JP2020063352A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐カット性及び耐ブルーム性を有する空気入りタイヤを提供する。【解決手段】共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位と、を含有する多元共重合体を含むゴム成分を含有するゴム組成物により構成されるインナーパッドを備える空気入りタイヤであり、非共役オレフィン単位は、耐カット性を向上させることができる単位であり、共役ジエン単位は多元共重合体の加硫を可能とし、ゴムとしての伸びや強度を向上させることができ、また芳香族ビニル単位は多元共重合体の作業性を向上させるという特性を有している。本実施形態で用いられる多元共重合体は、これらの単位を組み合わせることで、それ自体が耐カット性に優れるものとなり得る。【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
タイヤに用いられるゴム組成物には、耐カットが求められている。従来、タイヤのサイドウォール部に適用するサイドゴム用のゴム組成物には、優れた耐カット性を発現することから、天然ゴム(NR)とポリブタジエンゴム(BR)とを配合したゴム組成物が用いられている。このようなゴム組成物としては、例えば天然ゴム及び/又はポリイソプレンゴムと、トランスポリブタジエンゴム、その他加硫促進剤等の添加剤を配合したゴム組成物が開示されている(例えば、特許文献1)。
また、タイヤに用いられるゴム組成物に用いられるゴム材料としては、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位と、を有する多元共重合体が知られている(例えば、特許文献2)。
特開2006−117099号公報 国際公開第2017/065299号パンフレット
ところで、近年、上記のタイヤに対する要求性能は益々厳しいものとなっており、とりわけ耐カット性について、より厳しい性能が求められるようになっている。しかし、特許文献1に開示される天然ゴム(NR)とポリブタジエンゴム(BR)とを配合したゴム組成物では、耐カット性の点において要求性能に対応できない場合があり、重荷重用のタイヤではその傾向が顕著となる。また、特許文献2に開示される多元共重合体は、耐カット性の点で優れているが、例えばサイドウォールといった外皮部材に用いた場合、薬品のブルームの発生という新たな問題が生じる場合がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、優れた耐カット性及び耐ブルーム性を有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の構成を有する発明により、上記課題を解決できることを見出した。
1.共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位と、を含有する多元共重合体を含むゴム成分を含有するゴム組成物により構成されるインナーパッドを備える空気入りタイヤ。
2.前記ゴム成分が、さらに天然ゴム及びブタジエンゴムから選ばれる少なくとも一種を含む上記1に記載の空気入りタイヤ。
本発明によれば、優れた耐カット性及び耐ブルーム性を有する空気入りタイヤを提供することができる。
本実施形態の空気入りタイヤの一例の一部の断面を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について詳説する。なお、以下の説明において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」、「〜」にかかる上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、実施例における数値を該上限及び下限とすることができる。
本実施形態の空気入りタイヤは、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位と、を含有する多元共重合体を含むゴム成分を含有するゴム組成物により構成されるインナーパッドを備える、というものである。本実施形態の空気入りタイヤで用いられる多元共重合体は、カット等の高歪の入力により大きく歪んだ際に、エチレン鎖結晶等の非共役オレフィン単位に由来する結晶を崩壊させることで、入力エネルギーを散逸させることができ、優れた耐カット性を発現するという特長を有している。一方、多元共重合体は、カット等の高歪の入力によりブルームを発生する場合がある。そのため、多元共重合体を含むゴム組成物をサイドウォール等の外皮部材に用いると、ブルームによる外観不良が生じる場合があり、その傾向は重荷重用のタイヤにおいて顕著となる。そこで、本実施形態の空気入りタイヤでは、サイドウォールより内側に存在するインナーパッドに多元共重合体を含むゴム組成物を用いることにより、優れた耐カット性を維持したまま、耐ブルーム性を向上することが可能となった。
以下、本実施形態の空気入りタイヤについて、多元共重合体から詳説する。
(多元共重合体)
本実施形態で用いられるゴム組成物は、多元共重合体を含むゴム成分を含有するものである。
多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位と、を含有するものである。本実施形態においては、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位のみからなっていてもよいし、さらに他の単量体単位を含有していてもよい。本実施形態で用いられる多元共重合体に含まれる各単位について、既述のように非共役オレフィン単位は、耐カット性を向上させることができる単位であり、共役ジエン単位は多元共重合体の加硫を可能とし、ゴムとしての伸びや強度を向上させることができ、また芳香族ビニル単位は多元共重合体の作業性を向上させるという特性を有している。本実施形態で用いられる多元共重合体は、これらの単位を組み合わせることで、それ自体が耐カット性に優れるものとなり、本実施形態の空気入りタイヤにおいて、優れた耐カット性を発現し得る主要な成分となり得る。なお、本明細書において、「耐カット性」は、特段のことわりがない限り、空気入りタイヤの耐カット性を意味する。
共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。ここで、共役ジエン化合物とは、共役系のジエン化合物を意味する。
共役ジエン化合物は、炭素数が4〜8であることが好ましく、かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。多元共重合体の単量体としての共役ジエン化合物は、耐カット性を効果的に向上させる観点から、1,3−ブタジエン及びイソプレンから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、1,3−ブタジエン及びイソプレンから選ばれる少なくとも一種のみからなることがより好ましく、イソプレンのみからなることがさらに好ましい。すなわち、多元共重合体における共役ジエン単位は、1,3−ブタジエン単位及びイソプレン単位から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、1,3−ブタジエン単位及びイソプレン単位から選ばれる少なくとも一種のみからなることがより好ましく、イソプレン単位のみからなることがさらに好ましい。また、このような共役ジエン単位であると、他の単位との組み合わせにより、耐カット性が向上しやすくなる。
多元共重合体中の共役ジエン単位の含有量は、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上であり、また上限として好ましくは50mol%以下、より好ましくは40mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下、よりさらに好ましくは25mol%以下、特に好ましくは15mol%以下である。共役ジエン単位の含有量が1mol%以上であると伸びに優れるゴム組成物が得られ、50mol%以下であると、また他の単位との組み合わせにより、耐カット性が向上しやすくなる。また、共役ジエン単位の含有量は、多元共重合体全体の1mol%以上50mol%以下の範囲の組み合わせが好ましく、3mol%以上40mol%以下の範囲がより好ましく、3mol%以上30mol%以下の範囲がさらに好ましい。
非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。ここで、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物を意味する。
非共役オレフィン化合物は、炭素数が2〜10であることが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィン、ピバリン酸ビニル、1−フェニルチオエテン、N−ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
多元共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、耐カット性を向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また該非環状の非共役オレフィン化合物は、α−オレフィンであることがより好ましく、エチレンを含むα−オレフィンであることがさらに好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。すなわち、多元共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、該非環状の非共役オレフィン単位は、α−オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位を含むα−オレフィン単位であることがさらに好ましく、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。また、このような非共役オレフィン単位であると、他の単位との組み合わせにより、耐カット性が向上しやすくなる。
多元共重合体の非共役オレフィン単位の含有量は、好ましくは40mol%以上、より好ましくは45mol%以上、さらに好ましくは55mol%以上、よりさらに好ましくは60mol%以上であり、また上限として好ましくは98mol%以下、より好ましくは95mol%以下、さらに好ましくは90mol%以下である。非共役オレフィン単位の含有量が、上記範囲内であると、多元共重合体全体の40mol%以上であると、結果として共役ジエン単位又は芳香族ビニル単位の含有量が減少して、耐カット性が向上し、非共役オレフィン単位の含有量が97mol%以下であると、結果として共役ジエン単位又は芳香族ビニル単位の含有量が増加し、タイヤの高温での耐カット性が向上し、また他の単位との組み合わせにより、耐カット性が向上しやすくなる。
また、非共役オレフィン単位の含有量は、多元共重合体全体の40mol%以上98mol%以下の範囲の組み合わせが好ましく、45mol%以上95mol%以下の範囲がより好ましく、55mol%以上90mol%以下の範囲がさらに好ましい。
芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する構成単位であり、多元共重合体の作業性を向上させる。ここで、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を意味し、共役ジエン化合物には包含されないものとする。
芳香族ビニル化合物は、炭素数が8〜10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。多元共重合体の単量体としての芳香族ビニル化合物は、耐カット性を向上させる観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。すなわち、多元共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。また、このような芳香族ビニル単位であると、他の単位との組み合わせにより、耐カット性が向上しやすくなる。
なお、芳香族ビニル単位における芳香族環は、隣接する単位と結合しない限り、多元共重合体の主鎖には含まれない。
多元共重合体の芳香族ビニル単位の含有量は、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上であり、また上限として好ましくは35mol%以下、より好ましくは30mol%以下、さらに好ましくは25mol%以下である。芳香族ビニル単位の含有量が1mol%以上であると、多元共重合体を用いたゴム組成物等の高温における耐カット性が向上し、芳香族ビニル単位の含有量が35mol%以下であると、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位による効果が顕著になり、また他の単位との組み合わせにより、耐カット性が向上しやすくなる。また、芳香族ビニル単位の含有量は、多元共重合体全体の1mol%以上35mol%以下の範囲の組み合わせが好ましく、3mol%以上30mol%以下の範囲がより好ましく、3mol%以上25mol%以下の範囲がさらに好ましい。
多元共重合体の単量体の種類の数としては、多元共重合体が共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを含有する限り、特に制限はない。多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位以外の、その他の構成単位を有していてもよいが、所望の効果を得る観点から、多元共重合体全体に対するその他の構成単位の含有量は、好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下、特に好ましくは含有しないこと、すなわち、0mol%である。
本実施形態で用いられる多元共重合体は、耐カット性を向上させる観点から、単量体として、一種のみの共役ジエン化合物、一種のみの非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。すなわち、多元共重合体は、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位を含有する多元共重合体であることが好ましく、一種のみの共役ジエン単位、一種のみの非共役オレフィン単位、及び一種のみの芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、イソプレン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることがさらに好ましい。ここで、「一種のみの共役ジエン単位」には、異なる結合様式の共役ジエン単位が包含される。
多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が1mol%以上50mol%以下であり、非共役オレフィン単位の含有量が40mol%以上98mol%以下であり、かつ芳香族ビニル単位の含有量が1mol%以上35mol%以下であることが好ましい。共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位の含有量を上記範囲内で組み合わせることにより、耐カット性を向上させることができる。
多元共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜10,000,000、より好ましくは100,000〜9,000,000、さらに好ましくは150,000〜8,000,000である。多元共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは10,000〜10,000,000、より好ましくは50,000〜9,000,000、さらに好ましくは100,000〜8,000,000である。また、多元共重合体の分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]は、好ましくは1.00〜4.00、より好ましくは1.50〜3.50、さらに好ましくは1.80〜3.00である。
多元共重合体のMw、Mnの下限が上記範囲内であると、耐カット性を向上させることができ、また、上限が上記範囲内であると、多元共重合体の高い作業性を保持することができる。また、多元共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、多元共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができるので、該多元共重合体を含むゴム組成物により構成されるインナーパッドの性能がより安定して得られる。
ここで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。これらの詳細な測定方法は、実施例に記載の方法となる。
多元共重合体の示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下であり、また下限として好ましくは−100℃以上である。多元共重合体のガラス転移温度が0℃以下であれば、多元共重合体の作業性が向上する。ここで、ガラス転移温度(Tg)の詳細な測定方法は、実施例に記載の方法となる。
多元共重合体の0〜120℃における示差走査熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークエネルギーは、好ましくは10〜150J/g、より好ましくは30〜120J/gである。多元共重合体の吸熱ピークエネルギーが10J/g以上であれば、多元共重合体の結晶性が高くなるため、耐カット性が向上する。また、多元共重合体の吸熱ピークエネルギーが150J/g以下であれば、多元共重合体の作業性が向上する。ここで、吸熱ピークエネルギーの詳細な測定方法は、実施例に記載の方法となる。
多元共重合体の示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)は、好ましくは30〜130℃、より好ましくは30〜110℃である。多元共重合体の融点が30℃以上であれば、多元共重合体の結晶性が高くなり、耐カット性が向上する。また、多元共重合体の融点が130℃以下であれば、多元共重合体の作業性が向上する。ここで、融点(Tm)の詳細な測定方法は、実施例に記載の方法となる。
多元共重合体の結晶化度は、好ましくは0.5〜50%、より好ましくは3〜45%、さらに好ましくは5〜45%である。多元共重合体の結晶化度が0.5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する結晶性を十分に確保することができ、耐カット性が向上する。また、多元共重合体の結晶化度が50%以下であれば、ゴム組成物の混練の際の作業性が向上し、また、多元共重合体を配合したゴム組成物のタッキネスが向上するため、例えば、ゴム組成物から作製したインナーパッドを他の部材同士を貼り付け、タイヤを成形する際の作業性も向上する。ここで、結晶化度の詳細な測定方法は、実施例に記載の方法となる。
多元共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。これにより、耐カット性を向上させることができる。
多元共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環〜五員環については、10〜24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その多元共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
多元共重合体は、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いる重合工程を経て製造でき、さらに、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を経てもよい。
ここで、多元共重合体の製造においては、重合触媒の存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらをまず重合させることが好ましい。特に後述の触媒組成物を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物より共役ジエン化合物の方が反応性が高いことから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を重合させることが困難となりやすい。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上困難となりやすい。
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。
一段階の重合工程とは、重合させる全ての種類の単量体、すなわち、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、及びその他の単量体、好ましくは、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、及び芳香族ビニル化合物を一斉に反応させて重合させる工程である。また、二段階以上の多段階の重合工程とは、一種類又は二種類の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、残る種類の単量体や前記一種類又は二種類の単量体の残部を添加して重合させる1以上の段階(第2重合段階〜最終重合段階)を行って重合させる工程である。特に、多元共重合体の製造では、重合工程を多段階で行うことが好ましい
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒〜10日の範囲が好ましいが、重合触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
また、共役ジエン化合物の重合工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
重合工程は、多段階で行うことが好ましい。より好ましくは、少なくとも芳香族ビニル化合物を含む第1単量体原料と、重合触媒とを混合して重合混合物を得る第1工程と、該重合混合物に対し、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種を含む第2単量体原料を導入する第2工程とを実施することが好ましい。さらに、上記第1単量体原料が共役ジエン化合物を含まず、かつ上記第2単量体原料が共役ジエン化合物を含むことがより好ましい。
第1工程で用いる第1単量体原料は、芳香族ビニル化合物とともに、非共役オレフィン化合物を含有してもよい。また、第1単量体原料は、使用する芳香族ビニル化合物の全量を含有してもよく、一部のみを含有してもよい。また、非共役オレフィン化合物は、第1単量体原料及び第2単量体原料の少なくともいずれかに含有される。
第1工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第1工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。また、第1工程における圧力は、特に制限はないが、芳香族ビニル化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、第1工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、反応温度を25〜80℃とした場合には、5分〜500分の範囲が好ましい。
第1工程において、重合混合物を得るための重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
第2工程で用いる第2単量体原料は、共役ジエン化合物のみ、又は共役ジエン化合物及び非共役オレフィン化合物、又は共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物、又は共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物であることが好ましい。
第2単量体原料が、共役ジエン化合物以外に非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも1つを含む場合には、予めこれらの単量体原料を溶媒等とともに混合した後に重合混合物に導入してもよく、各単量体原料を単独の状態から導入してもよい。また、各単量体原料は、同時に添加してもよく、逐次添加してもよい。第2工程において、重合混合物に対して第2単量体原料を導入する方法としては、特に制限はないが、各単量体原料の流量を制御して、重合混合物に対して連続的に添加すること(所謂、ミータリング)が好ましい。ここで、重合反応系の条件下で気体である単量体原料(例えば、室温、常圧の条件下における非共役オレフィン化合物としてのエチレン等)を用いる場合には、所定の圧力で重合反応系に導入することができる。
第2工程は、反応器内で、不活性ガス、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。第2工程における温度(反応温度)は、特に制限はないが、例えば、−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、共役ジエン単位におけるシス−1,4結合の選択性が低下することがある。また、第2工程における圧力は、特に制限はないが、共役ジエン化合物等の単量体を十分に重合反応系に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、第2工程に費やす時間(反応時間)は、重合触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができるが、例えば、0.1時間〜10日の範囲が好ましい。
また、第2工程においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合反応を停止させてもよい。
上記の共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物の重合工程は、触媒成分として、下記(A)〜(F)成分から選ばれる少なくとも一種の触媒成分の存在下で、各種単量体を重合させる工程を含むことが好ましい。なお、重合工程には、下記(A)〜(F)成分を一種以上用いることが好ましく、下記(A)〜(F)成分の二種以上を組み合わせて、触媒組成物として用いることがさらに好ましい。本実施形態においては、下記(A)〜(F)成分については、例えば、WO2018/092733等を参照することによって、重合工程において用いることができる。
(A)成分:希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物
(B)成分:有機金属化合物
(C)成分:アルミノキサン
(D)成分:イオン性化合物
(E)成分:ハロゲン化合物
(F)成分:置換又は無置換のシクロペンタジエン(シクロペンタジエニル基を有する化合物)、置換又は無置換のインデン(インデニル基を有する化合物)、及び、置換又は無置換のフルオレン(フルオレニル基を有する化合物)から選択されるシクロペンタジエン骨格含有化合物
カップリング工程は、重合工程において得られた多元共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。
カップリング工程において、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸−1−オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ビス(マレイン酸−1−オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、数平均分子量(Mn)の増加を行うことができる。
洗浄工程は、重合工程において得られた多元共重合体を洗浄する工程である。
洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられ、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸等)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。15mol%以下であると、酸が多元共重合体中に残存してしまうことによる混練及び加硫時の反応への悪影響を防止することができる。
この洗浄工程により、多元共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
(他のゴム成分)
本実施形態で用いられるゴム組成物は、上記多元共重合体を含むゴム成分を含有するもの、すなわちゴム成分として上記多元共重合体以外、他のゴム成分を含んでもよいものである。
上記多元共重合体以外の他のゴム成分としては、例えばRSS及びTSRの他、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水酸基化天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等の天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の他のゴム成分を含んでいてもよい。これらのゴム成分は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ブタジエンゴム(BR)としては、耐カット性とともに、耐摩耗性の向上を考慮して、ハイシスポリブタジエンゴムを含むことができる。ハイシスポリブタジエンゴムとは、FT−IRによる測定において、1,3−ブタジエン単位中のシス−1,4結合含有量が90%以上99%以下のハイシスポリブタジエンゴムのことである。ハイシスポリブタジエンゴムの1,3−ブタジエン単位中のシス−1,4結合含有量は、好ましくは95%以上99%以下である。
ハイシスポリブタジエンゴムの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造すればよく、例えば、ネオジム系触媒を用いてブタジエンを重合する方法が挙げられる。
ハイシスポリブタジエンゴムは市販されており、例えば、「BR01」、「T700」(以上、JSR(株)製)、「ウベポールBR150L」(宇部興産(株)製)等が挙げられる。
ゴム成分中の多元共重合体の含有量は、所望の耐カット性に応じて適宜選定すればよく特に制限はないが、効率的に優れた耐カット性を得る観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上であり、上限として好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは70質量%以下である。
(充填剤)
本実施形態で用いられるゴム組成物は、さらに充填剤を含むことが好ましい。充填剤を含むことにより、耐カット性に加えて、補強性等も向上する。充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。充填剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。充填剤としては、ゴム組成物中の多元共重合体の分散性を向上させ、耐カット性を向上させる観点から、シリカ及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、カーボンブラックを含むことがより好ましい。
カーボンブラックとしては、特に制限されず、例えば、SAF、ISAF、HAF、FF、FEF、GPF、SRF、CF、FT、MTグレードのカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAFグレードのカーボンブラックが好ましい。
シリカとしては、特に制限されず、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。シリカは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、シリカとしては、湿式シリカが好ましい。
本実施形態で用いられるゴム組成物における充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、上限として好ましくは100質量部以下、より好ましくは85質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下である。充填剤の含有量が上記範囲内であると、効率的に耐カット性に加えて、補強性等を向上させることができる。
本実施形態で用いられるゴム組成物は、充填剤としてシリカを用いる場合、該シリカの配合効果を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、ビス−トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、その含有量は、特に制限されるものではないが、シリカの含有量に対して、好ましくは1〜12質量%、より好ましくは3〜10質量%である。シランカップリング剤の含有量が充填剤のシリカの含有量に対して1質量%以上であることで、充填剤の分散性の向上効果が得られやすくなり、12質量%以下であることで、シランカップリング剤の配合過多を抑制し、効率的に添加効果が得られるので、経済的なメリットもある。
(その他の成分)
本実施形態で用いられるゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記の充填剤以外の添加物、例えば、架橋剤(硫黄等の加硫剤を含む)、架橋促進剤(加硫促進剤)、架橋促進助剤(加硫促進助剤)、老化防止剤、亜鉛華(ZnO)、軟化剤、ワックス、酸化防止剤、発泡剤、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、石油系樹脂、紫外線吸収剤、分散剤、相容化剤、均質化剤等の成分を、適宜含有することができる。
(ゴム組成物の製造)
本実施形態で用いられるゴム組成物は、上記の各成分を、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を使用して混練りすることによって製造することができる。ここで、配合及び混練に際しては、全ての成分を一度に配合して混練してもよく、2段階又は3段階等の多段階に分けて各成分を配合して混練してもよい。なお、混練に際しては、ロール、インターナルミキサー、バンバリーローター等の混練機を用いることができる。さらに、ゴム組成物をシート状や帯状等に成形する際には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いることができる。
また、本実施形態で用いられるゴム組成物は、架橋して製造してもよい。架橋条件としては特に制限されず、通常は100〜180℃の温度、及び5〜300分間の時間を採用することができる。
(空気入りタイヤ)
本実施形態の空気入りタイヤは、上記の多元共重合体を含むゴム組成物により構成されるインナーパッドを備えるものである。図1は、本実施形態の空気入りタイヤの好ましい一態様の一部分の断面を模式的に示した図である。図1に示される空気入りタイヤは、サイドウォール2、ビード部3、ビードコア4、カーカス層5、インナーライナー6、インナーパッド7及びベルト層8を有しており、インナーパッド7はカーカス層5とタイヤ内面のガスバリア層として機能するインナーライナー6との間に設けられ、主にインナーライナー6の割れを抑制する補強材として機能する部材である。本実施形態の空気入りタイヤにおいては、インナーパッド7に耐カット性に優れる多元共重合体を含むゴム組成物を用いることにより、インナーライナー6の補強効果だけでなく、タイヤ全体としての耐カット性も向上することとなった。
既述のように、多元共重合体はカット等の高歪の入力により大きく歪んでも、入力エネルギーを散逸させることができるので、優れた耐カット性を発現するという特長を有している一方、ブルームを発生する場合がある。そこで、本実施形態の空気入りタイヤでは、サイドウォール2より内側に存在するインナーパッド7に多元共重合体を含むゴム組成物を用いることにより、優れた耐カット性を維持したまま、耐ブルーム性を向上することが可能となった。
本実施形態の空気入りタイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に本実施形態のゴム組成物によるインナーパッド、また未加硫のゴム組成物及びコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、本実施形態の空気入りタイヤを製造することができる。
本実施形態の空気入りタイヤは、トラック用、バス用、オフザロード用(例えば、建設車両用、鉱山用等)、小型トラック(ライトトラック)用、産業車両用、航空機用等の重荷重用として、また乗用車用、軽乗用車用のタイヤとして好適に用いることができる。中でも、本実施形態の空気入りタイヤの、優れた耐カット性及び耐ブルーム性を有するという効果を有効に活用する観点から、トラック用、バス用、オフザロード用(例えば、建設車両用、鉱山用等)、小型トラック(ライトトラック)用、産業車両用、航空機用等の重荷重用タイヤとして用いることが好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(多元共重合体の分析)
多元共重合体についての、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、共役ジエン単位(イソプレン単位)、非共役オレフィン単位(エチレン単位)、芳香族ビニル単位(スチレン単位)の含有量、融点(Tm)、吸熱ピークエネルギー、ガラス転移温度(Tg)及び結晶化度を測定する際、以下の測定方法により行った。
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC−8121GPC/HT、カラム:東ソー社製GMHHR−H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は40℃である。
(2)共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、芳香族ビニル単位の含有量
共重合体中の共役ジエン単位(イソプレン単位又はブタジエン単位)、非共役オレフィン単位(エチレン単位)、芳香族ビニル単位(スチレン単位)の含有量(mol%)を、H−NMRスペクトル(100℃、d−テトラクロロエタン標準:6ppm)の各ピークの積分比より求めた。
(3)融点(Tm)
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121−1987に準拠して、測定される温度を融点(Tm)とした。
(4)吸熱ピークエネルギー
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121−1987に準拠して、10℃/分の昇温速度で、−150℃から150℃まで昇温し、その時(1st run)の0〜120℃における吸熱ピークエネルギーを、吸熱ピークエネルギーとした。
(5)ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、具体的には、ルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121−1987に準拠して、測定される温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(6)結晶化度
多元共重合体について10℃/分の昇温速度で、−150℃〜150℃まで昇温し、吸熱ピークエネルギー(ΔH1)を測定し、これと同様の方法により、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)を測定し、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する多元共重合体の吸熱ピークエネルギー(ΔH1)の比率(ΔH1/ΔH0)より、エチレン単位(非共役オレフィン単位)に由来する結晶化度(%)として算出したものを、結晶化度とした。多元共重合体の吸熱ピークエネルギー及びポリエチレンの結晶融解エネルギーは、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用いて測定したものとする。
(製造例1:多元共重合体の製造)
十分に乾燥した1000mLの耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてスチレン160gと、トルエン600mLを加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器にモノ(ビス(1,3−tert−ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミドガドリニウム錯体({1,3−[(t−Bu)MeSi]Gd[N(SiHMe]})0.25mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(MeNHPhB(C)0.275mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.1mmolを仕込み、トルエン40mLに溶解させて触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、70℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、該耐圧ステンレス反応器に投入し、さらに1,3−ブタジエン20gを含むトルエン溶液80mLを8時間かけて該耐圧ステンレス反応器に投入し、70℃で計8.5時間共重合を行った。
次いで、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mlを、該耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、多元共重合体を得た。
得られた多元共重合体について、上記の方法により、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、共役ジエン単位(イソプレン単位)、非共役オレフィン単位(エチレン単位)、芳香族ビニル単位(スチレン単位)の含有量、融点(Tm)、吸熱ピークエネルギー、ガラス転移温度(Tg)及び結晶化度を、測定した。結果を第1表に示す。
また、得られた多元共重合体について、13C−NMRスペクトルを測定したところ、10〜24ppmにピークが観測されなかったことから、多元共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが確認された。
(製造例2:ゴム組成物の作製)
第2表に示す処方配合(質量部)にて、各成分を配合して混練し、サイドウォール用ゴム組成物A及びB、並びにインナーパッド用ゴム組成物a〜dを得た。得られたゴム組成物について、耐カット性を以下の方法で評価した。評価結果を第2表に示す。
(耐カット性の評価)
製造例で得られたゴム組成物A、B、a〜dについて、引張試験装置(株式会社島津製作所)を使用し、JIS K6252−1(2015)に従い、トラウザ形で引き裂き強度を測定した。ゴム組成物Bはゴム組成物Aの引き裂き強度を100とし、ゴム組成物b〜dはゴム組成物aの引き裂き強度を100としたときの、指数表示とした。
指数が大きいほど、耐カット性に優れることを意味する。
第2表に記載される、製造例2で用いた各成分は、以下の通りである。
*NR:TSR20
*BR:宇部興産社製、「UBEPOL 150L(商品名)」
*多元共重合体:製造例1で作製した多元共重合体である。
*カーボンブラック:カーボンブラックN234(東海カーボン株式会社製、「シースト7HM」(商標))
:ステアリン酸:新日本理化株式会社製、「ステアリン酸50S(商品名)」
*亜鉛華:ハクスイテック株式会社製、「3号亜鉛華(商品名)」
*老化防止剤:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、「ノクラック6C(商品名)」
*ワックス:マイクロクリスタリンワックス、「Selected Microcrystalline Wax(商品名)」、精工化学社製
*加硫促進剤:大内新興化学工業社製、「ノクセラーD(商品名)」
(実施例1〜3、比較例1及び2)
得られたゴム組成物を、第3表に示されるようにサイドウォール及びインナーパッドに適用して、空気入りタイヤを作製した。得られた空気入りタイヤについて、耐ブルーム性について、以下の評価基準により評価した。評価結果を第3表に示す。
(耐ブルーム性の評価)
得られた空気入りタイヤについて目視観察を行い、以下の基準で評価した。
1:ブルームの発生は確認できなかった。
2:ブルームの発生が確認された。
第2表及び第3表より、実施例1〜3の、多元共重合体を含むゴム組成物b〜dにより構成されるインナーパッドを有する空気入りタイヤは、優れた耐カット性を有し、また耐ブルーム性を有するものであった。
一方、サイドウォールに多元共重合体を含まないゴム組成物Aを用いた比較例1では、耐ブルーム性は優れていたものの、インナーパッドにも多元共重合体を含まないゴム組成物aを用いているため耐カット性の点で劣るものとなった。また、サイドウォールに多元共重合体を含むゴム組成物Bを用いた比較例2では、耐ブルーム性の点で劣るものとなった。
本発明によれば、優れた耐カット性及び耐ブルーム性を有する空気入りタイヤを提供することができ、該空気入りタイヤは、トラック用、バス用、オフザロード用(例えば、建設車両用、鉱山用等)、小型トラック(ライトトラック)用、産業車両用、航空機用等の重荷重用として、また乗用車用、軽乗用車用のタイヤとして好適に用いることができる。
1.空気入りタイヤ
2.サイドウォール部
3.ビード部
4.ビードコア
5.カーカス層
6.インナーライナー
7.インナーパッド
8.ベルト層

Claims (11)

  1. 共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位と、を含有する多元共重合体を含むゴム成分を含有するゴム組成物により構成されるインナーパッドを備える空気入りタイヤ。
  2. 前記ゴム組成物において、ゴム成分中の多元共重合体の含有量が、15質量%以上である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記共役ジエン単位の含有量が1mol%以上50mol%以下であり、前記非共役オレフィン単位の含有量が40mol%以上98mol%以下であり、前記芳香族ビニル単位の含有量が1mol%以上35mol%以下である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記共役ジエン単位が、1,3−ブタジエン単位及びイソプレン単位から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記共役ジエン単位が、イソプレン単位のみからなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記多元共重合体の主鎖が、非環状構造のみからなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記非共役オレフィン単位が、非環状の非共役オレフィン単位である請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記非環状の非共役オレフィン単位が、エチレン単位のみからなる請求項7に記載の空気入りタイヤ。
  9. 前記芳香族ビニル単位が、スチレン単位を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  10. 前記ゴム成分が、さらに天然ゴム及びブタジエンゴムから選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  11. 重荷重用タイヤに用いられる請求項1〜10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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