1.空気圧サーボバルブに要求される条件
さて、アクティブ除振台を構成する重要な基幹要素である空気圧サーボバルブに要求される条件は次のようである。
(1)高速応答性
(2)空気圧サーボバルブの一次共振点は十分に高く、数百Hz以上であること
(3)線形性・・・バルブ駆動電流に対する流量、及び発生圧力が直線的比例関係にある
上記(1)の理由は次の様である。たとえば、除振テーブル上に搭載されるステージ(図68の592)が発進・停止する際には、質量移動による駆動反力が直動外乱としてステージ設置面である定盤に入力される。この場合、ステージの加速度信号を用いて、除振装置にステージ・フィードフォワード制御(以下、ステージFF制御)を施すことにより、加速・減速時における定盤振動を減少させることができる。定盤振動を速やかに収束させるためには、空気圧アクチュータを駆動する空気バルブに高い応答性が要求される。
上記(2)の理由は、次の様である。空気圧アクティブ除振系の応答性は、数Hz〜10数Hzのオーダーであるにもかかわらず、サーボバルブに数百Hzの高い共振周波数が必要となる理由は、空気圧アクティブ除振系固有のニーズに基づくものである。バネと減衰と質量だけで構成されるパッシブ除振系の場合、アクチュータのバネ定数と減衰係数で決まる共振点において、減衰を増大すれば共振点のピークは低減できる。しかし、共振点以上の高周波数域において、減衰性能の低下を招いてしまう。
上記パッシブ除振系に加速度フィードバックを施したアクティブ除振系の場合、図65[補足(2)で説明]に示すように、高周波数域での除振性能の劣化を伴わずに、共振点のピークを低減できる。そのため、アクティブ除振台では加速度フィードバック制御の適用は必須である。しかし加速度フィードバック制御を施した場合、補足(2)で後述するように、アクティブ除振系の開ループ特性は、広い周波数範囲で開ループゲインが増大すると共に、位相が遅れた特性になる。さらに、閉ループ制御系に組み込まれる空気圧サーボバルブの共振点において、開ループゲインは共振ピークを有し、位相は180度以上遅れる。その結果、空気圧サーボバルブの共振周波数を十分に大きく、たとえば200Hz以上に設定しないと、制御系は安定性に対する充分な裕度が得られない。
上記(3)の理由は次の様である。
サーボバルブは流体サーボ装置(アクティブ除振台)の制御系を構成する一要素であるため、電流の変化分に対する流量の変化分の比率は流量ゲインとして、開ループゲインの中に組み込まれる。サーボバルブの流量特性が非線形の場合、アクティブ除振台全体の安定性裕度を見込むための開ループゲインは、流量ゲインの最大値で決定せざるを得ない。しかし、サーボバルブの動作点は、通常は駆動電流範囲の中間位置近傍(I≒Imax/2)で使用される場合が多い。そのため、電流に対する流量特性が非線形である程、動作点において必要以上に過剰なゲイン余裕を設定することになる。この場合、アクティブ除振台は本来有する十分な性能を発揮できない。
さらに、フィードフォワード制御(以下FF制御)は外乱が既知であって始めて成立する。上記ステージFF制御を施すためには、既知であるステージ挙動信号を用いる。ステージFF制御を用いて、直動外乱を効果的に相殺するためには、ステージの加速度信号を逆位相で忠実に再現する発生力の波形を作る必要がある。そのためには、バルブ駆動電流波形と発生圧力の波形が相似形になるように、すなわち、バルブ駆動電流の動作点を中心に、電流値に対する発生圧力(発生力)の特性が線形性を保つ領域を、出来るだけ広い範囲で持つのが好ましい。
2.従来の空気圧サーボ弁の課題
アクティブ除振台を構成する一例として、4点支持アクティブ制御を想定する。この場合、空気圧アクチュータは四隅に配置され、ユニットの設置向きは、水平X方向に2点、Y方向に2点が対角に配置される。また各アクチュータはZ方向の荷重を支持するアクチュータも組み込まれる。したがって、総計8個の空気圧アクチュータが配置され、各アクチュータを制御するための総計8個の空気圧サーボバルブが必要である。
上記(1)〜(3)を必要条件として要求される従来空気圧サーボバルブは、図69に従来バルブの一例を示したように、精度の高い多くの部品を必要とする。かつ3次元的な部材配置ゆえに、高い精度が要求されるノズルフラッパ部分での累積誤差が大きく、均一な性能を得るのが難しいという課題があった。また多軸制御のアクティブ除振台に上記バルブを搭載した場合、必要個数の多さゆえに、除振台に占めるコスト比率が高いという課題があった。
したがって、本研究に課せられた基本的命題は、従来の空気圧サーボバルブの複雑な構造を大幅に簡素化できる「新原理サーボバルブ」の可能性をいかにして見出すかということであった。そのためには、現在採用されている空気圧サーボバルブ技術の歴史的背景を分析する必要がある。現在の空気圧サーボバルブの基本形態は、長い歴史を有する油圧サーボバルブの技術を応用して派生的に生みだされたものである。
図70は、従来サーボバルブ共通の作動原理をモデル化した構造図を示すものである。サーボバルブの構成は大きく分けて、アクチュータ部A-1と流体制御部B-2に分けることができる。アクチュータ部A-1において、551はマグネット(永久磁石)、552はコイル、553はこのコイルを収納するボディ、554はフラッパ、555a、555bは先端を対向させて取り付けられた一対のヨーク、556はアクチュータ側のフラッパ先端部である。557はシール部材を兼ねた板ばね、558は前記板ばねの支持中心部である。但し、実際に使用されるサーボバルブの構造は、図69に一例を示したように、永久磁石と電磁石の各磁気回路を構成するためのそれぞれのヨーク材は、円周方向で直交して配置される3次元構造になっている。
ここで、フラッパ先端部556近傍の磁極部A-2(鎖線の円)に注目する。559aは前記フラッパ先端部とヨーク555a間の空隙部a、559bは前記フラッパ先端部とヨーク555b間の空隙部bである。図中の鎖線Φ1は、前記フラッパ先端部と前記各ヨーク間で電磁石が作る磁束、2点鎖線Φ2は、各ヨーク555a、555bの間に形成される永久磁石551による磁束である。ここで、磁極間の空隙部分の磁束Φ、磁極の断面積をS、空気の透磁率をμ0とすれば、発生するMaxwellの全応力Tは
したがって、フラッパ先端部に加わる力Fは、左右の磁極に発生する全応力(=応力×磁路面積)の差T1 -T2に比例する。
フラッパの変位を制御するために、電磁石が作る磁束Φ1を電流により可変させたときフラッパ先端部に加わる力Fは、式(2)に示すように、永久磁石が作る磁束Φ2によりアシスト(増強)されるのである。
流体制御部B-1において、560は順方向ノズル、561は逆方向ノズル、562は流体制御部側のフラッパ先端部である。563は供給口、564は排気口、565は負荷口(制御ポート)、566は制御室である。供給圧PSの気体は順方向ノズル560に供給され、フラッパ562と前記順方向ノズルの間隔に比例した流量が制御室566に流入する。一方、制御室566内の気体は、フラッパ562と前記逆方向ノズルの間隔に比例した流量が排気口564を経て大気に流出する。順方向ノズル560からの流入量と逆方向ノズル561からの流出量との差で、制御室566内の制御圧Paと負荷口565からの流出量が決定される。
油圧サーボにおいて、サーボバルブのアクチュータ部A-1と流体制御部B-2を分離構造にした理由は、電流を流す電磁石を導電体である油の中に浸すことはできなかったからである。また、永久磁石と電磁石を併用した理由は、油圧サーボの場合、ノズルから噴出した油の墳力がフラッパ面に加わる力は、墳力が流体の密度に比例するために、空気と比べて桁違いに大きい。この墳力に抗するためには、フラッパには大きな駆動力が必要であった。
一方、空気圧アクティブ除振台に適用されるこの種のサーボバルブにおいても、永久磁石を必要とする理由は次のようである。フラッパ554の等価質量をm、板ばね557の等価ばね剛性をKとしたとき、共振周波数f0は式(7)で後述するように、 に比例する。サーボ系を構成する場合、上記(2)の理由により、共振周波数f0を充分に高く設定する必要がある。フラッパ554の質量mは構造上小さくするのは限界があるため、共振周波数f0を高くするためには、ばね剛性Kを高くせねばならない。その結果、フラッパ554を駆動する駆動力Fを大きくする必要があり、永久磁石を利用して電磁石の駆動力をアシストする必要があったのである。
幅広い用途を有する油圧サーボと比べて、当初、空気圧サーボはマイナーな存在であった。時代の要請としてアクティブ除振台の登場により、空気圧サーボのニーズが浮上したとき、油圧サーボ技術で培われた従来サーボバルブ(図69)の基本構造の採用は、歴史的に必然の選択であったと考えられる。
2−2.空気圧サーボバルブの従来提案例
上述したサーボバルブの実施例が、永久磁石と電磁石の組み合わせによる磁気吸引作用を利用しているのに対して、磁界中に置かれた通電コイルに働くローレンツ力(リニアモータの原理)を利用して、フラッパ弁を調節するサーボバルブが特許文献4に提案されている。
図71に示すサーボバルブにおいて、601は順方向フラッパ、602は順方向ノズル、603は逆方向フラッパ、604は逆方向ノズル、605は供給口、606は排気口、607は負荷口(制御ポート)である。供給口605からの供給圧Psを有する気体は順方向ノズル602に供給され、順方向フラッパ601との間隔に応じて順方向ノズル602から噴き出した気体は、逆方向ノズル604の先の排気口606と、負荷口607の先の負荷とに並列に供給される。したがって、逆方向ノズル604は、気体を吸い込む機能を有し、いわば吸い込みノズルである。逆方向ノズル604における気体の吸い込み量は、逆方向フラッパ603との間隔に応じて変化する。このように、リニアモータの移動により、順方向ノズル602からの気体の噴き出しと、逆方向ノズル604への気体の吸い込みとを同期して制御することで、負荷口607に出力される気体圧Paを調整することができる。
なお、 リニアモータ608は、 筐体609に固定される磁石610、移動体611、移動体611に設置されるコイル612を有し、コイル612は、信号線613により接続端子614に接続される。 接続端子614は、 制御部(図示せず)に制御ケーブル等で接続される。移動体611の両端部は、 雲形ばね615,616を介して筐体609に支持される。 前記雲形ばねは、 薄板に例えば雲形のスリットを設けた板ばねで、 その中心に物体を接続し、周辺を固定端とすることで、 物体の軸周りの回転を規制し、 軸方向の移動を可能にして物体を支持できるラジアル支持ばねとしての機能を有する。
上記提案のフラッパ弁は、アクティブ制御除振台に要求される上記(2)の必要条件、すなわち、「空気バルブの一次共振点は十分に高い」という点に課題がある。リニアモータの可動部は、順方向フラッパ601、逆方向フラッパ603、コイル612、移動体611から構成されるため、可動部質量mは従来空気圧サーボバルブ(図69、表1参照)以上に大きくならざるを得ない。高い共振点を得るためには、ばね615,616の剛性を高くする必要がある。かつ高い剛性のばねに抗して駆動するリニアモータの発生力を大きくする必要がある。しかし、ローレンツ力を利用したリニアモータの場合、入力電流Iに対する発生力Fの電気機械変換効率が小さく、大きな発生力は得られない。したがって、ばね615,616の剛性Kは小さくせざるを得ないのである。前述したように、共振周波数は に比例するために、空気バルブの共振点を十分に高くできず、アクティブ制御除振台に要求される上記(2)の必要条件を満足することはできない。
具体的に、請求項1の発明は、流体供給源に流路が連絡したノズルと、前記ノズルの先端部に対して対向するように設けられたフラッパと、前記フラッパの一部を固定するフラッパ支持部材と、前記フラッパに対して吸引力が発生するように設けられた電磁石と、を備え、前記電磁石の吸引力により前記フラッパを変形させて、前記ノズルの先端部と前記フラッパとの離間距離を変化させるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、従来サーボバルブのように、支点を中心に揺動運動する剛体フラッパ構造とは異なり、電磁石の吸引力でフラッパ自身を弾性変形させて、前記ノズルと前記フラッパとの離間距離を可変することで、流体圧力と流量を制御したものである。
具体的に、請求項2の発明は、前記流体供給源は空気を供給するものであり、前記電磁石と、前記フラッパと、前記フラッパ固定部材と、がアクチュータ部を構成し、前記ノズルを通過する流体が、前記アクチュエータ部を構成する前記各部材の各壁面で構成される空間を通過するように構成したものである。
すなわち、本発明においては、油圧サーボ技術から派生的に生まれた従来エアーサーボ弁が、アクチュータ部と流体制御部が分離構造であるのに対して、アクチュエータ部を構成する各部材の壁面をエアーの流通路としたものである。
具体的に、請求項3の発明は、流体供給源に流路が連絡したノズルと、前記ノズルの先端部に対して対向するように設けられたフラッパと、前記フラッパを支持するフラッパ支持部材と、 前記フラッパの面板部に対して吸引力が発生するように設けられた電磁石と、前記電磁石と前記フラッパを少なくとも含むように構成された閉ループ磁気回路と、を備え、前記電磁石の吸引力により前記フラッパを変位させて、前記ノズルの先端部と前記フラッパとの離間距離を変化させるように構成されており、かつ、前記閉ループ磁気回路を構成する磁性材料部品の磁気特性が、磁化力に対する磁束密度の特性が概略比例関係にある線形領域と、磁化力に対する磁束密度特性の傾斜角が前記線形領域と比べて小さく変化する領域を磁気飽和領域とを有し、前記フラッパの変位可能範囲で前記電磁石に通電する電流を増大させたときに、前記磁性材料部品を流れる磁束の磁束密度は前記磁気飽和領域に入るように構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記閉ループ磁気回路に狭い磁路面積を有する箇所、あるいは磁気抵抗の高い箇所を設けて、電流値(磁化力)に対する磁束密度特性が、本来ならば急峻に立ち上がる領域に磁気飽和領域を設定する。その結果、電流値に対するフラッパ変位(流量)特性は、線形性・制御性の優れた特性を得ることができる。
具体的に、請求項4の発明は、前記磁性材料部品の磁化力に対する磁束密度特性において、前記線形領域と、前記磁気飽和領域の境界域における磁束密度境界値をBc、前記電磁石に通電させる電流値が最大値Imaxにおける閉ループ磁気回路の線形磁気抵抗の総和をRS、前記電磁石のコイル巻数をN、磁束をΦmax= N×Imax /RSとして、前記磁性材料部品の磁路面積をSc、磁束密度をBmax=Φmax / Scとしたとき、Bmax>Bcとなるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、磁性材料部品の磁気飽和現象を利用することで、線形性(制御性)の優れた特性を得ることができる点を利用しており、閉ループ磁気回路を構成するいずれかの要素が、バルブの動作範囲内で磁気飽和することが本発明を適用する上で前提条件となる。すなわち、Bmax<Bcならば、磁気飽和現象は発生せず、磁気回路は線形領域内で使用されている。Bmax>Bcならば、磁気飽和現象が上記(1)(2)の箇所で発生しており、本発明を適用する上で前提条件を満足していることが分かる。
具体的に、請求項5の発明は、前記電磁石に通電させる電流の最大値近傍で、電流に対する流量特性は上に凸の曲線となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、電流値の増大と共にフラッパの変位(流量)特性が、本来ならば急峻に立ち上がる領域に磁気飽和現象を利用することで、線形性(制御性)の優れた特性を得ることができる。したがって、入力電流の最大値近傍で流量は急峻に増大せず、制御性の良い抑制された特性となる。
具体的に、請求項6の発明は、前記フラッパを概略平板形状部材で構成し、前記フラッパ自身の弾性を利用して前記ノズルと前記フラッパ間の隙間の大きさに比例した復元力を前記フラッパに持たせたものである。
すなわち、本発明においては、バルブのフラッパに相当する部材を薄いディスク形状にすると、慣性負荷となる可動部の有効質量はノズル先端近傍における弾性変形部分のみとなる。従来サーボバルブは剛体であるフラッパがバネで支持されているのに対して、本発明サーボバルブはフラッパ自身が弾性体(バネ)である。そのため、可動部の有効質量を小さくできて、共振周波数を高くできる。また、フラッパを支持するばね剛性を十分に小さくできるために、本実施例バルブは高い共振周波数を有するにもかかわらず、電磁石のみでフラッパを駆動することができる。
具体的に、請求項7の発明は、前記フラッパは前記磁性材料部品で構成したものである。
すなわち、本発明においては、1.電流に対するバルブ流量の応答性を高めるためには、可動部であるフラッパを軽量化、すなわち、フラッパの板厚を薄くする必要がある。2.フラッパの板厚を薄くすることで、磁束が流れる磁路面積が小さくなり、前記磁気飽和現象を利用できる。上記1.2.の目的が合致することを利用したものである。また可動部であるフラッパの板厚を薄くしても、構造体としてのバルブ本体の強度に影響を与えない。
具体的に、請求項8の発明は、前記電磁石が、前記フラッパと対向する内側端面に形成された第1磁極と、前記フラッパと対向する外側端面に形成される第2磁極と、を具備し、前記フラッパが、前記電磁石が形成する磁気閉ループ回路において前記第1磁極と第2磁極との間の一部が形成される磁気経路部と、前記フラッパ支持部材に支持されるとともに、前記磁気経路部を弾性的に支持する弾性支持部と、を具備し、前記磁気経路部と前記弾性支持部の曲げ剛性が異なっているように構成されたものである。
すなわち、本発明においては、フラッパに相当するディスクを、たとえば凸形円盤形状にすることにより、ディスクに作用する磁気吸引を利用する箇所(磁気経路部)を前記第1磁極と第2磁極の間に形成し、ディスクのバネ剛性を設定する箇所(弾性支持部)を前記ディスクの固定側に形成したものである。ディスクを上記形状にすることにより、たとえば、「ディスク剛性を低下するために、ディスクを薄くすると磁気抵抗が増加する」という相矛盾した関係を断ち切ることができる。その結果、十分な吸引力を得るための磁気回路と、適切な剛性を得るためのディスク形状を個別に選択することができる。
具体的に、請求項9の発明は、前記弾性支持部の曲げ剛性は、前記磁気経路部の曲げ剛性よりも小さ構成したものである。
すなわち、本発明においては、磁気回路設計とディスクの構造設計を個別に行うことができるため、同一の剛性を維持したままで、大きなディスク変位を得ることができる。
具体的に、請求項10の発明は、前記第1磁極が前記磁気経路部の中央部と対向しており、前記第2磁極が前記磁気経路部の外縁近傍と対向しているように構成したものである。
すなわち、本発明においては、閉ループ磁気回路を形成する第2磁極を、前記弾性支持部を迂回する磁路となるバイパス部材を介して設けることにより、適正な吸引力を得るための磁気回路設計と、適正な剛性を得るためのフラッパの構造設計を分離できる。
具体的に、請求項11の発明は、前記ノズルが2ケ所に設けられており、一方のノズルが流体の供給側に設けられて順方向ノズルとして構成され、他方のノズルが流体の排気側に設けられて逆方向ノズルとして構成され、前記順方向ノズルと、前記逆方向ノズルと、前記フラッパとが双方向ノズルフラッパ弁を構成しており、流体供給源から供給される作動流体は供給源側から前記順方向ノズルを通過して、前記フラッパが収納される空間である制御室へ流入し、この制御室から前記逆方向ノズルを通過して流体の排気側へ流出するように構成され、前記順方向ノズルと概略同軸上で、前記フラッパに対して反対側に前記逆方向ノズルを配置したものである。
すなわち、本発明においては、磁気ギャップの変化が直接エアーギャップの変化となるように構成するメリットは、順方向ノズル(供給側ノズル)と逆方向ノズル(排気側ノズル)と双方向フラッパから構成されるノズルフラッパ弁にも適用できる。
具体的に、請求項12の発明は、設定したい電流に対するフラッパ変位特性、もしくは、電流に対するフラッパ流量特性の変化領域における傾きに応じて、前記フラッパを構成する材料の磁化力に対する磁束密度の磁気特性を選択したものである。
すなわち、本発明においては、前記フラッパ材料の磁化力に対する磁束密度の磁気特性において、線形領域の電流値における傾斜角、線形領域から磁気飽和領域へ遷移する磁化力の境界値、及び、磁束密度の最大値(飽和磁束密度)を適切に選択することにより、電流値に対するフラッパ変位(流量)特性は、バルブの要求仕様に合わせた特性を得ることができる。
具体的に、請求項13の発明は、吸入口を流体供給源に連結して、制御室から大気に繋がる流路に流量計を装着して、前記電磁石に通電させる電流が最大値Imax(A)のときに前記流量計により測定される流量をQmax (L/min)、勾配Qmax/Imaxを基準流量ゲインα、入力電流に対する流量特性のプロフィールにおいて、勾配の最大値を最大流量ゲインβとして、線形化の効果指標η=α/βを定義したとき、η>0.2となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、線形化の効果指標η>0.2となるように設定することにより、除振特性・制振特性共に、実用上は支障の無い性能が得られる。適用対象による性能不足は、制御系全体のシンセシス(総合設計)で補うことができる。
具体的に、請求項14の発明は、η>0.4となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、線形化の効果指標η>0.4となるように設定することにより、除振特性・制振特性共に十分な性能が得られる。バルブの汎用性は高く、バルブの適用対象に依存しない。
具体的に、請求項15の発明は、前記電磁石は磁性材料である支持軸と、この支持軸を軸芯として巻かれたコイルと、このコイルを収納するように配置された磁性材料である筒部から構成され、前記支持軸と、前記フラッパと、前記筒部とにより閉ループ磁気回路を構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記支持軸を磁路の中心として、前記コイルを収納する筒部、前記フラッパにより、閉ループ磁気回路を構成する。磁気回路が軸対称であるために、流体の流れも軸対称にできる。また、これらの部品を収納するハウジングも加工性の良い軸対称部品で構成によるシンプルな構造の流体サーボバルブが実現できる。
具体的に、請求項16の発明は、前記支持軸を貫通して流体の供給側、もしくは排気側に連絡する流通路を形成して、前記ノズルは前記流通路の前記フラッパ側開口端に設けたものである。
すなわち、本発明においては、コイルを外周部に収納する支持軸を貫通して流通路を形成し、かつ流通路の前記フラッパ側開口端にノズルを設けることにより、閉ループ磁気回路に影響を与えることなく、シンプルな構成で流体サーボバルブを実現できる。
具体的に、請求項17の発明は、前記ノズルが2ケ所に設けられており、一方のノズルが流体の供給側に設けられて順方向ノズルとして構成され、他方のノズルが流体の排気側に設けられて逆方向ノズルとして構成され、前記順方向ノズルと、前記逆方向ノズルと、前記フラッパとが双方向ノズルフラッパ弁を構成しており、 前記順方向ノズル、もしくは、前記逆方向ノズルは前記支持軸を貫通して形成された流通路の前記フラッパ側開口端に設けたものである。
すなわち、本発明においては、前記支持軸を利用して流路となる貫通穴(流通路)を形成し、かつ2つのノズルの一方を貫通穴の前記フラッパ側開口端に設けることで、前記ノズルを装着しやすく、前記ノズルの突出量の調整が容易である。あるいは、前記ノズルを支持軸に貫通した流路のフラッパ側端面に、機械加工により直接形成する場合でも、突出量を高い加工精度で形成できる。本構成により、流路抵抗が小さく、シール性(漏れ防止)が良い流路構成ができる双方向フラッパによるノズルフッパ弁を実現できる。
具体的に、請求項18の発明は、前記順方向ノズルが設けられ、流体の供給源側に繋がる流路が形成された供給側ハウジングと、前記逆方向ノズルが設けられ、流体の排気側に繋がる流路が形成された排気側ハウジングと、前記フラッパと前記供給側ハウジングの前記フラッパ対向面の間に形成される空間である供給側空隙部と、前記フラッパと前記排気側ハウジングの前記フラッパ対向面の間に形成される空間である排気側空隙部と、を具備し、前記フラッパに前記供給側空隙部と前記排気側空隙部を連絡する流通穴を形成したものである。
すなわち、本発明においては、独立した密閉空間である前記供給側空隙部と前記排気側空隙部を連絡する流通穴を前記フラッパに形成することにより、2つの密閉空間は圧力差の無い共有空間(制御室)となる。その結果、前記フラッパに圧力差による軸方向荷重が加わらない構成にできる。
具体的に、請求項19の発明は、前記フラッパが、板状をなし、前記ノズル側へ変形可能に構成された弾性変形部を具備するように構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記磁気経路部を前記第1磁極近傍に形成し、前記弾性支持部を閉ループ磁気回路から外れた前記フラッパ外周部固定側に形成することで、磁気吸引力特性と無関係にフラッパの支持剛性を設定できる。
具体的に、請求項20の発明は、前記電磁石が、前記フラッパと対向する端面に形成された磁極を具備し、前記フラッパが、板状をなし、中央部で前記磁極と対向するとともに、前記弾性変形部が、前記フラッパにおいて当該フラッパの中央部と前記フラッパ支持部材の間に形成された厚み方向に貫通する貫通穴により形成したものである。
すなわち、本発明においては、前記弾性支持部に弾性変形し易い螺旋形状ばね、あるいは雲形ばねを適用することで、前記フラッパの支持外径を小さくでき、バルブ本体の径小化が図れる。
具体的に、請求項21の発明は、前記支持軸の前記フラッパ側端面に、前記支持軸に設けられた前記ノズルの開口端と連絡する半径方向流通路を形成したものである。
すなわち、本発明においては、前記支持軸の前記フラッパ側端面に、前記ノズルの開口端と連絡する半径方向流通路を形成することで、前記支持軸端面と前記フラッパ側端面間の隙間を十分に小さく設定できる。そのため、支持軸端面からの前記ノズルの突出量は小さくてよく、フラッパと磁極(支持軸端面)間の初期ギャップを小さくできるため、小さな電流で大きなフラッパ最大変位(最大流量)を得ることができる。
具体的に、請求項22の発明は、磁束が前記弾性支持部を迂回する磁路で、かつ外径がコイル径よりも小さいバイパス部材と第2磁極を、前記閉ループ磁気回路内に形成したものである。
すなわち、本発明においては、閉ループ磁気回路を形成する第2磁極を、たとえばコイル外径よりも小さな内径のリング形状で設けて、かつ前記弾性支持部を迂回する磁路となるバイパス部材と連結することにより、ディスク外径を径小化しても十分な吸引力を得ることができてバルブ本体の小型化が図れる。
具体的に、請求項23の発明は、横断面が概略環状の流路を形成する環状流路形成構造が、前記ノズルと前記フラッパとの間に形成されており、前記環状流路形成構造が、前記概略環状の流路の外側境界を形成する筒状の内周面と、前記内周面に対して半径方向に離間させて挿入される挿入体とからなるものである。
すなわち、本発明においては、前記環状流路形成構造が前記ノズルと前記フラッパとの間に形成されているので、前記環状流路形成構造により形成される流路の軸方向の長さは、前記フラッパの移動により変化することになるので、通常のノズルフラッパ弁とは異なる流量特性を得ることができる。たとえば、電流に対する流量の勾配が極めて小さい区間を有するバルブが構成できる。
具体的に、請求項24の発明は、前記順方向ノズルと前記フラッパとの間、前記逆方向ノズルと前記フラッパとの間にそれぞれに前記環状流路形成構造が形成されており、流体は供給源側から前記順方向ノズルを通過して、前記フラッパが収納される空間である制御室へ流入し、この制御室から前記逆方向ノズルを通過して流体の排気側へ流出するように構成されていることを特徴とする。
すなわち、本発明においては、例えば前記フラッパの可動範囲の概略中間位置(動作点)で、供給側挿入体のノズル側端面は供給側ノズルの開口端と近接した状態にし、前記供給側ノズルから前記制御室に流入する流体の流れは、粘性流領域からポテンシャル流領域に移り変わる遷移領域にすることができる。また、前記制御室から前記排気側ノズルに流入する流体の流れも、同様に遷移領域にすることができる。そのため、フラッパ変位に対する流量特性は前記フラッパの変位量に対して下に凸の曲線にできる。したがって、バルブの前記動作点において、流体の供給源側から排気側に流出する定常状態における流量を充分に小さくすることができる。
具体的に、請求項25の発明は、前記筒状の内周面が、前記ノズルの先端部の内周面であり、 前記挿入体が、前記フラッパの面板部に形成された概略円錐形状の凸部であることを特徴とする。
すなわち、本発明においては、電流値に対するノズルフラッパ間の流路面積がなだらかに変化するように、ノズルと勘合するフラッパ側凸部をテーパ形状にすることで、電流値に対する流量特性を線形性に優れた特性にすることができる。
具体的に、請求項26の発明は、前記電磁石と前記フラッパを少なくとも含むように構成された閉ループ磁気回路を用いて、かつ、前記ノズルと前記電磁石間の最大ストロークを0.5mm以上に設定したものである。
すなわち、本発明においては、磁気飽和現象をさらに積極的に利用することにより、電流に対するフラッパの変位特性の線形性を失うことなく、フラッパのストロークを大幅に増大することができるという点を利用したものである。フラッパが大きなストロークで駆動できるため、フラッパの凸部と、ノズル側オリフィスの勘合状態を、フラッパの軸方向移動により調節できる部品の構成と加工が可能となる。
具体的に、請求項27の発明は、流体供給源に流路が連絡したノズルと、前記ノズルの先端部に対して対向するように設けられたフラッパと、前記フラッパを支持するフラッパ支持部材と、前記フラッパの面板部に対して吸引力が発生するように設けられた電磁石と、を備え、前記電磁石の吸引力により前記フラッパを変位させて、前記ノズルの先端部と前記フラッパの面板部との離間距離を変化させるように構成され、前記フラッパを収納する空間である制御室内で、前記フラッパとその対向面の固定側壁面の間に形成された概略一定圧力を保つ定圧室から構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記フラッパと前記固定側ハウジングの間に形成された概略一定圧力を保つ定圧室を設けることで、フラッパの前後に加わる圧力差による荷重と電磁石吸引力が平衡するため、電磁石の入力電流に対する制御圧力が比例関係になるようなバルブ特性を得ることができる。
具体的に、請求項28の発明は、断面視において磁性材料部材を概略多角形形状に連結して閉ループ磁気回路を形成し、前記磁性材料部材のそれぞれは、電磁石のコイルを巻く鉄芯、ヨーク材、フラッパで構成したものである。
具体的に、請求項29の発明は、前記磁性材料部材の一つの端部に磁極を形成し、その対向面に間隙を介して前記フラッパを配置したものである。
具体的に、請求項30の発明は、前記磁性材料部材の一つを貫通して流体の供給側、もしくは排気側に連絡する流通路を形成して、前記ノズルは前記流通路の前記フラッパ側の開口端に設けたものである。
具体的に、請求項31の発明は、請求項1又は3で記載される流体サーボバルブと、前記制御対象物の変位及び又は振動状態を検出するセンサと、このセンサからの情報に基づいて前記流体サーボバルブを調節することで、前記制御対象物の変位、速度、加速度などを制御する気体圧力を前記空気圧アクチュータに与える制御手段から構成したものである。
すなわち、本発明においては、油圧サーボ技術から派生的に生まれた従来の空気圧サーボバルブの複雑な構造が大幅に簡素化できることで、性能を低下させることなく、構造と制御面でのシンプルな構成による空気圧サーボ装置が実現できる。
具体的に、請求項32の発明は、前記フラッパの1次固有振動数を200Hz以上に構成し、除振対象物を基礎に対して支持する気体ばねと、気体を供給側から前記気体ばねに供給してかつ排気側へ排気する前記流体サーボバルブと、前記除振対象物の振動状態を検出する加速度センサと、この加速度センサからの情報に基づいて前記流体サーボバルブを調節することで、前記除振対象物の振動を低減する気体圧力を前記気体ばねに与えるアクティブ制御手段から構成したものである。
すなわち、本発明においては、本実施例バルブの下記特徴、つまり、(1)共振周波数を高く設定できる、(2)小電力でバルブを駆動できる、(3)高速応答性が得られる、(4)構造がシンプルで部品点数が少なく、部品加工、組み立て・調整が容易、などにより、装置全体の大幅な性能向上と、1次固有振動数を高く設定できることから、加速度フィードバックをより効果的に活かせるアクティブ除振台が実現できる。
具体的に、請求項33の発明は、電磁石と、ディスクと、このディスクを固定する支持部材と、前記電磁石、前記ディスク、ヨーク材により閉ループの磁気回路を構成して、前記磁極と前記ディスク間に発生するMaxwell吸引応力で可動され、かつ前記ディスクに固定された出力軸と、前記電磁石と、前記ディスクと、前記支持部材と、前記ヨーク材と、前記出力軸で構成される箇所をマイクロアクチュータ部とし、流体の吸入口と、吐出口と、この吐出口と前記吸入口の間に介在する流路開度調節部から構成される箇所を流体制御部とし、前記マイクロアクチュータ部の前記出力軸と前記流体制御部を連結させて、前記出力軸により前記流路開度調節部を操作することを特徴とする流体サーボバルブであって、前記閉ループ磁気回路を構成する磁性材料部品の磁気特性を、磁化力に対する磁束密度の特性が概略比例関係にある線形領域と、磁化力に対する磁束密度特性の傾斜角が前記線形領域と比べて小さく変化する領域を飽和領域と定義して、前記ディスクの作動可能範囲で電磁石に通電する電流値を増大させたとき、前記磁性材料部品を流れる磁束の磁束密度は前記飽和領域に入るように構成したものである。
すなわち、本発明においては、磁気飽和現象を上記方法で利用することで、電流に対する出力軸の変位特性は、線形性(直線性)の優れた特性を得ることができるという点に加えて、出力軸のストロークを大幅に増大することができる点を利用したものである。50〜100μm程度が限界であった従来のピエゾアクチュータ、超磁歪アクチュータでは得られなかったミリ・オーダーの変位制御が可能である。さらに、ボイスコイルモータ(リニアモータ)と比較しても、推力定数が高く、小電力で駆動できてアクチュータの大幅な小型化が可能である。
具体的に、請求項34の発明は、前記電磁石の中央部を貫通して、前記出力軸が設けられているものである。
すなわち、本発明においては、前記コイルに電流を印加したとき、前記出力軸端部はアクチュエータ本体から突き出る動作をする。したがって、本アクチュータが磁気吸引式であるにも関わらず、従来から広く用いられている圧電型、磁歪型アクチュータ等と同様の使い方ができる。
具体的に、請求項35の発明は、変位・速度・加速度センサは前記出力軸の前記電磁石とは反対側の端部に、前記出力軸の変位、速度、加速度等の位置情報を検出するセンサを配置したものである。
すなわち、本発明においては、中心軸が前記外枠部を貫通した構成にすることにより、前記出力軸端部と反対側の空間を利用してセンサを配置できて、センサ内蔵型のマイクロアクチュータをコンパクトに構成できる。
具体的に、請求項36の発明は、前記出力軸は静圧軸受によって半径方向が支持されているように構成したものである。
すなわち、本発明においては、中心軸を支持する軸受に静圧軸受を用いれば、クーロン摩擦(静摩擦)の影響から回避できるため、前記出力軸端部は精度の高い変位制御ができる。
具体的に、請求項37の発明は、前記吸入口と前記ノズル開口部間を繋ぐ供給側流路において、前記開口部より上流側に設けられた整流化区間の長さをL、この整流化区間の平均内径をdとして、L/d>4となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、前記フラッパには前記供給側ノズルからの高圧流体墳力が加わり、この流体墳力が前記フラッパを励振させ、異音を発生させ、流量を不安定にするなどの問題を解消するものである。前記供給側ノズル開口部に最も近接した流路径の平均値をΦd、流速に急峻な変化を生じさせない長さLの整流化区間を形成して、この長さLを充分に大きく設定することにより、流体墳力がもたらす前記フラッパの不安定現象を解消することができることを見出したものである。
さて、本発明による流体サーボバルブの特徴を列記すれば、
(1)共振周波数を高く設定できる
(2)小電力でバルブを駆動できる
(3)高速応答性が得られる
(4)構造がシンプルで部品点数が少なく、部品加工、組み立て・調整が容易
従来バルブの欠点を大きく解消する本発明バルブにより、今後、空気圧サーボシステムの幅広い普及はおおいに加速すると予想される。その効果は顕著である。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施形態1に係る空気圧サーボバルブの正面断面図である。
10は磁性材料である筒部形状の中心軸(支持軸)、11はこの中心軸の底部、12は前記中心軸と同芯円で形成された外枠部、13は前記中心軸に装着された非磁性材料のコイルボビン、14は前記コイルボビンに巻かれたコイルである。中心軸10、外枠部12、コイルボビン13、コイル14により、フラッパ(後述)の面板部を吸引して、その変位を制御する電磁アクチュエータ(電磁石)を構成している。15は外枠部12を収納する筒形状のハウジング、16は前記ハウジングの側面に締結される排気側底板、17は底部11と排気側底板16を締結するボルト、18はハウジング15と排気側底板16を締結するボルト、19は中心軸10に形成された気体(作動流体)の排気側流通路、20は排気側底板16に形成された吐出口である。21は供給側底板、22は前記供給側底板の中心部に形成された気体の供給側流路、23は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる気体の制御側流路である。24は円盤ディスク形状のフラッパでボルト25によりハウジング15と供給側底板21の間に装着される。すなわち、前記ボルト、前記ハウジング、前記供給側底板がフラッパ支持部材であり、前記フラッパ24の外縁部を挟み込んで固定して外縁部については動かないようにしている。26はフラッパ24と供給側底板21の壁面間に形成される供給側空隙部、27はフラッパ24と排気側壁面(コイルボビン13、ハウジング15等)の間に形成される排気側空隙部である。
図2に示す円盤ディスク形状のフラッパ24において、28a、28b、28c、28dは供給側空隙部26と排気側空隙部27を連絡するフラッパに形成された流通穴(電磁石には28b、28dは図示せず)である。29は供給側ノズル(順方向ノズル)、30は排気側ノズル(逆方向ノズル)である。31は中心軸10のフラッパ側端面(中心軸端面で第1磁極)、32は外枠部のフラッパ側端面(外枠部端面で第2磁極)である。供給側空隙部26と排気側空隙部27、及び、制御側流路23で形成される空間が本バルブの制御室33、34は吸入口である。ちなみに、前記フラッパという呼称は、従来バルブのモデル図64に示すように、一般には揺動運動する平板のイメージがある。本実施例を含む本発明では、ノズルの対向面に配置されて、ノズルとの間で流体の流路面積を調節する部材を、その部材形状に関わり無くフラッパと呼ぶことにする。
後述する実施例も同様であるが、本実施例では前記磁極(第1磁極と第2磁極)の中心線上で、かつ前記磁極側に排気側ノズルを配置し、さらに前記フラッパを介在して前記磁極の反対側に供給側ノズルを配置している。
図3a、及び図3bは電磁アクチュエータ近傍の拡大図で、図3aは上面図、図3bは正面断面図である。図中の矢印を有した点線は、コイル14に通電することで発生する磁束を示すもので、この磁束により、「第1磁極31→空隙部27→フラッパ24→空隙部27→第2磁極32→外枠部12→底部11→中心軸10」の閉ループ磁気回路が形成される。但し、コイル14に流す電流の方向が逆の場合、上記磁束の向きは逆になる。ここで、磁気回路を流れる磁束をФ、中心軸端面31(第1磁極)のリング形状面積をS1、外枠部端面32(第2磁極)のリング形状面積をS2、空気の透磁率をμ0とすれば、Maxwellの応力によるフラッパ24の面板部に働く吸引力Fは、
吸引力Fによりフラッパが変位して、フラッパに働く円盤ばねの反力とこの吸引力Fが平衡する。磁束Фはコイル14に通電する電流値に比例するために、電流を可変させることにより、フラッパ変位、即ちノズルとその対向面間の隙間(離間距離)を調節できる。
図4はフラッパ24と供給側ノズル29、排気側ノズル30の位置関係を示す部分拡大図で、図4aはコイルに通電する電流値I=0で、フラッパ24が供給側ノズル29先端を遮蔽している状態、図4bはコイルに電流が通電されて、フラッパ24が供給側ノズル29と排気側ノズル30の中間にある状態を示す。図4aにおいて、X0はフラッパ24と第1磁極31間の隙間(初期ギャップ)、δn は第1磁極31端面に対する排気側ノズル30先端部の突出量、δaは排気側ノズル30先端部とフラッパ24間の隙間(流路長さ)であり、フラッパ24の最大ストロークである。実施例では、コイル14に通電する電流値I=0のときは、図4aに示すごとく、フラッパ24が供給側ノズル29先端を遮蔽するように各部材の位置関係を設定している。コイル14に電流が印加されると、図4bに示すように、フラッパ24は供給側ノズル29先端から離れる。ここで変位Xは、フラッパ24が初期ギャップX0の位置から排気ノズル30側への移動量である。以降の実施例においても、「変位Xは初期ギャップX0の位置からの移動量」として定義する。
図5は、同図中に記載された設定条件の基で、電流値Iに対するフラッパ変位Xを示すものである。解析方法は
i.磁極とフラッパ間のギャップ(X0-X)を与えて、磁場解析により吸引力Fを求める
ii.上記吸引力Fとフラッパの支持剛性Kからフラッパ変位Xを求める
iii.磁束コントロール面における磁化力Hと磁束密度B関係(図11)を考慮しながら、上記i.ii.を連成問題として収束計算をする。
上記のステップi.〜iii.を経て求めたものである。但し、上記iii.について詳細は後述する。図5のグラフから、I=0.02AのときX=0.045mmである。ここでI=0.02Aのとき、フラッパ24が排気ノズル30を遮蔽するように設定すれば、フラッパの最大ストロークXmax=δa=0.045mmである。したがって、ノズル突出量δn = X0-δa =0.250-0.045=0.205mmに設定すればよい。
以下、各ノズルとフラッパ間のギャップを与えたときの、本実施例サーボバルブの圧力・流量特性を求める。サーボ弁のノズルを通過する気体の質量流量は、圧縮性流体の等エントロピ流れにおけるノズルの式(4)(5)を用いる。ノズルフラッパ間の開口面積は、ノズル先端とフラッパ間で形成される環状の流路面積であり、ノズル内径をdとして、供給側開口面積ain=dπX、排気側開口面積aout=dπ(δa-X)である。以下、供給源側から空気室に流入する気体の質量流量Ginを次式に示す。ここで、Psは供給源圧力、Paはサーボバルブの制御室圧力、ρsは供給源気体密度、κは比熱比である。
但し、Pa/Ps<{2/(κ+1)}2/(κ-1) のときは
前記制御室から大気側へ流出する気体の質量流量Goutは、式(4)、(5)において、Ps→ Pa、Pa→ P0、ρs→ρa、aout=dπ(δa-X) とすればよい。Vcは制御室33の容積、Rは気体定数である。この質量流量Gin、Goutにより、制御室33の圧力Paは、次式で求められる。
図6は、実施形態1に係る空気圧バルブにおいて、電流値に対する定常状態における制御圧力の解析結果を示すものである。制御圧力とは、制御側流路23に繋がる供給側空隙部26と排気側空隙部27で形成される制御室33の圧力Paである。解析条件は、供給圧力PS=0.6MPa(abs)、大気圧P0=0.1MPa(abs)、供給側ノズル29と排気側ノズル30のノズル内径は共にΦ1.2mmである。
図7は、排気ポートを遮断した状態における、電流に対する制御流量特性を示すものである。電流値に対する制御流量特性の曲線のプロフィールは、図5の電流値に対するフラッパ変位特性のそれにほぼ一致する。
図8は、上記空気圧サーボバルブにおいて、電流値に対する内部リーク流量を示すものである。ここで内部リーク流量とは、バルブの制御側流路23を遮断した状態における排気側流路19からの流量QLとして定義する。
電流値に対するフラッパ変位の図5のグラフにおいて、電流値I=0.0118Aで変位X=0.02mmであり、フラッパ27は供給側ノズル29と排気側ノズル30の概略中間にある。このとき、図7に示す内部リーク流量QLは最大値を示すことが分かる。
さて、本実施例バルブの特徴を列記すれば、次のようである。
(1)共振周波数を高く設定できる
(2)小電力でバルブを駆動できる
(3)高速応答性が得られる
(4)構造がシンプルで部品点数が少なく、部品加工、組み立て・調整が容易
上記(1)の理由は次の様である。ここで、フラッパの可動質量をm、このフラッパを支持するばね定数をKとすれば、共振周波数f0 は
前述したように、従来サーボバルブ(図69)において、剛体であるフラッパ506は揺動運動をするため、前記フラッパの質量mは大きくならざるを得ない。そのため、前記フラッパを支持するバネ剛性Kを高く設定することで、共振周波数f0 [式(7)]を高く設定している。フラッパ支持のバネ剛性Kが大きいと、フラッパを駆動するためには大きな力を必要とする。前述したように、従来サーボバルブの場合、フラッパを駆動する力は、式(2)に示すように、F∝Φ1Φ2 であった。つまり電磁コイルの発生する磁束Φ1を永久磁石が発生する磁束Φ2 で増幅させることで、大きな駆動力を得ているのである。
しかし、本実施例の場合、電磁コイルの発生する磁束Φ1だけがフラッパ弁を駆動する力となる。にもかかわらず、高い共振周波数が得られる理由は次のようである。
本研究において、バルブのフラッパに相当する部材を薄いディスク形状にすると、慣性負荷となる可動部の有効質量mはノズル先端近傍における弾性変形部分のみとなる点に注目した。すなわち、従来サーボバルブは質量mの剛体であるフラッパがバネで支持されているのに対して、本発明サーボバルブはフラッパ自身が弾性体(バネ)である。表1は、可動部の有効質量、フラッパ支持のばね剛性、共振周波数について、本実施例バルブと従来フラッパ弁(一例)を比較したものである。本実施例における可動部の有効質量mは、ばね剛性Kと共振周波数f0 の実測値から、式(7)を用いて求めた。また、従来例サーボバルブの可動部であるフラッパ(図69のフラッパ506に相当)は揺動運動するため、慣性負荷となる有効質量は実測値(5g)の1/2と仮定した。
表1から、本発明の実施例バルブは、従来バルブと比べて同等以上の共振周波数を有するにもかかわらず、可動部の有効質量は約1/7、ばね剛性は約1/4である。フラッパを支持するばね剛性を十分に小さくできるために、本実施例バルブは、高い共振周波数を有するにもかかわらず、電磁石のみでフラッパを駆動することができる。永久磁石と電磁石の両方を必要とする従来の空気圧サーボ弁は、図69a、図69bに示すように、永久磁石と電磁石のそれぞれの磁気回路を形成するためのヨーク材が直交して配置される3次元構造で、かつアクチュータ部と流体制御部は分離して構成されている。そのため、構成の複雑さと必要部品点数の多さゆえに、フラッパとノズル間の位置調整が難しく、またコストが高いという課題があった。
上記(2)の理由は次の様である。本発明のサーボバルブが小電力(小電流)で駆動できる理由は、駆動源に導体表面に働くMaxwellの応力を利用しているという点にある。通常は、0.1mm〜数mmオーダーの微小変位を直動運動させるアクチュエータとして、ボイスコイルモータ(リニアモータ)が使用される。前述した特許文献4においても、上記ボイスコイルモータを利用したサーボバルブが考案されている。しかし、ボイスコイルモータはローレンツ力を利用しており、大きな推力定数(電気機械変換効率)は得られない。本実施例は、空気圧サーボバルブという限定された対象ならば、ローレンツ力よりもはるかに推力定数の高いMaxwellの応力が利用できるという点を利用している。本実施例の推力定数を、市販されているボイスコイルモータと比較した一例を表2に示す。
表2から、本実施例バルブのアクチュータの推力定数は、ボイスコイルモータと比べて20倍以上である。上記理由により、本実施例サーボバルブを駆動する電源容量は十分に小さく、かつ小電流でよい。ちなみに、本実施例の推力定数は、電流に対する変位特性を示す図5のグラフを用いて、最大変位におけるばねの反力(F=1.92×104×4.5×10-5)に最大電流(Imax=0.02A)を除して求めたものである。
上記(3)の理由は、上記(1)(2)の本実施例バルブの特徴から、必然的に導かれるものである。すなわち、慣性負荷mとばね負荷Kが小さく、かつ電気機械変換効率が高いために、コイルの巻数も少なく、電気回路におけるインダクダンスも小さい。したがって、入力電流に対するフラッパ変位(流量)の伝達特性は、十分に高い応答性を得ることができる。
上記(4)の理由は次の様である。油圧サーボ技術から派生的に生まれた従来空気圧サーボ弁(図69、図70参照)が、アクチュータ部と流体制御部が分離構造であるのに対して、本実施例は、アクチュータ部と流体制御部は一体化構造である。後述する実施例も同様であるが、本実施例におけるアクチュータ部は、前記電磁アクチュエータ部(電磁石)、前記フラッパ、前記フラッパ支持部材(筒形状のハウジング、供給側底板21)から構成される。また、流体制御部は前記フラッパ、前記ノズル、前記吸入口を含む供給側流路22、前記吐出口を含む排気側流路19、前記支持部材で構成される。ノズル部の拡大図を示す図4a、図4bにおいて、前述したように、図4aはコイルに通電する電流値I=0の状態、図4bはバルブの駆動状態を示す。本発明において、アクチュータ部と流体制御部を一体化構造にできる理由は、磁気吸引作用が有効利用できる磁極とフラッパ間の磁気ギャップ最大値X0と、エアーサーボ弁として有効利用できるノズルとフラッパ間のエアーギャップδa(流路長さ)の最大値が0.05〜0.20mmと同オーダーであることに着目したものである。エアーギャップδmに対する磁気吸引力の特性は非線形であり、上記最大値を超えると、磁気吸引力は通常では大幅に低下する。ノズルフラッパ弁の場合も同様に、流量を線形に可変できるエアーギャップδaは、通常上記範囲が限界である。さらに本実施例では電磁アクチュエータの中心軸10を筒部形状にして、エアーの排気側流通路19を形成している。この構成により、双方向フラッパによるノズルフラッパ弁の大幅な簡素化を図ることができる。ちなみに、実施例では、図4aはコイル電流値I=0において、供給側ノズル29はフラッパ24によって遮断された状態になるように、供給側ノズル29とフラッパ24の位置を設定した。これは停電時、アクティブ制御が不能となった場合に、空気圧アクチュエータ(図示せず)への高圧空気の流入を遮断する安全機能(フェルセーフ機能)である。
さらに本実施例バルブは、すべて軸対称部品で構成されている。そのため、すべての部品は旋盤加工のみで製作できて、部品点数も少なく、組み立て後の調整も簡素化できた。本実施例バルブが軸対称で構成できる理由は、前述したように、前記磁極(第1磁極と第2磁極)の中心線上で、かつ前記磁極側に排気側ノズルを配置し、さらに前記フラッパを介在して前記磁極の反対側に供給側ノズルを配置しているからである。但し、排気側ノズルと供給側ノズルの位置は逆でもよい。
また前述したように、供給側空隙部26と排気側空隙部27、及び、制御側流路23の各空間の総和が空気圧アクチュータに繋がる制御室33の総容積Vcとなる。この容積Vcの大きさが、アクティブ制御(流体サーボ)を施す上で、制御性能(応答性)に重大な影響を与えるために、容積Vcは極力小さい方が好ましい。本実施例のバルブは、軸対称部品で構成されるために、隙間δt1とδt2を狭く構成でき、3次元構造で構成されるバルブ(後述)と比べて、コイルを収納する空間を必要としないため、制御室33の総容積Vcは十分に小さくできる。
<第2の実施形態>
電磁石に電流を印加して、Maxwellの全応力Tによる可動部の磁気吸引作用を利用する機器を想定する。図9のグラフAの場合、電流に対する可動部の変位特性は、電流値の増大に伴い変位が急峻に立ち上がる非線形な特性となるため、ON/OFF的な機能を要する機器(リレー等)に使用される場合が多い。しかし、本研究の過程において、フラッパに相当する可動部に適切な磁性材料と薄いディスクを用いると、電流に対するフラッパの変位特性は、図9のグラフBに示すように、線形性(直線性)の優れた特性を得ることができることがわかった。この効果は偶然の発見により、見出したものである。本研究が見出したこの現象を理論的に究明し、ノズルフラッパ弁への適用可能性を評価するために、以下に示す理論解析をおこなった。
1.理論解析
図10は、実施形態1における空気圧サーボバルブの構造(図1)をモデル化したもので、図10aはディスク(フラッパ)の部分断面図、図10bは空気圧サーボバルブのモデル化した正面断面図、図10cは後述する最大磁束コントロール面を示す図である。図10bにおいて、210は中心軸、211は空隙部、212はフラッパ、213は外枠部である。上記モデル図10bにおいて、コイルの通電によって発生する磁束Φは、前述したように、「中心軸210→空隙部211→フラッパ212→空隙部211→外枠部213」の経路を経て閉ループを描く。ここで、ディスクを放射状に流れる磁気回路の磁気抵抗を求める。図10a、図10bにおいて、半径方向Δrの部分の磁気抵抗ΔReは
式(8)において、hはディスク(フラッパ)の厚み、μ0は空気の透磁率、μsはディスク材料の比透磁率である。半径r=r1からr=r2までの全抵抗を求めると
上記ディスクの磁気抵抗 以外の磁気抵抗を として、磁束Φは
式(10)において、Nはコイルの巻数、Iはコイルに流す電流値である。また、 は前記フラッパと磁極間の2つの空隙部211、中心軸210、外枠部213、底部の各磁気抵抗の総和である。図11は、本実施例における供試材料の磁気特性の一例で、磁化力(磁界強度)Hに対する磁束密度B特性を示すものである。磁化力Hに対して磁束密度Bが比例して増加する 0<H<Hcの範囲を線形領域、磁化力Hに対して磁束密度Bの勾配が大きく低下するH>Hcの範囲を磁気飽和領域と定義する。ちなみにHcは、0<H<Hcの範囲におけるBH特性の包絡線Aと、H>Hcの領域にあるBH特性の包絡線Bの交点から求められるものである。Hcを線形領域と磁気飽和領域の磁化力境界値、H=Hcのときの磁束密度を磁束密度境界値Bcと定義する。図11の磁性材料特性の場合は、Hc=1500AT/m、Bc=1.5Wb/m2である。
磁束Φが流れる閉ループ磁気回路に、磁路面積Scの極度に狭い箇所があれば、その箇所において、磁束密度(B=Φ/Sc)は最も大きい。すなわち、この箇所において、磁化力Hが所定の値を超えれば、磁束密度Bは磁気飽和する。磁気飽和したときのB=Bmaxとすれば、磁束の大きさは、Φ<S・Bmaxの範囲で抑制される。
図10cにおいて、半径r=r1 、厚みhのリング形状の側面(磁路面積Sc=2πr1h)に注目する。この部分はディスクを放射状に流れる磁束の流出源(あるいは流入源)とも言うべき箇所で、磁気飽和現象を調節する箇所(以下、最大磁束コントロール面と呼ぶ)である。この箇所における磁束密度は
上式から、最大磁束コントロール面の磁路面積Sc(=2πr1h)が極度に小さい場合、磁化力Hが所定の値を超えれば、すなわちH>Hcならば、グラフ(図11)の曲線に沿って磁束密度、及び磁束は磁気飽和し、フラッパ(図10bの212)に働く吸引力F(式3)も抑制される。
図12〜図15はディスクの板厚hを各種変えた場合について、電流値に対する磁束密度Br1、電磁石の吸引力F、フラッパ変位X、制御ポートからの流量Qを、前述した解析方法で求めた解析結果である。解析条件は、図12のグラフ中に記載しているように、フラッパの支持剛性が一定となるように、フラッパ支持部の半径r3の値を設定している。図12の電流値に対する磁束密度Br1の特性に注目すると、
a.ディスク厚みが厚くh=0.5mmの場合、電流値が大きくなると、I=Ic(=0.017A)近傍から磁束密度Br1は急峻に増大する非線形な特性を示す。I>Icの領域では、磁束密度Br1は飽和して一定値Br1=1.7Wb/m2(図11参照)に収束する。
b.ディスク厚みが薄くh=0.2mmの場合、電流値に対する磁束密度Br1は全領域で線形な特性を示す。
上記b.の場合、0<I<Icの領域で磁束密度Br1は、上記i.の場合と比べて大きい。
I>Icの領域で磁束密度が上昇後、なだらか抑制されるのは電流値がIcに達した段階
で、磁束密度Br1は既に磁気飽和と同レベルの値まで増大しており、この段階からBr1は磁気飽和領域に入るからである。したがって、(1)磁路面積(ディスク厚み)を小さくして、電流値が小さい段階から磁束密度を高くする。(2)磁束密度が急峻に増大する電流値Icの近傍で、磁気飽和が始まるようにする。上記(1)(2)により、電流値に対する磁束密度Br1特性は、線形領域から磁気飽和領域になだらかに移行して、極めて線形性に優れた特性となる。線形性に優れた磁束密度特性は、変位特性、流量特性等の線形性にも反映される。
本研究で得られた上記知見を用いて、図13〜図15の電流値に対する電磁石吸引力、フラッパ変位、及び流量特性の特徴について説明する。図13はディスクの板厚hを各種変えた場合について、電流値に対する電磁石吸引力(=ディスクばねの復元力)を求めたものである。電流値に対する電磁石吸引力特性の曲線プロフィールは、後述する電流値に対するフラッパ変位特性の曲線プロフィール(図14)とほぼ一致する。図14の電流値に対するフラッパ変位特性において、h=0.5mmの場合、I>Icでフラッパ変位が一定値X=0.25mmを保つのは、フラッパと第1磁極間の最大隙間(初期ギャップ)をX0=0.25mmに設定しているからである。(図4参照)h=0.2〜0.3mmのとき、電流値に対してフラッパ弁変位特性(及び流量特性)はほぼ直線的に変位し、制御性の観点から理想的な特性が得られる。前述したように、この条件はアクティブ除振台に適用される空気圧サーボバルブに要求される3つ目条件、すなわち、(3)「線形性・・・バルブ駆動電流に対する発生圧力が直線的比例関係にある」を満足させるものである。h>0.35の場合、電流値が大きくなると、I=Ic(=0.017A)近傍からフラッパ変位は急峻に増大して、非線形な特性を示す。
図15は、フラッパ変位特性のグラフを求めた解析条件(図14に記載)の基で、ノズルの流出流量を求めたものである。これは、図1のサーボバルブにおいて、排気側流路20を遮断して、制御側流路を大気開放した相当する。解析条件は、供給圧力PS=0.6MPa(abs)、大気圧Pa=0.1MPa(abs)、供給側ノズル29のノズル径はΦ1.2mmである。図14と図15の比較から、フラッパ変位特性とノズルの流量特性の曲線プロフィールはほぼ同一であることがわかる。
要約すれば、フラッパ(ディスク)を薄い板厚の弾性体構造にすることにより
a.可動部の有効質量を小さくして、共振周波数を上げる。(表1参照)
b.磁気飽和現象の利用により、電流に対する流量特性の線形性を向上させる。
上記a.b.の相乗効果をもたらすのである。
2.線形化の効果指標と実測による評価
ここで、バルブ駆動電流に対するフラッパの変位(流量)特性における「線形化の効果指標」を定義する。図16は電流値に対する流量の実測値を基に、「線形化の効果指標」を求める方法を示すモデル図である。バルブは電流値:0(a点)<I<Imax(d点)の範囲で駆動されるものとする。本実施例バルブの場合、電流値に対する磁気吸引力は非線形であるために、電流値が小さい領域では電流値に対して吸引力はゆるやかに上昇し、電流値の増加と共に急峻に増大する。しかし、電流値がさらに増大して磁気飽和の領域に入ると、磁束Φ(及び吸引力F)の増大は抑制される。その結果、電流に対する流量特性(フラッパ変位特性)のプロフィールは、電流値が低い領域では下に凸、電流値が高い領域では上に凸の曲線になる。ここで、「下に凸の曲線」から「上に凸の曲線」に移り変わる変極点Eを、2つの包絡線BbとCdの交点から求める。電流に対する流量特性の曲線をAaとして、上記Bb(一点鎖線)は曲線Aaが下に凸の領域の包絡線である。また、上記Cd(一点鎖線)は、曲線Aaが上に凸の領域の包絡線である。包絡線BbとCdの交点が上記変極点Eである。変極点EのX軸座標をc、包絡線BbがX軸と交差するX軸座標をbとする。また、曲線AaのI=Imax(d点)におけるY軸との交差点をFとする。交差点Fと原点(0,0)を結ぶ直線(鎖線)をDaとする。包絡線Bbの勾配QE/Ibc(角度β)が本バルブの流量ゲイン(電流に対する流量の比)の最大値である。直線Daの勾配QF/Iad(角度α)を流量ゲインの基準値とする。ここで、「流量ゲインの最大値」に対する「流量ゲインの基準値」の比を、線形化の効果指標ηとして、次のように定義する。
η=1のとき、曲線Aaは直線Daと一致して、電流に対して流量は正比例の関係となり、線形性の評価はベストとなる。
さて、サーボバルブの電流に対する流量特性に線形性が要求される理由は次ぎのようである。サーボバルブは流体サーボ装置(アクティブ除振台)の制御系を構成する一要素であるため、電流の変化分に対する流量の変化分の比率:KQ=δQ/δIは流量ゲインとして、開ループゲインKLの中に組み込まれる。即ち、サーボバルブ以外で制御要素のゲインをKXとして各要素を結合すると、KL=KX・KQである。たとえば、安定性に対する周波数応答法を用いた裕度設定の一例として
(1)ゲイン余裕は10dB以上
(2)位相余裕は45deg以上
などの調整条件が生産現場において適用されている。サーボバルブの流量ゲイン最大値が電流値I=Imax 近傍でKQMAXの場合、アクティブ除振台全体の安定性裕度を見込むための開ループゲインKLは、上記最大値KQMAXで決定せざるを得ない。しかし、サーボバルブの動作点は、通常は駆動電流範囲の中間位置近傍(I≒Imax/2)で使用される場合が多い。そのため、電流に対する流量特性が非線形である程、動作点において必要以上に過剰なゲイン余裕を設定することになる。この場合、アクティブ除振台は最も使用時間の長い動作点において、本来有する十分な性能を発揮できない。したがって、サーボバルブの電流に対する流量特性が線形であるほど、制御系は適切な安定度(ゲイン余裕、位相余裕)を設定できるのである。
さらに補足すれば、サーボバルブの電流に対する発生圧力(発生力)の特性が線形性を有するのが好ましい。これは、本サーボバルブをアクティブ制御装置に適用したときに要求される条件である。前述したように、フィードフォワード制御は外乱が既知であって始めて成立する。上記ステージFF制御を施すためには、既知であるステージ挙動信号を用いる。フィードバック制御により定盤の自由振動が収束する時間は改善されるが、ステージ加減速の瞬間の応答まで低減するのは難しい。ステージFF制御を用いて、直動外乱を効果的に相殺するためには、ステージの加速度信号を逆位相で再現する、精度の高い発生力の波形を作る必要がある。そのためには、バルブ駆動電流波形と発生圧力の波形が相似形になるように、すなわち、バルブ駆動電流に対する発生圧力(発生力)の特性が、動作点を中心に広い範囲で線形性を持つ必要がある。
図17に、「線形化の効果指標」を求めるためのバルブの流量特性を実測する一例を示す。バルブの基本構造は、図1の実施形態で示した順方向ノズルと逆方向ノズルが対向して配置される2ノズル型を用いた場合を想定している。「線形化の効果指標」は電流に対するフラッパの変位特性からも求められるが、フラッパ変位の計測はバルブの構造面から容易ではない場合が多い。しかし、フラッパ変位特性と電流値に対するプロフィールがほぼ同一なバルブの流量特性は、バルブ本体を解体することなく、図17に示す方法で求められる。
図17において、230は測定対象となるバルブ、231はこのバルブを駆動する電源、232は制御ポート、233は供給圧力源234に繋がる供給口、235は排気口、236は流量計である。排気ポート235を遮断した状態で、制御ポート232の大気解放時の流量を測定すれば、「線形化の効果指標」を評価するために必要な、電流値に対するバルブの流量特性を求めることができる。図1の実施形態の場合は、フラッパに対向して配置された一個のノズル(この場合は順方向ノズル)とフラッパ間の流量である。本方法により、バルブの詳細な構造に関わり無く、「線形化の効果指標」を求めることができる。
3.磁気飽和現象利用の評価方法
本実施例は、電流値の増大と共にフラッパの変位(流量)特性が、本来ならば急峻に立ち上がる領域に磁気飽和現象を利用することで、線形性(制御性)の優れた特性を得ることができる点を利用したものである。したがって、閉ループ磁気回路を構成するいずれかの要素が、バルブの動作範囲内で磁気飽和することが本実施例を適用する上で前提条件となる。磁気飽和現象を利用せず、電流に対してフラッパ変位が急峻に立ち上がる手前でバルブ電流の上限値を設定しても、サーボバルブとして適用は可能である。但し、大きなフラッパ変位(流量)は得られない。
また磁気飽和現象を利用して、前記電磁石に通電させる電流の最大値近傍で、電流に対する流量特性は上に凸の曲線となるように、即ち変曲点(モデル図16のE点)を有するように構成することで、次の効果が得られる。図4を用いて説明すれば、フラッパ24と磁極31間の隙間(初期ギャップ)は裕度を持って設定できる。上記磁気飽和現象を利用しなければ、部材の加工・組み立て精度、電磁石吸引力特性、磁性材料の磁気特性などの僅かなばらつきにより、電流に対してフラッパ変位(流量)が急峻に立ち上がる領域に入ってしまうため、不安定なバルブ特性になりやすい。
ここで、電磁石、ノズル、フラッパなどの要素部品から構成されるサーボバルブの構造を想定する。このとき、各要素部品の形状、バルブ全体構成などは任意とする。磁気飽和現象を利用したサーボバルブを具体化するために、次の方法で本実施例発明の適用可否を評価する。
i.閉ループ磁気回路の磁気抵抗の総和を求める。
ノズルフラッパ間の磁気抵抗Raは、電流最大値I=Imaxのとき最小となる。このときのノズルフラッパ間の距離をδn(図4参照)、磁極面積をSとして、Ra=δn/(μ0S)である。上記磁気抵抗Ra以外の線形磁気抵抗の総和をRXとして、閉ループ磁気回路の磁気抵抗の総和は、RS=Ra+ RXである。線形磁気抵抗とは、透磁率μが一定で、磁化力Hと磁束密度Bの関係が正比例関係(B=μH)にある、と仮定した場合の磁気抵抗を示す。
ii.閉ループ磁気回路に発生する磁束の最大値を求める
電磁コイルの巻数をNとして、起磁力の最大値Emax=N×Imaxであり、磁束の最大値はΦmax= N×Imax /RSである。
iii.磁気飽和が発生し易い箇所の磁束密度Bmaxを求める。
閉ループ磁気回路において、(1)磁路面積の最も狭い箇所、あるいは、(2)飽和磁束密度の最も小さな磁性材料を用いている箇所、上記(1)(2)に注目し、その磁路面積をScとすれば、磁束密度Bmax=Φmax / Scである。
iv.磁気飽和現象発生の評価
ここで、上記(1)(2)の箇所に用いる磁性材料の「磁化力に対する磁束密度特性
(BH特性)」を評価データ(図11参照)として用いる。線形領域と磁気飽和領域の境界域(磁化力境界値Hc)における磁束密度境界値Bcと、上記Bmaxの大きさを比較する。Bmax<Bcならば、磁気飽和現象は発生せず、磁気回路は線形領域内で使
用されている。Bmax>Bcならば、磁気飽和現象が上記(1)(2)の箇所で発生しており、本実施例の発明を適用する上で前提条件を満足していることが分かる。
<第3の実施形態>
図18は、本発明の実施形態3に係る空気圧サーボバルブの正面断面図であり、フラッパに相当するディスクを凸形円盤形状にすることにより、ディスクを流れる磁束の磁気飽和現象を利用する箇所と、ディスクのバネ剛性を設定する箇所を2つに分離したバルブ形態を示すものである。
110は筒部形状の中心軸、111はこの中心軸の底部、112は前記中心軸と同芯円で形成された外枠部、113は前記中心軸に装着されたコイルボビン、114は前記コイルボビンに巻かれたコイルである。中心軸111、外枠部112、コイルボビン113、コイル114により、フラッパ(後述)の面板部を吸引して、その変位を制御する電磁アクチュエータを構成している。
115は外枠部12を収納する筒形状のハウジング、116は前記ハウジングの側面に締結される排気側底板、117は底部111と排気側底板116を締結するボルト、118はハウジング115と排気側底板116を締結するボルト、119は中心軸110に形成された気体(作動流体)の排気側流通路、120は排気側底板116に形成された吐出口である。121は供給側底板、122は前記供給側底板の中心部に形成された気体の供給側流路、123は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる気体の制御側流路である。124は凸型ディスク形状のフラッパでボルト125によりハウジング115と供給側底板121の間に装着される。
フラッパ124は板厚の厚い凸部124a(磁気経路部)と、板厚の薄い外周部(弾性支持部)124bにより構成される。126は供給側底板121とフラッパ124の間に形成される供給側空隙部、127はフラッパ124と前記ハウジング側との間に形成される排気側空隙部、128a、128b、128c、128dはフラッパに形成された流通穴(図18には128b、128dは図示せず)、129は供給側ノズル(順方向ノズル)、130は排気側ノズル(逆方向ノズル)である。131は中心軸110のフラッパ側端面(中心軸端面で第1磁極)、132は外枠部のフラッパ側端面(外枠部端面で第2磁極)、133は吸入口である。
図19は図18における中心軸110、フラッパ124、コイル114等の部品で形成される閉ループ磁気回路のモデル図である。なおこのモデル図では、供給側底板121、供給側ノズル129などは省略している。 本実施例バルブのフラッパは、半径r2、厚みh2の凸部を有するが、半径r= r1の箇所(磁路面積S1=2πr1h2)がディスクを放射状に流れる磁束の流出源で、前述した磁気飽和を調節する最大磁束コントロール面である。フラッパの外周部(r2<r< r3)の厚みh1はh2と比べて十分に薄く、弾性変形し易い。また凸部の外半径r2は、外枠部端面132(第2磁極)の外半径r4と比べて、r2<r4でも良い。その理由は、半径r= r1を磁気飽和の調節箇所とした場合、2つの磁路面積S1(2πr1h2)とS2(2πr2h1)において、S1<S2となればよいからである。この場合、弾性変形部(r2<r<r3)の区間を十分に長く取れるため、厚みh1は極度に薄い値に設定しなくてもよい。
図20は、板厚形状とばね剛性の異なる3種類のフラッパ形状を想定して、電流値に対するフラッパ変位を比較したものである。図21は、電流値に対する電磁石の発生力を比較したものである。図20、図21から、同一電流値のとき次のようである。
i.変位の大きさはC>B>A
ii.発生力の大きさはC>A>B
変位と発生力でAとBが逆転する理由は、次のようである。発生力でA>Bとなるのは、板厚の厚いAの方がBと比べて磁気飽和が緩和されるからである。しかし変位でA<Bとなるのは、ディスクのばね剛性が板厚の3乗に比例するため、ばね剛性はA>>Bであるからである。ディスク中心部が同じ板厚のCとAを比較したとき、発生力がC>Aとなる理由は、CはAと比べて変形し易く、同一電流値でディスクと磁極間のCのギャップはAと比べて小さくなるからである。上記結果から、凸形状のディスクは均一厚みのディスクと比べて、十分な線形性を維持したままで、同一の電流値でより大きな変位を得ることができる。
図22は、前述した3種類のフラッパ形状を有するバルブ(図18の構造)において、排気口120を遮断した状態における電流値に対する制御流量を比較したものである。解析条件は、供給圧力PS=0.6MPa(abs)、大気圧P0=0.1MPa(abs)、供給側ノズル129と排気側ノズル130のノズル径は共にΦ1.2mmである。3種類のフラッパ形状を有するバルブはいずれも、電流値I=0のときフラッパ124によって供給側ノズル129が遮断される場合を想定している。最大電流値I=0.025Aのとき排気側ノズル130が遮断されるためには、排気側ノズル130先端部の突出量δn(図4a参照)を次のように設定すればよい。δaをI=0.025Aのときのフラッパ変位として、Type Aはδn=X0-δa=0.222mm、Type Bはδn=0.207mm、Type Cはδn=0.135mmである。
図23は、本発明の実施形態3に係る空気圧サーボバルブにおいて、フラッパに相当するディスクを凹型円盤形状にしたものである。140は中心軸、141はフラッパ、142はコイル、143はコイル外枠部、144aと144bはフラッパ固定部である。フラッパ141は板厚の薄い141a(磁気経路部)と、板厚の薄い外周部(弾性支持部)141bにより構成される。ディスクが凹型円盤形状の場合、ディスクの中央部では、板厚が薄いため磁気飽和により吸引力の発生は抑制される。ディスク外周部では、板厚が厚いためディスクは変形しにくい。空気圧サーボバルブの適用対象によって、たとえば、ディスク変形量(流量)が微小でもよい場合に本構造は適用できる。あるいは、弾性支持部141bに流通穴を数多く形成して、板厚が厚くても剛性を小さくした場合(たとえば第7の実施形態)などにも本構造は適用できる。
<第4の実施形態>
図24は、本発明の実施形態4に係る空気圧サーボバルブの正面断面図である。
中心軸のフラッパ側端面(第1磁極)において、ノズル開口部と中心軸外周部の間に半径方向流通路を形成することにより、小さな電流値で大きなフラッパ変位(流量)を得ることができるバルブ構成を示すものである。50は筒部形状の中心軸、51はこの中心軸の底部、52は外枠部、53はコイルボビン、54はコイル、55は筒形状のハウジング、56は前記ハウジングの排気側底部、57は締結ボルト、58及び59は排気側流通路である。60は供給側底板、61は供給側流路、62は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる制御側流路である。63は凸型ディスク形状のフラッパでボルト64によりハウジング55と供給側底板60の間に装着される。フラッパ63は板厚の厚い凸部63a(磁気経路部)と、板厚の薄い外周部(弾性支持部)63bにより構成される。64は供給側空隙部、65は排気側空隙部である。66a、66b、66c、66dは円盤ディスク形状フラッパに形成された流通穴(図24には66b、66dは図示せず)、67は供給側ノズル(順方向ノズル)の開口部、68は排気側ノズル(逆方向ノズル)の開口部である。69は中心軸50のフラッパ側端面(中心軸端面で第1磁極)、70は外枠部のフラッパ側端面(外枠部端面で第2磁極)である。
図25は排気ノズル及び吸気ノズル近傍の部分拡大図で、図25aは図25bのAA矢視図で、フラッパが吸気ノズルを遮蔽した状態、図25bは図25cのBB矢視図、図25cはコイルに電流が印加された状態を示す。本実施例では、排気ノズル及び吸気ノズルは図1の実施例のように別部品を装着するのではなく、中心軸50及び供給側ハウジング60を利用して一体で形成した。71a、71b、71cは第1磁極69のフラッパ側端面に形成した流通溝、72は排気ノズル開口部68と第1磁極69の間に形成した窪み部、73は排気ノズル開口部68の外周側に形成されたテーパ部である。前記流通溝の溝深さは充分に深く、0.3〜0.5mmに形成した。
本実施例では、排気ノズル開口部68は第1磁極69端面に対して、δn=0.046mm(δnは図4a参照)だけ僅かに突出させた状態で形成した。したがって、フラッパ63が排気ノズル開口部68を遮蔽したとき、第1磁極端面69とフラッパ63の間隙は上記δnの狭い値になる。しかし、この場合でも排気ノズル開口部68の外周側(窪み部72)と排気側空隙部64は、溝深さが充分に深い前記流通溝と連絡しており、排気ノズル開口部68の外周側圧力は排気側空隙部64、吸気側空隙部64と同一の圧力を保つことができる。
図26は、電流値に対するフラッパ変位特性を示すもので、下記2ケースを比較したものである。
i.排気ノズル開口部68を、第1磁極69端面に対して僅かにδnだけ突出させて形成(本実施形態で初期ギャップX0=0.15mm、ノズル突出量δn=0.046mm)
ii.排気ノズル開口部を、第1磁極から充分な距離を保って突出させる(実施形態3の構造でX0=0.25mm、δn=0.135mmに設定した場合)
上記ii.でδn=0.135mmに設定した理由は次のようである。ノズル突出量δnを小さくすると、半径方向流路の空気抵抗が増大して、第1磁極69の外径を総面積Sとする空隙部全体が大気圧(PS =0.1MPa)に近くなる可能性がある。この場合、前記フラッパ左右の圧力差に比例した力f=(Pa-PS)Sが前記フラッパに加わることになる。実験の結果、前記フラッパは前記第1磁極面に密着した状態となり、フラッパ変位(制御圧力)の電流制御に支障をきたすことがわかった。したがって、充分な距離を保って、突出量δnの値を設定するのが好ましい。上記ii.の条件では、変位X=0.102mm(このとき制御圧Pa =0.6MPa)に到達(B点)するために電流値I=0.025Aを必要とする。上記i.の本実施形態では、δnを十分に小さくしても安定したフラッパ変位の電流制御ができ、同変位(同制御圧)に到達(A点)する電流値はI=0.015Aである。
<第5の実施形態>
図27は、本発明の実施形態5に係る空気圧サーボバルブの正面断面図であり、
外枠部のフラッパ弁側端面をフラッパ面と密着させることで、第2磁極を省略して、第1磁極だけでフラッパに対する吸引作用を得るように磁気回路を形成したものである。この構成により、凸形状フラッパの弾性支持部の外径を小さくできるため、サーボバルブ本体の外径(ΦD)を小さくできる。たとえば、アクティブ除振台の場合、ステージの4隅を支持する空気圧ユニットには、多軸の空気圧アクチュータが装着される。空気圧アクチュータとサーボバルブの制御ポート間は近接して配置する必要があるため、サーボバルブ本体の外径(ΦD)は出来るだけ小さくするのが好ましい。
150は筒部形状の中心軸、151はこの中心軸の底部、152は前記中心軸の外枠部、153はコイルボビン、154はコイル、155は筒形状のハウジング、156はこのハウジング底部、157は締結ボルト、158は排気側流通路、159は吐出口、160は供給側ハウジング、161は供給側流路、162は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる制御側流路、163は凸形円盤形状のフラッパでフラッパ163は板厚の厚い凸部(磁気経路部)164と、板厚の薄い外周部(弾性変形部)165により構成される。166は供給側空隙部、167は排気側空隙部、168a、168b、168c、168dはフラッパ163に形成された流通穴(168b、168dは図示せず)、169は供給側ノズル(順方向ノズル)開口部、170は排気側ノズル(逆方向ノズル)開口部、171は電磁石の磁極、172は中心軸の外枠部152のフラッパ側端面であり、フラッパ163と密着している。173は吸入口である。
<第6の実施形態>
図28は、本発明の実施形態6に係る空気圧サーボバルブの正面断面図であり、コイル外径よりも径小のリング形状の第2磁極を、閉ループ磁気回路内に設けることにより、磁気吸引力を維持したままで、サーボバルブ本体の外径(ΦD)を小型化したものである。すなわち、バルブ本体小型化に伴う弾性変形部の磁気飽和の影響(吸引力低下)を解消するものである。250は筒部形状の中心軸、251はこの中心軸の底部、252は前記中心軸(支持軸)の外枠部、253はコイルボビン、254はコイルである。255は筒形状のハウジング、256はこのハウジング底部、257は締結ボルト、258は排気側流通路、259は吐出口、260は供給側ハウジング、261は供給側流路、262は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる制御側流路である。263は凸形円盤形状のフラッパで、板厚の厚い凸部(磁気経路部)264と、板厚の薄い外周部(弾性変形部)265により構成される。266は供給側空隙部、267は排気側空隙部である。268a、268b、268c、268dはフラッパ263に形成された流通穴(268b、268dは図示せず)、269は供給側ノズル(順方向ノズル)開口部、270は排気側ノズル(逆方向ノズル)開口部、271は電磁石の第1磁極、272は中心軸の外枠部252のフラッパ側端面、273は締結ボルト、274はハウジング底部256とハウジング255を締結するボルトである。275は外枠部252のフラッパ側端面272とハウジング255の間に矜持された磁極用リング、276はこの磁極用リングのフラッパ263側端面に形成された第2磁極である。277は磁極用リング275とフラッパ265の間に介在するハウジング255の一部で、このハウジング255は非磁性材料で構成されている。278は吸入口である。
図29は、磁極を一個だけ設けた前述した第5実施形態の閉ループ磁気回路、図30は第1磁極に加えて第2磁極を補助的に設けた本実施形態の閉ループ磁気回路の拡大図である。図29の場合、閉ループ磁気回路は、「中心軸150→磁極171→磁気経路部164→弾性変形部165→外枠部152」の経路を経る。
図30に示す本実施形態の場合、閉ループ磁気回路は、「中心軸250→第1磁極271→磁気経路部264→第2磁極276→磁極用リング275→外枠部252」の経路を経る。上記2つの閉ループ磁気回路の違いは、図29の磁気回路が弾性変形部165を経るのに対して、図30の磁気回路では弾性変形部265をスキップ(離脱)して閉ループを描くという点である。
図31は、上記2つの磁気回路を想定して、「電流値に対するフラッパ変位特性」を比較したものである。図中に示すように、各ディスクの形状・剛性は同一である。
Type Aは本実施形態(図30の構造)、Type Bは図29の構造を用いた場合である。
バルブの小型化を図るためにディスク外径を小さくした場合、弾性変形部の半径方向の長さも小さくせざるを得ない。そのため、低い剛性を維持するために、弾性変形部の板厚をh1=0.08mmまで薄くした条件下での解析結果である。
電流値I=0.025Aにおいて、Type Aのフラッパ最大変位はXmax=0.13mmであるのに対して、Type Bのフラッパ最大変位はXmax=0.018mmしか得られない。その理由は、
i.Type Bの場合、磁気回路は薄い板厚h1の箇所を経由する。しかしその結果、磁束は磁路面積の狭い経路を通過することになり、磁気飽和の影響を受けて、最大磁束が大きく抑制されてしまう。
ii.Type Aの場合、磁束は弾性変形部265である薄い板厚h1の箇所をスキップして
磁気経路部264→第2磁極276→外枠部252の経路を描く。そのため、閉ループ磁気回路を流れる磁束の大きさは、板厚の薄い弾性変形部265の影響を受けない。
すなわち、本実施例ではディスク部のばね剛性を決める構造設計と、電流値に対する吸引力特性を決める磁気回路設計を、それぞれ独立して行うことができる。
前述した第5、第6の実施形態では、前記弾性変形部の板厚h1を変えることで、剛性を調節していた。しかし、前記フラッパに適切な空隙部を形成することで、剛性を調節できる。図32において、280はフラッパ、281は弾性変形部、282は空隙部、283は締結ボルト、284は磁気経路部である。
あるいは前記フラッパの剛性を調節する手段として、たとえば、円周方向で軸対称に小さな複数個の穴を前記フラッパに形成してもよい。(図示せず)
<第7の実施形態>
図33は、本発明の実施形態7に係る空気圧サーボバルブであり、図33aは図33cのAA矢視図、図33bは図33aの部分拡大図、図33cは正面断面図、図34は図33cのスパイラルディスクばね部の部分拡大図である。本実施例は、フラッパの弾性変形部の剛性を板厚ではなく、フラッパに形成したスパイラルの形状で選択したものである。350は中心軸(支持軸)、351はこの中心軸の底部、352は中心軸の外枠部、353はコイルボビン、354は前記コイルボビンに巻かれたコイルである。中心軸350、中心軸底部351、中心軸の外枠部352、コイルボビン353、コイル354により、フラッパ(後述)の面板部を吸引して、その変位を制御する電磁アクチュエータを構成している。355は筒形状のハウジング、356はこのハウジング底部、357はボルト、358は排気側流通路、359は吐出口、360は供給側ハウジング、361は供給側流路、362は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる制御側流路である。363は円盤形状のフラッパで、中央部の磁気経路部364と、スパイラルディスクばね(後述)が形成された弾性変形部365により構成される。366は供給側ハウジング360とフラッパ363の間に形成される供給側空隙部、367はフラッパ363と前記ハウジング側との間に形成される排気側空隙部である。368は供給側ノズル(順方向ノズル)開口部、369は排気側ノズル(逆方向ノズル)開口部である。370は中心軸350の前記フラッパ側端面(中心軸端面)で電磁石の磁極、371は吸入口である。
弾性変形部365であるスパイラルディスクばねは、本実施例では、8本のリッジ(峰部)と同数のグルーブ(空隙部)により構成した。図34のスパイラルディスクばね部の部分拡大図において、372a、372b、372c、372dはスパイラルディスクばね(弾性変形部365)の空隙部であり、372dは磁極370近傍に形成した開口面積の最も大きい空隙部である。さて、本実施例におけるスパイラルディスクばね(弾性変形部365)は、以下i.〜iii.に示す役割を同時に担っている。
i.発生応力を緩和して、適切なフラッパ支持剛性を得る
ii.グルーブ(空隙部)を利用して、供給側空隙部366と排気側空隙部367を繋ぐ流通路とする
iii.閉ループ磁気回路の磁路とする
上記i.の効果は次ぎのようである。サーボバルブ本体の外径(ΦD)を小型化するために、フラッパを凸形状にして、かつ弾性支持部の板厚を極力薄くして剛性を低減すると共に、第2磁極を設ける方法(第6の実施形態)と比較する。この場合、板厚が薄くなるほど弾性支持部に発生する応力が増大して、ディスク形状のフラッパ部材の許容応力(弾性限界)を超えてしまうという問題があった。凸形状部材をスパイラルディスクばねにすることにより、最大発生応力の大幅な低減を図ることができる。スパイラルディスクばねの剛性と発生応力は、板厚以外にスパイラル角度α(図33a)、グルーブ(リッジ)の本数、グルーブとリッジの幅比などによって選定できる。但し、磁気経路部364と前記リッジの境界線で、スパイラル曲線の開始点の部分は鋭角になるため、応力集中が発生する。この応力集中を低減するために、図33bに示すように本来のスパイラル曲線とは異なる曲面部373、374を形成した。この曲面部の形成により、応力集中が大幅に緩和できることが分った。
上記ii.の場合、空隙部372a、372b、372c、372dを利用して、供給側空隙部366と排気側空隙部367と繋ぐ流通路を兼ねることができる。応力集中の緩和を兼ねて曲面部373、374から形成される空隙部372dは、開口面積を最も大きく確保することができる。図34に空気の流れを矢印(実線)で示す。
上記iii.は、スパイラルディスクばねの板厚を充分に厚くしても、その形状で剛性の選択ができる点を利用している。板厚が厚く磁路面積が大きくできるため、磁気飽和が発生せず、第6の実施形態で示したような第2磁極を形成しなくてもよい。その結果、バルブ構造本体の簡素化を図ることができる。磁束の流れは、図34に矢印(鎖線)で示すように、「磁極370→スパイラルディスクばねのリッジ(峰部)→中心軸の外枠部352」である。実施例では、弾性変形部365(スパイラルディスクばね)の板厚は磁気経路部364と同じに設定したが、磁気経路部364のそれよりも厚めに設定してもよい。この場合、図23で示したように、フラッパ全体のプロフィールは凹形状となる。図35に、磁気経路部364の中心部に荷重Fを加えたときの、スパイラルディスクばねの変形の構造解析結果を示す。
前記弾性変形部に用いることのできるディスクばねとして、図36に示すような公知の雲形ばねを用いてもよい。380はフラッパ、381は弾性変形部、382a、382bは円弧形状の空隙部、383は磁気経路部、384は締結ボルトである。
<第8の実施形態>
前述した本発明の実施例は、バルブ構造は主に軸対称部品で構成したものであった。上記軸対称部品以外に、角柱、円柱、馬蹄形、環状、などの各種鉄心、長方形の薄板材、角型ブロックなどの組み合わせで磁気回路、及び流体回路を形成しても、本発明によるサーボバルブを実現できる。
図37は、本発明の実施形態8に係る空気圧サーボバルブで、図37aは上面図、図37bは正面断面図である。400は支持軸、401はこの支持軸に装着された電磁コイル、402はL形部材底部、403はL形部材直立部、404は弾性部材である薄板のフラッパ、405はこのフラッパと支持軸400を締結するボルト、406はL形部材底部402と支持軸400を締結するボルトである。支持軸400、電磁コイル401、L形部材底部402、L形部材直立部材403、フラッパ404により、このフラッパを吸引して、その変位を制御する電磁アクチュエータ(アクチュエータ部)を構成している。「支持軸400→L形部材底部402→L形部材直立部403→フラッパ404→支持軸400」により、閉ループ磁気回路を形成している。406はL形部材直立部材403に形成された排気側流通路、407はこの排気側流通路のフラッパ側に装着された排気側ノズル(逆方向ノズル)である。408は供給側ブロック、409はこの供給側ブロックに形成された供給側流路、410はこの供給側流路の前記フラッパ側に装着された供給側ノズル(順方向ノズル)、411は供給側ブロック408と支持軸400を締結するボルト、412は供給側空隙部、413は排気側空隙部、414は制御ポートである。供給側空隙部412と排気側空隙部413の2つの空間は繋がっており、この2つの空間が本サーボバルブの制御室415となる。この制御室から制御ポート414を経由して空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がっている。前記フラッパ、前記供給側ノズル、前記排気側ノズル、前記供給側流路、前記排気側流通路、前記供給側ブロック、前記L形部材直立部により流体制御部を構成している。416はL形部材直立部403の前記フラッパ側端面であり、電磁石の磁極である。417は吸入口、418は吐出口である。
本実施例では、実施形態1の場合と同様に、前記磁極の中心線上で、前記フラッパの前後に一対のノズルを配置して、双方向フラッパによるノズルフラッパ弁を構成している。また、前記流体に空気を用いて、前記アクチュータ部と前記流体制御部は前記流体が貫通する同一空間内に配置されている。前記フラッパは閉ループ磁気回路を構成する一部品として、平板形状部材で構成し、前記フラッパ自身の弾性を利用して、電磁石の吸引力と平衡するように、前記ノズルと前記フラッパ間の隙間に比例した復元力を前記フラッパに持たせている。
さらに、前記フラッパの作動範囲で前記電磁石に通電する電流値を増大させたとき、前記前記フラッパを流れる磁束の磁束密度は磁気飽和領域に入るように、フラッパの磁路面積(Sc=b×h)を選択している。そのため、実施形態2同様に、線形性の良い電流値に対するフラッパ変位(流量)特性を得ることができる。
磁気飽和現象を調節する最大磁束コントロール面に、上記フラッパの磁路面積を選ぶのではなく、たとえば、実施形態2と同様に、円環形状の磁極415の外径(あるいは筒部の厚み)を極力小さくするような構成でもよい。
本実施例では、前記フラッパは片持ち支持構造であるため、シンプルなバルブ構成にできる。しかし、後述する実施例も同様であるが、前記フラッパを両端支持構造にすれば、i.磁気吸引力と平衡させるための必要な剛性、ii.磁気飽和現象を利用する場合の適切な磁路面積、iii.ノズルからの流体墳力によって生じる不安定振動、上記i.〜iii.に対してより適切なフラッパの形状を選択することができる。(図示せず)
<第9の実施形態>
本実施形態は第8の実施形態を改良するもので、前記電磁石のフラッパ側端面に2つの磁極を設けて、第1磁極のフラッパ側端面と前記第2磁極のフラッパ側端面の間に前記閉ループ磁気回路の主経路となる磁気経路部を形成して、前記フラッパの固定側に弾性支持部を設けたものである。本実施例により、軸対称バルブである第6の実施形態同様に、磁気吸引力特性と無関係にフラッパの支持剛性が設定できため、同一の電流値でより大きなフラッパ変位(流量)を得ることができる。
図38は、本発明の実施形態9に係る空気圧サーボバルブの正面断面図である。
430は支持軸、431は電磁コイル、432はL形部材底部、433はL形部材直立部、434はフラッパ、435は締結ボルト、436は排気側流通路、437は排気側ノズル(逆方向ノズル)である。438は供給側ブロック、439は供給側流路、440は供給側ノズル(順方向ノズル)、441は締結ボルト、442は供給側空隙部、443は排気側空隙部、444は制御ポート、445は制御室、446は電磁石の第1磁極である。前記制御室から制御ポート444を経由して空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がっている点は、前述した実施例と同様である。447は磁極用ヨーク材、448はこの磁極用ヨーク材の前記フラッパ側端面に形成された第2磁極、449は非磁性材料によるスペーサ、450は前記スペーサを介して前記磁極用ヨーク材と前記フラッパを供給側ブロック438に締結するボルト、451は前記第2磁極と前記フラッパの固定側との間で、前記フラッパに形成された弾性変形部である。すなわち、前記フラッパの表裏に凹部を形成して前記弾性変形部を構成している。また、452は前記フラッパにおいて、前記供給側ノズルと前記第2磁極の間は磁気経路部である。453は吸入口、454は吐出口である「支持軸430→L形部材底部432→L形部材直立部433→第1磁極446→前記フラッパの磁気経路部452→第2磁極448→磁極用ヨーク材447→支持軸430」により、閉ループ磁気回路を形成している。
<第10の実施形態>
本実施形態は第9の実施形態を改良するもので、フラッパを両端固定支持にすることにより、電磁石に電流が印加されない初期状態において、フラッパの弾性変形部の板厚が薄く剛性が小さな場合でも、経年変化の影響を受けず、上記磁気ギャップ、エアーギャップは常に一定に保つことができる。
図39は、本発明の実施形態10に係る空気圧サーボバルブで、図39aは上面図、図39bは正面断面図である。460は支持軸、461は電磁コイル、462a、462bはW形部材底部、463a、463bはW形部材直立部、464はフラッパ、465a、465bは締結ボルト、466は排気側流通路、467は排気側ノズル(逆方向ノズル)である。468は供給側ブロック、469は供給側流路、470は供給側ノズル(順方向ノズル)、471a、471bは供給側空隙部、472a、472bは排気側空隙部、473は制御ポート、474は制御室、475は電磁石の第1磁極である。前記制御室から制御ポート473を経由して空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がっている点は、前述した実施例と同様である。476a、476bは磁極用ヨーク材、477a、477bはこの磁極用ヨーク材の前記フラッパ側端面に形成された第2磁極、478a、478bは非磁性材料によるスペーサ、479a、479bは前記スペーサを介して前記磁極用ヨーク材と前記フラッパを供給側ブロック468に締結するボルト、480a、480bは前記第2磁極と前記フラッパの固定側との間で、前記フラッパに形成された弾性変形部である。すなわち、前記フラッパの表裏に凹部を形成して前記弾性変形部を構成している。また前記フラッパにおいて、481a、481bは前記供給側ノズルと前記第2磁極の間に形成される磁気経路部である。482は吸入口、483は吐出口である。右半分のみの閉ループ磁気回路は、「支持軸460→第1磁極475→前記フラッパの磁気経路部481b→第2磁極477b→磁極用ヨーク材476b→L形部材直立部463b→W形部材底部462b→支持軸460」である。
<第11の実施形態>
前述した実施形態は、いずれもアクチュータ部を構成する閉ループ磁気回路内に、「ノズル⇔ノズルフラッパ間の間隙⇔制御室」に繋がる流路を設けたものであった。したがって、アクチュータ部と流体制御部の部材を一部共有化したものであった。本実施例は、前記アクチュータ部から前記フラッパを延長して設け、この延長したフッッパ面にノズルを対向して配置する流路を構成したものである。
図40は、本発明の実施形態11に係る空気圧サーボバルブの正面断面図である。
800は支持軸、801は電磁コイル、802はL形部材底部、803はL形部材直立部、804はフラッパ、805は上部支持部材、806は前記支持軸と前記上部支持部材を締結するボルト、807は前記支持軸と前記フラッパを締結するボルトである。
「支持軸800→L形部材底部802→L形部材直立部803→フラッパ804→支持軸800」により、閉ループ磁気回路を形成している。想像線で描かれている下記流体制御部は、上記閉ループ磁気回路から離脱した箇所に設けられている。808は排気側ブロック、809は排気側流通路、810は排気側ノズル(逆方向ノズル)である。811は供給側ブロック、812は供給側流路、813は供給側ノズル(順方向ノズル)、814は吸気口、815は吐出口である。816は制御室であり、制御ポート(図示せず)に連絡している。817は磁極であるが、この磁極の中心線上に前記2つのノズル(810、813)は配置されていない。他の実施例の場合も同様であるが、磁極とノズルは同一軸上に配置されなくて、たとえば両者が隣接した位置に設置されもよい。この場合でも本発明を適用する上で支障はなく、バルブ全体構造を考慮していずれかを選択すればよい。本実施例の場合は、前記フラッパの締結部807(前記ボルト)に対して、前記磁極よりも外側に前記2つのノズル(810、813)を配置したため、ノズルとフラッパ間の変位(流量)を増幅して得ることができる。
<第12の実施形態>
前述した実施形態は、いずれも電磁石のみで閉ループ磁気回路を形成して、フラッパを駆動する構成であった。しかし、電磁石と永久磁石を併用して、フラッパの吸引力を増強し、かつ流体制御部とアクチュータ部を一体化することで、流体サーボバルブの構成を簡素化することも可能である。電磁石と永久磁石を併用は、軸対称構造である第1〜第7の実施形態のバルブにも適用できる。
図41において、951はマグネット(永久磁石)、952はコイル、953はこのコイルを収納するボディ、954はフラッパ、955a、955bは先端を対向させて取り付けられた一対のヨーク、956はフラッパ先端部である。957はフラッパ支持部材である板ばね、958は前記板ばねの支持中心部である。959は供給側ノズル(順方向ノズル)、960は排気側ノズル(逆方向ノズル)、961は供給側流路、962は排気側流路、963は制御ポート、964は制御室、965は吸入口、966は吐出口である。前記供給側ノズルと前記供給側流路、及び、前記排気側ノズルと前記排気側流路は、前記一対のヨークを利用して形成される。
<第13の実施形態>
本実施例は、従来の「双方向フラッパを用いるノズルフラッパ弁」の駆動原理に係る課題、すなわち、定常状態におけるバルブの動作点で空気消費流量が最も大きいという欠点を解消するバルブ構造を提案するものである。
図42は、本発明の実施形態13に係る空気圧サーボバルブの正面断面図であり、750は筒部形状の中心軸、751はこの中心軸の底部、752は前記中心軸の軸芯と同芯円で形成された中心軸の外枠部、753は前記中心軸に装着されたコイルボビン、754は前記コイルボビンに巻かれたコイルである。中心軸750、中心軸底部751、中心軸の外枠部752、コイルボビン753、コイル754により、フラッパ(後述)を吸引して、その変位を制御する電磁アクチュエータを構成している。
755は中心軸の底部251と外枠部752を収納する筒形状のハウジング、756はこのハウジング底部、757はハウジング底部756と中心軸底部751を締結するボルト、758はハウジング底部756に形成された排気側流通路、759は中心軸750に形成された吐出口である。760は供給側ハウジング、761はこの供給側ハウジングの中心部に形成された供給側流路、762は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる制御側流路である。763は凸形円盤形状のフラッパで、板厚の厚い凸部(磁気経路部)764aと、板厚の薄い外周部(弾性変形部)764bにより構成される。765は吸入口、766は供給側ハウジング260とフラッパ763の間に形成される供給側空隙部、767はフラッパ763と前記ハウジング側との間に形成される排気側空隙部である。768a、768b、768c、768dはフラッパ763に形成された流通穴(768b、768dは図示せず)、769は供給側ノズル(順方向ノズル)、770は排気側ノズル(逆方向ノズル)である。771は中心軸750のフラッパ弁側端面(中心軸端面)で電磁石の第1磁極である。772は外枠部752のフラッパ側端面に形成された第2磁極、773はフラッパ763とハウジング755の間に矜持された非磁性リングである。供給側ハウジング760とハウジング755は、前記フラッパと前記非磁性リングを挟み込み、ボルト(図示せず)により締結されている。774は前記フラッパの供給側の中心部に形成された供給側凸部、775は前記フラッパの排気側の中心部に形成された排気側凸部である。また、前記供給側空隙部と前記排気側空隙部により、本バルブの制御室776を形成している。
さて本実施例バルブは、定常状態におけるバルブの動作点で空気消費流量を充分に小さくできる。これは、前記供給側ノズル769と前記フラッパ763との間、及び、前記排気側ノズル770との間に横断面が概略環状の流路を形成する環状流路形成構造がそれぞれ設けてあることに起因する。より具体的には前記環状流路形成構造は、各ノズル769、770の先端部の筒状の内周面と、前記内周面に対して半径方向に離間させて挿入される挿入体とからなるものである。すなわち、フラッパ763の面板部に対して垂直に突出させた凸部を挿入体としてあり、ノズル769、770への挿入体の挿入加減により環状の流路の軸方向の長さを変化させ、流量特性を変化させることができる。図43a〜43cはノズルフラッパ間の組み合わせ状態を示し、図44aと図44bは一個のノズルに注目したときの、バルブ流量とノズルフラッパ間の隙間の関係をモデル化して示している。以下、上記2つの図(図44aと図44b)を対比させながら、本バルブの動作原理について、図43a〜43cを用いて説明する。
図43aはバルブ入力電流I=0(初期値)の状態、図43bは入力電流I≒Imax/2(動作点)の状態、図43cは入力電流I=Imax(最大値)の状態である。同図において、777は供給側ノズルオリフィス、778は排気側ノズルオリフィスである。779a、779b(図示せず)、779cは第1磁極771のフラッパ側端面に形成した流通溝であり、実施形態4(図25b)と同様の機能を有する。
図43aのバルブ入力電流I=0では、前記フラッパの供給側凸部774は供給側ノズルオリフィス777に深く侵入している。図44aにおける図Aの状態であり、供給側凸部774と供給側ノズルオリフィス777で形成される狭い環状隙間の流れは粘性流となっている。したがって、空気圧供給源(図示せず)から本バルブの前記制御室に流入する空気量は微小量である。
図43bの入力電流I≒Imax/2(動作点)では、供給側凸部774のノズル側端面780は供給側ノズルオリフィス777の開口端と近接した状態にある。図44aにおける図Bであり、前記供給側ノズルから前記制御室に流入する流体の流れは、粘性流領域からポテンシャル流領域に移り変わる遷移領域にある。また、前記制御室から前記排気側ノズルに流入する流体の流れも、同様に遷移領域にある。
図43cの入力電流I=Imaxでは、供給側凸部774のノズル側端面780は供給側ノズルオリフィス777の開口端から十分に離れた状態にある。図44aにおける図Cであり、前記供給側ノズルから前記制御室に流入する流体の流れは、ポテンシャル流領域にある。また、前記フラッパの排気側凸部775は、排気側ノズルオリフィス778に深く侵入しており、両部材で形成される狭い環状隙間の流れは粘性流となっている。したがって、制御室776から大気に流出する空気量は微小量である。
図44bに、本実施例バルブの「ノズルとフラッパ間の隙間X(バルブ入力電流)に対するバルブ流量Q」の特性(実線)を、従来バルブ特性(一点鎖線)との対比のもとで示す。本実施例バルブの場合、粘性流領域Aから遷移領域Bまでは流量は十分に小さく、ポテンシャル流領域Cに入ると流量は急峻に増大する。従来バルブの場合は、全領域(A→B→C)がポテンシャル流領域であるため、隙間Xが小さい段階から流量は大きい。この流量特性の違いが、両者の動作点における空気消費流量の差となる。
図45a、図45bは本実施例バルブが従来バルブと比べて、動作点における空気消費流量が大幅に削減できることを摸式的に示すものである。制御室の圧力を一定と仮定して、隙間Xに対する流量Qの特性を、i.供給側から制御室への流入量(実線)、ii.制御室から大気への流出量(鎖線)について記載している。図45aは従来バルブで、図45bは本実施例バルブである。流入量と流出量の交点を動作点とすれば、本実施例バルブの動作点における空気消費流量は、従来バルブと比較して大幅に小さくなることがわかる。動作点近傍で、従来バルブの曲線i.ii.は共に上に凸の曲線であり、本実施例バルブの曲線i.ii.は共に下に凸の曲線の組み合わせとなる。すなわち、ノズルとフラッパの詳細な構造に関わりなく、あるいは粘性流領域、ポテンシャル流領域のどの領域であっても、隙間X(あるいは電流値)に対する流量Qの特性が、動作点近傍で下に凸の曲線になるバルブ特性を有することが消費空気流量を低減させるポイントである。
さて前述したように、本実施例バルブが空気消費流量を大幅に低減できる理由は、双方向フラッパ両面の凸部と、各ノズル側オリフィスの嵌合状態を、フラッパの軸方向移動により調節できるからである。そのためには、フラッパは出来るだけ大きなストロークで駆動されるのが構造面と部材の加工面から好ましい。しかし、たとえば第1の実施形態で示したように、Maxwellの応力を利用したアクチュエータの場合、磁気吸引作用が有効利用できる磁極とフラッパ間の磁気ギャップの最大値は0.05〜0.20mmのオーダーであった。エアーギャップに対する磁気吸引力の特性は非線形であり、上記最大値を超えると、磁気吸引力は通常では大幅に低下する。しかし、第3の実施形態で説明したように、フラッパに相当する可動部に適切な磁性材料と薄いディスクを用いると、電流に対するフラッパの変位特性は、線形性(直線性)の優れた特性を得ることができることが、本研究の過程で見出すことができた。
この磁気飽和現象をさらに積極的に利用することにより、電流に対するフラッパの変位特性の線形性を失うことなく、フラッパのストロークを大幅に増大することができる。
図46のグラフ中に本実施形態に用いた電磁石とディスク形状の仕様
[Type(II)]を、前述した第2の実施形態の仕様[Type(I)]と対比して示す。Type(II)の電磁石の外径はType(I)と比べて2倍、コイル巻数は3倍である。電流値I=40mAのときType(I)ではフラッパ変位X=0.12mm程度であるのに対して、本実施例Type(II)ではフラッパ変位X=0.68mmとなる。本実施例バルブの開発において、構造・性能面と部品の精密加工面からの検討結果では、前記閉ループ磁気回路の磁気飽和特性を利用して、前記ノズルと前記電磁石間の最大ストロークを0.5mm以上に設定すれば、十分な性能が得られることが分かった。
図47は、前述した実施例の構造を利用して、電流値に対する流量特性をより線形性に優れた特性にするために、ノズルフラッパ間の嵌合状態に工夫を施したものである。すなわち、電流値に対するノズルフラッパ間の流路面積がよりなだらかに変化するように、ノズルと嵌合するフラッパ側凸部をテーパ形状にしている。図47aはバルブ入力電流I=0(初期値)の状態、図47bは入力電流I≒Imax/2(動作点)の状態、図47cは入力電流I=Imax(最大値)の状態である。780は供給側ハウジング、781は中心軸、782はフラッパ、783は前記フラッパの中央部に形成された供給側テーパ部、784は排気側テーパ部、785は前記供給側テーパ部と勘合するように形成された供給側ノズル(順方向ノズル)オリフィス、786は前記排気側テーパ部と嵌合するように形成された排気側ノズル(逆方向ノズル)オリフィスである。787は第1磁極、788a、788b(図示せず)、788cは第1磁極787のフラッパ側端面に形成した流通溝であり、実施形態4(図25)と同様の機能を有する。789は制御室である。
図47aのバルブ入力電流I=0では、前記フラッパの供給側テーパ部783は供給側ノズルオリフィス785に深く侵入しており、空気圧供給源(図示せず)から本バルブの制御室789に流入する空気量は微小量である。
図47bの入力電流I≒Imax/2(動作点)では、供給側テーパ部783は供給側ノズルオリフィス785の開口端に浅く侵入した状態にある。また排気側テーパ部784と排気側ノズルオリフィス786の開口端との関係も同様である。したがって、この段階では供給側から制御室789へ流出する流量、また前記制御室から大気側へ流出する流量は、共に僅少である。
図47cの入力電流I=Imaxでは、前記フラッパの排気側テーパ部784は、排気側ノズルオリフィス786に深く侵入しており、制御室789から大気に流出する空気量は僅少量である。
本実施例では、凸形円盤形状のフラッパを用いたが、第7実施形態で用いたようにスパイラルディスクばねを適用すれば、フラッパの大きな軸方向変位にも関わらず、発生応力を緩和して、かつ適切な軸方向剛性の設定ができる。あるいは、たとえば、雲形ばねでも適用できる。
本実施例では、前記フラッパの供給側の中心部に供給側凸部774を形成して、この供給側凸部と非接触で嵌合する供給側ノズルオリフィス777を形成した。また前記フラッパの排気側の中心部の排気側凸部775を形成して、この排気側凸部と非接触で嵌合する排気側ノズルオリフィス778を形成した。すなわち、供給側と排気側において、左右対称に凸部とこの凸部を収納するオリフィスを形成した。後述する第14、第15の実施形態も同様であるが、左右対称に凸部とこの凸部を収納するオリフィスを形成しなくても、吸気側、あるいは排気側のいずれか一方だけに形成してもよい。凸部とこの凸部を収納するオリフィスが一方だけでも設ければ、凸部がオリフィスに深く侵入することで流出量を遮断でき、また侵入の度合い(バルブ電流値)で流量制御を図ることができる。たとえば、一方に凸部とこの凸部を収納するオリフィスを設けて、もう一方は一般のノズルフラッパ弁(たとえば図1参照)の組み合わせでもよい。(図示せず)
本実施例では、フラッパ側に凸部を形成して、ノズル側にこの凸部を収納するオリフィスを設けたがその逆でもよい。後述する実施例も同様であるが、ノズル側に供給源に連絡する開口穴が形成された円筒部を形成して、フラッパ側にこの円筒部を狭い隙間を保って収納する凹部を形成してもよい。あるいは、ノズルのテーパ部(凸部)の先端自体を挿入体としてフラッパ側に形成された逆テーパ部(凹部)の内周面に対して非接触で収納されるような構成でもよい。要はノズルとフラッパの相対移動によって、流路の軸方向長さが変化するような環状流路形成構造を設ければよい。(図示せず)
<第14の実施形態>
図48は、本発明の実施形態14に係る空気圧サーボバルブの正面断面図であり、低消費空気流量の特徴を維持して、かつ入力電流に対する制御圧力が比例関係になるように、バルブ構造に工夫を施したものである。
300は中心軸、301はこの中心軸の底部、302は前記中心軸の外枠部、303はコイルボビン、304はコイルである。305は筒形状のハウジング、306はこのハウジング底部、307は締結ボルト、308は排気側流通路、309は吐出口、310は供給側ハウジング、311aは吸入口、311bは供給側流路、312は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる制御側流路である。313はフラッパで、供給側ハウジング310とハウジング305に挟み込まれた状態で、両部材305、310を締結するボルト(図示せず)により固定される。
314は前記供給側ハウジングと前記フラッパの間に形成される供給側空隙部、315は前記フラッパと前記ハウジング側との間に形成される排気側空隙部である。
316a、316b、316c、316dは前記フラッパに形成された流通穴(316b、316dは図示せず)、317は供給側ノズル(順方向ノズル)開口部、318は排気側ノズル(逆方向ノズル)開口部である。319は大気に繋がる定圧源ポート、320は電磁石の磁極、321は前記外枠部のフラッパ側端面で前記フラッパと密着している。
図49aはバルブ入力電流I=0(初期値)の状態、図49bは入力電流I≒Imax/2(動作点)の状態、図49cは入力電流I=Imax(最大値)の状態である。同図において、322は供給側ノズルオリフィス、323は排気側ノズルオリフィスである。324a、324b(図示せず)、324cは磁極320のフラッパ側端面に形成した流通溝であり、実施形態4(図25)と同様の機能を有する。325は前記フラッパの供給側に形成されたフラッパ供給側凸部、326は前記フラッパの排気側に形成されたフラッパ排気側凸部、327は前記供給側ハウジングのフラッパ側に形成された供給ハウジング側凸部、328は前記フラッパの供給側に形成されたフラッパ側凹部、329は制御室、330は定圧室である。この定圧室は大気に繋がる定圧源ポート319と連結しているため、圧力は常に一定にP=P0(大気圧)維持されている。供給ハウジング側凸部327とフラッパ側凹部328の2つの部材は、常に狭い隙間を保って軸方向に摺動自在に勘合されており、非接触シール部331を形成している。
図49aのバルブ入力電流I=0では、フラッパ供給側凸部325は供給側ノズルオリフィス322に深く侵入しており、両部材で形成される狭い環状隙間の流れは粘性流となっている。したがって空気圧供給源(図示せず)から本バルブの制御室329に流入する空気量は微小量である。
図49bの入力電流I≒Imax/2(動作点)では、フラッパ供給側凸部325の端面は供給側ノズルオリフィス322の開口部317(開口端)と近接した状態にある。前記供給側ノズルから前記制御室に流入する流体の流れは、粘性流領域からポテンシャル流領域に移り変わる遷移領域にある。また、前記制御室から前記排気側ノズルに流入する流体の流れも、同様に遷移領域にある。したがって、空気圧供給源(図示せず)から排気側に流出する空気流量はまだ充分に小さい。
図49cの入力電流I=Imaxでは、フラッパ供給側凸部325の端面は供給側ノズルオリフィス322の前記開口部から十分に離れた状態にある。前記供給側ノズルから前記制御室に流入する流体の流れは、ポテンシャル流領域にある。また、前記フラッパ排気側凸部は、排気側ノズルオリフィス326に深く侵入しており、両部材で形成される狭い環状隙間の流れは粘性流となっている。したがって、前記制御室から大気に流出する空気量は微小量である。
さて、入力電流が0<I<Imaxの範囲で、制御室329の圧力Paは前記フラッパの位置によって、P0<Pa<PSの範囲で変化する。しかし、定圧室330はシール部331によって、制御室329と遮蔽されているため、圧力はP= P0(一定)である。
電磁石の発生力(吸引力)Fとフラッパ両面の圧力差による荷重、及びフラッパのばね剛性による復元力が平衡する。定圧室330の圧力が前記フラッパに有効に作用する面積をS1、非接触シール部331で覆われる前記フラッパの供給側の面積をS2とすれば、前記フラッパの排気側で制御圧Paが加わる総面積はS1+S2である。前記フラッパ(ディスク)のばね剛性をK、前記フラッパの変位をXとすれば
(Pa- P0)S1 >>Kxとなるように、定圧室330のフラッパ面積S1を設定すれば、電磁石の発生力と制御圧力のゲージ圧Pa- P0は概略比例する。
磁気飽和現象を利用すれば、たとえば、図21のグラフ(Type C)に示すように、電流値に対する電磁石の発生力は比例関係を持たせることができる。したがって本実施例では、低消費空気流量の特徴を維持して、かつ入力電流に対する制御圧力が比例関係になるようなバルブ特性を得ることができる。
本実施例では、電磁石の磁極は中心軸のみに設けたが、吸引力を増加するために前述した実施例のように、第2磁極を設けてもよい。(図示せず)
<第15の実施形態>
図50は、本発明の実施形態15に係る空気圧サーボバルブの正面断面図であり、前述した実施例同様に、低消費空気流量の特徴を維持して、かつ入力電流に対する制御圧力が比例関係になるように、バルブ構造に工夫を施したものである。前述した実施例は定圧室をフラッパの外周部に設けたが、本実施例はフラッパの中心部で排気側に設けている。
900は中心軸、901はこの中心軸の底部、902は前記中心軸の軸芯と同芯円で形成された外枠部、903はコイルボビン、904はコイルである。905は筒形状の供給側ハウジング、906はこの供給側ハウジング底部、907は締結ボルト、908は供給側流通路、909は吸入口、910は排気側ハウジング、911aは吐出口、911bは排気側流路、912は空気圧アクチュエータ(図示せず)に繋がる制御側流路である。913はフラッパで、排気側ハウジング910と供給側ハウジング905に挟み込まれた状態で、両部材905、910を締結するボルト(図示せず)により固定される。914は前記供給側ハウジングと前記フラッパの間に形成される供給側空隙部、915は前記フラッパと前記排気側ハウジング側との間に形成される排気側空隙部である。916a、916b、916c、916dは前記フラッパに形成された流通穴(916b、916dは図示せず)、917は電磁石の磁極、918は前記外枠部のフラッパ側端面で前記フラッパと密着している。
以下、拡大図51において、919は供給側ノズルオリフィス、920は前記フラッパの供給側に形成されたフラッパ供給側凸部である。このフラッパ供給側凸部と供給側ノズルオリフィス919が勘合することで、供給側流路の流体抵抗R1が調節される。
921は前記フラッパの排気側に形成されたフラッパ排気側凹部、922は前記排気側ハウジングに形成されたハウジング排気側凸部である。このハウジング排気側凸部とフラッパ排気側凹部921が勘合することで、排気側流路の流体抵抗R2が調節される。供給側空隙部914と排気側空隙部は前記流通穴により連絡しており、前述した実施例同様に、この2つの空隙部により制御室923を形成している。この制御室の圧力Paは、供給源圧力PSと、供給側流路の流体抵抗R1と排気側流路の流体抵抗R2により決定される。
924は定圧室であり、大気に繋がる排気側流路911bと連結しているため、圧力は常に一定にP=P0(大気圧)維持されている。前述した実施例同様に、電磁石の発生力(吸引力)Fとフラッパ両面の圧力差による荷重、及びフラッパのばね剛性による復元力が平衡する。定圧室924の半径r1で決まる面積をS1、この定圧室反対側で、半径r2で決まる前記フラッパ供給側面積をS2とすれば、前記フラッパの排気側で制御圧Paが加わる総面積はS2-S1である。
式(15)において、(Pa- P0)S1 >>Kxとなるように、定圧室924の半径r1を設定すれば、電磁石の発生力と制御圧力のゲージ圧Pa- P0は概略比例する。したがって、前述した実施例同様に、低消費空気流量の特徴を維持して、かつ入力電流に対する制御圧力が比例関係になるようなバルブ特性を得ることができる。
実施例では、定圧室330の圧力を一定に保つために非接触シール部331を形成したが、Oリングなどのシール部材を用いてもよい。
<第16の実施形態>・・・ その他の実施例(電空変換器)
図52は、本発明の実施形態16に係る空気圧サーボバルブの正面断面図であり、本発明を電空変換器として用いた場合を示す。前述した実施例は、双方向フラッパと2つのノズル(順方向と逆方向)の組み合わせによるノズルフラッパ弁の構成であった。しかし、本発明はフラッパの片面と一個のノズルの組み合わせによる、たとえば電空変換器としても適用できる。
650は中心軸、651はこの中心軸の底部、652は中心軸の外枠部、653はコイルボビン、654は前記コイルボビンに巻かれたコイルである。中心軸650、中心軸底部651、中心軸の外枠部652、コイルボビン653、コイル654により、フラッパ(後述)を吸引して、その変位を制御する電磁アクチュエータを構成している。655は筒形状のハウジング、656はこのハウジング底部、657は締結ボルト、658は供給側ハウジング、659aは吸入口、659bは供給側流路、660は大気側に繋がる排気側流路、661は電空変換器の圧力室(図示せず)に繋がる制御側流路である。662は円盤形状のフラッパで、板厚の厚い凸部(磁気経路部)663と、板厚の薄い外周部(弾性変形部)664により構成される。665は供給側ハウジング658とフラッパ662の間に形成される供給側空隙部、666はフラッパ662と前記電磁アクチュエータ側との間に形成されるアクチュエータ側空隙部である。667a、667b、667c、667dは前記フラッパに形成された流通穴(667b、667dは図示せず)、668は供給側流路の上流側に設けられた第1ノズル、669は前記フラッパの対向面に設けられた第2ノズル、670は前記第1ノズルと第2ノズルの間に形成される制御室である。671は中心軸650のフラッパ側端面である第1磁極、672は前記外枠部のフラッパ側端面に設けられた磁極用リング、673はこの磁極用リングのフラッパ662側端面に形成された第2磁極である。674は前記磁極用リングと前記フラッパの間に介在して設けられた非磁性材料のスペーサである。
本バルブに電流を印加すると、第2ノズル669と前記フラッパ間の隙間が変化して、第2ノズル669の流体抵抗は変化する。第2ノズル669を可変抵抗RXとすれば、入力電流の増加に伴い、可変抵抗RX は低下する。第1ノズル668の固定抵抗をR0として、電気回路モデルで表現すれば、制御室670の圧力Pa={RX/( RX+R0)}×PSである。したがって、本バルブの構成により、入力電流に逆比例して、電空変換器の圧力室(図示せず)の圧力Paを調節することができる。
<第17の実施形態>
図53は、本発明の実施形態17に係る流体サーボバルブの正面断面図であり、本発明を4方案内弁を上流側で制御するパイロット弁(一次制御弁)として適用した事例である。700は中心軸、701はこの中心軸の底部、702は中心軸の外枠部、703はコイルボビン、704はコイルである。705は筒形状のリア側ハウジング、706はこのハウジング底部、707はボルト、708及び709は第1供給側流路、710はフロント側ハウジング、711は第2供給側流路、712は排気側流路である。713は円盤形状のフラッパで、板厚の厚い凸部(磁気経路部)714と、板厚の厚い弾性変形部715により構成される。716はフロント側空隙部、717はリア側空隙部である。718a、718b、718c、718dはフラッパ713に形成された流通穴(718b、718dは図示せず)、719は第1ノズル、720は第2ノズルである。721は前記第1ノズルの上流側に設けられた第1固定ノズル、722は前記第2ノズルの上流側に設けられた第2固定ノズルである。723は前記第1ノズルと前記第1固定ノズルの間に形成される第1制御室、724は前記第2ノズルと前記第2固定ノズルの間に形成される第2制御室、725は4方弁のスプール右端面(図54)に繋がる第1制御流路、726はスプール左端面(図54)に繋がる第2制御流路である。727は中心軸700の前記フラッパ側端面(中心軸端面)で電磁石の第1磁極、728は外枠部702の前記フラッパ側に形成された第2磁極である。
図54は、前述した本発明によるパイロット弁で駆動される4方案内弁を示す図である。730は4方案内弁、731は4方案内弁のスプール、732a、732bは前記スプールの両端面に装着されたばね、733は供給ポート、734a、734bは戻りポートである。735a、735bは制御ポートであり、制御対象である流体圧シリンダの左右の各室に連結される。
<第18実施形態>
図55は、本発明の実施形態18に係るマイクロアクチュータの正面断面図であり、本発明を図56のポペット弁、あるいは、図57に示す4方案内弁などと組み合わせることで、流体サーボバルブとして適用することができる。
850はマイクロアクチュータの全体を示し、851は中心軸、852はコイルボビン、853は前記コイルボビンに巻かれたコイルである。854は前記中心軸と前記コイルボビンを収納する外枠部、855はこの外枠部を収納する筒形状のコイル側ハウジング、856は前記外枠部と前記コイル側ハウジングを締結するボルト、857はフラッパ側ハウジング、858は円盤形状のフラッパで、板厚の厚い凸部(磁気経路部)859と、板厚の薄い外周部(弾性変形部)860により構成される。
861は中心軸851のフラッパ側端面である第1磁極、862は前記外枠部のフラッパ側端面に設けられた磁極用リング、863はこの磁極用リングの前記フラッパ側端面に形成された第2磁極である。864は前記磁極用リングと前記フラッパの間に介在して設けられた非磁性材料のスペーサ、865はフラッパ側ハウジング857と、コイル側ハウジング855を締結するボルトである。866aと866bは前記中心軸を摺動自在に支持する軸受、867はマイクロアクチュータとしての本ユニットの出力軸端部(前記中心軸の右端部)である。868は本ユニットの出力軸で駆動される流体制御部である。
869は前記フラッパの変位を検出する変位センサで、フラッパ側ハウジング857の中心部に装着される。変位センサ869からの信号はコントローラ870に入力されて、マイクロアクチュータの出力軸端部867が所定の位置になるように、コイル853に流す電流が制御される。
本実施例のマイクロアクチュータ850は、前記コイルに電流を印加したとき、前記出力軸端部867はアクチュエータ本体から突き出る動作をする。したがって、本アクチュータが磁気吸引式であるにも関わらず、従来から広く用いられている圧電型、磁歪型アクチュータ等と同様の使い方ができる。この動作を可能にしたのは、中心軸が前記外枠部(コイルボビン852)を貫通した構成にしたからである。かつ前記出力軸端部と反対側の空間を利用して、センサ869を配置することで、センサ内蔵型のマイクロアクチュータがコンパクトに構成できる。
中心軸851を支持する軸受(866a、866bに相当)に静圧軸受を用いれば、クーロン摩擦(静摩擦)の影響から回避できるため、前記出力軸端部は精度の高い変位制御ができる。その結果、前記出力軸と連結する流体制御部において、高い流量と圧力の制御ができる(図示せず)。あるいは、中心軸851を収納する外枠部854との半径方向の間隙を十分に大きくして、中心軸851の右端部(前記出力軸端部側)を前記フラッパに相当する弾性部材で支持する。すなわち、中心軸851の両端をディスク形状ばねで弾性支持することで、中心軸851はクーロン摩擦の影響を受けない非接触支持にできる。ディスク形状ばねとしては、第7実施形態で前述したスパイラルディスクばね、あるいは、雲形ばねなどが適用できる(図示せず)。
図56に前記マイクロアクチュータで駆動されるポペット弁の一例を示す。
880はテーパ部、881はこのテーパ部と勘合するノズル部、882はハウジング、883は流体供給ポート、884は流体出力ポートである。
図57は、前記マイクロアクチュータで駆動される4方案内弁を示す図である。890は4方案内弁、891は4方案内弁のスプール、892は供給ポート、893a、893bは戻りポートである。894a、894bは制御ポートであり、制御対象である流体圧シリンダの左右の各室に連結される。
前述したように、Maxwellの応力を利用したアクチュエータの場合、磁気吸引作用が有効利用できる磁極とフラッパ間の磁気ギャップの最大値は0.05〜0.20mmのオーダーであった。エアーギャップに対する磁気吸引力の特性は非線形であり、上記最大値を超えると、磁気吸引力は通常では大幅に低下する。しかし、第2の実施形態で説明したように、フラッパに相当する可動部に適切な磁性材料と薄いディスクを用いると、電流に対するフラッパの変位特性は、線形性(直線性)の優れた特性を得ることができることが、本研究の過程で見出すことができた。第13の実施形態[図46のType(II)のグラフ参照]で前述したように、この磁気飽和現象をさらに積極的に利用することにより、電流に対するフラッパの変位特性の線形性を失うことなく、フラッパのストロークを大幅に増大することができる。ちなみに、従来から多用されているピエゾアクチュータは、ストロークはせいぜい50μm程度が限界であり、超磁歪アクチュータも100μm程度が限界である。したがって、磁気飽和現象を利用することにより、従来のピエゾアクチュータ、超磁歪アクチュータでは得られなかったmmオーダーの変位制御が可能となる。さらに、第1の実施形態(表2参照)で前述したように、ボイスコイルモータ(リニアモータ)と比較しても、推力定数が高く、小電力で駆動できてアクチュータの大幅な小型化が可能である。
<第19実施形態>
図58は、本発明の実施形態19に係るマイクロアクチュータの正面断面図であり、実施形態18同様に、本発明を図56のポペット弁、あるいは、図57に示した4方案内弁などと組み合わせることで、流体サーボバルブとして適用することができる。但し、実施形態18の構造が電流を印加させることにより、出力軸が突き出る動作をするのに対して、本実施形態では出力軸が引っ込む動作をする。
820はマイクロアクチュータの全体を示し、821は中心軸、822はコイルボビン、823は前記コイルボビンに巻かれたコイル、824は前記中心軸と前記コイルボビンを収納する外枠部、825は筒形状のコイル側ハウジング、826は締結ボルト、827はフラッパ側ハウジング、828は円盤形状のフラッパで、板厚の厚い凸部(磁気経路部)829と、板厚の薄い外周部(弾性変形部)830により構成される。
831は中心軸821のフラッパ側端面である第1磁極、832は前記外枠部のフラッパ側端面に設けられた磁極用リング、833はこの磁極用リングの前記フラッパ側端面に形成された第2磁極である。834は締結ボルト、835は前記フラッパと一体化した本ユニットの出力軸端部、836は非磁性材料のスペーサである。837は本ユニットの出力軸で駆動される流体制御部である。
ここで、本実施例のマイクロアクチュータを、図56に示したポペット弁に直結した場合を想定する。電流を印加しない状態で、ポペット弁のテーパ部がノズル部880に密着していれば、流体の流れは遮断されている。電流を印加することで、前記テーパ部は前記テーパ部から離れ、流体は流体供給ポート883から流体出力ポート884に供給される。すなわち、電源が突然OFFとなる非常時には、流路は遮断されるフェルセーフ機能を持たせることができる。前述した実施形態も同様であるが、本マイクロアクチュータの適用対象は、流体機器に留まらず様々な用途に適用できる。
<第20実施形態>
本実施例は、ノズルからの流体墳力によるフラッパの動的安定性を改善するもので、図59は、実施形態3(図18)におけるノズルとフラッパ部分の拡大図、図60は、実施形態6(図28)におけるノズルとフラッパ部分の拡大図である。
理想的なサーボバルブの構造を追求する本研究の過程において、供給側流路の形状がフラッパの動的安定性に多大な影響を与えることが分かった。フラッパにはノズルからの高圧流体墳力が加わり、この流体墳力がフラッパを励振させる。板厚と支持外径で決まるフラッパ(ディスク)の支持剛性を小さくすれば、電磁アクチュータの吸引力が弱くても、大きなフラッパ変位(流量)を得ることができる。しかし、フラッパの支持剛性が弱い程、また流体の流れに脈動成分が多い程、流体墳力によってフラッパは、その共振周波数で振動して、異音を発生させ、流量を不安定にするなどの問題が生じた。
図59は、実施形態3においてノズルが装着された構造を示すものである。供給側ノズル(順方向ノズル)129と排気側ノズル(逆方向ノズル)130はそれぞれ供給側流路122と排気側流路119に圧入装着されている。上記ノズルの装着方法は、ノズルの突出量δn(図4a参照)を調整し易くするために、従来サーボバルブ(図69、図71参照)で通常に採用されているものである。
図60は、実施形態6の構造を示すもので、供給側ノズル(開口部269を示す)は、供給側ハウジング260と一体で形成されている。また排気側ノズル(開口部270を示す)も同様に中心軸250と一体で形成されている。ノズル開口部269に最も近接した流路径をΦdとして、長さLの流路を形成している。この長さLの流路を整流化区間279と呼ぶことにする。独立したノズル129を装着した図59の場合と比較して、図60の整流化区間279の長さLは充分に長い。研究の結果、流路長Lを長く、かつ流速に急峻な変化を生じさせないように形成することで、フラッパ263は流体墳力による励振作用の影響を受けにくくなることがわかった。流体の流れの中に障害物があるとカルマン渦が発生して、障害物の下流側にある弾性体は、カルマン渦列で風に靡く旗(ディスクに相当)のように、その共振周波数で振動することが知られており、同様の現象として説明できる。流路径ΦDから流路径Φdに急変する箇所(図中の鎖線Aの箇所)が、流速に急峻な変化をもたらし、流体の円滑な流れを妨げる障害となる。比率L/dが大きい程、フラッパ263は流体墳力に対して安定であり、ノズル129を装着した図59の場合と比較して、L/d>4に構成すれば、実用上充分な改善効果が得られる。L/d>5に構成すれば、フラッパ剛性を充分に小さくしても、フラッパ263は動的な安定性を保つことができた。整流化区間279における流路径Φdは均一でなくてもよく、鎖線Aの箇所の流路径段差を無くして、上流側に向けて先細りとなるような形状でもよい。この場合は区間Lにおける平均内径をΦdとして、上記L/dの条件を満足するように設定する。
従来サーボバルブのフラッパは剛体で構成されているのに対して、本発明の実施形態はフラッパ自身が薄いディスク形状の弾性体であり、ばね剛性を小さくできるために、上記整流化区間を設ける効果は大きい。(実施形態1の表1参照)
実施形態6ではノズルをハウジングと一体で形成したが、長い流路Lを有する独立したノズルを装着してもよい。あるいは、実施形態3(図59)の短いノズル129の突出量δnを調整後に、同内径の長いパイプを挿入して、長さLの整流化区間に相当する流路を設けてもよい。さらに、吸入口278に近い箇所の供給側流路261に、たとえば、内径の小さな細いオリフィスを蜂の巣状に束ねたレギュレータあるいは、求心方向に流動する狭い隙間を円周方向に複数個形成した流路、などを設ければより効果的である。(図示せず)
本実施例では、流体の供給側流路に上記整流化区間を設けたが、排気側流路にも同様の整流化区間を設ければ、フラッパの動的安定性はより向上する。(図示せず)
さて、供給側ノズル269近傍の供給側空隙部266を狭い隙間に設定した場合、前記供給側ノズル開口部から流出して、半径方向に流れる流体の流速が大きくなり、左右の空隙部266、267の動圧差の違いにより、前記フラッパは供給側に吸引される力が生じる。その結果、たとえば電流値が小さい段階で、フラッパ変位(流量)特性に不感帯(前記フラッパが壁面に吸着)が生じるなどの不具合があった。そこで、供給側ノズル269開口部の外周側近傍のフラッパ263に、微小径の貫通穴を、たとえば円周方向に複数個形成する。流体は供給側空隙部266から排気側空隙部267に最短距離で流入するため、左右の空隙部間の動圧差は小さくなり上記不具合は解消される。この効果は、本実施例を含む前述した実施例でも同様に得られる。また排気側空隙部の隙間が狭い場合でも、電流の最大値近傍で同様の現象が発生するが、前述した微小径の貫通穴を形成することで、この問題は解消される。(図示せず)
さらに、両空隙部266、267の隙間を、たとえば半径の大きさに比例して増加するテーパ形状にする等の方策も、動圧差に係る上記問題点の解消に効果的である。(図示せず)
補足(1)
(1)磁性材料のBH特性を選択してフラッパの変位特性を変える
第2の実施形態で示したように、たとえば、フラッパに相当する可動部に適切な磁性材料と薄いディスクを用いて磁気飽和現象を利用すると、電流に対するフラッパの変位特性は、線形性(制御性)の優れた特性を得ることができる。
前述した実施例では、フラッパの形状をたとえば凸形状にすることで、電流に対するフラッパの変位特性を変えることができた。しかし、磁性材料のBH特性(磁界強度に対する磁束密度特性)によっても、電流に対するフラッパの変位特性は変わる。
図61は、「磁界強度に対する磁束密度特性」が異なる3種類(A、B、C)の磁性材料特性を示す。前述したように、HCは線形領域と磁気飽和領域の磁化力境界値、BCはH=HCのときの磁束密度境界値、Bmaxは最大飽和磁束密度である。上記HC、BC、Bmaxにより、任意の磁性材料の特性を整理できる。
図62は、上記A,B,Cの材料を用いたときの、電流に対するフラッパの変位特性の違いを定性的に示すものである。すなわち、磁性材料のBH特性(HC、BC、Bmax)を選択することで、電流に対するフラッパの変位(流量)特性は、適用する対象に要求される特性に併せて選択することが可能である。
(2)フラッパ以外の箇所に磁気飽和する部分を設ける方法
前述した実施例では、磁路面積の小さな薄板のフラッパを利用して、磁気飽和の調節していた。しかし、閉ループ磁気回路を構成する各要素のいずれを利用しても、磁気飽和現象を利用することができる。
図63は、中心軸に磁路面積の小さな箇所を設けたものである。280は中心軸、281はフラッパ、282はコイル、283はコイル外枠部、284aと284bはフラッパ固定部である。フラッパ281は板厚の厚い281a(磁気経路部)と、板厚の薄い外周部(弾性支持部)281bにより構成される。285は前記中心軸の中間部に形成された径小部で、閉ループ磁気回路の中で磁路面積の最も小さな箇所である。すなわち、径小部285の断面が磁気飽和現象を調節する最大磁束コントロール面(図10c参照)に相当する。磁気飽和現象を調節する磁路面積を最も小さくする箇所として、たとえば、コイル外枠部283の外周面、あるいは中心軸底部286等に最大磁束コントロール面を設けてもよい。あるいは、287を第1磁極、288を第2磁極として、これらの磁極のフラッパ側端面の面積を局所的に充分に小さく形成して、磁路面積の小さな最大磁束コントロール面としてもよい。たとえば、コイル外枠部283の前記フラッパ側を局所的にテーパ形状にしてもよい。(図示せず)
本発明の前述した各実施例では、作動流体に空気を用いた場合を示したが、本発明で用いる作動流体としては、油、空気、様々な種類のガスを問わず適用できる。たとえば電磁コイルの部分は、樹脂でモールド(封止)成形することで液体が触れてもよい構成にしてもよい。
ディスク(フラッパ)材料に用いる材料としては、パーマロイ(B)、電磁ステンレス鋼、純鉄などが適用できる。また、閉ループ磁気回路を構成する部品には磁性材料を用いて、それ以外のハウジングなどには非磁性材料を用いればよい。
たとえば第2、第3の実施形態では、閉ループ磁気回路を構成する部品(ディスク)の磁気飽和現象を利用することにより、線形性が良く、かつストロークの大きな電流に対する流量(変位)特性を得ることができることを示した。しかし、磁気飽和現象を利用しない場合でも、各実施例で開示したバルブ構造を用いて本発明を適用できる。たとえば、図14の電流値に対する変位特性のグラフにおいて、ディスク板厚h=0.5mmの場合、Imax=0.015Aとなるように、変位が急峻に立ち上がる手前で電流の上限値を設定する。この場合は、変位(流量)のストロークは小さくなるが、0<I<Imaxの範囲で流体サーボバルブが実現できる。
磁気飽和現象を利用した第2実施形態では、磁路面積が最も小さな箇所を「最大磁束コントロール面」として、磁気飽和現象を調節した。磁路面積の大きさではなく、透磁率の小さな磁性材料を用いて、磁気飽和現象を調節することもできる。この場合、閉ループ磁気回路内に、透磁率の小さな磁性材料で構成される部材を局所的に配置すればよい。また、電流値に対する流量特性を実測した結果、図16のグラフに示すように、「下に凸の曲線」から「上に凸の曲線」に移り変わる変極点E点の存在が見出されたならば、磁気飽和現象が効果的に利用されていることを示すものである。但し、バルブの最大使用電流の設定範囲がE点におけるX軸の値以下(I<IC)の場合でも、たとえば、磁気飽和を含まない「下に凸の曲線」だけに設定した場合でも、上記実施例のバルブは適用できる。その理由は、図15に示すように、たとえば、ディスクの板厚を薄くした場合、流量特性線形化の効果は電流が充分に小さい段階から得られるからである。この場合、図16のc点を Imax(=Iad)として、勾配が最も大きい包絡線Bbから電流範囲Ibc求め、式(12)により「線形化の効果指標η」を評価すればよい。あるいは、角度α、βから効果指標ηを求めてもよい。
また、周知のように、制御要素の一部が非線形であっても、フィードバック制御を施すことで、「入力に対する出力」特性は、制御システム全体で線形化する作用を有し、制御要素の非線形性は補うことができる。したがって、線形化の効果指標ηが低い場合でも、用途によっては本実施例バルブの効用を否定するものではない。また、永久磁石を電磁石と並列に配置して、磁気飽和のレベルを調節してもよい。
補足[2] 本発明バルブを適用した流体サーボ装置
近年、半導体製造装置や検査装置に用いられる除振台に求められる性能は、製品の高集積化につれて益々高くなっている。除振テーブル上に搭載されるステージ(図68の592)は生産性向上のために、近年益々大型化、高速化しており、除振台には一層俊敏な制振制御と位置制御の実現が求められている。周知のように、制御対象に対して、速度、加速度、圧力あるいは圧力微分フィードバック、フィードフォワード等の制御系の選定と工夫(シンセシス)により、装置の除振と制振の性能改善は可能である。たとえば、
i.加速度フィードバック(図68の加速度センサ586を利用)を施せば、質量m の
増加と等価となり、条件次第ではあるが、固有振動数を低下させ、共振ピークを低減させるなどの効果が得られる。
ii.定盤直下に配置された地動加速度センサ(図68の588)からの信号を用いて、フィードフォワードを施せば、広い周波数領域で大幅な除振性能の改善ができる。
さて、アクティブ除振装置の根幹をなす考え方はスカイフック理論と呼ばれているものである。スカイフック理論とは、図64aに示すように、物体をもし空中に張られた架空の線(ワイヤー)に宙吊り(スカイフック)の状態にして移動させることができれば、物体は常に安定した状態を保つことができるという理論である。
しかし、現実には空中にワイヤーを張ることは出来ないために、図64bに示すように、物体(制御対象)をアクチュータで支持して、上記物体の上部に加速度センサを配置する。この加速度センサの出力α→0になるように、アクチュエータを加速度FB制御すれば、仮想のスカイフックが実現できる。図65は、空気圧アクチュエータを用いた除振装置の除振性能をモデル的に示すグラフである。図中のグラフa、b、cは比例変位フィードバックだけを施した場合であり、a、b、cの順で空気室の容積は小さく、共振周波数は高い。同図中のグラフa’、b’、c’は、上記a、b、cのアクチュエータに対して、制御系の選定により除振性能の改善を図ったものである。すなわち、比例変位フィードバックに加えて、加速度フィードバック(上記i.)と地動加速度フィードフォワード(上記ii.)を施した場合を示す。地動外乱に対する除振性能(振動絶縁性能)と、直動外乱に対する制振性能はトレードオフの関係にあり、除振装置を適用する対象がいずれを重視するかで上記特性a’〜c’が選択されるのである。したがって、加速度フィードバックと地動加速度フィードフォワードは、除振性能改善に重要な役割を担っており、主に加速度フィードバックの適用は共振ピークを低減させるために、アクティブ除振装置には必須条件である。
図66はアクティブ除振装置の制御ブロック図の一例を示すもので、鎖線で示す部分Aが定盤(図68の581)を含む制御対象である。
図67は図66の制御ブロック図から得られる開ループ伝達特性の一例を示すもので、一巡伝達関数(GL=Xout/Xin)の周波数に対するゲイン特性(図67a)と、位相特性(図67b)を示すものである。このグラフ(Bode線図)を用いて、系全体の応答性(固有値)が数Hz〜10数Hz程度のアクティブ空気圧サーボ除振装置に用いられるサーボバルブに、何故、数百Hzの高い共振周波数が必要とされるかについて説明する。グラフ中の表に示すように、
(1)曲線i.は加速度フィードバック(FB)を施さず、空気圧サーボバルブの共振周波数が低く、f0=100Hz(図中のA点)の場合を示す。
(2)曲線ii.は加速度FBを施して、空気圧サーボバルブの共振周波数が低く、f0=100Hz(図中のB点)の場合を示す。
(3)曲線iii.は加速度FBを施して、かつ本発明の空気圧サーボバルブを適用した場合を示し、共振周波数が高く、f0=1000Hz(図中のC点)である。
上記(1)(2)(3)について、制御安定性の観点から評価する。ちなみに、図中のD点(5.5Hz)は、定盤を含む制御対象と空気圧アクチュータのばね剛性できまる固有値である。さて一巡伝達関数のBode線図上で、次の2点を満足すれば、よく知られているように系は安定である。
(i)位相交点で正のゲイン余裕がある
(ii)ゲイン交点で正の位相余裕がある
上記(1)の場合、空気圧サーボバルブの共振周波数がf0=100Hzでも上記(i)(ii)を満足しており、系は安定である。
上記(2)の場合、加速FBを施すことでゲインが上昇して、かつ位相は180度遅れる。さらに、サーボバルブの共振点f0=100Hz(B点)において、ゲイン余裕はマイナス(ゲイン>0)であるため、系は不安定となる。
上記(3)の場合、加速FBを施すことでゲインが上昇して、かつ位相は180度遅れる点は上記(2)と同様である。但し、本発明のサーボバルブの共振点f0=1000Hzにおいて、系のゲインは十分に低下しており、十分に大きなゲイン余裕(ゲイン<0)があるため、系は安定となる。
多くの実験結果、空気圧サーボバルブの共振周波数を200Hz以上にすれば、加速度FBのゲインを必要最低限のレベルで設定することができた。しかし、望ましくは300Hz以上であった。したがって、上記条件を満足するように、たとえば実施形態1の場合は、円盤形状ディスク(フラッパ)の板厚、外径、支持条件などを決めればよい。その他の実施形態でアクティブ除振装置に適用する場合も同様である。アクティブ除振装置以外の空気圧サーボ装置で、加速度フィードバックを施す場合は同様の課題が生じるため、満足できる共振周波数になるようにフラッパの仕様を決めればよい。
以上、本発明バルブを工業用アクティブ除振装置に適用した場合について説明したが、本発明は様々な空気圧サーボ装置に適用できる。たとえば、空気圧人工筋肉を用いた人と協調可能なパワーアシストシステムに適用すれば、細かな位置制御と共に、電磁モータにはない柔らかな動作が実現できる。あるいは、空気圧ゴム人工筋肉を用いた足関節の背屈動作を支援する歩行支援装置、空気圧シリンダで駆動されるパワーアシスト椅子、空気圧ベローズで駆動する微動ステージ、複雑な形状の物体を把持する空気圧マニュプレータ、鉄道車両用の空気圧ブレーキシステム、車両用のアクティブサスペッション、等々である。
空気圧サーボシステムは、i.クリーン、ii.保守が容易、iii.出力/重量比が電動式と比べて高い、iv.圧縮性のため動きがなめらかである、v.力制御ができる、など他方式にはない様々な特徴を有する。空気圧サーボシステムの性能とコストを最も支配するのは、システムの心臓部であるサーボバルブであると言っても過言ではなく、従来バルブの欠点を大きく解消する本発明バルブは、今後空気圧サーボシステムの幅広い普及をおおいに加速すると予想される。
その他の実施形態について説明する。フラッパ支持部材は、フラッパの一部を固定して電磁石の吸引力によりフラッパ自体を変形させるためのものであったが、例えばフラッパを揺動可能に支持し、フラッパの姿勢を変化させるものであっても構わない。すなわち、本発明は、フラッパ支持部材により揺動可能に設けられたフラッパ自体に磁力線が通るように電磁石を配置し、ノズルとフラッパとの離間距離を変化させるようにしてもよい。この場合は、前記フラッパを磁性材料で形成するとともに、前記フラッパに印加される磁力が磁気飽和領域に入るまで前記電磁石に電流が印加されるようにすることで、流量制御特性は各実施形態に記載したものに近いものを実現することができる。