JP2020050810A - 重合体ラテックスおよび積層体 - Google Patents

重合体ラテックスおよび積層体 Download PDF

Info

Publication number
JP2020050810A
JP2020050810A JP2018183452A JP2018183452A JP2020050810A JP 2020050810 A JP2020050810 A JP 2020050810A JP 2018183452 A JP2018183452 A JP 2018183452A JP 2018183452 A JP2018183452 A JP 2018183452A JP 2020050810 A JP2020050810 A JP 2020050810A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
polymer layer
base material
latex
polymer latex
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018183452A
Other languages
English (en)
Inventor
健太郎 早坂
Kentaro Hayasaka
健太郎 早坂
伊賀 隆志
Takashi Iga
隆志 伊賀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Zeon Co Ltd filed Critical Nippon Zeon Co Ltd
Priority to JP2018183452A priority Critical patent/JP2020050810A/ja
Publication of JP2020050810A publication Critical patent/JP2020050810A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Gloves (AREA)
  • Lining Or Joining Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】酸や塩を用いることなく、比較的厚い重合体層を、クラックおよび剥離を生じさせることなく形成でき、しかも、装着性、柔軟性および耐摩耗性に優れ、溶剤に対する防護性が高い積層体を得ることができるとともに、保存安定性にも優れる重合体ラテックスを提供すること。【解決手段】重合体、ならびに、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、アルコキシ基またはヒドロキシアルコキシ基により置換されたセルロースを含有する重合体ラテックスを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、重合体ラテックスおよび積層体に関する。また、本発明は、上記積層体の製造方法にも関する。
従来、工場での製造作業、軽作業、工事作業、農作業等の様々な用途で、繊維製手袋をゴムや樹脂等により被覆することで、耐溶剤性、グリップ性、耐摩耗性等を向上させた保護手袋が用いられている。
このような保護手袋は、通常、人体と接触して使用されるものであるため、耐摩耗性などの機械的強度や耐久性に優れていることに加え、柔軟性に優れていることが求められている。
たとえば、特許文献1には、繊維基材に凝固剤溶液を付着させる凝固剤溶液付着工程と、前記凝固剤溶液を付着させた前記繊維基材に、重合体ラテックスを接触させて重合体を凝固させることで、前記繊維基材上に重合体層を形成する凝固工程と、を備え、前記凝固剤溶液として、溶媒中に、凝固剤としての金属塩0.2〜7.0重量%、および有機酸0.1〜7.0重量%を溶解または分散させてなるものを用いる積層体の製造方法が開示されている。
国際公開第2018/014029号
特許文献1に記載の方法によれば、優れた特性を有する積層体が得られるものの、比較的厚い重合体層を形成しようした場合の、重合体層の形成過程におけるクラックの抑制に改善の余地があった。保護手袋の重合体層にクラックがあると、保護手袋の装着性を損なう問題がある。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、酸や塩を用いることなく、比較的厚い重合体層を、クラックおよび剥離を生じさせることなく形成でき、しかも、装着性、柔軟性および耐摩耗性に優れ、溶剤に対する防護性が高い積層体を得ることができるとともに、保存安定性にも優れる重合体ラテックスを提供することを目的とする。
本発明者らは、比較的厚い重合体層を形成させようとした場合に、重合体層の形成過程においてクラックが生じやすい原因が、凝固剤溶液として、塩や酸を含有する溶液を用いることにあることを突き止めた。この理由は、酸や塩を含有する凝固剤溶液を用いて厚い重合体層を形成しようとすると、凝固が不均一に進みやすいためであると推測される。そこで、本発明者らは、酸や塩を用いることなく、比較的厚い重合体層を形成できる手段を鋭意検討したところ、非常に限られた種類のセルロースを用いた場合のみ、基材表面に比較的厚い重合体層を、クラックおよび剥離を生じさせることなく形成できること、このようにして得られた積層体が、装着性、柔軟性および耐摩耗性に優れ、溶剤に対する防護性が高いこと、さらには、このようなセルロースを用いても、重合体ラテックスの保存安定性が損なわれないこと、を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、重合体、ならびに、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、アルコキシ基またはヒドロキシアルコキシ基により置換されたセルロースを含有する重合体ラテックスが提供される。
本発明の重合体ラテックスにおいては、重合体がニトリルゴムであることが好ましい。
また、本発明によれば、基材と、上記の重合体ラテックスから形成された重合体層とを備える積層体が提供される。
また、本発明によれば、上記の積層体の製造方法であって、前記基材にアルコールを付着させるアルコール付着工程と、前記アルコールを付着させた前記基材に、重合体ラテックスを接触させて重合体を凝固させることにより、前記重合体層を形成するアルコール凝固工程と、を備える製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の積層体の製造方法であって、前記基材を加熱した状態で、前記重合体ラテックスに接触させて重合体を凝固させることにより、前記重合体層を形成する感熱凝固工程を備える製造方法が提供される。
本発明によれば、酸や塩を用いることなく、比較的厚い重合体層を、クラックおよび剥離を生じさせることなく形成でき、しかも、装着性、柔軟性および耐摩耗性に優れ、溶剤に対する防護性が高い積層体を得ることができるとともに、保存安定性にも優れる重合体ラテックスを提供することができる。
図1(A)は、重合体層を形成する前の繊維基材の断面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す繊維基材に重合体層が積層されてなる積層体の断面図である。
本発明の重合体ラテックスは、重合体、ならびに、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、アルコキシ基またはヒドロキシアルコキシ基により置換されたセルロースを含有する。
重合体ラテックスを構成する重合体としては、特に限定されないが、天然ゴム;ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエンを重合または共重合してなる共役ジエン系ゴム;等が挙げられる。これらの中でも、共役ジエン系ゴムが好ましい。共役ジエン系ゴムとしては、ニトリル基含有単量体を共重合してなるいわゆるニトリルゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等が挙げられ、これらの中でも、ニトリルゴムが特に好ましい。
ニトリルゴムとしては、特に限定されないが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体および必要に応じて用いられる共重合可能なその他の単量体を共重合したものを用いることができる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、特に限定されないが、ニトリル基を有し、炭素数が、好ましくは3〜18であるエチレン性不飽和化合物を用いることができる。このようなα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ハロゲン置換アクリロニトリルなどが挙げられ、これらの中でも、アクリロニトリルが特に好ましい。なお、これらのα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトリルゴムにおけるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%であり、さらに好ましくは30〜40重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲にすることにより、得られる積層体を、耐溶剤性に優れたものとすることができる。さらには、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲にすることにより、このようなニトリルゴムを含む重合体ラテックスを用いて重合体層を形成する場合に、ニトリルゴムがより良好にゲル化および凝固し、重合体層がより良好に形成され、これにより、得られる積層体を、保護手袋等として手に装着して使用する際に、手への不快な感触をより低減することができるようになり、装着時の快適性をより向上させることができる。
また、ニトリルゴムとしては、ゴム弾性を付与するという観点より、共役ジエン単量体単位を含有するものが好ましい。共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン単量体は、1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン単量体単位の含有割合は、ニトリルゴムを構成する全単量体単位に対して、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは52〜78重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲にすることにより、得られる積層体を、より柔軟性に優れたものとすることができる。
また、ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する単量体、および共役ジエン単量体単位を形成する単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体を含んでいてもよい。
このような共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体、リン酸基含有エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸およびその無水物;マレイン酸メチル、イタコン酸メチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;などが挙げられる。
スルホン酸基含有エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されないが、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
リン酸基含有エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸−2−リン酸エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸などが挙げられる。
これらの共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもでき、また、1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の共重合可能なその他のエチレン性不飽和酸単量体のなかでも、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
重合体ラテックスは、たとえば、上記の単量体を含有してなる単量体混合物を乳化重合することにより得ることができる。乳化重合に際しては、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の重合副資材を使用することができる。
乳化重合に用いる乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤などが挙げられるが、凝固をより適切に進行させるという観点より、ノニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、曇点が常温以上、100℃以下の水溶性のノニオン性高分子が好ましい。ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどが挙げられる。
乳化重合に用いる乳化剤の使用量は、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜8重量部である。
重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル開始剤が好ましい。ラジカル開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などが挙げられ、これらの中でも、無機過酸化物または有機過酸化物が好ましく、無機過酸化物がより好ましく、過硫酸塩が特に好ましい。これらの重合開始剤は、1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.05〜1.5重量部である。
分子量調整剤としては、特に限定されないが、たとえば、α−メチルスチレンダイマー;t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物;などが挙げられ、これらの中でも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。これらの分子量調整剤は、1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分子量調整剤の使用量は、その種類によって異なるが、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜1.5重量部、より好ましくは0.2〜1.0重量部である。
乳化重合は、通常、水中で行なわれる。水の使用量は、使用する全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜200重量部である。
乳化重合に際し、必要に応じて、上記以外の重合副資材をさらに用いてもよい。重合副資材としては、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等が挙げられ、これらの種類、使用量とも特に限定されない。
単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。
また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。
乳化重合する際の重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜95℃であり、好ましくは5〜70℃である。重合時間は、特に限定されないが、通常、5〜40時間程度である。
重合停止剤は、通常、乳化重合において使用されているものであれば、特に限定されないが、その具体例としては、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のヒドロキシアミン化合物;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム;ハイドロキノン誘導体;カテコール誘導体;ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸等の芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩等の芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸化合物;等が挙げられる。
重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、使用する全単量体100重量部に対して、0.05〜2重量部である。
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整してもよい。
重合体ラテックスを構成する重合体の粒子の重量平均粒子径は、通常、30〜1000nm、好ましくは50〜500nm、より好ましくは70〜200nmである。重合体の粒子の重量平均粒子径を上記範囲にすることにより、重合体ラテックスの粘度が適度なものとなって重合体ラテックスの取扱性がより向上するとともに、重合体層を成形する際の成形性が向上してより均質な重合体層を有する積層体が得られるようになる。
本発明の重合体ラテックスは、上記の重合体に加えて、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、アルコキシ基またはヒドロキシアルコキシ基により置換されたセルロースを含有する。本発明の重合体ラテックスは、グルコース単位の置換可能な3つの水酸基のうち、少なくとも1つがアルコキシ基およびヒドロキシアルコキシ基のいずれか一方または両方により置換されたセルロースを含有することから、酸や塩を用いることなく、重合体ラテックス中の重合体を凝固させて、比較的厚い重合体層を、クラックおよび剥離を生じさせることなく形成できるとともに、十分な保存安定性をも有している。
本発明で用いるセルロースには、グルコース単位中の水酸基がアルコキシ基のみにより置換されたもの、グルコース単位中の水酸基がヒドロキシアルコキシ基のみにより置換されたもの、グルコース単位中の水酸基がアルコキシ基およびヒドロキシアルコキシ基の両方により置換されたものが含まれる。
グルコース単位中の水酸基を置換するアルコキシ基またはヒドロキシアルコキシ基としては、特に限定されないが、重合体ラテックスを用いて重合体層を形成する場合に、重合体がより良好にゲル化および凝固し、重合体層がより良好に形成されることから、カルボキシ基などのイオン性基で置換されていないものが好ましい。
アルコキシ基およびヒドロキシアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜4である。アルコキシ基としては、メトキシ基(−OCH)が好ましい。また、ヒドロキシアルコキシ基としては、ヒドロキシプロポキシ基(−OCHCHOHCH)、ヒドロキシエトキシ基(−OCHCHOH)が好ましい。
セルロースとしては、水溶性のセルロースであれば特に限定されないが、たとえば、メチルセルロース等のアルキルセルロース類;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース類等が挙げられる。
セルロースとしては、なかでも、重合体ラテックスを用いて重合体層を形成する場合に、重合体がより良好にゲル化および凝固し、重合体層がより良好に形成されることから、アルキルセルロース類、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース類が好ましく、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。
セルロースのゲル化温度(ゲル化点)は、重合体ラテックスを用いて重合体層を形成する場合に、重合体がより良好にゲル化および凝固し、重合体層がより良好に形成されることから、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、90℃以下であってよい。セルロースのゲル化温度は、2質量%のセルロース水溶液を1℃/分で加熱して、粘度が急激に変化し始める温度である。
本発明で用いるセルロースとしては、グルコース単位中の水酸基の水素原子が、カルボキシメチル基などのカルボキシアルキル基により置換されていないセルロースが好ましい。グルコース単位中の水酸基の水素原子の一つでもカルボキシアルキル基により置換されていると、重合体を適切にゲル化および凝固させられず、重合体層におけるクラックの発生を十分に抑制できないおそれがある。
セルロースとしては、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、アルコキシ基により置換されているものが好ましい。この場合のアルコキシ基の置換度は、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.3〜2.2である。アルコキシ基の置換度とは、グルコース単位あたりのアルコキシ基で置換された水酸基の平均個数であり、H−NMR、13C−NMRなどを用いて測定できる。
また、セルロースとしては、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、ヒドロキシアルコキシ基により置換されているものが好ましく、アルコキシ基およびヒドロキシアルコキシ基の両方により置換されているものがより好ましい。この場合のヒドロキシアルコキシ基の置換モル数は、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.1〜0.3、さらに好ましくは0.2〜0.3である。ヒドロキシアルコキシ基の置換モル数とは、グルコース単位あたりに付加したヒドロキシアルコキシ基の平均モル数であり、H−NMR、13C−NMRなどを用いて測定できる。
セルロースとして、好適なものとしては、たとえば、
グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、メトキシ基(−OCH)により置換されており、グルコース単位あたりのメトキシ基の置換度が、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.3〜2.2であるメチルセルロース、
グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、メトキシ基およびヒドロキシプロポキシ基(−OCHCHOHCH)の両方により置換されており、グルコース単位あたりのメトキシ基の置換度が、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.3〜2.2であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数が、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.1〜0.3、さらに好ましくは0.2〜0.3であるヒドロキシプロピルメチルセルロース、
グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、メトキシ基およびヒドロキシエトキシ基(−OCHCHOH)の両方により置換されており、グルコース単位あたりのメトキシ基の置換度が、好ましくは1.0〜2.5、より好ましくは1.3〜2.2であり、ヒドロキシエトキシ基の置換モル数が、好ましくは0.05〜0.4、より好ましくは0.1〜0.4、さらに好ましくは0.1〜0.3、特に好ましくは0.2〜0.3であるヒドロキシエチルメチルセルロース、
などを挙げることができる。
置換度および置換モル数が上記の範囲内にあるセルロースは、適度な水溶性を有することから、このようなセルロースを用いることにより、重合体ラテックスの調製が容易になるとともに、重合体ラテックスを用いて重合体層を形成する場合に、重合体がより良好にゲル化および凝固し、重合体層がより良好に形成される。
本発明の重合体ラテックス中のセルロースの含有量としては、重合体の凝固を一層円滑に進行させ、クラックの発生を一層抑制できることから、重合体100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜8重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。なお、セルロースは、重合体ラテックスを凝固させる作用を示す他、重合体ラテックスを増粘させるための増粘剤としての作用をも有する。そのため、重合体ラテックスを適切な粘度に調整するという観点からも、セルロースの含有量が上記範囲内にあることが好ましい。
本開示の重合体ラテックスは、架橋剤をさらに含有することが好ましい。
架橋剤としては、硫黄系架橋剤を用いることが好ましい。硫黄系架橋剤としては、特に限定されないが、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらの架橋剤は、1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の含有量は、重合体ラテックス中に含まれる重合体100重量部に対し、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。
重合体ラテックスとして、架橋剤を添加したものを用いる場合には、重合体ラテックスとして、予め熟成(前加硫ともいう。)させたものを用いてもよい。
また、架橋剤として硫黄を使用する場合には、架橋促進剤(加硫促進剤)や、酸化亜鉛を併用することが好ましい。
架橋促進剤(加硫促進剤)としては、特に限定されないが、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホリニル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられ、これらの中でも、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。これらの架橋促進剤は、1種単独を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋促進剤の含有量は、重合体ラテックス中に含まれる重合体100重量部に対し、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
また、酸化亜鉛の含有量は、重合体ラテックス中に含まれる重合体100重量部に対し、好ましくは5重量部以下、より好ましく0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。
本発明の重合体ラテックスは、ポリオールを含有することも好ましい。ポリオールを含有することにより、より一層厚い重合体層を、クラックを発生させることなく、容易に形成することができる。ポリオールとしては、炭素数2〜12の多価アルコールが挙げられ、たとえば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、シュクロース、ペンタエリトリトール、ソルビタン等が挙げられる。
ポリオールの含有量は、重合体ラテックス中に含まれる重合体100重量部に対し、好ましく0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。
また、重合体ラテックスには、増粘剤を適宜配合してもよい。このような増粘剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系化合物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;ポリカルボン系酸化合物およびそのナトリウム塩;ポリエチレングリコールエーテル等のポリオキシエチレン誘導体;等が挙げられる。
重合体ラテックスの固形分濃度は、通常、20〜65重量%であり、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは35〜55重量%である。重合体ラテックスの固形分濃度を上記範囲にすることにより、ラテックスの輸送効率を向上させることができ、かつ、重合体ラテックスの粘度が適度なものとなって重合体ラテックスの取扱性が向上する。
重合体ラテックスのpHは、通常、5〜13であり、好ましくは7〜10、より好ましくは7.5〜9である。重合体ラテックスのpHを上記範囲にすることにより、機械的安定性が向上して重合体ラテックスの移送時における粗大凝集物の発生を抑制することができ、かつ、重合体ラテックスの粘度が適度なものとなって重合体ラテックスの取扱性が向上する。
重合体ラテックスの25℃における粘度は、通常、2,000〜100,000mPa・sであり、好ましくは2,500〜50,000mPa・sであり、より好ましくは3,000〜20,000mPa・sであり、さらに好ましくは4,000〜20,000mPa・sであり、特に好ましくは5,000〜20,000mPa・sである。重合体ラテックスの25℃における粘度は、たとえば、B型粘度計を用いて、25℃、回転数6rpmの条件で測定することができる。また、重合体ラテックスの25℃における粘度は、たとえば、重合体ラテックス中における重合体濃度を調整する方法や、重合体ラテックスに対し、増粘作用を有する化合物を添加する方法などにより、調整できる。
重合体ラテックスには、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどの充填剤を添加してもよい。また、重合体ラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、湿潤剤、分散剤、顔料、染料、補強剤、pH調整剤などの各種添加剤を所定量添加することもできる。
本発明の積層体は、基材と、上記の重合体ラテックスから形成された重合体層とを備える。本発明の積層体は、柔軟性が必要とされる用途に用いることができ、特に限定されないが、たとえば、基材として繊維基材を用いて、繊維基材と重合体層とを備える積層体として用いることが好ましく、作業用手袋、特に家庭用、農業用、漁業用および工業用などの保護手袋などの人体と接触して用いられるものとして用いることが特に好ましい。
繊維基材としては、繊維製のものであればよく、特に限定されないが、綿、毛、麻、羊毛などの天然繊維、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、ナイロンなどの合成繊維などを素材として用いることができ、これらの中でも、ナイロンを用いることが好ましい。また、繊維基材は、編まれたものであってもよいし、縫製されたものであってもよく、織布であっても、不織布であってもよい。
繊維基材の厚み(後述する繊維基材の基材層平均厚みd)は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜3.00mm、より好ましくは0.02〜2.00mm、さらに好ましくは0.03〜1.5mmである。繊維基材の線密度は、特に限定されないが、好ましくは50〜500デニールである。繊維基材のゲージ数は、特に限定されないが、好ましくは7〜18ゲージである。ここで、ゲージ数は、1インチの間にある編機の針の数をいう。
本発明の積層体においては、図1(B)に示すように、重合体層の一部が繊維基材の表面上に形成されており、前記重合体層の残部が繊維基材を構成する繊維の隙間に浸透した構成とすることが好ましい。なお、図1(A)は、重合体層を形成する前の繊維基材の断面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す繊維基材に重合体層が積層されてなる積層体の断面図である。図1(B)においては、重合体層が、その一部が、繊維基材を構成する繊維の間に浸透した状態で繊維基材を被覆して形成されている例を示している。そして、この図1(B)においては、積層体を構成する重合体層のうち、繊維基材の表面から繊維の隙間に浸透した部分を浸透重合体層とし、また、重合体層のうち、繊維基材の表面から繊維基材を被覆する部分を表面重合体層として示している。なお、本発明においては、重合体層を、適宜、浸透重合体層および表面重合体層からなるものとして説明するが、通常、これら浸透重合体層および表面重合体層は、一体として形成されることとなる。以下、図1(A)、図1(B)を適宜参照しながら、説明する。
本発明の積層体における、基材上に形成される重合体層の、基材表面からの厚み(図1(B)に示す表面重合体層の厚みt)は、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは180μm以上である。また、溶剤に対する防護性をより適切に高めるという観点からは、基材表面からの厚みtは、特に好ましくは200μm以上、最も好ましくは400μm以上である。表面重合体層の厚みtを上記範囲とすることにより、得られる積層体を保護手袋として用いた場合における耐久性がより向上する。なお、表面重合体層の厚みtの上限は、特に限定されないが、好ましくは5000μm以下、より好ましくは3000μm以下、さらに好ましくは2000μm以下である。
また、本発明の製造方法により得られる積層体における、基材上に形成される重合体層の、基材内部に浸透した部分の厚み(図1(B)に示す浸透重合体層の厚みt)は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。基材内部に浸透した部分の厚み(図1(B)に示す浸透重合体層の厚みt)を上記範囲とすることにより、基材内部に浸透した部分(図1(B)に示す浸透重合体層)が形成されることによる効果、すなわち、耐摩耗性の向上効果、および溶剤に対する防護性の向上効果をより高めることができる。なお、基材上に形成される重合体層の、基材内部に浸透した部分の厚み(図1(B)に示す浸透重合体層の厚みt)の上限としては特に限定されないが、重合体層が基材の裏面まで到達してしまう裏抜けを防止するという観点より、基材の厚み(図1(B)に示す繊維基材の基材層平均厚みd)未満であることが好ましく、柔軟性の観点から、3,000μm以下であることがより好ましく、2,000μm以下であることがさらに好ましい。なお、重合体層が基材の裏面まで到達してしまう裏抜けが発生すると、装着性が低下してしまう場合や、積層体の生産性が低下(たとえば、基材を所定の型に装着した状態で、基材に重合体ラテックスを付着させることにより重合体層を形成する場合に、裏抜けにより重合体ラテックスが型に付着してしまい、得られる積層体を型から脱着しづらくなることによる生産性の低下)してしまう場合がある。
また、重合体層の全体の厚み、すなわち、浸透重合体層の厚みtおよび表面重合体層の厚みtの合計は、特に限定されないが、好ましくは150μm以上、より好ましくは400μm以上、さらに好ましくは650μm以上である。
さらに、基材上に形成される重合体層の、基材表面からの厚み(図1(B)に示す表面重合体層の厚みt)に対する、基材上に形成される重合体層の、基材内部に浸透した部分の厚み(図1(B)に示す浸透重合体層の厚みt)の比(t/t)は、装着性、柔軟性、および耐摩耗性を高度にバランスさせるという観点より、好ましくは0.001〜15であり、より好ましくは0.005〜10、さらに好ましくは0.01〜5である。
また、本発明の製造方法により得られる積層体の装着性、柔軟性、および耐摩耗性を高度にバランスさせるという観点より、基材の厚み(図1(B)に示す繊維基材の基材層平均厚みd)に対する、基材上に形成される重合体層の、基材表面からの厚み(図1(B)に示す表面重合体層の厚みt)の比(t/d)は、好ましくは0.1〜300であり、より好ましくは0.15〜30、さらに好ましくは0.2〜15である。また、積層体の全厚み(図1(B)に示す表面重合体層の厚みtと、繊維基材の基材層平均厚みdとの合計)は、好ましくは0.2〜8mm、より好ましくは0.2〜4.5mmである。なお、繊維基材は、そのミクロ構造においては、繊維の重なり度合いが密になっている部分と、繊維の重なり度合いが疎になっている部分とで、その厚みが異なる場合があるが、図1(B)に示す繊維基材の基材層平均厚みdは、繊維基材について、繊維の重なり度合いが密になっている部分の厚みを、その厚みとした平均値として、求めることとする。
本発明の積層体は、たとえば、
アルコールを付着させた基材を、重合体ラテックスに接触させ、接触させた重合体ラテックスを、アルコールの作用により凝固させる方法(アルコール凝固法)、
基材を加熱した状態としながら、重合体ラテックスに接触させ、接触させた重合体ラテックスを、基材の熱により凝固させる方法(感熱凝固法)、
などにより、製造することができる。
まず、基材として繊維基材を用いたアルコール凝固法について説明する。アルコール凝固法を用いた積層体の製造方法は、好適には、基材にアルコールを付着させるアルコール付着工程と、前記アルコールを付着させた前記基材に、重合体ラテックスを接触させて重合体を凝固させることにより、前記重合体層を形成するアルコール凝固工程と、を備える。
アルコールとしては、重合体ラテックス中の重合体を凝固させることができるものであればよく、特に限定されず、たとえば、メタノール、エタノール、プロノール、ブタノールなどの炭素数が1〜10のアルコールなどが挙げられる。
アルコール付着工程では、アルコールに加えて、たとえば、水などの他の成分を用いてもよいが、凝固剤として知られている酸や塩を用いないことが好ましい。使用が好ましくない酸としては、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸が挙げられる。また、使用が好ましくない塩としては、硝酸、硫酸、酢酸、塩酸などの酸の金属塩が挙げられる。これらの金属塩の具体例としては、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸亜鉛等の硝酸塩;塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等のハロゲン化金属塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;等が挙げられる。
アルコールを基材に付着させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、基材(繊維基材)をアルコールに浸漬させる方法が挙げられる。
繊維基材をアルコールに浸漬させる場合における浸漬時間は、特に限定されないが、好ましくは30〜1秒間、より、好ましくは10〜1秒間である。
また、繊維基材をアルコールに付着させる際には、繊維基材を、所望の形状の浸漬用型に被せた状態で、アルコールに浸漬させることが好ましい。
繊維基材を被せる浸漬用型としては、特に限定されないが、材質は磁器製、ガラス製、金属製、プラスチック製など種々のものを用いることができる。浸漬用型の形状は、最終製品の形状に合わせて、所望の形状とすればよい。たとえば、積層体を保護手袋として使用する場合には、繊維基材を被せる浸漬用型として、手首から指先までの形状を有する浸漬用型など、各種の手袋用の浸漬用型を用いることが好ましい。
また、予め基材を加熱(予熱ともいう)しておき、浸漬用型上に支持された繊維基材を、加熱した状態で、アルコールに接触させてもよい。アルコールに接触させる際における、基材の温度(予熱温度ともいう)は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜95℃、さらに好ましくは45〜90℃、特に好ましくは50〜90℃、最も好ましくは55〜90℃である。
アルコール付着工程においては、繊維基材にアルコールを付着させ、次いで、アルコールを付着させた前記繊維基材に、重合体ラテックスを接触させて、重合体を凝固させることで、重合体層を形成することができる。この際には、重合体ラテックスの一部が繊維基材を構成する繊維の間に浸透しながら、重合体ラテックス中の重合体が凝固し、これにより繊維基材上に重合体層が形成され、積層体が得られる。そのため、得られる積層体は、図1(A)および図1(B)に示すように、繊維基材の表面上に重合体層が形成されるとともに、重合体層の一部が繊維基材を構成する繊維の隙間まで浸透したものとなる。
アルコールが付着した繊維基材に重合体ラテックスを接触させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、アルコールが付着した繊維基材を、重合体ラテックスに浸漬させる方法などが挙げられる。
また、アルコールが付着した繊維基材を重合体ラテックスに浸漬させる際には、アルコールが付着した繊維基材を、所望の形状の浸漬用型に被せた状態で、重合体ラテックスに浸漬させることが好ましい。この際においては、予め繊維基材を所望の形状の浸漬用型に被せた状態で、上述したように繊維基材にアルコールを付着させて、その後、アルコールが付着した繊維基材を、浸漬用型に被せたまま、重合体ラテックスに浸漬させることが好ましい。
また、本発明の製造方法においては、アルコールが付着した繊維基材を重合体ラテックスに浸漬させた後、乾燥を行うことが好ましい。この際における乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜80℃である。また、乾燥時間は、特に限定されないが、好ましくは120分間〜5秒間、より好ましくは60分間〜10秒間である。
次に、基材として繊維基材を用いた感熱凝固法について説明する。感熱凝固法を用いた積層体の製造方法は、好適には、基材を加熱した状態で、前記重合体ラテックスに接触させて重合体を凝固させることにより、前記重合体層を形成する感熱凝固工程を備える。
感熱凝固法を用いた積層体の製造方法においては、基材を加熱した状態で、重合体ラテックスに接触させることで、重合体ラテックスを、基材の表面に付着させ、基材表面に付着した重合体ラテックスが、加熱された基材に接触することで、基材表面に付着した重合体ラテックスのゲル化および凝固が進行し、これにより、重合体層を形成することができる。この際には、重合体ラテックスの一部が繊維基材を構成する繊維の間に浸透しながら、重合体ラテックス中の重合体が凝固し、これにより繊維基材上に重合体層が形成され、積層体が得られる。そのため、得られる積層体は、図1(A)および図1(B)に示すように、繊維基材の表面上に重合体層が形成されるとともに、重合体層の一部が繊維基材を構成する繊維の隙間まで浸透したものとなる。
基材を重合体ラテックスに接触させる方法としては、特に限定されないが、基材を重合体ラテックス中に浸漬させる方法などが挙げられる。また、基材を重合体ラテックス中に浸漬させる際には、所望の形状の浸漬用型上に基材を装着等によって支持した状態で、重合体ラテックスに浸漬させてもよく、この際には、基材だけでなく型も加熱してもよい。
感熱凝固法において用いる浸漬用型としては、特に限定されず、アルコール凝固法において用いる浸漬用型として例示したものを挙げることができる。
基材を重合体ラテックスに接触させる際には、予め基材を加熱(予熱ともいう)しておき、浸漬用型上に支持された繊維基材を、加熱した状態で、重合体ラテックスに接触させる。重合体ラテックスに接触させる際における、基材の温度(予熱温度ともいう)は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜95℃、さらに好ましくは45〜90℃、特に好ましくは50〜90℃、最も好ましくは55〜90℃である。基材の予熱温度を上記範囲とすることにより、重合体ラテックスに接触させる直前の基材の温度を以下の好ましい範囲とすることができる。重合体ラテックスに接触させる直前の基材の温度は、好ましくは25〜100℃、より好ましくは35〜95℃、さらに好ましくは40〜90℃、特に好ましくは45〜90℃、最も好ましくは50〜90℃である。基材の温度を上記範囲とすることにより、重合体ラテックスを用いて感熱凝固法により重合体層を形成する場合に、重合体層をより適切に形成することができる。
また、基材を重合体ラテックスに接触させた後、基材に付着した重合体ラテックスを乾燥させることが好ましい。この際における乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜80℃である。また、乾燥時間は、特に限定されないが、好ましくは5秒間〜120分間、より好ましくは10秒間〜60分間である。
上記の積層体の製造方法においては、アルコール凝固法および感熱凝固法のいずれの製造方法においても、重合体ラテックスとして、架橋剤を添加したものを用いる場合には、繊維基材に付着した重合体ラテックスを加熱することにより、重合体ラテックスを構成する重合体を架橋させることが好ましい。
架橋のための加熱温度は、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90〜150℃である。加熱温度を上記範囲にすることにより、架橋反応に要する時間を短くして積層体の生産性を向上させることができるとともに、過剰な加熱による重合体の酸化劣化を抑制して、得られる積層体の物性を向上させることができる。架橋のための加熱時間は、加熱温度に応じて適宜選択すればよいが、通常、5〜120分である。
また、繊維基材上に重合体層を形成した後、重合体層を20〜80℃の温水に0.5〜60分程度浸漬することにより、重合体層から水溶性不純物(乳化剤、セルロースなど)を除去しておくこともできる。重合体ラテックスとして、架橋剤を添加したものを用いる場合には、このような重合体層を温水に浸漬させる処理は、重合体層の重合体を架橋させた後に行なってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、重合体層の重合体を架橋させる前に行なうのが好ましい。
また、繊維基材を浸漬用型に被せた状態で重合体層を形成した場合には、重合体層が形成された繊維基材を、浸漬用型から取り外すことによって、積層体を得ることができる。浸漬用型から取り外す方法としては、手で浸漬用型から剥したり、水圧や圧縮空気の圧力により剥したりする方法を採用することができる。
積層体を浸漬用型から取り外した後には、さらに60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理(後架橋工程)を行ってもよい。また、積層体の内側および/または外側の表面に、塩素化処理やコーティング処理などによる表面処理層を形成してもよい。
このようにして得られた積層体は、凝固剤として酸や塩を用いることなく、特定のセルロースを用いて製造されたものであることから、重合体層が厚い場合であっても、重合体層がクラックを有しておらず、基材と重合体層とが強固に接着しており、しかも、装着性、柔軟性および耐摩耗性に優れ、溶剤に対する防護性が高い。
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
ディップ成形用ラテックス組成物の粘度
B型粘度計を使用して、温度25℃において、20,000mPa・sまではローターM3を使用して回転数6rpmの条件で、測定した。20,000mPa・s以上はローターM4を使用して回転数6rpmの条件で測定した。
ディップ成形用ラテックス組成物の保存安定性
ディップ成形用ラテックス組成物を30〜40℃で保存して、重合体の凝固の有無を目視により観察した。調製後24時間以内に凝固物が観察された場合には、その時間を記録した。
表面重合体層の厚みt 、および浸透重合体層の厚みt
保護手袋(積層体)について、中指の先から12cmの掌部分の重合体層が積層された断面を、光学顕微鏡(製品名「VHX−200」、キーエンス社製)を用いて観察することで、表面重合体層の厚みt、および浸透重合体層の厚みtを測定した。具体的な測定方法について図1を参照して説明すると、表面重合体層の厚みtは、繊維基材の表面から、重合体層の表面までの距離を、10カ所測定し、測定結果の数平均値を算出することにより求めた。また、浸透重合体層の厚みtは、繊維基材の表面から、浸透したゴムの最深部までの距離を、10カ所測定し、測定結果の数平均値を算出することにより求めた。
表面重合体層のクラック
保護手袋(積層体)について、表面重合体層の観察を目視にて行い、クラックの有無を評価した。
表面重合体層の界面の剥離
表面重合体層の界面の剥離の有無を、保護手袋(積層体)について、中指の先端から掌部分にかけて12cmにわたる部分の重合体層が積層された断面を目視にて観察を行い剥離の有無を評価した。
裏抜け
保護手袋(積層体)について、繊維基材の一方の面から浸透した重合体層の少なくとも一部が、繊維基材を貫通しての他方の面まで到達しているか否かを目視にて確認することで、裏抜けの有無を評価した。
装着性
装着性の評価は、保護手袋(積層体)を、実際に手に着用して清掃や運搬等の簡易的な作業した後、手に感じる疲労感をアンケートすることにより行った。10人を対象として実施し、着用時に疲労を感じた人数を集計し、装着時疲労度として以下の基準で評価した。
良好:疲労を感じた人数が3人未満
可:疲労を感じた人数が3人以上6人未満
不良:疲労を感じた人数が6人以上
柔軟性
保護手袋(積層体)を10人にそれぞれ着用してもらい、その柔軟性を下記の3段階の評価点で評価してもらい、評価点の平均値を求め、評価点の平均値が最も近いものを、各実施例における評価点とした(たとえば、平均値が2.8である場合には、「3:柔らかい」等とした。)。
3:柔らかい
2:やや硬い
1:硬い
耐摩耗性
摩耗試験はEN388に記載の方法に則って、マーチンデール式摩耗試験機(製品名「STM633」、SATRA社製)を用いて評価を実施した。具体的には、保護手袋(積層体)について、所定の加重をかけながら摩擦を繰り返し、破損までの摩擦回数を得た。破損に至るまでの摩擦回数に従い、LEVEL 0からLEVEL 4までのレベルに分けられ、レベルが高いほど耐摩耗性に優れる。
LEVEL 4:回転数8,000回転以上
LEVEL 3:回転数2,000回転以上、8,000回転未満
LEVEL 2:回転数500回転以上、2,000回転未満
LEVEL 1:回転数100回転以上、500回転未満
LEVEL 0:回転数100回転未満
耐メタノール透過性
EN374−3に記載の方法に則って、メタノールの透過試験を行った。試験は、保護手袋(積層体)の表面重合体層形成面をメタノールに接した状態として行い、LEVEL 0からLEVEL 4までのレベルに分けた。レベルが高いほど耐メタノール透過性に優れるため、溶剤に対する防護性が高いと言える。
LEVEL 4:透過時間120分以上
LEVEL 3:透過時間60分以上、120分未満
LEVEL 2:透過時間30分以上、60分未満
LEVEL 1:透過時間10分以上、30分未満
LEVEL 0:透過時間10分未満
実施例1
ディップ成形用ラテックス組成物の調製
アクリロニトリル単位の含有割合が35重量%であるニトリルゴムのラテックス(商品名「Nipol LX511A」、日本ゼオン社製)に、ラテックス中のニトリルゴム100部に対して、それぞれ固形分換算で、メチルセルロース(商品名「メトローズ SM−4000」、信越化学工業社製、ゲル化点55℃)1.00部、消泡剤(商品名「SM5512」、東レ・ダウコーニング社製)0.01部、コロイド硫黄(細井化学工業社製)1.00部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業社製)0.50部、酸化亜鉛1.50部、および酸化チタン3.00部となるように、各配合剤の水分散液を調製し、調製した水分散液を添加し、重合体ラテックスを得た。なお、各配合剤の水分散液を添加する際には、ラテックスを撹拌した状態で、各配合剤の水分散液を所定の量をゆっくり添加した。その後、重合体ラテックスの固形分濃度を45重量%に調整した。得られたディップ成形用ラテックス組成物の粘度を測定し、保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
保護手袋(積層体)の製造
上記にて得られたディップ成形用ラテックス組成物を、温度30〜40℃、48時間の条件で、熟成(前加硫ともいう。)した。
得られたディップ成形用ラテックス組成物を用いて、金属製手袋型に被せた手袋形状の繊維基材(材質:ナイロン、繊維基材の基材層平均厚みd:0.70mm、13ゲージ))に対して、感熱凝固法により、重合体層を形成した。具体的には、金属製手袋型に被せた繊維基材を、67℃に予熱した後、上記のディップ成形用ラテックス組成物に2秒間浸漬し、ディップ成形用ラテックス組成物から引き上げた。なお、ディップ直前の繊維基材の温度は、67℃であった。その後、繊維基材に付着したディップ成形用ラテックス組成物を、温度80℃、30分間の条件で乾燥させることで重合体層を形成した。次いで、温度100℃、60分間の条件で熱処理を行うことで、重合体層中のニトリルゴムに架橋処理を施し、重合体層を形成した。次いで、重合体層が形成された繊維基材を金属製手袋型から剥がすことで、保護手袋(積層体)を得た。得られた保護手袋(積層体)について、上述した方法に従い、各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
メチルセルロースに代えて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「メトローズ 65SH−50」、信越化学工業社製、ゲル化点55℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形用ラテックス組成物および保護手袋(積層体)を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例3
実施例1で得られたディップ成形用ラテックス組成物を、温度30〜40℃、48時間の条件で、熟成(前加硫ともいう。)した。
金属製手袋型に被せた手袋形状の繊維基材(実施例1で用いたものと同じ)を、67℃に加熱した状態で、メタノールに5秒間浸漬し、メタノールから引き上げた。次に、メタノールを付着させた繊維基材を、上記のディップ成形用ラテックス組成物に5秒間浸漬し、ディップ成形用ラテックス組成物から引き上げた。なお、ディップ直前の繊維基材の温度は、27℃であった。その後、繊維基材に付着したディップ成形用ラテックス組成物を、温度80℃、30分間の条件で乾燥させることで重合体層を形成した。次いで、温度100℃、60分間の条件で熱処理を行うことで、重合体層中のニトリルゴムに架橋処理を施し、重合体層を形成した。次いで、重合体層が形成された繊維基材を金属製手袋型から剥がすことで、保護手袋(積層体)を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
実施例4
実施例1で得られたディップ成形用ラテックス組成物に代えて、実施例2で得られたディップ成形用ラテックス組成物を用いた以外は、実施例3と同様にして、保護手袋(積層体)を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
比較例1
メチルセルロース1.00部に代えて、乳化剤としてのポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名「エマルゲン 709」、ノニオン性界面活性剤、曇点56℃、花王社製)2.50部、感熱凝固剤としてのポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名「TPA 4380」、東芝シリコーン社製、曇点38℃)0.45部を用いた以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形用ラテックス組成物を得た。得られたディップ成形用ラテックス組成物を、温度30℃、48時間の条件で、熟成した以外は、実施例1と同様にして、保護手袋(積層体)を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
比較例2
ディップ成形用ラテックス組成物の調製
メチルセルロース1.00部に代えて、カルボキシメチルセルロース(商品名「Daicel 2200」、ダイセルファインケム社製)0.40部を用いた以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形用ラテックス組成物を得た。得られたディップ成形用ラテックス組成物の粘度を測定し、保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
保護手袋(積層体)の製造
上記にて得られたディップ成形用ラテックス組成物を、温度30℃、48時間の条件で、熟成(前加硫ともいう。)した。
金属製手袋型に被せた手袋形状の繊維基材(実施例1で用いたものと同じ)を、67℃に加熱した状態で、凝固剤溶液としての硝酸カルシウムのメタノール溶液(硝酸カルシウム濃度:2.0重量%)に5秒間浸漬し、凝固剤溶液から引き上げた後、温度30℃、1分間の条件で乾燥させた。乾燥後の繊維基材を、上記のディップ成形用ラテックス組成物に5秒間浸漬し、ディップ成形用ラテックス組成物から引き上げた。なお、ディップ直前の繊維基材の温度は、27℃であった。その後、繊維基材に付着したディップ成形用ラテックス組成物を、温度80℃、30分間の条件で乾燥させることで重合体層を形成した。次いで、温度100℃、60分間の条件で熱処理を行うことで、重合体層中のニトリルゴムに架橋処理を施し、重合体層を形成した。次いで、重合体層が形成された繊維基材を金属製手袋型から剥がすことで、保護手袋(積層体)を得た。得られた保護手袋(積層体)について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
比較例3
実施例1で得られたディップ成形用ラテックス組成物に代えて、比較例2で得られたディップ成形用ラテックス組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、保護手袋(積層体)を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
Figure 2020050810
表1に示すように、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、アルコキシ基またはヒドロキシアルコキシ基により置換されたセルロースを含有するディップ成形用ラテックス組成物(重合体ラテックス)は、24時間以上保存しても、凝固物が観察されず、保存安定性に優れていた。また、得られた積層体の表面重合体層には、クラックおよび剥離が観察されなかった。さらに、得られた積層体は、装着性、柔軟性、耐摩耗性および耐メタノール透過性(溶剤に対する防護性)にも優れたものであった(実施例1〜4)。
一方、感熱凝固剤としてのポリエーテル変性シリコーンオイルを含有するディップ成形用ラテックス組成物は、保存中に凝固物が生成し、保存安定性に劣っていた(比較例1)。
また、セルロースであっても、グルコース単位中の水酸基の水素原子の一部が、カルボキシメチル基 (−CH−COOH)で置換されたカルボキシメチルセルロースを用いた場合には、得られる積層体の表面重合体層にクラックが発生した。また、得られる積層体は、装着性および柔軟性に劣るものであった(比較例2〜3)。さらに、カルボキシメチルセルロースを用いて、感熱凝固法により積層体を製造した場合には、裏抜けが発生してしまうものであった(比較例3)。

Claims (5)

  1. 重合体、および、グルコース単位中の水酸基の一部または全部が、アルコキシ基またはヒドロキシアルコキシ基により置換されたセルロースを含有する重合体ラテックス。
  2. 重合体が、ニトリルゴムである請求項1に記載の重合体ラテックス。
  3. 基材と、請求項1または2に記載の重合体ラテックスから形成された重合体層とを備える積層体。
  4. 請求項3に記載の積層体の製造方法であって、
    前記基材にアルコールを付着させるアルコール付着工程と、
    前記アルコールを付着させた前記基材に、重合体ラテックスを接触させて重合体を凝固させることにより、前記重合体層を形成するアルコール凝固工程と、を備える製造方法。
  5. 請求項3に記載の積層体の製造方法であって、
    前記基材を加熱した状態で、前記重合体ラテックスに接触させて重合体を凝固させることにより、前記重合体層を形成する感熱凝固工程を備える製造方法。
JP2018183452A 2018-09-28 2018-09-28 重合体ラテックスおよび積層体 Pending JP2020050810A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018183452A JP2020050810A (ja) 2018-09-28 2018-09-28 重合体ラテックスおよび積層体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018183452A JP2020050810A (ja) 2018-09-28 2018-09-28 重合体ラテックスおよび積層体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020050810A true JP2020050810A (ja) 2020-04-02

Family

ID=69995973

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018183452A Pending JP2020050810A (ja) 2018-09-28 2018-09-28 重合体ラテックスおよび積層体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020050810A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN117024794A (zh) * 2023-09-11 2023-11-10 江苏恒辉安防股份有限公司 一种基于生物基补强剂提升乳胶皱纹手套耐磨性能的方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN117024794A (zh) * 2023-09-11 2023-11-10 江苏恒辉安防股份有限公司 一种基于生物基补强剂提升乳胶皱纹手套耐磨性能的方法
CN117024794B (zh) * 2023-09-11 2024-02-09 江苏恒辉安防股份有限公司 一种基于生物基补强剂提升乳胶皱纹手套耐磨性能的方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6696433B2 (ja) ディップ成形用ラテックス組成物及びディップ成形品
JP7167917B2 (ja) 積層体の製造方法
WO2018061868A1 (ja) 積層体の製造方法
JP6561999B2 (ja) ディップ成形品
WO2017014029A1 (ja) ゴム成形品および保護手袋
JPWO2017170267A1 (ja) 共重合体ラテックス
JP6461337B2 (ja) ディップ成形用ラテックス状組成物及びそれから製造された成形品
JP2020050810A (ja) 重合体ラテックスおよび積層体
JP7234940B2 (ja) ラテックス組成物
JP7095601B2 (ja) 積層体
JP7459796B2 (ja) 重合体ラテックスおよび積層体
WO2019139087A1 (ja) ラテックス組成物
JP7023111B2 (ja) ディップ成形品の製造方法
JP7163919B2 (ja) 積層体の製造方法
WO2018174068A1 (ja) 積層体
JP2012087430A (ja) 手袋
JP2022516939A (ja) ディップ成形用ラテックス組成物、これを含むディップ成形品およびこれを用いたディップ成形品の製造方法