JP2020026498A - 複合素材、プリプレグ、炭素繊維強化成形体及び複合素材の製造方法 - Google Patents

複合素材、プリプレグ、炭素繊維強化成形体及び複合素材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素繊維に付着したCNTに由来する特性をより確実に得られる複合素材、プリプレグ、炭素繊維強化成形体及び複合素材の製造方法を提供する。【解決手段】複合素材10は、それを構成する炭素繊維束12の各炭素繊維11の表面に複数のカーボンナノチューブ17で構成された構造体14が形成されている。カーボンナノチューブ17は、直線的な形状のものである。炭素繊維11は、その長さ1mの範囲で、1μm四方の計数枠の辺をカーボンナノチューブ17が横切る数の標準偏差が4.5以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、複合素材、プリプレグ、炭素繊維強化成形体及び複合素材の製造方法に関する。
炭素繊維と、その炭素繊維の表面に付着した複数のカーボンナノチューブ(以下、CNTと称する)で構成された構造体を有する複合素材が提案されている(例えば、特許文献1)。複合素材の構造体は、複数のCNTが互いに接続されたネットワーク構造を形成しているとともに、炭素繊維の表面に付着している。こうした複合素材を強化繊維として樹脂を強化した炭素繊維強化成形体は、炭素繊維を含むことにより樹脂単体よりも高い強度や剛性が得られるとともに、CNTに由来して、例えば電気導電性、熱伝導性、機械的特性が向上する。
特開2013−76198号公報
炭素繊維強化成形体は、航空機、自動車、一般産業、スポーツ用品など、様々な分野に用途が拡大している。こうした炭素繊維強化成形体においては、機械的特性等に対する要求は、より一層高いものとなってきている。このため、炭素繊維の表面に複数のCNTが付着した複合素材においても、CNTに由来する特性をより確実に得られることが望まれている。
本発明は、炭素繊維に付着したCNTに由来する特性をより確実に得られる複合素材、プリプレグ、炭素繊維強化成形体及び複合素材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、炭素繊維と、複数のカーボンナノチューブで構成され、前記カーボンナノチューブ同士が直接接触したネットワーク構造を形成するとともに、前記カーボンナノチューブが前記炭素繊維の表面に直接付着した構造体とを備え、長さ1mの前記炭素繊維の範囲において、1μm四方の計数枠の辺を前記カーボンナノチューブが横切る数の標準偏差が4.5以下である。
また、本発明は、直線的な形状の複数のカーボンナノチューブが分散された分散液に超音波振動を印加する超音波工程と、前記超音波振動が印加されている前記分散液に複数の連続した炭素繊維を有する炭素繊維束を開繊して浸漬し、前記炭素繊維に前記複数のカーボンナノチューブを付着させて、長さ1mの前記炭素繊維の範囲において1μm四方の計数枠の辺を前記カーボンナノチューブが横切る数の標準偏差を4.5以下にして前記炭素繊維のそれぞれの表面に構造体を形成する付着工程とを有するものである。
本発明によれば、複合素材を構成する炭素繊維の表面に好ましい状態でカーボンナノチューブが均一に付着しているので、複合素材についてカーボンナノチューブに由来する特性をより確実に得ることができる。
本発明によれば、炭素繊維の表面に好ましい状態でカーボンナノチューブを均一に付着させて複合素材を製造するので、CNTに由来する特性をより確実に得ることができる複合素材を製造することができる。
本実施形態に係る複合素材の構成を示す説明図である。 炭素繊維にCNTを付着する付着装置の構成を示す説明図である。 ガイドローラ上で開繊された状態の炭素繊維束を示す説明図である。 プリプレグの構成を模式的に示す説明図である。 炭素繊維強化成形体を模式的に示す説明図である。 カウント値を計数するための計数枠を示す説明図である。 4個の計数枠の配置を示す説明図である。 実施例に用いた材料CNTのバンドル形状を示すSEM写真である。 実施例に用いた材料CNTの直線性を示すSEM写真である。 炭素繊維上の2番目の評価部位と4個の計数枠を示すSEM写真である。 炭素繊維上の20番目の評価部位と4個の計数枠を示すSEM写真である。 炭素繊維上の26番目の評価部位と4個の計数枠を示すSEM写真である。 炭素繊維上の37番目の評価部位と4個の計数枠を示すSEM写真である。 炭素繊維上の48番目の評価部位と4個の計数枠を示すSEM写真である。 カウント値Cの分布を示すヒストグラムである。 代表カウント値の分布を示すヒストグラムである。
[複合素材]
図1において、複合素材10は、複数の連続した炭素繊維11をまとめた炭素繊維束12を含む。各炭素繊維11の表面には、それぞれ構造体14が形成されており、構造体14の表面にサイジング剤(図示省略)が付着している。
炭素繊維束12を構成する炭素繊維11は、実質的に互いに絡まり合うことなく各炭素繊維11の繊維軸方向が揃っている。繊維軸方向は、炭素繊維11の軸の方向(延びた方向)である。この例では、炭素繊維束12は、1万2千本の炭素繊維11から構成されている。炭素繊維束12を構成する炭素繊維11の本数は、特に限定されないが、例えば1万本以上10万本以下の範囲内とすることができる。なお、図1では、図示の便宜上、十数本のみの炭素繊維11を描いてある。
炭素繊維束12中における炭素繊維11の絡まり合いは、炭素繊維11の乱れの程度によって評価することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により炭素繊維束12を一定倍率で観察して、観察される範囲(炭素繊維束12の所定の長さの範囲)における、所定の本数(例えば10本)の炭素繊維11の長さを測定する。この測定結果から得られる所定の本数の炭素繊維11についての長さのバラツキ、最大値と最小値との差、標準偏差に基づいて、炭素繊維11の乱れの程度を評価することができる。また、炭素繊維11が実質的に絡まり合っていないことは、例えば、JIS L1013:2010「化学繊維フィラメント糸試験方法」の交絡度測定方法に準じて交絡度を測定して判断することもできる。測定された交絡度が小さいほど、炭素繊維束12における炭素繊維11同士の絡まり合いは少ないことになる。
炭素繊維11同士が実質的に互いに絡まり合っていない、あるいは絡まり合いが少ない炭素繊維束12は、炭素繊維11を均一に開繊しやすい。これにより、プリプレグを製造する際に、炭素繊維束12に樹脂が均一に含浸し、炭素繊維11のそれぞれが強度に寄与する。
炭素繊維11は、特に限定されず、ポリアクリルニトリル、レーヨン、ピッチなどの石油、石炭、コールタール由来の有機繊維の焼成によって得られるPAN系、ピッチ系のもの、木材や植物繊維由来の有機繊維の焼成によって得られるもの等を用いることができる。また、炭素繊維11の直径についても、特に限定されず、直径が約5μm以上20μm以下の範囲内のものを好ましく用いることができ、5μm以上10μm以下の範囲内のものをより好ましく用いることができる。炭素繊維11は、長尺なものが用いられ、その長さは、50m以上が好ましく、より好ましくは100m以上10000m以下の範囲内である。なお、プリプレグ、炭素繊維強化成形体としたときに、炭素繊維11が短く切断されていてもかまわない。
上述のように炭素繊維11の表面には、構造体14が形成されている。構造体14は、複数のカーボンナノチューブ(以下、CNTと称する)17が絡み合ったものである。構造体14を構成するCNT17は、炭素繊維11の表面のほぼ全体で均等に分散して絡み合うことで、複数のCNT17が互いに絡み合った状態で接続されたネットワーク構造を形成する。ここでいう接続とは、物理的な接続(単なる接触)と化学的な接続とを含む。CNT17同士は、それらの間に界面活性剤などの分散剤や接着剤等の介在物が存在することなく、CNT17同士が直接に接触する直接接触である。
構造体14を構成するCNT17は、炭素繊維11の表面に直接付着して固定されている。これにより、炭素繊維11の表面に構造体14が直接付着している。CNT17が炭素繊維11の表面に直接付着するとは、CNT17と炭素繊維11の表面との間に界面活性剤等の分散剤や接着剤等が介在することなく、CNT17が炭素繊維11に直接に付着していることであり、その付着はファンデルワールス力による結合によるものである。構造体14を構成するCNT17が炭素繊維11の表面に直接付着していることにより、分散剤や接着剤等が介在せずに、直接に炭素繊維11の表面に構造体14が接触する直接接触した状態になっている。
上記のように、複数のCNT17が互いの表面に介在物無しで互いに接続されて構造体14を構成しているので、複合素材10は、CNT由来の電気導電性、熱伝導性の性能を発揮する。また、CNT17が炭素繊維11の表面に介在物無しで付着しているので、構造体14を構成するCNT17は、炭素繊維11の表面から剥離し難く、複合素材10及びそれを含む炭素繊維強化成形体は、その機械的強度が向上する。
後述するように炭素繊維強化成形体では、構造体14が形成された複数の炭素繊維11で構成される炭素繊維束12にマトリックス樹脂が含浸し硬化している。構造体14にマトリックス樹脂が含浸するので、各炭素繊維11の構造体14が炭素繊維11の表面とともにマトリックス樹脂に固定される。これにより、各炭素繊維11がマトリックス樹脂に強固に接着した状態になり、複合素材10とマトリックス樹脂との剥離強度が向上する。また、このようなマトリックス樹脂との接着が複合素材10の全体にわたることで、炭素繊維強化成形体の全体で繊維強化の効果が得られる。
また、炭素繊維強化成形体に外力が与えられて、その内部に変位が生じた時には、炭素繊維強化成形体内部の炭素繊維11に変位が生じる。炭素繊維11の変位により、構造体14に伸びが生じ、そのCNT17のネットワーク構造により、拘束効果が得られる。これにより、CNTの特性が発揮されて炭素繊維強化成形体の弾性率が高められる。
さらには、炭素繊維強化成形体内の各炭素繊維11の周囲には、構造体14を構成するCNT17にマトリックス樹脂が含浸して硬化した領域(以下、複合領域という)が形成されている。この複合領域は、外部からの機械的エネルギーを効率的に吸収する。すなわち、炭素繊維11間で振動等のエネルギーが伝搬する場合には、その伝搬する振動のエネルギーがそれぞれの炭素繊維11の周囲の複合領域の摩擦によって吸収されて減衰する。この結果、炭素繊維強化成形体の例えば振動減衰特性(制振性)が向上する。
複数の炭素繊維11にそれぞれ形成された構造体14は、互いに独立した構造であり、一の炭素繊維11の構造体14と他の炭素繊維11の構造体14は、同じCNT17を共有していない。すなわち、一の炭素繊維11に設けられた構造体14に含まれるCNT17は、他の炭素繊維11に設けられた構造体14に含まれない。
サイジング剤は、例えば構造体14及び炭素繊維11の露呈された表面を覆うように固定されている。すなわち、炭素繊維11の表面のCNT17が付着している部分ではそのCNT17の表面にサイジング剤が固定され、CNT17が付着していない部分では炭素繊維11の表面にサイジング剤が固定されている。このサイジング剤は、反応硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂の硬化物、あるいは未硬化物からなる。サイジング剤は、サイジング処理を施して形成される。
炭素繊維11に付着したCNT17は、直線的な形状である。このCNT17は、SEMによる観察でCNT17が直線的、直線性が高い等と評価できる形状である。このような直線的な形状のCNT17は、屈曲したCNTと比較して、長さを維持したまま、後述する分散液において単離分散して炭素繊維11に付着させることができるため、CNT17の特徴をより大きく発現させることができる。
CNT17の元となるCNT(以下、材料CNTと称する)は、例えば熱CVD法を用いてシリコン基板上にアルミニウム、鉄からなる触媒膜を成膜し、CNTの成長のための触媒金属を微粒子化し、加熱雰囲気中で炭化水素ガスを触媒金属に接触させることによって、高い直線性を持ってバンドル状に作製することができる。この材料CNTの製造手法は、例えば特開2007−126311号公報に詳細が記載されている。このような製造手法で製造される材料CNTは、長尺であるため、材料CNTを切断することで、所望とする長さのCNT17が得られる。
CNT17の長さは、0.1μm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。CNT17の長さは、より好ましくは、0.5μm以上10μm以下の範囲であり、さらに好ましくは1μm以上5μm以下の範囲である。CNT17は、その長さが0.1μm以上であれば、CNT17同士が絡まり合って直接接触ないしは直接接続された構造体14をより確実に形成することができ、またCNT17の高アスペクト形状に由来する特徴を発現させやすい。CNT17の長さが10μm以下であれば、CNT17が炭素繊維11間にまたがって付着するようなことがない。すなわち、上述のように、一の炭素繊維11に設けられた構造体14に含まれるCNT17が他の炭素繊維11に設けられた構造体14に含まれるようなことがない。CNT17の長さが5μm以下であれば、CNT17を炭素繊維11に付着させる際に、CNT17が凝集し難く、より均等に分散しやすくなる。この結果、CNT17がより均一に炭素繊維11に付着する。
CNT17は、平均直径が1nm以上30nm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1nm以上20nm以下の範囲内、さらに好ましくは10nm以上15nm以下の範囲内である。CNT17は、その直径が30nm以下であれば、柔軟性に富み、炭素繊維11の表面に沿って付着しやすく、さらには構造体14の形成がより確実になる。また、20nm以下であれば、構造体14を構成するCNT17同士の結合が強固となる。なお、CNT17の直径は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)写真を用いて測定した値とする。CNT17は、単層、多層を問わないが、好ましくは多層のものである。
炭素繊維11に対するCNT17の付着本数は、構造体14の厚さ(炭素繊維11の径方向の構造体14の長さ)で評価することができる。炭素繊維11の繊維軸方向に沿った所定長さの測定範囲をほぼ均等に網羅するように、測定範囲内の10カ所の各測定位置での構造体14の厚さの平均を構造体14の厚さとする。測定範囲の長さは、例えば、上述のCNT17の長さの範囲の上限の5倍の長さとする。測定位置での構造体14の厚さは、炭素繊維11の当該測定位置での周方向におけるCNT17が付着した各々の箇所でCNT17が炭素繊維11の表面から突出する高さの平均として求める。炭素繊維11の表面から突出するCNT17の高さは、SEM等で測定することができる。炭素繊維11の表面から突出するCNT17の高さを測定する場合で、複数のCNT17が重なっているときには、その重なっているCNT17の部分うちの炭素繊維11の表面から最も離れた部分までの長さを測定する。また、炭素繊維11の表面にCNT17が付着してない部分(高さ「0」)は、算出に用いない。
上記のように得られる構造体14の厚さ(平均)は、10nm以上300nm以下の範囲内、好ましくは10nm以上100nm以下の範囲内、より好ましくは10nm以上50nm以下の範囲内である。構造体14の厚さが300nm以下であれば、構造体14が形成された炭素繊維11同士の摩擦が小さく成形等の取り扱いが容易である。
CNT17は、炭素繊維11に均一に付着していることが好ましく、炭素繊維11の表面を覆うように付着していることが好ましい。炭素繊維11に対するCNT17の均一性を含む付着状態は、SEMにより観察し、得られた画像を目視により評価することができる。また、後述するようにカウント値Cを用いて炭素繊維11に対するCNT17の付着状態、付着の均一性を評価することができる。
[複合素材の製造方法]
炭素繊維束12の各炭素繊維11のそれぞれにCNT17を付着させて構造体14を形成するには、CNT17が単離分散したCNT単離分散液(以下、単に分散液と称する)中に炭素繊維束12を浸漬し、分散液に機械的エネルギーを付与する。単離分散とは、CNT17が1本ずつ物理的に分離して絡み合わずに分散媒中に分散している状態をいい、2以上のCNT17が束状に集合した集合物の割合が10%以下である状態をさす。ここで集合物の割合が10%以上であると、分散媒中でのCNT17の凝集が促進され、CNT17の炭素繊維11に対する付着が阻害される。
図2に一例を示すように、付着装置21は、CNT付着槽22、ガイドローラ23〜26、超音波発生器27、炭素繊維束12を一定の速度で走行させる走行機構(図示省略)等で構成される。CNT付着槽22内には、分散液28が収容される。
付着装置21には、長尺(例えば100m程度)の炭素繊維束12が連続的に供給される。供給される炭素繊維束12は、ガイドローラ23〜26に順番に巻き掛けられ、走行機構により一定の速さで走行する。付着装置21には、各炭素繊維11にサイジング剤が付着していない炭素繊維束12が供給される。
炭素繊維束12は、開繊された状態でガイドローラ23〜26にそれぞれ巻き掛けられている。ガイドローラ23〜26に巻き掛けられた炭素繊維束12は、適度な張力が作用することで炭素繊維11が絡まり合うおそれが低減される。炭素繊維束12のガイドローラ24〜26に対する巻き掛けは、より小さい巻掛け角(90°以下)とすることが好ましい。
ガイドローラ23〜26は、いずれも平ローラである。図3に示すように、ガイドローラ23のローラ長(軸方向の長さ)L1は、開繊された炭素繊維束12の幅WLよりも十分に大きくしてある。ガイドローラ24〜26についても、ガイドローラ23と同様であり、それらのローラ長は、開繊された炭素繊維束12の幅WLよりも十分に大きくしてある。例えば、ガイドローラ23〜26は、全て同じサイズであり、ローラ長L1が100mm、ローラの直径(外径)が50mmである。開繊された炭素繊維束12は、厚み方向(ガイドローラの径方向)に複数本の炭素繊維11が並ぶ。
ガイドローラ23〜26のうちのガイドローラ24、25は、CNT付着槽22内に配置されている。これにより、ガイドローラ24、25間では、炭素繊維束12は、分散液28中を一定の深さで直線的に走行する。炭素繊維束12の走行速度は、0.5m/分以上150m/分以下の範囲内とすることが好ましい。炭素繊維束12の走行速度が高いほど、生産性を向上させることができ、走行速度が低いほど、CNT17の均一付着に有効であり、また炭素繊維11同士の絡み合いの抑制に効果的である。また、炭素繊維11同士の絡み合いが少ないほど炭素繊維11に対するCNT17の付着の均一性を高めることができる。炭素繊維束12の走行速度が150m/分以下であれば、炭素繊維11同士の絡み合いがより効果的に抑制されるとともに、CNT17の付着の均一性をより高くできる。また、炭素繊維束12の走行速度は、5m/分以上100m/分以下の範囲内とすることがより好ましい。
超音波発生器27は、機械的エネルギーとしての超音波振動を分散液28に印加する。これにより、分散液28中において、CNT17が分散した分散状態と凝集した凝集状態とが交互に変化する可逆的反応状態を作り出す。この可逆的反応状態にある分散液28中に炭素繊維束12を通過させると、分散状態から凝集状態に移行する際に、各炭素繊維11にCNT17がファンデルワールス力により付着する。CNT17に対する炭素繊維11の質量は、10万倍以上と大きく、付着したCNT17が脱離するためのエネルギーは、超音波振動によるエネルギーより大きくなる。このため、炭素繊維11に一度付着したCNT17は、付着後の超音波振動によっても炭素繊維11から剥がれない。なお、CNT17同士では、いずれも質量が極めて小さいため、超音波振動によって分散状態と凝集状態とに交互に変化する。分散状態から凝集状態への移行が繰り返し行われることで、各炭素繊維11に多くのCNT17がそれぞれ付着して構造体14が形成される。
分散液28に印加する超音波振動の周波数は、40kHz以上950kHz以下であることが好ましい。周波数が40kHz以上であれば、炭素繊維束12中の炭素繊維11同士の絡まり合いが抑制される。また、周波数が950kHz以下であれば、炭素繊維11にCNT17が良好に付着する。炭素繊維11の絡み合いをより低減するためには、超音波振動の周波数は、100kHz以上が好ましく、130kHz以上がより好ましい。また、超音波振動の周波数は、430kHz以下がより好ましい。
また、炭素繊維11が分散液28に浸漬している間のCNT17の分散状態から凝集状態への移行回数が35000回となることで、炭素繊維11に対するCNT17の付着の均一性がきわめて高くなり、付着状態が良好になることを発明者らは見出した。
このため、炭素繊維束12が分散液28中を走行している期間の長さ、すなわちガイドローラ24、25の間を走行している時間(以下、浸漬時間という)が、分散液28に印加する超音波振動の周期の35000倍またはそれ以上となるように、炭素繊維束12の走行速度、炭素繊維束12が分散液28中を走行する距離(ガイドローラ24、25の間隔)、分散液28に印加する超音波振動の周波数を決めることが好ましい。すなわち、超音波振動の周波数をfs(Hz)、浸漬時間をTs(秒)としたときに、「Ts≧35000/fs」を満たすようにすることが好ましい。例えば、超音波振動の周波数が130kHz、炭素繊維束12が分散液28中を走行する距離が0.1mであれば、炭素繊維束12の走行速度を22m/分以下とすればよい。また、炭素繊維束12を複数回に分けて分散液28に浸漬する場合でも、合計した浸漬時間が超音波振動の周期の35000倍またはそれ以上とすればCNT17の付着本数をほぼ最大にできる。
炭素繊維束12は、分散液28中から引き出された後に乾燥される。乾燥された炭素繊維束12に対してサイジング処理および乾燥を順次に行うことで、サイジング剤が構造体14に付与される。サイジング処理は、一般的な方法により行うことができる。
サイジング剤は、特に限定されず、種々の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、メタクリル樹脂(PMMA等)、塩化ビニル等の汎用樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリイミド等のスーパーエンジニアリングプラスチックを挙げることができる。
[分散液]
分散液28は、例えば上述の材料CNTを分散媒に加え、ホモジナイザーや、せん断力、超音波分散機などにより、材料CNTを切断して所望とする長さのCNT17とするとともに、CNT17の分散の均一化を図ることで調製される。
分散媒としては、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類やトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、ヘキサン、ノルマルヘキサン、エチルエーテル、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いることができる。分散液28は、分散剤、接着剤を含有しない。
上述の製造手法で製造される材料CNTは、個々の材料CNTが互いに絡み合っていないバンドルとして製造される。バンドルの材料CNTは、絡み合っていないため、切断によって生成される各CNTがどのような長さでも単離分散することができる。このため、上述のような長さの条件を満たすCNT17を単離分散した分散液28が容易に得られる。
上記のように複合素材10を用いて作製した炭素繊維強化成形体は、各炭素繊維11にCNT17が均一に付着しており、CNTに由来する電気導電性、熱伝導性や、振動減衰特性(制振性)、弾性率の変化特性等の機械的特性の優れた特性をより確実に得られる。
分散液28のCNT17の濃度は、0.001wt%以上0.2wt%以下の範囲内であることが好ましい。分散液28のCNT17の濃度は、より好ましくは0.005wt%以上0.1wt%以下である。
[プリプレグ]
図4において、プリプレグ31は、炭素繊維束12の構造体14が形成された炭素繊維11と、この炭素繊維束12に含浸された未硬化のマトリックス樹脂32とで構成される。プリプレグ31は、開繊された複合素材10にマトリックス樹脂32を含浸し、厚み方向に炭素繊維11が複数本並んだ帯状に形成される。複合素材10は、炭素繊維束12における炭素繊維11同士の絡み合いが実質的に存在しないものであるので、プリプレグ31を製造する際に、炭素繊維11を均一に拡げやすい。プリプレグ31の各炭素繊維11の繊維軸方向は、いずれも同一方向(図4の紙面垂直方向)に揃っている。プリプレグ31は、幅方向(開繊した方向)に複数の開繊した複合素材10を並べて形成することで、幅広のものとすることができる。
マトリックス樹脂32は、特に限定されず、種々の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、メタクリル樹脂(PMMA等)等の汎用樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂等のエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリイミド等のスーパーエンジニアリングプラスチックを挙げることができる。
[炭素繊維強化成形体]
プリプレグ31を加圧しながらマトリックス樹脂32を加熱硬化することで炭素繊維強化成形体が作製される。複数枚のプリプレグ31を積層した積層体を加圧及び加熱することで、積層体を一体化した炭素繊維強化成形体とすることもできる。この場合、積層体における炭素繊維11の繊維軸方向は、プリプレグ31に相当する層ごとに任意の方向とすることができる。図5に示す炭素繊維強化成形体34では、プリプレグ31に相当する複数の層34aにおいて、炭素繊維11の繊維軸方向が上下の層34aで互いに直交するように形成されている。加熱及び加圧する手法は、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、シートワインディング法、フィラメントワインディング法および内圧成形法等を用いることができる。マトリックス樹脂32の体積含有率は、10〜40%が好ましく、15〜33%がより好ましい。マトリックス樹脂32は、弾性率が2〜5GPa程度であることが好ましい。
上記実施形態では、炭素繊維11の表面へのCNT17の固定は、炭素繊維11とCNT17とのファンデルワールス力による結合によるものであるが、これに加えて炭素繊維11の表面へのCNT17の固定を補強する結着部を設けてもよい。結着部は、例えば炭素繊維11とこれに直接付着(接触)したCNT17との各表面(周面)の間に形成される隙間に入り込んだ状態で硬化したエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、例えばトルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ブタノール、酢酸エチルまたは酢酸ブチル等の溶媒に溶解して溶液とし、これに構造体14が形成された炭素繊維11を含む炭素繊維束12を浸漬した後、加熱する。これにより、炭素繊維11とCNT17の各表面の間に形成される隙間に未硬化のエポキシ樹脂を入り込ませて硬化させる。
なお、結着部の形成にあたっては、結着部の材料であるエポキシ樹脂の溶液をエマルジョン化して用いてもよい。例えば、エポキシ樹脂を溶媒に溶解した溶液中に、ノニオン系乳化剤等の乳化剤を加えることによって、エマルジョン化することできる。結着部としては、エポキシ樹脂の他、例えばフェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂等であってもよい。また、シランカップリング剤や無機系の接着剤を結着部として用いることも出来る。
CNT17を炭素繊維11の表面に部分的に固定してもよい。この構成では、硬化した固定樹脂部が炭素繊維11の表面に点在し、構造体14を形成する一部のCNT17が固定樹脂部によって炭素繊維11の表面に固定される。炭素繊維11の表面における固定樹脂部が覆う炭素繊維11の表面の比率が7%以上30%以下の範囲内であることが好ましい。このように点在する固定樹脂部によって一部のCNT17を固定した複合素材10は、CNT17の効果を十分に発揮でき、その複合素材10を用いた炭素繊維強化成形体の層間剥離亀裂の進展抵抗をより大きくできる。
上記固定樹脂部は、例えば、粒子径が0.05〜1μmの液滴状の樹脂(サイジング剤)を含むエマルジョンタイプの処理液の塗布等と樹脂の硬化で形成できる。粒子径は、レーザ解析法により求めることができる。樹脂としては、例えば反応性樹脂が挙げられる。反応性樹脂は、カルボキシル基との反応性が高い官能基を有する樹脂であり、具体的にはオキサゾリン基を有する樹脂である。反応性樹脂エマルジョンとしては、例えばエポクロス((株)日本触媒製)が挙げられる。このエポクロスは、反応性樹脂の濃度が40質量%程度である。
[CNT付着均一性]
上述のようにCNT17は、炭素繊維11に均一に付着していることが好ましい。カウント値Cを用いて、炭素繊維11に対するCNT17の付着状態を知ることができ、炭素繊維11に対するCNT17の付着の均一性を評価することができる。
カウント値Cは、例えばSEMにより得られた画像(以下、SEM写真という)上で、図6に示すように、CNT17が付着した炭素繊維11の表面に設定された計数枠Bの4辺をCNT17が横切る数(交差する数)である。計数枠Bは、一辺の長さがLaの正方形状である。長さLaは、1μmであって、計数枠Bは1μm四方である。CNT17が横切る数は、辺ごとに計数するので、例えば1つの計数枠Bの異なる2辺を1本のCNT17がそれぞれ1回ずつ横切っている場合には、「2」と計数する。したがって、図6に示される例では、カウント値Cは「3」になる。
カウント値Cを計数する場合に、図7に示すように、炭素繊維11の付着状態を評価すべき1箇所の評価部位に4個の計数枠Bを配置し、これら4個の計数枠Bにより得られる各カウント値Cを1箇所の評価部位の付着状態の評価に用いることができる。この場合には、各々の計数枠Bに対して、その計数枠Bの一辺に平行する方向及び直交する方向に他の2つの計数枠Bが同じ間隔で配置されるように4個の計数枠Bを配置する。計数枠Bの間隔は、3μmとする。すなわち、4個の計数枠Bは、一辺が長さLb(=5μm)の正方形の四隅となるように配置される。この5μmの正方形は、その重心が炭素繊維11の軸心に重なるように、すなわちSEM写真上における繊維軸方向に直交する幅方向の炭素繊維11の中心に当該正方形の重心が重なるように配置するとともに、当該正方形の対向する2辺を繊維軸方向に平行にする。なお、各計数枠Bが四隅となる正方形の配置は、厳密でなくてよい。各計数枠Bは、その各辺が繊維軸方向に対して直交または平行となる向きでなくてもよい。
1つの評価部位について、4個のカウント値Cをそれぞれ独立したカウント値Cとして付着状態の評価に用いることができる。また、4個のカウント値Cの例えば平均(相加平均)を1つの評価部位に対するカウント値Cの代表値(以下、代表カウント値という)として用いて付着状態の評価に用いることができる。なお、上記のように複数の計数枠Bを設定した場合、同一のCNT17が複数の計数枠Bの辺をそれぞれ横切ることもある。この場合には、計数枠BごとにCNT17が計数枠Bの辺を横切る数を計数する。したがって、例えば1本のCNT17が異なる2個の計数枠Bの辺をそれぞれ横切っている場合には、その1本のCNT17を各計数枠Bそれぞれで1本と計数する。
カウント値Cは、10以上100以下であることが好ましい。カウント値Cが10以上であれば、炭素繊維強化成形体としたときに、上記のような構造体14による大きな拘束効果、複合領域での機械的エネルギーの大きな吸収効果を確実に得ることができ、CNT由来の特性が確実に得られる。カウント値Cが100以下であれば、構造体14が形成された炭素繊維11同士の摩擦が小さく成形等の取り扱いが容易である。また、カウント値Cが15以上40以下であることがより好ましい。カウント値Cが15以上であれば、ほぼ全ての炭素繊維11間にて構造体14(CNT17)がより確実に機能し、40以下であれば炭素繊維強化成形体におけるマットリックス樹脂の比率が低い場合であっても構造体14がより確実に機能する。
1本の炭素繊維11において、その長さ1mの範囲(以下、評価範囲と称する)内に設定される50箇所の評価部位についてカウント値Cをそれぞれ測定し、得られる合計200個のカウント値Cの標準偏差が10以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。また、カウント値Cについての標準偏差の平均に対する割合は、30%以下であることが好ましく、16%以下であることがより好ましい。代表カウント値を用いた場合には、50個の代表カウント値の標準偏差は、好ましくは5以下、より好ましくは2.5以下であり、代表カウント値についての標準偏差の平均に対する割合は、好ましくは20%以下、より好ましくは9%以下である。50点の評価部位は、評価範囲を均等に網羅するように等間隔に設定されることが好ましいが、厳密に等間隔でなくてもよい。
カウント値Cまたは代表カウント値の標準偏差は、炭素繊維11に付着したCNT17の付着本数(付着量)、構造体14の厚さのばらつきの指標となりばらつきが小さいほど小さな値となる。したがって、この標準偏差が小さいほど望ましい。CNT17の付着本数、構造体14の厚さのばらつきは、複合素材10及びそれを用いた炭素繊維強化成形体のCNTに由来の特性の違いとして現われる。カウント値Cの標準偏差が10以下(代表カウント値の場合は5以下)であれば、複合素材10及び炭素繊維強化成形体のCNTに由来の特性をより確実に発揮でき、4.5以下(代表カウント値の場合は2.5以下)であれば、CNTに由来の特性を十分かつ確実に発揮できる。なお、標準偏差sは、式(1)によって求められる。カウント値Cの標準偏差を求める場合では、式(1)中の値nは、カウント値Cの個数(この例ではn=200)、値Ciは、カウント値Cであり、値Caはカウント値Cの平均である。代表カウント値の標準偏差を求める場合では、式(1)中の値nは、代表カウント値の個数(この例ではn=50)、値Ciは、代表カウント値であり、値Caは代表カウント値の平均である。
評価範囲の各計数枠Bのいずれかの辺を横切るCNT17の総本数に対する1μm以上の長さを有するCNT17の本数の割合が少なくとも50%以上であることが好ましい。この場合のCNT17の本数は、計数枠ごとに計数する。例えば、1本のCNT17が同一の計数枠Bの異なる例えば2辺をそれぞれ横切っている場合は、1本と計数する。したがって、図6に示される例では、計数枠Bのいずれかの辺を横切るCNT17の本数は、「2」になる。また、1本のCNT17が異なる例えば2個の計数枠Bの辺をそれぞれ横切っている場合には、その1本のCNT17を各計数枠Bのそれぞれで1本と計数する。1μm以上の長さを有するCNT17の割合は、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。CNT17の長さは、SEM写真や光学顕微鏡写真から求められる。CNT17の長さが1μm以上であると、炭素繊維11の表面にCNT17が均等に付着し易くなる。したがって、長さが1μm以上のCNT17の割合は、炭素繊維11に付着しているCNT17の付着の均一性の指標になる。
実施例では、上記手順により作製した複合素材10の炭素繊維11に対するCNT17の付着の均一性を評価した。複合素材10を作製する際に用いた分散液28は、上述のように直線的な形状を有するバンドルの材料CNTを用いて調製した。図8及び図9に分散液28の調製に用いた材料CNTのSEM写真を示す。この材料CNTは、多層であり、直径が10nm以上15nm以下の範囲であった。材料CNTは、硫酸と硝酸の3:1混酸を用いて洗浄して触媒残渣を除去した後、濾過乾燥した。分散液28の分散媒としてのアセトンに材料CNTを加え、超音波ホモジナイザーを用いて材料CNTを切断し、CNT17とした。分散液28中のCNT17の長さは、1μm以上5μm以下であった。分散液28のCNT17の濃度は、0.05wt%(=500wt ppm)とし、分散液28には分散剤や接着剤を添加しなかった。
炭素繊維束12としては、T700SC−12000(東レ株式会社製)を用いた。この炭素繊維束12には、12000本の炭素繊維11が含まれている。炭素繊維11の直径は7μm程度であり、長さは100m程度である。なお、炭素繊維束12は、CNT17の付着に先立ってサイジング剤を除去した。
炭素繊維束12を開繊した状態でガイドローラ23〜26に巻き掛け、CNT付着槽22内の分散液28中を走行させた。炭素繊維束12の走行速度は、2m/分とし、分散液28には、超音波発生器27により周波数が200kHzの超音波振動を与えた。なお、ガイドローラ24、25の間を走行している浸漬時間は、3.125秒であった。この浸漬時間は、分散液28に与える超音波振動の625000周期分である。
分散液28から引き出された炭素繊維束12を乾燥させた後に、サイジング剤としてエポキシ樹脂を用いてサイジング処理を施した。サイジング処理を施した炭素繊維束12を乾燥させて複合素材10を得た。
サイジング処理及び乾燥後の炭素繊維束12の一部を切り出し、サイジング剤を除去してから、炭素繊維11を取得した。取得した各炭素繊維11に複数のCNT17が均一に分散して付着していることをSEM観察して確認した。
次に、取得した1本の炭素繊維11について、繊維軸方向に沿って、長さ1mの評価範囲に50ヶ所の評価部位M1〜M50を設定した。評価部位のピッチを一定として、評価範囲を均等に網羅するように評価部位M1〜M50を等間隔に設定した。評価範囲の一端を1番目の評価部位M1、他端を50番目の評価部位M50とし、評価部位M1から評価部位M50に向って順番に評価部位M2、M3、・・・とした。評価部位M1〜M50のそれぞれについて4個の計数枠Bを設定し、計数枠BのそれぞれについてCNT17が各辺を横切る数を計数してカウント値Cを取得した。
取得した評価部位M1〜M50の各カウント値Cを表1に示す。表1では、4個の計数枠Bに対するカウント値CをB1〜B4の欄に示してある。また、表1には、各評価部位における計数枠B1〜B4のカウント値の平均値である代表カウント値を平均Av1として示してある。さらに、50の評価部位を連続した10の評価部位からなるグループに5分割し、グループごとのカウント値Cについての平均Av2、標準偏差s2及びこの標準偏差s2の平均Av2に対する割合を表1に示す。
上記評価部位の各グループについて、それぞれから1つずつ抽出した評価部位(炭素繊維11の表面)のSEM写真とそれに設定した4個の計数枠B(B1〜B4)を図10〜図14に示す。図10は、2番目の評価部位M2のもの、図11は、320番目の評価部位M20のもの、図12は、26番目の評価部位M26、図13は、37番目の評価部位M37のもの、図14は、48番目の評価部位M48のものである。
上記のように取得した200個のカウント値Cについて、そのヒストグラムを図15に示すとともに、その平均Ava、標準偏差sa、標準偏差saの平均Avaに対する割合を表2にそれぞれ示す。また、50個の評価部位の代表カウント値について、そのヒストグラムを図16に示すとともに、その平均Avb、標準偏差sb、標準偏差sbの平均Avbに対する割合を表3にそれぞれ示す。
評価範囲におけるカウント値Cについては、標準偏差が4.5以下、標準偏差の平均に対する割合は16%以下であった。これらの結果からも炭素繊維束12の炭素繊維11には、その繊維軸方向に均一にCNT17が付着していることが確認された。また、代表カウント値の標準偏差が2.5以下、標準偏差の平均に対する割合は9%以下であり、この結果からも炭素繊維束12の炭素繊維11には、その繊維軸方向に均一にCNT17が付着していることが確認された。
また、各計数枠Bのそれぞれについて、いずれか1辺を横切るCNT17の長さの測定及び本数の計数をした。この結果、計数枠Bのいずれかの辺を横切るCNT17の総本数に対する1μm以上の長さを有するCNT17の本数の割合は、50%以上であった。
10 複合素材
11 炭素繊維
12 炭素繊維束
14 構造体
34 炭素繊維強化成形体
B 計数枠

Claims (12)

  1. 炭素繊維と、
    複数のカーボンナノチューブで構成され、前記カーボンナノチューブ同士が直接接触したネットワーク構造を形成するとともに、前記カーボンナノチューブが前記炭素繊維の表面に直接付着した構造体と
    を備え、
    長さ1mの前記炭素繊維の範囲において、1μm四方の計数枠の辺を前記カーボンナノチューブが横切る数の標準偏差が4.5以下であることを特徴とする複合素材。
  2. 前記計数枠の辺を横切る50%以上の前記カーボンナノチューブの長さが1μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合素材。
  3. 前記計数枠の辺を前記カーボンナノチューブが横切る数が15以上40以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合素材。
  4. 複数の連続した前記炭素繊維により炭素繊維束が形成され、
    前記炭素繊維束の前記炭素繊維のそれぞれに前記構造体が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の複合素材。
  5. 前記複数の炭素繊維にそれぞれ形成された前記構造体は、互いに独立した構造であり、一の炭素繊維の構造体と他の炭素繊維の構造体は、同じ前記カーボンナノチューブを共有しないことを特徴とする請求項4に記載の複合素材。
  6. 前記構造体は、厚さが10nm以上300nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の複合素材。
  7. 前記カーボンナノチューブは、長さが0.1μm以上50μm以下の範囲内であり、かつ直径が1nm以上30nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の複合素材。
  8. 直線的な形状の複数のカーボンナノチューブが分散された分散液に超音波振動を印加する超音波工程と、
    前記超音波振動が印加されている前記分散液に複数の連続した炭素繊維を有する炭素繊維束を開繊して浸漬し、前記炭素繊維に前記複数のカーボンナノチューブを付着させて、長さ1mの前記炭素繊維の範囲において1μm四方の計数枠の辺を前記カーボンナノチューブが横切る数の標準偏差を4.5以下にして前記炭素繊維のそれぞれの表面に構造体を形成する付着工程と
    を有することを特徴とする複合素材の製造方法。
  9. 前記超音波工程は、前記超音波振動の周波数が40kHz以上950kHz以下の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の複合素材の製造方法。
  10. 前記超音波振動の周波数をfs、前記カーボンナノチューブを付着させる前記炭素繊維束の部分が前記分散液に浸漬されている浸漬時間をTs秒としたときに、「Ts≧35000/fs」を満たすことを特徴とする請求項8または9に記載の複合素材の製造方法。
  11. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複合素材と、
    前記複合素材に含浸されたマトリックス樹脂と
    を含むことを特徴とするプリプレグ。
  12. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複合素材と、
    前記複合素材に含浸されて硬化したマトリックス樹脂と
    を含むことを特徴とする炭素繊維強化成形体。

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