実施形態を、図面を参照しながら説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
実施形態に係る撮像システムは、トンネル等の構造物の維持管理のために、構造物を撮像する装置である。実施形態では、車両に撮像システムを搭載し、車両を走行させながらトンネル内側の壁面を撮像する撮像システムを一例として説明する。
<撮像システムの全体構成>
図1は、実施形態に係る撮像システムの構成の一例を説明する斜視図である。撮像システム100は、スライドユニット200と、カメラユニット300と、照明ユニット400とを有する。
カメラユニット300は、トンネル内側の壁面を撮像し、照明ユニット400は、カメラユニット300による撮像のために、トンネル内側の壁面に向けて光を壁面に照明する。
スライドユニット200は、カメラユニット300及び照明ユニット400を図1の太矢印方向にスライドさせるための部材である。カメラユニット300及び照明ユニット400は、スライドユニット200により、図1の太矢印方向にその位置を変化させることができる。
またスライドユニット200は、レール210及び220と、ベース230と、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と、フレーム261及び262とを備えている。
カメラユニット300は、フレーム261に固定されたレール210上をスライドすることで、図1の太矢印方向における位置を可変とする。同様に、照明ユニット400は、フレーム262に固定されたレール220上をスライドすることで、図1の太矢印方向における位置を可変とする。
レール210及び220は、レール軸が略平行となるようにフレーム261及び262にそれぞれ固定されている。ベース230は、フレーム261及び262に固定され、両者を接続するとともに、撮像システム100のベースとなる。
ガイドシャフト240は、カメラユニット300及び照明ユニット400を安定した精度でスライドさせるために用いられる部材であり、金属製の丸棒等である。丸棒の長手方向がカメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向に沿うように設置されている。
ガイドシャフト240は、ガイドシャフト240を保持するガイドシャフト保持部材251及び252にそれぞれ設けられた貫通孔に通され、保持されている。尚、ガイドシャフト240とその周辺の部材の構成及び作用については別途詳述する。
ここで、図1では、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400の両方をスライドさせる構成を示したが、これに限定されるものではない。カメラユニット300をスライドさせるユニットと、照明ユニット400をスライドさせるユニットを別々にした構成としてもよい。
撮像システム100は、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライド方向が車両の走行方向と交差するように、車両のルーフ等に取り付けられる。換言すると、図1の太矢印方向は、撮像システム100が取り付けられた車両の走行方向に対して交差している。このように取り付けることで、車両の走行方向と交差する平面内において、カメラユニット300及び照明ユニット400の位置を変化させることができる。
尚、撮像システム100が取り付けつけられる車両の部分は、ルーフに限定されるものではない。車両の前方、又は後方のボンネット等であってもよいし、車両がトラックであれば荷台等であってもよい。また、車両への撮像システム100の取り付けに関し、ルーフに取り付ける場合は、車両用のスキーキャリヤ等と同様に、フック部品等を用いて行えばよい。
<カメラユニットの構成>
次に図2は、実施形態に係るカメラユニット300の構成の一例を説明する斜視図である。
カメラユニット300は、ベースプレート310と、レール接続部321及び322と、カメラ331〜334と、シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350とを有する。
レール接続部321及び322は、ベースプレート310とレール210を接続するための部材である。レール接続部321及び322は、レール軸と直交する方向の断面が「コ」の字形の形状をしている。レール210が双頭レールの場合、双頭レールの頭の一方に「コ」の字形状を被せるようにして、レール接続部321及び322は、レール210に接続される。
レール接続部321及び322は同一形状であり、レールの軸方向の異なる2つの位置でレール210と接続する。レール接続部321及び322にベースプレート310を固定することにより、カメラユニット300はレール軸の方向(図1の太矢印方向)にスライド可能となる。
カメラ331〜334は、ベースプレート310の平面部に固定されている。ここで、カメラ331は、レンズ331−1と、ラインCCD(Charge Coupled Device)331−2とを有する。レンズ331−1は、レンズ331−1の光軸方向にある被写体の像をラインCCD331−2の撮像面上に結像させる。ラインCCD331−2は、結像した被写体の像を撮像する。レンズ331−1は、「結像光学系」の一例である。
またレンズ331−1の内部には、絞り331−1a(図4参照)が設けられている。絞り331−1aは、絞り羽根を有する虹彩絞りであり、直径が可変の開口である。絞り羽根にモータ等の駆動源を接続し、制御信号に基づいてモータを駆動させることで開口の直径を変化させることができる。これによりレンズ331−1を通過する光の光量を変化させ、レンズ331−1により結像される被写体の像の明るさを変化させることができる。
ラインCCD331−2は、画素が一次元状(ライン状)に配列されているCCDであり、実施形態では、カメラ331は、ラインCCD331−2の画素の配列方向が車両の走行方向と交差するようにベースプレート310に固定されている。尚、カメラ332〜334も、カメラ331と同様の構成を備えるが、上述したものと同様であるため、説明を省略する。
トンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、カメラ331〜334は、図2のように、それぞれが有するレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、それぞれがトンネルの壁面に対向するように、カメラ331〜334はベースプレート310の平面部に放射状に配置されている。
カメラ331〜334がそれぞれ撮像するライン画像をカメラの配列方向に繋ぎ合せることで、トンネルの形状に沿って、トンネル壁面のライン画像を撮像することができる。そして車両を走行させながら上記のライン画像を所定の時間間隔で連続的に撮像し、ライン画像の画素の配列方向と直交する方向に、撮像したライン画像を繋ぎ合せることで、トンネルの壁面のエリア画像(2次元画像)を取得することができる。尚、所定の時間間隔はラインCCDによるライン画像の取得周期等である。
ここで、上述ではカメラの台数を4台とする例を示したが、これに限定されるものではない。トンネルの大きさなどの条件に応じてカメラの台数を増減させてもよい。また、レンズ331−1の結像倍率、視野及びFナンバ等は、撮像したい条件に合わせて決定してもよい。
さらに、上述ではカメラ331がラインCCDを備える例を示したが、これに限定されるものではなく、カメラ331は、画素が二次元的に配列されているエリアCCDを備えてもよい。さらにCCDに代えてCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等を用いてもよい。
一方、シャフト連結部341及び342は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ350は、スライド方向における所望の位置でカメラユニット300を固定するための部材である。シャフト連結部341及び342と、インデックスプランジャ350の構成及び作用については、別途詳述する。
<照明ユニットの構成>
次に図3は、実施形態に係る照明ユニット400の構成の一例を説明する斜視図である。ここで照明ユニット400は「照明部」の一例である。
照明ユニット400は、ベースプレート410と、レール接続部と、照明光源部431〜436と、シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450とを有する。レール接続部とレール220との関係は、上述したレール接続部321及び322とレール210との関係と同様である。
照明光源部431〜436は、ベースプレート410の平面部に固定されている。照明光源部431は、レンズ431−1と光源431−2とを有する。
光源431−2は、レンズ431−1を介して、レンズ431−1の光軸方向にある被写体を照明する。またレンズ431−1の内部には、絞り431−1aが設けられている(図4参照)。
絞り431−1aは直径が可変の開口であり、開口の直径を変化させることで、レンズ431−1により照明される照明光の光量(明るさ)を変化させることができる。光源431−2として、メタルハライドライトやLED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。尚、照明光源部432〜436も照明光源部431と同様の構成を備えるが、上記と同様であるため説明を省略する。
上述したようにトンネルは、車両の走行方向と交差する断面が半円状の形状をしている。これに合わせ、照明光源部431〜436は、図3に示すように、それぞれが備えるレンズの光軸がトンネルの壁面と交差するように放射状に配置されている。換言すると、照明光源部431〜436は、トンネルの壁面に対向するように、ベースプレート410の平面部に放射状に配置されている。照明ユニット400は、車両の走行方向と交差する方向(ラインCCDの画素の配列方向)に沿ったライン状の光をトンネルの壁面に照明することができる。
尚、上述では、照明光源部の台数を6台とした例を説明したが、これに限定されるものではなく増減させてもよい。また照明光源部の台数は、カメラの台数と必ずしも一致する必要はなく、明るさ等の条件に応じて台数を決めてよい。さらにレンズの画角やFナンバ等も撮像したい条件に応じて決定してもよい。
また、上述では、照明光源部431〜436のそれぞれの位置を、レンズの光軸方向に前後に少しずつずらした構成を示したが、これは照明光源部同士の物理的な干渉を防止するためである。
一方、シャフト連結部441及び442は、ガイドシャフト240と連結するための部材である。またインデックスプランジャ450は、スライド方向における所望の位置で照明ユニット400を固定するための部材である。シャフト連結部441及び442と、インデックスプランジャ450の構成及び作用については別途詳述する。
<撮像システムのハードウェア構成>
次に図4は、撮像システム100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。撮像システム100は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、撮像制御部110と、TOF(Time of Flight)センサ141と、IMU(Inertial Measurement Unit)160と、車速計/移動距離計170とを有する。
TOFセンサ141は、トンネル600の壁面からTOFセンサ141までの距離を計測する。具体的にはトンネル600の壁面にTOFセンサ141から光を照射し、その反射光を受光するまでの時間に基づいてトンネル600の壁面までの距離を計測する。受光素子にエリアセンサを用いたTOFセンサ141であれば、距離に応じて表示色が異なる2次元の等高線画像を得ることができる。
IMU160は、車両500の運動を司る3軸の角度/角速度と加速度を計測し、また車速計/移動距離計170は、車両500の速度/移動距離を計測することができる。
IMU160及び車速計/移動距離計170で計測されたデータは、撮像制御部110を介してHDD114に出力されて記憶され、後に壁面の画像のサイズや傾き等を、画像処理で幾何補正するために使用される。
カメラユニット300は、レンズ331−1、332−1、333−1及び334−1と、ラインCCD331−2、332−2、333−2及び334−2とを備えている。またレンズ331−1は絞り331−1aを、レンズ332−1は絞り332−1aを、レンズ333−1は絞り333−1aを、レンズ334−1は絞り334−1aを、それぞれ内部に備えている。但し、図4では、図を簡略化するため、レンズ331−1、絞り331−1a及びラインCCD331−2のみを図示し、他のレンズ、絞り及びラインCCDの図示を省略している。
照明ユニット400は、レンズ431−1、432−1、433−1、434−1、435−1及び436−1と、光源431−2、432−2、433−2、434−2、435−2及び436−2とを備えている。またレンズ431−1は絞り431−1aを、レンズ432−1は絞り432−1aを、レンズ433−1は絞り433−1aを、レンズ434−1は絞り434−1aを、レンズ435−1は絞り435−1aを、レンズ436−1は絞り436−1aを、それぞれ内部に備えている。但し、図4では、図を簡略化するため、レンズ431−1、絞り431−1a及び光源431−2のみを図示し、他のレンズ、絞り及び光源の図示を省略している。
撮像制御部110は、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、HDD(Hard Disk Drive)114と、外部I/F(Inter/Face)115と、ブザー116とを有し、それぞれがシステムバス117で相互に電気的に接続されている。
ROM112は各種プログラムやデータ、各種の設定情報等を格納し、RAM113はプログラムやデータを一時保持する。CPU111はROM112等からプログラムやデータ、設定情報等をRAM113上に読み出し、処理を実行することで、撮像システム100全体の制御や画像データの処理を実現する。ここで、画像データの処理とは、カメラ331〜334がそれぞれ撮像したライン画像を繋ぎ合せる処理や、車両を走行させながらカメラ331〜334が所定の時間間隔で連続的に撮像したライン画像を、車両の走行方向で繋ぎ合せる処理等である。またCPU111は、別途、図15及び図18を用いて詳述する各種機能を実現することができる。
尚、CPU111の実現する制御、画像データの処理、及び各種機能の一部又は全部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)で実現されてもよい。
HDD114は、カメラユニット300から入力した画像データや、TOFセンサ141、IMU160及び車速計/移動距離計170から入力したセンサデータ等を記憶する。
外部I/F115はユーザが撮像システム100を操作するためのユーザインターフェースの機能や、撮像システム100がPC(Personal Computer)等の外部装置とデータや信号のやりとりを行うためのインターフェースの機能を実現する。
ブザー116は、ユーザへの警告の通知等のためにビープ音を発生させるものである。
<撮像方法、作用、効果等>
次に、実施形態に係る撮像システム100の構成による作用・効果を説明する。
撮像システム100では、スライドユニット200によりカメラユニット300及び照明ユニット400がスライドし、車両の走行方向と交差する方向において、所定の道路構造の長さに基づき定めた2つの位置で固定される。
所定の道路構造の長さとは、車両の走行方向と交差する方向における歩道の幅である。
ここで、歩道とは、歩行者が通行するための道路であり、車道等に併設され、歩行者の通行のために構造的に区画された道路の部分をいう。歩道の幅は、歩行者の通行量に応じて様々であるが、一般には1.5〜3m程度である。
歩道の幅が1.5mの場合、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を1.5mに定めてもよい。或いは歩道の幅が3m等で車両の幅を超える場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、車両の最大幅として定めてもよい。
また、歩道の他に、監査路や路側帯がある場合は、歩道の幅に基づき定めた2つの位置の間隔を、歩道の幅と監査路、または路側帯の幅との差分の長さとして定めてもよい。
2つの位置で画像を取得する場合、先ず、車両の走行方向と交差する方向において、歩道の幅に基づき定めた2つの位置のうちの一方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネルの壁面のエリア画像を取得する。次に、2つの位置のうちの他方の位置に、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定し、所望の領域のトンネル壁面のエリア画像を取得する。
以下、図5及び図6を参照して、2つの位置でトンネル600の壁面を撮像する方法の詳細を説明する。図5は、撮像システム100からトンネル600の壁面までの距離が短い場合の撮像の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行(進行)する様子を示す図である。
図5(a)では、撮像システム100は、車両500のルーフの上に固定されている。カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
一方、図5(b)では、道路700のセンターに対し、左側に車線710があり、右側に車線720がある。車両500は車線720において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
この例では、車線710(車両500の対向車線)側に歩道730がある。車線720側には歩道はないため、歩道がある場合と比較して、車両500はトンネル600の車両500側の壁面に近い位置を走行している。
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の右端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面から遠ざかる位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションAと呼ぶ。
図5(b)の破線100Aは、撮像システム100による撮像範囲を表す。つまり、撮像システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Aで示されている撮像範囲内の領域600A(太線で示されている領域)を撮像している。太線で示されているように、実施形態ではトンネル壁面(覆工部)と地面との境目までを撮像する。
車両500を走行させながら撮像システム100による撮像を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して図5(b)の右側半分の壁面が撮像される。
一方、図6は、撮像システムからトンネル壁面までの距離が長い時の撮像の様子の一例を説明する図であり、(a)は走行方向から車両500をみた図であり、(b)はトンネル600の内部を車両500が走行する様子を示す図である。尚、図5と重複する部分は説明を省略し、相違点を説明する。
図6では、カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端にスライドされ、インデックスプランジャ350及び450によりそれぞれスライドユニット200に固定されている。
一方、図6(b)では、車両500は車線710において、紙面に対し、手前の方向に走行している。
この例では、車線710(車両500が走行する車線)側に歩道730がある。つまり車両500は、図5(b)の場合とは反対側の車線を逆方向に走行している。この場合は、走行車線側に歩道がない場合と比較して、車両500は、トンネル600の車両500側の壁面から遠い位置を走行することになる。
カメラユニット300及び照明ユニット400は、走行方向に向かってスライドユニット200の左端、すなわちトンネル600の車両500側の壁面に近づく位置にある。この場合のカメラユニット300及び照明ユニット400の位置を、以降ではポジションBと呼ぶ。
図6(b)の破線100Bは、撮像システム100による撮像範囲を表す。つまり、撮像システム100は、トンネル600の壁面のうち、破線100Bで示されている撮像範囲内の領域600B(太線で示されている領域)を撮像している。太線で示されているように、実施形態ではトンネル壁面(覆工部)と地面との境目までを撮像する。
車両500を走行させながら撮像システム100による撮像を行うことで、トンネル600の入口から出口までにおいて、紙面に対して図6(b)の右側半分の壁面が撮像される。
図5の状態で撮像された壁面の画像と、図6の状態で撮像された壁面の画像を繋ぎ合せることで、トンネル600の入口から出口までの全壁面の撮像画像を取得することができる。
ここで、カメラユニット300の各カメラで撮像する画像は、それぞれ撮像領域がオーバーラップしていることが望ましい。また画像を繋ぎ合せて一枚の展開図画像を作成するため、図5の歩道無し側の画像と図6の歩道有り側の画像は、天井部分がオーバーラップするように撮像することが望ましい。換言すると、往きと帰りでトンネル600の壁面を撮像する場合、トンネル600の壁面で撮像されていない領域が生じないように、往きの撮像領域と帰りの撮像領域を、車両500の進行方向と交差する方向にオーバーラップさせて撮像することが望ましい。
実施形態によれば、歩道の有無に応じて、カメラユニット300及び照明ユニット400をポジションA及びBに切替えて固定するだけで、簡単に、車両500側の壁面から撮像システム100までの距離、すなわち被写体距離を略一定にすることができる。その結果、歩道の有無によらず、フォーカス状態、撮像倍率及び照明の明るさ等の撮像条件を共通にした撮像が可能となる。また、共通の撮像条件で右側半分と左側半分のトンネル壁面を撮像できるため、両者を繋ぎ合せる画像処理も容易に行うことができる。
以上によりカメラのフォーカス調整や構造物の断面形状の測定といった手間をかけることなく、適切にトンネル壁面を撮像することができる。
また、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整などを行うと、走行に伴う振動や、急ブレーキ、急加速等の不規則な動きにより、調整機構が故障する可能性がある。
また、調整機構にカム溝とカムフォロアを採用するカム機構を用いた場合、車両の走行による振動によって、徐々にカムフォロアがカム溝を移動し、フォーカス状態が変わってしまう場合もある。さらにトンネル内の粉塵が機構内部に入り込むと、動作不良を招く虞もある。
実施形態によれば、車両の走行中にカメラのフォーカス調整などを行わないため、これらの故障の可能性を低減させることができる。またスライド機構が簡単であるため、装置コストを低減できるという効果もある。さらにフォーカス調整のために、被写体のテクスチャのコントラストを検知する等の複雑な画像処理を行わなくてよいため、演算コストを低減することができる。
さらに、そもそも暗くて特徴量の少ないトンネルを走行する場合、コントラストを検出すること自体が難しく、十分な精度でコントラスト検出を行おうとすると、感度の高い高価な撮像素子が必要となる。実施形態によれば、このような技術的難易度や撮像素子のコストをも低減することができる。
また、カメラユニットでライン撮像素子を用いる場合、1ライン分の画像しか得られないため、撮像画像を利用したフォーカス調整が難しくなる。実施形態でよれば、フォーカス調整に撮像した画像を利用しないため、カメラユニットにライン撮像素子を使用することもできる。これにより後述するような照明効率のよい撮像が可能となる。
加えて、上記の他に以下の効果も得られる。例えば、トンネル600の中心から比較的ずれた位置にカメラユニット300及び照明ユニット400を置いて撮像したとする。ここでトンネル600の中心とは、トンネル600の半円状の断面形状における半円の略中心を指す。
この場合、トンネル600の天井付近の壁面の画像(図2のカメラ331で取得した画像)と、トンネル600の地面付近の壁面の画像(図2のカメラ334で取得した画像)とで、撮像倍率等の条件の差が大きくなる。その結果、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が大きく異なるなどの不具合が生じる。
また、このような不具合をなくすため、トンネルの壁面までの距離が略一定になるように、車線を無視して道路の中央を車両で走行しながら、トンネルの壁面の撮像を行う方法もある(例えば、特開2011−095222参照)。
しかし、この方法では撮像時に対向車と衝突する虞があるため、車両の通行が少ない夜間に行ったり、道路を封鎖して行ったりする必要があって不便である。またトンネル内の道路に中央分離帯が設けられていると、そもそも上記の方法による撮像は不可能である。
これに対し、実施形態によれば、車両500がトンネル600の壁面に近いときも遠いときも、カメラユニット300及び照明ユニット400をトンネル600の中心に近づけることができるため、トンネルの領域ごとでの撮像条件の差を抑制できる。従って、車両の通行止め等をすることなく、本来の車線を走行しながら、トンネル600の天井付近と地面付近とで、画像の解像度が異なるなどの不具合を抑制した撮像を行うことができる。
尚、実施形態では、スライドユニット200を図1の太矢印方向に位置を変化させる例を示したが、これに限定されないものではない。車両の走行方向と交差する平面内における任意の方向に、スライドユニット200の位置を変化させる構成としてもよい。
また実施形態では、スライドユニット200により、図1の太矢印方向における異なる2つの位置でカメラユニット300及び照明ユニット400を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。車両の走行方向と交差する平面内であって、トンネルの壁面に対向する方向における異なる2つの位置で、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定してもよい。
ここで、「トンネルの壁面に対向する方向」について補足する。上述したように、トンネルは、車両の走行方向と直交する断面が半円状の形状をしている。従って、トンネルの壁面のうち、地面付近では壁面は水平方向を向いており、天井付近では壁面は鉛直下方向を向いている。「トンネルの壁面に対向する方向」とは、場所により向きが異なる壁面に対し、対向する方向をいう。地面付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略水平方向等である。一方、天井付近における「トンネルの壁面に対向する方向」は、略鉛直上方向である。
次に、実施形態に係るガイドシャフト240の構成及び作用の詳細について説明する。
カメラユニット300と照明ユニット400は別体の構成要素であり、それぞれ独立してスライドする。そのため、ガイドシャフト240を適用しない構成とした場合、スライドする際にそれぞれが独立して、ピッチング、ヨーイング、ローリング等の動きを不規則に起こす可能性がある。
また撮像システム100を車両から着脱する場合に、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置、又は姿勢(以降、位置/姿勢と示す)が変動する可能性がある。さらに走行中の振動でそれぞれの位置/姿勢が変動したり、温度等の影響によるフレーム261及び262やベースプレート310及び410等の部材の変形で、それぞれの位置/姿勢が変動したりする可能性もある。
このような変動があると、カメラユニット300による撮像領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮像ができないという不具合が生じる場合がある。
一例として、図7は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢が変動し、カメラユニット300による撮像領域に照明光が適切に当たらなくなった状態を説明する図である。図7(a)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がない場合を示す図であり、図7(b)は、カメラユニット300と照明ユニット400の相互の位置/姿勢の変動がある場合を示す図である。
図7(a)は、図の太矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。600はトンネルの壁面である。撮像範囲361は、カメラユニット300による撮像範囲を表し、トンネル600の壁面と撮像範囲361の交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮像領域に該当する。照明範囲461は、照明ユニット400による照明範囲を表し、トンネル600の壁面と照明範囲461の交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
図7(a)では、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動がないため、カメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている。つまり、照明光は撮像領域を適切に照明している。
一方、図7(b)では、カメラユニット300及び照明ユニット400の姿勢がそれぞれ独立に変動することにより、撮像範囲362と照明範囲462が図7(a)の状態から変化し、トンネル600の壁面における撮像領域と照明領域が重ならなくなっている。つまり、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢の変動により、照明光は撮像領域を適切に照明していない。
特に実施形態では、撮像素子にラインCCDを用い、車両500の走行方向における撮像範囲(領域)を狭くしている。この場合、狭い領域に照明光を集中すればよいため、照明効率がよいという効果があり、暗いトンネルの内部では十分な照明光量が必要となるため、より好適である。しかしその反面で、車両500の走行方向における撮像領域が狭いため、カメラユニット300と照明ユニット400との相互の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300の撮像領域に照明光が適切に当たらない不具合が生じやすくなる。
そこで、撮像領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制するため、実施形態の撮像システム100は、ガイドシャフト240を備えている。以下、図8を用いて具体的に説明する。図8は、実施形態に係るガイドシャフト及びガイドシャフト保持部材の構成の一例を説明する図である。
図8において、ガイドシャフト240は、ガイドシャフト保持部材251及び252により保持されている。シャフト連結部341及び342は、カメラユニット300のベースプレート310に固定されている。
またシャフト連結部341及び342は、それぞれ貫通孔341−1及び342−1を備えている。貫通孔341−1及び342−1にガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240とカメラユニット300は連結される。同様に、シャフト連結部441及び442がそれぞれ備える貫通孔に、ガイドシャフト240を通すことで、ガイドシャフト240と照明ユニット400は連結される。
カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれガイドシャフト240と連結しながらスライドする。つまり、共通の部材をガイド(案内)にしてスライドすることができる。
そのため、カメラユニット300及び照明ユニット400の何れか一方の位置/姿勢が変動したときは、他方もそれに連動して変動する。つまり、両者の相対的な位置/姿勢の関係を維持したまま、カメラユニット300と照明ユニット400をスライドさせたり静止させたりすることが可能となる。これにより、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の変動を抑制し、撮像領域を照明光が適切に照明しない不具合を抑制することができる。
次に図9は、トンネルの壁面に対してカメラユニット300が傾いた場合のカメラユニット300の撮像領域の一例と、トンネルの壁面に対して照明ユニット400が傾いた場合の照明ユニット400の照明領域の一例を説明する図である。
図9において、照明ユニット400は、光軸465を光軸とする発散光である照明光466を、トンネル600の壁面に照射している。照明光466の配光角(発散角)αは、1.65度等である。カメラユニット300は、トンネル600の壁面を撮像している。光軸365は、カメラユニット300の光軸である。
車両500の蛇行運転等によりカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動すると、図9に示されているように、カメラユニット300と照明ユニット400がトンネルに壁面に対してそれぞれ傾く場合がある。この場合にも、カメラユニット300と照明ユニット400の相対的な位置/姿勢の関係は維持されるため、図示されているように、カメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態を維持することができる。
このように、車両500の蛇行運転等でカメラユニット300と照明ユニット400の位置が変動した場合にも、照明ユニット400によりカメラユニット300の撮像領域を適切に照明することができる。尚、本実施形態では特にラインCCDを用いる場合を示したが、エリアCCDなどを用いる場合であっても、同様の効果が得られる。
次に、実施形態に係るインデックスプランジャ350及び450の構成及び作用の詳細を、図10を参照して説明する。図10は、インデックスプランジャ350及び450の構成の一例を説明する図である。
図10において、インデックスプランジャ350は、カメラユニット300のベースプレート310の平面部に固定され、インデックスプランジャ450は、照明ユニット400のベースプレート410の平面部に固定されている。
上述したように、カメラユニット300はレール210上をスライドし、照明ユニット400はレール220上をスライドする。インデックスプランジャ350及び450は同様の構成及び作用を有するため、ここではインデックスプランジャ450を例に説明する。
インデックスプランジャ450は、プランジャ451と、プランジャ保持部452とを有する。プランジャ451は、丸棒状で地面側に突出したピンと、ピンに地面側への付勢力を与えるスプリングと、ピンとスプリングを押さえるスプリング押さえ部とを有する。プランジャ保持部452は、プランジャ451を保持する。
一方、スライドユニット200におけるベース230には、照明ユニット400のスライド方向において、照明ユニット400を固定したい位置に上記ピンと嵌合するための嵌合孔231が設けられている。従って、照明ユニット400がスライドする際、嵌合孔231がない位置では、ピンは、ベース230にぶつかった状態であり、照明ユニット400を固定するようには作用しない。
照明ユニット400がスライドして嵌合孔231がある位置にくると、ピンはスプリングによる付勢力で嵌合孔231に向かって突出し、嵌合孔231と嵌合する。これにより照明ユニット400はスライドできなくなって、照明ユニット400は固定される。固定を解除して、照明ユニット400を再度スライドさせたいときは、手動で固定解除機構を操作し、固定を解除する。
実施形態では、ベース230において、スライド方向におけるポジションAとポジションBに相当する位置に、それぞれ嵌合孔が設けられている。これにより、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に、照明ユニット400を固定することができる。同様にして、カメラユニット300も、インデックスプランジャ350により、車両の走行方向と交差する平面内における異なる2つの位置に固定することができる。
尚、実施形態では、ベース230に設けた嵌合孔231にピンを嵌合させ、照明ユニット400等を固定する例を示したが、これに限定されるものではない。フレーム262やレール220等に設けた嵌合孔にピンを嵌合させて固定してもよいし、突き当てにより照明ユニット等を位置決めしたうえで、ボルト等でクランプすることで固定してもよい。
次に、実施形態において、カメラユニット300による撮像方向(画像の取得方向)に対し、照明ユニット400による照明光の照明方向を傾けることの効果の一例を、図11を参照して説明する。
図11は、図7と同様に、矢印の方向に走行する車両500を上方からみた図である。撮像方向363は、カメラユニット300による撮像方向であり、カメラユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。撮像範囲364は、カメラユニット300により撮像される範囲を表す。トンネル600の壁面と撮像範囲364とが交差する部分がカメラユニット300による壁面の撮像領域に該当する。
照明方向463は、照明ユニット400による照明方向であり、照明ユニットが有するレンズの光軸方向と同義である。照明範囲464は、照明ユニット400により照明される範囲を表す。トンネル600の壁面と照明範囲464とが交差する部分が照明ユニット400による壁面の照明領域に該当する。
上述したように、車両500の走行中の振動などにより、カメラユニット300と照明ユニット400の位置/姿勢が変動すると、カメラユニット300による撮像領域に照明光が適切に当たらず、明るさ不足で撮像ができない不具合が生じる。
そこで、実施形態では、トンネル600の壁面の撮像領域に向け、カメラユニット300の撮像方向に対して照明ユニット400の照明方向を傾けて照明する。図11の例では、角度θの傾きで照明される様子が示されている。
このように照明を傾け、車両の走行方向における照明領域の中央により近い付近を撮像領域とすることで、撮像領域に照明光が当たらないという不具合を抑制することができる。
ここで、図12A及び図12Bは、それぞれカメラユニット300の光軸365と照明ユニット400の光軸465の傾き角度θと、照明光の配光角αと、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lと、照明領域Sとの関係の一例を説明する図である。
図12A(a)は、カメラユニット300と、照明ユニット400と、トンネル600の壁面との関係の一例を説明する図である。図12A(a)において、カメラユニット300の光軸365はトンネル600の壁面に対して垂直であり、照明ユニット400による照明光466の光軸465は、カメラユニット300の光軸365に対して傾き角度θで傾いている。尚、この「垂直」は厳密に90度をいうものではなく、トンネル600の壁面の傾斜や車両500の蛇行等に応じて90度から多少のずれがあってもよい。この点は以下においても同様である。
照明光466は、配光角αでトンネル600の壁面を照明している。カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lは、車両500の蛇行運転等により、LminからLmaxまで変動するとする。照明領域Sは、照明光466によるトンネル600の照明領域である。照明光は円形領域を照明する光であり、照明領域Sはこの円形領域の直径を示している。但し、照明光は、円形領域を照明する光に限定されるものではなく、矩形領域を照明する光や楕円領域を照明する光であってもよい。
一方、図12A(b)は、カメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も遠ざかった場合を示す図である。
一例として、傾き角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図12A(b)では最右端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離5200mmは、カメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最大距離Lmaxの一例となる。
図12B(c)は、カメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なっている状態で、車両500がトンネル600の壁面から最も近づいた場合を示す図である。
一例として、上記と同様に、角度θが2.5度、配光角αが1.65度とすると、照明領域Sは330mmとなる。この場合、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離が2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図12B(c)では最左端)に位置する。従って、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離2600mmは、カメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な最小距離Lminの一例となる。
尚、上述では、照明ユニット400により、トンネル600の壁面に配光角αの発散光を照明する例を示したが、発散光に限定されず、平行光により照明してもよい。
発散光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離に応じて、トンネル600の壁面における照明領域を変化させることができる。照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lが長いほど、より広い領域を照明することができる。
一方、平行光を照明する場合、照明ユニット400からトンネル600の壁面までの距離Lによらず、トンネル600の壁面において一定の領域を照明することができる。
また上述では、カメラユニット300の光軸365の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、照明ユニット400の光軸465をカメラユニット300の光軸365に対して傾ける例を示したが、これに限定されるものではない。図12B(d)に示されているように、照明ユニット400の光軸465の方向をトンネル600の壁面に対して垂直方向とし、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾けてもよい。図12B(d)は、カメラユニット300の光軸365を照明ユニット400の光軸465に対して傾き角度θだけ傾けた例を示している。換言すると、照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365は傾き角度θで相対的に傾いていればよい。
このように照明ユニット400の光軸465とカメラユニット300の光軸365とを相対的に傾けることで、カメラユニット300の撮像領域に向けて、光を照明することができる。トンネル600の壁面における水平方向の撮像領域(水平方向の撮像視野)が狭い場合であっても、カメラユニット300による撮像領域を照明ユニット400からの光で適切に照明することができる。
また、ガイドシャフト240を用いて、カメラユニット300と照明ユニット400との相対的な位置/姿勢の関係を維持する構成と、照明方向を傾けて照明する構成とを組み合わせることで、より効果が顕著となる。換言すると、撮像素子にラインCCDを用い、照明効率がよい状態で撮像を行った場合であっても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮像領域を適切に照明しないという不具合を、より顕著に抑制することができる。
また、車の蛇行でトンネルと壁面の距離が変動する場合やトンネルサイズが異なる場合においても、照明ユニット400による照明光がカメラユニット300による撮像領域を適切に照明しないという不具合を抑制することができる。
図13は、車両500の蛇行と、カメラユニット300の撮像領域と、照明ユニット400の照明領域の関係の一例を説明する図である。車両500は、図13に矢印で示されている方向に、蛇行しながら走行している。
図13の左側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最大距離Lmaxが5200mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図13では最右端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な一方の限界である。
一方、図13の右側に示されているように、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの最小距離Lminが2600mmの時に、トンネル600の壁面において、カメラユニット300の光軸365は照明領域Sの最端部(図13では最左端)に位置する。つまりカメラユニット300による撮像領域と照明ユニット400による照明領域が重なる状態を維持可能な他方の限界である。
角度θが2.5度、配光角αが1.65度の条件下(図12A参照)では、カメラユニット300からトンネル600の壁面までの距離Lが2600mm〜5200mmの範囲で、車両500の蛇行が許容されることが分かる。
<撮像システムの動作>
次に、実施形態に係る撮像システム100の動作を、図14を用いて説明する。図14は撮像システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
先ず、ステップS141で、撮像システム100は、車両500に取り付けられる。
続いて、ステップ142において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションAに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションAでの固定は、ユーザが手動で実施する。
続いて、ステップS143において、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がない側の壁面の領域600Aの撮像が行われる。この場合、車両500がトンネル600の入口に進入するときに、撮像が開始される。撮像開始の指示は、ユーザが行う。
車両500がトンネル600の出口まで到達したら、撮像は停止される。撮像停止の指示は、ユーザが行う。ここまででトンネル600の全壁面のうち、半分の壁面の画像データがHDD114に記憶される。
続いて、ステップS144において、スライドユニット200により、カメラユニット300及び照明ユニット400はポジションBに固定される。この場合、カメラユニット300及び照明ユニット400のスライドと、ポジションBでの固定は、ユーザが手動で実施する。
続いて、ステップS145において、ステップS1103における走行方向とは逆の方向に、トンネル600の入口から出口まで車両500を走行させながら、トンネル600の歩道730がある側の壁面の領域600Bの撮像が行われる。上述と同様に、撮像開始/停止の指示は、ユーザが行う。これにより、トンネル600の全壁面のうち、残りの半分の壁面が撮像され、HDD114に記憶される。
続いて、ステップS146において、撮像された画像は、ユーザにより問題がないかが確認され、問題ない場合は(ステップS146、No)、撮像は終了する。一方、問題がある場合は(ステップS146、Yes)、ステップS1102に戻り、再度撮像が行われる。
以上により、カメラのフォーカス調整や構造物の断面形状の測定といった手間をかけずに、トンネルなどの構造物の壁面を撮像することができる。
尚、実施形態では、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行う例を述べたが、このような固定を車両500に対して行ってもよい。以下にその構成を説明する。
カメラユニット300及び照明ユニット400を車両固定用ベースプレートに取り付けておく。ポジションAの場合、走行方向に向かって車両のルーフの右端に、フック部品を用いて車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
ポジションBの場合、走行方向に向かって車両のルーフの左端に、フック部品を用いて上記車両固定用ベースプレートを固定することで、カメラユニット300及び照明ユニット400を固定する。
また、ガイドシャフト240と、ガイドシャフト保持部材251及び252と同様の部品を車両固定用ベースプレートに設け、シャフト連結部341及び342、並びに441及び442と、ガイドシャフト240とを連結させる。これによりカメラユニット300及び照明ユニット400の位置/姿勢の変動の影響を抑制できる。
尚、この例の場合、撮像システム100は、スライドユニット200を有さなくてもよい。また、カメラユニット300及び照明ユニット400は、それぞれインデックスプランジャ350及び450を有さなくてもよい。
以上により、車両500に固定した場合においても、カメラユニット300及び照明ユニット400のポジションA及びBでの固定を、スライドユニット200に対して行った場合と同様の効果を得ることができる。
[第1の実施形態]
ここで、トンネルの内部を撮像するには、撮像システムにおける光の露出量をトンネル内の明るさに合わせる露出制御が必要になる。しかしトンネルの内部と外部では明るさの差が大きいため、露出制御を自動で行うと、トンネルの外部から内部に車両が進入する際に、制御に遅れ(追従遅れ)が生じる等して適切に露出制御することができない場合があった。そしてトンネルの入口付近等で、昼間に撮像する場合には、撮像画像で明るい部分の階調が失われ真っ白になる白飛びが発生したり(露出オーバー)、夜間に撮像する場合には、撮像画像で暗い部分の階調が失われ真っ黒になる黒潰れが発生したり(露出アンダー)して、適切に撮像できなくなる場合があった。
第1の実施形態に係る撮像システム100は、車両等の移動体の移動に伴ってトンネル等の構造物を撮像する場合、この構造物に関連して予め設定された露出条件による撮像を行ない、その後、自動露出条件による撮像に切り替えてこの構造物の撮像を行う。
尚、自動露出条件とは、測光部による撮像対象の測光結果に応じて変化する露出条件を指す。つまり、測光部の測光結果に応じて撮像システムの露光量(露出)を自動的に決定した場合の露出条件を指す。
これによりトンネルの入口付近等において、露出制御の遅れに起因する白飛びや黒潰れを防止している。尚、白飛びは撮像画像において明るい部分の階調が失われ真っ白になることをいい、黒潰れは撮像画像において暗い部分の階調が失われ真っ黒になることをいう。
以下に、「所定の構造物」の一例としてのトンネル600の内壁を撮像する場合を例に、第1の実施形態に係る撮像システム100の詳細を説明する。
<第1の実施形態に係る制御部の機能構成>
先ず、本実施形態に係る撮像システム100の備える撮像制御部110の構成について説明する。図15は、撮像システム100の備える撮像制御部110の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。尚、図15に示される撮像制御部110の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部又は一部を、任意の単位で機能的又は物理的に分散・結合して構成してもよい。
撮像制御部110は、光量取得部121と、露出制御部122と、入出力部123と、終了判定部124とを有する。
光量取得部121は、撮像システム100の備える測光部120による検出信号を入力して、トンネル600の内壁からの光の光量値(明るさ)Iを取得し、光量値Iを示す信号を露出制御部122に出力する。尚、「トンネル600の内壁からの光」には、照明ユニット400で照明した光のトンネル600の内壁による反射光が含まれ、また太陽光等の自然光のトンネル600の内壁による反射光が含まれる。さらに、照明ユニット400による照明とは別に露出制御のためにトンネル600の内壁に光を照明する場合は、「トンネル600の内壁からの光」には、その反射光も含まれる。
測光部120は、カメラユニット300の備えるラインCCD331−2等により実現され、光量取得部121はラインCCD331−2の出力する電圧信号を入力することで、光量値Iを取得することができる。
但し、測光部120は上記に限定されるものではなく、ラインCCD331−2、332−2、333−2及び334−2の少なくとも1つにより実現されてもよい。またカメラユニット300とは別にPD(Photo Diode)等の光センサを設けて実現されてもよい。
露出制御部122は、構造物判定部125と、露光時間制御部126と、増幅率制御部127と、絞り制御部128と、照明制御部129とを有する。
構造物判定部125は、測光部120により検出され、光量取得部121により取得された光量値Iを示す信号を光量取得部121から入力し、光量値Iに基づいて撮像システム100がトンネル600の内壁を撮像しているか否かを判定する。具体的には構造物判定部125は、光量値Iが閾値I1以下でかつ閾値I2以上の場合にトンネル600の内壁を撮像していると判定し、そうでない場合はトンネル600の内壁を撮像していないと判定する。構造物判定部125は判定結果を示す信号を露出制御部122に出力する。
ここで閾値I1は、ラインCCD331−2等の出力が飽和状態になることなく、撮像が可能な上限の光量等を意味している。一例としてラインCCD331−2等として8ビット(256階調)のCCDを用いた場合、200階調等を閾値I1として設定すればよい。尚、閾値I1は「第1の閾値」の一例である。
また閾値I2は、ラインCCD331−2等の出力がノイズに埋もれた状態になることなく、撮像が可能な下限の光量等を意味している。一例として上記のようにラインCCD331−2等として8ビット(256階調)のCCDを用いた場合、50階調等を閾値I2として設定すればよい。尚、閾値I2は「第2の閾値」の一例である。
ここで、撮像システム100は、撮像時の露出量を変化させるための露出条件として、撮像システム100は、ラインCCD331−2等の露光時間(シャッタースピード)と、ラインCCD331−2等が受光した光に対して出力する電圧信号の増幅率(ゲイン)と、トンネル内壁からの反射光の光量と、照明ユニット400による照明光の光量の少なくとも1つを用いている。露出制御部122の備える露光時間制御部126、増幅率制御部127、絞り制御部128及び照明制御部129は、これらの露出条件を変化させるためのものである。
先ず露光時間制御部126は、入力した光量値Iを示す信号に基づいて、カメラユニット300の備えるラインCCD331−2、332−2、333−2及び334−2にそれぞれ電気的に接続され、それぞれの露光時間を制御することができる。尚、露光時間制御部126は、ラインCCD331−2、332−2、333−2及び334−2のそれぞれの露光時間を、相互に等しい露光時間になるように制御してもよいし、相互に異なる露光時間になるように制御してもよい。
次に増幅率制御部127は、入力した光量値Iを示す信号に基づいて、カメラユニット300の備えるラインCCD331−2、332−2、333−2及び334−2にそれぞれ電気的に接続され、それぞれが受光した光に対して出力する電圧信号の増幅率を制御することができる。尚、増幅率制御部127は、ラインCCD331−2、332−2、333−2及び334−2のそれぞれの増幅率を、相互に等しい増幅率になるように制御してもよいし、相互に異なる増幅率になるように制御してもよい。
次に絞り制御部128は、入力した光量値Iを示す信号に基づいて、カメラユニット300の備える絞り331−1a、332−1a、333−1a及び334−1aにそれぞれ電気的に接続され、それぞれの絞りの直径を制御することができる。尚、絞り制御部128は、絞り331−1a、332−1a、333−1a及び334−1aのそれぞれの直径を、相互に等しい直径になるように制御してもよいし、相互に異なる直径になるように制御してもよい。
次に照明制御部129は、入力した光量値Iを示す信号に基づいて、照明ユニット400の備える光源431−2、432−2、433−2及び434−2にそれぞれ電気的に接続され、それぞれの発する照明光の光量を制御することができる。尚、照明制御部129は、光源431−2、432−2、433−2及び434−2のそれぞれの照明光の光量を、相互に等しい光量になるように制御してもよいし、相互に異なる光量になるように制御してもよい。
以上の構成を用いて露出制御部122は撮像システム100の露出量を変化させ、制御することができる。露出制御部122は、構造物判定部125による判定結果を示す信号を入力し、トンネル600の内壁を撮像していると判定された場合は、取得された光量値Iに応じて露出条件を変化させる。またトンネル内壁を撮像していないと判定された場合には、取得された光量値Iによらずに露出条件を所定の露出条件に設定する。
ここで所定の露出条件とは、換言すると光量値Iによらずに固定された露出条件であり、露出制御部122が露光時間、増幅率、トンネル内壁からの反射光の光量、又は照明光の光量の少なくとも1つを制御して、設定した露出条件である。
一方、入出力部123は、撮像制御部110に対してデータや信号を入出力するためのインターフェース部であり、外部I/F115等により実現することができる。
また終了判定部124は、撮像システム100によるトンネル600の内壁の撮像が終了したか否かを判定する。撮像の終了の判定は、トンネル600の長さをHDD114に記憶しておき、終了判定部124は車速計/移動距離計170から入力した信号に基づき、HDD114を参照して、移動距離がトンネル600の長さに到達したかを検知する。終了判定部124は、移動距離がトンネル600の長さに到達した場合に、撮像が終了したと判定する。
<第1の実施形態に係る撮像方法>
図16は、上述の構成を用い、撮像システム100により撮像する方法の一例を説明する図である。図16は、撮像システム100を搭載した車両500が、太矢印で示される方向に走行してトンネル600の内部に進入し、トンネル600の内壁を撮像する場合を示している。
区間161は車両500がトンネル600の外部を走行する区間であり、区間162は車両500がトンネル600の内部を走行する区間である。また図16の下方に示すグラフ163及び164のそれぞれは、光量取得部121が取得した光量値Iの車両500の走行位置Pに伴う変化を示している。
グラフ163は昼間に撮像を行う場合を示し、グラフ164は夜間に撮像を行う場合を示している。グラフ163及び164の横軸は、それぞれ車両500の走行位置Pを表しており、上記と同様に、区間161はトンネル600の外部に該当し、区間162はトンネル600の内部に該当する。グラフ163及び164の縦軸はそれぞれトンネル内壁からの光の光量を表しており、グラフ163及び164のそれぞれにおける実線のグラフは、光量取得部121が取得した光量値Iを示している。
またグラフ163及び164には、構造物判定部125が判定に用いる閾値I1が一点鎖線で示され、閾値I2が二点鎖線で示されている。撮像システム100は、トンネル600の外部を走行している区間161では、光量取得部121により取得された光量値Iによらずに、所定の露出条件で撮像を行う。
このような所定の露出条件として、車両500がトンネル600に進入した時に、トンネルの入口付近で白飛びや黒潰れを起こさないような適正な条件が予め決定されている。この適正な条件は、例えばトンネルの入口付近で撮像した画像の全画素の画素輝度が、閾値I1以下で、かつ閾値I2以上になるような露出条件である。
尚、この適正な条件は、トンネルのサイズやトンネル内照明の数・位置等のトンネル条件によって変わってくる。ユーザは次に撮像しようとするトンネル条件に基づいて事前に適正な条件を決定している。
昼間の明るい時間帯に撮像を行う場合、外部に対して暗いトンネル600の内部の明るさに合うように、所定の露出条件が決定されているため、トンネル600の外部で所定の露出条件で撮像を行うと、グラフ163に例示されているように、取得される光量値Iは、ほぼ飽和状態になる。但し、撮像する対象はトンネル600の内壁であって、トンネル600の外部は撮像しなくてもよいため、このように飽和状態になっても問題はない。
またトンネル600の外部では、光量値Iは閾値I1以上であるため、構造物判定部125は、撮像システム100はトンネル600の内壁を撮像していないと判定して、露出制御部122にその旨を示す信号を出力する。従って露出制御部122は、光量値Iによらずに所定の露出条件で撮像システム100に撮像させている。
その後、車両500が区間161の走行を終え、トンネル600の内部に進入すると、外部に対して急激に暗くなるため、取得される光量値Iは急激に低下する。そして光量値Iが閾値I1以下になると、構造物判定部125は、撮像システム100はトンネル600の内壁を撮像していると判定して、露出制御部122にその旨を示す信号を出力する。
構造物判定部125の出力信号を入力した露出制御部122は、光量値Iが目標値Igになるように取得された光量値Iに応じて露出条件を変化させる。尚、この目標値Igはトンネル600の内部でトンネル600の内壁を撮像するために適正な光量として予め決定された値である。
車両500がトンネル内を走行しながら、撮像システム100は光量値Iが目標値Igになるように露出制御を行い、終了判定部124が撮像終了と判定するまでトンネル600の内壁の撮像を継続して行う。
一方、夜間に撮像を行う場合は、外部に対して、トンネル内照明がある分だけ明るいトンネル600の内部の明るさに合うように、所定の露出条件が決定されているため、トンネル600の外部で所定の露出条件で撮像を行うと、グラフ164に例示されているように、取得される光量値Iは小さく、ノイズに埋もれたレベルになる。但し、上述したように撮像する対象はトンネル600の内壁であって、トンネル600の外部は撮像しなくてもよいため、このようにノイズに埋もれた状態になっても問題はない。
またトンネル600の外部では、光量値Iは閾値I2以下であるため、構造物判定部125は、撮像システム100はトンネル600の内壁を撮像していないと判定して、露出制御部122にその旨を示す信号を出力する。従って露出制御部122は、光量値Iによらずに所定の露出条件で撮像システム100に撮像させている。
その後、車両500が区間161の走行を終え、トンネル600の内部に進入すると、外部に対して急激に明るくなるため、取得される光量値Iは急激に上昇する。そして光量値Iが閾値I2以上になると、構造物判定部125は、撮像システム100はトンネル600の内壁を撮像していると判定して、露出制御部122にその旨を示す信号を出力する。
構造物判定部125の出力信号を入力した露出制御部122は、光量値Iが目標値Igになるように、取得された光量値Iに応じて露出条件を変化させる。車両500がトンネル内を走行しながら、撮像システム100は光量値Iが目標値Igになるように露出制御を行い、終了判定部124が撮像終了と判定するまでトンネル600の内壁の撮像を継続して行う。
このようにして、適正な光量でトンネル600の内壁を撮像することができる。また取得した光量値Iが閾値I1以下でかつ閾値I2以上になるまでは、撮像システム100は露出制御を行わずに、取得した光量値Iによらず所定の露出条件で撮像を行う。そのため、露出制御の遅れに起因してトンネル600の入口付近で白飛びや黒潰れが撮像した画像に生じることを防ぐことができ、トンネル600の入口付近でもトンネル600の内壁を撮像することができる。
<第1の実施形態に係る撮像システムの動作>
次に図17は、本実施形態に係る撮像システム100の備える撮像制御部110による処理の一例を示すフローチャートである。
先ず、ステップS171において、露出制御部122は、各制御部を動作させて、撮像システム100の露出条件を所定の露出条件に設定し、撮像システム100は所定の露出条件で撮像を行う。
続いて、ステップS172において、光量取得部121は、測光部120の検出信号を入力してトンネル600の内壁からの光の光量値Iを取得し、光量値Iを示す信号を露出制御部122に出力する。
続いて、ステップS173において、露出制御部122の備える構造物判定部125は、入力した光量値Iを示す信号に基づき、光量値Iが閾値I1以下で、かつ閾値I2以上かを判定する。
ステップS173で、構造物判定部125が、光量値Iが閾値I1以下で、かつ閾値I2以上でなく、撮像システム100がトンネル600の内壁を撮像していないと判定した場合は(ステップS173、No)、ステップS171に戻り、ステップS171以降の処理を継続する。
一方、ステップS173で、構造物判定部125が、光量値Iが閾値I1以下で、かつ閾値I2以上であり、撮像システム100がトンネル600の内壁を撮像していないと判定した場合は(ステップS173、Yes)、構造物判定部125はその旨を露出制御部122に出力する。そしてステップS174において、露出制御部122は各制御部を動作させ、光量値Iに基づき、光量値Iが目標値Igになるように露出条件を変化させる。撮像システム100は目標値Igになるように変化された露出条件で撮像を行う。
続いて、ステップS175で、終了判定部124は撮像終了か否かを判定する。終了判定部124が撮像終了でないと判定した場合は(ステップS175、No)、ステップS174に戻り、処理を継続する。一方、終了判定部124が撮像終了であると判定した場合は(ステップS175、Yes)、撮像制御部110は処理を終了する。
このようにして、撮像制御部110は、露出制御の遅れに起因してトンネル600の入口付近で白飛びや黒潰れが撮像した画像に生じることを防ぎ、入口付近を含むトンネル600の内壁全体を撮像することができる。
図18は、露出制御部122による光量値Iに基づく露出制御処理の一例を示すフローチャートである。尚、図18のフローチャートは、図17のフローチャートにおけるステップS174の処理をより詳細に説明するものである。
先ず、ステップS181において、光量取得部121は、測光部120の検出信号を入力してトンネル600の内壁からの光の光量値Iを取得し、光量値Iを示す信号を露出制御部122に出力する。
続いて、ステップS182において、露出制御部122は光量値Iが予め決定された目標値Igより大きいか否かを判定する。
ステップS182において、光量値Iが目標値Igより大きいと判定した場合は(ステップS182、Yes)、露出制御部122はその旨を示す信号を絞り制御部128に出力する。
続いて、ステップS183において、絞り制御部128は、カメラユニット300の備える各絞り(絞り331−1a、332−1a、333−1a及び334−1a)の直径を、光量値Iが目標値Igになるまで縮小可能か否かを判定する。
ステップS183において、各絞の直径を、光量値Iが目標値Igになるまで縮小可能と判定した場合(ステップS183、Yes)、絞り制御部128は、ステップS184において、各絞りの直径を、光量値Iが目標値Igになるまで縮小する。その後、露出制御部122は処理を終了する。
一方、ステップS183において、各絞りの直径を、光量値Iが目標値Igになるまで縮小可能でないと判定した場合(ステップS183、No)、ステップS185において、露光時間制御部126は、カメラユニット300の備える各ラインCCD(ラインCCD331−2、332−2、333−2及び334−2)の露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで短縮可能か否かを判定する。
ステップS185において、各ラインCCDの露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで短縮可能と判定した場合(ステップS185、Yes)、ステップS186において、露光時間制御部126は、各ラインCCDの露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで短縮し、その後、露出制御部122は処理を終了する。
一方、ステップS185において、各ラインCCDの露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで短縮可能でないと判定した場合(ステップS185、No)、ステップS187において、増幅率制御部127は、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで低下可能か否かを判定する。
ステップS187において、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで低下可能と判定した場合(ステップS187、Yes)、ステップS188において、増幅率制御部127は、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで低下させ、その後、露出制御部122は処理を終了する。
一方、ステップS187において、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで低下可能でないと判定した場合(ステップS187、No)、ステップS189において、照明制御部129は、照明ユニット400の備える各光源(光源431−2、432−2、433−2、434−2、435−2及び436−2)の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで低下可能か否かを判定する。
ステップS189において、各光源の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで低下可能と判定した場合(ステップS189、Yes)、ステップS190において、照明制御部129は、各光源の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで低下させ、その後、露出制御部122は処理を終了する。
一方、ステップS189において、各光源の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで低下可能でないと判定した場合(ステップS189、No)、ステップS191において、露出制御部122は、ブザー116にビープ音を発生させて、調査範囲外の警告を通知し、その後、ステップS181に戻って処理を継続する。尚、ビープ音の発生に代えて、外部I/F115を介してユーザインターフェース画面に警告メッセージを表示する等して警告を通知してもよい。
一方で、ステップ182において、光量値Iが予め決定された目標値Igより大きくないと判定した場合は(ステップS182、No)、露出制御部122はその旨を示す信号を照明制御部129に出力する。
続いて、ステップS192において、照明制御部129は、各光源の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇可能か否かを判定する。
ステップS192において、各光源の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇可能と判定した場合(ステップS192、Yes)、ステップS193において、照明制御部129は、各光源の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇させ、その後、露出制御部122は処理を終了する。
一方、ステップS192において、各光源の照明光の光量を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇可能でないと判定した場合(ステップS192、No)、ステップS194において、増幅率制御部127は、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇可能か否かを判定する。
ステップS194において、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇可能と判定した場合(ステップS194、Yes)、ステップS195において、増幅率制御部127は、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇させ、その後、処理を終了する。
一方、ステップS194において、各ラインCCDの増幅率を、光量値Iが目標値Igになるまで上昇可能でないと判定した場合(ステップS194、No)、ステップS196において、露光時間制御部126は、各ラインCCDの露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで延長可能か否かを判定する。
ステップS196において、各ラインCCDの露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで延長可能と判定した場合(ステップS196、Yes)、ステップS197において、露光時間制御部126は、各ラインCCDの露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで延長し、その後、露出制御部122は処理を終了する。
一方、ステップS196において、各ラインCCDの露光時間を、光量値Iが目標値Igになるまで延長可能でないと判定した場合(ステップS196、No)、ステップS198において、絞り制御部128は、各絞りの直径を、光量値Iが目標値Igになるまで拡大可能か否かを判定する。
ステップS198において、各絞りの直径を、光量値Iが目標値Igになるまで拡大可能と判定した場合(ステップS198、Yes)、ステップS199において、絞り制御部128は、各絞りの直径を、光量値Iが目標値Igになるまで拡大し、その後、処理を終了する。
一方、ステップS198において、各絞りの直径を、光量値Iが目標値Igになるまで拡大可能でないと判定した場合(ステップS198、No)、ステップS191において、露出制御部122は、ブザー116にビープ音を発生させて、調査範囲外の警告を通知し、その後、ステップS181に戻って処理を継続する。尚、上述したと同様に、ビープ音の発生に代えて、外部I/F115を介してユーザインターフェース画面に警告メッセージを表示する等して警告を通知してもよい。
このようにして、露出制御部122は、光量値Iに基づいて露出制御処理を実行することができる。
以上説明してきたように、本実施形態では、トンネル600の内壁等の構造物からの光の光量を検出し、検出した光量に基づいて、撮像システム100がトンネルの内壁等の構造物を撮像しているか否かを判定する。そして撮像システム100は、構造物を撮像している判定した場合には、検出した光量に応じて変化させた露出条件で撮像し、構造物を撮像していないと判定した場合には、検出した光量によらずに所定の露出条件で撮像する。これにより、露出制御の遅れに起因してトンネル600の入口付近で白飛びや黒潰れが撮像した画像に生じることを防ぎ、入口付近を含むトンネル600の内壁全体を撮像することができる。また露出制御部122は、カメラユニット300が備える撮像用のラインCCD331−2等を用いて検出した構造物からの光の光量に基づき、上述の制御を実行するため、明るさの変化情報を事前に取得するための装置等の余分な構成を追加せず、コストを増大させることなく撮像システムの露出制御を適切に行うことができる。また測光部120の機能は、撮像用のラインCCD331−2等を用いずとも、PD等の簡易な構成を用いて実現可能であるため、コストを増大させることなく撮像システムの露出制御を適切に行うことができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る撮像システムの一例を説明する。尚、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する。
本実施形態に係る撮像システム100aは、トンネル600の軸方向に交差する断面積に基づいて取得した所定の露出条件により撮像を行う撮像システムである。
図19は、撮像システム100aの備える撮像制御部110aの構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。撮像制御部110aは、記憶部131と、露出条件情報取得部132とを有する。
記憶部131は、トンネルの軸方向に交差する断面積に応じた所定の露出条件の情報を対応付けて記憶している。このような情報は、トンネルの軸方向に交差する断面積からトンネル600の内壁からの光の光量を算出し、算出した光量に応じて所定の露出条件を決定してもよいし、断面積が様々なトンネルを利用して、断面積毎で適正な露出条件を実験により取得して決定してもよい。
また適正な露出条件をトンネル毎に定めておき、撮像システムやPC、外部記憶装置、クラウドサーバなどの記憶手段に記憶させておいても良い。この場合、例えばGPS(Global Positioning System)を移動体に装着し、次に測定するであろうトンネルをGPS情報から割り出して記憶手段に記憶したトンネル条件を読み出して、これに基づいて露出条件を設定しても良い。この場合、一度記憶手段に記憶させたトンネル条件を自動で読み出す事ができるだけでなく、他ユーザも同じ露出条件に設定できるようになり、測定の偏りが抑制されるという効果もある。
ここで、図20は、トンネルの断面積に対応付いた所定の露出条件の一例を示す図である。ここで、トンネルの断面積とは、トンネルの軸方向に交差するトンネル断面の面積である。記憶部131は一例として、図20に示すようなテーブルを記憶している。尚、所定の露出条件の項目は、図20に示したものに限定されるものではなく、露光時間、増幅率、絞りの直径及び照明光の光量の少なくとも1であってもよいし、これら以外の項目を所定の露出条件に加えてもよい。
図19に戻り、露出条件情報取得部132は、外部I/F115等を介して入力したトンネル断面積データに基づき、記憶部131を参照して、所定の露出条件の情報を取得し、所定の露出条件の情報を示すデータを露出制御部122に出力する。露出制御部122は入力した所定の露出条件になるように各制御部を実行させる。
図21は、撮像システム100aの備える撮像制御部110aによる処理の一例を示すフローチャートである。
先ず、ステップS201において、露出条件情報取得部132は、外部I/F115等を介して入力したトンネル断面積データに基づき、記憶部131を参照して、所定の露出条件の情報を取得し、所定の露出条件の情報を示すデータを露出制御部122に出力する。
続いて、ステップS202において、露出制御部122は、入力した所定の露出条件になるように各制御部を動作させる。
ステップS203〜S206の処理は、図17のフローチャートにおけるステップS172〜S175と処理と同様であるため、説明を省略する。
以上のように、本実施形態では、撮像システム100aは、トンネル600の断面積に基づいて取得した所定の露出条件で撮像を行う。これにより、様々なトンネルに対して適正な露出条件で撮像を行うことができる。
尚、上記以外の効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
具体的には、カメラを搭載する車両としては2輪車、一般車などの4輪車、建設・農業・産業車両、鉄道車両、特殊車両であってもよく、また、ドローンなどの飛行体であってもよい。これらまとめて移動体と称する。
また実施形態では、構造物の一例としてトンネルを説明したが、これに限るものではなく、構造物には、気体、液体、粉体、粒体物質の輸送に用いる配管も含まれる。また、構造物には、昇降機(エレベータ)が走行する縦穴状の鉄筋コンクリート構造等の昇降路(エレベータシャフト)も含まれる。
また実施形態は、撮像方法も含む。例えば、撮像方法は、移動体に設置された状態で撮像対象を撮像する撮像システムによる撮像方法であって、前記移動体の移動に伴って前記撮像システムが所定の構造物を撮像する場合、当該所定の構造物に関連して予め設定された露出条件による撮像を行ない、その後、自動露出条件による撮像に切り替えて当該所定の構造物の撮像を行う工程を含む。このような撮像方法により、上述の撮像システムと同様の効果を得ることができる。このような撮像方法は、CPU、LSIなどの回路、ICカード又は単体のモジュール等によって、実現されてもよい。
また実施形態は、プログラムも含む。例えば、プログラムは、移動体に設置された状態で撮像対象を撮像する撮像システムで実行されるプログラムであって、
前記移動体の移動に伴って前記撮像システムが所定の構造物を撮像する場合、当該所定の構造物に関連して予め設定された露出条件による撮像を行ない、その後、自動露出条件による撮像に切り替えて当該所定の構造物の撮像を行う処理を実行する。このようなプログラムにより、上述の撮像システムと同様の効果を得ることができる。