JP2020028277A - グリコサミノグリカン分解酵素又はその阻害物質の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より簡便に、グリコサミノグリカン分解酵素を検出する方法、該酵素の阻害物質を検出する方法、これら検出に利用できるゲル、これら検出のためのキットなどを提供することを目的とする。【解決手段】被検試料中のグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出する方法であって、以下の工程:(a)グリコサミノグリカン複合体を基質として含有した電気泳動用ゲルを被検試料存在下で電気泳動する工程、(b)電気泳動後のゲルをインキュベーションする工程、及び(c)インキュベーション後のゲルを染色剤で処理する工程を含む方法。【選択図】なし

Description

本発明は、グリコサミノグリカン分解酵素又はその阻害物質の検出方法、該検出方法に利用できるゲル、該検出方法のためのキットなどに関する。
ザイモグラフィー法は、検出対象酵素の基質を含有させた電気泳動用ゲルを、検出対象酵素又は被検試料(該酵素を含む可能性のある試料)とともに電気泳動し、次いでゲルをインキュベートし(つまり、酵素反応条件下で酵素反応させ)、次いでゲルを染色剤で処理して基質を染色することで、酵素分解産物の有無を確認する方法である。ザイモグラフィー用ゲルとしてカゼイン又はゼラチンを基質として含有したポリアクリルアミドゲルが、MMP−9(マトリックスプロテアーゼ−9)等のプロテアーゼの検出用として汎用されている。ゼラチンを含有する電気泳動用ゲルにサンプルをロードして電気泳動し、ゲルを酵素反応条件下でインキュベーションした後、クマシーブルー等の染色液でゲルを染色する方法である。クマシーブルーはゼラチンと反応して青色を呈するところ、プロテアーゼが存在しているとゲル中のゼラチンが分解されるため青色に染色されない。したがって、青色に染色されない非着色部分についてプロテアーゼ活性を検出できる。
ザイモグラフィー法はグリコサミノグリカン分解酵素活性の検出にも応用が試みられている。例えば、コンドロイチン硫酸にエチレンジアミンを介してアリルグリシジルエーテルを結合させたコンドロイチン硫酸誘導体を合成し、この誘導体を含有させたポリアクリルアミドゲルにグリコサミノグリカン分解酵素の一種であるコンドロイチナーゼABCをロードして電気泳動し、次いで酵素反応条件下で該ゲルをインキュベートし、アルシアンブルーでゲルを染色し、非染色部分の存在に基づいてコンドロイチナーゼABC活性を検出する方法である(特許文献1)。この方法では、基質となるグリコサミノグリカン誘導体を調製するに際し、グリコサミノグリカンに対する還元処理、アミノ化処理及びアリル化処理を要するため、煩雑で且つ長時間(数日間)を要し、また、コストも高い。
特開平08−085704号公報
本発明は、簡便に、グリコサミノグリカン分解酵素を検出する方法、該酵素の阻害物質を検出する方法、これら検出に利用できるゲル、これら検出のためのキットなどを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、グリコサミノグリカン複合体が電気泳動用ゲルに保持されて流出しないこと及びグリコサミノグリカン複合体を基質として用いることで上記の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。代表的な本発明は以下のとおりである。
項1.
被検試料中のグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出する方法であって、以下の工程:
(a)グリコサミノグリカン複合体を基質として含有した電気泳動用ゲルを被検試料存在下で電気泳動する工程、
(b)電気泳動後のゲルをインキュベーションする工程、及び
(c)インキュベーション後のゲルを染色剤で処理する工程
を含む方法。
項2.
グリコサミノグリカン複合体がプロテオグリカンである項1に記載の方法。
項3.
プロテオグリカンがサケ鼻軟骨プロテオグリカンである項2に記載の方法。
項4.
染色剤がアルシアンブルーである項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5.
グリコサミノグリカン複合体を基質として含有する、電気泳動を使用してグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出するためのゲル。
項6.
グリコサミノグリカン複合体がプロテオグリカンである項5に記載のゲル。
項7.
プロテオグリカンがサケ鼻軟骨プロテオグリカンである項6に記載のゲル。
項8.
項5〜7のいずれかに記載のゲルを含む、グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質の検出用キット。
本発明によれば、ザイモグラフィー法において、グリコサミノグリカン分解酵素又はその阻害物質を簡便に高感度で検出できる。
図1は、電気泳動されたゼラチン含有ゲル及びサケ鼻軟骨プロテオグリカン含有ゲルのアルシアンブルー染色結果(左図)及びクマシーブルー染色結果(右図)を示す(実施例1)。 図2は、所定量のコンドロイチナーゼABCとともに電気泳動されたサケ鼻軟骨プロテオグリカン含有ゲルのアルシアンブルー染色結果を示す。図2中、上図は分離ゲル中のサケ鼻軟骨プロテオグリカン濃度が0.1mg/mlの条件、下図は同濃度が0.5mg/mlの条件での結果である。図2中、ゲル上部の数字はレーン番号を表す。図2中、第1レーンから第10レーンは、各々、酵素濃度が10mU、5mU、2.5mU、1.25mU、0.63mU、0.31mU、0.16mU、0.08mU、0.04mU、0.02mUのサンプルによる染色結果を示す(実施例2)。 図3は、所定量のウシ精巣ヒアルロニダーゼとともに電気泳動されたサケ鼻軟骨プロテオグリカン含有ゲルのアルシアンブルー染色結果を示す。図3中、上図はpH5.0条件、下図はpH7.0条件での結果である。図3中、ゲル上部の数字はレーン番号を表す。第1レーンから第10レーンは、各々、酵素濃度が500ng、250ng、125ng、62.5ng、31.3ng、15.6ng、7.8ng、3.9ng、2.0ng、1.0ngのサンプルによる染色結果を示す(実施例3)。 図4は、コンドロイチナーゼABC又はウシ精巣ヒアルロニダーゼとともに電気泳動されたサケ鼻軟骨プロテオグリカン含有ゲルのpH3.5、pH5.0、pH6.0及びpH7.5条件でのアルシアンブルー染色結果を示す(実施例4)。 図5は、サケ鼻軟骨プロテオグリカン含有ゲルのウシ精巣ヒアルロニダーゼ非含有(左図)又は含有(右図)インキュベーション用緩衝液処理後のアルシアンブルー染色結果を示す(実施例5)。
以下、本発明のグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出する方法、電気泳動を使用してグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出するためのゲル、グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質の検出用キットなどについて説明する。
<グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出する方法>
本発明の一実施形態は、被検試料中のグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出する方法であって、以下の工程:
(a)グリコサミノグリカン複合体を基質として含有した電気泳動用ゲルを被検試料存在下で電気泳動する工程、
(b)電気泳動後のゲルをインキュベーションする工程、及び
(c)インキュベーション後のゲルを染色剤で処理する工程
を含む方法、である(以下、単に本発明の検出方法と称することがある)。
被検試料は、グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を含有する可能性のある試料である。グリコサミノグリカン分解酵素を含有する可能性のある試料としては、例えば、グリコサミノグリカン分解作用を有する微生物、該微生物を培養した培地、該微生物の菌体破砕物、生体由来試料などが挙げられるが、これらに限定されない。また、阻害物質を含有する可能性のある試料は、グリコサミノグリカン分解作用を有する又はこの作用を抑制する微生物、該微生物を培養した培地、該微生物の菌体破砕物、生体由来試料、合成品などが挙げられるが、これらに限定されない。被検試料は、ゲル化、電気泳動、酵素反応、染色処理等に適した形態とされてもよく、例えば水等の溶媒に溶解、懸濁、希釈等されてもよい。
本発明において検出対象はグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質である。グリコサミノグリカン分解酵素は特に限定されないが、例えばコンドロイチナーゼ(コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼACI、コンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼB、コンドロイチナーゼC、コンドロ-4-スルファターゼ、コンドロ-6-スルファターゼなど)、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ(ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼII、ヘパリナーゼIIIなど)、ヘパラナーゼなどが挙げられる。好ましくはコンドロイチナーゼ又はヒアルロニダーゼである。
グリコサミノグリカン分解酵素の阻害物質は特に限定されず、該酵素によるグリコサミノグリカンの分解を阻害するものであれば、生体由来の材料であっても、合成品であっても、微生物由来の材料であってもよい。
本発明においてグリコサミノグリカン分解酵素の検出は、工程(c)における染色処理において、染色された場合には酵素活性が検出されなかった、染色されなかった場合には酵素活性が検出された、と判断できる。したがって、被検試料が単一物質又はこれに近い場合は、酵素活性の検出によって該物質又は被検試料中で主体となっている物質が酵素であると判断でき、被検試料が複数物質の混合物である場合には、酵素活性の検出によって被検試料中に酵素の存在が確認される。
本発明においてグリコサミノグリカン分解酵素の阻害物質の検出は、工程(b)において被検試料の存在下でゲルを酵素反応に供し、工程(c)における染色処理において、染色された場合には該酵素の阻害活性が検出された、染色されなかった場合には該酵素の阻害活性が検出されなかった、と判断できる。したがって、被検試料が単一物質又はこれに近い場合は、阻害活性の検出によって該物質又は被検試料中で主体となっている物質が阻害物質であると判断でき、被検試料が複数物質の混合物である場合には、阻害活性の検出によって被検試料中に阻害物質の存在が確認される。
工程(a)では、グリコサミノグリカン複合体を基質として含有した電気泳動用ゲルを被検試料存在下で電気泳動する。
電気泳動用ゲルは、グリコサミノグリカン分解酵素の基質であるグリコサミノグリカン複合体を含有する。グリコサミノグリカン複合体はタンパク質又は脂質にグリコサミノグリカンが結合した複合体であり、例えばプロテオグリカン、脂質結合グリコサミノグリカンである。好ましくはプロテオグリカンである。
グリコサミノグリカン複合体を構成するグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)は、D−グルコサミン又はD−ガラクトサミンと、D−グルクロン酸、L−イズロン酸及び/又はD−ガラクトースの2糖の繰り返し単位を基本骨格として構成される多糖であり、動物等の天然物から抽出されたもの、微生物を培養して得られたもの、化学的若しくは酵素的に合成されたもの等のいずれも使用することができる。具体的には、例えばヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸(いわゆるコンドロイチン硫酸A、コンドロイチン硫酸C、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸K等)、コンドロイチンポリ硫酸、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸Bとも称される)、ヘパリン、ケラタン硫酸、ケラタンポリ硫酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、検出対象となるグリコサミノグリカン分解酵素に応じて適宜選択できる。例えば、コンドロイチナーゼを検出対象とするのであれば、コンドロイチン硫酸A及び/又はコンドロイチン硫酸Cがグリコサミノグリカン複合体を構成するグリコサミノグリカンとして好ましい。これらのグリコサミノグリカンは通常使用される塩であってもよい。
プロテオグリカンは、グリコサミノグリカン及びタンパク質が結合した構造を有する化合物である。グリコサミノグリカンは、2糖の繰り返し構造を有する酸性糖であり、通常、一方はアミノ糖であり、もう一方がウロン酸であることが知られている。そのため、プロテオグリカンの検出には、ウロン酸を検出するための常法の1つであるカルバゾール硫酸法(例えば特開2017−066097号公報に開示の方法)を用いることができる。
また、タンパク質に櫛の歯状にグリコサミノグリカンが結合した化合物はプロテオグリカンモノマーとも呼ばれ、該プロテオグリカンモノマーにおけるタンパク質はコアタンパク質とも呼ばれる。特に、生体内では、プロテオグリカンモノマーがリンクタンパク質を介してヒアルロン酸と結合した会合体を形成していると考えられており、該会合体はプロテオグリカン集合体(proteoglycan aggregate)とも呼ばれる。なお、本明細書において、「プロテオグリカン」とは、プロテオグリカンモノマー及びプロテオグリカン集合体を包含する意味で用いられる。また、ヒアルロン酸はグリコサミノグリカンの一種である。
プロテオグリカンとしては、例えば、動物の軟骨(動物軟骨)由来のプロテオグリカン、糖鎖改変型プロテオグリカン、ウシ血清アルブミンにグリコサミノグリカンが結合した複合体などが挙げられ、好ましくは魚類の軟骨由来のプロテオグリカン(魚類軟骨プロテオグリカン)、より好ましくは魚類の頭部の軟骨由来のプロテオグリカン(魚類頭部軟骨プロテオグリカン)、より一層好ましくはサケの鼻の軟骨プロテオグリカン(サケ鼻軟骨プロテオグリカン)である。魚類としては、サケ科サケ属の魚が好ましく、具体的には、マス(カラフトマス、サクラマス、サツキマス等)、サケ(シロザケ、ベニザケ、ギンザケ、マスノスケ、スチールヘッド等)などが例示される。また、サメ、タラ等も用いることができる。これらの中でも、サケ又はマスが好ましい。また、軟骨としては特に制限されず、例えば、頭部軟骨を用いることができる。頭部軟骨の中では、特に、鼻軟骨が好ましい。また、通常、魚類(特に、サケやマス)が食品製品等へ加工される際に頭部は廃棄されることから、頭部軟骨の入手コストは安く、大量に安定供給され得るという利点もある。また、プロテオグリカンとしては、市販のプロテオグリカンを使用することもできる。
プロテオグリカンの調製方法は公知であり、例えば特開2016−160226号公報、国際公開第2012/099216号、特開2009−173702号公報、特開2002−069097号公報などに記載の方法を参照して調製できる。例えば、サケ鼻軟骨プロテオグリカンは、ミンチにしたサケの鼻軟骨から溶出溶媒として酢酸を用いて粗プロテオグリカンを溶出した後、得られる溶出液を濾過してから遠心分離し、その上澄液に食塩飽和エタノールを加えて遠心分離することにより得られる粗プロテオグリカンを含む半固形沈殿物を酢酸に溶解し、次いで透析することにより分離精製することにより約250kDa〜450kDaの分子量で調製できる。これとは別に、凍結させたサケの鼻軟骨を破砕し、これに水を加え、温度0℃〜20℃、pH4.8〜7で処理する工程、得られた固液混合物を遠心分離し、最上部の脂質層と中間層の水層を取り除き、沈殿物を回収する工程、得られた沈殿物を乾燥し、微粉末化する工程、得られた乾燥微粉末に、溶媒としてエタノールを加え、残存脂質を抽出除去する工程、最後にエタノールを除去する工程を経てサケ鼻軟骨プロテオグリカンを調製してもよい。さらに、サケ鼻軟骨プロテオグリカンは、サケの鼻軟骨を凍結した後、1小片が0.001〜0.5gとなるようにブレンダー等を用いて破砕し、80℃以上、好ましくは100℃の水中で、3時間より長い時間、好ましくは4時間加熱して抽出を行い、遠心分離(5000rpm、20分。4℃)し、不溶物を取り除いて上清を回収し、これを凍結乾燥することにより製造することもできるが、これらに限定されるものではない。
糖鎖改変型プロテオグリカンは、構成糖の一部または全部を欠損させること、糖転移反応によって欠損させた構成糖を新たな構成糖に置換して糖鎖を組み換えることや糖鎖に新たな構成糖を付加して糖鎖を伸長することなど、糖鎖の構成糖が人為的に欠損、置換、付加されたプロテオグリカンであり、特開2009−278907号公報、K, Takagaki et al., Biochemistry, 33(21), 6503-6507, 1994.、H, Saitoh et al., J. Biol. Chem., 270, 3741-3747, 1995.などの記載に準じて調製することができる。
ウシ血清アルブミンにグリコサミノグリカンが結合した複合体は、例えば、ウシ血清アルブミンにグリコサミノグリカンを結合させた合成型プロテオグリカンであり、The Journal of Biological Chemistry, 1989, vol 264, p8012-8018.に記載されているものを使用できる。
プロテオグリカンの分子量は、電気泳動中及び染色処理中にゲル内に保持されやすい点から、100kDa以上が好ましく、500kDa以上がより好ましく、また、ゲル作製時の溶解度や市販品の入手容易性の観点から、2500kDa以下が好ましく、1500kDa以下がより好ましく、1000kDa以下がより好ましい。なお、プロテオグリカンの分子量は、特開2017−066097号公報に記載された「ウロン酸量クロマトグラム」を作成することにより確認する方法によって決定される値である。
脂質結合グリコサミノグリカンは、例えばグリコサミノグリカンに脂質が結合した物質、好ましくはグリコサミノグリカンに脂質が化学的に結合した物質であり、例えば特開平4−080201号公報、特開平4−080202号公報、特開平9−030979号公報、特開2003−335801号公報、特開2004−170194号公報等に開示されている。本発明ではこれら開示の脂質結合グリコサミノグリカンを使用してもよい。
また、グリコサミノグリカンに結合させる脂質としては、動物、植物、微生物等の天然物由来、又は化学的若しくは酵素的に合成若しくは部分的に分解された複合脂質又は単純脂質を使用することができ、リン脂質等のグリセロ脂質、長鎖の脂肪酸、長鎖の脂肪酸アミン、コレステロール類、スフィンゴ脂質、セラミド等いずれも使用できる。特にホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルトレオニン、エタノールアミンプラスマロゲン、セリンプラスマロゲン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルイノシトール等のリン脂質、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール等の中性脂質等のグリセロ脂質が好ましい。この中でも特に1級アミノ基を有するリン脂質が好ましい。脂質中のアシル基の鎖長及び不飽和度は特に限定されないが、炭素数6以上のものが好ましい。アシル基としては例えばパルミトイル(ヘキサデカノイル)又はステアロイル(オクタデカノイル)などが例示される。また、これらの脂質は通常使用される塩であってもよい。
グリコサミノグリカンの脂質との結合位置は特に限定されるものではないが、グリコサミノグリカンの末端部が好ましく、グリコサミノグリカンの還元末端への結合がより好ましい。また、結合の形態は、特に化学結合が好ましく、その中でも共有結合による結合が最も好ましい。
グリコサミノグリカンと脂質とが共有結合した脂質結合グリコサミノグリカンの場合、グリコサミノグリカンのカルボキシル基(ラクトンを含む)、ホルミル基(ヘミアセタール基も含む)、水酸基又は1級アミノ基と、脂質のカルボキシル基、ホルミル基若しくは1級アミノ基、又は脂質に別途導入された前記基との間で形成される酸アミド結合(−CO−NH−)、エステル結合又はアミノアルキル結合(−CH−NH−)によって共有結合したものが好ましい。
なお、上記共有結合に関与するアミノ基、カルボキシル基、ホルミル基(ヘミアセタール基を含む)、水酸基はグリコサミノグリカン又は脂質に元来存在するもの、これらに化学的処理を施すことによって形成されたもの、或いは上記官能基を末端に有するスペーサー化合物を、予めグリコサミノグリカン又は脂質と反応させることによって別途導入されたもののいずれであってもよい。
グリコサミノグリカン複合体を基質として含有した電気泳動用ゲルは、グリコサミノグリカン複合体を含有した一般的な電気泳動に使用されるゲルであってもよい。このようなゲルは、従来の電気泳動用ゲルを調製する方法に準じて行うことができる。例えば、ポリアクリルアミドゲルを使用する場合は、アクリルアミドとN,N’−メチレンビスアクリルアミド(Bis)を含む水溶液にグリコサミノグリカン複合体を加えて、均一に混合し、これを重合開始剤、例えば過硫酸塩(過硫酸アンモニウムなど)、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や酸化剤と還元剤よりなるレドックス開始剤を用いて重合してゲルを調製できる。また、重合促進剤(例えばN,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED))や界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS))を添加してもよい。
好ましいゲルは分離性能及び親水性の点からポリアクリルアミドゲルである。また、ポリアクリルアミドゲルは、一般のポリアクリルアミドゲルの場合と同様に、濃縮ゲルと分離ゲルの2枚作製し重ね合わせることもできる。この場合、基質は分離ゲルに含有させることが好ましい。ポリアクリルアミドゲルにおけるポリアクリルアミドの含有量は、例えば2〜40%(w/v)であり、好ましくは10〜35%(w/v)である。
ゲル作製時のグリコサミノグリカン複合体の使用量は、該複合体がゲルに保持される限り特に制限されないが、例えば0.01mg/ml〜50mg/ml、好ましくは0.5mg/ml〜10mg/ml、より好ましくは0.1mg/ml〜1.0mg/mlである。グリコサミノグリカン複合体の使用量が上記範囲にあると、検出感度を確保しつつ、さらに、該複合体の水への溶解性も十分でありハンドリングが向上する。なお、この使用量は、濃縮ゲルと分離ゲルとを作製する場合には、該複合体を含ませる一方のゲル(好ましくは分離ゲル)を作製する際の量である。
本発明においては、上記ゲルを被検試料存在下で電気泳動する。電気泳動は酵素反応が進行せず、かつ、失活しない条件であれば、特に限定されず、ザイモグラフィー法における電気泳動に準じて行うことができる。電気泳動用の緩衝液としてはザイモグラフィー法の電気泳動において使用される一般的な緩衝液を使用できる。
電気泳動後、必要に応じてゲルを再生用緩衝液(洗浄用緩衝液)で洗浄する。SDSが存在する場合はこれにより除去される。この緩衝液としてはザイモグラフィー法にて一般に再生用(洗浄用)として使用されている緩衝液を使用できる。
次いで、ゲルは工程(b)においてインキュベーションされる。つまり、電気泳動後のゲルを酵素反応条件におき酵素反応を進行できる状態とすればよい。例えば、酵素の検出を目的とする場合にあっては、電気泳動後のゲルを緩衝液に酵素反応可能な条件下で浸すことによってインキュベーションでき、阻害物質の検出を目的とする場合にあっては、例えば、電気泳動後のゲルを酵素を含有する緩衝液に酵素反応可能な条件で浸すことでインキュベーションできるが、これらに限定されない。酵素反応条件は、酵素の種類、基質の種類等に応じて、緩衝液の種類、pH、温度、反応時間などを決めることができる。この緩衝液としてはザイモグラフィー法にて一般に酵素反応用(例えば、インキュベーション用)として使用されている緩衝液を使用できる。また、この緩衝液には酵素に応じた補因子を添加してもよく、これにより酵素反応を促進できる。
酵素反応後、プロテアーゼ(例えば、アクチナーゼE、トリプシン、ペプシン)で処理して、ゲル内のタンパク質成分を除去してもよい。タンパク質は、その分量や種類などによって染色を抑制し、偽陽性を呈することがありえ、そのような場合はプロテアーゼ処理が有用である。プロテアーゼ処理は、例えば、プロテアーゼを含むリン酸緩衝液にゲルを浸すことで行うことができる。
次いで、ゲルは工程(c)において染色剤で染色処理される。染色剤は、基質(グリコサミノグリカン複合体)及び酵素分解産物(グリコサミノグリカン)に応じて適宜選択される。つまり、染色剤は、基質と反応してゲルを染色し、かつ、酵素分解産物では染色しない性質を備えたものであればよい。染色剤は、例えばアルシアンブルー、Stains Allを使用でき、好ましくはアルシアンブルーである。アルシアンブルーは、グリコサミノグリカンのカルボキシル基及び硫酸基と反応するが、pHが低いとき(pHが1.0以下)はカルボキシル基と反応せず、硫酸基のみと反応するので、染色液のpHを1.0以下とすることによって選択的に硫酸基を含むグリコサミノグリカンのみを染色することもできる。染色処理は、例えば、ゲルを染色液に浸すことで行うことができる。染色処理における、染色剤の濃度、染色液のpH、染色処理の温度、染色処理の時間などの条件は、染色液の種類、被染色物(基質又は酵素分解産物)の種類などに応じて適宜選択すればよい。
染色処理後のゲルは洗浄されて、ゲルから染色液が除去されてもよい。この際の洗浄液は、例えば、染色液から染色剤を除いた液とすることができる。
グリコサミノグリカン分解酵素を検出する方法では、染色処理後のゲルにおける非染色部分の存在によって酵素活性を検出できる。
一方、グリコサミノグリカン分解酵素の阻害物質を検出する方法では、染色処理後のゲルにおける染色部分の存在によって酵素阻害活性を検出できる。
なお、非染色部分とは染色剤で所定の色に染色されなかった部分をいう。
<グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出するためのゲル>
本発明の一実施形態は、グリコサミノグリカン複合体を基質として含有する、電気泳動を使用してグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出するためのゲル、である(以下、単に本発明のゲルと称することがある)。
本発明のゲルは、例えば、本発明の検出方法や、ザイモグラフィー法によりグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出するために使用できる。本発明のゲルには上記本発明の検出方法におけるゲルに関する説明が適用される。
<グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質の検出用キット>
本発明の一実施形態は、本発明のゲルを含む、グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質の検出用キット、である(以下、単に本発明のキットと称することがある)。本発明のキットは、本発明のゲルの他に、緩衝液、洗浄液、染色液、pH調整剤、エタノール、使用説明書など、電気泳動用キット又はザイモグラフィー用キットに必要な他の任意の構成要素を適宜含めることができる。
本発明によれば、ザイモグラフィー法において、グリコサミノグリカン分解酵素又はその阻害物質を簡便に高感度で検出できる。
以下、実施例等を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに示された態様に限定されるものではない。また、実施例等において使用したプロテオグリカン、酵素等は以下のとおりである。
プロテオグリカンとして、サケ鼻軟骨プロテオグリカン(富士フイルム和光純薬株式会社;分子量分布の最頻値は540kDa)を使用し、これを水に10mg/mlで溶解した水溶液を分離ゲル作製に使用した。
ゼラチンとして、ナカライテスク株式会社製のゼラチンを使用した。
コンドロイチナーゼとして、コンドロイチナーゼABC(Proteus vulgaris由来酵素、Sigma-Aldrichから入手可能)を使用した。
ヒアルロニダーゼとして、ウシ精巣ヒアルロニダーゼ(Sigma-Aldrichから入手可能)を使用した。
30%アクリルアミドストック溶液として、29gのアクリルアミド及び1gのN’,N’−メチレンビスアクリルアミドを純水100mlに溶解したものを使用した。
アルシアンブルー染色液(pH1.0)として、0.5%アルシアンブルー、20%エタノール及び10%酢酸の組成で調製したものを使用した。塩基性色素であるアルシアンブルーは、酸性ムコ物質のカルボキシル基及び/又は硫酸基とイオン結合して青色へ変色する。アルシアンブルー染色液中のpHが2.5では両基に、pH1.0以下の溶液中では硫酸基にのみ結合する。
クマシーブルー染色液として、0.25%クマシーブリリアントブルー R-250、5%エタノール及び7.5%酢酸の組成で調製したものを使用した。クマシーブリリアントブルーは、酸性バッファー条件下において、タンパク質の塩基性又は疎水性残基に結合し、鈍い赤褐色から濃い青色へと変色する。
電気泳動バッファーとして、25mM Tris-HCl(pH8.3)、192mMグリシン及び0.1%SDSの組成で調製したものを用いた。
洗浄液として、20%エタノール及び10%酢酸の組成の水溶液を使用した。
(実施例1)
プロテオグリカン又はゼラチンを含有するポリアクリルアミドゲル
常法に従って、表1及び表2に示す材料から、プロテオグリカンを1mg/mlで含む分離ゲルとこれを含まない濃縮ゲル(ともに7.5%SDS−ポリアクリルアミドゲル;90mm×80mm×1mmサイズ)を作製し、分離ゲルに濃縮ゲルを重層した。
重層したゲルを電気泳動(4℃、20mA、100分間)した後、電気泳動済みゲルを再生用緩衝液(2.5% Triton X-100、50mM Tris-HCl(pH7.5)及び100mM NaCl)に浸し室温で1時間緩やかに振とうして、SDSを除去した。その後、このゲルを、アルシアンブルー染色液又はクマシーブルー染色液に室温で2時間浸し、染色した。洗浄液で洗浄して余剰な染色液を取り除いた。ゲルの染色の様子を図1に示す。
対照として、プロテオグリカンに代えてゼラチンを1mg/mlで使用した分離ゲルを用い、同様に電気泳動、染色及び洗浄した。ゲルの染色の様子を図1に示す。
図1からは、アルシアンブルー染色によって、プロテオグリカン含有ゲルが均一に濃い青色で染色され、プロテオグリカン中のコンドロイチン硫酸が検出されたことがわかる。クマシーブルー染色では、ゼラチン含有ゲルが紫色に染色されたのに対し、プロテオグリカン含有ゲルは染色されず、該ゲル中のタンパク質の量が少ないことがわかる。
(実施例2)
コンドロイチナーゼ活性の検出
分離ゲルにおけるプロテオグリカン濃度を0.1mg/ml又は0.5mg/mlに代えた以外は実施例1と同様にして、分離ゲルと濃縮ゲルを作製し重層した。所定量のコンドロイチナーゼをSDSサンプル緩衝液(62.5mM Tris-HCl(pH6.8)、2%SDS及び5%ショ糖)に希釈したサンプル液を作製した。1アプライ当たりのコンドロイチナーゼ量(mU)は第1レーンから順に次のとおりである。
10、5、2.5、1.25、0.63、0.31、0.16、0.08、0.04、0.02(mU)
なお、コンドロイチナーゼの1ユニットは、pH8.0、37℃で1分間に、コンドロイチン硫酸Aから1.0μmolの2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エン-ピラノシルウロン酸)-4-O-スルホ-D-ガラクトースを、又は、コンドロイチン硫酸Cから1.0μmolの2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エン-ピラノシルウロン酸)-6-O-スルホ-D-ガラクトースを遊離させる酵素量である。
濃縮ゲルにレーンを作製し、各々のレーンに10μlのサンプル液をアプライした後、実施例1と同様にして電気泳動処理及び再生用緩衝液処理した。次いで、ゲルをインキュベーション用緩衝液(50mM Tris-HCl(pH7.5)及び60mM 酢酸ナトリウム)に浸して37℃で16時間振とうした。次いで、ゲルを、0.1mg/mlアクチナーゼE(科研製薬製)を含むリン酸緩衝液に浸して37℃で4時間振とうした。次いで、実施例1と同様にしてアルシアンブルー染色及び洗浄を行った。ゲルの染色の様子を図2に示す。
図2において青色に染色された部分はプロテオグリカン中のコンドロイチン硫酸が検出されたことを意味し、青色に染色されなかった部分は、コンドロイチン硫酸が検出されなかったことを意味する。したがって、非染色部分の存在によって、プロテオグリカン中のコンドロイチン硫酸がコンドロイチナーゼによって分解されたことが確認できる。また、非染色部分は、コンドロイチナーゼの量に依存して見られた。
プロテオグリカン濃度0.1mg/mlのゲル及び0.5mg/mlのゲルの双方において、第1レーン〜第8レーンにおいて非染色バンドが目視で確認できたことから、コンドロイチナーゼの活性の検出限界量は0.08mUであった。プロテオグリカン濃度0.5mg/mlのゲルでは高濃度のコンドロイチナーゼの活性が明瞭に検出された。また、画像処理ソフトウェアのImageJによる染色結果の解析においても第1レーン〜第8レーンにおいて非染色バンドの存在が確認できた。さらに、ImageJの解析では、コンドロイチナーゼの濃度とバンド(非染色部分)の光学密度との間の相関において直線性(正比例)が認められたことから、被検試料内に含有される酵素量を相対的に定量し得ることが確認された。例えば、酵素標準品を用いて検量線を作成しておけば被検試料中の酵素量の定量が可能となる。
(実施例3)
ヒアルロニダーゼ活性の検出
実施例1と同様にして、プロテオグリカンを0.1mg/mlで含む分離ゲルと濃縮ゲルを作製し重層した。所定量のヒアルロニダーゼ(Sigma-Aldrichから入手可能)をSDSサンプル緩衝液(62.5mM Tris-HCl(pH6.8)、2%SDS、5%ショ糖及び0.005%ブロモフェノールブルー)に希釈したサンプル液を作製した。1アプライ当たりのヒアルロニダーゼ量(ng)は第1レーンから順に次のとおりである。
500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8、3.9、2.0、1.0(ng)
なお、ヒアルロニダーゼの1ユニットは、2.0mL反応混液(pH5.7、37℃)においてA660値を0.330/分の速度で変化させる酵素量である。
重層したゲルとヒアルロニダーゼを含むサンプル液で実施例2と同様にして、電気泳動し、再生用緩衝液処理した。次いで、ゲルをインキュベーション用緩衝液(150mM NaCl及び100mM 酢酸ナトリウム;pH5.0又はpH7.0)に浸して37℃で16時間振とうした。次いで、ゲルを、1.0mg/mlアクチナーゼE(科研製薬製)を含むリン酸緩衝液に浸して37℃で4時間振とうした。次いで、実施例2と同様にしてアルシアンブルー染色及び洗浄を行った。ゲルの染色の様子を図3に示す。
図3において青色に染色された部分はプロテオグリカン中のコンドロイチン硫酸が検出されたことを意味し、青色に染色されなかった部分は、コンドロイチン硫酸が検出されなかったことを意味する。したがって、非染色部分の存在によって、プロテオグリカン中のコンドロイチン硫酸がヒアルロニダーゼによって分解されたことが確認できる。また、非染色部分は、ヒアルロニダーゼの量に依存して見られた。
酵素反応がpH5.0条件のゲル(図3上図)とpH7.0条件のゲル(図3下図)の双方において、第1レーン〜第8レーンにおいて非染色バンドが目視で確認でき、ヒアルロニダーゼの活性の検出限界量は3.9ng(第8レーン)であった。
また、画像処理ソフトウェアImageJによる染色結果の解析においては、pH5.0条件のゲルについて第1レーン〜第7レーンまで、pH7.0条件のゲルについて第1レーン〜第10レーンまで、非染色バンドの存在が確認できた。さらに、ImageJの解析では、ヒアルロニダーゼの濃度とバンド(非染色部分)の光学密度との間の相関において概ね直線性(正比例)が認められたことから、被検試料内に含有される酵素量を相対的に定量し得ることが確認された。例えば、酵素標準品を用いて検量線を作成しておけば被検試料中の酵素量の定量が可能となる
(実施例4)
反応液のpHによる影響(コンドロイチナーゼ)
実施例1と同様にして、プロテオグリカンを0.1mg/mlで含む分離ゲルと濃縮ゲルを作製し重層した。2mUのコンドロイチナーゼ又は100ngのヒアルロニダーゼをSDSサンプル緩衝液(62.5mM Tris-HCl(pH6.8)、2%SDS、5%ショ糖及び0.005%ブロモフェノールブルー)に希釈したサンプル液を作製した。
重層したゲルとコンドロイチナーゼを含むサンプル液で実施例2と同様にして、電気泳動し、再生用緩衝液処理した。次いで、ゲルをインキュベーション用緩衝液(60mM NaCl及び50mM クエン酸ナトリウム(pH3.5、pH5.0、pH6.0)、又60mM NaCl及びTris-HCl(pH7.5))に浸して37℃で16時間振とうした。次いで、ゲルを、1.0mg/mlアクチナーゼE(科研製薬製)を含むリン酸緩衝液に浸して37℃で4時間振とうした。次いで、実施例2と同様にしてアルシアンブルー染色及び洗浄を行った。ゲルの染色の様子を図4に示す。
図4中、pH5.0条件のゲル、pH6.0条件のゲル及びpH7.5条件のゲルにおいて、非染色バンドが目視できたことから、コンドロイチナーゼの活性及びヒアルロニダーゼの活性が検出され、一方、pH3.5条件のゲルでは非染色部分が目視できなかった。また、画像処理ソフトウェアImageJによる染色結果の解析においても同様であった。この結果、試験された酵素はpH3.5条件ではコンドロイチン硫酸を分解しないと判断された。
(実施例5)
阻害物質の検出モデル(リバースザイモグラフィーへの適用)
実施例2と同様にして、プロテオグリカンを0.1mg/mlで含む分離ゲルと濃縮ゲルを作製し重層し、電気泳動し、再生用緩衝液処理した。次いで、ゲルを、ヒアルロニダーゼを0.5mg/mlで含み、150mM NaCl、50mM Tris-HCl(pH7.5)及び1mM MgCl2のインキュベーション用緩衝液に浸し、37℃で16時間振とうした。次いで、ゲルを、1.0mg/mlアクチナーゼE(科研製薬製)を含むリン酸緩衝液に浸して37℃で4時間振とうした。次いで、実施例2と同様にしてアルシアンブルー染色及び洗浄を行った。ヒアルロニダーゼを含まないこと以外は同じ用緩衝液を使用した場合についても同様に染色及び洗浄を行った。ゲルの染色の様子を図5に示す。
図5において青色に染色された部分はプロテオグリカン中のコンドロイチン硫酸が検出されたことを意味し、青色に染色されなかった部分はコンドロイチン硫酸が検出されなかったことを意味する。したがって、ヒアルロニダーゼ含有緩衝液に浸されたゲルではゲル中のプロテオグリカンに含まれるコンドロイチン硫酸が酵素によってほぼ完全に分解され、ヒアルロニダーゼを含有しない緩衝液に浸されたゲルではゲル中のプロテオグリカンに含まれるコンドロイチン硫酸が酵素によって分解されなかったことを確認できた。
そうすると、コンドロイチナーゼやヒアルロニダーゼ等の酵素の阻害物質を含む被検試料をアプライしたゲルを電気泳動した場合、該酵素を含有するインキュベーション用緩衝液に電気泳動したゲルを浸すことによって、酵素活性が阻害されてコンドロイチン硫酸が分解されず、したがって染色処理によってコンドロイチン硫酸が染色されて、阻害活性を検出できることが確認できることとなる。

Claims (8)

  1. 被検試料中のグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出する方法であって、以下の工程:
    (a)グリコサミノグリカン複合体を基質として含有した電気泳動用ゲルを被検試料存在下で電気泳動する工程、
    (b)電気泳動後のゲルをインキュベーションする工程、及び
    (c)インキュベーション後のゲルを染色剤で処理する工程
    を含む方法。
  2. グリコサミノグリカン複合体がプロテオグリカンである請求項1に記載の方法。
  3. プロテオグリカンがサケ鼻軟骨プロテオグリカンである請求項2に記載の方法。
  4. 染色剤がアルシアンブルーである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. グリコサミノグリカン複合体を基質として含有する、電気泳動を使用してグリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質を検出するためのゲル。
  6. グリコサミノグリカン複合体がプロテオグリカンである請求項5に記載のゲル。
  7. プロテオグリカンがサケ鼻軟骨プロテオグリカンである請求項6に記載のゲル。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載のゲルを含む、グリコサミノグリカン分解酵素又は該酵素の阻害物質の検出用キット。
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