温冷感センサ11は、室内における空調対象領域からの赤外線に基づいて人の存在、人の移動、および熱画像情報などを検出する構成である。実施の形態1の空気調和機における温冷感センサ11であるサーモパイルセンサにより取得された熱画像情報により温冷感を検知している。
実施の形態1の空気調和機においては、温冷感センサ11からの熱画像情報に基づいて空調対象領域における人の「温冷感」を検知する構成であるが、人が感じる「暑い」、「寒い」を示す「温冷感」の指標としては、一般的にはPMVスケール(Predicted Mean Vote:予測温冷感申告)がよく用いられている。PMVスケールにおいては、「+3(Hot:暑い)」〜「−3(Cold:寒い)」の7段階評価尺度となっている。実施の形態1においては、空気調和・衛生工学会温冷感小委員会で提案された、9段階温冷感尺度を温冷感スケールとして用いている。9段階評価尺度は、PMVスケールの両極に、「+4(非常に暑い)」および「−4(非常に寒い)」を加えたものである。この温冷感スケールを用いて後述する温冷感検知制御を行っている。
なお、以下の実施の形態1における説明において、「温冷感」とは温冷感スケールの「−4」〜「+4」の範囲内の数値を示すものである。また同様に、後述する「平均温冷感」、「標準温冷感」、「検知温冷感」などの「温冷感」に関する用語においても、それぞれが温冷感スケールの「−4」〜「+4」の範囲内の数値を示すものである。
実施の形態1の空気調和機の温冷感検知制御においては、当該空気調和機の設定温度に対して、一般的な人が標準的に感じる「温冷感」を「標準温冷感」として、その「標準温冷感」を「目標温冷感」として空調制御を行っている。実施の形態1の温冷感検知制御においては、「標準温冷感」との差が「±0.5」以内の目標温冷感ゾーンとなるように温度シフト制御、および吹き分け制御を行っている。温度シフト制御および吹き分け制御については後述する。なお、温冷感スケール「±1」以内であればPPD(Predicted Percentage of Dissatisfied:予測不満率)で8割の人が不満と感じていないという実験結果があり、この実験結果に基づいて、実施の形態1の温冷感検知制御においては、温冷感スケールの「目標温冷感」との差を「±0.5」以内としている。
空調対象である室内において、人が安静状態および人の活動量が小さい場合であり、かつ空調運転が充分安定した状態においては、人の表面温度(tcl)と壁面温度(tr)との差(tcl−tr)が分かれば、その人の放熱量(H)を推定することが可能となる。
人の放熱量(H)とその人の代謝量(産熱量M)が釣り合っていれば(H=M)、その人の熱収支のバランスがとれており、その人は快適と感じていると推定できる。一方、放熱量(H)が代謝量(産熱量M)より大きければ(H>M)、その大きさの程度に応じてその人は寒く感じており、逆に放熱量(H)が代謝量より小さければ(H<M)、その人は暑く感じていると推定できる。
したがって、人が安静状態および人の活動量が小さい場合においては、周囲気温と、温冷感センサ11であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報から人の表面温度と、周囲の壁面温度とを抽出して、その人の放熱量(H)を検知することにより、その人の「温冷感」を非接触で検知することが可能となる。
実施の形態1の空気調和機においては、人の活動量が小さい場合、若しくは人が安静状態の場合における人の放熱量を非接触で推定し、推定された放熱量に基づいてその人の「温冷感」を検知して、空調制御が行われている。ただし、温冷感センサ11から得られた熱画像情報だけでは、空調対象領域(居住空間)における人が存在する領域(人存在領域)の特定が困難であり、さらに人の活動量が小さい状態であるか、若しくは人が安静状態かを検知することが困難である。
そこで、実施の形態1の空気調和機における温冷感検知に基づく温冷感検知制御においては、温冷感センサ11であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報からの温度分布情報と共に、人感センサ10の複数の赤外線センサからの人体検知情報、および空調対象領域に関する他のセンサからの温度情報を用いて、空調対象領域における人の存在位置、人の活動状態、そして人の「温冷感」を検知する構成を有している。
なお、実施の形態1の空気調和機においては、温冷感センサ11からの熱画像情報、人感センサ10からの人体検知情報、および温度センサ(室温センサや床温センサなど)からの温度情報(室温情報)を用いて温冷感検知制御を行うものとして説明するが、本発明の空気調和機としては、室温情報を温冷感センサ11の熱画像情報から取得して、温冷感センサ11からの熱画像情報と、人感センサ10からの人体検知情報とを用いて実施の形態1における空調制御を行うよう構成されている。
なお、実施の形態1においては、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、すなわち、代謝量(産熱量M)が略一定値と見なせる場合について説明するが、活動量がある一定以上の大きい場合には、その活動量に応じた代謝量(産熱量M)を算出して、算出された代謝量(産熱量M)を、その人の放熱量Hとを比較することにより、その人が暑いと感じているか、寒いと感じているかの「温冷感」を検知するように構成すればよい。
前述の図2に示したように、実施の形態1における人感センサ10は、室内機1の前面左端側に3つの赤外線センサが水平方向に並んで配置されている。人感センサ10は、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する焦電型赤外線センサである。実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ10の各赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じてパルス信号を出力し、そのパルス信号に基づいて制御部が人の在否を判定している。
実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ10から出力される信号に基づいて、空調対象領域の人が殆ど動かない安静状態か、若しくは人が活動する活動状態かを判断している。具体的には、制御部50が、所定の検出時間(例えば、2分間)内に人感センサ10から出力された信号に応じて、人の活動量の大小または安静状態を決定している。
また、実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ10における3つの赤外線センサから出力される信号に基づいて、空調対象領域における人***置判別領域を複数の検知領域に区分けしている。当該空気調和機においては、人感センサ6における3つの赤外線センサのそれぞれにおいて、検知できる領域が重なるように構成されており、それぞれの赤外線センサからの信号に基づいて空調対象領域における複数の検知領域における人の在否を検出する構成である。
人の活動量が、「小」若しくは「安静状態」であると判定された場合には、それぞれの検知領域の人の「温冷感」を決定し、全人***置判別領域の検知処理が完了する。
[温冷感検知による空調制御]
上記のように、空調対象領域における全領域(全人***置判別領域)の「温冷感」が確定される度に以下に説明する温冷感検知による空調制御が実行される。なお、温冷感検知による空調制御は、当該空気調和機が空調運転を開始した後、空調対象の室内の温度が設定された条件に関して一定条件を満たした安定した状態になったことを、各種温度センサーからの温度情報により検知した後に実行される。当該空気調和機が空調運転を開始するときは、通常運転モードであり、室内機1の熱交換機5は、圧力調整器12が圧力調整を行わない状態であり、第1熱交換領域Xおよび第2熱交換領域Yは併合された一つの熱交換動作を行っており、実質的に一温度の熱交換動作(一温度運転モード)を行っている。
図16は、実施の形態1の空気調和機において実行される温冷感検知制御のフィルタリング処理(除外判定処理)を示すフローチャートである。フィルタリング処理は、温冷感センサ11からの熱画像情報に基づいて行われる処理であり、空調対象の室内における人情報毎に行われる除外判定処理である。
図16のステップ101においては、「温冷感センサ開始判定」が行われ、空調対象の室内温度が所定温度、例えばその時の設定温度に到達したか否かを判断している。ステップ101の「温冷感センサ開始判定」は、室内温度が所定温度に到達するまでは温冷感検知制御を行わないフィルタリング処理の1つである。実施の形態1においては、当該空気調和機におけるその時の設定温度を「温冷感センサ開始判定」における閾値としての所定温度としている。室内温度が所定温度に到達している場合には、人情報毎のフィルタリング処理が開始される(ステップ102)。
ステップ103においては、「温冷感異常値除外判定」が行われる。実施の形態1における人の温冷感スケールの「温冷感」は「±4」の範囲内の指数である。しかしながら、温冷感センサ11からの熱画像情報に基づいて、制御部50においては空調対象の室内の「温冷感」を単純に計算しているため、人の「温冷感」としてあり得ない数値を算出する場合がある。即ち、制御部50においては、「温冷感」として「+4」を超える値、または「−4」未満の値が算出された場合、その値は不正規データ(不要データ)であると判定して、その算出結果を除外する。ステップ103においては、検知した温冷感スケールの「温冷感」が「−4」以上、「+4」以下の正常値の範囲内であるか否かが判断される。
ステップ104においては、「人検出正確度除外判定」が行われる。温冷感センサ11からの二次元の熱画像情報から、制御部50においては、基準となる背景温度と人領域温度との差に基づいて人領域温度を抽出して、空調対象の室内における人の「温冷感」を算出している。このため、温冷感センサ11の測定開始直後などの背景温度のサンプリング回数が少ない場合には、「温冷感」の検出精度が低下する。従って、実施の形態1における温冷感検知による空調制御においては、サンプリング回数が少ない場合には、その情報を除外している。ステップ104においては、背景温度のサンプリング回数が少ない場合を除外するために、サンプリング回数が所定の回数以上であるか否かが判断される。
ステップ105においては、「人感センサ検出範囲除外判定」が行われる。温冷感検知制御は、人感センサ10からの人体検知情報による人位置判定結果と連動している。従って、人感センサ10による人位置判定結果において人が存在しない領域において、熱画像情報から算出された「温冷感」を示す情報は、温冷感検知による空調制御を行うための情報として採用することができない。このため、そのような「温冷感」を示す算出結果は除外される。ステップ105においては、人感センサ10による人位置判定結果において、人が存在しない領域に「温冷感」が検知された場合には、その情報は除外される。
ステップ106においては、「温冷感センサ検出範囲除外判定」が行われる。温冷感センサ11は、サーモパイルセンサであるため、一定距離以上離れた位置に関しては正確な「温冷感」の検知ができない。そこで、例えば「温冷感」を算出する人までの床距離が所定の距離を超える場合には、その「温冷感」は正確ではないとして、そのような場合の算出結果は除外される。また、人位置が近すぎる場合には、熱画像情報における人が占める面積が極端に大きくなり正確な「温冷感」の検知ができない。このため、人感センサ10の検出部の位置の水平面に対して、その検出部と人体の足位置(床面)とを結ぶ線分がなす角度が所定の角度を超える場合には、熱画像情報における人が占める面積が大きく、正確な「温冷感」の検知ができないとして、そのような場合の算出結果を除外する。ステップ106においては、例えば、「温冷感」を算出する人までの床距離が所定の距離以内であり、且つ人感センサ10の検出部の位置の水平面に対して、その検出部と人体の足位置(床面)とを結ぶ線分がなす角度が所定の角度以内であるかが判定される。
ステップ107においては、「人情報の領域分配」が行われる。これまでのステップ103〜106フィルタリング処理(除外判定処理)においては、フィルタリング処理された人情報(人の「温冷感」の情報)が空調対象の室内における複数の人***置判別領域に分配されて、その人***置判別領域毎の「温冷感」に変換される。なお、同じ領域内に複数の人情報が存在する場合には、その領域の「温冷感」の平均値をその領域の「温冷感(平均温冷感)」とする。
なお、ステップ103〜106において該当しなかった人情報(人の「温冷感」の情報)は破棄される。ステップ109においては、検知された人情報に関するフィルタリング処理が完了したことが確認され、次の人***置判別領域毎のフィルタリング処理に移行する(ステップ110)。
ステップ111においては、「人位置除外判定」が行われる。温冷感センサ11は、サーモパイルセンサであるため、動きのない熱源(例えば、テレビ、フロアスタンドなど)を人として認識し、誤検知する可能性がある。そこで、ステップ111において、人の動きを検知する人感センサ10からの人体検知情報と照らし合わせて、検知された「温冷感」が人体検知情報において人が存在しない領域であった場合には、そのときの温冷感センサ11の測定結果を除外する。ステップ111においては、温冷感センサ11による熱画像情報において検知された「温冷感」の該当する領域に人体検知情報において人が存在するか否かが判定され、人体検知情報において人が存在しない領域に「温冷感」が検知された場合には、そのときの検知情報は破棄される。
ステップ112においては、「ブロック活動量除外判定」が行われる。本実施の形態1における温冷感検知による空調制御においては、人の安静状態、若しくは人の活動量が「小」の状態を基準として温冷感スケールの指数が設定されている。このため、空調対象領域における人間が一定以上の活動(活動量>小)を行っている場合、温冷感センサ11からの熱画像情報による人の「温冷感」の検知による制御から、人感センサ10からの人体検知情報により人検出反応数に基づいて人の活動量(「大」、「中」、「小」または「安静状態」)を推定する制御に切替えている。具体的には、人感センサ10における各赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じた信号に基づいて人の在否を判定し、そのときの所定時間(例えば、2分間)内で各人***置判別領域において人の存在が検知された人検出反応数に基づいて人の活動量(「大」、「中」、「小」および「安静状態」)を推定している。
上記のように、ステップ112においては、人感センサ10からの人体検知情報に基づいて人の活動量が「中」未満であるか否かが判定される。即ち、人の活動量が「小」以下(「安静状態」を含む)であるか否かが判定される。ステップ112において、人の活動量が、「小」若しくは「安静状態」であると判定された場合には、ステップ113において、各領域の人の「温冷感」を決定し、全領域のフィルタリング処理が完了する(ステップ115)。
上記のステップ101〜115の温冷感検知における全領域のフィルタリング処理は、温冷感センサ11による熱画像情報が取得される毎に行われており、全領域の「温冷感」が当該空気調和機において常に精度高く把握され確定される。
図17は、上記のように検知された温冷感による空調制御を示すフローチャートである。図17のステップ201においては、検知された「温冷感」が複数の検知領域に分かれているか否か、即ち複数の検知領域に人が存在しているか否かが判定される。検知された「温冷感」が複数の検知領域に存在する場合には、ステップ202において、人の存在が検知された複数の検知領域における「温冷感」の差が、所定値以上か否かが判定される。複数の検知領域における「温冷感」の差が、所定値以上であれば、吹き分け制御が必要と判定して、二温度運転モードとなるように圧力調整器12が駆動される(ステップ203)。例えば、暖房動作においては、第1熱交換領域Xが高温度(例えば、35〜55℃)の熱交換を行い、第2熱交換領域Yが中温度(高温度より所定の温度だけ低い温度)の熱交換を行うように、圧力調整器12に減圧動作をさせる。このときの熱交換機5における第1熱交換領域Xおよび第2熱交換領域Yの温度は、温度センサ18a,18b(図4参照)において検出されて制御部50に入力され、空調制御に用いられる。
ステップ204においては、ステップ202において判定された「温冷感」の差に応じて、該当する検知領域に対して上下風向ルーバー30、左右風向ルーバー40および室内側ファン6による吹き分け制御(風向制御および風量制御)が行われる。即ち、検知された該当領域におけるそれぞれの人達の「温冷感」が、同じとなるように、および/またはそのときの設定温度により決まる「標準温冷感」となるように、制御部50は風向および/または風量を制御する。例えば、「温冷感」が異なる領域に対して、「温冷感」の差が所定値(例えば0.5)以内となるように、上下風向ルーバー30および左右風向ルーバー40を回動させて吹き分け比率を変更する。
なお、実施の形態1において、「標準温冷感」とは、室内温度が設定温度の場合における通常の人が感じる「温冷感」をいう。例えば、設定温度が20℃のときに通常の人が感じる「標準温冷感」は略「−1」であり、設定温度が25℃のときに通常の人が感じる「標準温冷感」は略「+1」である。また、この「標準温冷感」は季節に応じて変更してもよい。
一方、ステップ201において、検知された「温冷感」が複数の領域に分かれておらず、1つの領域に複数の人が存在している場合には、複数の人が存在する領域の「平均温冷感」が算出される(ステップ205)。この「平均温冷感」に関しては、前述のステップ202においても各領域に複数の「温冷感」が存在する場合にも同様に適用され、各領域において「平均温冷感」が算出される。
ステップ206においては、算出された「平均温冷感」と、そのときの設定温度で決まる「標準温冷感」との差が所定値以上、例えば「±1」を超えているか否かが判定される。該当する領域の「平均温冷感」と「標準温冷感」との差が所定値以上の場合には、「平均温冷感」が「標準温冷感」との差が「±0.5」以内の目標温冷感ゾーン内となるように、空調対象領域に対する風向および/または風量の変更、および/または目標温度をシフト(温度シフト制御)して空調制御を行う(ステップ207)。
上記のステップ201〜207の空調制御が所定時間毎に行われて、人の活動量に応じた温冷感検知に基づく空調制御が実行される。従って、人の存在がなくなった場合などにおいては、上記の温冷感検知による空調制御を終了してもよい。
なお、実施の形態1における温冷感センサ11から制御部に送信される熱画像情報としては、検出した人の数、位置、および「温冷感」などのデータが含まれている。
[空気調和機における吹き分け制御]
実施の形態1の空気調和機においては、前述のように、人感センサ10からの人体検知情報および温冷感センサ11からの熱画像情報などに基づいて、空調対象である室内における人存在領域を特定し、人存在領域の人の放射量に基づいてその人の「温冷感」を推定検知して、その人が設定した温度において通常の人が「快適」と感じる「標準温冷感」となるように空調制御を行うものである。
実施の形態1の空気調和機は、前述のように、吹き出しの風向きを上下方向に変更する複数の羽根板で構成された上下風向ルーバー30と、吹き出しの風向きを左右方向に変更する複数の羽根板で構成された左右風向ルーバー40とを有している。また、上下風向ルーバー30は、上段羽根板31と中段羽根板32と下段羽根板33の上中下の3段構成であり、中段羽根板32は、その左右方向の中央で2分割されている(中段左羽根板32a、中段右羽根板32b)。左右風向ルーバー40は、上段羽根板31と中段羽根板32との間に形成される上側吹出し領域FA(第1吹出し口)に配設される上側左右羽根40aと、中段羽根板32と下段羽根板33との間に形成される下側吹出し領域BA(第2吹出し口)に配設される下側左右羽根40bとを有する、上下2段構成である。更に、上側左右羽根40aと下側左右羽根40bは、それぞれが左右2分割の羽根群に分かれて、左右に吹き分けられるように構成されている。
上記のように実施の形態1の空気調和機においては、吹出し口2bが上側吹出し領域FA(第1吹出し口)と下側吹出し領域BA(第2吹出し口)の上下2段の吹き出し口に分かれており、さらにそれぞれの上下の領域が左右に吹き分けられるように構成されている。このため、人感センサ10からの人体検知情報および温冷感センサ11からの熱画像情報などに基づいて特定された人存在領域と、その人存在領域の人の検知された「温冷感」に基づいて、制御部は風向ルーバーアセンブリ3の吹き分け制御を行う。
以下、実施の形態1の空気調和機における風向ルーバーアセンブリ3の吹き分け制御の具体的な例[1]〜[5]について説明する。なお、以下に説明する例[1]〜[4]は、暖房運転時において、空調対象の室内における左右の領域にそれぞれ1人が存在している場合であり、それぞれの人の検知された「温冷感」に基づいて行う吹き分け制御である。また、例[5]は、暖房運転時において、空調対象の室内に1人が存在している場合であり、その人の活動量が多い場合と少ない場合における吹き分け制御である。
[1]まず、具体例1としての空気調和機においては、制御部50が空調対象の室内の左右の領域に存在する両方の人が「快適」と感じていると判定した場合である。この場合、第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yとの間をつなぐ冷媒管路に設けられた圧力調整器12が圧力調整を行わない状態に設定されており、熱交換機5が一つの熱交換としての機能を有して「一温度運転モード」となる。このとき、風向ルーバーアセンブリ3における上側吹出し領域FAおよび下側吹出し領域BAからは実質的に同じ温度の空気が吹き出され、上側左右羽根40aと下側左右羽根40bは、それぞれが左右の首振り動作が継続される。若しくは、人が存在する左右の領域に向かって吹き出すように、上側左羽根41aと下側左羽根42aが左側の領域に向き、上側右羽根41bと下側右羽根42bが右側の領域に向き、それぞれの方向に振り分けて回動させ、その位置に固定した状態で吹き出し動作を行ってもよい。
[2]具体例2としての空気調和機においては、制御部50が、空調対象の室内の左右の領域に存在する人の「温冷感」の差が「±1」以上の場合であって、左側の領域における人が「寒い」と感じ、右側の領域における人が「快適」と感じていると判定した場合である。この場合には、圧力調整器12が減圧状態に設定される。この結果、熱交換機5は、第1熱交換領域Xと第2熱交換領域Yにおいて異なる温度(高温度と中温度)に熱交換する「二温度運転モード」となる。従って、このときの風向ルーバーアセンブリ3における上側吹出し領域FAからは中温度の空気が右側の領域に吹き出され、下側吹出し領域BAから高温度の空気が左側の領域に吹き出されるように、上側左右羽根40aと下側左右羽根40bの吹き出し方向が設定される。なお、このように設定された場合は、発明者の実験では、右側の領域と左側の領域の床温度差(床上10cmの温度)が3℃であった。
[3]具体例3としての空気調和機においては、制御部50が、空調対象の室内の左右の領域に存在する人の「温冷感」の差が「±1」以上の場合であって、左側の領域における人が「寒い」と感じ、右側の領域における人が「やや暖かい」と感じていると判定した場合である。この場合には、圧力調整器12が減圧状態に設定されて、熱交換機5が「二温度運転モード」となる。このときの風向ルーバーアセンブリ3における下側吹出し領域BAから高温度の空気が左側の領域に吹き出されるように、下側左右羽根40bの吹き出し方向が設定される。さらに、上側吹出し領域FAから吹き出される中温度の空気は、上側左右羽根40aの上側左羽根41aにより左側の領域に吹き出され、且つ上側右羽根41aにより右側の領域に吹き出される。即ち、上側吹出し領域FAにおける上側左右羽根40aは左右に吹き分けるように設定される。このように設定された場合、発明者の実験では、右側の領域と左側の領域の床温度差が5℃であった。
[4]具体例4としての空気調和機においては、制御部50が、空調対象の室内の左右の領域における人の「温冷感」の差が「±1」以上の場合であって、左側の領域における人が「寒い」と感じ、右側の領域における人が「暑い」と感じていると判定した場合である。この場合には、圧力調整器12が減圧状態に設定されて、熱交換機5が「二温度運転モード」となる。このときの風向ルーバーアセンブリ3における下側吹出し領域BAから高温度の空気が左側の領域に吹き出されるように、下側左右羽根40bの吹き出し方向が設定される。同様に、上側吹出し領域FAから吹き出される中温度の空気が左側の領域に吹き出されるように、上側左右羽根40aの両方が左側の領域に吹き出し方向が設定される。このように設定された場合、発明者の実験では、右側の領域と左側の領域の床温度差が8℃であった。
[5]具体例5としての空気調和機においては、暖房運転時の空調対象の室内に1人のみが存在している場合に「二温度運転モード」が実行されている。具体例5においては、室内における人の活動量が多い場合(移動量が多い場合)と少ない場合(移動量が少ない場合)で吹き分け制御を行っている。
人の移動量が多い場合には、風向ルーバーアセンブリ3における下側吹出し領域BAからの高温度の空気がその人が存在する領域に向かって吹き出される。同時に、上側吹出し領域FAから吹き出される中温度の空気は、空調対象の室内の全体に対して吹き出されるように、上側吹出し領域FAにある上側左右羽根40aが左右に首振り動作を行うように駆動制御される。この結果、空調対象の室内の人の移動量が場合は、人中心の暖房を実行しつつ、室内全体の暖房を行い、空調対象の室内における温度むらが抑制された空調を行うことができる。
一方、空調対象の室内の人の移動が少なく、人の活動量が小さい場合には、その人が存在する領域に向かって「二温度運転モード」が実行される。即ち、下側吹出し領域BAからの高温度の空気は、その人が存在する領域に向かって吹き出される。このとき同時に、上側吹出し領域FAから吹き出される中温度の空気も、その人が存在する領域に向かって吹き出される。実施の形態1の空気調和機においては、風向ルーバーアセンブリ3により高温度の空気が下側吹出し領域BAから室内の足下側に吹き出され、中温度の空気が上側吹出し領域FAから室内の足下側より上側となる領域に吹き出される構成である。このため、当該空気調和機における「二温度運転モード」においては、足下側が暖かく、頭側が足下側より温度が低くなる暖房運転が行われ、室内の人に対する快適制御(頭寒足熱モード)が行われる。当該空気調和機において行った実験によれば、空調対象の室内の人の足下が30.2℃のとき、頭付近は24.9℃であり、頭寒足熱モードにおける足下と頭付近との温度差は5℃以上を得ることが可能であった。
上記のように、実施の形態1の空気調和機においては、人感センサ10からの人体検知情報および温冷感センサ11からの熱画像情報などに基づいて、空調対象である室内における人存在領域を特定し、室内の人の「温冷感」を検知して、その人が設定した温度において通常の人が「快適」と感じる「標準温冷感」となるように空調制御が行われる。実施の形態1の空気調和機においては、上記のように、空調対象の室内における左右の領域に対して左右風向ルーバー40の吹き出し方向を回動制御することにより空調制御を行っている。さらに、当該空気調和機においては、吹き出しの風向きを上下方向に変更する上中下の3段構成の羽根板を有する上下風向ルーバー30が設けられているため、空調対象の室内において前後の領域、例えば室内において室内機1に近い領域、遠い領域、およびその間の中間領域のそれぞれの領域に対して吹き付けるように設定することが可能である。
前述のように、上下風向ルーバー30は、上段羽根板31と中段羽根板32と下段羽根板33の上中下の3段構成であり、中段羽根板32は、その左右方向の中央で2分割されている(中段左羽根板32a、中段右羽根板32b)。従って、3段構成の上下風向ルーバー30を上下方向の所望の位置に回動配置することにより、空調対象の室内における前後の所望の領域の方向に吹出し口2bからの空気を吹き出すことが可能である。さらに中段羽根板32において左右に2分割された中段左羽根板32aと中段右羽根板32bのそれぞれの上下方向の向きを変えることにより、吹出し口2bに設けられた風向ルーバーアセンブリ3において4分割された吹出し領域からの吹出し上下方向、吹出し速度(吹出し風量)を変更することが可能となる。即ち、4分割された吹出し領域とは、(1)上段羽根板31と中段左羽根板32aとの間の上側吹出し左領域、(2)上段羽根板31と中段右羽根板32bとの間の上側吹出し右領域、(3)中段左羽根板32aと下段羽根板33との間の下側吹出し左領域、および(4)中段右羽根板32bと下段羽根板33との間の下側吹出し右領域である。このように、上下風向ルーバー30および左右風向ルーバー40を備えた風向ルーバーアセンブリ3により、4分割された吹出し領域から吹出し上下方向、吹き出し左右方向、吹出し速度(吹出し風量)を変更することにより、空調対象の室内において前後左右の領域、例えば室内において室内機1に近い左右の領域、遠い左右の領域、およびその間の左右の中間領域に対して吹き分けるように設定することが可能となる。
また、実施の形態1の空気調和機における「二温度運転モード」および風向ルーバーアセンブリ3の吹き分け制御により、空調対象の室内に一人の人が存在する場合であっても、人の移動量に応じてその人が快適と感じる最適な空調を行うことができる。
上記のように、実施の形態1の空気調和機によれば、空調対象の室内に対して、最適な空調を行うことができ、当該室内における人中心の空調を行うことにより、無駄な空調を抑制して省電力を図りつつ、室内に存在する人達が快適と感じる空調を確実に行うことができる。
以上のように、本発明の空気調和機によれば、人感センサからの赤外線量の変化を示す信号に基づいて空調対象領域における人の存在する人存在領域を特定し、温冷感センサからの熱画像情報から空調対象領域における人の放射量に基づいて、その人が好適と感じる空調制御、および/またはその人が設定した温度において通常の人が感じる「標準温冷感」となるように、「二温度運転モード」および風向ルーバーアセンブリにおけるきめの細かい吹き分け制御を行うことにより精度の高い人に優しい空調制御を行うことができる。
本開示をある程度の詳細さをもって実施の形態において説明したが、実施の形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、実施の形態における要素の組合せや順序の変化は請求された本開示の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。