JP2020037545A - 酸素同位体標識カルボン酸塩化合物、酸素同位体標識用試薬、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法、及び酸素同位体標識アルコールの製造方法 - Google Patents

酸素同位体標識カルボン酸塩化合物、酸素同位体標識用試薬、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法、及び酸素同位体標識アルコールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸素同位体の供給源として有用な酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の提供。【解決手段】下式で例示されるピバロニトリルや置換/非置換のベンゾニトリルと、酸素同位体標識水(H218O)と、塩基とをメタノール等の有機溶媒中で反応させて得られる酸素同位体標識カルボン酸塩化合物。該酸素同位体標識カルボン酸塩化合物は、置換ベンジルハライド等の有機化合物との反応により酸素同位体標識エステル化合物を生成し、更にメタノール中のt−ブトキシナトリウム処理等の塩基性条件下での反応により、酸素同位体標識アルコールを生成できる。[R1は、F、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシ基;nは、1〜3の整数;Xは、Li,Na,又はK]【選択図】なし

Description

本発明は、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物、酸素同位体標識用試薬、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法、及び酸素同位体標識アルコールの製造方法に関する。
自然界に存在する酸素同位体としては、16Oが99.759atom%、17Oが0.037atom%、18Oが0.204atom%の割合で存在している。これらの酸素同位体のうち、同位体重成分である18Oによって重酸素化された同位体標識化合物は、質量分析法を用いて定量分析を行う際の内部標準物質として、医薬、農薬生化学等の分野で有用である。なお、化合物を構成する特定の酸素原子又はすべての酸素原子が、酸素同位体18Oからなる割合(atom%)を「酸素同位体(18O)濃縮度」、または単に「酸素同位体濃縮度」ということがある。
ところで、この種の安定同位体元素としては重水素の利用が多いが、化合物によっては重水素置換が難しい、重水素置換だけでは同位体標識数が不足する、等の課題がある。また、同位体効果の弊害も指摘されている。そのため、近年は酸素同位体18Oを標識として利用することが注目されている。
一般的に、酸素は、炭素や窒素と同様に質量数が水素よりも大きいため、標識体の理化学的物性が非標識体により近似する、18Oであれば1標識あたり2個分の質量数増加となる、炭素同位体13Cや窒素同位体15Nと比較して安価、等の大きな利点がある。
しかしながら、酸素同位体が標識化合物として実際に使用される頻度は低い。その理由としては、重水素標識化合物、炭素同位体標識化合物、及び窒素同位体標識化合物に比べて、市販されている酸素同位体化合物の種類が極端に少ないことが挙げられる。また、化合物中への18Oの導入に際しては、16O水の影響を受けない厳密な反応条件の設定が必須である。
特許文献1には、有機化合物に対する酸素同位体の導入方法が開示されている。特許文献1に開示された酸素同位体の導入方法によれば、酸素同位体標識ベンジルアルコールとハロゲン化有機化合物とを反応させて、酸素同位体有機化合物を合成している。すなわち、酸素同位体標識されたベンジルアルコールを同位体標識用試薬として用いることで、有機化合物中に酸素同位体を導入している。
しかしながら、特許文献1に開示された酸素同位体標識ベンジルアルコールの合成には、複数回の反応と単離精製とが必要であり、生産性に課題があった。また、リチウムアルミニウムハイドライドなどの試薬を用いる必要があり、安全性に懸念があった。
これに対して、非特許文献1には、α−ブロモケトン類に対して、酸素同位体標識ギ酸ナトリウムを用いて酸素同位体標識を導入する方法が開示されている。また、非特許文献2には、置換基を有さない酸素同位体標識アセチル基及びベンゾイル基を合成する方法が開示されている。非特許文献1及び2に開示された方法によれば、特許文献1に開示された方法と比較して、単離と精製が容易であり、リチウムハイドライドを使用しないといった利点がある。
特開2011−057557号公報
「18O-Isotope Effect in 13C Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy. 2. The Effect of Structure」 J. M. Risley, R. L. Van Etten, J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 4609-4614. 「The Mechanism of the Rearrangement of β-Acyloxyalkyl Radicals」 L. Athelstan, J. Beckwith, C. B. Thomas, J. Chem. Soc. Perkins 1973, 2, 861-872.
しかしながら、非特許文献1及び2に開示された方法によって得られた酸素同位体標識用の化合物には、酸素同位体18Oを導入するための試薬として、汎用性及び利便性の向上が望まれているのが実情である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、酸素同位体標識用試薬として有用な酸素同位体標識カルボン酸塩化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、酸素同位体の供給源として有用な酸素同位体標識用試薬を提供することを課題とする。
本発明では、酸素同位体標識化合物を得るための酸素同位体の供給源となる化合物を「酸素同位体標識用試薬」と称する。
また、本発明は、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物を容易かつ安全に生成することが可能な酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、汎用性及び利便性に優れる酸素同位体標識アルコールの製造方法を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 化学式(1)又は(2)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物。
Figure 2020037545
Figure 2020037545
ただし、化学式(1)および(2)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、nは1〜3である。
また、化学式(1)および(2)において、Xは、Li,Na,Kのいずれかである。
[2] 化学式(3)又は(4)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物。
Figure 2020037545
Figure 2020037545
ただし、化学式(3)および(4)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、又は重水素であり、mは1〜5である。
また、化学式(1)および(2)において、Xは、H,NH,PH,Li,Na,Kのいずれかである。
[3] 酸素同位体17O又は18Oの濃縮度が、10atm%以上である、[1]又は[2]に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物。
[4] [1]乃至[3]のいずれか一項に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物からなる酸素同位体標識用試薬。
[5] [1]に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法であって、
化学式(5)で表されるニトリル化合物と、酸素同位体17O又は18Oを含む酸素同位体標識水と、塩基とを、有機溶媒中で反応させる、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法。
Figure 2020037545
ただし、化学式(5)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、nは1〜3である。
[6] [2]に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法であって、
化学式(6)で表されるニトリル化合物と、酸素同位体17O又は18Oを含む酸素同位体標識水と、塩基とを、有機溶媒中で反応させる、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法。
Figure 2020037545
ただし、化学式(6)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、又は重水素であり、mは1〜5である。
[7] [1]に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物と有機化合物とを反応させて、酸素同位体標識エステル化合物を生成し、
生成した前記酸素同位体標識エステル化合物を塩基性条件下で反応させて、酸素同位体標識アルコールを生成する、酸素同位体標識アルコールの製造方法。
[8] [2]に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物と有機化合物とを反応させて、酸素同位体標識エステル化合物を生成し、
生成した前記酸素同位体標識エステル化合物を塩基性条件下で反応させて、酸素同位体標識アルコールを生成する、酸素同位体標識アルコールの製造方法。
本発明の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物は、酸素同位体標識用試薬として有用である。
また、本発明の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法は、酸素同位体標識用カルボン酸塩化合物を容易かつ安全に生成することができる。
また、本発明の酸素同位体標識アルコールの製造方法は、汎用性及び利便性に優れる。
以下の実施形態での説明においては、酸素同位体として酸素18(以下、「18O」と記載することもある)を用いたものを代表例として例示して記述するが、酸素17(以下、「17O」と記載することもある)を用いたものでも同様であるため、その記載は省略する。
<第1の実施形態>
先ず、本発明を適用した第1の実施形態である酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の構成について説明する。本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物は、上記化学式(2)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物からなるものであり、酸素同位体標識用試薬として有用である。
化学式(2)における置換基Rとしては、本発明の効果を妨げない有機機であれば特に限定さない。
具体的には、フッ素、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、アルコキシ基が例示できる。
置換基Rとしてのフッ素は、電子求引性基であり、カルボニル基の電子密度低下を引き起こす。このため、フッ素を置換基Rとして有する、化学式(2)で表されるカルボン酸塩化合物の反応性は低下し、導入後のアシル基は脱保護の反応性は上昇する。この効果は、置換数nが大きくなるほど大きくなるため、大きな効果を望むならば、置換数nは大きい方(n=3)が望ましい。
置換基Rとしてのペルフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでも良い。直鎖状及び分岐鎖状のペルフルオロアルキル基は、炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であるものがより好ましく、トリフルオロメチル基(CF−)が特に好ましい。環状のペルフルオロアルキル基は、単環式及び多環式のいずれでも良く、炭素数が5〜10であることが好ましく、炭素数が5〜7であることがより好ましい。フッ素を置換基Rとして有する場合と同様に、ペルフルオロアルキル基を置換基Rとして有する、化学式(2)で表されるカルボン酸塩化合物の反応性は低下し、導入後のアシル基は脱保護の反応性は上昇する。
置換基Rとしてのアルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれでも良い。直鎖状及び分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。これらのなかでも、炭素数が大きく分岐のアルキル基であるほど立体障害が大きくなるため、導入後のアシル基は脱保護の反応性も低下する。また、置換数nが大きいほど上記効果は大きいため、置換数nは大きい方(n=3)が好ましい。
置換基Rとしてのアルコキシ基としては、上記アルキル基の炭素原子が酸素原子に結合したものが例示できる。具体的にはメトキシ基、エトキシ基が例示できる。また、置換数nが大きいほど上記効果は大きいため、置換数nは大きい方(n=3)が好ましい。
化学式(2)においてXは、アルカリ金属が例示できる。アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。これらの中でも、原料コストの観点から、ナトリウム、カリウムが好ましく、特にナトリウムが好ましい。
これらの酸素同位体標識カルボン酸塩化合物のなかでも、カルボン酸ナトリウム塩、カルボン酸カリウム塩が実用上好適である。
なお、本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物は、上記化学式(2)において「18O」で表される部位の酸素原子における酸素同位体18Oの存在比(酸素同位体濃縮度)が、天然存在比における0.204atom%を超えているものをいう。本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の酸素同位体濃縮度としては、10atm%以上であることが好ましい。
また、本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物を酸素同位体標識用試薬として用いて酸素同位体標識化合物を合成し、当該酸素同位体標識化合物を各種トレイサー、内部標準物質などに用いる場合、本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の酸素同位体濃縮度は、90atm%以上、好ましくは95atm%以上、より好ましくは98atam%以上であることが望ましい。酸素同位体標識化合物の酸素同位体濃縮度が高くなるため、検出感度等が高くなって好適である。
本発明において酸素同位体濃縮度は、質量分析計(EI−MS)によるマススペクトルデータにより各フラグメントピーク強度に基づいて算出したものを言う。
次に、本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法について説明する。
本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法は、反応式(7)に示すように、上記化学式(5)で表されるニトリル化合物と、酸素同位体18Oを含む酸素同位体標識水(H 18O)と、塩基とを有機溶媒中で反応させる。反応終了後、エバポレータなどで溶媒を減圧留去することにより、化学式(2)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物を得ることができる。
Figure 2020037545
化学式(5)で表されるニトリル化合物における置換基Rは、上述の化学式(2)における置換基Rと同じものを用いることができる。
化学式(5)で表されるニトリル化合物の具体例としては、ピバロニトリルなどが挙げられる。
反応に用いる酸素同位体標識水(H 18O)としては、酸素同位体濃縮度が90atm%以上、好ましくは95atm%以上、より好ましくは98atam%以上であるものを好適に用いることができる。
反応に用いる塩基としては、アルカリ金属(Li,Na,K)を有する塩基などが挙げられる。反応式(7)で用いた塩基に含まれるアルカリ金属が、化学式(2)におけるXの一部となる。なお、水酸化ナトリウムや炭酸カリウムといった分子内に軽酸素を有する塩基を用いると、生成物の酸素同位体濃縮度が低下することがある。このため、塩基としては、ナトリウムt−ブトキシドといった金属アルコキシド、酸素同位体18O標識水酸化ナトリウムといった分子内の酸素原子が酸素同位体18Oに置換された塩基、などを用いることが好ましい。
反応に用いる溶媒としては、化学式(5)で表される化合物を溶解可能な有機溶媒であれば特に限定されない。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、ジクロロメタン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノールなどのプロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。プロトン性極性溶媒は、有機化合物と酸素同位体標識水の両方をよく溶解する上、非プロトン性極性溶媒よりも沸点が低いため、反応終了後に溶媒を除去しやすいという利点がある。
化学式(5)で表されるニトリル化合物に対する塩基の使用量は、化学量論量以上とすることができるが、1.0当量とすることが好ましい。塩基の使用量を1.0当量とすることにより、未消費で残存する塩基がないため、これを除去する必要がなく、さらに後の反応に悪影響を及ぼす恐れがないために好ましい。
化学式(5)で表されるニトリル化合物に対する酸素同位体標識水の使用量は、化学量論量以上とすることができ、好ましくは2.5〜4.0当量である。酸素同位体標識水の使用量を上述した好ましい範囲とすることにより、反応を完全に進行させつつ、過剰な使用によるコスト上昇を防ぐことができる。
これらの原料の投入順序としては、先ず、化学式(5)で表されるニトリル化合物をフラスコ内に入れ、溶媒で溶解したのちに、同位体標識水、塩基の順に投入することが好ましい。塩基を投入する以前に、化学式(5)で表されるニトリル化合物と同位体標識水とが良く混ざり合っていれば、フラスコ内で局所的に大きな反応熱が発生することなく、収率の低下を防ぐことができる。
反応条件としては、反応温度:室温(25℃)〜100℃、反応時間:30分〜48時間程度を例示できるが、この範囲で限定されることはない。
上述した反応条件を用いることで、ニトリル化合物の加水分解反応を確実に進行させるとともに、化合物の分解を防ぐことができる。
なお、化学式(5)で表されるニトリル化合物に応じて、薄層クロマトグラフィー(thin-layer chromatography:TLC)などで反応を追跡し、適切な反応温度・反応時間を見極めながら、反応を行うことが好ましい。
また、反応式(7)によって得られた酸素同位体標識カルボン酸アルカリ金属塩をさらに塩交換反応を行うことで、化学式(2)に示すXが水素(H)、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムである酸素同位体標識カルボン酸又はカルボン酸塩を得ることができる。
塩交換反応としては、酸素同位体標識カルボン酸塩をメタノールもしくはエタノールへ溶解後、塩化水素、塩化第4級アンモニウム、もしくは塩化第4級ホスホニウムを加える方法、などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
次に、化学式(2)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物を利用した、本実施形態の酸素同位体標識アルコールの製造方法について説明する。
本実施形態の酸素同位体標識アルコールの製造方法は、先ず、反応式(8)に示すように、化学式(2)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物と、化学式(9)で表される有機化合物とを反応させて、化学式(10)で表される酸素同位体標識エステル化合物を生成する。次に、得られた化学式(10)の酸素同位体標識エステル化合物を塩基性条件下で反応させることで、化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を得ることができる。
Figure 2020037545
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ここで、反応式(8)、及び化学式(9),(10)、(11)中に示すRは、任意の有機基であり、酸素同位体を導入したい酸素同位体標識エステル化合物や酸素同位体標識アルコール化合物に応じて適宜選択することができる。このような有機基としては、例えば、炭化水素基、ヘテロ原子含有基が挙げられ、これらは少なくとも1つの水素原子が任意の炭化水素基、ヘテロ原子含有基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
特に、化学式(9)においては、カルボン酸塩化合物との反応性の高さから、Rのベンジル部位もしくはアリル部位でYと接続していることが好ましい。
また、化学式(9)中に示すYとしては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン基、又は脱離能の高いトシル基、メシル基などが挙げられる。
化学式(9)で表される有機化合物としては、例えば、塩化ベンジルなどを用いることが好ましい。
反応式(8)において、化学式(10)で表される酸素同位体標識エステル化合物を合成する際の反応条件としては、反応温度:室温(25℃)〜100℃、反応時間:30分〜48時間程度を例示できるが、この範囲で限定されることはない。
上述した反応条件を用いることで、エステルの合成反応を確実に進行させるとともに、生成した化合物の分解を防ぐことができる。
化学式(10)で表される酸素同位体標識エステル化合物を合成する際に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般的な有機溶媒を用いることができる。化学式(2)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物と化学式(9)で表される有機化合物との両方を溶解する有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等の非プロトン性極性溶媒を用いることができる。また、有機溶媒として、相関移動触媒、クラウンエーテル等を用いることができる場合がある。
化学式(10)で表される酸素同位体標識エステル化合物としては、例えば、酸素同位体標識2−メチルブチル酸エステルなどが挙げられる。これらのうち、2−メチルブチル酸ベンジル−18などは、質量分析法を用いて定量分析を行う際の内部標準物質として有用である。また、ブラバスタチン−18などは、医薬、農薬生化学等の分野で有用である。
反応式(8)において、化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を合成する際の反応条件としては、反応温度:室温(25℃)〜100℃、反応時間:30分〜48時間程度を例示できるが、この範囲で限定されることはない。
上述した反応条件を用いることで、酸素同位体標識アルコールの合成反応を確実に進行させるとともに、生成した化合物の分解を防ぐことができる。
化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を合成する際に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般的な有機溶媒を用いることができる。化学式(10)で表される酸素同位体標識エステル化合物と塩基との両方を溶解する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのプロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。
また、化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を合成する際に用いる塩基としては、特に限定されるものではなく、一般的な有機塩基及び無機塩基を用いることができる。
有機塩基としては、例えば、ナトリウムt−ブトキシドといった金属アルコキシドなどが挙げられる。
無機塩基としては、例えば、Na18OH、K18OH、Li18OHなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。なお、金属アルコキシドと酸素同位体標識水(H 18O)とを混合することにより、反応系内で上記水酸化物を調製することができる。
化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物としては、例えば、酸素同位体標識ベンジルアルコール類などが挙げられる。これらのうち、ベンジルアルコール-18Oなどは、質量分析の際の内部標準物質として有用である。
以上説明したように、本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物によれば、酸素同位体標識化合物を合成する際の酸素同位体の供給源として有用である。
本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物である、置換基を有する酸素同位体標識カルボン酸塩化合物を、酸素同位体標識アシル基の前駆体として用いることで、有機化合物に置換基を有する酸素同位体標識アシル基を導入できる。置換基を有する酸素同位体標識アシル基は、置換基を有さない酸素同位体標識アシル基と比較して、脱保護の反応性などで異なる性質も持つことが期待される。
本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法によれば、ニトリル化合物、酸素同位体18Oを含む酸素同位体標識水(H 18O)、及び塩基を有機溶媒中で反応させることで、高純度の酸素同位体標識用カルボン酸塩化合物を容易かつ安全に生成することができる。
本実施形態の酸素同位体標識アルコールの製造方法によれば、上述した酸素同位体標識カルボン酸塩化合物を利用するため、有機化合物に置換基を有する酸素同位体標識アシル基を容易に導入することが可能である。また、酸素同位体標識アシル基を導入した後、脱アシル化により、18O標識ベンジルアルコール類を容易に提供できる。さらに、多様な18O標識アルコール類の製造に際し、汎用性と利便性を提供できる。
また、本実施形態の酸素同位体標識アルコールの製造方法によれば、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物と有機化合物とを反応させて酸素同位体標識エステル化合物を生成することができる。得られた酸素同位体標識エステル化合物は、分析標品として利用できる。
<第2の実施形態>
先ず、本発明を適用した第2の実施形態である酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の構成について説明する。本実施形態の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物は、上記化学式(4)で表される酸素同位体標識安息香酸塩化合物からなるものである。
化学式(4)における置換基Rとしては、本発明の効果を妨げない有機機であれば特に限定さない。
具体的には、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、又は重水素が例示できる。また、置換基Rにおいて、置換数を示すmは1〜5である。
置換基Rとして、フッ素、ペルフルオロアルキル基、ニトロ基は、電子求引性基であり、カルボニル基の電子密度低下を引き起こす。このため、これらを置換基Rとして有する、化学式(4)で表される安息香酸塩化合物の反応性は低下し、導入後のアシル基は脱保護の反応性は上昇する。この効果は、置換数mが大きくなるほど大きくなるが、置換数m=1であっても十分な効果が得られる。
ペルフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでも良い。直鎖状及び分岐鎖状のペルフルオロアルキル基は、炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であるものがより好ましく、トリフルオロメチル基(CF−)が特に好ましい。環状のペルフルオロアルキル基は、単環式及び多環式のいずれでも良く、炭素数が5〜10であることが好ましく、炭素数が5〜7であることがより好ましい。
置換基Rとしてのアルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれでも良い。直鎖状及び分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できる。これらのなかでも、炭素数が大きく分岐のアルキル基であるほど立体障害が大きくなるため、導入後のアシル基は脱保護の反応性も低下する。また、置換数mが大きいほど上記効果は大きいため、置換数mは大きい方(m=5)が好ましい。
置換基Rとしてのアルコキシ基は、上記アルキル基の炭素原子が酸素原子に結合したものが例示できる。具体的にはメトキシ基、エトキシ基が例示できる。また、置換数mが大きいほど上記効果は大きいため、置換数mは大きい方(m=5)が好ましい。
置換基Rとしての重水素は、軽水素よりも質量数が1つ大きいため、重水素置換された酸素同位体標識安息香酸塩化合物によって導入されたアシル基は、置換数mに応じて5個分以上最大9個分までの質量数の増加を得ることができる。
化学式(4)におけるXとしては、上述した第1実施形態に示す化学式(2)におけるXと同様のものを用いることができるため、記載を省略する。
これらの酸素同位体標識安息香酸塩化合物のなかでも、安息香酸ナトリウム塩、安息香酸カリウム塩が実用上好適である。
なお、本実施形態の酸素同位体標識安息香酸塩化合物は、上記化学式(4)において「18O」で表される部位の酸素原子における酸素同位体18Oの存在比(酸素同位体濃縮度)が、天然存在比における0.204atom%を超えているものをいう。本実施形態の酸素同位体標識安息香酸塩化合物の酸素同位体濃縮度としては、10atm%以上であることが好ましい。
また、本実施形態の酸素同位体標識安息香酸塩化合物を酸素同位体標識用試薬として用いて酸素同位体標識化合物を合成し、当該酸素同位体標識化合物を各種トレイサー、内部標準物質などに用いる場合、本実施形態の酸素同位体標識安息香酸塩化合物の酸素同位体濃縮度は、90atm%以上、好ましくは95atm%以上、より好ましくは98atam%以上であることが望ましい。酸素同位体標識化合物の酸素同位体濃縮度が高くなるため、検出感度等が高くなって好適である。
本発明において酸素同位体濃縮度は、質量分析計(EI−MS)によるマススペクトルデータにより各フラグメントピーク強度に基づいて算出したものを言う。
次に、本実施形態の酸素同位体標識安息香酸塩化合物の製造方法について説明する。
本実施形態の酸素同位体標識安息香酸塩化合物の製造方法は、反応式(12)に示すように、上記化学式(6)で表されるニトリル化合物と、酸素同位体18Oを含む酸素同位体標識水(H 18O)と、塩基とを有機溶媒中で反応させる。反応終了後、エバポレータなどで溶媒を減圧留去することにより、化学式(4)で表される酸素同位体標識安息香酸塩化合物を得ることができる。
Figure 2020037545
化学式(6)で表されるニトリル化合物における置換基Rは、上述の化学式(4)における置換基Rと同じものを用いることができる。
化学式(6)で表されるニトリル化合物の具体例としては、ベンゾニトリルなどが挙げられる。
反応に用いる酸素同位体標識水(H 18O)としては、酸素同位体濃縮度が90atm%以上、好ましくは95atm%以上、より好ましくは98atam%以上であるものを好適に用いることができる。
反応に用いる塩基としては、アルカリ金属(Li,Na,K)を有する塩基などが挙げられる。反応式(12)で用いた塩基に含まれるアルカリ金属が、化学式(4)におけるXの一部となる。なお、水酸化ナトリウムや炭酸カリウムといった分子内に軽酸素を有する塩基を用いると、生成物の酸素同位体濃縮度が低下することがある。このため、塩基としては、ナトリウムt−ブトキシドといった金属アルコキシド、酸素安定同位体標識水酸化ナトリウムといった分子内の酸素原子が酸素安定同位体に置換された塩基、などを用いることが好ましい。
反応に用いる溶媒としては、化学式(6)で表される化合物を溶解可能な有機溶媒であれば特に限定されない。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール、ジクロロメタン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノールなどのプロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。プロトン性極性溶媒は、有機化合物と酸素同位体標識水の両方をよく溶解する上、非プロトン性極性溶媒よりも沸点が低いため、反応終了後に溶媒を除去しやすいという利点がある。
化学式(6)で表されるニトリル化合物に対する塩基の使用量は、化学量論量以上とすることができるが、1.0当量とすることが好ましい。塩基の使用量を1.0当量とすることにより、未消費で残存する塩基がないため、これを除去する必要がなく、さらに後の反応に悪影響を及ぼす恐れがないために好ましい。
化学式(6)で表されるニトリル化合物に対する酸素同位体標識水の使用量は、化学量論量以上とすることができ、好ましくは2.5〜4.0当量である。酸素同位体標識水の使用量を上述した好ましい範囲とすることにより、反応を完全に進行させつつ、過剰な使用によるコスト上昇を防ぐことができる。
これらの原料の投入順序としては、先ず、化学式(6)で表されるニトリル化合物をフラスコ内に入れ、溶媒で溶解したのちに、同位体標識水、塩基の順に投入することが好ましい。塩基を投入する以前に、化学式(6)で表されるニトリル化合物と同位体標識水とが良く混ざり合っていれば、フラスコ内で局所的に大きな反応熱が発生することなく、収率の低下を防ぐことができる。
反応条件としては、反応温度:室温(25℃)〜100℃、反応時間:30分〜48時間程度を例示できるが、この範囲で限定されることはない。
上述した反応条件を用いることで、ニトリル化合物の加水分解反応を確実に進行させるとともに、化合物の分解を防ぐことができる。
なお、化学式(6)で表されるニトリル化合物に応じて、薄層クロマトグラフィー(thin-layer chromatography:TLC)などで反応を追跡し、適切な反応温度・反応時間を見極めながら、反応を行うことが好ましい。
また、反応式(12)によって得られた酸素同位体標識安息香酸アルカリ金属塩をさらに塩交換反応を行うことで、化学式(4)に示すXが水素(H)、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウムである酸素同位体標識用安息香酸又は安息香酸塩を得ることができる。
塩交換反応としては、酸素同位体標識安息香酸アルカリ金属塩をメタノールもしくはエタノールへ溶解後、塩化水素、塩化第4級アンモニウム、もしくは塩化第4級ホスホニウムを加える方法、などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
次に、化学式(4)で表される酸素同位体標識安息香酸塩化合物を利用した、本実施形態の酸素同位体標識アルコールの製造方法について説明する。
本実施形態の酸素同位体標識アルコールの製造方法は、先ず、反応式(13)に示すように、化学式(4)で表される酸素同位体標識安息香酸塩化合物と、上記化学式(9)で表される有機化合物とを反応させて、化学式(14)で表される酸素同位体標識エステル化合物を生成する。次に、得られた化学式(14)の酸素同位体標識エステル化合物を塩基性条件下で反応させることで、上記化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を得ることができる。
Figure 2020037545
Figure 2020037545
ここで、反応式(13)、及び上記化学式(9),(11)、(14)中に示すRとしては、上述した第1実施形態に示す反応式(8)、及び化学式(9),(10)、(11)中に示すRと同様のものを用いることができるため、記載を省略する。
反応式(13)において、化学式(14)で表される酸素同位体標識エステル化合物を合成する際の反応条件としては、反応温度:室温(25℃)〜100℃、反応時間:30分〜48時間程度を例示できるが、この範囲で限定されることはない。
上述した反応条件を用いることで、エステルの合成反応を確実に進行させるとともに、生成した化合物の分解を防ぐことができる。
化学式(14)で表される酸素同位体標識エステル化合物を合成する際に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般的な有機溶媒を用いることができる。化学式(4)で表される酸素同位体標識用試薬(安息香酸塩化合物)と上記化学式(9)で表される有機化合物との両方を溶解する有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等の非プロトン性極性溶媒を用いることができる。また、有機溶媒として、相関移動触媒、クラウンエーテル等を用いることができる場合がある。
化学式(14)で表される酸素同位体標識エステル化合物としては、例えば、酸素同位体標識ベンゾイルエステルなどが挙げられる。これらのうち、安息香酸ベンジル−18などは、質量分析法を用いて定量分析を行う際の内部標準物質として有用である。また、タキソール−18などは、医薬、農薬生化学等の分野で有用である。
反応式(13)において、上記化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を合成する際の反応条件としては、反応温度:室温(25℃)〜100℃、反応時間:30分〜48時間程度を例示できるが、この範囲で限定されることはない。
上述した反応条件を用いることで、酸素同位体標識アルコールの合成反応を確実に進行させるとともに、生成した化合物の分解を防ぐことができる。
化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を合成する際に用いる溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般的な有機溶媒を用いることができる。化学式(14)で表される酸素同位体標識エステル化合物と塩基との両方を溶解する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのプロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。
また、化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物を合成する際に用いる塩基としては、特に限定されるものではなく、一般的な有機塩基及び無機塩基を用いることができる。
有機塩基としては、例えば、ナトリウムt−ブトキシドといった金属アルコキシドなどが挙げられる。
無機塩基としては、例えば、Na18OH、K18OH、Li18OHなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。なお、金属アルコキシドと酸素同位体標識水(H 18O)とを混合することにより、反応系内で上記水酸化物を調製することができる。
化学式(11)で表される酸素同位体標識アルコール化合物としては、例えば、酸素同位体標識ベンジルアルコール類などが挙げられる。これらのうち、ベンジルアルコール−18Oなどは、質量分析の際の内部標準物質として有用である。
以上説明したように、本実施形態の酸素同位体標識安息香酸塩化合物薬、酸素同位体標識安息香酸塩化合物の製造方法、及び酸素同位体標識アルコールの製造方法によれば、上述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上、この発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上述した第1及び第2の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
以下、本発明の効果を実施例及び比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
反応式(15)に示すように、先ず、50mLナスフラスコに原料である4−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル1.71g(10mmol)を秤取し、メタノール20mLを加えて均一溶液とした。次に、ナスフラスコに酸素同位体標識水H 18O(98atom%18O)0.600g(30mmol)を加えたのち、t−ブトキシナトリウム0.96g(10mmol)を加えて70℃で終夜反応させた。反応後、溶媒を減圧留去することで、4−(トリフルオロメチル)安息香酸ナトリウム−18を得た。
次に、得られた4−(トリフルオロメチル)安息香酸ナトリウム−18の全量に対して、N,N−ジメチルホルムアミド20mLを加えて攪拌し、さらに4−メトキシ塩化ベンジル1.56g(10mmol)を加えて、50℃で終夜反応させた。反応後、この液を分液処理し、溶媒を減圧留去したのち、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、エステル生成物を得た。
次に、得られたエステル生成物の全量に対して、メタノール20mLを加えて攪拌し、さらにt−ブトキシナトリウム0.96g(10mmol)を加えて、50℃で終夜反応させた。反応後、この液を分液処理し、溶媒を減圧留去したのち、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、アルコール生成物を得た(0.98g、収率70%、濃縮度96.8atom%18O)。
Figure 2020037545
<実施例2>
反応式(16)に示すように、先ず、50mLナスフラスコに原料であるピバロニトリル0.83g(10mmol)を秤取し、メタノール20mLを加えて均一溶液とした。次に、ナスフラスコに酸素同位体標識水H 18O(98atom%18O)0.600g(30mmol)を加えたのち、t−ブトキシナトリウム0.96g(10mmol)を加えて70℃で終夜反応させた。反応後、溶媒を減圧留去することで、ピバル酸ナトリウム−18を得た。
次に、得られたピバル酸ナトリウム−18の全量に対して、N,N−ジメチルホルムアミド20mLを加えて攪拌し、さらに2−(ブロモメチル)ナフタレン2.21g(10mmol)を加えて、50℃で終夜反応させた。反応後、この液を分液処理し、溶媒を減圧留去したのち、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、エステル生成物を得た。
次に、得られたエステル生成物の全量に対して、メタノール20mLを加えて攪拌し、さらにt−ブトキシナトリウム0.96g(10mmol)を加えて、50℃で終夜反応させた。反応後、この液を分液処理し、溶媒を減圧留去したのち、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、アルコール生成物を得た(0.94g、収率65%、濃縮度97.1atom%18O)。
Figure 2020037545
<実施例3>
反応式(17)に示すように、先ず、50mLナスフラスコに原料である4−メトキシベンゾニトリル1.33g(10mmol)を秤取し、メタノール20mLを加えて均一溶液とした。次に、ナスフラスコに酸素同位体標識水H 18O(98atom%18O)0.600g(30mmol)を加えたのち、t−ブトキシナトリウム0.96g(10mmol)を加えて70℃で終夜反応させた。反応後、溶媒を減圧留去することで、4−メトキシ安息香酸ナトリウム−18を得た。
次に、得られた4−メトキシ安息香酸ナトリウム−18の全量に対して、N,N−ジメチルホルムアミド20mLを加えて攪拌し、さらに3−クロロ臭化ベンジル2.05g(10mmol)を加えて、50℃で終夜反応させた。反応後、この液を分液処理し、溶媒を減圧留去したのち、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、エステル生成物を得た。
次に、得られた生成物の全量に対して、メタノール20mLを加えて攪拌し、さらにt−ブトキシナトリウム0.96g(10mmol)を加えて、50℃で終夜反応させた。反応後、この液を分液処理し、溶媒を減圧留去したのち、カラムクロマトグラフィーで精製することにより、アルコール生成物を得た(1.30g、収率81%、濃縮度97.5atom%18O)。
Figure 2020037545

Claims (8)

  1. 化学式(1)又は(2)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物。
    Figure 2020037545
    Figure 2020037545
    ただし、化学式(1)および(2)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、nは1〜3である。
    また、化学式(1)および(2)において、Xは、Li,Na,Kのいずれかである。
  2. 化学式(3)又は(4)で表される酸素同位体標識カルボン酸塩化合物。
    Figure 2020037545
    Figure 2020037545
    ただし、化学式(3)および(4)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、又は重水素であり、mは1〜5である。
    また、化学式(1)および(2)において、Xは、H,NH,PH,Li,Na,Kのいずれかである。
  3. 酸素同位体17O又は18Oの濃縮度が、10atm%以上である、請求項1又は2に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物からなる酸素同位体標識用試薬。
  5. 請求項1に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法であって、
    化学式(5)で表されるニトリル化合物と、酸素同位体17O又は18Oを含む酸素同位体標識水と、塩基とを、有機溶媒中で反応させる、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法。
    Figure 2020037545
    ただし、化学式(5)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、nは1〜3である。
  6. 請求項2に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法であって、
    化学式(6)で表されるニトリル化合物と、酸素同位体17O又は18Oを含む酸素同位体標識水と、塩基とを、有機溶媒中で反応させる、酸素同位体標識カルボン酸塩化合物の製造方法。
    Figure 2020037545
    ただし、化学式(6)において、Rは、フッ素、ペルフルオロアルキル基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、又は重水素であり、mは1〜5である。
  7. 請求項1に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物と有機化合物とを反応させて、酸素同位体標識エステル化合物を生成し、
    生成した前記酸素同位体標識エステル化合物を塩基性条件下で反応させて、酸素同位体標識アルコールを生成する、酸素同位体標識アルコールの製造方法。
  8. 請求項2に記載の酸素同位体標識カルボン酸塩化合物と有機化合物とを反応させて、酸素同位体標識エステル化合物を生成し、
    生成した前記酸素同位体標識エステル化合物を塩基性条件下で反応させて、酸素同位体標識アルコールを生成する、酸素同位体標識アルコールの製造方法。
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