JP2020027225A - 光学素子、光学機器および光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】使用環境における吸水による光学性能の低下を抑制した光学素子を提供する。【解決手段】第1の基材11と、第1の基材11の上に樹脂12と、樹脂12の上に第2の基材13とを有する光学素子であって、樹脂12は、光学有効部15と光学有効部15の外周に位置する非光学有効部16とを有し、光学有効部15の弾性率に対する非光学有効部16の弾性率の比が、1.01以上1.19以下である。【選択図】図1
Description
本発明は、カメラ等の光学機器に使用される光学素子、および光学素子の製造方法に関するものである。
カメラやビデオ、またその他の光学機器の光学系には、基材(基板)と、光硬化樹脂または熱硬化性樹脂と、もう1つの基材が光軸方向に順に積層する構造を有する光学素子が広く用いられている。そのような光学素子について様々な製法が提案されているが、例えば特許文献1には、光硬化型接着剤を硬化する際に、基材外周面で光硬化型樹脂剤が垂れるのを防ぐための接着硬化装置が開示されている。特許文献1に記載された接着硬化装置では、2つの基材間に介在した光硬化性樹脂剤に光線を照射する光源を設け、この光線により光硬化型接着剤を硬化して2つの基材を接着する。さらに、光源から少なくとも基材の外周面の外方向へ放射状に拡がる光線を反射し、2つの基材の外周面接合部に照射する反射部材を設けている。これにより、基材外周面で光硬化型樹脂剤が垂れるのを防ぐことが記載されている。
しかしながら、上記特許文献1に記載のような従来の製造方法で製造された光学素子では、その光学素子を有する光学機器の使用環境において光学性能が低下するという課題があった。
具体的には、使用環境において、光学素子が有する樹脂が使用環境の雰囲気の水蒸気を吸水する。樹脂は、吸水することで膨張する。吸水により膨張した樹脂は、樹脂と接する基材を押し上げて変形させる。特に、基材が凹形状を有する場合、凹形状の中央付近は薄く、基材の機械的強度が低い。そのため、樹脂の吸水膨張による、基材の変形が顕著である。さらに、樹脂は、吸水することでその屈折率が変化する。吸水によって屈折率が高くなるか低くなるかは、吸水前の光硬化樹脂の屈折率によって異なるが、一般的に水の屈折率1.33に近づくように屈折率は変化する。
使用環境における樹脂の吸水は、雰囲気と接する基材の外周から基材中心に向かって不均一に進行する。これにともなって生じる、先に述べた樹脂の膨張による基材の変形および樹脂の屈折率の変化によって、光学素子の光学性能が低下する。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、使用環境における吸水による光学性能の低下を抑制した光学素子を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る光学素子は、第1の基材と、該第1の基材の上に樹脂と、該樹脂の上に第2の基材とを有する光学素子であって、該樹脂は、光学有効部と該光学有効部の外周に位置する非光学有効部とを有し、該光学有効部の弾性率に対する該非光学有効部の弾性率の比が、1.01以上1.19以下である、ことを特徴とする。
また、本発明の別の態様に係る光学機器は、少なくとも1つの光学素子を有する光学機器であって、該光学素子が本発明の一態様に係る光学素子である。
さらに、本発明の別の態様に係る光学素子の製造方法は、第1の基材と、未硬化の樹脂と、第2の基材と、をこの順に積層する工程と、該未硬化の樹脂を、光学有効部の弾性率に対する非光学有効部の弾性率の比が、1.01以上1.19以下となるように硬化し、該光学有効部の外周に該非光学有効部を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の一態様によれば、使用環境における吸水による光学性能の低下を抑制した光学素子が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、上記光学素子を有する光学機器が提供される。
さらに、本発明の別の態様によれば、上記光学素子の製造方法が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、上記光学素子を有する光学機器が提供される。
さらに、本発明の別の態様によれば、上記光学素子の製造方法が提供される。
本発明の一態様に係る光学素子について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の一態様に係る光学素子を説明する上面図と断面図である。
図1は、本発明の一態様に係る光学素子を説明する上面図と断面図である。
本発明の一態様に係る光学素子10は、第1の基材11と、第1の基材11の上に樹脂12と、樹脂12の上に第2の基材13とを有する。第1の基材11、樹脂12および第2の基材13は光軸Oの方向に順に積層された構造となっている。
第1の基材11および第2の基材13としては、平面や球面、非球面の凹凸形状等、通常の光学機器に用いられる形状を有するものを用いることができる。
第1の基材11および第2の基材13は、ガラスや樹脂から構成されており、好ましくはガラスである。また、第1の基材11および第2の基材13の表面には、反射防止膜や樹脂12との密着性を向上させる薄膜等が形成されていても良い。
樹脂12は、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂であり、所望の光学特性と良好な成形性が得られるように、適切な屈折率、透過率、粘度、硬化収縮率等の材料特性を有するものを選択して用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂等が挙げられ、光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂およびフッ素樹脂等が挙げられる。
樹脂12は、第1の基材11および第2の基材13が樹脂12と接する面14を、第1の基材11および第2の基材13の径の小さいどちらか一方の基材外周まで覆っている。樹脂12は、光学有効部15と該光学有効部15の外周に位置する非光学有効部16とを有する。非光学有効部16は、光学素子10の外周を取り巻くように環状に構成されている。光学有効部15は、光学素子10を通して利用する光が透過する領域であり、非光学有効部16は光学有効部15の外周から光学素子10を成す第1の基材11または第2の基材13の径の小さいどちらか一方の基材外周までの領域である。
本発明において、光学素子10が有する樹脂12の、非光学有効部16は、光学有効部15よりも高い弾性率を有する。すなわち、樹脂12における、光学有効部15の弾性率に対する非光学有効部16の弾性率の比は、1.01以上1.19以下である。さらに、光学有効部15の弾性率に対する非光学有効部16の弾性率の比は、1.05以上1.19以下であることが好ましい。
本発明において、上記のように非光学有効部16が光学有効部15よりも高い弾性率を有することで、本発明の一態様に係る光学素子10が使用環境における吸水による光学性能の低下を抑制できる理由は、次のように考えられる。
本発明において、上記のように非光学有効部16が光学有効部15よりも高い弾性率を有することで、本発明の一態様に係る光学素子10が使用環境における吸水による光学性能の低下を抑制できる理由は、次のように考えられる。
光学素子10に用いられる樹脂12は、光または熱を加えることで樹脂12の重合架橋が開始されて、その硬化反応が進行する。硬化反応の進行に伴って樹脂12の形態は液状から固形に変化し、樹脂12の弾性率は硬化反応が進むほど高くなる。一方で、樹脂12は、硬化反応の進行に伴って架橋重合が緻密となり、吸水性が低下する。つまり樹脂12の硬化反応において、弾性率が高くなるほど吸水性が低下する。
本発明においては、非光学有効部16は、光学有効部15よりも高い弾性率を有する。すなわち、非光学有効部16は、光学有効部15よりも低い吸水性を有する。非光学有効部16は、光学素子10の外周に環状に構成されているので、その低い吸水性により光学素子10の外周に渡って水の侵入を抑制できる。これにより、樹脂12の吸水に伴う屈折率の変化と、樹脂12の吸水膨張による第1の基材11および第2の基材13の変形が抑制される。
さらに、光学有効部15へ水が浸入したときには、光学有効部15の吸水膨張による第1の基材11および第2の基材13の変形が、光学素子10の外周に環状に構成されている高い弾性率を有する非光学有効部16によって抑制される。
以上により、本発明の一態様に係る光学素子10では、使用環境における吸水による光学性能の低下が抑制されると考えられる。
樹脂12は、硬化反応が十分に進み、完全硬化に至ると、それ以上光または熱を加えても硬化反応が進まなくなり、樹脂12の弾性率も一定値に収束する。樹脂12は、例えば光硬化性樹脂の場合、紫外線の照射によって樹脂12の硬化反応が進む一方で、樹脂12を構成する分子の、結合の切断も同時に生じる。そのため、完全硬化に至るまで大量の紫外線を照射すると、紫外線の照射による樹脂12の劣化が顕著となる。
樹脂12が紫外線照射により劣化した状態では、分子結合の切断によって樹脂12の緻密な重合架橋構造が壊れているため、樹脂12中への水分子の侵入が容易となる。つまり、樹脂12の硬化反応に伴って弾性率が高くなると、始めは樹脂12の吸水性は低くなるが、完全硬化に近くなると、吸水性は逆に高くなる。
本発明においては、樹脂12の完全硬化後の弾性率に対する、樹脂12の非光学有効部16の弾性率の比が、0.95以上0.99以下であり、樹脂12の完全硬化後の弾性率に対する、樹脂12の光学有効部15の弾性率の比が、0.80以上0.94以下であることが好ましい。
樹脂12の完全硬化後の弾性率に対する、樹脂12の非光学有効部16の弾性率の比が、0.95以上であることで、雰囲気中の水分の浸入を効果的に抑制することができる。また、樹脂12の完全硬化後の弾性率に対する、樹脂12の非光学有効部16の弾性率の比が、0.99以下であることで、樹脂12の劣化による吸水性の上昇を抑制することができる。
特には、樹脂12の非光学有効部16の弾性率は、3GPa以上であることが好ましい。樹脂12の弾性率は、その雰囲気温度によっても変化するが、上記の値は雰囲気温度23℃で測定される値である。樹脂12の弾性率は、レオメータやナノインデンターを用いて測定することができる。
本発明においては、樹脂12の光学有効部15の硬化反応率が75%以上94%未満であり、樹脂12の非光学有効部16の硬化反応率が94%以上99%以下であることが好ましい。樹脂12の非光学有効部16の硬化反応率が94%以上であれば、雰囲気中の水分の浸入を効果的に抑制することができ、99%以下であれば樹脂12の劣化による吸水性の上昇を抑制することができる。また、樹脂12の光学有効部15の硬化反応率が75%以上であれば、樹脂のある程度の重合架橋構造が形成されて光学有効部15における吸水膨張を抑制することができる。また、94%未満であればレンズ径方向の吸水膨張の差を緩和して光学素子の局所的な変形を抑制できる。
さらに、樹脂12は、無機微粒子を含有することが好ましい。無機微粒子を含有することで樹脂12の吸水性が低くなり、本発明の効果を高く得ることができる。また、樹脂12は、無機微粒子を含有することでその弾性率が高くなる。これにより、高い弾性率を有する非光学有効部16による、光学有効部15の吸水膨張に伴う第1の基材11および第2の基材13の変形を抑制する効果を高く得ることができる。
無機微粒子としては、ZrO2、SiO2、TiO2およびITO等の無機化合物の微粒子を用いることができる。
樹脂12に含有する無機微粒子の粒径は、5nm以上100nm以下であることが好ましい。無機微粒子の粒径が5nm以上であれば、樹脂中への吸水性を低下させて弾性率を高めることができる。無機微粒子の粒径が100nm以下であれば、透過率が良好な光学素子を製造することができる。無機微粒子の粒径が100nmを超える場合、微粒子からの散乱光が増えて、光学素子の透過率が低下してしまう。また、樹脂12に含有する無機微粒子の重量含有率は、1%以上30%以下であることが好ましい。無機微粒子の重量含有率が1%以上であれば、樹脂中への吸水性を低下させて弾性率を高めることができる。無機微粒子の重量含有率が30%以下であれば、透過率が良好な光学素子を製造することができる。無機微粒子の重量含有率が30%を超える場合、微粒子からの散乱光が増えて、光学素子の透過率が低下してしまう。
樹脂12に含有する無機微粒子の粒径は、5nm以上100nm以下であることが好ましい。無機微粒子の粒径が5nm以上であれば、樹脂中への吸水性を低下させて弾性率を高めることができる。無機微粒子の粒径が100nm以下であれば、透過率が良好な光学素子を製造することができる。無機微粒子の粒径が100nmを超える場合、微粒子からの散乱光が増えて、光学素子の透過率が低下してしまう。また、樹脂12に含有する無機微粒子の重量含有率は、1%以上30%以下であることが好ましい。無機微粒子の重量含有率が1%以上であれば、樹脂中への吸水性を低下させて弾性率を高めることができる。無機微粒子の重量含有率が30%以下であれば、透過率が良好な光学素子を製造することができる。無機微粒子の重量含有率が30%を超える場合、微粒子からの散乱光が増えて、光学素子の透過率が低下してしまう。
第1の基材11の、樹脂12と接する面14が凸形状の球面であり、第2の基材13の、樹脂12と接する面14が凹形状の球面である場合を考える。このとき、第1の基材11の凸形状の球面の有する曲率半径の絶対値を|r1|、第2の基材13の凹形状の球面の有する曲率半径の絶対値を|r2|としたとき、|r1|≧|r2|であることが好ましい。これにより非光学有効部16の樹脂12の体積を小さくし、非光学有効部16からの吸水を抑制して、吸水膨張に伴う第1の基材11および第2の基材13の変形を抑制することができる。
本発明において、樹脂12の非光学有効部16の領域の大きさは、光学素子10の使用される態様に合わせて適宜設計することができるが、具体的には、樹脂12の非光学有効部16の外周方向の長さは0.5mm以上3.5mm以下であることが好ましい。また、好ましくは第1の基材11および第2の基材13の径の小さいどちらか一方の、光軸Oに垂直な方向の投影形状が円形であり、光学有効部15の外周方向の長さに対する非光学有効部16の外周方向の長さの比が、1/19以上7/50以下である。ここで、光学有効部15の外周方向の長さとは、光学有効部15と非光学有効部16の境界面から光学有効部15の中心までの長さである。また、非光学有効部16の外周方向の長さとは、非光学有効部16の、光学素子10を成す2つの基材の内、径の小さい基材の外周に対応する点から、光学有効部15と非光学有効部16の境界の接線に垂直に引いた線の長さである。
光学有効部15の外周方向の長さに対する非光学有効部16の外周方向の長さの比が、1/19以上であることで、光学有効部15の吸水膨張に伴う第1の基材11および第2の基材13の変形を抑制する効果を高く得ることができる。また、光学有効部15の外周方向に対する非光学有効部16の外周方向の長さの比が7/50以下であることで、光学素子10のサイズが大きくなりすぎず、また光学有効部15の領域を十分に確保することができる。
なお、光学素子10は、図3に示すように第1の基材11または第2の基材13の、樹脂12と接する面14の上に、回折格子形成樹脂17を有していてもよい。このとき、回折格子形成樹脂17は、光学有効部15よりも大きい領域を有しても良いが、回折格子形成樹脂17の、非光学有効部16と接する領域は可能な限り小さいことが好ましい。
なお、図1および図3では、光学有効部15と非光学有効部16が同じ樹脂12からなる例を示したが、光学有効部15と非光学有効部16は異なる樹脂で構成されていてもよい。
(光学素子の製造方法)
本発明の別の態様に係る光学素子の製造方法は、第1の基材と、未硬化の樹脂と、第2の基材と、をこの順に積層する工程と、該未硬化の樹脂を、光学有効部の弾性率に対する非光学有効部の弾性率の比が、1.01以上1.19以下となるように硬化し、該光学有効部の外周に該非光学有効部を形成する工程と、を有する。
本発明の別の態様に係る光学素子の製造方法は、第1の基材と、未硬化の樹脂と、第2の基材と、をこの順に積層する工程と、該未硬化の樹脂を、光学有効部の弾性率に対する非光学有効部の弾性率の比が、1.01以上1.19以下となるように硬化し、該光学有効部の外周に該非光学有効部を形成する工程と、を有する。
以下、本発明の別の態様に係る光学素子の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の別の態様に係る光学素子の製造方法を説明するための断面図である。
始めに、図2(a)に示すように、第1の基材11上に、適量の未硬化の樹脂12を乗せる。未硬化の樹脂12は、例えばディスペンサーによって滴下することにより第1の基材11上に乗せることができる。次に、図2(b)に示すように、第2の基材13に対して図2(b)に示す矢印の向きに力をかけ、未硬化の樹脂12を第1の基材11に対して押し付けるようにして、第1の基材11と第2の基材13との間に所望の厚さとなるまで拡げる。このとき、未硬化の樹脂12を同心円状に拡げるため、第1の基材11または第2の基材13を光軸周りに回転させても良い。
これにより、第1の基材11と、未硬化の樹脂12と、第2の基材13と、をこの順に積層することができる。未硬化の樹脂12は、所望の厚さとなるまで押し広げたときに、第1の基材11および第2の基材13の外周まで拡がるのに十分な量を用いる。
続いて、図2(c)に示すように、未硬化の樹脂12に対して光または熱等のエネルギー18を与え、光学有効部15の弾性率に対する非光学有効部16の弾性率の比が、1.01以上1.19以下となるように未硬化の樹脂12を硬化し、光学有効部の外周に非光学有効部を形成する。
光学有効部15および非光学有効部16の弾性率が上記関係を有するように樹脂12を硬化させる方法としては、例えば、非光学有効部16において光学有効部15と比較してより硬化反応が進むように硬化させる方法が挙げられる。
具体的には、例えば、樹脂12が光硬化性樹脂である場合は、始めに未硬化の樹脂12全体に光を照射して1次硬化させる。続いて、第1の基材11または第2の基材13が光学有効部15と接する部分を遮光板で覆い、非光学有効部16にのみさらに光を照射して樹脂12の非光学有効部16を2次硬化させる方法が挙げられる。なお、光を照射して樹脂12を硬化させる際には、雰囲気を窒素等の不活性ガスで満たす、または真空しても良い。
また、光学有効部15に照射する光の光源と、非光学有効部16に照射する光の光源を別に用意し、樹脂12の光学有効部15と非光学有効部16を独立に硬化させてもよい。各光源の種類、光強度および照射時間等の条件を、光学有効部15と非光学有効部16とで個別に適宜設計することで、非光学有効部16において光学有効部15と比較してより硬化反応が進むように硬化させることができる。
このとき、例えば、第1の基材11または第2の基材13の光が照射される面のうち、光学有効部15に入射する光が照射される部分と、光学有効部15に照射する光の光源とを含んで遮光部材で覆う。これにより、光学有効部15を非光学有効部16から独立して硬化させることができる。また、遮光部材の外側において非光学有効部16に照射する光の光源を用いて非光学有効部16を、光学有効部15から独立して硬化させることができる。
樹脂12が、熱硬化性樹脂である場合は、例えば、始めに樹脂12全体を加熱して1次硬化させる。続いて、基材に当接させて樹脂を加熱するような加熱部材を用い、第1の基材11または第2の基材13の、非光学有効部16と接する部分に、前記加熱部材を当接させ、樹脂12の非光学有効部16のみを加熱硬化させる。これにより、非光学有効部16において光学有効部15と比較してより硬化反応が進むように硬化させることができる。
また、光学有効部15を加熱硬化させるための加熱部材と、非光学有効部16を加熱硬化させるための加熱部材とを個別に用意してもよい。例えば、始めに、光学有効部15を加熱硬化させるための加熱部材と、非光学有効部16を加熱硬化させるための加熱部材との間に断熱材を設ける。次に、非光学有効部16を加熱硬化させるための加熱部材の温度を、光学有効部15を加熱硬化させるための加熱部材の温度よりも高くなるように各加熱部材を加熱する。その後、各加熱部材を第1の基材11または第2の基材13に当接させることで、非光学有効部16において光学有効部15と比較してより硬化反応が進むように硬化させることができる。
(光学機器)
次に本発明の別の態様に係る光学機器について図4を参照して説明する。本発明の別の態様に係る光学機器は、少なくとも1つの光学素子を有する光学機器であって、該光学素子が本発明の一態様に係る光学素子である光学機器である。本発明の別の態様に係る光学機器は、光学素子を有する望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、カメラ、内視鏡等に用いることができる。
次に本発明の別の態様に係る光学機器について図4を参照して説明する。本発明の別の態様に係る光学機器は、少なくとも1つの光学素子を有する光学機器であって、該光学素子が本発明の一態様に係る光学素子である光学機器である。本発明の別の態様に係る光学機器は、光学素子を有する望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、カメラ、内視鏡等に用いることができる。
図4は、本発明の別の態様に係る光学機器の好適な実施形態の一例を示す断面図である。図4で示す光学機器は、具体的には一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒である。
レンズ鏡筒30の光学系は、筐体29の内部において、レンズ21〜28および光学素子20が光軸Oに対して垂直に配列されている。図4の左側がレンズ鏡筒30の表面であり、図4の右側がカメラとの着脱マウント側である。
本発明一態様に係る光学素子20を光学系の適切な位置に配置させることにより、高精細で高品位な画像を撮像できるレンズ鏡筒を提供することができる。
<光学素子の作製>
(実施例1)
第1の基材11として、直径35mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ1という)を用いた。レンズ1の樹脂12と接する面14は凸面で曲率半径130.0mmである。また、第2の基材13として、直径35mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ2という)を用いた。レンズ2の樹脂12と接する面14は凹面で曲率半径130.0mmである。
(実施例1)
第1の基材11として、直径35mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ1という)を用いた。レンズ1の樹脂12と接する面14は凸面で曲率半径130.0mmである。また、第2の基材13として、直径35mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ2という)を用いた。レンズ2の樹脂12と接する面14は凹面で曲率半径130.0mmである。
樹脂12としては、無色透明な硫黄含有アクリル樹脂(UV1000、三菱化学株式会社製)から成る光硬化性樹脂(以下光硬化性樹脂1という)を用いた。
始めに、レンズ1およびレンズ2の、光硬化性樹脂1と接する面14に、光硬化性樹脂1との密着を強くするためのシランカップリング処理をおこなった。具体的には、溶媒で数%に希釈したシランカップリング剤をレンズ1およびレンズ2の面14にスプレーで塗布して、これを100℃のオーブンで1時間乾燥させて、面14上にカップリング層を形成した。
続いて、レンズ1上に、ディスペンサーを用い、未硬化の光硬化性樹脂1を120mg滴下した。その後、レンズ2を未硬化の光硬化性樹脂1に押し当て、レンズ1とレンズ2の間に、光軸上での厚さが0.1mm、光学素子外周での厚さが0.08mmとなるように拡げた。
続いて、レンズ1上に、ディスペンサーを用い、未硬化の光硬化性樹脂1を120mg滴下した。その後、レンズ2を未硬化の光硬化性樹脂1に押し当て、レンズ1とレンズ2の間に、光軸上での厚さが0.1mm、光学素子外周での厚さが0.08mmとなるように拡げた。
次に、紫外線照射ランプを用い、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂1全体に600秒間照射した。続いて、紫外線照射ランプと光学有効部15の間に遮蔽板を配置し、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を非光学有効部16に対して1200秒間照射した。なお、光硬化性樹脂1の非光学有効部16の径方向の長さは、2mmとした。
さらに、光硬化性樹脂1の硬化反応による残留応力を低減するために、60℃の雰囲気中に10時間放置し、実施例1に係る光学素子1を作製した。
(実施例2)
第1の基材11として、直径57mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ3という)を用いた。レンズ3の樹脂12と接する面14は凸面で曲率半径40.6mmである。また、第2の基材13として、直径63mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ4という)を用いた。レンズ4の樹脂12と接する面14は凹面で曲率半径40.65mmである。
第1の基材11として、直径57mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ3という)を用いた。レンズ3の樹脂12と接する面14は凸面で曲率半径40.6mmである。また、第2の基材13として、直径63mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ4という)を用いた。レンズ4の樹脂12と接する面14は凹面で曲率半径40.65mmである。
樹脂12としては、光硬化性樹脂1に粒径が10nm以下のZrO2微粒子を20体積%となるように添加して得た光硬化性樹脂2を用いた。回折格子形成樹脂17としては、無色透明な光硬化性のアクリル樹脂(RC−C001、DIC株式会社)を用いた。
始めに、実施例1と同様にレンズ3およびレンズ4の、光硬化性樹脂2と接する面14にシランカップリング処理をおこなった。
また、回折格子の反転形状を有する金型に未硬化の回折格子形成樹脂17を入れ、さらにレンズ3を回折格子形成樹脂17に金型と反対の側から当接させた。その後、回折格子形成樹脂17に対し、レンズ3を通して紫外線照射ランプにより紫外光を照射して硬化させた後に離型した。この時、回折格子形成樹脂17に対して、光強度20mW/cm2の紫外光を300秒間照射した。
続いて、レンズ3上で硬化された回折格子形成樹脂17の上に、ディスペンサーを用い、未硬化の光硬化性樹脂2を310mg滴下した。さらに、レンズ4を光硬化性樹脂2に押し当て、レンズ4と、回折格子形成樹脂17またはレンズ3との間に、光軸上での厚さが0.05mm、光学素子外周での厚さが0.05mmとなるように拡げた。
次に、紫外線照射ランプを用い、レンズ4を通して光硬化性樹脂2全体に光強度32mW/cm2の紫外光を1000秒間照射した。続いて、非光学有効部16の形状に合わせて複数の光ファイバーを円環状に並べたライトガイドを用いて、非光学有効部16に対してのみ同時に複数のスポット光を照射した。この時、1スポット光当たり光強度32mW/cm2の紫外光を5000秒間照射した。なお、光硬化性樹脂2の非光学有効部16の径方向の長さは、3.5mmとした。
さらに、光硬化性樹脂2の硬化反応による残留応力を低減するために、60℃の雰囲気中に10時間放置し、実施例2に係る光学素子2を作製した。
(実施例3)
実施例1に係る光学素子1の作製において、以下に示す条件を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る光学素子3を作製した。
実施例1に係る光学素子1の作製において、以下に示す条件を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る光学素子3を作製した。
第1の基材11として、直径20mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ5という)を用いた。レンズ5の樹脂12と接する面14は凸面で曲率半径100.0mmである。また、第2の基材13として、直径20mmのガラス製球面レンズ(以下レンズ6という)を用いた。レンズ6の樹脂12と接する面14は凹面で曲率半径34.72mmである。
樹脂12としては、無色透明なエポキシ樹脂に粒径が20nm以下のSiO2微粒子を5体積%となるように添加して得た光硬化性樹脂3を用いた。
光硬化性樹脂3は、光軸上での厚さが1mm、光学素子外周での厚さが0.03mmとなるように、レンズ5とレンズ6との間に押し拡げた。
光硬化性樹脂3の硬化においては、紫外線照射ランプを用い、レンズ5を通して光強度46mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂3全体に300秒間照射した。続いて、紫外線照射ランプと光学有効部15の間に遮蔽板を配置し、レンズ5を通して光強度46mW/cm2の紫外光を非光学有効部16に対して1200秒間照射した。なお、光硬化性樹脂3の非光学有効部16の径方向の長さは、0.5mmとした。
(比較例1、2)
実施例1に係る光学素子1の作製において、光硬化性樹脂1の光硬化の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る比較光学素子1および比較例2に係る比較光学素子2を作製した。
比較例1においては、紫外線照射ランプを用い、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂1全体に1500秒間照射した。続いて、紫外線照射ランプと光学有効部15の間に遮蔽板を配置し、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を非光学有効部16に対して3500秒間照射した。
比較例2においては、紫外線照射ランプを用い、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂1全体に150秒間照射した。続いて、紫外線照射ランプと光学有効部15の間に遮蔽板を配置し、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を非光学有効部16に対して950秒間照射した。
実施例1に係る光学素子1の作製において、光硬化性樹脂1の光硬化の条件を変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る比較光学素子1および比較例2に係る比較光学素子2を作製した。
比較例1においては、紫外線照射ランプを用い、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂1全体に1500秒間照射した。続いて、紫外線照射ランプと光学有効部15の間に遮蔽板を配置し、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を非光学有効部16に対して3500秒間照射した。
比較例2においては、紫外線照射ランプを用い、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂1全体に150秒間照射した。続いて、紫外線照射ランプと光学有効部15の間に遮蔽板を配置し、レンズ2を通して光強度20mW/cm2の紫外光を非光学有効部16に対して950秒間照射した。
(比較例3)
実施例3に係る光学素子3の作製において、光硬化性樹脂3の光硬化の条件を変更した以外は、実施例3と同様にして比較例3に係る比較光学素子3を作製した。
比較例3においては、紫外線照射ランプと非光学有効部16の間に遮蔽板を配置し、レンズ2を通して光強度46mW/cm2の紫外光を光学有効部15に対して280秒間照射した。続いて、遮蔽板を取り除いて、レンズ2を通して光強度46mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂3全体に20秒間照射した。
実施例3に係る光学素子3の作製において、光硬化性樹脂3の光硬化の条件を変更した以外は、実施例3と同様にして比較例3に係る比較光学素子3を作製した。
比較例3においては、紫外線照射ランプと非光学有効部16の間に遮蔽板を配置し、レンズ2を通して光強度46mW/cm2の紫外光を光学有効部15に対して280秒間照射した。続いて、遮蔽板を取り除いて、レンズ2を通して光強度46mW/cm2の紫外光を光硬化性樹脂3全体に20秒間照射した。
<評価>
実施例1〜3に係る光学素子1〜3および比較例1〜3に係る比較光学素子1〜3について以下の評価をおこなった。
実施例1〜3に係る光学素子1〜3および比較例1〜3に係る比較光学素子1〜3について以下の評価をおこなった。
(弾性率)
樹脂12の弾性率について、ナノインデンターを用いて次のようにして測定した。
始めに、光学素子の断面を切り出して研磨加工を施した。続いて、樹脂の被測定面に対して微小ダイヤモンド圧子による深さ5〜20μmの押し込み測定を行い、得られた結果から弾性率を算出した。なお、押し込み測定は、樹脂12の光学有効部15、非光学有効部16および完全硬化させた樹脂12について行った。
また、樹脂12の完全硬化時の弾性率を、次のようにして測定した。弾性率の測定方法は、前記のナノインデンターによる方法に同じであるのでその説明を省略する。光硬化性樹脂の完全硬化時の弾性率を規定するためには、最初に紫外光の照射量に対する弾性率の変化を測定する。具体的に、研磨加工で切り出した光学素子の樹脂12の断面に対して、複数回紫外光を照射して、それぞれの弾性率を測定した。紫外光を照射するほど弾性率は高くなり、一定値に収束していく様子を示す。弾性率の収束値はフィッティング解析によって算出するが、同収束値を完全硬化時の弾性率とした。熱硬化性樹脂の完全硬化時の弾性率を規定するためには、樹脂12に対して熱を与えて、同様にそれぞれの弾性率を測定してその収束値を算出すれば良い。
結果を表1に示す。
樹脂12の弾性率について、ナノインデンターを用いて次のようにして測定した。
始めに、光学素子の断面を切り出して研磨加工を施した。続いて、樹脂の被測定面に対して微小ダイヤモンド圧子による深さ5〜20μmの押し込み測定を行い、得られた結果から弾性率を算出した。なお、押し込み測定は、樹脂12の光学有効部15、非光学有効部16および完全硬化させた樹脂12について行った。
また、樹脂12の完全硬化時の弾性率を、次のようにして測定した。弾性率の測定方法は、前記のナノインデンターによる方法に同じであるのでその説明を省略する。光硬化性樹脂の完全硬化時の弾性率を規定するためには、最初に紫外光の照射量に対する弾性率の変化を測定する。具体的に、研磨加工で切り出した光学素子の樹脂12の断面に対して、複数回紫外光を照射して、それぞれの弾性率を測定した。紫外光を照射するほど弾性率は高くなり、一定値に収束していく様子を示す。弾性率の収束値はフィッティング解析によって算出するが、同収束値を完全硬化時の弾性率とした。熱硬化性樹脂の完全硬化時の弾性率を規定するためには、樹脂12に対して熱を与えて、同様にそれぞれの弾性率を測定してその収束値を算出すれば良い。
結果を表1に示す。
(硬化反応率)
樹脂12の光学有効部15および非光学有効部16における硬化反応率について、FT−IR分光計で測定した樹脂のIRスペクトルを解析することで算出した。
具体的に、光硬化性樹脂の硬化反応率を測定するためには、紫外光の照射量に対するIRスペクトルの変化を測定した。研磨加工で切り出した光学素子の樹脂12の断面に対して複数回紫外光を照射して、顕微全反射測定法を用いて光学有効部15表面と非光学有効部16表面のIRスペクトルを測定した。IRスペクトルとしては、硬化反応によって減少するアクリル酸の炭素二重結合部等の反応スペクトルや、硬化反応によっても変化しないカルボニル基等の基準スペクトルを測定対象とした。
紫外光を照射するほど反応スペクトルのピーク面積は減少して一定値に収束していくが、この収束値を完全硬化時の反応スペクトルのピーク面積と規定した。紫外光の照射量ごとの硬化反応率は、照射量ごとの反応スペクトルのピーク面積を基準スペクトルのピーク面積で割った値を用いて算出した。それぞれ算出した値を前記の完全硬化時の値で規格化して、その逆数を計算することで、照射量ごとの硬化反応率を求めることができる。
熱硬化性樹脂の硬化反応率を測定するためには、樹脂12に対して熱を与えて、同様の手順でIRスペクトルの測定と硬化反応率の算出を行えば良い。
結果を表1に示す。
樹脂12の光学有効部15および非光学有効部16における硬化反応率について、FT−IR分光計で測定した樹脂のIRスペクトルを解析することで算出した。
具体的に、光硬化性樹脂の硬化反応率を測定するためには、紫外光の照射量に対するIRスペクトルの変化を測定した。研磨加工で切り出した光学素子の樹脂12の断面に対して複数回紫外光を照射して、顕微全反射測定法を用いて光学有効部15表面と非光学有効部16表面のIRスペクトルを測定した。IRスペクトルとしては、硬化反応によって減少するアクリル酸の炭素二重結合部等の反応スペクトルや、硬化反応によっても変化しないカルボニル基等の基準スペクトルを測定対象とした。
紫外光を照射するほど反応スペクトルのピーク面積は減少して一定値に収束していくが、この収束値を完全硬化時の反応スペクトルのピーク面積と規定した。紫外光の照射量ごとの硬化反応率は、照射量ごとの反応スペクトルのピーク面積を基準スペクトルのピーク面積で割った値を用いて算出した。それぞれ算出した値を前記の完全硬化時の値で規格化して、その逆数を計算することで、照射量ごとの硬化反応率を求めることができる。
熱硬化性樹脂の硬化反応率を測定するためには、樹脂12に対して熱を与えて、同様の手順でIRスペクトルの測定と硬化反応率の算出を行えば良い。
結果を表1に示す。
(光学性能)
各実施例および比較例に係る各光学素子の光学性能について、フィゾー干渉計を用いて次のようにして評価した。
各実施例および比較例に係る各光学素子の光学性能について、フィゾー干渉計を用いて次のようにして評価した。
始めに、フィゾー干渉計により各光学素子の透過波面を測定した。得られた透過波面をフィッティングして、レンズ中心を通る透過波面の位相断面より、PV値を読み取った。
透過波面のフィッティングでは、コンピュータプログラムを用いて、透過波面の球面成分を除去して平面成分に変換する。透過波面には、光学素子を構成する各材料の屈折率や光学形状などの位相情報が含まれる。その位相情報の断面を解析すれば、吸水による材料の屈折率や形状の変化を評価することができる。とりわけ、位相断面のPV値は、光学素子の吸水膨張による外周の形状反りや屈折率変化を顕著に示すことができる。例えば、光学素子の外周に水が浸入して材料の屈折率が高くなった場合、水が浸入した光学素子外周の位相は水が浸入していない光学素子中心の位相よりも遅くなって測定される。
透過波面のフィッティングでは、コンピュータプログラムを用いて、透過波面の球面成分を除去して平面成分に変換する。透過波面には、光学素子を構成する各材料の屈折率や光学形状などの位相情報が含まれる。その位相情報の断面を解析すれば、吸水による材料の屈折率や形状の変化を評価することができる。とりわけ、位相断面のPV値は、光学素子の吸水膨張による外周の形状反りや屈折率変化を顕著に示すことができる。例えば、光学素子の外周に水が浸入して材料の屈折率が高くなった場合、水が浸入した光学素子外周の位相は水が浸入していない光学素子中心の位相よりも遅くなって測定される。
続いて、各光学素子を、雰囲気温度60℃湿度90%の高温高湿槽に1000時間投入することで長期使用を模擬した試験を行った。
試験後、再度透過波面の測定を行ってPV値を読み取り、試験前後でのPV値の変化を算出した。
結果を表1に示す。
結果を表1に示す。
光学性能の評価において、PV値の変化量が大きいほど、樹脂12の吸水による光学性能の低下が大きい。
表1より、実施例1〜3に係る光学素子では、樹脂への吸水による光学性能の低下が抑制されたことがわかる。
10 光学素子
11 第1の基材
12 樹脂
13 第2の基材
15 光学有効部
16 非光学有効部
11 第1の基材
12 樹脂
13 第2の基材
15 光学有効部
16 非光学有効部
Claims (9)
- 第1の基材と、該第1の基材の上に樹脂と、該樹脂の上に第2の基材とを有する光学素子であって、
該樹脂は、光学有効部と該光学有効部の外周に位置する非光学有効部とを有し、
該光学有効部の弾性率に対する該非光学有効部の弾性率の比が、1.01以上1.19以下である、
ことを特徴とする光学素子。 - 前記樹脂の完全硬化後の弾性率に対する、前記非光学有効部の弾性率の比が、0.95以上0.99以下であり、
前記樹脂の完全硬化後の弾性率に対する、前記光学有効部の弾性率の比が、0.80以上0.94以下である、
請求項1に記載の光学素子。 - 前記非光学有効部の弾性率が、3GPa以上である、請求項1または2に記載の光学素子。
- 前記樹脂が、無機微粒子を含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の光学素子。
- 前記第1の基材の、前記樹脂と接する面が凸形状の球面であり、前記第2の基材の、前記樹脂と接する面が凹形状の球面であり、
前記第1の基材の該凸形状の球面の有する曲率半径の絶対値を|r1|、前記第2の基材の凹形状の球面の有する曲率半径の絶対値を|r2|としたとき、|r1|≧|r2|である、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学素子。 - 前記第1の基材および前記第2の基材の径の小さいどちらか一方の、光軸に垂直な方向の投影形状が円形であり、前記光学有効部の外周方向の長さに対する前記非光学有効部の外周方向の長さの比が、1/19以上7/50以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の光学素子。
- 前記非光学有効部の外周方向の長さが0.5mm以上3.5mm以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の光学素子。
- 少なくとも1つの光学素子を有する光学機器であって、該光学素子が請求項1から7のいずれか1項に記載の光学素子である光学機器。
- 第1の基材と、未硬化の樹脂と、第2の基材と、をこの順に積層する工程と、
該未硬化の樹脂を、光学有効部の弾性率に対する非光学有効部の弾性率の比が、1.01以上1.19以下となるように硬化し、該光学有効部の外周に該非光学有効部を形成する工程と、
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2018153542A JP2020027225A (ja) | 2018-08-17 | 2018-08-17 | 光学素子、光学機器および光学素子の製造方法 |
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2018
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