JP2020041966A - 厚鋼板の品質評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高精度かつ簡便に厚鋼板の品質を評価する方法を提供する。【解決手段】溶接構造体10に用いられる厚鋼板の品質評価方法であって、溶接構造体10は、接合部材11の端面11cが被接合部材12の被接合面12aに当接した状態で接合部材11が被接合部材12に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有するものであり、接合部材11または被接合部材12となる板厚50mm以上の厚鋼板から、厚鋼板の板厚方向と厚さ方向が一致し、かつ厚鋼板の表面から5mm深さまでの領域の一部を含む板状試験片を採取し、板状試験片を用いて、NRL落重試験による無延性遷移温度を測定し、無延性遷移温度に基づいて、接合部材11または被接合部材12となる厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を判定する、厚鋼板の品質評価方法。【選択図】図4

Description

本発明は、厚鋼板の品質評価方法に係り、特に、コンテナ船等に利用される溶接構造体用の厚鋼板の品質評価方法に関する。
大量の貨物を搭載する大型のコンテナ船においては、アッパーデッキ(上甲板)に、貨物の積み下ろしを行うための大きな開口部(ハッチ)が形成されている。また、アッパーデッキ上には、海水の流入防止等のために、ハッチを囲むようにハッチサイドコーミングが設けられている。アッパーデッキおよびハッチサイドコーミングはそれぞれ、複数の鋼板を溶接して構成されている。また、ハッチサイドコーミングは、アッパーデッキ上に溶接されている。
上記のような大型のコンテナ船が海上を航行する際には、波浪によって、船体全体を曲げるような荷重(縦曲げ荷重)が船体に付加される。このような荷重に対して、船体の強度(縦曲げ強度)を十分に確保するために、アッパーデッキおよびハッチサイドコーミングには、高強度の厚肉鋼板が利用されている。
また、上述のように、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキはそれぞれ、複数の鋼板を溶接した構成を有している。言い換えると、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキには、鋼板同士を溶接するための複数の溶接部が形成されている。溶接部で発生したき裂は、溶接部に沿って伝播しやすい。
このため、例えば、ハッチサイドコーミングの溶接部においてき裂が発生した場合、そのき裂が溶接部に沿ってアッパーデッキ側に向かって伝播し、伝播したき裂がアッパーデッキの溶接部に進展する場合がある。また、上記の例だけでなく、き裂がアッパーデッキから発生しハッチサイドコーミング側に向かって伝播する可能性もある。
したがって、船体の強度を十分に向上させるためには、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキが、上記のようなき裂の進展を停止させることができる特性(脆性き裂伝播停止特性)を有する必要がある。
従来、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキに用いられる厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を評価する場合には、ESSO試験(脆性破壊伝播停止試験:試験片に脆性き裂を人為的に発生させ、脆性き裂を停止させる性能を評価する試験)などの大型試験が実施されていた。
しかしながら、大型試験を実施するためには、多くの時間と費用とを必要とするため、脆性き裂伝播停止特性の評価が容易でないという問題があった。そのようなことを背景として、例えば、特許文献1および2には、小型試験片を用いた脆性き裂伝播停止特性の評価方法が提案されている。
特開2012−52873号公報 国際公開第2014/208072号
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、厚鋼板の板厚方向の各位置から試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を実施する必要があるため、簡便さの点において不十分である。また、特許文献2に記載される方法では、厚鋼板の板厚中心部から採取した試験片により評価を行うため、正確に脆性き裂伝播停止特性を評価することができないという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、高精度かつ簡便に厚鋼板の品質を評価する方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記の厚鋼板の品質評価方法を要旨とする。
(1)溶接構造体に用いられる厚鋼板の品質評価方法であって、
前記溶接構造体は、板状の接合部材の端面が板状の被接合部材の被接合面に当接した状態で、前記接合部材が前記被接合部材に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有するものであり、
前記接合部材または前記被接合部材となる板厚50mm以上の厚鋼板から、前記厚鋼板の板厚方向と厚さ方向が一致し、かつ前記厚鋼板の表面から5mm深さまでの領域の一部を含む板状試験片を採取し、
前記板状試験片を用いて、NRL落重試験による無延性遷移温度を測定し、
前記無延性遷移温度に基づいて、前記接合部材または前記被接合部材となる前記厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を判定する、
厚鋼板の品質評価方法。
(2)前記接合部材となる前記厚鋼板の品質評価方法であって、
前記板状試験片は、前記接合部材となる前記厚鋼板の板厚方向と直交する一表面から5mm深さまでの領域の一部を含むように採取され、
NRL落重試験により測定された前記無延性遷移温度をNDTT(℃)とし、前記両側部分溶込み溶接によって前記一表面側に形成される溶接部の熱影響部の最頂点と前記一表面との前記接合部材の板厚方向の距離をh(mm)とした場合に、
下記(i)式および(ii)式を満足する場合に、前記接合部材となる前記厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れると判定する、
上記(1)に記載の厚鋼板の品質評価方法。
NDTT≦−60 ・・・(i)
NDTT≦−30.5×ln(h)−14.0 ・・・(ii)
(3)前記被接合部材となる前記厚鋼板の品質評価方法であって、
前記板状試験片は、前記被接合部材となる前記厚鋼板の前記被接合面に対応する一表面から5mm深さまでの領域の一部を含むように採取され、
NRL落重試験により測定された前記無延性遷移温度をNDTT(℃)とし、前記接合部材の前記端面に垂直な方向における長さをH(mm)、予め設定される前記接合部材の許容応力をσ(N/mm)とした場合に、
下記(iii)式を満足する場合に、前記被接合部材となる前記厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れると判定する、
上記(1)に記載の厚鋼板の品質評価方法。
NDTT≦360.4−46.8×ln{σ(πH)0.5} ・・・(iii)
本発明によれば、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を得るために必要な厚鋼板の品質を、高精度かつ簡便に評価することが可能である。
本発明の一実施形態に係る品質評価の対象となる厚鋼板によって構成される溶接構造体を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る品質評価の対象となる厚鋼板によって構成される他の溶接構造体を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る品質評価の対象となる厚鋼板によって構成される他の溶接構造体を示す斜視図である。 溶接構造体の断面図である。 実施例1における構造モデルアレスト試験体の形状を説明するための図である。 実施例2における構造モデルアレスト試験体の形状を説明するための図である。
本発明者らが上記の課題を解決するために検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。
ハッチサイドコーミングからアッパーデッキ側に向かってき裂が伝播する場合においては、アッパーデッキ(被接合部材)に脆性き裂伝播停止特性が求められる。そして、被接合部材の全厚にわたって脆性き裂伝播停止特性を向上させるためには、例えば、脆性き裂伝播停止特性の指標である−10℃におけるKca値が6000N/mm1.5以上の鋼板を被接合部材として用いる必要がある。Kca値はESSO試験により評価される厚鋼板の全厚の脆性き裂伝播停止特性の指標である。
さらに、アッパーデッキからハッチサイドコーミング側に向かってき裂が伝播する場合においては、ハッチサイドコーミング(接合部材)には、Kca値が8000N/mm1.5以上の鋼板を用いる必要がある。しかしながら、6000N/mm1.5以上または8000N/mm1.5以上といったKca値を有する厚鋼板の製造は容易ではなく、厚鋼板の製造コストが高くなるという問題がある。
そこで本発明者らが検討を重ねた結果、き裂の突入領域である厚鋼板の表層領域における脆性き裂伝播停止特性を向上させることによって、接構造体全体での脆性き裂伝播停止特性を低コストで向上させることが可能になることが分かった。
言い換えれば、厚鋼板の全厚ではなく、表層部における脆性き裂伝播停止特性の評価のみを行うことによって、溶接構造体に用いられる厚鋼板の品質を高精度かつ簡便に評価することが可能となる。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の一実施形態に係る厚鋼板の品質評価方法について説明する。
1.溶接構造体の構成
本発明は、溶接構造体に用いられる厚鋼板の品質評価方法に関するものである。図1は、本発明の一実施形態に係る品質評価の対象となる厚鋼板によって構成される溶接構造体を示す斜視図である。溶接構造体10は、接合部材11および被接合部材12を備えている。接合部材11は板状であり、板厚方向に直交する一対の表面11a,11bを有する。また、被接合部材12は板状であり、接合部材11の端面11cが当接される被接合面12aを有する。
そして、図1に示すように、溶接構造体10は、端面11cが被接合面12aに当接した状態で、接合部材11が被接合部材12に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する。なお、上記のT継手部を有する溶接構造体には、図1に示すようなT字状の構造体に加えて、例えば、図2および3に示す形状の構造体も含まれる。
また、接合部材11と被接合部材12とが、隅肉溶接によって接合されるものであってもよいし、接合強度の観点から、接合部材11に開先を設け、開先溶接によって接合されるものであってもよい。図1〜3に示すように、溶接構造体10には、表面11a,11bのそれぞれの側に溶接部13a,13bが形成される。
本発明においては、接合部材11または被接合部材12となる厚鋼板の品質評価を行う。以下、各工程について詳しく説明する。なお、本発明において、厚鋼板とは、板厚が50mm以上である鋼板を意味する。
2.試験片採取工程
まず、接合部材11または被接合部材12となる厚鋼板から、板状試験片を採取する。板状試験片は、厚鋼板の表層部から採取する。具体的には、厚鋼板の板厚方向と厚さ方向が一致し、かつ厚鋼板の表面から5mm深さまでの領域の一部を含むように採取する必要がある。
また、後述するように、本発明に係る方法においては、板状試験片の長手方向と垂直な面においてき裂が発生するように試験を行う。溶接構造体において、き裂は溶接部13a,13bの延伸方向(図1に示されるY方向)と垂直な面において発生する。そのため、板状試験片は、その長手方向が溶接構造体のY方向となる方向と一致するように採取することが好ましい。
試験片の形状および寸法について、特に制限は設けないが、ASTM E208に規定されるタイプP1〜P3試験片を採用することが好ましい。なかでも、最も小型なタイプP3試験片を採用することが好ましい。タイプP3試験片とは、長さ130mm、幅50mm、厚さ16mmの試験片である。
例えば、上記のタイプP3試験片を採取するに際しては、上述のように、厚鋼板の板厚方向と厚さ方向が一致し、かつ厚鋼板の表面から5mm深さまでの領域の一部を含む限り、どの位置から採取してもよい。例えば、厚鋼板の表面から16mm深さ位置までの領域において採取してもよい。または、厚鋼板の表面を1mm削り取った後、1mm深さ位置から17mm深さ位置までの領域において採取してもよい。
接合部材11となる厚鋼板の品質評価を行う場合においては、接合部材11となる厚鋼板の板厚方向と直交する一表面から5mm深さまでの領域の一部を含むように、板状試験片を採取する。接合部材11となる厚鋼板の板厚方向と直交する一表面とは、上述した接合部材11が有する表面11a,11bのいずれか一方に対応する面である。
一方、被接合部材12となる厚鋼板の品質評価を行う場合においては、被接合部材12となる厚鋼板の被接合面12aに対応する一表面から5mm深さまでの領域の一部を含むように、板状試験片を採取する。
3.無延性遷移温度測定工程
次に、上記の板状試験片を用いて無延性遷移温度NDTT(℃)を測定する。本発明において、無延性遷移温度NDTT(℃)は、ASTM E208に準拠したNRL落重試験を実施することにより測定する。NRL落重試験について詳しく説明する。
まず、上記板状試験片の厚さ方向に垂直な面であって、厚鋼板の表面側であった面上に、板状試験片の長手方向に平行な方向に延びる溶接ビードを形成する。その際、溶接材料はASTM E208に規定される靱性の低い溶接材料を使用する。溶接ビードの長さは60〜70mm、幅は12〜16mmの範囲となるよう調整する。そして、溶接ビード上に板状試験片の幅方向に平行な切欠きを形成する。この時、切欠きの幅は1.5mm以下とし、切欠きの溝底と板状試験片との距離が1.8〜2.0mmの範囲となるよう調整する。
そして、上記板状試験片の溶接ビードを形成した面を下側に向け、長さ方向の両端部を支持した後、溶接ビードを形成したのと反対側の面に対して、落重による衝撃曲げ荷重を加える。その後、切欠きから発生した脆性き裂が試験片を伝播した状態を調べることで、Break(き裂伝播あり)またはNo Break(き裂伝播なし)を判定する。切欠から発生した脆性き裂が試験片の表面を試験片幅方向に伝播してその端部まで進行した場合、試験結果はBreak(き裂伝播あり)と判定される。幅方向の端部にき裂が達しなかった場合、試験結果はNo Break(き裂伝播なし)と判定される。
上記の落重試験の結果から無延性遷移温度を特定する方法については、特に制限する必要はない。例えば、2個ずつの板状試験片を用いて、−100℃の条件から開始して、5℃間隔で試験温度を変化させながら(No Breakの場合は5℃低下、Breakの場合は5℃上昇)、2個の板状試験片ともにNo Breakが得られた最も低い試験温度から5℃低い温度を無延性遷移温度とすることができる。
4.脆性き裂伝播停止特性判定工程
以上の工程によって得られた無延性遷移温度に基づいて、厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れるか否かの判定を行う。具体的な判定方法については特に制限はないが、例えば、接合部材となる厚鋼板の品質評価を行う場合、または被接合部材となる厚鋼板の品質評価を行う場合のそれぞれにおいて、以下のように判定することができる。
4−1.接合部材となる厚鋼板の品質評価を行う場合について
き裂が被接合部材から接合部材側に向かって伝播する場合において、き裂が突入する領域の深さは、接合部材および被接合部材の接合箇所の構造に大きく依存する。
図4を用いて、接合部材の表層部の構造について詳しく説明する。図4は、溶接構造体10の、表面11aおよび被接合面12aに垂直な断面図である。図4においては、図面が煩雑になることを避けるため、ハッチングは付していない。
図1および図4に示すように、接合部材11および被接合部材12の接合箇所の表面11a側には、溶接金属14aが形成されている。そして、溶接金属14aと接合部材11および被接合部材12との境界部には、熱影響部15aが形成されている。本願明細書において、溶接金属14aと熱影響部15aとを合わせた領域が溶接部13aである。
ここで、被接合部材12から発生し、接合部材11に伝播するき裂の突入領域は、表面11aから溶接部13aの熱影響部15aの最頂点までの深さに依存する。すなわち、接合部材の表層部における無延性遷移温度を、表面11aから溶接部13aの熱影響部15aの最頂点までの深さに応じて制御することによって、き裂の進展を停止することが可能になる。具体的には、表面11aから溶接部13aの熱影響部15aの最頂点までの深さが大きいほど、き裂が進展しやすくなるため、表層部における無延性遷移温度が低い厚鋼板が要求される。
したがって、接合部材となる厚鋼板の品質評価を行う場合においては、NRL落重試験により測定された無延性遷移温度をNDTT(℃)とし、表面11aから溶接部13aの熱影響部15aの最頂点までの接合部材11の板厚方向の距離をh(mm)とした場合に、下記(i)式および(ii)式を満足する場合に、接合部材となる厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れると判定することができる。
NDTT≦−60 ・・・(i)
NDTT≦−30.5×ln(h)−14.0 ・・・(ii)
なお、熱影響部15aの最頂点とは、熱影響部15aの板厚方向における先端を意味する。また、図4に示すように、距離hは、表面11aと、表面11aと平行でかつ熱影響部15aの板厚方向における先端を通る仮想的な面11dとの距離である。熱影響部15aの先端位置については、ナイタール腐食により現出させることで容易に判別することが可能である。
4−2.被接合部材となる厚鋼板の品質評価を行う場合について
き裂が接合部材から被接合部材側に向かって伝播する場合においては、被接合部材の接合部材側の表層部における脆性き裂伝播停止特性を、接合部材の高さおよび想定される許容応力に応じて向上させることによって、き裂の進展を停止することが可能になる。
すなわち、被接合部材の表層部における無延性遷移温度を、接合部材の高さおよび予め設定される接合部材の許容応力に応じて制御することによって、き裂の進展を停止することが可能になる。具体的には、接合部材の高さが高いほど、また、接合部材の許容応力が高いほど、き裂が進展しやすくなるため、表層部における無延性遷移温度を低くする必要がある。
したがって、被接合部材となる厚鋼板の品質評価を行う場合においては、NRL落重試験により測定された無延性遷移温度をNDTT(℃)とし、接合部材の端面に垂直な方向における長さをH(mm)、予め設定される接合部材の許容応力をσ(N/mm)とした場合に、下記(iii)式を満足する場合に、被接合部材となる厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れると判定することができる。
NDTT≦360.4−46.8×ln{σ(πH)0.5} ・・・(iii)
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す板厚を有する各種鋼板を用意した後、それぞれの鋼板について、一方側の面の表層部における無延性遷移温度を調査した。具体的には、表面を1mm削り取った後、試験片の厚さ方向が、上記鋼板の板厚方向と一致するように、ASTM E208に規定されるタイプP3試験片を採取した。そして、当該試験片を用いて、ASTM E208に準拠したNRL落重試験を実施し、無延性遷移温度NDTT(℃)を求めた。
その後、上記の各種鋼板を試験板(接合部材11)とし、図5に示す構造モデルアレスト試験体を作製して試験を実施した。板厚100mmの鋼板をCO溶接により接合した溶接継手を助走溶接継手(被接合部材12)とし、表1に示す条件でCO溶接または被覆アーク溶接(SMAW)により溶接構造体10を作製した。
その後、溶接構造体10のフュージョンライン部16aにノッチ16bを導入した。そして、溶接構造体10を船舶設計温度である−10℃に冷却し、EH40の設計応力に相当する257MPaの試験応力を負荷し、ノッチ部近傍だけを−50℃程度に急冷し、ノッチ部に楔を介して打撃を加えて脆性き裂を発生、伝播させた。
試験後の構造モデルアレスト試験体を使用し、試験体長手方向の中心位置から左右に250mm離れた位置において、接合部材と被接合部材との一方側の溶接部の断面を切り出した。その後、研磨して、ナイタール腐食を施すことで溶接金属部と溶接熱影響部(溶接時にAc変態点以上に加熱された領域)を現出させた。これらの2カ所の溶接継手断面の写真をデジタルカメラによりそれぞれ撮影し、写真画像から溶接部形状を測定し、2カ所の測定結果の平均値を使用した。
そして、得られた無延性遷移温度NDTT(℃)と、溶接部の熱影響部の最頂点と上記の表面との接合部材の板厚方向の距離h(mm)に基づいて、接合部材として用いた厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れるか否かの判定を行った。
また、構造モデルアレスト試験体を用いた試験の結果については、脆性き裂が試験板で停止した場合は停止、試験板を破断した場合は伝播と判定した。それらの結果を表1にまとめて示す。
Figure 2020041966
表1から明らかなように、本発明の評価方法によって良好と判定された厚鋼板を接合部材として用いた場合には、脆性き裂が試験板で停止したのに対して、不良と判定された厚鋼板を用いた場合には、脆性き裂が接合部材まで伝播する結果となった。
表2に示す板厚を有する各種鋼板を用意した後、それぞれの鋼板について、一方側の面(被接合面)の表層部における無延性遷移温度を調査した。具体的には、被接合面を1mm削り取った後、試験片の厚さ方向が、上記鋼板の板厚方向と一致するように、ASTM E208に規定されるタイプP3試験片を採取した。そして、当該試験片を用いて、ASTM E208に準拠したNRL落重試験を実施し、無延性遷移温度NDTT(℃)を求めた。
その後、上記の各種鋼板を試験板(被接合部材12)とし、図6に示す構造モデルアレスト試験体を作製して試験を実施した。表2に示す高さH(mm)を有し、板厚100mmの鋼板をCO溶接により接合した溶接継手を助走溶接継手(接合部材11)とし、表2に示す条件でCO溶接または被覆アーク溶接(SMAW)により溶接構造体10を作製した。その際、接合部材11に板厚の1/3の深さの両側開先を設け、接合部材11と被接合部材12とを開先溶接により接合した。
その後、溶接構造体10のフュージョンライン部16aにノッチ16bを導入した。そして、溶接構造体10を船舶設計温度である−10℃に冷却し、表2に示す接合部材11の許容応力σに相当する試験応力を負荷し、ノッチ部近傍だけを−50℃程度に急冷し、ノッチ部に楔を介して打撃を加えて脆性き裂を発生、伝播させた。
そして、得られた無延性遷移温度NDTT(℃)と、接合部材の高さH(mm)および許容応力σに基づいて、被接合部材として用いた厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れるか否かの判定を行った。
また、構造モデルアレスト試験体を用いた試験の結果については、脆性き裂が試験板で停止した場合は停止、試験板を破断した場合は伝播と判定した。それらの結果を表2にまとめて示す。
Figure 2020041966
表2から明らかなように、本発明の評価方法によって良好と判定された厚鋼板を被接合部材として用いた場合には、脆性き裂が試験板で停止したのに対して、不良と判定された厚鋼板を用いた場合には、脆性き裂が被接合部材まで伝播する結果となった。
以上のように、本発明によれば、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を得るために必要な厚鋼板の品質を、高精度かつ簡便に評価することが可能である。
10 溶接構造体
11 接合部材
11a,11b 表面
11c 端面
11d 仮想的な面
12 被接合部材
12a 被接合面
13a,13b 溶接部
14a,14b 溶接金属
15a,15b 熱影響部
16a フュージョンライン部
16b ノッチ

Claims (3)

  1. 溶接構造体に用いられる厚鋼板の品質評価方法であって、
    前記溶接構造体は、板状の接合部材の端面が板状の被接合部材の被接合面に当接した状態で、前記接合部材が前記被接合部材に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有するものであり、
    前記接合部材または前記被接合部材となる板厚50mm以上の厚鋼板から、前記厚鋼板の板厚方向と厚さ方向が一致し、かつ前記厚鋼板の表面から5mm深さまでの領域の一部を含む板状試験片を採取し、
    前記板状試験片を用いて、NRL落重試験による無延性遷移温度を測定し、
    前記無延性遷移温度に基づいて、前記接合部材または前記被接合部材となる前記厚鋼板の脆性き裂伝播停止特性を判定する、
    厚鋼板の品質評価方法。
  2. 前記接合部材となる前記厚鋼板の品質評価方法であって、
    前記板状試験片は、前記接合部材となる前記厚鋼板の板厚方向と直交する一表面から5mm深さまでの領域の一部を含むように採取され、
    NRL落重試験により測定された前記無延性遷移温度をNDTT(℃)とし、前記両側部分溶込み溶接によって前記一表面側に形成される溶接部の熱影響部の最頂点と前記一表面との前記接合部材の板厚方向の距離をh(mm)とした場合に、
    下記(i)式および(ii)式を満足する場合に、前記接合部材となる前記厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れると判定する、
    請求項1に記載の厚鋼板の品質評価方法。
    NDTT≦−60 ・・・(i)
    NDTT≦−30.5×ln(h)−14.0 ・・・(ii)
  3. 前記被接合部材となる前記厚鋼板の品質評価方法であって、
    前記板状試験片は、前記被接合部材となる前記厚鋼板の前記被接合面に対応する一表面から5mm深さまでの領域の一部を含むように採取され、
    NRL落重試験により測定された前記無延性遷移温度をNDTT(℃)とし、前記接合部材の前記端面に垂直な方向における長さをH(mm)、予め設定される前記接合部材の許容応力をσ(N/mm)とした場合に、
    下記(iii)式を満足する場合に、前記被接合部材となる前記厚鋼板が脆性き裂伝播停止特性に優れると判定する、
    請求項1に記載の厚鋼板の品質評価方法。
    NDTT≦360.4−46.8×ln{σ(πH)0.5} ・・・(iii)
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