本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、内燃機関と、内燃機関の吸気管に設けられたスロットルバルブと、吸気管で発生する負圧を用いて、車両の制動を行うブレーキと、を有する車両に搭載され、内燃機関の出力を決定し、決定した出力に応じてスロットルバルブのスロットル開度を変更する制御部を有する車両の制御装置において、制御部は、内燃機関の失火を検出し、かつドライバからの車両への要求出力が所定の出力閾値以上に増加した場合、内燃機関の失火に伴って減少した出力に関連する変数と、負圧と、に基づいて決定した制限量により内燃機関の出力を制限することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、失火による退避走行時にも制動性能と内燃機関の燃焼安定性を確保することができる。
以下、本発明の一実施例に係る車両の制御装置について図面を用いて説明する。図1から図6は、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を説明する図である。
図1に示すように、車両50は、内燃機関1と、車両50の駆動力を調節するアクセルと、車両50の制動を行うブレーキ15と、車両50を総合的に制御する制御部としてのECU100(Electronic Control Unit)と、を含んで構成される。
内燃機関1には、気筒毎に燃焼室6が形成されている。本実施例において、内燃機関1は、各燃焼室6に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
内燃機関1には、各気筒の燃焼室6に空気を導入する吸気管2が設けられており、吸気管2は、図示しない吸気ポートを介して燃焼室6に連通している。吸気管2は、吸気ポート側の端部において、各吸気ポートに向かって分岐する多岐部(吸気マニホールド4)を形成しており、吸気ポートごとに空気を導入するようになっている。
内燃機関1には、各気筒の燃焼室6から排気を排出する排気管11が設けられており、排気管11は、図示しない排気ポートを介して燃焼室6に連通している。排気管11は、排気ポート側の端部において、各排気ポートに向かって分岐する多岐部(排気マニホールド10)を形成しており、排気ポートごとに空気を排出するようになっている。
内燃機関1の各燃焼室6には、閉弁時に燃焼室6の密閉性を保ち、吸入空気の導入時に開弁される図示しない吸気バルブと、閉弁時に燃焼室6の密閉性を保ち、排気ガスの排出時に開弁される図示しない排気バルブとが設けられている。
吸気バルブと排気バルブはカムシャフトのカム山により開弁駆動され、カムシャフトの一端には吸気バルブと排気バルブの開弁特性を変更するために可変動弁装置9を備えている。可変動弁装置9は、吸気バルブと排気バルブとが共に開弁しているバルブオーバーラップ状態の期間を調節するようになっている。
なお、可変動弁装置9の駆動方式は、内燃機関1に備えられた図示しないオイルポンプが発生する油圧を用いた油圧駆動方式、又は図示しないバッテリの電力を用いたモータ駆動方式のいずれも用いることができる。
吸気管2の途中には、スロットルバルブ3と、負圧センサ20とが設けられている。スロットルバルブ3は、内燃機関1が吸入する空気の量を調節する。スロットルバルブ3は、図示しないモータにより開閉される電子制御スロットルバルブからなる。負圧センサ20は、スロットルバルブ3の下流側における気圧を吸気圧として検出し、検出信号をECU100に出力する。
排気管11の途中には排気浄化装置12が設けられており、この排気浄化装置12は、内燃機関1から排出される排気ガスを浄化する。排気浄化装置12は、ハニカム状に成形される活性アルミナと、白金等の触媒が担持されている。排気浄化装置12は、排気ガス中の一酸化炭素、窒素酸化物、未燃燃料を、酸化還元反応により二酸化炭素、窒素、水等へ変換している。
内燃機関1には、燃焼室6へ燃料を直接噴射する燃料噴射弁7と、燃焼室6の混合気を点火する点火プラグ8と、図示しないバッテリから入力される電力を昇圧した後に点火プラグ8へ電力を供給する図示しないイグニッションコイルが気筒毎に設けられている。燃料噴射弁7、点火プラグ8及びイグニッションコイルは、ECU100に電気的に接続されている。
燃料噴射弁7の燃料噴射量及び燃料噴射タイミング、点火プラグ8の点火時期及び放電量は、ECU100により制御される。
アクセルペダル14にはアクセル開度センサ14Aが設けられている。アクセル開度センサ14Aは、ECU100に電気的に接続されており、アクセルペダル14の踏込み量をECU100に出力する。
ブレーキ15は、ドライバが操作するブレーキペダル16の操作量を検出するブレーキペダルスイッチ16Bを備えている。ブレーキペダルスイッチ16Bは、ECU100に接続されている。
また、ブレーキ15は、ブレーキブースター17を備えており、このブレーキブースター17は、吸気管2から負圧導入管21を経由して供給される負圧を用いて制動力を増幅する。ブレーキブースター17で増幅された制動力は、各駆動輪のブレーキキャリパ18のホイールシリンダーへ油圧により伝達され、車両50が制動される。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用データなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU100として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することによりこれらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECU100として機能する。
ECU100の入力ポートには、負圧センサ20、アクセル開度センサ14A、ブレーキペダルスイッチ16Bを含む各種センサ類が接続されている。
ECU100の出力ポートは、内燃機関1のスロットルバルブ3、燃料噴射弁7、点火プラグ8、イグニッションコイル、可変動弁装置9を含む各種制御対象類が接続されている。ECU100は、各種センサ類から得られる情報に基づいて、内燃機関1を含む各種制御対象類を制御する。
ECU100は、アクセル開度センサ14Aから出力されるアクセル開度に基づいて、ドライバからの要求出力を算出する。ECU100は、算出される要求出力が達成されるようにスロットルバルブ3の開度(以下スロットル開度という)と、燃料噴射弁7の燃料噴射タイミング、及び燃料噴射量と、点火プラグ8の点火タイミング又はイグニッションコイルの放電電圧を電気的に制御する。このように、ECU100は、各種装置によって出力されるパラメータを調節することによって内燃機関1の運転状態を制御する。
ここで、内燃機関1の機関部品が故障している場合、内燃機関1の失火が発生することがある。内燃機関1の機関部品とは、例えば、燃料噴射弁7、点火プラグ8、イグニッションコイル等である。
本実施例では、内燃機関1の一部気筒において失火が継続的に発生している場合、ECU100は、スロットル開度を制限することにより内燃機関1の出力を制限する。ECU100は、内燃機関1が発生する負圧の大きさと、失火気筒が失火から復帰して燃焼を再開した際の出力増加量等と、を考慮して内燃機関1の出力の制限量を決定する。
ここで、一部気筒における失火とは、複数ある燃焼室6の一部の燃焼室6において失火が発生していることを意味する。本実施例では、図1において、1番気筒(#1と記す)から4番気筒(#4と記す)の4つの燃焼室6のうち、3つ以下の燃焼室6で失火が継続的に発生していることをいう。
また、本実施例では、ECU100は、失火により減少した出力を、ドライバが要求する要求出力により除した変数を、内燃機関1の失火に伴って減少した出力に関連する変数(以下、失火レベルという)として算出する。
なお、失火レベルは他の手法から求めてもよい。例えば、失火が発生している燃焼室6の数を内燃機関1のすべての燃焼室6の数で除した値を、失火レベルとしてもよい。すなわち、失火によって減少する出力の割合を表わす値である限り、図4に示す数式に限定されない。
また、本実施例では、ECU100は、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上であり、かつ、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より真空に近い場合、失火レベルに基づいて内燃機関1の出力の制限量を決定する。
ここで、失火レベルに基づいて出力の制限量を決定する際は、ECU100は、制限後の出力により得られる車両50の速度(車速)が所定の上限車速以下となるように、制限量を決定することが好ましい。車速が所定の上限車速より大きく、車両50の運動エネルギーが大きい場合、失火に起因して低下している負圧ではブレーキ15の制動力が不足してしまうため、制動力の不足を回避するためである。
また、本実施例では、失火レベルが所定の失火レベル閾値未満であり、かつ、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近い場合、負圧に基づいて内燃機関1の出力の制限量を決定し、かつ、吸気側に備えられた吸気バルブの開閉タイミングを、アイドリング時に使用される開閉タイミングであるアイドリングタイミングより進角側へ変更し、バルブオーバーラップ量を増加させる。
また、本実施例では、ECU100は、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上であり、かつ、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近い場合、そうでない場合よりも内燃機関1の出力の制限量を大きくする。
なお、失火レベルの閾値および負圧の閾値を多段階に設定し、領域の区分数を増やしてもよく、その場合、失火レベルが高いほど、及び負圧が大気圧に近いほど、制限量が大きく設定される。
また、本実施例では、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上であり、かつ、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近い場合、内燃機関1の出力を、内燃機関1がアイドリング状態となるように、出力を制限する。
次に、図2を参照して、本実施例に係る車両の制御装置において、ECU100により実行される動作について説明する。
図2において、ECU100は、フェールセーフ制御の実行条件が成立しているか否かを繰り返し判別する(ステップS1)。ここでは、ECU100は、内燃機関1のいずれかの燃焼室6において失火が発生している場合はフェールセーフ制御の実行条件が成立していると判断する。また、ECU100は、エンジン回転数の変動に基づいて失火の発生の有無を判別する。
ステップS1でフェールセーフ制御条件が成立した場合、ECU100は、アクセル開度センサ14Aの出力値を参照し、アクセル開度が所定開度以上であるか否か判別する(ステップS2)。
ここで、アクセル開度の所定開度は、ドライバが退避走行を意図してアクセルペダル14を大きく踏み込む場合に想定されるアクセル開度に設定されている。また、アクセル開度が所定開度以上の場合とは、ドライバからの車両50への要求出力が所定の出力閾値以上に増加した場合に相当する。
ステップS2で、アクセル開度が所定開度以上である場合、ECU100は、負圧の検出及び失火レベルの演算を実行する(ステップS3)。
次いで、ECU100は、負圧及び失火レベルに基づいて、現在の運転領域が領域aであるか否かを判別する(ステップS4)。ここで、領域aは、図3に示すように、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より真空に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値未満の領域である。
また、この領域aは、ブレーキブースター17に供給される負圧が十分に大きく、車両50の制動能力が十分に確保されている領域である。また、領域aは、失火レベルが低く、一時的な内燃機関1の機関部品の動作復帰により失火が解消された際に、発生するトルクショックが小さい領域である。
ステップS4では、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より真空に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値未満である場合、ECU100は、運転領域が領域aに属していると判別する。
ステップS4で運転領域が領域aに属していると判別した場合、ECU100は、要求出力の増加量に概ね追従して内燃機関1の出力が増加するように、出力の制限量を決定する(ステップS5)。
したがって、領域aでは、出力の制限量(介入量)は、領域a以外の領域における制限量よりも小さな値となる。なお、ECU100は、内燃機関1の出力に対して重み係数を掛けたり、内燃機関1の出力より一律に制限量を決定することにより、要求出力の増加に追従するように内燃機関1の出力の制限量を決定する。
一方、ステップS4で運転領域が領域aに属していないと判別した場合、ECU100は、現在の運転領域が領域bであるか否かを判別する(ステップS6)。ここで、領域bは、図3に示すように、負圧が所定の負圧閾値より真空に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値以上の領域である。
また、領域bは、失火レベルが高く、一時的な内燃機関1の機関部品の動作復帰により失火が解消された際に、発生するトルクショックが大きく、大きなトルクショックが発生する領域である。
そこで、ステップS4で運転領域が領域bに属していると判別した場合、ECU100は、失火レベルが大きくなるほど内燃機関1の出力の制限量を大きくし、トルクショックの大きさを抑制する(ステップS7)。
このステップS7では、出力の制限量を大きくし過ぎるとエンジン回転数がアイドリング回転数を下回ってしまい、エンジンストールが発生するおそれがある。そのため、ステップS7において、ECU100は、内燃機関1の運転状態がアイドリング状態となるまでは制限量を増加(出力を低下)させるが、その後は制限量を増加させない。
一方、ステップS6で運転領域が領域bに属していないと判別した場合、ECU100は、現在の運転領域が領域cであるか否かを判別する(ステップS8)。ここで、領域cは、図3に示すように、負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値未満の領域である。
このステップS8では、ECU100は、負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値未満であると判別した場合、領域cに属していると判別する。
ここで、領域cでは、領域aと同様に失火レベルが小さいため、トルクショックの抑制を目的としては出力の制限量を大きくする必要はない。しかし、領域cでは、ブレーキブースター17に供給される負圧が大気圧に近く低い値のため、車両50の制動能力が不十分になることが考えられる。
そこで、ECU100は、負圧が不足し過ぎないようにするために、負圧に基づいて出力の制限量を決定する(ステップS9)。また、このステップS9では、ECU100は、負圧だけでなく、車速も考慮して出力の制限量を決定する。
詳しくは、ECU100は、車速が所定の上限車速未満になるように、出力の制限量を決定する。これにより、ブレーキ15に供給される負圧が低下している状態であっても、車両50を制動することができる。また、このステップS9では、エンジンストールを回避するため、エンジン回転数がアイドリング回転数未満に低下しないように、制限量を決定する。
ステップS8がNOの場合、運転領域は領域dに属していることになる。領域dは、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値以上の領域である。
領域dでは、内燃機関1の機関部品が動作復帰して失火が解消した際に、発生するトルクショックが大きい。また、負圧が不足しているため車両50の制動能力を十分に得ることができない。そのため、ECU100は、内燃機関1がストールをせずに運転を継続できるようにするため、内燃機関1がアイドリング状態となるように内燃機関1の出力の制限量を決定する(ステップS10)。
ステップS2がNOの場合、ドライバからのアクセルペダル14の踏込操作によってアクセル開度センサ14Aより出力されるアクセル開度に基づいたアクセル量の減少や車両50への要求出力の減少に基づいて決定される退避要求がない状態であるため、失火が継続しているか判断する(ステップS11)。また、ステップS5、S7、S9、S10の実行後も、ステップS11が実行される。ステップS11で、失火が継続していないと判断された場合は、今回の動作を終了する。
図2のフローチャートの動作によれば、ステップS5、及びステップS7、ステップS9、ステップS10において、内燃機関1の運転状態を変更することで、内燃機関1の一部気筒において失火が継続的に発生している状態であっても、ドライバによる退避要求の状態と、内燃機関1が発生する負圧の状態と、失火気筒の燃焼復帰時の発生する出力を考慮した退避走行が行われる。このようにすることで、失火等による出力低下時おける退避走行と内燃機関1の燃焼安定性を確保することができる。
ステップS11で、失火が継続していると判断された場合は、ステップS2へリターンし、本発明制御を継続的に実行する。このようにすることで失火が継続している状態であっても、失火による出力低下時における退避走行と内燃機関1の燃焼安定性を確保することができる。
また、本実施例では4つの領域a、b、c、dに区分して制御を行っているが、さらに領域の数を増やし、より細やかな制御を行ってもよい。さらに、本実施例では所定の負圧閾値及び所定の失火レベル閾値に対して実際の値がそれぞれ大きいか否かに基づいて制御方法の変更を行ったが、内燃機関1の負圧の増減、及び失火レベルの増減に応じて制限量を決定してもよい。
次に、図5を参照して、内燃機関1の失火が発生した際の、ECU100による内燃機関1の出力制限の一例について説明する。
図5において、縦軸は車速と、内燃機関1が発生する負圧と、内燃機関1の出力と、失火レベルを示し、横軸は時間を示している。点線は、内燃機関1が発生する負圧の制御切り替えに使用する負圧閾値を示している。また、一点鎖線は、アクセル開度センサ14Aより入力されるアクセル開度から算出される要求出力を示している。
時刻t1では、内燃機関1のいずれかの気筒において継続的に失火が発生したため、要求出力に対して内燃機関1の出力が低下し、ECU100が算出する失火レベルが上昇する。
ECU100は、時刻t2から時刻t3の期間において、内燃機関1が発生する負圧が負圧閾値より真空に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値以下であるため、ECU100は、現在の内燃機関の運転状態が領域aに属していると判断する。
また、要求出力が所定の閾値以上に上昇したため、ECU100は、ドライバの退避走行要求が成立していると判断し、実際の出力が要求出力に概ね追従できるように内燃機関1の出力の制限量を決定する。
時刻t3において、ECU100は、内燃機関1が発生する負圧が車速に基づいて決定される負圧閾値に到達した場合、内燃機関1の出力を制限する。このような場合、内燃機関1が発生する負圧に基づいて決定される上限車速以下となる様に内燃機関1の出力の制限量を決定する。または、ECU100は、ドライバから車両50への要求出力がある場合、内燃機関1が発生する負圧に基づいて決定される上限車速となるように車両50を走行させてもよい。
また、ECU100は、内燃機関1の出力を制限するとともに、可変動弁装置9の吸気側に備えられた吸気バルブの開閉タイミングを、アイドリング時に使用される開閉タイミングであるアイドリングタイミングより進角側へ変更する。
すなわち、ECU100は、可変動弁装置9に備えられた吸気バルブと排気バルブとが共に開弁しているバルブオーバーラップ状態の期間を長くする。このようにすることで、排気ガスを排出するときに発生する空気の慣性を用いて吸入空気量を増加させ、内燃機関1が発生する負圧を増加させることができる。
時刻t4において、ドライバによる要求がなくなるため、内燃機関1の出力を、内燃機関1の運転状態がアイドリング状態となるように内燃機関1の出力を決定する。
次に、図6を参照して、内燃機関1の失火が発生した際の、ECU100による内燃機関1の出力制限の他の例について説明する。
図6において、縦軸は車速と、内燃機関1が発生する負圧と、内燃機関1の出力と、失火レベルとを示し、横軸は時間を示す。点線は、内燃機関1が発生する負圧の制御切り替えに使用する負圧閾値を示す。一点鎖線は、アクセル開度センサ14Aより入力されるアクセル開度より算出される要求出力を示す。
時刻t11では、内燃機関1のいずれかの気筒において継続的に失火が発生したため、要求出力に対して内燃機関1の出力が低下し、ECU100が算出する失火レベルが上昇する。
ECU100は、時刻t12から時刻t13の期間において、内燃機関1が発生する負圧が負圧閾値より真空に近く、かつ失火レベルが所定の失火レベル閾値より小さいため、ECU100は、領域aに属していると判断する。要求出力が所定の閾値以上に上昇したため、ドライバの退避走行要求が成立していると判断する。
時刻t13において、内燃機関1の複数の気筒において継続的に失火が発生したため、要求出力に対して内燃機関1の出力がより低下し、ECU100が算出する失火レベルが上昇する。
ECU100は、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上であるため、内燃機関1が発生する負圧は車両50の制動を行うための必要な負圧が十分あるが、失火レベルが高いため、領域bに属していると判断する。
このようにすることで、内燃機関1の機関部品の故障による失火からの動作復帰時に発生するトルクショックの大きさを考慮した退避走行を行うことにより、失火による出力低下時における退避走行と内燃機関1の燃焼安定性を確保することができる。
時刻t14において、内燃機関1の複数の気筒において継続的に失火が発生しており、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上である。このような場合、ECU100は失火レベルの所定の失火レベル閾値以上であり、かつ、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近いと判断し、内燃機関1の運転状態が領域dであると判断する。
ECU100は、領域dであるという判断に基づいて、内燃機関1の運転状態を内燃機関1の運転状態がアイドリング状態になるように内燃機関1の出力の制限量を決定する。
このようにすることで、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上であるため失火による出力の低下量が大きく、内燃機関1が発生する負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近いため車両50の制動能力が不十分である場合は、内燃機関1の運転状態がアイドリング状態となるように内燃機関1の出力の制限量を決定する。これにより、車両50の制動に必要な負圧を確保することができ、内燃機関1の燃焼安定性を確保することができる。
以上のように、本実施例において、ECU100は、内燃機関1の失火を検出し、かつドライバからの車両50への要求出力が所定の出力閾値以上に増加した場合、内燃機関1の失火に伴って減少した出力に関連する変数と、負圧と、に基づいて決定した制限量により内燃機関1の出力を制限する。
このようにすることで、失火の発生時にドライバが退避走行のためにアクセルペダルを踏み込んだ場合、失火に伴って減少した出力に関連する変数と、負圧と、に基づいて決定した制限量により内燃機関1の出力が制限される。また、スロットル開度を制限することにより出力が制限される。
このため、ドライバの実際のアクセルペダルの踏込み量に対してスロットル開度が制限されるので、吸気管2からブレーキ15に供給される負圧が低下することを抑制でき、制動性能を確保できる。
また、失火に伴って減少した出力に関連する変数と、負圧と、に基づいて出力の制限量を決定しているので、一時的な失火が解消して正常に戻った際に内燃機関1の出力の急増を抑制でき、内燃機関1の燃焼安定性を確保できる。このため、失火からの復帰時に出力が急増してトルクショックが発生することを抑制できる。
また、本実施例において、上記の内燃機関1の失火に伴って減少した出力に関連する変数は、失火により減少した出力を、要求出力により除して得られる失火レベルである。
このようにすることで、内燃機関1が失火から復帰した際に発生するトルクショックの大きさを考慮して、出力の制限量を決定できるので、トルクショックを抑制できる。
また、本実施例において、ECU100は、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上であり、かつ、負圧が所定の負圧閾値より真空に近い場合、失火レベルに基づいて内燃機関1の出力の制限量を決定する。
ここで、失火レベルが高い状態において内燃機関1の出力の制限量が十分でない場合、失火から復帰した際に出力が急増して大きなトルクショックが発生してしまう。そこで、上記のように、失火レベルに基づいて内燃機関1の出力の制限量を決定することにより、トルクショックを抑制できる。
また、本実施例において、ECU100は、失火レベルが所定の失火レベル閾値未満であり、かつ、負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近い場合、負圧に基づいて制限量を決定し、吸気バルブと排気バルブとが共に開弁をしているバルブオーバーラップ量を増加させるように吸気バルブの開閉タイミングを進角側に制御する。
このようにすることで、失火からの復帰時のトルクショックの発生を抑制でき、内燃機関1の燃焼安定性を確保することができる。また、バルブオーバーラップ量を増加させることにより掃気効率が向上し、負圧を増大させることができるため、制動能力を確保できる。
また、本実施例において、ECU100は、失火レベルが高いほど、及び負圧が大気圧に近いほど、制限量を大きくする。
このようにすることで、失火からの復帰時の出力の急増によるトルクショックを回避でき、内燃機関1の燃焼安定性を確保することができる。
また、ECU100は、失火レベルが所定の失火レベル閾値以上であり、かつ、負圧が所定の負圧閾値より大気圧に近い場合、内燃機関1がアイドリング状態となるように制限量を決定する。
このようにすることで、内燃機関1がアイドリング状態となるように制御され、エンジンストールを回避できるので、制動に必要な負圧を確保でき、内燃機関1の燃焼安定性を確保することができる。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。