JP2020084223A - 溶融Al系めっき鋼板および溶融Al系めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融Al系めっき鋼板および溶融Al系めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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康太郎 石井
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智啓 栗山
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【課題】被覆層の曲げ加工性に優れた溶融Al系めっき鋼板を実現する。【解決手段】溶融Al系めっき鋼板(1)は、基材鋼板(10)の表面に、Alを主体とするめっき層(21)と、めっき層(21)と上記表面との間に形成された合金層(22)とからなる被覆層(20)を有する。被覆層(20)は、質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、溶融Al系めっき鋼板および溶融Al系めっき鋼板の製造方法に関する。
溶融Al系めっき鋼板は、Alを主体とする溶融めっき浴に鋼板を浸漬させる工程により製造される。当該手法により製造された溶融Al系めっき鋼板の被覆層は、Alを主とするAlめっき層(以下めっき層と称する)、および、被めっき鋼板とAl浴の反応により形成された金属間化合物からなる層(以下、合金層と称する)を有する。溶融Al系めっき鋼板は、耐食性、耐熱性に優れ、美麗な表面外観を持つことから、自動車用排気部材、熱器具を主体とする家電製品、あるいは屋根、壁等の建築材料として広範な分野で使用されている。
上記のように溶融Al系めっき鋼板は、広範な分野で使用されていることから、さらなる改良が求められている。例えば、特許文献1、2には、溶融Al系めっき鋼板の物性(例えば、耐食性、耐熱性)を向上させる技術が開示されている。
特開平2−88754号公報 特開平6−228725号公報 特許第4644314号公報
ところで、家電製品あるいは建築材料の用途では、主として曲げ加工により所望の形に成形される。溶融Al系めっき鋼板は、めっき層および合金層が硬いため、厳しい曲げ加工を受けた際にめっき層にクラックが発生し、野外での使用時に加工部から早期に赤錆発生するという問題がある。
しかしながら、特許文献1および2の技術は、耐食性または耐熱性の向上を目的としており、溶融Al系めっき鋼板の曲げ加工性を向上させるものではない。
また、特許文献3には、めっき層および合金層からなる被覆層を、Zn−Al−Mg−Si−Cr合金とし、合金層がCrを含むAl−Si−Fe層と、AlFeおよびAl3.2FeからなるAl−Fe層との複層構造としている。これにより、曲げ加工時の割れを各層間で停止、伝播を押え、めっき層が剥離するような割れの発生防止、つまり加工性の向上を図っている。しかしながら、特許文献3の技術では、Al系めっきの耐食性に悪影響を与えるZnを含むことから、長期耐久性は劣るものとなる。
本発明の一態様は、被覆層の曲げ加工性に優れた溶融Al系めっき鋼板、およびその製造方法を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る溶融Al系めっき鋼板は、鋼板の表面に、Alを主体とするめっき層と、当該めっき層と前記表面との間に形成された合金層とからなる被覆層を有する溶融Al系めっき鋼板であって、前記被覆層は、質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る溶融Al系めっき鋼板の製造方法は、質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む溶融Al系めっき浴に鋼板を浸漬する浸漬工程と、前記溶融Al系めっき浴から引き上げられた前記鋼板を冷却する冷却工程とを含む。
本発明の一態様によれば、被覆層の曲げ加工性に優れた溶融Al系めっき鋼板を実現できる。
本発明の一実施形態における溶融Al系めっき鋼板の、基材鋼板の表面に対して垂直な断面の模式図である。 本発明の実施例および比較例としての溶融Al系めっき鋼板における合金層の模式図である。
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中の「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。例えば、明細書中で「1%〜5%」または「1〜5%」と記載されていれば、「1%以上、5%以下」を示す。また、本明細書中では、特に明記しない限り、組成を示す際に用いる「%」は、「質量%」を意味するものとする。
(溶融Al系めっき鋼板の構造)
図1は、本実施形態における溶融Al系めっき鋼板1の、基材鋼板10の表面に対して垂直な断面の模式図である。
図1に示すように、溶融Al系めっき鋼板1は、基材鋼板10(鋼板)と、被覆層20とを有している。
基材鋼板10は、特に制限されるものではなく、従来から溶融Al系めっき鋼板のめっき原板として適用されている鋼種をはじめ、用途に応じて種々の鋼種の中から選択することができる。例えば、耐食性を重視する用途ではステンレス鋼板を基材鋼板10として適用すればよい。基材鋼板10の板厚は、限定されないが、例えば0.4〜3.2mmとすることができる。
被覆層20は、Alを主体とするめっき層21と、合金層22とを含んでいる。被覆層20は、質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。
被覆層20中のAlの濃度範囲は特に定めないが、75%よりも大きいことが好ましい。これは、溶融Al系めっき鋼板において、めっき層のAl濃度が高いほど長期耐久性が優れるためである。
被覆層20中のFe濃度は、めっき付着量(すなわち、合金層22の厚さとめっき層21の厚さとの比)によって変動するため濃度範囲を設定しない。
合金層22は、めっき層21と基材鋼板10の表面との間に形成されている層である。合金層22は、Al−Fe−Si系合金部23と、Al−Fe系合金層24とを含む。
なお、以降における合金層22の組成の分析は、合金層断面組織のEDS測定による結果であるが、EDS測定以外の分析手法を否定するものではない。
Al−Fe−Si系合金部23は、めっき層21とAl−Fe系合金層24と間に位置しており、めっき層21と接している。Al−Fe−Si系合金部23は、2%以上10%以下のCrを含むAl−Fe−Si系金属間化合物からなる。Al−Fe−Si系合金部23の代表的な組成は、Al:60〜70%、Fe:20%〜30%、Si:5%〜12%、Cr:2%〜10%のである。Al−Fe−Si系金属間化合物は、その組成より恐らくAlFeSiから構成されると考えられる。
Al−Fe−Si系合金部23は、粒状の、Crを含むAl−Fe−Si系金属間化合物(以下では、単にAl−Fe−Si系金属間化合物と称する)が、めっき層21とAl−Fe系合金層24の間に集合することで形成される。
被覆層20におけるAl−Fe−Si系金属間化合物の割合は、被覆層20中のCr濃度に比例して増加する。そのため、被覆層20中のCr濃度が低い(具体的には、0.5%以下)と、Al−Fe−Si系金属間化合物は、Al−Fe系合金層24上に互いに離散した粒状(塊状)に形成される。この場合、Al−Fe−Si系合金部23は、層状にならず不連続となる。一方で、被覆層20中のCr濃度が高い(具体的には、0.5%よりも多い)と、Al−Fe−Si系金属間化合物が多量に形成されるため、Al−Fe−Si系合金部23は、層状(連続)となる。
Al−Fe系合金層24は、Al−Fe−Si系合金部23と、基材鋼板10との間に位置しており、基材鋼板10と接している。Al−Fe系合金層24は、第1層25と第2層26とを含む。Al−Fe系合金層24は、Crの含有量が1%以下となっている。
第1層25は、Al−Fe系合金層24における、溶融Al系めっき鋼板1の表層側に位置している。第1層25の代表的な組成は、Al:55%〜70%、Fe:30%〜40%、Si:0.5%〜4%、Cr:0.1%〜1.0%である。第1層25は、その組成より恐らくAl13Feから構成されると考えられる。
第2層26は、Al−Fe系合金層24における、溶融Al系めっき鋼板1の鋼板側に位置している。第2層26の代表的な組成は、Al:45〜60%、Fe:40%〜50%、Si:0.5%〜5%、Cr:0.05%〜0.7%である。第2層26は、その組成より恐らくAlFeから構成されると考えられる。
(溶融Al系めっき鋼板の製造方法)
溶融Al系めっき鋼板1の製造方法は、浸漬工程と、冷却工程とを含む。
浸漬工程は、質量%で、溶融Al系めっき浴(以下では、単にめっき浴と呼称する)に基材鋼板10を浸漬する工程である。
本実施形態におけるめっき浴は、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。なお、溶融Al系めっき鋼板1の成分組成は、めっき浴の組成とほぼ同一となる。CrおよびSiの組成を上記のように設定する理由については後述する。
めっき浴中のFe濃度は、実操業における、基材鋼板10またはめっき設備(具体的には、めっき釜、浸漬ロール)などからのめっき浴中への鉄の溶出と、浸漬工程後に鋼板により持ち出されるめっき浴を補充するために供給される新浴(Feをほとんど含まない)による希釈とのバランスで決まる。めっき浴中のFe濃度は、めっき浴温度などの操業条件によるが、通常は1.5%〜3.0%の範囲に収まる。
めっき浴中には必要に応じて、製造性や耐食性向上を目的にアルカリ土類金属、または、スパングルの微細化を目的にTiおよび/またはBの添加をしてもよい。この場合、被覆層20中におけるそれぞれの濃度は1%以下まで添加してもよい。
また、めっき浴中には、Pb、Sb、Sn、Cd、Ni、Mn、Mg、Cu、Znなどをそれぞれの目的に応じて含ませてもよい。また、これらの元素は、原料などから不可避的に混入する場合もある。これらの元素は、被覆層20中にそれぞれ最大で1%程度含まれていてもよい。
めっき浴の融点は、その浴組成により変化するが、おおむね600〜640℃である。そのため、当該融点に合わせてめっき浴の温度を650℃〜700℃に設定すればよい。
浸漬工程において、めっき浴浸漬直前の基材鋼板10の温度は、620℃〜700℃であることが好ましい。これは、基材鋼板10の温度が620℃未満では、めっき浴と基材鋼板10との反応が十分に進行せず、被覆層20と基材鋼板10とを十分に密着させることができない恐れがあるためである。一方で、基材鋼板の温度が700℃を超えると、過剰な厚さの合金層22が形成される虞がある。また、めっき浴温度から100℃以上異なるような、極端に離れた温度の基材鋼板10を連続的にめっき浴に浸漬・通過させることは、めっき浴温度の管理上、大きな困難を伴う。
基材鋼板10のめっき浴への浸漬時間は、1秒〜5秒とすることが好ましい。浸漬時間が1秒未満では、めっき浴と基材鋼板10の反応時間が十分に確保されず、被覆層20と基材鋼板10とを十分に密着させることができない虞がある。また、浸漬時間が5秒を超えると、過剰な厚さの合金層22を形成する虞がある。
基材鋼板10へのめっき付着量は、特に限定されるものでは無いが、片面付着量で10g/m以上200g/m以下であることが好ましい。片面付着量が10g/m未満では、曲げ加工時に合金層22に生じるクラックの幅に対してめっき層21が薄くなりすぎるため、めっき層21が伸びて鋼素地を被覆することが難しくなってしまう。また、片面付着量が200g//mを超えると、めっき層21が厚くなりすぎるため、曲げ加工時に生じる応力によりめっき層21にクラックが発生しやすくなる。
冷却工程は、前記溶融Al系めっき浴から引き上げられた基材鋼板10を冷却する工程である。冷却工程において、めっき浴から基材鋼板10を引き上げた時点から凝固までの冷却速度を5℃/秒〜30℃/秒(より好ましくは、10℃/秒〜20℃/秒)とすることにより、溶融Al系めっき鋼板1を製造することができる。
以上のように、溶融Al系めっき鋼板1は、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含むめっき浴を用いて製造される。換言すれば、溶融Al系めっき鋼板1の被覆層20は、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む。
上記の製造方法で製造された溶融Al系めっき鋼板1における合金層22は、Cr濃度が質量%で2%以上10%以下であるAl−Fe−Si系合金部23と、Cr組成が1%以下であり、かつ、Fe濃度が互いに異なる少なくとも2つの層(すなわち、第1層25および第2層26)を含むAl−Fe系合金層とを含む。
また、上記の製造方法で製造された溶融Al系めっき鋼板1の合金層22の厚さは、0.5μm以上10μm以下となる。なお、合金層22の厚さが過剰に厚く、10μmを超えると被覆層20の曲げ加工性が劣ってくる。被覆層20と基材鋼板10との密着性および、被覆層20の曲げ加工性の観点から、合金層22の厚さは、2μm以上6μm以下であることがより好ましい。
本発明者らは、上記の構成を有する溶融Al系めっき鋼板1の被覆層20の曲げ加工性が高いことを見出した。曲げ加工性が高くなるメカニズムは明らかではないが、以下の事由の複合的な効果によるものであると考えられる。なお、本発明の効果は、下記の理論によって制限されるものではない。
すなわち、めっき浴にCrを添加することにより、Al−Fe−Si系金属間化合物の生成自由エネルギーが低下する。その結果、基材鋼板10をめっき浴から引き上げた後の冷却過程時に、めっき層21と基材鋼板10との界面にAl−Fe−Si系金属間化合物が析出する。そして、Al−Fe−Si系金属間化合物が析出する際に、めっき層21中のSiは、Al−Fe−Si系金属間化合物に移行する。換言すれば、Siは、Al−Fe−Si系合金部23に濃化される。その結果、凝固後のめっき層21中におけるクラックの起点となる析出Si量を少なくすることができる。すなわち、曲げ加工時にめっき層21にクラックが発生することを抑制することができる。
さらに、めっき層21中のSiがAl−Fe−Si系金属間化合物に移行するため、めっき層21の主成分であるAlの延性を低下させる要因となる固溶Siの量を低減することができる。そのため、曲げ加工時にめっき層21が伸び、合金層22に生じたクラックを覆うことで、早期赤錆発生につながる鋼素地の露出を防止すると考えられる。
また、上記の製造方法で製造された溶融Al系めっき鋼板1では、合金層22が、Al−Fe−Si系合金部23、ならびに、Fe濃度が互いに異なる、Al−Fe系合金層24の第1層25および第2層26から構成される複層構造となっている。これにより、曲げ加工時にクラックが発生した際に、層間の界面におけるクラックの進行の停止、各層における内部応力の緩和、界面での横領の低減が発生していると考えられる。
ここで、針状のAl−Fe−Si系金属間化合物、または、針状のAl−Fe系金属間化合物のAl地金中への析出は、地金の機械的性質に悪影響を与えることは広く知られている。そのため、Al鋳造の分野では、再生Alの利用にあたり、Al溶湯にCrまたはMnを添加することにより、析出する針状のAl−Fe−Si系金属間化合物、または析出する針状のAl−Fe系金属間化合物を、塊状に変化させることにより機械的性質を改善することが一般的に行われている。本実施形態における製造方法においても、めっき浴にCrを添加することから、同様の効果がめっき層に発現していると推測される。
また、合金層22においてAl−Fe−Si系合金部23を十分に形成させるためには、めっき浴中のCr濃度を0.15%以上にする必要がある。逆に言えば、めっき浴中のCr濃度を0.15%以上にすることによって、Al−Fe−Si系合金部23を十分に形成されることができる。換言すれば、被覆層20中のCrの濃度を0.15%以上とすることによって、溶融Al系めっき鋼板1におけるAl−Fe−Si系合金部23の量を十分に確保することができ、それゆえ、被覆層20の曲げ加工性を良好なものとすることができる。なお、めっき浴中のCr濃度が5%を超えると、めっき浴からのドロス発生量が増大してしまう。以上のことから、めっき浴中のCr濃度(または、被覆層20のCr濃度)は、0.15%以上5%以下であることが好ましい。
なお、Al−Fe−Si系合金部23は、被覆層20中のCr濃度により形態が変化するが、Al−Fe−Si系合金部23を形成するAl−Fe−Si系金属間化合物の長軸径は、1.5μm以上であり、かつ、アスペクト比が0.4以上であることが好ましい。Al−Fe−Si系金属間化合物が上記の形状を有することにより、被覆層20の曲げ加工性を良好なものとすることができる。
また、めっき浴には、浸漬工程および冷却工程における合金層22の成長を制御するためにSiが含まれている。めっき浴に含まれるSiの量は、1.0%以上、7.0%以下であることが好ましい。めっき浴中のSi濃度が1.0%未満である場合、合金層22の成長を抑制できず、Al−Fe系合金層24が過剰に厚く形成されてしまう。その結果、被覆層20の曲げ加工性が劣化する。また、めっき浴中のSi濃度が7.0%よりも多い場合、Al−Fe系合金層24が形成されず、合金層がAl−Fe−Si系金属間化合物からなる単相となる。すなわち、Al−Fe系合金層24が、Fe濃度が互いに異なる2層以上の複層構造とはならないため、被覆層20の良好な曲げ加工性が得られない。以上のことから、めっき浴中のSi濃度(または、被覆層20のSi濃度)は、1.0%以上7.0%以下であることが好ましい。
また、めっき層の主成分であるAl中にSiが固溶すると、Alの硬さが増し、それに伴い延性が低下する。そのため、合金層22の成長を十分に抑制し、かつ、めっき層21の延性を向上させるためには、被覆層20中のSi濃度は、2.0%以上5.0%以下であることがより好ましい。
(付記事項)
一方、本発明は、質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む溶融Al系めっき浴に鋼板を浸漬させて冷却させる際に、めっき浴中のSiがAl−Fe−Si系合金部23に濃化することを、発明者らが鋭意研究の結果見出すことにより、完成させたものである。
ここで、特許文献3には、合金層がCrを含むAl−Si−Fe層と、AlFeおよびAl3.2FeからなるAl−Fe層との複層構造となっており、Al−Si−Fe層にCrが濃化していることが開示されている。
しかしながら、特許文献3の技術は、溶融Zn−Al合金めっき鋼板に関するものであり、本願の溶融Al系めっき鋼板に関するものではない。したがって、本発明は、特許文献3に基づいて創作することができない、全く別の発明であることを付言する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の発明例および比較例として、表1に示す化学組成を有する冷延焼鈍鋼板(寸法:130mm×40mm、板厚:0.8mm)を基材鋼板として、溶融Al系めっき鋼板を作製した。なお、表1に示す数値は、質量%の値である。
Figure 2020084223
溶融Al系めっき鋼板は、以下のようにして作製した。まず、めっき試験シミュレータ(レスカ製)を用いて、基材鋼板を50vol%H−N雰囲気下にて720℃に昇温し、15秒保持することにより還元加熱を施した後、表2に示す組成となるように建浴した溶融Al系めっき浴に基材鋼板を浸漬した。なお、表2に示す数値は、質量%の値である。
Figure 2020084223
次に、基材鋼板を溶融Al系めっき浴から引き上げ、冷却することにより溶融Al系めっき鋼板を作製した。溶融Al系めっき浴のデータ、および、冷却条件を表3に示す。
Figure 2020084223
(曲げ加工性試験)
作製した溶融Al系めっき鋼板を40mm×40mmの大きさに切断した後、2Tの180°曲げ加工を行った。曲げ加工後の溶融Al系めっき鋼板を樹脂埋めした後研磨を施して断面観察用のサンプルとした。発明例および比較例の各サンプルは、それぞれ3個ずつ作製した。作製したサンプルを、光学顕微鏡を用いて200倍の視野にて、曲げ加工部のクラックを観察し、以下に示す基準で加工性を評価した。試験結果を表4に示す。
○:被覆層表層から鋼素地に到達するクラックなし
×:被覆層表層から鋼素地に到達するクラックあり。
本明細書では、溶融Al系めっき鋼板の曲げ加工の程度を示す単位として、Tを使用する。1T曲げとは、めっき鋼板を曲げた場合に互いに対向する対向面の間に、当該めっき鋼板1枚分の隙間が形成されるように曲げる曲げ方を意味する。すなわち、2T曲げとは、当該めっき鋼板2枚分の厚みに等しい隙間が形成されるように曲げることになる。
(合金層の構造の特定)
上記断面観察用のサンプルを48%のHF溶液2mlおよびグリセリン20mlを混合した溶液に2s〜10s浸漬しエッチングを施した後、光学顕微鏡または電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより、合金層の厚さおよび合金層の構造を調査した。なお、Al−Fe−Si系合金部が不連続である場合は、Al−Fe−Si系合金部の面積を算出し、当該面積となる均一な層の厚さをAl−Fe−Si系合金部の厚さとした。合金層の構造および合金層の厚さを表4に示す。なお、表4に示す合金層の構造は、以下の通りである、また、それぞれの合金層の構造の模式図を図2に示す。
A:連続したAl−Fe−Si系合金部(AlFeSi)および2層のAl−Fe系合金層(Al13FeおよびAlFe)からなる複層構造
B:不連続なAl−Fe−Si系合金部(AlFeSi)および2層のAl−Fe系合金層(Al13FeおよびAlFe)からなる複層構造
C:2層のAl−Fe系合金層(Al13FeおよびAlFe)からなる複層構造
D:Al−Fe−Si系合金層の単層構造(AlFeSi)。
(被覆層に含有されるSiおよびCrの量の測定)
被覆層に含有されるSiおよびCrの量を以下のようにして測定した。まず、作製した溶融Al系めっき鋼板を所定の大きさに切り出して、切り出し片を作製した。各溶融Al系めっき鋼板の切り出し片を、それぞれ、濃度25%のNaOH溶液(10ml)に投入して静置した。次に、NaOH溶液を加温して被覆層を溶液に完全に溶解させた。被覆層が全て溶解したことを確認した後、被覆層が溶解除去された切り出し片を溶液から取り出した。次に、この溶液をさらに加温し、液体を蒸発乾固させ、蒸発乾固物を得た。この蒸発乾固物を、混酸(硝酸40mlと塩酸10mlとの混合溶液)を用いて加温しながら溶解させ、超純水を加えて250mlに定容した。定容後の溶液を、それぞれ溶融Al系めっき鋼板の組成測定溶液とした。その後、この組成測定溶液について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES法)によりSiおよびCrの定量分析を行った。分析結果を表4に示す。なお、No.24およびNo.25では、Crの含有量が分析限界未満であった。
Figure 2020084223
表4に示すように、被覆層中のCrの濃度が0.15%〜5%であり、かつ、Siの濃度が1%〜7%である、本発明例としてのNo.1〜No.23の溶融Al系めっき鋼板では、合金層が表層側からAl−Fe−Si系合金部および2層のAl−Fe系合金層の複層構造となっており、被覆層の良好な曲げ加工性が得られた。
一方、No.24〜26、およびNo30の溶融Al系めっき鋼板では、被覆層中のCr濃度が0.15%よりも低く、また、Si濃度が1%未満または7%を超えていたため、Al−Fe−Si系合金部および2層のAl−Fe系合金層の複層構造となっておらず、被覆層の良好な曲げ加工性が得られなかった。
また、No.27およびNo.28の溶融Al系めっき鋼板では、被覆層中のCr濃度が0.15%よりも低く、被覆層の良好な曲げ加工性が得られなかった。また、No.28の溶融Al系めっき鋼板では、Si濃度が1%未満であったため、10μmを超える厚い合金層が形成された。
また、No.29の溶融Al系めっき鋼板では、被覆層中のSi濃度が1%〜7%の範囲内であるが、Cr濃度が0.15%よりも低いため、Al−Fe−Si部が十分に形成されず、被覆層の良好な曲げ加工性が得られなかった。
No.31およびNo.34の溶融Al系めっき鋼板では、被覆層中のCr濃度は0.15%〜5%であるが、Si濃度が1%未満であったため、合金層が十分に薄くならず、被覆層の良好な曲げ加工性が得られなかった。
No.32、No.33およびNo.35の溶融Al系めっき鋼板では、被覆層中のCr濃度は0.15%〜5%であるが、Si濃度が7%を超えていたため、合金層がAl−Fe−Si系合金層の単層構造となり、被覆層の良好な曲げ加工性が得られなかった。
1 溶融Al系めっき鋼板
10 基材鋼板(鋼板)
20 被覆層
21 めっき層
22 合金層
23 Al−Fe−Si系合金部
24 Al−Fe系合金層

Claims (3)

  1. 鋼板の表面に、Alを主体とするめっき層と、当該めっき層と前記表面との間に形成された合金層とからなる被覆層を有する溶融Al系めっき鋼板であって、
    前記被覆層は、質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含むことを特徴とする溶融Al系めっき鋼板。
  2. 前記合金層は、
    Cr濃度が質量%で2%以上10%以下であるAl−Fe−Si系合金部と、
    Cr組成が1%以下であり、かつ、Fe濃度が互いに異なる少なくとも2つの層を含むAl−Fe系合金層とを含み、
    厚さが、0.5μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶融Al系めっき鋼板。
  3. 質量%で、0.15%以上5%以下のCr、および、1.0%以上7.0%以下のSiを含む溶融Al系めっき浴に鋼板を浸漬する浸漬工程と、
    前記溶融Al系めっき浴から引き上げられた前記鋼板を冷却する冷却工程とを含む溶融Al系めっき鋼板の製造方法。
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