JP2020044840A - 熱可塑性樹脂フィルム及びそれを用いた電気・電子部品 - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルム及びそれを用いた電気・電子部品 Download PDF

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Hideyuki Yamauchi
英幸 山内
葉子 若原
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葉子 若原
高橋 健太
Kenta Takahashi
健太 高橋
青山 滋
Shigeru Aoyama
滋 青山
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Abstract

【課題】耐熱性、電気絶縁性および/または断熱性に優れる熱可塑性樹脂フィルムを提供する。【解決手段】ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分としてなる熱可塑性樹脂フィルムであって、2層以上の積層構成を有し、構成する層の少なくとも1層は空孔を有する層(I)であり、少なくとも片面表層が表面粗さRaが1μm以下の層(II)であることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂フィルムに関する。
ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂などに代表される熱可塑性樹脂からなるフィルムや不織布は耐熱性・電気絶縁性・低吸湿性、高温下での寸法安定性および耐薬品性に優れることから、電気・電子部品、電池用部材、機械部品および自動車部品の絶縁材や断熱材として好適に使用されている。
特に、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドからなるフィルムは、耐熱性、難燃性の特性を活かし、フィルターやセパレータへの適用や絶縁体・断熱材・回路基盤用基材として適用検討が進められている(例えば特許文献3、4)。これらの用途では電気絶縁性・低誘電特性といった電気特性について、近年高い水準が要求される傾向にあり、これらの特性を向上させる観点からフィルムを多孔化する手法が検討されている。フィルムを多孔化するには低融点物を混合するといった製法(例えば特許文献5)や、Tダイを用いて溶融樹脂を押出した直後のシートをドラフトにて微延伸し多孔化する手法があげられているが(例えば特許文献6)、低融点を含むため口金汚れが発生したり、滞留安定性が低く生産性が劣るといった問題があった。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂などの熱可塑性点樹脂に無機粒子を添加して2軸延伸することで空孔を形成する手法が提案されているが(特許文献7)、無機粒子を多量に添加するために、空孔間距離が短くなり空孔が連結し、フィルム表面が粗面化するという問題があった。
特開2010−106408号公報 特開平10−259561号公報 特開2015−13913号公報 特開昭58−67733号公報 特開2015−98577号公報
本発明の課題は、上記した問題を解決することにある。耐熱性、電気絶縁性および/または断熱性に優れる熱可塑性樹脂フィルムを提供することである。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、上記課題を解決するために次の構成を有する。
(1)ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分としてなる熱可塑性樹脂フィルムであ
って、2層以上の積層構成を有し、構成する層の少なくとも1層は空孔を有する層(I)であり、少なくとも片面表層が層(I)とは異なる表面粗さRaが1μm以下の層(II)であることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
(2)層(II)の結晶化度が30%以下であることを特徴とする(1)に記載の熱可
塑性樹脂フィルム。
(3)層(I)に含まれる粒子の粒子積算分布においてD80が10μm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
(4)層(II)の厚みが9um以上である事を特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム
(5)熱可塑性樹脂フィルムを構成する各層が共押出により積層されたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
(6)フィルムが二軸延伸されていることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いた電気・電子部品。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは耐熱性・電気絶縁性および/または断熱性に優れることから、電気・電子機器、電池用部材、機械部品および自動車部品や絶縁材、断熱材、テープ、回路基盤用基材、印刷用トナー攪拌子用フィルム、離型用フィルムとして好適に用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする樹脂からなる。
ここで主成分とは、熱可塑性樹脂フィルムを構成する原料の80質量%以上をポリアリーレンスルフィド樹脂が占めることをいう。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(1)〜式(11)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 2020044840
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、2層以上の積層構成を有し、空孔を有する層(I)に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の繰り返し単位としては、上記の式(1)で表されるp−アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp−アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p−フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、空孔有する層(I)と層(I)とは異なる表面粗さRaが1μm以下の層(II)をそれぞれ少なくとも1層以上から構成される。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層(I)に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、主要構成単位として下記構造式で示されるp−アリーレンスルフィド単位を全繰り返し単位の97モル%以上で構成されていることが好ましく、より好ましくは、98モル%以上である。かかる主成分が97モル%未満では、結晶性やガラス転移温度などが低くなり、耐熱性、電気特性、耐薬品性が低下する場合がある。
Figure 2020044840
また、繰り返し単位の3モル%未満であれば共重合可能なスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。このような繰り返し単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基等の置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位、カーボネート単位などが具体例としてあげられ、このうち1つまたは2つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれの形態でも差し支えない。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の分子量は重量平均分子量で40,000以上であることが好ましく、40,00〜80,000であることがより好ましく、45,000〜75,000であることがさらに好ましい。分子量を上記範囲とすることで、分子鎖の絡み合いが増えることから延伸性や優れた機械特性が発現する。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)は空孔を有する。本発明でいう空孔を有するとは空孔率が1%以上であり、好ましくは空孔率が20%以上であり、より好ましくは20〜70%、最も好ましくは40〜50%である。ここで空孔率とは、層(I)の任意のサイズの断面画像の面積を100とした際に、その画像中に含まれる空孔の面積の割合を指し、層(I)の任意サイズの断面画像に空孔が観察されない場合が空孔率0%となる。空孔率が20%より小さくなると、熱可塑性樹脂フィルム中に含まれる空孔が少なくなり、フィルム中に占める誘電率の小さい空気の割合が減るため、電気特性が低下する場合がある。また空孔率は高ければ高いほど好ましいが生産性保持の観点から70%以下が好ましい。空孔率を上記の範囲とするには後述する粒子濃度や製膜条件を適用することで達成できる。空孔率は積層体の断面について後述する手法で評価することで確認できる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に空孔を形成する手法としては、工程を簡略化でき生産性に優れることから乾式法(樹脂を溶融し、シート状に押出したものを延伸により多孔化する方法)を用いることが好ましい。また、乾式法の中でも滞留安定性と生産性を考慮して、空孔を形成させる層に無機粒子を添加して延伸することで、粒子の周囲に空孔を形成させる手法が好適に用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に含まれる粒子の濃度は、熱可塑性樹脂フィルムの層(I)を構成する樹脂やその他の添加物からなる当該層の原料組成を100質量%とした際に、10質量%以上であることが好ましく、10〜60質量%がより好ましく20〜40質量%であることが特に好ましい。粒子濃度を上記の範囲とすることで効率よく空孔を形成することができる。粒子濃度が10質量%未満であると、後述するフィルム製造時に粒子濃度が低いため空孔が形成されにくくなる場合がある。また粒子濃度が60質量%を上回ると熱可塑性樹脂フィルムの製造時に延伸が困難となり、生産性が低下する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に用いる粒子としてはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックスや窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維等のなどの無機化合物があげられる。用いる粒子は1種でもよく、複数種を混合して用いてもかまわない。上記の中でも分散性や欠点抑制の観点から炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、特に欠点抑制の観点から炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカが最も好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に用いる粒子は、熱可塑性樹脂フィルムの物性を損なわない範囲で表面処理を施すことができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に用いる粒子の体積平均粒径は、3〜20μmであることが好ましく、5〜10μmであることがより好ましい。上記の体積平均粒径の粒子を用いることで、粒子を高濃度で配合した際に発生しやすくなる粒子同士の凝集を抑制し、延伸した際に粒子の周囲に応力が集中するため、層(I)中に効率よく空孔を形成させることができる。粒子の体積平均粒径が3μm未満であると、延伸時に空孔が形成しにくくなったり、空孔の大きさが小さくなるため空孔率が低下したり、粒子の表面積が増えるため凝集を起こす場合がある。また、体積平均粒径が20μmより大きいと粒子の突き抜けにより延伸の際にフィルム破れが発生しやすくなり、熱可塑性樹脂フィルムの生産性が低下する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に用いる粒子の体積平均粒径および濃度は、後述する手法を用いて確認することができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)含まれる粒子の粒子積算分布においてD80は10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。
D80が上記範囲を外れると延伸の際にフィルム破れが発生しやすくなり、熱可塑性樹脂フィルムの生産性が低下する場合がある。
ここでD80とは、動的光散乱方式を測定原理とする粒度分布計(商品名:マイクロトラックUPA150、日機装社製)で測定した値を意味する。具体的には、粒度分布の累積体積百分率が80%の時の粒径(D80)を意味する。ここで粒度分布とは、熱可塑性樹脂フィルムの層(I)に含まれる粒子の粒度分布のことである。
D80を上記範囲とする方法としては、粉砕した粒子をふるい等で分級することで達成できる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層(II)の融点は275℃以下が好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層(II)の融点を上記の範囲とすることで、フィルム表面の粗面化の抑制や製膜時のフィルム破れを抑制することができる。融点が275℃より高いとフィルム表面が粗面化する場合や製膜安定性が低下する場合がある。また、耐熱性の低下や製膜安定性の観点から融点の下限は230℃が好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層(II)の融点は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を後述する組成にて重合することで制御できる。熱可塑性樹脂フィルム層(II)の融点はより好ましくは250℃以上275℃以下である。熱可塑性樹脂フィルム層(II)の融点は、後述する手法を用いて測定できる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層(II)の融点を上記範囲とする方法としては、層(II)に共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を用いるのが好ましく、好ましくは80〜95モル%以下がポリ‐p‐アリーレンスルフィドユニットで構成されてなり、残る5〜20モル%がポリ‐p‐アリーレンスルフィドユニット以外の共重合単位で構成されており、より好ましくは85〜92モル%以下のポリ‐p‐アリーレンスルフィドユニットと残る8〜15モル%がポリ‐p‐アリーレンスルフィドユニット以外の共重合単位であることにより、上記範囲の融点を有するポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることが可能となる。かかる成分が80モル%未満では、結晶性が低下し、耐熱性、製膜安定性が低下する場合があり、95モル%を超えると、熱可塑性樹脂フィルム層(II)に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の融点を充分低下させることができずフィルム表面が粗面化する場合がある。
上記の好ましい共重合単位は、
Figure 2020044840
Figure 2020044840
Figure 2020044840
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2020044840
Figure 2020044840
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、特に好ましい共重合単位は、m−フェニレンスルフィド単位である。共重合成分との共重合の態様は特に限定されないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(II)は無機粒子を含んでもよいし、含まなくてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(II)に粒子が含まれる場合、その粒子の体積平均粒径は0.5〜20μmであることが好ましく、0.5〜18μmであることが製膜安定性の観点からより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(II)に粒子が含まれる場合、その粒子の濃度は層(II)に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。上記の濃度とすることで、フィルム表面の粗面化を抑制できる。層(II)に含まれる粒子の濃度が10質量%を上回ると、延伸時にフィルムにかかる応力に対してフィルムが耐えることができず破断しやすくなり、製膜安定性が損なわれる場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(II)に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂および/または層(I)に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤やブロッキング防止剤などの各種添加剤を含有させてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは未延伸フィルム、一軸配向フィルム(任意の一方向に延伸されたフィル)、二軸延伸フィルム(任意の方向およびその直角方向の二軸に延伸されたフィルム)のいずれの形態でもよいが、特性および生産性の観点から二軸配向フィルムであることが好ましい。二軸配向フィルムを得る方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法が挙げられる。中でも逐次二軸延伸法が生産性の観点から特に好ましい。延伸の有無および軸方向についてはフィルムの250℃における収縮率を後述の手法で測定することで確認できる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、2層以上の積層構成を有する。2層以上の層構成を有することで、熱可塑性樹脂フィルム自体の延伸性が向上し破れが抑制され生産性を向上することができる。積層構成としては、層(I)、層(II)で構成される(I)/(II)の2層、(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)、(II)/(I)/(II)/(I)、(II)/(I)/(II)/(I)/(II)などの多層構成が挙げられるが、これに限定されない。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、特に制限はないが、製膜性の観点から1〜300μmが好ましく、5〜300μmがより好ましく、10〜250μmがさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの(II)層の1層の厚みは9μm以上が好ましい。より好ましくは10μm以上であり、最も好ましくは15μm以上である。上限は20μm以下が好ましい。厚みが9μm未満であると層(I)の空孔により表面に大きな凹凸が生じ、加工後にも凹凸が生じる場合があり好ましくない。(II)層の厚みを上記範囲にするには、溶融押出の際の吐出量を調整することで達成できる。本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(II)の積層比は後述する手法を用いて測定することができる。
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、未延伸シートを得る際に原料の供給量や引取り速度、延伸倍率を調整することで制御できる。またフィルム厚みは後述する手法にて評価できる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、層(I)、層(II)からなる積層構成であって、式(a)で表される層(I)の積層比が0.40〜0.95であることが好ましい。
(a)層(I)の積層比=層(I)厚み/(層(I)+層(II)の合計厚み)
積層比を上記の範囲とすることで誘電率などの電気特性と軽量化を両立することができる。層(I)の積層比が0.40未満の場合、軽量化が困難となりコストアップに繋がる場合がある。また、層(I)厚みの比率が0.95を超えると、誘電率などの電気特性が不良となる場合がある。層(I)厚みの比率はより好ましくは0.60以上0.90以下であり、さらに好ましくは0.70以上0.85以下である。熱可塑性樹脂フィルムの層(I)の積層比を上記の範囲とするには、溶融押出の際の吐出量を調整することで達成できる。本発明の熱可塑性樹脂フィルムの層(I)の積層比は後述する手法を用いて測定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層(II)の表面は、蒸着時の蒸着斑抑制や誘電率などの電気特性向上の観点から、表面粗さRaが1μm以下であることが肝要である。
熱可塑性樹脂フィルム層(II)の表面粗さを上記の範囲とするには、層(II)に前述する275℃以下の融点を有する共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を用いて、後述する製造方法で製造することにより好ましく達成できる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルム層(II)の結晶化度は30%以下であることが好ましく、10〜30%であることがより好ましく、20〜30%であることがさらに好ましい。

本発明においてフィルムの結晶化度とは、熱可塑性樹脂フィルムから層(II)を削り出し、示差走査線熱量計を用いて測定した結晶融解に伴う吸熱ピーク熱量(ΔHm)と結晶生成に伴う発熱ピーク熱量(ΔHcc)を下記式に挿入して算出された値をさす。
結晶化度(%)=(結晶融解に伴う吸熱ピーク熱量ΔHm−結晶生成に伴う発熱ピーク熱量ΔHc)/完全結晶ポリアリーレンスルフィドの融解熱量ΔHm*1×100
*1:ポリアリーレンスルフィドがPPSの場合のΔHmの文献値=146.44J/g(Maemura E.,Cakmak M.,White J.L.,Polym.Eng.Sci,29,140(1989).)を用いる。
結晶化度を上記の範囲とすることでフィルムの表面の粗面化を抑制できる。結晶化度が30%を上回ると表面が粗面化する場合がある。フィルムの結晶化度は前述する処方の原料を後述する手法にて熱処理することで達成できる。また、フィルムの結晶化度は後述する手法にて評価することができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法について、熱可塑性樹脂フィルム層(I)にポリアリーレンスルフィド樹脂としてポリ−p−フェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略紀する場合がある)を用い、熱可塑性樹脂フィルム層(II)にポリアリーレンスルフィド樹脂としてPPSにm−フェニレンスルフィドを共重合させたポリ−m−フェニレンスルフィド樹脂(以下共重合PPS樹脂と略記する場合がある)を用いた場合のフィルムの製造方法を例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されない。
PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230〜280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃の温度で10〜60分間攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃の温度で数回洗浄、乾燥してPPS粒状ポリマーを得る。これを30〜100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液や酢酸塩水溶液(たとえば酢酸ナトリウムや酢酸カルシウム)にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30〜80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥してPPSの粒状ポリマーを得る。
共重合PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法がある。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンおよびm−ジクロロベンゼンを本発明でいう比率で配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、200〜280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを30〜100℃の高温水で洗浄した後、酢酸水溶液や酢酸塩水溶液(たとえば酢酸ナトリウムや酢酸カルシウム)にて、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理したのち、30〜80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥して共重合PPSの粒状ポリマーを得る。
ポリアリーレンスルフィド樹脂および共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂として上記で得られたPPS、共重合PPSポリマーを、ベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製する。
熱可塑性樹脂フィルムは、PPS樹脂チップと、共重合PPS樹脂チップを別々の溶融押出装置に供給し、各樹脂の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置に溶融状態でPPS層/共重合PPS層/PPS層の3層に積層され、スリット上の口金出口から押出される。このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の層(II)/層(I)/層(II)の3層積層シートを得る。
次いで、二軸延伸を行うが、上記で得られた未延伸フィルムを、層(II)に用いる共重合PPS樹脂のガラス転移点以上冷結晶化温度以下の範囲で、逐次二軸延伸機または同時二軸延伸機により二軸延伸した後、熱処理を行い二軸配向フィルムを得る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができるが欠点を抑制する観点から逐次二軸延伸法が最も好ましく採用できる。
逐次二軸延伸法では、最初の長手方向の延伸方法としては、未延伸フィルムを加熱ロールを用いて長手方向に3.0〜5.0倍、より好ましくは3.5〜4.5倍の延伸を行うことが好ましい。
本発明において長手方向延伸温度は、{層(I)に用いるPPSのガラス転移温度(Tg)−10℃)}〜Tg+10℃の範囲で予熱した後、Tg〜(Tg+25)℃、好ましくは(Tg)〜(Tg+15)℃の範囲に加熱された延伸ロールに導き、長手方向の延伸を行う。このとき、予熱の温度は延伸温度以下であることが好ましく、長手方向延伸温度より2℃以上低いことがより好ましい。上記の予熱温度とすることで、予熱の際に過度の加熱を防ぐことができ、続く長手方向延伸の際に延伸応力を均一に伝播することができるため、長手方向延伸時の配向均一性が向上し、続く工程で2軸延伸フィルムとした際に平面性を向上することができる。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
長手方向延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸時に十分に配向させ、製膜安定性・平面性を向上させる観点から延伸温度はTg〜(Tg+15)℃が好ましく、より好ましくは(Tg)〜(Tg+10)℃の範囲で3.5〜5.0倍、好ましくは3.5〜4.5倍に延伸することが好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する操作(熱固定処理)を行う。熱固定処理の温度は、熱可塑性樹脂フィルム層(II)に用いるPPSの融点(Tm)+5℃〜熱可塑性樹脂フィルム層(I)に用いるPPSの融点(Tm)であり、好ましくはTm+10℃〜Tmである。熱固定温度を前記範囲とすることで、熱可塑性樹脂フィルム層(II)の表面粗さRaを1μm以下にすることができ、また、加工時の寸法安定性などの熱安定性を向上することができる。
[特性の測定方法]
(1)フィルム厚みおよび積層比、積層厚み
熱可塑性樹脂フィルムの全体厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヶ所の厚みを測定し、平均値を求めた。
また、熱可塑性樹脂フィルムの各層の層厚みを測定する際は、フィルム断面を、フィルム面内で長さ方向と垂直の方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面をライカマイクロシステムズ(株)製金属顕微鏡LeicaDMLMを用いて、フィルムの断面を倍率100倍の条件で透過光を写真撮影し、積層フィルムの各層の層厚みについて、各層ごとに任意の5ヶ所を測定し、その平均値を各層の層厚みとした。
ここで長さ方向及びフィルム面内で長さ方向と垂直な方向とは、(8)の測定方法で得られた方向を示す。
(2)層(I)および層(II)を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点および融点
JIS K7121−1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いる。熱可塑性樹脂フィルムから、層(I)および層(II)を(1)で測定した各層の厚みを考慮しながらマイクロプレーンを用いて5mgを削り出し別々に採取して各層のサンプルとし、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温する(1st Run)。次に同試料を取り出し急冷したのち、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温する(2nd Run)。この2nd RunのDSCチャートで確認されるガラス転移点および融解の吸熱ピークのピーク温度を、各層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)および融点(Tm)とした。
またフィルムの熱特性については1st RunのDSCチャートで確認される吸熱ピークを結晶化ピークとし、下記式を用いて結晶化度を算出する。
結晶化度(%)=(結晶融解に伴う吸熱ピーク熱量ΔHm−結晶生成に伴う発熱ピーク熱量ΔHc)/完全結晶ポリアリーレンスルフィドの融解熱量ΔHm*1×100
*1:ポリアリーレンスルフィドがPPSの場合のΔHmの文献値=146.44J/g(Maemura E.,Cakmak M.,White J.L.,Polym.Eng.Sci,29,140(1989).)を用いる。
(3)表面粗さ(Ra)
熱可塑性樹脂フィルム層(II)の表面を小坂研究所製のsurf−corder ET−4000Aを用いて下記条件にて表面粗さ(Ra)を測定した。測定は、場所を変えて10回測定しその平均値を中心線表面粗さ(Ra)とした。
装置:小坂研究所製“surf−corder ET−4000A”
解析ソフト:i−Face model TDA31
触針先端半径:0.5μm
測定視野 :X方向:380μm ピッチ:1μm
Y方向:280μm ピッチ:5μm
針圧 :50μN
測定速度 :0.1mm/s
カットオフ値:低域−0.2mm、高域-なし
レベリング :全域
フィルター :ガウシアンフィルタ(2D)
倍率 :10万倍
粒子解析(複数レベル)条件
出力内容設定:山粒子
ヒステリシス幅:5nm
スライスレベル等間隔:10nm。
(4)空孔率(%)
走査型電子顕微鏡の試料台に固定したサンプルを、厚み方向を法線方向とする断面がみえるようにスパッタリング装置を用いて減圧度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施して断面を切削した後、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡を用いて倍率2000倍にて観察した。得られた観察像について画像解析ソフトウェア((株)マウンテック製、MacView ver4.0)を用いて、樹脂部を白、空孔部を黒に2値化処理し、観察像の厚み方向の位置に対して濃淡(intensity)を取り、分布をグラフ化する。この濃淡分布について濃淡のintensityが増加に転じる点を界面と判別し、空孔を有する層(I)とその他の層(II)とを区別した。上記の観察像の空孔を有する層(I)について画像解析装置を用いて空孔部分の面積A(μm)と同観察像の内の該層の全面積B(μm)を算出し、下記式に当てはめて層(I)の空孔率C(%)を求めた。評価はフィルムの任意の方向およびそれに直行する方向の2方向についてそれぞれ5か所について行い、合計10点の観察像の撮影および空孔率の算出を行い、10点の平均を、層(I)の空孔率(%)とした。
層Xの空孔率C(%)=層中の空孔部分の面積A(μm)/層の全面積B(μm)×100。
(5)粒子濃度・体積平均粒径
a.粒子含有量
(1)の方法を用いて積層フィルムおよび各層の厚みを確認したのち、マイクロプレーンを用いて積層フィルムの表層を表層の厚さを超えない範囲で削り取る。削り取ったサンプルを秤量したるつぼに入れた後再度秤量し、サンプルの加熱前の重量を秤量する。次にサンプルが入ったるつぼをマッフル炉(ヤマト科学社製)にて500℃/6hで加熱しサンプルを灰化させる。るつぼを冷却した後に秤量し、加熱後の重量をはかりとり、加熱前後の重量を下記式に挿入し、フィルムに含まれる無機粒子の含有量(粒子濃度)を算出した。試料量は残存物の質量が100〜200mgの範囲となるように調整した。
粒子濃度の含有量(質量%)=加熱後の重量(mg)/加熱前の重量(mg)×100
b.体積平均粒径
a.で得られた残存物を精製水と混合した分散液を用いて、レーザー光回折散乱粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3000、日機装製)をもちいて、レーザー光波長780nm、測定温度25℃の条件にて、測定前に超音波処理を4分間行なったのちJIS Z8825−1:2001に準じて測定し、サンプルの粒度分布を求めた。なお、分散液は測定光源の透過率が90%前後になるように調整した。この得られた粒度分布から下記式を用いて体積平均粒径を算出した。
体積平均粒径(μm)=Σ(vd)/Σv
d:各粒径チャンネルの代表値、v:各粒径チャンネルごとの粒子の含有量(体積%)のパーセント
(6)D80(粒子積算分布)
(5)で灰化させた無機粒子粒度分布計(商品名:マイクロトラックUPA150、日機装社製)を用いて、粒度分布で累積体積百分率が80%の時の粒径(D80)を測定した。
(基準)
A:5μm以下
B:5μmより大きく10μm以下
C:10μmより大きい。
(7)耐熱性
熱可塑性樹脂フィルムのいずれかの方向を0°とし、フィルム面内に−90°から90°まで10°毎に方向を変えながら幅10mm、長さ250mmに切削して試験片とし、JIS−C2151に規定された方法に従って、テンシロン引張試験機を用いて、幅10mmのサンプル片をチャック間長さ100mmとなるようセットし、引張速度300mm/minで引張試験を行った。ここで、方向をかえて破断強度を測定した際に、破断強度が最も小さくなった方向をフィルムの長さ方向として定めた。
次に、長さ方向とフィルム面内で長さ方向に垂直な方向について、幅10mm、長さ250mmに切削した試験片を、200℃の温度に設定した熱風オーブン中で1000時間の加熱処理を行い、加熱処理前後での破断強度を測定した。得られた値をもとに、下記の式から強度保持率を算出し、下記の判定基準にて評価した。
なお測定は、長さ方向およびフィルム面内で長さ方向に垂直な方向にそれぞれ10回測定し、その平均値を求め、下記の基準にて評価した。
強度保持率(%)=Y/Y0×100
Y0:加熱処理前の破断強度(MPa)
Y:加熱処理後の破断強度(MPa)
(基準)
AA:80%以上
A:強度保持率が60%以上、80%未満
B:強度保持率が50%以上、60%未満
C:強度保持率が50%未満。
(8)誘電率
誘電体材料計測装置(関東電子応用開発(株)製)を用いて周波数10GHzで空洞共振器摂動法により誘電率を測定する。フィルム面内で長さ方向に垂直な方向2.7mm×フィルム長さ方向45mmに切り出したサンプルを空洞共振器に挿入し、温度23℃、湿度65%RH環境下にて測定を行った。測定はn=3で行い、得その平均値を求め、下記の基準にて評価した。
ここで長さ方向及びフィルム面内で長さ方向と垂直な方向とは、(8)の測定方法で得られた方向を示す。
(基準)
A:誘電率が2.5以上
B:誘電率が2.5より大きく3.0以下
C:誘電率が3.0よりも大きい。
(9)加工性
熱可塑性樹脂フィルムを任意の箇所から10cm×10cmにサンプリングし、アルバック機工株式会社製真空蒸着装置(VPC−260F)を使用して真空度1.0Torr以下、抵抗加熱電流値:25〜30Aで50nm厚みのアルミ蒸着を施した後、サンプルを平らな金属板の上に蒸着面が上になるように平行に置き、10秒間放置後にサンプルの表面状態を目視観察し下記の基準にて評価した。また、目視で凹凸がみられなかったものは光学顕微鏡(ライカ製、DM2500、倍率10倍)で観察し凹凸の有無を確認した。
(基準)
AA:目視でも光学顕微鏡でも凹凸を確認できない。
A:目視で凹凸は確認できないが、光学顕微鏡でできる凹凸が5個未満。
B:目視で凹凸は確認できないが、光学顕微鏡でできる凹凸が6個以上。
C:目視で確認できる凹凸がある。
(10)伝送損失
熱可塑性樹脂フィルムの両表面に回路基板用接着剤AW−32(共同薬品(株)製)を固化厚み2μmで塗布した後、12μmの銅箔(3EC−HTE、三井金属工業(株)製)を170℃に加熱された真空熱プレス装置で、圧力4MPaにて10分間プレスすることで両表面にラミネートし、銅箔/熱可塑性樹脂フィルム/銅箔の構成の積層体を作製した。得られた積層体の銅箔面に回路パターンとして配線幅140μm、長さ100mmのマイクロストリップラインを化学エッチング法により形成し、評価用のサンプルとした。上記のサンプルを温度23℃、湿度65%RH環境下で24時間放置した直後にネットワークアナライザー(Agilent Technology社製「8722ES」)とカスケードマイクロテック製プローブ(ACP40−250)を用いて10〜40GHzの伝送損失(dB/100mm)を測定し、その絶対値(dB/100mm)について下記基準で評価した。
(基準)
A:伝送損失の絶対値が15dB/100mm未満
B:伝送損失の絶対値が15dB/100mm以上25dB/100mm未満
C:伝送損失の絶対値が25dB/100mm以上 。
(11)延伸の有無(収縮性)
熱可塑性樹脂フィルムの任意の箇所から任意の方向に10cm×10cmのサンプルを切り出し、4辺の長さをノギスで測定する。その後、ポリイミドフィルム(東レデュポン(株)製、25μm)にはさみ、オーブンで250℃/1h加熱し、取り出し冷却した後再度サンプルの4辺の長さをノギスで測定し、4辺それぞれの収縮率を下記式にあてはめ求めた。
収縮率(%)=(加熱前の辺の長さ−加熱後の辺の長さ)/加熱前の辺の長さ×100
測定はn=5で行い、切り出したサンプルの縦および横方向の収縮率の平均を求め、下記基準で評価した。
(基準)
未延伸:収縮率が縦・横方向ともに1%未満
一軸延伸:収縮率が縦・横方向のどちらか一方が1%以上
二軸延伸:収縮率が縦・横方向のいずれも1%以上
(参考例1)PPS樹脂1の製造方法
オートクレ−ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマとして95モルのp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして5モルのm−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により2回洗浄した後、酢酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、蒸留水により1回洗浄し、減圧下120℃の温度にて乾燥して融点が265℃のPPS樹脂1を得た。
(参考例2)PPS樹脂2の製造方法
主成分モノマとして90モルのp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして10モルのm−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加した以外は参考例1と同様にして、融点が250℃のPPS樹脂2を得た。
(参考例3)PPS樹脂3の製造方法
主成分モノマとして85モルのp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして15モルのm−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加した以外は参考例1と同様にして、融点が240℃のPPS樹脂3を得た。
(参考例4)PPS樹脂4の製造方法
オートクレ−ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマとして100モルのp−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により2回洗浄した後、酢酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、蒸留水により1回洗浄し、減圧下120℃の温度にて乾燥して融点が280℃のPPS樹脂4を得た。
(参考例5)PPS樹脂5の製造方法
シリカ粒子としてアドマテックス社製 FE9(体積平均粒径6.1μm、D5=0.8μm、D80=8.0μm)と水を1:7の割合で混合しマグネチックスターラーを用いて10分撹拌した。その後、攪拌を止めて30分静置したのち、浮遊する微粒子を含む上澄み液を初期の重量の10wt%分除去する。その後再度スターラーを用いて攪拌した分散液の粒度分布を測定する。この作業をD5=0.9μmとなるまで繰り返したのち、24時間静置して完全に粒子を沈降させたのち、上澄みの水をできるだけ除去し、残ったスラリー状の粒子をバットに広げ、110℃で24時間乾燥させ、水を除去し、粒度分布を調整したシリカ粒子を得た。得られた粒子の体積平均粒径は6.1μm、D80=8.0μmであった。
次に参考例1のPPS樹脂1の顆粒70質量%と上記のシリカ粒子25質量%を配合し、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製し、フィルム用原料(PPS樹脂5)とした。
(参考例6)
層(I)および(II)を構成する樹脂として何れも参考例4に示すPPS樹脂4を準備し、それぞれの原料を別々に180℃で3時間、真空乾燥した後、320℃に加熱された2台の押出機に別々に供給し、溶融状態で口金上部にある積層装置で3層(積層構成は、(II)/(I)/(II)、積層比は(II):(I):(II)=1:8:1)になるように導き、続いてTダイ型口金から吐出させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着急冷固化させて、100μmの未延伸フィルムを得た。
(実施例1)
参考例4で作製したPPS樹脂は、表1に示す無機粒子と配合し、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして参考例4の無機粒子添加PPS樹脂からなるチップを作製し、180℃で3時間減圧乾燥した。
また参考例1〜3で作製したPPS樹脂は、300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPPS樹脂からなるチップを作製し、180℃で3時間減圧乾燥した。
参考例4を用いて作製した表1に示す処方の無機粒子含有PPS樹脂ペレット(I原料)を押出温度320℃に設定した一軸押出機(L/D=28)に、また、参考例1〜3のPPS樹脂ペレット(II原料)を押出温度300℃に設定した一軸押出機(L/D=28)に、それぞれ投入し、II原料からなる層(II)/I原料からなる層(I)/II原料からなる層(II)で表1に示す厚みの3層構成となるようにフィードブロック積層装置を通し、Tダイに導きシート状に押出し、押し出されたシートの全幅に対してワイヤー式静電印加装置を用いて電圧を印加し、25℃に冷却されたキャスティングドラムに密着させて冷却固化し、積層シートを得た。得られた積層シートを、ロール群からなる縦延伸機に導き表1の条件および倍率で長手方向(MD方向)に延伸した。次いでテンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に予熱温度90℃、延伸温度95℃で3.6倍に延伸し、続いて表1に示す温度で熱処理を行った。引き続き、熱処理温度と同じ温度で弛緩処理ゾーンで4秒間横手方向(TD方向)に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、表1に示す厚みの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。表面粗さが小さく、耐熱性、加工性に優れ、伝送損失の少ないものであった。
(実施例2〜7)
層(I)および層(II)の原料、各層の厚み、製造方法を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして表1に示す厚みの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。実施例1と比べて表面粗さが小さく、誘電率、加工性に優れ、より伝送損失の少ないものであった。
(実施例8)
層(1)の原料を参考例5(PPS樹脂5)の樹脂を用いて、層(II)の原料、各層の厚み、製造方法を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして表1に示す厚みの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。表面粗さが小さく、耐熱性、加工性に優れ、伝送損失の少ないものであった。
(実施例9〜15)
層(I)および層(II)の原料、各層の厚み、製造方法を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして表1に示す厚みの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。誘電率、加工性に優れ、伝送損失の少ないものであった。
(比較例1)
参考例4のPPS樹脂ペレット(I原料)を押出温度320℃に設定した一軸押出機(L/D=28)に投入し、溶融させてTダイに導きシート状に押出し、押し出されたシートの全幅に対してワイヤー式静電印加装置を用いて電圧を印加し、25℃に冷却されたキャスティングドラムに密着させて冷却固化し、積層シートを得た。得られた積層シートを、ロール群からなる縦延伸機に導き、実施例1と同様にして、PPS樹脂4からなる、無機粒子を含まない二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。実施例と比べて、表面粗さが大きく、誘電率が劣り、伝送損失が大きい結果であった。
(比較例2、3)
また参考例4で作製したPPS樹脂に表1に示す無機粒子と配合し、320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして無機粒子添加したPPS樹脂チップを作製し、180℃で3時間減圧乾燥した。この樹脂チップを層(I)の原料として押出温度320℃に設定した一軸押出機(L/D=28)に、参考例4のPPS樹脂ペレット(II原料)を押出温度320℃に設定した一軸押出機(L/D=28)に、投入した以外した以外は実施例1と同様にして表1に示す厚みの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。実施例と比べて欠点が多く、表面粗さが大きく、耐熱性、加工性が劣り、かつ伝送損失が大きい結果であった。
実施例および比較例に使用した無機粒子の詳細は下記の通りである。
・CaCO
実施例1および比較例3は白石工業(株)製、炭酸カルシウムP―50をふるい振とう器(ヴァーダー・サイエンティフィック社製、AS200)にかけて、体積平均粒径8μmになるように調整して用いた。
実施例2、3、5、7、9〜15および比較例2は白石工業(株)製、炭酸カルシウムPC(体積平均粒径3μm)をそのまま用いた。
実施例4は白石工業(株)製、炭酸カルシウムPC(体積平均粒径3μm)をふるい振とう器(ヴァーダー・サイエンティフィック社製、AS200)にかけて、体積平均粒径2μmになるように調整して用いた。
・BaSO:堺化学(株)、BMH−60(体積平均粒径7μm)をそのまま用いた。
Figure 2020044840
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、耐熱性、電気絶縁性および/または断熱性および製膜安定性に優れるだけでなく表面が平滑なことから、電気・電子部品、電池用部材、機械部品および自動車部品の絶縁材や断熱材として好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. ポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分としてなる熱可塑性樹脂フィルムであって、2層以上の積層構成を有し、構成する層の少なくとも1層は空孔を有する層(I)であり、少なくとも片面表層が層(I)とは異なる表面粗さRaが1μm以下の層(II)であることを特徴とする熱可塑性樹脂フィルム。
  2. 層(II)の結晶化度が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 層(I)に含まれる粒子の粒子積算分布においてD80が10μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 層(II)の厚さが9um以上である事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム
  5. 熱可塑性樹脂フィルムを構成する各層が共押出により積層されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  6. フィルムが二軸延伸されていることを特徴とする、請求項1〜5に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムを用いた電気・電子部品。
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