以下、本発明の吸収性物品についてその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1〜図4には、本発明の吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1が示されている。おむつ1は、図1及び図2に示すように、着用者の前後方向、即ち腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、着用時に着用者の腹側に配される腹側部F及び背側に配される背側部Rと、腹側部Fと背側部Rとの間に位置する股下部Mとを備える。腹側部Fは、股下部Mよりも縦方向Xの前側、背側部Rは、股下部Mよりも縦方向Xの後側に位置し、それぞれ、おむつ1の着用時に着用者の胴周り(腰周り)に配される。股下部Mは、おむつ1の着用時に着用者の股間部に配され、着用者のペニスなどの***部に対向する***スポット部(図示せず)を含む。
おむつ1は、吸収体23(吸収性コア24)を含む吸収性本体2を横方向Yの中央部に備えると共に、該吸収性本体2の非肌対向面側即ち該吸収性本体2よりも着用者の身体から遠い側に配された外装体3を備え、腹側部F及び背側部Rそれぞれにおける外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部どうしが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されて、図1に示すように、一対のサイドシール部S,S、並びに着用者の胴が通されるウエスト開口部WH、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば後述する不織布10)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
吸収性本体2は、図2に示す如きおむつ1の展開且つ伸長状態において、平面視長方形形状をなし、腹側部Fから背側部Rにわたって縦方向Xに延在しており、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の横方向Yの中央部に配置され、接着剤により外装体3に接合されている。おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1をサイドシール部Sで切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
吸収性本体2は、図3に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート21、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート22、及び両シート21,22間に介在配置された液保持性の吸収体23を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。表面シート21及び裏面シート22としては、それぞれ、この種の吸収性物品に従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート21としては各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができ、裏面シート22としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
吸収体23は、吸収性材料を主体とする液保持性の吸収性コア24と、該吸収性コア24の外面即ち肌対向面及び非肌対向面を被覆するコアラップシート25とを含んで構成されている。吸収性コア24とコアラップシート25との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていてもよい。吸収性コア24は、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い長方形形状をなし、少なくとも股下部Mに配され、縦方向Xに延在している。本実施形態においては、吸収性コア24は、腹側部Fから背側部Rにわたって縦方向Xに延在している。吸収性コア24の主体をなす吸収性材料としては、この種の吸収性物品において吸収体の材料として用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、親水化処理された合成繊維、吸水性ポリマー等が挙げられる。吸収性コア24の典型的な形態として、木材パルプ等の親水性繊維の繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたものを例示できる。コアラップシート25としては、例えば、紙、各種不織布、開孔フィルム等の液透過性シートを用いることができる。
図2及び図3に示すように、吸収性本体2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、液抵抗性又は撥水性で且つ通気性の防漏カフ形成用シート27から構成された一対の防漏カフ26,26が設けられている。各防漏カフ26の自由端部の近傍には糸状の防漏カフ形成用弾性部材28が1本以上縦方向Xに伸長状態で配されている。防漏カフ26は、伸長状態で配された弾性部材28がおむつ1の着用時に収縮することによって少なくとも股下部Mで起立し、それによって尿等の***液の横方向Yの外方への流出を阻止する。
外装体3は、図2に示す如き展開且つ伸長状態のおむつ1の外形を形作っており、外装体3の周縁は、その状態のおむつ1の輪郭線、即ち腹側部F、股下部M及び背側部Rそれぞれの輪郭線を形成している。外装体3は、図2に示すように、腹側部F及び背側部Rにおいては、縦方向Xよりも横方向Yの長さが長い長方形形状をなし、腹側部Fと背側部Rとの間に位置する股下部Mにおいては、外装体3の縦方向Xに沿う両側縁部即ち一対のレッグ縁部LS,LSが横方向Yの中央に向かって凸の円弧状に湾曲しており、図2に示す如き平面視において、縦方向Xの中央域が横方向Yの内方に向けて括れた砂時計状をなしている。
外装体3は、図3及び図4に示すように、着用状態においておむつ1の外面即ち非肌対向面を形成する外層シート31と、外層シート31の肌対向面に対向配置された内層シート32との積層体を含んで構成されている。おむつ1の着用状態において、外層シート31は着用者の身体から遠い側に位置して、おむつ1の非肌対向面(外面)を形成し、内層シート32は着用者の身体に近い側に位置して、おむつ1の肌対向面(内面)を形成する。外層シート31と内層シート32とは、所定の部位において接着剤等の接合手段を介して互いに接合されている。
本実施形態においては、外層シート31は、図2及び図4に示すように、腹側部F及び背側部Rに、内層シート32の縦方向端から延出し、内層シート32の肌対向面側に折り返される折り返し部31Eを有し、該折り返し部31Eは、吸収性本体2の縦方向Xの端部を被覆している。なお、図4では背側部Rの縦方向端部を拡大して示し、腹側部Fの拡大図は示していないが、腹側部Fも背側部Rと同様に構成されており、特に断らない限り、腹側部Fについては背側部Rについての説明が適宜適用される。
外装体3を構成するシート31,32は、互いに同種のシートでもよく、あるいは異種のシートでもよく、後者の例として、伸縮性が互いに異なる形態が挙げられる。具体的には例えば、外層シート31としては、横方向Yに伸縮性を有する伸縮シートを用い、内層シート32としては、伸縮性を有していない非伸縮シートを用いることができる。また例えば、外層シート31の伸縮性が部分的に異なっていてもよく、具体的には、外層シート31における腹側部F及び背側部Rに位置する部分が、横方向Yに伸縮性を有する伸縮シートからなり、外層シート31における股下部Mに位置する部分が、伸縮性を有していない非伸縮シートからなる形態が挙げられる。外装体3として使用可能な伸縮シートとしては、例えば、弾性繊維層の両面又は片面に伸長可能な繊維層が一体化されている伸縮シートが挙げられ、弾性繊維層と伸長可能な繊維層との一体化の方法としては、例えば、両者を積層して水流交絡する方法、エアスルー等により繊維を交絡させる方法、ヒートエンボス、接着剤、超音波等によって接合させる方法が挙げられる。また、外装体3として使用可能な非伸縮シートとしては、例えば、各種製法による不織布が挙げられ、具体的にはスパンボンド不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布を例示できる。
図1、図2及び図4に示すように、腹側部F及び背側部Rそれぞれには、糸状又は帯状の胴周り弾性部材33が横方向Yに伸長状態で複数本配され、それら複数本の胴周り弾性部材33は縦方向Xに所定間隔を置いて間欠配置されている。このように、胴周り弾性部材33がその弾性伸縮性が発現される状態で配されていることにより、ウエスト開口部WHの開口縁部には、その全周にわたって実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成される。また、一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部を形成するレッグ縁部LSには、糸状又は帯状の1本又は複数本のレッグギャザー形成用のレッグ弾性部材34が伸長状態で配されており、これによって一対のレッグ開口部LH,LHそれぞれの開口縁部には、その全周にわたって実質的に連続した環状のレッグギャザーが形成される。これらの弾性部材33,34は、何れも外装体3を構成する外層シート31と内層シート32との間に接着剤等の接合手段により挟持固定されている。
おむつ1は、腹側部F及び背側部Rの少なくとも一方に、吸収性コア24の縦方向端24aよりも縦方向Xの外方に配されたウエストフラップWFを有している。本実施形態においては、図1及び図2に示すように、腹側部F及び背側部Rの双方にウエストフラップWFが配されている。ウエストフラップWFは、おむつ1において、吸収性コア24の縦方向端24aを通って横方向Yに平行に延びる仮想直線VLよりも縦方向Xの外方に位置する部分であり、おむつ1の縦方向Xの端部で且つ吸収性コア24(吸収性材料)が配されていない部分である。ウエストフラップWFは、おむつ1の着用時に着用者の腰周りに対応する。
ウエストフラップWFは、図4に示すように、外装体3(外層シート31、内層シート32)を主体として構成されている。ウエストフラップWFは、外層シート31の折り返し部31Eを有しているところ、この折り返し部31Eは、ウエストフラップWFの外装体3において、おむつ1の着用者の肌から最も近い部材である。折り返し部31Eは、図2に示すように、平面視において一方向に長い形状、具体的には長方形形状をなし、その長手方向を横方向Yに一致させて、腹側部F及び背側部Rそれぞれの横方向Yの全長にわたって配されている。
腹側部FのウエストフラップWF及び背側部RのウエストフラップWFの少なくとも一方、好ましくは後者、より好ましくは双方には、吸汗機能が付与されている。より具体的には、図1、図2及び図4に示すように、ウエストフラップWFの肌対向面側の少なくとも一部が、吸汗機能を有する不織布10から形成されている。不織布10はいわゆる吸汗シートである。不織布10は、図2に示す如き平面視において一方向に長い形状、具体的には長方形形状をなし、その長手方向を横方向Yに一致させて、ウエストフラップWFの横方向Yの全長にわたって配されている。図示した例では、折り返し部31Eにおける外層シート31の肌対向面側であり、着用者の肌から最も近い面に、外層シート31とは別体の不織布10が貼り合わされている。しかし、折り返し部31Eにおける外層シート31自体が不織布10から構成されていてもよい。
本実施形態においては、不織布10は、ウエストフラップWFにおける外層シート31の折り返し部31Eの肌対向面に、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって接合されている。したがって、ウエストフラップWFは、おむつ1の着用者の肌から近い順に、不織布10、折り返し部31E、内層シート32、外層シート31を有している。また、ウエストフラップWFは、外層シート31と内層シート32との間に横方向Yに伸長状態で固定された胴周り弾性部材33を有していることに起因して、横方向Yに伸縮性を有している。
図5には、不織布10の肌対向面すなわちウエストフラップWFの肌対向面、図6には、不織布10の厚み方向に沿う断面が示されている。不織布10は、図6に示すように、疎水性繊維11Fを含む疎水性繊維層11と、親水性繊維12Fを含む親水性繊維層12との積層構造を有している。本実施形態においては、疎水性繊維層11と親水性繊維層12とが直接積層されており、両層11,12間に他の層は介在されておらず、不織布10は二層構造を有している。また、疎水性繊維層11は親水性繊維層12よりもおむつ1の着用者の肌から近い位置に配されており、より具体的には、疎水性繊維層11が不織布10の肌対向面を形成しており、すなわちウエストフラップWFの肌対向面を形成している。親水性繊維層12は、疎水性繊維層11と外層シート31の折り返し部31Eとの間に介在配置され、不織布10の非肌対向面を形成している。
疎水性繊維層11は、疎水性繊維11Fを主体として構成されており、疎水性である。疎水性繊維層11の全構成繊維に占める疎水性繊維11Fの割合は、少なくとも50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、100質量%でもよい。
親水性繊維層12は、親水性繊維12Fを主体として構成されており、親水性である。親水性繊維層12の全構成繊維に占める親水性繊維12Fの割合は、少なくとも50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよい。
なお、本実施形態において、不織布10が固定されている外層シート31の折り返し部31Eは、少なくとも表面(肌対向面)が疎水性であり、典型的には、疎水性繊維を含む不織布からなり、該折り返し部31E全体が疎水性である。折り返し部31Eを構成する不織布としては、この種の吸収性物品の構成部材として使用可能な各種製法による不織布を特に制限なく用いることができ、短繊維を主体とする不織布(短繊維不織布)でもよく、あるいは長繊維を主体とする不織布(長繊維不織布)でもよい。折り返し部31Eは、例えば、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布などの短繊維不織布でもよく、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布などの長繊維不織布でもよい。
本発明において、繊維の親水度は、下記方法で測定される接触角(水との接触角)に基づき判断され、該接触角が90度未満であれば親水性、90度以上の場合であれば疎水性である。下記方法で測定される接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。疎水性繊維層11の主たる構成繊維である疎水性繊維11Fは、下記方法で測定される接触角が90度以上であり、親水性繊維層12の主たる構成繊維である親水性繊維12Fは、該接触角が90度未満である。
<繊維の接触角の測定方法>
測定対象(繊維層)から繊維を取り出し、その繊維に対する水の接触角を測定する。測定装置として、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用いる。接触角の測定には脱イオン水を用いる。インクジェット方式水滴吐出部(クラスターテクノロジー社製、吐出部孔径が25μmのパルスインジェクターCTC−25)から吐出される液量を15ピコリットルに設定して、水滴を、繊維の真上に滴下する。滴下の様子を水平に設置されたカメラに接続された高速度録画装置に録画する。録画装置は後に画像解析をする観点から、高速度キャプチャー装置が組み込まれたパーソナルコンピュータが望ましい。本測定では、17msec毎に画像が録画される。録画された映像において、繊維に水滴が着滴した最初の画像を、付属ソフトFAMAS(ソフトのバージョンは2.6.2、解析手法は液滴法、解析方法はθ/2法、画像処理アルゴリズムは無反射、画像処理イメージモードはフレーム、スレッシホールドレベルは200、曲率補正はしない、とする)にて画像解析を行い、水滴の空気に触れる面と繊維とのなす角を算出し、接触角とする。測定対象から取り出した繊維は、繊維長1mmに裁断し、該繊維を接触角計のサンプル台に載せて、水平に維持する。繊維1本につき異なる2箇所の接触角を測定する。N=5本の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計10箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維の水との接触角と定義する。測定環境は、室温22±2℃、湿度65±2%RHとする。
なお、吸収性物品の構成部材(例えばおむつ1における不織布10)に測定対象(例えば繊維)が含まれている場合において、その測定対象を採取する方法としては、測定対象を含む構成部材が接着剤、融着などによって他の構成部材に固定されている場合は、その固定を解除して測定対象を含む構成部材を吸収性物品から取り出す方法を採る必要があるが、測定対象を含む構成部材が他の構成部材に固定されていない場合は、測定対象を吸収性物品から直接採取する方法を採ることができる。また、前記の構成部材の固定を解除する方法としては、吸収性物品において、測定対象を含む構成部材と他の構成部材との接合に用いられている接着剤などをコールドスプレー等の冷却手段で弱めた後に、測定対象を含む構成部材を丁寧に剥がして取り出す方法が好ましい。この取り出し方法は、前述した接触角の測定など、本発明の測定対象に係る測定において適用される。なお、構成部材に付与された親水化剤への影響を最小限に抑える観点から、固定部分の除去方法として、溶剤の塗布やドライヤーによる熱風吹き付けのような、油剤の変質、喪失を招くおそれのある方法は採用しないことが好ましい。
疎水性繊維11Fとしては、疎水性の合成繊維、特に疎水性の熱可塑性繊維を用いることができる。熱可塑性繊維の素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
親水性繊維12Fとしては、親水性の合成繊維、特に親水性の熱可塑性繊維を用いることができ、例えば、ポリアクリロニトリル繊維等の、親水性の熱可塑性樹脂からなる本来的に親水性の熱可塑性繊維でもよく、あるいは、疎水性の熱可塑性樹脂からなる本来的に疎水性の熱可塑性繊維に親水化処理を施したものでもよく、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。後者の「親水化処理された熱可塑性繊維」としては、例えば、親水化剤が練り込まれた熱可塑性繊維、表面に親水化剤が付着した熱可塑性繊維、プラズマ処理が施された熱可塑性繊維等が挙げられる。親水化剤としては、衛生品用途に使用される一般的な親水化剤(各種の界面活性剤など)を特に制限無く用いることができる。
疎水性繊維11F及び親水性繊維12Fは、それぞれ、1種類の合成樹脂又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等があり、特に制限されない。
疎水性繊維11F及び親水性繊維12Fは、それぞれ、短繊維(ステープル)でもよく、長繊維(フィラメント)でもよい。ここでいう「短繊維」とは、80mm未満の繊維長を有する繊維であり、「長繊維」とは、80mm以上の繊維長を有する繊維である。
疎水性繊維11F及び親水性繊維12Fが短繊維である場合の繊維長は、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上、そして、好ましくは76mm以下、より好ましくは60mm以下である。
疎水性繊維11F及び親水性繊維12Fが長繊維である場合の繊維長は、好ましくは100mm以上、より好ましくは200mm以上、そして、好ましくは1000mm以下、より好ましくは2000mm以下である。
不織布10は、短繊維を主体とする不織布(短繊維不織布)でもよく、あるいは長繊維を主体とする不織布(長繊維不織布)でもよい。不織布10の全構成繊維に占める短繊維又は長繊維の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは100質量%である。また、不織布10の製造方法は特に限定されず、公知の不織布の製造方法に従って製造することができる。
本実施形態においては、疎水性繊維11F及び親水性繊維12Fは短繊維であり、不織布10(疎水性繊維層11、親水性繊維層12)は、全構成繊維が短繊維の短繊維不織布である。短繊維不織布である不織布10は、例えば、カード法、エアレイド法等の公知の方法を用いて短繊維を交絡させてウエブを製造し、該ウエブの構成繊維(短繊維)どうしをそれらの交点で熱融着させることによって製造することができる。斯かる熱融着の方法(不織布化方法)は公知の方法を用いることができ、例えばサーマルボンド法として、所定温度に加熱された熱風をウエブに吹き付ける方法(エアスルー法)や、凹凸パターンが形成された彫刻ロールと平滑ロールとからなる所定温度に加熱された一対のロール間にウエブを通す方法(ヒートロール法)がある。短繊維不織布である不織布10は、例えば、サーマルボンド不織布(エアスルー不織布、ヒートロール不織布など)、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布であり得る。
不織布10においては、図5に示す如き平面視における少なくとも一部の領域が、繊維間距離を該領域の厚み方向で平均化した厚み平均繊維間距離が50μm以下の繊維高密度領域13である。繊維高密度領域13は、不織布10の積層構造を構成する全ての層を含んでおり、本実施形態においては、疎水性繊維層11における繊維高密度領域13に位置する部分(以下、「繊維高密度領域対応部11a」ともいう。)と、親水性繊維層12における繊維高密度領域13に位置する部分(以下、「繊維高密度領域対応部12a」ともいう。)とを含んでいる。厚み平均繊維間距離は、不織布10の平面視における所定の測定対象領域で繊維が厚み方向に均一に分布していると仮定した場合の、該測定対象領域の繊維間距離であり、下記方法によって測定される。
<厚み平均繊維間距離の測定方法>
厚み平均繊維間距離は、まず、測定対象の不織布の厚みを測定し、次いで、その厚みの測定値を下記式(1)に当てはめて求める。
まず、測定対象の不織布の厚みの測定方法について説明する。測定対象の不織布を、おむつ等の吸収性物品からコールドスプレー等を用いてはがすなどして、吸収性物品から取り出す。次いで、取り出した測定対象の不織布を、コールドスプレーや液体窒素等で凍結した状態で、前記吸収性物品の縦方向と平行な長さ25mmの長辺と、該吸収性物品の横方向と平行な長さ20mmの短辺とを有する、平面視長方形形状に切断し、該不織布の切断片を作製する。この切断片にプレートを載せて5g/cm2の荷重をかけた状態で、該切断片の厚みを測定する。測定環境は温度20±2℃、相対湿度65±5%、測定機器にはマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX−1000)を用いる。中倍率ズームレンズを90°に倒した状態で取り付ける。測定サンプルとしての前記切断片を、被測定面が上向きの状態となり且つ測定サンプルの前記縦方向(長手方向)に沿う切断端面を前記横方向から観察できるように、測定装置の測定ステージにセットする。まず、前記切断片の切断端面の拡大写真を得る。拡大写真には、既知の寸法のものを同時に写しこむ。前記切断片の切断端面の拡大写真にスケールを合わせ、該切断片の厚みを測定する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を乾燥状態の当該切断片である不織布の厚み[mm]とする。なお、測定対象の不織布が積層品の場合は、各層を構成する繊維の繊維径の違いからその境界を判断し、厚みを算出する。
次いで、測定対象の不織布の厚みの測定値を用い、Wrotnowskiの仮定に基づく式により、該不織布の厚み平均繊維間距離を求める。Wrotnowskiの仮定に基づく式は、一般に、不織布を構成する繊維の繊維間距離を求める際に用いられる。Wrotnowskiの仮定に基づく式によれば、繊維間距離A(μm)、不織布の厚みh(mm)、坪量e(g/m2)、不織布を構成する繊維の繊維径d(μm)、繊維密度ρ(g/cm3)によって、下記式(1)により不織布の厚み平均繊維間距離が求められる。下記式(1)中、厚みh(mm)は、測定対象の不織布の厚みの測定値である。また、繊維径d(μm)は、測定対象の繊維10本をそれらの長さ方向と直交する方向に切断し、各繊維の切断面を走査型電子顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用いて観察して各繊維の繊維径を測定し、それら10本の繊維の測定値の平均値として求められる。また、繊維密度ρ(g/cm3)は、密度勾配管を使用して、JIS L1015化学繊維ステープル試験方法に記載の密度勾配管法の測定方法に準じて測定する(URLはhttp://kikakurui.com/l/L1015−2010−01.html、書籍ならJISハンドブック繊維−2000、(日本規格協会)のP.764〜765に記載)。また、坪量e(g/m2)は、測定対象の不織布を所定の大きさ、例えば、0.12m×0.06mの平面視四角形形状にカットしてサンプルとし、そのサンプルの質量を測定して次式により算出する。
坪量e(g/m2)=サンプルの質量÷サンプルの面積
本実施形態においては、繊維高密度領域13は不織布10に部分的に形成されていて、不織布10の平面視における一部の領域が繊維高密度領域13である。具体的には図5に示すように、繊維高密度領域13は不織布10の面方向(不織布10の厚み方向と直交する方向)に間欠に存在するパターンで配されている。つまり、繊維高密度領域13はウエストフラップWFの面方向に間欠に存在している。図5に示すパターンでは、平面視円形形状の繊維高密度領域13が不織布10の面方向に千鳥状に配され、複数の繊維高密度領域13それぞれは、繊維高密度領域13以外の領域(厚み平均繊維間距離が50μmを超える領域)で包囲されている。繊維高密度領域13のパターンは図5に示すものに限定されず、例えば繊維高密度領域13の平面視形状は、楕円形状、三角形形状、四角形形状以上の多角形形状、不定形状、線状、曲線状などであってもよい。また例えば、複数の連続直線状の繊維高密度領域13が互いに交差するように配された格子状のパターンでもよい。なお、繊維高密度領域13は、不織布10の厚み方向の全体にわたって連続しているので、肌対向面(疎水性繊維層11側の面)と非肌対向面(親水性繊維層12側の面)とで、繊維高密度領域13のパターン(平面視形状及び配置)は実質的に同じである。
図5に示すような、繊維高密度領域13が不織布10の面方向に間欠に存在するパターンでは、各繊維高密度領域13は、面方向において、繊維高密度領域13以外の領域(厚み平均繊維間距離が50μmを超える領域)と隣接している。一般に、厚み平均繊維間距離が短いほど、当該領域の厚みは小さくなるので、斯かるパターンでは、図6に示すように、各繊維高密度領域13はその周辺部(繊維高密度領域13以外の領域)に比して厚みが薄く、繊維高密度領域13とその周辺部とで不織布10に厚み差が生じる。図6に示す形態では、疎水性繊維層11における繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部11a)は、その周辺部(繊維高密度領域13以外の領域)の疎水性繊維層11に比して厚みが薄く、また、親水性繊維層12における繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部12a)は、その周辺部(繊維高密度領域13以外の領域)の親水性繊維層12に比して厚みが薄い。
繊維高密度領域13は、不織布又はその前駆体であるウエブ(不織布化される前の繊維集合体)における、繊維高密度領域13の形成予定領域を、厚み方向に圧縮することで形成することができる。斯かる不織布又はウエブの圧縮は、典型的には、構成繊維(熱可塑性繊維)の溶融を促進させる溶融促進手段(例えば熱、超音波)を伴う圧搾加工によって行われるが、該溶融促進手段を伴わない圧搾加工によって行ってもよい。圧搾加工の具体例として、熱エンボス加工、超音波エンボス加工が挙げられる。圧搾加工は例えば、所定温度に加熱された一対の加工ロール間に加工対象(不織布又はウエブ)を通すことで行うことができる。斯かる圧搾加工で使用する一対の加工ロールとして、周面に凹凸が無い平滑ロールを使用した場合には、図9に示す不織布10Cのように、加工対象全体に繊維高密度領域13を形成可能であり、また、一方の加工ロールの一方又は双方を、周面に凹凸パターンが形成された彫刻ロールとした場合には、加工対象にその凹凸パターンに対応したパターンで繊維高密度領域13を形成可能である。圧搾加工がウエブに対して行われる場合、その圧搾加工は、繊維高密度領域13の形成及びウエブの不織布化の両処理を兼ねる場合があり、その場合、ウエブの不織布化と同時に繊維高密度領域13が形成される。繊維高密度領域13の厚み平均繊維間距離は、圧搾加工の条件、例えば、圧搾時の加工対象の加熱温度や圧力、加工対象の搬送速度などを適宜調整することで調整可能である。圧搾加工の条件次第では、繊維高密度領域13の形態を、構成繊維(疎水性繊維11F、親水性繊維12F)の形状が維持された繊維集合体の形態とすることもできるし、あるいはフィルム化した形態とすることもできる。
本実施形態においては、図6に模式的に示すように、繊維高密度領域13はフィルム化している。ここでいう「フィルム化」とは、不織布10の構成繊維(熱可塑性繊維)どうしが隙間なく均一に溶融し、もはや構成繊維の繊維形状が存在しなくなるまで溶融化しており、液を透過し難くなっている状態を意味する。フィルム化した繊維高密度領域13の厚み平均繊維間距離は0μmである。フィルム化した繊維高密度領域13は、例えば、不織布又はその前駆体であるウエブにおける、繊維高密度領域13の形成予定領域を、構成繊維(疎水性繊維11F、親水性繊維12F)の素材である合成樹脂(熱可塑性樹脂)の融点以上の温度で加熱しつつ、圧搾することで形成することができる。
図5及び図6に示すように、疎水性繊維層11における繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部11a)、又は疎水性繊維層11における不織布10の面方向において繊維高密度領域13に隣接する部分(以下、「繊維高密度領域隣接部11b」ともいう。)には、疎水性繊維層11の他の部分よりも親水度が高く且つ親水性繊維層12よりも親水度が低い、肌側親水領域14が存在している。本実施形態における肌側親水領域14は、図6に示すように、疎水性繊維層11の繊維高密度領域対応部11a及び繊維高密度領域隣接部11bの双方にわたって存在している。なお、図中の符号12bは、親水性繊維層12における不織布10の面方向において繊維高密度領域13に隣接する部分(以下、「繊維高密度領域隣接部12b」ともいう。)である。
肌側親水領域14は、繊維高密度領域13と同様に、不織布10の面方向に間欠に存在している。すなわち、不織布10の肌対向面(ウエストフラップWFの肌対向面)を形成する、疎水性繊維層11の肌対向面には、複数の肌側親水領域14が離散的に存在している。本実施形態においては、図5及び図6に示すように、平面視円形形状の繊維高密度領域13が不織布10の面方向に間欠に存在し、且つ各繊維高密度領域13の繊維高密度領域対応部11a及び繊維高密度領域隣接部11bの双方にわたって、平面視円形形状の肌側親水領域14が存在している。肌側親水領域14のパターンは図示のものに限定されず、例えば肌側親水領域14の平面視形状は、円形形状に限定されず、楕円形状、三角形形状、四角形形状以上の多角形形状、不定形状、線状、曲線状などであってもよい。
肌側親水領域14の親水度は、前述したとおり、疎水性繊維層11の他の部分よりも高く、親水性繊維層12よりも親水度が低い。なお、後述するように、親水性繊維層12は部分的に親水度が異なる場合があり得るところ、その場合は、親水性繊維層12における親水度が最も低い部分(典型的は繊維高密度領域対応部12a)よりも、肌側親水領域14の方が、親水度が低い。
本発明において、不織布(繊維層)のような繊維集合体の親水度は、下記方法で測定される接触角(水との接触角)に基づき判断され、該接触角が90度未満であれば親水性、90度以上の場合であれば疎水性である。下記方法で測定される水との接触角が小さいほど親水性が高く(疎水性が低く)、該接触角が大きいほど親水性が低い(疎水性が高い)。不織布10においては、前述したとおり、「疎水性繊維層11における肌側親水領域14以外の領域の親水度<肌側親水領域14の親水度<親水性繊維層12(親水性繊維層12の親水度が部分的に異なる場合は、親水度が最も低い部分)の親水度」という大小関係が成立するから、これを接触角で置き換えれば、「疎水性繊維層11における肌側親水領域14以外の領域の接触角>肌側親水領域14の接触角>親水性繊維層12(親水性繊維層12の親水度が部分的に異なる場合は、親水度が最も低い部分)の接触角」という大小関係が成立する。
<繊維集合体の接触角の測定方法>
測定対象の繊維層(例えば不織布10)を、おむつ等の吸収性物品からコールドスプレー等を用いてはがすなどして、吸収性物品から取り出し、取り出した繊維層を、コールドスプレーや液体窒素等で凍結した状態で、カッター等を用いて所定形状(例えば、該吸収性物品の縦方向と平行な長さ50mmの長辺と、該吸収性物品の横方向と平行な長さ10mmの短辺とを有する、平面視長方形形状)に切断し、測定サンプルとする。なお、測定対象にフィルム化した部分(例えば繊維高密度領域13)が含まれる場合に、そのフィルム化した部分が小さすぎるなどの理由により、該測定対象が測定サンプルとして適さない場合は、フィルム化した部分を含む測定サンプルを別途作製する。例えば、測定対象と同じ構成の疎水性繊維層11と親水性繊維層12とを用意し、シーラー等を用いて両層11,12を加熱融着させて測定サンプルを作製し、このときの加熱融着は、その加熱融着部がフィルム化するような条件で行う。そして、測定サンプルにおける接触角の被測定面(例えば、疎水性繊維層11、親水性繊維層12又は肌側親水領域14の表面)に対する水の接触角を、協和界面科学株式会社製の自動接触角計MCA−Jを用い、また、測定液として、1Lの脱イオン水に1mgの青色1号を溶解させて調製した着色液を用い、前記<繊維の接触角の測定方法>に準じて測定する。すなわち、前記着色液を被測定面に滴下して、その様子を高速度録画装置に録画し、その録画画像を解析して、該着色液の液滴の空気に触れる面と被測定面とのなす角を算出し、接触角とする。測定サンプル1個につき異なる2箇所の接触角を測定する。測定サンプル3個の接触角を小数点以下1桁まで計測し、合計6箇所の測定値を平均した値(小数点以下第2桁で四捨五入)を、当該繊維集合体の水との接触角と定義する。
不織布10の各部の親水度(接触角)は、当該部分の構成繊維(疎水性繊維11F、親水性繊維12F)の接触角を適宜調整することで調整可能である。例えば、親水性繊維層12の主たる構成繊維である親水性繊維12Fが、親水化処理された熱可塑性繊維である場合には、その親水化処理の程度、具体的には例えば、親水化剤の種類や使用量などを適宜調整することで、親水性繊維層12の親水度(接触角)を調整することができる。
肌側親水領域14の形成方法としては、例えば、i)その形成予定領域(疎水性繊維層11の繊維高密度領域対応部11a及び/又は繊維高密度領域隣接部11b)に親水化剤を付与する方法(親水化剤付与法)、及びii)不織布10又はその前駆体であるウエブ(不織布化される前の繊維集合体)に、熱、超音波などの溶融促進手段を伴う圧搾加工を施して繊維を溶融する方法(繊維溶融法)が挙げられる。前記i)及びii)の両方を併用して肌側親水領域14を形成することもできる。
前記i)の方法に関し、親水化剤としては、衛生品用途に使用される一般的な親水化剤(各種の界面活性剤など)を特に制限無く用いることができ、例えば、熱可塑性繊維を親水化処理して親水性繊維12Fを得る場合に使用される親水化剤と同種のものを用いることができる。親水化剤の付与方法は特に限定されず、例えば、親水化剤を含む塗工液を塗工可能な公知の方法を適宜利用できる。利用可能な塗工方法として、例えば、筆による塗布、グラビアコート、フレキソコート、スプレーコートなどが挙げられる。親水化剤の種類や使用量などを適宜調整することで、肌側親水領域14の親水度(接触角)を調整することができる。
前記ii)の方法は、前述した繊維高密度領域13の形成方法と同じである。すなわち、疎水性繊維11Fを含む不織布又はウエブと、親水性繊維12F(親水化剤で処理された熱可塑性繊維)を含む不織布又はウエブとを積層して積層体を得、該積層体に対して前記圧搾加工を施すことで繊維高密度領域13が形成され、疎水性繊維層11における該繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部11a)が肌側親水領域14となる。これは、前記積層体の圧搾加工によって、その被加工部における親水性繊維12Fが溶融し、該親水性繊維12Fに含まれていた親水化剤が被加工部全体に拡散することによるものである。疎水性繊維11Fを含む不織布又はウエブにおける被加工部に対応する部分は、前記圧搾加工によって親水度が向上する結果、疎水性繊維層11の他の部分よりも親水度が高い肌側親水領域14(繊維高密度領域対応部11a)となる。
一方、前記ii)の方法において、親水性繊維12Fを含む不織布又はウエブにおける被加工部に対応する部分は、前記圧搾加工によって親水度が低下する結果、親水性繊維層12の他の部分よりも親水度が低くなり得る。すなわち不織布10においては、親水性繊維層12の親水度が部分的に異なる場合があり、親水性繊維層12における繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部12a)は、親水性繊維層12におけるそれ以外の部分(繊維高密度領域隣接部12b)よりも親水度が低くなり得る。
このように、前記ii)の方法は、繊維高密度領域13の形成を伴う方法であって、基本的には、繊維高密度領域13と同位置(繊維高密度領域対応部11a,12a)に、該領域13の形成と同時に肌側親水領域14を形成できるため、製造が容易である。これに対し、前記i)の方法は、繊維高密度領域13の形成とは別処理であるので、肌側親水領域14を不織布10の所望の位置に形成することができる。したがって前記i)の方法、すなわち肌側親水領域14の形成予定領域に親水化剤を付与する方法によれば、疎水性繊維層11において繊維高密度領域13に隣接する繊維高密度領域隣接部11bに肌側親水領域14を形成することは容易である。また、前記i)の方法によって肌側親水領域14を形成した場合、疎水性繊維層11に付与した親水化剤の一部が親水性繊維層12に移行する場合があり、その場合は、親水性繊維層12における肌側親水領域14に対応する部分(親水性繊維層12の平面視において肌側親水領域14と重なる部分)に親水化剤が存在し得る。
不織布10の主な特徴として下記1)〜4)が挙げられる。
1)肌対向面を形成する疎水性繊維層11と、該疎水性繊維層11の非肌対向面と接触するように積層された親水性繊維層12とを有する。
2)厚み平均繊維間距離が50μm以下の繊維高密度領域13を有する。
3)疎水性繊維層11における繊維高密度領域対応部11a及び/又は繊維高密度領域隣接部11Bに、親水度が疎水性繊維層11の他の部分よりも高く且つ親水性繊維層12よりも低い、肌側親水領域14が存在している。
4)肌側親水領域14は、不織布10の面方向に間欠に存在している。
そして、おむつ1は、前記1)〜4)の特徴を有する不織布10がウエストフラップWFの肌対向面側を形成していため、以下に説明するように優れた吸汗性能を有する。
すなわち、おむつ1は、着用者の腰周りと直接接触するウエストフラップWFの肌対向面が、不織布10の疎水性繊維層11から形成されているため、該肌対向面が親水性繊維層から形成されている場合と比較して、汗の吸収後も肌がドライに保たれやすく、そのため、べたつきによる不快感や、湿疹、あせも、かぶれなどの肌トラブルを低減することができる。
また、ウエストフラップWFの肌対向面を形成する不織布10の疎水性繊維層11は、親水度が低く典型的には疎水性であることから、汗のような水性液が付着し難いものであるが、疎水性繊維層11の肌対向面側の一部(繊維高密度領域対応部11a及び/又は繊維高密度領域隣接部11b)には、疎水性繊維層11の他の部分よりも親水度が高い肌側親水領域14が存在している。つまり、ウエストフラップWF(不織布10)の肌対向面においては、相対的に親水度が高い(接触角が小さい)肌側親水領域14と、相対的に親水度が低い(接触角が大きい)肌側親水領域14の非配置領域とが隣接していて、両領域間に親水度差(接触角差)が生じており、これにより、着用者の肌に付着している汗は、相対的に親水度が高く接触角が小さい肌側親水領域14に優先的に付着し得る。
このように、肌側親水領域14は、不織布10の肌対向面すなわちウエストフラップWFの肌対向面において、汗が最初に付着し得る部分であるところ、おむつ1においては、このような吸汗のきっかけとなる部分である肌側親水領域14が、図5に示すように、不織布10の肌対向面に間欠に存在しており、不織布10の肌対向面における肌側親水領域14以外の領域は親水度が低くて汗を付着し難いため、ウエストフラップWFと接触する着用者の肌がドライに保たれやすい。
また一般に、繊維層の毛管圧は、該繊維層の繊維間距離に反比例するので、厚み平均繊維間距離が相対的に短い繊維高密度領域13は、厚み平均繊維間距離が相対的に長い周辺部よりも毛管圧が高い。つまり、疎水性繊維層11においては、繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部11a)とそれに隣接する部分(繊維高密度領域隣接部11b)との間に、前者>後者の毛管圧差が生じており、また、親水性繊維層12においては、繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部12a)とそれに隣接する部分(繊維高密度領域隣接部12b)との間に、前者>後者の毛管圧差が生じている。更に、疎水性繊維層11と親水性繊維層12との間にも、親水度(接触角)の差に起因して、前者<後者の毛管圧差が生じている。このような不織布10における各部の毛管圧差により、親水性繊維層12は強い毛管力を有し、不織布10は、肌対向面側(疎水性繊維層11側)から非肌対向面側(親水性繊維層12側)への液の引き込み性に優れている。したがって、不織布10の肌対向面における肌側親水領域14に付着した汗は、親水性繊維層12の毛管力により、不織布10の内部に速やかに取り込まれ、親水性繊維層12全体に吸収され得る。
特に本実施形態においては、前述したとおり、繊維高密度領域13がフィルム化していて、繊維高密度領域13の厚み平均繊維間距離が略ゼロであるため、繊維高密度領域13がフィルム化せずに構成繊維がその繊維形態を維持している場合に比して、特に繊維高密度領域13において親水性繊維層12(繊維高密度領域対応部12a)とおむつ1の着用者の肌との離間距離が短く、且つ親水性繊維層12の毛管力が高められている。そのため本実施形態のおむつ1は、ウエストフラップWFの吸汗性能に特に優れている。
前記の「疎水性繊維層11における肌側親水領域14以外の領域の親水度<肌側親水領域14の親水度<親水性繊維層12(繊維高密度領域隣接部12b)の親水度」という大小関係が成立することを前提として、不織布10の各部の接触角は以下のように設定することが好ましい。
疎水性繊維層11における肌側親水領域14以外の領域の接触角は、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上、そして、好ましくは130度以下、より好ましくは120度以下である。
肌側親水領域14の接触角は、好ましくは55度以上、より好ましくは60度以上、そして、好ましくは90度以下、より好ましくは85度以下である。
親水性繊維層12の接触角は、好ましくは30度以上、より好ましくは40度以上、そして、好ましくは70度以下、より好ましくは60度以下である。前述したとおり、親水性繊維層12の接触角(親水度)は部分的に異なる場合があるが、その場合は、親水性繊維層12において接触角が最も大きい部分(親水度が最も低い部分)の接触角が前記の好ましい範囲にあることが好ましい。親水性繊維層12において親水度が最も低い部分が、繊維高密度領域対応部12aになりやすいことは前述したとおりである。
前述した不織布10の吸汗性能をより一層向上させる観点から、繊維高密度領域13の厚み平均繊維間距離は、好ましくは45μm以下、より好ましくは40μm以下である。
同様の観点から、疎水性繊維層11の繊維高密度領域隣接部11bの厚み平均繊維間距離は、疎水性繊維層11の繊維高密度領域対応部11aのそれよりも長い、すなわち「繊維高密度領域対応部11aの厚み平均繊維間距離<繊維高密度領域隣接部11bの厚み平均繊維間距離」なる大小関係が成立することを前提として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、そして、好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下である。ここでいう繊維高密度領域隣接部11bは、繊維高密度領域対応部11a(該対応部11aと該隣接部11bとの境界)から不織布10の面方向に13mm以内の領域である。
同様の観点から、親水性繊維層12の繊維高密度領域隣接部12bの厚み平均繊維間距離は、親水性繊維層12の繊維高密度領域対応部12aのそれよりも長い、すなわち「繊維高密度領域対応部12aの厚み平均繊維間距離<繊維高密度領域隣接部12bの厚み平均繊維間距離」なる大小関係が成立することを前提として、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、そして、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。ここでいう繊維高密度領域隣接部12bは、繊維高密度領域対応部12a(該対応部12aと該隣接部12bとの境界)から不織布10の面方向に10mm以内の領域である。
肌側親水領域14は、繊維高密度領域対応部11a(疎水性繊維層11における繊維高密度領域13に位置する部分)の平面視における中心から不織布10の面方向に好ましくは10mm以内、より好ましくは4mm以内に存在することが好ましい。その理由は以下に述べるとおりである。
不織布10においては、前述したとおり親水度に関して、「疎水性繊維層11における肌側親水領域14以外の領域の親水度<肌側親水領域14の親水度<親水性繊維層12(繊維高密度領域隣接部12b)の親水度」という大小関係が成立し得る。このような親水度勾配が付与された不織布10において、繊維高密度領域対応部11a及び繊維高密度領域隣接部11bの双方にわたって存在する肌側親水領域14の全体に汗が付着した場合、該領域14における該対応部11aに位置する部分に付着した汗は、該隣接部11bに吸収されて更に親水性繊維層12へ移行するのに対し、該領域14における該隣接部11bに位置する部分に付着した汗は、該隣接部11b内の該対応部11a寄りの部分において不織布10の面方向に拡散されつつ親水性繊維層12へ移行する。ここで、繊維高密度領域隣接部11bの繊維の分布は、前記面方向において繊維高密度領域対応部12aからの距離が離れるほど繊維の数が少なくなる傾向があるため、該距離が長くなると、繊維間が疎になり繊維間距離が大きくなって、液を拡散するための毛管力が低減する。そのため、肌側親水領域14の面積が比較的大きい場合、具体的には例えば、親水化剤を疎水性繊維層11の比較的広い範囲に付与して肌側親水領域14を形成した場合、該肌側親水領域14における繊維高密度領域隣接部11bに位置する部分に付着した汗が親水性繊維層12へ速やかに移行されるためには、該隣接部11bで汗が前記面方向に拡散される必要があるにもかかわらず、該隣接部11bは毛管力が低減しているため、液を高密度領域まで拡散することができない。そのため肌側に液を保持し、保持量が一定量以上になると保持しきれず肌にウェットバックしてしまい、肌をドライに保てなくなる。以上の観点から、一般的な不織布の拡散速度や厚み等を鑑みると、肌側親水領域14は、繊維高密度領域対応部11aの平面視における中心から不織布10の面方向に10mm以内に存在することが好ましい。
また、子供がよく動いたときにかく汗は1分間に約1.1mg/min・cm2程度で、汗の比重を1g/cm3、平面視円形状の肌側親水領域14(繊維高密度領域13又は該領域13及びその周辺領域)の半径(繊維高密度領域対応部11aの平面視における中心からの距離)をa[cm]とすると、おむつ1の着用者が子供の場合、該領域14がフィルム化していないことを前提として、着用者が発汗した汗は、該領域14に一時的に溜まる。その一時的な汗の溜まり量は以下のように算出され、1.1a2π×10−3[cm3/min]である。
a[cm]2×π×1.1[mg/min・cm2]
=1.1a2π[mg/min]
=1.1a2π×10−3[cm3/min]
一方で、繊維高密度領域13の1個あたりの面積は、典型的には、最大1.5[mm2]以下である。また、不織布10から、繊維高密度領域13(肌側親水領域14)を含む、横方向Yに3cm、縦方向Xに任意の長さを有する平面視四角形形状を切り出してサンプルとし、JIS P8141に準じ且つ該サンプルの下端から5mmにわたる部分を試験液としての脱イオン水中に浸漬して、該サンプルのクレム吸水高さを測定した場合、該サンプルの下端部を脱イオン水中に浸漬した直後に瞬時に最低10mm以上の高さまで脱イオン水を吸い上げることから、繊維高密度領域13は液拡散性が高く、具体的には、2倍以上の拡散が可能であると推定される。ここで、繊維高密度領域13の厚みが例えば0.5[mm]である場合、該領域13がその体積の2倍量の液を瞬間的に保持できると考えると、該領域13の推定液保持量は以下のように算出され、1.5×10−3[cm3]である。
1.5[mm2]×0.5[mm]×2
=1.5[mm3]
=1.5×10−3[cm3]
そして、不織布10の平面視における肌側親水領域14と重複する部分(以下、「肌側親水領域存在部」ともいう。)の全体が、該肌側親水領域存在部に含まれる繊維高密度該領域13と同等の液保持能を有すると仮定し、該領域14(肌側親水領域存在部)の半径a[cm]を適宜変更して該肌側親水領域存在部の推定液保持量を計算すると、下記表1のようになる。下記表1に示すとおり、半径aが4mmすなわち繊維高密度該領域13(繊維高密度領域対応部11a)の平面視における中心から面方向に4mm以内の領域では、1分間に溜まる汗の量(表1のA)が該領域の推定液保持量(表1のB)の10倍以下となる。前記肌側親水領域存在部の1分間あたりの汗の溜まり量が斯かる範囲内にあれば、その溜まった汗を1分間で十分に拡散可能と考えられるため、該肌側親水領域存在部における肌側親水領域14は、繊維高密度領域対応部11aの平面視における中心から不織布10の面方向に4mm以内に存在することがより好ましいということになる。
前記の「繊維高密度領域対応部11aの中心」は、典型的には、該対応部11aを含む領域である繊維高密度領域13の中心と同位置であるところ、以下に説明するように、該領域13がフィルム化しているか否かで位置が異なり得る。
繊維高密度領域13がフィルム化している場合は、顕微鏡等を用いて該領域13を平面視観察し、該領域13の中心を決定する。この繊維高密度領域13の中心の決定方法は特に制限されず、典型的には、該領域13の平面視形状等に応じて適宜選択し得る。例えば、中心を決定すべきフィルム化した繊維高密度領域13が平面視円形状の場合は、その円の中心を求めるべく、該領域13とその周辺部との境界(フィルム化した部分と構成繊維の形状が維持された部分との境界)に位置する任意の1点をとり、その1点を基点として該領域13内を通過する直線を引いたときに、長さが最も長い該直線の中点を、該領域13の中心とする。また例えば、中心を決定すべきフィルム化した繊維高密度領域13が平面視楕円形状の場合は、まず、その楕円を通る2本の平行線を引き、次いで、両平行線のうち該楕円の輪郭線で包囲された部分それぞれの中心2点を通る直線を引き、該直線と両平行線それぞれとの交点の中点を、該領域13の中心とする。また例えば、中心を決定すべきフィルム化した繊維高密度領域13が平面視三角形以上の多角形状の場合は、その多角形の外周円を引いた上で、前記の円の中心の求め方に準じて該領域13の中心を決定する。また、繊維高密度領域13の平面視形状の如何にかかわらず、市販の画像解析ソフト等を用いて該領域13の中心を決定してもよい。
繊維高密度領域13がフィルム化していない場合、すなわち構成繊維の形状が維持されている場合は、まず、該領域13における「厚みが最も薄い部分」(肉薄部)を決定し、次いで、該肉薄部の中心を決定し、該肉薄部の中心を該領域13の中心とする。前記肉薄部の中心の決定は、前記の「繊維高密度領域13の中心の決定方法」に準じて行うことができる。前記肉薄部の決定は、以下の手順に従って行うことができる。まず、測定対象の不織布10を、おむつ1(吸収性物品)からコールドスプレー等を用いてはがすなどして、おむつ1から取り出す。次いで、取り出した不織布10を、コールドスプレーや液体窒素等で凍結した状態で、繊維高密度領域13を通っておむつ1の横方向Yに延びる仮想直線に沿って所定形状(典型的には平面視四角形形状)、所定寸法に切断し、切断片を作製する。そして、前記切断片の横方向Yに平行な切断端面を光学顕微鏡等で撮影し、その撮影画像に基づき、繊維高密度領域13における肉薄部を決定する。
一方、不織布10の非肌対向面側である親水性繊維層12において、繊維高密度領域対応部12a(親水性繊維層12における繊維高密度領域13に位置する部分)は、該対応部12a(繊維高密度領域13)の中心から不織布10の面方向に好ましくは10mm以内、より好ましくは8mm以内に存在することが好ましい。前述したとおり、繊維高密度領域対応部12aは、親水性繊維層12におけるそれ以外の部分(繊維高密度領域隣接部12b)よりも親水度が低くなり得るところ、このような低親水度の該対応部12aの面積が大きすぎると、親水性繊維層12内での液拡散が阻害されるおそれがあることから、斯かる不都合を防止するために、該対応部12aの存在範囲をその中心位置(繊維高密度領域13の中心)を基準として前記範囲内とすることが好ましい。前記の「繊維高密度領域対応部12aの中心」は、前述した「繊維高密度領域対応部11aの中心」の決定方法に準じて決定することができる。
前述した不織布10の吸汗性能をより一層向上させる観点から、繊維高密度領域13の厚み(実質厚み)T1(図6参照)は、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.05mm以下である。繊維高密度領域の厚みをこの上限以下にすることで、繊維間距離が低減して汗を吸液する毛管力が高まるため、望ましい。繊維高密度領域13の厚みT1などの、不織布10の各部の厚み(実質厚み)は、前記<厚み平均繊維間距離の測定方法>における不織布の厚みの測定方法に従って測定することができる。
肌側親水領域14は、前述したとおり図5に示す如くに、不織布10の面方向に間欠に存在しており、これにより、着用者の肌をドライに保ちつつ、所定の吸汗性能を発揮することができる。斯かるバランスの観点から、不織布10の肌対向面(疎水性繊維層11の肌対向面)の全面積に占める、肌側親水領域14の総面積の割合は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、そして、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。
1個の肌側親水領域14の面積は、好ましくは0.3mm2以上、より好ましくは0.4mm2以上、そして、好ましくは1.5mm2以下、より好ましくは1.3mm2以下である。
また、繊維高密度領域13が図5に示す如くに、不織布10の面方向に間欠に存在している場合において、不織布10の肌対向面の全面積に占める、繊維高密度領域13の総面積の割合は、好ましくは5%以上、より好ましくは12%以上、そして、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。
また、繊維高密度領域13が不織布10の面方向に間欠に存在している場合において、不織布10の肌対向面の任意の位置に一辺が10mmの平面視正方形形状の単位領域を仮想的に設けた場合、その単位領域に含まれる繊維高密度領域13の数は、好ましくは2個以上、より好ましくは4個以上、そして、好ましくは130個以下、より好ましくは100個以下である。繊維高密度領域13の単位領域あたりの数を前記範囲に設定することが好ましいとした理由の1つとして、おむつ1の主たる着用者である子供の発汗メカニズムに基づく理由が挙げられる。すなわち、子供が走り回る時の汗の量が約1mg/min・cm2であることから、不織布10の肌対向面(疎水性繊維層11の肌対向面)における繊維高密度領域13及びその周辺部において、1cm四方あたりに30秒間で溜まる汗は直径約0.48mmの半球状の液滴となるところ、その汗の液滴を繊維高密度領域13から吸収する際に、最低1点、好ましくは4点で分割して吸収することが、吸収した汗により親水性繊維層12の繊維が疎水化するなどの不都合を防止する上で有効であるためである。また、発汗の起点となるエリクソン汗腺の分布が1cm2あたり130〜600程度であるところ、フィルム化するなどした繊維高密度領域13(液吸収能を失った領域13)が、汗腺を完全に覆うと汗腺をふさぐ可能性があるため、斯かる不都合を防止する観点から、繊維高密度領域13の単位領域あたりの数を汗腺の数以下とするべく、前記範囲に設定した。
1個の繊維高密度領域13の面積は、不織布10の肌対向面及び非肌対向面それぞれにおいて、好ましくは0.2mm2以上、より好ましくは0.3mm2以上、そして、好ましくは1.5mm2以下、より好ましくは1.3mm2以下である。
なお、繊維高密度領域13は、不織布10の厚み方向の全体にわたって連続し、肌対向面と非肌対向面とで繊維高密度領域13のパターン(平面視形状及び配置)は実質的に同じであるから、前記の繊維高密度領域13の面積の割合や単位領域における数は、肌対向面と非肌対向面とで実質的に同じになる。
不織布10の見かけ厚みT2(図6参照)は、繊維高密度領域13の厚みT1に対して5倍以上、特に10倍以上であることが好ましい。見かけ厚みは、不織布10が凹凸構造を有するなどして部分的に厚みが異なる場合に、その凹凸構造を含めて測定した場合の、厚みが最も大きい部分の厚みであり、凹凸構造を考慮しない前記実質厚みとは異なる。すなわち不織布10は、面方向において、繊維高密度領域13と、見かけ厚みT2が繊維高密度領域13の厚み(実質厚み)T1の5倍以上の領域とを有することが好ましい。斯かる見かけ厚みT2を有する領域は、不織布10における繊維高密度領域13以外の領域(厚み平均繊維間距離が50μmを超える領域)である。
不織布10において、繊維高密度領域13以外の領域の厚み平均繊維間距離は、典型的には、この種の吸収性物品において体液の吸収に使用される不織布と同様であり、親水性繊維層12における繊維高密度領域対応部12a(親水性繊維層12における繊維高密度領域13に位置する部分)以外の領域は、不織布10が吸収した液の保持部として機能し得る。したがって、前記の「見かけ厚みT2≧厚みT1×5」なる大小関係が成立する不織布10は汗の吸収容量が向上しており、このような不織布10をウエストフラップWFの肌対向面側に具備するおむつ1によれば、着用者が短時間で大量の汗をかいた場合でも、その大量の汗を親水性繊維層12内に吸収保持することが可能となり、吸汗性能の一層の向上が図られる。不織布10の見かけ厚みの上限に関しては、おむつ1の肌対向面における不織布10の配置部と非配置部との差が着用者の肌の擦れや不快感に繋がらないようにする観点から、繊維高密度領域13の厚みに対して、好ましくは100倍以下、より好ましくは80倍以下である。不織布10の見かけ厚みT2は、不織布10をその厚み方向に切断し、その切断面を顕微鏡によって拡大観察し、測定できる。
本実施形態においては、前述したとおり、疎水性繊維11F及び親水性繊維12Fが短繊維であって、これらを構成繊維とする不織布10(疎水性繊維層11、親水性繊維層12)が短繊維不織布であるため、疎水性繊維11F及び親水性繊維12Fが長繊維である場合に比して、不織布10における繊維高密度領域13以外の領域(厚み平均繊維間距離が50μmを超える領域)の厚みが大きくなりやすい。不織布10において、親水性繊維層12における繊維高密度領域対応部12a以外の領域は、前述したとおり、不織布10が吸収した液の保持部として機能するから、該領域の厚みが大きくなりやすい短繊維不織布である不織布10は、液の吸収容量が比較的大きいという特徴を有する。したがって、おむつ1のウエストフラップWFの肌対向面側が短繊維不織布である不織布10から形成されていることにより、おむつ1の着用者が短時間で大量の汗をかいた場合でも、その大量の汗を不織布10内に吸収保持することが可能となり、吸汗性能の一層の向上が図られる。
疎水性繊維層11及び親水性繊維層12の坪量(目付)は、それぞれ、実用上十分な強度、吸収容量を確保しつつ嵩張らないようにする観点から、好ましくは24g/m2以上、より好ましくは28g/m2以上、そして、好ましくは45g/m2以下、より好ましくは40g/m2以下である。
図7〜図11には、本発明の吸収性物品におけるウエストフラップの肌対向面側を形成する不織布の他の実施形態である不織布10A〜10Eが示されている。後述する実施形態については、前述した不織布10と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、不織布10についての説明が適宜適用される。
前述した不織布10においては繊維高密度領域13がフィルム化していたが、図7に示す不織布10Aにおいては、繊維高密度領域13はフィルム化しておらず、構成繊維(疎水性繊維11F、親水性繊維12F)の形状が維持されている。繊維の形状が維持された繊維高密度領域13は、例えば、不織布又はその前駆体であるウエブにおける、繊維高密度領域13の形成予定領域を、構成繊維(疎水性繊維11F、親水性繊維12F)の素材である合成樹脂(熱可塑性樹脂)の融点未満の温度で加熱しつつ、圧搾することで形成することができる。不織布10Aによっても、基本的には不織布10と同様の効果が奏されるが、前述したとおり、吸汗性能の一層の向上の観点から、繊維高密度領域13はフィルム化されていることが好ましい。
図8に示す不織布10Bにおいては、肌側親水領域14が、疎水性繊維層11における繊維高密度領域13に位置する部分(繊維高密度領域対応部11a)のみに存在し、疎水性繊維層11における不織布10の面方向において繊維高密度領域13に隣接する部分(繊維高密度領域隣接部11b)には存在していない。このような、繊維高密度領域対応部11aのみに存在する肌側親水領域14は、前述したとおり、前記ii)の方法(繊維を溶融させる方法)によって形成可能であり、前記i)の方法(親水化剤を付与する方法)を利用せずに形成可能である。不織布10Bによっても不織布10と同様の効果が奏される。
図9に示す不織布10Cは、その全体にわたって厚みが均一であり、肌対向面及び非肌対向面の両面は、凹凸が無く平坦である。ここでいう「平坦」とは、図9に示す如き不織布の厚み方向に沿う断面を必要に応じ電子顕微鏡などを用いて観察し、該不織布における評価対象の面(肌対向面及び非肌対向面)において、厚み方向外方に最も突出している部分(最大凸部)の頂部を通って厚み方向と直交する方向(該不織布の面方向)に延びる仮想直線VL1を引くとともに、厚み方向内方に最も窪んでいる部分(最大凹部)の底部を通って厚み方向と直交する方向に延びる仮想直線VL2を引き、両直線VL1,VL2どうしの厚み方向の離間距離が1mm以内の場合を意味する。
不織布10Cは、図9に示すように、その全体が繊維高密度領域13である。つまり、不織布10Cにおいては、疎水性繊維層11の全部が繊維高密度領域対応部11aであり、親水性繊維層12の全部が繊維高密度領域対応部12aである。肌側親水領域14は、不織布10Cの面方向に間欠に存在している。
図10に示す不織布10D、及び図11に示す不織布10Eは、非肌対向面(親水性繊維層12の非肌対向面)が、繊維高密度領域13に位置する凹部と、繊維高密度領域13以外の領域(厚み平均繊維間距離が50μmを超える領域)に位置する凸部とからなる、凹凸を有している点で共通する。すなわち両不織布10D,10Eは、繊維高密度領域13以外の領域が吸収性物品の着用者の肌側とは反対側(非肌対向面側)に凸である点で共通する。繊維高密度領域13は相対的に厚みが小さく、繊維高密度領域13以外の領域は相対的に厚み(見かけ厚み)が大きく、このような両領域の厚み差に起因して、不織布10D,10Eの非肌対向面に凹凸が形成されている。
不織布10Dは、図10に示すように、非肌対向面が凹凸を有しているのに対して、肌対向面(疎水性繊維層11の肌対向面)は凹凸を有しておらず平坦である。ここでいう平坦の意味は、前述したとおりである。
不織布10Eは、図11に示すように、非肌対向面のみならず肌対向面も凹凸を有している。すなわち、不織布10Eの肌対向面(疎水性繊維層11の肌対向面)は、繊維高密度領域13に位置する凹部と、繊維高密度領域13以外の領域(厚み平均繊維間距離が50μmを超える領域)に位置する凸部とからなる、凹凸を有している。つまり、不織布10Eにおいては、繊維高密度領域13以外の領域が吸収性物品の着用者の肌側及び非肌側の双方に凸である。不織布10Eにおける肌対向面の凹凸パターン(凹部及び凸部の平面視形状及び配置)は、非肌対向面におけるそれと同じである。
不織布10D,10Eにおいて、前述した表面(肌対向面、非肌対向面)の凸部の形成位置は、繊維高密度領域13以外の領域であるところ、斯かる領域における繊維高密度領域対応部12a(親水性繊維層12における繊維高密度領域13に位置する部分)以外の領域は前述したとおり、不織布10が吸収した汗などの液の保持部として機能し、汗が蒸発するまでこれを保持し得る。このような吸収した汗の保持部として機能する親水性繊維層12の繊維高密度領域13以外の領域が、非肌対向面側(親水性繊維層12側)に凸であることにより、着用者の肌側とは反対側で汗が蒸発するまでこれを保持することが可能となるため、汗を保持した湿潤状態の不織布と肌との接触機会が低減され、着用中の発汗により生じる、べたつきによる不快感や、湿疹、あせも、かぶれなどの肌トラブルがより一層効果的に低減され得る。
このような、不織布の非肌対向面(親水性繊維層12の非肌対向面)が凹凸を有していることによる作用効果を活かしつつ、吸汗性能を一層向上させる観点から、繊維高密度領域13以外の領域において、非肌対向面を形成する層(親水性繊維層12)の厚みは、肌対向面を形成する層(疎水性繊維層11)の厚みよりも大きいことが好ましく、前者と後者との比率は、前者>後者を前提として、前者/後者として、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。ここでいう「厚み」は、当該層(非肌対向面を形成する層又は肌対向面を形成する層)において、見かけ厚みが最も大きい部分の厚みであり、通常、凸部の頂部が位置する部分の見かけ厚みである。
不織布10Eは、非肌対向面に加えて更に肌対向面も凹凸を有しているため、前述した非肌対向面の凹凸による効果に加えて更に他の効果を奏し得る。すなわち、不織布10Eの肌対向面は、吸収性物品のウエストフラップの肌対向面となり得るものであるところ、不織布10Eの肌対向面が凹凸を有していることで、これが平坦である場合と比べて着用者の肌との接触点が少なくなって、吸収性物品の着用者の肌との間の通気性が確保されやすくなるため、肌がドライに保たれやすい。また、汗の保持部として機能する親水性繊維層12の繊維高密度領域13以外の領域が、肌対向面側に凸であることにより、該領域に吸収された汗が肌対向面側から蒸発することが抑制されるので、この点でも肌がドライに保たれやすい。また、肌繊維高密度領域13以外の領域に厚み方向に相対する親水性繊維層12の領域が汗の保持部として機能するため、肌対向面側に凸であることにより液が保持された親水性繊維層12と肌との間に距離があることで、この点でも肌がドライに保たれやすい。
本発明の吸収性物品におけるウエストフラップの肌対向面側を形成する不織布においては、繊維高密度領域13以外の領域は、内部が構成繊維で満たされた中実構造(図6〜図8参照)であってもよく、あるいは内部が中空の中空構造であってもよい。すなわち、本発明の吸収性物品におけるウエストフラップの肌対向面側を形成する不織布において、その表面(肌対向面、非肌対向面)の凹凸を構成する凸部は中実でも中空でもよい。
熱を伴うか又は伴わないエンボス加工を利用して不織布の表面に凹凸を形成することもできる。具体的には例えば、凹凸パターンが形成された彫刻ロールと平滑ロールとからなる所定温度に加熱された一対のロール間に、不織布又はウエブを通して、不織布の表面に凹凸を形成する。斯かるエンボス加工によって形成された不織布の凸部は中実構造である。
また例えば、周面が凹凸形状となっている第1ロールと、該第1ロールの凹凸形状と噛み合い形状となっている凹凸形状を周面に有する第2ロールとを用い、両ロールの噛み合い部に不織布又はウエブを供給して、不織布の表面に凹凸を形成する。斯かる凹凸賦形によって得られた不織布において、前記噛み合い部によって厚み方向に圧縮された部分が繊維高密度領域13となり、圧縮されなかった部分の表面に凸部が形成される。斯かる凹凸賦形によって形成された凸部は中空構造である。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の吸収性物品は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、おむつ1においては、図4に示すように、不織布10は外層シート31の折り返し部31Eに接合されていたが、このような他の部材に接合されずに、不織布10単独でウエストフラップWFを構成してもよい。
また、おむつ1においては、図2に示すように、外装体3が腹側部F、股下部M及び背側部Rにわたる連続した形状をなしているが、これに代えて、外装体3が腹側外装体、背側外装体及び股下外装体にそれぞれ別部材として区分された分割型の形状をなしていてもよい。
前述した複数の実施形態において互いに異なる構成を、適宜変更し、置換し、あるいは組み合わせた形態とすることもできる。
また、本発明の吸収性物品は、前述したおむつ1の如きパンツ型使い捨ておむつに限定されず、体液の吸収に用いられる物品全般に適用することができ、例えば、展開型使い捨ておむつ、生理用ナプキンに適用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜6及び比較例1〜4〕
構成繊維の全部が疎水性繊維である疎水性繊維層と、該疎水性繊維層に一面と接触するように積層され、構成繊維の全部が親水性繊維である親水性繊維層とを有する、二層構造の不織布を製造した。
前記不織布の製造においては、不織布又はその前駆体であるウエブに所定の圧搾加工を施して、被圧搾領域を形成した。前記被圧搾領域の厚み平均繊維間距離が50μm以下の場合、当該被圧搾領域は本発明に係る繊維高密度領域である。
また、前記不織布の製造においては、疎水性繊維層の一部、具体的には、疎水性繊維層における前記被圧搾領域に位置する部分(以下、「被圧搾領域対応部」ともいう。繊維高密度領域対応部11aに相当。)を親水化するか、又は、該被圧搾領域対応部と、疎水性繊維層における不織布の面方向において該被圧搾領域に隣接する部分(該被圧搾領域から不織布の面方向に0.2mm以内の領域。以下、「被圧搾領域隣接部」ともいう。繊維高密度領域隣接部11bに相当。)とを親水化して、親水化部を形成した。前記親水化部の親水度(接触角)が、疎水性繊維層の他の部分(親水化部以外の部分)よりも高く且つ親水性繊維層(親水性繊維層の親水度が部分的に異なる場合は、親水度が最も低い部分)よりも低い場合、当該親水化部は本発明に係る肌側親水領域である。
以下に、各実施例及び比較例の不織布の製造方法を具体的に示すとともに、下記表2〜表3に、使用した材料、製造条件等を示す。
〔実施例1、2及び6の不織布の製造方法〕
短繊維の疎水性繊維をカード機で開繊して搬送コンベア上に積繊してウエブを得、該ウエブの一面全体に、短繊維の親水性繊維をカード機で開繊したものを積繊した後、搬送速度2m/min、油圧3MPa、エンボスロール及びスムースロールの温度それぞれ146℃の条件でエンボス加工して、繊維高密度領域及び肌側親水領域が図5に示す如きパターンで形成された二層構造の不織布を製造した。斯かる不織布の製造方法において、ウエブの不織布化はヒートロールによる熱エンボス加工によって行い、また、この熱エンボス加工によるウエブの不織布化と同時に繊維高密度領域を形成した。
〔実施例3〜5の不織布の製造方法〕
短繊維の疎水性繊維をカード機で開繊して搬送コンベア上に積繊してウエブを得、該ウエブの一面全体に、短繊維の親水性繊維をカード機で開繊したものを積繊した後、公知のエアスルー法により不織布化させて、二層構造のエアスルー不織布を製造した。そして、このエアスルー不織布に熱エンボス加工を施すとともに、エアスルー不織布の一面(肌対向面)に親水化剤を含む塗工液を塗布して、繊維高密度領域及び肌側親水領域が図5に示す如きパターンで形成された二層構造の不織布を製造した。前記熱エンボス加工は、相対向する一対のアルミニウム製の板状冶具の間に被加工物(不織布)を挟んで該冶具ごと120℃に加温しながら、プレス機により該冶具を厚み方向に所定圧力で15秒間加圧することにより行った。使用した一対の冶具のうちの一方は、被加工物との接触面に凸部が散点状に形成され、他方は、被加工物との接触面に該凸部に対応する凹部が散点状に形成されたものであった。また、前記親水化剤として、ポリオキシエチレンエーテルリン酸カリウム(製品名 アンホレックスMP−2K ミヨシ油脂株式会社)、ステアリン酸ジエタノールアミド(製品名 アミゾールSDE 川研ファインケミカル株式会社)を有効成分の重量比で6:4の割合で混合し用いた。
〔実施例7の不織布の製造方法〕
短繊維の疎水性繊維をカード機で開繊して搬送コンベア上に積繊してウエブを得、該ウエブの一面全体に、短繊維の親水性繊維をカード機で開繊したものを積繊した後、エアスルー法により不織布化させて、二層構造のエアスルー不織布を製造した。そして、このエアスルー不織布に超音波エンボス加工を施し、繊維高密度領域及び肌側親水領域が図5に示す如きパターンで形成された二層構造の不織布を製造した。斯かる不織布の製造方法において、この超音波エンボス加工によるウエブの不織布化と同時に繊維高密度領域を形成した。
〔比較例1の不織布の製造方法〕
短繊維の疎水性繊維をカード機で開繊して搬送コンベア上に積繊してウエブを得、該ウエブの一面全体に、短繊維の親水性繊維をカード機で開繊したものを積繊した後、公知のエアスルー法により不織布化させて、二層構造のエアスルー不織布を製造した。そして、このエアスルー不織布の一面(肌対向面)に親水化剤を含む塗工液を塗布して、肌側親水領域が図5に示す如きパターンで形成された二層構造の不織布を製造した。前記親水化剤として、実施例3〜5で用いた親水化剤と同じ物を用いた。
〔比較例2及び4の不織布の製造方法〕
短繊維の疎水性繊維をカード機で開繊して搬送コンベア上に積繊してウエブを得、該ウエブの一面全体に、短繊維の親水性繊維をカード機で開繊したものを積繊した後、公知のエアスルー法により不織布化させて、二層構造のエアスルー不織布を製造した。そして、このエアスルー不織布に熱エンボス加工を施すとともに、エアスルー不織布の一面(肌対向面)に親水化剤を含む塗工液を塗布して、繊維高密度領域及び肌側親水領域が図5に示す如きパターンで形成された二層構造の不織布を製造した。前記熱エンボス加工は、実施例3〜5で用いたものと同じである。また、前記親水化剤として、実施例3〜5で用いた親水化剤と同じ物を用いた。
〔比較例3の不織布の製造方法〕
短繊維の疎水性繊維をカード機で開繊して搬送コンベア上に積繊してウエブを得、該ウエブの一面全体に、短繊維の親水性繊維をカード機で開繊したものを積繊した後、公知のエアスルー法により不織布化させて、二層構造のエアスルー不織布を製造した。そして、このエアスルー不織布に熱エンボス加工を施して、繊維高密度領域及び肌側親水領域が図5に示す如きパターンで形成された二層構造の不織布を製造した。
前述したおむつ1と基本構成が同様のパンツ型使い捨ておむつを常法に従って作製した。具体的には、市販のパンツ型使い捨ておむつ(花王株式会社製、商品名「メリーズパンツ さらさらエアスルー Mサイズ」、2018年製)からドライヤーを用いて各部材を接着しているホットメルト接着剤を弱め、分解して取り出した表面シート、裏面シート、吸収体をそれぞれ用いた。この吸収体は、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとの混合積繊体からなる吸収性コアをコアラップシートで包んだものである。作製したパンツ型使い捨ておむつの腹側部及び背側部それぞれのウエストフラップの肌対向面側を前記不織布で形成し、各実施例及び比較例のおむつを得た。
〔評価〕
各実施例及び比較例のおむつについて、ウエストフラップの肌対向面側の不織布の吸汗性能を、下記に示した液残り量、液保持量により測定した。その結果を下記表2〜3に示す。
<液残り量の測定方法>
縦10cm、横10cm、重さ36gの平面視正方形形状のアクリル板を2枚用意した。1枚のアクリル板を一面が水平になるように載置し、該一面の中央部の5cm四方の範囲に、1μLの試験液の液滴49個をピペットで間欠配置した。次いで、測定対象の不織布を、その肌対向面(疎水性繊維層側の面)をアクリル板に対向させ、アクリル板上の全部の液滴を覆うように、アクリル板上に載せ、更に該不織布の上に、他の1枚のアクリル板を載せた。不織布の上にアクリル板を載せた時点から60秒経過後に、最上部にあるアクリル板とその下の不織布を取り除き、最下部にあるアクリル板上に残っている試験液を重量既知の吸水紙(キムワイプ(登録商標))で拭き取り、該吸紙の重量を電子天秤で計量し、その計量値と吸水前の該吸水紙の重量との重量差を算出して、当該不織布の液残り量とした。液残り量が少ないほど、当該不織布は吸水性能に優れるとして高評価となり、おむつはウエストフラップの吸汗性能に優れるとして高評価となる。
<液保持量の測定方法>
測定対象の不織布を5cm×5cm四方にカットしたものをサンプルとし、サンプルの重量を測定した。ビーカーに、サンプル全体が浸漬されるのに十分な量のイオン交換水を入れ、該脱イオン水中にサンプル全体を浸漬した。浸漬開始から3分経過後に、脱イオン水からサンプルを取り出し、サンプルの重量を電子天秤で計量し、その計量値と浸漬前のサンプルの重量との重量差を算出して、面積で除することで当該不織布の液保持量とした。液保持量が多いほど、当該不織布は吸水性能に優れるとして高評価となり、おむつはウエストフラップの吸汗性能に優れるとして高評価となる。
表2及び表3に示すとおり、各実施例は、ウエストフラップの肌対向面側を形成する不織布が厚み平均繊維間距離50μm以下の被圧搾領域(繊維高密度領域)を有していることに起因して、該繊維高密度領域を有していない比較例1、及び被圧搾領域の厚み平均繊維間距離が50μmを超えている比較例2に比して、性能に優れる結果になった。また、各実施例は、不織布における疎水性繊維層の親水化部の接触角が、該疎水性繊維層における親水化部以外の部分よりも小さく且つ親水性繊維層よりも大きく、親水度に関して、「親水性繊維層>疎水性繊維層の親水化部>疎水性繊維層の親水化部以外の部分」なる大小関係が成立していることに起因して、斯かる大小関係が成立してない比較例3に比して、性能に優れる結果になった。また、各実施例は、不織布における疎水性繊維層の親水化部が該不織布の面方向に間欠に存在していることに起因して、該親水化部が不織布の肌対向面の全域に存在(面方向に連続に存在)している比較例4に比して性能に優れる結果になった。